説明

2液内容物の吐出装置

【課題】分離状態で内容物を充填しておくことができ、しかも全体として嵩張らない複数内容物の吐出装置を提供する。
【解決手段】耐圧性の容器11と、その容器内に収容されるシリンダ12と、そのシリンダ12内に摺動自在に収容され、シリンダ内を第1室15と第2室17とに仕切る第1ピストン13と、第2室17と容器11の内部の空間18とを仕切る第2ピストン15と、第1室15と連通する第1連通部27およびチューブ30を介して第2室17と連通する第2連通部28を備え、各連通部と容器の外部との間の連通/遮断を行うためのバルブ20と、シリンダ11の第1室15および第2室17に充填される第1および第2の内容物N1、N2と、空間18内に充填される噴射剤Fとを備えている吐出装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複数内容物の吐出装置に関し、とくに容器内に充填した加圧ガスなどで複数の内容物を吐出するためのエアゾール式の吐出装置およびポンプ式の吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、2種類の内容物を分離した状態で充填しておき、混合しながら噴霧あるいは吐出するエアゾール製品が知られている。そのような複数吐出のエアゾール製品として、たとえば2本のエアゾール製品を並列的あるいは上下に配列し、それぞれのエアゾール製品の出口部を混合室に連結し、混合室に1個の噴射ノズルを設けた2連式エアゾール製品がある(たとえば特開平10−86983号公報、特開平10−218263号公報など参照)。また、1個の容器内に高粘度の内容物を上下に積層した状態で充填しておき、各層からチューブなどでバルブハウジングに導き、積層状態を維持したまま吐出する複層吐出用の包装容器も知られている(たとえば特開平5−254577号公報など参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記2連式のエアゾール製品は、内容物の粘度に関わらず採用することができ、しかも2種類の内容物を確実に分離して保管できる利点がある。しかし2個のエアゾール製品を束ねたり、上下に連結するため、全体として嵩張り、取り扱いにくい。また連結するエアゾール製品の圧力やバルブ孔径、内容物の粘度などが異なる場合、2種類の内容物を均等に吐出させるのが困難である。他方、内容物を積層状態で充填しておく前述の複層吐出用の包装容器は、高粘度の内容物を積層して充填しておく場合は互いに混じり合わない、という原理に基づくものであり、低粘度の内容物では吐出前に混合されてしまう。そのため、低粘度の内容物は分離状態で保管しておくことができない。
【0004】
本発明は、粘度の高低にかかわらず、分離状態で内容物を充填しておくことができ、かつ、2種類の内容物を均等に吐出でき、しかも全体として嵩張らない複数内容物の吐出装置を提供することを技術課題としている。なお、ここにいう吐出には、液状で吐出する場合、霧状で吐出する場合、クリーム状あるいはフォーム状で吐出する場合を含む。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の複数内容物の吐出装置(請求項1)は、容器と、その容器内に収容される第1シリンダおよび第2シリンダと、第1シリンダおよび第2シリンダ内にそれぞれ摺動自在に収容され、シリンダ内を気密に仕切り、容積変動自在の第1室および第2室を形成する第1ピストンおよび第2ピストンと、第1室と連通する第1連通部および第2室と連通する第2連通部を備え、各連通部と容器の外部との間の連通/遮断を行うためのバルブ手段と、第1室および第2室にそれぞれ充填される、互いに異なる吐出すべき内容物と、容器内に収容され、各ピストンを介して第1室および第2室を加圧する加圧手段とを備えていることを特徴としている。
【0006】
このような吐出装置では、前記加圧手段が容器の内部空間に充填される噴射剤であり、シリンダの第1室および第2室が噴射剤によって加圧されるものが好ましい(請求項2)。また、前記第1シリンダと第2シリンダとが1個の共通シリンダによって構成されると共に、その共通シリンダ内に第1ピストンと第2ピストンが直列状に収容されており、一端が第1ピストンを貫通する孔と連結され、他端がバルブ手段の第2連通部と連結される可撓性を有するチューブが前記第2連通手段を構成しており、前記容器の内部空間に充填される噴射剤が前記加圧手段を構成している吐出装置(請求項3)が好ましい。
【0007】
本発明の吐出装置の第2の態様(請求項4)は、内面が円筒状の容器と、その容器内に摺動自在に収容され、容器内を第1室、第2室および第3室に仕切る第1ピストンおよび第2ピストンと、第1室、第2室および第3室のいずれか2室と連通し、容器の内部と外部の間の連通/遮断を行うためのバルブ手段と、前記2室にそれぞれ充填される、互いに異なる吐出すべき内容物と、残りの1室に収容され、内容物が充填されている前記2室を加圧する加圧手段とを備えていることを特徴としている。また、前記加圧手段は、バルブ手段を兼ねるポンプ機構によって構成することができる(請求項5)。
【発明の効果】
【0008】
本発明の吐出装置(請求項1)は、耐圧性の容器と、その容器内に収容される第1シリンダおよび第2シリンダとから構成されているので、外観は容器1個だけの形態を有する。そのため、嵩張らず、全体として取り扱いが容易である。さらに、各シリンダ内をピストンで仕切って第1室と第2室を形成し、第1室および第2室にそれぞれ吐出すべき内容物を充填しているので、保管中に内容物同士が混じることがない。
【0009】
使用時は、バルブ手段を開放すると、バルブ手段内の圧力が大気圧まで減少する。各シリンダの第1室および第2室は、加圧手段によって加圧されているので、相対的にバルブ手段より圧力が高くなる。そのためそれぞれのピストンが第1室および第2室の容積を減少する方向に移動し、第1室および第2室内の内容物は連通手段を通じてバルブ手段に送られ、外部に吐出される。バルブ手段が1個のバルブを有する場合は、通常はバルブハウジング内で混合された上で吐出される。しかしそれぞれの内容物の粘度の高さ、およびバルブハウジング内での流動状態などの条件により、積層状態になって吐出される場合もある。バルブ手段が2個のバルブを有する場合は、それぞれのバルブから所望の内容物のみを吐出することができる。
【0010】
前記基本構成を有し、さらに前記加圧手段が容器の内部空間に充填される噴射剤であり、シリンダの第1室および第2室が噴射剤によって加圧される吐出装置(請求項2)では、噴射剤が第1シリンダと第2シリンダの両方の加圧手段となり、全体の構成が簡単になる。また各ピストンに加わる圧力が等しいため、ピストンの断面積が等しく流路抵抗が等しい場合は、各ピストンは同距離移動し、各内容物の吐出量は同じになる。さらにピストンの断面積を互いに異ならせたり、流路抵抗を異ならせることにより、第1室の内容物と第2室の内容物の吐出量の比率を所定の値にすることができる。
【0011】
また、前記基本構成を有し、さらに前記第1シリンダと第2シリンダとが1個の共通シリンダによって構成されると共に、その共通シリンダ内に第1ピストンと第2ピストンが直列状に収容されており、一端が第1ピストンを貫通する孔と連結され、他端がバルブ手段の第2連通部と連結される可撓性を有するチューブが前記第2連通手段を構成しており、前記容器の内部空間に充填される噴射剤が前記加圧手段を構成している吐出装置(請求項3)においては、第1シリンダと第2シリンダが共通シリンダで構成されているので、容器の内部の構造が簡単になる。
【0012】
このものは容器本体内の空間に充填した圧縮ガスなどが第2シリンダの加圧手段になる。また、その圧縮ガスなどの圧力が第2シリンダのピストンおよび内容物を介して第1シリンダのピストンに伝えられるので、その圧縮ガスなどは第1シリンダの加圧手段でもある。その結果、バルブ手段を開放すると各ピストンは共に移動し、各内容物を均等に吐出することができる。
【0013】
本発明の吐出装置の第2態様(請求項4)は、シリンダと容器とを兼用するので、部品点数が少なくなる。さらにシリンダを有する場合はシリンダの胴部にも圧力がかかるため
ピストンの移動がスムーズにいかない場合があるが、第2の態様では容器でピストンをガイドするため、ピストンの移動がスムーズになる。
【0014】
前記いずれの吐出装置においても、前記加圧手段は、バルブ手段を兼ねるポンプ機構により構成することができ(請求項5)、その場合は内容物の詰め替えが容易である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の吐出装置の一実施形態を示す断面図である。
【図2】本発明の吐出装置の他の実施形態を示す断面図である。
【図3】本発明の吐出装置のさらに他の実施形態を示す断面図である。
【図4】本発明の吐出装置のさらに他の実施形態を示す断面図である。
【図5】本発明の吐出装置のさらに他の実施形態を示す断面図である。
【図6】本発明の吐出装置に用いられるポンプ機構の一実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1に示すエアゾール製品10は、容器11と、その容器11内に収容されるシリンダ12と、そのシリンダ12内に摺動自在に設けられる第1ピストン13および第2ピストン14と、第1ピストン13の上部に設けられる第1室15に充填される第1の内容物N1と、第1ピストン13と第2ピストン14の間に設けられる第2室17に充填される第2の内容物N2と、容器11とシリンダ12の間の空間18に充填される噴射剤Fとから構成されている。
【0017】
容器11は有底筒状を呈しており、上端中央部に1個のバルブ20が取り付けられている。さらに容器11の上端には、バルブ20を囲むように前記シリンダ12の上端が固定されている。容器11はブリキ、アルミニウム、その他の金属を一体に成形したり、胴部、底部および上部の3つのパーツを組み合わせたりすることにより構成することができる。この実施形態では、胴部11aと底部11bが一体にされ、胴部の上端に円錐状の肩部11cが二重巻き締めにより固着されている。前記バルブ20は、筒状のバルブハウジング21と、そのバルブハウジング21内に上下動自在に収容されるステム22と、そのステム22を常時上向きに付勢するバネ23と、ステム22の途中と係合し、ステム孔を開閉する環状のステムラバー24とを備えている。バルブハウジング21はマウンティングカップ25に固定されており、そのマウンティングカップ25は容器11の肩部11cの上端に形成したビード部11dの内面側にクリンプされている。なお、マウンティングカップ25の径をシリンダ12と同程度にして一緒にクリンプしたり、シリンダ12の径を容器11の開口部より細くしてマウンティングカップ12やバルブハウジング21に予め固定する場合は、容器11として、肩部11cを胴部11aと一体化したモノブロック缶を採用することもできる。
【0018】
前記バルブハウジング21には、側面に開口する第1連通部27と、底部から下方に突出する筒状体からなる第2連通部28とが設けられている。第1連通部27はシリンダ12の第1室15内に直接連通しており、内面には弾力性を有する弁シート27aが取り付けられている。それにより第1連通部27は外側からバルブハウジング21の内部への流入は許すが逆向きの流出は許さない逆止弁作用を奏する。第2連通部28と、第1ピストン13に形成した貫通孔29との間は、可撓性を有するチューブ30を介して連通している。
【0019】
第1ピストン13はたとえば合成樹脂で構成され、その周囲には、シリンダ12の内面との気密性を維持しながら摺動しうるパッキン(図示していない)が設けられている。パッキンはゴムや軟質合成樹脂製のリップ付きパッキンあるいはOリングなどが用いられる
。第1ピストン13の中央には前述の貫通孔29が形成され、その貫通孔を囲むように、第1ピストン13の上面にチューブ連結用の突起31が設けられている。なお逆にチューブ30の端部を貫通孔29に嵌入させてもよい。
【0020】
第2ピストン14も合成樹脂などで形成しうる。この実施形態では第2ピストン14の下端にストッパと逆止弁とを兼ねる突起33が設けられている。突起は底部が閉じた筒状を呈しており、その内部に第2ピストン14の上端に達する孔34が形成され、その孔34は横穴35で容器11の内部の空間18と連通している。その横穴35は弾力性を有するチューブ36で塞がれている。そのため孔34から容器11の内部の空間18へは流体が流れるが、逆方向には流れない逆止弁の作用を奏する。また、突起33は第2ピストン14が下端に達したときでもシリンダ12から抜けない程度の長さを有し、それによりストッパの作用を奏する。
【0021】
前記第1室15および第2室17に内に充填される内容物としては、たとえばパラフェニレンジアミンなどの染料を含有する内容物と前記染料を酸化する過酸化水素を含有する内容物とからなる酸化染毛剤;亜硫酸ナトリウムやチオ硫酸ナトリウムなどの無機塩を含有する内容物と前記無機塩と反応する過酸化水素を含有する内容物とからなり、発熱し、温熱感の得られるクリーム(保湿やクレンジング、マッサージなどの)やフォーム(シェービング、トリートメントなど);カルボキシビニルポリマーなどの水溶性高分子を含有する内容物と前記水溶性高分子を中和するアルカリ剤を含有する内容物とからなり、中和により増粘するゲル(用途は特に限定なく、頭髪用セット剤や消炎鎮痛剤、ほてり止めなど);グリセリンやジエチレングリコールなどの多価アルコールを含有する内容物と前記多価アルコールと水和する少量の水を含有する内容物とからなり、水和により発熱し、温熱感の得られるクリームやフォームなどの2液が反応する内容物;あるいはシャンプーとリンス、クレンジングクリームとスキンケアクリームなどの順次使用する2種類の内容物などがあげられる。容器11とシリンダ12の間の空間18に充填される噴射剤Fとしては、チッ素、二酸化炭素、空気などの圧縮ガスや液化石油ガス、ジメチルエーテルおよびこれらの混合物である液化ガスなどがあげられる。
【0022】
図1のエアゾール製品10を製造するには、シリンダ12と肩部11cとを溶接などで接合し、その肩部11cを胴部11bの上端に二重巻き締めなどで固着する。ついでマウンティングカップ25をビード部11dにクリンプする前に、第1室15に第1の内容物N1を充填する。ついでマウンティングカップ21をビード部11dにクリンプする。ついでバルブ20を通じて噴射剤Fをシリンダ12内に充填する。そのとき、第1連通部27の弁シート27aが逆止弁作用を奏するので、第1室15には噴射剤Fが入らず、第2室17および空間18に噴射剤Fが充填される。さらに容器11を上下逆にして、バルブ20を通じて第2の内容物N2を第2室17に充填する。その場合も同様に第2の内容物N2が第1連通部27から第1室15に入らない。第2室17に第2の内容物N2が充填されるにしたがって、第2室17内に入っていた噴射剤Fは突起33の逆止弁を通って空間18内に移動する。その後、ステム22に押しボタン37を取り付けて完成する。
【0023】
なお、シリンダ12の上端をマウンティングカップ25とビード部11dの間にクリンプする吐出装置の場合は、シリンダ12の上部に形成したフランジをビード部11dに係合しておき、その状態で第1の内容物N1を第1室15に充填する。他の工程は同じでよい。さらにシリンダ12がマウンティングカップ25やバルブハウジング21にあらかじめ固定されている吐出装置の場合は、シリンダ12内にピストン13、14を収容する前に、上下逆にしてシリンダ12内に第1の内容物N1を充填し、ついでピストン13、14をシリンダ12内に収容する。他の工程は前述の充填方法と同じでよい。
【0024】
上記のようにして製造されたエアゾール製品10においては、噴射剤Fが第2ピストン
14を加圧しており、その圧力が第2の内容物に伝えられる。さらにその第2の内容物N2の圧力は第1ピストン13を介して第1室15の第1の内容物N1に伝えられている。このエアゾール製品10を使用するには、通常のエアゾール製品と同様に、押しボタン37を押してバルブ20を開く操作を行うだけでよい。それにより、バルブハウジング21の内圧が減少するので、第1ピストン13および第2ピストン14が共にバルブ側へ移動し、内容物N1およびN2を押し出す。その結果、第1室15内の第1の内容物N1は第1連通部27を通ってバルブハウジング21内に入り、同時に第2室17内の第2の内容物N2はチューブ30を通ってバルブハウジング21内に入る。第1の内容物N1と第2の内容物N2は、バルブハウジング21内で互いに混合された上で、ステム22を通り、押しボタン37の噴孔から外部に噴射される。
【0025】
なお、第1の内容物N1および第2の内容物N2が低粘度の液体で、噴孔が噴霧用のノズルである場合は、混合された内容物が霧状で噴射される。また、第1および第2の内容物N1、N2がゲルやクリーム状ないし発泡性のもので、押しボタン37がスパウトである場合は、スパウトの開口部から混合された内容物がゲルやクリームあるいは泡の状態で吐出される。内容物が2液反応型の場合は、内容物同士がバルブハウジング21の内部で混合されるので、吐出するとすぐに効果が得られる。したがって別個に吐出させる場合のような吐出後に2液を混ぜる操作は不要である。
【0026】
前記実施形態では第2ピストン14に逆止弁作用を奏する突起33を設けているが、容器11の底部11bやマウンティングカップ25に充填用の逆止弁を設けてもよい。その場合は、その逆止弁から噴射剤を充填することができる。また、シリンダ12の上端をマウンティングカップ25の周囲やバルブハウジング21に気密に嵌合したり、あるいは想像線で示すように容器11の底部11bに固定したりする場合は、内容物N1、N2をそれぞれ第1室15および第2室17に充填した後、噴射剤をアンダーカップ充填することができ、充填が容易になる。ただし後者の場合は下端近辺でシリンダ12の内外を連通する開口を設けておく。
【0027】
図2に示すエアゾール製品40では、容器11の上端にマウンティングカップないし蓋体41が設けられ、その蓋体41にシリンダ12の上端が固定され、さらに2個のバルブ20a、20bが取り付けられている。シリンダ12に第1ピストン13および第2ピストン14が摺動自在にかつ気密に嵌合されている点は前述の実施形態と同じである。そして第1バルブ20aのバルブハウジング21は直接第1室15に連通しており、第2バルブ20bのバルブハウジング21はチューブ30を介して第2室17に連通している。また、両方のバルブ20a、20bのステム22を常に同時に押すように、共通の押しボタン37を備えている。
【0028】
このエアゾール製品40においては、第1バルブ20aから第1の内容物N1を第1室15に充填することができ、第2のバルブ20bから第2の内容物N2を第2室17に充填することができるので、充填作業は容易である。また、同時に充填する充填機を採用することもできる。さらに噴射剤についても、蓋体41を容器11の上端に固定する前にアンダーカップ充填をすることができる。このエアゾール製品40では、押しボタン37を押すと、両方のバルブ20a、20bが同時に開放され、両方のピストンがバルブ側へ移動し、第1の内容物N1と第2の内容物N2を押しボタン37の通路(吐出孔)内で混合させながら噴出させることができる。そのためバルブハウジング内には混合されたものが残らない。この場合、内容物を全量吐出した後、内容物をバルブを通じて再充填することができる。
【0029】
なお、第1バルブ20aと第2バルブ20bにそれぞれ独立した押しボタンを設けることもできる。その場合は、第1バルブ20aの押しボタンを押すと、2個のピストン13
、14とその間の第2の内容物N2の全体がピストンとして作用し、容器11の空間18の噴射剤Fの圧力が第1の内容物N1に伝えられる。そのため、第1バルブ20aを通じて第1の内容物N1のみを噴射させることができる。また、第2バルブ20bの押しボタンを押すと、第2ピストン14がバルブ側へ移動し、チューブ30および第2バルブ20bを通して第2の内容物N2のみを噴射させることができる。したがってシャンプーとリンス、クレンジングクリームとスキンケアクリームなどの順次使用する2種類の内容物を充填する吐出装置として好ましい。
【0030】
前記実施形態では1個の共通のシリンダ12に2個のピストン13、14を摺動自在に嵌合させているが、図3に示すエアゾール製品44では、2個の小型のシリンダ12a、12bを採用し、各シリンダにそれぞれピストン13、14を摺動自在に収容している。そのような小型のシリンダとしては、使い捨て注射器に用いられる合成樹脂製のシリンジが好適である。第1シリンダ12aの先端は、バルブハウジング21に対して直接取り付けており、第2シリンダ12bの先端はチューブ30を介してバルブハウジング21に間接的に連結している。第1シリンダ12aおよび第2シリンダ12bの内部は、それぞれ第1室15および第2室17となる。なお第2シリンダ12bの下端は、容器11の底部を突出させて支えるようにしている。
【0031】
この実施形態では、各シリンダ12a、12bが独立しているので、製造および内容物や噴射剤の充填が容易である。なお、この実施形態ではバルブハウジング21は従来公知の合成樹脂製のマウンティングカップ45で保持されており、そのマウンティングカップ45は有底筒状の金属板製のキャップ46を容器11の上端にクリンチすることにより、容器11に固定している。
【0032】
図4に示すエアゾール製品50は、容器11に直接2個のピストン13、14が摺動自在に嵌合されている。第1ピストン13に貫通孔29が形成され、その貫通孔29を囲む突起31とバルブハウジング21の間がチューブ30で連結されている点は、図1などの実施形態と同じである。そして第1ピストン13の上部が第1室15を構成し、第1ピストン13と第2ピストン14の間が第2室を構成しており、さらに第2ピストン14の下方の空間18に噴射剤Fが充填されている。なお、噴出剤Fは容器の底部11bに設けられた、逆止弁機能を有する充填弁51から充填される。
【0033】
なお、チューブ30は第1ピストン13を貫通させて、第2ピストン14に形成した貫通孔に連結してもよい。その場合は第2ピストン14の下方が第2の内容物を充填する第2室となり、第1ピストン13と第2ピストン14の間が噴射剤を充填する空間18となる。この実施形態では第2の内容物は吐出用のバルブから充填できるので、充填弁51は不要であるが、第1ピストン13または第2ピストン14に噴射剤を充填するための、空間18側にのみ流れる逆止弁を設けておく。
【0034】
図5に示すエアゾール製品53は、図1のエアゾール製品10とほぼ同様であるが、容器11を上部54と下部55に分割し、それらを環状の接続部材56で連結している。接続部材56は外周の上下に段部57を有し、それらの段部に容器の上部54および下部55の開口部を嵌合させて連結している。接続部材56の内面は円形であり、かつ上下を連通する複数本の連通溝58が形成されている。そして接続部材56の内周面はシリンダ12の外周に嵌合して固定している。シリンダ12は上端が閉じた有底筒状の形態を有し、その上端59に設けたチューブ連結部60と第1バルブ20aのバルブハウジングとが第1チューブ30aで連結している。それにより第1室15と第1バルブ20aとが連通している。さらに第2バルブ20bのバルブハウジングはシリンダ12の上端59を気密に貫通する第2チューブ30bの一端が連結され、第2チューブ30bの他端は第1ピストン13の貫通孔を介して第2室17と連通している。
【0035】
なおこの実施形態では、第1ピストン13および第2ピストン14の上面は緩い傾斜の円錐状の形態を呈している。シリンダ12の上端59は第1ピストン13の上面の形状に合わせて円錐状にしている。またこの実施形態では、容器11の上部54および下部55を強度が高い合成樹脂で形成し、接着剤、溶着あるいはネジにより接続部材56に固着することができる。また接続部材56を容器11の底部11bや肩部11cに設けてもよく、接続部材56を設けずに上部と下部を溶着などで直接固着してもよい。いずれの場合でも、容器11およびシリンダ12を、たとえばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどの透明な合成樹脂で形成すると、内容物N1、N2の残量がピストン13、14の位置によって容易に分かるので好ましい。
【0036】
なおシリンダ12は、接続部材56で固定せず、容器11の底部11bや肩部11c、胴部11aに接着ないし溶着で固定することもできる。その場合はシリンダ12を容器11の上部54あるいは下部55に固定した後に、上部54と下部55を互いに開口部同士で接合すればよい。
【0037】
上記のいずれの実施形態においても、容器内に充填した噴射剤によって内圧を高め、その内圧により内容物を噴出させるエアゾール製品の形態を有するが、図6に示す吐出装置62では、加圧手段としてポンプ機構63を採用している。このポンプ機構63は、ハウジング64内に収容されるステム22の下端に逆止弁作用を奏するピストン65が取り付けられており、ハウジング64の下端にボール弁からなる吸い込み用の逆止弁66が設けられている。ステム22はバネ23で常時上向きに付勢されている。ハウジング64にはネジ止めのキャップ67によって容器11の口部に取り付けられている。またハウジング64の下端に横向きに形成される第1連通部27と、チューブ30が連結される下向きの第2連通部28とを備えている。第1連通部27の内周には、弾性を有する環状ないし筒状のパッキン68が嵌合されており、それにより外側から内側への流れのみを許す逆止弁としている。さらにハウジング64あるいは容器11の底部などに、外部の大気を導入する空気導入孔ないし隙間が設けられている。
【0038】
この吐出装置62では、押しボタン37を1回押し下げると、ピストン65が下降し、逆止弁の作用でハウジング64内の1回分の内容物が吐出されて噴出が止まる。そして押しボタン37を離すと、バネ23の付勢力でステム22が上昇するときに、図示していない第1ピストンおよび第2ピストンが上昇し、下端の逆止弁66を通じてハウジング64内に次回の噴出のための内容物を吸い上げる。そして第1連通部27と第2連通部28から入ってくる第1の内容物と第2の内容物がハウジング64内で混合される。また、内容物の減少と共に、容器11内に外部の空気を導入するので、容器11の内部が負圧になることがない。なお、内容物の吸い上げは容器11の内部空間とハウジング64内の圧力差に依るものであるから、容器11内の大気圧が加圧手段を構成しているといえる。
【0039】
このようにポンプ機構63を採用する場合は、1回の押しボタンの操作による噴出量が定まるので、医薬品など、1回の使用量が制限されている内容物を吐出させる場合に過剰な使用を防止しうる利点がある。さらに内圧が大気圧と同じであるため、ネジ止めのキャップ67で容器11の口部を開閉自在に閉じることができる。そのため、内容物の詰め替えも容易である。
【符号の説明】
【0040】
10 エアゾール製品
11 容器
12 シリンダ
13 第1ピストン
14 第2ピストン
15 第1室
N1 第1の内容物
17 第2室
N2 第2の内容物
18 空間
F 噴射剤
20 バルブ
11a 胴部
11b 底部
11c 肩部
21 バルブハウジング
22 ステム
23 バネ
24 ステムラバー
25 マウンティングカップ
11d ビード部
27 第1連通部
28 第2連通部
27a 弁シート
29 貫通孔
30 チューブ
31 突起
33 突起
34 孔
35 横穴
36 チューブ
37 押しボタン
40 エアゾール製品
41 蓋体
20a、20b バルブ
44 エアゾール製品
12a、12b シリンダ
45 マウンティングカップ
46 キャップ
50 エアゾール製品
51 充填弁
53 エアゾール製品
54 上部
55 下部
56 接続部材
57 段部
58 連通溝
57 上端
60 チューブ連結部
30a 第1チューブ
30b 第2チューブ
62 吐出装置
63 ポンプ機構
64 ハウジング
65 ピストン
66 逆止弁
67 キャップ
68 パッキン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器と、
その容器内に収容される容積変動自在の第1室と第2室と
前記第1室と連通する第1バルブと、
前記第2室と連通する第2バルブと、
前記第1室および第2室にそれぞれ充填される、互いに異なる吐出すべき内容物と、
前記容器内の内部空間に充填され、第1室および第2室を加圧する噴射剤とを備えている2液内容物の吐出装置。
【請求項2】
前記第1バルブと第2バルブが2つの分離したバルブであり、容器の上端に設けられた蓋体によって固定されている、
請求項1記載の吐出装置。
【請求項3】
前記第1バルブおよび第2バルブに、それらのステムを同時に押すように連結された共通の押しボタンを設けている請求項1記載の吐出装置。
【請求項4】
前記第1バルブおよび第2バルブにそれぞれ独立した押しボタンを設けている請求項1記載の吐出装置。
【請求項5】
前記容器が合成樹脂製である、請求項1記載の吐出装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−140353(P2011−140353A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−18815(P2011−18815)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【分割の表示】特願2001−232706(P2001−232706)の分割
【原出願日】平成13年7月31日(2001.7.31)
【出願人】(391021031)株式会社ダイゾー (130)
【Fターム(参考)】