説明

2相カウンタおよびカウンタシステム

【課題】カウント動作を高速でも容易に行えるようにすること。
【解決手段】A相パルスの前パルスエッジとB相パルスの前パルスエッジとのエッジ位相差と、A相パルスの後パルスエッジとB相パルスの前パルスエッジとのエッジ位相差とを検出し、上記両エッジ位相差の比率を演算し、上記エッジ位相差比率に対応して割り当てられたカウント値を演算する2相カウンタ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の生産ラインでの製品計数などに利用できる電子カウンタにかかり、特には、2つのA相、B相パルスの位相差に基づいてカウント動作を行う2相式の電子カウンタ(以下、2相カウンタ)およびカウンタシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子カウンタには、例えばキースイッチ等の操作であらかじめ設定された数値であるプリセット値まで入力パルス列を計数すると制御出力するプリセットカウンタや、計数入力の数値を表示するトータルカウンタ等がある。また、エンジン回転数に比例するパルス信号をカウントする回転速度計であるタコメータも電子カウンタの1種である。
【0003】
このような各種電子カウンタのうちの1つである2相カウンタには、例えば2つのエンコーダからそれぞれ入力するパルスをA相、B相パルスとし、それら両パルスの位相差に応じたパルス個数を加算、減算するものがある。特許文献1参照。
【0004】
しかしながら、従来の2相カウンタでは、単位時間当たりでのカウントすべきパルス個数が多数となると、高速カウントが困難となっていた。
【特許文献1】特開平11−281404
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、A相、B相パルスの位相差に応じたパルス数のカウントを不要となし、高速でもカウント動作を容易に行うことができる2相カウンタを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による2相カウンタは、カウント値に応じてA相パルスの前後2つのパルスエッジに対して当該両パルスエッジ間でのB相パルスのパルスエッジの相対的位置が変化するカウンタシステムにおいて用いる2相カウンタであって、A相パルスの前後2つのパルスエッジのうちの一方のパルスエッジとB相パルスの上記パルスエッジとのエッジ位相差と、A相パルスの他方のパルスエッジとB相パルスの上記パルスエッジとのエッジ位相差とを検出するエッジ位相差検出手段と、上記両エッジ位相差の比率を演算するエッジ位相差比率演算手段と、上記演算したエッジ位相差比率に対応して割り当てられたカウント値を演算するカウント値演算手段と、を含むことを特徴とするものである。
【0007】
本発明では、上記両パルスのエッジ位相差比率に対応して割り当てられたカウント値を演算するものであるから、カウント値演算が容易であると共に、このエッジ位相差比率に対応してカウント値を割り当てるので、従来のように両パルスの位相差に応じたパルス個数をカウントする必要がなくなり、高速カウントが可能となる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、A相、B相パルスの位相差に応じたパルス数のカウントが不要であり、カウント動作を高速でも容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、添付した図面を参照して、本発明の実施の形態に係る2相カウンタを説明する。図1は、2相カウンタを用いたカウンタシステムを示す。図1を参照して、被カウント対象であるモータ1の回転に応じて、パルス発生手段3はA相、B相パルスを出力すると共に、A相パルスの前後2つのパルスエッジe1a,e2a間におけるB相パルスの前パルスエッジe1bの相対的位置をモータ1の回転速度に応じて変化させるようになっている。2相カウンタ5は、パルス発生手段3からA相パルスとB相パルスとを入力し、両パルスのパルスエッジ間の位相差に基づいてカウント値cvを演算する。このパルスエッジ間の位相差とは、A相パルスの前パルスエッジe1aとB相パルスの前パルスエッジe1bとの位相差Δp1と、A相パルスの後パルスエッジe2aとB相パルスの前パルスエッジe1bとの位相差Δp2である。このカウント値cvは、モータ1の回転数データとして制御手段であるCPU7に入力される。CPU7は、カウント値cvに従い、例えばモータ1の回転を制御する。
【0010】
図2を参照して、2相カウンタ5は、A相パルス用前パルスエッジ検出手段(第1手段)51によりA相パルスの前パルスエッジe1aを検出する。B相パルス用前パルスエッジ検出手段(第2手段)52により、B相パルスの前パルスエッジe1bを検出する。A相パルス用後パルスエッジ検出手段(第3手段)53によりA相パルスの後パルスエッジe2aを検出する。
【0011】
第1と第2手段51,52の検出出力はエッジ位相差演算手段(第4手段)54に入力され、A相パルスの前パルスエッジe1aとB相パルスの前パルスエッジe1bとのパルスエッジ位相差Δp1が第4手段54で演算される。
【0012】
第2と第3手段52,53の検出出力はエッジ位相差演算手段(第5手段)55に入力され、A相パルスの後パルスエッジe2aとB相パルスの前パルスエッジe1bとのパルスエッジ位相差Δp2が第5手段55で演算される。
【0013】
第4手段54と第5手段55との演算出力はカウント値演算手段(第6手段)56に入力される。第6手段56によりA相パルスの前パルスエッジe1aとB相パルスの前パルスエッジe1bとの位相差Δp1と、A相パルスの後パルスエッジe2aとB相パルスの前パルスエッジe1bの位相差bとのエッジ位相差比率(Δp1/Δp2)が演算される。テーブルメモリ57には、エッジ位相差比率(Δp1/Δp2)とカウント値cvとが対応付けして記憶されている。
【0014】
エッジ位相差比率(Δp1/Δp2)が、図3(a)で示すΔp1:Δp2=0:0のときは、カウント値cv=「0」、図3(b)で示すΔp1:Δp2=90°:90°=1:1のときは、カウント値cv=「1」、図3(c)で示すΔp1:Δp2=60°:120°=1:2のときは、カウント値cv=「2」、図3(d)で示すΔp1:Δp2=45°:135°=1:3のときは、カウント値cv=「3」、…というように、エッジ位相差比率(Δp1/Δp2)ごとに対応してカウント値cvが割り当てられている。
【0015】
第6手段であるカウント値演算手段56は、演算したエッジ位相差比率(Δp1/Δp2)をそれに対応するテーブルメモリ57に記憶されているカウント値cvを読み込み、CPU7に出力するようになっている。
【0016】
以上説明したように本実施の形態の2相カウンタでは、A相パルスの前パルスエッジとB相パルスの前パルスエッジとのエッジ位相差と、A相パルスの後パルスエッジとB相パルスの前パルスエッジとのエッジ位相差とを検出し、上記両エッジ位相差の比率を演算し、上記エッジ位相差比率に対応して割り当てられたカウント値を演算するようにしたので、カウント値演算が容易であると共に、このエッジ位相差比率に対応してカウント値を割り当てるので、従来のように両パルスの位相差に応じたパルス個数をカウントする必要がなくなり、高速カウントが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は本発明の実施の形態に係る2相カウンタを含むカウンタシステムの構成を示す図である。
【図2】図2は実施の形態の2相カウンタの回路構成を示す図である。
【図3】図3は上記2相カウンタの動作説明に供するタイムチャートである。
【符号の説明】
【0018】
1 モータ
3 パルス発生手段
5 2相カウンタ
51 A相パルス用前パルスエッジ検出手段
52 B相パルス用前パルスエッジ検出手段
53 A相パルス用後パルスエッジ検出手段
54,55 エッジ位相差演算手段
56 カウント値演算手段
57 テーブルメモリ
7 CPU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カウント値に応じてA相パルスの前後2つのパルスエッジに対して当該両パルスエッジ間でのB相パルスのパルスエッジの相対的位置が変化するカウンタシステムにおいて用いる2相カウンタであって、
A相パルスの前後2つのパルスエッジのうちの一方のパルスエッジとB相パルスの上記パルスエッジとのエッジ位相差と、A相パルスの他方のパルスエッジとB相パルスの上記パルスエッジとのエッジ位相差とを検出するエッジ位相差検出手段と、
上記両エッジ位相差の比率を演算するエッジ位相差比率演算手段と、
上記演算したエッジ位相差比率に対応して割り当てられたカウント値を演算するカウント値演算手段と、
を含むことを特徴とする2相カウンタ。
【請求項2】
エッジ位相差比率に対応したカウント値をテーブル化して記憶する手段を含み、上記カウント値演算手段は、上記記憶手段内のテーブルを参照して上記エッジ位相差比率からカウント値を得る、ことを特徴とする請求項1に記載の2相カウンタ。
【請求項3】
カウントされるべき制御対象の動作に応じてA相と、B相2つのパルスを発生させるもので、A相パルスの前後2つのパルスエッジに対して当該両パルスエッジ間でのB相パルスのパルスエッジの相対的位置をその制御対象のカウント値に応じて変化させるパルス発生手段と、
上記請求項1または2に記載の2相カウンタと、
上記2相カウンタのカウント出力を用いて上記制御対象を制御する制御手段と、
を含むカウンタシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−135974(P2010−135974A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−308377(P2008−308377)
【出願日】平成20年12月3日(2008.12.3)
【出願人】(000167288)光洋電子工業株式会社 (354)
【Fターム(参考)】