説明

2軸ガスタービン

【課題】シンプルサイクルのガスタービンに比べて燃焼器に流入する流体の流量が増加するようなシステムに2軸式ガスタービンを適用した場合に、ガスタービンの出力および効率の向上を図ると共に、圧縮機駆動力と高圧タービン出力をバランスさせてガスタービンを安定に運転する、信頼性を向上した2軸式ガスタービンを提供する。
【解決手段】高圧タービン3Hを駆動する作動流体の一部を、高圧タービン3Hに流入させることなく低圧タービン3Lに流入させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮機駆動用の高圧タービンと出力用の低圧タービンとが別軸に構成されており、シンプルサイクルに比べて燃焼器に流入する流体の流量が増加するガスタービンシステム、例えば高湿分空気利用システム,蒸気注入システム,窒素注入システム,低カロリー燃料焚きシステムなどに適用した2軸ガスタービンに関する。
【背景技術】
【0002】
圧縮機を駆動する高圧タービンと、発電機やポンプ等を駆動する低圧タービンが別軸構成となっている2軸ガスタービンに関する技術としては、例えば特許文献1や特許文献2に記載されたものがある。
【0003】
2軸ガスタービンは、ポンプやスクリューなどの被駆動機(負荷)の回転数が低い場合でも、圧縮機と高圧タービンを高速回転させることが可能となるため、低圧タービンの低回転数域でのトルクを大きくすることができる。そのため、2軸ガスタービンはポンプやスクリューなどの機械駆動用として用いられるが、低圧タービンで発電機を駆動する発電用として用いることも可能であり、減速機なしで使用する場合には、圧縮機を高速回転させることで高効率化が図れる利点があり、また、減速機を使用する場合でも、減速比を小さくできるため、コスト低減,効率向上に利点がある。
【0004】
なお、特許文献1の図5には、ガスタービン作動流体(たとえば空気)に湿分を添加して加湿し、再生熱交換器によってガスタービン排ガスの持つ熱エネルギーを回収することで、出力および効率の向上を図る高湿分利用ガスタービンシステムの技術が記載されている。
【0005】
一方、ガスタービンの作動流体(例えば空気)に水分を添加して加湿し、この加湿空気によってガスタービンから排出される排ガスの持つ熱エネルギーを回収してガスタービンに供給するように構成することで、出力および効率の向上を図る高湿分利用ガスタービンシステムの技術が特許文献3に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−83081号公報(図5)
【特許文献2】特開平5−18271号公報
【特許文献3】WO00/25009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
高湿分利用ガスタービンシステムは、圧縮機で圧縮した圧縮空気に湿分を添加して、燃焼器に供給する作動流体の流量を増加させることによってタービン出力を増加させるものである。しかし、2軸式ガスタービンにこの高湿分利用ガスタービンシステムの技術を適用すると、加湿によって圧縮機を駆動する高圧タービンの出力が大きくなり、そのままでは圧縮機を過大回転させることになる。圧縮機の過大回転は、圧縮機および高圧タービンの翼振動および軸振動と共振して回転部品の破損を招く可能性があるため好ましくない。
【0008】
そこでこの圧縮機の過大回転を防止する第1の方策として、燃焼器に供給する燃料流量を減少させて圧縮機の回転数を所定の値に制御する方法が考えられるが、タービン入口温度の低下によりガスタービンの効率が低下し、高湿分利用ガスタービンシステムの本来の狙いである効率向上効果が低下する。
【0009】
また上記圧縮機の過大回転を防止する第2の方策として、圧縮空気の加湿時に高圧タービンと低圧タービンの負荷配分が最適となるように両者の出力を機械的に予め設定しておく方法も考えられる。
【0010】
しかしながら、ガスタービンの起動時など圧縮空気を加湿していないときには、逆に高圧タービンの出力が圧縮機の駆動に必要な動力よりも小さいため、圧縮機が過小回転となる。圧縮機の過小回転は、過大回転の場合と同様、圧縮機および高圧タービンの翼振動および軸振動と共振して回転部品の破損につながることに加え、ガスタービンの作動流体の流量および圧力比の減少,圧縮効率の低下につながるため好ましくない。また、上記のように高圧タービンと低圧タービンの負荷配分を予め設定したガスタービンの場合には、タービン翼は高湿分利用ガスタービン専用となり、シンプルサイクル用のタービン翼と共通化できないのでタービン翼の製造コストが高価となる。
【0011】
上記と同様な課題は、燃焼器に供給される作動流体の流量がシンプルサイクルに対して増加するようなシステムに共通である。そのようなシステムとしては、例えば、ガスタービンの排ガスの熱を利用して蒸気を作り利用するコンバインドサイクルやコジェネレーションなどにおいて、余剰な蒸気をガスタービンの燃焼器に注入することによって効率を向上させるようなシステムが考えられる。また、空気分離装置等を備えたプラントで余剰となった窒素を、出力増加や低NOx化のためにガスタービン燃焼器に注入するようなシステムでも同様の課題が生じる。さらに、低カロリー燃料焚きのガスタービンでは、多量の燃料を燃焼させる必要があり、その分、作動流体の流量が増加するため、2軸ガスタービンに適用する際には、上記と同様の課題が生じる。
【0012】
本発明の目的は、シンプルサイクルのガスタービンに比べて燃焼器に流入する流体の流量が増加するようなシステムに2軸式ガスタービンを適用した場合に、ガスタービンの出力および効率の向上を図ると共に、圧縮機駆動力と高圧タービン出力をバランスさせてガスタービンを安定に運転する、信頼性を向上した2軸式ガスタービンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明では、定格運転時の燃焼温度をシンプルサイクルにおける定格燃焼温度と同等にすると、圧縮機の回転数が定格回転数と比べて過回転となる場合に、高圧タービンを駆動する作動流体の一部を、高圧タービンに流入させることなく低圧タービンに流入させるように構成したものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ガスタービンの効率向上を図ると共に、圧縮機駆動力と高圧タービン出力をバランスさせてガスタービンを安定に運転する、信頼性を向上した2軸式ガスタービンが実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施例に係る高湿分利用ガスタービンシステムの構成を表すシステムフロー図である。
【図2】本発明の第2の実施例に係る高湿分利用ガスタービンシステムの構成を表すシステムフロー図である。
【図3】本発明の第3の実施例に係る高湿分利用ガスタービンシステムの構成を表すシステムフロー図である。
【図4】本発明の第4の実施例に係る高湿分利用ガスタービンシステムの構成を表すシステムフロー図である。
【図5】本発明の第5実施例である2軸式ガスタービンで分岐空気を供給する低圧タービンの上流側近傍の構造を示す部分断面図である。
【図6】本発明の第6実施例である2軸式ガスタービンで分岐空気を供給する低圧タービンの上流側近傍の構造を示す部分断面図である。
【図7】本発明の第7実施例である2軸式ガスタービンの分岐空気を供給する低圧タービンの上流側近傍の構造を示す部分断面図である
【図8】本発明の第7実施例である2軸式ガスタービンの低圧タービンに設置された初段動翼の断面を示す翼断面図である。
【図9】本発明の第8実施例である2軸式ガスタービンの分岐空気を供給する低圧タービンの上流側近傍の構造を示す部分断面図である。
【図10】本発明の第9実施例である2軸式ガスタービンの分岐空気を供給する低圧タービンの上流側近傍の構造を示す部分断面図である。
【図11】本発明の第10実施例である2軸式ガスタービンの分岐空気を供給する低圧タービンの上流側近傍の構造を示す部分断面図である。
【図12】本発明の第11実施例である2軸式ガスタービンを備えたコンベンショナルなガスタービンシステムの全体構成を示す概略系統図である。
【図13】本発明の第12実施例である2軸式ガスタービンを備えたガスタービンシステムの全体構成を示す概略系統図である。
【図14】本発明の第13実施例である2軸式ガスタービンを備えたガスタービンシステムの全体構成を示す概略系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、圧縮機駆動用高圧タービンと出力用低圧タービンが別軸構成となっている2軸ガスタービンに、高湿分利用ガスタービンシステムなどを適用する際、圧縮機とタービンの動力マッチングを取りつつ、高効率に運用するための構成および制御方法に関するものである。
【0017】
本発明は特に、定格運転時の燃焼温度をシンプルサイクルにおける定格燃焼温度と同等にすると、圧縮機の回転数が定格回転数と比べて過回転となる2軸ガスタービンに関するものである。以下各実施例にて説明するが、例えば、加湿により作動流体である空気が加湿されて作動流体の流量が増える高湿分利用ガスタービンや、余剰蒸気や窒素を燃焼器や作動媒体に注入するガスタービン、通常用いられる天然ガスよりも発熱量が少ない低カロリーガス焚きガスタービンなどがこれに相当する。これらのガスタービンは、シンプルサイクルのガスタービンに比べて燃焼器に流入する流体の流量が増加するようなシステムになっているからである。これらのガスタービンをシンプルサイクルと同等の燃焼温度で運転すると、燃焼器から高圧タービンに供給される流体の流量が増えることにより、高圧タービン及び圧縮機の回転数が増加し、定格回転数と比べて過回転となる。なお定格回転数とは、シンプルサイクルのガスタービンを定格燃焼温度で定格運転したときの回転数を意味する。
【0018】
以下、図面を用いて、2軸式ガスタービンに本発明を適用した場合の実施の形態について説明する。
【実施例1】
【0019】
図1を用いて高湿分ガスタービンシステムに本発明を適用した2軸式ガスタービンの実施例について説明する。
【0020】
図1は本発明の第1実施例である高湿分ガスタービンシステムを構成する2軸式ガスタービンの全体構成を表すシステムフロー図である。
【0021】
図1において、発電用の高湿分ガスタービンシステムに設置された2軸式ガスタービンは、空気を圧縮して高圧空気を生成する圧縮機1と、供給された燃料200を燃焼用空気と混合させて燃焼し高温の燃焼ガスを生成する燃焼器2と、この燃焼器2で生成した高温の燃焼ガスによって駆動される高圧タービン3Hと、高圧タービン3Hを流下した高圧タービン排ガスによって駆動される低圧タービン3Lと、圧縮機1で生成した高圧空気を加湿する増湿器4と、この増湿器4で加湿した加湿空気を前記低圧タービン3Lから排出した低圧タービン排ガスとの熱交換によって加熱して前記燃焼器2及び前記低圧タービン3Lの入口に供給する高温空気を生成する再生熱交換器5とを備えて構成され、前記低圧タービン3Lによって回転される発電機20により発電して電力を得ている。
【0022】
前記低圧タービン3Lの入口に設置された低圧タービンの初段静翼に供給されるパージ空気は、圧縮機1の途中段から抽気して空気流路42aを通じてタービンのケーシング内側に形成したキャビティに導かれるパージ空気42を用いている。
【0023】
圧縮機1と高圧タービン3Hとはシャフト21Hで連結されており、両者の回転数は等しい。また低圧タービン3Lと発電機20とはシャフト21Lで連結されており、両者の回転数は等しい。
【0024】
前記低圧タービン3Lと発電機20は図示されていない減速機を介して連結されていてもよく、その場合は低圧タービン3Lの回転数は発電機20の回転数に対し、減速機の持つ減速比分だけ大きくなる。
【0025】
圧縮機1と高圧タービン3Hを連結するシャフト21Hは、低圧タービン3Lと発電機20を連結するシャフト21Lと連結されていないため、圧縮機1の回転数と低圧タービン3Lの回転数は違っていても使用が可能であり、これらの回転数を自由に設定することができる。
【0026】
このような構成の2軸式ガスタービンは、前記発電機20をポンプやスクリューなどの被駆動機に替えてこれらの被駆動機の回転数が低い場合でも、圧縮機1と高圧タービン3Hを高速回転させることが可能となるため、被駆動機を駆動する低圧タービン3Lの低回転数域でのトルクを大きくすることができる。
【0027】
次に図1に示した2軸式ガスタービンを備えた高湿分ガスタービンシステムの運転方法について説明すると、空気100(大気圧)を圧縮機1で圧縮した高圧空気は抽気空気103として前記圧縮機1から抽気される。
【0028】
この抽気空気103は圧縮機1から増湿器4に供給され、この増湿器4において水分を添加して加湿空気104を生成する。
【0029】
増湿器4で抽気空気103を加湿する加湿方法としては濡壁塔或いは増湿塔による加湿を採用してもよく、或いは抽気空気103の流路中にスプレイノズルを配設して水を噴霧する加湿方法を採用してもよい。
【0030】
前記増湿器4で湿分を添加された加湿空気104は再生熱交換器5に供給され、前記再生熱交換器5にて低圧タービン3Lから排出された低圧タービン排ガス108との熱交換で加熱されて昇温した増湿空気105となり、再生熱交換器5からこの昇温した増湿空気105を燃焼器2に供給して前記燃焼器2にて燃料200と混合して燃焼し、高温の燃焼ガス106を生成する。
【0031】
上記した構成の高湿分ガスタービンシステムを採用することによって、再生熱交換器5において低圧タービン3Lから排出された低圧タービン排ガス108の熱エネルギーを燃焼器200で燃焼させる昇温した増湿空気105に回収できるため、前記燃焼器2に供給する燃料200の供給量を減少させることが可能となり、ガスタービンサイクルの効率が向上する。
【0032】
また、増湿器4で加湿空気104を生成する湿分を添加することによって昇温した増湿空気105となって前記燃焼器2で燃焼し、高温の燃焼ガス106となって高圧タービン3H及び低圧タービン3Lを駆動する作動流体が増加するので、ガスタービンサイクルの出力が増加する。
【0033】
さらに、増湿器4での湿分添加によって加湿空気104の温度が低下した効果と、流量が増加した効果によって、再生熱交換器5にて低圧タービン3Lから排出された低圧タービン排ガス108の熱エネルギーを昇温した増湿空気105に熱交換して回収する熱回収量を増加させることができるので、高湿分ガスタービンサイクルの効率が向上する。
【0034】
前記高湿分ガスタービンシステムにおいては、再生熱交換器5から昇温した増湿空気105を燃焼器2に供給する高温空気の供給流路の途中に分岐流路18が配設されており、燃焼器2に供給される増湿空気105の一部が分岐されて分岐流路18を流下する分岐した増湿空気110となる。
【0035】
この分岐した増湿空気110は後述するように低圧タービン3Lの上流側において、燃焼器2から供給された高温の燃焼ガス106によって駆動された高圧タービン3Hから流下した高圧タービン排ガス107と合流する。
【0036】
また、分岐流路18には流量制御機構となる流量調節弁19が設置されていて、この流量調節弁19を調節することにより分岐した増湿空気110の流量を制御可能としている。
【0037】
燃焼器2で燃焼して生成された高温の燃焼ガス106は高圧タービン3Hに供給されてこの高圧タービン3Hを駆動する。
【0038】
そしてこの高圧タービン3Hを流下した高圧タービン排ガス107は、上述した分岐流路18を流下した分岐した増湿空気110と合流した後に、低圧タービン3Lに供給されてこの低圧タービン3Lを駆動し、低圧タービン排ガス108となって低圧タービン3Lから排出される。
【0039】
低圧タービン3Lから排出された低圧タービン排ガス108は、低圧タービン3Lの下流側に設置された再生熱交換器5に供給され、この再生熱交換器5にて増湿器4から供給される加湿空気104と熱交換して前記再生熱交換器5から燃焼器2及び低圧タービン3Lの入口側に供給される高温空気105に熱回収される。
【0040】
再生熱交換器5を流下した低圧タービン排ガス108は、該再生熱交換器5の下流側にそれぞれ設置された給水加熱器22,排ガス再加熱器23,水回収装置24を順次流下し、排気ガス109として排気塔25から大気中に放出される。
【0041】
前記水回収装置24では流下する低圧タービン排ガス108に水をスプレーして低圧タービン排ガス108に含まれる水分を水として回収し、この回収した水をポンプ29によって水処理装置26に供給して浄化し、水処理装置26で浄化した水をポンプ28によって給水加熱器22に補給水301として供給するように構成している。
【0042】
また前記水回収装置24にはスプレー水をポンプ29によって循環させる循環流路が配設されており、この循環流路にスプレー水を冷却させる熱交換器27が設置されている。
【0043】
また前記給水加熱器22では水処理装置26から供給された補給水301を該給水加熱器22を流下する低圧タービン排ガス108と熱交換させて熱回収し、この給水加熱器22で昇温した補給水301を前記増湿器4に加湿水として供給するように構成している。
【0044】
そして給水加熱器22から増湿器4との間には流量調節弁311が設置されており、前記増湿器4供給する加湿水の流量を調節できるように構成している。
【0045】
前記した高湿分ガスタービンサイクルに関して、その効率向上効果を排気ガスの側から見てみると、再生熱交換器5及び給水加熱器22にて低圧タービン排ガス108から熱エネルギーを回収した結果、ガスタービンサイクルの効率が向上し、排気塔25から排気ガス109となって大気中に放出される無駄な熱エネルギーが減少するので、その分だけ排気ガス109の温度を低くすることができる。
【0046】
また前記した高湿分ガスタービンサイクルに備えられた2軸式ガスタービンでは、高圧タービン3Hで得られた駆動力はシャフト21Hを通じて圧縮機1に伝えられて該圧縮機1を回転させ、この圧縮機1によって空気100の加圧に用いられる。
【0047】
また、低圧タービン3Lで得られた駆動力はシャフト21Lを通じて発電機20に伝えられて該発電機20を駆動し、この発電機20によって発電して電力を得ている。
【0048】
尚、低圧タービン3Lによって駆動される被駆動機は、発電機20に替えてポンプやスクリューなどであってもよい。
【0049】
次に、この高湿分ガスタービンサイクルに設置した2軸式ガスタービンにおける圧縮機1と高圧タービン3Hの動力をバランスさせる方法について説明する。
【0050】
まず、増湿器4に供給される加湿用の加湿水の流量がゼロで、かつ再生熱交換器5から供給された高温空気105は全量が燃焼器2に流入して高圧タービン3Hに供給されており、高温空気105のうち分岐流路18を経由して低圧タービン3Lの入口に供給される増湿空気110の流量がゼロの場合を考える。
【0051】
このような構成のガスタービンサイクルは再生サイクルに相当するが、圧縮機1と高圧タービン3Hとの間で作動流体の流量の増加が無いため、動力バランスの面から見るとシンプルサイクルの場合と同等である。
【0052】
この場合、定格回転数かつ定格燃焼温度の条件で運転するガスタービンサイクルは、圧縮機1と高圧タービン3Hの動力がバランスするように設計されている。
【0053】
次に、上記の圧縮機1と高圧タービン3Hの動力がバランスした状態から増湿器4に供給される加湿用の水分流量が高湿分ガスタービンシステムの所定の流量まで増加した場合を考える。
【0054】
この場合、増湿器4での湿分添加によって流量が増加した作動流体の全量が燃焼器2に流入し、燃焼によって燃焼ガス106となって高圧タービン3Hを駆動する。
【0055】
ところが、このままでは高圧タービン3Hの出力が増大して圧縮機1が過回転になってしまうので、過回転を防止するために燃焼器2に供給する燃料200の流量を減少するように制御し、燃焼器2を定格燃焼温度よりも低い燃焼温度で燃焼することによって圧縮機1と高圧タービン3Hの動力をバランスさせる。
【0056】
しかしながら燃焼温度が定格燃焼温度よりも低いとガスタービンの効率が低くなるため、2軸式ガスタービンを用いて高湿分ガスタービンシステムを構成しても、期待される効率向上が小さくなってしまうことになる。
【0057】
そこで、再生熱交換器5から燃焼器2に供給する昇温された増湿空気105の一部を分岐した増湿空気110として分岐する分岐流路18に設けた分岐流量制御機構の流量調節弁19を操作して、該分岐流路18を経由して低圧タービン3Lに供給する分岐した増湿空気110の流量を増加させた場合を考える。
【0058】
例えば増湿器4で添加した湿分量に相当する流量の分岐した増湿空気110を低圧タービン3Lの上流に分岐して供給させると、高圧タービン3Hへ流入する流量が無加湿時の流量と同等になって圧縮機1と高圧タービン3Hの動力がバランスするため、燃焼器2での燃焼温度は定格燃焼温度まで上昇させることができて、ガスタービンの効率を高く維持させることができる。
【0059】
分岐した増湿空気110の持つ圧力エネルギーは低圧タービン3Lで回収されるため、例えば湿分添加による作動流体増加分を放風してバランスさせる場合に比べて、圧縮機1によって分岐した増湿空気110の圧縮に費やした圧縮動力が無駄にならない。
【0060】
すなわち、上述の高湿分ガスタービンシステムの場合、定格運転時の燃焼温度を、シンプルサイクルにおける定格燃焼温度とした場合に、圧縮機1の回転数が定格回転数と比べて過回転となってしまうが、これに対し、高圧タービン3Hを駆動する作動流体である増湿空気110の一部を、高圧タービン3Hに流入させることなく低圧タービン3Lに流入させると、効率を向上させた上で、圧縮機駆動力と高圧タービン出力をバランスさせてガスタービンを安定に運転することができる。
【0061】
なお、本実施例における高湿分ガスタービンサイクルに備えた2軸式ガスタービンにおいては、分岐した増湿空気110の質量流量は、圧縮機1の吸い込み空気100の質量流量の10〜25%となる。
【0062】
これは、分岐空気110の流量が、増湿器4で添加した湿分量に相当する流量とほぼ同等であるときに、高圧タービン3Hと流入する流量が無加湿時の流量と同等になって、圧縮機1と高圧タービン3Hの動力がバランスするためである。
【0063】
添加湿分量はシステムの熱効率が最大となるように定められている。添加湿分量が少ないと、給水加熱器22で回収した熱量のうち作動流体に加わる量が減少するため、熱効率は高くならない。逆に添加湿分量が多すぎると、排ガス108中に含まれる湿分が増えるため、その湿分の潜熱が有効に利用されない分、熱効率は高くならない。このように、添加湿分量には最適値が存在する。この添加湿分量に応じて決まる分岐空気110の流量は、10〜25%が望ましい。
【0064】
かくして、2軸式ガスタービンを高湿分ガスタービンシステムに適用した場合でも、圧縮機1の過大回転や過小回転を防止しつつ、圧縮機1の駆動力と高圧タービン3Hの出力をバランスさせて2軸式ガスタービンを安定に運転することができ、回転部品の翼振動および軸振動に対する信頼性を高め、部品寿命を長くすることができる。
【0065】
また、タービン入口温度はシンプルサイクルで想定した温度を保つことが可能となるため、高湿分利用ガスタービンシステムを適用することによるガスタービンの効率向上効果を、2軸ガスタービンでも享受することができる。
【0066】
さらに、高圧タービン,低圧タービンの両方を、シンプルサイクルと高湿分利用ガスタービンシステムで共通にできるため、高温部品であるタービン翼の開発・製作コスト,部品管理コストを低減できる。
【0067】
加えて、開発に労力,コスト,期間がかかるタービン翼を共通化したまま、シンプルサイクル,再生サイクルおよび高湿分利用ガスタービンシステムという出力,効率の異なる3種類の製品ラインナップをそろえることができる上、タービン翼は全製品共通なので、寿命等の信頼性評価を一元的に行うことができ、より信頼性の高い製品群が構築できる。
【0068】
このような効果は、圧縮機で圧縮された空気を含む作動流体の流量を増加させる、増湿器4のような流量増加手段と、増加した作動流体と燃料とを燃焼させて燃焼ガスを生成する燃焼器2と、圧縮機1と同軸に接続され、燃焼器2で生成された燃焼ガスにより駆動する高圧タービン3Hと、高圧タービン3Hからの排ガス(高圧タービン3Hを駆動した燃焼ガス)により駆動する低圧タービン3Lとを備え、高圧タービン3Hと低圧タービン3Lとをそれぞれ独立した軸構造とした2軸ガスタービンにおいて、流量増加手段である増湿器4で加湿され、流量を増加された増湿空気である作動流体の一部を、燃焼器2に供給される前に分岐して低圧タービン3Lに導く分岐経路である分岐流路18を備えることにより得ることができる。後述するが、具体的に分岐流路18は、高圧タービン3Hを駆動した後の排気ガスを、低圧タービン3Lに導く流路である、高圧タービン3Hの最終段動翼と、低圧タービン3Lの初段静翼の間のガスパス中に接続されていればよい。
【0069】
ところで、分岐空気110を低圧タービン3Lに注入すると、低圧タービン入口圧力がその分高くなるため、高圧タービン3Hの出口圧力も高くなる。そのため高圧タービン3Hの膨張比が若干小さくなって、出力も若干低下する。そこで、より好ましくは、分岐空気110の流量は湿分添加相当量よりもやや少なくし、高圧タービン3Hに流入する空気量は、無加湿時に対してやや多くするほうがよい。したがって、このようにして定格燃焼温度において圧縮機と高圧タービンをバランスさせた際は、圧力比は無加湿時に比べてやや高くなる状態がより好ましい。
【0070】
すなわち、分岐経路である分岐流路18で分岐する流体の流量を、流量増加手段である増湿器4による流量増加分よりも少ない流量範囲で制御する分岐流量調節機構を備えていればよい。
【0071】
また、上記説明した本実施例の2軸ガスタービンは、新設プラントのみに適用が限られるものではなく、既設の例えばシンプルサイクルガスタービンや再生サイクルガスタービンを、高湿分ガスタービンシステムを適用した2軸ガスタービンプラントに改造する場合にも好適である。以下、既設のシンプルサイクルの2軸ガスタービンを、高湿分ガスタービンシステムを適用したプラントに改造する場合について、図1を用いて説明する。
【0072】
図1に示す2軸ガスタービンおいて、既設のシンプルサイクルガスタービンの基本構成としては、圧縮機1,燃焼器2,高圧タービン3H,低圧タービン3Lとなる。この既設のシンプルサイクルガスタービンを、高湿分ガスタービンシステムを適用したプラントに改造する場合、追加で設置される機器としては、増湿器4と再生熱交換器5である。そして、改造に際して、シンプルサイクルでは圧縮機1から燃焼器2に接続されていた抽気空気103の供給系統を、図示するように、圧縮機1から増湿器4及び再生熱交換器5を介して燃焼器2に供給するように変更する。なお、給水加熱器22,排ガス再加熱器23,水回収装置24,水処理装置26,冷却装置30等の機器は、プラントの全体効率を向上させるため、増湿器4及び再生熱交換器5と合わせて追設することが望ましい。
【0073】
ここで、高湿分ガスタービンシステムを適用した2軸ガスタービンに改造する上で問題となるのは、前述した圧縮機の過大回転や過小回転である。そこで、シンプルサイクルを改造する場合においても、再生熱交換器5から燃焼器2に高温高湿空気105を供給する流路から、高温高湿空気105の一部を分岐空気110として低圧タービン3Lの上流に分岐させる分岐流路18を備えることにより、上記課題を解決することが可能となる。
【0074】
次に、既設の再生サイクルガスタービンを改造する場合を説明する。再生サイクルの2軸ガスタービンの基本構成は、圧縮機1,燃焼器2,高圧タービン3H、低圧タービン3L、再生熱交換器5である。この既設の再生サイクルの2軸ガスタービンを改造する場合の追加機器は、圧縮機1と再生熱交換器5の間に設置する増湿器4である。この場合においても、再生熱交換器5から燃焼器2に高温高湿空気105を供給する流路から低圧タービン3Lの上流に分岐空気110を分岐させる分岐流路18を備えることになる。
【0075】
すなわちいずれの場合でも、流量増加手段である増湿器4で流量を増加された作動媒体の一部を、燃焼器2に供給される前に分岐して低圧タービン3Lに導く分岐経路である分岐流路18とを追設すればよい。
【実施例2】
【0076】
図2は本発明の第2の実施例について示した図であり、図1と共通する再生熱交換器5よりも下流の排ガス系統図は省略してある。
【0077】
図2において図1に示した第1の実施例と異なる点は、圧縮機1の吸い込み空気入口に、微細な水滴を噴霧して蒸発させることにより、圧縮機内部の作動流体の温度を低下させる吸気噴霧装置27を備えた点にある。
【0078】
吸気噴霧装置27において圧縮機1入口のガスタービン吸い込み空気100に噴霧される噴霧水300は、高圧ポンプ320で加圧された後、噴霧水量制御弁310で所定の流量に調整され、吸気噴霧装置27内の噴霧ノズルで微細化される。微細液滴の一部は圧縮機に吸い込まれる前に蒸発して、作動流体の温度を低下させ、ガスタービン吸い込み空気100をより低温・高密度な吸い込み空気101とする。これにより、大気温度が高い場合でも圧縮機吸い込み空気量が多くなるため、ガスタービン出力が増加する。
【0079】
また、大気温度が高いほど吸気冷却効果が大きいため、吸気噴霧装置27を使用することにより、年間を通した大気温度の変動に対して、ガスタービンの出力を一定に保つことができる。
【0080】
一方、微細液滴のうち圧縮機に吸い込まれる前に蒸発し切れなかった分は、圧縮機の内部で蒸発して、圧縮途中の作動流体の温度を低下させる。これにより、圧縮特性が等温圧縮に近づくため、良く知られた中間冷却効果によって圧縮機駆動力が減少し、その結果ガスタービンの効率が向上する。
【0081】
ここで、本実施例に至った課題である圧縮機と高圧タービンの動力バランスに対して、以上述べた、吸気噴霧装置27による圧縮機駆動力の低減効果を適用すると、次のような効果が生じる。
【0082】
すなわち、第1の実施例で述べたように、分岐空気110を低圧タービン3Lに注入すると、低圧タービン入口圧力が高くなることに起因して、定格燃焼温度において圧縮機と高圧タービンをバランスさせた際は、圧力比が無加湿時に比べてやや高くなる。しかし、本第2の実施例のように、吸気噴霧装置27を用いて、中間冷却効果によって圧縮機駆動力を削減すると、高圧タービン3Hの膨張比が若干小さくなることによる出力低下と釣り合わせることができるため、分岐流量を若干増やすことで圧力比を無加湿時と同等にすることができる。
【0083】
これにより、高圧空気が通る圧縮機1や燃焼器2の圧力隔壁の設計圧力、および燃料供給系の設計圧力をシンプルサイクルと同等にできる。これは、シンプルサイクル,再生サイクルおよび高湿分利用ガスタービンシステムで高圧部品およびその設計を共通化できることを意味し、高圧部品の設計・製作コスト,部品管理コストを低減できる。
【0084】
次に、このような吸気噴霧装置27を備えた場合の制御方法について説明する。増湿器4へ供給される水量はガスタービンへの出力指令値に応じて決められており、出力指令値が予め定められたしきい値以上になると、加湿が開始される。作動流体の分岐空気110の流量は、実際の加湿量(蒸発量)の増加に応じて増加する必要があるが、増湿器4へ供給される水量と実際の加湿量は過渡特性として必ずしも比例しない。蒸発量は、増湿器4へ供給される水温や圧縮空気の温度に依存し、それらの温度は、ガスタービン出力が大きいほど高温である。しかし、実際のガスタービン出力を知ることは、特にポンプやスクリューのような機械駆動用途の場合は、発電機に比べると容易ではない。そこで、制御系統を簡単化するためには、出力指令値の増加に応じて、作動流体の分岐空気110の流量を増加させるように、分岐流量調節機構19を動作させることが望ましい。
【0085】
一方、吸気噴霧装置27で噴霧される水の流量が変化することによっても、最適な作動流体分岐空気110の流量は変化する。すなわち上述したように、吸気噴霧装置27での噴霧量が増加した際は、分岐空気110の流量を増加させる必要がある。吸気噴霧装置27で噴霧される水の流量は、出力指令値および大気温度によって制御される。
【0086】
したがって、低圧タービンの出力指令値および吸気噴霧装置で噴霧される水の流量をもとに作動流体の分岐流量を制御すれば、高湿分利用ガスタービンシステムを適用することによる効率向上効果を、2軸ガスタービンでも享受しつつ、圧縮機駆動力と高圧タービン出力をバランスさせて、2軸ガスタービンを安定に運転することができる。
【0087】
なお、この制御は図示しない制御装置によって行われる。この制御装置は、低圧タービン3Lや大気温度など適切な計測値や指令値に基づいて、分岐調節機構である分岐流量調節機構19を制御する。
【実施例3】
【0088】
図3は本発明の第3の実施例について示した図であり、図2と同様、再生熱交換器5よりも下流の排ガス系統図は省略してある。
【0089】
図3において図2に示した第2の実施例と異なる点は、図3中に点線で示した圧縮機1の作動流体の流量を減少させるように製造された圧縮機1b(実線)を用いたことにある。本実施例の圧縮機は、例えば特開2005−155613号公報に開示された製造方法により、図2に示したシンプルサイクル用に設計されたガスタービン圧縮機1と部品,図面の共通化が図れることから、容易に製造することができる。
【0090】
本実施例の圧縮機1bは、作動流体の流量がシンプルサイクルよりも減少するように製造されているため、圧縮機駆動力も減少する。
【0091】
ここで、本発明に至った課題である圧縮機と高圧タービンの動力バランスに対して、本実施例による圧縮機駆動力低減効果を適用すると、実施例2の場合と同様な効果が生じる。
【0092】
すなわち、第1の実施の形態で述べたように、分岐空気110を低圧タービン3Lに注入すると、低圧タービン入口圧力が高くなることに起因して、定格燃焼温度において圧縮機と高圧タービンをバランスさせた際は、圧力比が無加湿時に比べてやや高くなる。しかし、本第3の実施の形態のように、圧縮機の作動流体を減少させることよって圧縮機駆動力を削減すると、高圧タービン3Hの膨張比が若干小さくなることによる出力低下と釣り合せることができることに加え、分岐作動流体の流量減少により、高圧タービン3Hの膨張比の減少分自体が小さくなるため、実施例1の場合に比べて、高圧タービン入口圧力を燃焼器圧力隔壁や燃料系統などの高圧部品の設計圧力と同等にすることができる。
【0093】
これにより、実施例2の場合と同様、高圧部品の設計圧力をシンプルサイクルと同等にできる。
【0094】
一方、増湿器4に水を供給しない無加湿状態の時には、実施例2の場合と比較して、高圧ガスタービン3Hに流入する作動流体の流量が減少するため、圧縮機が過小回転になる。その場合は、実施例2で説明した吸気噴霧装置27で噴霧される水の流量を増加させることにより、圧縮機動力を減少させて、出力バランスを取ることができる。
【0095】
かくして、本発明により、2軸ガスタービンに高湿分サイクルを適用した際にも、圧縮機と高圧タービンの動力バランスを確保することができる。
【実施例4】
【0096】
図4は本発明の第4の実施例について示した図であり、図2と同様、再生熱交換器5よりも下流の排ガス系統図は省略してある。
【0097】
図4において図2に示した第2の実施例と異なる点は、圧縮機1の軸端にシャフト21Aを介して、ガス圧縮機28が連結されていることであり、ガスタービンの燃料200をガス圧縮機28で加圧していることである。
【0098】
増湿器4に供給される水分流量が高湿分ガスタービンシステム所定の流量まで増加した場合、実施例1で説明したように、湿分添加により流量が増加した作動流体の全量が高圧タービン3Hに流入すると、圧縮機1が過回転になってしまう。そこで過回転を防止するため、燃焼器に供給する燃料流量が小さくなるように制御されるが、本実施例のようにガス圧縮機28が連結されている場合は、高圧タービンの出力の一部が、燃料ガスの圧縮動力に消費されるため、実施例1の場合に比べて、燃焼温度の低下が小さくなり、その分ガスタービンが高効率化する。また、実施例1と同様に、分岐空気110の流量を増加させて燃焼温度を高める場合でも、分岐流量が少なくてすむので、分岐流路18をコンパクトにできてコストが低減できるうえ、実施例1の場合に比べて低圧タービン3L入口の作動流体温度が高くなるため、低圧タービン3Lの出力および効率が増加する。
【0099】
一方、増湿器4に水を供給しない無加湿状態の時には、実施例3の場合と同様、吸気噴霧装置27で噴霧される水の流量を増加させることにより、圧縮機1の駆動動力を減少させて、出力バランスを取ることができる。
【0100】
本実施例のように、2軸ガスタービンの圧縮機側に連結したガス圧縮機を用いて燃焼ガスを加圧する方法は、石炭ガス化ガスや水素含有ガス燃料などのように、燃料発熱量の小さいガス燃料や密度の小さいガス燃料を利用する場合には、より大きなガス圧縮機28を連結することができるため、効果が大きい。
【0101】
また、図4においては、圧縮機1とガス圧縮機28がシャフト21Aによって直接連結されているが、減速機を介して連結されていてもよい。
【0102】
あるいは、ガスタービンシステムが油燃料焚きの場合には、油燃料用の加圧ポンプを連結しても、ガス燃料と比べて消費動力は小さいものの、同様の効果が得られる。また、燃料加圧機以外であっても、高圧タービン3Hの出力を消費する機械であれば、同様の効果が得られる。
【実施例5】
【0103】
次に図5を用いて本発明の第1実施例である2軸式ガスタービンについて、図1に示した高湿分ガスタービンシステムに適用した2軸式ガスタービンの具体的な構造である分岐した増湿空気110を供給する低圧タービン3Lの入口側近傍の構造について説明する。
【0104】
図5に示した本発明の第1実施例の2軸式ガスタービンにおいて、高圧タービン3Hと低圧タービン3Lとは共通のケーシング39の内部に設置されており、高圧タービン3Hを構成する最終段側の回転体は高圧タービンロータ32と、この高圧タービンロータ32の外周に複数個配設された高圧タービン3Hの最終段動翼35を備えており、低圧タービン3Lを構成する初段側の回転体は低圧タービンロータ33と、この低圧タービンロータ33の外周に複数個配設された低圧タービンの初段静翼36を備えている。
【0105】
そして高圧タービン3Hと低圧タービン3Lの前記した各回転体は回転中心軸50の周りを回転するように構成されている。
【0106】
また高圧タービン3Hと高圧タービン3Hとの間には両者を隔てる静止体の隔壁34が設置されており、ケーシング39の内周側には高圧タービン3Hを構成する高圧側静止シュラウド38と、低圧タービン3Lを構成する低圧側静止シュラウド46とがそれぞれ設置されている。
【0107】
そして前記隔壁34の外周側には低圧タービン3Lの低圧タービンの初段静翼40が高圧側静止シュラウド38及び低圧側静止シュラウド46の両者にそれぞれ係合するように複数個設置されている。
【0108】
高圧タービン3Hの最終段動翼35からこの高圧タービン3Hを駆動した作動流体37はガスパスに沿って排出されるが、高圧タービン3Hの下流側に設置された低圧タービン3Lではこの排出された作動流体37を導入してエネルギーを回収することで回転エネルギーを得て低圧タービン3Lを駆動し、この低圧タービン3Lに連結された被駆動体の発電機20を回転させる。
【0109】
前記作動流体37が流れるタービン静翼及びタービン動翼の存在する流路空間をガスパスと呼ぶ。
【0110】
前記低圧タービン3Lを構成する低圧タービンの初段静翼40の内部にはパージ空気を流下させる空気流路40aが形成されており、圧縮機1の途中段から抽気して空気流路42aを通じて導いたパージ空気42を、ケーシング39を貫通して配設した該空気流路42aを通じてケーシング39の内側に形成したキャビティ53に導入し、このキャビティ53からパ−ジ空気42を前記初段静翼40の空気流路40aを経由して隔壁34の外周側に設置した部屋73に導入する。
【0111】
低圧タービン3Lの初段静翼40の内周側で、前記高圧タービン3Hの最終段動翼35を備えた高圧タービンロータ32の端面と隔壁34との間の空間にはホイールスペース48が形成され、また低圧タービン3Lの初段動翼36を備えた低圧タービンロータ33の端面と隔壁34との間の空間にはホイールスペース49が形成されている。
【0112】
前記部屋73に導入されたパ−ジ空気42は、部屋73に形成した孔から前記ホイールスペース48及びホイールスペース49にそれぞれ流入した後に、高圧タービンロータ32の外周端の側面と、部屋73のガスパスを区画する壁面との間隙、及び低圧タービンロータ33の外周端の側面と、部屋73のガスパスを区画する壁面との間隙を通じてパージ空気43及びパージ空気44とに分岐してガスパスに流入する。
【0113】
そしてパージ空気42の空気圧を高めてパージ空気43,44の空気圧力が作動ガス37の圧力よりも高くなるように設定することで、高温の作動ガス37がホイールスペース48,49に流入して高圧タービンロータ32や低圧タービンロータ33が高温の作動ガスによって損傷することを防止している。
【0114】
ケーシング39の内周側に設置した高圧側静止シュラウド38の内部にはキャビティ47が形成されており、再生熱交換器5から供給された昇温した増湿空気105から分岐された増湿空気110は、ケーシング39を貫通して配設した分岐流路18を通じて該ケーシング39内に設置された高圧側静止シュラウド38に形成したキャビティ47に導き、前記高圧側静止シュラウド38のガスパスに面した壁面に設けた分岐空気供給孔56を通じてこの分岐した増湿空気110をガスパスに供給し、作動流体37の燃焼ガスと合流させる。
【0115】
本実施例の2軸式ガスタービンでは、ケーシング39の外側から高圧側静止シュラウド38の内部に形成したキャビティ47内に図1に示した高湿分ガスタービンシステムで再生熱交換器5から供給される昇温した増湿空気105から分岐した増湿空気110を該ケーシング39を貫通する分岐配管18を通じて導入している。
【0116】
この分岐した増湿空気110は、図5に示した分岐配管18のように配管などを通して導入する方法が考えられる。
【0117】
高圧側静止シュラウド38の内部のキャビティ47に流入した増湿空気110は、この高圧側静止シュラウド38のガスパスに面した壁面の円周方向に沿って複数箇所設けた分岐空気供給孔56を通じてガスパスに供給され、ガスパスを流下する作動流体37と合流する。
【0118】
通常のガスタービンでは高圧側静止シュラウド38の材料として耐熱材を使用するだけでなく、さらに高圧側静止シュラウド38に冷却空気を流通させて該高圧側静止シュラウド38を冷却している。
【0119】
冷却空気としては圧縮機1の途中段や最終段から圧縮した空気を外部に抽気し、配管を通じて冷却が必要な外筒箇所にこの抽気した圧縮空気を供給して冷却空気として使用することが多いが、この冷却空気の流量が大きくなるとガスタービンの効率低下が大きくなるため、冷却空気の質量流量は、通常、圧縮機1で吸い込む空気100の吸い込み質量流量の10%以下となるように設計される。
【0120】
本実施例の2軸式ガスタービンにおいては、前述したように低圧タービン3Lの入口側から供給する分岐した増湿空気110をケーシング39を貫通して配設した分岐流路18を通じて高圧側静止シュラウド38内のキャビティ47に流入させてガスパスに供給するようにしており、この増湿空気110の質量流量は圧縮機吸い込み流量の10〜25%である。
【0121】
この為、増湿空気110の流下によって高圧側静止シュラウド38の冷却効果が発揮され、高圧側静止シュラウド38の冷却用の空気を供給する冷却空気系統を別途設ける必要はない。
【0122】
また、この増湿空気110は通常のガスタービンで冷却に使用する冷却空気量より質量流量が大きいため、高い冷却効果を期待でき、高圧側静止シュラウドの材料に耐熱温度の低い低級材を採用することができ、製造コストを低減することができる。
【0123】
また、高圧側静止シュラウド38の内部に分岐した増湿空気110を導入するキャビティ47を設け、このキャビティ47から増湿空気110を円周方向に複数箇所形成した分岐空気供給孔56を通じてガスパスに供給しているので、周方向の偏差が少ない状態で増湿空気110と作動ガス37をガスパスで合流させることができ、混合損失を抑制できることができる。
【0124】
さらに、ガスパスの外周側から増湿空気110を供給することによってガスパスの外周側の作動流体37の温度を低下させることができ、この結果、低圧タービン3Lの初段静翼40、及び初段動翼36のガスパス外周側に面した部分が高温の作動流体37の熱による損傷の発生を抑制することができる。
【0125】
以上説明したことから明らかなように、本実施例の2軸式ガスタービンによれば、2軸式ガスタービンに高湿分利用ガスタービンシステムを適用した場合に、圧縮機駆動力と高圧タービン出力をバランスさせて2軸式ガスタービンを安定に運転し、圧縮機過大回転や過小回転の防止が可能となるので、回転部品の翼振動および軸振動に対する信頼性を高めることができる。
【0126】
また、タービン入口温度はシンプルサイクルで想定した温度を保つことが可能となるため、高湿分利用ガスタービンシステムを適用することによるガスタービンの効率向上効果を、2軸式ガスタービンでも享受することができる。
【0127】
また、本実施例では高圧タービン,低圧タービンの両方を、シンプルサイクルと高湿分利用ガスタービンシステムで共通に使用できるため、高温部品であるタービン翼の開発・製作コスト,部品管理コストを低減できる。
【0128】
また、本実施例では分岐空気を高圧側静止シュラウド内のキャビティに流入させているため、分岐空気による高圧側静止シュラウドの冷却効果を期待でき、高圧側静止シュラウド冷却用の空気を別途設ける必要がない。
【0129】
また、本実施例では分岐空気は通常のガスタービンで冷却に使用する冷却空気量より質量流量が大きいため、高い冷却効果を期待でき、高圧側静止シュラウドの材料に耐熱温度の低い低級材を採用することができ、製造コストを低減することができる。
【0130】
また、本実施例では分岐空気を低圧タービン入口のガスパス外周側もしくは内周側に供給することで、ガスパス内に存在するタービン動翼,タービン静翼のそれぞれ外周側もしくは内周側の温度を下げることによる高温ガスによる翼の損傷を抑制できる為、製品の信頼性を向上させることができる。
【0131】
即ち、本実施例によれば、高湿分利用ガスタービンサイクルを2軸式ガスタービンに適用した場合に、ガスタービンの効率向上を図ると共に、圧縮機駆動力と高圧タービン出力をバランスさせてガスタービンを安定に運転する信頼性を向上した2軸式ガスタービンが実現できる。
【実施例6】
【0132】
次に図6を用いて高湿分ガスタービンシステムに本発明を適用した第6実施例の2軸式ガスタービンについて説明する。
【0133】
図6は本発明の第6実施例である高湿分ガスタービンシステムに備えられた2軸式ガスタービンにおいて、分岐した増湿空気を供給する低圧タービン3Lの入口側近傍の構造図を示すものであり、図5に示した第5実施例の2軸式ガスタービンと基本的な構成が類似しているので、第5実施例と共通する構成の説明は省略し、相違する構成についてのみ以下に説明する。
【0134】
本実施例では図6に示すように、再生熱交換器5から供給された昇温した増湿空気105から分岐された増湿空気110は、ケーシング39を貫通して配設された分岐流路18を通じて該ケーシング39内に設置された低圧タービン3Lの初段静翼40の外周側と前記ケーシング39の内壁側との間に形成されたキャビティ53に導入するように構成している。
【0135】
このキャビティ53に分岐流路18を通じて導入された増湿空気110は、低圧タービン3Lの初段静翼40の内部に形成した空気流路40aを流下して初段静翼40を冷却し、隔壁34の外周側に設置した部屋73に導入される。
【0136】
そして前記部屋73に導入された増湿空気110は、部屋73に形成した孔から前記ホイールスペース48及びホイールスペース49にそれぞれ流入した後に、高圧タービンロータ32の外周端の側面と、部屋73のガスパスを区画する壁面との間隙、及び低圧タービンロータ33の外周端の側面と、部屋73のガスパスを区画する壁面との間隙を通じてパージ空気43及びパージ空気44とに分岐してガスパスに流入する。
【0137】
本実施例では第5実施例と異なり、高圧側静止シュラウド38内のキャビティ47に増湿空気110を供給していない為、高圧側静止シュラウド38を冷却する為に該高圧側静止シュラウド38に形成されたキャビティ47内に別途冷却空気を供給する必要がある。
【0138】
そこで高圧側静止シュラウド38の上流側の壁面に冷却空気供給孔54を設けて別途導入した冷却空気をキャビティ47内に供給して高圧側静止シュラウド38を冷却する構造を採用している。
【0139】
尚、この冷却空気供給孔54を設ける以外にもケーシング39の外周側から冷却用の空気を導入する配管を通して冷却する方法などが考えられる。
【0140】
本実施例においては、ケーシング39を貫通して配設した分岐流路18を通じて導入した増湿空気110は、初段静翼40の外周側に形成したキャビティ53,低圧タービン初段静翼40内の空気流路40a,隔壁34の外周側に設置した部屋73を経由してホイールスペース48,49に導入させた後にパージ空気43,44としてガスパスに流入させているため、ホイールスペース48,49の温度を低く抑えることができ、高圧タービンロータ32及び低圧タービンロータ33の温度を低く抑えることができる。
【0141】
その結果、前記高圧タービンロータ32及び低圧タービンロータ33の材料に耐熱温度の低い低級材を採用することが可能となり、ガスタービンの製造コストを低減することができる。
【0142】
さらに、ホイールスペース48,49に導入された後に増湿空気110をガスパスの内周側に流入させることによってガスパス内周側の作動流体37のガス温度が低下するので、低圧タービン3Lの初段静翼40、及び初段動翼36のガスパス内周側部分に高温の作動流体37の熱による損傷の発生を抑制することができる。
【0143】
本実施例によれば、高湿分利用ガスタービンサイクルを2軸式ガスタービンに適用した場合に、ガスタービンの効率向上を図ると共に、圧縮機駆動力と高圧タービン出力をバランスさせてガスタービンを安定に運転する信頼性を向上した2軸式ガスタービンが実現できる。
【実施例7】
【0144】
次に図7を用いて高湿分ガスタービンシステムに本発明を適用した第7実施例の2軸式ガスタービンについて説明する。
【0145】
図7は本発明の第7実施例である高湿分ガスタービンシステムに備えられた2軸式ガスタービンにおいて、分岐空気を供給する低圧タービン3Lの入口側近傍の構造図を示すものであり、図6に示した第6実施例の2軸式ガスタービンと基本的な構成が類似しているので、第6実施例と共通する構成の説明は省略し、相違する構成についてのみ以下に説明する。
【0146】
本実施例の2軸式ガスタービンでは、図7に示すように再生熱交換器5から供給された昇温した増湿空気105から分岐された増湿空気110は、ケーシング39を貫通して配設された分岐流路18を通じて該ケーシング39内に設置された低圧タービン3Lの初段静翼40外周側と前記ケーシング39の内壁側との間に形成されたキャビティ53に導入するように構成している。
【0147】
このキャビティ53に分岐流路18を通じて導入された増湿空気110は、低圧タービン3Lの初段静翼40の内部に形成した空気流路40aを流下して初段静翼40を冷却するが、この初段静翼40内部で前記空気流路40aは複数の分岐空気流路96に分岐されて該初段静翼40の後縁に開口した該分岐空気流路96の噴出口から増湿空気110の一部をガスパスに噴出させて作動媒体37と合流するように構成されている。
【0148】
また初段静翼40の空気流路40aを流下して初段静翼40を冷却した大部分の増湿空気110は、初段静翼40の外周側に形成したキャビティ53,低圧タービン初段静翼40内の空気流路40a,隔壁34の外周側に設置した部屋73を経由してホイールスペース48,49に導入させた後にパージ空気43,44としてガスパスに流入する。
【0149】
図8(a)、及び図8(b)は、図7に示した低圧タービン3Lの初段静翼40の断面をそれぞれ示した断面図である。
【0150】
この初段静翼40の内部に形成された空気流路40aから分岐した分岐空気流路96は、図7に示した矢印37は作動流体の流れ方向である。
【0151】
前記分岐空気流路96の噴出孔は、図8(a)に示したように初段静翼40の翼後縁側から増湿空気110の一部をガスパス中へ流出させるように開口させる方法や、図8(b)に示すように初段静翼40の翼前縁に近い部位から増湿空気110の一部をガスパス中へ流出させるように開口させる方法や、図8(a)と図8(b)に示した構造を複合させた方法を採用しても良い。
【0152】
図7に示した本実施例の2軸式ガスタービンでは、図6に示した第6実施例の2軸式ガスタービンにおける作用効果を享受することができると同時に、以下に述べる新たな作用効果を更に享受することができる。
【0153】
即ち本実施例の2軸式ガスタービンでは、初段静翼40の内部の空気流路40aに導入した増湿空気110の一部を初段静翼40に形成した分岐空気流路96を通じてガスパスに流出する流れと、空気流路40aから隔壁34の外周側に設置した部屋73を経由してパージ空気43,44としてガスパスに流出する流れとに分けてガスパス中へ流出させている為、パージ空気43,44の空気流量は図3に示した第2実施例の2軸式ガスタービンにおけるパージ空気43,44の空気流量よりも分岐空気流路96からガスパスに流出する流量分だけ少なくなる。
【0154】
このため、本実施例におけるパージ空気43,44がガスパスを流下する作動ガス37に合流する際に、作動ガス37の流れを乱すことによって発生する混合損失を低減できる。
【0155】
さらに、図8(a)に示すように、初段静翼40の内部に形成した分岐空気流路96を通じて初段静翼40の翼後縁から作動ガス37の流れ方向に近い翼の下流側の方向に増湿空気110の一部を流出させていることで、作動ガス37とこの増湿空気110の一部とが混合する際の混合損失を低減させることができる。
【0156】
また、図8(b)に示すように、初段静翼40の内部に形成した分岐空気流路96を通じて初段静翼40の翼前縁近傍から増湿空気110の一部を翼の下流側の方向に流出させていることで、低圧タービン3Lの初段静翼40の前縁近傍の冷却効果を高めることができる。
【0157】
本実施例によれば、高湿分利用ガスタービンサイクルを2軸式ガスタービンに適用した場合に、ガスタービンの効率向上を図ると共に、圧縮機駆動力と高圧タービン出力をバランスさせてガスタービンを安定に運転する信頼性を向上した2軸式ガスタービンが実現できる。
【実施例8】
【0158】
次に図9を用いて高湿分ガスタービンシステムに本発明を適用した第8実施例の2軸式ガスタービンについて説明する。
【0159】
図9は本発明の第8実施例である高湿分ガスタービンシステムに備えられた2軸式ガスタービンにおいて、分岐空気を供給する低圧タービン3Lの入口側近傍の構造図を示すものであり、図6に示した第6実施例の2軸式ガスタービンと基本的な構成が類似しているので、第6実施例と共通する構成の説明は省略し、相違する構成についてのみ以下に説明する。
【0160】
本実施例の2軸式ガスタービンでは、図9に示すように再生熱交換器5から供給された昇温した増湿空気105から分岐された増湿空気110は、ケーシング39を貫通して配設された分岐流路18を通じて該ケーシング39内に設置された低圧タービン3Lの初段静翼40外周側と前記ケーシング39の内壁側との間に形成されたキャビティ53に導入され、初段静翼40の内部に形成した空気流路40aを流下して隔壁34の外周側に設置した部屋73を経由してホイールスペース48,49に導入させた後にパージ空気43,44としてガスパスに流入し、作動流体37の燃焼ガスと合流する。
【0161】
本実施例では低圧タービンロータ33の内部にホイールスペース49と初段動翼36の根元のガスパスとを連通する空気流路94が形成されており、このホイールスペース49に流入したパージ空気44の一部を低圧タービンロータ33の前記空気流路94を通じて初段動翼36の根元側から分岐パージ空気45としてガスパスに供給して前記初段動翼36を冷却する。
【0162】
本実施例では、前記空気流路94を通じて分岐パージ空気45を初段動翼36に供給し、低圧タービン3Lの初段動翼36を冷却して初段動翼36のメタル温度を低く抑えているので、ガスタービンの信頼性を高めることができる。
【0163】
また、低圧タービン3Lの初段動翼36のメタル温度を低くすることで耐熱温度の低い低級材を初段動翼36に採用することが可能となり、ガスタービンの製造コストを低減することができる。
【0164】
さらに、低圧タービン3Lの初段動翼36に前記空気流路94を通じて増湿空気110の一部である分岐パージ空気45を冷却空気として供給してこの初段動翼36を冷却しているので、ガスタービンの燃焼器における燃焼温度を高くすることが可能となり、ガスタービンの出力上昇や、熱効率向上を図ることができる。
【0165】
本実施例によれば、高湿分利用ガスタービンサイクルを2軸式ガスタービンに適用した場合に、ガスタービンの効率向上を図ると共に、圧縮機駆動力と高圧タービン出力をバランスさせてガスタービンを安定に運転する信頼性を向上した2軸式ガスタービンが実現できる。
【実施例9】
【0166】
次に図10を用いて高湿分ガスタービンシステムに本発明を適用した第9実施例の2軸式ガスタービンについて説明する。
【0167】
図10は本発明の第9実施例である高湿分ガスタービンシステムに備えられた2軸式ガスタービンにおいて、分岐空気を供給する低圧タービン3Lの入口側近傍の構造図を示すものであり、図6に示した第6実施例の2軸式ガスタービンと基本的な構成が類似しているので、第6実施例と共通する構成の説明は省略し、相違する構成についてのみ以下に説明する。
【0168】
本実施例の2軸式ガスタービンでは、図10に示すようにケーシング39の内部に、高圧タービン3Hの最終段動翼35の外周側に設けられた高圧側静止シュラウド38の後流側でキャビティ53との間の位置に、中間静止シュラウド75を設置している。
【0169】
この中間静止シュラウド75の内部にはキャビティ74が形成されおり、このキャビティ74のガスパスに面した壁面には該ガスパスと連通する分岐空気供給孔76が一つないし複数形成されている。
【0170】
そして再生熱交換器5から供給された昇温した増湿空気105から分岐された増湿空気110は、ケーシング39を貫通して配設された分岐流路18を通じて前記中間静止シュラウド75の内部のキャビティ74に導入され、分岐空気供給孔76を通じてこの増湿空気110をガスパスに供給し、作動流体37の燃焼ガスと合流させる。
【0171】
また、圧縮機1の途中段から抽気して空気流路42aを通じて導いたパージ空気42を、ケーシング39を貫通して配設した該空気流路42aを通じてケーシング39内に設置された低圧タービン3Lの初段静翼40外周側と前記ケーシング39の内壁側との間に形成されたキャビティ53に導入し、このキャビティ53から初段静翼40の内部に形成した空気流路40aを流下して隔壁34の外周側に設置した部屋73を経由してホイールスペース48,49に導入させた後にパージ空気43,44としてガスパスに流入し、作動流体37の燃焼ガスと合流する。
【0172】
本実施例においては、高圧側静止シュラウド38は、その内周側に高圧タービン3Hの最終段動翼35が存在する為、この最終段動翼35の前側と後側で圧力差が大きく、その結果、高圧側静止シュラウド71には圧力差による荷重によって大きな応力が発生している。
【0173】
しかしながら、高圧側静止シュラウド38の後流側に設置した前記中間シュラウド75には、その内周側にタービン動翼が存在しない為、この中間シュラウド75の前側と後側で圧力差は小さく、中間シュラウド75には大きな応力は発生しない。
【0174】
その結果、空気流路18を通じてキャビティ74に導いた増湿空気110をガスパスに供給する分岐空気供給孔76を前記中間シュラウド75の壁面に設けても、この中間シュラウド75には小さな応力しか作用しない為に応力集中による最大応力を低く抑えることができ、ガスタービンの信頼性を高めることができる。
【0175】
本実施例によれば、高湿分利用ガスタービンサイクルを2軸式ガスタービンに適用した場合に、ガスタービンの効率向上を図ると共に、圧縮機駆動力と高圧タービン出力をバランスさせてガスタービンを安定に運転する信頼性を向上した2軸式ガスタービンが実現できる。
【実施例10】
【0176】
次に図11を用いて高湿分ガスタービンシステムに本発明を適用した第10実施例の2軸式ガスタービンについて説明する。
【0177】
図11は本発明の第10実施例である高湿分ガスタービンシステムに備えられた2軸式ガスタービンにおいて、分岐空気を供給する低圧タービン3Lの入口側近傍の構造図を示すものであり、図10に示した第9実施例の2軸式ガスタービンと基本的な構成が類似しているので、第9実施例と共通する構成の説明は省略し、相違する構成についてのみ以下に説明する。
【0178】
本実施例の2軸式ガスタービンでは、図11に示すようにケーシング39の内部の、高圧タービン3Hの最終段動翼35の外周側に設けられた高圧側静止シュラウド38の後流側で、キャビティ53を区画するケーシング壁部材85の上流側となる位置に、ガスパスに連通したキャビティ84を形成した構造となっている。
【0179】
このキャビティ84のガスパスとの連通部は、周方向に連続した空間として形成されている。
【0180】
本実施例においては、再生熱交換器5から供給された昇温した増湿空気105から分岐された増湿空気110は、ケーシング39を貫通して配設された分岐流路18を通じてキャビティ84に導入され、このキャビティ84を経由してガスパスに供給されて作動媒体37の燃焼ガスと合流する。
【0181】
本実施例ではキャビティ84とガスパスが周方向に連続した空間として形成されてキャビティ84とガスパスとの連通部の面積を大きく形成できるため、大流量の増湿空気110をガスパスに供給することが可能となり、ガスタービンの運転可能範囲が増加するという利点がある。
【0182】
本実施例によれば、高湿分利用ガスタービンサイクルを2軸式ガスタービンに適用した場合に、ガスタービンの効率向上を図ると共に、圧縮機駆動力と高圧タービン出力をバランスさせてガスタービンを安定に運転する信頼性を向上した2軸式ガスタービンが実現できる。
【実施例11】
【0183】
次に本発明をコンベンショナルなガスタービンシステムに適用した第11実施例である2軸式ガスタービンの実施例について図12を用いて説明する。
【0184】
図1に示した先の実施例の高湿分ガスタービンシステムでは、ガスパス中に流入させる流体は昇温した増湿空気105の一部を分岐させた増湿空気110であったが、蒸気発生源を近傍に持つガスタービンシステムにおいては、増湿空気110の代わりに蒸気を注入することも考えられる。
【0185】
そこで本実施例のガスタービンシステムにおける2軸式ガスタービンにおいては、蒸気発生源としてガスタービンの排気ガスの熱量を利用して蒸気を発生させる排熱回収ボイラを用いるように構成した。
【0186】
図12にガスタービンの排気ガスの熱量を利用して排熱回収ボイラ115によって生成した蒸気を低圧タービン3Lの上流側に注入するガスタービンシステムの全体構成を表すシステムフロー図を示す。
【0187】
図12に示した本実施例の発電用の2軸式ガスタービンでは、図1に示した先の実施例の高湿分ガスタービンシステムと共通する構成は説明を省略している。
【0188】
図12に示した発電用の2軸式ガスタービンにおいて、燃焼器2で発生した高温の燃焼ガスは高圧タービン3H及び低圧タービン3Lに順次供給されて前記高圧タービン3H及び低圧タービン3Lを駆動し、低圧タービン3Lから排出された低圧タービン排ガス108はこのタービン排気ガス108の熱量を回収して蒸気を発生させる排熱回収ボイラ115に供給される。
【0189】
排熱回収ボイラ115に供給される給水114は前記排熱回収ボイラ115での低圧タービン排ガス108との熱交換によって蒸気116を生成する。
【0190】
そして前記排熱回収ボイラ115を流下した温度が低下した低圧タービン排ガス108は排気ガス109として排気塔25から大気中へ排出される。
【0191】
前記排熱回収ボイラ115で発生させた蒸気116は、ガスタービンに供給される蒸気117と別の蒸気利用設備に供給される蒸気118とに分岐され、このうちガスタービンに供給される蒸気117は、その一部、又は全量が流量調節弁19を備えた分岐配管18を通じて分岐蒸気120として前記低圧タービン3Lの上流側からガスパスに供給され、高圧タービン3Hから流下した高圧タービン排ガス107と合流する。
【0192】
即ち、本実施例で低圧タービン3Lの上流側からガスパスに供給される分岐蒸気120は、図1に示した先の実施例における低圧タービン3Lの上流側からガスパスに供給される増湿空気110に対応するものである。
【0193】
前記蒸気118が供給される別の蒸気利用設備としては、コンバインドサイクルガスタービンにおける蒸気タービン,コジェネシステムにおける蒸気利用設備などが考えられる。
【0194】
ところで本実施例の分岐蒸気120として用いられる蒸気は空気に比べて熱伝達係数が高いので冷却効果が高くなり、この分岐蒸気120が流れる近傍の低圧タービン3Lの材料温度を低下させることができる。
【0195】
このため、図1に示した先の実施例での前記増湿空気110の代わりにこの分岐蒸気120を使用することで、低圧タービン3Lを構成する材料として耐熱温度の低い低級材を使用することができ、2軸式ガスタービンの製造コストを低減することができる。
【0196】
本実施例によれば、ガスタービン燃焼器中に蒸気を注入するシステムを2軸式ガスタービンに適用した場合に、ガスタービンの効率向上を図ると共に、圧縮機駆動力と高圧タービン出力をバランスさせてガスタービンを安定に運転する信頼性を向上した2軸式ガスタービンが実現できる。
【0197】
すなわち、空気を圧縮する圧縮機1と、圧縮機1で圧縮された空気に蒸気を注入する蒸気注入手段である排熱回収ボイラ115と、この蒸気注入手段で蒸気を注入された空気と燃料とを燃焼させて燃焼ガスを生成する燃焼器2と、圧縮機1と同軸に接続され、燃焼器2で生成された燃焼ガスにより駆動する高圧タービン3Hと、高圧タービン3Hからの排ガスにより駆動する低圧タービン3Lとを備え、高圧タービン3Hと低圧タービン3Lとをそれぞれ独立した軸構造とした2軸ガスタービンにおいて、蒸気注入手段で蒸気を注入された空気の一部を、燃焼器2に供給される前に分岐して低圧タービン3Lに導く分岐経路である分岐流路18を備えた2軸ガスタービンであれば、上記効果を得ることができる。
【0198】
また、図12においては、ガスタービンの排ガスの熱量を利用した排熱回収ボイラ115で発生した蒸気を燃焼器およびガスパスに供給する例を示したが、この蒸気発生源は、ガスタービンとは別に設置されたボイラ等によっても構わない。蒸気を使用する各種プラント等において、蒸気使用量の変動がある際に、余剰の蒸気をガスタービンに注入することで熱効率を向上させることができるが、2軸式ガスタービンを適用する際には、本発明によって、圧縮機駆動力と高圧タービン出力をバランスさせてガスタービンを安定に運転することができる。
【実施例12】
【0199】
次に、本発明を、別のガスタービンシステムに適用した第12実施例である2軸式ガスタービンについて図13を用いて説明する。
【0200】
図13に石炭ガス化ガスを発生させる際に生成した窒素を低圧タービン3Lの上流側に注入するガスタービンシステムの全体構成を表すシステムフロー図を示す。
【0201】
図13に示した本実施例の発電用の2軸式ガスタービンでは、図1に示した先の実施例の高湿分ガスタービンシステムと共通する構成は説明を省略している。
【0202】
図13に示した発電用の2軸式ガスタービンにおいて、圧縮機1とは別の別置圧縮機(図示省略)等で圧縮されたガス化用空気202は空気分離器121に供給され、空気分離器121で酸素122と窒素123に分離される。酸素122はガス化炉124へ導かれ、石炭125とともに、ガス化炉124内で石炭ガス化ガス126を発生する。発生した石炭ガス化ガス126はガスタービンの燃料200として使用される。
【0203】
一方、空気分離器121で分離された窒素123は、燃焼器2へ注入される。これにより、燃焼器内の局所的な火炎温度を低下させ、燃焼器内で生成する窒素酸化物(NOx)の排出量を低減することができる。
【0204】
このようなガスタービンでは、燃焼器内に窒素を注入することによって、高圧タービン3Hを駆動する作動流体の流量が増加している。すなわち、窒素吸収経路は、作動流体の流量を増加させる流量増加手段としての役割も有している。そのため、高圧タービンの出力が増加し、このままでは高圧タービンおよび圧縮機1が過回転となってしまう。
【0205】
そこで本実施例では、窒素123の一部が、流量調節弁である分岐流量調節機構19を備えた分岐配管である分岐流路18を通じて分岐窒素127として前記低圧タービン3Lの上流側からガスパスに供給されるようにしている。この分岐窒素127は、高圧タービン3Hから流下した高圧タービン排ガス107と合流する。
【0206】
即ち、本実施例で低圧タービン3Lの上流側からガスパスに供給される分岐窒素127は、図1に示した先の実施例における低圧タービン3Lの上流側からガスパスに供給される増湿空気110に対応するものである。
【0207】
分岐窒素127を低圧タービン3Lに注入すると、低圧タービン入口圧力がその分高くなるため、高圧タービン3Hの出口圧力も高くなる。そのため高圧タービン3Hの膨張比が若干小さくなって、窒素注入による高圧タービンの出力増加を相殺することができる。
【0208】
かくして、石炭ガス化システムに2軸ガスタービンを使用し、空気分離器から発生する窒素を燃焼器へ注入する際にも、本発明によって、圧縮機駆動力と高圧タービン出力をバランスさせてガスタービンを安定に運転することができる。
【0209】
ところで本実施例の分岐窒素127として用いられる窒素は圧縮空気101に比べて温度が低いので冷却効果が高くなり、この分岐窒素127が流れる近傍の低圧タービン3Lの材料温度を低下させることができる。
【0210】
このため、図1に示した先の実施例での前記増湿空気110の代わりにこの分岐窒素127を使用することで、低圧タービン3Lを構成する材料として耐熱温度の低い低級材を使用することができ、2軸式ガスタービンの製造コストを低減することができる。
【実施例13】
【0211】
最後に、本発明を、さらに別のガスタービンシステムに適用した第13実施例である2軸式ガスタービンについて図14を用いて説明する。
【0212】
図14に低カロリーガスをガスタービン燃焼器の燃料として使用する際に、圧縮空気の一部を低圧タービン3Lの上流側に注入するガスタービンシステムの全体構成を表すシステムフロー図を示す。
【0213】
図14に示した本実施例の発電用の2軸式ガスタービンでは、図1に示した先の実施例の高湿分ガスタービンシステムと共通する構成は説明を省略している。
【0214】
図14に示した発電用の2軸式ガスタービンにおいて、図1の燃料200に相当するものは、低カロリーガス128である。低カロリーガスは、天然ガスなどの通常のガス燃料と比べて、発熱量が1/2以下、さらに低いものでは1/10程度しかない。そのため、ガスタービンを所定の定格燃焼ガス温度で運転するためには、燃料を多量に供給しなければならない。
【0215】
しかし、燃焼器内に燃料を多量に供給することによって、高圧タービン3Hを駆動する作動流体の流量が増加するため、高圧タービンの出力が増加し、このままでは高圧タービンおよび圧縮機1が過回転となってしまう。本実施例では、燃料として低カロリーガスを用いた2軸ガスタービンにおいて、圧縮機1で圧縮された圧縮空気102の一部が、燃焼器2に供給される前に、流量調節弁である分岐流量調節機構19を備えた分岐配管である分岐流路18を通じて分岐空気129として前記低圧タービン3Lの上流側からガスパスに供給され、高圧タービン3Hから流下した高圧タービン排ガス107と合流する。
【0216】
即ち、本実施例で低圧タービン3Lの上流側からガスパスに供給される分岐空気129は、図1に示した先の実施例における低圧タービン3Lの上流側からガスパスに供給される増湿空気110に対応するものである。
【0217】
分岐空気129を低圧タービン3Lに注入すると、低圧タービン入口圧力がその分高くなるため、高圧タービン3Hの出口圧力も高くなる。そのため高圧タービン3Hの膨張比が若干小さくなって、低カロリー燃料の燃焼による高圧タービンの出力増加を相殺することができる。
【0218】
かくして、低カロリーガス焚きガスタービンシステムに2軸ガスタービンを使用する際にも、本発明によって、圧縮機駆動力と高圧タービン出力をバランスさせてガスタービンを安定に運転することができる。
【0219】
ところで、低カロリーガスは、例えば空気を用いて石炭をガス化するプラントや、製鉄所、製油所などの各種プラントから発生するものが考えられる。また、油田やガス田などから副生的に発生するものも考えられる。これらの低カロリーガスは、その発生源の運転状況や季節変化などによって、燃料発熱量が変動することが考えられる。そのような場合にも、発熱量が大きい場合は分岐弁である分岐流量調節機構19の開度を小さくして、分岐空気129の流量が小さくなるように調整し、逆に発熱量が小さい場合は分岐弁である分岐流量調節機構19の開度を大きくして、分岐空気129の流量が大きくなるように調整することで、発熱量が変化しても圧縮機駆動力と高圧タービン出力をバランスさせてガスタービンを安定に運転することができる。
【産業上の利用可能性】
【0220】
本発明は高効率ガスタービンとして発電用のガスタービンに利用できるほか、熱と電力を併給可能なコジェネレーションシステム、又はポンプ,圧縮機,スクリュー等の機械駆動用エンジンのガスタービンとしても適用可能である。
【符号の説明】
【0221】
1 圧縮機
2 燃焼器
3H 高圧タービン
3L 低圧タービン
4 増湿器
5 再生熱交換器
6 本体ケーシング
18 分岐流路
19 分岐流量調節機構
20 発電機
21 シャフト
22 給水加熱器
23 排ガス再加熱器
24 水回収装置
25 排気塔
26 水処理装置
27 吸気噴霧装置
28 ガス圧縮機
30 冷却装置
32 高圧タービンロータ
33 低圧タービンロータ
35 高圧タービンの最終段動翼
36 低圧タービンの初段動翼
38 高圧側静止シュラウド
39 タービンケーシング
40 低圧タービンの初段静翼
40a,42a 空気流路
42 パージ空気
46 高圧側静止シュラウド
47,53,74,84 キャビティ
56,76 分岐空気供給孔
48,49 ホイールスペース
73 部屋
94 空気流路
100 ガスタービン吸い込み空気
101 吸い込み空気
102 圧縮空気
103 抽気空気
104 低温高湿空気
105 高温高湿空気
106 燃焼ガス
107 高圧タービン排気ガス
108 低圧タービン排気ガス
109 排気ガス
110 分岐空気
114 給水
115 排熱回収ボイラ
116,117,118,120 蒸気
121 空気分離器
122 酸素
123,127 窒素
124 ガス化炉
125 石炭
126 石炭ガス化ガス
128 低カロリーガス
129 分岐圧縮空気
200 燃料
300 噴霧水
301 増湿装置給水
310 噴霧水量制御弁
311 給水量制御弁
320 高圧ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気を圧縮する圧縮機と、
該圧縮機で圧縮された空気と燃料とを燃焼させて燃焼ガスを生成する燃焼器と、
前記圧縮機と同軸に接続され、前記燃焼器で生成された燃焼ガスにより駆動する高圧タービンと、
該高圧タービンからの排ガスにより駆動する低圧タービンとを備え、
該高圧タービンと該低圧タービンとをそれぞれ独立した軸構造とした2軸ガスタービンにおいて、
前記燃焼器に蒸気を供給する蒸気供給系統と、
該蒸気供給系統の蒸気の一部または全量を前記燃焼器に供給される前に分岐して前記低圧タービンに導く分岐経路を備え、
前記高圧タービン及び前記低圧タービンを駆動する作動流体が流れるガスパスを構成する部材によってガスパスから区画されたキャビティと、
前記タービンケーシングの外側から前記キャビティに、前記分岐経路で分岐された蒸気を導入する流路とを有することを特徴とする2軸ガスタービン。
【請求項2】
請求項1に記載の2軸ガスタービンにおいて、
ガスパスを構成する前記部材として、タービンケーシングと該高圧タービンの最終段動翼の外周側との間に高圧側静止シュラウドを有し、
前記キャビティが前記高圧側静止シュラウドの内部に形成され、
前記高圧側静止シュラウドが、前記ガスパスと連通する供給口を有することを特徴とする2軸ガスタービン。
【請求項3】
請求項1に記載の2軸ガスタービンにおいて、
タービンケーシングと前記低圧タービンの初段静翼の外周側との間に前記キャビティが形成され、
前記初段静翼は、内部に流体が流通する内部流路が形成され、
前記分岐経路で分岐された蒸気を、前記タービンケーシングの外側から前記キャビティを経由して前記初段静翼の内部流路に導入する流路を有することを特徴とする2軸ガスタービン。
【請求項4】
請求項3に記載の2軸ガスタービンにおいて、
前記初段静翼の内部流路は、前記ガスパスと連通する噴出孔を有することを特徴とする2軸ガスタービン。
【請求項5】
請求項4に記載の2軸ガスタービンにおいて、
前記噴出孔は、前記初段静翼の前縁近傍に開口していることを特徴とする2軸ガスタービン。
【請求項6】
請求項3〜5の何れか一項に記載の2軸ガスタービンにおいて、
該低圧タービンの初段静翼の内周側に、該高圧タービンのロータ端面と該低圧タービンのロータ端面とからホイールスペースが形成され、
前記初段静翼の内部流路に導入された蒸気を、前記ホイールスペースに導入する流路を有することを特徴とする2軸ガスタービン。
【請求項7】
請求項6に記載の2軸ガスタービンにおいて、
低圧タービンロータに、該ホイールスペースと該低圧タービンの初段動翼の根元側とを連通する流路を備えたことを特徴とする2軸ガスタービン。
【請求項8】
請求項1に記載の2軸ガスタービンにおいて、
ガスパスを構成する前記部材として、タービンケーシングと該高圧タービンの最終段動翼の外周側との間に設けられた高圧側静止シュラウドと、前記高圧タービンの後流側で該タービンケーシングの内側に設けられた中間静止シュラウドを有し、
前記キャビティが前記中間静止シュラウドの内部に形成され、
前記中間静止シュラウドが、前記ガスパスと連通する供給口を有することを特徴とする2軸ガスタービン。
【請求項9】
請求項1〜8の何れか一項に記載の2軸ガスタービンにおいて、
該分岐経路で分岐する流体の流量を制御する分岐流量調節機構を備えたことを特徴とする2軸タービン。
【請求項10】
請求項9に記載の2軸ガスタービンにおいて、
該低圧タービンの出力指令値に基づいて該分岐調節機構を制御する制御装置を備えたことを特徴とする2軸ガスタービン。
【請求項11】
請求項1〜10の何れか一項に記載の2軸ガスタービンにおいて、
該分岐経路は、該高圧タービンを駆動した後の排気ガスを該低圧タービンに導く流路に接続されていることを特徴とする2軸ガスタービン。
【請求項12】
請求項1〜11の何れか一項に記載の2軸ガスタービンにおいて、
該圧縮機の回転軸に、該燃焼器に供給する燃料を昇圧する燃料昇圧機を連結したことを特徴とする2軸ガスタービン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−15146(P2013−15146A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−231298(P2012−231298)
【出願日】平成24年10月19日(2012.10.19)
【分割の表示】特願2009−57281(P2009−57281)の分割
【原出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)