説明

2軸式ガスタービンと、2軸式ガスタービン用の燃焼器の予混合燃焼開始方法

【課題】失火などの問題を発生することなく予混合燃焼を開始できる2軸式ガスタービンと、燃焼器の予混合燃焼開始方法を提供することを課題とする。
【解決手段】個別に予混合燃焼を開始できる燃焼領域82f〜82fに区分される構成の予混合バーナ82を備える燃焼器8と、燃焼器8を制御するガスジェネレータ制御装置10を含んで構成される2軸式ガスタービンとする。そして、燃焼器8の予混合燃焼開始時に、ガスジェネレータ制御装置10は燃空比に基づいて、予混合燃焼を開始する予混合バーナ82の燃焼領域82f〜82fを選択するとともに、選択した燃焼領域82f〜82fごとに予混合燃焼を開始し、さらに、燃空比の増加に伴って、予混合燃焼する燃焼領域82f〜82fを増やすことを特徴とする燃焼器の予混合燃焼開始方法とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2軸式ガスタービンと、2軸式ガスタービンに備わる燃焼器の予混合燃焼開始方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な2軸式ガスタービンは、圧縮機、燃焼器、及び高圧タービンを含んで構成されるガスジェネレータを備えるとともに、負荷機器に接続される低圧タービン(パワータービン)を備え、ガスジェネレータの回転軸(ガスジェネレータ軸)が、低圧タービンの回転軸と分離するように構成されている。
【0003】
ガスジェネレータでは、圧縮機が大気を圧縮して圧縮空気を生成し、燃焼器で燃料と圧縮空気を混合燃焼して燃焼ガスを発生させる。
燃焼器で発生された燃焼ガスは、高圧タービンを回転駆動して圧縮機の駆動力を発生させた後、低圧タービンに送られてこれを回転駆動する。
【0004】
従来、ガスタービンの燃焼器においては、燃料と空気とが混合しながら燃焼する拡散燃焼法と、燃料と空気とを予め混合して燃焼する予混合燃焼法を併用している。そして、負荷が「0」の状態から負荷がある程度大きくなるまでは拡散燃焼し、負荷がある程度大きくなった時点で予混合燃焼を開始することで、燃焼器の火炎を安定させるとともに窒素酸化物(NOx)の発生を抑制している。
【0005】
また、拡散燃焼用のバーナの周囲に予混合燃焼用のバーナを配置して、さらに、予混合燃焼用のバーナを円周方向の複数の領域に区分し、区分された領域ごとに予混合燃焼を開始できる燃焼器が、例えば特許文献1に開示されている。
【0006】
特許文献1に開示される燃焼器は、負荷が「0」のときから負荷がある程度大きくなるまで拡散燃焼して安定な火炎を得るとともに、負荷の上昇に伴って増加する燃料流量に応じて予混合燃焼を開始する。予混合燃焼の開始に際しては、燃料流量に応じて予混合燃焼する領域を選択し、選択した領域ごとに予混合燃焼を開始する。そして燃料流量の増加に伴って、予混合燃焼する領域を増やしていくことでNOxの発生を好適に抑制している。
すなわち、燃焼器の予混合燃焼開始時には、燃料流量の増加に対応して、予混合燃焼する領域を選択して増やしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−280267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、2軸式ガスタービンでは、負荷の大きさによってガスジェネレータ軸の回転速度が変化し、さらに、ガスジェネレータ軸の回転速度の変化に応じて圧縮機の空気取り込み口の開度を変化させ、燃焼器の空気流量が変化するように運転される。したがって、燃焼器の予混合燃焼開始に際し、燃料流量に応じて予混合燃焼を開始する領域を選択すると、空気流量をA、燃料流量をFとしたときの燃空比(F/A)が、空気流量Aの変化に伴って変化した場合に、選択された領域で好適に予混合燃焼が開始されず失火などの問題が発生する虞がある。
【0009】
そこで本発明は、失火などの問題に対処して予混合燃焼を開始できる2軸式ガスタービンと、燃焼器の予混合燃焼開始方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、本発明は、個別に予混合燃焼を開始できる領域に区分される構成の予混合燃焼用のバーナを備え、予混合燃焼開始の際には、燃空比(F/A)に基づいて、予混合燃焼を開始する領域を選択する燃焼器を備える2軸式ガスタービンと、燃焼器の予混合燃焼開始方法とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、失火などの問題に対処して予混合燃焼を開始できる2軸式ガスタービンと、燃焼器の予混合燃焼開始方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】2軸式ガスタービンの構成を示す模式図である。
【図2】(a)は、2軸式ガスタービンの負荷の大きさと燃料流量の関係を示すグラフ、(b)は、燃料流量と大気温度の関係を示すグラフである。
【図3】(a)は、2軸式ガスタービンの負荷の大きさと空気流量の関係を示すグラフ、(b)は、空気流量と大気温度の関係を示すグラフである。
【図4】燃焼器の概略構成図であって、(a)は断面図、(b)は図4の(a)を正面の側から見た正面図である。
【図5】負荷と変更点の関係の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について、適宜図を参照して詳細に説明する。
なお、図2の(a)の横軸は負荷L、縦軸は燃料流量Fを示し、(b)の横軸は大気温度T、縦軸は、燃料流量Fを示す。
また、図3の(a)の横軸は負荷L、縦軸は空気流量Aを示し、(b)の横軸は大気温度T、縦軸は、空気流量Aを示す。
【0014】
図1に示すように、2軸式ガスタービン1は、主にガスジェネレータ2と出力タービン3とを含んで構成される。
出力タービン3は、低圧タービン4の出力タービン軸6に負荷機器5が接続されて構成される。負荷機器5は、例えば発電機であり、負荷の大きさ(以下、負荷Lと称する)を含んだ負荷の状態を示す負荷状態信号Lsを出力する。
【0015】
ガスジェネレータ2は、主に圧縮機7、燃焼器8、高圧タービン9、及びガスジェネレータ制御装置(制御装置)10を含んで構成される。
圧縮機7は、大気から取り込む空気を圧縮して圧縮空気16を生成する。また、圧縮機7の空気取り込み側には、IGV(Inlet Guide Vane:入口案内羽)11が備わる。
IGV11は、IGV駆動装置12によって駆動され、圧縮機7の空気取り込み口7aの開度を変える機能を有する。この構成によって、IGV11を駆動して圧縮機7の空気取り込み量を変えることができる。
【0016】
燃焼器8は、燃料供給源13から燃料制御弁14を経由して供給される燃料15と、圧縮機7で生成される圧縮空気16を混合燃焼して燃焼ガス17を発生させる。燃焼器8の詳細は後記する。
【0017】
高圧タービン9は、燃焼器8で生成される燃焼ガス17で、ロータであるガスジェネレータ軸18を回転駆動し、その出力を圧縮機7に伝達する。
また、高圧タービン9のガスジェネレータ軸18を回転駆動して減圧された燃焼ガス17は、出力タービン3の低圧タービン4に導入されて、出力タービン軸6を回転駆動する。
【0018】
回転速度検出器21は、ガスジェネレータ軸18の回転速度ωを検出して、回転速度信号ωsに変換して出力し、ガスジェネレータ制御装置10に入力する。
ガスジェネレータ制御装置10は、入力される回転速度信号ωsによってガスジェネレータ軸18の回転速度ωを算出できる。
大気温度検出器23は、圧縮機7の空気取り込み口7aに備わってガスジェネレータ制御装置10と接続され、圧縮機7に取り込まれる大気温度Tを検出する。そして、検出した大気温度Tを温度信号Tsに変換して出力し、ガスジェネレータ制御装置10に入力する。ガスジェネレータ制御装置10は、入力される温度信号Tsによって大気温度Tを算出できる。
【0019】
ガスジェネレータ制御装置10は、燃料制御部10a、IGV開度制御部10b、及び切替制御部10cを含んで構成される。
燃料制御部10aは、負荷機器5から入力される負荷状態信号Lsと、大気温度検出器23から入力される温度信号Tsに基づいて、燃焼器8における燃料15の好適な流量(燃料流量F)を算出し、燃焼器8における燃料15の流量が、算出した燃料流量Fになるように燃料制御弁14の開度を制御する。
【0020】
前記したように、負荷機器5から入力される負荷状態信号Lsは、例えば負荷の大きさ(負荷L)を含んだ負荷の状態を示す信号であり、ガスジェネレータ制御装置10は、負荷機器5から入力される負荷状態信号Lsによって負荷Lを算出することができる。
【0021】
2軸式ガスタービン1においては、燃焼器8における燃料流量Fが負荷Lに対応して調節される。
負荷Lに対応した好適な燃料流量Fは、予め実験等で求めておけばよい。
【0022】
例えば、2軸式ガスタービン1における負荷Lと燃料流量Fの好適な関係が、図2の(a)に示すように、負荷Lの上昇に伴って燃料流量Fが増加する特性を有する場合、ガスジェネレータ制御装置10の燃料制御部10aは、負荷機器5から入力される負荷状態信号Lsによって負荷Lを算出する。そして、図2の(a)に示すグラフを参照して、算出した負荷Lに対応する燃料流量Fを算出する。
【0023】
また、負荷Lに対応した好適な燃料流量Fは、大気温度Tに応じて変化する。具体的に、図2の(b)に示すように、好適な燃料流量Fは、大気温度Tの上昇に伴って減少する。したがって、負荷Lと燃料流量Fの関係は、図2の(a)に破線で示すように、大気温度Tに応じた幅Fを持って構成される。
そして、ガスジェネレータ制御装置10の燃料制御部10a(図1参照)は、大気温度検出器23から入力される温度信号Tsによって大気温度Tを算出し、算出した大気温度Tに基づいて図2の(a)に示すグラフを参照して燃料流量Fを算出する。
【0024】
さらに、ガスジェネレータ制御装置10の燃料制御部10a(図1参照)は、算出した燃料流量Fに対応する燃料制御弁14(図1参照)の開度を算出するとともに、燃料制御弁14の開度が算出した開度になるように、燃料制御弁14を駆動する。
【0025】
図2の(a)、(b)に示される、負荷Lと大気温度Tに対応する燃料流量Fは、負荷Lと大気温度Tと燃料流量Fの好適な関係を実験等で設定し、例えばマップデータ(第1のマップデータ)として図示しない記憶部に記憶しておけばよい。
ガスジェネレータ制御装置10の燃料制御部10a(図1参照)は、負荷機器5(図1参照)から入力される負荷状態信号Lsによって算出する負荷Lと、大気温度検出器23(図1参照)から入力される温度信号Tsによって算出する大気温度Tに基づいて第1のマップデータを参照し、負荷Lと大気温度Tに対応した燃料流量Fを算出できる。
【0026】
図1に戻って、ガスジェネレータ制御装置10のIGV開度制御部10bは、負荷機器5から入力される負荷状態信号Lsによって算出する負荷L、大気温度検出器23から入力される温度信号Tsによって算出する大気温度T、及び回転速度検出器21から入力される回転速度信号ωsによって算出するガスジェネレータ軸18の回転速度ωに基づいて、燃焼器8における好適な圧縮空気16の流量(空気流量A)を算出する。そして、算出した空気流量Aに対応する、圧縮機7の空気取り込み量を算出し、さらに、算出した空気取り込み量の空気を圧縮機7が取り込むための空気取り込み口7aの開度を算出する。
【0027】
2軸式ガスタービン1においては、燃焼器8を流れる圧縮空気16の流量(空気流量A)が負荷Lに対応して調節される。
負荷Lに対応した好適な空気流量Aは、予め実験等で求めておけばよい。
【0028】
例えば、2軸式ガスタービン1における負荷Lと空気流量Aの好適な関係が、図3の(a)に示すように、負荷Lの上昇に伴って空気流量Aが増加する特性を有する場合、ガスジェネレータ制御装置10のIGV開度制御部10bは、負荷機器5から入力される負荷状態信号Lsによって負荷Lを算出する。そして、図3の(a)に示すグラフを参照して、算出した負荷Lに対応する空気流量Aを算出する。
【0029】
また、負荷Lに対応した好適な空気流量Aは、大気温度Tに応じて変化する。具体的に、図3の(b)に示すように、好適な空気流量Aは、大気温度Tの上昇に伴って減少する。したがって、負荷Lと空気流量Aの関係は、図3の(a)に破線で示すように、大気温度Tに応じた幅Aを持って構成される。
そして、ガスジェネレータ制御装置10のIGV開度制御部10bは、大気温度検出器23から入力される温度信号Tsによって大気温度Tを算出し、算出した大気温度Tに基づいて図3の(a)に示すグラフを参照して空気流量Aを算出する。
【0030】
さらに、好適な空気流量Aは、ガスジェネレータ軸18の回転速度ωに応じて変化する。そこで、図3の(a)に示す、負荷Lと大気温度Tに応じた好適な空気流量Aを示すグラフを、ガスジェネレータ軸18の回転速度ωに対応させて設定する。
そして、ガスジェネレータ制御装置10のIGV開度制御部10bは、回転速度検出器21から入力される回転速度信号ωsによってガスジェネレータ軸18の回転速度ωを算出し、算出した回転速度ωに応じて図3の(a)に示すグラフを参照して空気流量Aを算出する。
【0031】
そして、ガスジェネレータ制御装置10のIGV開度制御部10bは算出した空気流量Aに対応する空気取り込み口7aの開度を算出するとともに、空気取り込み口7aの開度が算出した開度になるように、IGV駆動装置12を介してIGV11を駆動する。
【0032】
図3の(a)、(b)に示される、負荷Lと大気温度Tと回転速度ωに対応する空気流量Aは、負荷Lと大気温度Tとガスジェネレータ軸18の回転速度ωと空気流量Aの好適な関係を実験等で設定し、例えばマップデータ(第2のマップデータ)として図示しない記憶部に記憶しておけばよい。
ガスジェネレータ制御装置10のIGV開度制御部10bは、負荷機器5から入力される負荷状態信号Lsによって算出する負荷Lと、大気温度検出器23から入力される温度信号Tsによって算出する大気温度Tと、回転速度検出器21から入力される回転速度信号ωsによって算出するガスジェネレータ軸18の回転速度ωに基づいて第2のマップデータを参照し、負荷Lと大気温度Tとガスジェネレータ軸18の回転速度ωに対応した空気流量Aを算出できる。
【0033】
以上のように、図1に示す2軸式ガスタービン1は、負荷Lと大気温度Tとに応じて燃焼器8の燃料流量Fを変化させることができるとともに、負荷Lと大気温度Tとガスジェネレータ軸18の回転速度ωに応じて燃焼器8の空気流量Aを変化させることができる。
【0034】
なお、大気温度Tの上昇に伴う減少率は、空気流量Aより燃料流量Fで大きく、空気流量Aと燃料流量Fとの比である燃空比(F/A)は、大気温度Tの上昇に伴って減少する特性となる。
【0035】
図1に戻って、ガスジェネレータ制御装置10の切替制御部10cは、燃料制御部10aが算出する燃料流量Fと、IGV開度制御部10bが算出する空気流量Aに基づいて燃空比(F/A)を算出し、算出した燃空比(F/A)に基づいて燃焼器8の燃焼を制御する。
【0036】
次に、燃焼器8(図1参照)の構成について説明する。
図4の(a)、(b)に示すように、燃焼器8は一方が閉塞した有底の円筒形状を呈する燃焼器カバー80内に形成され、中央部には拡散燃焼用のバーナである拡散パイロットバーナ81が備わる。
さらに、拡散パイロットバーナ81の外周を取り囲むように、予混合燃焼用のバーナである予混合バーナ82が備わる。予混合バーナ82は拡散パイロットバーナ81の全周に亘って備わり、複数の予混合バーナ用燃料ノズル82a、及び保炎器83を備えて構成される。
また、燃焼器カバー80の内周に沿うように燃焼器ライナ84aが備わって燃焼室84を形成する。
燃焼器8は、燃焼室84が形成される側を正面とする。
【0037】
圧縮機7から流入する圧縮空気16は、燃焼器ライナ84aと燃焼器カバー80の間を通って流通し、拡散パイロットバーナ用空気16bと予混合バーナ用空気16aとに分かれて、それぞれ拡散パイロットバーナ81と予混合バーナ82とに供給される。
【0038】
燃料供給源13から燃料制御弁14を経由して燃焼器8に供給される燃料15は、主に拡散パイロットバーナ81に燃料15を供給する拡散燃料系85と、予混合バーナ82に燃料15を供給する予混合燃料系86とに分流し、それぞれ拡散パイロットバーナ81と予混合バーナ82に供給される。
【0039】
拡散燃料系85には、燃料15の流量を調節するための流量調節弁85aが備わる。流量調節弁85aは、ガスジェネレータ制御装置10の切替制御部10cと接続され、切替制御部10cからの制御信号によって開度が調節される。
また、予混合燃料系86には、燃料15の流量を調節するための流量調節弁87が備わる。流量調節弁87は、ガスジェネレータ制御装置10の切替制御部10cと接続され、切替制御部10cからの制御信号によって開度が調節される。
【0040】
本実施形態に係る燃焼器8の予混合バーナ82は、図4の(b)に示すように正面の側(燃焼室84の側)から見たときに、拡散パイロットバーナ81の外周に沿って、上方から時計回りで略等分に円周方向に、4つの燃焼領域82f、82f、82f、82fに区分される。
この燃焼領域82f、82f、82f、82fが、個別に予混合燃焼できる領域になる。
そして、図4の(a)に示す予混合燃料系86は、燃焼領域82f〜82fのそれぞれに、個別に燃料15を供給可能なように4系統からなり、燃焼領域82f〜82fに対応して、予混合燃料系86f〜86fが備わる。
さらに、予混合燃料系86f〜86fには、それぞれ流量調節弁87f〜87fが備わる(図4の(a)には、予混合燃料系86f,86fと流量調節弁87f,87fが図示されている)。
【0041】
このように構成される燃焼器8は、拡散パイロットバーナ81に燃料15を供給すると、拡散パイロットバーナ81は、燃焼室84で拡散パイロットバーナ用空気16bと燃料15を混合して拡散燃焼する。
また、予混合バーナ用燃料ノズル82aを介して予混合バーナ82に燃料15を供給すると、燃料15は予混合バーナ82内部で予混合バーナ用空気16aと混合(予混合)して燃焼室84で予混合燃焼する。
すなわち、本実施形態に係る燃焼器8は、拡散パイロットバーナ81による拡散燃焼と予混合バーナ82による予混合燃焼を並行して運転することができる。
【0042】
さらに、予混合バーナ82は、燃焼領域82f〜82fに個別に燃料15を供給することができ、燃料15が供給された燃焼領域82f〜82fで予混合燃焼することができる。
すなわち、切替制御部10cが、燃料15を供給する燃焼領域82f〜82fを選択することで、予混合燃焼する燃焼領域82f〜82fを選択できる。
例えば、燃焼領域82fで予混合燃焼する場合、切替制御部10cは流量調節弁87fを開いて燃焼領域82fに燃料15を供給すればよいし、燃焼領域82fと燃焼領域82fで予混合燃焼する場合、切替制御部10cは流量調節弁87f,87fを開いて燃焼領域82f,82fに燃料15を供給すればよい。
【0043】
この構成によって、燃焼器8は、例えば予混合燃焼開始時に、燃焼領域82f〜82fのそれぞれで個別に予混合燃焼を開始できる。
そして、図1に示す2軸式ガスタービン1に備わる燃焼器8の予混合燃焼開始の際、ガスジェネレータ制御装置10は、負荷Lが「0」のときから負荷Lがある程度上昇するまで、燃焼器8の拡散パイロットバーナ81で拡散燃焼して安定した火炎を発生させる。
そして、燃焼器8の拡散燃焼によって負荷Lがある程度上昇した時点で、ガスジェネレータ制御装置10は、燃焼器8の予混合バーナ82で予混合燃焼を開始して、NOxの発生を抑える。
【0044】
さらに、予混合バーナ82が複数、例えば図4の(b)に示すように4つの燃焼領域82f〜82fに区分される場合、ガスジェネレータ制御装置10は、2軸式ガスタービン1の負荷Lに応じて予混合燃焼を開始する予混合バーナ82の燃焼領域82f〜82fを選択するとともに選択した燃焼領域で予混合燃焼を開始する。そして、ガスジェネレータ制御装置10は、負荷Lの増加に対応して、予混合燃焼する燃焼領域を増やすように燃焼器8の予混合燃焼開始を制御し、より好適にNOxの発生を抑える。
以下、燃焼器8の予混合燃焼開始時に拡散燃焼を開始すること、及び予混合燃焼する燃焼領域82f〜82fを増やすことを「動作状態の変更」と称し、燃焼器8の動作状態を変更する点を「変更点」と称する。
【0045】
例えば、1軸式のガスタービンにおいては、負荷の大きさによらず回転軸の回転速度が一定であることから燃焼器の空気流量Aを一定にできる。したがって、燃焼器を制御する制御装置は、負荷Lの変化に対応して変化する燃焼器の燃料流量Fに基づいて燃焼器の動作状態を変更することで、NOxの発生を好適に抑制可能な運転が可能になる。
【0046】
しかしながら、前記したように、図1に示す2軸式ガスタービン1は、負荷Lに応じてガスジェネレータ軸18の回転速度ωが変化するのに伴って、燃焼器8の空気流量Aを変化させることから、ガスジェネレータ制御装置10が、燃焼器8の燃料流量Fに基づいて動作状態を変更すると、失火などの問題が発生する場合がある。
【0047】
そこで、本実施形態に係る2軸式ガスタービン1は、燃焼器8の動作状態を変更するのに好適な燃空比(F/A)を予め設定しておくとともに、ガスジェネレータ制御装置10は、負荷Lの変化に対応して変化する燃空比(F/A)に基づいて燃焼器8の動作状態を変更する構成とした。
【0048】
図5に示すように、負荷が「0」のときに変更点P1を設定する。負荷が「0」の状態は、例えば、低圧タービン4(図1参照)が定格回転速度の約30%で回転している状態であり、変更点P1は、図4の(a)に示すガスジェネレータ制御装置10の切替制御部10cが、燃焼器8の拡散パイロットバーナ81で拡散燃焼を開始する変更点である。
すなわち、切替制御部10cが流量調節弁85aを開いて、拡散パイロットバーナ81に燃料15を供給する点である。
なお、変更点P1において、燃料制御弁14は、図2の(a)に示すグラフに基づいて、負荷が「0」のときに設定される燃料流量Fとなる開度で開かれている。
【0049】
燃焼器8(図1参照)で拡散燃焼が開始すると負荷Lが上昇し、ガスジェネレータ制御装置10の燃料制御部10a(図1参照)は、負荷Lと大気温度Tに基づいて図2の(a)に示すグラフを参照し、燃料流量Fを算出する。
また、IGV開度制御部10b(図1参照)は、負荷Lと大気温度Tとガスジェネレータ軸18の回転速度ωに基づいて図3の(a)に示すグラフを参照し、空気流量Aを算出する。
そして、ガスジェネレータ制御装置10の切替制御部10c(図1参照)は、燃料流量Fと空気流量Aとから、燃空比(F/A)を算出する。
【0050】
負荷Lの上昇に伴って燃空比(F/A)が増加し、予め設定してある燃空比FAに達すると、切替制御部10c(図1参照)は、予混合燃料系86fに備わる流量調節弁87f(図4の(a)参照)を開いて予混合バーナ82の燃焼領域82f(図4の(b)参照)に燃料15(図1参照)を供給する。
そして、燃料15が供給された予混合バーナ82の燃焼領域82fは、予混合燃焼を開始する。
【0051】
燃空比FAは、予混合バーナ82の燃焼領域82f(図4の(b)参照)で予混合燃焼を開始する変更点P21の燃空比(F/A)である。
燃空比FAは、予混合バーナ82の燃焼領域82fで予混合燃焼を開始するのに好適な燃空比(F/A)として、予め実験等で設定しておくことができる。
【0052】
予混合バーナ82の燃焼領域82f(図4の(b)参照)で予混合燃焼が開始すると、負荷Lはさらに上昇する。そして、ガスジェネレータ制御装置10の燃料制御部10a(図1参照)とIGV開度制御部10b(図1参照)は、それぞれ負荷Lと大気温度Tとガスジェネレータ軸18の回転速度ωに基づいて燃料流量Fと空気流量Aを算出し、ガスジェネレータ制御装置10の切替制御部10c(図1参照)は燃空比(F/A)を算出する。
【0053】
燃空比(F/A)が増加して、予め設定してある燃空比FAに達すると、切替制御部10c(図1参照)は、予混合燃料系86fに備わる流量調節弁87fを開いて予混合バーナ82の燃焼領域82f(図4の(b)参照)に燃料15(図1参照)を供給する。
そして、燃料15が供給された予混合バーナ82の燃焼領域82fは、予混合燃焼を開始する。
【0054】
燃空比FAは、予混合バーナ82の燃焼領域82f(図4の(b)参照)で予混合燃焼を開始する変更点P22の燃空比(F/A)である。
燃空比FAは、予混合バーナ82の燃焼領域82fで予混合燃焼を開始するのに好適な燃空比(F/A)として、予め実験等で設定しておくことができる。
【0055】
同様に燃空比(F/A)が、予め設定してある燃空比FAに達すると、切替制御部10c(図1参照)は、予混合バーナ82の燃焼領域82f(図4の(b)参照)に燃料15(図1参照)を供給し、燃空比(F/A)が、予め設定してある燃空比FAに達すると、切替制御部10cは、予混合バーナ82の燃焼領域82f(図4の(b)参照)に燃料15を供給する。
そして、予混合バーナ82の燃焼領域82fと燃焼領域82fは順次予混合燃焼を開始する。
【0056】
燃空比FAは、予混合バーナ82の燃焼領域82f(図4の(b)参照)で予混合燃焼を開始する変更点P23の燃空比(F/A)であり、燃焼領域82fで予混合燃焼を開始するのに好適な燃空比(F/A)として、予め実験等で設定しておくことができる。
同様に、燃空比FAは、予混合バーナ82の燃焼領域82f(図4の(b)参照)で予混合燃焼を開始する変更点P24の燃空比(F/A)であり、燃焼領域82fで予混合燃焼を開始するのに好適な燃空比(F/A)として、予め実験等で設定しておくことができる。
【0057】
そして、予混合バーナ82の全領域(燃焼領域82f〜82fの全て)で予混合燃焼が開始されると、低圧タービン4の出力タービン軸6(図1参照)の回転速度が定格回転速度に達し、2軸式ガスタービン1(図1参照)を定格運転することができる。
【0058】
このように、燃焼器8(図1参照)の動作状態を変更する変更点P21〜P24を、燃空比(F/A)に基づいて設定すると、予混合バーナ82の燃焼領域82f〜82f(図4の(b)参照)は、それぞれが好適な燃空比(F/A)の状態で予混合燃焼を開始することができ、例えば失火などの問題に対処できる。
【0059】
例えば、負荷Lと燃空比(F/A)の関係が、図5に破線で示すような特性である場合、変更点P21〜P24は、それぞれの燃空比FA〜FAを変えることなく破線で示される特性上の点に移行する。
換言すると、負荷Lの上昇に伴って、燃空比(F/A)が図5に破線で示すように増加する場合であっても、ガスジェネレータ制御装置10(図1参照)は、燃空比FA〜FAのときに燃焼器8(図1参照)の動作状態を変更することができる。
【0060】
したがって、負荷Lと燃空比(F/A)がどのような特性で変化する場合であっても、ガスジェネレータ制御装置10(図1参照)は、燃空比FA〜FAのときに燃焼器8(図1参照)の動作状態を変更することができる。前記したように、燃空比FA〜FAは、図4の(b)に示す、燃焼器8の燃焼領域82f〜82fが、予混合燃焼を開始するのに好適な燃空比であり、燃焼器8の燃焼領域82f〜82fが予混合燃焼を開始するときの失火などの問題の発生を抑制できる。
【0061】
なお、本実施形態に係る予混合バーナ82を、図4の(b)に示すように正面の側(燃焼室84の側)から見たときに、拡散パイロットバーナ81の外周に沿って、上方から時計回りに、4つの燃焼領域82f、82f、82f、82fに区分し、上方の燃焼領域82fから予混合燃焼を開始することで、高圧タービン9のガス温度分布の偏差を小さくできることがわかっている。
【0062】
また、燃焼領域82f、82f、82f、82fの順に予混合燃焼を開始すると、一酸化炭素(CO)の発生を好適に抑制できる。
互いに隣接する燃焼領域の一方で予混合燃焼する場合、予混合燃焼する燃焼領域と予混合燃焼しない燃焼領域の境界部分の不燃焼部分からCOが発生することがわかっている。そこで、燃料領域82fの次に、隣接する燃料領域82fで予混合燃焼を開始して、予混合燃焼する燃焼領域と予混合燃焼しない燃焼領域の境界部分が少なくなるように構成する。
【0063】
以上のように、本実施形態に係る2軸式ガスタービン1(図1参照)においては、燃空比(F/A)に基づいて、燃焼器8(図1参照)の動作状態を変更する変更点P21〜P24(図5参照)を設定し、ガスジェネレータ制御装置10(図1参照)は、変更点P21〜P24で燃焼器8の動作状態を変更することを特徴とする。
すなわち、ガスジェネレータ制御装置10の切替制御部10c(図1参照)は、燃空比(F/A)に基づいて、燃焼器8の動作状態を変更する。
【0064】
そして、変更点P21〜P24(図5参照)の燃空比(F/A)が、燃焼器8の動作状態を変更するのに好適な燃空比(F/A)となるように構成することで、変更点P21〜P24における失火の発生など、燃焼器8の動作状態の変更による問題の発生を好適に抑制できるという優れた効果を奏する。
【符号の説明】
【0065】
1 2軸式ガスタービン
8 燃焼器
10 ガスジェネレータ制御装置(制御装置)
81 拡散パイロットバーナ(拡散燃焼用のバーナ)
82 予混合バーナ(予混合燃焼用のバーナ)
82f,82f,82f,82f 燃焼領域(領域)
A 空気流量
F 燃料流量
F/A 燃空比

【特許請求の範囲】
【請求項1】
拡散燃焼用のバーナの周囲に環状に配置される予混合燃焼用のバーナが、個別に予混合燃焼できる少なくとも2つの領域に円周方向に区分される燃焼器と、
予混合燃焼していない前記燃焼器の予混合燃焼開始を制御する制御装置と、を含んで構成される2軸式ガスタービンであって、
前記制御装置は、前記燃焼器の予混合燃焼開始時に、前記燃焼器における空気流量Aと燃料流量Fの比である燃空比(F/A)に基づいて予混合燃焼を開始する前記領域を選択するとともに選択した前記領域ごとに予混合燃焼を開始し、前記燃空比の増加に伴って予混合燃焼する前記領域を増やすことを特徴とする2軸式ガスタービン。
【請求項2】
拡散燃焼用のバーナの周囲に環状に配置される予混合燃焼用のバーナが、個別に予混合燃焼できる少なくとも2つの領域に区分されるように構成される、2軸式ガスタービン用の燃焼器の予混合燃焼開始方法であって、
予混合燃焼していない前記燃焼器の予混合燃焼開始を制御する制御装置が、前記燃焼器における空気流量Aと燃料流量Fの比である燃空比(F/A)に基づいて予混合燃焼を開始する前記領域を選択するステップと、
選択した前記領域ごとに予混合燃焼を開始するステップを有し、
前記燃空比の増加に伴って予混合燃焼する前記領域を増やすことを特徴とする、2軸式ガスタービン用の燃焼器の予混合燃焼開始方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−168957(P2010−168957A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−11052(P2009−11052)
【出願日】平成21年1月21日(2009.1.21)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)