説明

24時間換気用遮音扉

【課題】 換気経路を確保しつつ、必要に応じて遮音性、気密性を付与することが可能な24時間換気用遮音扉と提案する。
【解決手段】 床Fと所定の隙間Sを有した状態で室内の出入口に開閉可能に設けられた扉11と、扉11の下端に上下移動可能に設けられた気密材14と、気密材14の上下移動を操作する操作部であるツマミ15とを有している24時間換気用遮音扉であって、ツマミ15は、扉11のドアノブ13の近傍に配置されており、扉11の施錠装置と連動している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、換気経路を有し、且つ、遮音機能を有した24時間換気用遮音扉に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、バリアフリー設計により、ドアの沓摺りを設けないことで、室内出入口の凹凸を無くして床面を平らにすることが一般的になっている。この場合、ドアの開閉を可能にするために、ドアと床との間に10mm程度の隙間を設けてあり、この隙間が音漏れの原因となっている。
【0003】
このため、ドアの下端に、ドアの開閉に伴い上下移動する気密材を設けることにより、前記ドアと床との隙間を塞ぐ方法が知られている。
例えば特許文献1には、ドアの下端凹部に気密材が内蔵されているとともに、気密材を床に向けて突出可能にする中間可動部とこの中間可動部を駆動する突出駆動部が内蔵されたドア装置が記載されている。当該ドア装置は、ドアを閉めることにより、突出駆動部がドア枠に衝突して中間可動部を駆動し、気密材を、ドアの下端から床に向けて突出させるものである。そして、気密材がドアの下端から突出することにより、気密材は床面に当接し、ドアと床の隙間が塞がれるため、ドアの遮音性、気密性を向上させることを可能としている。
【特許文献1】特開平5−163877号公報([0009]−[0019]、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、平成15年の建築基準法改正に伴い、24時間換気が義務付けられたことにより、ドアと床との隙間を換気経路として利用する場合には、前記のドアの開閉に伴い上下移動する気密材が設けられたドアでは、ドアを閉めるとともに換気経路が確保できないという問題を有していた。
【0005】
その反面、特にプライバシーが要求されるトイレのように、依然として気密性は求められているという問題も有している。
【0006】
本発明は、前記の問題点を解決するためになされたものであり、換気経路を確保しつつ、必要に応じて遮音性、気密性を付与することが可能な24時間換気用遮音扉と提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような課題を解決するために、本発明の24時間換気用遮音扉は、床と所定の隙間を有した状態で室内の出入口に開閉可能に設けられた扉と、前記扉の下端に上下移動可能に設けられた気密材と、前記気密材の上下移動を操作する操作部とを有していることを特徴としている。
【0008】
かかる24時間通気用遮音扉は、扉の下端に設けられた気密材を、操作部により操作して上下させるため、シックハウス対策に必要な換気経路を、扉を閉じた状態でも、扉と床との間に設けられた隙間により確保することを可能としている。そして、必要に応じて操作部を操作することにより、気密材を扉の下端から突出させてこの隙間を塞ぐため、容易に室内の遮音性、気密性を確保することができる。そのため、特にプライバシーが要求されるトイレや寝室の扉に当該24時間通気用遮音扉を設置すれば効果的である。
なお、操作部は、扉の下端に取り付けられた気密材を上下させる駆動機構と扉の内部において連動しているため、操作部が気密材から離れた位置に配置されていても、連動された駆動機構により気密材の遠隔操作を可能としている。
【0009】
また、前記扉が、開き戸であれば、建物内のあらゆる出入口に適用が可能となり好適である。また、操作部が、当該開き戸の取っ手近傍に配置されていれば、気密材の上下操作を開き戸の開閉操作時に容易に行うことが可能となり好適である。
【0010】
また、前記扉が、上吊り式の引き戸であれば、バリアフリー設計住宅や和室などの出入口に関しても、その美観が損なわれることなく、シックハウス対策に必要な換気経路を確保しつつ、必要時に遮音性、気密性を確保することが可能であるため好適である。また、操作部が、当該引き戸の引き手近傍に配置されていれば、気密材の上下操作を引き戸の開閉操作時に容易に行うことが可能となり好適である。
【0011】
さらに、前記操作部が、前記扉の施錠装置と連動していれば、トイレなど、使用時に施錠するとともに、防音性、気密性が求められることが想定される部屋に関して、施錠とともに防音性、気密性が確保されるため、好適である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の24時間換気用遮音扉により、常時は、扉の下端と床との間に形成された隙間により換気経路を確保し、必要時には、当該隙間を封鎖して遮音性、気密性を確保することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、説明において、同一要素には同一の符号を用い、重複する説明は省略する。
なお、説明において換気状態とは、換気遮音扉と床との隙間が開放された状態を示し、遮音状態とは気密材により隙間が遮蔽された状態を示す。
【0014】
図1は、本発明による24時間換気用遮音扉(以下、単に「換気遮音扉」という場合がある)が配設された建物の断面図であり、1階と2階にそれぞれ給気孔2,2を有し、給気孔2,2から建物内に給気した空気を、建物内で循環させた後、2階のトイレの排気孔3から排気する構成となっている。また、図2は、第1の実施の形態に係る換気遮音扉の正面図であり、(a)は換気状態、(b)は遮音状態を示している。また、図3は、図2の換気遮音扉の部分拡大正面図であり、(a)は換気状態、(b)は遮音状態を示している。また、図4は、図2の換気遮音扉の部分拡大断面図であり、(a)は換気状態、(b)は遮音状態を示している。また、図5は、第2の実施の形態に係る換気遮音扉の正面図であり、(a)は換気状態、(b)は遮音状態を示している。さらに、図6は、図5の換気遮音扉の部分拡大斜視図であり、(a)は換気状態、(b)は遮音状態を示している。
【0015】
<第1の実施の形態>
第1の実施の形態(以下、「第1実施形態」という場合がある)に係る換気遮音扉10は、図1に示す建物1の2階のトイレTの出入口に設けられた開き戸であり、床Fとの間には所定の隙間Sが形成されて、空気の通気が可能となっている。
【0016】
換気遮音扉10は、図2に示すように、壁に一体に取り付けられた枠材12に開閉可能に取り付けられた扉11と、この扉11の開閉時の持ち手としてのドアノブ13と、扉11の下端に上下移動可能に設けられた気密材14と、ドアノブ13の近傍に配置されて、気密材14の上下移動を操作する操作部であるツマミ15とから構成されている。
【0017】
気密材14とツマミ15とは、シャフト16を介して連動しており、ツマミ15を回転させることにより、気密材14が上下移動する構成となっている。また、ツマミ15は、施錠装置15aとも連動しているため、ツマミ15を回転させて、施錠装置15aを突出させることにより、扉11が施錠されるとともに、気密材14が下降して、扉11と床Fとの間に形成された隙間Sを遮蔽する構成となっている(図3(a)参照)。
【0018】
図4に示すように、扉11の下端は、開口部が下向きになるように、凹部が形成されている。そして、この凹部には凹部の形状と同形状で気密材14を取り付けるためのケース19が、固定されている。気密材14は、このケース19に、複数のリンク機構18を介して取り付けられている。
【0019】
リンク機構18は、図3及び図4に示すように、2枚の板材が、それぞれの一方の端部が回転可能にピン結合されることにより構成されている。そして、このリンク機構18の一方の端部はケース19に固定されており、他方の端部は気密材14の上面に固定されている。また、この2枚の板材のピン結合部には、図3に示すように、シャフト16に連結するスライド材17が取り付けられている。各リンク機構18は、換気状態では、シャフト16側に凸のくの字を示し、遮音状態では2枚に板材が縦に並んだI字を示す。なお、シャフト16とスライド材17との結合部には、換気状態で上向きに凸のくの字を示すリンク機構16aが配置されている。
【0020】
第1実施形態に係る換気遮音扉10は、常時は図4(a)に示すように気密材14がケース19内に収納された状態であり、扉11と床Fとの間に形成された隙間Sが開放された状態にある。このため、給気孔2から建物内に給気された空気は、建物内を循環した後、この隙間Sを通過してトイレTの排気孔3から排出される(図1参照)。
【0021】
そして、トイレTの使用時には、ツマミ15を回転させることにより、シャフト16が下降して、リンク機構16aを下向きに押す。これによりリンク機構16aは、左右に広がるため、スライド材17を横向きに押し、スライド材17が移動する。スライド材17が移動することにより、リンク機構18の板材のピン結合部が押されて、リンク機構18が上下方向に広がる。リンク機構18の上側の端部はケース19に固定されているため、リンク機構18が広がることにより、下側の端部に固定された気密材14が下方向に押し出される。これにより、気密材14が床Fに当接して、隙間Sを遮蔽する(図2〜図4参照)。ここで、本実施の形態では、気密材14の上下移動を、水平を保った状態で行うことを可能とするために、リンク機構18を扉11の両端部と中央部との3箇所に配置している。つまり、ツマミ15は、気密材14の駆動機構であるシャフト16、リンク機構16a,18、及びスライド材17と連動しているため、気密材14の遠隔操作を可能としている。
なお、ツマミ15は、施錠装置15aと連動しているため、隙間Sの遮蔽とともに、換気遮音扉10の施錠も行われる。
【0022】
<第2の実施の形態>
第2の実施の形態に係る換気遮音扉20は、図1に示すように、1階の居間Lの出入口に設けられた、引き戸であり(図5参照)、床Fとの間に所定の隙間Sが形成されているため、給気孔2から給気された空気の通気が可能となっている。
【0023】
換気遮音扉20は、図5に示すように、壁に一体の取り付けられた枠材22に開閉可能に取り付けられた扉21と、この扉21の開閉時の持ち手としての引き手23と、扉21の下端に上下移動可能に設けられた気密材24と、引き手23の内部に配置されて、気密材24の上下移動を操作する操作部であるツマミ25とから構成されている。
【0024】
扉21は、その上端に吊り金具27が取り付けられており、吊り金具27が扉21の上方の枠材22の内部に設けられたレール(図示せず)に移動可能に取り付けられていることにより、床Fとの間に隙間Sを形成した状態で吊下げられている。
【0025】
気密材24とツマミ25とは、気密材24の駆動機構であるシャフト26を介して連動しており、ツマミ25を上下移動させることにより、気密材24が上下移動して、扉21と床Fとの間に形成された隙間Sの開閉を行う構成となっている(図5及び図6参照)。
【0026】
つまり、換気状態では、ツマミ25を上に上げた状態として、隙間Sを開放し、遮音状態では、ツマミ25を下げることにより、シャフト26が気密材24を下方向に押し出し、気密材24が床Fに当接することにより、隙間Sを密閉する(図6参照)。
【0027】
以上の各実施の形態に示した24時間換気用遮音扉により、通常時は床との間に形成された隙間により通気が可能なため、建物内の24時間換気を行うとともに、必要時には、操作部を操作することにより容易に隙間を遮蔽することが可能なため、プライバシーの確保が可能となる。
また、当該24時間換気用遮音扉は、扉の形態や形状に限定されることなく適用が可能なため、建物内のあらゆる出入口において、利用が可能である。
【0028】
以上、本発明について、好適な実施形態について説明したが、本発明は前記各実施形態に限られず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更が可能である。
例えば、前記各実施の形態では、気密材の上下移動をするための操作部をドアノブや引き手近傍に配置する構成としたが、これに限定されるものではなく、例えば、24時間換気用遮音扉の下端に配置することにより、足で簡易に気密材を上下移動させる構成としてもよい。
【0029】
また、気密材を扉直下の床に設け、操作部を壁に設けることにより、遮音状態には床から気密材を突出させて隙間を遮蔽する構成として、ドアよりも厚く大きな内空を有した壁や床を加工することにより施工を容易にする構成としてもよい。
【0030】
また、気密材を上下移動させる機構は前記のものに限定されるものではなく、例えば、ネジや歯車を利用した機構やバネを利用した機構等を利用してもよい。
操作部の形状は前記のものに限定されるものではなく、シャフトの上下移動を可能とするものを適宜採用すればよい。
また、扉の形状も前記のものに限定されるものではなく、例えば、両開き戸、引き違い戸等にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明による24時間換気用遮音扉が配設された建物の断面図である。
【図2】第1の実施の形態に係る換気遮音扉の正面図であり、(a)は換気状態、(b)は遮音状態を示している。
【図3】図2の換気遮音扉の部分拡大正面図であり、(a)は換気状態、(b)は遮音状態を示している。
【図4】図2の換気遮音扉の部分拡大断面図であり、(a)は換気状態、(b)は遮音状態を示している。
【図5】第2の実施の形態に係る換気遮音扉の正面図であり、(a)は換気状態、(b)は遮音状態を示している。
【図6】図5の換気遮音扉の部分拡大斜視図であり、(a)は換気状態、(b)は遮音状態を示している。
【符号の説明】
【0032】
1 建物
10 換気遮音扉(24時間換気用遮音扉)
11 扉
14 気密材
15 ツマミ(操作部)
20 換気遮音扉(24時間換気用遮音扉)
21 扉
24 気密材
25 ツマミ(操作部)
F 床
S 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床と所定の隙間を有した状態で室内の出入口に開閉可能に設けられた扉と、前記扉の下端に上下移動可能に設けられた気密材と、前記気密材の上下移動を操作する操作部とを有していることを特徴とする、24時間換気用遮音扉。
【請求項2】
前記扉が、開き戸であることを特徴とする、請求項1に記載の24時間換気用遮音扉。
【請求項3】
前記扉が、上吊り式の引き戸であることを特徴とする、請求項1に記載の24時間換気用遮音扉。
【請求項4】
前記操作部が、前記扉の施錠装置と連動していることを特徴とする、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の24時間換気用遮音扉。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−57364(P2006−57364A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−241759(P2004−241759)
【出願日】平成16年8月23日(2004.8.23)
【出願人】(000174884)三井ホーム株式会社 (87)
【Fターム(参考)】