説明

3−(1,3−ベンゾジオキソル−5−イル)−6−(4−シクロプロピルピペラジン−1−イル)−ピリダジンと、その塩と、その溶媒和物と、そのヒスタミンH3受容体アンタゴニストとしての利用法

ヒスタミンH3アンタゴニスト活性を有する式(I)の3-(1,3-ベンゾジオキソル-5-イル)-6-(4-シクロプロピルピペラジン-1-イル)ピリダジン、その塩および溶媒和物は医薬組成物に使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒスタミンH3受容体アンタゴニストとなる新規な化合物と、医薬組成物におけるその化合物の利用法と、その化合物を含む医薬組成物と、その化合物または医薬組成物を用いた治療法に関する。本発明の化合物は、ヒスタミンH3受容体に対する大きくて選択的な結合親和性を示す。これはヒスタミンH3受容体に対するアンタゴニスト活性、逆アゴニスト活性、アゴニスト活性を示唆している。その結果、この化合物は、ヒスタミンH3受容体に関係する疾患または異常の治療に役立つ。
【背景技術】
【0002】
ヒスタミンH3受容体の存在が数年前から知られていて、新しい薬を開発するためこの受容体が現在注目されている(例えばDrugs Fut.、1996年、第21巻、507〜520ページ;Progress in Drug Research、1995年、第45巻、107〜165ページを参照のこと)。ヒトのヒスタミンH3受容体は以前にクローニングされている(参考:Molecular Pharmacology、1999年、第55巻、1101〜1107ページ)。このヒスタミンH3受容体は、主に中枢神経系に位置するシナプス前自己受容体である。最近の証拠によると、H3受容体は固有の構成的活性を試験管内と生体内で示すことが示唆されている(すなわちアゴニストがないと活性である;例えばNature、2000年、第408巻、860〜864ページ)。逆アゴニストとして作用する化合物はこの活性を抑制することができる。ヒスタミンH3受容体は、ヒスタミンの放出を調節するとともに、他の神経伝達物質(例えばセロトニン、アセチルコリン)の放出を調節することが明らかにされている。したがってヒスタミンH3受容体のアンタゴニスト、すなわち逆アゴニストは、脳内でこれら神経伝達物質の放出を増大させることが期待されよう。逆に、ヒスタミンH3受容体のアゴニストは、ヒスタミンの生合成を抑制し、ヒスタミンの放出を抑制し、他の神経伝達物質(例えばセロトニン、アセチルコリン)の放出を抑制する。これらの知見は、ヒスタミンH3受容体のアゴニスト、逆アゴニスト、アンタゴニストが神経活動のメディエータとして重要である可能性があることを示唆している。したがってヒスタミンH3受容体は、新しい治療薬の重要なターゲットである。
【0003】
いくつかの刊行物にヒスタミンH3のアゴニストとアンタゴニストの調製法と利用法が開示されている。これらのうちのいくつかはイミダゾール誘導体である(例えばDrugs Fut.、1996年、第21巻、507〜520ページ;Expert Opinion on Therapeutic Patents、2000年、第10巻、1045〜1055ページを参照のこと)。しかしヒスタミンH3受容体のリガンドでイミダゾールなしのものもいろいろと報告されている(例えばArch. Pharm. Pharm. Med. Chem.、1999年、第332巻、389〜398ページ;J. Med. Chem.、2000年、第43巻、2362〜2370ページ;Arch. Pharm. Pharm. Med. Chem.、1998年、第331巻、395〜404ページ;Farmaco.、1999年、第54巻、684〜694ページ;WO 99/42458、ヨーロッパ特許第0 978 512号、WO 97/17345、アメリカ合衆国特許第6,316,475号、WO 01/66534、WO 01/74810、WO 01/44191、WO 01/74815、WO 01/74773、WO 01/74813、WO 01/74814、WO 02/12190を参照のこと)。現状は、Drug Discovery Today、2005年、第10巻、1613〜1617ページ;Nat. Rev. Drug Discov.、2005年、第4巻、107ページ;Drug Dev. Res.、2006年、第67巻、651〜665ページにまとめられている。ヒスタミンH3受容体のアゴニスト、逆アゴニスト、アンタゴニストが従来から注目されていることを考えると、ヒスタミンH3受容体と相互作用する新規な化合物が、現状に対して非常に望ましい寄与をするであろう。
【0004】
WO 03/066604では、3-(4-シクロプロピルピペラジン-1-イル)-6-(3,4-ジメトキシフェニル)ピリダジンヒドロクロリドが実施例127で言及されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の1つの目的は、食物の摂取を減らす効果を持つ化合物を供給することである。
【0006】
本発明の別の目的は、体重を減らすのに使用できる化合物を供給することである。
【0007】
本発明の別の目的は、体重超過または肥満の治療に使用できる化合物を供給することである。
【0008】
本発明の別の目的は、食欲の抑制または満腹感の誘導に使用できる化合物を供給することである。
【0009】
本発明の別の目的は、2型糖尿病の治療に使用できる化合物を供給することである。
【0010】
本発明の別の目的は、後出の他の疾患または薬理学的状態の治療または予防に使用できる化合物を供給することである。
【0011】
本発明の別の目的は、薬の一般的な条件(例えば非毒性、非突然変異誘発性、ヒトに投与した後に不都合な事態が生じないこと)を満たす化合物を供給することである。
【0012】
本発明の別の目的は、従来の欠点のうちの少なくとも1つをなくすか改善すること、または有用な代替物を提供することである。
【0013】
定義
【0014】
この明細書に現われる構造式では、この明細書全体を通じ、以下の用語は以下に示す意味を持つ。
【0015】
この明細書では、“溶媒和物”という用語は、所定の化学量論的関係の溶質(ここでは本発明の化合物)と溶媒によって形成される複合体である。溶媒は医薬で一般に用いられるものであり、例えば水、エタノール、酢酸などがある。“水和物”という用語は、溶媒分子が水である複合体を意味する。
【0016】
この明細書では、“治療”という用語は、疾患、異常、病気と闘うことを目的とした患者の処置とケアを意味する。この用語には、疾患、異常、病気の進行の遅延、および/または症状と合併症の軽減または緩和、および/または疾患、異常、病気の治療または消失が含まれるものとする。治療を受ける対象は、哺乳動物、その中でもヒトであることが好ましい。
【0017】
この明細書では、“疾患”、“病気”、“異常”という用語は、患者がヒトの正常な生理学的状態ではない状態にあることを指すのに互いに同じ意味で用いられる。
【0018】
この明細書では、“薬”という用語は、患者に薬理学的に活性な化合物を投与するのに適した医薬組成物を意味する。
【0019】
この明細書では、“プロドラッグ”という用語には、生体加水分解可能なアミドと生体加水分解可能なエステルが含まれ、さらに、a)そのようなプロドラッグの生体加水分解可能な基が本発明の化合物に含まれるようにする化合物と、b)所定の官能基の位置で生物学的に酸化または還元されて本発明の薬物質を生成させることのできる化合物も含まれる。そのような官能基の例として、1,4-ジヒドロピリジン、N-アルキル-カルボニル-1,4-ジヒドロピリジン、1,4-シクロヘキサジエン、t-ブチルなどがある。
【0020】
この明細書では、“生体加水分解可能なエステル”という用語は、a)親物質の生物活性を妨げないが、生体内でその物質に望ましい性質(例えば作用持続時間、作用開始など)を与えるか、b)生物学的に不活性だが、患者の体内で生物学的に活性な有効成分に容易に変換される薬物質(本発明では一般式(I)の化合物)のエステルである。利点は、例えば経口投与された生体加水分解可能なエステルが腸から吸収され、血漿中で一般式(I)の化合物に変換されることである。そのような多くの例が従来技術で知られており、例えば、低級アルキルエステル(例えばC1〜4-アルキルエステル)、低級アシルオキシアルキルエステル、低級アルコキシアシルオキシアルキルエステル、アルコキシアシルオキシエステル、アルキルアシルアミノアルキルエステル、コリンエステルなどがある。
【0021】
この明細書では、“生体加水分解可能なアミド”という用語は、a)親物質の生物活性を妨げないが、生体内でその物質に望ましい性質(例えば作用持続時間、作用開始など)を与えるか、b)生物学的に不活性だが、患者の体内で生物学的に活性な有効成分に容易に変換される薬物質(本発明では一般式(I)の化合物)のアミドである。利点は、例えば経口投与された生体加水分解可能なアミドが腸から吸収され、血漿中で一般式(I)の化合物に変換されることである。そのような多くの例が従来技術で知られており、例えば、低級アルキルアミド、α-アミノ酸アミド、アルコキシアシルアミド、アルキルアミノアルキルカルボニルアミドなどがある。
【0022】
この明細書では、“薬理学的に許容可能な”という用語は、通常の医薬の用途に適していること、すなわち患者に不都合な事態が発生しないことなどを意味する。
【0023】
この明細書では、“有効量”という用語は、治療なしの場合と比べて患者の治療に十分有効な用量を意味する。
【0024】
この明細書では、ある化合物の“治療に有効な量”という用語は、所定の疾患とその合併症の臨床的徴候を治療する、または軽減する、または部分的に停止させるのに十分な量を意味する。それを実現するのに十分な量は、“治療に有効な量”と定義される。それぞれの目的に有効な量は、疾患または怪我の重篤度と、患者の体重および全体的状態とによって異なるであろう。適切な用量は、数値の行列を構成し、定型的な実験を利用してその行列の異なる点をテストすることによって決定できることが理解されよう。これはすべて、訓練を積んだ医師または獣医の一般的な技術の範囲である。
【0025】
この明細書では、“代謝物”という用語は、代謝から得られるあらゆる中間体または産物である。
【0026】
この明細書では、“代謝”という用語は、患者に投与された薬物質(本発明では、一般式(I)の化合物)の生体内変化を意味する。
【0027】
上記のものの代表例は、本発明の個々の実施態様である。
【課題を解決するための手段】
【0028】
本発明は、添付の請求項に記載した化合物に関する。本発明の化合物は、公知の化合物とは構造が異なっている。
【0029】
本発明の化合物は、ヒスタミンH3受容体と相互作用するため、ヒスタミンH3受容体との相互作用が恩恵をもたらす多彩な病気と異常の治療に役立つ。したがってこの化合物は、例えば中枢神経系と末梢神経系の疾患の治療に利用できる。
【0030】
本発明は、この化合物の利用法、その中でも特にこの化合物を含む医薬組成物にも関する。
【0031】
別の一実施態様では、本発明は、治療を必要とする患者に本発明の化合物の有効量を投与する操作を含む治療法に関する。
【0032】
さらに別の一実施態様では、本発明は、本発明の化合物を利用した薬の製造に関する。
【発明を実施するための形態】
【0033】
添付の請求項とこの明細書のそれ以外の場所に規定されている本発明の化合物はヒスタミンH3受容体と相互作用するため、ヒスタミンH3受容体との相互作用が恩恵をもたらす多彩な病気と異常の治療に役立つ。したがってこの化合物は、例えば中枢神経系と末梢神経系の疾患の治療に利用できる。
【0034】
本発明の化合物はヒスタミンH3受容体と相互作用するため、ヒスタミンH3相互作用が恩恵をもたらすさまざまな疾患または病気の治療に特に有用である。
【0035】
1つの特徴では、本発明により、本発明の化合物を医薬組成物で使用する方法が提供される。本発明の別の1つの特徴では、この医薬組成物は、活性成分として、本発明の少なくとも1種類の化合物を1種類以上の薬理学的に許容可能な基剤または賦形剤とともに含んでいる。別の1つの特徴では、本発明により、単位用量の形態にされていて本発明の化合物を約0.05mg〜約1000mg(例えば約0.1mg〜約500mgであり、約0.5mg〜約200mgなど)含む医薬組成物が提供される。
【0036】
別の1つの特徴では、本発明により、本発明の化合物を利用して、ヒスタミンH3受容体の抑制が好ましい効果をもたらす疾患と異常を治療するための医薬組成物を調製する方法が提供される。
【0037】
別の1つの特徴では、本発明により、本発明の化合物を利用して、ヒスタミンH3アンタゴニスト活性またはヒスタミンH3逆アゴニスト活性を有する医薬組成物を調製する方法が提供される。
【0038】
別の1つの特徴では、本発明により、本発明の化合物を利用して、体重を減らすための医薬組成物を調製する方法が提供される。
【0039】
別の1つの特徴では、本発明により、本発明の化合物を利用して、体重超過または肥満を治療するための医薬組成物を調製する方法が提供される。
【0040】
別の1つの特徴では、本発明により、本発明の化合物を利用して、食欲抑制または満腹感誘導のための医薬組成物を調製する方法が提供される。
【0041】
別の1つの特徴では、本発明により、本発明の化合物を利用して、体重超過または肥満に関係する異常と疾患(例えば、異常脂血症、冠状心疾患、胆嚢疾患、変形性関節症、さまざまなタイプのがん(子宮内膜がん、乳がん、前立腺がん、大腸がんなど))を予防および/または治療するための医薬組成物を調製する方法が提供される。
【0042】
別の1つの特徴では、本発明により、本発明の化合物を利用して、摂食異常(過食症、ばか食いなど)を予防および/または治療するための医薬組成物を調製する方法が提供される。
【0043】
別の1つの特徴では、本発明により、本発明の化合物を利用して、IGT(グルコース寛容減損)を治療するための医薬組成物を調製する方法が提供される。
【0044】
別の1つの特徴では、本発明により、本発明の化合物を利用して、2型糖尿病を治療するための医薬組成物を調製する方法が提供される。
【0045】
別の1つの特徴では、本発明により、本発明の化合物を利用して、IGTから2型糖尿病への進行を遅延させたり予防したりするための医薬組成物を調製する方法が提供される。
【0046】
別の1つの特徴では、本発明により、本発明の化合物を利用して、インスリンを必要としない2型糖尿病からインスリンを必要とする2型糖尿病への進行を遅延させたり予防したりするための医薬組成物を調製する方法が提供される。
【0047】
別の1つの特徴では、本発明により、本発明の化合物を利用して、ヒスタミンH3受容体の活性化が好ましい効果をもたらす疾患と異常を治療するための医薬組成物を調製する方法が提供される。
【0048】
別の1つの特徴では、本発明により、本発明の化合物を利用して、ヒスタミンH3アゴニスト活性を有する医薬組成物を調製する方法が提供される。
【0049】
別の1つの特徴では、本発明により、本発明の化合物を利用して、アレルギー性鼻炎、潰瘍、食欲不振を治療するための医薬組成物を調製する方法が提供される。
【0050】
別の1つの特徴では、本発明により、本発明の化合物を利用して、アルツハイマー病、ナルコレプシー、注意欠陥障害、注意力減退を治療するための医薬組成物、または睡眠を調節するための医薬組成物を調製する方法が提供される。
【0051】
別の1つの特徴では、本発明により、本発明の化合物を利用して、気道の異常(喘息など)を治療するための医薬組成物、または胃酸分泌を調節するための医薬組成物、または下痢を治療するための医薬組成物を調製する方法が提供される。
【0052】
別の1つの特徴では、本発明により、ヒスタミンH3受容体に関係する異常または疾患を治療するため、治療を必要とする対象に、本発明の化合物の有効量、またはその化合物を含む医薬組成物の有効量を投与する操作を含む方法が提供される。
【0053】
別の1つの特徴では、本発明により、本発明の化合物の有効量が、1日当たり約0.05mg〜約2000mgの範囲である方法が提供される。この範囲は、1日当たり約0.1mg〜約1000mgが好ましく、約0.5mg〜約500mgがより好ましい。
【0054】
1つの特徴では、本発明は、ヒスタミンH3受容体アンタゴニスト活性または逆アゴニスト活性を示すためにヒスタミンH3受容体の阻害が有益である広い範囲の病気と異常の治療に有効である和化合物に関する。
【0055】
別の1つの特徴では、本発明により、体重を減らすため、その必要がある対象に、本発明の化合物の有効量を投与する操作を含む方法が提供される。
【0056】
別の1つの特徴では、本発明により、体重超過または肥満を治療するため、その必要がある対象に、本発明の化合物の有効量を投与する操作を含む方法が提供される。
【0057】
別の1つの特徴では、本発明により、食欲抑制または満腹感誘導のため、その必要がある対象に、本発明の化合物の有効量を投与する操作を含む方法が提供される。
【0058】
別の1つの特徴では、本発明により、体重超過または肥満に関係する異常または疾患(例えば、異常脂血症、冠状心疾患、胆嚢疾患、変形性関節症、さまざまなタイプのがん(子宮内膜がん、乳がん、前立腺がん、大腸がんなど))を予防および/または治療するため、その必要がある対象に、本発明の化合物の有効量を投与する操作を含む方法が提供される。
【0059】
別の1つの特徴では、本発明により、摂食異常(過食症、ばか食いなど)を予防および/または治療するため、その必要がある対象に、本発明の化合物の有効量を投与する操作を含む方法が提供される。
【0060】
別の1つの特徴では、本発明により、IGT(グルコース寛容減損)を治療するため、その必要がある対象に、本発明の化合物の有効量を投与する操作を含む方法が提供される。
【0061】
別の1つの特徴では、本発明により、2型糖尿病を治療するため、その必要がある対象に、本発明の化合物の有効量を投与する操作を含む方法が提供される。
【0062】
別の1つの特徴では、本発明により、IGTから2型糖尿病への進行を遅延させたり予防したりするため、その必要がある対象に、本発明の化合物の有効量を投与する操作を含む方法が提供される。
【0063】
別の1つの特徴では、本発明により、インスリンを必要としない2型糖尿病からインスリンを必要とする2型糖尿病への進行を遅延させたり予防したりするため、その必要がある対象に、本発明の化合物の有効量を投与する操作を含む方法が提供される。
【0064】
別の1つの特徴では、本発明は、ヒスタミンH3受容体アゴニスト活性を示すためにヒスタミンH3受容体の活性化が有益である広い範囲の病気と異常の治療に有効である和化合物に関する。
【0065】
本発明の化合物は、気道の異常(喘息など)の治療に用いること、下痢止め剤として使用すること、胃酸分泌の調節に用いることもできる。
【0066】
さらに、本発明の化合物は、睡眠と覚醒の調節に関係する疾患の治療と、ナルコレプシーや注意欠陥障害の治療に用いることができる。
【0067】
さらに、本発明の化合物は、CNS刺激剤または鎮静剤として用いることができる。
【0068】
本発明の化合物は痙攣に関係する病気の治療にも使用できる。それに加え、本発明の化合物は、乗物酔いとめまいの治療に使用できる。さらに、本発明の化合物は、視床下部下垂体分泌の調節剤、抗鬱剤、脳循環の調節因子として有効であるとともに、過敏性腸症候群の治療にも役立つ。
【0069】
さらに、本発明の化合物は、認知症とアルツハイマー病の治療に使用できる。
【0070】
本発明の化合物は、アレルギー性鼻炎、潰瘍、食欲不振の治療にも役立つ。
【0071】
本発明の化合物はさらに、偏頭痛の治療(例えばThe Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics、1998年、第287巻、43〜50ページを参照)と心筋梗塞の治療(Expert Opinion on Investigational Drugs、2000年、第9巻、2537〜2542ページを参照)にも役立つ。
【0072】
本発明の別の特徴では、本発明の化合物を用いた患者の治療にダイエットおよび/または運動が組み合わされる。
【0073】
本発明の別の特徴では、本発明の1種類以上の化合物を、1種類以上の別の活性物質と適切な任意の比で組み合わせて投与する。そのような別の活性物質の選択は、例えば、抗肥満剤、抗糖尿病剤、抗異常脂血症剤、抗高血圧剤、糖尿病に起因する合併症または糖尿病に関連する合併症を治療するための薬剤、肥満に起因する合併症と異常または肥満に関連する合併症と異常を治療するための薬剤の中から行なうことができる。
【0074】
したがって本発明の別の特徴では、本発明の化合物は、1種類以上の抗肥満剤または食欲調節剤と組み合わせて投与することができる。そのような薬剤の選択は、例えば、CART(コカインアンフェタミン調節転写産物)アゴニスト、NPY(神経ペプチドY)アンタゴニスト、MC4(メラノコルチン4)アゴニスト、MC3(メラノコルチン3)アゴニスト、オレキシン・アンタゴニスト、TNF(腫瘍壊死因子)アゴニスト、CRF(コルチコトロピン放出因子)アゴニスト、CRF BP(コルチコトロピン放出因子結合タンパク質)アンタゴニスト、ウロコルチン・アゴニスト、β3アドレナリン作動性アゴニスト(CL-316243、AJ-9677、GW-0604、LY362884、LY377267、AZ-40140など)、MSH(メラニン細胞刺激ホルモン)アゴニスト、MCH(メラニン凝集ホルモン)アンタゴニスト、CCK(コレシストキニン)アゴニスト、セロトニン再取り込み阻害剤(フルオキセチン、セロキサット、シタロプラムなど)、セロトニンとノルアドレナリンの再取り込み阻害剤、セロトニンとノルアドレナリンを混合した化合物、5HT(セロトニン)アゴニスト、ボンベシン・アゴニスト、ガラニン・アンタゴニスト、成長ホルモン、成長因子(プロラクチン、胎盤性ラクトゲン)、成長ホルモン放出化合物、TRH(甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン)アゴニスト、UCP2または3(脱共役タンパク質2または3)調節因子、レプチン・アゴニスト、DAアゴニスト(ブロモクリプチン、ドプレキシン)、リパーゼ/アミラーゼ阻害剤、PPAR(ペルオキシソーム増殖活性化受容体)調節因子、RXR(レチノイドX受容体)調節因子、TRβアゴニスト、AGRP(アグーチ関連タンパク質)阻害剤、オピオイド・アンタゴニスト(ナルトレキソンなど)、エキセンジン-4、GLP-1、毛様体向神経因子からなるグループの中から行なうことができる。
【0075】
本発明の一実施態様では、本発明の1種類以上の化合物と組み合わせて投与される抗肥満剤はレプチンである。
【0076】
別の一実施態様では、そのような抗肥満剤は、デキサアンフェタミンまたはアンフェタミンである。
【0077】
別の一実施態様では、そのような抗肥満剤は、フェンフルラミンまたはデキサフェンフルラミンである。
【0078】
さらに別の一実施態様では、そのような抗肥満剤はシブトラミンである。
【0079】
さらに別の一実施態様では、そのような抗肥満剤はオルリスタットである。
【0080】
別の一実施態様では、そのような抗肥満剤は、マジンドールまたはフェンテルミンである。
【0081】
さらに別の一実施態様では、そのような抗肥満剤は、フェンジメトラジン、ジエチルプロピオン、フルオキセチン、ブプロピオン、トピラマート、エコピパムのいずれかである。
【0082】
さらに別の一実施態様では、本発明の化合物は、1種類以上の抗糖尿病剤と組み合わせて投与することができる。適切な抗糖尿病剤として、インスリン、インスリン類似体、インスリン誘導体(例えば、ヨーロッパ特許第0 792 290号(ノボ・ノルディスクA/S社)に開示されているもの(例えばNεB29-テトラデカノイルdes(B30)ヒト・インスリン)、ヨーロッパ特許第0 214 826号と第0 705 275号(ノボ・ノルディスクA/S社)に開示されているもの(例えばAspB28ヒト・インスリン)、アメリカ合衆国特許第5,504,188号(イーライ・リリー社)に開示されているもの(例えばLys B28ProB29ヒト・インスリン)、ヨーロッパ特許第0 368 187号(アベンティス社)に開示されているもの(例えばLantus(登録商標))(これら特許文献はすべて、参考としてこの明細書に組み込まれているものとする))、GLP-1誘導体(例えばWO 98/08871(ノボ・ノルディスクA/S社;この出願は、参考としてこの明細書に組み込まれているものとする)に開示されているもの)のほか、経口活性なヒポグリカン剤が挙げられる。
【0083】
経口活性なヒポグリカン剤に含まれていることが好ましいのは、イミダゾリン、スルホニル尿素、ビグアナイド、メグリチニド、オキサジアゾリジンジオン、チアゾリジンジオン、インスリン増感剤、α-グルコシダーゼ阻害剤、β細胞のATP依存性カリウム・チャネルに作用する薬剤(例えばWO 97/26265、WO 99/03861、WO 00/37474(ノボ・ノルディスクA/S社;これらの出願は、参考としてこの明細書に組み込まれているものとする)に開示されているカルシウム・チャネル開放剤、ミチグリニド、カルシウム・チャネル阻害剤(例えばBTS-67582、ナテグリニド))、グルカン・アンタゴニスト(例えばWO 99/01423、WO 00/39088(ノボ・ノルディスクA/S社とアグロン・ファーマシューティカルズ社;どちらの出願も参考としてこの明細書に組み込まれているものとする)に開示されているもののうちの1つ)、GLP-1アゴニスト(例えばWO 00/42026(ノボ・ノルディスクA/S社とアグロン・ファーマシューティカルズ社;この出願は、参考としてこの明細書に組み込まれているものとする)に開示されているもの)、DPP-IV(ジペプチジルペプチダーゼ-IV)阻害剤、PTPアーゼ(プロテインチロシンホスファターゼ)阻害剤、グルコース新生および/またはグリコーゲン分解の促進に関与する肝酵素の阻害剤、グルコース取り込み調節因子、GSK-3(グリコーゲンシンターゼキナーゼ-3)阻害剤、脂質代謝を変化させる化合物(例えば抗脂血症剤)、食物摂取を低下させる化合物、PPAR(ペルオキシソーム増殖活性化受容体)とRXR(レチノイドX受容体)のアゴニスト(例えばALRT-268、LG-1268、LG-1069)である。
【0084】
本発明の一実施態様では、本発明の化合物は、インスリン、インスリン類似体、インスリン誘導体のいずれか(例えばNεB29-テトラデカノイルdes(B30)ヒト・インスリン、AspB28ヒト・インスリン、Lys B28ProB29ヒト・インスリン、Lantus(登録商標))、またはこれらのうちの1種類以上を含む混合組成物と組み合わせて投与することができる。
【0085】
本発明の別の一実施態様では、本発明の化合物は、スルホニル尿素(例えばトルブタミド、クロルプロパミド、トラザミド、グリベンクラミド、グリピジド、グリメピリド、グリカジド、グリブリド)と組み合わせて投与することができる。
【0086】
本発明の別の一実施態様では、本発明の化合物は、ビグアナイド(例えばメトフォルミン)と組み合わせて投与することができる。
【0087】
本発明のさらに別の一実施態様では、本発明の化合物は、メグリチニド(例えばレパグリニドまたはナテグリニド)と組み合わせて投与することができる。
【0088】
本発明のさらに別の一実施態様では、本発明の化合物は、チアゾリジンジオン・インスリン増感剤(例えばトログリタゾン、シグリタゾン、ピオグリタゾン、ロシグリタゾン、イサグリタゾン、ダルグリタゾン、エングリタゾン、CS-011/CI-1037、T 174)またはWO 97/41097、WO 97/41119、WO 97/41120、WO 00/41121、WO 98/45292(これらの出願はすべて、参考としてこの明細書に組み込まれているものとする)に開示されている化合物と組み合わせて投与することができる。
【0089】
本発明のさらに別の一実施態様では、本発明の化合物は、インスリン増感剤(例えばGI 262570、YM-440、MCC-555、JTT-501、AR-H039242、KRP-297、GW-409544、CRE-16336、AR-H049020、LY510929、MBX-102、CLX-0940、GW-501516)またはWO 99/19313、WO 00/50414、WO 00/63191、WO 00/63192、WO 00/63193、WO 00/23425、WO 00/23415、WO 00/23451、WO 00/23445、WO 00/23417、WO 00/23416、WO 00/63153、WO 00/63196、WO 00/63209、WO 00/63190、WO 00/63189(ノボ・ノルディスクA/S社;これらの出願はすべて参考としてこの明細書に組み込まれているものとする)に開示されている化合物と組み合わせて投与することができる。
【0090】
本発明のさらに別の一実施態様では、本発明の化合物は、α-グルコシダーゼ阻害剤(例えばボグリボース、エミグリタート、ミグリトール、アカルボース)と組み合わせて投与することができる。
【0091】
本発明の別の一実施態様では、本発明の化合物は、β細胞のATP依存性カリウム・チャネルに作用する薬剤(例えばトルブタミド、グリベンクラミド、グリピジド、グリカジド、BTS-67582、レパグリニド)と組み合わせて投与することができる。
【0092】
本発明のさらに別の一実施態様では、本発明の化合物は、ナテグリニドと組み合わせて投与することができる。
【0093】
本発明のさらに別の一実施態様では、本発明の化合物は、抗高脂血症剤または抗脂血症剤(例えばコレスチラミン、コレスチポール、クロフィブラート、ゲンフィブロジル、ロバスタチン、プラバスタチン、シンバスタチン、プロブコール、デキストロチロキシン)と組み合わせて投与することができる。
【0094】
本発明のさらに別の一実施態様では、本発明の化合物は、抗脂血症剤(例えばコレスチラミン、コレスチポール、クロフィブラート、ゲムフィブロジル、ロバスタチン、プラバスタチン、シンバスタチン、プロブコール、デキストロチロキシン)と組み合わせて投与することができる。
【0095】
本発明の別の特徴では、本発明の化合物は、2種類以上の上記化合物(例えばメトフォルミンとスルホニル尿素(例えばグリブリド);スルホニル尿素とアカルボース;ナテグリニドとメトフォルミン;アカルボースとメトフォルミン;スルホニル尿素とメトフォルミンとトログリタゾン;インスリンとスルホニル尿素;インスリンとメトフォルミン;インスリンとメトフォルミンとスルホニル尿素;インスリンとトログリタゾン;インスリンとロバスタチン;など)と組み合わせて投与することができる。
【0096】
さらに、本発明の化合物は、1種類以上の抗高血圧剤と組み合わせて投与することができる。抗高血圧剤の例は、β-遮断剤(例えばアルプレノロール、アテノロール、チモロール、ピンドロール、プロプラノロール、メトプロロール)、ACE(アンギオテンシン変換酵素)阻害剤(例えばベナゼプリル、カプトプリル、エナラプリル、ホシノプリル、リシノプリル、キナプリル、ラミプリル)、カルシウム・チャネル遮断剤(例えばニフェジピン、フェロジピン、ニカルジピン、イスラジピン、ニモジピン、ジルチアゼム、ベラパミル)、α-遮断剤(例えばドキサゾシン、ウラピジル、プラゾシン、テラゾシン)である。Remington:『薬学の科学と実際』、第19版、Gennnaro編、マック出版、イーストン、ペンシルベニア州、1995年をさらに参照することができる。
【0097】
本発明の化合物に、ダイエットおよび/または運動と、上記の1種類以上の化合物と、場合によっては他の1種類以上の活性物質とを適切に組み合わせたものはすべて、本発明の範囲に含まれると考えられることを理解すべきである。
【0098】
本発明の化合物はキラルの形態が可能であり、あらゆる鏡像異性体(分離された鏡像異性体、純粋な鏡像異性体、一部が精製された鏡像異性体)、またはそのラセミ混合物は本発明の範囲に含まれるものとする。
【0099】
さらに、分子内に二重結合が存在する場合、全体または一部が飽和した環系が存在する場合、2つ以上の非対称中心が存在する場合、回転が制限された結合が存在する場合には、ジアステレオマーを形成することができる。あらゆるジアステレオマー(分離されたジアステレオマー、純粋なジアステレオマー、一部が精製されたジアステレオマー)、またはその混合物は、本発明の範囲に含まれるものとする。
【0100】
さらに、本発明のいくつかの化合物は異なる互変異性体の形態で存在することができ、その化合物が形成することのできるあらゆる互変異性体の形態は、本発明の範囲に含まれるものとする。
【0101】
本発明には、本発明の化合物の薬理学的に許容可能な塩も含まれる。そのような塩として、薬理学的に許容可能な酸添加塩、薬理学的に許容可能な金属塩、アンモニウム塩、アルキル化アンモニウム塩などがある。酸添加塩としては、無機酸と有機酸の塩がある。適切な無機酸の代表例として、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、リン酸、硫酸、硝酸などがある。適切な有機酸の代表例として、ギ酸、酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、安息香酸、桂皮酸、クエン酸、フマル酸、グリコール酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、シュウ酸、ピクリン酸、ピルビン酸、サリチル酸、コハク酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、酒石酸、アスコルビン酸、パモ酸、ビスメチレンサリチル酸、エタンジスルホン酸、グルコン酸、シトラコン酸、アスパラギン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、EDTA、グリコール酸、p-アミノ安息香酸、グルタミン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸などがある。薬理学的に許容可能な無機酸添加塩または有機酸添加塩の別の例として、J. Pharm. Sci.、1977年、第66巻、2ページ(その内容は参考としてこの明細書に組み込まれているものとする)に記載されている薬理学的に許容可能な塩がある。金属塩の例として、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩などがある。アンモニウム塩およびアルキル化アンモニウム塩の例として、アンモニウム塩、メチルアンモニウム塩、ジメチルアンモニウム塩、トリメチルアンモニウム塩、エチルアンモニウム塩、ヒドロキシエチルアンモニウム塩、ジエチルアンモニウム塩、ブチルアンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩などがある。
【0102】
薬理学的に許容可能な酸添加塩として、本発明の化合物が形成することのできる水和物もある。
【0103】
酸添加塩は、化合物を合成する際の直接的な生成物として得ることができる。あるいは適切な酸を含む適切な溶媒に遊離塩基を溶かし、その溶媒を蒸発させて塩を分離すること、または他の方法で塩と溶媒を分離することができる。
【0104】
本発明の化合物は、当業者によく知られた方法を利用して標準的な低分子量の溶媒と溶媒和物を形成することができる。そのような溶媒和物も本発明の範囲に含まれると考えられる。
【0105】
本発明には、投与後に代謝プロセスによって化学的に変換された後、活性な薬理学的物質になる本発明の化合物のプロドラッグも含まれる。一般に、そのようなプロドラッグは本発明の化合物の機能的誘導体であり、生体内で必要な一般式(I)の化合物に容易に変換される。適切なプロドラッグ誘導体の選択と調製に関する従来法は、例えば『プロドラッグの設計』、H. Bundgaard編、エルゼビア社、1985年に記載されている。
【0106】
本発明には、本発明の化合物の活性な代謝物も含まれる。
【0107】
この明細書に記載した個々の実施態様の1つ以上を組み合わせ、場合によってはそれに個々の請求項のうちの1つ以上も組み合わせると別の実施態様が得られる。本発明は、その実施態様と請求項の可能なあらゆる組み合わせに関する。
【0108】
医薬組成物
【0109】
本発明の化合物は、単独で、または薬理学的に許容可能な基剤または賦形剤と組み合わせ、1回分の用量または複数回の用量の形態で投与することができる。本発明の医薬組成物は、薬理学的に許容可能な基剤または希釈剤、ならびに従来法で知られている他のアジュバントおよび賦形剤とともに製剤にすることができる。そのようなアジュバントおよび賦形剤は、例えばRemington:『薬学の科学と実際』、第19版、Gennnaro編、マック出版、イーストン、ペンシルベニア州、1995年に開示されている。
【0110】
医薬組成物は、適切な任意の経路(例えば経口、直腸、鼻腔、肺、局所(頬と舌下が含まれる)、経皮、槽内、腹腔内、膣、非経口(皮下、筋肉内、鞘内、静脈内、皮膚内が含まれる))で投与するのに合わせた製剤にすることができる。この中では経口経路が好ましい。好ましい経路は、治療対象の全体的な状態と年齢、治療する病気の性質、選択する活性成分によって異なることがわかるであろう。
【0111】
経口投与用の医薬組成物として、固体剤形(例えばカプセル、錠剤、糖剤、ピル、ロゼンジ、粉末、顆粒)が挙げられる。適切な場合には、コーティング(例えば腸溶性コーティング)付きで調製すること、または活性成分が従来技術でよく知られた方法で制御放出(例えば持続放出または延長放出)されるように製剤化することができる。
【0112】
経口投与用の液体剤形として、溶液、エマルジョン、懸濁液、シロップ、エリキシルがある。
【0113】
非経口投与用の医薬組成物としては、無菌注射水溶液、無菌注射非水溶液、分散液、懸濁液、エマルジョンのほか、使用前に再構成して無菌注射溶液にするための無菌粉末がある。デポ注射製剤も本発明の範囲に含まれると考えられる。
【0114】
他の適切な剤形として、座薬、スプレー、軟膏、クリーム、ゲル、吸入剤、皮膚パッチ、インプラントなどがある。
【0115】
典型的な経口用量は、1日に体重1kg当たり約0.001〜約100mgの範囲であり、1回以上(例えば1〜3回)に分けて投与される。この範囲は、1日に体重1kg当たり約0.01〜約50mgが好ましく、約0.05〜約10mgがより好ましい。正確な用量は、投与頻度、投与方法、治療対象の性別、年齢、体重、全体的な状態、治療する病気および同時に治療すべきあらゆる疾患の性質と重篤度、当業者に明らかな他の因子によって異なるであろう。
【0116】
製剤は、当業者に知られた方法によって単位用量の形態で提供することができる。1日に1回以上(例えば1日に1〜3回)経口投与するための典型的な単位用量の形態は、本発明の化合物(または、上に示したような、その化合物の塩または他の誘導体)を0.05〜約1000mg含むことができる。本発明の化合物の量は約0.1〜約500mgが好ましく、約0.5mg〜約200mgがより好ましい。
【0117】
非経口経路(例えば静脈内、鞘内、筋肉内、ならびにそれと同様の投与経路)では、典型的な用量は、経口投与に用いる用量の約半分のオーダーである。
【0118】
本発明の化合物は、一般に、遊離物質として、またはその薬理学的に許容可能な塩として使用される。一例は、遊離塩基基を有する化合物の酸添加塩である。一般式(I)の化合物が遊離塩基基を含んでいる場合には、そのような塩は、遊離塩基の形態になった本発明の化合物の溶液または懸濁液を、化学的に同等な量(酸-塩基当量)の薬理学的に許容可能な酸で処理するという従来法で調製される。重要な無機酸と有機酸の代表例は上に示してある。ヒドロキシ基を有する本発明の化合物の生理学的に許容可能な塩として、その化合物のアニオンを適切なカチオン(例えばナトリウム・イオンまたはアンモニウム・イオン)と組み合わせたものがある。
【0119】
非経口投与には、一般式(I)の新規な化合物を、無菌水溶液、プロピレングリコール水溶液、ゴマ油、ピーナツ油のいずれかに溶かした溶液を使用できる。このような水溶液は、必要な場合にはうまく緩衝せねばならず、液体希釈剤を最初に十分な量の生理食塩水またはグルコースで等張にする。水溶液は、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、腹腔内投与に特に適している。使用する無菌水性媒体はすべて、当業者に知られている標準的な方法で容易に得ることができる。
【0120】
適切な薬理学的基剤として、不活性な固体希釈剤または充填剤、無菌水溶液、さまざまな有機溶媒がある。固体基剤の例は、ラクトース、白土、スクロース、シクロデキストリン、タルク、ゼラチン、寒天、ペクチン、アラビアゴム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、セルロースの低級アルキルエーテルである。液体基剤の例は、シロップ、ピーナツ油、オリーブ油、リン脂質、脂肪酸、脂肪酸アミン、ポリオキシエチレン、水である。同様に、基剤または希釈剤としては従来技術で知られているあらゆる持続放出材料(例えばモノステアリン酸グリセリル、ジステアリン酸グリセリル)があり、単独で、または蝋と混合して用いられる。一般式(I)の新規な化合物と薬理学的に許容可能な基剤を組み合わせて形成した医薬組成物は、上記の投与経路に適したさまざまな剤形で容易に投与される。製剤は、薬学で知られている方法によって単位用量の形態で提供することが好ましい。
【0121】
経口投与に適した本発明の製剤は、分離したユニット(例えばカプセル、錠剤)として提示することができる。各ユニットには所定量の活性成分が含まれており、適切な賦形剤も含まれていてよい。製剤は、粉末または顆粒の形態にすること、または水性液体または非水性液体への溶液または懸濁液にすること、または水中油型エマルジョンまたは油中水型エマルジョンにすることができる。
【0122】
経口投与で固体基剤を用いる場合には、調製物を錠剤にすること、または調製物を粉末またはペレットの形態で硬質ゼラチン・カプセルの中に配置すること、または調製物をトローチまたはロゼンジの形態にすることができる。固体基剤の量は広い範囲が可能だが、通常は約25mg〜約1gとなろう。液体基剤を用いる場合には、調製物をシロップ、エマルジョン、軟質ゼラチン・カプセル、無菌注射液体(例えば水性液体または非水性液体の懸濁液または溶液)の形態にすることができる。
【0123】
従来の錠剤化法によって調製できる典型的な錠剤は、コアの中に、5.0mgの本発明の化合物と、67.8mgのラクトサムPh. Eur.と、31.4mgの微結晶セルロース(Avicel)と、1.0mgのAmberlite(登録商標)IRP88(すなわち錠剤分解剤であるポラクリリンカリウムNF、ローム・アンド・ハアス社)と、十分な量のステアリン酸マグネシウムPh. Eur.を含むことができ、約9mgのヒドロキシプロピルメチルセルロースと約0.9mgのMywacett 9-40T(膜コーティングのための可塑剤として用いられるアシル化されたモノグリセリド)からなるコーティングを備えている。
【0124】
望むのであれば、本発明の医薬組成物は、一般式(I)の化合物に、1種類以上の別の薬理学的に活性な物質(例えば上に記載したものの中から選択した物質)を組み合わせて含むことができる。
【0125】
簡単にまとめると、本発明の化合物は、公知のやり方で、またはそれと同様のやり方で調製することができる。
【0126】
この明細書で引用したあらゆる参考文献(例えば刊行物、特許出願、特許)は、参考としてその全体が、各参考文献が参考として個別かつ具体的に組み込まれ、(法律で許される最大の範囲で)その参考文献の全体がこの明細書に開示されているかのようにしてこの明細書に組み込まれているものとする。
【0127】
あらゆる見出しと小見出しは、便宜上使用しただけであり、いかなる意味でも本発明を制限すると考えてはならない。
【0128】
この明細書に記載したあらゆる例または例示語(例えば“など”)は、単に本発明をよりよく理解できるようにするためのものであり、特に断わらない限り本発明の範囲を制限することはない。明細書中のいかなる用語も、本発明の実施に不可欠であっても明細書で言及されていない何らかの要素を表わすと解釈してはならない。
【0129】
この明細書における特許文書の引用や組み込みは単に便宜上のことであり、引用したり組み込んだりしたことには、そのような特許文書の有効性、および/または特許性、および/または実施可能性についてのいかなる見解も反映されていない。この明細書で参考文献に言及していても、それが従来技術を構成することを認めているわけではない。
【0130】
この明細書では、“備える”という用語は、広く“含む”、“含有する”、“包含する”を意味するものと解釈する(EPOガイドラインC4.13参照)。
【0131】
本発明には、適用できる法律によって許される限り、添付の請求項に記載されている主題に対するあらゆる変更と等価物が含まれる。
【0132】
以下の実施例は例示として提示したものであり、本発明を制限するためではない。
【実施例】
【0133】
以下の実施例では、以下の用語は以下の一般的な意味を持つものとする:hは時間、kDはキロダルトン、Lはリットル、Mはモル、mgはミリグラム、minは分、mlはミリリットル、mMはミリモル、mmolはミリモル、molはモル、Nは規定、NMRは各磁気共鳴スペクトロスコピー、DMSOはジメチルスルホキシド、THFはテトラヒドロフラン、CDCl3は重水素化クロロホルム、DMSO-d6はヘキサ重水素化ジメチルスルホキシド。
【0134】
簡単に述べるならば、本発明の化合物は、公知の方法で,または公知の方法と同様の方法で調製することができる。
【0135】
NMRスペクトルは、Brukerの300MHzまたは400MHzの分光器で記録した。シフト(δ)は、内標準としてのテトラメチルシランから低下する磁場を百万分率(ppm)で与えてある。
【実施例1】
【0136】
3-(1,3-ベンゾジオキソル-5-イル)-6-(4-シクロプロピルピペラジン-1-イル)ピリダジンジヒドロクロリド
【0137】
【化1】

【0138】
ステップ1
【0139】
3-クロロ-6-ピペラジン-1-イルピリダジン
【0140】
ピペラジン(20.0g、232ミリモル)と3,6-ジクロロピリダジン(34.6g、232ミリモル)を2-ブタノンと混合し、16時間にわたって62℃に加熱した。この反応混合物を室温まで冷却し、沈澱した生成物を濾過し、2-ブタノンで洗浄した。固形物をDCM(250ml)の中に再び溶かし、濾過し、濾液を蒸発させた。固形物を真空中で乾燥させると、3-クロロ-6-ピペラジン-1-イルピリダジンが37.3g(81%)得られた。
【0141】
1H NMR (400MHz, CDCl3)δ7.21 (d, 1H)、6.90 (d, 1H)、3.60 (m, 4H)、3.00 (m, 4H)。
【0142】
ステップ2
【0143】
3-クロロ-6-(4-シクロプロピルピペラジン-1-イル)ピリダジン
【0144】
3-クロロ-6-ピペラジン-1-イルピリダジン(9.93g、50ミリモル)をTHF(80ml)に懸濁させ、水(18.9ml)と、[(1-エトキシシクロプロピル)オキシ]トリメチルシラン(17.423g、100ミリモル)と、酢酸(8.5ml、150ミリモル)と、シアノホウ水素化ナトリウム(4.08g、65ミリモル)とを添加した。この混合物を16時間にわたって62℃に加熱し、真空中で溶媒を除去し、残留物をDCM(100ml)および水(75ml)とともに撹拌した。pHを10に調節し、有機相を分離し、水で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させた。真空中で蒸発させると、3-クロロ-6-(4-シクロプロピルピペラジン-1-イル)ピリダジンが固形物として得られ、それをアセトニトリルから再結晶させると生成物が得られた(8.18g、69%)。
【0145】
1H NMR (400MHz, CDCl3)δ7.19 (d, 1H)、6.90 (d, 1H)、3.60 (m, 4H)、2.73 (m, 4H)、1.65 (m, 1H)、0.48 (m, 4H)。
【0146】
ステップ3
【0147】
3-(1,3-ベンゾジオキソル-5-イル)-6-(4-シクロプロピルピペラジン-1-イル)ピリダジンジヒドロクロリド
【0148】
3-クロロ-6-(4-シクロプロピルピペラジン-1-イル)ピリダジン(8.0g、33.5ミリモル)と、アセトニトリル(100ml)と、1Mの炭酸ナトリウム溶液(100.5ml、100.5ミリモル)と、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)クロリド(1.17g、1.67ミリモル)を混合し、窒素雰囲気下で真空にして脱ガスした。3,4-メチレンジオキシベンゼンボロン酸(8.34g、50.3ミリモル)を添加し、得られた混合物を16時間にわたって80℃に加熱した。沈澱した生成物を濾過し、アセトニトリルと水で洗浄し、真空中で乾燥させた。固形物をメタノール(500ml)に懸濁させ、ジオキサンに4MのHClを含む溶液を2.2当量添加した。形成された溶液を濾過し、真空中で濃縮し、アセトニトリル(100ml)を添加した。この懸濁液を1時間にわたって撹拌し、濾過し、固形物を真空中で乾燥させると、3-(1,3-ベンゾジオキソル-5-イル)-6-(4-シクロプロピルピペラジン-1-イル)ピリダジンが黄色の粉末として得られた(11.4g、86%)。
【0149】
1H NMR (400MHz, DMSO-d6)δ8.37 (d, 1H)、7.95 (d, 1H)、7.65 (d, 1H)、7.62 (dd, 1H)、7.12 (d, 1H)、6.15 (s, 2H)、4.58 (広いd, 2H)、3.30〜3.75 (m, 6H)、2.89 (m, 1H)、1.24 (m, 2H)、0.82 (m, 2H)。
【0150】
C18H20N4O2、2×HCl、1×H2Oの微量分析:
計算値:C、52.06%;H、5.82%;N、13.49%;
実測値:C、51.91%;H、5.85%;N、13.57%。
【0151】
3-(1,3-ベンゾジオキソル-5-イル)-6-(4-シクロプロピルピペラジン-1-イル)-ピリダジンジヒドロクロリドで突然変異誘発活性は見られなかった。さらに、マウスを用いたテストでは、この化合物は食物摂取を減らす効果がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3-(1,3-ベンゾジオキソル-5-イル)-6-(4-シクロプロピルピペラジン-1-イル)ピリダジンと、その塩および溶媒和物、好ましくはその薬理学的に許容可能な塩および溶媒和物。
【請求項2】
上記溶媒和物が水和物である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
上記塩がジヒドロクロリドである、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
上記水和物が一水和物である、請求項2に記載の化合物。
【請求項5】
ジヒドロクロリド一水和物の形態である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項6】
薬として使用するための、請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項7】
本明細書に記載のあらゆる疾患、または明細書に記載のあらゆる薬理学的状態の治療に使用するための、請求項1〜6のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の化合物を用いて明細書に記載のあらゆる疾患を治療するための医薬組成物を調製する方法。
【請求項9】
本明細書に記載のあらゆる疾患を治療するため、治療を必要としている対象に、請求項1〜6のいずれか1項に記載の化合物の治療に有効な量を投与する操作を含む方法。
【請求項10】
本明細書に記載した新規なあらゆる特徴、またはその特徴の組み合わせ。

【公表番号】特表2009−538861(P2009−538861A)
【公表日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−512547(P2009−512547)
【出願日】平成19年5月22日(2007.5.22)
【国際出願番号】PCT/EP2007/054940
【国際公開番号】WO2007/137968
【国際公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【出願人】(508269525)ハイ ポイント ファーマシューティカルズ,リミティド ライアビリティ カンパニー (26)
【Fターム(参考)】