説明

3−(1H−インドル−3−イル)−4−[2−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−キナゾリン−4−イル]−ピロール−2,5−ジオンの結晶形態

本発明は、例えば、移植に対して使用され得る、3−(1.H.−インドル−3−イル)−4−[2−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−キナゾリン−4−イル]−ピロール−2,5−ジオンの酢酸塩の新規結晶形態に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非結晶形態およびある結晶形態を含む3−(1.H.−インドル−3−イル)−4−[2−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−キナゾリン−4−イル]−ピロール−2,5−ジオンの酢酸塩の特定の形態、これらの製造方法、このような非結晶および結晶形態を含む医薬組成物、および、温血動物、とりわけヒトの診断方法または、好ましくは、治療処置のためのこれらの使用、または、温血動物、とりわけヒトの診断方法または、好ましくは、治療処置において使用するための医薬品の製造のためのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
3−(1.H.−インドル−3−イル)−4−[2−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−キナゾリン−4−イル]−ピロール−2,5−ジオンは、下記式
【化1】

により示され、WO2002/38561(実施例56)(この全体の記載を出典明示により包含させる)から既知であり、該明細書に記載のとおりに合成できる。
【発明の概要】
【0003】
今回、驚くべきことに、非結晶形態、結晶形態、例えば、多形または擬似多形、例えば、溶媒和物または水和物が、ある条件下でこの化合物の酢酸塩で見ることができることが見いだされ、それは以下で、例えば、A、B、CまたはD結晶形態または溶媒和物形態Sとして記載されており、そしてこれらは非常に有利な特性を有する。このような形態は改良された安定性および純度を示し、したがって、例えば、工場でより容易に取扱うことができ、3−(1.H.−インドル−3−イル)−4−[2−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−キナゾリン−4−イル]−ピロール−2,5−ジオン酢酸塩の医薬組成物の改良された製剤、例えば、高用量製剤のための新規の可能性を開く。
【0004】
本発明の目的のために、“本発明の結晶”なる用語は非結晶形態、結晶形態、例えば、多形、および擬似多形、例えば、溶媒和物および水和物の3−(1.H.−インドル−3−イル)−4−[2−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−キナゾリン−4−イル]−ピロール−2,5−ジオン酢酸塩を含む。本発明の結晶の例は形態A、形態B、形態C、形態Dおよび形態Sである。
【0005】
本発明は、非結晶形態、結晶形態、例えば、多形および擬似多形、例えば、溶媒和物および水和物の3−(1.H.−インドル−3−イル)−4−[2−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−キナゾリン−4−イル]−ピロール−2,5−ジオン酢酸塩、特に下記で定義する形態A、B、形態Sまたはそれらの混合物、好ましくは形態Bまたは形態Aと形態Bの混合物を提供する。
【0006】
非結晶および結晶形態の3−(1.H.−インドル−3−イル)−4−[2−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−キナゾリン−4−イル]−ピロール−2,5−ジオン酢酸塩は、好ましくは本質的に純粋である。本発明において本質的に純粋なる用語は、関連物質の合計が1%未満、好ましくは0.75%未満、より好ましくは0.5%未満であり、そして、残りの溶媒および水が1%未満、好ましくは0.75%未満、より好ましくは0.5%未満、さらに好ましくは0.25重量%未満であることを意味する。
【0007】
さらなる好ましい態様において、3−(1.H.−インドル−3−イル)−4−[2−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−キナゾリン−4−イル]−ピロール−2,5−ジオン酢酸塩の結晶形態は水和物ではなく、すなわち無水和物である。無水和物は、例えば、適当な条件下で一水和物の脱水により製造することができる。
【0008】
本発明のさらなる好ましい態様において、無水である3−(1.H.−インドル−3−イル)−4−[2−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−キナゾリン−4−イル]−ピロール−2,5−ジオン酢酸塩の結晶形態、例えば、形態AまたはBを提供する。
【0009】
本発明のさらにさらなる好ましい態様において、例えば、溶媒、例えば、アセトン、エタノール、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、メタノールまたは水(水和物)中で得られる3−(1.H.−インドル−3−イル)−4−[2−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−キナゾリン−4−イル]−ピロール−2,5−ジオン酢酸塩の溶媒和物を提供する。特に本発明は、溶媒和物、例えば、一水和物形態である、3−(1.H.−インドル−3−イル)−4−[2−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−キナゾリン−4−イル]−ピロール−2,5−ジオン酢酸塩の水和物形態を提供する。
【0010】
本発明のさらなる好ましい態様において、3−(1.H.−インドル−3−イル)−4−[2−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−キナゾリン−4−イル]−ピロール−2,5−ジオン酢酸塩の結晶形態、例えば、下記に記載する結晶形態A、B、CまたはDまたはそれらの混合物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は3−(1.H.−インドル−3−イル)−4−[2−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−キナゾリン−4−イル]−ピロール−2,5−ジオンの酢酸塩無水和物の形態AのX線回折像を示す。X線粉末回折パターンをCuKアルファ放射線源を有するBruker STOE装置を使用して測定する。
【図2】図2は形態AのFT−IRスペクトルを示す。FT−IRスペクトルはBruker Vertexを使用して2つのKBrプレート間のヌジョール法で記録する。サンプルをATR(全反射減衰法)サンプリング装置を使用して試験する。
【図3】図3は形態AのFT−ラマンスペクトルを示す。FT−ラマンスペクトルはBruker RFS 100装置を使用して記録する。
【図4】図4は形態Aの顕微鏡図を示す。
【図5】図5は3−(1.H.−インドル−3−イル)−4−[2−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−キナゾリン−4−イル]−ピロール−2,5−ジオンの酢酸塩無水和物の形態BのX線回折像を示す。X線像において、回折角を横軸(x軸)にプロットし、ピーク強度を縦軸(y軸)にプロットする。X線粉末回折パターンをCuKアルファ放射線源を有するBruker STOE装置を使用して測定する。
【図6】図6は形態BのFT−IRスペクトルを示す。FT−IRスペクトルはBruker Vertexを使用して2つのKBrプレート間のヌジョール法で記録する。サンプルをATR(全反射減衰法)サンプリング装置を使用して試験する。
【図7】図7は形態BのFT−ラマンスペクトルを示す。FT−ラマンスペクトルはBruker RFS 100装置を使用して記録する。
【図8】図8は形態Bの顕微鏡図を示す。
【図9】図9は非結晶形態のX線粉末回折パターンを示す。
【図10】図10は非結晶形態のFT−IRスペクトルを示す。
【図11】図11は非結晶形態のFT−RAMANスペクトルを示す。
【0012】
形態B
形態Bは、80%r.hで最大0.7%の水吸収であってわずかに吸湿性である。
表1
【表1】

示差走査熱量測定(DSC):形態Bの溶融開始温度は約220℃、例えば、約190℃である。
【0013】
形態Bの図1に示されているX線回折パターンを、特に重要な回折ピークの一覧を表2に要約する。
XRPD(X線粉末回折)は約9.7°2θ角で強い回折ピークを示す。
表2
【表2】

【0014】
形態Bは下記の主なIRバンドにより特徴付けることができる:主なIRバンド:1754;1711;11574;1486;1462;1378;1248;1086;976;770;723;661;622cm−1
【0015】
形態Bは下記の主なラマンバンドにより特徴付けることができる:3064;1754;1711;1625;1574;1485、1445;1388;1334;1309;1246;1212;664;645cm−1
形態Bは橙色である。
【0016】
形態A
形態Aの溶融開始温度は約180℃、例えば、182℃である。
形態Aの図4に示されているX線回折パターンを表3に要約する。XRPDは約21.5°2θ、例えば、21.4°2θで強い回折ピークを示す。
表3
【表3】

【0017】
形態Aは特に下記のXRPD回折ピークの少なくとも1つにより形態Bと区別できる:約11.6°、約12.0°および約21.5°2θ。
【0018】
形態Aは下記の主なIRバンドにより特徴付けることができる:1757;1710;1631;1552;1378;1145;1084;1005;979;777;750、660;642;623cm−1
【0019】
形態Aは下記の主なラマンバンドにより特徴付けることができる:3076;1756;1632;151;1495;1380;1347;1310;1249;1222;660;643;255cm−1
形態Aは黄色である。
【0020】
好ましい態様において、下記の主なIRバンドの少なくとも1つを示す結晶形態を提供する:1711;11574;1486;1462;1378;1248;1086;976;770;723;661;622cm−1
【0021】
さらなる好ましい態様において、下記の主なラマンバンドの少なくとも1つを示す結晶形態を提供する:3064;1754;1711;1625;1574;1485、1445;1388;1334;1309;1246;1212;664;645cm−1
【0022】
さらにさらなる好ましい態様において、下記の主なIRバンドの少なくとも1つを示す結晶形態を提供する:1757;1710;1631;1552;1378;1145;1084;1005;979;777;750、660;642;623cm−1
【0023】
さらなる好ましい態様において、下記の主なラマンバンドの少なくとも1つを示す結晶形態を提供する:3076;1756;1632;151;1495;1380;1347;1310;1249;1222;660;643;255cm−1
【0024】
非結晶
非結晶形態の溶融開始温度は約100から約110℃である。
3−(1.H.−インドル−3−イル)−4−[2−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−キナゾリン−4−イル]−ピロール−2,5−ジオン酢酸塩の非結晶形態は橙色である。
形態C
X線回折パターン:
【表4】

【0025】
形態D
X線回折パターン:
【表5】

【0026】
本発明は、また、3−(1.H.−インドル−3−イル)−4−[2−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−キナゾリン−4−イル]−ピロール−2,5−ジオン酢酸塩の溶液を形成し、沈殿または再結晶化により溶液から酢酸塩を結晶化する工程を含む本発明の結晶の製造方法を含む。特に、本発明の結晶の製造方法は、遊離形態の3−(1.H.−インドル−3−イル)−4−[2−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−キナゾリン−4−イル]−ピロール−2,5−ジオンを酢酸と反応させ、反応混合物から得られた塩を回収する工程、そして適当な不活性溶媒、例えば、アセトン、アセトニトリル、エタノール、酢酸エチル、ヘプタン、t−ブチルメチルエーテル、塩化メチレン、2−プロパノール、酢酸i−プロピル、トルエン、E95、または例えば、75/25vol%または50/50vol%のEtAC/エタノール混合物中で反応させる工程を含む。好ましい溶媒はアセトンである。
【0027】
本発明では、3−(1.H.−インドル−3−イル)−4−[2−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−キナゾリン−4−イル]−ピロール−2,5−ジオン酢酸塩の結晶化方法を提供する。結晶を形成する正確な条件は、現在、経験的に決定されており、実施例1から8に記載されている結晶化条件を含む、多くの方法が実際に適当である。
【0028】
結晶化誘導条件は、通常、適当な結晶化誘導溶媒、例えば、アセトン、アセトニトリル、エタノール、酢酸エチル、ヘプタン、またはt−ブチルメチルエーテル、塩化メチレン、2−プロパノール、酢酸i−プロピル、トルエン、E95、または、例えば、75/25vol%または50/50vol%のEtAC/エタノール混合物の使用を含む。好ましくは、溶媒は、アセトン、酢酸エチル、ヘプタン、t−ブチルメチルエーテル、塩化メチレン、2−プロパノール、酢酸i−プロピル、トルエン、および、例えば、75/25vol%または50/50vol%のEtAC/エタノール混合物である。好都合には、3−(1.H.−インドル−3−イル)−4−[2−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−キナゾリン−4−イル]−ピロール−2,5−ジオンを、環境温度で溶媒に溶解させる。該溶液は、溶媒に3−(1.H.−インドル−3−イル)−4−[2−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−キナゾリン−4−イル]−ピロール−2,5−ジオンの何らかの1種以上の非結晶形態およびその溶媒和物、例えば、水和物を溶解することにより製造できる。次に結晶は、遊離塩基から塩の変換により形成でき、結晶化は約0℃から40℃、好ましくは環境温度で実施する。
【0029】
溶解および結晶化を種々の慣用の方法によって実施できる。例えば、遊離塩基を環境温度で高溶解性であるが酢酸塩のみ同じ温度で難溶性である溶媒または溶媒の混合物に溶解させることができる。高温で遊離塩基を溶解し、次に冷却し、塩形成後でも、酢酸塩の結晶を溶液から結晶化できる。3−(1.H.−インドル−3−イル)−4−[2−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−キナゾリン−4−イル]−ピロール−2,5−ジオンが、好ましくは、少なくとも10重量%の量で20℃で高溶解性である良溶媒、および、好ましくは多くて約0.1重量%の量で20℃で非常に難溶性である貧溶媒を含む混合溶媒もまた使用できるが、混合物からの結晶化は、通常、少なくとも約0℃の低温で、選択された溶媒混合物を使用して可能である。
【0030】
便宜的には、結晶物質の“種晶”を、結晶化を誘導するため溶液に加えることができる。
【0031】
さらに、結晶形態Aから結晶形態Bへの変換、例えば、形態Aから形態Bを製造するための方法を提供する。
【0032】
本発明の好ましい態様において、3−(1.H.−インドル−3−イル)−4−[2−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−キナゾリン−4−イル]−ピロール−2,5−ジオン酢酸塩の結晶形態、例えば、無水形態は、高結晶化度を有する。
結晶形態は、本明細書において、他の形態を多くても約0.5%(w/w)、例えば多くても約0.1%(w/w)で含むとき、“高結晶化度”を有する、または“結晶学的に純粋”であると定義する。したがって、例えば“結晶学的に純粋な形態AまたはB”は、約0.5%(w/w)以下、例えば約0.1%(w/w)以下の他の結晶学的形態および/または非結晶形態を含む。
【0033】
1つの局面において、本発明は有効量の本発明の結晶、例えば、形態A、形態Bまたはそれらの混合物、好ましくは実質的に純粋な形態の形態Bを含む医薬組成物を提供する。
好ましい態様において、このような組成物は、例えば、少なくとも50mg、好ましくは少なくとも100mg、より好ましくは少なくとも250mgの3−(1.H.−インドル−3−イル)−4−[2−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−キナゾリン−4−イル]−ピロール−2,5−ジオン酢酸塩および適当な医薬担体または希釈剤を含む高用量製剤である。さらに好ましい例とは、このような組成物が、例えば、0.5mgから2000mgの3−(1.H.−インドル−3−イル)−4−[2−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−キナゾリン−4−イル]−ピロール−2,5−ジオン酢酸塩および適当な医薬担体または希釈剤を含む経口製剤である。
【0034】
本発明の結晶は、したがって、Tリンパ球および/またはPKCが介在する疾患または障害、例えば、臓器または組織の同種または異種移植片の急性または慢性拒絶反応またはT細胞介在炎症性もしくは自己免疫性疾患、例えば、アテローム性動脈硬化症、血管損傷による血管閉塞、例えば、血管形成術、再狭窄、高血圧、心不全、慢性閉塞性肺疾患、CNS疾患、例えば、アルツハイマー病または筋萎縮性側索硬化症、癌、感染症、例えば、AIDS、敗血症性ショックまたは成人呼吸窮迫症候群、虚血/再潅流傷害、例えば、心筋梗塞、卒中、腸虚血、腎不全または出血性ショックもしくは外傷性ショックの処置および/または予防に有効である。本発明の結晶は、また、T細胞介在急性もしくは慢性炎症性疾患または障害または自己免疫性疾患、例えば、リウマチ性関節炎、骨関節症、全身性エリテマトーデス、橋本甲状腺炎、多発性硬化症、重症筋無力症、I型もしくはII型糖尿病およびそれらの関連障害、呼吸器系疾患、例えば、喘息性もしくは炎症性肺損傷、炎症性肝臓損傷、炎症性糸球体損傷、免疫介在性疾患もしくは障害の皮膚症状、炎症性および過増殖性皮膚疾患(例えば、乾癬、アトピー性皮膚炎、アレルギー性接触性皮膚炎、刺激性接触性皮膚炎およびさらに湿疹様皮膚炎、脂漏性皮膚炎)、炎症性眼疾患、例えば、シェーグレン症候群、角結膜炎またはブドウ膜炎、炎症性腸疾患、クローン病または潰瘍性大腸炎の処置および/または予防に有効である。
【0035】
上記にしたがって、本発明はさらに下記の局面を提供する:
−本発明の結晶、例えば、非結晶形態、結晶形態、例えば、形態Aまたは形態B、または擬似結晶形態、例えば、形態Sの3−(1.H.−インドル−3−イル)−4−[2−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−キナゾリン−4−イル]−ピロール−2,5−ジオン酢酸塩を少なくとも1種の薬学的に許容される担体または希釈剤と共に含む医薬組成物;
−医薬として使用するための本発明の結晶、例えば、非結晶、結晶または擬似結晶形態、例えば、形態A、B、C、DまたはS、好ましくは形態A、Bまたはそれらの混合物の3−(1.H.−インドル−3−イル)−4−[2−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−キナゾリン−4−イル]−ピロール−2,5−ジオン酢酸塩;
−薬物の製造において使用するための本発明の結晶、例えば、非結晶、結晶または擬似結晶形態、例えば、形態A、B、C、DまたはS、好ましくは形態A、Bまたはそれらの混合物の3−(1.H.−インドル−3−イル)−4−[2−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−キナゾリン−4−イル]−ピロール−2,5−ジオン酢酸塩;
−上記の方法により製造される、本発明の結晶、例えば、非結晶、結晶または擬似結晶形態、例えば、形態A、B、C、DまたはSの3−(1.H.−インドル−3−イル)−4−[2−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−キナゾリン−4−イル]−ピロール−2,5−ジオン酢酸塩;
−治療可能な疾患、例えば、Tリンパ球および/またはPKCが介在する疾患または障害、例えば、臓器または組織の同種または異種移植片の急性または慢性拒絶反応またはT細胞介在炎症性もしくは自己免疫性疾患の処置または予防のための薬物の製造における本発明の結晶、例えば、非結晶、結晶または擬似結晶形態、例えば、形態A、B、C、DまたはSの3−(1.H.−インドル−3−イル)−4−[2−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−キナゾリン−4−イル]−ピロール−2,5−ジオン酢酸塩の使用;および
−治療有効量の本発明の結晶、例えば、非結晶、結晶または擬似結晶形態、例えば、形態A、BまたはSの3−(1.H.−インドル−3−イル)−4−[2−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−キナゾリン−4−イル]−ピロール−2,5−ジオン酢酸塩をこのような処置を必要とする対象に投与することを含む、Tリンパ球および/またはPKCが介在する疾患または障害、例えば、臓器または組織の同種または異種移植片の急性または慢性拒絶反応またはT細胞介在炎症性もしくは自己免疫性疾患の処置または予防のための方法。
【0036】
本発明の結晶、例えば、形態AまたはBは、単一の活性成分として、または、例えば、同種または異種移植片の急性または慢性拒絶反応、または、炎症性または自己免疫性障害の処置または予防のための免疫調節レジメンの他の薬剤または他の抗炎症性剤と一緒に投与できる。例えば、それらはシクロスポリン、またはアスコマイシンまたはそれらの免疫抑制性類似体または誘導体、例えば、シクロスポリンA、シクロスポリンG、FK−506、ABT−281、ASM981;mTOR阻害剤、例えば、ラパマイシン、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシンなど;コルチコステロイド;シクロホスファミド;アザチオプレン;メトトレキサート;リンパ球ホーミング誘導剤、例えば、FTY720;レフルノミドまたはその類似体;ミゾルビン;ミコフェノール酸;ミコフェノール酸モフェチル;15−デオキシスペルグアリンまたはその類似体;免疫抑制性モノクローナル抗体、例えば、白血球受容体、例えば、MHC、CD2、CD3、CD4、CD11a/CD18、CD7、CD25、CD27、B7、CD40、CD45、CD58、CD137、ICOS、CD150(SLAM)、OX40、4−1BBまたはそれらのリガンド、例えばCD154に対するモノクローナル抗体;または他の免疫調節剤化合物、少なくともCTLA4の細胞外ドメインの一部またはその変異体、例えば、少なくともCTLA4の細胞外部分または非CTLA4タンパク質配列に結合するその変異体を有する、例えば、組み換え結合分子、例えば、CTLA4Ig(例えば、ATCC 68629と呼ばれる)またはその変異体、例えば、LEA29Y、または他の接着分子阻害剤、例えば、mAbsまたはLFA−1アンタゴニスト、セレクチンアンタゴニストおよびVLA−4アンタゴニストを含む低分子量阻害剤と組み合わせて使用してもよい。本発明の結晶形態、例えば、形態AまたはBは、また、例えば、癌処置において、抗増殖剤、例えば、化学療法剤と、または糖尿病治療において抗糖尿病剤と共に投与してもよい。
【0037】
上記にしたがって、本発明はさらに下記の局面を提供する:
−治療有効量の本発明の結晶、例えば、非結晶、結晶または擬似結晶形態、例えば、形態A、B、C、DまたはSの3−(1.H.−インドル−3−イル)−4−[2−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−キナゾリン−4−イル]−ピロール−2,5−ジオン酢酸塩および第2の薬物の、例えば、同時のまたは連続しての共投与を含む上記方法であって、該第2の薬物が、例えば、上記のとおりの免疫抑制剤、免疫調節剤、抗炎症性、抗増殖性または抗糖尿病剤である方法。
−a)本発明の結晶、例えば、非結晶、結晶または擬似結晶形態、例えば、形態A、B、C、DまたはSの3−(1.H.−インドル−3−イル)−4−[2−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−キナゾリン−4−イル]−ピロール−2,5−ジオン酢酸塩、およびb)免疫抑制剤、免疫調節剤、抗炎症性、抗増殖性および抗糖尿病剤から選択される少なくとも1種の第2の薬物を含む、治療組合せ、例えばキット。成分a)および成分b)は同時にまたは連続して使用され得る。該キットはその投与のための指示書を含み得る。
【0038】
本発明の好ましい結晶形態は、例えば、形態Bまたは形態A、より好ましくは形態Bである。
【0039】
本発明の非結晶および結晶形態は、本発明の範囲を限定しない説明である下記実施例により合成される。
【実施例】
【0040】
実施例1:
多形Aの製造
2−[2−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−キナゾリン−4−イル]−アセトアミド(4.7mg、16.3mmol)および3−インドールグリオキシル酸メチルエステル(4.35mg、1.3当量)をTHF(55mL)に溶解する。懸濁液にTHF(46.5g、5.1当量)中のt−BuOKの20%溶液を−5℃で滴下する。混合物を0−5℃で8時間撹拌し、変換をPSCによりチェックする。変換完了後、反応混合物を10%塩化ナトリウム水溶液(50ml)および酢酸(5g)の混合物でクエンチする。次に水性層を酢酸エチル(50ml)で抽出する。有機層を5%重炭酸ナトリウム水溶液(2×50ml)で抽出し、次に40mlの残量まで濃縮する。残った酢酸エチル(50ml)に加え、次に留去する。この製造方法を4回行う。蒸留残渣(40ml)にエタノール(30ml)を加える。赤色の溶液を70℃に30分にわたって温め、酢酸(4g)を加える。種晶を入れた後、反応物を70℃で90分撹拌する。混合物を30℃に60分にわたり冷却し、さらに30分撹拌し、20℃に90分にわたって冷却する。20℃で14時間後、懸濁液を濾過し、TBME(15ml)で1回およびTBME(13.5ml)−エタノール(1.5ml)混合物で1回洗浄する。50℃で減圧下で2時間乾燥後、生成物を87.7%の収率で橙色の結晶固体として得る。
1H NMR (DMSO, 400 MHz) δ 1.92 (s, 3H), 2.13 (s, 3H), 2.17 (m, 4H), 2.51 (m, 1H), 3.69 (m, 4H), 6.35 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 6.64 (dd, J = 7.8, 7.4 Hz, 1H), 7.02 (dd, J = 7.6, 7.4 Hz, 1H), 7.10 (dd, J = 7.8, 7.2 Hz, 1H), 7.38 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 7.53 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.63-7.73 (m, 2H), 8.13 (s, 1H), 11.29 (br s, 1H), 12.01 (br s, 1H)。
【0041】
実施例2:
多形Aである酢酸塩の合成:
40mgの固体の3−(1.H.−インドル−3−イル)−4−[2−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−キナゾリン−4−イル]−ピロール−2,5−ジオンを0.75mlの2−プロパノールに懸濁し、混合物を50℃に加熱し、ほぼ透明な溶液を得る。当モルの酢酸を0.1mlの2−プロパノールに溶解し、薬物溶液に滴下する。混合物を50℃で1から2時間撹拌し、この間に酢酸塩が黄色の粉末として沈殿する。懸濁液を環境温度に冷却し、固体を真空濾過により回収し、次に少量の2−プロパノール(2×0.25ml)で洗浄する。
【0042】
実施例3:
多形Bである酢酸塩の合成:
220mgの固体の3−(1.H.−インドル−3−イル)−4−[2−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−キナゾリン−4−イル]−ピロール−2,5−ジオンを2.5mlの酢酸エチルに懸濁し、懸濁液を50℃に加熱し、ほぼ透明な溶液を得る。当モルの酢酸を0.25mlの酢酸エチルに溶解し、薬物混合物に滴下する。混合物を50℃で1から2時間撹拌し、この間に酢酸塩が橙色の粉末として沈殿する。懸濁液を環境温度に冷却し、固体を真空濾過により回収し、次に少量の酢酸エチル(2×0.25ml)で洗浄する。
【0043】
実施例4:
形態Aから形態Bへの変換
25.0gの形態Aの固体−(1.H.−インドル−3−イル)−4−[2−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−キナゾリン−4−イル]−ピロール−2,5−ジオン酢酸塩を200mlの75/25(vol/vol)酢酸エチル/エタノール混合物に懸濁し、65℃まで加熱する。30mlの脱イオン化水を添加し、固体を溶解し、100mlの酢酸エチルをこの温度で加え、透明な溶液を得、これを次に65℃から5℃に冷却した。冷却後、最初に50mlの酢酸エチルを41℃で、さらに50mlの酢酸エチルを14℃で加え、溶液にこの温度で0.5gの形態Bの固体−(1.H.−インドル−3−イル)−4−[2−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−キナゾリン−4−イル]−ピロール−2,5−ジオン酢酸塩を種晶として入れる。濃い橙色の懸濁液を5℃で得、10から12時間この温度で撹拌し続ける:固体を濾過により回収し、ケーキを30mlの75/25(vol/vol)の酢酸エチル/エタノール混合物で洗浄する。橙色の粉末を40℃で真空下(5mbar)で10から12時間乾燥させ、多形Bに対応するXRDパターンを示す橙色固体として−(1.H.−インドル−3−イル)−4−[2−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−キナゾリン−4−イル]−ピロール−2,5−ジオン酢酸塩14.4gを得る。
【0044】
実施例5:
多形Cである酢酸塩の合成:
40mgの固体のAEB071を0.75mlのメタノールに懸濁し、混合物を40℃に加熱し、ほぼ透明な溶液を得る。当モルの酢酸を0.1mlのメタノールに溶解し、薬物溶液に滴下する。反応混合物を環境温度に冷却し、一晩撹拌し、橙色の粉末として酢酸塩の沈殿を得る。懸濁液を環境温度に冷却し、固体を真空濾過により回収し、次に少量のメタノール(2×0.25ml)で洗浄する。
【0045】
実施例6:
多形Dである酢酸塩の合成:
40mgの固体のAEB071を0.75mlの酢酸エチルに懸濁し、混合物を40℃に加熱し、ほぼ透明な溶液を得る。当モルの酢酸および20μLtのメタノール(酢酸エチルに対して2.2%vv)を0.1mlの酢酸エチルに溶解し、薬物溶液に滴下する。反応混合物を40℃で1から2時間撹拌し、橙色の粉末として酢酸塩の沈殿を得る。懸濁液を環境温度に冷却し、固体を真空濾過により回収し、次に少量の酢酸エチル(2×0.25ml)で洗浄する。
【0046】
実施例7:
多形Sである酢酸塩アセトン溶媒和物の合成:
40mgの固体の3−(1.H.−インドル−3−イル)−4−[2−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−キナゾリン−4−イル]−ピロール−2,5−ジオンを0.75mlのアセトンに懸濁し、ほぼ透明な溶液を環境温度で得る。当モルの酢酸を0.1mlのアセトンに溶解し、薬物溶液に滴下する。反応混合物を環境温度で1から2時間撹拌し、橙色の粉末として酢酸塩の沈殿を得る。固体を真空濾過により回収し、次に少量のアセトン(2×0.25ml)で洗浄する。
【0047】
実施例8:
非結晶形態の合成:
4gの固体の形態Bの3−(1.H.−インドル−3−イル)−4−[2−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−キナゾリン−4−イル]−ピロール−2,5−ジオン酢酸塩を400mlのアセトンに溶解し、噴霧乾燥する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3−(1.H.−インドル−3−イル)−4−[2−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−キナゾリン−4−イル]−ピロール−2,5−ジオン酢酸塩の結晶形態。
【請求項2】
無水和物である、請求項1に記載の結晶形態。
【請求項3】
形態A、形態B、形態SAまたはそれらの混合物である、請求項1または2に記載の結晶形態。
【請求項4】
約9.7°の角度2θで強い回折ピークを示す、請求項1または2に記載の結晶形態。
【請求項5】
約21.5°の角度2θで強い回折ピークを示す、請求項1または2に記載の結晶形態。
【請求項6】
溶媒和物または水和物である、請求項1に記載の結晶形態。
【請求項7】
高結晶化度を有する、請求項1から6のいずれかに記載の結晶形態。
【請求項8】
本質的に純粋な形態の請求項1から7のいずれかに記載の結晶形態。
【請求項9】
臓器または組織の同種または異種移植片急性または慢性拒絶反応のような、Tリンパ球および/またはPKCが介在する疾患または障害、またはT細胞介在炎症性もしくは自己免疫性疾患の予防または処置のための薬理学的薬物の製造のための、請求項1から8のいずれかに記載の結晶形態またはそれらの混合物の使用。
【請求項10】
3−(1.H.−インドル−3−イル)−4−[2−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−キナゾリン−4−イル]−ピロール−2,5−ジオン酢酸塩の溶液を形成し、沈殿または再結晶化により溶液から酢酸塩を結晶化させることを含む、請求項1から8のいずれかに記載の結晶形態の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2010−506927(P2010−506927A)
【公表日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−533377(P2009−533377)
【出願日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際出願番号】PCT/US2007/022241
【国際公開番号】WO2008/051440
【国際公開日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】