説明

3−(4−アミノ−1−オキソ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)−ピペリジン−2,6−ジオンの固形体およびその製造方法

本発明は、3−(4−アミノ−1−オキソ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)−ピペリジン−2,6−ジオンの新たな結晶形態および非晶形態、およびこれらを製造する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願出願は、2009年9月17日に出願された米国仮出願第61/243,204号の利益と優先権とを主張するものであり、その内容全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、3−(4−アミノ−1−オキソ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)−ピペリジン−2,6−ジオンの新規の結晶形態または非晶形態およびそれらの製造方法、当該新規の形態を含有する医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
3−(4−アミノ−1−オキソ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)−ピペリジン−2,6−ジオンつまりレナリドマイドは、炎症性疾患、自己免疫疾患、および癌を含むが、それらに限定されない様々な疾患を治療および予防する際に有用であることが知られている。形態Aは米国特許第7,465,800号に開示されている無水形態である。
【発明の概要】
【0004】
我々は、独特の特性を呈する3−(4−アミノ−1−オキソ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)−ピペリジン−2,6−ジオンの結晶形態および非晶形態を得た。
【0005】
結晶形態Iの合成
3−(4−アミノ−1−オキソ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)−ピペリジン−2,6−ジオンの調製
形態I
メタノール/水溶媒系中の蒸発により、形態Iを概して得ることができる。熱水泥漿系中の形態Aからも、形態Iを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1a】形態Iの特徴的なX線粉末回折図形である。
【図1b】形態Iの特徴的なX線粉末回折図形である。
【図2】形態の示差走査熱量測定図形である。
【図3】形態Iの熱重量分析図形である。
【図4a】形態Iの赤外拡散反射図形である。
【図4b】形態Iの赤外拡散反射図形である。
【図5】非晶形態の特徴的なX線粉末回折図形である。
【図6a】非晶形態の赤外拡散反射図形である。
【図6b】非晶形態の赤外拡散反射図形である。
【図6c】非晶形態の赤外拡散反射図形である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
2シータにおいておおよそ12.1±0.2、13.4±0.2、18.9±0.2、23.9±0.2および25.8±0.2度でのX線粉末回折図形を有する、3−(4−アミノ−1−オキソ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)−ピペリジン−2,6−ジオンの結晶形態。
【0008】
該結晶形態は、図1a〜bに示されているものに実質的に従うX線粉末回折図形を有し得る。
【0009】
該結晶形態は、おおよそ1698、1662、1493、1350および1203の波数でピークを伴う赤外拡散反射図形を有し得る。
【0010】
該結晶形態は、図4a〜bに示されているものに実質的に従う赤外拡散反射図形を有し得る。
【0011】
本発明の3−(4−アミノ−1−オキソ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)−ピペリジン−2,6−ジオンの製造方法であって、
(a)水溶液中にて3−(4−アミノ−1−オキソ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)−ピペリジン−2,6−ジオンを加熱し、
(b)前記水溶液から3−(4−アミノ−1−オキソ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)−ピペリジン−2,6−ジオンの結晶形態を単離し、
(c)3−(4−アミノ−1−オキソ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)−ピペリジン−2,6−ジオンの単離された結晶形態を乾燥させる、
を含む方法。
【0012】
本発明の3−(4−アミノ−1−オキソ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)−ピペリジン−2,6−ジオンの製造方法であって、
(a)3−(4−アミノ−1−オキソ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)−ピペリジン−2,6−ジオンをメタノールに溶解させて第1の溶液を生成し、
(b)前記第1の溶液から前記メタノールの一部を除去し、
(c)水を加えて第2の混合物を生成し、
(d)前記第2の混合物から前記水および前記メタノールの一部を除去し、その後、3−(4−アミノ−1−オキソ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)−ピペリジン−2,6−ジオンの結晶形態を単離し、
(e)3−(4−アミノ−1−オキソ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)−ピペリジン−2,6−ジオンの単離された結晶形態を乾燥させる、
を含む方法。
【0013】
3−(4−アミノ−1−オキソ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)−ピペリジン−2,6−ジオンの非晶形態。
【0014】
該非晶形態は、図5に示されているものに実質的に従うX線粉末回折図形を有し得る。
【0015】
該非晶形態は、おおよそ1708、1609、1493、1348および1206の波数でピークを伴う赤外拡散反射図形を有し得る。
【0016】
該非晶形態は、図6a〜bに示されているものに実質的に従う赤外拡散反射図形を有し得る。
【0017】
本発明の3−(4−アミノ−1−オキソ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)−ピペリジン−2,6−ジオンの非晶形態の製造方法であって、
(a)3−(4−アミノ−1−オキソ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)−ピペリジン−2,6−ジオンをメタノールに溶解させ、
(b)溶媒を除去し、前記3−(4−アミノ−1−オキソ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)−ピペリジン−2,6−ジオンの非晶形態を得る、
を含む方法。
【0018】
治療効果のある量の結晶形態Iを含む医薬組成物は、医薬的に許容可能な担体を含み得る。
【0019】
治療効果のある量の非晶形態を含む医薬組成物は、医薬的に許容可能な担体を含み得る。
【0020】
3−(4−アミノ−1−オキソ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)−ピペリジン−2,6−ジオンの調製
形態I
メタノール/水溶媒系中の蒸発により、形態Iを概して得ることができる。熱水泥漿系中の形態Aからも、形態Iを得ることができる。形態Aは、米国特許第7,465,800号に開示されている無水形態である。両方法の具体例が下記に示されている。
【0021】
例1:
形態Aの3−(4−アミノ−1−オキソ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)−ピペリジン−2,6−ジオン(300mg)および水溶液(30ml)の混合物を、3時間にわたり60℃で加熱した。その混合物を濾過し、その湿潤ケーキを約28時間にわたり40℃で減圧下にて乾燥させた。その固体をXRDおよびIRにより分析し、形態Iとして同定した。
【0022】
例2:
500mlのジャケット反応器に、3−(4−アミノ−1−オキソ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)−ピペリジン−2,6−ジオン(約1.3g)およびメタノール(約260ml)の溶液を投入した。その溶液を60℃に加熱した。その溶液を濃縮してメタノールのおよそ2/3を除去し、その泥漿溶液に水(約300ml)を投入した。その混合物をさらに濃縮してメタノールを除去した。その結果として生じた泥漿を濾過し、その湿潤ケーキを40℃で減圧下にておよそ35時間にわたり乾燥させた。その乾燥した試料を、XRPD、TGA、DSCおよび赤外拡散反射の分析にかけた。その分析の結果を図1〜4に示す。
【0023】
3−(4−アミノ−1−オキソ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)−ピペリジン−2,6−ジオンの非晶形態の調製
例3:
結晶性の3−(4−アミノ−1−オキソ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)−ピペリジン−2,6−ジオン(約300mg)を、メタノール(50ml)に60℃で溶解させて澄んだ溶液を得た。その溶液を減圧下にて濃縮してメタノールを除去し、固体を得た。その固体物質をXRDおよび赤外拡散反射の分析により分析し、非晶形態として同定した。図5〜6a〜cを参照されたい。
【0024】
当業者は、本明細書に記載した本発明が、具体的に記載した発明以外の変更および修正を行い易いことを理解するだろう。本発明は、そのような変更および修正の全てを含む。本発明はまた、本明細書で言及または表示した工程、特徴、処方設計および化合物を個別的または集合的に含み、かつ任意および全ての組み合わせまたは2つ以上の工程または特徴も含む。
【0025】
本文で引用した文書、参考文献、特許出願、または特許の各々は、その内容全体が明確に本明細書に組み込まれ、本文の一部として読者に読解および考察されることを意味する。本文で引用した文書、参考文献、特許出願、または特許は、単に簡潔さのため本文では繰り返していない。
【0026】
本明細書または参照により本明細書に組み込まれた任意の文書で言及した任意の製品に関する製造業者の指示書、説明書、製品規格書、および製品仕様書は参照により本明細書に組み込まれ、本発明の実施に用いられてよい。
【0027】
本発明は、本明細書に記載した特定の実施形態のどの範囲にも限定されるものではない。これらの実施形態は、例示目的のみを意図する。機能的に等価な製品、処方設計、および方法は明白に、本明細書に記載した発明の範囲内にある。
【0028】
本明細書に記載した発明は、1つ以上の範囲の値(例えば、大きさや濃度)を含み得る。範囲の値は、範囲を規定する値や、同一または範囲に対する限度を規定する値にすぐ近接する値と実質的に同一の結果に至る範囲に近接する値を含む範囲の値に収まる全ての値を含むものと理解されよう。
【0029】
本明細書を通して、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、「含む(comprise)」またはバリエーションとして「含む(comprises)」若しくは「含む(comprising)」などという用語は、言及した整数または一群の整数の包括を意味し、他の任意の整数または一群の整数の排除を意味するものではないことが理解されよう。また、この開示、特に請求の範囲、および/または段落において、「含む(comprises)」「含む(comprised)」「含む(comprising)」などの用語は、米国特許法に属する意味を持つことができ、例えば、それらが「含有する(includes)」、「含有する(included)」、「含有する(including)」などの意味を持つことができ、「本質的に成る(consisting essentially of)」および「本質的に成る(consists essentially of)」などの用語は、米国特許法に属する意味を有し、例えば明確に列挙されていない要素を許容するが、従来技術に見出されるか、または発明の根本的特徴または新規の特徴に影響を与える要素は排除することにも留意されたい。
【0030】
本明細書で使用した選択用語の他の定義は、発明を実施するための形態に認められ、全体を通して適用され得る。他に定義しない限り、本明細書で使用した他の科学用語および技術用語の全ては、発明が属する当技術分野の当業者には共通して理解される同一の意味を有する。
【0031】
特定の方法および実施形態に関して本発明を説明したが、種々の修正および変更が本発明から逸脱することなく成され得ることが理解されよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2シータにおいておおよそ12.1±0.2、13.4±0.2、18.9±0.2、23.9±0.2および25.8±0.2度でのX線粉末回折図形を有する、3−(4−アミノ−1−オキソ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)−ピペリジン−2,6−ジオンの結晶形態。
【請求項2】
前記X線粉末回折図形が図1a〜bに示されているものに実質的に従う、請求項1に記載の結晶形態。
【請求項3】
おおよそ1698、1662、1493、1350および1203の波数でピークを伴う赤外拡散反射図形を有する、請求項1に記載の結晶形態。
【請求項4】
図4a〜bに示されているものに実質的に従う赤外拡散反射図形を有する、請求項1に記載の結晶形態。
【請求項5】
請求項1に記載の3−(4−アミノ−1−オキソ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)−ピペリジン−2,6−ジオンの製造方法であって、
(a)水溶液中にて3−(4−アミノ−1−オキソ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)−ピペリジン−2,6−ジオンを加熱し、
(b)前記水溶液から3−(4−アミノ−1−オキソ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)−ピペリジン−2,6−ジオンの結晶形態を単離し、
(c)3−(4−アミノ−1−オキソ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)−ピペリジン−2,6−ジオンの単離された結晶形態を乾燥させる、
ことを含む方法。
【請求項6】
請求項1に記載の3−(4−アミノ−1−オキソ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)−ピペリジン−2,6−ジオンの製造方法であって、
(a)3−(4−アミノ−1−オキソ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)−ピペリジン−2,6−ジオンをメタノールに溶解させて第1の溶液を生成し、
(b)前記第1の溶液から前記メタノールの一部を除去し、
(c)水を加えて第2の混合物を生成し、
(d)前記第2の混合物から前記水および前記メタノールの一部を除去し、その後、3−(4−アミノ−1−オキソ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)−ピペリジン−2,6−ジオンの結晶形態を単離し、
(e)3−(4−アミノ−1−オキソ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)−ピペリジン−2,6−ジオンの単離された結晶形態を乾燥させる、
ことを含む方法。
【請求項7】
3−(4−アミノ−1−オキソ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)−ピペリジン−2,6−ジオンの非晶形態。
【請求項8】
X線粉末回折図形が図5に示されているものに実質的に従う、請求項7に記載の非晶形態。
【請求項9】
おおよそ1708、1609、1493、1348および1206の波数でピークを伴う赤外拡散反射図形を有する、請求項7に記載の非晶形態。
【請求項10】
図6a〜bに示されているものに実質的に従う赤外拡散反射図形を有する、請求項7に記載の非晶形態。
【請求項11】
請求項7に記載の3−(4−アミノ−1−オキソ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)−ピペリジン−2,6−ジオンの非晶形態の製造方法であって、
(a)3−(4−アミノ−1−オキソ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)−ピペリジン−2,6−ジオンをメタノールに溶解させ、そして
(b)溶媒を除去し、前記3−(4−アミノ−1−オキソ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)−ピペリジン−2,6−ジオンの非晶形態を得る、
ことを含む方法。
【請求項12】
治療効果のある量の請求項1に記載の結晶形態Iおよび医薬的に許容可能な担体を含む医薬組成物。
【請求項13】
治療効果のある量の請求項7に記載の非晶形態および医薬的に許容可能な担体を含む医薬組成物。

【図1a】
image rotate

【図1b】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4a】
image rotate

【図4b】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6a】
image rotate

【図6b】
image rotate

【図6c】
image rotate


【公表番号】特表2013−505234(P2013−505234A)
【公表日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−529718(P2012−529718)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【国際出願番号】PCT/SG2010/000345
【国際公開番号】WO2011/034504
【国際公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(503345569)サイノファーム タイワン リミテッド (18)
【Fターム(参考)】