説明

3層構造カーペット及びその製造方法

【課題】本発明は、2層構造のカーペットよりもさらに滑り止め効果を向上させ、止水性を向上させた3層構造カーペットを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係る3層構造カーペットAは、上層部10と中層部20と下層部30とを溶融接着してなる積層構造をなすカーペットであって、上層部10はその上面側にパイル12を有し、下面側に合成樹脂をコーティングしてなり、中層部20はその中間に撥水加工された不織布層21を含有し、上面側に上部熱溶融性合成繊維層22を備え、下面側に下部熱溶融性合成繊維層23を備え、下層部30はその下面側にカットパイルにより針状突起32を形成した片面カットパイル布帛よりなることを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3層構造カーペット及びその製造方法に関し、特にパイルを有する上層部と不織布を含む中層部と滑り止め効果のある下層部とからなり、接着剤を使用せずに各層を接着した3層構造カーペット及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のカーペットとして、形態安定性、強度付与または滑り止めなどの目的で、パイルが形性されている表皮材の裏面側にラテックス糊を厚く塗布して合成樹脂シートや不織布からなるバッキング材を貼付する方法が採用されている。また、ラテックス糊の塗布に代えて、低融点の繊維又は樹脂製パウダーを配し、表皮材とバッキング材とを重ね合わせて、その上下から加熱ローラにより加圧して低融点の繊維又は樹脂製パウダーを溶融し、乾燥させて接着する方法も採用されている。
【0003】
しかしながら、上記従来のカーペットの製造方法により製造されたカーペットは、表皮材とバッキング材との間に層をなす硬化ラテックスにより重量が増し、また、不用になったカーペットは、表皮材とバッキング材に分解することが容易でないばかりでなく、ラテックスを除去することが困難であるため、容易に再生利用することができなかった。また、ラテックス糊の塗布に代えて、低融点の繊維又は樹脂製パウダーを配して表皮材とバッキング材とを接着する方法の場合には、表皮材とバッキング材とを重ね合わせ、その上下から加熱ローラにより挟み込んで低融点の繊維又は樹脂パウダーを溶融する方法を採用しているので、接着性を良好にするためには、加熱ローラーを高温にし、かつ、高圧にする必要があるが、表皮材のパイルが加熱ローラにより押し倒されて固着して商品価値が低下するおそれがあり、このおそれを解消するために温度を下げたり圧力を下げると十分な接着性が得られず、表皮材がバッキング材から剥離するおそれがあった。
【0004】
そこで、本発明者は、ラテックス等の接着剤を使用せずに、接着性が極めて良好であると共に製造時に表皮材表面のパイルに損傷を与えず、かつ、形態安定性、強度付与及び滑り止めなどの効果を維持しつつ、軽量化できると共に経済性に優れ、また、再生利用を容易にしたことにより廃棄物を減少させ、資源節約及び環境保全に役立つカーペットの製造方法及び該製造方法により製造されたカーペットを開発し、パイルを有する表皮材と不織布からなるバッキング材との2層構造のカーペット及びその製造方法について特許の出願を行った。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記2層構造のカーペットよりもさらに滑り止め効果を向上させ、止水性を向上させたカーペットを要求されるに至った。
【0006】
そこで、本発明者は、2層構造のカーペットの下面に滑り止め効果を有する層を溶着し、さらに不織布層を撥水加工することにより、上記の要求を満たす3層構造のカーペット及びその製造方法を開発した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る3層構造カーペットは、積層構造をなすカーペットであって、上面側にパイルを有する上層部と、前記上層部の下面側と接着し、少なくとも不織布層を含有する中層部と、前記中層部の下面側と接着し、下面側に針状突起を形成した下層部とからなることを特徴とするものである。
【0008】
上記のように構成したことにより、中層部は、カーペットに対して形態安定性又は強度付与などの作用を果たすと共にクッション性、吸音性を向上させる。また、下層部下面側の針状突起が滑り止め効果を果たし、特に当該3層構造カーペットを、例えば自動車の床材として使用されているような不織布状の内装材上に敷設した場合には、針状突起が不織布状の内装材に突き刺さるので、その滑り止め効果は絶大である。
【0009】
なお、上記3層構造カーペットにおいて、その上層部は、上面側のパイルの糸抜け防止のために、その下面側に合成樹脂をコーティングしてなる構成としてもよい。
【0010】
また、上記3層構造カーペットにおいて、その中層部における不織布層が撥水加工されている構成としてもよい。
【0011】
このように構成すると、3層構造カーペットの表面に水分が付着した場合に、該カーペットの内部に浸透しようとする水分が該不織布層により遮断されるので、該カーペットを載置している床面等まで水分が達することがない。したがって、床面等が湿ることに起因して汚れたり不潔になることが防止でき、また、該カーペットのみを乾燥させるだけで水分が除去できるので、爽快な使用感を保つことができる。
【0012】
さらにまた、上記3層構造カーペットにおいて、その中層部は、その上面側に上部熱溶融性合成繊維層を備え、該上部熱溶融性合成繊維層が溶融して上層部の下面側と接着し、下面側に下部熱溶融性合成繊維層を備え、該下部熱溶融性合成繊維層が溶融して下層部の上面側と接着している構成としてもよい。
【0013】
上記のように構成すると、十分な接着性が得られ、かつ、表皮材表面のパイルに損傷が生じず、しかも接着にラテックスを使用していないためカーペットが軽量となり、経済的である。
【0014】
また、上記3層構造カーペットにおいて、その下層部は、パイル糸が100〜1000デニールの合成樹脂モノフィラメントである片面カットパイル布帛よりなり、下面側の針状突起が片面カットパイル布帛のカットパイルにより形成されてなる構成としてもよい。
【0015】
上記のように構成すると、下層部の製法が容易であると共に軽量化が図れる。
【0016】
さらにまた、上記3層構造カーペットにおいて、中層部は、不織布層がポリエステル製であり、上部熱溶融性合成繊維層及び下部熱溶融性合成繊維層は前記不織布層を構成するポリエステルよりも低融点のポリプロピレン製である構成としてもよい。
【0017】
また、上記3層構造カーペットにおいて、その上層部及び下層部がポリエステル製であり、中層部は、不織布層がポリエステル製であり、上部熱溶融性合成繊維層及び下部熱溶融性合成繊維層が前記不織布層を構成するポリエステルよりも低融点のポリエステル製である構成としてもよい。
【0018】
このように構成すると、使用する繊維の種類が同一なので再生利用が容易になり、廃棄物を減少させる。
【0019】
さらにまた、上記3層構造カーペットにおいて、その中層部における上部熱溶融性合成繊維層及び下部熱溶融性合成繊維層がそれぞれ10〜30重量%、不織布層が40〜80重量%である構成としてもよい。
【0020】
本発明に係る3層構造カーペットの製造方法は、上面側にパイルを有し、下面側に合成樹脂をコーティングしてなる上層部を形成し、中間に撥水加工したポリエステル製不織布層を、上面側に該不織布層を構成するポリエステルよりも低融点のポリエステルを使用した上部熱溶融性合成繊維層を、下面側に該不織布層を構成するポリエステルよりも低融点のポリエステルを使用した下部熱溶融性合成繊維層をそれぞれ積層し、ニードリングした中層部を形成し、上面側をベース地とし、下面側をカットパイル面とする片面カットパイル布帛を、ベース地の構成糸として50〜100デニールの合成樹脂製糸を使用し、カットパイルの構成糸として100〜1000デニールの合成樹脂モノフィラメントを使用して下層部を形成し、中層部の下面側における下部熱溶融性合成繊維層を不織布層が溶融しない程度の温度で焼き付けにより溶融し、溶融した中層部の下面側と下層部の上面側とが向き合うように重ね合わせて加圧接着し、中層部の上面側における上部熱溶融性合成繊維層を不織布層が溶融しない程度の温度で焼き付けにより溶融し、溶融した中層部の上面側と上層部の下面側とが向き合うように重ね合わせて加圧接着して製造したことを特徴とするものである。
【0021】
なお、本明細書においては、異なる融点のものを使用した場合の融点の高い方のものを高融点と表現し、融点の低い方のものを低融点と表現する。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る3層構造カーペット及びその製造方法は、十分な接着性が得られると共にパイルを有する上層部が損傷せず、かつ、形態安定性、強度付与及び滑り止めの効果を維持しつつ、軽量化できると共に経済性に優れ、また、再生利用を容易にし、これをもって廃棄物を減少させ、資源節約及び環境保全に役立つものであり、しかも、最下層に滑り止め効果を有する層を溶着してなるものであるため、床面等に敷設した場合に横ずれのみならず回転ずれをも防止することができ、また、中層部における不織布層を撥水加工することにより止水性が向上し、取り扱い易いカーペットを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に、本発明の実施例を添付の図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0024】
図1は本発明の実施例に係る3層構造カーペットの上層部の断面図であり、図2は本発明の実施例に係る3層構造カーペットの中層部の断面図であり、図3は本発明の実施例に係る3層構造カーペットの下層部の断面図であり、図4は本発明の実施例に係る3層構造カーペットについて中層部と下層部とを接着する製造工程を示す概略図であり、図5は本発明の実施例に係る3層構造カーペットについて接着された中層部と下層部とに対して上層部を接着する製造工程を示す概略図であり、図6は本発明の実施例に係る3層構造カーペットの一部切欠斜視図であり、図7は本発明の実施例に係る3層構造カーペットの概略断面図である。
【0025】
図1に示す10は上層部であり、ポリエステル繊維の不織布からなる基布11の上面側に、ナイロン、ポリエステル又はポリプロピレンなどの合成繊維からなるパイル糸によりパイル12が形成され、該基布11の下面側に前記パイル12の糸抜けを防止するためにポリエステル樹脂をコーティングしたプレコート層13が形成されたものである。なお、上層部10を形成するパイル糸は、上記のような合成繊維を使用すると強度及び耐久性がある点で優れるが、羊毛等の動物性繊維や綿などの植物性繊維を使用することも好適であり、特に保温性のにおいて羊毛が優れている。また、炭素繊維やポリアミド繊維等の難燃耐熱繊維を使用すると、自動車などの床に使用する場合には、耐火性に優れるのでさらに好適である。また、プレコート層の素材としては、上記の外、ポリエチレン樹脂等の合成樹脂や、SBR、EVA、NBRなどの合成ラテックスを使用してもよい。
【0026】
図2に示す20は中層部であり、中間に50重量%の撥水加工されたポリエステル繊維から構成される不織布層21が配され、その上面側に25重量%のポリプロピレン繊維からなる上部熱溶融性合成繊維層22を備え、下面側に25重量%のポリプロピレン繊維からなる下部熱溶融性合成繊維層23を備えてなるものである。この中層部20は、上部熱溶融性合成繊維層22及び下部熱溶融性合成繊維層23のポリプロピレン繊維と不織布層21のポリエステル繊維とをニードリングにより絡合させ一体化されて構成されている。上記の上部熱溶融性合成繊維層22及び下部熱溶融性合成繊維層23を構成するポリプロピレン繊維は融点160℃のものを採用し、不織布層21を構成するポリエステル繊維は融点235℃のものを採用している。なお、ポリプロピレン繊維及びポリエステル繊維の配合分量は上記のものに限られるものではなく、ポリプロピレン繊維は上部熱溶融性合成繊維層及び下部熱溶融性合成繊維層がそれぞれ10〜30重量%が好ましく、それ以下であると、後述するように上層部10及び下層部30との接着性が低下し、それ以上であると、中層部20全体が固形化してクッション性が低下する。また、前記ポリプロピレン繊維及びポリエステル繊維はそれぞれの融点のものに限られるものではなく、少なくともポリエステル繊維はポリプロピレン繊維よりも高融点のものであればよい。
【0027】
図3に示す30は下層部であり、基布31の下面側に針状突起32が形成されている。該下層部30は、基布31を構成する編み糸として75デニールのポリエステル製糸を使用し、パイル糸として300デニールのポリエステル製モノフィラメントを使用し、パイル糸で連結されたダブル編地をセンターカットして得た片面カットパイル布帛よりなるものであって、パイル糸がモノフィラメントであって太いために針状突起32の形態をなすものである。なお、パイル糸の太さは上記に限られるものではなく、100〜1000デニールの範囲のものを使用することができ、また、基布を構成する編み糸の太さも50〜100デニールの範囲のものを使用することができる。なお、素材は必ずしもポリエステルに限られるものではなく、ナイロンモノフィラメントやポリプロピレンモノフィラメントを使用してもよい。
【0028】
次に、図4及び図5に基づいて、本実施例に係る3層構造カーペットAの製造工程の概略を説明する。
【0029】
前記した上層部10、中層部20、下層部30をそれぞれ用意し、まず、図4に示すように中層部20と下層部30とを接着してカーペット半加工品A1を製造する。
【0030】
図4に示すように、下層部30の針状突起32を下向きにして、図の左から右方向に一定速度で搬送する。次に中層部20のポリプロピレン繊維を配した下面側の下部熱溶融性合成繊維層23を、焼き付け方法を採用した加熱装置aにて、不織布層21のポリエステル繊維が溶融しない温度(約200℃)で加熱溶融させた後、前記加熱溶融したポリプロピレン繊維側すなわち下部熱溶融性合成繊維層23を下層部30の基布31側に重ね合わせつつ加圧ロールbで加圧する。そして、ドライヤー装置cを通して溶融しているポリプロピレンを硬化させて寸法を安定させるとカーペット半加工品A1が完成し、ドライヤーから出てきたカーペット半加工品A1をパレットdに積んでいく。上記のような製造工程によりカーペット半加工品A1を製造すると、中層部20における下部熱溶融性合成繊維層23のポリプロピレン繊維を不織布層21のポリエステル繊維が溶融しない範囲の温度で、直接、焼き付けることにより溶融し、中層部20の下部熱溶融性合成繊維層23の溶融したポリプロピレン繊維側を下層30の基布31側に重ね合わせて加圧乾燥することにより下層30と中層20とを接着するので、十分な接着性が得られ、また、極めて効率よく製造することができるので、製造コストの低減を図ることができる。
【0031】
なお、上記実施例においては、中層部において下部熱溶融性合成繊維層に低融点のポリプロピレン繊維を使用し、不織布層に高融点のポリエステル繊維を使用したが、これに限られるものではなく、中層部を構成する下部熱溶融性合成繊維層の繊維が不織布層の繊維よりも低融点であれば、焼き付け温度や搬送速度を適宜変更することにより所望の効果が得られる。
【0032】
そして、図5に示すように、前記した中層部20と下層部30とを接着してなるカーペット半加工品A1に上層部10を接着して3層構造カーペットAを製造する。
【0033】
上層部10を、パイル12を下向きにして、図の左から右方向に一定速度で搬送する。次に前工程において形成したカーペット半加工品A1のに接着している中層部20におけるポリプロピレン繊維を配した上部熱溶融性合成繊維層22側を、焼き付け方法を採用した加熱装置aにて、中層部20の不織布層21側のポリエステル繊維が溶融しない温度(約200℃)で加熱溶融させた後、前記加熱溶融したポリプロピレン繊維側すなわち中層部20の上部熱溶融性合成繊維層22側を上層部10のプレコート層13側に重ね合わせつつ加圧ロールbで加圧する。そして、ドライヤー装置cを通して溶融しているポリプロピレンを硬化させて寸法を安定させると3層構造カーペットAが完成し、ドライヤーから出てきた3層構造カーペットAをパレットdに積んでいく。上記のような製造工程によりカーペットAを製造すると、中層部20における上部熱溶融性合成繊維層22のポリプロピレン繊維を不織布層21のポリエステル繊維が溶融しない範囲の温度で、直接、焼き付けることにより溶融し、中層部20の上部熱溶融性合成繊維層22の溶融したポリプロピレン繊維側を上層部10の下面側のプレコート層13に重ね合わせて加圧乾燥することにより上層部10と中層部20とを接着するので、十分な接着性が得られ、かつ、上層部10表面のパイル12に損傷が生じず、また、極めて効率よく製造することができるので、製造コストの低減を図ることができる。
【0034】
なお、上記実施例においては、中層部において上部熱溶融性合成繊維層に低融点のポリプロピレン繊維を使用し、不織布層に高融点のポリエステル繊維を使用したが、これに限られるものではなく、中層部を構成する上部熱溶融性合成繊維層の繊維が不織布層の繊維よりも低融点であれば、焼き付け温度や搬送速度を適宜変更することにより所望の効果が得られる。
【0035】
次に図6及び図7に基づいて本実施例に係る3層構造カーペットの構造について説明する。図6及び図7に示すように、3層構造カーペットAは、上層部10と中層部20と下層部30とを接着して構成されている。
【0036】
上層部10は、ポリエステル繊維の不織布からなる基布11の上面側に、ポリエステル繊維からなるパイル糸によりパイル12が形成され、該基布11の下面側に前記パイル12の糸抜けを防止するためにポリエステル樹脂をコーティングしたプレコート層13が形成されている。なお、上層部10を形成するパイル糸は、上記のような合成繊維を使用すると強度及び耐久性がある点で優れるが、羊毛等の動物性繊維や綿などの植物性繊維を使用することも好適であり、特に保温性の綿において羊毛が優れている。また、炭素繊維やポリアミド繊維等の難燃耐熱繊維を使用すると、自動車などの床に使用する場合には、耐火性に優れるのでさらに好適である。また、プレコート層の素材としては、上記の外、ポリエチレン樹脂等の合成樹脂や、SBR、EVA、NBRなどの合成ラテックスを使用してもよい。
【0037】
中層部20は、不織布層21と上部熱溶融性合成繊維層22と下部熱溶融性合成繊維層23とからなり、不織布層21は50重量%の撥水加工されたポリエステル繊維(融点235℃)から構成され、上部熱溶融性合成繊維層22及び下部熱溶融性合成繊維層23はそれぞれ25重量%のポリプロピレン繊維(融点160℃)から構成され、不織布層21と上部熱溶融性合成繊維層22と下部熱溶融性合成繊維層23との各繊維はニードリングにより絡合させて一体化されている。上部熱溶融性合成繊維層22は、上記上層部10のプレコート層13に向き合う側であって、中層部20における上部熱溶融性合成繊維層22のポリプロピレン繊維と上層部10の下面側のプレコート層13とが溶融接着され、上層部10と中層部20とが一体化されている。
【0038】
下層部30は、75デニールのポリエステル製糸により編成された基布31と300デニールのポリエステル製モノフィラメントからなるパイル糸により形成されたパイルによる下面側の針状突起32とにより形成されている。なお、パイル糸の太さは上記に限られるものではなく、100〜1000デニールの範囲のものを使用することができ、また、基布を構成する編み糸の太さも50〜100デニールの範囲のものを使用することができる。なお、素材は必ずしもポリエステルに限られるものではない。該下層部30は、その基布31と中層部20の下部熱溶融性合成繊維層23とが溶融接着され、下層部30と中層部20とが一体化されている。
【0039】
上記中層部20は、上部熱溶融性合成繊維層22と下部熱溶融性合成繊維層23とが、3層構造カーペットAに対して形態安定性及び強度付与などの作用を果たし、不織布層21がクッション性、吸音性及び止水性を向上させている。また、このように中層部20は、上部熱溶融性合成繊維層22と下部熱溶融性合成繊維層23が上層部10及び下層部30と溶融接着するように構成しているので、ラテックスを使用する必要がなく、3層構造カーペットA軽量化が図れ、また接着剤が不要となり、経済的である。
【0040】
なお、上記中層部として、不織布層を高融点ポリエステル繊維で構成し、上部熱溶融性合成繊維層と下部熱溶融性合成繊維層とを低融点ポリエステル繊維で構成しても同様の結果が得られる。例えば、高融点ポリエステル繊維は融点235℃のものを採用し、低融点ポリエステル繊維は融点110℃のものを採用する。前記低融点ポリエステル繊維及び高融点ポリエステル繊維はそれぞれの融点のものに限られるものではなく、少なくとも高融点ポリエステル繊維は低融点ポリエステル繊維よりも高融点のものであればよい。このように、上層部10を構成する基布、パイル及びプレコート層を、いずれも原材料がポリエステルで形成し、中層部20を構成する上部熱溶融性合成繊維層と下部熱溶融性合成繊維層も、全て原材料をポリエステルで形成し、下層の基布及び針状突起も全てポリエステルで形成した場合には、再生利用が極めて容易である。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明に係る3層構造カーペットは、屋内外に敷設するカーペットとして使用できることはもちろん、特に乗用車などの車両や船舶、航空機などの輸送機械の床面に敷設するカーペットとしても十分な効果を発揮するものである。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施例に係る3層構造カーペットの上層部の断面図である。
【図2】本発明の実施例に係る3層構造カーペットの中層部の断面図である。
【図3】本発明の実施例に係る3層構造カーペットの下層部の断面図ある。
【図4】本発明の実施例に係る3層構造カーペットについて中層部と下層部とを接着する製造工程を示す概略図である。
【図5】本発明の実施例に係る3層構造カーペットについて接着された中層部と下層部とに対して上層部を接着する製造工程を示す概略図である。
【図6】本発明の実施例に係る3層構造カーペットの一部切欠斜視図である。
【図7】本発明の実施例に係る3層構造カーペットの概略断面図である。
【符号の説明】
【0043】
A・・・3層構造カーペット
A1・・カーペット半加工品
10・・上層部
11・・基布
12・・パイル
13・・プレコート層
20・・中層部
21・・不織布層
22・・上部熱溶融性合成繊維層
23・・下部熱溶融性合成繊維層
30・・下層部
31・・基布
32・・針状突起
a・・・加熱装置
b・・・加圧ロール
c・・・ドライヤー装置
d・・・パレット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層構造をなすカーペットであって、
上面側にパイルを有する上層部と、
前記上層部の下面側と接着し、少なくとも不織布層を含有する中層部と、
前記中層部の下面側と接着し、下面側に針状突起を形成した下層部とからなる
ことを特徴とする3層構造カーペット。
【請求項2】
上層部は、上面側のパイルの糸抜け防止のために、その下面側に合成樹脂をコーティングしてなることを特徴とする請求項1に記載の3層構造カーペット。
【請求項3】
中層部における不織布層が撥水加工されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の3層構造カーペット。
【請求項4】
中層部は、その上面側に上部熱溶融性合成繊維層を備え、該上部熱溶融性合成繊維層が溶融して上層部の下面側と接着し、下面側に下部熱溶融性合成繊維層を備え、該下部熱溶融性合成繊維層が溶融して下層部の上面側と接着していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の3層構造カーペット。
【請求項5】
下層部は、パイル糸が100〜1000デニールの合成樹脂モノフィラメントである片面カットパイル布帛よりなり、下面側の針状突起が片面カットパイル布帛のカットパイルにより形成されてなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の3層構造カーペット。
【請求項6】
中層部は、不織布層がポリエステル製であり、上部熱溶融性合成繊維層及び下部熱溶融性合成繊維層は前記不織布層を構成するポリエステルよりも低融点のポリプロピレン製であることを特徴とする請求項4又は5に記載の3層構造カーペット。
【請求項7】
上層部及び下層部がポリエステル製であり、中層部は、不織布層がポリエステル製であり、上部熱溶融性合成繊維層及び下部熱溶融性合成繊維層が前記不織布層を構成するポリエステルよりも低融点のポリエステル製であることを特徴とする請求項4又は5に記載の3層構造カーペット。
【請求項8】
中層部における上部熱溶融性合成繊維層及び下部熱溶融性合成繊維層がそれぞれ10〜30重量%、不織布層が40〜80重量%であることを特徴とする請求項4〜7のいずれか1項に記載の3層構造カーペット。
【請求項9】
上面側にパイルを有し、下面側に合成樹脂をコーティングしてなる上層部を形成し、
中間に撥水加工したポリエステル製不織布層を、上面側に該不織布層を構成するポリエステルよりも低融点のポリエステルを使用した上部熱溶融性合成繊維層を、下面側に該不織布層を構成するポリエステルよりも低融点のポリエステルを使用した下部熱溶融性合成繊維層をそれぞれ積層し、ニードリングした中層部を形成し、
上面側をベース地とし、下面側をカットパイル面とする片面カットパイル布帛を、ベース地の構成糸として50〜100デニールの合成樹脂製糸を使用し、カットパイルの構成糸として100〜1000デニールの合成樹脂モノフィラメントを使用して下層部を形成し、
中層部の下面側における下部熱溶融性合成繊維層を不織布層が溶融しない程度の温度で焼き付けにより溶融し、溶融した中層部の下面側と下層部の上面側とが向き合うように重ね合わせて加圧接着し、
中層部の上面側における上部熱溶融性合成繊維層を不織布層が溶融しない程度の温度で焼き付けにより溶融し、溶融した中層部の上面側と上層部の下面側とが向き合うように重ね合わせて加圧接着して製造した、
ことを特徴とする3層構造カーペットの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−222516(P2007−222516A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−49354(P2006−49354)
【出願日】平成18年2月24日(2006.2.24)
【出願人】(592222857)吉田房織物株式会社 (5)
【Fターム(参考)】