説明

3次元撮像装置および光透過板

【課題】色フィルタを用いて視差を有する複数の画像と光利用率の高い画像を生成するとともに、レンズ絞り量の変化にも対応できる撮像技術および光学構成を提供する。
【解決手段】透過波長域が互いに異なるN個(Nは3以上整数)の扇形の透過領域を有する光透過部2と、光透過部2を透過した光を受ける固体撮像素子1と、固体撮像素子1の撮像面に像を形成する光学系3と、固体撮像素子1から出力される信号を処理する信号処理部とを備える。固体撮像素子1の撮像面には、N個の光感知セルとN個の色フィルタとで構成される光感知セルアレイ、および色フィルタアレイが形成され、各透過領域および各色フィルタの透過波長域は、透過領域の少なくとも1つを透過する光がN個の色フィルタの少なくとも2つを透過し、信号処理部は、各透過領域に入射する光の強度のうち少なくとも2つの強度を示す信号を生成し視差を有する少なくとも2つの画像のデータを生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は視差を有する複数の画像を生成する単眼の3次元撮像技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、CCDやCMOS等の固体撮像素子(以下、「撮像素子」と称する場合がある。)を用いたデジタルカメラやデジタルムービーの高機能化、高性能化には目を見張るものがある。特に半導体製造技術の進歩により、固体撮像素子における画素構造の微細化が進んでいる。その結果、固体撮像素子の画素および駆動回路の高集積化が図られてきた。このため、僅かの年数で撮像素子の画素数が100万画素程度から1000万画素以上へと著しく増加した。さらに、撮像によって得られる画像の質も飛躍的に向上している。一方、表示装置に関しては、薄型の液晶やプラズマによるディスプレイにより、場所を取らず、高解像度で高コントラストの表示が可能になり、高い性能が実現されている。このような映像の高品質化の流れは、2次元画像から3次元画像へと広がりつつある。昨今では、偏光メガネを必要とするが、高画質の3次元表示装置が開発され始めている。
【0003】
3次元撮像技術に関して、単純な構成をもつ代表的な技術として、2つのカメラから構成される撮像系を用いて、右目用の画像および左目用の画像をそれぞれ取得するという技術がある。このような、いわゆる2眼撮像方式では、カメラを2つ用いるため、撮像装置が大型になり、コストも高くなり得る。そこで、1つのカメラを用いて視差を有する複数の画像を取得する方式が研究されている。例えば、特許文献1には、透過軸の方向が互いに直交する2枚の偏光板と回転する偏光フィルタとを用いる方式が開示されている。
【0004】
図12は、当該方式による撮像系の構成を示す模式図である。撮像装置は、0度偏光の偏光板11、90度偏光の偏光板12、反射鏡13、ハーフミラー14、円形の偏光フィルタ15、円形の偏光フィルタを回転させる駆動装置16、光学レンズ3、光学レンズにより結像された像を取得する撮像装置9を備えている。ここで、ハーフミラー14は、偏光板11を透過して反射鏡13で反射された光を反射し、偏光板12を透過した光を透過させる。以上の構成により、離れた場所に配置された偏光板11、12をそれぞれ透過した光は、ハーフミラー14、円形の偏光フィルタ15、および光学レンズ3を透過して撮像装置9に入射し、画像が取得される。この方式における撮像の原理は、円形の偏光フィルタ15を回転させることにより、2枚の偏光板11、12のそれぞれに入射した光を別々のタイミングで捉え、視差を有する2つの画像を取得する、というものである。
【0005】
しかしながら、上記方式では、円形の偏光フィルタ15を回転しながら時間分割によって異なる位置の画像を取得するため、視差を有する2つの画像を同時に取得できないという課題がある。また、機械的駆動を用いるため、耐久性に問題があり得る。さらに、入射光が偏光板および偏光フィルタを透過するため、撮像装置9が受ける光の量(受光量)が50%以上も減少するという問題点もある。
【0006】
上記方式に対して、機械的駆動を用いることなく視差のある2つの画像を同時に撮像する方式が特許文献2に開示されている。この方式による撮像装置は、2つの入射領域から入射する光を反射鏡によって集光し、2種類の偏光フィルタが交互に配列された撮像素子で受光することにより、機械的駆動部を有さずに視差のある2つの画像を取得する。
【0007】
図13は、この方式における撮像系の構成を示す模式図である。この撮像系は、透過軸の方向が互いに直交する2つの偏光板11、12と、反射鏡13と、光学レンズ3と、撮像素子1とを有する。撮像素子1は、その撮像面に、複数の画素10と、画素に1対1に対応して配置された偏光フィルタ17、18とを備える。偏光フィルタ17、18は全画素上に交互に配列されている。ここで、偏光フィルタ17、18の透過軸の向きは、それぞれ偏光板11、12の透過軸の向きと一致している。
【0008】
以上の構成により、入射光は偏光板11、12を透過し、反射鏡13で反射され、光学レンズ3を通り、撮像素子1の撮像面に入射する。偏光板11、12をそれぞれ透過して撮像素子1に入射する光は、それぞれ偏光フィルタ17、18を透過してそれらの直下の画素で光電変換される。ここで、偏光板11、12をそれぞれ通って撮像素子1に入射する光によって形成される画像を、それぞれ右目用画像、左目用画像と呼ぶと、右目用画像、左目用画像は、それぞれ偏光フィルタ17、18に対向する画素群から得られる。
【0009】
このように、特許文献2に開示された方式では、特許文献1に開示された回転する円形の偏光フィルタを用いる代わりに、撮像素子の画素上に透過軸の方向が互いに直交する2種類の偏光フィルタが交互に配置される。これにより、解像度は特許文献1の方式に比べて1/2に低下するが、1つの撮像素子を用いて視差を有する右目用画像と左目用画像とを同時に得ることができる。
【0010】
しかしながら、この技術においても特許文献1の技術と同様、入射光が偏光板および偏光フィルタを透過する際に光量が減少するため、撮像素子の受光量は大きく減少する。
【0011】
この受光量が減少するという問題に対して、視差を有する2つの画像と通常の画像とを1つの撮像素子で取得できる技術が特許文献3に開示されている。この技術によれば、視差のある2つの画像の取得時と通常画像の取得時とで構成要素の一部が機械的に入れ替わることによって視差を有する2つの画像と通常画像とが1つの撮像素子で取得される。視差を有する2つの画像を取得する際に光路上に2つの偏光フィルタが配置される点は特許文献2に開示された技術と同じである。一方、通常画像を取得する際にはこれらの偏光フィルタは機械的に光路から取り外される。このような機構を取り入れることにより、視差のある画像と光利用率の高い通常画像とを得ることができる。
【0012】
上記の特許文献1〜3に開示された技術では、偏光板や偏光フィルタが用いられるが、他のアプローチとして、色フィルタが用いられる技術もある。例えば、色フィルタを用いて視差を有する2つの画像を同時に取得する技術が特許文献4に開示されている。図14は、この技術を用いた撮像系を模式的に示す図である。この技術における撮像系は、レンズ3、レンズ絞り19、透過波長域の異なる2つの色フィルタ20a、20bが配置された光束制限板20、感光フィルム21を備える。ここで、色フィルタ20a、20bは、例えば赤系統、青系統の光をそれぞれ透過させるフィルタである。
【0013】
以上の構成により、入射光は、レンズ3、レンズ絞り19、および光束制限板20を透過し、感光フィルムに結像する。その際、光束制限板20における2つの色フィルタ20a、20bでは、それぞれ赤系統、青系統の光だけが透過する。その結果、感光フィルム上にはこれら2つの色フィルタをそれぞれ透過した光によるマゼンタ系統の色の像が形成される。ここで、色フィルタ20a、20bの位置が異なっているため、感光フィルム上に形成される像には視差が生じる。ここで、感光フィルムから写真を作り、赤色フィルムおよび青色フィルムがそれぞれ右目用および左目用として貼り付けられたメガネを使うと、奥行き感のある画像を見ることができる。このように、特許文献4に開示された技術によれば、2つの色フィルタを使って視差を有する画像を作ることができる。
【0014】
特許文献4に開示された技術は、感光フィルム上に結像させ、視差を有する複数の画像を作るものであるが、一方で、視差を有する画像を電気信号に変換して取得する技術が特許文献5に開示されている。図15は、この技術における光束制限版を模式的に表す図である。この技術では、撮像光学系の光軸に垂直な平面上に、赤色光を透過するR領域22R、緑色光を透過するG領域22G、青色光を透過するB領域22Bが設けられた光束制限版22が用いられる。これらの領域を透過した光を赤用のR画素、緑用のG画素、青用のB画素を有するカラー撮像素子で受けることにより、各領域を透過した光による画像が取得される。
【0015】
また、特許文献6にも、図15の構成と同様の構成を用いて視差を有する複数の画像を取得する技術が開示されている。図16は、特許文献6に開示された光束制限板を模式的に示す図である。この技術でも、光束制限板23に設けられたR領域23R、G領域23G、B領域23Bを入射光が透過することにより視差のある画像を作ることができる。
【0016】
上記の特許文献4〜6に示された技術によれば、光束制限板にRGBの色フィルタを配置することによって視差のある画像を生成することができる。しかしながら、光束制限板を用いるため、入射光量が減少する。また、視差の効果を高めるにはRGBの色フィルタを互いに離れた位置に配置し、それらの面積を小さくする必要があるが、そのようにすると入射光量はさらに減少する。
【0017】
以上の技術に対して、RGBの色フィルタが配置された絞りを用いて、視差を有する複数の画像と光量的に問題のない通常画像とを得ることができる技術が特許文献7に開示されている。この技術では、絞りを閉じた状態ではRGBの色フィルタを透過した光だけが受光され、絞りを開いた状態ではRGBの色フィルタ領域が光路から外されるため、入射光をすべて受けることができる。これにより、絞りを閉じた状態では視差のある画像を取得し、絞りを開いた状態では光利用率の高い通常画像を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開昭62−291292号公報
【特許文献2】特開昭62−217790号公報
【特許文献3】特開2001−016611号公報
【特許文献4】特開平2−171737号公報
【特許文献5】特開2002−344999号公報
【特許文献6】特開2009−276294号公報
【特許文献7】特開2003−134533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
従来技術によれば、視差を有する複数の画像を取得することができるが、偏光板または色フィルタを用いるため、撮像素子の受光量は減少する。入射光量を十分に確保するためには、偏光板または色フィルタを機械的駆動によって光路から外す機構を用いて光利用率の高い通常画像を取得する必要がある。そのような機械的駆動を用いる場合、装置の大型化および高コスト化を招くという問題がある。
【0020】
本発明は、機械的駆動を行うことなく、色フィルタを用いて視差を有する複数の画像を生成するとともに、光利用率の高い画像を生成し得る3次元撮像技術を提供する。さらに、本発明は、レンズ絞り量が変化しても同一の機構により視差を有する複数画像を取得できる撮像技術および光学構成を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の3次元撮像装置は、透過波長域が互いに異なるN個(Nは3以上の整数)の透過領域を有する光透過部と、前記光透過部を透過した光を受けるように配置された固体撮像素子と、絞りを有し前記固体撮像素子の撮像面に像を形成する光学系と、前記固体撮像素子から出力される信号を処理する信号処理部とを備えている。前記固体撮像素子は、光感知セルアレイ、および前記光感知セルアレイに対向して配置された色フィルタアレイを有している。前記光感知セルアレイおよび前記色フィルタアレイは、複数の単位要素から構成され、各単位要素は、N個の光感知セル、および前記N個の光感知セルに1対1に対応して配置された、透過波長域が互いに異なるN個の色フィルタを含んでいる。前記光透過部の中心は、前記光学系の光軸上に位置し、前記N個の透過領域の少なくとも2個は、前記光透過部の半径方向に垂直な方向のサイズが前記光透過部の中心からの距離に応じて大きくなる部分を有している。
【0022】
ある実施形態において、前記N個の透過領域の少なくともN−1個は、前記光透過部の半径方向に垂直な方向のサイズが前記光透過部の中心からの距離に応じて大きくなる部分を有している。
【0023】
ある実施形態において、前記N個の透過領域の少なくともN−1個は、前記光透過部の中心を頂点とする扇形の形状を有している。
【0024】
ある実施形態において、N=3であり、前記N個の透過領域は、それぞれ、シアン光を透過させるシアン領域、黄光を透過させる黄領域、および透明領域であり、前記シアン領域の形状および前記黄領域の形状は扇形である。
【0025】
ある実施形態において、N=4であり、前記N個の透過領域は、それぞれ、シアン光を透過させるシアン領域、黄光を透過させる黄領域、マゼンタ光を透過させるマゼンタ領域、および透明領域であり、前記シアン領域の形状、前記黄領域の形状、および前記マゼンタ領域の形状は扇形である。
【0026】
ある実施形態において、前記N個の透過領域および前記N個の色フィルタの透過波長域は、前記N個の透過領域の少なくとも1つを透過する光が前記N個の色フィルタの少なくとも2つを透過できるように設定され、前記信号処理部は、前記N個の光感知セルから出力される信号に基づいて、前記N個の透過領域の各々に入射する光の強度のうち少なくとも2つの強度を示す信号を生成することによって視差を有する少なくとも2つの画像のデータを生成する。
【0027】
本発明の光透過板は、透過波長域が互いに異なるN個(Nは3以上の整数)の透過領域を有する光透過板であって、前記N個の透過領域の少なくとも2個は、半径方向に垂直な方向のサイズが中心からの距離に応じて大きくなる部分を有している。
【0028】
本発明の光透過板のある実施形態において、前記N個の透過領域の少なくとも2個は、中心を頂点とする扇形の形状を有している。
【0029】
本発明の光透過板のある実施形態において、前記N個の透過領域の少なくともN−1個は、中心を頂点とする扇形の形状を有している。
【0030】
本発明の光透過板のある実施形態において、N=3であり、前記N個の透過領域は、それぞれ、シアン光を透過させるシアン領域、黄光を透過させる黄領域、および透明領域であり、前記シアン領域の形状および前記黄領域の形状は扇形である。
【0031】
本発明の光透過板のある実施形態において、N=4であり、前記N個の透過領域は、それぞれ、シアン光を透過させるシアン領域、黄光を透過させる黄領域、マゼンタ光を透過させるマゼンタ領域、および透明領域であり、前記シアン領域の形状、前記黄領域の形状、および前記マゼンタ領域の形状は扇形である。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、機械的駆動を行うことなく、色フィルタを有する撮像素子を用いて、視差を有する複数の画像を得ることができる。さらに、透過領域および色フィルタの透過波長域を適切に設定することにより、光利用率の高い画像を得ることができる。また、本発明によれば、レンズ絞り量が変化しても同一の機構で視差を有する複数の画像を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】実施形態1における全体構成を示すブロック図
【図2】実施形態1における透光板、光学系、および撮像素子の概略構成を示す模式図
【図3】実施形態1における透光板の透過領域の配置を示す図
【図4】実施形態1における撮像素子の色フィルタの基本構成を示す図
【図5】実施形態1における撮像素子の色フィルタの他の基本構成を示す図
【図6】実施形態1における撮像素子の色フィルタのさらに他の基本構成を示す図
【図7A】実施形態1における透光板、光学系、および撮像素子の第2の例を示す図
【図7B】実施形態1における透光板、光学系、および撮像素子の第3の例を示す図
【図8】実施形態2における透光板の透過領域の配置を示す図
【図9】実施形態2における撮像素子の色フィルタの基本構成を示す図
【図10】n個の透過領域を有する光透過部の一例を示す図
【図11】各単位要素におけるn個の色フィルタの配置の一例を示す図
【図12】特許文献1における撮像系の構成図
【図13】特許文献2における撮像系の構成図
【図14】特許文献4における撮像系の構成図
【図15】特許文献5における光束制限板の外観図
【図16】特許文献6における光束制限板の外観図
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。以下の説明において共通する要素には同一の符号を付している。なお、本明細書において、画像を示す信号または情報を単に「画像」と称する場合がある。
【0035】
(実施形態1)
図1は、本発明の第1の実施形態における撮像装置の全体構成を示すブロック図である。本実施形態の撮像装置は、デジタル式の電子カメラであり、撮像部100と、撮像部100からの信号に基づいて画像を示す信号(画像信号)を生成する信号処理部200とを備えている。
【0036】
撮像部100は、撮像面上に配列された複数の光感知セルを備える撮像素子(イメージセンサ)1と、透過波長域が互いに異なる3つの透過領域を有し入射光を透過させる透光板2と、撮像素子の撮像面上に像を形成するための光学レンズ3と、赤外カットフィルタ4と、レンズ絞り19とを備えている。撮像部100はまた、撮像素子1を駆動するための基本信号を発生するとともに撮像素子1からの出力信号を受信して信号処理部200に送出する信号発生/受信部5と、信号発生/受信部5によって発生された基本信号に基づいて撮像素子1を駆動する素子駆動部6とを備えている。撮像素子1は、典型的にはCCDまたはCMOSセンサであり、公知の半導体製造技術によって製造される。信号発生/受信部5および素子駆動部30は、例えばCCDドライバなどのLSIから構成されている。
【0037】
信号処理部200は、撮像部100から出力された信号を処理して画像信号を生成する画像信号生成部7と、画像信号の生成に用いられる各種のデータを格納するメモリ30と、生成した画像信号を外部に送出するインターフェース(IF)部8とを備えている。画像信号生成部7は、公知のデジタル信号処理プロセッサ(DSP)などのハードウェアと、画像信号生成処理を含む画像処理を実行するソフトウェアとの組合せによって好適に実現され得る。メモリ30は、DRAMなどによって構成される。メモリ30は、撮像部100から得られた信号を記録するとともに、画像信号生成部7によって生成された画像データや、圧縮された画像データを一時的に記録する。これらの画像データは、インターフェース部8を介して不図示の記録媒体や表示部などに送出される。
【0038】
なお、本実施形態の撮像装置は、電子シャッタ、ビューファインダ、電源(電池)、フラッシュライトなどの公知の構成要素を備え得るが、それらの説明は本発明の理解に特に必要でないため省略する。
【0039】
次に、図2〜4を参照しながら撮像部100の構成をより詳細に説明する。
【0040】
図2は、撮像部100における透光板2、レンズ3、および撮像素子1の配置関係を模式的に示す図である。なお、図2では、透光板2、レンズ3、および撮像素子1以外の構成要素は省略されている。透光板2は、透過波長域が互いに異なる3つの透過領域C1、C2、C3を有し、入射光を透過させる。本実施形態では、領域C3は領域C1およびC2を隔てて2つの部分に分かれているが、これらを1つの領域C3であるとする。レンズ3は、公知のレンズであり、透光板2を透過した光を集光し、撮像素子1の撮像面1aに結像する。なお、以下の説明において、撮像面1aに平行な平面において、領域C1からC2へ向かう方向をx方向とし、x方向に垂直な方向をy方向とする。ここで、透光板2の中心は、レンズ3の光軸上に位置している。
【0041】
図3は、本実施形態における透光板2の正面図である。本実施形態における透光板2の形状は、レンズ3と同様、円形であるが、他の形状であってもよい。ここで、領域C1および領域C2は、透光板2の中心を頂点とする扇形の形状を有している。このような透光板2を用いることにより、レンズ絞り19の開口径が変化した場合、領域C1、C2、C3において入射光を受ける部分の面積は変化するが、それらの面積比率は一定に保たれる。その結果、レンズ絞り19の開口径が変化しても、後述する信号演算処理を変えることなく画像を生成することができる。なお、領域C1、C2における扇形形状の中心角は、180°よりも小さい限りにおいて任意の角度に設定され得る。本実施形態では、領域C1、C2は、透光板2の中心を通るy方向の直線に対して線対称に位置するように配置されているが、本発明はこのような配置に限られない。
【0042】
領域C1には、シアン(Cy)の波長域の光を透過させる色フィルタ(Cyフィルタ)が配置される。領域C2には、黄(Ye)の波長域の光を透過させる色フィルタ(Yeフィルタ)が配置される。これらの色フィルタは、公知のどのような色フィルタであってもよい。なお、本実施形態における領域C1および領域C2は、それぞれCyの波長域の光およびYeの波長域の光を透過し、他の波長域の光を透過しないように構成されていれば、色フィルタに限らず、どのような部材で構成されていてもよい。また、透光板2における他の領域C3は、白色光(W)に含まれる全波長域の可視光を透過させる透明部材で形成された透明領域である。透明部材は、光を高い透過率で透過させる部材であればどのようなものでもよい。本実施形態では、領域C1および領域C2の面積は等しく、領域C3の面積は領域C1、C2の面積よりも大きく設計されている。
【0043】
なお、上記の透光板2の構成は、あくまでも本実施形態における構成であり、本発明はこのような構成に限られない。本発明の光透過部は、透過波長域が互いに異なる3つ以上の透過領域を有していれば、各透過領域の特性、材質、形状、サイズは任意である。例えば、領域C3に、透明部材の代わりにマゼンタ(Mg)の波長域の光を透過させる色フィルタ(Mgフィルタ)を配置してもよい。また、透光板2の一部に遮光領域が含まれていてもよい。
【0044】
図2に示される撮像素子1の撮像面1aには、2次元状に配列された光感知セルアレイおよび光感知セルアレイに対向して配置された色フィルタアレイが形成されている。光感知セルアレイおよび色フィルタアレイは、複数の単位要素を有し、各単位要素は、4つの光感知セルおよびそれらに対向する4つの色フィルタを含んでいる。各光感知セルは、典型的にはフォトダイオードであり、光電変換によって各々の受光量に応じた電気信号(光電変換信号)を出力する。また、各色フィルタは、公知の顔料などを用いて作製され、特定の波長域の光を選択的に透過させるように設計されている。
【0045】
図4は、本実施形態における色フィルタアレイの一部を模式的に示す図である。図示されるように、撮像面1a上には多数の色フィルタ110が行列状に配列されている。近接する4つの色フィルタ110およびそれらに対向する4つの光感知セル120が1つの単位要素を構成している。各単位要素において、1行1列目には赤(R)の波長域の光を透過させる色フィルタ(Rフィルタ)が配置されている。1行2列目および2行1列目には緑(G)の波長域の光を透過させる色フィルタ(Gフィルタ)が配置されている。2行2列目には青の波長域の光を透過させる色フィルタ(Bフィルタ)が配置されている。このように、本実施形態における色フィルタ110の配列は、2行2列を基本とする公知のBayer配列である。
【0046】
なお、光感知セル120および色フィルタ110の配列は、必ずしもBayer配列である必要はなく、公知のどのような配列であってもよい。また、光感知セル120および色フィルタ110の配列は、x方向およびy方向に沿った配列である必要はなく、x方向およびy方向に対して傾いていてもよい。その場合、左右の視差に関する情報ではなく、斜め方向の視差に関する情報が得られる。
【0047】
また、1つの単位要素には4つの光感知セルおよび4つの色フィルタを有することは必須ではなく、少なくとも3つの光感知セルおよび3つの色フィルタを有していればよい。各単位要素に含まれる光感知セルおよび色フィルタの数は、上記の透光板2における透過領域の数と同じか、それよりも多ければ後述する信号演算によって画像情報を得ることができる。
【0048】
以上の構成により、露光中に撮像装置に入射する光は、透光板2、レンズ3、赤外カットフィルタ4、色フィルタ110を通って光感知セル120に入射する。各光感知セルは、透光板2の領域C1、C2、C3の各々を透過した光のうち、対向する色フィルタを通った光を受け、受けた光の量に応じた光電変換信号を出力する。各光感知セルによって出力された光電変換信号は、信号発生/受信部5を通して信号処理部200に送出される。信号処理部200における画像信号生成部7は、撮像部100から送出された信号に基づいて右目用画像、左目用画像、およびカラー画像を生成する。
【0049】
以下、各光感知セルから出力される光電変換信号を説明する。まず、透光板2の領域C1、C2、C3に入射する光の強度に相当する信号を、それぞれ添え字「i」を付けてCi1、Ci2、Ci3で表すこととする。また、透光板2における透明領域C3、レンズ3、および赤外カットフィルタ4を合わせた分光透過率をTw、Cyフィルタの分光透過率をTcy、Yeフィルタの分光透過率をTyeとする。同様に、R、G、Bの各色フィルタの分光透過率を、それぞれTr、Tg、Tbと表す。ここで、Tw、Tcy、Tye、Tr、Tg、Tbは、入射する光の波長λに依存する関数である。R、G、Bの色フィルタを透過して直下の光感知セルで受光される光の強度を示す信号を、それぞれ添え字「s」を付けてRs、Gs、Bsと表す。また、可視光の波長域における分光透過率の積分演算を記号Σで表すこととする。例えば、波長λについての積分演算∫TwTcyTrdλなどを、ΣTwTcyTrなどと表すこととする。ここで、積分は可視光の全波長域にわたって行われるものとする。すると、Rsは、Ci1ΣTwTcyTr、Ci2ΣTwTyeTr、およびCi3ΣTwTrを合算した結果に比例する。同様に、Gsは、Ci1ΣTwTcyTg、Ci2ΣTwTyeTg、およびCi3ΣTwTgを合算した結果に比例し、Bsは、Ci1ΣTwTcyTb、Ci2ΣTwTyeTb、Ci3ΣTwTbを合算した結果に比例する。なお、ここではC1〜C3に入射する光は、可視光領域のどの波長成分もほぼ等量含んでいるものと仮定している。これらの関係における比例係数を1とすれば、Rs、Gs、Bsは、以下の式1〜3で表すことができる。
【0050】
(式1)Rs=Ci1ΣTwTcyTr+Ci2ΣTwTyeTr+Ci3ΣTwTr
(式2)Gs=Ci1ΣTwTcyTg+Ci2ΣTwTyeTg+Ci3ΣTwTg
(式3)Bs=Ci1ΣTwTcyTb+Ci2ΣTwTyeTb+Ci3ΣTwTb
式1〜3において、ΣTwTcyTr、ΣTwTyeTr、ΣTwTrを、それぞれMx11、Mx12、Mx13で表し、ΣTwTcyTg、ΣTwTyeTg、ΣTwTgを、それぞれMx21、Mx22、Mx23で表し、ΣTwTcyTb、ΣTwTyeTb、ΣTwTbを、それぞれMx31、Mx32、Mx33で表すこととする。すると、Rs、Gs、BsとCi1、Ci2、Ci3との関係は、行列を用いて以下の式4で表すことができる。
【0051】
【数1】




【0052】
ここで、式4における要素Mx11〜Mx33からなる行列の逆行列の要素を、それぞれiM11〜iM33とすると、式4は次の式5に変形できる。すなわち、領域C1、C2、C3に入射する光の強度を示す信号を、光電変換信号Rs、Gs、Bsを用いて表すことができる。
【0053】
【数2】




【0054】
画像信号生成部7は、式5に基づく信号演算を実行し、信号Ci1、Ci2、Ci3を、単位要素ごとに生成する。このようにして単位要素ごとに生成された信号Ci1、Ci2、Ci3は、領域C1、C2、C3のそれぞれに入射する光によって形成される3つの画像を表す。特に、信号Ci1、Ci2によって表される画像は、x方向に離れて位置する領域C1、C2からそれぞれ被写体を見たときの画像に相当するため、左目用画像および右目用画像として扱うことができる。すなわち、信号Ci1、Ci2によって表される2つの画像は、領域C1、C2の距離に応じた視差を有する。したがって、これらの画像から被写体の奥行きを示す情報を得ることができる。
【0055】
一方、Ci3は、視差を示す画像ではなく通常の画像を示す信号であると言える。Ci3は、Ci1およびCi2と類似する箇所があり得るため、そのような箇所においてCi3の信号をCi1、Ci2の信号に加えることにより、視差を示す画像Ci1、Ci2の信号レベルを高めることができる。本実施形態では、領域C3の面積が領域C1、C2の面積よりも大きいことから、Ci3の信号レベルはCi1、Ci2の信号レベルよりも高い。したがって、Ci3の一部をCi1およびCi2に加算することは、視差を示す良好な画像を得る上で効果的である。本実施形態において、領域C1、C2の面積に対する領域C3の面積は大きいほど好ましい。なお、視差のない通常の画像を取得する際も、領域C3の面積が大きいほど、信号レベルの高い画像信号を得ることができる。
【0056】
以上の処理によって得られる画像信号Ci1、Ci2、Ci3は、光電変換信号Rs、Gs、Bsを用いて表されるが、これらはカラー画像ではなく、白黒画像に相当する。白黒画像ではなくカラー画像を得るには、上記の信号演算処理は行わず、得られた各光電変換信号から通常のBayer配列におけるカラー処理を行えばよい。その際、透光板2に配置されたCyフィルタ、Yeフィルタによって入射光の損失や色温度ずれが発生し得るが、これらの色フィルタの光透過率が高いため、入射光の損失を従来技術の場合よりも小さくできる。また、全体的な色のずれが発生しても白バランスの調整により対処できる。このように、本実施形態の撮像装置によれば、光利用率の高い良好なカラー画像を得ることができる。
【0057】
なお、カラー画像を得る際に、各光電変換信号から通常のBayer配列におけるカラー処理を行うのではなく、式4におけるCi3の項だけを利用してカラー情報を得てもよい。すなわち、式5に基づいてCi3を求めた後、Mx13×Ci3をRの光量、Mx23×Ci3をGの光量、Mx33×Ci3をBの光量とすることによってもカラー画像を得ることができる。
【0058】
以上のように、本実施形態によれば、Cyフィルタが配置された領域C1、Yeフィルタが配置された領域C2、および透明部材からなる領域C3から構成される透光板2と、Bayer配列を有するカラー撮像素子1とが用いられる。光学系や色フィルタなどの分光透過率に関する積分演算によって得られる3×3の行列に基づく信号演算を各光電変換信号に対して実行することにより、画像信号生成部7は、視差を有する2つの画像、および光利用率の高い通常画像を生成する。さらに、通常のBayer配列で用いられるカラー処理、または信号Ci3を用いたカラー処理を行えば、光利用率の高いカラー画像を得ることができる。また、レンズ絞り19の開口径が変化しても領域C1、C2、C3の光を透過する部分の面積比率は変わらないため、上記の演算式(式4、5)を変えることなくレンズ絞り19の開口径の変化に対応することができるという利点も有する。
【0059】
なお、本実施形態における透光板2において、領域C1、C2の形状は扇形であるが、必ずしも扇形である必要はない。レンズ絞り19の開口径が変化したときに各透過領域において光を受ける部分の面積比率が一定に保たれれば、領域C1、C2の形状はどのような形状であってもよい。
【0060】
本実施形態における画像信号生成部7は、上記のように視差を有する2つの画像、光利用率の高い白黒画像およびカラー画像を生成することができるが、これらの画像を全て生成することは必須ではない。画像信号生成部7は、少なくとも視差を有する2つの画像データを生成するように構成されていればよい。
【0061】
なお、本実施形態では、撮像素子1における色フィルタの配列は、RGBの色フィルタが配置されたBayer型の色配列であるが、他の色フィルタや、他の配列を用いてもよい。例えば、図5に示すように、Bayer型のカラー化と同じくRGBの色フィルタを用いるが、RフィルタとBフィルタとが同じ列に配置されていてもよい。このような配列を用いた場合、Rフィルタに対向する光感知セルとBフィルタに対向する光感知セルとの間でx方向の画素単位のずれが無いため、x方向の視差の精度を高めることができる。また、図6に示すように、Gフィルタの代わりに白色光(W)に含まれる全波長域の可視光を透過させる透明部材を用いても同様のカラー化が可能である。図6に示す構成を採用した場合、Gフィルタよりも透明要素の方が多くの光を透過することから、撮像素子における光利用率がさらに向上するという利点がある。
【0062】
撮像部100の構成に関して、図2に示す各構成要素の配置関係はあくまでも一例であって、本発明はこのような配置関係に限られるものではない。例えば、レンズ3は、撮像面1aに像を形成できれば透光板2よりも撮像素子1から離れて配置されていてもよい。また、図7Aに示すように、複数のレンズ3が配置され、それらの間に透光板2が配置される構成も可能である。また、レンズ3と透光板2とは独立した構成要素である必要はなく、両者は一体化された1つの光学素子3aとして構成されていてもよい。さらに、透光板2と撮像素子1の撮像面とは必ずしも平行に配置されている必要はない。例えば、図7Bに示すように、両者の間にミラーやプリズムなどの、光を反射する光学素子52を配置することにより、透光板2と撮像素子1の撮像面とが互いに交差する平面上に位置するように構成することができる。
【0063】
本実施形態の撮像装置は、撮像によって得られる光電変換信号から信号演算によって画像を生成するが、信号演算による画像の生成処理を撮像装置とは独立した他の装置に実行させてもよい。例えば、本実施形態における撮像部100を有する撮像装置によって取得した信号を他の装置に読み込ませ、上記の信号演算処理を規定するプログラムを当該他の装置に実行させることによっても上記と同様の効果を得ることができる。
【0064】
(実施形態2)
次に図8、9を参照しながら本発明の第2の実施形態を説明する。本実施形態の撮像装置は、透光板2における透過領域の構成および撮像素子1の色フィルタアレイの構成が実施形態1の撮像装置と異なっている。以下、実施形態1と異なる点を説明し、重複する点については説明を省略する。
【0065】
図8は本実施形態における透光板2の正面図である。透光板2の形状は、光学レンズ3と同様、円形であるが、他の形状であってもよい。ここで、領域C1、C2、C3は、透光板2の中心を頂点とする扇形の形状を有している。このような透光板2を用いることにより、レンズ絞り19の開口径が変化した場合、領域C1、C2、C3、C4において入射光を受ける部分の面積は変化するが、それらの面積比率は一定に保たれる。その結果、レンズ絞り19の開口径が変化しても、後述する信号演算処理を変えることなく画像を生成することができる。なお、領域C1、C2、C3における扇形形状の中心角は、120°よりも小さい限りにおいて任意の角度に設定され得る。領域C1にシアン光を透過するCyフィルタ、領域C2にマゼンタ光を透過するMgフィルタ、領域C3に黄光を透過するYeフィルタが配置され、それ以外の領域C4は透明部材で形成された透明領域(W)である。
【0066】
図9は本実施形態における撮像素子1の撮像面1aに形成された色フィルタアレイの基本構成を示す図である。色フィルタアレイは、2行2列を基本とするMgフィルタ、Gフィルタ、Cyフィルタ、Yeフィルタから構成される。図9では、1行1列目にMgフィルタ、1行2列目にGフィルタ、2行1列目にCyフィルタ、2行2列目にYeフィルタが配置された例を示しているが、これらの色フィルタの配列は任意である。
【0067】
以上の構成により、各光感知セルは、透光板2の領域C1〜C4の各々を透過した光のうち、対向する色フィルタを透過した光を受ける。以下、各光感知セルにおける光電変換信号を説明する。
【0068】
本実施形態においても領域C1〜C4に入射する光は、可視光領域のどの波長成分もほぼ等量含んでいるものと仮定する。また、記号の表記については実施形態1の表記と同様とする。ただし、透光板2のMg、Cy、Yeフィルタの分光透過率Tmg、Tcy、Tyeは、それぞれ色フィルタアレイにおけるMg、Cy、Yeフィルタの分光透過率と同一であるとする。さらに、色フィルタアレイにおけるMg、Cy、Yeの色フィルタを透過し直下の光感知セルで光電変換される信号をそれぞれMs、Cs、Ysで表すこととする。すると、Msは、Ci1ΣTwTcyTmg、Ci2ΣTwTmgTmg、Ci3ΣTwTyeTmg、Ci4ΣTwTmgを合算した結果に比例する。同様に、Gsは、Ci1ΣTwTcyTg、Ci2ΣTwTmgTg、Ci3ΣTwTyeTg、Ci4ΣTwTgを合算した結果に比例し、Csは、Ci1ΣTwTcyTcy、Ci2ΣTwTmgTcy、Ci3ΣTwTyeTcy、Ci4ΣTwTcyを合算した結果に比例し、Ysは、Ci1ΣTwTcyTye、Ci2ΣTwTmgTye、Ci3ΣTwTyeTye、Ci4ΣTwTyeの合算結果に比例する。これらの比例係数を1とすれば、Ms、Gs、Cs、Ysは、それぞれ以下の式6〜9で表すことができる。
【0069】
(式6)Ms=Ci1ΣTwTcyTmg+Ci2ΣTwTmgTmg+Ci3ΣTwTyeTmg+Ci4ΣTwTmg
(式7)Gs=Ci1ΣTwTcyTg+Ci2ΣTwTmgTg+Ci3ΣTwTyeTg+Ci4ΣTwTg
(式8)Cs=Ci1ΣTwTcyTcy+Ci2ΣTwTmgTcy+Ci3ΣTwTyeTcy+Ci4ΣTwTcy
(式9)Ys=Ci1ΣTwTcyTye+Ci2ΣTwTmgTye+Ci3ΣTwTyeTye+Ci4ΣTwTye
式6〜9において、ΣTwTcyTmg、ΣTwTmgTmg、ΣTwTyeTmg、ΣTwTmgをそれぞれMx11、Mx12、Mx13、Mx14で表し、ΣTwTcyTg、ΣTwTmgTg、ΣTwTyeTg、ΣTwTgをそれぞれMx21、Mx22、Mx23、Mx24で表し、ΣTwTcyTcy、ΣTwTmgTcy、ΣTwTyeTcy、ΣTwTcyをそれぞれMx31、Mx32、Mx33、Mx34で表し、ΣTwTcyTye、ΣTwTmgTye、ΣTwTyeTye、ΣTwTyeをそれぞれMx41、Mx42、Mx43、Mx44で表すこととする。すると、Ms、Gs、Cs、YsとCi1、Ci2、Ci3、Ci4との関係は、行列を用いて以下の式10で表される。
【0070】
【数3】




【0071】
ここで、式10における要素Mx11〜Mx44からなる行列の逆行列の要素をiM11〜iM44とすると、式10は以下の式11に変形できる。すなわち、領域C1、C2、C3、C4に入射する光の強度を示す信号を、光電変換信号Ms、Gs、Cs、Ysを用いて表すことができる。
【0072】
【数4】




【0073】
式11で表される信号Ci1、Ci2、Ci3、Ci4を、単位要素ごとに求めることにより、領域C1、C2、C3、C4のそれぞれに入射する光によって形成される4つの画像を求めることができる。
【0074】
Ci1、Ci3が示す画像は、x方向に離れて配置された領域C1、C3からそれぞれ被写体を見たときの画像に相当するため、左目用画像および右目用画像として扱うことができる。また、Ci2は、領域C1、C3に対して斜め方向に離れて配置された領域C2から見たときの画像に相当するため、Ci1、Ci3に対して斜め方向の視差を示す画像である。
【0075】
一方、Ci4が示す画像は、透明領域C4に入射する光による画像(白黒画像)であり、視差を示さない通常の画像である。したがって、領域C4の面積を領域C1、C2、C3に比べて大きくするほど、信号レベルの高い画像(白黒画像)を示す信号Ci4を得ることができる。
【0076】
本実施形態において、カラー画像を得るためには、上記処理を行わず、以下の式12〜14に示す輝度信号Yl、式差信号RY、BYを求めればよい。
【0077】
(式12)Yl=Ms+Gs+Cs+Ys
(式13)RY=Ms−Gs−Cs+Ys
(式14)BY=Ms−Gs+Cs−Ys
式12〜14から得られる輝度信号Ylおよび色差信号RY、BYを、NTSC方式等で用いられている方法でRGB信号へと変換することにより、カラー画像を得ることができる。なお、得られるカラー画像は、透光板2に配置されたCyフィルタ、Mgフィルタ、Yeフィルタの光透過率が比較的高いため、光利用率の高い画像である。
【0078】
なお、実施形態1と同様、透明領域C4への入射光による画像を示す信号Ci4に関する項だけを用いてカラー情報を得てもよい。その場合、式11に基づく演算処理によってCi4をまず求め、上記の式12〜14において、Ms=Ci4ΣTwTmg、Gs=Ci4ΣTwTg、Cs=Ci4ΣTwTcy、Ys=Ci4ΣTwTyeとすればよい。
【0079】
以上のように、本実施形態によれば、Cyフィルタ、Mgフィルタ、Yeフィルタが互いに離れた位置に配置され、それ以外の領域が透明部材で構成された透光板2と、2行2列を基本構成とするマゼンタ(Mg)、緑(G)、シアン(Cy)、黄(Ye)の色フィルタから構成される色フィルタアレイを有するカラー撮像素子が用いられる。撮像素子から出力される光電変換信号に対して、光学系、色フィルタなどの分光透過率に関する積分演算によって得られる4×4の行列に基づく演算を施すことにより、視差を有する複数の画像と光利用率の高い通常画像とを得ることができる。さらに、撮像素子1の各光電変換信号を直接用いて輝度信号と色差信号を作るカラー処理を行うことにより、光利用率の高いカラー画像も得ることができるという効果を奏する。また、レンズ絞り19の開口径が変化しても領域C1、C2、C3、C4の光を透過する部分の面積比率は変わらないため、上記の演算式を変えることなくレンズ絞り19の開口径の変化に対応することができるという利点も有する。
【0080】
なお、本実施形態における透光板2において、領域C1、C2、C3の形状は扇形であるが、必ずしも扇形である必要はない。レンズ絞り19の開口径が変化したときに各透過領域において光を受ける部分の面積比率が一定に保たれれば、領域C1、C2、C3の形状はどのような形状であってもよい。
【0081】
なお、本実施形態では、透光板2は、Cyフィルタが配置された領域C1、Mgフィルタが配置された領域C2、Yeフィルタが配置された領域C3、透明領域C4から構成されるが、透明領域を含めた4つの領域の構成は上記の構成に限定されるものではない。各領域の透過波長域が異なり、透過率が比較的高いものであれば、どのような構成でも問題はない。
【0082】
また、撮像素子における色フィルタの組み合わせについても、Mg、G、Cy、Yeの組み合わせに限られるものではない。各色フィルタの透過波長域が異なっていれば、色フィルタの色の組み合わせは任意である。
【0083】
上記の実施形態1および実施形態2では、透光板はそれぞれ3つおよび4つの透過領域を備え、撮像素子における各単位要素に含まれる色フィルタの種類の数も透過領域の数と同じく、それぞれ3種類および4種類である。しかしながら、本発明における透過領域の数および色フィルタの種類の数は、上記の数に限定されるものではない。例えば、各単位要素に含まれる色フィルタの種類の数が透過領域の数を上回っていてもよい。その場合であっても、各光感知セルの光電変換信号と透過領域に入射する光の量との間の関係式に基づく信号演算によって画像情報を求めることができる。
【0084】
また、透過領域の数および各単位要素に含まれる色フィルタの種類の数は、4つより多くてもよい。本発明の3次元撮像装置は、透過波長域が互いに異なるn個(nは3以上の整数)の透過領域を有する光透過部と、各単位要素において、透過波長域が互いに異なるn個の色フィルタを有していればよい。ただし、n個の透過領域の少なくとも1つを透過する光は、1つの単位要素において、少なくとも2つの色フィルタを透過するものとする。
【0085】
図10は、このように一般化した場合における光透過部2aの例を示す図である。図示される例では、光透過部2aは円形の形状を有しているが、他の形状を有していてもよい。この例では、光透過部2aは、n個の透過領域C1〜Cnを有している。透過領域C1〜Cn−1は、光透過部2aの中心を頂点とする扇形の形状を有し、それらの透過波長域は互いに異なっている。透過領域Cnは可視光を全て透過する透明領域である。図10に示す光透過部2aでは、領域C1〜Cn−1の各々と光透過部2aの外周部分との間に隙間が空いており、その部分も透明領域Cnに含まれるが、このような隙間はなくてもよい。光利用率向上の観点から、透過領域C1〜Cn−1の透過波長域は、補色の波長域であることが好ましい。なお、透過領域C1〜Cn−1の頂点が光透過部2aの中心に位置していることは必須ではなく、これらの頂点が光透過部2aの中心から多少離れていても本発明の効果を得ることは可能である。また、透過領域C1〜Cn−1の形状は必ずしも扇形である必要はない。本発明においては、n個の透過領域の少なくとも2個について、光透過部2aの半径方向に垂直な方向のサイズが光透過部2aの中心からの距離に応じて実質的に大きくなるように設計されていれば、各透過領域の形状は任意である。ここで、「実質的に大きくなる」とは、光透過部2aの半径方向に垂直な方向のサイズが光透過部2aの中心からの距離に応じて全体的に大きくなっていれば、局所的に小さくなる部分を含んでいてもよいことを意味する。以上のことから、光透過部2aは、例えば2つの透過領域のみが光透過部2aの中心を頂点とする扇形形状を有し、残りの透過領域は互いに異なる種々の形状を有するように構成されていてもよい。なお、ここでは領域Cnは透明領域であるとしたが、領域Cnも他の領域同様、特定の波長域の光のみを透過するように構成されていてもよい。また、光透過部2aの一部が遮光領域であってもよい。
【0086】
図11は、以上のような一般化した3次元撮像装置に設けられる撮像素子の各単位要素における色フィルタの配列の一例を示す図である。図示されるように、各単位要素は色フィルタD1〜Dnを有している。色フィルタD1〜Dnの透過波長域は互いに異なっている。なお、色フィルタの配列は図示される配列に限られず、どのような配列でもよい。
【0087】
上記の構成例において、光利用率向上の観点から、透過領域C1〜Cnのうち最も広い透過波長域を有する透過領域は、色フィルタD1〜Dnのうち最も広い透過波長域を有する色フィルタよりも広い透過波長域を有するように各透過領域および各色フィルタが設計されていることが好ましい。
【0088】
このように一般化した場合、光透過部2aの各透過領域に入射する光による画像信号Ci1、Ci2、Ci3・・・、Cinと、撮像素子の各色フィルタに対応する光感知セルから出力される光電変換信号Ds1、Ds2、Ds3、・・・、Dsnとの間の関係は、以下の式15で表すことができる。
【0089】
【数5】





【0090】
式15に基づいて画像情報Ci1〜Cinを求める場合、Mx11〜Mxnnを要素とするn×n行列の行列式が0に近い値にならないように撮像系の光学特性が構成されることが好ましい。式15におけるn×n行列の逆行列の要素をiM11〜iMnnとすると、式15は、以下の式16に変形できる。
【0091】
【数6】




【0092】
式16に基づく信号演算処理を実行することにより、光電変換信号Ds1〜Dsnから透過領域C1〜Cnに入射する光の強度を示す信号Ci1〜Cinを生成することができる。これにより、視差を有するn個の画像データを生成することができる。
【0093】
上記のように一般化した場合においても、信号Ci1〜Cinのいずれかを他の信号に加えることによって当該他の信号の信号レベルを大きくすることができる。この際、最も広い透過波長域をもつ透過領域、または最も面積の大きい透過領域に入射する光に対応する信号を他の信号に加えることが好ましい。また、カラー情報を得る際にも、最も広い透過波長域をもつ透過領域、または最も面積の大きい透過領域をもつ透過領域に入射する光に対応する信号を用いてRGBの色信号を求めることが好ましい。
【0094】
なお、撮像装置は、信号Ci1〜Cinの全てを生成せずに、これらの信号のうち少なくとも2つの信号を生成するように構成されていてもよい。そのような構成であっても、視差を有する少なくとも2つの画像データを得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明の3次元撮像装置は、固体撮像素子を用いたすべてのカメラに有効である。例えば、デジタルスチルカメラやデジタルビデオカメラなどの民生用カメラや、産業用の固体監視カメラなどに利用可能である。
【符号の説明】
【0096】
1 固体撮像素子
1a 固体撮像素子の撮像面
2 透光板
2a 光透過部
3 光学レンズ
3a 透光板と光学レンズの機能が一体化された光学素子
4 赤外カットフィルタ
5 信号発生/受信部
6 素子駆動部
7 画像信号生成部
8 インターフェース部
9 撮像装置
10 画素
11 0度偏光の偏光板
12 90度偏光の偏光板
13 反射鏡
14 ハーフミラー
15 円形の偏光フィルタ
16 偏光フィルタを回転させる駆動装置
17、18 偏光フィルタ
19 レンズ絞り
20、22、23 光束制限板
20a 赤系統の光を透過させる色フィルタ
20b 青系統の光を透過させる色フィルタ
21 感光フィルム
22R、23R 光束制限板のR光透過領域
22G、23G 光束制限板のG光透過領域
22B、23B 光束制限板のB光透過領域
30 メモリ
52 光を反射する光学素子
100 撮像部
110 色フィルタ
120 光感知セル
200 信号処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透過波長域が互いに異なるN個(Nは3以上の整数)の透過領域を有する光透過部と、
光感知セルアレイ、および前記光感知セルアレイに対向して配置された色フィルタアレイを有し、前記光透過部を透過した光を受けるように配置された固体撮像素子であって、前記光感知セルアレイおよび前記色フィルタアレイは、複数の単位要素から構成され、各単位要素は、N個の光感知セル、および前記N個の光感知セルに1対1に対応して配置された、透過波長域が互いに異なるN個の色フィルタを含む固体撮像素子と、
絞りを有し、前記固体撮像素子の撮像面に像を形成する光学系と、
前記固体撮像素子から出力される信号を処理する信号処理部と、
を備え、
前記光透過部の中心は、前記光学系の光軸上に位置し、
前記N個の透過領域の少なくとも2個は、前記光透過部の半径方向に垂直な方向のサイズが前記光透過部の中心からの距離に応じて大きくなる部分を有している、3次元撮像装置。
【請求項2】
前記N個の透過領域の少なくともN−1個は、前記光透過部の半径方向に垂直な方向のサイズが前記光透過部の中心からの距離に応じて大きくなる部分を有している、請求項1に記載の3次元撮像装置。
【請求項3】
前記N個の透過領域の少なくともN−1個は、前記光透過部の中心を頂点とする扇形の形状を有している、請求項2に記載の3次元撮像装置。
【請求項4】
N=3であり、
前記N個の透過領域は、それぞれ、シアン光を透過させるシアン領域、黄光を透過させる黄領域、および透明領域であり、
前記シアン領域の形状および前記黄領域の形状は扇形である、請求項1から3のいずれかに記載の3次元撮像装置。
【請求項5】
N=4であり、
前記N個の透過領域は、それぞれ、シアン光を透過させるシアン領域、黄光を透過させる黄領域、マゼンタ光を透過させるマゼンタ領域、および透明領域であり、
前記シアン領域の形状、前記黄領域の形状、および前記マゼンタ領域の形状は扇形である、請求項1から3のいずれかに記載の3次元撮像装置。
【請求項6】
前記N個の透過領域および前記N個の色フィルタの透過波長域は、前記N個の透過領域の少なくとも1つを透過する光が前記N個の色フィルタの少なくとも2つを透過できるように設定され、
前記信号処理部は、前記N個の光感知セルから出力される信号に基づいて、前記N個の透過領域の各々に入射する光の強度のうち少なくとも2つの強度を示す信号を生成することによって視差を有する少なくとも2つの画像のデータを生成する、請求項1から5のいずれかに記載の3次元撮像装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかの3次元撮像装置に用いられる光透過板であって、
透過波長域が互いに異なるN個(Nは3以上の整数)の透過領域を有し、
前記N個の透過領域の少なくとも2個は、半径方向に垂直な方向のサイズが中心からの距離に応じて大きくなる部分を有している、光透過板。
【請求項8】
前記N個の透過領域の少なくとも2個は、中心を頂点とする扇形の形状を有している、請求項7に記載の光透過板。
【請求項9】
前記N個の透過領域の少なくともN−1個は、中心を頂点とする扇形の形状を有している、請求項8に記載の光透過板。
【請求項10】
N=3であり、
前記N個の透過領域は、それぞれ、シアン光を透過させるシアン領域、黄光を透過させる黄領域、および透明領域であり、
前記シアン領域の形状および前記黄領域の形状は扇形である、請求項7から9のいずれかに記載の光透過板。
【請求項11】
N=4であり、
前記N個の透過領域は、それぞれ、シアン光を透過させるシアン領域、黄光を透過させる黄領域、マゼンタ光を透過させるマゼンタ領域、および透明領域であり、
前記シアン領域の形状、前記黄領域の形状、および前記マゼンタ領域の形状は扇形である、請求項7から9のいずれかに記載の光透過板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−15766(P2012−15766A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−149996(P2010−149996)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】