説明

3次元画像の一部を視覚化する方法

【課題】 3次元画像の一部を視覚化する方法を提供すること。
【解決手段】 この一部は、有限の所定のボリューム、例えば、中心が3次元画像内に存在する関心のある要素(2)上に位置する球(5)によって区画される。そうするには、関心のある要素(2)上の点を選択し、寸法があらかじめ決定されかつ中心が関心のある要素(2)上の点である球(5)を3次元画像内に作り出し、球(5)とこの3次元画像の間の共通部分を作り、次いで球(5)に含まれる3次元画像の一部を表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元画像の一部を視覚化する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば医療分野では、診断を行うために3次元画像がしばしば使用される。特に放射線学において、3次元画像は複数の交錯する血管を見ることができる。調査中、放射線専門医は、関心があると思われる画像の一部を詳細に視覚化して診断を行うために、その画像を切り離したいと思うことがある。動脈壁の拡張によって形成されたサイド・ポケット、すなわち動脈瘤は、特にこのポケットが複数の血管によって隠れているとき、3次元画像の視覚化が困難なことがある。空間内で3次元画像を数回転してさえ、好ましい角度で動脈瘤を視覚化することがいつも可能とは限らない。狭窄症など他の病状の視覚化にも同じことが言える。
【0003】
3次元画像の一部を切り離すことを可能にする、従来以下に述べる知られた方法がある。
【0004】
3次元画像内に含まれる関心のある要素にどのようにズーム効果を作り出すかが知られている。しかし、ズーム後に得られた画像は、関心のある小さな要素に対して数回拡大(ズーム)する必要があるので、いつも非常によい画質であるとは限らない。
【0005】
切断面によって3次元画像の一部を切り離す方法も知られている。この目的のために、所与の3次元画像から、カーソルによって3次元画像表示ウィンドウ上の直線を追跡することによって切断面を選択する。例えば、たどった線の下の画像の一部がその画像から取り除かれる。元の3次元画像の上部と同一の新たな3次元画像が得られる。
【0006】
最後に、3次元画像の一部を切り離すことができる仮想外科用メス法が知られている。切り離された部分は自由な形態で決定される。放射線専門医は、この3次元画像の多角形を追跡することによって任意の形態を決定する。考慮に入れられるボリュームは、多角形と同一の断面および表示ウィンドウに垂直方向に無限の長さの筒又は柱(以下シリンダという)である。次いで、シリンダによって区画されたボリューム内に含まれる部分だけが視覚化された3次元画像が得られる。しかし、この方法には多数の欠点がある。すなわち、
見えない部分がもはやアクセス不能、得られた形態が変更できない、かつ他の見方をするには多角形をもう1度追跡する必要があるということによる対話性の不足、
追跡が2次元でなされ、その追跡線が特定のルールに従って3次元に解釈されるので、最終ボリュームを制御できないこと、
多角形を「マニュアル」追跡することによる遅さである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前述の方法の欠点を修正し、3次元画像の一部を迅速に切り離し、視覚化されたボリュームの形態を容易かつ対話的に変更する方法を提案することを意図する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
したがって本発明は、3次元画像の一部を視覚化する方法を提案する。この3次元画像は、表示画面上または画面のウィンドウに表示される。視覚化された部分は、有限の所定のボリュームによって区画され、その中心は3次元画像内に存在する関心のある要素上に位置する。有限の所定のボリュームに限定されているため、関心のある要素の周りで、所定のボリュームの外に存在するどの要素ももはや見えない。得られた3次元画像は、ただ所定のボリュームに含まれる要素だけが見えるので鮮明に見える。3次元画像のズーム、回転など、どの3次元画像にも適用可能な知られた方法のほとんどを適用することができるので極めて優れている。
【発明の効果】
【0009】
3次元画像は、磁気共鳴、スキャナ、またはX線照射によって得ることができる。
【0010】
最終的な3次元画像は、
a)関心のある要素上の点を選択すること、
b)寸法があらかじめ決定されかつ中心が関心のある要素上の点であるボリュームを3次元画像内に作り出すこと、
c)所定のボリュームと3次元画像の間の共通部分を作ること、
d)所定のボリューム内に含まれる3次元画像の一部を表示することにより、所定のボリューム内で得られる。
【0011】
好ましい実施態様では、各瞬間に所定のボリューム内に含まれる3次元画像の一部だけを表示しながら、所定のボリュームを平行移動により3次元画像内に表示することができる。本発明のある実施態様において、本発明は対話的である。
所定のボリュームを2次元空間内で移動させる(平行移動させる)、すなわち所定のボリュームの中心が表示ウィンドウに平行な平面に沿って移動することによって、所定のボリューム内で見ることができる平面に充分近い3次元画像の全ての要素を走査することができる。この移動は、段階b)、c)、d)を繰り返すことにより、所定のボリュームの新たな中心として、この平面(表示ウィンドウに平行で所定のボリュームの中心として取られた第1の点を通過する平面)内に位置する、放射線専門医によって選択された長さだけ前の中心から離れた点を取ることにより得られる。
【0012】
しかし所定のボリュームを移動するよりも、表示ウィンドウ上の所定のボリュームを維持しながら3次元画像が移動する方が好ましい。
【0013】
別の好ましい実施態様では、所定のボリュームに含まれる3次元画像の一部、ならびに所定のボリュームの断面と同一の断面で無限の長さのシリンダに含まれない3次元画像の他の全ての部分を所定のボリュームとともに表示できる。その際、シリンダ内に含まれない3次元画像はどの部分も低下モードで表示される。
【0014】
所定のボリュームの寸法は有利に変更可能である。オペレータは所定のボリュームを減少または増大させることを選択できる。そうするには、同じ中心を維持し、オペレータの選択でボリュームの寸法を変更しながら段階b)、c)、d)を実行する。
【0015】
所定のボリュームは、その最初の直径が3次元画像表示ウィンドウの幅の半分に等しい球であることが望ましい。球以外の形を容易に選択することができる。
例えば、平行6面体またはその方程式の使用が知られている他のどの多面体も取ることができる。
【0016】
本発明の1つの使用方法によれば、点が関心のある要素上で選択された後で(段階a)、この点を3次元表示ウィンドウの中心に配置するように3次元画像の平行移動がなされる、
【0017】
さらに、この点はカーソルによって選択することができる。カーソルは放射線専門医によって操作されるマウスの動きを表す。
【0018】
本発明の他の利点と特徴は、非限定的な使用方法についての詳細な説明および添付の図面を吟味すれば明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】複数の血管および見ることの困難な動脈瘤を含む3次元画像である。
【図2】本発明により特に動脈瘤を切り離すことによって得られた3次元画像である。
【図3】図2の画像で平行移動の結果として得られた3次元画像である。
【図4】低下モードの3次元画像の一部を伴う所定のボリュームの表示である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1を参照すると、表示ウィンドウ1は、複数の2次血管2a〜2fに分枝する主血管2を示す。この主血管の上部には、2次血管2b〜2fに囲まれているために判別困難な動脈瘤3がある。放射線専門医がこの動脈瘤3を調査したいと考えるとき、この専門医は、この動脈瘤を異なる角度で視覚化するために、当業者によく知られた方法で画像を回転させることができる。しかし画像上に見られるとおり、動脈瘤3を囲む2次血管のグループ2a〜2fのために、どの角度から見てもこの動脈瘤をよく見ることができない。2次血管2b〜2fを越えて、動脈瘤3がはっきりと見える限られた空間に入るために、本発明はこの動脈瘤3を所与のボリューム内に切り離すことができる。
【0021】
動脈瘤3は、放射線専門医によって操作されるマウスでその上をクリックすることによって選択される。このマウスは、表示ウィンドウ1上でカーソル4を位置決めする。
【0022】
次に図2を参照すると、アルゴリズムが3次元空間内でカーソル4によって選択された点を見つける。この点は動脈瘤3上にある。3次元画像が平行移動し、その結果カーソルによって選択された点が表示ウィンドウ1の中心に来る。しかし、この点を表示ウィンドウ1上の他の所に移動することは完全に可能である。
ウィンドウの中心は利便性の理由で選ばれた。
【0023】
所定のボリュームが次いで確立される。このボリュームを球5で示す。球5の中心は、動脈瘤3上でカーソル4によって選択された点である。球5の中心は、表示ウィンドウ1の中心に視覚化される。この球の半径は、表示ウィンドウ1の幅の4分の1に等しく選ばれる。次いで球5と3次元画像の間の共通部分が作られ、球5に含まれる血管の一部だけが表示される。球5の内に得られた画像は、中に動脈瘤3がはっきりと見える3次元画像であり、また、血管2と動脈瘤3の間の接合部を形成するネック6である。次いで、他の視点からネック6を視覚化するために、ズームと3次元回転操作を実行することが可能である。したがって放射線専門医は、動脈瘤3を中立化するのに最適な介入を選択することができる。血管2c、2e、2fは、球5内に一部を含むが、球5の外の部分は切り落される。
【0024】
半径を減少させる(より少ない要素が見える)か拡大させる(より多くの要素が見える)ことによって球の寸法を変動させることも可能である。そうするには、球の半径の値の各変更時に(例えばキーボードによって新たな値を入力すると)、同じ中心から、新たな値に等しい半径の新たな球が判定され、次いで3次元画像との共通部分が作られる。
【0025】
図2の画像から始め、球5の外部区域(カーソル4参照)でマウス・ボタンを押し下げてクリックし、カーソル4を表示ウィンドウ1の上部に向かってドラッグすると、図3による新たな画像が球5内に得られるということが可能である。
主血管2の一部がここに見えるが、この部分は図2の画像内にはなかった。図3の新たな画像は、中に図1の3次元画像の他の一部が見えるが、カーソル4の動きに比例した距離だけ下方に移動した新たな3次元画像である。この目的のために、カーソルの各移動時に、例えば上方に、新たな点が最初の3次元画像上で判定され、次いで表示ウィンドウの中心に戻され(最初の3次元画像が上方に移動する)、球と3次元画像の間で共通部分が作られる。3次元画像の移動は、表示ウィンドウの平面に沿った平行移動である。
【0026】
図4に見られるとおり、本発明の他の有利な特徴は、球5および同じウィンドウ上の球内に含まれない3次元画像の一部を表示する可能性である。この球に含まれない部分は、低下モードで、例えば球5内に含まれる画像の階調よりも弱い階調で表示される。球5をよく視覚化するには、球内に含まれない3次元画像の部分は、軸が表示ウィンドウ1に垂直で、表示ウィンドウの中心を通過する空のシリンダを置くことによって決定される3次元画像の一部と等価である。さらにシリンダの円形断面は、球5の直径に等しい直径を有する。したがって図4の画像を視覚化することにより、最初の3次元画像が、球5内に含まれる要素を除き低下モードで視覚化され、(表示ウィンドウの見る角度に対して)球5の前後に位置するどの要素も消去される。
【0027】
開示の方法は、3次元画像内の関心のある要素を切り離すことを可能にする。
この方法により、従来の方法に比較してオペレータが時間を節約することが可能になる。神経放射線学の介入中に、特に動脈塞栓術のために、この方法はそのような治療手順の信頼性をかなり向上させる。
【0028】
当業者なら、本発明の範囲を逸脱することなく、構造および/またはステップおよび/または機能の様々な変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0029】
2 主血管 3 動脈瘤 4 カーソル 5 球 6 ネック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元画像化された対象物を表わす3次元画像を視覚化する方法であって、その方法は、
表示ウィンドウに前記3次元画像を表示するステップと、
前記3次元画像の一部に表示された関心のある要素(2)上の点を選択し、引き続き前記関心のある要素上の前記選択された点に応じて、前記表示ウィンドウの平面に沿って前記3次元画像を平行移動させるステップと、
有限のボリューム(5)を前記3次元画像の一部に作り出すステップと、
前記有限の所定のボリュームと前記3次元画像の一部との間に対話的共通部分を作って、前記3次元画像の前記関心のある要素を切り離すステップと、
前記有限の所定のボリューム(5)内に含まれる前記3次元画像の一部を前記表示ウィンドウに表示するステップと、を有し、
前記有限のボリュームの寸法は、予め決定され、
前記有限のボリュームの中心は、前記関心のある要素上の点であり、
前記有限のボリュームの外形寸法は前記表示ウインドウの幅より小さいことを特徴とする視覚化の方法。
【請求項2】
各瞬間に前記有限の所定のボリューム(5)内に含まれる前記3次元画像の一部だけを表示しながら、平行移動により前記有限の所定のボリューム(5)を前記3次元画像内に表示することができることを特徴とする請求項1に記載の視覚化の方法。
【請求項3】
前記有限の所定のボリューム(5)に含まれる前記3次元画像の一部、ならびに前記有限の所定のボリュームの断面と同一の断面で無限の長さのシリンダに含まれない前記3次元画像の他の全ての部分を前記有限の所定のボリューム(5)とともに表示し、前記シリンダ内に含まれない前記3次元画像の全ての部分をを低下モードで表示することを特徴とする請求項1に記載の視覚化の方法。
【請求項4】
前記3次元画像の一部が前記有限の所定のボリューム(5)内で視覚化された後で、オペレータがこの有限の所定のボリュームの寸法を変更することができることを特徴とする請求項1に記載の視覚化の方法。
【請求項5】
前記有限の所定のボリュームが、前記3次元画像の表示ウィンドウ(1)の幅の半分に等しい球(5)であることを特徴とする請求項1に記載の視覚化の方法。
【請求項6】
一旦前記点が関心のある要素上で選択されると、前記点を前記3次元画像の表示ウィンドウ(1)の中心に配置するように前記3次元画像の平行移動が行われることを特徴とする請求項1に記載の視覚化の方法。
【請求項7】
前記点がカーソル(4)によって選択されることを特徴とする請求項1に記載の視覚化の方法。
【請求項8】
前記対話的共通部分を作るステップは、前記有限の所定のボリュームの外の要素は表示されるべき画像から取り除かれるステップをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の視覚化の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−216122(P2011−216122A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−160618(P2011−160618)
【出願日】平成23年7月22日(2011.7.22)
【分割の表示】特願2000−185723(P2000−185723)の分割
【原出願日】平成12年6月21日(2000.6.21)
【出願人】(598093495)ジーイー・メディカル・システムズ・エス アー (1)
【Fターム(参考)】