3次元表示物体、3次元画像作成装置、3次元画像作成方法およびプログラム
【課題】3次元立体像を表示する3次元表示物体において、観察者の視線位置がずれても、連続的な奥行き位置表現を可能にし、それによって観察位置の範囲を広くする。
【解決手段】観察者に近い第1の表示面に表示される第1の表示対象物の2次元画像は、前記第1の表示面と前記観察者から遠い第2の表示面との間の表示面間隔に比例した幅を持つ輪郭線領域を有し、前記輪郭線領域は、前記輪郭線領域の内部の画像と、前記輪郭線領域との境界部分が前記輪郭線領域の内部の画像の色と同じであり、かつ、外側に向かって単調に透明度が増加しており、前記第2の表示面に表示される第2の表示対象物の2次元画像は、前記表示面間隔に比例した幅と、前記表示面間隔と所定の視域角の正接の積に比例した幅の和の幅を持つ輪郭線領域を有し、当該輪郭線領域の色は、前記輪郭線領域の内部の画像の色と等しい。
【解決手段】観察者に近い第1の表示面に表示される第1の表示対象物の2次元画像は、前記第1の表示面と前記観察者から遠い第2の表示面との間の表示面間隔に比例した幅を持つ輪郭線領域を有し、前記輪郭線領域は、前記輪郭線領域の内部の画像と、前記輪郭線領域との境界部分が前記輪郭線領域の内部の画像の色と同じであり、かつ、外側に向かって単調に透明度が増加しており、前記第2の表示面に表示される第2の表示対象物の2次元画像は、前記表示面間隔に比例した幅と、前記表示面間隔と所定の視域角の正接の積に比例した幅の和の幅を持つ輪郭線領域を有し、当該輪郭線領域の色は、前記輪郭線領域の内部の画像の色と等しい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元表示物体、3次元画像作成装置、3次元画像作成方法およびプログラムに係り、特に、表示対象物体を観察者の視線方向から射影した2次元画像を、任意の奥行き幅を持たせて重ねて表示することにより、3次元立体像を表示する技術である。
【背景技術】
【0002】
奥行き位置を知覚できる3次元表示方法については様々な提案がなされているが、複数の2次元画像を重ね合わせることにより、3次元立体像を表示するDFD(Depth-Fused-3D)方式の3次元表示方法は、長時間見ても比較的疲れにくく、自然な立体像を知覚できることから注目を集めている。(下記、特許文献1参照)
図11に、DFD方式の3次元表示方法の表示原理を示す。
DFD方式の3次元表示方法では、観察者1001から見て異なった奥行き位置にある複数の表示面(1002,1003)(表示面1002が表示面1003よりも観察者1001に近い)に対して、表示対象物体を観察者の視線方向から射影した2次元画像を生成し、生成された2次元画像(1004,1005)の輝度を各表示面毎に各々独立に変化させて、複数の表示面(1002,1003)に表示することにより、連続的に奥行き表現が可能な3次元立体像1008を表示する。
複数の表示面に表示する2次元画像(1004,1005)は、観察者の右眼と左眼とを結ぶ線上の一点から見て重なるように表示面に表示する。
【0003】
図12に、DFD方式の3次元表示方法において、輝度の変化による3次元立体像の位置変化を示す。
例えば、図12において、複数の表示面のうち観察者1001に近い表示面1002に表示する2次元画像(1043)の輝度を高くし、観察者1001から遠い表示面1003に表示する2次元画像(1053)の輝度を低くすると、観察者1001に近い位置(表示面1002の近い位置)に3次元立体像(1083)が表示される。
また、表示面1002に表示する2次元画像(1041)の輝度を低くし、表示面1003に表示する2次元画像(1051)の輝度を高くすると、観察者1001から遠い位置(表示面1003に近い位置)に3次元立体像(1081)が表示される。
さらに、表示面1002に表示する2次元画像(1042)の輝度と、表示面1003に表示する2次元画像(1052)の輝度を同じにすると、表示面1002と表示面1003の中間位置に3次元立体像(1082)が表示される。
【0004】
なお、本願発明に関連する先行技術文献としては以下のものがある。
【特許文献1】特許第3022558号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、DFD方式の3次元表示方法では、複数の表示面上の同じ平面的な位置に、輝度分配したそれぞれの2次元画像を重ねて表示するため、観察者の視線位置が多少ずれただけで、複数の2次元画像の重なりがずれてしまい、3次元立体像の画像品質が劣化し、連続的な奥行き位置表現が難しくなる。
このため、観察位置が小さな範囲に限定されるという課題があった。
本発明は、前記従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、3次元立体像を表示する3次元表示物体において、観察者の視線位置がずれても、連続的な奥行き位置表現を可能にし、それによって観察位置の範囲を広くすることが可能な技術を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、前記3次元表示物体に表示する2次元画像を生成する3次元画像作成装置および3次元画像作成方法を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、前述の3次元画像作成方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを提供することにある。
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面によって明らかにする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、下記の通りである。
(1)第1の2次元画像と第2の2次元画像の2つの2次元画像を、任意の奥行き幅を持たせて重ねて表示することにより、3次元立体像を表示する3次元表示物体であって、観察者に近い第1の表示面に表示される前記第1の表示対象物の2次元画像は、前記第1の表示面と前記観察者から遠い第2の表示面との間の表示面間隔に比例した幅を持つ輪郭線領域1を有し、前記輪郭線領域1は、前記輪郭線領域1の内部の画像と前記輪郭線領域1との境界部分が前記輪郭線領域1の内部の画像の色と同じであり、かつ、外側に向かって単調に透明度が増加しており、前記第2の表示面に表示される前記第2の表示対象物の2次元画像は、前記表示面間隔に比例した幅と、前記表示面間隔と所定の視域角の正接の積に比例した幅の和の幅を持つ輪郭線領域2を有し、当該輪郭線領域2の色は、前記輪郭線領域1の内部の画像の色と等しいことを特徴とする。
【0007】
(2)(1)に記載の3次元表示物体における、第1の表示面に表示される第1の2次元画像と第2の表示面に表示される第2の2次元画像とを作成する3次元画像作成装置であって、表示対象物の画像を取り込む図形画像データ入力手段と、前記第1の表示面と前記第2の表示面との間の表示面間隔と、表示する視域角とを入力して保持するデータ入力手段と、前記表示面間隔に比例した値を図形輪郭線幅とする図形輪郭線幅決定手段と、前記表示対象物の画像の輪郭線の幅を前記図形輪郭線幅とした、輪郭線領域1を有する画像を生成する図形画像生成手段1と、前記図形画像生成手段1で生成した前記画像の前記輪郭線領域1の透明度を外側に向かって単調に増加させた、輪郭線領域1にグラデーションを設けた画像を生成する図形画像生成手段2と、前記表示面間隔と前記視域角の正接の積に比例した値を、前記第1の2次元画像の画像サイズに対する前記第2の2次元画像の画像サイズのずれ幅とする図形幅ずれ幅決定手段と、前記図形画像生成手段1で生成した前記画像の輪郭線領域として、前記輪郭線領域1に前記図形幅ずれ幅決定手段で決定した前記ずれ幅を加えた輪郭線領域2を有し、かつ、前記輪郭線領域2の色を前記図形画像生成手段1で生成した前記画像の前記輪郭線領域1の内部の画像の色と等しくした、輪郭線領域2を有する画像を生成する図形画像生成手段3と、前記図形画像生成手段2で生成した前記輪郭線領域1にグラデーションを設けた画像を前記第1の2次元画像として出力し、前記図形画像生成手段3で生成した前記輪郭線領域2を有する画像を前記第2の2次元画像として出力する出力手段とを具備することを特徴とする。
【0008】
(3)(1)に記載の3次元表示物体における、第1の表示面に表示される第1の2次元画像と第2の表示面に表示される第2の2次元画像とを作成する3次元画像作成方法であって、表示対象物の画像と、前記第1の表示面と前記第2の表示面との間の表示面間隔と、表示する視域角とを取り込んで保持する第1のステップと、前記表示面間隔に比例した値を図形輪郭線幅とする第2のステップと、前記表示対象物の画像の輪郭線の幅を前記図形輪郭線幅とした、輪郭線領域1を有する画像を生成する第3のステップと、前記第3のステップで生成した前記画像の輪郭線領域1の透明度を外側に向かって単調に増加させた、輪郭線領域1にグラデーションを設けた画像を生成する第4のステップと、前記第4のステップで生成した画像を、第1の2次元画像として出力する第5のステップと、前記表示面間隔と前記視域角の正接の積に比例した値を、前記第1の2次元画像の画像サイズに対する前記第2の2次元画像の画像サイズのずれ幅とする第6のステップと、前記第3のステップで生成した前記画像の輪郭線領域として、前記輪郭線領域1に前記第6のステップで決定した前記ずれ幅を加えた輪郭線領域2を有し、かつ、前記輪郭線領域2の色を前記第3のステップで生成した前記画像の前記輪郭線領域1の内部の画像の色と等しくした、輪郭線領域2を有する画像を生成する第7のステップと、前記第7のステップで生成した画像を、第2の2次元画像として出力する第8のステップとを有することを特徴とする。
(4)(3)に記載の3次元画像作成方法をコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0009】
本願において開示される発明のうち代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば、下記の通りである。
本発明によれば、観察者の視線位置がずれても、連続的な奥行き位置表現を可能にし、それによって観察位置の範囲を広くすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施例を詳細に説明する。
なお、実施例を説明するための全図において、同一機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略する。
図1は、本発明の実施例の3次元表示物体の概略構成を示す斜視図であり、図2は、本発明の実施例の3次元物体において、透明な板と表示対象物の図形の2次元画像を印刷した透明フィルムを貼り合わせる前の状態を上から見た図である。
図1、図2において、1は観察者、2は透明な板、11,12は透明な板2の前後の表面、3は表示対象物、21,22は透明な板2に張り合わせた表示対象物の2次元画像を印刷した透明フィルム、31,32はその透明フィルム(21,22)の表示面を示している。
本実施例の3次元表示物体は、表示対象物3として、3次元立体像の図形を表示させた構成であり、図2に示すように、表示対象物3の2次元画像を印刷した2枚の透明フィルム(21,22)を、厚みを持った透明な板2の前後の表面(11、12)に2次元画像の図形が重なるように貼り合わせた構成となっている。
本実施例は、後述するように、前面の透明フィルム21に印刷した2次元画像の図形(本願発明の第1の表示面に表示される第1の表示対象物の2次元画像)のエッジをぼかし(本願発明のグラディーション)、後面の透明フィルム22に印刷した2次元画像の図形(本願発明の第2の表示面に表示される第2の表示対象物の2次元画像)のエッジ領域を、前面の透明フィルム21に印刷した2次元画像の図形よりも大きくすることを特徴とする。
本実施例では、3次元表示の表示対象物3を、観察者1が正面から観察しても、正面からずれた位置から観察しても、表示面(31、32)に表示した2次元画像の図形が連続的につながり、自然な3次元立体像の図形として認識される。
【0011】
図3は、本発明の実施例の3次元画像作成装置の概略構成を示すブロック図であり、図1に示す3次元表示物体における、前面の透明フィルム21に印刷した2次元画像と、後面の透明フィルム22に印刷した2次元画像を生成する3次元画像作成装置の概略構成を示す図である。
図3に示すように、本実施例の3次元画像作成装置は、図形画像データ入力部101と、データ入力部102と、図形輪郭領域幅決定部103と、図形輪郭領域幅を変化させた図形画像生成部(以下、図形画像生成部1)105と、図形輪郭領域にグラデーションを設けた図形画像生成部(以下、図形画像生成部2)106と、前後表示面の図形幅の拡大幅決定部104と、図形幅を太くした図形画像生成部(以下、図形画像生成部3)107と、出力部108とで構成される。
図形輪郭領域幅決定部103は、データ入力部102から入力された前後の表示面の表示面間隔から図形輪郭領域の幅を決定する。
図形画像生成部1(105)は、図形画像データ入力部101から入力された図形画像の図形輪郭領域の幅を、図形輪郭領域幅決定部103で決定した図形輪郭領域の幅に設定した図形画像を作成する。
図形画像生成部2(106)は、図形画像生成部1(105)で作成された図形画像の図形輪郭領域にグラデーションを設けた図形画像を作成する。
作成した図形輪郭領域幅を変化させて、その輪郭線領域(本願発明の輪郭線領域1)にグラデーションを設けた図形画像は、前面表示用の2次元画像(本願発明の第1の表示面に表示される第1の2次元画像)として出力部108から出力される。
【0012】
前後表示面の図形幅の拡大幅決定部104は、データ入力部102から入力された前後の表示面の表示面間隔、および視域角から、前面に表示する図形幅(本願発明の第1の表示面に表示される第1の表示対象物の2次元画像)に対して、後面に表示する図形幅(本願発明の第2の表示面に表示される第2の2次元画像)の拡大幅を決定する。
図形画像生成部3(107)は、図形画像生成部1(105)で作成された図形画像の図形輪郭領域幅に、前後表示面の図形幅の拡大幅決定部104で決定した後面に表示する図形幅の拡大幅を加え、図形と、輪郭線領域(本願発明の輪郭線領域2)を同一の色とした図形画像を作成する。
図形幅を太くした図形画像は後面表示用の2次元画像(本願発明の第2の表示面に表示される第2の表示対象物の2次元画像)として出力部108から出力される。
なお、出力部108から出力される前面表示用の2次元画像と、後面表示用の2次元画像とは、3次元立体像の表示位置に合わせて決定される割合に基づき、それぞれ透過度が設定される。
【0013】
図4は、本発明の実施例の3次元画像作成方法の処理手順を示すフローチャートであり、図3に示す3次元画像作成装置において、入力図形画像と表示面の面間隔、視域角の入力データから図形輪郭領域にグラデーションを設けた図形画像、および図形幅を太くした図形画像を作成して、それぞれの2次元画像を出力するまでの手順を示すフローチャートである。
まず、入力図形画像を図形画像データ入力部101から取得する(ステップ111)。
次に、データ入力部102から入力した前後の表示面の表示面間隔(Y)から図形輪郭領域幅(X)を、X=0.3Yの式によって算出する。この式は、図5に示す、前後の表示面の面間隔に対する図形輪郭領域幅の関係から得ることができる。
ステップ111で入力した図形画像の図形輪郭領域を、ステップ112で算出して決定した図形輪郭幅に設定し、図形輪郭領域幅を変化させた図形画像を作成する(ステップ113)。
次に、ステップ112で変化させた図形輪郭領域幅において、その輪郭線領域(本願発明の輪郭線領域1)にグラデーションを設ける処理を行う(ステップ114)。グラデーションは、図形の輪郭線領域の内側から外側に向かって段階的に輪郭線領域の色の透明度を高くするが、図6に示す図形輪郭領域幅内における図形輪郭領域の色の透明度中間点の設定位置と図形の立体感の関係から、透明度の中間点を図形輪郭領域幅の30〜60%の位置に設定することで、図形画像を前後の表示面に奥行き方向に重ねて表示したときに自然な立体図形の表現が実現できる。
次に、ステップ114で、輪郭線領域にグラデーションを設ける処理を行った図形画像を前面表示用の2次元画像(本願発明の第1の表示面に表示される第1の2次元画像)として出力する(ステップ115)。
【0014】
後面表示用の2次元画像を作成する場合は、まず、前後表示面の図形幅の拡大幅をデータ入力部102から入力した前後の表示面の表示面間隔(Y)、視域角(θ)から算出する(ステップ116)。
図7に、視域角(θ)に対する前後の表示面の表示面間隔(Y)と、前後面の図形幅の拡大幅(Z)の関係、図8に、前後の表示面の表示面間隔(Y)に対する視域角(θ)と、前後面の図形幅(Z)の拡大幅の関係を示す。
図7、図8から前後面の図形幅の拡大幅(Z)と前後の表示面の表示面間隔(Y)、視域角(θ)の正接(tanθ)はそれぞれ比例関係にあり、Z=0.1Ytanθの計算式によって、前後面の図形幅の拡大幅(Z)を算出できる。
次に、ステップ116で算出した図形幅の拡大幅を、ステップ113で図形輪郭領域幅を変化させた図形画像の図形(図形平坦部分+図形輪郭領域)幅に足すことにより、図形幅を太くした図形画像を作成する(ステップ117)。この時点では、図形の平坦部分と図形輪郭領域(本願発明の輪郭線領域2)の部分は、ステップ111の入力図形画像の図形と同じ色になっている。
ステップ117で図形幅を太くした図形画像を後面表示用の2次元画像(本願発明の第2の表示面に表示される第2の2次元画像)として出力する(ステップ118)。
なお、ステップ115で出力される前面表示用の2次元画像と、ステップ118で出力される後面表示用の2次元画像とは、3次元立体像の表示位置に合わせて決定される割合に基づき、それぞれ透過度が設定されている。
【0015】
図9は、図4に示すフローチャートに従って作成した前後の表示面に表示される図形画像の一例を示す図である。
図中の透明フィルム21は、前面表示用の図形画像、透明フィルム22は、後面表示用の図形画像である。
透明フィルム21に印刷した図形画像のA0は図形部分、A1は透明度の中間点を図形輪郭領域幅の30〜60%の位置に設定したグラデーションを設けた図形輪郭領域部分(本願発明の輪郭線領域1)である。
透明フィルム22に印刷した図形画像のA0’は図形部分、A1’は図形輪郭領域を拡大した図形輪郭領域部分(本願発明の輪郭線領域2)である。
図10は、図9に示す2次元画像を用いたときに、図1に示す3次元表示物体で観察者から観察される3次元立体像の図形を示す図である。
観察者1が、図1に示す3次元表示物体を正面から見たときに観察される3次元立体像の図形を図10(a)に示す。実際には、透明フィルム(21,22)の表示面(31、32)には奥行き位置の差があり、また、透明な板2に貼り付けた透明フィルム21に印刷されている図形画像の輪郭領域の透明度を段階的に高くしてグラデーションを設けることで、図形の3次元立体像が観察される。
また、図1に示す3次元表示物体を正面から表示面に向かって右にずれた位置から、観察者1が観察した様子を図10(b)に示す。
図10(b)に示すように、観察者1が、3次元表示物体の正面からずれた位置から観察した場合でも、透明な板2に貼り付けた透明フィルム21に印刷されている2次元画像の図形の輪郭領域のグラデーション部分と、透明フィルム22に印刷されている図形輪郭領域を拡大して図形幅を太くした図形画像とが奥行き方向に連続的につながり、自然な3次元立体像の図形として観察される。
このように、観察者1は頭を動かした状態でも3次元立体像の図形を観察できるため、運動視差による立体表現が可能である。
【0016】
なお、本実施例では、透明な板2に透明フィルム(21,22)を張り合わせた構成を例に挙げて説明したが、透明な物(例えば、窓ガラス、グラス、容器)であれば表示可能である。また、3次元表示の表示対象物体として図形を例にとったが、文字、記号、マーク、ロゴでも表示可能である。
また、前述の説明では、図1に示す3次元表示物体について適用した例について説明したが、本発明は、前記観察者から見て異なった奥行き位置にある2つの2次元表示装置に、表示対象物体を観察者の視線方向から射影した2次元像を表示し、かつ、それぞれの表示装置に表示される2次元像の透過度を独立に変更して、3次元立体像を表示する3次元表示装置にも適用可能である。
なお、本発明の3次元画像作成装置は、コンピュータで実行することも可能である。この場合、本発明の3次元画像作成方法は、コンピュータ内のハードディスクなどに格納されるプログラムを、コンピュータが実行することにより行われる。そして、このプログラムは、CD−ROM、あるいは、ネットワークを介したダウンロードにより供給される。
以上、本発明者によってなされた発明を、前記実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施例の3次元表示物体の概略構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施例の3次元物体において、透明な板と表示対象物の図形の2次元画像を印刷した透明フィルムを貼り合わせる前の状態を上から見た図である。
【図3】本発明の実施例の3次元画像作成装置の概略構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施例の3次元画像作成方法の処理手順を示すフローチャートである。
【図5】前後の表示面の表示面間隔に対する図形輪郭領域幅の関係を示すグラフである。
【図6】図形輪郭領域幅における図形輪郭領域の色の透明度中間点の設定位置に対する図面の立体感を示すグラフである。
【図7】視域角に対する前後の表示面の表示面間隔と前後表示面の図形幅の拡大幅を示すグラフである。
【図8】前後の表示面の表示面間隔に対する視域角と前後表示面の図形幅の拡大幅を示すグラフである。
【図9】前面の透明フィルムと後面の透明フィルムに印刷する図形の2次元画像の一例を示す図である。
【図10】図9に示す2次元画像を用いたときに、図1に示す3次元表示物体で観察者から観察される3次元立体像の図形を示す図である。
【図11】DFD方式の3次元表示方法の表示原理を説明するための図である。
【図12】DFD方式の3次元表示方法において、輝度の変化による3次元立体像の位置変化を示す図である。
【符号の説明】
【0018】
1,1001 観察者
2 透明な板
11,12 透明な板の前後の表面
3 表示対象物
21,22 透明フィルム
31,32 透明フィルムの表示面
101 図形画像データ入力部
102 データ入力部
103 図形輪郭領域幅決定部
104 前後表示面の図形幅の拡大幅決定部
105 図形輪郭領域幅を変化させた図形画像生成部(図形画像生成部1)
106 図形輪郭領域にグラデーションを設けた図形画像生成部(図形画像生成部2)
107 図形幅を太くした図形画像生成部(図形画像生成部3)
108 出力部
1002,1003 表示面
1004,1005,1041〜1043,1051〜1053 2次元画像
1008,1081〜1083 3次元立体像
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元表示物体、3次元画像作成装置、3次元画像作成方法およびプログラムに係り、特に、表示対象物体を観察者の視線方向から射影した2次元画像を、任意の奥行き幅を持たせて重ねて表示することにより、3次元立体像を表示する技術である。
【背景技術】
【0002】
奥行き位置を知覚できる3次元表示方法については様々な提案がなされているが、複数の2次元画像を重ね合わせることにより、3次元立体像を表示するDFD(Depth-Fused-3D)方式の3次元表示方法は、長時間見ても比較的疲れにくく、自然な立体像を知覚できることから注目を集めている。(下記、特許文献1参照)
図11に、DFD方式の3次元表示方法の表示原理を示す。
DFD方式の3次元表示方法では、観察者1001から見て異なった奥行き位置にある複数の表示面(1002,1003)(表示面1002が表示面1003よりも観察者1001に近い)に対して、表示対象物体を観察者の視線方向から射影した2次元画像を生成し、生成された2次元画像(1004,1005)の輝度を各表示面毎に各々独立に変化させて、複数の表示面(1002,1003)に表示することにより、連続的に奥行き表現が可能な3次元立体像1008を表示する。
複数の表示面に表示する2次元画像(1004,1005)は、観察者の右眼と左眼とを結ぶ線上の一点から見て重なるように表示面に表示する。
【0003】
図12に、DFD方式の3次元表示方法において、輝度の変化による3次元立体像の位置変化を示す。
例えば、図12において、複数の表示面のうち観察者1001に近い表示面1002に表示する2次元画像(1043)の輝度を高くし、観察者1001から遠い表示面1003に表示する2次元画像(1053)の輝度を低くすると、観察者1001に近い位置(表示面1002の近い位置)に3次元立体像(1083)が表示される。
また、表示面1002に表示する2次元画像(1041)の輝度を低くし、表示面1003に表示する2次元画像(1051)の輝度を高くすると、観察者1001から遠い位置(表示面1003に近い位置)に3次元立体像(1081)が表示される。
さらに、表示面1002に表示する2次元画像(1042)の輝度と、表示面1003に表示する2次元画像(1052)の輝度を同じにすると、表示面1002と表示面1003の中間位置に3次元立体像(1082)が表示される。
【0004】
なお、本願発明に関連する先行技術文献としては以下のものがある。
【特許文献1】特許第3022558号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、DFD方式の3次元表示方法では、複数の表示面上の同じ平面的な位置に、輝度分配したそれぞれの2次元画像を重ねて表示するため、観察者の視線位置が多少ずれただけで、複数の2次元画像の重なりがずれてしまい、3次元立体像の画像品質が劣化し、連続的な奥行き位置表現が難しくなる。
このため、観察位置が小さな範囲に限定されるという課題があった。
本発明は、前記従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、3次元立体像を表示する3次元表示物体において、観察者の視線位置がずれても、連続的な奥行き位置表現を可能にし、それによって観察位置の範囲を広くすることが可能な技術を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、前記3次元表示物体に表示する2次元画像を生成する3次元画像作成装置および3次元画像作成方法を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、前述の3次元画像作成方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを提供することにある。
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面によって明らかにする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、下記の通りである。
(1)第1の2次元画像と第2の2次元画像の2つの2次元画像を、任意の奥行き幅を持たせて重ねて表示することにより、3次元立体像を表示する3次元表示物体であって、観察者に近い第1の表示面に表示される前記第1の表示対象物の2次元画像は、前記第1の表示面と前記観察者から遠い第2の表示面との間の表示面間隔に比例した幅を持つ輪郭線領域1を有し、前記輪郭線領域1は、前記輪郭線領域1の内部の画像と前記輪郭線領域1との境界部分が前記輪郭線領域1の内部の画像の色と同じであり、かつ、外側に向かって単調に透明度が増加しており、前記第2の表示面に表示される前記第2の表示対象物の2次元画像は、前記表示面間隔に比例した幅と、前記表示面間隔と所定の視域角の正接の積に比例した幅の和の幅を持つ輪郭線領域2を有し、当該輪郭線領域2の色は、前記輪郭線領域1の内部の画像の色と等しいことを特徴とする。
【0007】
(2)(1)に記載の3次元表示物体における、第1の表示面に表示される第1の2次元画像と第2の表示面に表示される第2の2次元画像とを作成する3次元画像作成装置であって、表示対象物の画像を取り込む図形画像データ入力手段と、前記第1の表示面と前記第2の表示面との間の表示面間隔と、表示する視域角とを入力して保持するデータ入力手段と、前記表示面間隔に比例した値を図形輪郭線幅とする図形輪郭線幅決定手段と、前記表示対象物の画像の輪郭線の幅を前記図形輪郭線幅とした、輪郭線領域1を有する画像を生成する図形画像生成手段1と、前記図形画像生成手段1で生成した前記画像の前記輪郭線領域1の透明度を外側に向かって単調に増加させた、輪郭線領域1にグラデーションを設けた画像を生成する図形画像生成手段2と、前記表示面間隔と前記視域角の正接の積に比例した値を、前記第1の2次元画像の画像サイズに対する前記第2の2次元画像の画像サイズのずれ幅とする図形幅ずれ幅決定手段と、前記図形画像生成手段1で生成した前記画像の輪郭線領域として、前記輪郭線領域1に前記図形幅ずれ幅決定手段で決定した前記ずれ幅を加えた輪郭線領域2を有し、かつ、前記輪郭線領域2の色を前記図形画像生成手段1で生成した前記画像の前記輪郭線領域1の内部の画像の色と等しくした、輪郭線領域2を有する画像を生成する図形画像生成手段3と、前記図形画像生成手段2で生成した前記輪郭線領域1にグラデーションを設けた画像を前記第1の2次元画像として出力し、前記図形画像生成手段3で生成した前記輪郭線領域2を有する画像を前記第2の2次元画像として出力する出力手段とを具備することを特徴とする。
【0008】
(3)(1)に記載の3次元表示物体における、第1の表示面に表示される第1の2次元画像と第2の表示面に表示される第2の2次元画像とを作成する3次元画像作成方法であって、表示対象物の画像と、前記第1の表示面と前記第2の表示面との間の表示面間隔と、表示する視域角とを取り込んで保持する第1のステップと、前記表示面間隔に比例した値を図形輪郭線幅とする第2のステップと、前記表示対象物の画像の輪郭線の幅を前記図形輪郭線幅とした、輪郭線領域1を有する画像を生成する第3のステップと、前記第3のステップで生成した前記画像の輪郭線領域1の透明度を外側に向かって単調に増加させた、輪郭線領域1にグラデーションを設けた画像を生成する第4のステップと、前記第4のステップで生成した画像を、第1の2次元画像として出力する第5のステップと、前記表示面間隔と前記視域角の正接の積に比例した値を、前記第1の2次元画像の画像サイズに対する前記第2の2次元画像の画像サイズのずれ幅とする第6のステップと、前記第3のステップで生成した前記画像の輪郭線領域として、前記輪郭線領域1に前記第6のステップで決定した前記ずれ幅を加えた輪郭線領域2を有し、かつ、前記輪郭線領域2の色を前記第3のステップで生成した前記画像の前記輪郭線領域1の内部の画像の色と等しくした、輪郭線領域2を有する画像を生成する第7のステップと、前記第7のステップで生成した画像を、第2の2次元画像として出力する第8のステップとを有することを特徴とする。
(4)(3)に記載の3次元画像作成方法をコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0009】
本願において開示される発明のうち代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば、下記の通りである。
本発明によれば、観察者の視線位置がずれても、連続的な奥行き位置表現を可能にし、それによって観察位置の範囲を広くすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施例を詳細に説明する。
なお、実施例を説明するための全図において、同一機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略する。
図1は、本発明の実施例の3次元表示物体の概略構成を示す斜視図であり、図2は、本発明の実施例の3次元物体において、透明な板と表示対象物の図形の2次元画像を印刷した透明フィルムを貼り合わせる前の状態を上から見た図である。
図1、図2において、1は観察者、2は透明な板、11,12は透明な板2の前後の表面、3は表示対象物、21,22は透明な板2に張り合わせた表示対象物の2次元画像を印刷した透明フィルム、31,32はその透明フィルム(21,22)の表示面を示している。
本実施例の3次元表示物体は、表示対象物3として、3次元立体像の図形を表示させた構成であり、図2に示すように、表示対象物3の2次元画像を印刷した2枚の透明フィルム(21,22)を、厚みを持った透明な板2の前後の表面(11、12)に2次元画像の図形が重なるように貼り合わせた構成となっている。
本実施例は、後述するように、前面の透明フィルム21に印刷した2次元画像の図形(本願発明の第1の表示面に表示される第1の表示対象物の2次元画像)のエッジをぼかし(本願発明のグラディーション)、後面の透明フィルム22に印刷した2次元画像の図形(本願発明の第2の表示面に表示される第2の表示対象物の2次元画像)のエッジ領域を、前面の透明フィルム21に印刷した2次元画像の図形よりも大きくすることを特徴とする。
本実施例では、3次元表示の表示対象物3を、観察者1が正面から観察しても、正面からずれた位置から観察しても、表示面(31、32)に表示した2次元画像の図形が連続的につながり、自然な3次元立体像の図形として認識される。
【0011】
図3は、本発明の実施例の3次元画像作成装置の概略構成を示すブロック図であり、図1に示す3次元表示物体における、前面の透明フィルム21に印刷した2次元画像と、後面の透明フィルム22に印刷した2次元画像を生成する3次元画像作成装置の概略構成を示す図である。
図3に示すように、本実施例の3次元画像作成装置は、図形画像データ入力部101と、データ入力部102と、図形輪郭領域幅決定部103と、図形輪郭領域幅を変化させた図形画像生成部(以下、図形画像生成部1)105と、図形輪郭領域にグラデーションを設けた図形画像生成部(以下、図形画像生成部2)106と、前後表示面の図形幅の拡大幅決定部104と、図形幅を太くした図形画像生成部(以下、図形画像生成部3)107と、出力部108とで構成される。
図形輪郭領域幅決定部103は、データ入力部102から入力された前後の表示面の表示面間隔から図形輪郭領域の幅を決定する。
図形画像生成部1(105)は、図形画像データ入力部101から入力された図形画像の図形輪郭領域の幅を、図形輪郭領域幅決定部103で決定した図形輪郭領域の幅に設定した図形画像を作成する。
図形画像生成部2(106)は、図形画像生成部1(105)で作成された図形画像の図形輪郭領域にグラデーションを設けた図形画像を作成する。
作成した図形輪郭領域幅を変化させて、その輪郭線領域(本願発明の輪郭線領域1)にグラデーションを設けた図形画像は、前面表示用の2次元画像(本願発明の第1の表示面に表示される第1の2次元画像)として出力部108から出力される。
【0012】
前後表示面の図形幅の拡大幅決定部104は、データ入力部102から入力された前後の表示面の表示面間隔、および視域角から、前面に表示する図形幅(本願発明の第1の表示面に表示される第1の表示対象物の2次元画像)に対して、後面に表示する図形幅(本願発明の第2の表示面に表示される第2の2次元画像)の拡大幅を決定する。
図形画像生成部3(107)は、図形画像生成部1(105)で作成された図形画像の図形輪郭領域幅に、前後表示面の図形幅の拡大幅決定部104で決定した後面に表示する図形幅の拡大幅を加え、図形と、輪郭線領域(本願発明の輪郭線領域2)を同一の色とした図形画像を作成する。
図形幅を太くした図形画像は後面表示用の2次元画像(本願発明の第2の表示面に表示される第2の表示対象物の2次元画像)として出力部108から出力される。
なお、出力部108から出力される前面表示用の2次元画像と、後面表示用の2次元画像とは、3次元立体像の表示位置に合わせて決定される割合に基づき、それぞれ透過度が設定される。
【0013】
図4は、本発明の実施例の3次元画像作成方法の処理手順を示すフローチャートであり、図3に示す3次元画像作成装置において、入力図形画像と表示面の面間隔、視域角の入力データから図形輪郭領域にグラデーションを設けた図形画像、および図形幅を太くした図形画像を作成して、それぞれの2次元画像を出力するまでの手順を示すフローチャートである。
まず、入力図形画像を図形画像データ入力部101から取得する(ステップ111)。
次に、データ入力部102から入力した前後の表示面の表示面間隔(Y)から図形輪郭領域幅(X)を、X=0.3Yの式によって算出する。この式は、図5に示す、前後の表示面の面間隔に対する図形輪郭領域幅の関係から得ることができる。
ステップ111で入力した図形画像の図形輪郭領域を、ステップ112で算出して決定した図形輪郭幅に設定し、図形輪郭領域幅を変化させた図形画像を作成する(ステップ113)。
次に、ステップ112で変化させた図形輪郭領域幅において、その輪郭線領域(本願発明の輪郭線領域1)にグラデーションを設ける処理を行う(ステップ114)。グラデーションは、図形の輪郭線領域の内側から外側に向かって段階的に輪郭線領域の色の透明度を高くするが、図6に示す図形輪郭領域幅内における図形輪郭領域の色の透明度中間点の設定位置と図形の立体感の関係から、透明度の中間点を図形輪郭領域幅の30〜60%の位置に設定することで、図形画像を前後の表示面に奥行き方向に重ねて表示したときに自然な立体図形の表現が実現できる。
次に、ステップ114で、輪郭線領域にグラデーションを設ける処理を行った図形画像を前面表示用の2次元画像(本願発明の第1の表示面に表示される第1の2次元画像)として出力する(ステップ115)。
【0014】
後面表示用の2次元画像を作成する場合は、まず、前後表示面の図形幅の拡大幅をデータ入力部102から入力した前後の表示面の表示面間隔(Y)、視域角(θ)から算出する(ステップ116)。
図7に、視域角(θ)に対する前後の表示面の表示面間隔(Y)と、前後面の図形幅の拡大幅(Z)の関係、図8に、前後の表示面の表示面間隔(Y)に対する視域角(θ)と、前後面の図形幅(Z)の拡大幅の関係を示す。
図7、図8から前後面の図形幅の拡大幅(Z)と前後の表示面の表示面間隔(Y)、視域角(θ)の正接(tanθ)はそれぞれ比例関係にあり、Z=0.1Ytanθの計算式によって、前後面の図形幅の拡大幅(Z)を算出できる。
次に、ステップ116で算出した図形幅の拡大幅を、ステップ113で図形輪郭領域幅を変化させた図形画像の図形(図形平坦部分+図形輪郭領域)幅に足すことにより、図形幅を太くした図形画像を作成する(ステップ117)。この時点では、図形の平坦部分と図形輪郭領域(本願発明の輪郭線領域2)の部分は、ステップ111の入力図形画像の図形と同じ色になっている。
ステップ117で図形幅を太くした図形画像を後面表示用の2次元画像(本願発明の第2の表示面に表示される第2の2次元画像)として出力する(ステップ118)。
なお、ステップ115で出力される前面表示用の2次元画像と、ステップ118で出力される後面表示用の2次元画像とは、3次元立体像の表示位置に合わせて決定される割合に基づき、それぞれ透過度が設定されている。
【0015】
図9は、図4に示すフローチャートに従って作成した前後の表示面に表示される図形画像の一例を示す図である。
図中の透明フィルム21は、前面表示用の図形画像、透明フィルム22は、後面表示用の図形画像である。
透明フィルム21に印刷した図形画像のA0は図形部分、A1は透明度の中間点を図形輪郭領域幅の30〜60%の位置に設定したグラデーションを設けた図形輪郭領域部分(本願発明の輪郭線領域1)である。
透明フィルム22に印刷した図形画像のA0’は図形部分、A1’は図形輪郭領域を拡大した図形輪郭領域部分(本願発明の輪郭線領域2)である。
図10は、図9に示す2次元画像を用いたときに、図1に示す3次元表示物体で観察者から観察される3次元立体像の図形を示す図である。
観察者1が、図1に示す3次元表示物体を正面から見たときに観察される3次元立体像の図形を図10(a)に示す。実際には、透明フィルム(21,22)の表示面(31、32)には奥行き位置の差があり、また、透明な板2に貼り付けた透明フィルム21に印刷されている図形画像の輪郭領域の透明度を段階的に高くしてグラデーションを設けることで、図形の3次元立体像が観察される。
また、図1に示す3次元表示物体を正面から表示面に向かって右にずれた位置から、観察者1が観察した様子を図10(b)に示す。
図10(b)に示すように、観察者1が、3次元表示物体の正面からずれた位置から観察した場合でも、透明な板2に貼り付けた透明フィルム21に印刷されている2次元画像の図形の輪郭領域のグラデーション部分と、透明フィルム22に印刷されている図形輪郭領域を拡大して図形幅を太くした図形画像とが奥行き方向に連続的につながり、自然な3次元立体像の図形として観察される。
このように、観察者1は頭を動かした状態でも3次元立体像の図形を観察できるため、運動視差による立体表現が可能である。
【0016】
なお、本実施例では、透明な板2に透明フィルム(21,22)を張り合わせた構成を例に挙げて説明したが、透明な物(例えば、窓ガラス、グラス、容器)であれば表示可能である。また、3次元表示の表示対象物体として図形を例にとったが、文字、記号、マーク、ロゴでも表示可能である。
また、前述の説明では、図1に示す3次元表示物体について適用した例について説明したが、本発明は、前記観察者から見て異なった奥行き位置にある2つの2次元表示装置に、表示対象物体を観察者の視線方向から射影した2次元像を表示し、かつ、それぞれの表示装置に表示される2次元像の透過度を独立に変更して、3次元立体像を表示する3次元表示装置にも適用可能である。
なお、本発明の3次元画像作成装置は、コンピュータで実行することも可能である。この場合、本発明の3次元画像作成方法は、コンピュータ内のハードディスクなどに格納されるプログラムを、コンピュータが実行することにより行われる。そして、このプログラムは、CD−ROM、あるいは、ネットワークを介したダウンロードにより供給される。
以上、本発明者によってなされた発明を、前記実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施例の3次元表示物体の概略構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施例の3次元物体において、透明な板と表示対象物の図形の2次元画像を印刷した透明フィルムを貼り合わせる前の状態を上から見た図である。
【図3】本発明の実施例の3次元画像作成装置の概略構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施例の3次元画像作成方法の処理手順を示すフローチャートである。
【図5】前後の表示面の表示面間隔に対する図形輪郭領域幅の関係を示すグラフである。
【図6】図形輪郭領域幅における図形輪郭領域の色の透明度中間点の設定位置に対する図面の立体感を示すグラフである。
【図7】視域角に対する前後の表示面の表示面間隔と前後表示面の図形幅の拡大幅を示すグラフである。
【図8】前後の表示面の表示面間隔に対する視域角と前後表示面の図形幅の拡大幅を示すグラフである。
【図9】前面の透明フィルムと後面の透明フィルムに印刷する図形の2次元画像の一例を示す図である。
【図10】図9に示す2次元画像を用いたときに、図1に示す3次元表示物体で観察者から観察される3次元立体像の図形を示す図である。
【図11】DFD方式の3次元表示方法の表示原理を説明するための図である。
【図12】DFD方式の3次元表示方法において、輝度の変化による3次元立体像の位置変化を示す図である。
【符号の説明】
【0018】
1,1001 観察者
2 透明な板
11,12 透明な板の前後の表面
3 表示対象物
21,22 透明フィルム
31,32 透明フィルムの表示面
101 図形画像データ入力部
102 データ入力部
103 図形輪郭領域幅決定部
104 前後表示面の図形幅の拡大幅決定部
105 図形輪郭領域幅を変化させた図形画像生成部(図形画像生成部1)
106 図形輪郭領域にグラデーションを設けた図形画像生成部(図形画像生成部2)
107 図形幅を太くした図形画像生成部(図形画像生成部3)
108 出力部
1002,1003 表示面
1004,1005,1041〜1043,1051〜1053 2次元画像
1008,1081〜1083 3次元立体像
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の2次元画像と第2の2次元画像の2つの2次元画像を、任意の奥行き幅を持たせて重ねて表示することにより、3次元立体像を表示する3次元表示物体であって、
観察者に近い第1の表示面に表示される前記第1の表示対象物の2次元画像は、前記第1の表示面と前記観察者から遠い第2の表示面との間の表示面間隔に比例した幅を持つ輪郭線領域1を有し、
前記輪郭線領域1は、前記輪郭線領域1の内部の画像と前記輪郭線領域1との境界部分が前記輪郭線領域1の内部の画像の色と同じであり、かつ、外側に向かって単調に透明度が増加しており、
前記第2の表示面に表示される前記第2の表示対象物の2次元画像は、前記表示面間隔に比例した幅と、前記表示面間隔と所定の視域角の正接の積に比例した幅の和の幅を持つ輪郭線領域2を有し、
当該輪郭線領域2の色は、前記輪郭線領域1の内部の画像の色と等しいことを特徴とする3次元表示物体。
【請求項2】
請求項1に記載の3次元表示物体における、第1の表示面に表示される第1の2次元画像と第2の表示面に表示される第2の2次元画像とを作成する3次元画像作成装置であって、
表示対象物の画像を取り込む図形画像データ入力手段と、
前記第1の表示面と前記第2の表示面との間の表示面間隔と、表示する視域角とを入力して保持するデータ入力手段と、
前記表示面間隔に比例した値を図形輪郭線幅とする図形輪郭線幅決定手段と、
前記表示対象物の画像の輪郭線の幅を前記図形輪郭線幅とした、輪郭線領域1を有する画像を生成する図形画像生成手段1と、
前記図形画像生成手段1で生成した前記画像の前記輪郭線領域1の透明度を外側に向かって単調に増加させた、輪郭線領域1にグラデーションを設けた画像を生成する図形画像生成手段2と、
前記表示面間隔と前記視域角の正接の積に比例した値を、前記第1の2次元画像の画像サイズに対する前記第2の2次元画像の画像サイズのずれ幅とする図形幅ずれ幅決定手段と、
前記図形画像生成手段1で生成した前記画像の輪郭線領域として、前記輪郭線領域1に前記図形幅ずれ幅決定手段で決定した前記ずれ幅を加えた輪郭線領域2を有し、かつ、前記輪郭線領域2の色を前記図形画像生成手段1で生成した前記画像の前記輪郭線領域1の内部の画像の色と等しくした、輪郭線領域2を有する画像を生成する図形画像生成手段3と、
前記図形画像生成手段2で生成した前記輪郭線領域1にグラデーションを設けた画像を前記第1の2次元画像として出力し、前記図形画像生成手段3で生成した前記輪郭線領域2を有する画像を前記第2の2次元画像として出力する出力手段とを具備することを特徴とする3次元画像作成装置。
【請求項3】
請求項1に記載の3次元表示物体における、第1の表示面に表示される第1の2次元画像と第2の表示面に表示される第2の2次元画像とを作成する3次元画像作成方法であって、
表示対象物の画像と、前記第1の表示面と前記第2の表示面との間の表示面間隔と、表示する視域角とを取り込んで保持する第1のステップと、
前記表示面間隔に比例した値を図形輪郭線幅とする第2のステップと、
前記表示対象物の画像の輪郭線の幅を前記図形輪郭線幅とした、輪郭線領域1を有する画像を生成する第3のステップと、
前記第3のステップで生成した前記画像の輪郭線領域1の透明度を外側に向かって単調に増加させた、輪郭線領域1にグラデーションを設けた画像を生成する第4のステップと、
前記第4のステップで生成した画像を、第1の2次元画像として出力する第5のステップと、
前記表示面間隔と前記視域角の正接の積に比例した値を、前記第1の2次元画像の画像サイズに対する前記第2の2次元画像の画像サイズのずれ幅とする第6のステップと、
前記第3のステップで生成した前記画像の輪郭線領域として、前記輪郭線領域1に前記第6のステップで決定した前記ずれ幅を加えた輪郭線領域2を有し、かつ、前記輪郭線領域2の色を前記第3のステップで生成した前記画像の前記輪郭線領域1の内部の画像の色と等しくした、輪郭線領域2を有する画像を生成する第7のステップと、
前記第7のステップで生成した画像を、第2の2次元画像として出力する第8のステップとを有することを特徴とする3次元画像作成方法。
【請求項4】
請求項3に記載の3次元画像作成方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項1】
第1の2次元画像と第2の2次元画像の2つの2次元画像を、任意の奥行き幅を持たせて重ねて表示することにより、3次元立体像を表示する3次元表示物体であって、
観察者に近い第1の表示面に表示される前記第1の表示対象物の2次元画像は、前記第1の表示面と前記観察者から遠い第2の表示面との間の表示面間隔に比例した幅を持つ輪郭線領域1を有し、
前記輪郭線領域1は、前記輪郭線領域1の内部の画像と前記輪郭線領域1との境界部分が前記輪郭線領域1の内部の画像の色と同じであり、かつ、外側に向かって単調に透明度が増加しており、
前記第2の表示面に表示される前記第2の表示対象物の2次元画像は、前記表示面間隔に比例した幅と、前記表示面間隔と所定の視域角の正接の積に比例した幅の和の幅を持つ輪郭線領域2を有し、
当該輪郭線領域2の色は、前記輪郭線領域1の内部の画像の色と等しいことを特徴とする3次元表示物体。
【請求項2】
請求項1に記載の3次元表示物体における、第1の表示面に表示される第1の2次元画像と第2の表示面に表示される第2の2次元画像とを作成する3次元画像作成装置であって、
表示対象物の画像を取り込む図形画像データ入力手段と、
前記第1の表示面と前記第2の表示面との間の表示面間隔と、表示する視域角とを入力して保持するデータ入力手段と、
前記表示面間隔に比例した値を図形輪郭線幅とする図形輪郭線幅決定手段と、
前記表示対象物の画像の輪郭線の幅を前記図形輪郭線幅とした、輪郭線領域1を有する画像を生成する図形画像生成手段1と、
前記図形画像生成手段1で生成した前記画像の前記輪郭線領域1の透明度を外側に向かって単調に増加させた、輪郭線領域1にグラデーションを設けた画像を生成する図形画像生成手段2と、
前記表示面間隔と前記視域角の正接の積に比例した値を、前記第1の2次元画像の画像サイズに対する前記第2の2次元画像の画像サイズのずれ幅とする図形幅ずれ幅決定手段と、
前記図形画像生成手段1で生成した前記画像の輪郭線領域として、前記輪郭線領域1に前記図形幅ずれ幅決定手段で決定した前記ずれ幅を加えた輪郭線領域2を有し、かつ、前記輪郭線領域2の色を前記図形画像生成手段1で生成した前記画像の前記輪郭線領域1の内部の画像の色と等しくした、輪郭線領域2を有する画像を生成する図形画像生成手段3と、
前記図形画像生成手段2で生成した前記輪郭線領域1にグラデーションを設けた画像を前記第1の2次元画像として出力し、前記図形画像生成手段3で生成した前記輪郭線領域2を有する画像を前記第2の2次元画像として出力する出力手段とを具備することを特徴とする3次元画像作成装置。
【請求項3】
請求項1に記載の3次元表示物体における、第1の表示面に表示される第1の2次元画像と第2の表示面に表示される第2の2次元画像とを作成する3次元画像作成方法であって、
表示対象物の画像と、前記第1の表示面と前記第2の表示面との間の表示面間隔と、表示する視域角とを取り込んで保持する第1のステップと、
前記表示面間隔に比例した値を図形輪郭線幅とする第2のステップと、
前記表示対象物の画像の輪郭線の幅を前記図形輪郭線幅とした、輪郭線領域1を有する画像を生成する第3のステップと、
前記第3のステップで生成した前記画像の輪郭線領域1の透明度を外側に向かって単調に増加させた、輪郭線領域1にグラデーションを設けた画像を生成する第4のステップと、
前記第4のステップで生成した画像を、第1の2次元画像として出力する第5のステップと、
前記表示面間隔と前記視域角の正接の積に比例した値を、前記第1の2次元画像の画像サイズに対する前記第2の2次元画像の画像サイズのずれ幅とする第6のステップと、
前記第3のステップで生成した前記画像の輪郭線領域として、前記輪郭線領域1に前記第6のステップで決定した前記ずれ幅を加えた輪郭線領域2を有し、かつ、前記輪郭線領域2の色を前記第3のステップで生成した前記画像の前記輪郭線領域1の内部の画像の色と等しくした、輪郭線領域2を有する画像を生成する第7のステップと、
前記第7のステップで生成した画像を、第2の2次元画像として出力する第8のステップとを有することを特徴とする3次元画像作成方法。
【請求項4】
請求項3に記載の3次元画像作成方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−128450(P2010−128450A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−306358(P2008−306358)
【出願日】平成20年12月1日(2008.12.1)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月1日(2008.12.1)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
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