説明

3次元配筋システムによる現場配筋支援方法

【課題】鉄筋コンクリート構造物に配筋される鉄筋を、施工現場で干渉を回避しつつ効率良く組み立てることができるように支援する3次元配筋システムによる現場配筋支援方法を提供する。
【解決手段】3次元配筋プログラムが組み込まれた3次元配筋システム10による現場配筋支援方法であって、構築すべき鉄筋コンクリート構造物30の3次元配筋モデルを作成する3次元モデル化ステップS1と、作成された3次元配筋モデルに基づいて、コンクリート打設ロット毎に、所定の対応ルールに従って、鉄筋の干渉をチェックすると共にチェックされた干渉を回避させる干渉チェック回避ステップS2とを含んでいる。干渉チェック回避ステップS2では、先行するコンクリート打設ロットにおいて干渉を回避すべく移動等した鉄筋の情報を反映させて更新した3次元配筋モデルに基づいて、次のコンクリート打設ロットにおける鉄筋の干渉のチッェックを行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元配筋プログラムが組み込まれた3次元配筋システムによる、鉄筋の干渉を回避させるための現場配筋支援方法、及び該現場配筋支援方法をコンピュータに実行させるための現場配筋支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば各種の公共工事で鉄筋コンクリート構造物を建設する際に、建設される鉄筋コンクリート構造物の内部には、縦横に配筋された多数の鉄筋が高さ方向に順次配置される。また、近年、例えば鉄筋コンクリート構造物の耐震性を高めるために、より多くの鉄筋が使用されると共に、景観への配慮等から、構造物自体のデザインも凝っていて、複雑な配筋がなされるようになっている。そのため、配筋工事の難度が高くなると共に、設計図面通りの配筋作業も難しくなって、多くの手間と時間とを要している。
【0003】
鉄筋の配筋工事は、一般に設計図面に描かれた配筋図に従って行われるが、配筋図は2次元の図面として描かれており、また鉄筋の太さを正確に勘案した図面となっていないことが多いため、施工現場で実際に組み立てる際に、鉄筋同士の干渉を生じ易い。このような鉄筋同士の干渉が生じた場合には、現場対応で対処していたが、現場対応では、熟練を要し、複雑な配筋や組立て手順になる程、鉄筋同士の干渉を回避することが困難である。
【0004】
一方、近年、情報通信技術の活用によって、3次元モデル設計と呼ばれる構造物全体を1つのモデルとしてとらえる考え方に注目が集まっている。鉄筋の配筋に関しても、2次元のCAD図面から、3次元配筋モデルを作成することを可能にする種々の設計プログラムが開発されている。また、鉄筋の干渉をチェックすると共に、鉄筋が干渉しないように自動的に鉄筋の再配置を行い、再配置した結果に基づく施工図を容易に作図できるようにした施工図作図システムも開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
特許文献1の施工図作図システムでは、施工条件や配置位置移動条件等の情報が記憶された条件データ記憶手段と、使用する鉄筋の初期配置を決定する初期配置処理手段と、初期配置処理手段によって配置された鉄筋の干渉を検出し、条件データ記憶手段に記憶されている配置位置移動条件を満たし、かつ干渉している鉄筋が干渉しないように鉄筋の配置位置を移動する干渉検出・回避処理手段とを含んで構成されている。また、干渉検出・回避処理手段は、初期配置の状態において高さ(レベル)方向の鉄筋の干渉を検出して、条件データ記憶部に予め記憶されたルール情報に基づいて鉄筋の高さ方向の回避処理を行うと共に、平面方向の鉄筋の干渉を検出して、条件データ記憶部に予め記憶されたルール情報に基づいて鉄筋の平面方向の回避処理を行うようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−30403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の施工図作図システムでは、干渉検出・回避処理手段は、鉄筋コンクリート構造物の施工前の設計段階において、高さ方向や平面方向の鉄筋の干渉を検出して検出した干渉の回避処理を行うものであり、当該施工図作図システムによって作図された施工図に基づいて配筋しようとしても、実際の施工現場では、当該施工現場での諸条件や配筋誤差、施工誤差等によって、施工図通りには鉄筋を組み立てることができなくなる場合が多く、このような場合には、結局現場対応にならざるを得ないのが実情である。
【0008】
本発明は、鉄筋コンクリート構造物に配筋される鉄筋を、施工現場において干渉を回避しつつ効率良く組み立ててゆくことが可能なように効果的に支援することのできる3次元配筋システムによる現場配筋支援方法、及び該現場配筋支援方法をコンピュータに実行させるための現場配筋支援プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、3次元配筋プログラムが組み込まれた3次元配筋システムによる現場配筋支援方法であって、構築すべき鉄筋コンクリート構造物に配筋される鉄筋の3次元配筋モデルを作成する3次元モデル化ステップと、作成された3次元配筋モデルに基づいて、前記鉄筋コンクリート構造物のコンクリート打設ロット毎に、所定の対応ルールに従って、配筋される鉄筋の干渉をチェックすると共にチェックされた鉄筋の干渉を回避させる干渉チェック回避ステップとを含んでおり、該干渉チェック回避ステップでは、先行するコンクリート打設ロットにおいて干渉を回避すべく移動又は変更した鉄筋の情報を反映させて更新した3次元配筋モデルに基づいて、次のコンクリート打設ロットにおける鉄筋の干渉をチェックして干渉を回避する3次元配筋システムによる現場配筋支援方法を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0010】
また、本発明の3次元配筋システムによる現場配筋支援方法は、前記所定の対応ルールを、前記鉄筋コンクリート構造物のコンクリート打設ロット毎に設定することが好ましい。
【0011】
さらに、本発明の3次元配筋システムによる現場配筋支援方法は、前記チェックされた鉄筋の干渉を回避させる所定の対応ルールに、干渉チェックが不要な鉄筋を除外すること、及び鉄筋径毎に干渉と判断する基準を設定すること含んでいることが好ましい。
【0012】
さらにまた、本発明の3次元配筋システムによる現場配筋支援方法は、前記先行するコンクリート打設ロットにおいて干渉を回避すべく移動又は変更した鉄筋の情報が、コンクリートを打設した後に当該先行するコンクリート打設ロットから延設する鉄筋の実測値を入力することで得られるようにすることが好ましい。
【0013】
また、本発明の3次元配筋システムによる現場配筋支援方法は、各コンクリート打設ロットにおける前記干渉チェック回避ステップが、干渉箇所の鉄筋を確認する干渉鉄筋確認ステップと、干渉を回避すべき干渉箇所を選択して干渉している鉄筋を指定する干渉鉄筋指定ステップと、前記所定の対応ルールから選択されたルールを、指定された鉄筋に対して実行する対応ルール実行ステップと、該対応ルール実行ステップの後に再度干渉のチェックを行って干渉箇所の増減及び位置を確認する干渉再チェックステップとを含んでいることが好ましい。
【0014】
さらに、本発明の3次元配筋システムによる現場配筋支援方法は、各コンクリート打設ロットにおいて、鉄筋の干渉が確認されなくなるまで前記干渉チェック回避ステップの前記干渉鉄筋指定ステップ、前記対応ルール実行ステップ、及び前記干渉再チェックステップを繰り返し行うようにすることが好ましい。
【0015】
また、本発明は、上記いずれかに記載の3次元配筋システムによる現場配筋支援方法の各ステップをコンピュータに実行させるための現場配筋支援プログラムを提供することにより、上記目的を達成したものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の3次元配筋システムによる現場配筋支援方法、及び現場配筋支援プログラムによれば、鉄筋コンクリート構造物に配筋される鉄筋を、施工現場において干渉を回避しつつ効率良く組み立ててゆくことが可能なように効果的に支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の好ましい一実施形態に係る現場配筋支援方法により支援されて内部に鉄筋が配筋された鉄筋コンクリート構造物を例示する略示斜視図である。
【図2】本発明の好ましい一実施形態に係る現場配筋支援方法が実施される3次元配筋プログラムが組み込まれた3次元配筋システムのシステム構成図である。
【図3】本発明の好ましい一実施形態に係る現場配筋支援方法の工程を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の好ましい一実施形態に係る3次元配筋システムによる現場配筋支援方法は、鉄筋コンクリート構造物30として、例えば図1に示すような橋桁を支持するための橋脚構造物を構築する際に、各コンクリート打設ロット毎に行われる、コンクリートの打設作業に先立って組み立てられる鉄筋の配筋作業を、施工現場において、高度な熟練を要することなく、鉄筋同士の干渉を回避しつつ効率良く行えるように、コンピュータを用いて効果的に支援するための方法として採用されたものである。
【0019】
ここで、本実施形態では、鉄筋コンクリート構造物としての橋脚構造物30は、地中に打ち込まれた場所打ちコンクリート杭31に支持されて構築されるものであり、場所打ちコンクリート杭31の直上部分に形成される一対の基礎フーチング部32と、これらの基礎フーチング部32の間に形成される一対の基礎梁部33と、各基礎フーチング部32の両端部分から立設して形成される4体の柱部34と、柱部34に支持されて基礎フーチング部32の上方に各々形成される一対の桁受け部35と、一対の桁受け部35に両端部を支持されて基礎梁部33の上方に各々構築される一対の桁梁部36とによって構成される。また、これらの橋脚構造物30の各部は、一体として構築されるのではなく、コンクリートの打設作業を順次行い易い位置で区画された複数のコンクリート打設ロット毎に、鉄筋の配筋作業及び型枠の組立作業を行って、好ましくは下部から上部に向って順次構築されることになる。
【0020】
本実施形態の3次元配筋システムによる現場配筋支援方法は、コンクリート打設ロット毎に鉄筋を組み立てる際に、施工現場での諸条件や、先行するコンクリート打設ロットにおいて既に配筋された鉄筋が及ぼす影響等を勘案しつつ、高度な熟練を要することなく、鉄筋同士の干渉を効率良く回避しながら実際の施工現場で作業員がスムーズに配筋作業を行ってゆけるように支援するものである。
【0021】
なお、橋脚構造物30の各コンクリート打設ロットは、基礎フーチング部32、基礎梁部33、柱部34、桁受け部35、桁梁部36の各部毎に区画された領域である必要は必ずしもなく、コンクリートの打設作業のし易さ等を鑑みて、適宜のコンクリート領域毎に区画することができる。例えば、これらの各部をさらに複数の領域に分割したものや、複数の部分に跨ったコンクリート打設領域であっても良い。
【0022】
そして、本実施形態の現場配筋支援方法は、3次元配筋プログラムが組み込まれた3次元配筋システム10(図2参照)による配筋支援方法であって、図3に示すように、構築すべき鉄筋コンクリート構造物30に配筋される鉄筋の3次元配筋モデルを作成する3次元モデル化ステップS1と、作成された3次元配筋モデルに基づいて、鉄筋コンクリート構造物30のコンクリート打設ロット毎に、所定の対応ルールに従って、配筋される鉄筋の干渉をチェックすると共にチェックされた鉄筋の干渉を回避させる干渉チェック回避ステップS2とを含んでおり、この干渉チェック回避ステップS2では、先行するコンクリート打設ロットにおいて干渉を回避すべく移動又は変更した鉄筋の情報を反映させて更新した3次元配筋モデルに基づいて、次のコンクリート打設ロットにおける鉄筋の干渉をチェックして干渉を回避するようになっている。
【0023】
本実施形態の現場配筋支援方法は、3次元配筋プログラムが組み込まれた、図2に示すような3次元配筋システム10を用いて行われる。3次元配筋システム10は、データベースサーバとして機能する公知のパーソナルコンピュータ等からなるコンピュータ11を含んで構成される。コンピュータ11としてのデータベースサーバは、CPU、ROM、RAM、I/F、記憶手段、入力手段、表示手段、出力手段等を備えている。データベースサーバのCPUは、ROMに組み込まれた制御プログラムに従って、RAMをワークエリアとして使用しながら、データベースサーバの全体の動作を制御する。また、CPUは、各種のコンピュータプログラムがROMに組み込まれていることにより、記憶手段、入力手段、表示手段、出力手段等を機能させると共に、鉄筋コンクリート構造物30やこれの配筋の管理に関する種々の情報を記憶手段を介して案件データ記憶部12に記憶させ、また所定の情報を表示手段を介して表示部13に表示させたり、出力手段を介して印刷部14から出力させたりすることができるようになっている。
【0024】
また、コンピュータ11は、例えば当該コンピュータ11に内蔵されたハードディスクからなる案件データ記憶部12、ディスプレイ装置からなる表示部13、プリンタからなる印刷部14、キーボードやマウスからなる入力部15等と接続していると共に、コンピュータ11には、公知の各種の3次元配筋プログラムを含むCADプログラムが組み込まれていて、CADシステム16が構成されている。CADシステム16は、鉄筋コンクリート構造物20の図面や配筋図等を作成したり、取り込んだりする機能を備えると共に、これらの情報を案件データ記憶部12に記憶させることができるようになっている。なお、鉄筋コンクリート構造物30の図面や配筋図等の情報は、当該CADシステム16とは別のシステムやコンピュータ等を用いて作成されたこれらの情報の電子データを、有線又は無線の通信ネットワークや外部記憶媒体を介して、本実施形態の3次元配筋システム10のコンピュータ11の内部のCADシステム16に取り込むこともできる。
【0025】
さらに、本実施形態では、コンピュータ11に公知の各種の3次元配筋プログラムを含むCADプログラムが組み込まれていることにより、コンピュータ11には、干渉チェック処理部を備える上述のCADシステム16の他に、対応ルール記憶部17、情報入力部18、鉄筋配置処理部19、干渉チェック回避処理部20等が設けられる。これらによって、後述する3次元モデル化ステップS1や干渉チェック回避ステップS2が行われるようになっている。ここで、本実施形態では、コンピュータ11に上述のような構成を付与する3次元配筋プログラムを含むCADプログラムとしては、鉄筋コンクリート構造物30に配筋される鉄筋の干渉チェック機能や、干渉回避機能を備える、例えば「Revit Structure 2009、NavisWorks」(Autodesk社製)を好ましく用いることができる。
【0026】
そして、本実施形態では、図3に示すように、3次元モデル化ステップS1において、例えばCADシステム16で作成したり、CADシステム16に取り込んだ鉄筋コンクリート構造物30の設計図面(2次元CAD図面)に基づいて、3次元CADで使用可能な鉄筋コンクリート構造物30の3次元配筋モデルを作成する。また作成した3次元配筋モデルを案件データ記憶部12に記憶させると共に、必要に応じて表示部13に表示させたり、印刷部14から出力させる。このような鉄筋コンクリート構造物30の3次元配筋モデルは、鉄筋コンクリート構造物30の全体の配筋モデルとすることが好ましい。
【0027】
また、3次元モデル化ステップS1で作成した3次元配筋モデルにおいても、配筋の干渉チェックを行うと共に、干渉箇所を確認することができる。例えば、鉄筋の干渉位置や、鉄筋径、長さ、形状、主筋・配力筋の区別等の属性を確認することができる。
【0028】
鉄筋コンクリート構造物30の3次元配筋モデルを作成したら、干渉チェック回避ステップS2において、区画された各々のコンクリート打設ロットに対してコンクリートの打設順に、予め定められた所定の対応ルールに従って、各コンクリート打設ロットの内部に配筋される鉄筋の干渉をチェックすると共に、確認された鉄筋の干渉を回避する処理を行う。
【0029】
干渉チェック回避ステップS2では、まず、鉄筋の干渉チェックや回避処理を行う当該コンクリート打設ロットに先立って、先行してコンクリートの打設が完了したコンクリート打設ロットが存在するか否かを判定する。先行するコンクリート打設ロットが存在する場合には、ステップS2aにおいて、先行するコンクリート打設ロットの配筋を固定して鉄筋の移動を不可とする。
【0030】
先行するコンクリート打設ロットの配筋を固定するか、又は先行するコンクリート打設ロットが存在しないと判定された場合には、ステップS2bにおいて、鉄筋の干渉チェックや回避処理を行う当該コンクリート打設ロットを設定する。また、ステップS2cにおいて、当該コンクリート打設ロットにおける干渉条件を設定する。しかる後に、ステップS2dにおいて、配筋干渉チェックを行う。
【0031】
ここで、コンクリートの打設は、鉄筋コンクリート構造物30の下部から上部に向って順次行われるのが一般的であり、本実施形態では、例えば基礎フーチング部32、基礎梁部33、柱部34、桁受け部35、桁梁部36の順番で、コンクリート打設ロット毎に、鉄筋の配筋作業、型枠の組立作業、コンクリートの打設作業等が行われるようになっている。
【0032】
また、本実施形態では、例えば基礎フーチング部32と基礎梁部33との接合角部分や、柱部34と桁受け部35との接合角部分では、鉄筋が錯綜していて配筋作業が複雑になる一方で、例えば柱部34や基礎梁部33や桁梁部36の中間部分では、鉄筋が少なく単純な配置となって配筋作業が簡易になることから、このようなコンクリート打設ロット毎に異なる条件に対応させて、鉄筋の干渉をチェックすると共に鉄筋の干渉を回避させる所定の対応ルールを、各々設定することが好ましい。
【0033】
さらに、鉄筋の干渉をチェックすると共に鉄筋の干渉を回避させる所定の対応ルールには、例えば配筋箇所によっては、D13、D16等の細い鉄筋は現場で少し移動させたり撓ませたりすることで、高度な熟練を要することなく現場対応で容易に干渉を回避できることから、このような細い鉄筋を、干渉チェックが不要な鉄筋として除外することを含めることができる。これらによって、干渉チェック回避ステップS2における干渉チェックの処理時間や、干渉回避の処理時間を短縮することが可能になる。
【0034】
また、例えば配筋箇所や鉄筋の種類によっては、例えば配筋される鉄筋に数mm程度の重なりの干渉があった場合でも、高度な熟練を要することなく現場対応で容易に干渉を回避できることから、鉄筋径毎に干渉と判断する基準として、例えば何mm、鉄筋径の何%といった基準を所定の対応ルールに含めることができる。これらによっても、干渉チェック回避ステップS2における干渉チェックの処理時間や、干渉回避の処理時間を短縮することが可能になると共に、施工現場において鉄筋の干渉を回避させるためのより合理的な支援を行うことが可能になる。
【0035】
さらにまた、本実施形態では、鉄筋の干渉をチェックすると共に鉄筋の干渉を回避させる所定の対応ルールとして、例えばコンクリートの所定のかぶり厚を確保することや、先行してコンクリートが打設されたコンクリート打設ロットの配筋は位置を変更できないことや、重ね継ぎ手或いは圧接継ぎ手の箇所は実際には干渉していないので干渉を解除することや、干渉部分の鉄筋は原則として鉄筋コンクリート構造物30の内部方向に移動させること等を含めることができる。また、例えば鉄筋の組立手順に合わせて後工程の配筋を移動して調整することや、主筋が配力筋のピッチによって干渉している場合は配力筋のピッチを調整して移動することや、フック部での干渉はフックの方向を変更させること等を含めることができる。さらに、例えば鉄筋が込み入ってコンクリート打設時に骨材が回り難くなる箇所を確認させる機能を含めることができる。
【0036】
そして、本実施形態では、干渉チェック回避ステップS2において、先行するコンクリート打設ロットで干渉を回避するために移動又は変更した鉄筋の情報を反映させて更新した3次元配筋モデルに基づいて、次にコンクリートが打設される当該コンクリート打設ロットに配筋される鉄筋の干渉をチェックして干渉を回避するようになっている。
【0037】
すなわち、本実施形態では、先行するコンクリート打設ロットにおいて干渉がチェックされて干渉を回避するために移動又は変更された鉄筋の情報は、その都度、後述する3次元配筋モデルの更新ステップS2jを介して、例えば3次元配筋システム10の鉄筋配置処理部19に送られて、案件データ記憶部12から取り出された鉄筋干渉回避処理用の3次元配筋モデルの配筋を適宜修正することができるようになっている。本実施形態では、先行するコンクリート打設ロットで移動又は変更した鉄筋の情報を反映させて更新した修正後の3次元配筋モデルに基づいて、先行するコンクリート打設ロットの配筋を固定する上述のステップS2aを経た後に、次にコンクリートが打設される当該コンクリート打設ロットの鉄筋の干渉のチェックや回避を行うので、施工現場での配筋状況と遊離することなく、施工現場での配筋状況に即した、鉄筋の干渉を回避させるためのきめの細かい合理的な支援を行うことが可能になる。
【0038】
また、本実施形態では、先行するコンクリート打設ロットにおいて干渉を回避すべく移動又は変更した鉄筋の情報は、コンクリートが硬化した後に先行するコンクリート打設ロットから延設する、打ち継がれるコンクリート打設ロット間の接合鉄筋の位置や傾き等を実測して、これらの実測値を、実測値入力ステップS2kにおいて例えば3次元配筋システム10の入力部15から入力し、情報入力部18を介して鉄筋配置処理部19に取り込むことで、移動又は変更した鉄筋の情報が得られるようにすることもできる。これによって、施工現場での配筋状況をより正確に反映させた、鉄筋の干渉を回避させるためのさらにきめの細かい合理的な支援を行うことが可能になる。
【0039】
そして、本実施形態では、各コンクリート打設ロットにおける干渉チェック回避ステップS2は、さらに、干渉箇所の鉄筋を確認する干渉鉄筋確認ステップS2eと、干渉を回避すべき干渉箇所を選択して干渉している鉄筋を指定する干渉鉄筋指定ステップS2fと、所定の対応ルールから選択されたルールを、指定された鉄筋に対して実行する対応ルール実行ステップS2gと、対応ルール実行ステップS2gの後に再度干渉のチェックを行って干渉箇所の増減及び位置を確認する干渉再チェックステップS2hとを含んでいる。
【0040】
干渉チェック回避ステップS2の干渉鉄筋確認ステップS2eでは、3次元モデル化ステップS1で作成された3次元配筋モデルをコピーして得られ、さらに3次元配筋モデルの更新ステップS2jによって、先行するコンクリート打設ロットで干渉を回避すべく移動又は変更した鉄筋の情報を反映させた更新後の3次元配筋モデルに基づいて、各コンクリート打設ロット毎に各々干渉回避の検討範囲を設定し、干渉箇所の鉄筋を確認する。また、干渉鉄筋確認ステップS2eでは、これに先立つ干渉条件設定ステップS2cで設定された各コンクリート打設ロット毎の所定の対応ルールに従って、鉄筋の干渉をチェックする。
【0041】
干渉チェック回避ステップS2の干渉鉄筋指定ステップS2fでは、干渉鉄筋確認ステップS2eで確認された干渉箇所の鉄筋の干渉位置および鉄筋径、長さ、形状、主筋・配力筋の区別等の属性を確認すると共に、ユーザが、処理すべき鉄筋の干渉箇所を選択し、干渉を回避するために移動等させる鉄筋を指定する。
【0042】
干渉チェック回避ステップS2の対応ルール実行ステップS2gでは、干渉鉄筋指定ステップS2fで指定された干渉箇所の鉄筋を、所定の対応ルールに従って干渉が回避されるように移動等させる処理を行う。すなわち、上述の干渉条件設定ステップS2cで設定された各コンクリート打設ロット毎の所定の対応ルールから、ユーザが、良いと判断した対応ルールを選択して、選択した対応ルールを実行する。これらの対応ルールは、表示部13に表示させたり、印刷部14から出力させることで、ユーザに容易に選択させることができる。
【0043】
干渉チェック回避ステップS2の干渉再チェックステップS2hでは、対応ルール実行ステップS2gの後に再度干渉のチェックを行って、指定された鉄筋の移動等による処理の結果を評価する。すなわち、対応ルール実行ステップS2gによって指定した鉄筋が移動等することで、当該コンクリート打設ロットの配筋には、新たに干渉箇所が発生する場合もあるので、干渉再チェックステップS2hによって干渉箇所の増減及びこれらの位置を確認する。
【0044】
また、本実施形態では、干渉再チェックステップS2hの後に、チェック結果を表示部13に表示させたり、印刷部14から出力させて、現場担当者や鉄筋工等の現場作業員に、チェック後の配筋の品質を評価させる現場評価ステップS2iを含ませることもできる。これによって、実際には現場で組み立てることが困難な干渉回避後の配筋を回避できると共に、現場でより作業を行い易い干渉回避後の配筋を採用することが可能になって、さらに効果的に施工現場での鉄筋の組立作業を支援することが可能になる。
【0045】
ここで、干渉再チェックステップS2iによるチェック結果が採用できるものである場合には、干渉鉄筋指定ステップS2fに戻って別の干渉箇所の鉄筋を選択及び指定して、対応ルール実行ステップS2g及び干渉再チェックステップS2hを実行する。一方、干渉再チェックステップS24によるチェック結果が採用できないものである場合には、対応ルール実行ステップS2gに戻って対応ルールを選択し直して、選択した対応ルールを実行する。
【0046】
そして、各コンクリート打設ロットにおいて、鉄筋の干渉が確認されなくなるまで干渉チェック回避ステップS2の干渉鉄筋指定ステップS2f、対応ルール実行ステップS2g、及び干渉再チェックステップS2hの各ステップが、繰り返し行われることになる。
【0047】
また、上述のようにして、当該コンクリート打設ロットにおける配筋の干渉を回避させるために移動等させた鉄筋の情報は、3次元配筋モデルの更新ステップS2jにおいて鉄筋配置処理部19に送られて、3次元配筋モデルが適宜修正されることにより、3次元配筋モデルは順次更新されることになる。更新された3次元配筋モデルは、さらに次にコンクリートが打設されるコンクリート打設ロットの配筋の干渉を回避させるための配筋モデルとして用いられることになる。
【0048】
そして、上述の構成を備える本実施形態の3次元配筋システムによる現場配筋支援方法によれば、鉄筋コンクリート構造物30に配筋される鉄筋を、施工現場において干渉を回避しつつ効率良く組み立ててゆくことが可能なように効果的に支援することができる。
【0049】
すなわち、本実施形態の現場配筋支援方法によれば、3次元モデル化ステップS1と、3次元モデル化ステップS1で作成された3次元配筋モデルに基づいて、鉄筋コンクリート構造物30のコンクリート打設ロット毎に、所定の対応ルールに従って、配筋される鉄筋の干渉をチェックすると共にチェックされた鉄筋の干渉を回避させる干渉チェック回避ステップS2とを含んでおり、この干渉チェック回避ステップS2では、先行するコンクリート打設ロットにおいて干渉を回避すべく移動又は変更した鉄筋の情報を反映させて更新した3次元配筋モデルに基づいて、次のコンクリート打設ロットにおける鉄筋の干渉をチェックして干渉を回避するようになっているので、実際の施工現場での配筋状況と遊離することなく、実際の施工現場で鉄筋同士の干渉を効率良く回避しながら、高度な熟練を要することなく作業員がスムーズに配筋作業を行ってゆけるように適正に支援することが可能になる。
【0050】
また、本実施形態の3次元配筋システムによる現場配筋支援方法は、上記各ステップをコンピュータ11に実行させるための現場配筋支援プログラムを組み込むことによって、容易に実施させることが可能である。
【0051】
なお、本発明は上記本実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、本発明の現場配筋支援方法は、橋脚構造物以外の、コンクリート打設ロット毎にコンクリートが打設されるその他の種々の鉄筋コンクリート構造物において、施工現場での配筋作業を支援するべく採用することができる。また、所定の対応ルールは、鉄筋コンクリート構造物のコンクリート打設ロット毎に設定する必要は必ずしもない。
【符号の説明】
【0052】
10 3次元配筋システム
11 コンピュータ
12 条件データ記憶部
13 表示部
14 印刷部
15 入力部
16 CADシステム
17 対応ルール記憶部
18 情報入力部
19 鉄筋配置処理部
20 干渉チェック回避処理部
30 橋脚構造物(鉄筋コンクリート構造物)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元配筋プログラムが組み込まれた3次元配筋システムによる現場配筋支援方法であって、
構築すべき鉄筋コンクリート構造物に配筋される鉄筋の3次元配筋モデルを作成する3次元モデル化ステップと、
作成された3次元配筋モデルに基づいて、前記鉄筋コンクリート構造物のコンクリート打設ロット毎に、所定の対応ルールに従って、配筋される鉄筋の干渉をチェックすると共にチェックされた鉄筋の干渉を回避させる干渉チェック回避ステップとを含んでおり、
該干渉チェック回避ステップでは、先行するコンクリート打設ロットにおいて干渉を回避すべく移動又は変更した鉄筋の情報を反映させて更新した3次元配筋モデルに基づいて、次のコンクリート打設ロットにおける鉄筋の干渉をチェックして干渉を回避する3次元配筋システムによる現場配筋支援方法。
【請求項2】
前記所定の対応ルールは、前記鉄筋コンクリート構造物のコンクリート打設ロット毎に設定される請求項1記載の3次元配筋システムによる現場配筋支援方法。
【請求項3】
前記チェックされた鉄筋の干渉を回避させる所定の対応ルールは、干渉チェックが不要な鉄筋を除外すること、及び鉄筋径毎に干渉と判断する基準を設定することを含む請求項1又は2記載の3次元配筋システムによる現場配筋支援方法。
【請求項4】
前記先行するコンクリート打設ロットにおいて干渉を回避すべく移動又は変更した鉄筋の情報は、コンクリートを打設した後に当該先行するコンクリート打設ロットから延設する鉄筋の実測値を入力することで得られる請求項1〜3のいずれかに記載の3次元配筋システムによる現場配筋支援方法。
【請求項5】
各コンクリート打設ロットにおける前記干渉チェック回避ステップは、干渉箇所の鉄筋を確認する干渉鉄筋確認ステップと、干渉を回避すべき干渉箇所を選択して干渉している鉄筋を指定する干渉鉄筋指定ステップと、前記所定の対応ルールから選択されたルールを、指定された鉄筋に対して実行する対応ルール実行ステップと、該対応ルール実行ステップの後に再度干渉のチェックを行って干渉箇所の増減及び位置を確認する干渉再チェックステップとを含んでいる請求項1〜4のいずれかに記載の3次元配筋システムによる現場配筋支援方法。
【請求項6】
各コンクリート打設ロットにおいて、鉄筋の干渉が確認されなくなるまで前記干渉チェック回避ステップの前記干渉鉄筋指定ステップ、前記対応ルール実行ステップ、及び前記干渉再チェックステップを繰り返し行う請求項5に記載の3次元配筋システムによる現場配筋支援方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の3次元配筋システムによる現場配筋支援方法の各ステップをコンピュータに実行させるための現場配筋支援プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−253484(P2011−253484A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−128563(P2010−128563)
【出願日】平成22年6月4日(2010.6.4)
【出願人】(000140292)株式会社奥村組 (469)
【Fターム(参考)】