説明

3(4),7(8)−ジヒドロキシメチル−ビシクロ[4.3.0]ノナンおよびそれの製造方法

【課題】新規の3(4),7(8)−ジヒドロキシメチル−ビシクロ[4.3.0]ノナンおよびその製造方法の提供。
【解決手段】ビシクロ[4.3.0]ノナ−3,7−ジエンを、有機リン化合物を錯塩結合して含有する、元素周期律表の第VIII族の遷移金属化合物および過剰の有機リン化合物の存在下に均一な有機相中で合成ガスと70〜160℃の温度および5〜35MPaの圧力で反応させ、こうして得られた3(4),7(8)−ビスホルミル−ビシクロ[4.3.0]ノナンを次いで3(4),7(8)−ジヒドロキシメチル−ビシクロ[4.3.0]ノナンに水素化することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は3(4),7(8)−ジヒドロキシメチル−ビシクロ[4.3.0]ノナンおよびそれをビシクロ[4.3.0]ノナ−3,7−ジエンから製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
環中に孤立二重結合を有する縮合された脂環式不飽和炭化水素は、重要な用途のある化合物に転化される価値ある原料である。この場合、環状に構成され且つ縮合された炭化水素骨格は特別な性質を与える。これらの化合物群の重要な一つの例には、シクロペンタジエンの二量体化によって簡単に製造できそして工業的規模でも製造されるジシクロペンタジエン(DCP)があり、このものは用途のある重要な化合物に転化される。それのトリシクロデカン骨格は特別な性質を付与する。DCPから誘導される、トリシクロデカン構造を有する化合物は文献でしばしばTCD−誘導体とも称されている(Chemiker-Zeitung、98、1974、第 70 〜 76頁参照)。
【0003】
特にDCPのヒドロホルミル化は、TCD−ジアルデヒドとも称される3(4),7(8)−ビスホルミル−トリシクロ[5.2.1.02.6]デカンの様な興味あるTCD−アルデヒドをもたらす。この化合物は重要な中間生成物に更に加工される。蒸留処理の過程で損失を生じさせる熱不安定性のためにTCD−ジアルデヒドは殆ど純粋な状態で単離されずに、ヒドロホルミル化反応の粗生成物として更なる加工に供される。例えばTCD−ジアルデヒドはTCD−アルコールDMの{3(4),7(8)−ジヒドロキシメチル−トリシクロ[5.2.1.02.6]デカン}に水素化される。このものは化学工業のための重要な中間生成物として経済的な多大な重要性を有している。この二価のアルコールは種々の用途で多様に工業的に非常に興味のあるものである。即ち、酸素排除下に硬化するアクリル酸エステル接着剤の成分としての、OH−基含有トリシクロデカノール類のアクリル酸エステルあるいはメタクリル酸エステル(ドイツ特許出願公開第2,200,021A号明細書);接着剤およびシーラントを製造するための、エーテル基含有三環デカノールの(メタ)アクリル酸エステル(ヨーロッパ特許出願公開第23,686A2号明細書);可塑剤および高価値のエステル系潤滑剤として適するトリシクロデカン類のエステルおよびポリエステル(ドイツ特許第934,889C号明細書);香料成分(ドイツ特許出願公開第2,307,327A1号明細書)および金属塗装分野での酸性耐殺菌性ポリエステル塗料(ドイツ特許第3,134,640C1号明細書)に使用される。
【0004】
一酸化炭素と水をオレフィン性二重結合に接触的に付加することによってアルデヒドを製造することは公知である。この反応は以前には触媒として殆ど専らコバルトを用いて実施されてきたが、最近の方法では触媒として単独でまたは錯塩形成性リガンド、例えば有機ホスフィンまたは亜リン酸のエステルと一緒に使用される金属ロジウムまたはロジウム化合物を用いて実施されている。業界での共通の意見によれば、反応条件のもとで有効な触媒は一般式H(Rh(CO)4−x)で表されるロジウムのヒドリドカルボニル化合物である。上記式中、Lはリガンドを意味しそしてxは0または1〜3の整数である。
【0005】
特別な場合はジエンをヒドロホルミル化するものである。ヒドロホルミル化の場合には共役ジエンからオキソ合成の通例の条件の下で専らモノアルデヒドが得られるが、孤立二重結合を持つジシクロペンタジエン(DCP)からはモノ置換生成物の他にジ置換生成物も製造される。DCPのヒドロホルミル化生成物は非常に重要なので、DCPのヒドロホルミル化反応並びに粗生成物の後続の後処理に関する沢山の方法が文献に掲載されている。例えばドイツ特許出願公開第3,822,038号(A1)明細書および英国特許第1,170,226号明細書では、DCPをロジウムの存在下に有機溶剤中で高温高圧のもとでヒドロホルミル化することを提案している。ジシクロペンタジエンのヒドロホルミル化についての総括的説明は“Chemiker-Zeitung 98”、1974、第70〜76頁にあり、ここでも粗ヒドロホルミル化混合物の蒸留処理の際に多大な生成物損失をもたらすTCD−アルデヒドの熱不安定性が同様に言及されている。それ故にTCD−ジアルデヒドは殆ど純粋の状態では単離されず、オキソ合成の副生成物との混合物の状態で更に加工される。従来技術、例えばヨーロッパ特許出願公開第1,065,194号(A1)明細書および米国特許第5,138,101号(A)明細書には熱を負荷せずに抽出処理する方法に言及されている。この場合には極性の有機溶剤、例えば多価アルコールまたはメタノール/水−混合物で有機系粗混合物が抽出処理され、その際にTCD−ジアルデヒドが極性のアルコール相中に移りそしてヒドロホルミル化触媒が炭化水素相中に残留する。
【0006】
多方面の用途のためにTCD−アルコール−DMは経済的に非常に興味が持たれ、特許文献でそれの製法が沢山提案されている。
【0007】
米国特許第4,647,708A号明細書は、触媒としてRhを用いてジシクロペンタジエンをイオン交換体(Dowex(R) MWA-1)の存在下に溶剤としてのトルエン/THF中でヒドロホルミル化することが記載されている。この反応は120℃、27.5MPa(CO/H−比=1.2)で二つの別々に連続運転されるオートクレーブ中で行われる。開示された実験結果によれば、TCD−アルコール−DMの収率が30日の実験期間の間に85%から65%に低下することが判る。従ってこの反応系は工業的用途には適していない。
【0008】
米国特許第4,262,147A号明細書には、Amberlite(R) IRA-68の様な樹脂の上の二成分金属Rh/Co−クラスターを使用することを開示している。使用された条件(110℃、11MPa、8時間)の下で、68%のTCD−アルコールDM選択率が一段階合成で得られる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
それ故に、縮合された脂環式炭化水素をベースとするジオールが経済的に非常に重要なので、縮合された環を持つ環状構造化された炭化水素骨格を持つジオールを高純度で更に価格的に有利に製造するという要求がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は化合物の3(4),7(8)−ジヒドロキシメチル−ビシクロ[4.3.0]ノナンに関する。
【0011】
本発明は同様に、ビシクロ[4.3.0]ノナ−3,7−ジエンをヒドロホルミル化し次いで水素化することによって3(4),7(8)−ジヒドロキシメチル−ビシクロ[4.3.0]ノナンを製造する方法に関し、ビシクロ[4.3.0]ノナ−3,7−ジエンを、有機リン化合物を錯塩結合して含有する、元素周期律表の第VIII族の遷移金属化合物および過剰の有機リン化合物の存在下に均一な有機相中で合成ガスと70〜160℃の温度および5〜35MPaの圧力で反応させ、こうして得られた3(4),7(8)−ビスホルミル−ビシクロ[4.3.0]ノナンを次いで3(4),7(8)−ジヒドロキシメチル−ビシクロ[4.3.0]ノナンに水素化することを特徴とする。
【0012】
本発明の化合物は、ブタジエンとシクロペンタジエンとのディールス・アルダー反応によって工業的に製造されそしてそれゆえに価格的に有利な量で容易に製造されるビシクロ[4.3.0]ノナ−3,7−ジエンから誘導される。
【0013】
不飽和の二環式炭化水素中に結合した炭素原子の番号付けは次の順序に従う:
【化1】

【0014】
ただし両方の構造式は同一である。
【0015】
本発明の化合物の3(4),7(8)−ジヒドロキシメチル−ビシクロ[4.3.0]ノナンは、六員環中のヒドロキシメチル基が3−位または4−位に一つありそして五員環のヒドロキシメチル基が7−位または8−位で結合していてもよい種々の異性体の混合物である。
【0016】
Chemiker-Zeitung、98、1974、第70〜76頁に従うTCD−誘導体についての慣用の表示法と同様に本発明の化合物の3(4),7(8)−ジヒドロキシメチル−ビシクロ[4.3.0]ノナンは次の様な式で記載することができる:
【化2】

【0017】
ただし両方の構造式は同一である。
【0018】
出発生成物のビシクロ[4.3.0]ノナ−3,7−ジエンはそのままでまたは溶液状態でヒドロホルミル化に供給することができる。適する溶剤は、出発物質、反応生成物および触媒を溶解しそして反応条件のもので不活性の挙動を示すものであり、例えば水不溶性のケトン、ジアルキルエーテル、脂肪族ニトリル、芳香族炭化水素、例えばベンゼン、トルエン、キシレンの各異性体またはメシチレン、および飽和脂環式炭化水素、例えばシクロペンタンまたはシクロヘキサン、または飽和脂肪族炭化水素、例えばn−ヘキサン、n−ヘプタンまたはn−オクタンである。反応媒体中の溶剤の割合は広い範囲で変更することができ、反応混合物を規準として一般に10〜80重量%、好ましくは20〜50重量%である。
【0019】
ヒドロホルミル化段階は均一な反応系で実施する。均一な反応系とは、場合によっては反応段階で添加される溶剤、触媒、過剰の有機燐化合物、未反応出発化合物およびヒドロホルミル化生成物で実質的に組成される均一な溶液を意味する。
【0020】
触媒としては、錯塩結合した有機燐化合物を含有する、元素周期律表の第VIII族の遷移金属化合物を用いる。殊にコバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、鉄、白金、パラジウムまたはルテニウムの錯塩化合物、特にコバルト、ロジウムおよびイリジウムの錯塩化合物を使用するのが有利である。中でも、リガンドとして有機燐(III)-化合物を含有するロジウム錯塩化合物を用いるのが有利である。この種の錯塩化合物およびそれの製造法は例えば米国特許第3,527,809(A)号明細書、同第4,148,830(A)号明細書、同第4,247,486(A)号明細書、同第4,283,562(A)号明細書から公知である。これらは1種類の錯塩化合物としてもまたは種々の錯塩化合物の混合物としても使用することができる。反応媒体中のロジウム濃度は均一な反応混合物を規準として、5〜1000重量ppmの範囲内にあり、好ましくは10〜700重量ppmである。均一な反応混合物を規準として、20〜500重量ppmの濃度でロジウムを使用するのが特に有利である。ヒドロホルミル化はロジウム−有機燐錯塩化合物と遊離の、即ちロジウムと一緒に錯塩化合物中に入り込んでいない過剰の有機燐リガンドとよりなる触媒系の存在下に実施する。遊離の有機燐リガンドはロジウム錯塩化合物中のものと同じでもよいし、これと異なるリガンドを使用してもよい。遊離リガンドは一様な化合物であってもまたは異なる有機燐化合物の混合物で組成されていてもよい。触媒として使用できるロジウム−有機燐錯塩化合物の例は米国特許第3,527,809(A)明細書に記載されている。ロジウム−錯塩触媒中の特に有利なリガンドには例えばトリフェニルホスフィンの様なトリアリールホスフィン;トリアルキルホスフィン、例えばトリ(n−オクチル)−ホスフィン、トリラウリルホスフィン、トリ−(シクロヘキシル)−ホスフィン;アルキルアリールホスフィン;アルキルホスフィット;アリールホスフィット;アルキルジホスフィットおよびアリールジホスフィットがある。例えば一般式
P(OR1)(OR2)(OR3)
[式中、R1、R2およびR3はオルト位で置換されたフェニル環である。]
で表されるアリールホスフィットを錯塩結合して含有するロジウム錯塩化合物も同様に使用できる。適する錯塩リガンドとしてはトリス(2−第三ブチルフェニル)ホスフィットまたはトリス(2−第三ブチル−4−メチルフェニル)ホスフィットが実証されている。ホスフィットで変性された錯塩化合物を用いてオレフィンをロジウムの触媒作用でヒドロホルミル化することはヨーロッパ特許出願公開第0,054,986(A1)号明細書から公知である。容易に入手できることからトリフェニルホスフィンが特に有利によく使用される。
【0021】
一般に、均一な反応混合物中でのロジウムと燐とのモル比は1:5〜1:200であるが、有機燐化合物の状態の燐のモル割合は更に多くても良い。ロジウムと、有機的に結合した燐とは1:10〜1:100のモル比で使用するのが有利である。
【0022】
ヒドロホルミル化段階においてロジウム以外の周期律表の第VIII族の遷移金属を使用する場合には、遷移金属の濃度および遷移金属と燐とのモル比は、ロジウムの場合にも選択される範囲内にある。個別での最適な値はその都度に使用される遷移金属毎に簡単な予備実験によって決められる。
【0023】
ヒドロホルミル化が進められる条件は広い範囲で変更することができ、個々の状況に適合させることができる。このような条件は中でも、使用される材料、選択される触媒系および意図する転化率に左右される。一般にビシクロ[4.3.0]ノナ−3,7−ジエンのヒドロホルミル化は70〜160℃の温度で実施する。特に80〜150℃の温度、中でも90〜140℃の温度を維持するのが有利である。全圧は5〜35MPa、好ましくは10〜30MPa、特に好ましくは20〜30MPaの範囲内にある。水素と一酸化炭素とのモル比は一般に1:10〜10:1の間で変動し、水素と一酸化炭素とを3:1〜1:3、特に約1:1のモル比で含有する混合物が特に適している。
【0024】
触媒は一般に遷移金属または遷移金属化合物、有機燐化合物および合成ガスからヒドロホルミル化反応の条件のもとで反応混合物中で形成する。しかしながら触媒を最初に予め形成し、それを次いで個々のヒドロホルミル化段階に供給することも可能である。この場合、予備形成の条件は一般にヒドロホルミル化条件に一致している。
【0025】
ヒドロホルミル化触媒を製造するために、元素周期律表の第VIII族の遷移金属、特にロジウムを金属の状態でまたは化合物として使用する。遷移金属は、金属の状態では微細粒子としてまたは担体、例えば活性炭、炭酸カルシウム、珪酸アルミニウム、アルミナ等に薄い層として担持させて使用する。遷移金属化合物としては脂肪族のモノおよびポリカルボン酸の塩、例えば遷移金属−2−エチルヘキサノエート、−酢酸塩、−蓚酸塩、−プロピオン酸塩または−マロン酸塩等が適している。更に無機系水素酸および酸素酸の塩、例えば硝酸塩または硫酸塩、種々の遷移金属酸化物または遷移金属カルボニル化合物、例えばRh3(CO)12、Rh6(CO)16、Co2(CO)8、Co4(CO)16、Fe(CO)5、Fe2(CO)9、Ir2(CO)8、 Ir4(CO)12等、または遷移金属錯塩化合物、例えばシクロペンタジエニル−ロジウム化合物、ロジウムアセチルアセトナート、シクロペンタジエニル−コバルト−シクロオクタジエン−1,5、Fe(CO)3−シクロオクタジエン−1,5、[RhCl(シクロオクタジエン−1,5)]2 またはPtCl2(シクロオクタジエン−1,5)を使用することができる。遷移金属ハロゲン化合物はハロゲン化物イオンの腐食挙動のためにあまり適していない。
【0026】
特に遷移金属酸化物、中でも遷移金属アセテートおよび−2−エチルヘキサノエートが特に適している。酸化ロジウム、酢酸ロジウム、2−エチルヘキサン酸ロジウム、酸化コバルト、酢酸コバルトおよび2−エチルヘキサン酸コバルトが特に適していることが判っている。
【0027】
ヒドロホルミル化段階は不連続的にも連続的にも実施することができる。本発明の方法によれば原料オレフィンのビシクロ[4.3.0]ノナ−3,7−ジエンが殆ど完全に反応しそして、粗ヒドロホルミル化生成物を規準として一般に75重量%以上の高含有量で所望のビスホルミル生成物を含有する粗ヒドロホルミル化生成物が得られる。
【0028】
ヒドロホルミル化段階の反応生成物は一般に更に精製することなしにおよび触媒を分離せずに水素化段階に供給される。
【0029】
3(4),7(8)−ビスホルミル−ビシクロ[4.3.0]ノナンを3(4),7(8)−ジヒドロキシメチル−ビシクロ[4.3.0]ノナンへの水素化は、一般的な通例の反応条件のもとで慣用の水素化触媒の存在下に行う。一般に水素化温度は70〜170℃でありそして使用される圧力は1〜30MPaである。水素化触媒としてはニッケル触媒が特に適している。
【0030】
触媒作用する活性の金属は担体に担持されていてもよく、一般に触媒全重量を規準として約5〜約70重量%、好ましくは約10〜約65重量%、特に好ましくは約20〜約60重量%である。触媒用担体としてはあらゆる慣用の担体材料が適しており、例えば酸化アルミニウム、色々な形態の水酸化アルミニウム、二酸化珪素、珪藻土を含めたポリ珪酸(シリカゲル)、シリカキセロゲル類(silica xerogels)、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウムおよび活性炭が適する。主成分のニッケルおよび担体材料の他に、触媒は添加物を二次的な量で含有していてもよい。それには例えばそれの水素化活性および/またはそれの寿命および/またはそれの選択性を向上させる働きをするものがある。この種の添加物は公知であり、それらには例えばナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、亜鉛、アルミニウム、ジルコニウムおよびクロムの酸化物がある。これらは触媒に100重量部のニッケルを規準として一般に合計で0.1〜50重量部の割合で添加される。
【0031】
しかしながら担持されていない触媒、例えばラネーニッケルまたはラネーコバルトも水素化段階で使用することができる。
【0032】
水素化段階は、懸濁された触媒を含有する液相においてまたは固定触媒床を用いて液相または気相で不連続的にもまたは連続的にも実施される。連続的に実施するのが特に有利である。
【0033】
不連続的方法の場合には3(4),7(8)−ビスホルミル−ビシクロ[4.3.0]ノナンを規準として1〜10重量%、好ましくは2〜6重量%のニッケルを上述の触媒の状態で使用する。連続的に実施する場合には、1Lの触媒当たりで1時間当たりに約0.05〜約5.0kgの3(4),7(8)−ビスホルミル−ビシクロ[4.3.0]ノナンが使用される。特に好ましくは1Lの触媒当たりで1時間当たりに約0.1〜2.0kgの3(4),7(8)−ビスホルミル−ビシクロ[4.3.0]ノナンを使用する。
【0034】
水素化は好ましくは純粋の水素を用いて行うのが有利である。しかしながら遊離水素、およびその他に水素化条件のもとで不活性である成分を含有する混合物も使用することができる。いずれの場合にも、水素化ガスは硫黄化合物または一酸化炭素のような触媒毒を有害な量で含有しない様に注意するべきである。
【0035】
粗3(4),7(8)−ビスホルミル−ビシクロ[4.3.0]ノナンは、そのままでまたは溶剤または希釈剤と一緒に使用してもよい。その際に後者の変法は生成されるジオールが高い粘度であるために特に有利である。溶剤または希釈剤を添加する場合には、純粋な物質または物質混合物でもよい溶剤または希釈剤を選択することもできる。使用物質および反応生成物と均一な溶液を形成することが保証される限り制限はない。適する溶剤または希釈剤の例には直鎖状のまたは環状のエーテル、例えばテトラフルオロフランまたはジオキサン、並びに脂肪族アルコール、例えばメタノール、エタノール、ブタノールおよびイソブタノールがある。使用される溶剤または希釈剤の量は装置および方法技術的環境に相応して自由に選択することができ、一般に10〜75重量%の3(4),7(8)−ビスホルミル−ビシクロ[4.3.0]ノナンを含有する溶液を使用する。
【0036】
純粋な3(4),7(8)−ジヒドロキシメチル−ビシクロ[4.3.0]ノナンの製造は慣用の蒸留法によって行う。環状ジオールは頂部生成物として引き出される。ヒドロホルミル化段階で使用される遷移金属の残量は蒸留残さとして生じ、公知の方法に従って回収される。
【0037】
ビシクロ[4.3.0]ノナ−3,7−ジエンのヒドロホルミル化の反応生成物は最初に連続法で蒸留しそして純粋な生成物として水素化してもよい。驚くべきことに3(4),7(8)−ビスホルミル−ビシクロ[4.3.0]ノナンは純粋な状態で高い蒸留収率で得ることができる。このことは、従来技術では縮合された脂環式環構造を持つジアルデヒドが熱不安定であることが指摘されていたので驚くべきことである。遷移金属、好ましくはロジウムおよび添加された有機燐化合物は蒸留残さ中に得られそして公知の方法で回収される。精製された3(4),7(8)−ビスホルミル−ビシクロ[4.3.0]ノナンの続く水素化は粗ヒドロホルミル化生成物の反応の場合と同様に行う。
【0038】
本発明の方法は簡単に且つ経済的に3(4),7(8)−ジヒドロキシメチル−ビシクロ[4.3.0]ノナンを高収率で且つ高純度でもたらす。本発明の方法に従って製造されるジオールは色々な用途で有利に使用され、例えばポリウレタン、ポリエステルまたはアクリル酸エステルにおける成分として並びに可塑剤または潤滑剤として使用される二次精製物の製造に使用される。
【0039】
以下に本発明の方法を実施例によって更に詳細に説明するが、本発明は記載した実施例に限定されない。
[実施例]
3(4),7(8)−ジヒドロキシメチル−ビシクロ[4.3.0]ノナンの製造:
【実施例1】
【0040】
3(4),7(8)−ビスホルミル−ビシクロ[4.3.0]ノナンの製造:
マグネットスタラーを含有するスチール製オートクレーブ中に、1000gの工業用品質のビシクロ[4.3.0]ノナ−3,7−ジエンおよび1000gのトルエンを最初に導入する。12.75gのトリフェニルホスフィン並びに50mgのRh(7062mgのRh/gの含有量のRh−2−エチルヘキサン酸塩のトルエン溶液の状態)の添加後に、この混合物を130℃に加熱し、26MPaの圧力のもとで合成ガスで処理する。8時間の反応時間の後に、ヒドロホルミル化反応を終了する。
【0041】
有機相をガスクロマトグラフィーで試験する:
GC−分析(トルエンなしでの面積%)
初留成分 0.2
ビシクロ[4.3.0]ノナ−3,7−ジエン領域 0.1
各成分 4.6
3(4),7(8)−ビスホルミル−ビシクロ[4.3.0]ノナン 89.1
トリフェニルホスフィン/トリフェニルホスフィンオキシド 1.2
高沸点成分 4.8
【実施例2】
【0042】
3(4),7(8)−ジヒドロキシメチル−ビシクロ[4.3.0]ノナンの製造:
ヒドロホルミル化の後で得られる粗3(4),7(8)−ビスホルミル−ビシクロ[4.3.0]ノナンから、薄層蒸発器での蒸留によって殆どトルエンを留去する(ジャケット温度:140℃、圧力:100hPa)。ガスクロマトグラフィー分析によると6.7%のトルエンおよび83.8%の3(4),7(8)−ビスホルミル−ビシクロ[4.3.0]ノナンの他に未だ9.5%の成分を含有している残留物が得られる。次いでこの残留物700gをイソブタノール300gで希釈し、そして42gのJohnson Matthey Plc社のNi 52/35−触媒を3Lのオートクレーブ中に最初に導入する。反応混合物を130℃に加熱し、10.0MPaの圧力のもとで8時間の反応時間反応させる。反応終了後に冷却し、圧力開放しそして触媒を濾去する。こうして得られる反応生成物をガスクロマトグラフィー分析する。
GC−分析(面積%):
初留成分 1.3%
イソブタノール/トルエン/メチルシクロヘキサン 29.2%
3(4),7(8)−ジヒドロキシメチル−ビシクロ[4.3.0]ノナン
62.8%
その他 6.7%
後処理するために粗水素化生成物をクライゼン蒸留システムを用いて蒸留する。825.3gを使用した場合には、1hPaの圧力で178〜179℃の沸点範囲の主要留分459.3gが得られ、以下の組成を有している:
GC−分析(面積%):
初留成分 0.1%
3(4),7(8)-ジヒドロキシメチル-ビシクロ[4.3.0]ノナン 97.3%
その他 2.6%
全段階に亙っての3(4),7(8)−ジヒドロキシメチル−ビシクロ[4.3.0]ノナンの総収率はビシクロ[4.3.0]ノナ−3,7−ジエンを規準として理論値の79.6%である。
【0043】
特徴:
元素分析
C11H20O2 (184,3):計算値 C 71.7 %、H 10.9 %、O 17.3 %
測定値 C 70.6 %、H 10.5 %、O 16.7 %
NMR−データ:
1H-NMR (500 MHz, DMSO-d6, ppm): 0,60-2,20 (m, 14 H, CH およびCH2), 3,18-3,43 (m, 4H, CH2O)、4,32 (s, 2 H, OH)
13C-NMR (125 MHz, DMSO-d6, ppm): 23.46〜48.82 (CH およびCH2)、62.39〜66.80 (CH2OH)
IR−データ(Diamant−ATR−IR分光分析):
n (cm-1) 3306 (m, br)、2911 (s)、2855 (s)、1445 (w)、1030 (s)
60℃での密度… 1.051g/cm
60℃での屈折率N … 1.5000
本発明の方法は、高収率で3(4),7(8)−ジヒドロキシメチル−ビシクロ[4.3.0]ノナンを製造する卓越したルートを明らかにした。新規の化合物の3(4),7(8)−ジヒドロキシメチル−ビシクロ[4.3.0]ノナンは縮合された環を持つ脂環式環構造を有し、ポリウレタン、ポリエステルまたはアクリル酸エステルの成分として明らかに適している。同様に可塑剤および潤滑剤として使用される二次製品を製造するのにも使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビシクロ[4.3.0]ノナ−3,7−ジエンをヒドロホルミル化し次いで水素化することによって3(4),7(8)−ジヒドロキシメチル−ビシクロ[4.3.0]ノナンを製造する方法において、ビシクロ[4.3.0]ノナ−3,7−ジエンを、有機リン化合物を錯塩結合して含有する、元素周期律表の第VIII族の遷移金属化合物および過剰の有機リン化合物の存在下に均一な有機相中で合成ガスと70〜160℃の温度および5〜35MPaの圧力で反応させ、こうして得られた3(4),7(8)−ビスホルミル−ビシクロ[4.3.0]ノナンを次いで3(4),7(8)−ジヒドロキシメチル−ビシクロ[4.3.0]ノナンに水素化することを特徴とする、上記方法。
【請求項2】
有機燐化合物としてトリアリールホスフィン、トリアルキルホスフィン、アルキルアリールホスフィン、アルキルホスフィット、アリールホスフィット、アルキルジホスフィットまたはアリールジホスフィットよりなる群から選択される有機燐(III)化合物を使用する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
トリアリールホスフィンとしてトリフェニルホスフィンをそしてアリールホスフィットとしてトリス(2−第三ブチルフェニル)ホスフィットまたはトリス(2−第三ブチル−4−メチルフェニル)ホスフィットを使用する、請求項2の方法。
【請求項4】
元素周期律表の第VIII族の遷移金属化合物として、ロジウム、コバルト、イリジウム、ニッケル、パラジウム,白金、鉄またはルテニウムの化合物を使用する、請求項1〜3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
元素周期律表の第VIII族の遷移金属化合物として、ロジウムの化合物を使用する、請求項1〜4のいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
ロジウムを均一反応混合物を規準として5〜1000重量ppmの濃度で使用する、請求項1〜5のいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
ロジウムを均一反応混合物を規準として10〜700重量ppm、好ましくは20〜500重量ppmの濃度で使用する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ロジウムと燐とのモル比が1:5〜1:200である、請求項1〜7のいずれか一つに記載の方法。
【請求項9】
ロジウムと燐とのモル比が1:10〜1:100である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ヒドロホルミル化の際に80〜150℃の温度、好ましくは90〜140℃の温度でそして10〜30MPa、好ましくは20〜30MPaの圧力で実施する、請求項1〜9のいずれか一つに記載の方法。
【請求項11】
水素化をニッケル触媒の存在下に70〜170℃の温度および1〜30MPaの圧力で実施する、請求項1〜10のいずれか一つに記載の方法。
【請求項12】
3(4),7(8)−ジヒドロキシメチル−ビシクロ[4.3.0]ノナンなる化合物。

【公開番号】特開2007−204470(P2007−204470A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−17460(P2007−17460)
【出願日】平成19年1月29日(2007.1.29)
【出願人】(398010667)セラニーズ・ケミカルズ・ヨーロッパ・ゲゼルシヤフト・ミト・ベシユレンクテル・ハフツング (11)
【Fターム(参考)】