説明

3,4−ジヒドロミルベマイシン誘導体及びその製造方法

【課題】優れた殺ダニ、殺虫、駆虫活性を示す、3,4−ジヒドロミルベマイシン誘導体、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】一般式(I):


(式中RはC〜Cアルキル基を示し、Xは水素又は2−メトキシイミノ−2−フェニルアセトキシ基を示すが、Rがメチル基の場合はXは水素を示さない)で表される新規な3,4−ジヒドロミルベマイシン誘導体、及びその製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は優れた殺ダニ、殺虫、もしくは駆虫活性を有する新規な3,4−ジヒドロミルベマイシン化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
ストレプトミセス属のB−41−146菌株より単離された一群のマクロライド系化合物は特開昭50−29742号公報において、B−41と称され、9種類の化合物が開示されている。その後、B−41はミルベマイシンとも称され、類縁の化合物が相次いで発見された。例えば、特開昭56−32461号、同57−77686号、同57−136585号の各公報、及び、J.Antibiotics 36巻(1983年)980−990頁に記載されている。また、16員環マクロライド化合物であって、ミルベマイシン類に類似する化合物が、特開昭52−151197号、同57−59892号、同57−150699号、同58−52300号、同61−10589号、同61−118387号の各公報、及び、英国特許公報第2170499号に開示されている。
【0003】
ストレプトミセス属のB−41−146菌株の菌学的性質については特開昭50−29742号公報に詳しく記載され、ストレプトミセス属のB−41−146菌株は工業技術院微生物工業研究所(現特許生物寄託センター)に寄託されており、その微生物受託番号は微工研菌寄第1438号である。
【0004】
また、下記の構造式(III):
【0005】
【化3】

【0006】
で表される3,4−ジヒドロアベルメクチンB(式中Rはメチル基又はエチル基を示す)は、Journal of Medicinal Chemistry 23巻(1980年)1134-1136頁に記載されている。しかし、この化合物は、13位に2糖側鎖を有するアベルメクチン類であり、本発明記載の化合物とは異なる。
【0007】
また、下記の構造式(IV):
【0008】
【化4】

【0009】
で表される3,4−ジヒドロ−5α−ヒドロキシミルベマイシンDは、Journal of American Chemical Society 118巻(1996年)7513-7528頁に記載されている。しかし、この化合物は5位水酸基立体がα体であり、本発明記載の化合物とは異なる。又、本化合物は合成中間体として記載されるにとどまり、その生物活性などについては一切言及されていない。
【0010】
また、下記の構造式(V):
【0011】
【化5】

【0012】
で表される3,4−ジヒドロミルベマイシンGは、Synlett(1992年)840-842頁に記載されている。しかし、この化合物は5位水酸基がメチル化されており、本発明記載の化合物とは異なる。又、その生物活性などについては一切言及されていない。
【0013】
また、下記の構造式(VI):
【0014】
【化6】

【0015】
で表される3,4−ジヒドロミルベマイシンAは、Tetrahedron Letters 34巻(1993年)7479-7482頁に記載されている。しかし、この化合物は13位置換基が水素であると同時に、25位置換基がメチル基であり、本発明記載の化合物とは異なる。又、本化合物は合成中間体として記載されるにとどまり、その生物活性などについては一切言及されていない。
【特許文献1】特開昭50−29742号
【特許文献2】特開昭56−32461号
【特許文献3】特開昭57−77686号
【特許文献4】特開昭57−136585号
【特許文献5】特開昭52−151197号
【特許文献6】特開昭57−59892号
【特許文献7】特開昭57−150699号
【特許文献8】特開昭58−52300号
【特許文献9】特開昭61−10589号
【特許文献10】特開昭61−118387号
【特許文献11】英国特許公報第2170499号
【非特許文献1】J.Antibiotics 36巻(1983年)980-990頁
【非特許文献2】Journal of Medicinal Chemistry 23巻(1980年)1134-1136頁
【非特許文献3】Journal of American Chemical Society 118巻(1996年)7513-7528頁
【非特許文献4】Synlett(1992年)840-842頁
【非特許文献5】Tetrahedron Letters 34巻(1993年)7479-7482頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明が解決しようとする課題は、優れた殺ダニ、殺虫、もしくは駆虫活性を有する新規なミルベマイシン化合物及を開発することである。上記課題を解決するために本願発明者らは鋭意研究を重ねた結果、新たに一連の新規な3,4−ジヒドロミルベマイシン誘導体及びその製造方法を見出し本発明の完成に至った。
【課題を解決するための手段】
【0017】
すなわち、本発明は下記の一般式(I)
【0018】
【化7】

【0019】
(式中RはC〜Cアルキル基を示し、Xは水素又は2−メトキシイミノ−2−フェニルアセトキシ基を示すが、但しRがメチル基かつXが水素である場合を除く)で表される新規な3,4−ジヒドロミルベマイシン誘導体に関するものである。
【0020】
本発明は、上記一般式(I)において、Rがメチル又はエチル基を示し、Xは2−メトキシイミノ−2−フェニルアセトキシ基を示す、上記の3,4−ジヒドロミルベマイシン誘導体に関する。
【0021】
本発明は、上記の3,4−ジヒドロミルベマイシン誘導体を有効成分として含有する、殺ダニ剤、殺虫剤又は駆虫剤に関する。
【0022】
本発明は、下記の一般式(II):
【0023】
【化8】

【0024】
(式中RはC〜Cアルキル基を示し、Xは水素又は2−メトキシイミノ−2−フェニルアセトキシ基を示すが、但しRがメチル基かつXが水素である場合を除く)で示される5−デオキシ−5−オキソミルベマイシン誘導体を、ヒドリド試薬により還元することを特徴とする上記の3,4−ジヒドロミルベマイシン誘導体の製造方法に関する。
【0025】
本発明は、上記一般式(II)の還元において使用するヒドリド試薬が水素化ホウ素ナトリウムである上記の3,4−ジヒドロミルベマイシン誘導体の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0026】
本発明の3,4−ジヒドロミルベマイシン誘導体である化合物(I)は優れた殺ダニ、殺虫、駆虫活性を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明を以下に詳細に説明する。
【0028】
上記一般式(I)で示される化合物(以後「化合物(I)」という。)において、RのC〜Cアルキル基としては、直鎖若しくは分岐鎖又は環状のC〜Cアルキル基が包含され、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、セカンダリーブチル、イソブチル、ターシャルブチル、ペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、1,1−ジメチルプロピル、1,2−ジメチルプロピル、2,2−ジメチルプロピル、1−エチルプロピル、ヘキシル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル又はシクロヘキシル基等が挙げられ、好適には、メチル又はエチル基が挙げられる。
【0029】
上記化合物(I)において、Xは水素又は2−メトキシイミノ−2−フェニルアセトキシ基を示すが、好適には2−メトキシイミノ−2−フェニルアセトキシ基である。
【0030】
本発明の化合物(I)は分子内にオキシム基を有する場合も包含する。オキシム基がE配置、Z配置である異性体が存在するが、その各々、或いはそれらの任意の割合の混合物のいずれも本発明に含まれる。しかし、好適にはZ配置である。そのような幾何異性体は、例えば、どちらかの幾何異性を持つよう調製された原料化合物を用いて化合物(I)を合成するか、又は、合成した化合物(I)を所望により通常の分離法を用いて分割して得ることができる。
【0031】
化合物(I)の具体例として、下記表1に例示する化合物を挙げる事ができる。ただし、本発明はこれらの化合物に限定される物ではない。
【0032】
表1において、「Me」はメチル基を、「Et」はエチル基を、「Pr」はプロピル基を、「iPr」はイソプロピル基を、「iBu」はイソブチル基を、「sBu」はセカンダリーブチル基を、「cHex」はシクロヘキシル基をそれぞれ示す。
【0033】
【表1】

【0034】
上記の化合物のうち、好適には化合物番号1、3、5、7、25、26の化合物を挙げる事が出来、更に好適には化合物番号5、7、25、26の化合物を挙げる事が出来、最も好適には化合物番号5又は7の化合物を挙げる事が出来る。
【0035】
本発明の化合物(I)は、例えば以下の反応式(A)に示す方法で製造することが出来る。
【0036】
反応式(A):
【0037】
【化9】

【0038】
本製造法の出発物質である一般式(II)で表される化合物のうち、Xが2−メトキシイミノ−2−フェニルアセトキシ基を表す化合物については、特開平8−259570号公報、特開平9−143183号公報、特開2000−44571号公報などに記載の公知化合物である。
【0039】
本製造法の出発物質である一般式(II)で表される化合物のうち、Xが水素を表す化合物については、特開昭60−142991号公報、特開昭59−103785号公報、米国特許第4,423,209号などに記載の公知化合物である。
【0040】
本製造方法は溶媒の存在下、又は非存在下、ヒドリド試薬により一般式(II)のエノン部分を飽和アルコールへと還元し一般式(I)の化合物を製造する方法である。
【0041】
還元反応は溶媒の存在下、又は非存在下に行われるが、好適には溶媒の存在下に行われる。使用される溶媒としては反応を阻害せず、出発物質をある程度溶解するものであれば特に限定は無いが、好適にはピリジン、ルチジンなどの有機アミン類、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類、ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素類、ヘキサン、ペンタンなどの脂肪族炭化水素類、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド類、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類、アセトニトリル、プロピオニトリルなどのニトリル類、アセトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、酢酸、プロピオン酸などの有機酸類、水、及びこれらの混合溶媒などが挙げられるが、好適にはピリジン、ルチジンなどの有機アミン類、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類、水、及びこれらの混合溶媒などが挙げられ、より好適にはピリジン、ルチジンなどの有機アミン類が挙げられる。溶媒の使用量は、限定されないが、好ましくは、出発物質に対して1〜100倍量(容積/重量)、更に好ましくは5〜40倍量(容積/重量)である。
【0042】
還元反応に使用するヒドリド試薬としては、特に限定は無いが、例えば、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウム、水素化アルミニウムヒドリド、ジイソブチルアルミニウムヒドリド、トリブチルスズヒドリド、トリエチルシラン、トリフェニルシランなどが挙げられるが、好適には水素化ホウ素ナトリウムである。ヒドリド試薬の使用量は、好ましくは、出発物質に対して1〜10モル当量、更に好ましくは1〜5モル当量である。
【0043】
また、還元反応は触媒の存在下、又は非存在下に行われる。触媒を使用する場合、触媒の種類としては特に限定は無いが、テトラキストリフェニルフォスフィンパラジウム(0)、トリストリフェニルフォスフィンロジウム(I)クロライドなどが挙げられる。触媒の使用量は、好ましくは、出発物質に対して0.1〜20モル%、更に好ましくは1〜10モル%である。
【0044】
還元反応の温度は、−78℃から100℃であるが、好適には−20℃から室温であり、更に好適には−10℃から0℃である。
【0045】
還元反応の時間は、反応温度、原料化合物、反応溶媒の種類などの要因で大幅に変わりうるが、5分から6時間、好適には15分から2時間である。
【0046】
還元反応の終了後、目的物である一般式(I)で表される化合物は、周知の方法で反応混合物より単離され、必要に応じてカラムクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィーなどの公知の手段で精製される。
【0047】
[発明の適用形態]
化合物(I)は、果樹、野菜及び花卉に寄生するナミハダニ類(Tetranychus)、リンゴハダニやミカンハダニ(Panonychus)及びサビダニ等の成虫、及び卵、動物に寄生するマダニ科(Ixodidae)、ワクモ科(Dermanysside)、及びヒゼンダニ科(Sarcoptidae)等に対して優れた殺ダニ活性を有している。更に、ヒツジバエ(Oestrus)、キンバエ(Lucilia)、ウシバエ(Hypoderma)、ウマバエ(Gautrophilus)、等、及びのみ、しらみ等の動物や鳥類の外部寄生虫;ゴキブリ、イエバエ等の衛生害虫;その他アブラムシ、コナガ、鱗翅目害虫等の各種農園芸害虫に活性がある。
【0048】
本発明の化合物(I)は、更に又、ネコブセンチュウ(Meloidogyne)、マツノザイセンチュウ(Bursaphelenchus)、ネダニ(Phizoglyphus)等に対しても活性がある。
【0049】
本発明の化合物(I)は、動物及び人間の内部寄生虫に対しても優れた活性を有している。特にブタ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、及び、鶏のような家畜及びペットに感染するセンチュウのほか、フィラリア科(Filariidae)、や、ナタリア科(Setariidae)の寄生虫、人間の消化管、血液、又は他の組織及び臓器に見出される寄生虫に対しても有効である。
【0050】
本発明の化合物を農園芸用に供するには、担体及び必要に応じて他の補助剤と混合して、農薬として通常用いられる製剤形態、例えば粉剤、水和剤、乳剤、水もしくは油性懸濁液、エアゾール等の製剤に調製されて使用される。
【0051】
種々の剤形に調製された本発明の製剤を、例えば、果樹園又は畑地において有害昆虫、ハダニ類等の寄生した農作物又は家畜に散布するときは、有効成分濃度として0.5〜100ppmを農作物の茎葉、土壌、又は家畜に処理することにより有効に防除することが出来る。
【0052】
本発明の化合物(I)を動物及びヒトにおける駆虫剤として使用する場合には、液体飲料として経口的に投与することが出来る。飲料は普通、ベントナイトのような懸濁剤及び湿潤剤、又はその賦形剤と共に適当な非毒性の溶剤又は水での溶液、懸濁液又は分散剤である。一般に飲料は又消泡剤を含有する。飲料処方は一般に活性化合物を0.01〜0.5重量%、好適には0.01〜0.1重量%を含有する。
【0053】
本発明の化合物(I)を動物飼料により投与する場合には、それを飼料に均質に分散させて使用するか、トップドレッシングとして使用するか、又は、ペレットの形態として使用する。普通望ましい抗寄生虫効果を達成する為には、最終飼料中に活性化合物を0.0001〜0.02重量%含有する。
【0054】
本発明化合物(I)を液体担体賦形剤に溶解又は分散させたものは、胃内、筋肉内、気管内、又は皮下に注射することによって、非経口的に動物に投与することが出来る。非経口投与のために、活性化合物は好適には落花生油、綿実油のような適当な植物油と混合する。このような処方は、一般に活性化合物を0.05〜50重量%含有する。
【0055】
本発明の化合物(I)は、ジメチルスルホキシド又は炭化水素溶剤のような適当な担体と混合することによって局所的に投与し得る。この製剤はスプレー又は直接的注加によって、動物の外部表面に直接適用される。最善の結果を得るための化合物(I)の最適使用量は、治癒される動物の種類及び寄生虫感染の型及び程度によって異なるが、一般に動物体重1Kg当たり約0.01〜100mg、好適には0.5〜50mgを経口投与することによって得られる。このような使用量は一度に、又は分割した使用量で、1〜5日のような比較的短期間に渡って与えられる。
【実施例】
【0056】
以下、本発明を実施例及び試験例によって具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0057】
[実施例1]
(4S)−3,4−ジヒドロ−13β−[(2Z)−メトキシイミノ−2−フェニルアセトキシ]ミルベマイシンA(化合物番号5)及び(4R)−3,4−ジヒドロ−13β−[(2Z)−メトキシイミノ−2−フェニルアセトキシ]ミルベマイシンA(化合物番号7)の製造
水素化ホウ素ナトリウム(131.9mg、3.49mmol、2.5当量)をピリジン(10ml)に溶解し、氷浴で冷却しながら、窒素気流下で20分攪拌した。この溶液に5−デオキシ−13−[(2Z)−メトキシイミノ−2−フェニルアセトキシ]−5−オキソミルベマイシンA(1.0g、1.85mmol、1.0当量)を添加し、60分攪拌した。反応液に酢酸エチルと1規定塩酸水溶液を注加し、分液した。その後、有機層を1規定塩酸と飽和食塩水で順次洗浄した。その後、有機層を硫酸マグネシウムで脱水乾燥し、減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン−酢酸エチル)、分取高速液体クロマトグラフィーで順次精製し、(4S)−3,4−ジヒドロ−13β−[(2Z)−メトキシイミノ−2−フェニルアセトキシ]ミルベマイシンA(化合物番号5)及び(4R)−3,4−ジヒドロ−13β−[(2Z)−メトキシイミノ−2−フェニルアセトキシ]ミルベマイシンA(化合物番号7)をそれぞれ168.9mg(0.23mmol,16.8%)、63.4mg(0.09mmol,6.3%)、無色アモルファスとして得た。
【0058】
(4S)−3,4−ジヒドロ−13β−[(2Z)−メトキシイミノ−2−フェニルアセトキシ]ミルベマイシンA(化合物番号5)
1H-NMR (500MHz, CDCl3) δ: 7.51 (2H, d, J=6.7Hz), 7.36 (3H, m), 5.77 (2H, m), 5.51 (1H, m), 5.45 (1H, m), 5.37 (1H, dd, J=14.1Hz, 10.4Hz), 5.19 (1H, d, J=10.4Hz), 4.76 (1H, s), 4.63 (1H, d, J=14.7Hz), 4.58 (1H, d, J=14.7Hz), 3.98 (3H, s), 3.83 (1H, d, J=3.7Hz), 3.62 (1H, m), 3.51 (1H, dt, Jt=10.1Hz, Jd=3.7Hz), 3.06 (1H, m), 2.62 (1H, m), 2.53 (1H, dd, J=9.2Hz, 6.4Hz), 2.42 (1H, m), 2.30 (1H, m), 1.91 (1H, dd, J=12.2Hz, 4.5Hz), 1.54 (3H, s), 1.08 (6H, m, H3-26), 1.00 (3H, t, J=7.3Hz), 0.83 (3H, d, J=6.7Hz)
EI-MS (m/z): 721 (M+), 703, 542, 524, 279, 195, 167
【0059】
(4R)−3,4−ジヒドロ−13β−[(2Z)−メトキシイミノフェニルアセトキシ]ミルベマイシンA(化合物番号7)
1H-NMR (500MHz, CDCl3) δ: 7.50 (2H, m), 7.36 (3H, m), 5.78-5.84 (2H, m), 5.44-5.52 (2H, m), 5.39 (1H, m), 5.19 (1H, d, J=10.4Hz), 4.72 (1H, s), 4.65 (1H, d, J=14.7Hz), 4.60 (1H, d, J=14.7Hz), 3.99 (4H, br), 3.77 (1H, d, J=4.9Hz), 3.63 (1H, m), 3.06 (1H, dt, Jt=9.2Hz, Jd=2.4Hz), 2.78 (1H, dd, J=12.2Hz, 5.2Hz), 2.61 (1H, m), 2.42 (1H, m), 2.25-2.35 (2H, m), 2.16 (1H, m), 2.00 (1H, dt, Jt=12.8Hz, Jd=6.1Hz), 1.90 (1H, dd, J=12.2Hz, 3.7Hz), 1.54 (3H, s), 1.13 (3H, d, J=7.3Hz), 1.09 (3H, d, J=6.7Hz), 1.00 (3H, t, J=7.3Hz), 0.83 (3H, d, J=6.1Hz)
EI-MS (m/z): 721 (M+), 703, 690, 542, 524, 279, 195, 167
【0060】
[実施例2]
(4S)−3,4−ジヒドロミルベマイシンA(化合物番号25)及び(4R)−3,4−ジヒドロミルベマイシンA(化合物番号26)の製造
水素化ホウ素ナトリウム(175.1mg、4.63mmol、2.5当量)をピリジン(10ml)に溶解し、氷浴で冷却しながら、窒素気流下で20分攪拌した。この溶液に5−デオキシ−5−オキソミルベマイシンA(1.0g、1.85mmol、1.0当量)を添加し、60分攪拌した。反応液に酢酸エチルと1規定塩酸水溶液を注加し、分液した。その後、有機層を1規定塩酸と飽和食塩水で順次洗浄した。その後、有機層を硫酸マグネシウムで脱水乾燥し、減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン−酢酸エチル)、分取高速液体クロマトグラフィーで順次精製し、(4S)−3,4−ジヒドロミルベマイシンA(化合物番号25)及び(4R)−3,4−ジヒドロミルベマイシンA(化合物番号26)をそれぞれ172.7mg(0.32mmol,17.1%)、58.0mg(0.11mmol,5.8%)、無色アモルファスとして得た。
【0061】
(4S)−3,4−ジヒドロミルベマイシンA(化合物番号25)
1H-NMR (500MHz, CDCl3) δ: 5.67-5.74 (2H, m), 5.44 (1H, m), 5.35 (1H, dd, J=13.1Hz, 10.3Hz), 4.94 (1H, m), 4.74 (1H, s), 4.62 (1H, d, J=14.4Hz), 4.57 (1H, d, J=14.4Hz), 3.82 (1H, d, J=3.4Hz), 3.57 (1H, m), 3.51 (1H, m), 3.07 (1H, dt, Jt=8.9Hz, Jd=2.1Hz), 2.53 (1H, dd, J=9.3Hz, 6.5Hz), 2.39 (1H, m), 2.17-2.24 (3H, m), 1.52 (3H, s), 1.08 (3H, d, J=6.2Hz), 0.98-1.00 (6H, m), 0.83 (3H, d, J=6.2Hz)
EI-MS (m/z): 544 (M+), 526, 195, 167
【0062】
(4R)−3,4−ジヒドロミルベマイシンA(化合物番号26)
1H-NMR (500MHz, CDCl3) δ: 5.80 (1H, d, J=11.3Hz), 5.71 (1H, dd, J=14.4Hz, 11.3Hz), 5.47 (1H, m), 5.38 (1H, dd, J=14.4Hz, 9.6Hz), 4.95 (1H, m), 4.69 (1H, s), 4.66 (1H, dd, J=14.4Hz, 2.1Hz), 4.59 (1H, dd, J=14.4Hz, 1.4Hz), 3.99 (1H, br), 3.77 (1H, d, J=4.8Hz), 3.58 (1H, m), 3.07 (1H, dt, Jt=9.6Hz, Jd=2.1Hz), 2.78 (1H, dd, J=12.0Hz, 5.1Hz), 2.41 (1H, m), 2.17-2.25 (3H, m), 1.51 (3H, s), 1.12 (3H, d, J=6.9Hz), 1.00 (6H, m), 0.83 (3H, d, J=6.9Hz)
EI-MS (m/z): 544 (M+), 526, 195, 167
【0063】
次に生物試験例をあげて、具体的にその効果を示す。
【0064】
[試験例1]
抵抗性ハダニに対する殺ダニ効力
ササゲ(Vigna sinensis Savi)の初生葉にナミハダニ(Tetranychus urticae)を接種した。接種1日後、接種葉に10ppm及び1ppmの濃度の試験化合物を含む溶液[10ppm溶液:展着剤(ニッコール710F)0.004%、展着剤(グラミンS)0.01%、分散剤(ポリビニルアルコール)0.06%、アセトン0.2%を含む水溶液100mlに試験化合物1mgを含む。1ppm溶液:上記10ppm溶液を水で10倍希釈した溶液]7mlをミズホ回転散布塔にて、散布液量が3.5mg/cm葉面積になるように散布した。3日後に双眼顕微鏡によって成虫の生死(反応率:苦悶虫を含む)を調べた。各化合物について二連制で試験を行い、試験中、薬液処理葉は25℃の恒温室内に保存した。結果を表2に示す。
【0065】
【表2】

【0066】
実施例で製造した化合物は微量で抵抗性ハダニに対して高い殺ダニ効力を示した。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の3,4−ジヒドロミルベマイシン誘導体である化合物(I)は優れた殺ダニ、殺虫、駆虫活性を有するので、殺ダニ剤、殺虫剤、駆虫剤として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式(I):
【化1】


(式中RはC〜Cアルキル基を示し、Xは水素又は2−メトキシイミノ−2−フェニルアセトキシ基を示すが、但しRがメチル基かつXが水素である場合を除く)で表される3,4−ジヒドロミルベマイシン誘導体。
【請求項2】
上記一般式(I)において、Rがメチル又はエチル基を示し、Xは2−メトキシイミノ−2−フェニルアセトキシ基を示す請求項1記載の3,4−ジヒドロミルベマイシン誘導体。
【請求項3】
請求項1又は2記載の3,4−ジヒドロミルベマイシン誘導体を有効成分として含有する、殺ダニ剤、殺虫剤又は駆虫剤。
【請求項4】
下記の一般式(II):
【化2】


(式中RはC〜Cアルキル基を示し、Xは水素又は2−メトキシイミノ−2−フェニルアセトキシ基を示すが、但しRがメチル基かつXが水素である場合を除く)で示される5−デオキシ−5−オキソミルベマイシン誘導体を、ヒドリド試薬により還元することを特徴とする請求項1記載の3,4−ジヒドロミルベマイシン誘導体の製造方法。
【請求項5】
上記一般式(II)の還元において使用するヒドリド試薬が水素化ホウ素ナトリウムである請求項4記載の3,4−ジヒドロミルベマイシン誘導体の製造方法。

【公開番号】特開2007−246462(P2007−246462A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−73788(P2006−73788)
【出願日】平成18年3月17日(2006.3.17)
【出願人】(303020956)三共アグロ株式会社 (70)
【Fターム(参考)】