説明

36Cl含有塩化物イオンの分離方法及びこれを利用した加速器質量分析用試料の作製方法

【課題】従来法である硫酸バリウム法よりも短時間で、作業者の主観や技量、熟練度に依存することなく高い再現性をもって、しかも被検試料の塩化物イオン濃度が希薄な場合であっても、36Cl含有塩化物イオンを36S含有硫酸イオンから確実且つ精度よく分離する。
【解決手段】対立イオンが塩化物イオン以外の陰イオンからなる強塩基性陰イオン交換樹脂を充填剤として被検試料を対象にカラムクロマトグラフィーを行うことにより、被検試料中の36Cl含有塩化物イオンを36S含有硫酸イオンから分離するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、36Cl含有塩化物イオンの分離方法及びこれを利用した加速器質量分析用試料の作製方法に関する。さらに詳述すると、本発明は、地下水の滞留時間(地下水年代)を評価する上で重要な放射性同位体の1つである36Clを加速器質量分析(Accelerator Mass Spectrometry)により分析する際に、36Clの測定妨害成分となる36Sを除去する前処理に用いて好適な36Cl含有塩化物イオンの分離方法、さらには36Clの測定妨害成分となる36Sが除去された加速器質量分析用試料の作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
放射性廃棄物処分の安全評価や環境問題において、地下水の流動を明らかにすることは、放射性物質や重金属などの移行を明らかにする上で重要である。しかしながら、地下水の流動は極めて遅いことからこれを直接測定することは困難を極める。そこで、地下水に溶存しているイオンの同位体比を測定し、地下水の滞留時間(地下水年代)を評価することによって、地下水の流動を評価する手法が提案されている(非特許文献1〜3)。
【0003】
ここで、塩化物イオンの放射性同位体である36Clは、塩化物イオンが比較的安定に地下水中に存在すること、36Clの半減期が30万年と長く180万年程度までの地下水年代を評価できる可能性があることから、地下水年代を評価する上で極めて重要な放射性同位体の1つであることが報告されている(非特許文献4〜6)。
【0004】
地下水に溶存している36Clの分析には、通常加速器質量分析法(Accelerator Mass Spectrometry、以下、AMSと呼ぶこともある)が用いられる(非特許文献7)。AMSは、磁場中で荷電粒子が回転運動する半径が質量数に依存することを利用した分析法であり、地下水に溶存している塩化物イオン全体に占める36Clの割合(36Cl/Cl)を、1×10−15オーダーの小さな値まで定量することが可能である。
【0005】
このように、AMSは、優れた定量性を有する分析法であるが、その一方である種の欠点も有している。即ち、この分析法は元素の質量差を使用した分析法であることから、同じないしは極めて近い質量数を有する同重体の存在が分析値に影響を及ぼし得る。36Cl/Clの分析においては、硫黄の放射性同位体である36Sが分析値に影響を及ぼし得る。
【0006】
そこで、AMSを利用した36Cl/Clの分析においては、従来は化学的処理により36Cl含有塩化物イオンを予め36S含有硫酸イオンから分離しておくことで分析精度を高めるようにしていた(非特許文献7〜10、以降の説明ではこの従来法を硫酸バリウム法と呼ぶ)。
【0007】
硫酸バリウム法は、硫酸バリウムと塩化バリウムの溶解度の違いを利用したものである。その具体的な手順を図10に基づいて大まかに説明する。まず、被検試料(例えば地下水等のAMS測定用サンプル)に硝酸銀を添加して沈殿を生成させ(S101)、この沈殿を回収する(S102)。次いで、この沈殿にアンモニア水を添加して沈殿を溶解し(S103)、これに硫酸バリウムを添加して硫酸バリウムの沈殿を生成させる(S104)。そして、硫酸バリウム沈殿を除去して上澄み液を回収し(S105)、さらにこの上澄み液の硫酸イオン濃度低減処理を行う(S106)。従来は、以上の一連の工程により得られた上澄み液を36S含有硫酸イオンが除去された溶液とし、この溶液に硝酸と硝酸銀を添加して塩化銀沈殿を生成させ(S107)、塩化銀沈殿を回収して(S108)、これを分析用試料として加速器質量分析に供していた。
【0008】
上記一連の工程について、さらに詳細に説明する。
【0009】
被検試料への硝酸銀添加による沈殿生成工程(S101)では、採取した地下水等の被検試料に硝酸を添加してpH2.0以下に調整した後、これに硝酸銀水溶液を添加して沈殿を生成させる。この工程では、塩化物イオンの損失を最小限に留めるため、溶存する塩化物イオンに対して過剰量の硝酸銀を添加するようにしている。したがって、沈殿には塩化銀沈殿だけでなく硫酸銀沈殿も混在することになる。また、この工程は、酸化銀の生成を防ぐために遮光下にて実施される。固液分離による沈殿回収が容易となるように沈殿を成長させて大きなものとすべく、硝酸銀を添加した被検試料は、遮光下にて48時間程度静置する。
【0010】
沈殿回収工程(S102)では、硝酸銀添加による沈殿生成工程(S101)で得られた沈殿を遠沈管に移して遠心分離し、上澄み液を除去(固液分離)し、回収した沈殿を2回以上リンスして次工程に供する。リンスは、回収した沈殿に超純水を加えて振とうさせ、遠心分離して上澄み液を除去(固液分離)して沈殿を回収することにより行われる。リンス後は、回収した沈殿を乾燥させることなく次工程に供する。
【0011】
アンモニア水添加による沈殿溶解工程(S103)では、沈殿回収工程(S102)で回収した未乾燥の沈殿にアンモニア水を添加し、沈殿を溶解させる。この工程は、銀イオンがチオ硫酸イオン、シアン化物イオン、アンモニウムイオンと錯形成するため、塩化銀・硫酸銀の沈殿にアンモニアを加えると溶解することを利用したものである。溶解した沈殿が含まれる沈殿溶解液は、純水で適宜希釈する。
【0012】
硝酸バリウム添加による硫酸バリウム沈殿生成工程(S104)では、アンモニア水添加による沈殿溶解工程(S103)で得られた沈殿溶解液に硝酸バリウム溶液を添加して、硫酸バリウム沈殿を生成させる。この工程は、塩化バリウムの溶解度(1.7g/100mL)に対して硫酸バリウムの溶解度(0.22mg/100mL)が低いことから、硫酸イオンが優先的に硫酸バリウムとして沈殿することを利用したものである。固液分離による沈殿回収が容易となるように沈殿を成長させて大きなものとすべく、硝酸バリウム溶液を添加した沈殿溶解液はときおり緩やかに振とうさせながら2〜7日間静置する。
【0013】
硫酸バリウム沈殿を除去して上澄み液を回収する工程(S105)では、硝酸バリウム添加による硫酸バリウム沈殿生成工程(S104)で得られた硫酸バリウム沈殿を含む溶液を遠心分離処理し、硫酸バリウム沈殿を除去して上澄み液を回収する。
【0014】
上澄み液の硫酸イオン濃度低減処理工程(S106)では、上澄み液の硫酸イオンをできる限り除去するため、上澄み液に対して上記S104〜S105の工程を繰り返す。即ち、上澄み液に再度硝酸バリウム溶液を添加し、硫酸バリウムの白色沈殿生成の有無を作業者が目視により確認し、硫酸バリウム沈殿が生じていた場合には、上記S104〜S105の一連の流れにより硫酸バリウム沈殿を除去し、上澄み液を回収する。この操作を上澄み液からの硫酸バリウムの生成が起こらなくなるまで繰り返す。
【0015】
以上の工程(S101〜S106)により、被検試料から36S含有硫酸イオンが除去される。
【0016】
そして、硫酸バリウムの生成が起こらなくなることを確認した上澄み液に硝酸と硝酸銀を添加して塩化銀沈殿を生成させる(S107)。上澄み液が透明になるまでホットプレート等で加熱する。
【0017】
塩化銀沈殿回収工程(S108)では、塩化銀沈殿を生成させる工程(S107)で得られた塩化銀沈殿を含む溶液から液相を採取して除去することにより、塩化銀沈殿を回収し、これを超純水によりリンス(洗浄)して、60℃〜70℃で乾燥させる。
【0018】
以上の工程(S107〜S108)により、加速器質量分析用試料が得られる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】岩月輝希、徐勝、伊藤茂、阿部雅人、渡辺雅人、「14C同位体による地下水流動状態の推定」、サイクル機構技法、(1999) No.4 93-100
【非特許文献2】中田弘太郎、長谷川琢磨、富岡祐一、「溶存Srイオンにおける87Sr/86Srと地下水年代の関係についての検討」、2008年地下水学会秋季講演会予稿集、42
【非特許文献3】Eggenkamp M. , and Coleman L., The effect of aqueous diffusion on the fractionation of chlorine and bromine stable isotopes, Geochimica et Cosmochimica Acta 73 (2009) 3539-3548.
【非特許文献4】Cresswell R., Bauld J., Jacobson G., Khadka M., Jha M., Shrestha M., and Regmi M., A first estimate of ground water ages for the deep aquifer of the Kathmandu Basin, Nepal, using the radioisotope chlorine-36, Ground Water, 39, (2001) 449-457.
【非特許文献5】Davis S., Cecil L., Zreda M., and Moysey S., Chlorine-36, bromide, and the origin of spring water, Chem. Geol., 179, (2001) 3-16.
【非特許文献6】Bentley H., Phillips F., Davis S., Harbermehl M., Airey P., Calf G., Elmore D., Gove H., and Torgersen T., Chlorine 36 dating of very old groundwater 1. The Great Artesian Basin, Australia, Water Resources Research, 22, (1986) 1991-2000.
【非特許文献7】Elmore D., Fulton B., Clover M., Marsden J., Gove H., Naylor H., Purser K., Kilius L., Beukens R., and Litherland A., Analysis of 36Cl in environmental water samples using an electrostatic accelerator, Nature, 277 (1979) 22-25.
【非特許文献8】Torgersen T., Habermehl M., Phillips F., Elmore D., Kubik P., Jones B., Hemmick T., and Gove H., Chlorine 36 dating of very old groundwater 3. Further studies in the Great Artesian Basin, Australia, Water Resources Research, 27 (1991) 3201-3213.
【非特許文献9】Nagashima Y., Seki R., Takahashi T., and Arai D., Status of the 36Cl AMS system at the University of Tsukuba, Nucl. Instr. And Meth. B, (2000) 129-133.
【非特許文献10】Phillips F. (2000):Chloribe-36. In Environmental tracers in subsurface hydrology. Chapter-10 P299-348. Kluwer Academic Publishers.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
しかしながら、硫酸バリウム法は、多数の問題点を有している。
【0021】
第一の問題点として、処理に長期間を要する工程を多く含むことから、全工程が終了するまでに最低でも1〜数週間といった長期間を要することが挙げられる。具体的には、工程101において、塩化銀と硫酸銀の沈殿を成長させるために2日程度の期間を要し、工程S104において、硫酸バリウム沈殿を成長させるために2〜7日間の期間を要し、さらに、工程S106において、上澄み液の硫酸濃度をできる限り低減するために、工程S104を数回繰り返すことによって、相当な期間を要する場合がある。これらの工程を含むことによって、全工程が終了するまでに最低でも1〜数週間といった長期間を要しているという問題がある。
【0022】
第二の問題点として、工程S106において、上澄み液の硫酸イオン濃度を硫酸バリウムの溶解度積以下には下げることができないことから、最終的には硫酸バリウムの溶解度に相当する量の36S含有硫酸イオンは残留し得ることが挙げられる。
【0023】
第三の問題点として、作業者の主観が入り込み得る操作や、作業者の技量や熟練度に依存する操作が含まれていることによって、再現性が期待しにくいことが挙げられる。具体的には、工程S106において、硫酸バリウム沈殿の生成の有無を、作業者の主観が入り込み得る目視による確認により行っていることから、再現性が期待しにくいという問題がある。また、工程S105及びS106では、上澄み液に硫酸バリウムの浮遊物が存在する場合があることから、これを吸い取ることなく上澄み液を回収する技量が作業者に要求される。したがって、再現性が作業者の技量や熟練度に依存してしまうことが多分にあり得るという問題がある。
【0024】
第四の問題点として、工程S104やS106において、硫酸バリウムのコロイドが生成した場合には、これを除去する作業の手間がかかることが挙げられる。36Cl含有塩化物イオンと36S含有硫酸バリウムコロイドの分離が難しいので、結果的に塩化物イオンと硫酸イオンを分離することが困難となるからである。
【0025】
第五の問題点として、塩化物イオン濃度が1ppm以下の希薄溶液を被検試料とした場合、硝酸銀溶液を加えても塩化銀の沈殿が生成しにくいことから、希薄溶液を被検試料とした場合には、上記従来法は適用できないことが挙げられる。
【0026】
以上のことから、上記問題点を解消することのできる、36Cl含有塩化物イオンの36S含有硫酸イオンからの新たな分離方法の確立が望まれていた。また、36Clの測定妨害成分となる36Sが除去された加速器質量分析用試料の新たな作製方法の確立が望まれていた。
【0027】
本発明はかかる要望に鑑みてなされたものであって、硫酸バリウム法よりも短時間で、作業者の主観や技量、熟練度に依存することなく高い再現性をもって、しかも被検試料の塩化物イオン濃度が希薄な場合であっても、36Cl含有塩化物イオンを36S含有硫酸イオンから確実且つ精度よく分離することのできる方法を提供することを目的とする。
【0028】
また、本発明は、硫酸バリウム法よりも短時間で、作業者の主観や技量、熟練度に依存することなく等品質とでき、しかも被検試料の塩化物イオン濃度が希薄な場合であっても、36Cl含有塩化物イオンが36S含有硫酸イオンから確実且つ精度よく分離された加速器質量分析用試料を作製する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0029】
かかる課題を解決するため、本願発明者は従来とは全く別の手法で36Cl含有塩化物イオンを36S含有硫酸イオンから分離することについて鋭意研究を行った。その結果、対立イオンを硝酸イオンとした強塩基性陰イオン交換樹脂を充填剤として被検試料を対象にカラムクロマトグラフィーを行うことによって、36Cl含有塩化物イオンを36S含有硫酸イオンから分離できることを知見した。
【0030】
本願発明者は、かかる知見に基づき、対立イオンを塩化物イオン以外の陰イオンとした強塩基性陰イオン交換樹脂を充填剤として被検試料を対象にカラムクロマトグラフィーを行うことによって、36Cl含有塩化物イオンを36S含有硫酸イオンから分離できる可能性が導かれることを知見するに至り、さらに種々検討を重ねて本発明を完成するに至った。
【0031】
即ち、本発明の36Cl含有塩化物イオンの分離方法は、対立イオンが塩化物イオン以外の陰イオンからなる強塩基性陰イオン交換樹脂を充填剤として被検試料を対象にカラムクロマトグラフィーを行うことにより、被検試料中の36Cl含有塩化物イオンを36S含有硫酸イオンから分離するようにしている。
【0032】
ここで、本発明の36Cl含有塩化物イオンの分離方法において、溶離液として硝酸溶液を用い、硝酸溶液の濃度をカラムクロマトグラフィーにおいて充填剤と接触する液相の硝酸イオン濃度が500〜2500ppmに維持され得る濃度とすることが好ましい。また、この場合には、溶離液を硝酸溶液とする場合には、強塩基性陰イオン交換樹脂の対立イオンは硝酸イオンであることが好ましい。
【0033】
また、本発明の加速器質量分析用試料の作製方法は、本発明の分離方法により36S含有硫酸イオンから分離された36Cl含有塩化物イオンを銀イオンと反応させて36Cl含有塩化銀を生成させるようにしている。
【発明の効果】
【0034】
本発明の36Cl含有塩化物イオンの分離方法によれば、従来法である硫酸バリウム法よりも短時間で、36Cl含有塩化物イオンを36S含有硫酸イオンから確実且つ精度よく分離することが可能となる。しかも、カラムクロマトグラフィー操作のみで36Cl含有塩化物イオンを36S含有硫酸イオンから分離することができるので、従来の様に作業者の主観や技量、熟練度に依存することなく、しかも複雑な操作を要する工程を経ることなく、高い再現性をもって簡易に36Cl含有塩化物イオンを36S含有硫酸イオンから分離することが可能となる。また、被検試料の塩化物イオン濃度が希薄な場合であっても、36Cl含有塩化物イオンを36S含有硫酸イオンから分離することが可能となる。
【0035】
本発明の加速器質量分析用試料の作製方法によれば、従来法である硫酸バリウム法よりも短時間で、36Cl含有塩化物イオンが36S含有硫酸イオンから確実且つ精度よく分離された加速器質量分析用試料を作製することが可能となる。しかも、カラムクロマトグラフィー操作のみで36Cl含有塩化物イオンを36S含有硫酸イオンから分離しているので、従来の様に作業者の主観や技量、熟練度に依存することなく、しかも複雑な操作を要する工程を経ることなく、等品質な分析用試料を簡易に作製することが可能となる。また、被検試料の塩化物イオン濃度が希薄な場合であっても、36Cl含有塩化物イオンが36S含有硫酸イオンから確実且つ精度よく分離された加速器質量分析用試料を作製することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の分離方法と加速器質量分析用試料の作製方法の工程フロー図である。
【図2】バッチ試験後に充填剤に吸着されることなく液相に残留していた塩化物イオンの濃度と硫酸イオンの濃度を液相の硝酸イオン濃度に対してプロットした結果を示す図である。
【図3】実施例で用いたカラムクロマトグラフィー装置の概念図である。
【図4】塩化物イオン濃度及び硫酸イオン濃度に対する溶離液の滴下量の関係(クロマトグラム)を示す図である。
【図5】被検試料の量を1mL、10mL、100mLとしたときの塩化物イオン濃度に対する溶離液の滴下量の関係(クロマトグラム)を示す図である。
【図6】100mLの被検試料をカラムクロマトグラフィーにより処理したときの塩化物イオンと硫酸イオンのピーク形状を示す図である。
【図7】図6の囲い部分の拡大図である。
【図8】充填剤の充填高さを15cmに固定し、硝酸溶液の硝酸濃度を2000ppm、1500ppm、1000ppmに変化させて被検試料をカラムクロマトグラフィーにより処理したときの塩化物イオンと硫酸イオンのピーク形状を示す図である。
【図9】被検試料を希薄溶液としてカラムクロマトグラフィーにより処理したときの塩化物イオンと硫酸イオンのピーク形状を示す図である。
【図10】従来法である硫酸バリウム法による加速器質量分析用試料の作製方法の工程フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明を実施するための形態について、図面に基づいて詳細に説明する。
【0038】
本発明の36Cl含有塩化物イオンの分離方法は、対立イオンが塩化物イオン以外の陰イオンからなる強塩基性陰イオン交換樹脂を充填剤として被検試料を対象にクロマトグラフィーを行うことにより、被検試料中の36Cl含有塩化物イオンを36S含有硫酸イオンから分離するようにしている。そして、分離された36Cl含有塩化物イオンを銀イオンと反応させて36Cl含有塩化銀を生成させ、これをAMS分析に供するようにしている。
【0039】
尚、カラムクロマトグラフィーとは、充填剤を詰めたカラム(アクリルやガラスなどの管)に溶液を流すと、充填剤と溶質の親和性の強さや溶質の大きさの違いにより、カラムから溶質が排出される速度が異なることを利用して溶質を分離する手法である。カラムクロマトグラフィーには、共存イオンの影響を受けにくいといったメリットや、被検試料に含まれる対象物を分離して回収する過程で、その濃縮も同時に行うことができるというメリットがある。
【0040】
以下に、図1の工程フロー図に基づいて、本発明の36Cl含有塩化物イオンの分離方法とAMS分析用試料の作製方法について詳細に説明する。
【0041】
図1に示す工程フローは、大まかには、工程S1〜S3の36Cl含有塩化物イオンの分離処理工程と工程S4〜S5のAMS分析用試料の作製工程とから構成される。
【0042】
<工程S1>
工程S1では、カラムクロマトグラフィーを実施するための準備として、カラムに充填剤を充填する。
【0043】
充填剤は、I型または2型の各種強塩基性陰イオン交換樹脂を用いることができ、I型の強塩基性陰イオン交換樹脂を好適に用いることができる。但し、強塩基性陰イオン交換樹脂の中には、交換サイトの対立イオンが塩化物イオンである所謂Cl形のものも存在している。対立イオンが塩化物イオンであると、被検試料中のトータルの塩化物イオン濃度が対立イオンの塩化物イオンによって変動してしまい、全塩化物イオン中に含まれる36Clの定量分析値に誤差が生じる。そこで、強塩基性陰イオン交換樹脂の対立イオンが塩化物イオンの場合には、この塩化物イオンを塩化物イオン以外の陰イオンに置換してからカラムクロマトグラフィーに供する。例えば、強塩基性陰イオン交換樹脂として、I型の強塩基性陰イオン交換樹脂であるダウエックス(Dowex、ダウ・ケミカル社製)を用いる場合、交換樹脂の販売時の対立イオンが塩化物イオンであることから、これを塩化物イオン以外の陰イオンに置換したものを用いる。
【0044】
ここで、強塩基性陰イオン交換樹脂の対立イオンは、工程S3にてカラム内に滴下される溶離液の主体である陰イオンと一致させることが好適である。この場合、溶離液の滴下による充填剤の体積変化を抑えて、カラムが破損したり、分離性が低下したりするのを防ぐことができる。
【0045】
強塩基性陰イオン交換樹脂の対立イオンを溶離液に含まれる陰イオンと一致させるためには、溶離液の当該陰イオン濃度を高濃度(例えば2mol/L程度)とし、樹脂充填部分体積の20倍以上の溶液をカラムに充填した樹脂に滴下する。また、必要に応じて中性塩等による洗浄工程を組み込むようにしても構わない。具体例として、強塩基性陰イオン交換樹脂の対立イオンを塩下物イオンから硝酸イオンに置換する方法について説明する。まず、湿潤状態の樹脂をカラムに充填し、高濃度硝酸溶液(例えば2.0mol/L)をカラム内に滴下させて充填剤と接触させる。次いで、中性塩である硝酸ナトリウム(例えば1.0mol/L)をカラム内に滴下させて充填剤と接触させる。そして、再び高濃度硝酸溶液(例えば2.0mol/L)をカラム内に滴下させて充填剤と接触させる。これら一連の処理を行った後、カラムから樹脂を取り出し、これを高濃度硝酸溶液(例えば2.0mol/L)に入れて例えば一晩浸漬しておく。この際に、1ないし2回以上(例えば2回)、高濃度硝酸溶液を交換するのが好適である。最後に、純水で洗浄することで、強塩基性陰イオン交換樹脂の対立イオンを塩下物イオンから硝酸イオンに置換することができる。尚、このように、高濃度陰イオン溶液を充填剤と接触させて強塩基性陰イオン交換樹脂の対立イオンを溶離液の陰イオンと一致させる方法により、本発明の分離処理を行った後の充填剤に吸着している36S含有硫酸イオンを充填剤から脱離させて再び溶離液の陰イオンに置換し、充填剤を再利用することも可能である。
【0046】
カラムの内径、充填剤の充填高さ、充填剤の粒度(充填密度)は、カラムクロマトグラフィーによる分離に要する時間と、36Cl含有塩化物イオンと36S含有硫酸イオンの分離性を加味して、決定することができる。即ち、カラムの内径を小さくする程、充填高さを高くする程、充填剤の粒度を小さくする程、分離性が高まる反面、分離に長時間を要する。逆に、カラムの内径を大きくする程、充填高さを低くする程、充填剤の粒度を大きくする程、分離が短時間で済む反面、分離性が低下する。また、カラムの内径を大きくし過ぎると、充填剤全体に被検試料や溶離液を接触させ難くなる。したがって、これらのことを加味して、カラムの内径、充填剤の充填高さ、充填剤の粒度(充填密度)を適宜決定することができる。一例を挙げると、カラムの内径を1cm程度とし、充填高さを10〜15cmとし、充填剤の粒度を200〜400メッシュとすることで、1mL〜10000mLの地下水等の被検試料の36Cl含有塩化物イオンを36S含有硫酸イオンから分離処理することが可能である。
【0047】
尚、粒度200〜400メッシュの充填剤としては、例えばダウエックス1x8 200−400(ダウ・ケミカル社製)を用いることができるが、これに限定されるものではなく、カラムへの充填剤の充填密度を加味して、種々の粒度を有する強塩基性陰イオン交換樹脂や粉砕処理等により種々の粒度に調整された強塩基性陰イオン交換樹脂を用いることができる。
【0048】
<工程S2>
工程S2では、工程S1で準備したカラム内に被検試料を滴下する。これにより、被検試料が充填剤と接触し、被検試料に含まれる36Cl含有塩化物イオンと36S含有硫酸イオンが充填剤に吸着される。尚、カラム内に被検試料を滴下する際にカラム内壁に被検試料の飛沫が付着したり、被検試料をカラムへと導く流路(配管やチューブなど)に被検試料が付着することがあるので、試料導入後流路を適宜純水等により洗浄して、洗浄後の純水をカラム内に導くことが好適である。これにより、被検試料に含まれる36Cl含有塩化物イオンの損失を最小限に抑えることができる。
【0049】
尚、被検試料としては、36Cl含有塩化物イオンを36S含有硫酸イオンから分離してAMS分析に供することが要請されている地下水等の各種環境サンプルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0050】
<工程S3>
工程S3では、充填剤に溶離液を滴下し、36Cl含有塩化物イオンと36S含有硫酸イオンの充填剤への吸着力の差を利用して、36Cl含有塩化物イオンを充填剤から先に脱離させて回収し、36S含有硫酸イオンから分離する。
【0051】
溶離液としては、吸着力の弱いイオンであっても分離自体はできることから特定のものに限定されるものではないが、強塩基性陰イオン交換樹脂に対する吸着性が硫酸イオンよりも弱く、塩化物イオンよりも強い陰イオンを主体とする溶液であれば分離には有利(分離性能がよく、効率が良い)であることが期待でき、例えばヨウ化物イオン(I)、硝酸イオン(NO)、クロム酸イオン(CrO2−)、臭化物イオン(Br)を主体とする溶液、なかでも硝酸イオンを主体とする溶液(硝酸溶液)を用いることが好適である。この場合、高い分離性をもって36Cl含有塩化物イオンと36S含有硫酸イオンを分離することができる。また、AMS分析用試料を作製する際に銀イオンと接触させたときに、塩化銀とともに生成される硝酸銀は水に可溶であることから、硝酸イオンは塩化銀沈殿に混入することがない。これに対し、ヨウ化物イオン、クロム酸イオン、臭化物イオンは、銀イオンと反応して溶解度の低いヨウ化銀沈殿、クロム酸銀沈殿、臭化銀沈殿を生成し、塩化銀沈殿と混在し得る。したがって、溶離液として硝酸溶液を用いることで、高純度の塩化銀を分析用試料として供することができ、この点においても溶離液として硝酸溶液を使用することは好ましいと言える。
【0052】
溶離液を硝酸溶液とした場合、硝酸溶液の濃度をカラムクロマトグラフィーにおいて充填剤と接触する液相の硝酸イオン濃度が500〜2500ppmに維持され得る濃度とすることが好ましい。硝酸イオン濃度が500ppmよりも低いと、36Cl含有塩イオンと36S含有硫酸イオンが充填剤から脱離せず分離できない可能性が高い。また、硝酸イオン濃度が2500ppmよりも高いと、36Cl含有塩イオンの脱離と36S含有硫酸イオンの脱離がほぼ同時に起こってしまい、分離できない可能性が高い。尚、液相の硝酸イオン濃度を500〜2500ppmに維持することで、36Cl含有塩イオンと36S含有硫酸イオンの分離性は確保されるが、700〜2000ppmとすることがより好ましく、1000〜2000ppmとすることがさらに好ましく、1000〜1500ppmとすることがなお好ましく、1250ppmとすることが最も好ましい。この場合、より確実な分離性を得ながらも、溶離液の使用量を減らして最終的に発生する廃液の量を減らし、尚かつ処理時間を短いものとすることができる。
【0053】
尚、充填剤と接触する「液相」とは、カラム内に溶離液を滴下している最中にカラム内に存在し得る液体成分、即ち、被検試料及び溶離液の混合液、また純水を使用した場合には被検試料、溶離液および純水の混合液を意味している。
【0054】
また、溶離液として硝酸溶液以外のものを用いる場合にも、硝酸溶液を用いる場合と同様、濃度が低すぎると、36Cl含有塩イオンと36S含有硫酸イオンが充填剤から脱離せず分離できない。また、濃度が高すぎると、36Cl含有塩イオンの脱離と36S含有硫酸イオンの脱離がほぼ同時に起こってしまい、分離できない。したがって、これらの点を加味して、溶離液の濃度を決定すればよい。
【0055】
溶離液をカラム内に滴下させてしばらくすると、カラム下部から流下する液相に36Cl含有塩化物イオンが含まれるようになる。液相に36Cl含有塩化物イオンが含まれている間は、この液相には36S含有硫酸イオンは含まれないので、この液相を回収することで、36S含有硫酸イオンが分離された36Cl含有塩化物イオンを回収することができる。
【0056】
具体例を挙げると、被検試料を地下水とし、カラムの内径を1cm程度とし、充填高さを15cmとし、充填剤の粒度を200〜400メッシュとし、溶離液を2000ppmの硝酸溶液とすることで、溶離液滴下量が150〜350mLの範囲において36Cl含有塩化物イオンを回収することができる。尚、この条件では、36S含有硫酸イオンは溶離液滴下量が500mL以上の範囲においてしか流出せず、150〜350mLの範囲には36S含有硫酸イオンは流出しないので、36S含有硫酸イオンが分離された36Cl含有塩化物イオンを回収することができる。また、この操作は概ね6時間程度で完了することから、従来法である硫酸バリウム法と比較して、処理に要する時間を大幅に短縮することができる。しかも、作業者の目視確認を必要としたり、作業者の技量や熟練度に依存することなく簡易な処理で36S含有硫酸イオンが分離された36Cl含有塩化物イオンを回収することができ、従来法である硫酸バリウム法と比較して再現性を向上させることもできる。尚、例えばフラクションコレクター等を用いることで、所望の溶離液滴下量の範囲で、カラム下部から流下する液相を容易に回収することが可能である。
【0057】
<工程S4>
上記の工程(S1〜S3)により得られた36Cl含有塩化物イオンから、AMS分析に供するための試料を作製する。具体的には、36Cl含有塩化物イオンを銀イオンと反応させて36Cl含有塩化銀沈殿を生成する。
【0058】
36Cl含有塩化物イオンを銀イオンと反応させる方法は特に限定されるものではないが、塩化物イオン以外の陰イオンを含まない高純度の36Cl含有塩化銀が得られるように反応させることがAMS分析の精度を高める上で好適である。
【0059】
例えば、36Cl含有塩化物イオンを含む溶液に硝酸溶液を添加してpHを2以下に調整し、これに過剰の硝酸銀を添加することで、塩化物イオンの損失を最小限に抑えながら、高純度の36Cl含有塩化銀を得ることができる。上記の通り、溶離液として硝酸溶液を用いることで、工程S3において回収される36Cl含有塩化物イオンを含む溶液には溶離液成分として硝酸イオンしか含まれないので、この硝酸イオンが銀イオンと反応しても水と可溶な硝酸銀となり、36Cl含有塩化銀には、実質的に硝酸イオンが含まれることがない。
【0060】
<工程S5>
工程S5では、工程S4で得られた36Cl含有塩化銀沈殿を回収し、これを洗浄、乾燥してAMS分析用試料とする。具体的には、例えば、回収された36Cl含有塩化銀沈殿を純水等でリンスし、60〜70℃程度で乾燥することによって、AMS分析用試料を作製することができる。
【0061】
上述の形態は本発明の好適な形態の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、上述の実施形態では、本発明の分離方法により得られた36Cl含有塩化物イオンに銀イオンを反応させて36Cl含有塩化銀沈殿を生成するようにしていたが、塩化銀以外の分析用試料が要求される場合には、銀イオン以外の金属イオンを本発明の分離方法により得られた36Cl含有塩化物イオンと反応させて沈殿を生成するようにしてもよい。
【実施例】
【0062】
以下に本発明の実施例を説明するが、本発明はこれら実施例に限られるものではない。
【0063】
(実施例1)
カラムクロマトグラフィーによる塩化物イオンと硫酸イオンの分離性について、バッチ試験により検討した。
【0064】
(1)被検試料
水に塩化ナトリウムと硫酸ナトリウムを溶解して塩化物イオン濃度と硫酸イオン濃度をそれぞれ100ppmとした模擬処理液を調製し、これを被検試料とした。尚、深部の地下水においては、塩化物イオン濃度が硫酸イオン濃度よりも高いことが殆どである(日本地下水学会(編)、地下水水質の基礎−名水から地下水汚染まで、2000年、理工図書出版)。したがって、本実施例で使用した模擬処理液は、実際の地下水よりも塩化物イオンと硫酸イオンの分離が難しい条件設定となっており、この模擬処理液において塩化物イオンと硫酸イオンの分離が可能であれば、その分離手法は殆どの地下水に対して適用可能である。
【0065】
(2)溶離液
硝酸溶液を用いた。
【0066】
(3)充填剤
I型の強塩基性陰イオン交換樹脂であるダウエックス(Dowex)1x8(ダウ・ケミカル社製、粒度200−400メッシュ、Cl形)の交換サイトの対立イオン(塩化物イオン)を硝酸イオンに置換したものを充填剤として用いた。
【0067】
具体的には、以下の手順により充填剤を準備した。まず、樹脂50cc(湿潤状態)を内径1cmのアクリル製カラム管に充填し、2.0mol/Lの硝酸溶液1000mLを流速2.5mL/分で滴下した後、500ccの1.0mol/L硝酸ナトリウム溶液を流速2.5mL/分で滴下した。そして、2.0mol/Lの硝酸溶液1000mLを流速2.5mL/分で再び滴下した。これらの一連の処理を行った後、カラムから樹脂を取り出し、樹脂50ccに対して200ccの2.0mol/L硝酸溶液を加え一晩浸漬した。その後、上澄みを新たな硝酸溶液と入れ替える作業を2回繰り返した。次に、樹脂50cc対して200ccの純水を加えて良く振り、樹脂が沈殿するまで5分間待ち、上澄みを交換する作業を10回繰り返し、充填剤を得た。
【0068】
尚、この充填剤を硝酸溶液に長時間浸漬した後、硝酸溶液を誘導結合プラズマ質量分析装置(Agilent Technology社製、7500ce、以下、ICP−MSと呼ぶ)に供したところ、塩化物イオンは検出されなかった。この結果から、上記処理により、樹脂の対立イオンが塩化物イオンから硝酸イオンに置換されていることが確認できた。
【0069】
(4)バッチ試験方法
ポリプロピレン製の遠沈管に充填剤0.25gと被検試料10mLを添加し、さらに硝酸溶液を添加した。硝酸溶液は、被検試料と硝酸溶液により構成される遠沈管内の液相の硝酸イオン濃度が500〜20000ppm(8〜320mmol/L)となるように添加した。
【0070】
ここで、充填剤に接触している液相の塩化物イオンと硫酸イオンの濃度の経時変化を明らかにする試験を事前に実施した結果、約1時間程度で充填剤と液相のイオン交換は十分に平衡に達することが確認された。そこで、本実施例では、遠沈管をチューブローテーターで24時間緩やかに回転させて、イオン交換が確実に平衡に達するようにした。
【0071】
次に、0.45μmのセルロース混合エステル製フィルタ(ADVANTEC、DISMIC25AS045AS)で充填剤と液相を分離し、誘導結合プラズマ質量分析(Agilent Technology社製、7500ce、以下、ICP−MSと呼ぶ)により液相の塩化物イオン濃度と硫酸イオン濃度(実際に測定しているのはプラズマで分解した硫黄原子の濃度)を評価した。
【0072】
バッチ試験後に充填剤に吸着されることなく液相に残留していた塩化物イオンの濃度と硫酸イオンの濃度を液相の硝酸イオン濃度に対してプロットした結果を図2に示す。図2に示される結果から、カラムクロマトグラフィーにより塩化物イオンと硫酸イオンが分離され得ることが明らかとなった。しかも、充填剤への吸着において、硫酸イオンの方が塩化物イオンよりも優先的に吸着されて、塩化物イオンと硫酸イオン間の選択性が発揮されているのは、液相の硝酸イオン濃度が500ppm〜2500ppm(8〜40.3mmol/L)の場合であり、塩化物イオンと硫酸イオン間の選択性が最も発揮されているのは、溶液の硝酸イオン濃度が1250ppm(20.2mmol/L)であることも明らかとなった。
【0073】
以上の結果から、カラムクロマトグラフィーにより塩化物イオンと硫酸イオンが分離され得ることが明らかとなった。また、溶離液の硝酸濃度は、充填剤と接触する液相の濃度が500ppm〜2500ppmとなるように調整することが好適であり、1250ppmとなるように調整することがさらに好適であることが明らかとなった。
【0074】
(実施例2)
被検試料に対してカラムクロマトグラフィーを実施し、塩化物イオンと硫酸イオンの分離性について検討した。
【0075】
(1)実験装置
図3に示すカラムクロマトグラフィー装置1を用いて実験を行った。アクリル製カラム管2(内径1cm、高さ30cm、以下単にカラムと呼ぶこともある)に充填高さが10cmとなるように充填剤3(実施例1で使用した充填剤と同じもの)を充填し、カラム2の両端をフィルタ4で閉じた。フィルタ4は、孔径10〜30μmのAS樹脂製フィルタ(ダイセル化学工業、商品名パールコンフィルタM80)とした。第一タンク5内には被検試料を収容し、第二タンク6内には溶離液または純水を収容した。バルブ10aの切り替えにより、第一タンク5内の収容液と第二タンク6内の収容液のいずれを送液するかを選択し、バルブ10bを開け、定量ポンプ7(ソレノイド駆動定量ポンプ(タクミナ社製、PZD−30R))により送液して、目的の収容液をカラム2内に滴下させた。そして、バルブ10cを開けることによりカラム内の液相が流下するようにした。カラムから流下した液相は、フラクションコレクター8により所定の液量ごとに採取された。尚、図3において、バルブ10eはカラム2内の液相の液位を調節するバルブである。また、充填剤3の充填領域にて気泡が発生した場合には、カラム2を軽く揺すって充填剤3の充填領域から気泡を抜き、これをエア抜き用バルブ10dで抜くようにした。尚、本実施例では、気泡を抜く際の作業性を考慮して、カラム2の両端にフィルタ4を備え、充填剤3がカラム2外に飛び出すことを防止するようにしたが、カラムクロマトグラフィーを行うという本質的な意味合いにおいては、カラム2上端に備えたフィルタ4は必要が無いことは言うまでもない。また、カラム2下端に備えたフィルタ4についても、充填剤3をカラム2内に保持させながらも、通液性を確保できると共に耐薬品性が保証されていることが重要であり、具体的にはカラム法で流すもっとも影響が高いと考えられる2.0mol/L硝酸に耐え得る部材であれば、上述のものに限定されるものではないことも言うまでもない。
【0076】
尚、本実施例及び以降の実施例において、被検試料をカラム2内に少量(10mL程度)添加する場合には、定量ポンプ7を用いずに直接カラム2内に添加した。
【0077】
(2)実験方法
実施例1と同様の被検試料2mLをカラム2内に直接添加した。この際、充填剤3には色の変化は見られなかった。
【0078】
カラム2の内壁などに付着した可能性のある被検試料の飛沫を洗い流して充填剤3に吸着させるため、充填剤3上部のカラム2壁面を1.0mLの純水で洗浄した。充填剤3の充填高さよりも上部に溜まった純水については、バルブ10eを開いて、その液面を充填剤3の充填高さすれすれまで低下させた。この操作を3回繰り返し、4回目に注いだ純水はそのままカラム2内に残した。
【0079】
第二タンク6内に2000ppmの硝酸溶液を溶離液として収容し、バルブ10aを第二タンク6側に切り替えて、バルブ10bを開いて、定量ポンプ7により溶離液をカラム2内に滴下させた。滴下流速は2.0mL/分に制御した。この間、バルブ10cは開放しておき、カラム2下部から流下した液をフラクションコレクター8で所定の液量ごとに採取した。
【0080】
フラクションコレクター8にて採取した塩化物イオン濃度と硫酸イオン濃度をICP−MSにより分析した。尚、硫酸イオン(実際に測定しているのはプラズマで分解した硫黄原子)の濃度評価においては、測定時にXeガスをフローさせて16Oによる32Sへの影響を低減させ、検出感度を向上させた。塩化物イオンと硫酸イオンの定量下限はそれぞれ50ppb、30ppb(硫酸イオン換算)であった。
【0081】
(3)実験結果
塩化物イオン濃度及び硫酸イオン濃度に対する溶離液の滴下量の関係(クロマトグラム)を図4に示す。カラム2内に滴下した溶離液量が250mL程度であったことから、硫酸イオンのピークを完全に捉えることはできなかったものの、塩化物イオンのピークトップと硫酸イオンのピークトップは明確に分離していることが明らかとなった。このことから、カラムクロマトグラフィーにより塩化物イオンと硫酸イオンの分離ができることが示された。また、ピーク全量(ピークエリア全体)を取得した場合、塩化物イオンの回収率は添加量に対して100%となり、この手法による塩化物イオンの回収率が極めて高いことも明らかとなった。
【0082】
(実施例3)
36Cl/ClをAMSで分析するためには、10mg程度の塩化銀沈殿(塩化物イオン量2.5mgに相当)が必要である。本実施例では、塩化銀沈殿の必要量に余裕を持たせ、塩化物イオン10mgを回収量目標とした。この目標量を達成するためには、100ppmの塩化物イオンを含む被検試料100mLを処理する必要がある。このため、内径1cm高さ10cmの充填剤3(実施例1で使用した充填剤と同じもの)で処理可能な被検試料の量を把握し、この量に応じてカラムクロマトグラフィーを実施するための系をスケールアップする必要がある。そこで、実施例2と同様の実験方法で、被検試料を1mL、10mL、100mLとして、クロマトグラムのピーク形状を比較する試験を実施した。
【0083】
尚、1mL、10mLの被検試料で実験を行う際には、被検試料は直接カラムに注いだ。100mLの被検試料は、第一タンク5に収容して定量ポンプ7によりカラム2に滴下し、チューブ内に残存する可能性のある塩化物イオンと硫酸イオンを全てカラム2に流すために、サンプル滴下後ポンプとカラムをつなぐチューブ内体積の3倍量程度の純水を流してから、溶離液を滴下した。
【0084】
結果を図5に示す。図5から明らかなように、被検試料の量が増えるに従ってピークの形状は溶離液量が増加する方向にシフトするが、1mLと100mLを処理した場合を比較してもそのシフトは数十mL程度に留まっていた。
【0085】
ここで、100mLの被検試料を処理したときの塩化物イオンと硫酸イオンのピーク形状を図6に示す。また、図6の囲い部分の拡大図を図7に示す。塩化物イオンと硫酸イオンのピークは明確に分離しており、100mLの被検試料を十分に処理可能であることが明らかとなった。
【0086】
以上の結果から、36Cl/Clの分析に必要な量の塩化物イオンを得るためには、内径1cmのカラム2内に充填剤3を充填高さ10cm程度に充填すれば十分であることわかった。
【0087】
(実施例4)
種々の条件でカラムクロマトグラフィー試験を行い、塩化物イオンと硫酸イオンの分離に好適な条件について各種検討を行った。
【0088】
まず、硝酸溶液の硝酸濃度を2000ppmに固定して、充填剤3の充填高さを10cmから15cmに変えて実施例3と同様の試験を実施した。その結果、充填剤3の充填高さを増やすことで、塩化物イオンと硫酸イオンのピークは溶離液が増加する方向へとシフトしたが、塩化物イオンと硫酸イオンの分離能は、充填剤3の充填高さを10cmとした場合と比較して顕著な向上が見られなかった。
【0089】
そこで、次に、充填剤3の充填高さを15cmに固定し、硝酸溶液の硝酸濃度を2000ppm、1500ppm、1000ppmに変化させて実施例3と同様の試験を実施した。結果を図8に示す。硝酸溶液の硝酸濃度を低下させる程、塩化物イオンと硫酸イオンのピークが離れ、分離性が向上することが明らかとなった。また、硝酸溶液の硝酸濃度を1000ppmとすると、硫酸イオンのピークは検出されなかったものの、塩化物イオンのピークが広がって、塩化物イオンを完全に回収するためには500mL以上の溶離液を流す必要があるため、処理時間と廃液量が増大することになることがわかった。
【0090】
よって、分離性の向上と処理時間を考慮し、硝酸濃度が1500ppmの硝酸溶液を溶離液として用いることが最も適切であると判断した。また、充填剤3の充填高さについては、希薄溶液への対応において高さがある方が有利であることと、高さ15cmの場合でも処理時間が6時間程度に収まっていることから、高さ10cmで硝酸溶液の硝酸濃度をを変える試験は実施せず、高さ15cmの条件を採用した。
【0091】
上記のような検討を繰り返した結果、下記の条件で塩化物イオンと硫酸イオンを完全に分離でき、廃液の量も抑えられるとともに、処理時間も6時間程度に抑えられることが分かった。
・樹脂の充填高さ:15cm(内径1cmカラム、樹脂部分体積11.78cm3)
・樹脂:Dowex1x8(粒度200−400メッシュ)の硝酸イオン置換品
・溶離液:1500ppm硝酸
・被検試料滴下速度:2.0mL/分
・溶離液滴下速度:2.0mL/分
【0092】
上記の条件でカラムクロマトグラフィーを実施した場合、塩化物イオンのピークは溶離液滴下量150−350mLの範囲に完全に収まる。一方で硫酸イオンのピークが出現するのは溶離液を500mL以上流したときである(図8)。このため、カラムクロマトグラフィーを実施する際に、溶離液滴下量150−350mLの範囲のフラクションを取得することで、硫酸イオンを完全に排除して塩化物イオンを100%回収可能である。
【0093】
(実施例5)
塩化物イオン濃度が1ppmの希薄溶液を被検試料として、希薄溶液に対する本発明の方法の適用性を検討した。試験条件を表1に示す。
【0094】
【表1】

【0095】
試験結果を図9に示す。試験条件による塩化物イオンと硫酸イオンのピーク形状に大きな変化は無く、ほぼ同じ溶離液滴下量でピークが発現することが明らかとなった。この結果から、塩化物イオン濃度が100ppmの被検試料100mLを処理するのと同様の条件で、塩化物イオン濃度が1ppmの被検試料10000mLが処理可能であることを示している。
【0096】
以上より、本発明の分離方法は、従来の硫酸バリウム法には適用できなかった塩化物イオン濃度が1ppm程度の希薄溶液にも適用できることが明らかとなった。
【0097】
また、10000mLの被検試料に含まれていた塩化物イオン(1ppm)を溶離液滴下量150−350mLの範囲のフラクションとして100%回収できることから、塩化物イオンを50ppmに濃縮して回収できることも明らかとなった。
【0098】
(実施例6)
実地下水に近い模擬サンプルを調製し、従来法である硫酸バリウム法と本発明のカラムクロマトグラフィーを利用した方法で処理した場合の36Cl/ClのAMS分析値を比較する試験を行った。
【0099】
(1)模擬サンプルの調製
模擬サンプルは実地下水と近いものにするため、岩石間隙水の成分をリーチングによって抽出した液を利用した。オーストラリア大鑽井盆地のMarree地区で得られた岩石コア(採取深度30m)を粉砕し、1Lのポリビンに1cm程度に粉砕した岩石粒を200g程度入れた。ポリビンに約1Lの純水を加え、1日1回のハンドシェイクを加えながら4日間静置した。尚、本願発明者は過去に同様の試験を実施しており(中田弘太郎、 大山隆弘、長谷川琢磨、「圧縮抽水における圧力と水質の関係−主要アニオン・カチオンの挙動−」、2007年地下水学会秋季講演会予稿集、p33)、その結果から、4日程度の浸漬で間隙水成分を十分に抽出可能であると推察された。
【0100】
4日後、上澄み溶液をセルロース混合エステル製0.45μmのフィルタ(ADVANTEC、DISMIC25AS045AS)で濾過して濾液を得た。得られた溶液中の塩化物イオン濃度は1400ppm程度であった。濾液を純水で希釈し、試薬の硫酸ナトリウムを加えて、塩化物イオンと硫酸イオン濃度が共に100ppmとなるように調整したものを模擬サンプルとした。模擬サンプルの組成を表2に示す。
【0101】
【表2】

【0102】
(2)硫酸バリウム法による分析用試料調製
模擬サンプルを200mLずつ3本の容器に分け、硝酸を添加して酸性とした後、それぞれの容器に硝酸銀水溶液を加えて塩化銀を含む沈殿を得た。取得した沈殿は上記に説明した従来法である硫酸バリウム法で精製し、AMS分析用試料としての塩化銀沈殿を得、これをAMS測定に供した。
【0103】
(3)本発明の方法(カラムクロマトグラフィー利用)による分析用試料調製
模擬サンプル100mLを実施例4で得られた以下の条件によりカラムクロマトグラフィーに供し、溶離液滴下後0〜150mL、150〜350mLをそれぞれサンプルとして取得した。
・樹脂の充填高さ:15cm(内径1cmカラム、樹脂部分体積11.78cm3)
・樹脂:Dowex1x8(粒度200−400メッシュ)の硝酸イオン置換品
・溶離液:1500ppm硝酸
・被検試料滴下速度:2.0mL/分
・溶離液滴下速度:2.0mL/分
【0104】
その後、カラムには洗浄のため2.0mol/Lの硝酸を200mL滴下し、この滴下液もサンプルとして回収した。取得した溶液はICP−MSにより、塩化物イオン濃度と硫酸イオン濃度を評価した。
【0105】
また、模擬サンプル100mLを上記処理した2サンプルに加えて、模擬サンプルを100倍に希釈し、塩化物イオン濃度が1ppm程度となるようにした溶液10000mLをカラムクロマトグラフィーに供したサンプルも1サンプル調製した。
【0106】
これらのサンプルの塩化物イオン濃度と硫酸イオン濃度をICP−MSにより分析した結果を表3に示す。表3の回収率は、添加した溶液中の塩化物イオンまたは硫酸イオンの量に対する溶離液(カラム2を流下したフラクション)中の塩化物イオンまたは硫酸イオンの量をパーセンテージで表記したものである。また、表3の「−」は、ICP−MSの定量下限以下であることを示している。表3から分かるように、いずれの場合も硝酸滴下量0−150mLの範囲では塩化物イオンと硫酸イオンはともに検出されず、150−350mLで100%の塩化物イオンが検出され、2.0mol/Lの硝酸からほぼ100%の硫酸イオンが検出された。この結果から、実地下水に近い溶液組成においてもカラムクロマトグラフィーを用いた本発明の方法が十分に適用可能であり、溶離液の硝酸濃度を1500ppmとして硝酸滴下量150−350mLの範囲でサンプルを取得すれば良いことが分かる。また、硫酸イオンは2.0mol/Lの硝酸200mL中にほぼ100%が回収されており、この洗浄を実施すれば塩化物イオンと硫酸イオンの分離に、カラムが再利用できることも明らかとなった。
【0107】
【表3】

【0108】
これらのサンプルに硝酸銀溶液を添加して、AMS分析用試料としての塩化銀沈殿を得、これをAMS測定に供した。
【0109】
(4)36Cl/Clの分析結果
分析用試料をAMS測定に供して得られた36Cl/Cl分析値を表4に示す。カラム−3は、塩化物イオン濃度が1ppm程度となるようにした溶液10000mLをカラムクロマトグラフィーに供したサンプルの測定結果である。尚、表4には、加速器の検出器上で36S由来のカウントであると判断されたカウント値も併記した。
【0110】
【表4】

【0111】
36S由来のカウント値は本発明の方法で調製された分析用試料の方が、硫酸バリウム法で調製された分析用試料と比較して安定して低い値を示しており、本発明の方法で調製された分析用試料に含まれる36Sが低いことが明らかとなった。このことから、36Cl含有塩化物イオンと36S含有硫酸イオンの分離方法として、本発明が従来法である硫酸バリウム法よりも優れていることが示された。
【0112】
尚、本実施例の測定結果においては、36Cl/Clの値に、本発明の方法で調製された分析用試料と硫酸バリウム法で調製された分析用試料とで有意な差が見られなかった。これは、本実施例にて測定に供したサンプルの36Cl/Clの値が比較的大きく、36Clのカウント数が多かったため、36Sのうち36Clと誤ってカウントされた成分があっても、影響が少なかったことによるものと推察される。
【0113】
以上、本発明の分離方法は、36Cl含有塩化物イオンを36S含有硫酸イオンから確実に分離できるとともに、その分離能も、従来の硫酸バリウム法と比較して優れている。しかも本発明の方法によれば、処理にかかる時間も6時間程度と従来法と比較して圧倒的に短いものとできるとともに、作業者の主観や技量、熟練度等に依存する処理を含まないことから、従来法と比較して再現性も極めて高く、従来法では適用不可能であった希薄溶液にも対応可能である。つまり、分離能のみならず、処理時間や作業の簡便性の面においても従来法と比較して圧倒的に優れた技術であると言える。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明の分離方法、AMS分析用試料作製方法は、未だ地下水年代等が明らかにされていない世界中の様々な地域の地層中の地下水等の36Cl/Cl分析のための前処理を従来よりも簡易且つ高精度なものとして、世界中の様々な地域の地層中の地下水流動状態を明らかにし、環境汚染等が拡散するメカニズム等を明らかにする上で極めて有用な技術である。
【符号の説明】
【0115】
3 充填剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対立イオンが塩化物イオン以外の陰イオンからなる強塩基性陰イオン交換樹脂を充填剤として被検試料を対象にカラムクロマトグラフィーを行うことにより、前記被検試料中の36Cl含有塩化物イオンを36S含有硫酸イオンから分離することを特徴とする36Cl含有塩化物イオンの分離方法。
【請求項2】
溶離液として硝酸溶液を用い、前記硝酸溶液の濃度を前記カラムクロマトグラフィーにおいて前記充填剤と接触する液相の硝酸イオン濃度が500〜2500ppmに維持され得る濃度とする請求項1に記載の分離方法。
【請求項3】
前記対立イオンが硝酸イオンである請求項2に記載の分離方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の分離方法により36S含有硫酸イオンから分離された36Cl含有塩化物イオンを銀イオンと反応させて36Cl含有塩化銀を生成させることを特徴とする加速器質量分析用試料の作製方法。

【図1】
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【図10】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−8070(P2012−8070A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−145958(P2010−145958)
【出願日】平成22年6月28日(2010.6.28)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成22年3月発行の「平成21年度 地層処分技術調査等委託費(地層処分共通技術調査:岩盤中地下水移行評価技術高度化開発)ー地下水年代測定技術調査ー報告書」に発表
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度、経済産業省、地層処分技術調査等委託費(地層処分共通技術調査:岩盤中地下水移行評価技術高度化開発)委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000173809)財団法人電力中央研究所 (1,040)
【Fターム(参考)】