説明

4−[6−メトキシ−7−(3−ピペリジン−1−イル−プロポキシ)キナゾリン−4−イル]ピペラジン−1−カルボン酸(4−イソプロポキシフェニル)−アミドの新規な結晶形

薬学的適用において使用され得る、4−[6−メトキシ−7−(3−ピペリジン−1−イル−プロポキシ)キナゾリン−4−イル]ピペラジン−1−カルボン酸(4−イソプロポキシフェニル)−アミドの硫酸塩の結晶形が開示される。この硫酸塩の特定の単一の結晶形は、種々の特性および物理的測定値によって特徴付けられる。同様に、この硫酸塩を生成する方法、ならびに、このような塩を使用して、被験体における過剰なチロシンキナーゼ活性を阻害し、多くの疾患(心血管の疾患(例えば、動脈硬化症および血管再閉塞)、癌(例えば、急性リンパ性白血病のような白血病)、糸球体硬化性線維症疾患および炎症糸球体硬化症が挙げられる)を処置するため、ならびに細胞増殖性疾患の全身処置のための方法もまた検討される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
この出願は、2005年7月20日に出願された米国仮出願第60/700,926号の利益を主張する。上記出願の全体の教示は、参考として本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
化合物4−[6−メトキシ−7−(3−ピペリジン−1−イル−プロポキシ)キナゾリン−4−イル]ピペラジン−1−カルボン酸(4−イソプロポキシフェニル)−アミド(本明細書において、「化合物」)は、FLT−3レセプターチロシンキナーゼ(RTK)を阻害する新規な低分子薬物候補である。急性骨髄性白血病(AML)を有する患者のおよそ30%が、FLT−3遺伝子に突然変異(特に、遺伝子内縦列重複(ITD))を有し、これは、白血病の発達(growth)および残存(survival)に関し得る。非特許文献1。
【0003】
前臨床試験において、上記化合物は、ヒトFLT−3/ITD−陽性AML癌細胞を選択的に殺傷した。さらに、この化合物は血小板由来増殖因子レセプター(PDGFR)およびc−KIT、ならびにFLT−3に関連するチロシンキナーゼを標的とするので、これは、他の血液悪性疾患または固形腫瘍に対する、より広い潜在的な有用性を有し得る。現在、この化合物は、AMLのための潜在的な処置として、臨床試験中である。AMLを処置するためのこの化合物の使用は、米国食品医薬品局(FDA)によって承諾されたファスト・トラックの状態であった。www.mlnm.com、R&DおよびPipelineを参照のこと。
【0004】
上記化合物は、非特許文献2に記載されている。この報告された合成において、この化合物は、減圧下で乾燥させた後で塩酸塩として単離される。この方法の一つの欠点は、そのように形成された塩酸塩が、主にその吸湿性に起因して理想的な安定性を有さないことである。特許文献1は、硫酸塩としてこの化合物を製造するための方法を記載する。しかしながら、この方法は固体形態の混合物をもたらす。特許文献1にしたがって調製されたサンプルについてのX線粉末回折によって取得される測定は、この化合物の硫酸塩について1つより多い固体形態の存在を示す。
【0005】
多形とは、異なる特性を有する2つ以上の結晶形で存在する化合物の能力をいう。化学的多形は、同一の化学構造を有するが、異なる特性を有する。多形に依存して影響され得る重要な物理特性としては、吸湿性、溶解性、保存安定性、密度、硬度、流動特性およびバイオアベイラビリティが挙げられる。
【0006】
薬物候補の最適な物理特性および化学特性は、治療処置のための最良の候補を選択するために所望される。さらに、薬物製品を、食品医薬品局の規制の下、ヒト治療の使用に適切にするために、薬物の特定の物理特性は、好ましくあるべきであり、厳密な品質管理が可能であるべきである。
【0007】
多形は、そのX線粉末回折パターンによって特徴付けられ得る。多形を特徴付けるための他の有用な分析技術としては、示差走査熱量測定(DSC)および熱重量分析(thermogravimetric analysis)(TGA)が挙げられる。以前に知られた薬学的製品について報告されている、新規な固体形態の多くの例が存在する。例えば、非特許文献3ならびに特許文献2、特許文献3、特許文献4および特許文献5を参照のこと。
【0008】
薬物の多形の研究は、例えば、広範な種々の再結晶条件を使用する、一連の薬物の再結晶を実行すること、次に、再結晶させた産物を分析することを含む試行錯誤によってなされ得る。この試行錯誤アプローチは、面倒であり、かつ時間を浪費する。あるいは、新規な多形の発見は、物質の種々の物理形態および/または化学形態を研究するように特別に設計された装置を使用して自動化された様式でなされ得る(例えば、特許文献6を参照のこと)。
【特許文献1】国際公開第02/36587号パンフレット
【特許文献2】米国特許第5,945,405号明細書
【特許文献3】米国特許第6,391,906号明細書
【特許文献4】米国特許第6,376,469号明細書
【特許文献5】米国特許第6,514,953号明細書
【特許文献6】国際公開第01/77690号パンフレット
【非特許文献1】Cancer Cell(2002)1(5)、421〜432
【非特許文献2】Pandeyら、J.Med.Chem.(2002)45、3772〜3793
【非特許文献3】Journal of Pharmaceutical and Biomedical Analysis(1985)3(4)、pp 303〜313
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の要旨)
上記化合物の硫酸塩が明確に定義された条件下で結晶化され得、特定の好ましい固体の結晶形を提供し得ることが見出された。これらの結晶形は、均質であり、かつこの化合物の先行技術の形態に関する特性と比較して、優れた物理特性を有する。
【0010】
本発明の一実施形態は、4−[6−メトキシ−7−(3−ピペリジン−1−イル−プロポキシ)キナゾリン−4−イル]ピペラジン−1−カルボン酸(4−イソプロポキシフェニル)−アミドの硫酸塩に関し、これは、少なくとも60重量%の結晶である。より詳しくは、この硫酸塩は、60重量%、80重量%、または95重量%の単一の結晶形であり、可能性のある単一の結晶形は、本明細書に記載される。
【0011】
本発明の別の実施形態において、薬学的組成物は、薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤;および、4−[6−メトキシ−7−(3−ピペリジン−1−イル−プロポキシ)キナゾリン−4−イル]ピペラジン−1−カルボン酸(4−イソプロポキシフェニル)−アミドの硫酸塩を含む。この硫酸塩は、少なくとも60重量%の結晶である。より詳しくは、この薬学的組成物の硫酸塩は、60重量%、80重量%、または95重量%の単一の結晶形であり、可能性のある単一の結晶形は、本明細書に記載される。
【0012】
本発明の実施形態はまた、有効量の4−[6−メトキシ−7−(3−ピペリジン−1−イル−プロポキシ)キナゾリン−4−イル]ピペラジン−1−カルボン酸(4−イソプロポキシフェニル)−アミドの硫酸塩(単一の結晶形で少なくとも60重量%)を、投与を必要とする被験体に投与することによる、チロシンキナーゼ阻害を必要とする被験体、癌を有する被験体、または白血病を有する被験体を処置するための方法に関し、可能性のある単一の結晶形は、本明細書に記載される。本発明の実施形態はまた、4−[6−メトキシ−7−(3−ピペリジン−1−イル−プロポキシ)キナゾリン−4−イル]ピペラジン−1−カルボン酸(4−イソプロポキシフェニル)−アミドの硫酸塩を調製するための方法に関する。この方法は、単一の結晶形での硫酸塩の薬学的組成物を提供する工程、およびこの組成物を顆粒化する工程を包含する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(発明の詳細な説明)
本発明の実施形態は、化合物4−[6−メトキシ−7−(3−ピペリジン−1−イル−プロポキシ)キナゾリン−4−イル]ピペラジン−1−カルボン酸(4−イソプロポキシフェニル)−アミドの新規な固体形態(すなわち、多形)を提供する。この化合物の化学構造は、式(I):
【0014】
【化1】

【0015】
によって示される。
【0016】
本発明の特定の実施形態は、結晶である4−[6−メトキシ−7−(3−ピペリジン−1−イル−プロポキシ)キナゾリン−4−イル]ピペラジン−1−カルボン酸(4−イソプロポキシフェニル)−アミドの硫酸塩(本明細書において「硫酸塩」)に関する。より詳しくは、この結晶性の硫酸塩は、単一の結晶形であり得る。この結晶性の硫酸塩(すなわち、この硫酸塩の単一の結晶形)は、この硫酸塩の総量のうち、少なくとも特定の重量%であり得る。特定の%としては、60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、または60%と100%との間の任意の%が挙げられる。
【0017】
本明細書で使用される「結晶」とは、高度に規則的な化学構造を有する固体をいう。特に、結晶性の硫酸塩は、この硫酸塩の1つ以上の単一の結晶形として生成され得る。この硫酸塩の単一の結晶形は、単一の結晶または、各結晶が同一の結晶形を有する(例えば、全ての結晶が形態Cである)複数の結晶を含み得る。同様に、用語「単一の結晶形」および「多形」は同義であり;この用語は、異なる特性(例えば、異なるXRPDパターン、異なるDSC走査結果)を有する結晶間を区別する。代表的に、偽多形(pseudopolymorph)は、物質の異なる溶媒和物であり、したがって、それらの特性は、互いに異なる。それゆえ、本明細書で使用される場合、用語「多形」は、この硫酸塩の他の結晶形および偽多形(例えば、この硫酸塩の溶媒和させた結晶形)を含む。
【0018】
結晶性の硫酸塩は、上記硫酸塩の単一の結晶形(例えば、形態C)であっても、異なる単一の結晶形の混合物(例えば、形態Cおよび形態Bの混合物、形態C、形態Bおよび形態Fの任意の組み合わせの混合物)であってもよい。
【0019】
本発明の実施形態はまた、結晶性の硫酸塩のうち、少なくとも特定の重量%が特定の単一の結晶形である、結晶性の硫酸塩に関する。特定の重量%は、60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、または60%と100%との間の任意の%であり得る。
【0020】
硫酸塩の特定の重量%が単一の結晶形である場合、この硫酸塩の残りは、この硫酸塩の非晶質形態のいくつかの組み合わせ、および/または、この単一の結晶形を除くこの硫酸塩の1つ以上の結晶形である。この結晶性の硫酸塩が、この硫酸塩の1つ以上の特定の形態として定義される場合、その残りは、非晶質形態、および/または、指定される1つ以上の特定の形態ではない結晶形から構成される。単一の結晶形の例としては、この硫酸塩の形態B、形態C、形態D、形態F、形態Gおよび形態H、ならびに、本明細書に議論されるように1つ以上の特性によって特徴付けられる単一の結晶形の記載が挙げられる。
【0021】
4−[6−メトキシ−7−(3−ピペリジン−1−イル−プロポキシ)キナゾリン−4−イル]ピペラジン−1−カルボン酸(4−イソプロポキシフェニル)−アミドの硫酸塩の特定の多形についての以下の説明において、本発明の実施形態は、この硫酸塩の特定の結晶性「形態」(例えば、形態C)に関して記載され得る。しかしながら、この硫酸塩の特定の結晶形はまた、特定の「形態」に関してか、またはそれに関係なく、本明細書に記載される多形の1つ以上の特徴によって特徴付けられ得る。
【0022】
形態C
本発明の一実施形態において、上記硫酸塩の単一の結晶形は、形態Cとして特徴付けられる。この多形はまた、CuKα線を使用して得られ、図1に示されるX線粉末回折(本明細書において、「XRPD」と呼ばれる)パターンによって特徴付けられる。本発明の特定の実施形態において、この多形は、表1に列挙される、図1の1つ以上のピークによって特徴付けられる。より詳細な本発明の実施形態において、この多形は、表1における1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、または9個のピークによって特徴付けられる;なおより詳細には、これらのピークは、3.7°、11.1°、12.1°、15.5°、17.3°、22.6°、23.9°、25.6°、および29.0°の2θ角度で同定される。全ての2θ角度は、±0.2°の誤差内であることが知られている。
【0023】
【表1】

【0024】
本発明の別の実施形態において、上記硫酸塩の形態Cは、図2に示される示差走査熱量測定(本明細書において、「DSC」と呼ばれる)プロファイル210によって特徴付けられる。プロファイル210は、形態Cを含むサンプルからの温度の関数として熱流をプロットする。プロファイル210は、2つの吸熱転移(endothermic transition)211、212によって特徴付けられる。第一の転移211は、59℃における最大の熱流を示す。第二の転移212は、190℃における最大の熱流を示し、これは、約184℃の温度で始まる。この転移212の積分した熱損失は、サンプル1gあたり49.6Jであることが算出される。これらの温度は±3℃の誤差を有し、10℃/分の温度走査速度(temperature scanning rate)で実施される。
【0025】
形態Cはまた、図2に示される熱重量分析(thermal gravimetric analysis)(本明細書において、「TGA」と呼ばれる)プロファイル220によって特徴付けられる。Theプロファイル220は、温度の関数としてサンプル重量の損失%をグラフにする(約10℃/分の温度速度変化(temperature rate change))。温度が室温から100℃に変化するときに、重量損失221は、サンプル重量の約5.2%の損失を表す。別の重量損失222は、DSCプロファイル210の第二の吸熱転移212の開始とほぼ同じ温度で始まる。この重量損失222は、サンプルの融解および/または分解と一致する。したがって、このサンプルは、約184℃の融点/分解温度を有することによって特徴付けられる。これらの温度は、±3℃の誤差を有する。
【0026】
形態Cはまた、硫酸塩一分子あたり、約1.8〜約2.0個の水分子の水和を有することによって特徴付けられる。TGAプロファイル220の第一の重量損失221は、重量損失がこの硫酸塩の形態の完全な脱水のみに起因する場合、硫酸塩一分子あたり約2.0個の水分子の損失に対応する。形態Cの水和は、カールフィッシャー滴定を使用する硫酸塩のサンプルについての測定によって独立して確認される。
【0027】
本発明の別の実施形態は、硫酸塩の形態Cのサンプルを特徴付ける蒸気吸着プロファイル310(図3に示される)を利用する。環境の相対湿度が、25℃の温度で0%と90%との間で変化される場合に、プロファイル310は、無水ベース(anhydrous basis)で形態Cのサンプルの重量変化を示す。プロファイル310は、互いに重ね合わせている。プロファイル310の始点および終点が重なっているので、形態Cは可逆性の吸着/脱着現象によって特徴付けられる。また、プロファイル310は、約3%または4%の相対湿度において重量の段階的変化311を示す。この段階的変化311は、サンプルについて無水ベースで、約3.0%の重量変化によって特徴付けられる。したがって、形態Cは、25℃において、相対湿度を約3%または4%未満に下げる場合に、1つ以上の他の形態へ変換する水和した多形として特徴付けられる。この変換はまた、形態Cが、この化合物一分子あたり約1.8〜2.0個の水和水を含むことを示す。
【0028】
形態B
本発明の一実施形態において、上記硫酸塩の単一の結晶形は、形態Bとして特徴付けられる。この多形はまた、CuKα線を使用するX線粉末回折(XRPD)パターン(図4に示される)によって特徴付けられる。本発明の特定の実施形態において、この多形は、表2に列挙される1つ以上のピークによって特徴付けられる;これらのピークは、図4における特定のピークに対応する。より詳細な本発明の実施形態において、この多形は、表2における1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個または13個のピークによって特徴付けられる;なおより詳細には、これらのピークは、7.1°、8.0°、9.0°、11.1°、12.7°、14.4°、15.0°、16.1°、17.1°、19.4°、20.9°、23.4°および24.4°の2θ角度において同定される。全ての2θ角度は、±0.2°の誤差内であることが知られている。
【0029】
【表2】

【0030】
本発明の関連する実施形態において、上記硫酸塩の形態Bは、1つ以上の単位格子パラメータによって特徴付けられる。この格子パラメータを、120°Kにおける形態Bのサンプルについて取得したXRPDデータから得た。この格子パラメータを、表3にまとめる。この結晶は、三斜晶性(Triclinic)P−1構造によって特徴付けられる。この結晶構造にしたがって、この結晶は、各薬物分子の位置に関して存在する、約6〜約7個の格子水分子部位(lattice water molecule site)を有することによって特徴付けられる。しかしながら、存在する水分子の実際の数は、この結晶が曝露される環境の条件に依存する。
【0031】
【表3】

【0032】
本発明の別の実施形態において、上記硫酸塩の形態Bは、図5に示されるDSCプロファイル510によって特徴付けられる。グラフ510は、形態Bを含むサンプルからの温度の関数として熱流をプロットする(約10℃/分の温度速度変化)。プロファイル510は、2つの吸熱転移511、512によって特徴付けられる。第一の転移511は、50℃における最大の熱流を示す。サンプルの融点/分解と一致する、第二の転移512は約216℃における最大の熱流を示し、これは約213℃の温度で開始する。この転移512の積分した熱損失は、サンプル1gあたり82.3Jであることが算出される。これらの温度は、±3℃の誤差を有する。
【0033】
上記の多形はまた、図5に示されるTGAプロファイル520によって特徴付けられる。プロファイル520は、温度の関数としてサンプル重量の損失%をグラフにする(約10℃/分の温度速度変化)。温度が室温から68℃に変化するときに、重量損失521は、サンプル重量の約9.3%の損失を表す。重量損失521が水の損失のみに起因する場合に、重量損失は、一薬物分子あたり、3.7個の水分子の損失に対応する。この状態における形態Bのこの水和の喪失は、カールフィッシャー滴定を使用する硫酸塩のサンプルについての測定によって確認される。
【0034】
別の重量損失522は、DSCプロファイル510の第二の吸熱転移512の開始とほぼ同じ温度で始まる。この重量損失522は、サンプルの融解および/または分解と一致する。したがって、このサンプルは、約213℃の融点/分解温度を有することによって特徴付けられる。これらの温度は、±3℃の誤差を有する。
【0035】
形態F
本発明の別の実施形態において、上記硫酸塩の単一の結晶形は、形態Fとして特徴付けられる。この単一の結晶形はまた、CuKα線を使用して得られるX線粉末回折(XRPD)パターン(図6に示される)の特徴によって特徴付けられる。本発明の特定の実施形態において、この多形は、表4における1つ以上のピークによって特徴付けられ、これらのピークは、図6から得られる。より詳細な本発明の実施形態において、この多形は、表4における1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個または10個の主要なピークによって特徴付けられる;なおより詳細には、これらのピークは、7.2°、9.0°、10.3°、16.6°、22.1°、22.8°、24.0°、25.9°、26.6°および27.9°の2θ角度において同定される。全ての2θ角度は、±0.2°の誤差内であることが知られている。
【0036】
【表4】

【0037】
本発明の別の実施形態において、上記硫酸塩の形態Fは、図7に示されるDSCプロファイル710によって特徴付けられる。グラフ710は、形態Fを含むサンプルからの温度の関数としての熱流をプロットし、このサンプルは10℃/分の温度走査速度に供される。グラフ710は、約212℃の温度で始まり、約216℃において最大の熱流を示す吸熱転移711によって特徴付けられる。この転移711の積分した熱損失は、サンプル1gあたり81.5Jであることが算出される。これらの温度は、±3℃の誤差を有する。
【0038】
形態Fはまた、図7に示されるTGAプロファイル720によって特徴付けられる。グラフ720は、温度の関数としてサンプル重量の損失%を追跡する(track)(約10℃/分の温度速度変化)。温度が室温から約100℃に変化するときに、重量損失721は、サンプル重量の約1.8%の損失を表す。別の重量損失722は、DSCプロファイル710の第二の吸熱転移712の開始とほぼ同じ温度で始まる。重量損失722は、サンプルの融解および/または分解と一致する。したがって、このサンプルは、約212℃の融点/分解温度を有することによって特徴付けられる。これらの温度は、±3℃の誤差を有する。
【0039】
形態Fはまた、硫酸塩一分子あたり、約0.3個〜約0.7個の水分子の水和を有することによって特徴付けられる。重量損失がこの硫酸塩の形態の完全な脱水のみに起因する場合に、TGAプロファイル720の重量損失721は、硫酸塩一分子あたり、約0.7個の水分子の損失に一致する。形態Fの水和は、カールフィッシャー滴定を使用する硫酸塩のサンプルについての測定によって独立して確認され、これは、約1.64重量%および約1.73重量%の重量損失を示す。
【0040】
形態G
本発明の別の実施形態において、上記硫酸塩の単一の結晶形は、形態Gとして特徴付けられる。この多形は、CuKα線を使用して形態Gのサンプルを測定することから得られるXRPDパターン(図8に示される)によって特徴付けられる。本発明の特定の実施形態において、この多形は、表5における1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個または10個のピークによって特徴付けられるによって特徴付けられ、これらのピークは図8から得られる。より詳細には、これらのピークは、3.8°、10.1°、11.6°、13.0°、15.9°、17.2°、18.1°、22.2°、23.1°および23.4°から選択される。これらの2θ角度は、±0.2°の誤差を有する。
【0041】
【表5】

【0042】
形態Gはまた、図9に示される温度依存的なXRPDデータによって特徴付けられる。図9の二次元領域における任意の特定の点におけるコントラストは、対応する2θ角度およびサンプルが試験される温度に関連する強度の読み取りと一致する。図9に示されるように、線910の消失、線911の減退、約64℃〜約69℃における線912の出現は、約65℃より高い温度で形態Gが出現することを示す。
【0043】
上記硫酸塩の形態Gは、無水物として特徴付けられる。DSCおよびTGAを使用してなされた走査は、約65℃より高い温度での形態Gの脱水される性質を確認する。
【0044】
形態H
本発明の一実施形態は、形態Hと示される上記硫酸塩の単一の結晶形に関する。XRPDパターン(CuKα線を使用して作製され、この単一の結晶形を特徴付ける)を図10に示す。この多形はまた、図10における1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個または11個のピークによって特徴付けられ、これらの一部は、表6に列挙される。より詳細には、これらのピークは、3.8°、11.5°、12.0°、12.7°、15.6°、17.6°、18.3°、19.5°、24.2°、25.1°および26.2°から選択される。これらの2θ角度は、±0.2°の誤差を有する。
【0045】
【表6】

【0046】
本発明の別の実施形態において、形態Hは、図11に示されるDSCプロファイル1110によって特徴付けられる。グラフ1110は、10℃/分の温度走査速度における温度の関数として、サンプルからの熱流をプロットする。グラフ1110は、2つの吸熱転移によって特徴付けられる:第一の転移1111は、70℃において最大の熱流を有し、そして第二の転移1112は、191℃における最大の熱流を有する。第二の転移1112は、約182℃の温度で始まり、サンプル1gあたり51.2Jと算出される、積分熱出力(integrated heat output)を有する。
【0047】
上記硫酸塩の形態Hはまた、図11に示されるTGAプロファイル1120によって特徴付けられる。グラフ1120は、温度の関数としてサンプル重量の損失%を追跡する(10℃/分の温度変化速度)。温度が室温から約100℃に変化するときに、重量損失1121は、サンプル重量の約5.1%の損失を表す。別の重量損失1122は、DSCプロファイル1110の第二の吸熱転移1112の開始とほぼ同じ温度で始まる。この重量損失1122は、サンプルの融解および/または分解と一致する。したがって、このサンプルは、約182℃の融点/分解温度によって特徴付けられる。DSCおよびTGAプロットに対応する温度は、±3℃の誤差を有する。
【0048】
形態D
形態Dは、上記硫酸塩の別の多形である。形態Dは、CuKα線を使用して作製されるXRPDプロファイル(図12に示される)によって特徴付けられる。この多形はまた、図12における1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個または12個のピークによって特徴付けられる;これらのピークの一部のリストは、表7に示される。より詳細には、これらのピークは、3.7°、10.1°、12.0°、15.2°、16.2°、17.8°、22.7°、23.4°、24.7°、26.4°、27.4°および28.6°から選択される。これらの2θ角度は、±0.2°の誤差を有する。
【0049】
【表7】

【0050】
本発明の別の実施形態において、形態Dは、図13に示されるDSCプロファイル1310によって特徴付けられる。グラフ1310は、10℃/分の温度走査速度における温度の関数として、形態Dのサンプルからの熱流をプロットする。グラフ1310は、2つの吸熱転移によって特徴付けられる:第一の転移1311は、36℃における最大の熱流を有し、そして第二の転移1312は、193℃における最大の熱流を有する。第二の転移1312は、約185℃の温度で始まり、サンプル1gあたり60.9Jであると算出される積分熱出力を有する。
【0051】
形態Dはまた、図13に示されるTGAプロファイル1320によって特徴付けられる。グラフ1320は、温度の関数としてサンプル重量の損失%を追跡する。温度が室温から約100℃に変化するときに、重量損失1321は、サンプル重量の約5.8%の損失を表す。別の重量損失1322は、DSCプロファイル1310の吸熱転移1312の開始とほぼ同じ温度で始まる。この重量損失1322は、サンプルの融解および/または分解と一致する。したがって、このサンプルは、約185℃の融点/分解温度によって特徴付けられる。DSCおよびTGAプロファイルの温度は、±3℃の誤差を有する。
【0052】
形態Dはまた、図14に示される蒸気吸着プロファイルによって特徴付けられる。プロファイル1410、1420は、環境の相対湿度を、25℃の温度で0%と40%との間で循環させるときの、無水ベースでの形態Dのサンプルの重量変化を示す。各プロファイルは、約2.0〜2.5%と5.0〜5.5%との間の遷移重量変化(transition weight change)を示す。これらの蒸気吸着プロファイルはまた、ヒステリシス現象を示し、各プロファイルについての重量変化の遷移が、形態Cに対してより高い相対湿度で生じる(図3と比較する)。
【0053】
本発明の他の実施形態は、本明細書で議論される単一の結晶形のいずれかについての上記の特徴の組み合わせによって特徴付けられる、硫酸塩の単一の結晶形に関する。特徴付けは、特定の多形に関して記載される、1つ以上のXRPD、TGA、DSC、および水吸着/脱着測定の任意の組み合わせにより得る。例えば、この硫酸塩の単一の結晶形は、XRPD走査における主要なピークの2θ位置に関するXRPD結果の任意の組み合わせ、および/または、XRPD走査から得られるデータから導かれる1つ以上の格子パラメータの任意の組み合わせによって特徴付けられ得る。この硫酸塩の単一の結晶形はまた、指定の温度範囲および/または特定の重量損失遷移が始まる温度にわたるサンプルに関する重量損失のTGA測定によって特徴付けられ得る。熱流遷移(heat flow transition)および/またはサンプルが熱流遷移を受け始める温度の間の最大の熱流に関する温度のDSC測定はまた、結晶形を特徴付け得る。一連の相対湿度(例えば、0%〜90%)にわたる水吸着/脱着測定によって決定される、サンプルの重量変化、および/または、無水硫酸塩一分子あたりの、水の吸着/脱着における変化はまた、この硫酸塩の単一の結晶形を特徴付け得る。
【0054】
複数の分析技術を使用する単一の結晶形の特徴付けの組み合わせの例としては、XRPD走査の少なくとも1つの主要なピークの2θ位置、および、対応するDSC測定によって観察される1つ以上の熱流遷移の間の最大の熱流に関する温度;XRPD走査の少なくとも1つの主要なピークの2θ位置、および、対応するTGA測定における指定の温度範囲にわたるサンプルに関する1つ以上の重量損失;XRPD走査の少なくとも1つの主要なピークの2θ位置、対応するDSC測定によって観察される1つ以上の熱流遷移の間の最大の熱流に関する温度、および対応するTGA測定における指定の温度範囲にわたるサンプルに関する1つ以上の重量損失;ならびに、XRPD走査の少なくとも1つの主要なピークの2θ位置、対応するDSC測定によって観察される1つ以上の熱流遷移の間の最大の熱流に関する温度、対応するTGA測定における指定の温度範囲にわたるサンプルに関する1つ以上の重量損失、および、一連の相対湿度にわたる水吸着/脱着測定によって決定される無水塩一分子あたりの水の吸着/脱着の変化が挙げられる。同様に、上記例の各々は、XRPD走査の少なくとも1つの主要なピークの2θ位置の使用を単一の結晶形の1つ以上の格子パラメータの使用に置換し得る。
【0055】
上記で議論された特徴付けの組み合わせは、本明細書で議論される硫酸塩の任意の多形(例えば、形態B、形態C、形態D、形態F、形態Gまたは形態H)を記載するために使用され得る。
【0056】
本発明の実施形態はまた、薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤;および、本明細書に記載される4−[6−メトキシ−7−(3−ピペリジン−1−イル−プロポキシ)キナゾリン−4−イル]ピペラジン−1−カルボン酸(4−イソプロポキシフェニル)−アミドの硫酸塩(すなわち、この硫酸塩の単一の結晶形)を含む薬学的組成物に関する。
【0057】
これらの組成物中で使用され得る薬学的に受容可能なキャリアとしては、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質(例えば、ヒト血清アルブミン)、緩衝物質(例えば、リン酸塩)、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和した植物脂肪酸の部分的なグリセリド混合物、水、塩または電解質(例えば、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロースベースの物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、蝋、ポリエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロックポリマー、ポリエチレングリコールおよび羊毛脂)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0058】
本発明の特定の実施形態において、薬学的組成物は、上記硫酸塩、ならびに二酸化ケイ素、微小結晶性セルロース、α化デンプン、フマル酸ステアリルナトリウムおよびスクロースのうちの少なくとも1つを含む。より詳細には、この薬学的組成物は、この硫酸塩の結晶形(好ましくは、単一の結晶形、そしてより好ましくは、形態C)をこの薬学的組成物の約40%〜約60%の重量%で含み、かつ、二酸化ケイ素および微小結晶性セルロースのうちの少なくとも1つを含む。なおより詳細には、本発明の一実施形態は、約50%のこの硫酸塩の形態C、約3%の二酸化ケイ素(例えば、Cab−O−Sil M−5P,Cabot)、約10%のα化デンプン(例えば、Spresss B820,GPC)、約2%のフマル酸ステアリルナトリウム(例えば、Pruv,Penwest)、そして約35%の微小結晶性セルロース(例えば、Avicel PH−101,FMC Biopolymer)を含む薬学的組成物に関する。
【0059】
本発明の別の特定の実施形態において、本明細書に記載されるように、薬学的組成物は、この組成物を顆粒化することによって調製される。より詳細には、ローラーコンパクター(roller compactor)(例えば、Alexanderwerk WP 120 X 40 V)を使用して、この顆粒化を実行し、カプセル充填に適切な形態にこの組成物を顆粒化する。ローラーコンパクターによって及ぼされる圧力、およびコンパクターの速度は、所望の顆粒化を達成するのに適切な任意のものであり得る。具体的には、約20barと100barとの間の圧力が使用され得る。本発明の特定の実施形態において、約50%の上記硫酸塩の形態C、約3%の二酸化ケイ素、約10%のα化デンプン、約2%のフマル酸ステアリルナトリウム、および約35%の微小結晶性セルロースを含む薬学的組成物は、約60barと約100barとの間の圧力、毎分回転数3のローラー速度でローラー圧縮(roller compact)される。本発明の関連する実施形態において、薬学的組成物は、この段落中に記載される方法に従って調製される。
【0060】
本発明の好ましい実施形態において、上記硫酸塩と二酸化ケイ素、微小結晶性セルロース、α化デンプン、フマル酸ステアリルナトリウムおよびスクロースとの組み合わせが、ローラーコンパクター(Alexanderwerk WP 120 X 40 V)を使用して顆粒化され、カプセル充填に適切な薬学的組成物を形成する。本発明のより好ましい実施形態において、この薬学的組成物は、約50重量%の硫酸塩の形態C、約3重量%の二酸化ケイ素(Cab−O−Sil M−5P,Cabot)、約10重量%のα化デンプン(Spresss B820,GPC)、約2重量%のフマル酸ステアリルナトリウム(Pruv,Penwest)、および約35重量%の微小結晶性セルロース(Avicel PH−101,FMC Biopolymer)を含む。この混合物は、60〜100barの圧力範囲、毎分回転数3のローラー速度でローラー圧縮される。生じる産物は、300〜600のタップ(tap)を使用してVanKel Tapped Density Testerによって測定した場合、0.293g/mLのかさ密度;0.509g/mLの軽く叩いた場合の密度(tapped density)を有し、42.5%のCarr Indexを有する。
【0061】
本発明の他の実施形態において、有効量の上記硫酸塩は、チロシンキナーゼ阻害を必要とする被験体に投与される。このチロシンキナーゼは、特に、FLT−3レセプターチロシンキナーゼであり得る。過剰なチロシンキナーゼ活性を阻害することは、細胞の生存、増殖および移動に関与する多くの疾患(心血管の疾患(例えば、動脈硬化症および血管の再閉塞)、癌、糸球体硬化性線維症疾患および炎症を含む)を処置すること、ならびに細胞増殖性疾患の全身処置に役立ち得る。本発明の好ましい実施形態において、この疾患は、肺癌、乳癌、結腸直腸癌、膵臓癌または前立腺癌である。より好ましい実施形態において、この疾患は、神経膠腫または白血病(例えば、急性リンパ性白血病)である。なおより好ましい実施形態において、この疾患は急性骨髄性白血病である。この硫酸塩は、本明細書に記載の任意の硫酸塩によって特徴付けられる結晶性の硫酸塩(すなわち、この硫酸塩の単一の結晶形)を含み得る。
【0062】
「有効量」とは、受容不能な副作用を含むことなく、処置されている被験体の発症を阻害するか、処置されている被験体の既存の症状を緩和するのに有効な量をいう。有効量の決定は、特に本明細書に提供される詳細な開示を鑑みて、十分に当業者の能力の範囲内である。このような化合物の毒性および治療効能は、例えば、LD50(50%の集団に対して致命的な用量)およびED50(50%の集団に治療上有効な用量)を決定することに関して、細胞培養物または実験動物における標準的な薬学的手順によって決定することができる。投薬量は、使用される投薬形態および利用される投与経路に依存してこの範囲内で変動し得る。正確な処方物、投与経路、および投薬量は、患者の状態を考慮して個々の医師によって選択される。投薬量および間隔は、所望の治療効果を維持するのに十分な活性化合物の血漿レベルを提供するように個別に調整され得る。
【0063】
本発明の好ましい実施形態にしたがって、上記硫酸塩は、被験体(哺乳動物、そして好ましくはヒトを含む)への薬学的投与のために処方される。薬学的組成物は、経口投与され得るか、非経口投与され得るか、吸入スプレーによって投与され得るか、局所投与され得るか、直腸投与され得るか、鼻投与され得るか、頬投与され得るか、膣投与され得るか、または移植されたレザバを介して投与され得る。本明細書で使用される場合、用語「非経口(parenteral)」としては、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、滑液包内、胸骨内、鞘内、肝臓内、病変内および頭蓋内の注射技術または注入技術が挙げられる。好ましくは、この組成物は、経口投与されるか、または静脈内投与される。
【0064】
上記硫酸塩を含む組成物の無菌の注射可能な形態は、水性懸濁物であっても油性懸濁物であってもよい。これらの懸濁物は、適切な分散剤または湿潤剤および懸濁剤を使用する当該分野で公知の技術にしたがって処方され得る。この無菌の注射可能な調製物はまた、非毒性の非経口的に受容可能な希釈剤または溶媒中の、無菌の注射可能な溶液または懸濁物(例えば、1,3−ブタンジオール中の溶液)であり得る。使用され得る受容可能なビヒクルおよび溶媒の中には、水、リンゲル溶液、等張食塩水、およびデキストロースがある。さらに、無菌の固定油は、溶媒または懸濁媒体として従来より使用される。この目的のために、合成モノグリセリドまたはジグリセリドを含む任意の無刺激の固定油が使用され得る。脂肪酸(例えば、オレイン酸およびそのグリセリド誘導体)は、注射物(injectable)の調製に有用である。なぜなら、これらは天然の薬学的に受容可能な油(例えば、オリーブ油またはひまし油、特に、それらのポリオキシエチル化バージョン)であるからである。これらの油性溶液または油性懸濁物はまた、長鎖アルコール希釈剤または分散剤(例えば、カルボキシメチルセルロース、または、エマルジョンおよび懸濁物を含む薬学的に受容可能な投薬形態の処方に一般的に使用される類似の分散剤)を含み得る。他の一般的に使用される界面活性剤(例えば、Tween、Span、および、薬学的に受容可能な固体、液体もしくは他の投薬形態の製造に一般的に使用される他の乳化剤またはバイオアベイラビリティ増強剤(bioavailability enhancer))もまた、処方の目的のために使用され得る。
【0065】
本発明の実施形態と一致する硫酸塩は、任意の経口的に受容可能な投薬形態(カプセル、錠剤、水性懸濁物または水溶液が挙げられるが、これらに限定されない)で経口投与され得る。経口使用のための錠剤の場合、一般的に使用されるキャリアとしては、ラクトースおよびコーンスターチが挙げられる。潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウムまたはフマル酸ステアリルナトリウム)もまた代表的に添加される。カプセル形態での経口投与のために、有用な希釈剤としては、ラクトースおよびデンプン(例えば、乾燥コーンスターチまたはα化デンプン)が挙げられる。他の有用な賦形剤としては、コロイド状二酸化ケイ素、微小結晶性セルロースおよびスクロースが挙げられる。水性懸濁物が経口使用のために必要とされる場合、活性成分は、乳化剤および懸濁剤と合わされる。所望される場合、特定の甘味剤、矯味矯臭剤または着色剤もまた添加され得る。
【0066】
あるいは、上記硫酸塩は、直腸投与のための坐剤の形態で投与され得る。これらは、薬剤と適切な非刺激性賦形剤とを混合することによって調製され得る。この賦形剤は、室温で固体であるが、直腸温度では液体であり、それゆえ直腸で融解して、薬物を放出する。このような物質としては、カカオ脂、蜜蝋およびポリエチレングリコールが挙げられる。
【0067】
特に、処置の標的(眼、皮膚または下部腸管の疾患を含む)が局所適用によって容易に接近可能な領域または臓器を含む場合に、上記硫酸塩はまた局所投与され得る。適切な局所処方物は、これらの領域または臓器の各々のために容易に調製される。
【0068】
下部腸管に対する局所適用は、直腸坐剤処方物(上記を参照のこと)または適切な浣腸処方物により達成され得る。局所的な経皮パッチもまた使用され得る。局所適用のために、この硫酸塩は、1つ以上のキャリア中に懸濁または溶解された活性成分を含む適切な軟膏中に処方され得る。この硫酸塩の局所投与のためのキャリアとしては、鉱油、液体ワセリン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン化合物、乳化ろうおよび水が挙げられるが、これらに限定されない。あるいは、この硫酸塩は、1つ以上の薬学的に受容可能なキャリア中に懸濁または溶解された活性成分を含む適切なローションまたはクリーム中に処方され得る。適切なキャリアとしては、鉱油、モノステアリン酸ソルビタン、ポリソルベート60、セチルエステル蝋、セテアリルアルコール、2−オクチルドデカノール、ベンジルアルコールおよび水が挙げられるが、これらに限定されない。
【0069】
本発明の一部の実施形態は、4−[6−メトキシ−7−(3−ピペリジン−1−イル−プロポキシ)キナゾリン−4−イル]ピペラジン−1−カルボン酸(4−イソプロポキシフェニル)−アミドの硫酸塩の特定の結晶形を生成するための方法に関する。本明細書で議論されるように、先行技術においてこの硫酸塩を作製するための方法は、多形の混合物中のこの化合物および溶解性が変動する物質形態でのこの化合物を提供する。
【0070】
本発明の特定の一実施形態は、上記硫酸塩の形態Cを結晶化させるための方法に関する。この硫酸塩の粗製形態は、2002年1月8日に出願された、公開米国特許出願第10/041,160号(この公開米国出願の全体の内容は、参考として本明細書に援用される)に見出される手順にしたがって取得され得る。
【0071】
工程1において、粗製硫酸塩が提供される。この粗製硫酸塩を、変性エタノールおよび水の容積でおよそ3:1の混合物に溶解させる。使用されるエタノールおよび水の溶媒混合物の総容積は、好ましくは、混合物を約55℃に加熱した場合に、この粗製硫酸塩を完全に溶解させるのに十分である。具体的な一実施例において、粗製硫酸塩を、エタノール(9.375リットル/キログラム)および水(3.125リットル/キログラム)で飽和させた。
【0072】
工程2において、工程1の混合物を約55℃に加熱し、研磨濾過(polish filtration)に供し、きれいな容器に集める。約1時間未満(好ましくは、約10分間および1時間の間の期間)の総時間、この混合物を約55℃に保つ。
【0073】
工程3において、工程2の混合物を、上記の温度に約15分間保つ。少なくとも1分間かつ約1時間以下、この混合物を、約55℃に保つことが好ましい。より好ましくは、約1分間と30分間との間の期間、そして最も好ましくは、約1分間と20分間との間の期間、この混合物を、約55℃に保つ。
【0074】
工程4において、工程3の混合物を、1時間あたり約6℃の速度で約51℃に冷却する。この冷却速度は、1時間あたり約5℃と7℃との間であることが好ましい。
【0075】
本発明の他の実施形態において、上記の方法を利用する溶液のシード添加は、上記硫酸塩の形態Cの形成をさらに促進し得る。例えば、工程5の後、この混合物は、工程1で最初に使用した粗製硫酸塩の、約0.5重量%の量の形態Cの結晶によってシード添加され得る。シード添加した溶液を、15分間、51℃に保ち、次に、好ましくは1時間あたり約6℃の速度で49℃に冷却する。続いて、形態Cの結晶(工程1で最初に使用した粗製硫酸塩の、約0.2重量%の量)の別のシード添加を、この混合物に加え得、形態Cの多形の形成を優先的に促進し得る。その後、この溶液を、1時間あたり約6℃の速度で約40℃に冷却する。次に、冷却を、1時間あたり約9℃の速度で25℃まで継続する。最後に、この混合物を、1時間あたり約20℃の速度で約0℃〜約5℃まで冷却する。この混合物を遠心分離し、上清を捨てる。洗浄される結晶1キログラムあたり約2リットルのエタノールで、結晶を洗浄する。次に、結晶を乾燥させて、上記硫酸塩の形態Cの多形を得る。
【0076】
本発明の関連する実施形態は、上記硫酸塩の単一の結晶形を結晶化させるための混合物に関する。この混合物は、4−[6−メトキシ−7−(3−ピペリジン−1−イル−プロポキシ)キナゾリン−4−イル]ピペラジン−1−カルボン酸(4−イソプロポキシフェニル)−アミドの硫酸塩;有機溶媒;および水を含む。この混合物は、好ましくは硫酸塩ではない固体を実質的に含まない(すなわち、上記硫酸塩の固体形態以外の固体を実質的に含まない)。特定の実施形態において、この有機溶媒はエタノールである。エタノールを含むこの混合物の温度は、約50℃よりも高い。より詳細には、この混合物は、約40℃と約55℃との間の温度であり得る。また、この混合物は、上記硫酸塩の形態Cの結晶を含み得、この結晶の重量は、混合物中の硫酸塩の少なくとも0.1重量%である。また、混合物は、単一の相(例えば、液体)であっても、多相(例えば、固体と液体)であってもよい。
【0077】
本発明の別の実施形態において、上記硫酸塩の形態Bは、上記硫酸塩の形態Cを水和することにより調製される。
【0078】
第一の実施例において、硫酸塩の形態Cのサンプルを水に溶解させて、溶液を形成させる。この溶液を放置し、室温で数時間かけて、溶液から形態Bを直接結晶化させる。
【0079】
第二の実施例において、上記硫酸塩の形態Cのスラリーを、およそ1:2の重量比で、水と混合する。このスラリーを、約16時間攪拌する。次に、この上清を取り除き、室温で2時間、減圧オーブン中でこの固体を乾燥させた。XRPD、DSCおよびTGAを使用して、生じた固体を分析した;この分析は、この硫酸塩の形態Bと一致した。
【0080】
第三の実施例において、上記硫酸塩の形態Cのサンプルを、およそ1:4の重量比で水に溶解させ、溶液を形成させた。この溶液を約16時間放置して、沈殿物を形成させた。上清を除去し、室温で2時間、減圧オーブン内でこの沈殿物を乾燥させることにより、XRPD、DSCおよびTGAによって決定される、この硫酸塩の形態Bと一致する固体を得た。
【0081】
本発明の関連する実施形態において、この硫酸塩の形態Bは、水と別の有機溶媒との溶液中で、形態Cを水和させることにより調製される。一例において、水とメタノール(好ましくは、約3:1〜約1:3の容積比)と形態Cとの混合物を調製して、この硫酸塩の形態Bを得る。あるいは、エタノールと水(好ましくは、約1:1の容積比)との混合物を、形態Cに添加し得、形態Bのサンプルを調製し得る。水とイソプロピルアルコール、1−ブタノール、アセトンおよびテトラヒドロフランのうちの1つとの混合物はまた、好ましくはおよそ1:1の容積比で使用され得る。
【0082】
表8は、100ミリグラムの形態Cと対応する溶媒水混合物との混合物を脱水し、形態Bを含むサンプルを生成することからの実験結果を示す。
【0083】
【表8】

【0084】
本発明の別の実施形態において、上記硫酸塩の形態Fは、この硫酸塩の形態Bを脱水することによって調製される。
【0085】
一実施例において、約10〜30mgの上記硫酸塩の形態Bのサンプルを白金るつぼ内に置き、100℃で約30分間、TGA炉内に配置した。その直後に、この塩のサンプルをXRPDによって分析し、形態Fの構造を示した。一週間の規則的な間隔でこの分析を反復することにより、XRPDの観察されるパターンに変化がないという結果となった。形態Bの硫酸塩を、60℃から160℃に変化させる温度で30分間、等温(isothermal)TGA炉内に配置したさらなる実験において、全て、この硫酸塩の形態Fの形成という結果となった。
【0086】
別の実施例において、上記硫酸塩の形態Bのサンプルを、40℃で一晩、減圧オーブン内で乾燥させた。生じた固体は、形態Fの多形である。
【0087】
本発明の別の実施形態において、上記硫酸塩の形態Fは、少なくとも1つの溶媒中の形態Cの混合物を濃縮することによって調製される。使用され得る溶媒としては、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、テトラヒドロフラン、エタノールまたはアセトンが挙げられる。本出願人が実行した実験において、上記に列挙した5つの溶媒各々の別々の800μL中に、100マイクログラムのこの硫酸塩の形態Cを混合することによって、この硫酸塩の形態Fの5つのサンプルを首尾よく調製した。
【0088】
本発明の別の実施形態において、上記硫酸塩の形態Gは、上記形態Cの多形のサンプルを脱水することによって調製される。特定の一実施例において、この硫酸塩の形態Cのサンプルを、室温から200℃へ、10℃の間隔で加熱した;このサンプルの原位置でのXRPDを、各間隔ごとに取得した。この形態Cのサンプルは、約60℃〜約65℃で脱水した。このサンプルは、約60℃から始めてこのサンプルの融点までの温度の間、形態Gを示すXRPDスペクトルを有する。DSCおよびTGAを使用する同様なサンプルのさらなる試験は、形態Cが形態Gに変換したときと同じ温度範囲を生じた。
【0089】
本発明の別の実施形態において、上記硫酸塩の形態Hは、メタノール中にこの硫酸塩の形態Fを含むスラリーを調製することによって調製される。続いて、メタノールを除去することによって、形態Hの固体をもたらす。
【0090】
一実施例において、約1.3グラムの上記硫酸塩の形態Fを、約25mLのメタノールと混合した。このスラリーを一晩攪拌した。残りの上清を除去し、固体を、減圧オーブン内で約1時間乾燥させた。XRPDを使用して、生じた固体を分析し、これは形態Hと一致する結果を示した。
【0091】
別の実施例において、約50mgの上記硫酸塩の形態Fを、約2mLのメタノールに溶解させた。熱を加えて、72時間の期間にわたって、この溶媒を蒸発させた。生じた結晶化産物は、XRPD分析から決定される、形態Hの構造を有した。
【0092】
本発明の別の実施形態において、この硫酸塩の形態Dは、この硫酸塩の形態Hのサンプルを乾燥させることによって調製される。一実施例において、この硫酸塩の形態Hのサンプルを、窒素流中0%の相対湿度で乾燥して、産物を形成する。この産物は、より高い相対湿度の環境に曝露された場合に、形態Dの構造を有する。この形態Hのサンプルはまた、低い(しかし、0ではない)相対湿度の窒素流によって乾燥され得る。
【0093】
本発明の実施形態は、ステント装置をコーティングするのに有用である。ステントは、再狭窄を低減することが示されているが、トロンボゲン形成性である。ステントのトロンボゲン形成性を低減するためのストラテジーは、ステント表面にトロンビン阻害因子をコーティングするか、包埋するか、吸着させるか、または共有結合させることである。この硫酸塩は、この目的のために使用され得る。本発明の化合物は、ステントをコーティングするのに有用な可溶性および/または生分解性ポリマーに結合され得るか、またはその中に包埋され得る。このようなポリマーの例としては、ポリビニルピロリドン、ポリヒドロキシ−プロピルメタクリルアミド−フェノール、ポリヒドロキシエチル−アスパルトアミド−フェノール、またはパルミトイル残基で置換されたポリエチレンオキシド−ポリリジン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸とポリグリコール酸とのコポリマー、ポリイプシロンカプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリジヒドロピラン、ポリシアノアクリレートおよびヒドロゲルの架橋ブロックコポリマーもしくは両親媒性ブロックコポリマーが挙げられる。欧州出願第761 251号、欧州出願第604,022号、カナダ国特許第2,164,684号ならびにPCT公開出願WO96/11668、WO96/32143およびWO96/38136を参照のこと。
【0094】
(実験)
サンプルのためのX線粉末回折パターンを、CuKα線(40kV,40mA)、自動化XYZステージ、サンプルの自動化位置決めのためのレーザービデオ顕微鏡(laser video microscope)、およびHiStar二次元領域検出器を使用するBruker AXS C2 GADDS回折計上で取得した。X線光学は、0.3mmピンホールコリメーターに結合した単一のGoebel多層鏡を利用した。
【0095】
ビーム発散度(すなわち、サンプル上のX線ビームの有効サイズ)は、およそ4mmであった。20cmのサンプル−検出器距離(3.2°〜29.8°の有効2θ範囲を与える)でθ−θ連続走査様式を使用した。サンプルの代表的な曝露時間は120秒である。
【0096】
周囲条件下のサンプルの試行(run)を、粉砕せずに受け取った粉末を使用して平板(flat plate)標本として調製した。およそ1mg〜2mgのサンプルを、ガラススライド上で軽く押して、平らな表面を得た。非周囲条件下のサンプルの試行を、熱伝導性化合物を含むシリコンウェハ上に置いた。次に、サンプルを、毎分約20℃の加熱速度で適切な温度まで加熱し、続いて、約1分間等温に保ち、その後、データ収集を開始した。
【0097】
単一の結晶構造に関するデータを取得するために、Oxford Cryosystems Cryostream冷却装置を装備したBruker−Nonius Kappa CCD回折計を利用してXRPDを実行した。通常、結晶構造を、SIR−97またはSHELXS−97のいずれかを使用して解き、そしてSHELXL−97を使用して修正した。他の方法が述べられない限り、水素原子を幾何的に配置し、等方性置換(isotropic displacement)パラメータを使用して修正した。
【0098】
示差走査熱量測定(DSC)データを、50位置オートサンプラーを装備したTA Instruments Ql000示差走査熱量計上で収集した。エネルギーおよび温度の検定標準は、インジウムであった。サンプルを、10℃と230℃との間で毎分10℃の速度で加熱した。毎分30mLで流れる窒素パージを、走査の間、サンプル上に維持した。1mg〜3mgのサンプルを分析した。全てのサンプルを、気密的に封入したアルミニウムパン内で圧着(crimp)した。
【0099】
熱重量分析(TGA)データを、ニッケル/アルメルおよび毎分10℃の走査速度での試行により較正した、TA Instruments Q500熱重量分析器上で収集した。毎分60mLで流れる窒素パージを、測定の間、サンプル上に維持した。代表的に、10mg〜20mgのサンプルを、予め風袋を量った(pre−tared)白金るつぼに入れた。
【0100】
Hiden Isochem,Ltd.製のHiden IGAsorp水分吸着分析器を使用し、CFRSorpソフトウェアを実行して、吸着蒸気重量(gravimetric vapor sorption)(GVS)データを収集した。サンプルサイズは、代表的に10mgであった。一連の相対湿度(RH)段階(step)にサンプルを供することによって、水分吸着/脱着等温線を記録した。
【0101】
図3に関して、RH段階プロファイルを、表9に示す;2回の走査によって、完全な測定サイクルを取得した。全てのサンプルを、代表的な室内湿度および温度(40% RH、25℃)で出し入れした。全てのサンプルを、GVS後XRPD(XRPD post GVS)分析によって分析した。標準等温線を、25℃、0%〜90%のRH範囲にわたる10%のRH間隔で実行した。これらの測定から、多形の各分子に結合する水和水が決定され得る。
【0102】
【表9】

【0103】
本発明を、その実施形態を参照して具体的に示し、説明したが、形態および詳細における種々の変化が、添付の特許請求の範囲によって包含される本発明の範囲から逸脱することなくなされ得ることを当業者が理解する。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】図1は、本発明の一実施形態と一致する硫酸塩の形態Cのサンプルの測定からのXRPDパターンを示す。
【図2】図2は、本発明の一実施形態と一致する硫酸塩の形態Cのサンプルの測定からのDSCおよびTGAの結果を示す。
【図3】図3は、本発明の一実施形態にしたがう、25℃における種々の相対湿度への硫酸塩の形態Cのサンプルの曝露からの水分等温線(moisture isotherm)を示す。
【図4】図4は、本発明の一実施形態と一致する硫酸塩の形態Bのサンプルの測定からのXRPDパターンを示す。
【図5】図5は、本発明の一実施形態と一致する硫酸塩の形態Bのサンプルの測定からのDSCおよびTGAの結果を示す。
【図6】図6は、本発明の一実施形態と一致する硫酸塩の形態Fのサンプルの測定からのXRPDパターンを示す。
【図7】図7は、本発明の一実施形態と一致する硫酸塩の形態Fのサンプルの測定からのDSCおよびTGAの結果を示す。
【図8】図8は、本発明の一実施形態と一致する、100℃における硫酸塩の形態Gのサンプルの測定からのXRPDパターンを示す。
【図9】図9は、本発明の一実施形態にしたがう、酸塩の形態Hのサンプルについての2θおよび種々の温度の関数としてのXRPD強度を示す。
【図10】図10は、本発明の一実施形態と一致する硫酸塩の形態Hのサンプルの測定からのXRPDパターンを示す。
【図11】図11は、本発明の一実施形態と一致する硫酸塩の形態Hのサンプルの測定からのDSCおよびTGAの結果を示す。
【図12】図12は、本発明の一実施形態と一致する硫酸塩の形態Dのサンプルの測定からのXRPDパターンを示す。
【図13】図13は、本発明の一実施形態と一致する硫酸塩の形態Dのサンプルの測定からのDSCおよびTGAの結果を示す。
【図14】図14は、本発明の一実施形態にしたがう、25℃における種々の相対湿度への硫酸塩の形態Dのサンプルの曝露からの水分等温線を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
4−[6−メトキシ−7−(3−ピペリジン−1−イル−プロポキシ)キナゾリン−4−イル]ピペラジン−1−カルボン酸(4−イソプロポキシフェニル)−アミドの硫酸塩であって、該硫酸塩の少なくとも60重量%が結晶性である、硫酸塩。
【請求項2】
4−[6−メトキシ−7−(3−ピペリジン−1−イル−プロポキシ)キナゾリン−4−イル]ピペラジン−1−カルボン酸(4−イソプロポキシフェニル)−アミドの硫酸塩であって、該硫酸塩の少なくとも60重量%が単一の結晶形である、硫酸塩。
【請求項3】
4−[6−メトキシ−7−(3−ピペリジン−1−イル−プロポキシ)キナゾリン−4−イル]ピペラジン−1−カルボン酸(4−イソプロポキシフェニル)−アミドの硫酸塩であって、該硫酸塩の少なくとも80重量%が単一の結晶形である、硫酸塩。
【請求項4】
4−[6−メトキシ−7−(3−ピペリジン−1−イル−プロポキシ)キナゾリン−4−イル]ピペラジン−1−カルボン酸(4−イソプロポキシフェニル)−アミドの硫酸塩であって、該硫酸塩の少なくとも95重量%が単一の結晶形である、硫酸塩。
【請求項5】
前記単一の結晶形が形態Cである、請求項2に記載の硫酸塩。
【請求項6】
前記単一の結晶形が、3.7°、11.1°、12.1°、15.5°、17.3°、22.6°、23.9°、25.6°、および29.0°の2θ角度における少なくとも1つのX線粉末回折ピークによって特徴付けられる、請求項2に記載の硫酸塩。
【請求項7】
前記単一の結晶形が、X線粉末回折パターンによって特徴付けられる、請求項6に記載の硫酸塩。
【請求項8】
10℃/分の走査速度を使用して、前記単一の結晶形に示差走査熱量測定を実行する場合に、該単一の結晶形が、59℃±3℃および190℃±3℃で観察される吸熱転移によって特徴付けられる、請求項2に記載の硫酸塩。
【請求項9】
前記単一の結晶形が、前記硫酸塩一分子あたり、1.8〜2.0個の水和水を有する、請求項2に記載の硫酸塩。
【請求項10】
前記単一の結晶形が、10℃/分の速度で加熱する場合に、約184℃〜189℃の融点によって特徴付けられる、請求項2に記載の硫酸塩。
【請求項11】
前記単一の結晶形が形態Bである、請求項2に記載の硫酸塩。
【請求項12】
前記単一の結晶形が、7.1°、8.0°、9.0°、11.1°、12.7°、14.4°、15.0°、16.1°、17.1°、19.4°、20.9°、23.4°および24.4°の2θ角度における少なくとも1つのX線粉末回折ピークによって特徴付けられる、請求項2に記載の硫酸塩。
【請求項13】
前記単一の結晶形が、図4のX線粉末回折パターンによって特徴付けられる、請求項12に記載の硫酸塩。
【請求項14】
10℃/分の走査速度を使用して、前記単一の結晶形に示差走査熱量測定を実行する場合に、該単一の結晶形が、50℃±3℃および216℃±3℃で観察される吸熱転移によって特徴付けられる、請求項2に記載の硫酸塩。
【請求項15】
前記単一の結晶形が、前記硫酸塩一分子あたり、6〜7個の水部位(water site)を有する請求項2に記載の硫酸塩。
【請求項16】
10℃/分の速度で加熱する場合に、前記単一の結晶形が、213℃の融点によって特徴付けられる、請求項2に記載の硫酸塩。
【請求項17】
前記単一の結晶形が形態Fである、請求項2に記載の硫酸塩。
【請求項18】
前記単一の結晶形が、7.2°、9.0°、10.3°、16.6°、22.1°、22.8°、24.0°、25.9°、26.6°および27.9°の2θ角度における少なくとも1つのX線粉末回折ピークによって特徴付けられる、請求項2に記載の硫酸塩。
【請求項19】
前記単一の結晶形が、図6のX線粉末回折パターンによって特徴付けられる、請求項18に記載の硫酸塩。
【請求項20】
前記単一の結晶形が、前記硫酸塩一分子あたり、0.4〜0.6個の水和水を有する、請求項2に記載の硫酸塩。
【請求項21】
前記単一の結晶形が形態Gである、請求項2に記載の硫酸塩。
【請求項22】
前記単一の結晶形が、3.8°、10.1°、11.6°、13.0°、15.9°、17.2°、18.1°、22.2°、23.1°および23.4°の2θ角度における少なくとも1つのX線粉末回折ピークによって特徴付けられる、請求項2に記載の硫酸塩。
【請求項23】
薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤;および
4−[6−メトキシ−7−(3−ピペリジン−1−イル−プロポキシ)キナゾリン−4−イル]ピペラジン−1−カルボン酸(4−イソプロポキシフェニル)−アミドの硫酸塩、
を含む、薬学的組成物であって、該硫酸塩の少なくとも60重量%が単一の結晶形である、
薬学的組成物。
【請求項24】
薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤;および
4−[6−メトキシ−7−(3−ピペリジン−1−イル−プロポキシ)キナゾリン−4−イル]ピペラジン−1−カルボン酸(4−イソプロポキシフェニル)−アミドの硫酸塩、
を含む、薬学的組成物であって、該硫酸塩の少なくとも80重量%が単一の結晶形である、
薬学的組成物。
【請求項25】
薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤;および
4−[6−メトキシ−7−(3−ピペリジン−1−イル−プロポキシ)キナゾリン−4−イル]ピペラジン−1−カルボン酸(4−イソプロポキシフェニル)−アミドの硫酸塩、
を含む、薬学的組成物であって、該硫酸塩の少なくとも95重量%が単一の結晶形である、
薬学的組成物。
【請求項26】
前記単一の結晶形が形態Cである、請求項23に記載の薬学的組成物。
【請求項27】
前記単一の結晶形が、前記硫酸塩一分子あたり、1.8〜2.0個の水和水を有する、請求項23に記載の薬学的組成物。
【請求項28】
10℃/分の速度で加熱する場合に、前記単一の結晶形が、184℃の融点によって特徴付けられる、請求項23に記載の薬学的組成物。
【請求項29】
前記単一の結晶形が、3.7°、11.1°、12.1°、15.5°、17.3°、22.6°、23.9°、25.6°および29.0°の2θ角度における少なくとも1つのX線粉末回折ピークによって特徴付けられる、請求項23に記載の薬学的組成物。
【請求項30】
10℃/分の走査速度を使用して、前記単一の結晶形に示差走査熱量測定を実行する場合に、該単一の結晶形が、59℃±3℃および190℃±3℃で観察される吸熱転移によって特徴付けられる、請求項23に記載の薬学的組成物。
【請求項31】
前記薬学的に受容可能なキャリアが、二酸化ケイ素、微小結晶性セルロース、α化デンプン、フマル酸ステアリルナトリウムおよびスクロースのうちの少なくとも1つである、請求項26〜30のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項32】
前記薬学的組成物のうち約40重量%〜約60重量%が前記硫酸塩である、請求項31に記載の薬学的組成物。
【請求項33】
前記単一の結晶形が形態Bである、請求項23に記載の薬学的組成物。
【請求項34】
前記単一の結晶形が、前記硫酸塩一分子あたり、6〜7個の水部位を有する、請求項23に記載の薬学的組成物。
【請求項35】
10℃/分の速度で加熱する場合に、前記単一の結晶形が、213℃の融点によって特徴付けられる、請求項23に記載の薬学的組成物。
【請求項36】
前記単一の結晶形が、7.1°、8.0°、9.0°、11.1°、12.7°、14.4°、15.0°、16.1°、17.1°、19.4°、20.9°、23.4および24.4°の2θ角度における少なくとも1つのX線粉末回折ピークによって特徴付けられる、請求項23に記載の薬学的組成物。
【請求項37】
10℃/分の走査速度を使用して、前記単一の結晶形に示差走査熱量測定を実行する場合に、該単一の結晶形が、50℃±3℃および216℃±3℃で観察される吸熱転移によって特徴付けられる、請求項23に記載の薬学的組成物。
【請求項38】
前記単一の結晶形が形態Fである、請求項23に記載の薬学的組成物。
【請求項39】
前記単一の結晶形が、前記硫酸塩一分子あたり、0.4〜0.6個の水和水を有する、請求項23に記載の薬学的組成物。
【請求項40】
10℃/分の速度で加熱する場合に、前記単一の結晶形が、212℃の融点によって特徴付けられる、請求項23に記載の薬学的組成物。
【請求項41】
前記単一の結晶形が、7.2°、9.0°、10.3°、16.6°、22.1°、22.8°、24.0°、25.9°、26.6°および27.9°の2θ角度における少なくとも1つのX線粉末回折ピークによって特徴付けられる、請求項23に記載の薬学的組成物。
【請求項42】
前記単一の結晶形が形態Gである、請求項23に記載の薬学的組成物。
【請求項43】
前記単一の結晶形が、3.8°、10.1°、11.6°、13.0°、15.9°、17.2°、18.1°、22.2°、23.1°および23.4°の2θ角度における少なくとも1つのX線粉末回折ピークによって特徴付けられる、請求項23に記載の薬学的組成物。
【請求項44】
チロシンキナーゼ阻害を必要とする被験体を処置するための方法であって、有効量の4−[6−メトキシ−7−(3−ピペリジン−1−イル−プロポキシ)キナゾリン−4−イル]ピペラジン−1−カルボン酸(4−イソプロポキシフェニル)−アミドの硫酸塩を該被験体に投与する工程を包含し、該硫酸塩の少なくとも60重量%が単一の結晶形である、方法。
【請求項45】
チロシンキナーゼがFLT−3レセプターチロシンキナーゼである、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記疾患が、肺癌、乳癌、結腸直腸癌、膵臓癌および前立腺癌である、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
前記単一の結晶形が、形態C、形態B、形態Fおよび形態Gのうちの1つである、請求項44に記載の方法。
【請求項48】
神経膠腫または急性リンパ性白血病を有する被験体を処置するための方法であって、有効量の4−[6−メトキシ−7−(3−ピペリジン−1−イル−プロポキシ)キナゾリン−4−イル]ピペラジン−1−カルボン酸(4−イソプロポキシフェニル)−アミドの硫酸塩を該被験体に投与する工程を包含し、該硫酸塩の少なくとも60重量%が単一の結晶形である、方法。
【請求項49】
前記単一の結晶形が、形態C、形態B、形態Fおよび形態Gのうちの1つである、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
急性骨髄性白血病を有する被験体を処置するための方法であって、有効量の4−[6−メトキシ−7−(3−ピペリジン−1−イル−プロポキシ)キナゾリン−4−イル]ピペラジン−1−カルボン酸(4−イソプロポキシフェニル)−アミドの硫酸塩を該被験体に投与する工程を包含し、該硫酸塩の少なくとも60重量%が単一の結晶形である、方法。
【請求項51】
前記単一の結晶形が、形態C、形態B、形態Fおよび形態Gのうちの1つである、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
4−[6−メトキシ−7−(3−ピペリジン−1−イル−プロポキシ)キナゾリン−4−イル]ピペラジン−1−カルボン酸(4−イソプロポキシフェニル)−アミドの硫酸塩を調製するための方法であって、
該硫酸塩の単一の結晶形および薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤を含む薬学的組成物を提供する工程;ならびに、
該薬学的組成物を顆粒化する工程、
を包含する、方法。
【請求項53】
顆粒化する工程が、前記薬学的組成物をローラー圧縮(roller compacting)することを含む、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記薬学的組成物が、二酸化ケイ素、微小結晶性セルロース、α化デンプン、フマル酸ステアリルナトリウムおよびスクロースのうちの少なくとも1つをさらに含む、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
ローラー圧縮が、約60bar〜約100barの間の圧力を使用して生じる、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
請求項52に記載の方法にしたがって調製された4−[6−メトキシ−7−(3−ピペリジン−1−イル−プロポキシ)キナゾリン−4−イル]ピペラジン−1−カルボン酸(4−イソプロポキシフェニル)−アミドの硫酸塩を含む、薬学的組成物。
【請求項57】
請求項55に記載の方法にしたがって調製された4−[6−メトキシ−7−(3−ピペリジン−1−イル−プロポキシ)キナゾリン−4−イル]ピペラジン−1−カルボン酸(4−イソプロポキシフェニル)−アミドの硫酸塩を含む、薬学的組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2009−502804(P2009−502804A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−522965(P2008−522965)
【出願日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際出願番号】PCT/US2006/028231
【国際公開番号】WO2007/012042
【国際公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(500287639)ミレニアム・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド (98)
【氏名又は名称原語表記】MILLENNIUM PHARMACEUTICALS, INC.
【Fターム(参考)】