説明

4サイクルエンジン

【課題】吸気系の自由度を高めること。
【解決手段】4サイクルエンジン1は、シリンダヘッド3と、燃料噴射装置18とを含む。シリンダヘッド3には、燃焼室12と、燃焼室12に連通する吸気ポート13と、燃焼室12と吸気ポート13とを連通する収容孔20とが形成されている。燃料噴射装置18は、燃焼室12に向けて燃料のミストを噴射することにより、燃料のミストを燃焼室12に直接供給する。燃料噴射装置18の少なくとも一部は、吸気ポート13および収容孔20に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、4サイクルエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
液体の燃料を燃焼室に直接供給して、出力および燃費を高める直噴エンジン(direct-injection engine)が知られている。
直噴エンジンでは、シリンダ内で燃料が気化することにより、シリンダ内が冷却される。そのため、シリンダ内への空気の充填量を増加させて、エンジンの出力を高めることができる。さらに、シリンダ内の温度が下がるので、ノッキングを抑制することができる。したがって、混合気の圧縮比を増加させて、燃費を高めることができる。
【0003】
特許文献1には、液体の燃料を燃焼室に直接供給するエンジンが開示されている。特許文献1記載のエンジンでは、燃料を噴射する燃料噴射装置が吸気ポートの近傍に配置されている。吸気ポートは、シリンダごとに2つずつ設けられている。燃料噴射装置は、2つの吸気ポートの間、または下(シリンダボディ側)に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−110660号公報
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
前述のように、特許文献1記載のエンジンでは、燃料噴射装置は、2つの吸気ポートの間、または下に配置されている。しかしながら、燃料噴射装置が2つの吸気ポートの間に配置される場合には、各吸気ポートを大きく湾曲させたり、2つの吸気ポートの間隔を調整して、燃料噴射装置を配置するスペースを設ける必要がある。そのため、吸気ポートの形状やレイアウトが燃料噴射装置によって制約される。燃料噴射装置が2つの吸気ポートの下に配置される場合も同様に、吸気ポートの形状やレイアウトが燃料噴射装置によって制約される。しかしながら、吸気ポートの湾曲が大きい場合には、吸気ポートでの流体抵抗が増加し、燃焼室に向かう吸気の流れが阻害される。そのため、吸気ポートからシリンダ内に充填される空気の流量が減少し、直噴による効果が減少してしまう。
【0006】
そこで、この発明の目的は、吸気系の自由度が高い直噴式の4サイクルエンジンを提供することである。
本発明の一実施形態は、燃焼室と、前記燃焼室に連通する吸気ポートと、前記燃焼室と前記吸気ポートとを連通する収容孔とが形成されたシリンダヘッドと、少なくとも一部が前記吸気ポートおよび収容孔に配置されており、前記燃焼室に向けて燃料のミストを噴射することにより、燃料のミストを前記燃焼室に直接供給する燃料噴射装置と、を含む、4サイクルエンジンを提供する。
【0007】
この構成によれば、燃焼室と吸気ポートとを連通する収容孔がシリンダヘッドに形成されており、燃料噴射装置の少なくとも一部が、吸気ポートおよび収容孔に配置されている。燃料噴射装置は、燃焼室に向けて燃料のミストを噴射する。燃料噴射装置から噴射された燃料のミスト(燃料の液滴)は、燃焼室に直接供給される。したがって、シリンダ内で燃料を気化させて、シリンダ内を冷却することができる。そのため、4サイクルエンジンの出力および燃費を高めることができる。さらに、燃料噴射装置の少なくとも一部が吸気ポートに配置されているので、燃料噴射装置を配置するスペースを設けるために、吸気ポートの形状やレイアウトを変更しなくてもよい。このように、吸気系の自由度が高いので、吸気ポートでの流体抵抗を減少させることができる。したがって、吸気ポートからシリンダに流入する空気量の減少を低減することができる。
【0008】
前記燃料噴射装置の先端は、前記燃焼室に達していてもよい。
また、前記燃料噴射装置は、前記吸気ポートの内壁を貫通していてもよい。
また、前記吸気ポートは、前記燃焼室に連通する複数の分岐路と、前記複数の分岐路が集合する集合路とを含んでいてもよい。この場合、前記燃料噴射装置は、前記集合路の内壁を貫通していてもよいし、少なくとも一つの前記分岐路に進入していてもよい。
【0009】
また、前記4サイクルエンジンは、前記燃料噴射装置と前記収容孔との間をシールする第1シール部材をさらに含んでいてもよい。
また、前記4サイクルエンジンは、シリンダを含むシリンダボディをさらに含んでいてもよい。この場合、前記収容孔は、前記シリンダの中心軸線に対して前記吸気ポートよりも離れた位置で前記燃焼室に連通していてもよい。
【0010】
また、前記シリンダヘッドは、前記吸気ポートと前記シリンダヘッドの外部とを接続する接続孔を含んでいてもよい。この場合、前記燃料噴射装置は、前記接続孔に進入していてもよい。
また、前記4サイクルエンジンは、前記燃料噴射装置と前記接続孔との間をシールする第2シール部材をさらに含んでいてもよい。
【0011】
また、前記燃料噴射装置は、前記吸気ポートに進入している本体部を含んでいてもよい。
また、前記燃料噴射装置は、前記吸気ポートに進入している先端部を含んでいてもよい。
前記4サイクルエンジンは、シリンダを含むシリンダボディをさらに含んでいてもよい。この場合、前記燃料噴射装置は、前記シリンダの中心軸線に対して傾斜していてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施形態に係るエンジンの断面図である。
【図2】図1の一部を拡大した図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る吸気ポートと燃料噴射装置との位置関係を示す図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る吸気ポートと燃料噴射装置との位置関係を示す図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係る吸気ポートと燃料噴射装置との位置関係を示す図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係るエンジンの断面図である。
【図7】本発明の第3実施形態に係るエンジンの断面図である。
【図8】本発明の第4実施形態に係る吸気ポートと燃料噴射装置との位置関係を示す図である。
【図9】本発明の第4実施形態に係る吸気ポートと燃料噴射装置との位置関係を示す図である。
【図10】本発明の第4実施形態に係る吸気ポートと燃料噴射装置との位置関係を示す図である。
【図11】本発明の第5実施形態に係る吸気ポートと燃料噴射装置との位置関係を示す図である。
【図12】本発明の第5実施形態に係る吸気ポートと燃料噴射装置との位置関係を示す図である。
【図13】本発明の第5実施形態に係る吸気ポートと燃料噴射装置との位置関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係るエンジン1の断面図である。図2は、図1の一部を拡大した図である。以下の説明では、クランクシャフト6の回転軸線L1が延びる方向(紙面に直交する方向)を前後方向と定義し、回転軸線L1に直交するシリンダの中心軸線L2が延びる方向(紙面の上下方向)を上下方向と定義する。ただし、この方向の定義は一例であり、回転軸線L1が延びる方向は、前後方向以外の方向であってもよい。
【0014】
エンジン1は、4サイクルエンジン(内燃機関)である。エンジン1は、自動車やモーターサイクルなどの車両に搭載されていてもよいし、船舶に搭載されていてもよいし、その他の装置に搭載されていてもよい。たとえば、船舶を推進させる船舶推進機にエンジン1が搭載されていてもよい。また、エンジン1は、単気筒エンジンであってもよいし、多気筒エンジンであってもよい。エンジン1が多気筒エンジンである場合、エンジン1は、直線状に配列された複数のシリンダを含む直列エンジンであってもよいし、V字ラインに沿って配置された複数のシリンダを含むV型エンジンであってもよいし、その他の形式のエンジンであってもよい。
【0015】
エンジン1は、シリンダボディ2と、シリンダヘッド3とを含む。シリンダヘッド3は、シリンダボディ2の上方に配置されている。シリンダヘッド3は、シリンダボディ2の上端部に連結されている。シリンダボディ2およびシリンダヘッド3は、シリンダ4を形成している。エンジン1は、シリンダ4内に配置されたピストン5と、回転軸線L1まわりに回転可能なクランクシャフト6と、ピストン5とクランクシャフト6とを連結するコンロッド7とを含む。さらに、エンジン1は、吸気バルブ8と、排気バルブ9と、吸気バルブ8および排気バルブ9を駆動するバルブ駆動機構10とを含む。
【0016】
シリンダヘッド3は、冷却水が流通するウォータージャケット11を形成している。さらに、シリンダヘッド3は、空気と燃料の混合気が燃焼される燃焼室12と、燃焼室12に連通する吸気ポート13と、燃焼室12に連通する排気ポート14とを形成している。吸気ポート13および排気ポート14は、それぞれ、吸気バルブ8および排気バルブ9によって開閉される。エンジン1に供給された吸気は、吸気ポート13が開かれることにより、吸気ポート13から燃焼室12に供給される。また、燃焼室12で生成された排気は、排気ポート14が開かれることにより、排気ポート14を介して燃焼室12からエンジン1の外部に排出される。
【0017】
吸気ポート13および排気ポート14は、シリンダヘッド3の外部と燃焼室12とを連通している。吸気ポート13は、シリンダヘッド3の側部から燃焼室12に延びている。吸気ポート13は、たとえば、シリンダヘッド3の内部で分岐したY字状である(図4参照)。図1に示すように、吸気ポート13は、シリンダヘッド3の外部からシリンダヘッド3の内部に延びる集合路15と、集合路15の端部から燃焼室12に延びる2つの分岐路16とを含む。集合路15は、シリンダヘッド3の外面で開口しており、各分岐路16は、燃焼室12で開口している。図1に示すように、吸気ポート13は、シリンダヘッド3の外面で開口する開口部13aと、燃焼室12で開口する開口部13bとを含む。吸気バルブ8は、分岐路16ごとに設けられており、燃焼室12で開口する分岐路16の開口部13b(吸気口)は、対応する吸気バルブ8によって開閉される。また、図示はしないが、排気ポート14も、二箇所で燃焼室12に連通しており、排気ポート14の2つの開口部(排気口)にそれぞれ対応する2つの排気バルブ9が設けられている。すなわち、第1実施形態では、同一のシリンダ4に対応する吸気バルブ8および排気バルブ9が、2つずつ設けられている。
【0018】
エンジン1は、燃焼室12で火花を発する点火プラグ17と、燃料(たとえばガソリン)を燃焼室12に噴霧する燃料噴射装置18とを含む。シリンダヘッド3は、点火プラグ17が挿入されたプラグ収容孔19と、燃料噴射装置18が挿入された収容孔20および接続孔21とを形成している。プラグ収容孔19は、シリンダ4の中心軸線L2に沿って延びている。したがって、点火プラグ17は、シリンダ4の中心軸線L2に沿って延びている。火花を発する点火プラグ17の先端は、プラグ収容孔19から突出しており、燃焼室12に達している。また、収容孔20および接続孔21は、シリンダ4の中心軸線L2に対して傾いた方向に延びている。したがって、燃料噴射装置18は、シリンダ4の中心軸線L2に対して傾斜している。燃料噴射装置18は、シリンダ4の中心軸線L2に対して、吸気バルブ8よりも大きな角度で傾斜している。燃料噴射装置18は、点火プラグ17よりも外側(シリンダ4の中心軸線L2から離れる方向)に配置されている。
【0019】
収容孔20は、燃焼室12と吸気ポート13とを連通しており、接続孔21は、吸気ポート13とシリンダヘッド3の外部とを連通している。したがって、収容孔20は、吸気ポート13と燃焼室12との間に配置されており、接続孔21は、吸気ポート13に対して収容孔20とは反対側に配置されている。図2に示すように、収容孔20は、吸気ポート13の内壁13cで開口する開口部20aと、燃焼室12で開口する開口部20bとを含む。接続孔21は、シリンダヘッド3の外面で開口する開口部21aと、吸気ポート13の内壁13cで開口する開口部21bとを含む。収容孔20および接続孔21は、吸気ポート13を介して対向している。収容孔20および接続孔21は、シリンダ4の中心軸線L2に対して傾いた共通の軸線上に配置されている。収容孔20および接続孔21は、吸気ポート13の内壁13cで開口している。燃料噴射装置18は、収容孔20の吸気ポート13に面する開口部20aと、接続孔21の吸気ポート13に面する開口部21bとに挿入されている。したがって、燃料噴射装置18は、吸気ポート13の内壁13cを貫通しており、吸気ポート13に交差している。燃料噴射装置18は、シリンダ4の内周面よりも外側で吸気ポート13に交差している。
【0020】
燃料噴射装置18は、たとえば円柱状である。燃料噴射装置18は、軸方向(燃料噴射装置18の中心軸線に沿う方向)に延びる円柱状の先端部18aおよび本体部18bを含む。先端部18aの外径は、本体部18bの外径よりも小さい。先端部18aは、本体部18bから燃焼室12に向かって延びている。先端部18aは、たとえば、本体部18bよりも短い。燃料のミストを噴射する噴射口は、先端部18aの先端、つまり、燃料噴射装置18の先端に形成されている。燃料噴射装置18は、シリンダヘッド3に保持されている。燃料噴射装置18は、シリンダヘッド3の外側から収容孔20および接続孔21に挿入されている。燃料噴射装置18の先端部18aは、収容孔20に進入しており、燃料噴射装置18の本体部18bは、接続孔21に進入している。さらに、燃料噴射装置18の先端部18aおよび本体部18bは、吸気ポート13に進入している。先端部18aおよび本体部18bは、吸気ポート13における吸気の流れに交差する姿勢で吸気ポート13内に配置されている。
【0021】
燃料噴射装置18の先端は、収容孔20に配置されている。燃料噴射装置18の先端と収容孔20の内壁は、燃焼室12に連通する凹部22を形成している。凹部22は、燃焼室12から離れる方向に凹んでいる。図2に示すように、凹部22において燃料噴射装置18の先端に接する部分は、凹部22の入口22aを形成しており、凹部22において燃焼室12に接する部分(収容孔20の燃焼室12に面する開口部20bに相当)は、凹部22の出口22bを形成している。凹部22の出口22bの面積は、凹部22の入口22aの面積よりも大きい。凹部22の流路面積は、凹部22の出口22bに近づくに従って連続的に増加していてもよいし、段階的に増加していてもよい。
【0022】
燃料噴射装置18の外端部18cは、シリンダヘッド3の外面から突出している。燃料噴射装置18の外端部18cは、吸気ポート13に対してシリンダボディ2とは反対側に配置されている。したがって、吸気ポート13は、燃料噴射装置18の外端部18cとシリンダボディ2との間に配置されている。燃料噴射装置18に燃料を供給する燃料供給管23の端部は、燃料噴射装置18の外端部18cに接続されている。燃料噴射装置18は、燃料供給管23から供給された燃料をその先端から燃焼室12に向けて円錐状に噴射する。燃料噴射装置18から噴射された燃料のミストは、凹部22の入口22aおよび出口22bを順に通って燃焼室12に直接供給される。凹部22の出口22bの面積が凹部22の入口22aの面積よりも大きいから、燃料噴射装置18の先端から燃焼室12に向かって広がる燃料のミストが凹部22内で収容孔20の内壁に衝突して、燃料の広がりが狭められることを防止することができる。
【0023】
図1に示すように、収容孔20は、シリンダ4の中心軸線L2に対して吸気ポート13よりも離れた位置で燃焼室12に連通している。収容孔20の燃焼室12に面する開口部20bは、吸気ポート13の燃焼室12に面する開口部13b(分岐路16の開口部)よりも外側に配置されており、吸気ポート13の開口部13bよりもシリンダ4の中心軸線L2から離れている。したがって、収容孔20の燃焼室12に面する開口部20bは、吸気ポート13の燃焼室12に面する開口部13bよりもシリンダ4の内周面に近い。吸気ポート13の開口部13bと収容孔20の開口部20bは、シリンダ4の中心軸線L2とクランクシャフト6の回転軸線L1とを含む平面に対して同じ側に配置されている。したがって、吸気ポート13の開口部13bと燃料噴射装置18の先端は、シリンダ4の中心軸線L2とクランクシャフト6の回転軸線L1とを含む平面に対して同じ側に配置されている。
【0024】
エンジン1は、第1シール部材24および第2シール部材25を含む。第1シール部材24および第2シール部材25は、たとえば、耐熱材料によって形成されたOリングである。耐熱材料としては、たとえば、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素樹脂が挙げられる。第1シール部材24は、燃料噴射装置18の先端部18aに設けられた環状溝に取り付けられており、先端部18aを同心円状に取り囲んでいる。先端部18aと収容孔20の内壁との間の隙間は、第1シール部材24によってシールされている。これにより、燃焼室12から吸気ポート13に流体が漏れることを防止できる。同様に、第2シール部材25は、燃料噴射装置18の本体部18bを同心円状に取り囲んでおり、本体部18bと接続孔21の内壁との間の隙間は、第2シール部材25によってシールされている。これにより、吸気ポート13からシリンダヘッド3の外部に吸気が漏れたり、シリンダヘッド3の外部から吸気ポート13に空気が流入することを防止できる。第2シール部材25は、図1に示すように、シリンダヘッド3の外部に配置されていてもよいし、接続孔21内に配置されていてもよい(図6参照)。
【0025】
図3〜図5は、本発明の第1実施形態に係る吸気ポート13と燃料噴射装置18との位置関係を示す図である。
前述のように、吸気ポート13は、燃焼室12に連通する2つ分岐路16と、2つの分岐路16が集合する集合路15とを含む。2つ分岐路16は、集合路15の端部で分岐している。2つ分岐路16は、幅方向D1に間隔を空けてV字状に配置されている。2つの分岐路16の間隔は、燃料噴射装置18の幅(幅方向D1への長さ)よりも小さい。シリンダヘッド3の外面で開口する集合路15の開口部13aは、たとえば、幅方向D1に長い楕円形である。また、燃焼室12で開口する分岐路16の開口部13bは、たとえば、円形である。集合路15の開口部13aは、吸気の入口であり、各分岐路16の開口部13bは、吸気の出口である。集合路15の開口部13aの面積は、分岐路16の開口部13bの面積よりも大きい。さらに、集合路15の流路面積は、分岐路16の流路面積よりも大きい。
【0026】
燃料噴射装置18は、幅方向D1に関する集合路15の中間部で集合路15の内壁を貫通している。吸気の入口側から吸気ポート13および燃料噴射装置18を見ると、燃料噴射装置18は、吸気ポート13を幅方向D1に二等分する位置に配置されている。さらに、吸気の入口側から吸気ポート13および燃料噴射装置18を見ると、燃料噴射装置18は、2つの分岐路16と重なり合っている。集合路15の開口部13aから吸気ポート13に流入した吸気は、集合路15と2つの分岐路16との結合部で2つに分岐され、各分岐路16の開口部13bから燃焼室12に供給される。吸気の入口側から吸気ポート13および燃料噴射装置18を見たときに、燃料噴射装置18が一方の分岐路16側に偏っていないので、集合路15に流入した吸気は、ほぼ等しい流量で2つに分岐され、各分岐路16に流れ込む。
【0027】
以上のように第1実施形態では、燃焼室12と吸気ポート13とを連通する収容孔20がシリンダヘッド3に形成されている。さらに、吸気ポート13とシリンダヘッド3の外部とを接続する接続孔21がシリンダヘッド3に形成されている。燃料噴射装置18の一部は、吸気ポート13、収容孔20、および接続孔21に配置されている。燃料噴射装置18は、燃焼室12に向けて燃料のミストを噴射する。燃料噴射装置18から噴射された燃料のミストは、燃焼室12に直接供給される。したがって、シリンダ4内で燃料を気化させて、シリンダ4内を冷却することができる。そのため、4サイクルエンジン1の出力および燃費を高めることができる。さらに、燃料噴射装置18の一部が吸気ポート13に配置されているので、燃料噴射装置18を配置するスペースを設けるために、吸気ポート13の形状やレイアウトを変更しなくてもよい。このように、吸気系の自由度が高いので、吸気ポート13での流体抵抗を減少させることができる。したがって、吸気ポート13からシリンダ4に流入する空気量の減少を低減することができる。また、吸気系の自由度が高いので、たとえば、吸気ポート13の形状を、吸気ポートに燃料を噴射する構成(いわゆる、ポート噴射)と共通化できる。
【0028】
また第1実施形態では、吸気ポート13が2つの分岐路16と集合路15とを含んでおり、燃料噴射装置18が集合路15の内壁を貫通している。燃料噴射装置18が吸気ポート13を貫通している場合、燃料噴射装置18が吸気ポート13を貫通している部分(貫通部)の流路面積が減少する。そのため、貫通部での流体抵抗が増加する。しかしながら、集合路15の流路面積が分岐路16の流路面積よりも大きいので、吸気ポート13が分岐路16を貫通している場合よりも、貫通部での流路面積の減少割合が小さい。そのため、吸気ポート13が分岐路16を貫通している場合よりも、燃焼室12に向かって流れる吸気に及ぶ影響を小さくすることができる。
【0029】
また第1実施形態では、燃料噴射装置18の先端が収容孔20に配置されている。燃料噴射装置18の先端が燃焼室12に配置されている場合には、燃料噴射装置18の先端が高温の排気に晒される。そのため、この場合には、燃料噴射装置18の先端の温度が高まる。したがって、燃料噴射装置18の先端を収容孔20に配置することにより、燃料噴射装置18の先端の温度上昇を低減することができる。これにより、カーボンの堆積物であるすすによって燃料噴射装置18の先端が詰まることを防止できる。
【0030】
具体的には、すすは、燃料の濃度が高く、高温の雰囲気で発生し易い。燃料を噴射する噴射口が燃料噴射装置18の先端に形成されているので、燃料噴射装置18の先端近傍は燃料の濃度が高い。したがって、燃料噴射装置18の先端近傍の温度が高いと、すすが発生し易い。しかしながら、第1実施形態では、燃料噴射装置18が高温になることが防止されているので、燃料噴射装置18の先端近傍の温度が低い。したがって、すすの発生を防止できる。これにより、燃料噴射装置18の先端が詰まることを防止できる。
【0031】
また第1実施形態では、燃料噴射装置18の先端が収容孔20に配置されていると共に、冷却水が供給されるウォータージャケット11がシリンダヘッド3に形成されている。シリンダヘッド3は、ウォータージャケット11に供給された冷却水によって冷却されており、燃料噴射装置18は、シリンダヘッド3によって冷却されている。したがって、燃料噴射装置18の先端が燃焼室12に配置されている場合には、燃料噴射装置18の先端がシリンダヘッド3から離れているので、燃料噴射装置18の先端が収容孔20に配置されている場合よりも燃料噴射装置18の先端の温度が上昇する。したがって、燃料噴射装置18の先端を収容孔20に配置することにより、燃料噴射装置18の先端の温度上昇を低減し、燃料噴射装置18の先端がすすによって詰まることを防止できる。
【0032】
この発明の実施の形態の説明は以上であるが、この発明は、前述の第1実施形態の内容に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。
たとえば、前述の第1実施形態では、燃料噴射装置18の先端部18aおよび本体部18bが集合路15に進入している場合について説明した。しかし、本体部18bだけが、集合路15に進入していてもよい。また、図6に示す第2実施形態に係るエンジン201のように、燃料噴射装置218は、本体部218bよりも長い先端部218aを備えており、この先端部218aだけが集合路15に進入していてもよい。
【0033】
また、前述の第1実施形態では、燃料噴射装置18の先端が収容孔20内に配置されている場合について説明した。しかし、燃料噴射装置18は、燃料噴射装置18の先端面と燃焼室12の内壁面とが連続するように配置されていてもよい。すなわち、燃焼室12の内壁面における収容孔20の周囲の部分と燃料噴射装置18の先端面とが同一平面上に配置されていてもよい。また、図7に示す第3実施形態に係るエンジン301のように、燃料噴射装置18の先端が燃焼室12に達するように収容孔320が形成されており、燃料噴射装置18が収容孔320から突出していてもよい。この構成によれば、燃料噴射装置18の先端が収容孔320から突出しているので、燃料噴射装置18から噴射された燃料のミストが、収容孔320の内壁に衝突して、燃料の広がりが狭められることを防止することができる。
【0034】
また、前述の第1実施形態では、燃料噴射装置18が、吸気ポート13を貫通している場合について説明した。すなわち、前述の第1実施形態では、燃料噴射装置18の全周が吸気ポート13によって取り囲まれている場合について説明した。しかし、図8〜図13に示すように、燃料噴射装置18の一部が吸気ポート413、513に進入していてもよい。すなわち、燃料噴射装置18の周囲が吸気ポート413、513によって部分的に取り囲まれており、軸方向に直交する燃料噴射装置18の断面において、吸気ポート413、513に進入している部分と、吸気ポート413、513から露出している部分とが含まれていてもよい。
【0035】
具体的には、図8〜図10に示す第4実施形態に係る吸気ポート413のように、燃料噴射装置18の一部が、2つの分岐路416の間に配置されていてもよい。第4実施形態では、本体部18bは、集合路415に進入していると共に、各分岐路416に進入している。また、図示はしないが、第4実施形態において、先端部18aが、集合路415および各分岐路416に進入していてもよい。
【0036】
また、図11〜13に示す第5実施形態に係る吸気ポート513のように、燃料噴射装置18が、2つの分岐路516の間に配置されており、本体部18bの一部が各分岐路516に進入していてもよい。また、図示はしないが、第5実施形態において、先端部18aが、各分岐路516に進入していてもよい。さらに、第5実施形態において、2つの分岐路516は、共通の集合路に結合されていてもよいし、互いに独立していてもよい。すなわち、互いに独立した2つの吸気ポートが設けられており、これらの吸気ポートの間に燃料噴射装置18が配置されていてもよい。
【0037】
また、前述の第1実施形態では、吸気ポート13が2つの分岐路16を有している場合について説明した。しかし、吸気ポート13は、3つ以上の分岐路16を有していてもよい。また、吸気ポート13は、分岐していなくてもよい。この場合、同一のシリンダ4に対応する吸気ポート13の数は、1つであってもよいし、2つ以上であってもよい。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【0038】
以下に、特許請求の範囲に記載された構成要素と前述の実施形態における構成要素との対応関係を示す。
燃焼室:燃焼室12
吸気ポート:吸気ポート13、413、513
収容孔:収容孔20
シリンダヘッド:シリンダヘッド3
燃料噴射装置:燃料噴射装置18、218
4サイクルエンジン:エンジン1、201、301
吸気ポートの内壁:吸気ポートの内壁13c
分岐路:分岐路16、416、516
集合路:集合路15、415
第1シール部材:第1シール部材24
シリンダ:シリンダ4
シリンダボディ:シリンダボディ2
シリンダの中心軸線:シリンダの中心軸線L2
接続孔:接続孔21
第2シール部材:第2シール部材25
本体部:本体部18b
先端部:先端部18a、218a
【符号の説明】
【0039】
1 エンジン
2 シリンダボディ
3 シリンダヘッド
4 シリンダ
12 燃焼室
13 吸気ポート
13c 吸気ポートの内壁
15 集合路
16 分岐路
18 燃料噴射装置
18a 先端部
18b 本体部
20 収容孔
21 接続孔
24 第1シール部材
25 第2シール部材
201 エンジン
218a 先端部
218 燃料噴射装置
301 エンジン
413 吸気ポート
415 集合路
416 分岐路
513 吸気ポート
516 分岐路
L2 シリンダの中心軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼室と、前記燃焼室に連通する吸気ポートと、前記燃焼室と前記吸気ポートとを連通する収容孔とが形成されたシリンダヘッドと、
少なくとも一部が前記吸気ポートおよび収容孔に配置されており、前記燃焼室に向けて燃料のミストを噴射することにより、燃料のミストを前記燃焼室に直接供給する燃料噴射装置と、を含む、4サイクルエンジン。
【請求項2】
前記燃料噴射装置の先端は、前記燃焼室に達している、請求項1記載の4サイクルエンジン。
【請求項3】
前記燃料噴射装置は、前記吸気ポートの内壁を貫通している、請求項1または2記載の4サイクルエンジン。
【請求項4】
前記吸気ポートは、前記燃焼室に連通する複数の分岐路と、前記複数の分岐路が集合する集合路とを含み、
前記燃料噴射装置は、前記集合路の内壁を貫通している、請求項3記載の4サイクルエンジン。
【請求項5】
前記吸気ポートは、前記燃焼室に連通する複数の分岐路と、前記複数の分岐路が集合する集合路とを含み、
前記燃料噴射装置は、少なくとも一つの前記分岐路に進入している、請求項1または2記載の4サイクルエンジン。
【請求項6】
前記燃料噴射装置と前記収容孔との間をシールする第1シール部材をさらに含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の4サイクルエンジン。
【請求項7】
前記4サイクルエンジンは、シリンダを含むシリンダボディをさらに含み、
前記収容孔は、前記シリンダの中心軸線に対して前記吸気ポートよりも離れた位置で前記燃焼室に連通している、請求項1〜6のいずれか一項に記載の4サイクルエンジン。
【請求項8】
前記シリンダヘッドは、前記吸気ポートと前記シリンダヘッドの外部とを接続する接続孔を含み、
前記燃料噴射装置は、前記接続孔に進入している、請求項1〜7のいずれか一項に記載の4サイクルエンジン。
【請求項9】
前記燃料噴射装置と前記接続孔との間をシールする第2シール部材をさらに含む、請求項8記載の4サイクルエンジン。
【請求項10】
前記燃料噴射装置は、前記吸気ポートに進入している本体部を含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の4サイクルエンジン。
【請求項11】
前記燃料噴射装置は、前記吸気ポートに進入している先端部を含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の4サイクルエンジン。
【請求項12】
前記4サイクルエンジンは、シリンダを含むシリンダボディをさらに含み、
前記燃料噴射装置は、前記シリンダの中心軸線に対して傾斜している、請求項1〜11のいずれか一項に記載の4サイクルエンジン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−241698(P2012−241698A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−116254(P2011−116254)
【出願日】平成23年5月24日(2011.5.24)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【Fターム(参考)】