説明

4.35V以上級のリチウム2次電池

【課題】リチウム2次電池を提供すること。
【解決手段】正極(C)、負極(A)、分離膜及び電解液を含むリチウム2次電池において、前記正極(C)に対する負極(A)の単位面積当たり両電極活物質の重量比(A/C)が0.44ないし0.70であり、電池の充電終止電圧は4.35ないし4.6Vであるリチウム2次電池。
本発明に係るリチウム2次電池は、電池内正極(C)に対する負極(A)の単位面積当たり両電極活物質の重量比(A/C)の調節を通じて4.35V以上の高電圧電池に合う容量バランス設計を行うことにより、従来の4.2V級電池において50%ほどの可用容量を有するリチウムコバルト系の正極活物質を用いた電池の可用容量及び平均的な放電電圧を著しく増やすだけではなく、過充電時の電池安定性を有意的に高めることにより、安全であると共に、高容量及び高電圧を有するリチウム2次電池を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は4.35V以上級のリチウム2次電池に係り、詳しくは、正極(C)に対する負極(A)の単位面積当たり両電極活物質の重量比(A/C)の調節を通じて高電圧電池に合う容量バランス(capacity balance)設計が行われた4.35ないし(乃至:〜)4.6V範囲の高容量、高出力及び高安全性を有するリチウム2次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型軽量化が進む一方である。これに伴い、電源として用いられる電池の小型軽量化も求められている。小型軽量化高及び容量に充放電可能な電池として、リチウムイオン電池に代表されるリチウム系の2次電池が実用化レベルに至っており、小型ビデオカメラ、携帯電話、ノート型パソコンなどの携帯用電子及び通信機器などに用いられている。
【0003】
前記リチウム系の2次電池は正極、負極及び電解質よりなる。また、リチウム系の2次電池は、電解質が液体有機溶媒よりなる液体リチウム系の電池と、電解質がポリマーよりなるポリマーリチウム系の電池とに大別できる。
【0004】
リチウム系の2次電池の電池活物質としては、電気陰性度が大きくて単位質量当たり電気容量が大きなリチウムを用いていた。しかし、リチウム金属それ自体では安定性を確保するのに問題点があるため、現在、リチウムイオンの可逆的な挿入及び脱離が可能な物質を電池の活物質として用いる電池に関する研究が活発に行われつつある。
【0005】
現在、リチウム系の2次電池に用いられる正極活物質としては、LiCoO,LiNiO,LiMn,LiMnO,LiFeOなどのリチウム含有遷移金属複合酸化物が挙げられる。特に、LiCoOは、良好な電気伝導度、高い電池電圧及び優れた電極特性を示すことから、現在商業化が進んで市販されている代表的な正極活物質である。負極活物質としては、電解液中のリチウムイオンが挿入及び脱離可能なカーボン系の材料が用いられ、分離膜としては、ポリエチレン系の多孔性高分子が用いられている。上記の正極、負極及び電解質を用いて製造されたリチウム2次電池は、最初の充電により正極活物質からのリチウムイオンが負極活物質としてのカーボン粒子内に挿入され、放電時にさらに脱離されるなど、両電極間を往復しながらエネルギーを伝える役割を果たすために充放電が可能になる。
【0006】
かようなリチウム2次電池を高容量、高出力及び高電圧のものとして製造するためには、電池内の正極活物質の理論的な可用容量を増やす必要がある。このためには、電池の充電終止電圧を増やす必要性が生じてくる。上述した正極活物質のうち、特にLiCoOを用いている従来の4.2V級電池は、LiCoOの理論的な可用容量のうち約55%だけを挿入及び脱離させて用いており、負極活物質もまた正極から脱離されるリチウムイオンの容量に合わせて限定している。このような電池を4.35V以上に過充電する場合、正極から脱離された過剰のリチウムイオンが挿入される多数の負極空間が取れないため、負極の表面にリチウムデンドライト成長(dendrite growth)が起こり、その結果、急激な発熱反応及び全体としての電池の安定性の低下などの不具合が生じてしまう。さらに、正極と電解液間の副反応性が高くなるため、正極の表面の分解及び電解液の酸化反応が起こることになる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者は、4.35V以上級の高容量電池の製造時に見られる不具合を解決するために、正極に対する負極の単位面積当たり両電極活物質の重量比(A/C)を最適な条件に調節すれば、正極から脱離された過剰のリチウムイオンが挿入される多数の負極の空間を取ることができ、且つ、正極活物質の粒径(粒子のサイズ)の調節を通じて正極と電解液間の副反応性の減少及びこれによる高電圧電池の安全性の向上を図ることができるということを知見した。
【0008】
そこで、本発明は、過充電時にも安定しており、電池の充電終止電圧が4.35ないし4.6Vである高容量のリチウム2次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、正極(C)、負極(A)、分離膜及び電解液を含むリチウム2次電池において、前記正極(C)に対する負極(A)の単位面積当たり両電極活物質の重量比(A/C)が0.44ないし0.70であり、電池の充電終止電圧は4.35ないし4.6Vである、リチウム2次電池を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明においては、電池内の正極(C)に対する負極(A)の単位面積当たり電極活物質重量比(A/C)の調節を通じて4.35V以上の高電圧電池に合う容量バランス設計を行うことにより、従来に約50%だけを用いていた正極活物質の可用容量を14%以上有意的に増やすことができる。さらに、従来4.2Vの電池では解決できなかった過充電時の不具合を解決することにより、安全性に富み、長寿命及び高電圧を有するリチウム2次電池を提供することができる。
【0011】
さらには、4.7V以上の反応電位を有するフッ化トルエン化合物を4.35V以上級の高電圧電池の添加剤として用いることにより、サイクル特性の低下無しに高電圧電池の安全性及び高温保存特性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を詳述する。
【0013】
本発明は正極(C)に対する負極(A)の単位面積当たり両電極活物質の重量比(A/C)の調節を通じて電池の容量バランスが充足される4.35V以上級の高電圧電池、例えば、4.35ないし4.6V範囲の充電終止電圧を示す高出力のリチウム2次電池を設計及び製造することを特徴とする。
【0014】
このような本発明の特徴により得られる効果は、下記の通りである。
【0015】
1)本発明に係る4.35V以上級の高電圧電池は、従来の4.2V級の電池よりも高容量、高電圧、高出力を示すだけではなく、安全性の向上効果を示すことができる。
【0016】
日本特開2001−68168号公報には、4.35V以上級の高電圧電池について開示されている。これによれば、電池は、高電圧を示すために遷移金属または非遷移金属としてのGe,Ti,Zr,Y,Siなどがドープされた正極活物質を用いた。このような電池を4.35Vよりも高い電圧に充電を行う場合、正極から大容量のリチウムイオンが放出されるのに対し、負極は放出された過剰のリチウムイオンが挿入される多数の負極の空間が取れず、高電圧電池の安全性が急激に低下する結果となる。
【0017】
これに対し、本発明においては、正極(C)に対する負極(A)の単位面積当たり両電極活物質の重量比(A/C)の調節を通じて、4.35V以上の充電を行うとき、正極から放出される過剰のリチウムイオンが挿入される多数の負極の空間が取れるように容量バランスの取れた電池を設計することにより、高容量、高出力だけではなく、上述した高電圧電池の安全性の低下を根本的に解決することができる。
【0018】
2)さらに、本発明においては、正極活物質粒子のサイズの調節を通じて4.35V以上の過充電時に生じる正極活物質と電解液との間の副反応性の増加及びこれによる電池の安全性の低下を防ぐことができる。
【0019】
すなわち、正極活物質の比表面積が大きければ大きいほど、電解液との副反応性が高まるため、本発明においては、正極活物質の比表面積を減らすために通常の正極活物質の粒径よりも一層大きな粒径を有する正極活物質を用いる。さらに、通常の粒子よりも一層大きな粒径を有する正極活物質の使用による全体としての電池の反応速度の低下を防ぐために、正極と負極における両電極活物質の単位面積当たり搬入量を調節することができ、これを通じて電池の安全性の向上を図ることができる。
【0020】
3)しかも、本発明は、従来4.2V級の電池において、理論的な可用容量のうち実際に約55%だけを吸蔵及び放出するリチウムコバルト系の正極活物質、例えば、LiCoOを用いて電池の可用容量及び平均的な放電電圧を格段に増やすことができる。実際に、本発明においては、実験を通じて、従来の電池と同じLiCoOを用いたのにも拘らず、LiCoOの可用容量を14%以上増大できるということを確認することができた(表1参照)。
【0021】
本発明に係る高電圧リチウム2次電池は、4.35V以上の高電圧及び高出力を示すために、電池の充電終止電圧の範囲を調節するか、あるいは、正極活物質に他の構成成分をドープ、置換または化学的に安定している物質により表面処理することができる。
【0022】
このとき、前記リチウム2次電池の充電終止電圧の範囲は4.35V以上、好ましくは、4.35ないし4.6Vの範囲である。電池の充電終止電圧が4.35V未満である場合には、既存の電池である4.2Vと同様に、正極活物質の可用容量の増大及びこれによる高容量の電池を設置及び製造ができなくなる。また、電池の充電終止電圧が4.6Vを超える場合、正極活物質内にH13相が生じながら構造的な変化が急激に起こり、正極活物質としてのリチウム遷移金属複合酸化物から遷移金属が溶出されると共に、酸素が失われるなどの不具合が発生する。さらに、充電終止電圧の増加による正極と電解液間の反応性が大きくなって爆発に至るなどの不具合が発生する。
【0023】
本発明に係る4.35V以上級の高電圧リチウム2次電池の負極活物質としては、当分野における公知の負極活物質、例えば、リチウムイオンが吸蔵及び放出可能な材料を制限無しに用いることができる。これらの非制限的な例としては、リチウム合金、炭素材、無機酸化物、無機カルコゲナイド、窒化物、金属錯体、有機高分子化合物などが挙げられる。特に、非晶質系または結晶性の炭素材が好適に用いられる。
【0024】
本発明に係る4.35V以上級の高電圧リチウム2次電池の正極活物質としても、当分野における公知の正極活物質、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素、14族元素、15族元素、遷移金属及び希土類元素よりなる群から選ばれた1種以上の元素を含むリチウム含有複合酸化物を制限無しに用いることができる。これらの非制限的な例としては、各種のリチウム遷移金属複合酸化物(例えば、LiMnなどのリチウムマンガン複合酸化物、LiNiOなどのリチウムニッケル酸化物、LiCoOなどのリチウムコバルト酸化物、リチウム鉄酸化物、これら酸化物のマンガン、ニッケル、コバルト、鉄の一部を他の遷移金属または非遷移金属、例えば、Al,Mg,Zr,Fe,Zn,Ga,Sn,Si,Geまたはこれらの組合物によりドープまたは置換したもの、またはリチウムを含有する酸化バナジウムなど)またはカルコゲン化合物(例えば、二酸化マンガン、二硫化チタン、二硫化モリブデンなど)などがある。
【0025】
特に、Al,Mg,Zr,Fe,Zn,Ga,Sn,Si及び/またはGeによりドープあるいは未ドープされたリチウムコバルト系の複合酸化物であることが好ましく、さらに好ましくは、LiCoOである。これは、従来の電池と同じ正極活物質を用いるのにも拘らず、適切な電極設計を通じて正極活物質の可用容量の増大及びこれによる高電圧電池の製造が可能になるということを示すためである。
【0026】
本発明に係る4.35V以上級の高電圧リチウム2次電池において、正極(C)に対する負極(A)の単位面積当たり両電極活物質の重量比(A/C)の範囲は、0.44ないし0.70であることが好適であり、特に、0.5ないし0.64であることが好ましい。正極(C)に対する負極(A)の単位面積当たり両電極活物質の重量比(A/C)が0.44未満である場合には既存の4.2V電池の設計と同様になるため、4.35V以上の過充電時に容量バランスが崩れて負極の表面にリチウムデンドライト成長が起こり、その結果、電池の短絡及び容量の急減が起こる。正極(C)に対する負極(A)の単位面積当たり両電極活物質の重量比(A/C)が0.64を超える場合、負極のリチウムサイトが余計に発生し、その結果、電池の体積当たり/質量当たりエネルギー密度が落ちてしまうために好ましくない。
【0027】
本発明において行われる単位面積当たり正極に対する負極の両電極活物質の重量比の調節は、LiCoO,LiCoOとほぼ同じ容量を有するLiNiMnCoOまたはLiNiMnOなどを正極活物質として用い、黒鉛を負極活物質として用いて行われることが好ましい。また、Ni系などの高容量正極材及び/またはSiなどの高容量負極材を用いる場合には容量が異なってくるため、上述した重量比の再計算を通じて安全性に富み、最適な高容量、高出力を有するリチウム2次電池を設計及び製造することができる。しかしながら、本発明は前記正極材及び/または負極材に限定されることはない。
【0028】
本発明に用いられる正極活物質、例えば、LiCoOなどは4.35V以上であって、充電時に熱的特性が下がるという不具合がある。これを防ぐために、正極活物質の比表面積を調節することができる。
【0029】
正極活物質の粒子が大きければ大きいほど、すなわち、比表面積が小さければ小さいほど、電解液との反応性が低下して熱的安定性を高めることができる。このため、本発明は、通常汎用される正極活物質よりも一層大きな粒径を有する正極活物質を用いることが好ましい。すなわち、本発明においては、正極活物質の粒径(粒子のサイズ)が5ないし30μmの範囲であるものを用いることが好ましい。正極活物質の粒径が5μm未満である場合、正極と電解液間の副反応性が高くなって電池の安定性が低下するなどの副作用が起こることがある。また、正極活物質の粒径が30μmを超える場合、電池の反応性が低下する不具合が生じることがある。
【0030】
さらに、通常の正極活物質粒子よりも一層大きな粒径を有する正極活物質を用いることにより生じる全体としての電池の反応速度の低下を防ぐために、正極及び負極における両電極活物質、例えば、正極活物質及び負極活物質の単位面積当たり搬入量を調節することができる。
【0031】
このとき、正極における正極活物質の単位面積当たり搬入量は、10ないし30mg/cmの範囲であることが好ましい。正極活物質の搬入量が10mg/cm未満である場合、電池の容量及び効率性の低下などの不具合が起こることがあり、30mg/cmを超える場合、正極が厚くなって電池の反応性が低下する。さらに、負極における負極活物質の搬入量は4.4ないし21mg/cmの範囲であることが好ましい。負極活物質の搬入量が4.4mg/cm未満である場合、容量バランスが取れずに電池の安全性の低下が起こり、負極活物質の搬入量が21mg/cmを超える場合、負極の余計なリチウムサイトが存在する結果、電池の体積当たりおよび質量当たりのエネルギー密度が低下してしまう。
【0032】
本発明に係る電極は、当分野における通常の方法に従って製造することができる。例えば、一般に、金属箔よりなる集電体の上に両電極スラリーをそれぞれ塗布、圧延及び乾燥することにより製造する。
【0033】
このとき、両電極スラリー、例えば、正極合剤及び負極合剤は、それぞれ上述した正極活物質及び負極活物質をバインダー、分散媒などと混合することにより得ることができ、正極合剤及び負極合剤には少量の導電剤を含めることが好ましい。
【0034】
導電剤としては、組立て済み電池内において化学変化を引き起こさない電子伝導性材料であればいかなるものも使用可能である。例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラックと、天然黒鉛、人造黒鉛、導電性炭素繊維などを用いることができる。特に、カーボンブラック、黒鉛粉末、炭素繊維が好適に用いられる。
【0035】
バインダーとしては、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂のうちどちらか一方を用いてもよく、これらを組み合わせて用いても良い。これらのうち、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)またはスチレンブタジエンラバー(SBR)またはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が好ましく、特に、PVdFが一層好ましい。
【0036】
分散楳としては、水系分散楳やN−メチル−2−ピロリドンなどの有機分散楳を用いることができる。
【0037】
上記したリチウム2次電池の両電極において、正極(C)に対する負極(A)の電極板の厚さ比(A/C)は0.7ないし1.4の範囲であることが好適であり、特に、0.8ないし1.2であることが好ましい。電極板の厚さ比が0.7未満である場合、電池の体積当たりエネルギー密度の損失が引き起こされる場合があり、電極板の厚さ比が1.4を超える場合、全体としての電池の反応速度が遅くなる場合がある。
【0038】
本発明に係る4.35V以上級の高電圧リチウム2次電池は、上述した正極(C)に対する負極(A)の単位面積当たり両電極活物質の重量比(A/C)を0.44ないし0.70に調節して製造した正極(C)と、負極(A)と、これらの両電極の間に挟み込まれた分離膜及び電解液を含む。
【0039】
このとき、本発明は、前記4.35V以上級の高電圧リチウム2次電池の電解液として、従来より汎用されている電池用電解液のほかに、4.7V以上の反応電位を有する化合物がさらに含有された電解液を用いることを他の特徴とする。
【0040】
このような特徴により、4.35V以上級の高電圧リチウム2次電池において、サイクル特性の低下無しに安全性及び高温保存特性の向上を図ることができる。
【0041】
1)4.35V以上級の高電圧リチウム2次電池の安全性及び高温保存性を高めるために、従来の4.2V以上級電池の電解液添加剤であるシクロヘキシルベンゼン(cyclohexylbezene:CHB)またはビフェニル(biphenyl:BP)などを用いる場合、常温及び高温サイクル特性が急激に低下し、且つ、高温保存時における前記添加剤の激しい分解により正極に極めて厚い絶縁体を形成する。その結果、リチウムイオンの移動が妨げられてリカバリー容量が全く出てこなくなるという不具合が生じる。
【0042】
これに対し、本発明においては、電解液添加剤として用いられた4.7V以上の反応電位を有するフッ化トルエン(fluorotoluene;FT)化合物、例えば、2−フッ化トルエン(2−FT)及び/または3−フッ化トルエン(3−FT)が高い反応電位を有し、しかも、サイクルの進行による反応電位の変化がほとんどないことから、4.35ないし4.6Vの範囲における添加剤の分解及び反応電位の急激な変化による電池のサイクル特性などの性能低下を防ぐと共に、高温保存性を高めることができる。
【0043】
2)さらに、上述した電解液添加剤により、従来の電解液のみよりなる電池における正極と電解液間の副反応性の発生接触面を狭めることにより、電池の安全性を高めることができる。
【0044】
本発明に係る4.35V以上級の高電圧リチウム2次電池の電解液に加えられる成分としては、4.7V以上の反応電位を有する化合物であれば制限無しに用いることができ、フッ化トルエン(FT)化合物が好適に用いられる。特に、フッ化トルエン化合物のうち高い反応電位を有するだけではなく、サイクルの進行による反応電位の変化がほとんどない2−フッ化トルエン(2−FT)及び/または3−フッ化トルエン(3−FT)がさらに好ましい。
【0045】
2−フッ化トルエン及び/または3−フッ化トルエンは従来フッ素が置換されたトルエン化合物のうち物理的に安定しており、沸点が高くて熱分解が起こり難いだけではなく、反応電位が従来のCHB及びBPよりも0.1Vほど高い4.7V以上の反応電位を有することにより、電解液の付加に当たり、CHB及びビフェニル添加剤とは異なり、電池の高温保存性及び安全性を高めることができる。さらに、従来のフッ化トルエン化合物に比べてサイクルの進行による反応電位の変化がないことから、高電圧電池のサイクル特性の低下を防ぐことができる。
【0046】
実際に、フッ化トルエン化合物の一種であり、反応電位がCHBに類似している4−フッ化トルエン(4−FT)は、4.35V以上級の電池において、サイクルの進行に伴い正極活物質とパラ(para−)位置に置換されたフッ素との反応が進んでサイクル特性の顕著な低下が見られ、その結果、電池の安全性及び高温保存性を高められないということを確認することができた。
【0047】
前記4.7V以上の反応電位を有する化合物、例えば、2−FT及び/または3−FT化合物の含量は、全体電解液100重量%当たり0.1ないし10重量%の範囲であることが好ましい。2−FT及び/または3−FT化合物の含量が0.1重量%未満である場合、添加剤の付加による安全性及び性能向上の効果があまり見られず、2−FT及び/または3−FT化合物の含量が10重量%を超える場合、電解液の粘度低下及び添加剤の発熱反応により過度な熱が生じる恐れがある。
【0048】
本発明に係る4.35V以上級の高電圧リチウム2次電池は、当分野における公知の方法に従い製造することができる。例えば、正極と負極の単位面積当たり両電極活物質の重量比を0.44ないし0.70の範囲に調節して製造した正極と負極との間に多孔性分離膜を挟み込んだ後、電解液を注入することにより製造することができる。
【0049】
本発明において使用可能な電解液としては、Aなどの構造を有する塩であって、Aは、Li,Na,Kなどのアルカリ金属正イオンまたはこれらの組合わせよりなるイオンを含み、Bは、PF,BF,Cl,Br,I,ClO,ASF,CHCO,CFSO,N(CFSO,C(CFSOなどの負イオンまたはこれらの組合わせよりなるイオンを含む塩がプロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、エチルメチルカーボネート(EMC)、γ−ブチロラクトンまたはこれらの混合物よりなる有機溶媒に溶解または解離されたものが挙げられるが、これに限定されることはない。特に、電解液成分として4.7V以上の反応電位を有する化合物、例えば、2−フッ化トルエン及び/または3−フッ化トルエンを含有する電解液を用いる場合、上述した高電圧電池のサイクル特性の低下無しに高温保存性及び安全性を高めることができる。
【0050】
本発明において使用可能な分離膜には特に制限がなく、多孔性分離膜を用いることができ、例えば、ポリプロピレン系、ポリエチレン系、ポリオレフィン系の多孔性分離膜などがある。
【0051】
上記した方法に従い製造されたリチウム2次電池の外形には特に制限がないが、缶などの筒状、角形、ポーチ状、またはコイン状などでありうる。
【0052】
さらに、本発明は、正極、負極、分離膜及び電解液を含むリチウム2次電池において、前記電池の充電終止電圧は4.35ないし4.6Vの範囲であり、電解液は4.7V以上の反応電位を有する化合物を含有することを特徴とするリチウム2次電池を提供する。
【0053】
このとき、4.7V以上の反応電位を有する化合物の種類及び含量は上述した通りである。
【0054】
以下、本発明への理解を助けるために本発明の好適な実施例を挙げるが、後述する実施例は単に本発明を例示するものに過ぎず、本発明の範囲が後述する実施例に限定されることはない。
【0055】
[実施例1〜5.4.35V以上級のリチウム2次電池の製造]
実施例1.4.35Vリチウム2次電池(1)
(正極の製造)
粒径が10μmであるLiCoO95重量%、導電剤2.5重量%及びバインダー2.5重量%を混合してスラリーを得た。次いで、前記スラリーを厚さ15μmのアルミニウム箔板の両面に均一に塗布して圧延し、19.44mg/cmの活物質重量を有する正極を得た。このとき、最終的に得られた正極の厚さは、128μmであった。
【0056】
(負極の製造)
黒鉛材95.3重量%にバインダー4.0重量%、導電剤0.7重量%を付加及び混合してスラリーを得た。次いで、前記スラリーを厚さ10μmの銅板の両面に均一に塗布して圧延し、9.56mg/cmの活物質重量を有する負極を得た。このとき、正極(C)に対する負極(A)の単位面積当たり重量比(A/C)は0.49であり、最終的に得られた負極の厚さは130μmであった。
【0057】
(電解液の製造)
エチレンカーボネートとジメチルカーボネートの体積比が1:2である溶液に1モルのLiPFを溶解して電解液を得た。
【0058】
(電池の製造)
上記の方法に従い製造された正極及び負極を用いてコイン状の電池と角形電池を製造した。この電池の製造工程は、空気との接触を避けるためにグローブボックス及びドライルームにおいて行われた。
【0059】
実施例2.4.35Vリチウム2次電池(2)
22mg/cmの活物質重量を有する正極(C)と11mg/cmの活物質重量を有する負極(A)を用いて正極に対する負極の単位面積当たり重量比(A/C)を0.50に調節した以外は、前記実施例1の方法と同様にしてリチウム2次電池を製造した。
【0060】
実施例3.4.4Vリチウム2次電池
22mg/cmの活物質重量を有する正極(C)と11.66mg/cmの活物質重量を有する負極(A)を用いて正極(C)に対する負極(A)の単位面積当たり重量比(A/C)を0.53に調節した以外は、前記実施例1の方法と同様にして4.4Vリチウムイオン2次電池を製造した。
【0061】
実施例4.4.5Vリチウム2次電池
22mg/cmの活物質重量を有する正極(C)と12.57mg/cmの活物質重量を有する負極(A)を用いて正極(C)に対する負極(A)の単位面積当たり重量比(A/C)を0.57に調節した以外は、前記実施例1の方法と同様にして4.5Vリチウムイオン2次電池を製造した。
【0062】
実施例5.4.35Vリチウム2次電池
電解液(1M LiPFが溶解されたEC:DMC=1:2(体積比)の混合溶液)100重量%当たり3−フッ化トルエン(3−FT)3重量%が加えられた電解液を用いた以外は、前記実施例1の方法と同様にしてリチウム2次電池を製造した。
【表1】

【0063】
[比較例1〜4]
比較例1.4.2Vリチウム2次電池の製造
22mg/cmの活物質重量を有する正極(C)と9.68mg/cmの活物質重量を有する負極(A)を用いて正極に対する負極の単位面積当たり重量比(A/C)を前記表1のように0.44に調節した以外は、前記実施例1の方法と同様にしてリチウム2次電池を製造した。
【0064】
比較例2
電解液にシクロヘキシルベンゼン(CHB)3重量%を加えた以外は、前記実施例1の方法と同様にしてリチウム2次電池を製造した。
【0065】
比較例3
電解液に3−フッ化トルエンに代えて4−フッ化トルエン(para−FT)3重量%を加えた以外は、前記実施例1の方法と同様にしてリチウム2次電池を製造した。
【0066】
比較例4
正極(C)に対する負極(A)の単位面積当たり活物質の重量比(A/C)を0.44に調節し、且つ、電解液にCHBを3重量%加えた以外は、前記実施例1の方法と同様にしてリチウム2次電池を製造した。
【0067】
実験例1.4.35V以上級の高電圧電池と4.2V電池との比較評価
1−1.充放電容量の評価
本発明に従い製造された4.35V以上級のリチウム2次電池と4.2V級のリチウム2次電池に対して電池の充放電容量の評価を下記のように行った。
【0068】
4.35V以上級の電池と4.2V電池としては、実施例2ないし4に従い製造された電池及び比較例1に従い製造された電池をそれぞれ用いた。
【0069】
実施例2の電池に対しては3ないし4.35V、実施例3の電池に対しては3ないし4.4V、実施例4の電池に対しては3ないし4.5V、そして比較例1の電池に対しては3ないし4.2Vの充放電電圧範囲においてそれぞれ実験を行い、1Cの充電/1Cの放電をそれぞれ繰り返し行った。さらに、上記の実験は常温(25℃/45℃)において行われた。
【0070】
実験の結果、比較例1の4.2V電池はそれぞれ155.0及び149.4mAh/gの初期の充放電容量を示し、電池の単位体積当たりエネルギー密度は380.0Wh/kgであった(図2及び表2参照)。これに対し、実施例2に従い製造された4.35V電池はそれぞれ179.7及び171.3mAh/gの初期の充放電容量を示し、電池の単位体積当たりエネルギー密度は439.2Wh/gであった。これより、実施例2に従い製造された4.35V電池は、それぞれ14.6%及び15.6%ほど放電容量及び電池の単位体積当たりエネルギー密度が高くなったことが分かった(図1及び表2参照)。さらに、実施例3及び4に従い製造された4.4V及び4.5V電池は、対照群としての比較例1の4.2V電池に比べてそれぞれ20%及び30%の放電容量増を示し、単位体積当たりエネルギー密度もそれぞれ22.3%及び33.4%ほど高くなったことが確認できた(表2参照)。
【0071】
これより、本発明に係るリチウム2次電池は、従来の電池と同じLiCoOの正極活物質を用いたのにも拘わらず、既存の電極設計を変えることだけで、LiCoOの可用容量を14%以上増やし、且つ、単位体積当たりエネルギー密度も有意的に高めたということが確認できた。
【表2】

【0072】
1−2.安全性の評価
本発明に従い製造された4.35V以上級のリチウム2次電池と4.2V級のリチウム2次電池に対する過充電の比較実験を下記のように行った。
【0073】
4.35V以上級の電池と4.2V電池としては、実施例2に従い製造された電池及び比較例1に従い製造された電池をそれぞれ用いた。また、各電池における過充電電圧は5.0V、電流は2Aであり、実験は常温(25℃)において行われた。
【0074】
実験の結果、比較例1の4.2V電池は1時間後に電池の温度が200℃まで上がり、電池の短絡による爆発が起こった(図4参照)。これは、従来の4.2V級の電池を5.0Vに過充電することにより、正極と電解液との間の反応性が増大して正極の表面の分解及び電解液の酸化反応が起こると共に、過充電により正極から脱離された過剰のリチウムイオンが挿入される負極の空間が十分取れずにリチウムデンドライトの成長が起こり、その結果、電池の電気化学的な安定性が著しく低下していることを意味する。
【0075】
これに対し、実施例2に従い製造された4.35V級の電池は、5.0Vの過電圧充電により温度が40℃まで昇温したが、経時的に安定して行った(図3参照)。これは、過充電時に正極から放出された過剰のリチウムイオンが吸蔵可能な多量の負極空間が存在し、しかも、過充電時における正極と電解液との間の反応性の増加による副作用が著しく減っていることを意味する。
【0076】
これより、本発明に係るリチウム2次電池は、従来の4.2V電池の設計とは異なり、電池内の正極(C)に対する負極(A)の単位面積当たり活物質の重量比(A/C)を調節することにより、過充電時にも電池の安定性が有意的に高くなるということが確認できた。
【0077】
実験例2.4.35V以上級の高電圧リチウム2次電池のサイクル評価
本発明に従い製造された4.35V以上級のリチウム2次電池に対して下記のように高温サイクルの評価実験を行った。
【0078】
4.35V以上級の電池としては、電解液添加剤を加えていない実施例1のリチウム2次電池、3−フッ化トルエン(3−FT)を電解液に加えて得られた実施例5のリチウム2次電池を用いた。対照群としては、CHBを電解液に加えて得られた比較例2の電池及び4−フッ化トルエン(4−FT)を電解液に加えて得られた比較例3の電池を用いた。
【0079】
各電池に対する充放電電圧の範囲を3.0ないし4.35Vに調節して実験を行い、このとき、1C(=880mA)の充放電電流を繰り返し加えた。さらに、4.35Vの定電圧区間では50mAに電流が下がるまで4.35Vに電圧を保持した。そして実験は、45℃の温度において行われた。
【0080】
実験の結果、CHB添加剤を加えた電解液を含む比較例2のリチウム2次電池は、添加剤を加えていない実施例1のリチウム2次電池及び3−フッ化トルエン(3−FT)添加剤を加えた実施例5のリチウム2次電池に比べて高温における電池サイクル特性が大幅に低下しているということが分かった(図5参照)。これは、反応電位が4.7V以下であるCHBの電解重合反応により形成された皮膜によって正極活物質の電荷の移動反応が妨げられて正極の抵抗が高くなることにより、電池のサイクル特性の低下が起こっていることを意味する。さらに、反応電位がCHBとほぼ同じである4−フッ化トルエンを加えた比較例3の電池もまた、4.35Vサイクルに伴い正極活物質とパラ(para−)位置にあるフッ素との間に反応が起こることにより、サイクル特性が急激に低下していた(図5参照)。
【0081】
これに対し、4.7V以上の反応電位を有する3−フッ化トルエン(3−FT)添加剤を加えた実施例5のリチウム2次電池は、図1における比較結果を参照するとき、高温サイクル特性にあまり影響を及ぼさなかった(図6参照)。
【0082】
これより、本発明に係る4.7V以上の反応電位を有する化合物、例えば、3−フッ化トルエンを添加剤として加えて得られた高電圧リチウム2次電池は、従来4.2V電池用添加剤として加えられるCHBとは異なり、高温サイクルの特性の低下を防げるということが確認できた。
【0083】
実験例3.4.35V以上級の高電圧リチウム2次電池の安全性の評価
本発明に従い製造された4.35V以上級の高電圧リチウム2次電池の安全性を評価するために、下記のように高温露出実験を行った。
【0084】
3−フッ化トルエンを電解液に加えて得られた実施例5の高電圧リチウム2次電池を用いた。対照群としては、CHBと4−フッ化トルエン(4−FT)をそれぞれ電解液に加えた比較例2及び比較例3のリチウム2次電池を用いた。
【0085】
各電池を2時間30分間1C(=880mA)の条件下で4.4Vまで充電した後に定電圧状態に保持した。次いで、これを対流可能なオーブンに入れ、常温から150℃の高温まで5℃/分の速度にて昇温させ、それぞれ1時間露出させた。その後、各電池の発火の有無を観察した。
【0086】
実験の結果、電解液添加剤としてCHBと4−FTをそれぞれ加えた比較例2及び比較例3の電池には、ある程度の時間の経過後に爆発が起こった(図7及び図8参照)。これに対し、電解液として3−フッ化トルエンを用いた実施例5のリチウム2次電池は、150℃の高温においても安定していた(図9参照)。
【0087】
実験例4.4.35V以上級の高電圧リチウム2次電池の高温保存性の評価
本発明に従い製造された4.35V以上級の高電圧リチウム2次電池に対し、下記のように高温保存実験を行った。
【0088】
4−1.高温長期保存の実験
3−フッ化トルエンを電解液に加えて得られた実施例5のリチウム2次電池を用いた。対照群としては、CHB及び4−フッ化トルエン(4−FT)を電解液にそれぞれ加えて得られた比較例2及び比較例3の電池を用いた。
【0089】
各電池を1Cの充電電流の条件下で4.35Vまで充電を行い、1C放電を3Vまで行った後、初期の放電容量をチェックした。次いで、4.35Vまでさらに充電し、80℃における3時間保存/25℃における7時間保存を30サイクルほど繰り返し行いながら厚さを測定した後、1C放電して電池の残存容量を測定した。残存容量を測定した後、充放電を3サイクルほど進め、その時点での電池のリカバリー容量を測定した。再現性を測定するために、上述した過程を4回繰り返し行った。
【0090】
実験の結果、CHBを加えた比較例2の電池は、充放電サイクルが5回行われるも前に顕著な膨らみ現象を示した(図10参照)。さらに、反応電位がCHBとほぼ同じである4−フッ化トルエンを用いた比較例3の電池からも、充放電サイクルが10回ほど行われたところで、電池の膨らみ現象が著しく見られた(図11参照)。これに対し、3−フッ化トルエン化合物が加えられた実施例5の電池は、電池の膨らみ現象が大幅に減っていた(図10参照)。
【0091】
4−2.高温短期保存性の実験
電解液添加剤を加えていない実施例1の電池及び3−フッ化トルエンを電解液に加えて得られた実施例5のリチウム2次電池を用いた。対照群としては、CHBを加えて得られた比較例2の電池を用いた。
【0092】
各電池を1Cの充電電流の条件下で4.35Vまで充電を行い、1C放電を3Vまで行った後、初期の放電容量をチェックした。次いで、さらに4.35Vまで充電した後、90℃において4時間保存しながら厚さを測定した。保存が終わった後に1C放電を行い、電池の残存容量を測定した。次いで、残存容量の測定後に充放電を3回行い、その時点での電池のリカバリー容量を測定した。
【0093】
比較例2の4.35V以上級の電池は、90℃における4時間の保存後に、その厚さが格段に増大していることを示し、特に、電解液添加剤を加えていない実施例1の電池よりも電池の厚さの大幅な増大を示した(図11参照)。これは、高電圧電池における正極と電解液との間の反応性の増加により電解液の分解が起こって厚い絶縁体が形成され、その結果、電池が厚くなることを示すものであって、特に、従来の4.2V級の電池に用いられるCHBなどの電解液添加剤は、4.35V以上級の高電圧電池には向いていないということを意味する。
【0094】
これに対し、3−フッ化トルエン化合物を電解液添加剤として加えた実施例1の4.35V以上級の高電圧リチウム2次電池からは、90℃における保存後にも電池の膨らみ現象が見られず、性能の低下がほとんどないことが分かった(図11参照)。
【0095】
これにより、本発明においては、4.35V以上の高電圧電池用の電解液添加剤として、4.7V以上の反応電位を有するフッ化トルエン化合物、例えば、2−フッ化トルエン、3−フッ化トルエンが好適に用いられるということが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】実施例2に従い製造された4.35V級のリチウムイオン2次電池の放電容量の変化を示す図である。
【図2】比較例1に従い製造された4.2V級のリチウムイオン2次電池の放電容量の変化を示す図である。
【図3】実施例2に従い製造された4.35V級のリチウムイオン2次電池の過充電実験結果図である。
【図4】比較例1に従い製造された4.2V級のリチウムイオン2次電池の過充電実験結果図である。
【図5】電解液添加剤を用いない実施例1の4.35Vリチウム2次電池、シクロヘキシルベンゼン(CHB)が加えられた比較例2の4.35Vリチウム2次電池及び4−フッ化トルエン(パラ−FT)が加えられた比較例3の4.35Vリチウム2次電池の高温(45℃)におけるサイクル特性をそれぞれ示すグラフである。
【図6】3−フッ化トルエン化合物(3−FT)を電解液添加剤として用いた実施例5の4.35V級のリチウム2次電池の高温(45℃)におけるサイクル特性を示すグラフである。
【図7】CHBが加えられた比較例2の4.35V級のリチウム2次電池に対する高温露出(Hot box)実験結果図である。
【図8】4−フッ化トルエン(4−FT)が加えられた比較例3の4.35V級のリチウム2次電池に対する高温露出実験結果図である。
【図9】3−フルオロトルエン(3−FT)を電解液添加剤として用いた実施例5の4.35V級のリチウム2次電池に対する高温露出実験結果図である。
【図10】CHBが加えられた比較例2の4.35Vリチウム2次電池、4−フッ化トルエン(パラ−)が加えられた比較例3の4.35Vリチウム2次電池及び3−フッ化トルエンが加えられた実施例5の4.35Vリチウム2次電池に対してそれぞれ高温保存(30サイクル:80℃において3時間+25℃において7時間)実験を行った後、その結果を示す図である。
【図11】電解液添加剤を用いない実施例1の4.35Vリチウム2次電池、3−フッ化トルエンを電解液添加剤として用いた実施例5の4.35Vリチウム2次電池及びCHBが加えられた比較例2の4.35Vリチウム2次電池に対して高温短期保存(90℃において4時間)実験を行った後、その結果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極(C)と、負極(A)と、分離膜と、及び電解液を備えてなる、リチウム2次電池であって、
前記正極(C)に対する負極(A)の単位面積当たり、両電極活物質の重量比(A/C)が0.44ないし0.70であり、電池の充電終止電圧が4.35乃至4.6Vである、リチウム2次電池。
【請求項2】
前記正極(C)が、リチウムが吸蔵及び放出可能な正極活物質にAl,Mg,Zr,Fe,Zn,Ga,Sn,Si及びGeよりなる群から選ばれた1種以上の金属がドープされてなるものである、請求項1に記載のリチウム2次電池。
【請求項3】
前記両電極活物質のうち正極活物質が、アルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素、14族元素、15族元素、遷移金属及び希土類元素よりなる群から選ばれた1種以上の元素を含むリチウム含有複合酸化物である、請求項1に記載のリチウム2次電池。
【請求項4】
前記両電極活物質のうち正極活物質の粒径が5乃至30μmの範囲である、請求項1に記載のリチウム2次電池。
【請求項5】
前記両電極活物質のうち正極活物質の搬入量が10乃至30mg/cmの範囲であり、負極活物質の搬入量が4.4乃至21mg/cmの範囲である、請求項1に記載のリチウム2次電池。
【請求項6】
前記正極(C)に対する負極(A)の電極板の厚さ比(A/C)が0.7乃至1.4である、請求項1に記載のリチウム2次電池。
【請求項7】
前記電解液が、4.7V以上の反応電位を有する化合物をさらに含んでなる、請求項1に記載のリチウム2次電池。
【請求項8】
前記4.7V以上の反応電位を有する化合物が、2−フッ化トルエン及び3−フッ化トルエンよりなる群から選ばれた1種以上のフッ化トルエン化合物である、請求項7に記載のリチウム2次電池。
【請求項9】
前記4.7V以上の反応電位を有する化合物の含量が、電解液100重量%当たり0.1乃至10重量%の範囲である、請求項7に記載のリチウム2次電池。
【請求項10】
正極と、負極と、分離膜と、及び電解液を備えてなるリチウム2次電池であって、
前記電池の充電終止電圧が4.35乃至4.6Vの範囲であり、電解液が4.7V以上の反応電位を有する化合物を含有する、リチウム2次電池。
【請求項11】
前記4.7V以上の反応電位を有する化合物が、2−フッ化トルエン及び3−フッ化トルエンよりなる群から選ばれた1種以上のフッ化トルエン化合物である、請求項10に記載のリチウム2次電池。
【請求項12】
前記4.7V以上の反応電位を有する化合物の含量が、電解液100重量%当たり0.1乃至10重量%の範囲である、請求項10に記載のリチウム2次電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−23052(P2012−23052A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−211143(P2011−211143)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【分割の表示】特願2007−514900(P2007−514900)の分割
【原出願日】平成17年5月27日(2005.5.27)
【出願人】(500239823)エルジー・ケム・リミテッド (1,221)
【Fターム(参考)】