説明

5−リポキシゲナーゼ阻害剤

【課題】 食品、医薬品、医薬部外品、化粧品等の分野において好適に使用できる5−リポキシゲナーゼ阻害剤を提供する。
【解決手段】 下記一般式(1)で表される化合物を含有することを特徴とする5−リポキシゲナーゼ阻害剤。
【化1】


〔式(1)中のR1は、炭素数1〜18の分岐を有してもよいアルキル基を示し、R2は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又はフェノール性水酸基の保護基を示す。〕

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品、医薬品、医薬部外品、及び化粧品等の分野で好適に使用可能な5−リポキシゲナーゼ阻害剤に関する。
【背景技術】
【0002】
生体内の様々の組織に存在し、細胞膜を構成する不飽和脂肪酸のアラキドン酸は、シクロオキシゲナーゼ又はリポキシゲナーゼが関与する代謝酵素によって、それぞれプロスタグランジンやロイコトリエン(LT)などの代謝産物を生成する。
【0003】
リポキシゲナーゼ類には5−リポキシゲナーゼ、8−リポキシゲナーゼ、12−リポキシゲナーゼ、及び15−リポキシゲナーゼなど複数のリポキシゲナーゼの存在が確認されており、例えば炎症性疾患やアレルギー性疾患では5−リポキシゲナーゼが主に関与する。その代謝過程としては、5−リポキシゲナーゼがサイトカインなどの刺激によって酵素活性を発現し、基質であるアラキドン酸の5位を酸化し、5−ヒドロペルオキシエイコサテトラエン酸(5−HPETE)を生成する。この5−HPETEから、LTA4が生成し、次いでLTB4又はLTC4が生成する。さらにLTC4からはLTD4及びLTE4が生成する。
【0004】
LTの薬理作用は、気道抵抗上昇作用や気管粘膜分泌促進作用、その他炎症反応系では、血管透過性亢進作用や白血球遊走作用などの様々な作用を持っている(非特許文献1〜3)。例えば、LTC4、LTD4、LTE4などからなるアナフィラキシー緩反応性物質(slow reacting substance of anaphylaxis,略号SRS-A)は、気管支喘息やアナフィラキシーなどのアレルギー性疾患の発現に関与しているといわれる。またLTB4は、低濃度で白血球に対して脱顆粒、血管透過亢進、遊走亢進、カルシウム輸送等を起こす生物活性が知られている。これらLTB4の作用は、例えばリューマチ、脊椎関節炎、痛風、乾癬、潰瘍性大腸炎、呼吸器疾患などの原因と考えられている(特許文献1)。
【0005】
このように5−リポキシゲナーゼは関節炎、乾癬、アレルギー、喘息及び炎症の媒介物の生合成に重要な役割を演じており、5−リポキシゲナーゼの活性を阻止或いは抑制する薬剤は、これらのロイコトリエン由来の疾病の治療に有用であることが知られている。
また、動脈硬化では従来12−あるいは15−リポキシゲナーゼが関与すると言われていたが、最近、動脈硬化巣に存在するリポキシゲナーゼは、5−リポキシゲナーゼが大部分であることが報告され、5−リポキシゲナーゼの阻害により炎症と動脈硬化が抑制できる可能性が示唆されている(非特許文献4及び5)。
【0006】
5−リポキシゲナーゼに対して阻害作用を示す物質の具体例としては、AA−861(特許文献2)、ノルジヒドログアイアレチン酸(非特許文献6)、ヒドロキサム酸(特許文献3及び4)、カフェ酸などがあげられる。
他方、下記一般式(1)で示される化合物は、フリーラジカルを消去するなど抗酸化作用を知られている化合物である。またシクロオキシナーゼ阻害作用も有し、特にシクロオキシゲナーゼ−2に対して強い阻害作用を示す(特許文献5)。
【0007】
【化1】

【0008】
式(1)中のR1は、炭素数1〜18の分岐を有してもよいアルキル基を示し、R2は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又はフェノール性水酸基の保護基を示す。
【0009】
【特許文献1】特開平8−143529号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】米国特許第4393075号明細書
【特許文献3】米国特許第4608390号明細書
【特許文献4】米国特許第4623661号明細書
【特許文献5】特開2004−315498号公報(特許請求の範囲)
【非特許文献1】Adams G. K., Lichtenstein L. M., J. Immunol., 122, 555-562(1979)
【非特許文献2】Watanabe-Kohno S., Yasui K. et. al., Jpn. J. Pharmacol., 60, 209-216(1992)
【非特許文献3】Coles s S. J., Neill K. H. et. al., Prostaglandins, 25, 155-170(1983)
【非特許文献4】Lotzer K.,Habenicht A. J.,Arterioscler Thromb Vasc Biol.,23,E32-36(2003)
【非特許文献5】Spanbroek R.,Grabner R.,Proc. Natl. Acad. Sci. USA,100,1238-1243(2003)
【非特許文献6】Corey, E. J. et. al., J. Am. Chem. Soc., 106, 1503(1984)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、上述のような状況をふまえ、食品、医薬品、医薬部外品及び化粧品等の分野で有用な5−リポキシゲナーゼ阻害剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は、上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、下記一般式(1)で示される化合物が優れた5−リポキシゲナーゼ阻害効果を有していることを見出し、本発明を完成した。
【0012】
【化2】

【0013】
式(1)中のR1は、炭素数1〜18の分岐を有してもよいアルキル基を示し、R2は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又はフェノール性水酸基の保護基を示す。
【発明の効果】
【0014】
本発明の式(1)で表わされる化合物は優れた5−リポキシゲナーゼ阻害効果を有しており、食品、医薬品、医薬部外品及び化粧品等の分野に利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
一般式(1)で示される化合物のR1は炭素数1〜18のアルキル基であり、当該アルキル基は分岐を有するもの又は有しないもののいずれであってもよい。かかるアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルへキシル基、ノニル基、デシル基、ラウリル基、及びステアリル基等が挙げられる。より好ましいアルキル基は、直鎖アルキル基であり、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、ノニル基、及びデシル基が挙げられる。
【0016】
一般式(1)において、R2は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又はフェノール性水酸基の保護基である。このR2の炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基及びプロピル基が挙げられる。またこのR2のフェノール性水酸基の保護基としては、メトキシメチル基、テトラヒドロピラニル基、ベンジル基及び4−メトキシベンジル基等のエーテル系の保護基、トリメチルシリル基及びt−ブチルジメチルシリル基等のシリル系の保護基、並びにアセチル基、プロピオニル基、ブチロイル基、イソブチロイル基、ピバロイル基、ベンゾイル基及びトリオイル基等のエステル系の保護基等が挙げられ、好ましくはエステル系の保護基である。一般式(1)のR2としてはメチル基又はエチル基が好ましく、更に好ましくはメチル基である。
【0017】
一般式(1)におけるフェノールは、フェノール性水酸基の保護基が結合していても良い。このフェノール性水酸基の保護基としては、上記記載のものが例示できる。
【0018】
○式(1)で表される化合物の合成について
一般式(1)で表わされる化合物は、例えば特開2004−315498号に記載の方法に準じて製造することができる。
【0019】
一般式(1)で表わされる化合物は、後記する実施例からも明らかなように、5−リポキシゲナーゼを阻害する作用を有するため、食品、医薬品、医薬部外品や化粧品等の処方に配合して使用することができる。
【0020】
医薬品として用いる場合は、本発明の化合物を単独か或いは製薬上受け入れられる腑形剤又は担体や他の添加剤と共に各種の製剤形態に調合され使用される。その割合および性質は選ばれる化合物の溶解度及び化学的性質、選ばれた投与経路、及び標準の製剤学的慣用法によって決定される。腑形剤又は担体は固体、半固体、又は液体物質であることができ、これらは活性成分のビヒクル又は担体としての役目をすることができる。適当な腑形剤又は担体は製剤学の分野で一般的なものである。製剤組成物は経口又は非経口の使用のために適合化することができ、錠剤、カプセル、坐薬、溶液、懸濁液などの形態で患者に投与することができる。
【0021】
製剤組成物は経口的、例えば不活性希釈剤または食べることのできる担体と共に投与できる。これらはゼラチンカプセル中に包むか又は錠剤に圧縮することができる。経口投与を行うためには、本発明の化合物は腑形剤と共に混入させることができ、錠剤、トローチ、カプセル、エルキシル、懸濁液、シロップ、ウエハース、チューインガムなどの形態で使用できる。錠剤、トローチ、カプセルなどは一つ又はそれ以上の助剤を含有することができる。助剤とは、結合剤、(例えば微結晶セルロース、トラガカントゴム、ゼラチン)、腑形剤(例えば、澱粉、乳糖)、崩壊剤(例えば、アルギン酸、プライモゲル、コーンスターチ)、潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステロテックス)、滑剤(例えば、コロイド状二酸化シリコン)、甘味剤(例えば、ショ糖、サッカリン)、及び香味剤(例えば、ペパーミント、サリチル酸メチル、オレンジフレーバー)などである。投与単位形がカプセルであるときには上記の種類の物質に加えて液体担体(例えば、ポリエチレングリコール、脂肪族油)を含有させることができる。他の投与単位系は投与単位の物理的形態を変更する他の物質(例えば、コーティング)を含有させることができる。このように錠剤又は坐薬は、糖、シェラック又は他の腸溶皮剤で被覆することができる。シロップは活性成分のほか、甘味剤としてショ糖及びある種の防腐剤、染料及び着色及び香味剤を含有させることができる。
【0022】
非経口投与を行うためには、本発明の化合物は溶液又は懸濁液中に混入できる。溶液又は懸濁液は一つまたはそれ以上の助剤を含有することができる。助剤とは滅菌希釈剤(例えば、注射用水、塩水溶液、不揮発性油、ポリエチレングリコール類、グリセリン、プロピレングリコール、他の合成溶媒)、抗細菌剤(例えば、ベンジルアルコール、メチルパラペン)、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、重亜硫酸ナトリウム)、キレート化剤(例えば、エチレンジアミン四酢酸)、緩衝剤(例えば、酢酸塩、クエン酸塩、リン酸塩)、及び毒性を調製するための薬剤(例えば、塩化ナトリウム、デキストロース)などである。非経口製剤はアンプル、使い捨て注射、またはガラス又はプラスチック製の複数投与のバイアル中に封入することができる。
【実施例】
【0023】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、Tsはp−トルエンスルホニル基を示す。
<合成例1>
○化合物2の合成
はじめに下記化合物1を出発原料として化合物2を合成した。
【0024】
[化合物1]
【化3】

【0025】
[化合物2]
【化4】

【0026】
テトラヒドロフラン350mLに14.4g(79.9mmol)の化合物1、トリエチルアミン22.3mL(160mmol)及びN,N−ジメチルアミノピリジ976mg(7.99mmol)を溶かし、氷冷下でピバロイルクロリド19.7mL(160mmol)を滴下した。そして室温で16時間攪拌後、飽和食塩水100mLで2回洗浄した。有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮した。
【0027】
つぎに、得られた残渣をテトラヒドロフラン270mL及びメタノール90mLに溶かし、p−トルエンスルフィン酸ナトリウム15.7g(87.9mmol)及びテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)923mg(0.799mmol)を加えて4時間還流した。反応後、蒸留水90mLを加えて攪拌した後、4℃で放置した。そして生成した結晶を濾別し回収した。濾液を濃縮した後、酢酸エチルエステル200mLで抽出し、有機相を蒸留水100mLで洗浄した。有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮し、酢酸エチルエステル−ヘキサン混合溶媒から再結晶を行った。得られた結晶を前述の結晶とあわせ、黄色結晶性の化合物を20.3g(収率63%)得た。
【0028】
本品の重クロロホルム中で測定した1H−NMRスペクトルのケミカルシフト値は、1.36(9H, s), 2.44(3H, s), 3.80(3H, s), 3.93(2H, d), 6.06(1H, dt), 6.33(1H, d), 6.83-6.94(3H, m), 7.33(2H, d), 7.75(2H, d)であった。また、赤外線吸収スペクトル(KBrペレット法)で吸収があった波数(cm-1)は、2980, 1747, 1600, 1508, 1480, 1465, 1420, 1399, 1343, 1314, 1304, 1289, 1269であった。さらに、CHN元素分析の結果は、炭素65.65%、水素6.51%であった。
以上の分析により、得られた化合物が化合物2であることを確認した。
【0029】
<合成例2>
○化合物3の合成
続いて化合物2を1−ヘプタナールと反応させることにより、化合物3を合成した。
【0030】
[化合物3]
【化5】

【0031】
テトラヒドロフラン50mL及び1,3−ジメチル−2−イミダゾリノン10mLの混合溶媒に4.45g(11.4mmol)の化合物2を溶かし、ドライアイス/アセトンで−78℃に冷却した。この溶液に、1.6Mのt−ブチルリチウム/ペンタン溶液7.4mL(11.8mmol)を滴下した。この反応液を同温度で5分間攪拌後、1−ヘプタナール 1.6mL(11.5mmol)を滴下した。滴下後、同温度で10分間攪拌した後、徐々に昇温した。反応溶液の温度が−30℃になったところで、クエン酸1gを含むメタノール2mL溶液を加えて反応を停止させた。この反応混合物に飽和食塩水60mL、蒸留水20mL、及び酢酸エチルエステル20mLを加えて攪拌後、有機相を分取した。水層を酢酸エチルエステル20mLで抽出し、合せた有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。有機相から溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製を行い、淡黄色の高粘度液状の化合物を4.15g(72%)得た。
【0032】
本品の重クロロホルム中で測定した1H−NMRスペクトルのケミカルシフト値は、0.84-0.87(3H, m), 1.19-1.36(19H, m), 2.42(3H, s), 3.57(1H, d), 3.81(3H, s), 4.50-4.61(1H, m), 5.72(1H, dd), 6.18(1H, d), 6.29(1H, dd), 6.79(1H, d), 6.88(1H, s), 6.91(1H, d), 7.31(2H, d), 7.71(2H, d)であった。また、赤外線吸収スペクトル(KBrペレット法)で吸収があった波数(cm-1)は、3510, 2933, 2337, 1755, 1508, 1268であった。さらに、CHN元素分析の結果は、炭素67.41%、水素7.80%であつた。
以上の分析により、得られた化合物が化合物3であることを確認した。
【0033】
○化合物4の合成
続いて化合物3をフェニルセレニルクロリドと反応させ環化し、化合物4を合成した。
【0034】
[化合物4]
【化6】

【0035】
アセトニトリル50mLに3.43g(6.71mmol)の化合物3を溶かし、これにモレキュラーシーブス3A 1g、及びフェニルセレニルクロリド1.35g(7.05mmol)を加え、室温で2.5時間攪拌した。この反応混合物を酢酸エチルエステル50mLで希釈し、飽和食塩水50mLにて2回洗浄し、得られた有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。有機相から溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、淡黄色の高粘度液状の化合物を4.14g(収率92%)得た。
【0036】
本品の重クロロホルム中で測定した1H−NMRスペクトルのケミカルシフト値は、0.84-0.89(3H, m), 1.24-1.38(19H, m), 2.36(3H, s), 3.51(1H, dd), 3.72(1H, dd), 3.86(3H, s), 3.92-3.97(1H, m), 4.67(1H, d), 6.89-7.55(12H, m)であった。また、赤外線吸収スペクトル(KBrペレット法)で吸収があった波数(cm-1)は、2932, 1755, 1508, 1464, 1274であった。さらに、質量分析の結果は、M+=673であった。
以上の分析により、得られた化合物が化合物4であることを確認した。
【0037】
○化合物5の合成
続いて化合物4を酸化し、化合物5を調製した。
【0038】
[化合物5]
【化7】

【0039】
ジクロロメタン100mLに4.29g(6.36mmol)の化合物4を溶解した。これに対して、氷冷下、あらかじめ調製しておいたm−クロロ過安息香酸1.65g(9.58mmol)をジクロロメタン25mLに溶かした溶液を滴下した。反応液を同温で30分間攪拌後、10%チオ硫酸ナトリウム水溶液100mL加え、反応を停止させた。反応液から有機相を分取し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。有機相から溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、淡黄色の高粘度液状の化合物を2.84g(収率87%)得た。
【0040】
本品の重クロロホルム中で測定した1H−NMRスペクトルのケミカルシフト値は、0.83-0.87(3H,m)、1.18-1.36(19H,m)、2.46(3H,s)、3.77(3H,s)、5.01(1H,m)、5.79(1H,d)、6.66(1H,s)、6.82(1H,d)、6.88(1H,d)、6.98(1H,d)、7.37(2H,d)、7.80(2H,d)であった。また、赤外線吸収スペクトル(KBrペレット法)で吸収があった波数(cm-1)は、2935、1755、1599、1510、1321、1283であった。さらに、CHN元素分析の結果は、炭素67.68%、水素7.44%であった。
以上の分析により、得られた化合物が化合物5であることを確認した。
【0041】
<合成例3>
○化合物6の合成
化合物5に対して、アルコール溶媒中で水素化ナトリウムを作用させることで、一般式(1)中のR1がヘキシル基及びR2がメチル基に相当する化合物6を合成した。
【0042】
[化合物6]
【化8】

【0043】
t−ブチルアルコール50mLに1.41g(2.74mmol)の化合物5を溶解した。これに対して、あらかじめ調製しておいた水素化ナトリウム548mg(13.7mmol)をt−ブチルアルコール30mLに溶かした溶液を滴下した。反応液を40℃にて4.5時間攪拌後、1M/L塩酸を適量加え反応を停止させた。反応液から溶媒を留去した後、酢酸エチルエステル50mLを加えて抽出し、有機相を飽和食塩水25mLで2回洗浄し、有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。有機相から溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、淡黄色の高粘度液状の化合物を540mg(収率72%)得た。
【0044】
本品の重クロロホルム中で測定した1H−NMRスペクトルのケミカルシフト値は、0.88-0.91(3H,m)、1.25-1.39(8H,m)、2.66(2H,t)、3.95(3H,s)、5.59(1H,s)、6.02(1H,d)、6.39(1H,d)、6.80(1H,d)、7.13-7.16(2H,m)であった。また、赤外線吸収スペクトル(KBrペレット法)で吸収があった波数(cm-1)は、3532、2931、1505、1254、1212であった。さらに、さらにCHN元素分析の結果は、炭素74.42%、水素8.08%であった。
以上の分析により、得られた化合物が化合物6であることを確認した。
【0045】
<合成例4>
○化合物7の合成
化合物2とプロピオンアルデヒドを反応させ、化合物7を合成した。
【0046】
[化合物7]
【化9】

【0047】
テトラヒドロフラン50mL及び1,3−ジメチル−2−イミダゾリノン10mLの混合溶媒に4.45g(7.45mmol)の化合物2を溶かし、ドライアイス/アセトンで−78℃に冷却した。この溶液に、1.6Mのt−ブチルリチウム/ペンタン溶液7.4mL(11.8mmol)を滴下した。更に同温度で5分間攪拌後、プロピオンアルデヒド0.87mL(12.1mmol)を滴下した。滴下後、同温度で10分間攪拌した後、徐々に昇温した。反応溶液の温度が−30℃になったところで、クエン酸1gを含むメタノール2mL溶液を加えて反応を停止させた。この反応混合物に飽和食塩水60mL、蒸留水20mL及び酢酸エチルエステル20mLを加えて攪拌後、有機相を分取した。水層を酢酸エチル20mLで抽出し、合せた有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。有機相から溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製を行い、淡黄色の高粘度液状の化合物を3.72g(収率73%)得た。
本品の重クロロホルム中で測定した1H−NMRスペクトルのケミカルシフト値は、0.97-1.01(3H, m),1.24-1.44(11H, m),2.43(3H, s),3.71(1H, t),3.80(3H, s), 4.30-4.32(1H, m), 5.72(1H, dd), 6.16(1H, d), 6.78-6.80(2H, m),6.93(1H, d), 7.31(2H, d), 7.71(2H, d)であった。
また、赤外線吸収スペクトル(KBrペレット法)で吸収があった波数(cm-1)は、3511, 2972, 1753, 1598, 1509, 1268, 1124であった。
さらに、CHN元素分析の結果は、炭素65.19%、水素7.00%であった。
以上の分析により、得られた化合物が化合物7であることを確認した。
【0048】
○化合物8の合成
続いて化合物7をフェニルセレニルクロリドと反応させ環化し、化合物8を合成した。
【0049】
[化合物8]
【化10】

【0050】
アセトニトリル50mLに9.03g(19.6mmol)の化合物7を溶かし、これにモレキュラーシーブス3A 2g及びフェニルセレニルクロリド4.36g(22.8mmol)を加え、室温で2時間攪拌した。この反応混合物を飽和食塩水100mLにて2回洗浄し、得られた有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。有機相から溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、淡黄色の高粘度液状の化合物を10.9g(収率90%)得た。
本品の重クロロホルム中で測定した1H−NMRスペクトルのケミカルシフト値は、1.07-1.11(3H,m), 1.24-1.38(11H,m), 2.37(3H,s), 3.50(1H, dd), 3.73(1H,dd), 3.79-3.89(4H, m), 4.68(1H, d), 6.87-7.55(12H, m)であった。
また、赤外線吸収スペクトル(KBrペレット法)で吸収があった波数(cm-1)は、2971, 1754, 1598, 1509. 1478, 1463, 1274, 1118であった。さらに、質量分析の結果は、M+=617であった。
以上の分析により、得られた化合物が化合物8であることを確認した。
【0051】
○化合物9の合成
続いて化合物8を酸化し、化合物9を調製した。
【0052】
[化合物9]
【化11】

【0053】
ジクロロメタン200mLに9.93g(16.1mmol)の化合物8を溶解した。これに対して氷冷下、あらかじめ調製しておいたm−クロロ過安息香酸4.18g(24.2mmol)をジクロロメタン50mLに溶かした溶液を滴下した。更に同温で30分間攪拌後、反応混合物に10%チオ硫酸ナトリウム水溶液200mLを加え、反応を停止させた。この反応液から有機相を分取し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。有機相から溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、淡黄色の高粘度液状の化合物を7.26g(収率98%)得た。
本品の重クロロホルム中で測定した1H−NMRスペクトルのケミカルシフト値は、0.91-0.95(3H,m), 1.24-1.38(11H,m), 2.36(3H,s), 3.78(3H,s), 4.97(1H,m), 5.79(1H,d), 6.67(1H,s), 6.83(1H,d), 6.89(1H,d), 6.98(1H,d), 7.37(2H,d), 7.80(2H,d)であった。
また、赤外線吸収スペクトル(KBrペレット法)で吸収があった波数(cm-1)は、2973, 1754, 1508, 1458, 1321, 1304, 1283であった。さらに、CHN元素分析の結果は、炭素65.48%、水素6.59%であった。
以上の分析により、得られた化合物が化合物9であることを確認した。
【0054】
<合成例5>
○化合物10の合成
上述の合成例3で得られた化合物9に対して、アルコール溶媒中で水素化ナトリウムを作用させることで、本発明の一般式(1)中のR1がエチル基及びR2がメチル基に相当する化合物10を合成した。
【0055】
[化合物10]
【化12】

【0056】
すなわち、t−ブチルアルコール30mLに化合物9、1.49g(3.25mmol)を溶かした。これに対して、あらかじめ調製しておいた水素化ナトリウム390mg(9.75mmol)をt−ブチルアルコール20mLに溶かした溶液を滴下した。この反応液を40℃にて2時間攪拌後、1M/L塩酸を適量加えて反応を停止させた。反応液から溶媒を留去した後、酢酸エチルエステル100mLを加えて抽出し、有機相を飽和食塩水50mLで2回洗浄し、この有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。有機相から溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、淡黄色の高粘度液状の化合物を420mg(収率59%)得た。
本品の重クロロホルム中で測定した1H−NMRスペクトルのケミカルシフト値は、1.24-1.29(3H,m), 2.70(2H,dd), 3.94(3H,s), 5.62(1H,s), 6.03(1H,d), 6.40(1H,d), 6.91(1H,d), 7.13-7.16(2H,m)であった。
また、赤外線吸収スペクトル(KBrペレット法)で吸収があった波数(cm-1)は、3510, 2974, 2362, 1506, 1254, 1209であった。さらに、CHN元素分析の結果は、炭素71.54%、水素6.47%であった。
以上の分析により、得られた化合物が化合物10であることを確認した。
【0057】
<合成例6>
化合物11を出発物質として化合物12を合成した。
【0058】
[化合物11]
【化13】

【0059】
[化合物12]
【化14】

【0060】
ジメチルホルムアミド150mLに9.92g(38.9mmol)の化合物11、トリエチルアミン6.5mL(46.7mmol)を溶かし、氷冷下で無水酢酸4.0mL(43mmol)を滴下した。そして70℃で16時間攪拌後、酢酸エチル50mL、ヘキサン100mL、蒸留水100mLを加え分配した。有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮した。
【0061】
つぎに、得られた残渣をテトラヒドロフラン120mL及びメタノール40mLに溶かし、p−トルエンスルフィン酸ナトリウム7.6g(42.8mmol)及びテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)449mg(0.389mmol)を加えて2時間還流した。溶媒を留去し、酢酸エチル200mL、蒸留水100mLを加えて分配し、有機相を取り出し無水硫酸マグネシウムで乾燥後濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、淡黄色液状の化合物を15.2g(収率99%)得た。
【0062】
本品の重クロロホルム中で測定した1H−NMRスペクトルのケミカルシフト値は、2.44(3H,s), 3.51(3H, s), 3.54(3H, s), 3.91(2H,d), 5.22(2H, s), 5.23(2H, s), 5.98 (1H, dt),6.29(1H, d), 6.89(1H, dd), 7.08-7.11(2H, m), 7.33(2H,d)、7.75(2H,d)であった。さらに、CHN元素分析の結果は、炭素61.10%、水素6.20%であった。
以上の分析により、得られた化合物が化合物12であることを確認した。
【0063】
<合成例7>
○化合物13の合成
続いて化合物12を1−ヘプタナールと反応させることにより、化合物13を合成した。
【0064】
[化合物13]
【化15】

【0065】
テトラヒドロフラン45mL及び1,3−ジメチル−2−イミダゾリノン15mLの混合溶媒に3.90g(10.0mmol)の化合物12を溶かし、ドライアイス/アセトンで−78℃に冷却した。この溶液に、1.4Mのt−ブチルリチウム/ペンタン溶液7.2mL(10.5mmol)を滴下した。この反応液を同温度で5分間攪拌後、1−ヘプタナール 1.53mL(11.0mmol)を滴下した。滴下後、同温度で10分間攪拌した後、徐々に昇温した。反応溶液の温度が−30℃になったところで、クエン酸1gを含むメタノール2mL溶液を加えて反応を停止させた。この反応混合物に飽和食塩水60mL、蒸留水20mL、及び酢酸エチルエステル20mLを加えて攪拌後、有機相を分取した。水層を酢酸エチルエステル20mLで抽出し、合せた有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。有機相から溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製を行い、淡黄色の高粘度液状の化合物を4.72g(93%)得た。
【0066】
本品の重クロロホルム中で測定した1H−NMRスペクトルのケミカルシフト値は、0.84-0.87(3H,m)、1.15-1.29(10H,m)、2.42(3H,s)、3.51-3.54(7H,m)、4.50-4.61(1H,m)、5.22-5.24(4H, m)、6.17-6.29 (2H,m)、6.91(1H,m)、7.06-7.10(2H,m)、7.31(2H,d)、7.71(2H,d)であった。さらに、CHN元素分析の結果は、炭素63.95%、水素7.50%であつた。
以上の分析により、得られた化合物が化合物13であることを確認した。
【0067】
○化合物14の合成
続いて化合物13をフェニルセレニルクロリドと反応させ環化し、化合物14を合成した。
【0068】
[化合物14]
【化16】

【0069】
アセトニトリル100mLに4.39g(8.66mmol)の化合物13を溶かし、これにモレキュラーシーブス3A 1g、及びフェニルセレニルクロリド1.74g(9.10mmol)を加え、室温で2.5時間攪拌した。この反応混合物を酢酸エチルエステル50mLで希釈し、飽和食塩水50mLにて2回洗浄し、得られた有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。有機相から溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、淡黄色の高粘度液状の化合物を3.26g(収66%)得た。
【0070】
本品の重クロロホルム中で測定した1H−NMRスペクトルのケミカルシフト値は、0.84-0.89(3H,m)、1.24-1.38(10H,m)、2.36(3H,s)、3.51(1H,dd)、3. 92-3.97(1H,m)、4.67(1H,d)、6.89-7.55(12H,m)であった。さらに、CHN元素分析の結果は、炭素60.78%、水素6.00%であつた。
以上の分析により、得られた化合物が化合物14であることを確認した。
【0071】
○化合物15の合成
続いて化合物14の水酸基をメトキシメチル化し、ついで酸化を行うことで化合物15を調整した。
【0072】
[化合物15]
【化17】

【0073】
テトラヒドロフラン60mLに2.87g(5.00mmol)の化合物14を溶解した。これに対して、氷冷下、クロロメトキシメチルエーテル1.60mL(20.7mmol)、ジイソプロピルエチルアミン3.9mL(20.7mmol)を滴下した。反応液を室温で9時間攪拌後、飽和重曹水50mLおよび酢酸エチル50mLを加え、反応液から有機相を分取し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。有機相から溶媒を留去した。
得られた残渣をジクロロメタン60mLに溶解した。これに対して、氷冷下、あらかじめ調製しておいたm−クロロ過安息香酸2.4g(14.1mmol)をジクロロメタン20mLに溶かした溶液を滴下した。反応液を同温で30分間攪拌後、10%チオ硫酸ナトリウム水溶液60mL加え、反応を停止させた。反応液から有機相を分取し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。有機相から溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、淡黄色の高粘度液状の化合物を2.50g(収率99%)得た。
【0074】
本品の重クロロホルム中で測定した1H−NMRスペクトルのケミカルシフト値は、0.83-0.87(3H,m)、1.18-1.36(10H,m)、2.46(3H,s)、3.44-3.77(6H,m)、5.01(1H,m)、5.19-5.23(4H,m)、5.79(1H,d)、6.66(1H,s)、6.82(1H,d)、6.88(1H,d)、6.98(1H,d)、7.37(2H,d)、7.80(2H,d)であった。さらに、CHN元素分析の結果は、炭素64.30%、水素7.24%であった。
以上の分析により、得られた化合物が化合物15であることを確認した。
【0075】
<合成例8>
○化合物16の合成
化合物15に対して、アルコール溶媒中で水素化ナトリウムを作用させ、ついで水酸基を保護しているメトキシメチル基を酸性条件化除去することで、一般式(1)中のR1がヘキシル基及びR2が水素に相当する化合物16を合成した。
【0076】
[化合物16]
【化18】

【0077】
t−ブチルアルコール30mLに2.50g(4.95mmol)の化合物15を溶解した。これに対して、あらかじめ調製しておいた水素化ナトリウム393mg(9.8mmol)をt−ブチルアルコール10mLに溶かした溶液を滴下した。反応液を40℃にて4.5時間攪拌後、1N塩酸を適量加え反応を停止させた。反応液から溶媒を留去した後、酢酸エチルエステル50mLを加えて抽出し、有機相を飽和食塩水25mLで2回洗浄し、有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。有機相から溶媒を留去した。
得られた残渣をテトラヒドロフラン30mLに溶解し、これに2N塩酸1mLを加えた。55℃で5時間後、1N水酸化ナトリウム水溶液2mLを加えて中和した。飽和食塩水20mlを加えて分配し、有機相を回収した。有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに供し淡黄色中粘度液状の化合物0.41g(40%)を得た。
【0078】
本品の重クロロホルム中で測定した1H−NMRスペクトルのケミカルシフト値は、0.88-0.91(3H,m)、1.25-1.39(8H,m)、2.66(2H,t)、5.24-5.25(2H,m)、6.01(1H,d)、6.38(1H,d)、6.85(1H,d)、7.09-7.16(2H,m)であった。さらに、さらにCHN元素分析の結果は、炭素73.75%、水素7.70%であった。
以上の分析により、得られた化合物が化合物16であることを確認した。
【0079】
<合成例9>
○化合物17の合成
続いて化合物12を1−プロピオンアルデヒドと反応させることにより、化合物17を合成した。
【0080】
[化合物17]
【化19】

【0081】
テトラヒドロフラン45mL及び1,3−ジメチル−2−イミダゾリノン15mLの混合溶媒に3.90g(10.0mmol)の化合物12を溶かし、ドライアイス/アセトンで−78℃に冷却した。この溶液に、1.4Mのt−ブチルリチウム/ペンタン溶液7.2mL(10.5mmol)を滴下した。この反応液を同温度で5分間攪拌後、プロピオンアルデヒド 0.78mL(11.0mmol)を滴下した。滴下後、同温度で10分間攪拌した後、徐々に昇温した。反応溶液の温度が−30℃になったところで、クエン酸1gを含むメタノール2mL溶液を加えて反応を停止させた。この反応混合物に飽和食塩水60mL、蒸留水20mL、及び酢酸エチルエステル20mLを加えて攪拌後、有機相を分取した。水層を酢酸エチルエステル20mLで抽出し、合せた有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。有機相から溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製を行い、淡黄色の高粘度液状の化合物を3.54g(79%)得た。
【0082】
本品の重クロロホルム中で測定した1H−NMRスペクトルのケミカルシフト値は、0.84-0.87(3H,m)、1.15-1.29(2H,m)、2.42(3H,s)、3.51-3.54(7H,m)、4.50-4.61(1H,m)、5.22-5.24(4H, m)、6.17-6.29 (2H,m)、6.91(1H,m)、7.06-7.10(2H,m)、7.31(2H,d)、7.71(2H,d)であった。さらに、CHN元素分析の結果は、炭素61.28%、水素6.70%であつた。
以上の分析により、得られた化合物が化合物17であることを確認した。
【0083】
○化合物18の合成
続いて化合物17をフェニルセレニルクロリドと反応させ環化し、化合物18を合成した。
【0084】
[化合物18]
【化20】

【0085】
アセトニトリル100mLに3.33g(7.37mmol)の化合物17を溶かし、これにモレキュラーシーブス3A 1g、及びフェニルセレニルクロリド1.48g(7.74mmol)を加え、室温で2.5時間攪拌した。この反応混合物を酢酸エチルエステル50mLで希釈し、飽和食塩水50mLにて2回洗浄し、得られた有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。有機相から溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、淡黄色の高粘度液状の化合物を2.37g(62%)得た。
【0086】
本品の重クロロホルム中で測定した1H−NMRスペクトルのケミカルシフト値は、0.84-0.89(3H,m)、1.24-1.38(2H,m)、2.36(3H,s)、3.51(1H,dd)、3. 92-3.97(1H,m)、4.67(1H,d)、6.89-7.55(12H,m)であった。さらに、CHN元素分析の結果は、炭素58.95%、水素5.10%であつた。
以上の分析により、得られた化合物が化合物18であることを確認した。
【0087】
○化合物19の合成
続いて化合物18の水酸基をメトキシメチル化し、ついで酸化を行うことで化合物19を調整した。
【0088】
[化合物19]
【化21】

【0089】
テトラヒドロフラン60mLに2.90g(5.60mmol)の化合物18を溶解した。これに対して、氷冷下、クロロメトキシメチルエーテル1.60mL(20.7mmol)、ジイソプロピルエチルアミン3.9mL(20.7mmol)を滴下した。反応液を室温で9時間攪拌後、飽和重曹水50mLおよび酢酸エチル50mLを加え、反応液から有機相を分取し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。有機相から溶媒を留去した。
得られた残渣をジクロロメタン60mLに溶解した。これに対して、氷冷下、あらかじめ調製しておいたm−クロロ過安息香酸2.4g(14.1mmol)をジクロロメタン20mLに溶かした溶液を滴下した。反応液を同温で30分間攪拌後、10%チオ硫酸ナトリウム水溶液60mL加え、反応を停止させた。反応液から有機相を分取し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。有機相から溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、淡黄色の高粘度液状の化合物を2.50g(収率99%)得た。
【0090】
本品の重クロロホルム中で測定した1H−NMRスペクトルのケミカルシフト値は、0.83-0.87(3H,m)、1.18-1.36(2H,m)、2.46(3H,s)、3.44-3.77(6H,m)、5.01(1H,m)、5.19-5.23(4H,m)、5.79(1H,d)、6.66(1H,s)、6.82(1H,d)、6.88(1H,d)、6.98(1H,d)、7.37(2H,d)、7.80(2H,d)であった。さらに、CHN元素分析の結果は、炭素62.03%、水素6.30%であった。
以上の分析により、得られた化合物が化合物19であることを確認した。
【0091】
<合成例10>
○化合物20の合成
化合物19に対して、アルコール溶媒中で水素化ナトリウムを作用させ、ついで水酸基を保護しているメトキシメチル基を酸性条件化除去することで、一般式(1)中のR1がエチル基及びR2が水素に相当する化合物20を合成した。
【0092】
[化合物20]
【化22】

【0093】
t−ブチルアルコール30mLに2.50g(5.58mmol)の化合物19を溶解した。これに対して、あらかじめ調製しておいた水素化ナトリウム45mg(11.2mmol)をt−ブチルアルコール10mLに溶かした溶液を滴下した。反応液を40℃にて4.5時間攪拌後、1N塩酸を適量加え反応を停止させた。反応液から溶媒を留去した後、酢酸エチルエステル50mLを加えて抽出し、有機相を飽和食塩水25mLで2回洗浄し、有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。有機相から溶媒を留去した。
得られた残渣をテトラヒドロフラン30mLに溶解し、これに2N塩酸1mLを加えた。55℃で5時間後、1N水酸化ナトリウム水溶液2mLを加えて中和した。飽和食塩水20mlを加えて分配し、有機相を回収した。有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに供し淡黄色中粘度液状の化合物0.25g(22%)を得た。
【0094】
本品の重クロロホルム中で測定した1H−NMRスペクトルのケミカルシフト値は、1.24-1.28(3H,m)、2.66(2H,t)、5.26-5.28(2H,m)、6.01(1H,d)、6.38(1H,d)、6.85(1H,d)、7.09-7.16(2H,m)であった。さらに、さらにCHN元素分析の結果は、炭素70.60%、水素6.00%であった。
以上の分析により、得られた化合物が化合物20であることを確認した。
【0095】
<実施例1>
合成例2で得られた化合物6について5−リポキシゲナーゼ阻害活性を測定した。
5−リポキシゲナーゼ源としてラット好塩基性白血病細胞(RBL−1)を使用し、これによるアラキドン酸から5−HETEへの転換率を酵素活性として算出した。活性測定は、以下のように行った。
【0096】
ジメチルスルホキシド水溶液に溶解した被検試料5μLに、200mM塩化カルシウム水溶液10μLと20mg/mLのアラキドン酸−メタノール溶液を10μL加え、37℃で5分間プレインキュベーションした。これに、0.25Mスクロース、1.0mM EDTA、2mMグルタチオンを含有する50mMリン酸緩衝液(pH7.4)中に1.5×107cell/mLで分散させたRBL−1細胞縣濁液475μLを添加して攪拌し、37℃で3分間反応させた。その後、メタノールを500μL加えて反応を停止し、この溶液を4℃、4000rpmで20分間遠心した。この上清400μLを分取して高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析をした。HPLC分析は、日立製ポンプL6200、 日立製検出器L4000UV、およびナカライテスク製カラムCOSMOSIL 5C18−MS(内径4.6×長さ150mm)を用いて、0.04%の酢酸を含む60%アセトニトリル−水溶液で展開し、検出波長235nmでピーク面積を測定した。
【0097】
また、対照としてジメチルスルホキシド水溶液に溶解した6−ショウガオール5μL、またはノルジヒドログアイアレチン酸 (NDGA)を被検試料5μLの代わりに用いた。被検試料無添加の場合のピーク面積と比較して、アラキドン酸から5−HETEへの転換率を算出した、{100%−転換率(%)}を転換阻害率(%)とした。
転換阻害率と被検試料濃度との関係から、5−HETEへの転換を50%阻害する濃度(IC50)を算出し、結果を表1に示した。
【0098】
【表1】

【0099】
6−ショウガオールは、5−リポキシゲナーゼ阻害作用があることが知られている生姜の辛味成分である(末川守他7名、日薬理誌、88、263−269(1986))。化合物6はNDGAには及ばないものの、6−ショウガオールより優れた5−リポキシゲナーゼ阻害作用を有していることが判明した。
【0100】
<実施例2>
合成例5で得られた化合物10、合成例8で得られた化合物16、および合成例10で得られた化合物20について、実施例1と同様に5−リポキシゲナーゼ阻害活性を測定した。結果を表2に示す。
【0101】
【表2】

【0102】
化合物10、化合物16、および化合物20は優れた5−リポキシゲナーゼ阻害作用を有していることが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明で用いた化合物は優れた5−リポキシゲナーゼ阻害効果を有しており、食品、医薬品、医薬部外品及び化粧品等の分野に利用することができる。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物を含有することを特徴とする5−リポキシゲナーゼ阻害剤。
【化1】

〔式(1)中のR1は、炭素数1〜18の分岐を有してもよいアルキル基を示し、R2は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又はフェノール性水酸基の保護基を示す。〕


【公開番号】特開2007−70335(P2007−70335A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−354260(P2005−354260)
【出願日】平成17年12月8日(2005.12.8)
【出願人】(000003034)東亞合成株式会社 (548)
【Fターム(参考)】