説明

5−(3−(エチルスルホニル)フェニル)−3,8−ジメチル−N−(1−メチルピペリドン−4−イル)−9H−ピリド[2,3−B]インドール−7−カルボキサミドの多形およびその使用方法

本発明は、5−(3−(エチルスルホニル)フェニル)−3,8−ジメチル−N−(1−メチルピペリジン−4−イル)−9h−ピリド[2,3−b]インドール−7−カルボキサミド(本明細書において、化合物Iと称される)の多型形態に関し、式:


を有する。
本発明は、また、その組成物と化合物Iの多形の調製方法、ならびにその組成物のキットおよび製造品物、ならびに様々な疾患を治療するためのその組成物の使用方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、5−(3−(エチルスフホニル)フェニル)−3,8−ジメチル−N−(1−メチルピペリジン−4−イル)−9H−ピリド[2,3−b]インドール−7−カルボキサミド(本明細書において「化合物I」と称される)の多型形態、およびその調製方法に関する。また、化合物Iの塩にも関する。本発明は、また、化合物Iの多形を含む医薬組成物、キットおよび製品、ならびにそれらの使用方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
式:

【0003】
を有する化合物Iは、
2007年5月24日に公開された米国特許第2007−0117816号(化合物I12を参照)、ならびに2007年4月18日に出願された米国特許第60/912,625号および第60/912,629号(化合物83を参照)に記載されるキナーゼ阻害剤であり、これらは、参照によりその全体が本明細書に援用される。
ホスホリルトランスフェラーゼは、リン含有基を1つの基質から別の基質に転移する酵素の大きなファミリーである。国際生化学分子生物学連合(IUBMB)の用語委員会により示された協定により、この種類の酵素は、2.7.−.−で始まる酵素委員会(EC)番号を有する(Bairoch A.,The ENZYME database in Nucleic Acids Res.28:204−305(2000))。キナーゼは、ホスホリル転移の触媒作用で機能する酵素の種類である。タンパク質キナーゼは、構造的に関連するホスホリルトランスフェラーゼの大きなサブファミリーを構成し、細胞内の広範なシグナル変換プロセスの制御を担う(Hardie,G. and Hanks,S.(1995)The Protein Kinase Facts Book,I and II,Academic Press,San Diego,CAを参照)。タンパク質キナーゼは、それらの構造および触媒機能の保護のため、共通の祖先遺伝子から進化したと考えられる。ほぼ全てのキナーゼは、類似した250−300のアミノ酸の触媒ドメインを含有する。タンパク質キナーゼは、それらがリン酸化する基質によって(例えば、タンパク質チロシン、タンパク質セリン/トレオニン、ヒスチジン等)ファミリーに分類され得る。それらのキナーゼファミリーのそれぞれに概して対応するタンパク質キナーゼ配列モチーフが特定されている(例えば、Hanks,S.K.;Hunter,T.,FASEB J.9:576−596(1995)、Kinghton et al.,Science,253:407−414(1991)、Hiles et al.,Cell 70:419−429(1992)、Kunz et al.,Cell,73:585−596(1993)、Garcia−Bustos et al.,EMBO J.,13:2352−2361(1994)を参照)。脂質キナーゼ(例えば、PI3K)は、タンパク質キナーゼとの構造的類似性を有する別のキナーゼ群を構成する。
タンパク質および脂質キナーゼは、タンパク質または脂質等の標的にリン酸基を添加することによって、増殖、成長、分化、代謝、細胞周期の事象、アポトーシス、運動性、転写、翻訳、および他のシグナルプロセスを含むが、これらに限定されない、多くの異なる細胞プロセスを調節する。キナーゼによって触媒されるリン酸化事象は、標的タンパク質の生物学的機能を調整または調節できる分子オン/オフスイッチとして作用する。標的タンパク質のリン酸化は、様々な細胞外シグナル(ホルモン、神経伝達物質、成長および分化因子等)、細胞周期事象、環境的または栄養ストレス等に反応して生じる。タンパク質および脂質キナーゼは、標的の活性を(直接的または間接的に)活性化もしくは不活性化、または調節するようにシグナル伝達経路で機能することができる。これらの標的は、例えば、代謝酵素、調節タンパク質、受容体、細胞骨格タンパク質、イオンチャネルもしくはポンプ、または転写因子を含み得る。タンパク質のリン酸化の制御欠陥による制御されないシグナル伝達は、例えば、炎症、癌、アレルギー/喘息、免疫系の疾患および状態、中枢神経系(CNS)、循環器疾患、皮膚病学、ならびに血管形成の疾患および状態を含む多数の疾患および状態に関連付けられている。
薬理学的標的としてのタンパク質キナーゼにおける当初の関心は、多くのウイルス性癌遺伝子が、構造的に修飾された、構成酵素活性を有する細胞タンパク質キナーゼをコードするという知見により喚起された。これらの知見は、ヒトの増殖障害における癌遺伝子に関連するタンパク質キナーゼの潜在的関与を指摘した。以降、様々なより微妙な機構に起因する脱制御されたタンパク質キナーゼが、例えば、癌、CNS状態、および免疫学的に関係する疾患を含む、数多くの重要なヒト障害の病態生理に関連付けられている。したがって、異常なタンパク質キナーゼ活性に起因する疾患の病理および/または症状を阻害できる選択的タンパク質キナーゼ阻害剤の開発が、大きな関心を生み出した。
【0004】
癌は、細胞分裂、分化、およびアポトーシス細胞死を制御する正常プロセスの脱制御に起因する。タンパク質キナーゼは、この調節プロセスにおいて、重要な役割を果たす。このようなキナーゼの非限定的な一覧には、ab1、オーロラ−A、オーロラ−B、オーロラ−C、ATK、bcr−abl、Blk、Brk、Btk、c−Kit、c−Met、c−Src、CDK1、CDK2、CDK4、CDK6、cRaf1、CSF1R、CSK、EGFR、ErbB2、ErbB3、ErbB4、ERK、Fak、fes、FGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4、FGFR5、Fgr、FLK−4、Flt−1、Fps、Frk、Fyn、Hck、IGF−1R、INS−R、Jak、KDR、Lck、Lyn、MEK、p38、PDGFR、PIK、PKC、PYK2、Ros、Tie1、Tie2、Trk、Yes、およびZap70が含まれるが、これらに限定されない。哺乳類の生物学において、このようなタンパク質キナーゼは、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)シグナル伝達経路を含む。MAPKシグナル伝達経路は、ras遺伝子および成長因子受容体の脱制御等の、様々な一般的な疾患関連機構によって、不適切に活性化される(Magnuson et al.,Seminars in Cancer Biology5:247−252(1994))。したがって、タンパク質キナーゼの阻害が、本発明の目的である。
【0005】
オーロラキナーゼ(オーロラ−A、オーロラ−B、オーロラ−C)は、結腸、乳房、および他の固形腫瘍等のヒト癌に関連付けられている、セリン/スレオニンタンパク質キナーゼである。オーロラ−A(時折、AIKとも称される)は、細胞周期を調節するタンパク質リン酸化事象に関与すると考えられている。具体的に、オーロラ−Aは、有糸分裂中、染色体の正確な分離を制御する役割を果たしている可能性がある。細胞周期の誤制御は、細胞増殖および他の異常の原因となり得る。ヒト結腸癌組織において、オーロラ−A、オーロラ−B、およびオーロラ−Cは、過剰発現されることが分かっている(Bischoff et al.,EMBO J.,17:3052−3065(1998);Schumacher et al.,J.Cell Biol.143:1635−1646(1998);Kimura et al.,J.Biol.Chem.,272:13766−13771(1997)を参照)。
キナーゼ阻害剤は、キナーゼによって媒介される状態の予防、進行の遅延および/または治療のために有用な薬剤であると考えられる。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、化合物Iの新規多型形態、およびこれらの多型形態の調製方法、ならびに1つ以上の新規多形を含む組成物を提供する。
【0007】
多型形態
一態様において、本発明は、式:

【0008】
を有する化合物Iの遊離塩基形態の多型形態を提供する。
形態A、形態B、形態C、形態D、形態E、形態F、および形態Gを作製するための様々な方法も提供する。形態A、形態B、形態C、形態D、形態E、形態F、および形態Gのうちの1つ以上を含む、医薬組成物、キット、および他の製品を製造するための様々な方法も提供する。

形態A:
一実施形態において、多型形態は、約5.4、17.3、および20.2°2シータ(°2θ)で、有意な回折ピークを含むX線粉末回折パターン(CuKα)を有する。一部の変形例において、X線粉末回折パターンは、約16.7、20.7、および25.2°2θで、有意な回折ピークをさらに含む。他の変形例において、X線回折パターンは、実質的に、図1に示す通りである。
さらに別の実施形態において、多型形態は、約290℃から約300℃までを中心とする吸熱を含む、示差走査熱量測定(DSC)曲線を有する。一部の変形例において、吸熱は、約293℃を中心とする。さらなる変形例において、DSC曲線は、実質的に、図2に示す通りである。

形態B:
また別の実施形態において、多型形態は、約5.1、10.3、および15.4°2θで、有意な回折ピークを含むX線粉末回折パターン(CuKα)を有する無水物である。一部の変形例において、X線粉末回折パターンは、約20.6、24.2、および31.8°2θで、有意な回折ピークをさらに含む。さらなる変形例において、X線回折パターンは、実質的に、図6に示す通りである。
【0009】
形態C:
またさらなる実施形態において、多型形態は、約5.4、20.2、および20.8°2θで、有意な回折ピークを含むX線粉末回折パターン(CuKα)を有する無水物である。一部の変形例において、X線粉末回折パターンは、約4.9、16.2、および25.3°2θで、有意な回折ピークをさらに含む。他の変形例において、X線回折パターンは、実質的に、図7に示す通りである。
別の実施形態において、多型形態は、約285℃から約295℃までを中心とする吸熱を含む、示差走査熱量測定(DSC)曲線を有する無水物である。一部の変形例において、吸熱は、約291℃を中心とする。他の変形例において、多型形態は、実質的に、図8に示す通りのDSC曲線を有する。
【0010】
形態D:
また別の実施形態において、多型形態は、約5.3、6.2、および17.4°2θで、有意な回折ピークを含むX線粉末回折パターン(CuKα)を有する無水物である。一部の変形例において、X線粉末回折パターンは、約8.9、9.8、および20.0°2θで、有意な回折ピークをさらに含む。他の変形例において、X線回折パターンは、実質的に、図12に示す通りである。
さらなる実施形態において、多型形態は、約286℃から約296℃までを中心とする吸熱を含む、示差走査熱量測定(DSC)曲線を有する無水物である。一部の変形例において、吸熱は、約282℃を中心とする。他の変形例において、多型形態は、実質的に、図13に示す通りのDSC曲線を有する。

形態E:
さらに、さらなる実施形態において、多型形態は、約5.1、5.3、および16.4°2θで、有意な回折ピークを含むX線粉末回折パターン(CuKα)を有する無水物である。一部の変形例において、X線粉末回折パターンは、約9.7、および20.8°2θで、有意な回折ピークをさらに含む。他の変形例において、X線回折パターンは、実質的に、図16に示す通りである。
別の実施形態において、多型形態は、約287℃から約294℃までを中心とする吸熱を含む、示差走査熱量測定(DSC)曲線を有する無水物である。一部の変形例において、吸熱は、約291℃を中心とする。一部の変形例において、第2の吸熱は、約276℃を中心とする。他の変形例において、多型形態は、実質的に、図17に示す通りのDSC曲線を有する。
【0011】
形態F:
また別の実施形態において、多型形態は、約6.6、16.7、および17.1°2θで、有意な回折ピークを含むX線粉末回折パターン(CuKα)を有する無水物である。一部の変形例において、X線粉末回折パターンは、約6.2、および11.2°2θで、有意な回折ピークをさらに含む。他の変形例において、X線回折パターンは、実質的に、図20に示す通りである。
さらに別の実施形態において、多型形態は、それぞれ、約285℃から約295℃まで、および約295℃から約305℃までを中心とする2つの吸熱を含む、示差走査熱量測定(DSC)曲線を有する無水物である。一変形例において、2つの吸熱のうちの1つは、約289℃を中心とし、2つの吸熱のうちのもう一方は、約299℃を中心とする。他の変形例において、多型形態は、実質的に、図21に示す通りのDSC曲線を有する。

形態G:
またさらに別の実施形態において、多型形態は、約15.9、17.1、および21.4°2θで、有意な回折ピークを含むX線粉末回折パターン(CuKα)を有する無水物である。一部の変形例において、X線粉末回折パターンは、約21.0、および22.2°2θで、有意な回折ピークをさらに含む。他の変形例において、X線回折パターンは、実質的に、図23に示す通りである。
さらなる実施形態において、多型形態は、約295℃から約305℃までを中心とする吸熱を含む、示差走査熱量測定(DSC)曲線を有する無水物である。一部の変形例において、吸熱は、約299℃を中心とする。他の変形例において、多型形態は、実質的に、図24に示す通りのDSC曲線を有する。
【0012】
化合物Iの塩
さらなる態様において、本発明は、式:

【0013】
II
の化合物Iの塩を提供する。
いくつかの実施形態において、本発明は、本塩の多型形態を提供し、その多型形態は、約5.3、10.6、および19.6°2θで、有意な回折ピークを含むX線粉末回折パターン(CuKα)を有する。一変形例において、X線粉末回折パターン(CuKα)は、約10.3、15.9、および17.7°2θで、有意な回折ピークをさらに含む。別の変形例において、X線回折パターン(CuKα)は、実質的に、図26に示す通りである。
他の実施形態において、多型形態は、約275℃から約285℃までを中心とする吸熱を含む、示差走査熱量測定(DSC)曲線を有する。一変形例において、吸熱は、約281℃を中心とする。別の変形例において、示差走査熱量測定(DSC)曲線は、実質的に、図27に示す通りである。
別の実施形態において、本発明は、本塩を作製する方法を提供し、その方法は、HPF6で化合物Iを処理することを含む。
【0014】
多型形態の作製方法
別の態様において、本発明は、式:

【0015】
を有する化合物Iの多型形態を作製する方法を提供する。
一実施形態において、多型形態は、形態A(例えば、約5.4、17.3、および20.2°2θで、有意な回折ピークを含むX線粉末回折パターン(CuKα)を有する一水和物)であり、本方法は、水で化合物Iを処理することを含む。一部の変形例において、本方法は、アセトニトリルに化合物Iを溶解することをさらに含む。他の変形例において、本方法は、アセトニトリル中で化合物Iをスラリー化することをさらに含む。
一実施形態において、多型形態は、形態B(例えば、約5.1、10.3、および15.4°2θで、有意な回折ピークを含むX線粉末回折パターン(CuKα)を有する無水物)であり、本方法は、水で化合物Iを処理することを含む。一部の変形例において、本方法は、アセトニトリルに化合物Iを溶解することをさらに含む。他の変形例において、本方法は、アセトニトリル中で化合物Iをスラリー化することをさらに含む。
さらなる実施形態において、多型形態は、形態C(例えば、約5.4、20.2、および20.8°2θで、有意な回折ピークを含むX線粉末回折パターン(CuKα)を有する無水物)であり、本方法は、化合物Iを乾燥させることを含む。一部の変形例において、本方法は、50℃より高い温度で、化合物Iを乾燥させることをさらに含む。他の変形例において、本方法は、70℃より高い温度で、化合物Iを乾燥させることをさらに含む。別の変形例において、本方法は20%未満の湿度環境で、化合物Iを処理することを含む。さらに別の変形例において、本方法は、ジメチルホルムアミド(DMF)に化合物Iを溶解し、DMFに溶解された化合物Iに貧溶媒を添加することを含み、その貧溶媒は、アセトニトリル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、シクロヘキサン、ヘプタン、およびメチルテトラヒドロフランから成る群から選択される。またさらに別の変形例において、本方法は、無水溶媒に化合物Iを溶解することを含む。
またさらなる実施形態において、多型形態は、形態D(例えば、約5.3、6.2、および17.4°2θで、有意な回折ピークを含むX線粉末回折パターン(CuKα)を有する無水物)であり、本方法は、ジオキサンで化合物Iを処理することを含む。本実施形態の一部の変形例において、本方法は、ジオキサン中で化合物Iをスラリー化することをさらに含む。
【0016】
別の実施形態において、多型形態は、形態E(例えば、約5.1、5.3、および16.4°2θで、有意な回折ピークを含むX線粉末回折パターン(CuKα)を有する無水物)であり、本方法は、アセトンで化合物Iを処理することを含む。本実施形態の一部の変形例において、本方法は、アセトン中で化合物Iをスラリー化することをさらに含む。
さらに別の実施形態において、多型形態は、形態F(例えば、約6.6、16.7、および17.1°2θで、有意な回折ピークを含むX線粉末回折パターン(CuKα)を有する無水物)であり、本方法は、化合物Iを加熱することを含む。本実施形態の一部の変形例において、本方法は、200℃より高い温度で化合物Iを加熱することをさらに含む。一部の変形例において、本方法は、温度を約280℃に保持することをさらに含む。
さらなる実施形態において、多型形態は、形態G(例えば、約15.9、17.1、および21.4°2θで、有意な回折ピークを含むX線粉末回折パターン(CuKα)を有する無水物)であり、本方法は、化合物Iを加熱することを含む。本実施形態の一部の変形例において、本方法は、200℃より高い温度で化合物Iを加熱することをさらに含む。一部の変形例において、本方法は、温度を約290℃に保持することをさらに含む。
これらの物理的特性を特定するために上記分析を実施した方法は、以下の実施例セクションで説明される。
【0017】
化合物Iを含む組成物
さらなる態様において、本発明は、式:

【0018】
の化合物Iを含む医薬組成物を提供し、
化合物Iの少なくとも一部は、本明細書を通して説明される任意の多型形態等、多型形態として存在する。
いくつかの実施形態において、化合物Iは、形態A、形態B、形態C、形態D、形態E、形態F、および形態Gから成る群から選択される形態で存在する。本発明は、化合物IのHPF6塩を含む組成物にも関する。化合物Iの他の結晶および非結晶形態も、本組成物に存在し得ることにも留意されたい。
一変形例において、組成物は、少なくとも0.1%、0.25%、0.5%、1%、5%、10%、25%、50%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、または99%の化合物Iを含み、化合物Iの0.1質量%、0.25質量%、0.5質量%、1質量%、5質量%、10質量%、25質量%、50質量%、75質量%、80質量%、85質量%、90質量%、95質量%、97質量%、または99質量%超が、形態A、形態B、形態C、形態D、形態E、形態F、および/または形態Gから成る群から選択される形態で組成物に存在する。組成物は、任意で、医薬組成物であり得る。医薬組成物は、任意に、化合物Iの使用に有害な影響を及ぼさない1つ以上の追加の成分をさらに含み得る。
化合物Iを含むキットおよび製品
本発明は、化合物Iを含む組成物を含むキットおよび他の製品も提供し、化合物Iは、形態A、形態B、形態C、形態D、形態E、形態F、および/または形態Gから成る群から選択される形態で存在する。一変形例において、少なくとも0.1%、0.25%、0.5%、1%、5%、10%、25%、50%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、または99%の化合物Iを含み、化合物Iの0.1質量%、0.25質量%、0.5質量%、1質量%、5質量%、10質量%、25質量%、50質量%、75質量%、80質量%、85質量%、90質量%、95質量%、97質量%、または99質量%超が、形態A、形態B、形態C、形態D、形態E、形態F、および/または形態Gから成る群から選択される形態で組成物に存在する。キットおよび他の製品の組成物は、任意で、医薬組成物であり得る。医薬組成物は、任意に、化合物Iの使用に有害な影響を及ぼさない1つ以上の追加の成分をさらに含み得る。
医薬組成物を含有する上述の実施形態のそれぞれに関して、医薬組成物は、化合物Iの少なくとも一部が、形態A、形態B、形態C、形態D、形態E、形態F、および/または形態Gから成る群から選択される形態で存在する、任意の様式で製剤化され得る。任意に、化合物Iの一部は、対象への医薬製剤の投与後の一定期間、形態A、形態B、形態C、形態D、形態E、形態F、および/または形態Gから成る群から選択される形態で存在する。
【0019】
形態Aから形態Gまでの使用方法
キナーゼ媒介の様々な疾患を治療するための形態Aから形態Gまでを1つ以上含む医薬組成物、キット、および製品の使用方法も提供する。
一実施形態において、本発明は、化合物Iの0.1質量%、0.25質量%、0.5質量%、1質量%、5質量%、10質量%、25質量%、50質量%、75質量%、80質量%、85質量%、90質量%、95質量%、97質量%、または99質量%超が、形態A、形態B、形態C、形態D、形態E、形態F、および形態Gから成る群から選択される形態で、組成物に存在する組成物を投与することを含むキナーゼの阻害方法に関する。任意に、組成物は、少なくとも0.1%、0.25%、0.5%、1%、5%、10%、25%、50%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、または99%の化合物Iを含む。
別の実施形態において、本発明は、化合物が投与される時に、化合物Iの0.1質量%、0.25質量%、0.5質量%、1質量%、5質量%、10質量%、25質量%、50質量%、75質量%、80質量%、85質量%、90質量%、95質量%、97質量%、または99質量%超が、形態A、形態B、形態C、形態D、形態E、形態F、および形態Gから成る群から選択される形態で、組成物に存在する化合物Iを投与することによって、化合物Iを用いて対象(例えば、ヒト身体)におけるキナーゼを阻害する方法に関する。任意に、組成物は、少なくとも0.1%、0.25%、0.5%、1%、5%、10%、25%、50%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、または99%の化合物Iを含む。
別の実施形態において、本発明は、化合物が対象に投与された後の一定期間、化合物Iの0.1質量%、0.25質量%、0.5質量%、1質量%、5質量%、10質量%、25質量%、50質量%、75質量%、80質量%、85質量%、90質量%、95質量%、97質量%、または99質量%超が、形態A、形態B、形態C、形態D、形態E、形態F、および形態Gから成る群から選択される形態で、組成物に存在する化合物Iを投与することによって、化合物Iを用いて対象(例えば、ヒト身体)におけるキナーゼを阻害する方法に関する。任意に、組成物は、少なくとも0.1%、0.25%、0.5%、1%、5%、10%、25%、50%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、または99%の化合物Iを含む。
またさらに別の実施形態において、本発明は、キナーゼが疾患状態の病理および/または症状の一因となる活性を保有する疾患状態の治療方法を提供し、投与される時に、化合物Iの0.1質量%、0.25質量%、0.5質量%、1質量%、5質量%、10質量%、25質量%、50質量%、75質量%、80質量%、85質量%、90質量%、95質量%、97質量%、または99質量%超が、形態A、形態B、形態C、形態D、形態E、形態F、および形態Gから成る群から選択される形態で、組成物に存在する化合物Iを対象(例えば、ヒト身体)に投与することを含む。任意に、組成物は、少なくとも0.1%、0.25%、0.5%、1%、5%、10%、25%、50%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、または99%の化合物Iを含む。
【0020】
またさらに別の実施形態において、本発明は、キナーゼが疾患状態の病理および/または症状の一因となる活性を保有する疾患状態の治療方法を提供し、組成物が対象に投与された後の一定期間、化合物Iの0.1質量%、0.25質量%、0.5質量%、1質量%、5質量%、10質量%、25質量%、50質量%、75質量%、80質量%、85質量%、90質量%、95質量%、97質量%、または99質量%超が、形態A、形態B、形態C、形態D、形態E、形態F、および形態Gから成る群から選択される形態で、組成物に存在する組成物を対象(例えば、ヒト身体)に存在させることを含む。任意に、組成物は、少なくとも0.1%、0.25%、0.5%、1%、5%、10%、25%、50%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、または99%の化合物Iを含む。
別の実施形態において、キナーゼによって媒介される状態、具体的には、癌(例えば、扁平上皮癌、星状細胞腫、カポジ肉腫、神経膠芽腫、小細胞肺癌、非小細胞肺癌(例えば、肺大細胞癌、腺癌、および扁平上皮癌)、膀胱癌、頭頸部癌、黒色腫、卵巣癌、前立腺癌、乳癌、神経膠腫、結腸直腸癌、尿生殖器癌、胃腸癌、甲状腺癌、皮膚癌、および血液癌(例えば、多発性骨髄腫、慢性骨髄性白血病、および急性リンパ性白血病));炎症;炎症性腸疾患;乾癬;移植片拒絶;筋萎縮性側索硬化症;皮質基底核変性症;ダウン症候群;ハンチントン病;パーキンソン病;脳炎後パーキンソン症;進行性核上性麻痺;ピック病;ニーマン−ピック病;脳卒中;頭部外傷;慢性神経変性疾患;双極性疾患;感情障害;うつ;統合失調症;認知障害;脱毛;避妊薬物障害;軽度認知機能障害;老年記憶障害;加齢性認知機能低下;認知障害−非認知症;軽度認知機能低下;軽度認知神経科学機能低下;高齢期健忘症;記憶機能障害;認知機能障害;男性型脱毛症;認知症関連疾患(例えば、前頭側頭型認知症パーキンソン型、グアム−パーキンソン認知症候群、HIV認知症、神経原線維タングル病理関連の疾患、半認知症状態、血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症、およびボクサー認知症);アルツハイマー病;関節炎;およびその他の状態を予防する、その進行を遅延する、および/または治療するための方法を提供する。
化合物Iが、形態A、形態B、形態C、形態D、形態E、形態F、および形態Gから成る群から選択される形態で、組成物に存在し得ることが記載されるそれぞれの場合において、本発明は、一つのみの形態が存在する、2つの形態が存在する(全ての組み合わせ)、および3つ、4つ、またはそれ以上(全ての組み合わせ)が存在する組成物を包含することを意図する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】化合物Iの形態AのXRPDパターンおよびピーク一覧である。
【図2】化合物Iの形態AのDSC曲線である。
【図3】化合物Iの形態AのTGA曲線である。
【図4】化合物Iの形態Aの1H NMRスペクトルおよびピーク一覧。
【図5】化合物Iの形態Aの水分吸着曲線。
【図6】化合物Iの形態BのXRPDパターン。
【図7】化合物Iの形態CのXRPDパターンおよびピーク一覧。
【図8】化合物Iの形態CのDSC曲線。
【図9】化合物Iの形態CのTGA曲線。
【図10】化合物Iの形態Cの1H NMRスペクトルおよびピーク一覧。
【図11】化合物Iの形態Cの水分吸着曲線。
【図12】化合物Iの形態DのXRPDパターンおよびピーク一覧。
【図13】化合物Iの形態DのDSC曲線。
【図14】化合物Iの形態DのTGA曲線。
【図15】化合物Iの形態Dの1H NMRスペクトルおよびピーク一覧。
【図16】化合物Iの形態EのXRPDパターンおよびピーク一覧。
【図17】化合物Iの形態EのDSC曲線。
【図18】化合物Iの形態EのTGA曲線。
【図19】化合物Iの形態Eの1H NMRスペクトルおよびピーク一覧。
【図20】化合物Iの形態FのXRPDパターンおよびピーク一覧。
【図21】化合物Iの形態FのDSC曲線。
【図22】化合物Iの形態Fの1H NMRスペクトルおよびピーク一覧。
【図23】化合物Iの形態GのXRPDパターンおよびピーク一覧。
【図24】化合物Iの形態GのDSC曲線。
【図25】化合物Iの形態Gの1H NMRスペクトルおよびピーク一覧。
【図26】化合物IのHPF6塩のXRPDパターンおよびピーク一覧。
【図27】化合物IのHPF6塩のDSC曲線。
【図28】化合物IのHPF6塩のTGA曲線。
【図29】化合物IのHPF6塩の1H NMRスペクトルおよびピーク一覧。
【図30】化合物IのHPF6塩の19F NMRスペクトルおよびピーク一覧。
【図31】化合物IのHPF6塩の31P NMRスペクトルおよびピーク一覧。
【図32】化合物Iの形態Aに対する形態相互変換のダイアグラム。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、化合物Iの新規多形、および化合物Iの少なくとも一部が結晶形態(すなわち、形態A、形態B、形態C、形態D、形態E、形態F、および形態G)ならびに非結晶形態から成る群から選択される形態で、組成物に存在する化合物Iを含む組成物を提供する。
本発明は、化合物IのHPF6塩、ならびに化合物Iの少なくとも一部がHPF6塩として存在する化合物Iを含む組成物も提供する。
また、化合物Iの少なくとも一部が結晶形態(すなわち、形態A、形態B、形態C、形態D、形態E、形態F、および形態G)および非結晶形態から成る群から選択される形態で、組成物に存在する化合物Iを含む組成物を備えるキットおよび他の製品も提供する。
開示された形態のそれぞれを作製する方法、化合物Iの少なくとも一部が結晶形態(すなわち、形態A、形態B、形態C、形態D、形態E、形態F、および形態G)ならびに非結晶形態から成る群から選択される形態で、組成物に存在する化合物Iを含む医薬組成物を製造するための方法、および化合物Iの少なくとも一部が結晶形態(すなわち、形態A、形態B、形態C、形態D、形態E、形態F、および形態G)ならびに非結晶形態から成る群から選択される形態で、組成物に存在する化合物Iを含む組成物を使用する方法を含む、様々な方法も提供する。
当業者が理解するように、所定の化合物を含む組成物がどのように生成され、そして、生成された後に、組成物がどのように保存され、処理されるかにより、組成物の結晶量が影響される。したがって、組成物が結晶量を含まない、もしくは高濃度の結晶量を含み得ることが可能である。
【0023】
化合物は、1つ以上の異なる多型形態で、所定の組成物に存在し得、また、任意に、非結晶物質としても存在することをさらに留意されたい。これは、(a)物理的に2つ以上の異なる多型形態を混合すること、(b)2つ以上の異なる多型形態を結晶化状態から生成させること、(c)所定の多型形態の全てまたは一部を別の多型形態に変換させること、(d)非結晶状態の化合物の全てまたは一部を2つ以上の多型形態に変換させること、ならびに多数の他の理由の結果であり得る。
示すように、化合物を含む組成物がどのように調製されるかにより、所定の多型形態におけるその化合物の質量%は、0%から100%まで様々であり得る。本発明に従い、化合物Iの0.1質量%、0.25質量%、0.5質量%、1質量%、5質量%、10質量%、25質量%、50質量%、75質量%、80質量%、85質量%、90質量%、95質量%、97質量%、または99質量%超が、形態AからGまでから成る群から選択される形態で、組成物に存在する組成物を提供する。
【0024】
定義
本明細書で使用される、「結晶」とは、水和され得る、および/または溶媒和され得る特定の化合物を含む、ならびにXRPDまたは他の回折法によって、識別可能な回折パターンを示すのに十分な結晶量を有する物質を指す。しばしば、溶液に溶解された化合物の直接的な結晶化、または異なる結晶化状態下で得られた結晶の相互変換によって得られる結晶物質は、結晶性溶媒和物と呼ばれる、結晶化で使用される溶媒を含有する結晶を有する。また、総称して結晶化状態と呼ばれる、結晶化が実施される特定の溶媒系および物理的実施形態は、概して、結晶内の互いに関する化合物の化学的部分の配向性および/または結晶物質における化合物の特定の多型形態の優位性のため、結晶化状態に特有の物理的および化学的性質を有する結晶物質を生じ得る。
組成物に存在する化合物の多型形態によって、非結晶固体における様々な量の化合物が、初期の結晶化の副産物および/または結晶物質を含む結晶の分解の産物のいずれかとして存在し得る。よって、本明細書で使用される結晶とは、組成物が、非結晶量を含み得ることを意図し、非結晶物質中の結晶物質の存在は、たとえば、個々の識別可能なピークを伴う回折パターンを有する組成物によって検出可能である。
結晶物質中の非結晶量は、物質の粉砕または微粉砕によって増加され得、これは、粉砕前の結晶物質に比して回折および他のスペクトル線が広がることによって表れる。十分な粉砕および/または微粉砕は、XRPDまたは他の結晶特異スペクトルが識別不能になり得、物質を実質的に非結晶または準非結晶になる程度まで、粉砕前の結晶物質に比べて線を広げ得る。
粉砕を継続すると、XRPDパターンが非常に広げられるため、もはやノイズ上で識別不可能であることを限度として、非結晶量の増加、およびXRPDパターンをさらに広げることが予想される。XRPDパターンが識別不可能な限度まで広げられる時、物質は、もはや結晶物質ではなく、代わりに完全に非結晶であるとみなされ得る。増加した非結晶量および完全な非結晶物質を有する物質においては、粉砕が別の形態を産生することを示唆するピークは認められない。
【0025】
本明細書で使用される「非結晶」とは、XRPDまたは他の回折法によって、個々の識別可能なピークを有する回折パターンを得るには少なすぎる結晶量の化合物を含有する化合物を含む組成物を指す。ガラス状物質は、非結晶物質の一種である。ガラス状物質は、真の結晶格子を有さず、定義上、非常に粘性の非結晶液に類似している。真の固体というよりむしろ、ガラスは、準固体の非結晶物質としてよりよく説明され得る。
本明細書で、XRPD、NMR、IR、およびラマン分光法線を含むスペクトル線を説明するために使用する場合、「広い」または「広がった」という用語は、ベースラインスペクトルの線幅に対する相対的な用語である。ベースラインスペクトルは、しばしば、溶媒組成物、ならびに温度および圧力等の性質を含む、所定の一連の物理的および化学的条件から直接的に得られる、特定の化合物の未処理の結晶形態のスペクトルである。例えば、広がったという語は、粉砕前の物質に比べて、結晶化合物を含む粉砕または微粉砕された物質のXRPDスペクトルのスペクトル線を説明するために使用され得る。溶媒和または水和された、構成分子、イオンまたは原子が、急速に回転しない物質において、線の広がりは、化合物の化学的部分の配向性におけるランダム性の増加を示し、よって、非結晶量の増加を示す。異なる結晶化条件を介して得られた結晶物質間で比較がなされる時、より広いスペクトル線は、比較して広いスペクトル線を生成する物質は高レベルの非結晶量を有することを示唆する。
本明細書で使用される「約」とは、真の値が記載される値の±5%の範囲内である推定を指す。
本明細書で、DSC吸熱および発熱を説明するために使用される「フォーク」という用語は、区別可能なピーク位置を有する、重複した吸熱または発熱を指す。
【0026】
多形の調製および特性づけ
A.化合物Iの調製
化合物Iを合成するために、様々な方法が使用され得る。化合物Iを合成するための代表的な方法を実例1に提供する。しかしながら、他の合成経路も、化合物Iを合成するために使用され得ることに留意されたい。
B.化合物Iの多形の調製
化合物を沈殿および結晶化するための一般的な方法が、本明細書で説明される様々な多形を調製するために適用され得る。これらの一般的な方法は、有機合成化学および医薬製剤の分野の当業者に既知であり、例えば、J.March,“Advanced Organic Chemistry:Reactions,Mechanisms and Structure,“4th Ed.(New York:Wiley−Interscience,1992)に記載されている。
概して、化合物の所定の多形は、化合物の直接的な結晶化によって、または化合物の結晶化後、別の多型形態から、もしくは非結晶形態からの相互変換によって得られ得る。化合物が結晶化される方法に依存して、得られた組成物は、非結晶物質ではなく結晶形態における異なる量の化合物を含有し得る。また、得られた組成物は、化合物の異なる多型形態の異なった混合物をも含有し得る。
高い割合(%)の結晶量を含む組成物(例えば、格子欠陥がより少なく、それに対応して、より少ないガラス状物質を有する結晶を形成する)は、概して、溶媒蒸発を遅くする条件、および動態に影響を与える条件を含む、より遅い結晶形成を好む条件が使用される。結晶化条件は、必要に応じて、高品質の結晶物質を得るように、適切に調整され得る。よって、例えば、質の悪い結晶が初期設定の結晶化条件下で形成される場合、結晶化を遅らせるために、初期設定の結晶化条件よりも溶媒温度を下げ、溶液上の周囲圧を上昇させることができる。
しばしば、溶媒の速い蒸発によって影響される溶液からの化合物の析出は、結晶ではなく、非結晶固体を形成する化合物を好むことが知られている。非結晶状態の化合物は、溶媒和された化合物から、溶媒を迅速に蒸発することによって、または結晶状態中ある化合物を粉砕する、微粉砕する、もしくは物理的に加圧する、または研磨することによって生成され得る。
実施例1で説明する方法によって調製された化合物Iは、他の多型形態の調製のために、開始物質として使用され得る。化合物Iの溶解度を試験するための方法は、実施例2に説明され、様々な溶媒における化合物の溶解度は、実施例2の表Aに要約される。良好な溶解度は、MeOH、DMF、DMA、NMP、CHCl3、AcOH、およびEtOHにおいて観察された。難溶解度は、MeCN、MTBe、EtOAc、IPAc、IPA、THF、MEK、ヘプタン、および水において観察された。
様々な多型形態が調製され得る方法を、実施例3のサブセクションAに説明する。形態A〜G、および化合物IのHPF6塩が調製される具体的な方法は、以下および実施例のセクションで説明される。
【0027】
C.化合物Iの多形
化合物Iの形態A、形態B、形態C、形態D、形態E、形態F、および形態Gを、本明細書で説明する。X線粉末回折(XRPD)、示差走査熱量測定(DSC)、熱重量分析(TGA)、溶液プロトン核磁気共鳴(1H−NMR)、ならびに水分吸着および脱離分析(M S/Des)を含む、化合物Iの多形を物理的に特性決定するために、様々な試験が実施された。それぞれの分析法の詳細な実験条件は、実施例のセクションで説明される。溶解度試験も実施され、化合物Iは、MeCN、EtOH、THF、DMF、AcOH、MeOH、NMP、およびDMAcを含む、極性溶媒においてかなりの溶解度を示した(表11)。高速および低速の冷却手順の双方での固体の凝結、および固体物質の単離は観察されなかった。これらの実験および結果の要約は、以下および表12に示される。
1.形態A
入手可能な特性化データに基づき、形態Aは、周囲条件で安定している化合物Iの二水和物多型形態のようである。
形態Aは、XRPD、DSC、TGA、1H−NMR、カールフィッシャー、および水分吸着分析を含む、様々な技法によって特性決定された。表9にこれらの結果のいくつかを要約する。
形態Aを調製するための詳細な方法は、実施例8で示す。例えば、形態Aは、水での再スラリー(例えば、MeCN/水等の二元溶媒系)から得られる。
形態Aのカールフィッシャー分析は、概して、5〜6質量%の水を示した。本データは、化合物Iの形態Aが二水和物である(理論的質量%水は6.2%)ことと一致する水分吸着試験(図5)と一致した。
化合物Iの形態Aの重量水分吸着実験は、物質が、吸収および脱離の双方中、20%より高いの相対湿度で安定した二水和物であることを示した。実験は、どの点においても、4時間の平衡限界に達しなかった。さらに、物質は、吸収中、相対湿度30%、約45分で、二水和物を形成するための十分な水を獲得し、脱離中、60分以内に、15%の相対湿度で、十分な水を損失して無水物を形成した。これらの結果は、物質が、相対湿度20%から25%の間で自由に水を損失/獲得して、それぞれ無水物または二水和物を形成することと一致する。脱離走査後の固体のXRPD分析は、物質が、形態変換と一致する、化合物Iの形態Cと一致することを示した。試料は、一晩、周囲の研究室条件でさらに平衡化され、XRPDで再分析された。結果は、形態Aに再変換された物質と一致した。化合物Iの他の多型形態は、約相対湿度20%以上で、形態Aに変換することができる。
化合物Iの形態Aの湿度室試験を表20に要約する。形態Aの試料を、一週間、周囲温度および0%の相対湿度に曝露した。一週間後に得られた物質のXRPD分析は、形態Aと一致するパターンを示し、一週間の平衡の前後のカールフィッシャー(KF)分析結果は、同等であった。これらの結果は、相対湿度0%室での形態Aから形態Cへの変換、および分析用の試料調製中の周囲の研究室条件での形態Aへの再変換と一致した。形態Aに関する形態相互変換の要約を図1に示す。
【0028】
図1は、形態Aの特徴的なXRPDスペクトル(CuKα、λ=1.5418Å)を示す。XRPDパターンは、形態Aが結晶であることを確証する。°2θで表される主なX線回折線およびそれらの相対強度を表1に要約する。
【0029】
表1.形態Aの特徴的なXRPDピーク(CuKα)

【0030】
この一連の固有XRPDピーク位置またはそのサブセットは、形態Aを特定するために使用され得る。このようなサブセットの1つは、約5.4、17.3、および20.2°2θでのピークを含む。別のサブセットは、約16.7、20.7、および25.2°2θでのピークを含む。
DSCサーモグラム(図2)は、300℃未満、典型的には、67、229、および293℃付近で生じるいくつかの吸熱事象と、280℃付近で時々観察された発熱事象をを示した。TGAによる形態Aの分析(図3)は、典型的に、60℃未満で、2%〜4%の重量損失を示した。本重量損失の正確な測定は、事象の低い開始温度のため、困難であった。
形態Aは、溶液1H NMRによってさらに特性決定された。スペクトルを図4に報告する。化学指定は実施されなかったが、スペクトルは化合物Iの既知の化学構造と一致する。
化合物Iの溶解度は、脱イオン水およびpH3.2の20mMのリン酸緩衝液で0.1mg/mL未満であることが分かった(表10)。
形態Aの調製および特性化に関するさらなる詳細は、以下の実施例のセクションで示される。
2.形態B
使用できる特性データに基づくと、形態Bは、周囲非水条件下で安定している化合物Iの無水多型形態のようである。形態Bは、XRPDを含む様々な技法で特性決定された。表9にこれらの結果のいくつかを要約する。
図6は、形態Bの特徴的なXRPDスペクトル(CuKα、λ=1.5418Å)を示す。XRPDパターンは、形態Bが結晶であることを確証する。°2θで表される主なX線回折線およびそれらの相対強度を表2に要約する。
【0031】
表2.形態Bの特徴的なXRPDピーク(CuKα)

【0032】
この一連の固有XRPDピーク位置またはそのサブセットは、形態Bを特定するために使用され得る。このようなサブセットの1つは、約5.1、10.3、および15.4°2θでのピークを含む。別のサブセットは、約20.6、24.2、および31.8°2θでのピークを含む。
形態Bの調製および特性決定に関するさらなる詳細は、以下の実施例のセクションで示される。
3.形態C
使用できる特性化データに基づくと、形態Cは、周囲低湿度条件下で安定している化合物Iの無水多型形態のようである。形態Cは、XRPD、DSC、TGA、カールフィッシャー、1H−NMRおよび水分吸着分析を含む、様々な技法によって特性決定された。表9にこれらの結果のいくつかを要約する。
概して、化合物Iの形態Cは、25%相対湿度未満で無水物であることが観察され、20%より高い相対湿度では二水和物形態Aに急速に変換した。加えて、形態Cは、溶解度の測定中、水性媒質で形態Aに変換した。
形態Cは、一次溶媒としてDMF、ならびにMTBE、EtOAc、IPAc、2−Me−THF、c−ヘキサン、ヘプタン、トルエン、および水を含む様々な異なる貧溶媒を使用して、二元溶媒結晶化によって調製され得る(表13)。形態Cは、また、化合物IのHCl塩誘導体を遊離塩基することによっても調製され得る(実施例6)。これは、化合物IのHCl塩を溶解し、塩基で溶液を処理することによって達成され得る。これは、遊離塩基の沈殿を生じる。形態Cを調製するための詳細な方法を実施例8に示す。
図7は、形態Cの特徴的なXRPDスペクトル(CuKα、λ=1.5418Å)を示す。XRPDパターンは、形態Cが結晶であることを確証する。°2θおよびそれらの相対強度で表される主なX線回折線を表3に要約する。
【0033】
表3.形態Cの特徴的なXRPDピーク(CuKα)

【0034】
この一連の固有XRPDピーク位置またはそのサブセットは、形態Cを特定するために使用され得る。このようなサブセットの1つは、約5.4、20.2、および20.8°2θでのピークを含む。別のサブセットは、約4.9、16.2、および25.3°2θでのピークを含む。
DSCサーモグラム(図8)は、約68℃および約291℃付近で吸熱事象を示す。
TGA(図9)による分析は、0から約4質量%の間の様々な重量損失を示した。カールフィッシャー分析も、1%未満から約4%の間の様々な含水量を示した。これらの結果は、吸収された水、または形態Aへ変換された(または変換し始めた)物質を示し得、相対湿度20〜30%で形態Aへの変換を示した、以下に記載される水分吸着と一致するであろう。
化合物Iの形態Cの水分吸着実験は、形態Aの曲線と類似する曲線を提供する(図11)。この実験は、物質が、吸収および脱離の双方中、20%より高い相対湿度で、安定した二水和物に変換することを示した。実験は、どの時点においても、4時間の平衡限界に達しなかった。さらに、物質は、吸収中、30%の相対湿度で、60分以内に、二水和物を形成するのに十分な水を獲得し、脱離中、15%の相対湿度において、約80分で、無水物を形成するのに十分な水を損失した。これらの結果は、物質が、相対湿度20%と25%の間で、自由に水を損失/獲得して、それぞれ、無水物または二水和物を形成することと一致する。
形態Cは、1H NMR溶液によってさらに特性決定された。スペクトルを図10に報告する。化学指定は実施されなかったが、スペクトルは化合物Iの既知の化学構造と一致する。
形態Cの調製および特性化に関するさらなる詳細は、以下の実施例のセクションで示される。
4.形態D
使用できる特性化データに基づくと、形態Dは、周囲非水条件下で安定している化合物Iの無水多型形態のようである。形態Dは、XRPD、DSC、TGA、および1H−NMRを含む技法によって特性決定された。表9にこれらの結果のいくつかを要約する。形態Dは、周囲温度および40℃で、ジオキサンのスラリー実験で単離され得る。形態Dを調製するための詳細な方法を実施形態8に示す。
図12は、形態Dの特徴的なXRPDスペクトル(CuKα、λ=1.5418Å)を示す。XRPDパターンは、形態Dが結晶であること確証する。°2θで表される主なX線回折線およびそれらの相対強度を表4に要約する。
【0035】
表4.形態Dの特徴的なXRPDピーク(CuKα)

【0036】
この一連の固有XRPDピーク位置またはそのサブセットは、形態Dを特定するために使用され得る。このようなサブセットの1つは、約5.3、6.2、および17.4°2θでのピークを含む。別のサブセットは、約8.9、9.8、および20.0°2θでのピークを含む。
化合物Iの形態Dの試料のKF分析結果によって、1.4%の水が見出された。DSCサーモグラム(図13)は、282℃および292℃での吸熱事象、ならびに284℃での発熱事象を含む、多重事象を示した。化合物Iの形態Dの試料のTGAは、100℃から180℃の間で、0.9%の重量損失を示した。
形態Dは、1H NMR溶液によってさらに特性決定された。スペクトルを図15に報告する。化学指定は実施されなかったが、スペクトルは化合物Iの既知の化学構造と一致する。スペクトルは、残留ジオキサンの存在も示した(1.9質量%)。
形態Dの調製および特性決定に関するさらなる詳細は、以下の実施例のセクションで示される。
5.形態E
使用できる特性化データに基づくと、形態Eは、周囲非水条件下で安定している化合物Iの無水多型形態のようである。形態Eは、XRPD、DSC、TGA、および1H−NMRを含む技法によって特性決定された。表9にこれらの結果のいくつかを要約する。形態Eを調製するための詳細な方法を実施例8に示す。
図16は、形態Eの特徴的なXRPDスペクトル(CuKα、λ=1.5418Å)を示す。XRPDパターンは、形態Eが結晶であることを確証する。°2θで表される主なX線回折線およびそれらの相対強度を表5に要約する。
【0037】
表5.形態Eの特徴的なXRPDピーク(CuKα)

【0038】
この一連の固有XRPDピーク位置またはそのサブセットは、形態Eを特定するために使用され得る。このようなサブセットの1つは、約5.1、5.3、および16.4°2θでのピークを含む。別のサブセットは、約9.7および20.8°2θでのピークを含む。
KF分析結果は、0.8%の水を示した。形態EのDSCサーモグラム(図17)は、276℃および291℃での吸熱事象、ならびに278℃での発熱事象を伴う、多重事象を示した。
図18は、形態EのTGAサーモグラムであり、100℃から220℃の間で、3.0%の重量損失を示す。
形態Eは、1H NMR溶液によってさらに特性決定された。スペクトルを図19に報告する。スペクトルは、1モル等量溶媒が存在すること、ならびに化合物Iの既知の化学構造と一致する。
形態Eの調製および特性化に関するさらなる詳細は、以下の実施例のセクションで示される。
6.形態F
使用できる特性化データに基づき、形態Fは、DSC実験を使用して単離された化合物Iの無水高融解形態のようである。形態Fは、XRPD、DSC、および1H−NMRを含む技法によって特性決定された。表9にこれらの結果のいくつかを要約する。形態Fは、表17および18に示す通り、280℃で保持される等温で加熱−冷却実験を使用したDSC実験で単離され得る。
図23は、形態Fの特徴的なXRPDスペクトル(CuKα、λ=1.5418Å)を示す。XRPDパターンは、形態Fが結晶であることを確証する。°2θで表される主なX線回折線およびそれらの相対強度を表6に要約する。
【0039】
表6.形態Fの特徴的なXRPDピーク(CuKα)

【0040】
この一連の固有XRPDピーク位置またはそのサブセットは、形態Fを特定するために使用され得る。このようなサブセットの1つは、約6.6、16.7、および17.1°2θでのピークを含む。別のサブセットは、約6.2および11.2°2θでのピークを含む。
図21は、形態Fの特徴的なDSCサーモグラムを示す。第1の吸熱は、約289℃を中心とし、第2の吸熱は、約299℃を中心とし、約149℃を中心とする発熱が、観察された。
形態Fは、1H NMR溶液によってさらに特性化された。スペクトルを図22に報告する。化学指定は実施されなかったが、スペクトルは化合物Iの既知の化学構造と一致する。
7.形態G
使用できる特性化データに基づき、形態Gは、DSC実験を使用して単離された化合物Iの無水高融解形態のようである。形態Gは、XRPD、DSC、および1H−NMRを含む技法によって特性決定された。表9にそれらの結果のいくつかを要約する。形態Gは、表17および18に示す通り、290℃で保持される等温で加熱−冷却実験を使用したDSC実験で単離され得る。
図23は、形態Gの特徴的なXRPDスペクトル(CuKα、λ=1.5418Å)を示す。XRPDパターンは、形態Gが結晶であることを確証する。°2θで表される主なX線回折線およびそれらの相対強度を表7に要約する。
【0041】
表7.形態Gの特徴的なXRPDピーク(CuKα)

【0042】
この一連の固有XRPDピーク位置またはそのサブセットは、形態Gを特定するために使用され得る。このようなサブセットの1つは、約15.9、17.1、および21.4度°2θでのピークを含む。別のサブセットは、約21.0および22.2°2θでのピークを含む。
図24は、形態Gの特徴的なDSCサーモグラムを示す。吸熱は、約299℃(ピーク最高)で観察された。
形態Gは、1H NMR溶液によってさらに特性決定された。スペクトルを図25に報告する。スペクトルは、1モル等量の溶媒が存在すること、ならびに化合物Iの既知の化学構造と一致する。
形態Gの調製および特性化に関するさらなる詳細は、以下の実施例のセクションで示される。
D.化合物IのHPF6
化合物IのHPF6塩は、XRPD、DSC、TGA、1H−NMR、19F−NMR、および31P−NMRを含む技法によって特性決定された。しようできる特性化データに基づくと、これは、周囲条件下で安定している化合物IのHPF6塩の無水形態のようである。
化合物Iの本塩形態の19Fおよび31P NMR分析(図30および31)は、HPF6において予測された分割と一致する。TGAによる分析は、40℃から60℃の間で、2.4%の重量損失を示し、これはカールフィッシャーによって確認された2.1%含水量に対応する。化合物IのHPF6塩のリン含有量は、1.5質量%であることが分かったが、これは4.8質量%の1:1比における理論的含量未満であった。この理論値からの偏差は、意図された産物ではないが、塩を生成するために使用された手順の不適切な内容のため、予測外ではなかった。
図26は、HPF6塩の本形態の特徴的なXRPDスペクトル(CuKα、λ=1.5418Å)を示す。XRPDパターンは、形態1が結晶であることを確証する。°2θで表される主なX線回折線およびそれらの相対強度を表8に要約する。
【0043】
表8.化合物IのHPF6塩の特徴的なXRPDピーク(CuKα)

【0044】
この一連の固有XRPDピーク位置またはそのサブセットは、HPF6塩の本形態を特定するために使用され得る。このようなサブセットの1つは、約7.0、16.7、および17.4°2θでのピークを含む。別のサブセットは、約19.6、20.2、および24.6°2θでのピークを含む。
DSC分析(図27)は、50℃付近で広い吸熱を示し、281℃で単一の大規模な吸熱を示す。これは、280℃付近で融解/結晶化を示し、その後290℃付近で最終変換を示した化合物Iの遊離塩基形態と異なる。図28は、化合物IのHPF6塩の本形態のTGAサーモグラムである。
この固形形態を含む化合物IのHPF6塩の調製および特性決定に関するさらなる詳細は、以下の実施例のセクションで示される。
化合物Iの適応症
本発明は、化合物Iの形態Aから形態G、および医薬的に許容される塩から成る群から選択される形態で、化合物Iを投与することによって、対象内のキナーゼ活性を変更、好ましくは低減するための方法にも関する。
キナーゼは、いくつかの異なる疾患の病理および/または症状の一因であると考えられるため、対象における1つ以上のキナーゼの活性の低減は、これらの疾患状態を治療的に対処するために使用され得る。本発明の化合物Iを使用して治療され得る様々な疾患の例を、本明細書で説明する。本明細書で開示されるもの以外のさらなる疾患は、キナーゼが様々な経路で果たす生物学的役割が十分に理解されるにつれて、後に特定され得ることに留意されたい。
化合物Iは、癌を治療する、または予防するために使用され得る。一実施形態において、化合物Iは、治療有効量の化合物Iまたは化合物Iを含む組成物を、それを必要とする哺乳類種に投与することを含む方法に使用される。具体的な実施形態において、癌は、扁平上皮癌、星状細胞腫、カポジ肉腫、神経膠芽腫、小細胞肺癌、非小細胞肺癌(例えば、肺大細胞癌、腺癌、および扁平上皮癌)、膀胱癌、頭頸部癌、黒色腫、卵巣癌、前立腺癌、乳癌、神経膠腫、結腸直腸癌、尿生殖器癌、胃腸癌、甲状腺癌、皮膚癌、腎癌、直腸癌、結腸癌、子宮頸癌、中皮腫、膵癌、肝癌、子宮癌、脳腫瘍癌、尿膀胱癌、ならびに多発性骨髄腫、慢性骨髄性白血病、および急性リンパ性白血病を含む血液癌から成る群から選択される。他の実施形態において、化合物Iは、癌の成長を阻害するため、癌の転移を抑制するため、アポトーシスを抑制するため等に有用である。
別の実施形態において、化合物Iは、治療有効量の化合物Iまたは化合物Iを含む組成物を、それを必要とする哺乳類種に投与することを含む、炎症、炎症性腸疾患、乾癬、または移植片拒絶を治療するための方法に使用される。
別の実施形態において、化合物Iは、治療有効量の化合物Iまたは化合物Iを含む組成物を、それを必要とする哺乳類種に投与することを含む、筋萎縮性側索硬化症、皮質基底核変性症、ダウン症候群、ハンチントン病、パーキンソン病、脳炎後パーキンソン症、進行性核上性麻痺、ピック病、ニーマン−ピック病、脳卒中、頭部外傷ならびに他の慢性神経変性疾患、双極性疾患、感情障害、うつ、統合失調症、認知障害、脱毛、および避妊薬物障害を予防するため、または治療するための方法に使用される。
さらに別の実施形態において、化合物Iは、治療有効量の化合物Iまたは化合物Iを含む組成物を、このような予防および/もしくは治療を必要とするヒトを含む哺乳類種に投与することを含む、軽度認知機能障害、老年記憶障害、加齢性認知機能低下、認知障害−非認知症、軽度認知機能低下、軽度認知神経科学機能低下、高齢期健忘症、記憶障害および認知機能障害、ならびに男性型脱毛症を予防するため、または治療するための方法に使用される。
【0045】
さらなる実施形態において、化合物Iは、治療有効量の化合物Iまたは化合物Iを含む組成物を、それを必要とする哺乳類種に投与することを含む、認知症関連疾患、アルツハイマー病、およびキナーゼに関連する状態を予防するため、または治療するための方法に使用される。特定の一変形例において、認知症関連疾患は、前頭側頭型認知症パーキンソン型、グアム−パーキンソン認知症候群、HIV認知症、神経原線維タングル病理関連の疾患、半認知症状態、血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症、およびボクサー認知症から成る群から選択される。
別の実施形態において、化合物Iは、治療有効量の化合物Iまたは化合物Iを含む組成物を、それを必要とする哺乳類種に投与することを含む、関節炎を治療するための方法に使用される。
本発明に従う組成物は、他の活性剤と投与される、または、同時投与され得る。これらの追加の活性剤は、例えば、1つ以上の他の医薬活性剤を含み得る。本発明の文脈における同時投与とは、2種以上の治療剤の投与であって、そのうちの一つが化合物Iを含むことを意味することが意図される。このような同時投与は、同一の広がりも持ち得る、すなわち、重複した期間中で生じる、または順次的であり得る、すなわち非重複期間中に行われる。併用治療における他の活性成分と化合物Iの同時投与の例は、2007年5月24日に公開された米国特許公開第2007−0117816号(化合物I12を参照)、および米国特許公開第60/912,625号および第60/912,629号(化合物83を参照)に記載されており、参照によりそれらの全体が本明細書に援用される。
【0046】
腫瘍に対する適用において、化合物Iは、望まない制御不能な細胞増殖を阻害するための他の薬剤と併用して投与され得る。化合物Iと併用して使用され得る他の抗細胞増殖剤の例としては、レチノイド酸およびその誘導体、2−メトキシエストラジオール、アンジオスタチン(登録商標)タンパク質、エンドスタチン(登録商標)タンパク質、スラミン、スクアラミン、組織メタロプロテイナーゼ阻害剤−I、組織メタロプロテイナーゼ阻害剤−2、プラスミノーゲン活性化因子阻害剤−1、プラスミノーゲン活性化因子阻害剤−2、軟骨由来阻害剤、パクリタキセル、血小板第4因子、硫酸プロタミン(クルペイン)、硫酸化キチン誘導体(ズワイガニの甲から調製される)、硫酸化ポリサッカライドペプチドグリカン複合体(sp−pg)、スタウロスポリン、例えば、プロリン類似体((l−アゼチジン−2−カルボン酸(LACA))を含むマトリックス代謝の調節因子、シスヒドロキシプロリン、d,l−3,4−ジヒドロプロリン、チアプロリン、β−アミノプロピオンニトリルフマル酸、4−プロピル−5−(4−ピリジニル)−2(3H)−オキサゾロン、メトトレキサート、メトキサントロン、ヘパリン、インターフェロン、2マクログロブリン−血清、ChIMP−3、キモスタチン、β−シクロデキストリンテトラデカサルフェート、エポネマシイン、フマジリン、金チオマレイン酸ナトリウム、d−ペニシラミン(CDPT)、β−1−アンチコラゲナーゼ−血清、α2−アンチプラスミン、ビスアントレン、ロベンザリットジナトリウム、n−2−カルボキシフェニル−4−クロロアントロニリン酸ジナトリウムまたは「CCA」、サソドマイド、血管形成抑制ステロイド、カルボキシアミノイミダゾール、BB94等のメタロプロテイナーゼ阻害剤を含むが、これらに限定されない。使用され得る他の血管形成抑制剤は、抗体、好ましくは、以下の血管形成成長因子に対するモノクロナール抗体を含む:bFGF、aFGF、FGF−5、VEGFアイソフォーム、VEGF−C、HGF/SFおよびAng−1/Ang−2。Ferrara N. and Alitalo,K.“Clinical application of angiogenic growth factors and their inhibitors”(1999)Nature Medicine5:1359−1364。
【0047】
別の実施形態において、化合物Iを投与することを含む治療方法を提供する。別の実施形態において、細胞を有効量の化合物Iと接触させることを含む、細胞増殖を阻害する方法を提供する。別の実施形態において、治療有効量の化合物Iを患者に投与することを含む、患者の細胞増殖を阻害する方法を提供する。
別の実施形態において、1つ以上のキナーゼによって媒介されることが知られている、またはキナーゼ阻害剤で治療されることが知られている、患者の状態治療する方法は、治療有効量の化合物Iを患者に投与することを含む。別の実施形態において、1つ以上のキナーゼによって媒介されることが知られている、またはキナーゼ阻害剤で治療されることが知られている、疾患状態の治療において使用される薬物を製造するために、化合物Iを使用するための方法を提供する。
別の実施形態において、キナーゼが疾患状態の病理および/または症状の一因となる活性を保持する疾患状態を治療するための方法を提供し、本方法は、化合物Iの遊離塩基形態が、疾患状態において治療有効量で対象に存在するように、対象に化合物Iを投与することを含む。
本発明は、概して、1mg/日から500mg/日の間化合物I、任意に1mg/日から400mg/日の間の化合物I、任意に、1mg/日から250mg/日の間の化合物I、任意に、2.5mg/日から200mg/日の間の化合物I、任意に、2.5mg/日から150mg/日の間の化合物I、任意に、5mg/日から100mg/日の間の化合物I(各例において、化合物Iの遊離塩基形態の分子量に基づく)を患者に投与することを含む方法に関する。使用され得る特定の投与量は、1日当り2.5mg、5mg、6.25mg、10mg、12.5mg、20mg、25mg、50mg、75mg、100mg、200mg、250mg、400mg、および500mgの化合物Iを含むが、これらに限定されない。投与量は、一日量または週間量、1日1回または1日当り複数回として投与され得ることに留意されたい。化合物Iは、形態Aから形態Gまでから成る群から選択される形態で投与され得ることに留意されたい。しかしながら、本明細書で提供される用量および範囲は、通常、化合物Iの遊離塩基形態の分子量に基づく。
化合物Iは、任意の投与経路で投与され得る。しかしながら、特定の実施形態において、本発明の方法は、経口的に化合物Iを投与することによって実行される。
【0048】
形態Aから形態Gまでの少なくとも1つが存在する化合物Iを含む医薬組成物
化合物Iは、化合物Iの少なくとも1つが、形態Aから形態Gまでから成る群から選択される形態で、組成物に存在する様々な医薬組成物において使用され得る。医薬組成物は、所望する治療効果を提供するために生体内でキナーゼ活性を十分に低減するように、十分な量の化合物Iを含んでいなければならない。このような医薬組成物は、0.005%から100%(重量/重量)の間、任意に、0.1〜95%、任意に、1〜95%の範囲で組成物に存在する化合物Iを含み得る。
特定の実施形態において、医薬組成物は、形態A、形態B、形態C、形態D、形態E、形態F、形態G、およびそれらの混合物から成る群から選択される形態で、少なくとも0.1%、0.25%、0.5%、1%、5%、10%、25%、50%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、または99%の化合物Iを含む。別の実施形態において、形態A、形態B、形態C、形態D、形態E、形態F、形態G、およびそれらの混合物から成る群から選択される特定の多型形態は、医薬組成物に、少なくとも化合物Iの全量の0.1%、0.25%、0.5%、1%、5%、10%、25%、50%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、または99%(重量/重量)を含み得る。
化合物Iに加え、医薬組成物は、化合物Iの使用に悪影響を及ぼさない1つ以上のさらなる構成要素を含み得る。例えば、医薬組成物は、化合物Iに加え、従来の医薬担体、賦形剤、希釈剤、潤滑剤、結合剤、湿潤剤、壊変剤、流動促進剤、甘味剤、風味剤、乳化剤、可溶化剤、pH緩衝剤、芳香剤、界面安定剤、懸濁剤、および他の従来の医薬不活性剤を含み得る。具体的には、医薬組成物は、ラクトース、マンニトール、グルコース、スクロース、リン酸二カルシウム、カルボキシメチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、クロスカルメロースナトリウム、タルク、スターチ、天然ガム(例えば、アカシアゼラチンゴム)、糖蜜、ポリビニルピロリジン、セルロースおよびその誘導体、ポビドン、酢酸クロスポビドン、クエン酸ナトリウム、シクロデキストリン誘導体、ソルビタンモノラウリン酸、トリエタノールアミン酢酸ナトリウム、オレイン酸トリエタノールアミン、コラーゲン等の生体適合性高分子、エチレン酢酸ビニル、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、ポリオルソエステル、ポリ乳酸、ならびに他のこのような薬剤を含み得る。
本発明に従い、医薬組成物は、任意の様々な経路で投与するために応用され得る。例えば、本発明に従う医薬組成物は、経口的、非経口的、腹腔内、静脈内、動脈内、局所的、経皮的、舌下的、筋肉内、直腸から、経頬から、鼻腔内、リポソームから、吸入経由で、経膣的、眼内、局所送達経由で(例えば、カテーテルまたはステント)、皮下的、脂肪組織内、関節内、またはくも膜下腔内、任意に、低放出用量形態で、投与され得る。特定の実施形態において、医薬化合物は、経口的、吸入により、または皮下注射により、筋肉内、静脈内、または脳脊髄液中に直接投与される。
概して、本発明の医薬組成物は、使用される投与経路に適切な様式で製剤化された、気体、液体、半液体、ゲル、または固形形態に調製され得る。
本発明に従う組成物は、適切な量の化合物Iを含有する、錠剤、カプセル、ピル、粉末、吸入用乾燥粉末、顆粒、減菌済非経口用溶液もしくは懸濁液、経口用溶液もしくは懸濁液、油−水乳液、これらに限定されないがインプラントおよびマイクロカプセル送達系等の持続解放性配合物等の単位用量形態または多重用量形態で、ヒトおよび動物に投与されるために、任意に、提供される。このような用量形態を調製する方法は、当該技術分野において既知であり、当該技術分野の当業者には明らかであり、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,19th Ed.(Easton,Pa.:Mack Publishing Company,1995)を参照のこと。
【0049】
本明細書で使用される、単位用量形態は、当該技術分野に既知の、ヒトおよび動物の対象に適切で、かつ個別にパッケージされた物理的分離単位を指す。各単位用量は、医薬担体、ビヒクル、または希釈剤と共に、所望の治療効果を生成するのに十分な、既定の量の化合物Iを含有する。単位用量形態の例としては、アンプルおよびシリンジ、ならびに個別に包装された錠剤またはカプセルを含む。単位用量形態は、数回に分けて、またはそれらを複数で投与され得る。複数用量形態は、分離した単一用量形態で投与されるように単一容器にパッケージされた、複数の同一の単一用量形態である。多重用量形態の例としては、バイアル、錠剤もしくはカプセルのボトル、またはパイントもしくはガロンのボトルを含む。したがって、多重用量形態は、包装で分離されていない、複数の単一用量として見ることができる。
概して、本発明に従う医薬組成物の化合物Iの全量は、所望の治療効果を提供するのに十分でなければならない。本量は、時間間隔で投与されるように、単一日用量で、1日当り複数投与量で時間をおいて、または持続放出用量形態で送達され得る。化合物Iは、1mg/日から250mg/日の間の化合物、任意に、2.5mgから200mgの間の化合物I、2.5mgから150mgの間の化合物I、および任意に、5mgから100mgの間の化合物I(各例において、化合物Iの遊離塩基形態の分子量に基づく)の日用量で、患者に投与される時に、有利に使用され得る。使用され得る具体的な投与量は、1日当り2.5mg、5mg、6.25mg、10mg、12.5mg、20mg、25mg、50mg、75mg、および100mgの化合物Iを含むが、これらに限定されない。化合物Iが1日1回投与されることが望まれ得る。したがって、本発明の医薬組成物は、1mg/日から250mg/日の間の化合物I、任意に、2.5mgから200mgの化合物I、任意に、2.5mgから150mgの化合物I、および任意に、5mgから100mgの間の化合物Iを含む、単一用量形態の形態であり得る。特定の実施形態において、医薬組成物は、2.5mg、5mg、6.25mg、10mg、12.5mg、20mg、25mg、50mg、75mg、または100mgの化合物Iを含む。
【0050】
A.経口投与用の製剤
経口医薬投与形態は、化合物Iの少なくとも一部が、形態A、形態B、形態C、形態D、形態E、形態F、および形態Gから成る群から選択される形態で組成物に存在する、固形、ゲル、または液体であり得る。
ある実施形態において、化合物Iは、固形投与形態で提供される。固形投与形態の例としては、ピル、錠剤、トローチ、カプセル、顆粒、およびバルク粉末が挙げられるが、これらに限定されない。経口錠剤のより具体的な例としては、腸溶被覆、糖被覆、およびフィルム被覆であり得る、圧縮された、咀嚼ロゼンジ、トローチ、および錠剤が挙げられる。カプセルの例としては、硬および軟ゼラチンカプセルが挙げられる。顆粒および粉末は、非発泡性または発泡性形態で提供され得る。粉末は、凍結乾燥によって、または他の適切な方法によって調製され得る。
錠剤、ピル、カプセル、トローチ等は、任意に、以下のうちの1つ以上の成分または類似性質の化合物を含有し得る:結合剤、希釈剤、壊変剤、潤滑剤、流動促進剤、着色剤、甘味剤、風味剤、および湿潤剤。
使用され得る結合剤の例としては、微結晶セルロース、トラガントガム、グルコース溶液、アカシア粘液、ゼラチン溶液、スクスロース、およびスターチペーストが挙げられるが、これらに限定されない。
【0051】
使用され得る希釈剤の例としては、ラクトース、スクロース、スターチ、カオリン、塩、マンニトール、およびリン酸二カルシウムが挙げられるが、これらに限定されない。
使用され得る壊変剤の例としては、クロスカルメロースナトリウム、グリコール酸ナトリウムスターチ、アルギン酸、コーンスターチ、ポテトスターチ、ベントナイト、メチルセルロース、寒天、およびカルボキシメチルセルロースが挙げられるが、これらに限定されない。
使用され得る潤滑剤の例としては、タルク、スターチ、ステアリン酸マグネシウムまたはカルシウム、石松子、およびステアリン酸が挙げられるが、これらに限定されない。
使用され得る流動促進剤の例としては、コロイド状二酸化ケイ素が挙げられるが、これに限定されない。
使用され得る着色剤の例としては、承認、認証された任意の水溶性FDおよびC色素、それらの混合物、ならびにアルミナ水和物上に懸濁された水不溶性FDおよびC色素が挙げられるが、これらに限定されない。
使用され得る甘味剤の例としては、スクロース、ラクトース、マンニトール、およびサイクラミン酸ナトリム、ならびにサッカリン等の人工甘味料、ならびに多数の噴霧乾燥風味料が挙げられるが、これらに限定されない。
使用され得る風味剤の例としては、果物等の植物から抽出された自然風味、ならびにこれに限定されないがペパーミントおよびサリチル酸メチル等の爽やかな感覚を生み出す化合物の合成ブレンドが挙げられるが、これらに限定されない。
使用され得る湿潤剤の例としては、プロピレンモノステアリン酸グリコール、モノオレイン酸ソルビタン、ジエチレンモノラウリン酸グリコール、およびポリオキシエチレンラウリルエーテルが挙げられるが、これらに限定されない。
使用され得る抗嘔吐被覆の例としては、脂肪酸、脂肪、ワックス、シェラック、アンモニア化シェラック、および酢酸フタル酸セルロースが挙げられるが、これらに限定されない。
【0052】
使用され得るフィルム被覆の例としては、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリエチレングリコール4000、および酢酸フタル酸セルロースが挙げられるが、これらに限定されない。
投与形態が、ピル、錠剤、トローチ等の時、化合物Iは、任意に、胃の酸環境からそれらを保護する組成物で提供され得る。例えば、組成物は、胃でその元の形態を維持し、腸で活性化合物を放出する腸溶被覆で製剤化され得る。組成物は、また、制酸剤または他のそのような成分と併用しても製剤化され得る。
投与単位形態が、カプセルの時、任意に、追加で、脂肪油等の液状担体を含み得る。加えて、投与単位形態は、任意に、追加で、例えば、糖および他の腸溶性試剤の被覆等、投与単位の物理的形態を変更する様々な他の材料を含み得る。
化合物Iは、また、エリキシル剤、乳液、懸濁液、微小懸濁液、シロップ、ウエハ、スプリンクル、チューイングガム等の構成要素として投与され得る。シロップは、活性化合物に加え、任意に、甘味剤としてスクロース、ならびにある種の防腐剤、色素および着色および風味を含み得る。
代替的に、液体または半固形経口製剤は、植物油、グリコール、トリグリセリド、プロピレングリコールエステル(例えば、炭酸プロピレン)、および他のそのような担体に、活性化合物または塩を溶解または分散し、これらの溶液または懸濁液を硬または軟ゼラチンカプセルシェルに封入することによって調製され得る。他の有用な製剤は、米国特許第Re28,819号、および第4,358,603号に開示されるものを含む。
化合物Iを投与するために使用され得る経口製剤の例は、2006年9月13日に出願された、米国特許出願第11/531,671号に記載されており、本開示は、参照によりその全体が本明細書に明示的に援用される。
例示的な錠剤製剤を以下に提供する。実施例は、例示的なものであり、制限するものではないことに留意されたい。化合物Iは、1つ以上の形態A、形態B、形態C、形態D、形態E、形態F、および形態Gから成る群から選択される形態で、製剤に存在することにも留意されたい。本明細書で提供される製剤は、当該技術分野に既知のように、変形され得ることにも留意されたい。
【0053】
錠剤当り12.5mgの化合物I(遊離塩基形態の重量)
コア錠剤配合

【0054】
フィルム被覆(全体で12.0mg)
(1)オパドライII85F18422、白−ポーション1(COLORCON)
(2)オパドライII85F18422、白−ポーション2(COLORCON)
(3)オパドライII85F18422、白−ポーション3(COLORCON)

錠剤当り25mgの化合物I(遊離塩基形態の重量)
コア錠剤配合

【0055】
フィルム被覆(全体で12.0mg)
(1)オパドライII85F18422、白−ポーション1(COLORCON)
(2)オパドライII85F18422、白−ポーション2(COLORCON)
(3)オパドライII85F18422、白−ポーション3(COLORCON)

錠剤当り50mgの化合物I(遊離塩基形態の重量)
コア錠剤配合

【0056】
フィルム被覆(全体で12.0mg)
(1)オパドライII85F18422、白−ポーション1(COLORCON)
(2)オパドライII85F18422、白−ポーション2(COLORCON)
(3)オパドライII85F18422、白−ポーション3(COLORCON)

B.注射可能物、溶液および乳液
形態A、形態B、形態C、形態D、形態E、形態F、および形態Gから成る群から選択される形態または形態の混合物で存在する化合物Iは、非経口投与用に製剤化され得る。非経口投与は、概して、筋肉内または静脈内のいずれかの注射によって特徴付けされる。一定のレベルの投与量が維持されるような低放出または持続放出系の移植(例えば、米国特許第3,710,795号を参照)は、本明細書でも想定される。このような非経口組成物に含有される活性化合物の割合(%)は、投与経路および治療される疾患の徴候に大きく依存する。
注射物は、任意の従来の形態で調製され得る。これらの製剤は、すぐに注射できる減菌溶液、懸濁液、微小懸濁液、および乳液、ならびに例えば、使用直前に担体とすぐに混合することができる、皮下注射用錠剤を含む凍結乾燥された、もしくは他の粉末等の固形形態を含むが、これらに限定されない。概して、得られた製剤は、溶液、微小懸濁液、懸濁液、および乳液であり得る。担体は、水性、非水性液体、または液体に懸濁され得る固形ビヒクルであり得る。
本発明に従い、注射物と併用して使用され得る担体の例としては、水、食塩水、デキストロース、グリセロール、またはエタノールが挙げられるが、これらに限定されない。注射可能な組成物は、任意に、湿潤剤もしくは乳化剤、pH緩衝剤、安定剤、溶解増進剤、ならびに例えば、酢酸ナトリウム、モノラウリン酸ソルビタン、オレイン酸トリエタノールアミン、およびシクロデキストリン等の他のこのような薬剤等、少量の非毒性補助物質も含み得る。
静脈内投与される時の、適切な担体の例としては、生理食塩水もしくはリン酸緩衝食塩水(PBS)、ならびにグルコース、ポリエチレングリコール、およびポリプロピレングリコール等の増粘剤および可溶化剤を含有する溶液、ならびにそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
任意に、非経口調製物で使用され得る医薬的に許容される担体の例としては、水性ビヒクル、非水性ビヒクル、抗菌剤、等張剤、緩衝剤、抗酸化剤、局所麻酔薬、懸濁剤および分散剤、乳化剤、封鎖剤もしくはキレート剤、ならびに他の医薬的に許容される物質が挙げられるが、これらに限定されない。
任意に使用され得る水性ビヒクルの例としては、塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、等張性デキストロース注射液、減菌水注射液、デキストロースおよび乳酸化リンゲル注射液が挙げられる。
任意に、使用され得る非水性非経口ビヒクルの例としては、植物由来の固定油、綿実油、コーン油、胡麻油、および落花生油が挙げられる。
静菌または静真菌濃縮中の抗菌剤は、特に、調製物が複数の用量容器にパッケージされ、よって保管され、複数のアリコートが取り出されるように設計される時に、非経口調製物に添加され得る。使用され得る抗菌剤の例としては、フェノールもしくはクレゾール、水銀、ベンジルアルコール、クロロブタノール、メチルおよびプロピルp−ヒドロキシ安息香酸エステル、メチロサール、塩化ベンザルコニウム、ならびに塩化ベンゼトニウムが挙げられる。
【0057】
使用され得る等張剤の例としては、塩化ナトリムおよびデキストロースが挙げられる。使用され得る緩衝剤の例としては、リン酸およびクエン酸が挙げられる。使用され得る抗酸化剤の例としては、重硫酸ナトリウムが挙げられる。使用され得る局所麻酔薬の例としては、塩酸プロカインが挙げられる。使用され得る懸濁剤および分散剤の例としては、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびポリビニルピロリドンが挙げられる。使用され得る乳化剤の例としては、ポリソルベート80(TWEEN80)が挙げられる。金属イオン封鎖剤またはキレート剤は、EDTAを含む。
医薬担体は、任意に、水混和性ビヒクル用にエチルアルコール、ポリエチレングリコール、およびプロピレングリコール、pH調節用に水酸化ナトリウム、塩化水素酸、または乳酸をも含み得る。
非経口製剤中の化合物Iの濃度は、注射が、所望の薬理学的効果を生成するのに十分な医薬的有効量を投与するように調製され得る。使用される化合物Iおよび/または投与量の正確な濃度は、当該技術分野に既知であるように、最終的には、患者の年齢、体重、および状態に依存する。
単位用量非経口調製物は、アンプル、バイアル、または針付きシリンジ内に詰められ得る。非経口投与用の全ての調製物は、当該技術分野で既知であり、実践される通り、減菌でなければならない。
注射液は、局所および全身投与用に設計され得る。典型的には、治療有効量が、治療される組織に、化合物Iの少なくとも約0.1%w/wから最大約90%w/w以上、好ましくは、1%w/w超の濃度を含有するように製剤化される。化合物Iは、1度に投与され得るか、または時間をおいて投与されるように、数多くの少用量に分割され得る。正確な投与量および治療期間は、組成物が非経口的に投与される部位、担体、ならびに、既知の試験プロトコルを経験的に使用することによって、または生体内もしくは生体外試験データからの推定によって判断され得る、他の変動要因の関数であること理解されたい。濃度および投与量は治療される個人の年齢によっても変動し得ることに留意されたい。任意の特定の対象において、具体的な投与計画は、個人の必要性、および製剤を投与する、またはその投与を監視する者の専門的な判断に応じて、経時的に調節される必要があり得ることをさらに理解されたい。よって、本明細書に記載される濃度範囲は、例示を目的とし、特許請求される製剤の範囲または実施を制限するものではない。
化合物Iは、任意に、微細化もしくは他の適切な形態に懸濁され得る、またはより可溶な活性生成物を生成するように、もしくはプロドラッグを生成するように誘導化され得る。得られた混合物の形態は、意図された投与形式、および選択された担体もしくはビヒクルにおける化合物の可溶性を含む、数多くの要因に依存する。効果的な濃度は、疾患状態の症状を改善するのに十分であり、経験的に決定され得る。
【0058】
C.粉末
1つ以上の形態A、形態B、形態C、形態D、形態E、形態F、および形態Gから成る群から選択される形態、または形態の混合物の化合物Iは、溶液、乳液、および他の混合物として投与するために再構成され得る、粉末として調製され得る。粉末は、固形またはゲルとしても製剤化され得る。
化合物Iの粉末は、粉砕、スプレー乾燥、凍結乾燥、および当該技術分野に既知の他の技法によって調製され得る。減菌され凍結乾燥された粉末は、デキストロースを含有するリン酸ナトリウム緩衝液、または他の適切な賦形剤に化合物Iを溶解することによって調製され得る。次に、溶液を減菌濾過した後、当該技術分野の当業者に既知の条件下による凍結乾燥によって、所望の製剤を提供する。簡潔に述べると、凍結乾燥粉末は、任意に、典型的にはほぼ中性のpHで、クエン酸、リン酸ナトリウムもしくはカリウム、または当該技術分野の当業者に既知の他のこのような緩衝液等の適切な緩衝液に、約1〜20%、好ましくは、約5〜15%のデキストロース、ソルビトール、フルクトース、コーンシロップ、キシリトール、グリセリン、グルコース、スクロース、または他の適切な薬剤を溶解することによって調製され得る。それから、好ましくは、室温より高い温度、より好ましくは約30〜35℃で、化合物Iを得られた混合物に添加し、化合物Iが溶解するまで攪拌する。さらに緩衝液を添加し、所望の濃度になるまで得られた混合物を希釈する。得られた混合物は、減菌濾過されるか、または微粒子を取り除いて減菌を確保するための処理がなされ、凍結乾燥のためにバイアルに配分される。各バイアルは、化合物Iの単一投与量または複数の投与量を含有し得る。
【0059】
D.局所投与
形態A、形態B、形態C、形態D、形態E、形態F、および形態Gから成る群から選択される形態、または形態の混合物で存在する化合物Iは、局所混合物としても投与され得る。局所混合物は、局所および全身投与用に使用され得る。得られた混合物は、溶液、懸濁液、微小懸濁液、乳液等であり得、クリーム、ゲル、軟膏、乳液、溶液、エリキシル液、ローション、懸濁液、チンキ剤、ペースト、泡沫剤、エアロゾル剤、灌注剤、噴霧剤、座剤、絆創膏、皮膚パッチ、または局所投与に適切な任意の他の製剤に製剤化される。
化合物Iは、呼吸器官への局所用塗布に製剤化され得る。これらの肺製剤は、単独で、またはラクトース等の不活性担体と共に、噴霧器用にエアロゾル、溶液、乳液、得懸濁液、微小懸濁液の形態で、または吸入用の微細粉末であり得る。このような場合、製剤の粒子は、典型的には、直径が50ミクロン未満、好ましくは、10ミクロン未満である。吸入による等の局所用塗布のエアロゾルの例は、特に、喘息等の炎症疾患の治療に有用なステロイド送達のためのエアロゾルを説明する、米国特許第4,044,126号、4,414,209号、および第4,364,923号に開示されている。
化合物Iは、ゲル、クリーム、およびローションの形態で、眼等の皮膚および粘膜への局所用塗布、ならびに眼への塗布用、または嚢内もしくは脊髄内塗布用の、局部または局所適用にも製剤化され得る。局所投与は、経皮送達用、および眼もしくは粘膜への投与用、または吸入治療用にも想定される。単独で、または他の医薬的に許容される賦形剤と併用した化合物Iの鼻溶液または懸濁液も、投与され得る。
E.他の投与形態用製剤
治療される疾患状態により、形態A、形態B、形態C、形態D、形態E、形態F、および形態Gから成る群から選択される形態、または形態の混合物で存在する化合物Iは、局所塗布、経皮パッチ、および直腸投与等の、他の投与経路用に製剤化され得る。例えば、直腸投与用に医薬投与形態は、全身効果用の直腸座剤、カプセル、および錠剤である。本明細書で使用される直腸座剤とは、体温で溶ける、または軟化して、1つ以上の医薬もしくは治療活性成分を放出する直腸に挿入するための固形体を意味する。直腸座剤に利用される医薬的に許容される物質は、融点を上昇させるための基剤またはビヒクルである。基剤の例としては、ココアバター(カカオ油)、グリセリン−ゼラチン、カルボワックス(ポリオキシエチレングリコール)、ならびに脂肪酸のモノ−、ジ−、およびトリグリセリドの適切な混合物が挙げられる。様々な基剤の組み合わせが使用され得る。座剤の融点を上昇させるための薬剤としては、鮎蝋およびワックスが挙げられる。直腸座剤は、圧縮方法、または鋳型のいずれかによって調製され得る。直腸座剤の典型的な重量は、約2〜3gである。直腸投与用の錠剤およびカプセルは、同一の医薬的に許容される物質を使用して、経口投与用の製剤と同じ方法によって、製造され得る。
【0060】
化合物I多形を含むキットおよび製品
本発明は、キナーゼに関連する疾患を治療するためのキットおよび他の製品も目的とする。疾患は、キナーゼが、状態の病理および/または症状の一因となる活性を保有する、全ての状態を対象とすることを意図することに留意されたい。
一実施形態において、化合物Iの0.1質量%、0.25質量%、0.5質量%、1質量%、5質量%、10質量%、25質量%、50質量%、75質量%、80質量%、85質量%、90質量%、95質量%、97質量%、または99質量%超が、形態A、形態B、形態C、形態D、形態E、形態F、および形態Gから成る群から選択される形態で存在する化合物Iを含む医薬組成物と、本キットの使用説明書とを含むキットを提供する。任意に、組成物は、少なくとも0.1%、0.25%、0.5%、1%、5%、10%、25%、50%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、または99%の化合物Iを含む。説明書は、組成物が投与される疾患状態、保存情報、用量情報、および/または組成物をどのように投与するかの説明を指示し得る。キットは、包装材料も含み得る。包装材料は、組成物を収容するための容器を含み得る。キットは、任意に、組成物の投与用のシリンジ等、追加の構成要素も含み得る。キットは、単一、または多重用量形態で、組成物を含み得る。
別の実施形態において、化合物Iの0.1質量%、0.25質量%、0.5質量%、1質量%、5質量%、10質量%、25質量%、50質量%、75質量%、80質量%、85質量%、90質量%、95質量%、97質量%、または99質量%超が、形態A、形態B、形態C、形態D、形態E、形態F、および形態Gから成る群から選択される形態で、組成物に存在する化合物Iを含む医薬組成物と、包装材料とを含む、製品を提供する。任意に、組成物は、少なくとも0.1%、0.25%、0.5%、1%、5%、10%、25%、50%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、または99%の化合物Iを含む。包装材料は、組成物を収容するための容器を含み得る。容器は、任意に、組成物が投与される疾患状態、保存情報、用量情報、および/または組成物をどのように投与するかの説明を指示するラベルを含み得る。キットは、任意に、組成物の投与用のシリンジ等、追加の構成要素も含み得る。キットは、単一、または多重用量形態で、組成物を含み得る。
本発明に従い、キットおよび製品に使用される包装材料は、分割されたボトル、または分割されたホイルパケット等の複数の分割された容器を形成し得ることに留意されたい。容器は、例えば、紙もしくは段ボール箱、ガラスもしくはプラスチックボトルもしくは瓶、(例えば、異なる容器に入れるための、錠剤の「補給」を収容するための)再封止可能なバック、または治療計画に従いパックから押し出すための個別の用量を含むブリスターパック等の、医薬的に許容される材料から作製される、当該技術分野に既知の任意の従来の形状または形態であり得る。利用される容器は、必要とされる投与形態に依存する。例えば、従来の段ボール箱は、通常、液体懸濁液を保持するために使用されない。1つ以上の容器が、単一用量形態を市場に出すための、単一の包装で一緒に使用され得ることが可能である。例えば、錠剤は、ボトルに入れられ、ボトルは次に箱内に入れられ得る。典型的には、キットは、個々の構成要素の投与のための使用法を含む。キット形態は、別々の構成要素が、好ましくは、異なる投与形態(例えば、経口、局所、経皮、および非経口)で投与される時、異なる投与間隔で投与される時、または個々の構成要素の組み合わせの用量設定が、処方する医師によって所望される時に、特に、有利である。
本発明に従うキットの具体的な一例は、いわゆる、ブリスターパックである。ブリスターパックは、包装産業において公知であり、医薬単位用量形態(錠剤、カプセル等)の包装に広く使用されている。ブリスターパックは、好ましくは、透明のプラスチック材料のホイルで覆われた、概して、比較的硬い材料のシートから成る。包装の過程で、プラスチックホイルに、くぼみが形成される。くぼみは、詰められる個々の錠剤またはカプセルのサイズおよび形状を有するか、または詰められる複数の錠剤および/もしくはカプセルを収容するようなサイズおよび形状を有し得る。次に、錠剤またはカプセルは、適切にくぼみに配置され、比較的硬い材料のシートが、くぼみが形成された方向と反対側のホイルの表面で、プラスチックホイルに対して密封される。結果として、錠剤またはカプセルは、プラスチックホイルとシートとの間のくぼみに、所望のように、個々に密封されるか、または集合的に密封される。好ましくは、シートの強度は、錠剤またはカプセルが、くぼみがある場所のシートに開口部が形成されるくぼみに手で圧力を加えることによって、ブリスターパックから取り出せるくらいである。錠剤またはカプセルは、それから、その開口部から取り出すことができる。
キットの別の具体的な実施形態は、意図する使用の順に、1つずつ日用量を分配するように設計された分配機である。好ましくは、分配機は、計画の順守をさらに容易にするように、記憶補助具を装備する。このような記憶補助具の例は、分配された日用量の数を示す、機械式計数器である。このような記憶補助具の別の例は、液晶読出し、または例えば、最後の日用量が取り出された日付を読み上げる、および/もしくは次の用量をいつ取り出すかを指摘する、聴覚的な指摘信号と一体となった、バッテリー式のマイクロチップメモリである。
【実施例】
【0061】
実施例1:5−(3−(エチルスルホニル)フェニル)−3,8−ジメチル−N−(1−メチルピペリドン−4−イル)−9h−ピリド[2,3−b]インドール−7−カルボキサミド(化合物I)の調製
【0062】
【化1】

3−(6−クロロ−3−メチル−2−ニトロ−4−(トリフルオロメチル)フェニル)−2−フルオロ−5−メチルピリジン:2−フルオロ−3−ヨード−5−ピコリン(15.0g、63ミリモル)を、NMP(115mL)中の3,4−ジクロロ−2−ニトロ−6−(トリフルオロメチル)−トルエン(52.1g、190ミリモル)および銅(12.1g、190ミリモル)の攪拌した懸濁液に、190℃で、NMP(20mL)中の溶液として、2時間、液滴で添加した。反応の完了後(2.5時間)、混合物を室温に冷却し、濾過し、NMP(3×5mL)、次いで、EtOAc(1×100mL)で洗浄した。濾液をEtOAc(400mL)で希釈し、濁った溶液を得た。有機層を飽和NaHCO3(150mL)で分割し、懸濁液/乳液を得た。溶解度を向上させるため、H2O(50mL)およびMeOH(50mL)を添加した。水層をEtOAc(5×150mL)で洗浄した。有機層を混合し、乾燥(MgSO4)させて、真空で濃縮した。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィ(98:2トルエン:EtOAc)で精製し、黄褐色の固体として表題化合物を得た(11.4g、52%)。1H NMR(400MHz,DMSO−d6):δ8.34(s,1H),8.26(s,1H),7.86−7.89(m,1H),2.4(s,3H),2.3(s,3H).MS(ES)[m+H]C149ClF422に対する計算値、349;実測値349.2。
3−(3’−(エチルスルホニル)−4−メチル−3−ニトロ−5−(トリフルオロメチル)ビフェニル−2−イル)−2−フルオロ−5−メチルピリジン:化合物83(6.0g、17.2ミリモル)、3−エチルスルホニルフェニルボロン酸(4.79g、22.4ミリモル)、ビス(ジベンジリデンアセトン)Pd(0)(1.48g、2.6ミリモル)、トリシクロヘキシルホスフィン(1.45g、5.2ミリモル)、Cs2CO3(14.0g、43ミリモル)、およびジオキサン(60mL)の混合物を、還流で、4.5時間、加熱した。完了後、反応物を室温に冷却し、濾過し、ジオキサンですすいで、真空で濃縮した。得られた油状物をEtOAc(75mL)中で再構成し、H2O(1×30mL)およびブライン(1×30mL)で洗浄し、乾燥(MgSO4)させ、真空で濃縮した。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィ(4:1ヘキサン/EtOAc)で精製し、黄褐色の固体として表題化合物を得た(6.5g、78%)。1H NMR(400MHz,DMSO−d6):δ8.15(s,1H),8.04(s,1H),7.90−7.93(m,1H),7.80−7.82(m,1H),7.60−7.70(m,3H),3.1−3.2(m,2H),2.49(s,3H),2.25(s,3H),0.85(t,3H)。MS(ES)[m+H]C2218424Sに対する計算値、483;実測値483.3。
【0063】
3’−(エチルスルホニル)−2−(2−フルオロ−5−メチルピリジン−3−イル)−4−メチル−5−(トリフルオロメチル)ビフェニル−3−アミン:化合物84(6.4g、13.3ミリモル)、鉄(3.7g、66.3ミリモル)、HOAc、(32mL)、およびH2O(11mL)の混合物を、2時間、80℃で加熱した。完了後、反応物を真空で濃縮した。残留物をジクロロメタン(100mL)で再構成し、濾過し、ジクロロメタン(3×30mL)ですすいだ。有機層を飽和NaHCO3(1×100mL)およびブライン(1×50mL)で洗浄し、乾燥(MgSO4)させ、濾過して、真空で濃縮した。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィ(1:1ヘキサン/EtOAc)で精製して、黄褐色固体として表題化合物を得た(5.0g、83%)。1H NMR(400MHz,DMSO−d6):δ7.93(s,1H),7.67−7.7.71(m,2H),7.53(t,1H),7.46−7.48(m,1H),7.42(s,1H),6.93(s,1H),5.09(s,2H),3.11(q,2H),2.27(s,3H),2.21(s,3H),0.85(t,3H)。MS(ES)[m+H]C2220422Sに対する計算値、453;実測値453.3。
5−(3−(エチルスルホニル)フェニル)−3,8−ジメチル−7−(トリフルオロメチル)−9H−ピリド[2,3−b]インドール酢酸:化合物85(4.9g、10.8ミリモル)をHOAc(35mL)に溶解し、還流で、3時間加熱した。反応混合物を室温に冷却して、結晶生成物を得た。得られた懸濁液を濾過し、HOAc(3×5mL)、次いで、H2O(3×10mL)ですすいで、固体を真空で乾燥させ、白色固体として表題化合物を得た(3.73g、70%)。NMR分析は、生成物がモノ酢酸塩として単離されたことを確認した。1H NMR(400MHz,DMSO−d6):δ12.35(s,1H),12.0(s,1H),8.39(s,1H),8.15(s,1H),8.04−8.09(m,2H),7.90(t,1H),7.51(s,1H),7.42(s,1H),3.43(q,2H),2.76(s,3H),2.28(s,3H),1.91(s,3H),1.18(t,3H)。MS(ES)[m+H]C2219322Sに対する計算値、433;実測値433.3。
【0064】
5−(3−(エチルスルホニル)フェニル)−3,8−ジメチル−9H−ピリド[2,3−b]インドール−7−カルボン酸:化合物86(3.6g、7.3ミリモル)を、濃縮H2SO4(30mL)に溶解し、120℃で、3時間、加熱した。反応を室温に冷却し、氷上に注ぎ、白い沈殿物を得た。得られた懸濁液を濾過し、H2O(3×30mL)、次いで、IPA(3×10mL)ですすぎ、真空で乾燥させ、白色固体として表題化合物を得た(3.2g、定量収率)。1H NMR(400MHz,DMSO−d6):δ12.20(s,1H),8.36(s,1H),8.12(s,1H),8.02−8.07(m,2H),7.89(t,1H),7.61(s,1H),7.54(s,1H),3.43(q,2H),2.85(s,3H),2.28(s,3H),1.18(t,3H)。MS(ES)[m+H]C222024Sに対する計算値、409;実測値409.3。
5−(3−(エチルスルホニル)フェニル)−3,8−ジメチル−N−(1−メチルピペリジン−4−イル)−9H−ピリド[2,3−b]インドール−7−カルボキサミド:化合物87(11.3g、27.6ミリモル)、1−メチルピペリジン−4−アミン(9.47g、82.9ミリモル)、HATU(13.66g、35.9ミリモル)、DIEA(17.88g、138ミリモル)、DMF(250mL)、およびDCM(250mL)の混合物を、室温で、30分、攪拌した。得られた懸濁液を濾過し、DMF(10mL×4)ですすいで、真空で濃縮した、残留物をDMSO(77mL)に溶解し、濾過し、濾液を分取HPLC(TFAを含むACN/H2O)で精製した。HPLC精製後、純粋な画分を混合し、重炭酸ナトリウムで塩基性化し、真空で半量に濃縮した。得られた懸濁液を濾過し、H2O(200mL×5)ですすぎ、真空で乾燥させ、白色固体として化合物Iを得た(11.41g、81.8%)。
化合物Iの塩酸塩を、以下の通り調製した。ACN(175mL)およびH2O(175mL)中の化合物I(8.7g)の攪拌懸濁液に、1N HCl(18.1mL、1.05当量)を添加し、黄色の溶液を得た。15分後、溶液をドライアイス/アセトン上で凍結し、凍結乾燥して、黄色の固形体として、5−(3−(エチルスルホニル)フェニル)−3,8−ジメチル−N−(1−メチルピペリジン−4−イル)−9H−ピリド[2,3−b]インドール−7−カルボキサミド塩酸塩を得た(9.02g、96.7%)。
化合物Iの結晶塩酸塩を、以下の通り調製した。IPA(2.5mL)およびH2O(2.5mL)中の化合物I(0.55g)の攪拌懸濁液に、12.1N HCl(1.05〜1.10当量)を添加して、黄色の溶液を得た。45分間、攪拌した後、結晶化が起こり、IPA(15mL)を室温でさらに添加した。得られた懸濁液を、一晩、攪拌した。固体を濾過して単離し、60℃の真空で乾燥させて、黄褐色から金色の固体として、5−(3−(エチルスフホニル)フェニル)−3,8−ジメチル−N−(1−メチルピペリジン−4−イル)−9H−ピリド[2,3−b]インドール−7−カルボキサミド塩酸塩を得た(0.51g、87%)。
【0065】
100mLのMeCN:水(1:1、v/v)に、2.52gの化合物IのHCl塩を攪拌しながら溶解することによって、化合物IのHCl塩から、化合物Iを調製した。この混合物を濾過して、少量の非溶解粒子を除去した。溶液を清澄化するために、固形のNaHCO3(1.99g、5.0当量)を一度に添加し、次いで、周囲温度で、15分間、さらに攪拌した。回転蒸発により懸濁液を約半量に濃縮し、得られた溶液を濾過し、水(2×25mL)で洗浄した。濾過ケーキを、24時間、真空下(30インチHg(762mmHg))、周囲温度で乾燥させ、2.12gの化合物Iを得た(収率94.3%)。
実施例2:試料の特性決定
以下の分析法およびそれらの組み合わせを使用して、調製された固形相の物理的特性を判断した。
【0066】
1.計測手段

【0067】
2.示差走査熱量測定分析(DSC)
アルミニウム皿で重量を量り、穴をあけた蓋で覆って、クリンプした試料で、示差走査熱量測定(DSC)分析を実施した。分析条件は、10℃/分で徐々に上昇する30℃から300〜350℃であった。
試料を、固有の形態または相互変換が観察されるかを判断するために、加熱−冷却−加熱実験に供した。化合物Iは、へらで攪拌しながら形態Aロットを十分に混合し、粉末をシンチレーションバイアルで数分回転させることによって調製された。表17および18に記載する通りに、変換/熟成を促進するように、観察される変移の僅かに下/上の温度を5分間保持する等温で、実験を設定した。同様に、非結晶、または安定した形態の代わりに、動態学的に好まれる形態を生じ得るクエンチ冷却にではなく、結晶成長を促進するように、制御冷却プロファイル(−5℃/分)が使用された。
3.熱分量分析(TGA)
アルミナるつぼに入れて重量を量り、10℃/分のランプ速度で30℃から230℃まで分析した試料で、熱分量分析(TGA)を実施した。
4.X線粉末回折(XRPD)
X線粉末回折(XRPD)用の試料を、Si原点復帰超微小試料ホルダに設置し、以下の条件を使用して分析した。

【0068】
5.カールフィッシャー分析(KF)
HYDRANAL−Coulomat ADと共に固形試料を機器に添加することにより、含水量を判断した。電量滴定によって、水のマイクログラムを判断した。
6.水分吸着分析
最初に、平衡重量が達成されるまで、または最大4時間、相対湿度0%、25℃で試料を乾燥させることによって、水分吸着実験を全ての試料において実施した。次いで、試料を、10%の段階で、相対湿度10%から90%までの等温(25℃)吸着に供した。次いで、試料は、最大4時間、各点で、漸近的重量に平衡化させた。吸着後、相対湿度85%から0%(25℃で)までの脱離走査が、−10%の段階で行われ、再度、最大4時間、漸近的重量に平衡化させた。試料を80℃で、1時間、乾燥させ、得られた固体をXRPDで分析した。
7.核磁気共鳴(NMR)
内部参照のため、試料(2〜10mg)を0.05%テトラメチルシラン(TMS)と共に、DMSO−d6に溶解した。5mm広帯域監視(1H−X)Z勾配プローブを使用して、1H NMRスペクトルを500MHzで取得した。スペクトルの取得に、20ppmのスペクトル幅、1.0秒反復速度、および16〜64過渡の30°パルスを使用した。
実施例3:異なる溶媒における化合物Iの近似溶解度
多形スクリーニングに適切な一次および二元溶媒を選択するために、選択されたMeCN、ジオキサン、アセトン、MtBE、EtOH、EtOAc、 IPAc、IPA、THF、2−MeTHF、MEK、DMF、AcOH、MeOH、シクロヘキサン、ヘプタン、DCM、トルエン、NMP、およびDMAcの20の異なる溶媒で、化合物Iの溶解度スクリーニングを評価した。1〜4mgの化合物Iを、磁気攪拌棒を備えた2ドラム(約7.4ml)の透明なバイアルに充填し、完全な溶解が観察されるまで、または最大6mLが添加されるまで、溶媒を55℃に加熱しながら、250μL毎添加した。溶解度試験の要約を、表10に示す。表10は、使用された溶媒、および室温および55℃で物質を溶解する能力を示す。溶媒および他の試薬は、ACSまたはHPLCグレードで、受領したままの状態で使用された。
【0069】
実施例4:単一溶媒結晶化
5mgから20mgの化合物Iをバイアルに量り入れ、昇温状態で、物質が完全に溶解されるまで、十分な溶媒を添加した。0.45ミクロンのシリンジフィルタを使用した熱濾過後、バイアルを高速冷却手順で16時間、冷凍庫(−20℃)に配置するか、または20℃/時間の速度で、室温で冷却し、低速冷却手順で16時間、本温度で攪拌した。表12に本実験を要約する。
実施例5:二元溶媒結晶化
約20mgの化合物Iをバイアルに量り入れ、昇温状態で、物質が完全に溶解されるまで溶媒を添加した。0.45ミクロンのシリンジフィルタを使用した熱濾過後、溶液が濁るまで、またはバイアルが一杯になるまで、貧溶媒を少量ずつ添加した。バイアルを冷凍庫(−20℃)に16時間、配置した。沈殿が生じなかったため、穏やかな流れの窒素気流を使用して、乾燥するまで試料を蒸発させた。蒸発からの全ての固体を、室温の30インチHg(762mmHg)の真空で、16時間、乾燥させた。乾燥後、試料は、形態用にXRDPによって分析される。表13に実験の要約を提供する。
実施例6:化合物IのHCl塩の遊離塩基化実験
多形スクリーニング用の化合物Iを得るために、化合物IのHCl塩(2.52g)を、攪拌しながら100mLのMeCN:水(1:1、v/v)に溶解した。少量の非溶解粒子を除去するために、本混合物を濾過した。溶液を清澄化するために、固形NaHCO3(1.99g、5.0当量)を一度に添加し、次いで、周囲温度で、15分間、さらに攪拌した。回転蒸発により、懸濁液を約半量に濃縮し、得られた溶液を濾過し、水(2×25mL)で洗浄した。濾過ケーキを24時間、真空下(30インチHg(762mmHg))の周囲温度で乾燥させて、2.12gの化合物Iを得た(収率94.3%)。
反応性結晶化を達成しようとする試みで、様々な溶液を使用して、化合物Iの追加の遊離塩基実験が調査された。化合物IのHCl塩をEtOH:水、およびMeOH:水に入れたが、塩基を追加する前に、急激な沈殿が観察された。炭酸ナトリウムを1Mの水溶液として添加した。塩基を追加した後、反応混合物を15分間攪拌し、濾過した。濾過後、物質を周囲温度、および30インチHg(762mmHg)の真空で乾燥させた。表14は、これらの実験に使用された溶媒量、およびXRPDの結果を示す。
実施例8:形態Aのスケールアップ調製
4つの別々の実験が実施され、全てが形態Aをもたらした。表19に実験の詳細を要約する。
【0070】
実験1
化合物IのHCl塩(2.52g)を、磁気攪拌棒を備えた250mL−3N RBFに充填し、次いで、周囲温度で一度にMeCNおよび水(それぞれ50mL、約20v/v)を添加した。得られた溶液をWhatman#1濾紙を通してポリッシュ濾過し、次いで、NaHCO3(1.99g、5.0当量)を添加し、さらに周囲温度で15分間、攪拌した。得られたスラリーを、減圧下で濃縮し、次いで、固体を濾過した。それから、濾過ケーキを周囲温度で24時間乾燥させ、XRPDで、化合物Iの形態Aを得た(2.2g、収率94.3%)。形態Aを検出した。
実験2
化合物I(形態A、0.244g)を、磁気攪拌棒を備えた20mLのシンチレーションバイアルに充填し、40℃で、IPA(8mL、32vol.)を一度に添加した。それから、得られた混合物を、一週間、40℃で、スラリー化した。固体を濾過して単離し、XRPDによる分析に供する前に、16時間、周囲温度の真空下で乾燥させた。形態Aを検出した。
実験3
化合物I(形態A、0.313g)を、磁気攪拌棒を備えた20mLのシンチレーションバイアルに充填し、次いで、40℃で、ジオキサン(10mL、32vol.)を一度に添加した。それから、得られた混合物を、一週間、40℃で、スラリー化した。固体を濾過して単離し、XRPDによる分析に供する前に、16時間、周囲温度の真空下で乾燥させた。形態Aを検出した。
実験D
化合物I(形態A、0.309g)を、磁気攪拌棒および熱電対を備えた20mLのシンチレーションバイアルに充填し、次いで、40℃で、アセトン(10mL、32vol.)を一度に添加した。それから、得られた混合物を、一週間、40℃で、スラリー化した。固体を濾過して単離し、XRPDによる分析に供するする前に、16時間、周囲温度の真空下で乾燥させた。形態Aを検出した。
実施例9:スラリー実験
50〜60mgの化合物Iの形態Aを2ドラム(約7.4ml)のコハク色バイアルに量り分け、物質を2mLの溶媒でスラリー化した。周囲温度または40℃のいずれかで、スラリー実験を実施した。1日後、一週間後、および2週間後、試料をスラリーから得た。スラリー実験の結果を表15および16に詳細に示す。
結果は、形態Aおよび/または形態Cが、ほとんどの結晶化から単離されたことを示し、ジオキサンスラリー中の形態Aは、形態Aおよび形態Dの混合物と一致するパターンを示した。形態Dは、周囲温度および40℃で、ジオキサンスラリーから事前に観察された。これらの結果は、形態AがMeCNから、形態CがTHFまたはMeOHから優先的に単離されることと一致する。
【0071】
実施例10:溶解度試験
pH3.2、および周囲温度で、脱イオン水および20mMリン酸緩衝液中に物質を懸濁することによって、化合物Iの形態Aの溶解度を決定した。約40mgの化合物Iの形態Aを、磁気攪拌棒を備える2ドラム(約7.4ml)のコハク色バイアルに充填し、次いで、脱イオン水またはリン酸緩衝液(2.0mL)を一度に添加した。試料を16時間攪拌しながら平衡化させ、次いで、遠心分離した。一定分量の上澄み液をHPLCで分析し、固体を濾過して単離し、XRPDによる分析のため、周囲温度の真空下で乾燥させた。試料をさらに6日間攪拌させ、HPLCで濃度を測定した。表10に実験の詳細および結果を要約する。
【0072】
表9:化合物Iの形態AからGまでの分析結果の要約

【0073】
^発熱事象を示す。
*これらの形態は、DSCの加熱−冷却実験によって単離された。
【0074】
表10:化合物I形態Aの溶解度

【0075】
表11:化合物Iの初期の溶解度

【0076】
c−ヘキサン=シクロヘキサン
---=非溶解
「一部」は、少量の物質の溶解が認められたことを示す。

表12:高速および低速冷却手順を使用した化合物Iの単一溶媒結晶化

【0077】
「N/A」は、試料が分析されなかったことを示す。

表13:高速冷却手順および一次溶媒としてDMFを使用した化合物Iの二元溶媒結晶化

【0078】
表14.様々な溶媒における化合物HClの中和を介した化合物Iの反応結晶化

【0079】
表15:化合物Iのスラリー実験

【0080】
*これらの試料は、限定された物質を提供し、最終的な形態の判断は、全ての実施形態において可能であるわけではなかった。

表16:周囲温度での化合物Iの形態AおよびCの追加のスラリー実験

【0081】
表17:高融解形態の分離が可能かを判定するための化合物Iの形態AにおけるDSC実験

【0082】
^発熱事象を示す。
*2つの事象の強度比における差異は、289での事象が299での事象の強度より非常に高いことが観察された。

表18:高溶解形態を単離するための化合物Iの形態AにおけるDSC実験

【0083】
*追加の小さいピークが149℃および228 ℃で観察された。

表19:化合物Iの形態A、C、DおよびEのスケールアップ調製

【0084】
表20:化合物Iの形態Aの湿度室試験


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:

を有する化合物Iの多型形態であって、前記多型形態は、形態A、形態B、形態C、形態D、形態E、形態F、および形態Gから成る群から選択される、多型形態。
【請求項2】
前記多型形態は、約5.4、17.3、および20.2度の2シータ(°2θ)で、有意な回折ピークを含むX線粉末回折パターン(CuKα)を有する二水和物である形態Aである、請求項1に記載の多型形態。
【請求項3】
前記X線粉末回折パターン(CuKα)は、約16.7、20.7、および25.2°2θで、有意な回折ピークをさらに含む、請求項2に記載の多型形態。
【請求項4】
前記X線回折パターン(CuKα)は、実質的に、図1に示す通りである、請求項2に記載の多型形態。
【請求項5】
前記形態Aは、約293℃を中心とする吸熱を含む、示差走査熱量測定(DSC)曲線をさらに有する、請求項2に記載の多型形態。
【請求項6】
前記DSC曲線は、約67℃を中心とする吸熱と、約229℃までを中心とする2つの吸熱と、約280℃を中心とする発熱とをさらに含む、請求項5に記載の多型形態。
【請求項7】
前記形態Aは、実質的に、図2に示す通りの示差走査熱量測定(DSC)曲線をさらに有する、請求項2に記載の多型形態。
【請求項8】
前記形態Aは、
水とアセトニトリルの1:1の混合物に化合物Iを溶解し、
塩基を添加し、
溶媒の量を低減することにより調製される、請求項2に記載の多型形態。
【請求項9】
前記多型形態は、約5.1、10.3、および15.4°2θで、有意な回折ピークを含むX線粉末回折パターン(CuKα)を有する無水物である形態Bである、請求項1に記載の多型形態。
【請求項10】
前記X線粉末回折パターン(CuKα)は、約20.6、24.2、および31.8°2θで、有意な回折ピークをさらに含む、請求項9に記載の多型形態。
【請求項11】
前記X線回折パターン(CuKα)は、実質的に、図6に示す通りである、請求項9に記載の多型形態。
【請求項12】
前記多型形態は、約5.4、20.2、および20.8°2θで、有意な回折ピークを含む、X線粉末回折パターン(CuKα)を有する無水物である形態Cである、請求項1に記載の多型形態。
【請求項13】
前記X線粉末回折パターン(CuKα)は、約4.9、16.2、および25.3°2θで、有意な回折ピークをさらに含む、請求項12に記載の多型形態。
【請求項14】
前記X線回折パターン(CuKα)は、実質的に、図7に示す通りである、請求項12に記載の多型形態。
【請求項15】
前記形態Cは、約291℃を中心とする吸熱を含む、示差走査熱量測定(DSC)曲線をさらに有する、請求項12に記載の多型形態。
【請求項16】
前記DSC曲線は、約68℃を中心とする発熱をさらに含む、請求項15に記載の多型形態。
【請求項17】
前記形態Cは、実質的に、図8に示す通りの示差走査熱量測定(DSC)曲線を有する、請求項12に記載の多型形態。
【請求項18】
前記形態Cは、ジメチルホルムアミド(DMF)に化合物Iを溶解し、貧溶媒を添加することにより調製される、請求項12に記載の多型形態。
【請求項19】
前記貧溶媒は、アセトニトリル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、シクロヘキサン、ヘプタン、およびメチルテトラヒドロフランから成る群から選択される、請求項18に記載の多型形態。
【請求項20】
前記多型形態は、約5.3、6.2、および17.4°2θで、有意な回折ピークを含むX線粉末回折パターン(CuKα)を有する無水物である形態Dである、請求項1に記載の多型形態。
【請求項21】
前記X線粉末回折パターン(CuKα)は、約8.9、9.8、および20.0°2θで、有意な回折ピークをさらに含む、請求項20に記載の多型形態。
【請求項22】
前記X線回折パターン(CuKα)は、実質的に、図12に示す通りである、請求項20に記載の多型形態。
【請求項23】
前記形態Dは、約291℃を中心とする吸熱を含む、示差走査熱量測定(DSC)曲線をさらに有する、請求項20に記載の多型形態。
【請求項24】
前記DSC曲線は、約282℃を中心とする第2の吸熱をさらに含む、請求項23に記載の多型形態。
【請求項25】
実質的に、図13に示す通りの示差走査熱量測定(DSC)曲線を有する、請求項20に記載の多型形態。
【請求項26】
形態Dは、ジオキサンを用いて化合物Iをスラリー化することにより調製される、請求項20に記載の多型形態。
【請求項27】
前記多型形態は、約5.1、5.3、および16.4°2θで、有意な回折ピークを含むX線粉末回折パターン(CuKα)を有する無水物である形態Eである、請求項1に記載の多型形態。
【請求項28】
前記X線粉末回折パターン(CuKα)は、約9.7、および20.8°2θで、有意な回折ピークをさらに含む、請求項27に記載の多型形態。
【請求項29】
前記X線回折パターン(CuKα)は、実質的に、図16に示す通りである、請求項27に記載の多型形態。
【請求項30】
前記形態Eは、約291℃を中心とする吸熱を含む示差走査熱量測定(DSC)曲線をさらに有する、請求項27に記載の多型形態。
【請求項31】
前記DSC曲線は、約68℃を中心とする、第2の吸熱をさらに含む、請求項30に記載の多型形態。
【請求項32】
前記形態Eは、実質的に、図17に示す通りの示差走査熱量測定(DSC)曲線をさらに有する、請求項27に記載の多型形態。
【請求項33】
前記形態Eは、アセトン中で化合物Iをスラリー化することにより調製される、請求項27に記載の多型形態。
【請求項34】
前記多型形態は、約6.6、16.7、および17.1°2θで、有意な回折ピークを含むX線粉末回折パターン(CuKα)を有する無水物である形態Fである、請求項1に記載の多型形態。
【請求項35】
前記X線粉末回折パターン(CuKα)は、約6.2、および11.2°2θで、有意な回折ピークをさらに含む、請求項34に記載の多型形態。
【請求項36】
前記X線回折パターン(CuKα)は、実質的に、図20に示す通りである、請求項34に記載の多型形態。
【請求項37】
前記形態Fは、約289℃、および約299℃を中心とする2つの吸熱を含む示差走査熱量測定(DSC)曲線を有する、請求項34に記載の多型形態。
【請求項38】
前記DSC曲線は、約149℃を中心とする発熱をさらに含む、請求項37に記載の多型形態。
【請求項39】
前記形態Fは、実質的に、図21に示す通りの示差走査熱量測定(DSC)曲線を有する、請求項34に記載の多型形態。
【請求項40】
前記形態Fは、化合物Iを加熱することにより調製される、請求項34に記載の多型形態。
【請求項41】
前記化合物Iの加熱は、加熱温度を約280℃に保持することをさらに含む、請求項34に記載の多型形態。
【請求項42】
前記多型形態は、約15.9、17.1、および21.4°2θで、有意な回折ピークを含むX線粉末回折パターン(CuKα)を有する無水物である形態Gである、請求項1に記載の多型形態。
【請求項43】
前記X線粉末回折パターン(CuKα)は、約21.0、および22.2°2θで、有意な回折ピークをさらに含む、請求項42に記載の多型形態。
【請求項44】
前記X線回折パターン(CuKα)は、実質的に、図23に示す通りである、請求項42に記載の多型形態。
【請求項45】
前記形態Gは、約299℃を中心とする吸熱を含む示差走査熱量測定(DSC)曲線をさらに有する、請求項42に記載の多型形態。
【請求項46】
前記形態Gは、実質的に、図24に示す通りの示差走査熱量測定(DSC)をさらに有する、請求項42に記載の多型形態。
【請求項47】
前記形態Gは、化合物Iを加熱することにより調製される、請求項42に記載の多型形態。
【請求項48】
前記化合物Iの加熱は、加熱温度を約290℃に保持することをさらに含む、請求項47に記載の多型形態。
【請求項49】
医薬組成物であって、活性成分として、式:

の化合物Iと、
医薬的に許容される担体と、を含み、化合物Iの少なくとも一部は、形態A、形態B、形態C、形態D、形態E、形態F、および形態Gから成る群から選択される多型形態として存在する、医薬組成物。
【請求項50】
前記多型形態の一部は、約0.1%から約100%の間である、請求項49に記載の医薬組成物。
【請求項51】
前記一部は、1%を上回る、請求項49に記載の医薬組成物。
【請求項52】
前記一部は、10%を上回る、請求項49に記載の医薬組成物。
【請求項53】
前記一部は、90%を上回る、請求項49に記載の医薬組成物。
【請求項54】
医薬製造における化合物Iの使用であって、化合物Iの少なくとも一部は、形態A、形態B、形態C、形態D、形態E、形態F、および形態Gから成る群から選択される多型形態として存在する、化合物Iの使用。
【請求項55】
キナーゼが疾患状態の病理および/または病状の一因となる活性を有する前記疾患状態を治療するための医薬製造における化合物Iの使用であって、化合物Iの少なくとも一部は、形態A、形態B、形態C、形態D、形態E、形態F、および形態Gから成る群から選択される多型形態として存在する、化合物Iの使用。
【請求項56】
癌を治療するための医薬製造における化合物Iの使用であって、化合物Iの少なくとも一部は、形態A、形態B、形態C、形態D、形態E、形態F、および形態Gから成る群から選択される多型形態として存在する、化合物Iの使用。
【請求項57】
前記癌は、扁平上皮癌、星状細胞腫、カポジ肉腫、神経膠芽腫、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、膀胱癌、頭頸部癌、黒色腫、卵巣癌、前立腺癌、乳癌、神経膠腫、結腸直腸癌、尿生殖器癌、胃腸癌、甲状腺癌、皮膚癌、腎癌、直腸癌、結腸癌、子宮頸癌、中皮腫、膵癌、肝癌、子宮癌、脳腫瘍癌、尿膀胱癌、ならびに多発性骨髄腫、慢性骨髄性白血病および急性リンパ性白血病を含む血液癌から成る群から選択される、請求項56に記載の使用。
【請求項58】
認知症関連疾患、アルツハイマー病、およびキナーゼに関連する症状を予防または治療するための医薬製造における化合物Iの使用であって、化合物Iの少なくとも一部は、形態A、形態B、形態C、形態D、形態E、形態F、および形態Gから成る群から選択される多型形態として存在する、化合物Iの使用。
【請求項59】
前記認知症関連疾患は、前頭側頭型認知症パーキンソン型、グアム−パーキンソン認知症候群、HIV認知症、神経原線維タングル病理関連の疾患、半認知症状態、血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症、およびボクサー認知症から成る群から選択される、請求項58に記載の使用。
【請求項60】
関節炎を治療するための医薬製造における化合物Iの使用であって、化合物Iの少なくとも一部は、形態A、形態B、形態C、形態D、形態E、形態F、および形態Gから成る群から選択される多型形態として存在する、化合物Iの使用。
【請求項61】
患者の細胞増殖を阻害するための医薬製造における化合物Iの使用であって、化合物Iの少なくとも一部は、形態A、形態B、形態C、形態D、形態E、形態F、および形態Gから成る群から選択される多型形態として存在する、化合物Iの使用。
【請求項62】
式:

を有する、化合物Iのヘキサフルオロリン酸(HPF6)塩。
【請求項63】
前記多型形態は、約5.3、10.6、および19.6°2シータ(°2θ)で、有意な回折ピークを含むX線粉末回折パターン(CuKα)を有する、請求項62に記載の化合物IのHPF6塩の多型形態。
【請求項64】
前記X線粉末回折パターン(CuKα)は、約10.3、15.9、および17.7°2θで、有意な回折パターンをさらに含む、請求項63に記載の多型形態。
【請求項65】
前記X線回折パターン(CuKα)は、実質的に、図26に示す通りである、請求項63に記載の多型形態。
【請求項66】
約281℃を中心とする吸熱を含む示差走査熱量測定(DSC)曲線をさらに有する、請求項63に記載の多型形態。
【請求項67】
前記DSC曲線は、50℃付近に広範な吸熱をさらに含む、請求項64に記載の多型形態。
【請求項68】
前記多型形態は、実質的に、図27に示す通りの示差走査熱量測定(DSC)曲線をさらに有する、請求項64に記載の多型形態。
【請求項69】
前記多型形態は、
HPF6で化合物Iを処理することにより調製される、請求項64に記載の多型形態。
【請求項70】
医薬組成物であって、活性成分として、式:

を有する、化合物IのHPF6塩と、
医薬的に許容される担体と、を含む、医薬組成物。
【請求項71】
医薬製造における、請求項62に記載の化合物IのHPF6塩の使用。
【請求項72】
キナーゼが疾患状態の病理および/または病状の一因となる活性を有する前記疾患状態を治療するための医薬製造における、請求項62に記載の化合物IのHPF6塩の使用。
【請求項73】
癌を治療するための医薬製造における、請求項62に記載の化合物IのHPF6塩の使用。
【請求項74】
前記癌は、扁平上皮癌、星状細胞腫、カポジ肉腫、神経膠芽腫、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、膀胱癌、頭頸部癌、黒色腫、卵巣癌、前立腺癌、乳癌、神経膠腫、結腸直腸癌、尿生殖器癌、胃腸癌、甲状腺癌、皮膚癌、腎癌、直腸癌、結腸癌、子宮頸癌、中皮腫、膵癌、肝癌、子宮癌、脳腫瘍癌、尿膀胱癌、ならびに多発性骨髄腫、慢性骨髄性白血病および急性リンパ性白血病を含む血液癌から成る群から選択される、請求項73に記載の使用。
【請求項75】
認知症関連疾患、アルツハイマー病、およびキナーゼに関連する病状を予防する、または治療するための医薬製造における、請求項62に記載の化合物IのHPF6塩の使用。
【請求項76】
前記認知症関連疾患は、前頭側頭型認知症パーキンソン型、グアム−パーキンソン認知症候群、HIV認知症、神経原線維タングル病理関連の疾患、半認知症状態、血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症、およびボクサー認知症から成る群から選択される、請求項75に記載の使用。
【請求項77】
関節炎を治療するための医薬製造における、請求項62に記載の化合物IのHPF6塩の使用。
【請求項78】
患者の細胞増殖を阻害するための医薬製造における、請求項62に記載の化合物IのHPF6塩の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【公表番号】特表2011−518171(P2011−518171A)
【公表日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−505146(P2011−505146)
【出願日】平成21年4月14日(2009.4.14)
【国際出願番号】PCT/US2009/040556
【国際公開番号】WO2009/129259
【国際公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【出願人】(000002934)武田薬品工業株式会社 (396)
【Fターム(参考)】