説明

6’−O−シアリルラクトースおよび中間体の製造

本発明は、式(I)で示される三糖およびその塩の合成ならびにその合成に用いる新規中間体に関した。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なオリゴ糖およびその誘導体ならびにこれらのオリゴ糖の製造方法、特に大規模での製造方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
過去数十年の間、人乳オリゴ糖の製造および商業化に対する関心は、着実に増加している。人乳オリゴ糖の重要性は、抗菌活性、抗ウイルス活性、免疫系活性および認知発達増強活性といったようなその独特の生物活性に直接結びついている[1]。
【0003】
ジシアリルラクト-N-テトラオース、3'-O-シアリル-3-O-フコシルラクトース、6'-O-シアリルラクトース、3'-O-シアリルラクトース、6'-O-シアル化-ラクト-N-ネオテトラオース、3'-O-シアル化-ラクト-N-テトラオーなどのシアル化された人乳オリゴ糖が、人乳の主成分である。
【0004】
上に列挙したシアル化人乳オリゴ糖のうち、シアル酸残基は、常に、ガラクトースの末端3'-O-および/または6'-O-位、あるいはα-グリコシド結合を介して非末端糖残基の6-O-位に結合する。
【0005】
現在まで、単離、バイオテクノロジーおよび合成的方法論を用いて大量のシアル化人乳オリゴ糖を得ることは不可能である。シアル酸ドナーの性質により、シアル化人乳オリゴ糖の化学合成は、炭水化物化学のうちで最も挑戦しがいのある分野のひとつである。一般に、立体選択的グリコシル化は、隣接基関与を介して達成されるが、シアル酸のC-3位における置換基の欠如は、そのような選択肢を妨げる。したがって、立体選択的シアル化は、シアル酸ドナー−アクセプターの適合性、動力学的効果および溶媒効果を注意深く選択することを介して達成されなければならない。さらに、シアル酸のアノマー位におけるカルボン酸部分の存在は、立体選択的α-シアル化にとって好ましくない立体効果および電気的効果をも生み出す。カルボン酸基の強い電子吸引効果は、β脱離を介して強い副反応を引き起こす。
【0006】
6'-O-シアリルラクトース(6'-SL、O-(N-アセチル-α-ノイラミノシル)-(2→6)-O-β-D-ガラクトピラノシル-(1→4)-D-グルコース、反応工程式1)と呼ばれる最も単純なシアル化人乳オリゴ糖の1つに関する背景技術を再考察することを介して、シアル化オリゴ糖の生物学的重要性と合成困難性の両方を実証することができる。
【化1】

6'-O-シアリルラクトースは、母乳中に高濃度で見出されるシアル化人乳オリゴ糖の1つである。
【0007】
プレバイオティクス効果、抗菌効果、抗ウイルス効果、免疫系効果および認知発達増強効果などの6'-O-シアリルラクトースの生物学的役割が実証されている[1]。これらの重要な特徴から、6'-SLは、栄養および治療薬工業のための大規模製造および製品開発にとっての魅力的なターゲットである。6'-O-シアリルラクトースは、化学的[2]、酵素的[3]およびバイオテクノロジー的[4]方法によって合成されるか、または天然源から単離される[5]。しかしながら、これらの方法は、効果的な精製方法がないこと、効果で毒性の強い試薬を用いること、および多くの合成ステップを伴うことなどによって、スケールアップにとっては魅力的ではない。
【0008】
6'-O-シアリルラクトース[2a-c]、そのNa、K、MgおよびCa塩[2d, e]またはその中間体[2f-j]に対する化学合成法が、いくつか開発されている。要約すると、これらの方策は、グリコシルハライド、チオグリコシドまたはジエチルホスファイトドナー活性化を用いて、4',6'-糖ジオールまたは6'-糖アルコールのいずれかの立体選択的6'-O-シアル化を介して6'-O-シアル化ラクトースを提供する。シアン化水銀、臭化水銀および炭酸銀などのシアル化のための非常に高価であるかあるいは毒性が高いかのいずれかである化学物質を使用することが、これらの方法を、大規模研究および製造にとって、あまり魅力的でないものにする理由の1つである。効率的でない立体制御および/または収率もまた同様に、これらの方法を大規模技術の開発にはあまり適していないものにする。さらに、厳しい精製困難性は、これまでに列挙した合成法のすべてを特徴付けるものである。
【0009】
6'-O-シアリルラクトースの酵素生成の場合、グリコシルトランスフェラーゼおよびシアリダーゼが、使用する酵素として好ましい[3]。これらの複合酵素システムは、6'-O-シアリルラクトースの製造のスケールアップにとって非常に高価な方法を意味する。同様に、シアリダーゼは、その位置選択性および立体選択性の欠如のために、大規模製造法において成功裏に用いることができなかった。低い収率および困難な精製を含むプロトコルは、工業的規模の技術開発にとって、同様に、妨害となるものである。
【0010】
ヒトおよびその他の哺乳動物の乳からの6'-SLの単離は、多数の類似のオリゴ糖の存在のために、ミリグラム量であってさえもそう簡単ではない。これまでに、HPLC法のみが、天然源からの6'-Sの単離のためにL開発されている[5]。
【0011】
遺伝子組み換えされた細菌、酵母またはその他の微生物を用いるいくつかのバイオテクノロジー的方法も記載されている[4]。このような方法は、商品化の機会に限定があるために、規制プロセスにおいて重大な欠点を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、6'-O-シアリルラクトースおよびその他のシアル化生物活性オリゴ糖の工業的製造に適した最初の商業的アプローチである。成功する方策は、新規なシアル酸ドナー−アクセプターペア、新規なシアル酸ドナー、新規なジオール型ラクトースアクセプター、関連する結晶性中間体、安価で毒性の無いアクチベーターおよびロバストな精製法の導入に基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
発明の概要
本発明の第1の態様は、
a)一般式3:
【化2】

[式中、
R1は、-OR2(ここで、R2は、接触水素化によって除去しうる基である)であるか、またはR1は、-SR3(ここで、R3は、必要に応じて置換されたアルキル、必要に応じて置換されたアリールおよび必要に応じて置換されたベンジルから選ばれる)であるか、またはR1は、-NH-C(R”)=C(R')2(ここで、各R'は、互いに独立して、-CN、-COOH、-COO-アルキル、-CO-アルキル、-CONH2、-CONH-アルキルおよび-CON(アルキル)2から選ばれる電子吸引基であるか、または2つのR'基が一緒になって、-CO-(CH2)2-4-CO-となり、それらが結合する炭素原子とともに5-7員のシクロアルカン-1,3-ジオンを形成し(このジオンにおいて、メチレン基のいずれかは、1または2個のアルキル基で必要に応じて置換される)、およびR”は、Hまたはアルキルである)である;
R4は、必要に応じて置換されたアシルおよび1〜3個のメトキシ基で置換されたベンジルから選ばれる]
で示されるアクセプターと、一般式4:
【化3】

[式中、
R5 は、必要に応じて置換されたアシルである;
R8は、-NHAcおよび-NAc2から選ばれる;
Qは、COO-アルキル(ここで、アルキルは、必要に応じて置換される);および
Xは、脱離基である]
で示されるドナーとの反応により、一般式2:
【化4】

[式中、R1、R4、R5、R8およびQは、前記と同意義である]
で示される化合物を得る;
b)一般式2の化合物の脱保護により、一般式1:
【化5】

[式中、R1は、前記と同意義である]
で示される化合物またはその塩を得る;
c)続いて、一般式1で示される化合物またはその塩を、6'-O-シアリルラクトースまたはその塩に変換する;
ステップを含む、6'-O-シアリルラクトースまたはその塩の製造方法に関する。
【0014】
本発明の第2の態様は、6'-O-シアリルラクトースZn2+塩を提供する。
本発明の第3の態様は、6'-O-シアリルラクトース有機塩に関する。
本発明の第4の態様は、栄養添加物として使用するための、本発明の第2および第3の態様の新規な6'-O-シアリルラクトース塩を提供する。
本発明の第5の態様は、医薬添加物として使用するための、本発明の第2および第3の態様の新規な6'-O-シアリルラクトース塩に関する。
【0015】
本発明の第6の態様は、1種以上の本発明の第2および第3の態様の6'-O-シアリルラクトース塩を含む栄養組成物を提供する。
本発明の第7の態様は、1種以上の本発明の第2および第3の態様の6'-O-シアリルラクトース塩を含む医薬組成物に関する。
【0016】
本発明の第8の態様は、一般式1A:
【化6】

[式中、R2は、接触水素化によって除去しうる基であり、ベンジル、4-メチルベンジル、4-クロロベンジルおよび1-ナフチルメチルが好ましい;およびOR2は、β型である]
で示される化合物を提供する。
【0017】
本発明の第9の態様は、Zn2+、K+、Ca2+、Mg2+、Ba2+、Fe2+、Mn2+、Cu2+塩および有機塩から選ばれる塩形態である、一般式1B:
【化7】

[式中、R2は、接触水素化によって除去しうる基である]
で示される化合物に関する。
【0018】
本発明の第10の態様は、一般式2A:
【化8】

[式中、R2は、接触水素化によって除去しうる基である;
R4およびR5は、互いに独立して、必要に応じて置換されたアシルである;
R8は、-NHAcおよび-NAc2から選ばれる;および
Qは、-COO-アルキル(ここで、アルキルは、必要に応じて置換される)である]
で示される化合物を提供する。
【0019】
本発明の第11の態様は、一般式2C:
【化9】

[式中、-OR2は、β型である;R2は、接触水素化によって除去しうる基であり、ベンジル、4-メチルベンジル、4-クロロベンジルおよび1-ナフチルメチルが好ましい;および
R4は、イソブチリル、ピバロイルおよび必要に応じて置換されたベンゾイルから選ばれ、ベンゾイルが好ましい]
で示される化合物に関する。
【0020】
本発明の第12の態様は、一般式2D:
【化10】

[式中、R2は、接触水素化によって除去しうる基である;
R4 は、1〜3個のメトキシ基で置換されたベンジルおよびHから選ばれる;
R5は、必要に応じて置換されたアシルおよびHから選ばれる;
R8は、-NHAcおよびNAc2から選ばれる;および
Qは、-COO-アルキル(ここで、アルキルは、必要に応じて置換される)および保護または非保護形態のいずれかの-COOHから選ばれる;
ただし、Qが、保護または非保護形態のいずれかの-COOHであり、R8が、-NHAcである場合、R4およびR5の両方が同時にHであることはできない]
で示される化合物を提供する。
【0021】
本発明の第13の態様は、一般式4Aまたは4B:
【化11】

[式中、R5は、必要に応じて置換されたアシルであり、アセチルが好ましい;
R6は、C2-6アルキル、C3-6シクロアルキルおよび必要に応じて置換されたベンジルから選ばれ、エチル、イソプロピル、t-ブチル、ベンジルおよびシクロヘキシルから選ばれるのが好ましい;
R7は、置換ベンジルであり、4-クロロベンジルまたは4-ブロモベンジルが好ましい;および
Qは、-COO-アルキル(ここで、アルキルは、必要に応じて置換される)であり、-COOMeが好ましい]
で示される化合物に関する。
【0022】
本発明の第14の態様は、シアリルドナーとして用いるための、一般式4C:
【化12】

[式中、R5は、必要に応じて置換されたアシルでありアセチルが好ましい;および
Qは、-COO-アルキル(ここで、アルキルは、必要に応じて置換される)であり、-COOMeが好ましい]
で示される化合物を提供する。
【0023】
本発明の第15の態様は、一般式3A:
【化13】

[式中、R2は、接触水素化によって除去しうる基である;および
R4は、1〜3個のメトキシ基で置換されたベンジルおよび必要に応じて置換されたアシルから選ばれるが、ただし、アセチルは排除される]
で示される化合物に関する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
発明の詳細な記載
本明細書の記載を通して、単独で、またはもう1つの原子もしくは基に結合して、用語「アルキル」は、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、s-ブチル、t-ブチルなどの1〜6個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖炭化水素基を意味する。
「シクロアルキル」は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルおよびシクロヘキシルなどの3〜6個の炭素原子を有する環式炭化水素残基を意味する。
【0025】
本明細書において、用語「アリール」は、フェニルまたはナフチルなどのホモ芳香族基を意味する。アリールが、フェニルを意味するのが好ましい。
本明細書において、用語「アシル」は、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、ピバロイル、ベンゾイルなどのR-C(=O)-(ここで、Rは、H、アルキルまたはアリールである)を意味する。アルキルおよびアリール残基の両方が、置換されてもよい。
本明細書および請求の範囲において、用語「必要に応じて置換された」は、当該基が、置換基を有してもよく、あるいは非置換であってもよいことを意味する。
【0026】
本明細書および請求の範囲において、用語「置換された」は、当該基が鎖または環の一般的化学的性質を変更する基で置換されることを意味する。置換基を用いて、安定性、溶解度および結晶形成能力などの分子の性質を全体として変更することができる。当業者であれば、与えられた状況における代替物として用いることができる、類似の大きさおよび荷電特性をもつ他の適当な置換基を認識することができる。
【0027】
用語「アルキル」、「シクロアルキル」、「アリール」および「アシル」に関連してより一般的には、用語「必要に応じて置換された」は、当該基が、アルキル(シクロアルキル、アリールおよび芳香族アシルについてのみ)、ヒドロキシ、アルコキシ(すなわち、アルキル-オキシ)、カルボキシ、オキソ(ケトまたはアルデヒド官能性を形成する)、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニル、ホルミル、アリール、アリールオキシカルボニル、アリールオキシ、アリールアミノ、アリールカルボニル、アミノ、モノ-およびジアルキルアミノ、カルバモイル、モノ-およびジアルキル-アミノカルボニル、アルキルカルボニルアミノ、シアノ、アルカノイルオキシ、ニトロ、アルキルチオおよびハロゲン(F、Cl、Br、I)から選ばれる基で、1回または数回、好ましくは1〜5回、より好ましくは1〜3回置換されてもよいことを意味する。
【0028】
「接触水素化によって除去しうる保護基」は、触媒量のパラジウム、ラニーニッケルまたは水素化分解における使用が知られているもう1つの適当な金属触媒の存在下で、そのC-O結合が、水素の添加によって切断されてOH基が生成される基を意味する。このような保護基は、当業者に周知であり、[7]に詳細に議論されている。適当な保護基として、ベンジル、ジフェニルメチル(ベンズヒドリル)、1-ナフチルメチル、2-ナフチルメチルまたはトリフェニルメチル(トリチル)基が挙げられ、それぞれの基は、アルキル、アルコキシ、フェニル、アミノ、アシルアミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ニトロ、カルボキシル、アルコキシカルボニル、カルバモイル、N-アルキルカルバモイル、N,N-ジアルキルカルバモイル、アジド、ハロゲンアルキルまたはハロゲンから選ばれる1つ以上の基で必要に応じて置換されてよい。このような置換が存在する場合、芳香環上であるのが好ましい。特に好ましい保護基は、ベンジルまたは1-ナフチルメチル基であり、両者は、フェニル、アルキルまたはハロゲンから選ばれる1つ以上の基で必要に応じて置換される。保護基が、非置換のベンジル、非置換の1-ナフチルメチル、4-クロロベンジルおよび4-メチルベンジルから選ばれるのが非常に好ましい。これらの特に好ましい保護基およびより好ましい保護基は、水素化分解の副産物が、トルエン、1-メチルナフタレン、または置換トルエンもしくは置換1-メチルナフタレンのみであるという利点を有する。このような副産物は、トン規模であっても、蒸発および/または抽出過程を介して水溶性オリゴ糖産物から容易に除去することができる。
【0029】
本願発明の第1の態様は、
a)一般式3:
【化14】

[式中、
R1は、-OR2(ここで、R2は、接触水素化によって除去しうる基である)であるか、またはR1は、-SR3(ここで、R3は、必要に応じて置換されたアルキル、必要に応じて置換されたアリールおよび必要に応じて置換されたベンジルから選ばれる)であるか、またはR1は、-NH-C(R”)=C(R')2(ここで、各R'は、互いに独立して、-CN、-COOH、-COO-アルキル、-CO-アルキル、-CONH2、-CONH-アルキルおよび-CON(アルキル)2から選ばれる電子吸引基であるか、または2つのR'基が一緒になって、-CO-(CH2)2-4-CO-となり、それらが結合する炭素原子とともに5-7員のシクロアルカン-1,3-ジオンを形成し(このジオンにおいて、メチレン基のいずれかは、1または2個のアルキル基で必要に応じて置換される)、およびR”は、Hまたはアルキルである)である;
R4は、必要に応じて置換されたアシルおよび1〜3個のメトキシ基で置換されたベンジルから選ばれる]
で示されるアクセプターと、一般式4:
【化15】

[式中、
R5 は、必要に応じて置換されたアシルである;
R8は、-NHAcおよび-NAc2から選ばれる;
Qは、COO-アルキル(ここで、アルキルは、必要に応じて置換される);および
Xは、脱離基である]
で示されるドナーとの反応により、一般式2:
【化16】

[式中、R1、R4、R5、R8およびQは、前記と同意義である]
で示される化合物を得ること;
b)一般式2の化合物の脱保護により、一般式1:
【化17】

[式中、R1は、前記と同意義である]
で示される化合物またはその塩を得ること;
c)続いて、一般式1で示される化合物またはその塩を、6'-O-シアリルラクトースまたはその塩に変換すること;
というステップを含む、6'-O-シアリルラクトースまたはその塩の製造方法に関する。
【0030】
第1の態様のステップc)に関し、一般式1で示される化合物またはその塩は、アノマー位を脱保護するように処理されて、6'-O-シアリルラクトースまたはその塩を得ることができる。特に、一般式1で示される化合物またはその塩を、
i)R1が、-OR2(ここで、R2は、接触水素化によって除去しうる基である)である場合、接触還元;
ii)R1が、-SR3(ここで、R3は、必要に応じて置換されたアルキル、必要に応じて置換されたアリールおよび必要に応じて置換されたベンジルから選ばれる)である場合、チオ親和性試薬による活性化、次いで、加水分解;
iii)R1が、-NH-C(R”)=C(R')2(ここで、各R'は、-CN、-COOH、-COO-アルキル、-CO-アルキル、-CONH2、-CONH-アルキルおよび-CON(アルキル)2から選ばれる電子吸引基であるか、または2つのR'基が一緒になって、-CO-(CH2)2-4-CO-となり、それらが結合する炭素原子とともに5-7員のシクロアルカン-1,3-ジオンを形成し(このジオンにおいて、メチレン基のいずれかは、1または2個のアルキル基で必要に応じて置換される)、およびR”が、Hまたはアルキルである)である場合、アミンまたはハロゲンによる処理、次いで、中性または弱酸性pHでの加水分解;
に付すことによって、6'-SLまたはその塩を保護することができる。
【0031】
1つの実施態様において、R1は、-OR2(ここで、R2は、接触水素化によって除去しうる基、すなわち、必要に応じて置換されたベンジル、ジフェニルメチル(ベンズヒドリル)、1-ナフチルメチル、2-ナフチルメチルまたはトリフェニルメチル(トリチル)基であり、除去は、典型的には、プロトン性溶媒またはプロトン性溶媒の混合物中で行われる)を表す。プロトン性溶媒は、水、酢酸またはC1-C6アルコールから選ばれる。1種以上のプロトン性溶媒と、プロトン性溶媒と部分的または完全に混和する1種以上の適当な非プロトン性有機溶媒(THF、ジオキサン、酢酸エチル、アセトンなど)の混合物を適用してもよい。溶媒系として、水、1種以上のC1-C6アルコール、または水と1種以上のC1-C6アルコールとの混合物を用いるのが好ましい。いずれかの濃度で炭水化物誘導体を含む溶液または使用した該溶媒と炭水化物誘導体との懸濁液もまた適用可能である。反応混合物を、パラジウム、ラニーニッケルまたはいずれかの他の適当な金属触媒、好ましくはパラジウム/炭素もしくはパラジウムブラックなどの触媒の存在下、1〜50 barの水素雰囲気下、10〜100℃、好ましくは20〜60℃の温度範囲にて、反応が完了するまで撹拌する。触媒金属濃度は、一般に、炭水化物の重量に基づいて、0.1 %〜10 %の範囲である。触媒濃度が、0.15 %〜5 %の範囲であるのが好ましく、0.25 %〜2.25 %であるのがより好ましい。水素が、シクロヘキセン、シクロヘキサジエン、ギ酸またはギ酸アンモニウムから原位置(in situ)で生成される場合、移動水素化を行ってもよい。水素化分解の動態を改善するために、有機または無機塩基/酸、および/または塩基性および/または酸性イオン交換樹脂を添加することもできる。前駆体の置換ベンジル部分にハロゲン置換基が存在する場合、塩基性物質の使用が好ましい。好ましい有機塩基として、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、アンモニア、カルバミン酸アンモニウム、ジエチルアミンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。好ましい有機/無機酸として、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、クロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、HCl、HBrが挙げられるが、これらに限定されるものではない。上記で提案された条件は、純粋な6'-SLを生じさせる、単純で、簡便で、精巧な溶媒の除去を可能にする。結晶、非晶質固体、スラリーまたは濃水溶液における慣例の仕上げ手順を用いて、反応混合物から6'-SLおよびその塩を単離することができる。
【0032】
6'-O-シアリルラクトースまたはその塩を製造するもう1つの実施態様において、一般式1におけるR1は、-SR3であり、R3は、必要に応じて置換されたアルキル、必要に応じて置換されたアリールまたは必要に応じて置換されたベンジルである。チオグリコシドは、グリコシド化反応において、典型的に、ドナーとして働き、水の存在下でのグリコシド化を行って、対応する還元糖の形成をもたらす。典型的なグリコシル化において、一般式1のチオグリコシドを水または水を含む双極性非プロトン溶媒に溶解し、次いで、水銀(II)塩、Br2、I2、NBS、NIS、トリフルオロメタンスルホン酸またはトリフラート塩あるいはその混合物などのチオ親和性アクチベーターを添加する。活性化された中間体は、反応環境中に存在する水と容易に反応し、6'-O-シアリルラクトースまたはその塩が生成される。
【0033】
もう1つの実施態様において、R1が、-NH-C(R”)=C(R')2(ここで、各R'は、-CN、-COOH、-COO-アルキル、-CO-アルキル、-CONH2、-CONH-アルキル、-CONH-ベンジル、-CON(アルキル)2および-CON(ベンジル)2から選ばれる電子吸引基であるか、または2つのR'基が一緒になって、-CO-(CH2)2-4-CO-となり、それらが結合する炭素原子とともに5-7員のシクロアルカン-1,3-ジオンを形成し(このジオンにおいて、メチレン基のいずれかは、1または2個のアルキル基で必要に応じて置換される)、およびR”が、Hまたはアルキルである、一般式1で示される化合物の非環式ビニル性アミン基の除去によって、6'-O-シアリルラクトースおよびその塩を製造することができる。アミノ化合物またはハロゲンで処理することによって、エナミン構造を分割することができる。反応に用いる溶媒として、メタノール、エタノール、水、酢酸、酢酸エチルが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、これらの混合物もまた適用することができる。アミノ基転移に用いるアミノ化合物は、典型的には、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミンなどの水性または無水の1級アミン;水和ヒドラジン、酢酸ヒドラジンなどのヒドラジン;ヒドロキシルアミン誘導体;水性アンモニア溶液または無水条件中有のアンモニアガスである。塩素ガスまたは臭素などのハロゲンを用いることによっても、非環式ビニル性アミンを切断することができる。両方のタイプの反応から、その中性またはわずかに酸性pH(pH=4〜7)下での加水分解によって6'-O-シアリルラクトースが得られる、アノマー位におけるアミン官能性が得られる。
【0034】
もし、6'-O-シアリルラクトースが上述の反応において得られるならば、その塩に変換され、要すれば、6'-O-シアリルラクトースの塩は、もう1つの6'-O-シアリルラクトースの塩に変換される。
【0035】
好ましい実施態様において、一般式1で示される化合物におけるR1は、-OR2(ここで、R2は、接触水素化によって除去しうる基であり、好ましくは、ベンジル、4-メチルベンジル、4-クロロベンジルおよび1-ナフチルメチルから選ばれる)である。
【0036】
本願発明の第1の態様のステップb)に関し、一般式2の化合物において、4'-OH以外のすべての官能基は、炭水化物化学において頻繁に用いられる保護基によって保護される。保護基を除去することにより、成功裏に、部分保護三糖(下記参照)および少なくとも一般式1で示される化合物またはその塩を生じさせるか、あるいは、1つのステップで、直接一般式1で示される化合物またはその塩を導くことができる。本明細書で用いる脱保護ステップのすべての組合せは、どのような順序でも行うことができ、したがって、保護基の除去に必要な適当な条件を選択すること、ならびに連続した脱保護ステップを行うことは、当業者の権限に該当する。
【0037】
第1の態様のステップb)における1つの実施態様において、一般式2A:
【化18】

[式中、R2は、接触水素化によって除去しうる基である;
R4およびR5は、互いに独立して、必要に応じて置換されたアシルである;
R8は、-NHAcまたは-NAc2から選ばれる;および
Qは、-COO-アルキル(ここで、アルキルは、必要に応じて置換される)である]
で表される、一般式2の化合物のグループから、以下のステップ:
a)塩基触媒エステル交換反応、次いで、塩基性加水分解、任意の酸性化および任意の塩形成;または
b)塩基性加水分解、任意の酸性化および任意の塩形成;
にしたがって、一般式1で示される化合物またはその塩を得ることができる。
【0038】
用語「塩基触媒エステル交換脱保護」は、20〜100℃にて、NaOMe、NaOEt、KOtBuなどのアルコラートの存在下、メタノール、エタノール、プロパノール、t-ブタノールなどのアルコール溶媒中で、ヒドロキシルからのアシル保護基が除去される反応を意味する。アルコールおよびアルコラートは、適合すべきである。生成物の粒径をコントロールするため、およびゲル形成を避けるために、トルエンまたはキシレンなどの共溶媒の使用が有利である。この条件下では、O-アシルのみを容易に脱保護することができ、R8が-NAc2である場合、1つのアセチルも除去される。Q基をエステル交換してもよい。好ましい実施態様において、メタノール中で、触媒量のNaOMeを用いる(ゼンプレンの脱-O-アシル化)。用語「塩基性加水分解」は、一般に、0〜100℃の温度範囲で、均一または不均一な反応条件下の、水、アルコールまたは水-有機溶媒混合物中での塩基触媒加水分解を意味する。塩基の選択は、一般に、たとえば、LiOH、NaOH、KOH、Ba(OH)2、K2CO3、塩基性イオン交換樹脂、水酸化テトラアルキルアンモニウムなどの強塩基である。水溶液の形態においても同様に塩基を用いることができる。この条件は、O-アシルに影響を及ぼし、Qがエステルである場合、Qも加水分解され、R8が-NAc2である場合、アセチルも除去される。好ましい実施態様において、塩基はNaOHであり、溶媒はメタノールである。
【0039】
「任意の酸性化」は、塩基触媒エステル交換脱保護または塩基性加水分解の後に、一般式1で示される化合物の酸性型が必要である場合に酸性化ステップが行われうることを意味することを意図する。
【0040】
「任意の塩形成」は、酸性型の一般式1で示される化合物が、必要に応じて、塩基触媒エステル交換脱保護または塩基性加水分解後に形成された塩とは相違する、その塩に変換されることを意味する。一般式1で示される化合物の塩は、いずれかの化学量論比における、一般式1で示される化合物の負に荷電した酸残基と、カチオンとの会合イオン対を意味する。本明細書で用いるカチオンは、正に荷電した原子または分子でありうる。カチオンは、無機カチオンであっても有機カチオンであってもよい。好ましい無機カチオンは、アンモニウムイオン、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンおよび遷移金属イオンであり、より好ましくは、Na+、K+、Ca2+、Mg2+、Ba2+、Fe2+、Zn2+、Mn2+およびCu2+であり、最も好ましくは、K+、Ca2+、Mg2+、Ba2+、Fe2+およびZn2+である。正に荷電した塩基性無機化合物は、関連する有機カチオンであってよい。このような正に荷電した有機分子は、すべてプロトン化型のジエチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イミダゾール、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、ベンジルアミン、エチレンジアミン、メグルミン、ピロリジン、コリン、トリス-(ヒドロキシメチル)-メチルアミン、N-(2-ヒドロキシエチル)-ピロリジン、N-(2-ヒドロキシエチル)-ピペリジン、N-(2-ヒドロキシエチル)-ピペラジン、N-(2-ヒドロキシエチル)-モルホリン、L-アルギニン、L-リシン、L-アルギニンもしくはL-リシンユニットを有するオリゴペプチドまたはN末端に遊離アミノ基を有するオリゴペプチドなどである。酸性型の一般式1で示される化合物から、一般式1で示される化合物の無機および有機塩を得ることができる。アルコールまたはアルコール/水中の遊離酸の溶液のpHを塩基で8,5〜11に調節する;塩基が無機塩基である場合、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物および遷移金属水酸化物ならびに炭酸塩および重炭酸塩から選ぶことができる。次いで、混合物をアルコールで希釈し、減圧濃縮する。次いで、得られたスラリーを濾過し、アルコールで洗浄する。
【0041】
好ましい実施態様において、一般式2A[式中、R2は、ベンジル、4-メチルベンジル、4-クロロベンジルおよび1-ナフチルメチルから選ばれる;R4は、イソブチリル、ピバロイルおよび必要に応じて置換されたベンゾイルから選ばれ、ピバロイルおよびベンゾイルが好ましい;R5は、アセチルである;Qは、-COOCH3である;および-OR2は、β型である]で示される化合物が脱保護される。
【0042】
第1の態様のステップb)におけるもう1つの実施態様において、一般式2で示される化合物に属する一般式2B:
【化19】

[式中、R2は、接触水素化によって除去しうる基である;
R4は、必要に応じて置換されたアシルであるが、ただし、アセチルは排除される;および
R8は、-NHAcおよび-NAc2から選ばれる]
で示される化合物を、選択的酸性脱保護に付して、一般式2C:
【化20】

[式中、R2およびR4は、前記と同意義である]
で示される化合物を得、次いで、
a)塩基触媒エステル交換反応、次いで、塩基性加水分解、任意の酸性化および任意の塩形成;または
b)塩基性加水分解、任意の酸性化および任意の塩形成;
に付して、一般式1で示される化合物またはその塩を得る。
【0043】
一般式2Bで示される化合物から、繊細な方法で、一般式2Cで示される化合物を得ることができる。本発明者らは、他のアシルと比べて、アセチルの酸性エステル交換に向かう反応性がより高いことから、ラクトース部分がアセチルとは相違するアシル(R4は、必要に応じて置換されたアシルであるが、ただし、アセチルは排除される)によって保護される場合に、シアル酸残基(R5は、アセチルである)のアセチル基が、選択的に除去されうることを認識した。一般的には、触媒量〜過剰量で存在してもよい、酢酸、トリフルオロ酢酸、HCl、ギ酸、硫酸、過塩素酸、シュウ酸、p-トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、カチオン交換樹脂、好ましくは強酸などから選ばれる(これらに限定されるものではない)酸の存在下、C1-6アルコールまたはC1-6アルコールの混合物、好ましくは、メタノールおよびエタノール中で、脱保護ステップを行うことができる。TLCが反応の完了もしくは、ほぼ完了を示すまで(温度、濃度およびpHに応じて、約2時間〜3日間)、0〜20℃、好ましくは5〜10℃の温度にて、加水分解を行ってもよい。
【0044】
好ましい実施態様において、-OR2は、β型であり、R2は、ベンジル、4-メチルベンジル、4-クロロベンジルまたは1-ナフチルメチルであり、R4は、イソブチリル、ピバロイルおよび必要に応じて置換されたベンゾイルから選ばれ、ベンゾイルが好ましく、選択的酸性脱保護の酸触媒は、硫酸である。
【0045】
第1の態様のステップb)におけるもう1つの実施態様において、一般式2D:
【化21】

[式中、R2は、接触水素化によって除去しうる基である;
R4は、1〜3個のメトキシ基で置換されたベンジルである;
R5は、必要に応じて置換されたアシルである;
R8は、-NHAcまたは-NAc2から選ばれる;および
Qは、-COO-アルキル(ここで、アルキルは、必要に応じて置換される)である]
で表される、一般式2の化合物のグループを、以下のステップ:
a)もう1つの一般式2D[式中、R2は、前記と同意義である;R4は、1〜3個のメトキシ基で置換されたベンジルである;R5は、Hである;R8は、-NHAcである;およびQは、-COO-アルキル(ここで、アルキルは、必要に応じて置換される)である]で示される化合物が得られる塩基触媒エステル交換反応;次いで、
aa)もう1つの一般式2D[式中、R2は、前記と同意義である;各R4およびR5 は、Hである;R8は、-NHAcである;Qは、-COO-アルキル(ここで、アルキルは、必要に応じて置換される)である]で示される化合物が得られるジクロロジシアノキノン(DDQ)または硝酸セリウム(IV)アンモニウム(CAN)媒介性酸化、次いで、塩基性加水分解、任意の酸性化および任意の塩形成;または
ab)もう1つの一般式2D[式中、R2は、前記と同意義である;R4は、1〜3個のメトキシ基で置換されたベンジルである;R5は、Hである;R8は、-NHAcである;Qは、プロトン化または脱プロトン化された-COOHである]で示される化合物が得られる塩基性加水分解、任意の酸性化および任意の塩形成、次いで、ジクロロジシアノキノン(DDQ)または硝酸セリウム(IV)アンモニウム(CAN)媒介性酸化;
または
b)もう1つの一般式2D[式中、R2は、前記と同意義である;R4は、Hである;R5は、必要に応じて置換されたアシルである;R8は、-NHAcおよび-NAc2から選ばれる;およびQは、-COO-アルキル(ここで、アルキルは、必要に応じて置換される)である]で示される化合物が得られるジクロロジシアノキノン(DDQ)または硝酸セリウム(IV)アンモニウム(CAN) 媒介性酸化;次いで
ba)塩基触媒エステル交換反応、次いで、塩基性加水分解、任意の酸性化および任意の塩形成;または
bb)塩基性加水分解、任意の酸性化および任意の塩形成;
または
c)もう1つの一般式2D[式中、R2は、前記と同意義である;R4は、1〜3個のメトキシ基で置換されたベンジルである;R5は、Hである;R8は、-NHAcである;Qは、プロトン化または脱プロトン化された-COOHである]で示される化合物が得られる塩基性加水分解、任意の酸性化および任意の塩形成、次いで、ジクロロジシアノキノン(DDQ)または硝酸セリウム(IV)アンモニウム(CAN)媒介性酸化;
にしたがって脱保護して、一般式1で示される化合物またはその塩を得る。
【0046】
ある特定の一般式2Dで示される化合物における用語「プロトン化または脱プロトン化された形態の-COOH」は、一般式2Dで示される化合物中のカルボン酸基が、それらが酸であることを表す酸性(プロトン化)型であるか、または一般式2Dで示される化合物中のカルボン酸基が、それらが塩であることを表すカルボン酸塩(-COO-)型であるかのいずれかであることを意味することを意図し、塩中の正に荷電した対イオンは、無機または有機カチオンであってよい。これらの無機および有機カチオンは、上記特定したものである。
【0047】
保護された6'-O-シアリルラクトースは、ラクトース部分に、1、2または3個のメトキシ置換ベンジル基、好ましくはp-メトキシベンジル(R4=PMB)を含んでもよい。メトキシ置換ベンジルエーテルが、非置換のベンジルエーテルと比べて、より容易に酸化的に切断されることは周知であり、したがって、アグリコンまたはQがベンジル基を含む場合、選択的脱保護が可能である。典型的な酸化剤は、ジクロロジシアノキノン(DDQ)および硝酸セリウム(IV)アンモニウム(CAN)であり、反応は、水の存在下、有機溶媒中、好ましくはジクロロメタンまたはアセトニトリル中で進行し、メトキシ-ベンジルエーテル保護基の速やかな除去が起こる。
【0048】
本発明の第1の態様のステップa)に関し、一般式3[式中、R1は、-OR2(ここで、R2は、接触水素化によって除去しうる基である)であるか、またはR1は、-SR3(ここで、R3は、必要に応じて置換されたアルキル、必要に応じて置換されたアリールまたは必要に応じて置換されたベンジルである)であるか、またはR1は、-NH-C(R”)=C(R')2(ここで、各R'は、互いに独立して、-CN、-COOH、-COO-アルキル、-CO-アルキル、-CONH2、-CONH-アルキルおよび-CON(アルキル)2から選ばれる電子吸引基であるか、または2つのR'基が一緒になって、-CO-(CH2)2-4-CO-となり、それらが結合する炭素原子とともに5-7員のシクロアルカン-1,3-ジオンを形成し(このジオンにおいて、メチレン基のいずれかは、1または2個のアルキル基で必要に応じて置換される)、およびR”は、Hまたはアルキルである)である;R4は、必要に応じて置換されたアシルまたは1、2または3個のメトキシ基で置換されたベンジルである]で示される化合物を、一般式4[R5=必要に応じて置換されたアシルである;R8=-NHAcまたは-NAc2である;Qは、-COO-アルキル(ここで、アルキルは、必要に応じて置換される)である;Xは、脱離基である]で示される化合物と反応させて、一般式2[R4は、必要に応じて置換されたアシルまたは1〜3個のメトキシ基で置換されたベンジルである;R5は、必要に応じて置換されたアシルである;R8は、-NHAcまたはNAc2である;およびQは、-COO-アルキル(ここで、アルキルは、必要に応じて置換される)である]で示される化合物を得る(反応工程式2)。
【化22】

所望のグリコシル化生成物を得るために、一般式3で示されるラクトースアクセプターと一般式4で示されるシアリルドナーとのカップリングを、アクチベーター(プロモーターまたは触媒)の存在下、非プロトン性溶媒または混合非プロトン性溶媒中で行うことができる。一般式4で示されるドナーの脱離基Xと、一般式3で示されるアクセプターの6'-OH基との求核置換によって、新たなグリコシド間(interglycosidic)結合が、形成される。両方の関与している反応物中の他の官能基は、保護基で覆われなければならない。立体選択性に関して、特に注意しなければならない。立体化学的結果は、ドナーのアノマー中心に隣接する環炭素における関与している基の有無、脱離基Xの性質、溶媒効果、ドナーとアクセプターの両方における保護基の性質、プロモーターまたは触媒の性質、温度、圧力、ドナーとアクセプターとの間の立体相互作用などの別の因子によって影響されうる。シアル酸および誘導体の場合、グリコシル化のためのアノマー活性化のアレイが、開発されており、シアル酸化学に従事する当業者には利用可能である。これらの方法は、論文[6]に広範に議論されている。例示として、いくつかの全般的考察について、X-基に応じて、下記に簡単に言及する。
【0049】
グリコシルハライド(Xは、F、Cl、Br、Iを意味する)は、入手しやすいことと反応性が十分であることから、グリコシル化反応に頻繁に用いられる。典型的には、アノマーハライドは、求核置換に対し、F<Cl<Br<Iの順序の反応性をもつ。グリコシル化反応は、一般に、重金属イオン、主として水銀または銀、およびルイス酸によって促進される。
【0050】
無機または有機塩基触媒の存在下、トリクロロアセトニトリルへの遊離アノマーOHの添加によって、グリコシルトリクロロアセトイミデート(X=-OC(=NH)CCl3)を容易に製造することができる。典型的なグリコシル化反応において、触媒量の、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリルまたはBF3-エーテルなどのルイス酸は、カップリングを促進する。
【0051】
トリグリコシド(Xは、アルキルチオ-またはフェニルチオ-基を意味する)は、縮合反応において、水銀(II)塩、Br2、I2、NBS、NIS、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフラート塩、BF3-エーテル、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル、トリフルオロメタンスルホン酸ジメチル-メチルチオスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸フェニルセレニル、過塩素酸ヨードニウムジコリジン、ヨウ化テトラブチルアンモニウムまたはその混合物、好ましくはBr2、NBSまたはNISなどのチオ親和性プロモーターによって活性化されうる。
【0052】
亜リン酸グリコシルドナー(Xは、-O-P-(O-[アルキルまたはベンジル])2である)は、NBS、NIS、TMSOTf、TfOH、Tf2O、ZnCl2、BF3・OEt2、LiClO4、DTBPI、Bu4NI、AgClO4、LiClO4、Sn(OTf)2またはその混合物、好ましくはTMSOTfによって促進されうる。
【0053】
グリコシル化反応における酢酸グリコシル(Xは、-OAcである)は、まず、反応性中間体を提供する求電子的活性化に付され、次いで、求核性OH-アクチベーターで処理される。最適の典型的なアクチベーターは、TsOH、HClO4、スルファミン酸などのブレンステッド酸、ZnCl2、SnCl4、トリフレート塩、BF3-エーテル、過塩素酸トリチル、AlCl3、トリフルオロメタンスルホン酸無水物などのルイス酸およびその混合物である。
【0054】
好ましい方法では、一般式4A:
【化23】

[式中、R5は、必要に応じて置換されたアシルである;Qは、-COO-アルキル(ここで、アルキルは、必要に応じて置換される)である;およびR7は、置換ベンジルである]
で表される、一般式4で示される化合物が、カップリング反応に用いられる。NBS、NIS、TMSOTf、TfOH、Tf2O、ZnCl2、BF3・OEt2、LiClO4、DTBPI、Bu4NI、AgClO4、LiClO4、Sn(OTf)2またはその混合物、好ましくTMSOTfはなどのプロモーターの存在下、-78〜0℃の温度にて、非プロトン性溶媒、好ましくはジクロロメタン、THF、トルエン、アセトニトリルまたはその混合物、より好ましくはジクロロメタン/アセトニトリル混合物中で、反応を行う。
【0055】
好ましい実施態様において、ドナーおよびアクセプターを、1:1〜1:5比のTHF/DCMの溶媒混合物に溶解し、温度を-40℃〜-10℃に維持する。TMSOTf、TfOH、BF3・Et2O、DTPI、ヨウ化テトラブチルアンモニウムなど(これらに限定されるものではない)の最適のプロモーターを加え、反応が完了するまで反応物を撹拌する。
【0056】
もう1つの実施態様において、ドナーおよびアクセプターを、1:1.7〜1:5比のCH3CN/DCMの溶媒混合物に溶解し、温度を-40℃〜-30℃に維持する。TMSOTf、TfOH、BF3・Et2O、DTPI、ヨウ化テトラブチルアンモニウムなど(これらに限定されるものではない)の最適のプロモーターを加え、反応が完了するまで反応物を撹拌する。
【0057】
もう1つの実施態様において、ドナーおよびアクセプターを、好ましくは1:1:1比のTol/CH3CN/DCMの溶媒混合物に溶解し、温度を-40℃〜-20℃に維持する。TMSOTf、TfOH、BF3・Et2O、DTPI、ヨウ化テトラブチルアンモニウムなど(これらに限定されるものではない)の最適のプロモーターを加え、反応が完了するまで反応物を撹拌する。
【0058】
一般式4Aで示される好ましいドナーにおいて、R5は、アセチルであり、R7は、4-クロロベンジルまたは4-ブロモベンジルであり、Qは、-COOMeである。
【0059】
一般式3で示されるアクセプターおよび一般式4で示されるドナーから出発する一般式2で示される化合物の製造に関し、もう1つの好ましい実施態様は、一般式4B:
【化24】

[式中、R5は、必要に応じて置換されたアシルである;Qは、-COO-アルキル(ここで、アルキルは、必要に応じて置換される)である;およびR6は、C2-6アルキル、C3-6シクロアルキルおよび必要に応じて置換されたベンジルから選ばれる]
で表される、一般式4で示される化合物のもう1つのグループの使用を含む。NIS、NBS、Br2、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸銀、BF3-エーテルまたはその混合物などのアクチベーターの存在下、クロロホルム、ジクロロメタン、トルエン、ジオキサン、THF、アセトニトリルまたはその混合物、好ましくはクロロホルムまたはジクロロメタンなどの非プロトン性溶媒中でグリコシル化を行う。
【0060】
一般式4Bで示される好ましいドナーにおいて、R5は、アセチルであり、R6は、エチル、イソプロピル、t-ブチル、ベンジルおよびシクロヘキシルから選ばれ、Qは、-COOMeである。
【0061】
さらなる好ましい実施態様は、シアル化反応における一般式4C:
【化25】

[式中、R5は、必要に応じて置換されたアシルである;およびQは、-COO-アルキル(ここで、アルキルは、必要に応じて置換される)である]
で示される化合物の使用に関する。ブレンステッド酸またはルイス酸などのアクチベーターの存在下、クロロホルム、ジクロロメタン、トルエン、ジオキサン、THF、アセトニトリルまたはその混合物、好ましくはクロロホルムまたはジクロロメタンなどの非プロトン性溶媒中でグリコシル化を行う。R5が、アセチルであり、Qが、-COOMeである一般式4Cで示される化合物が、最適な好ましいドナーである。
一般式4Cで示される好ましいドナーにおいて、R5は、アセチルであり、Qは、-COOMeである
【0062】
もう1つの実施態様において、一般式2で示される化合物の合成は、一般式3A:
【化26】

[式中、R2は、接触水素化によって除去しうる基である;およびR4は、1〜3個のメトキシ基で置換されたベンジルおよび必要に応じて置換されたアシルから選ばれるが、ただし、アセチルは排除される]
で示される化合物の使用を含む。
【0063】
好ましい実施態様において、-OR2は、β型であり、R2は、ベンジル、4-メチルベンジル、4-クロロベンジルおよび1-ナフチルメチルから選ばれ、およびR4は、イソブチリル、ピバロイルおよびベンゾイルから選ばれる。
【0064】
酸性型の6'-O-シアリルラクトースおよびいくつかの6'-O-シアリルラクトース中間体は、シアル酸構造モチーフの酸性度が高いこと、およびα-O-シアリル結合の加水分解安定性が低いことにより、水溶液中で限られた化学的安定性しかもたない。たとえば、6'-O-シアリルラクトースは、自己触媒作用により、室温にて水溶液中でシアル酸とラクトースに分解する。水溶液中のシアリルラクトース自体の酸性度が低いことは、単離および6'-O-シアリルラクトースの製造を標的とする酵素的または化学的技術の主な妨げである。さらに、6'-O-シアリルラクトースは、高品質の6'-O-シアリルラクトース製品の製造にとって必要な効率のよい精製方法の開発を妨げる結晶性をもたない。
【0065】
本発明は、6'-O-シアリルラクトースの新規な塩を提供する。用語「6'-O-シアリルラクトースの塩」は、いずれかの化学量論比における、6'-O-シアリルラクトースの負に荷電した酸性残基およびカチオンからなる会合イオン対を意味する。本明細書で用いるカチオンは、正電荷を有する原子または分子である。カチオンは、無機であっても有機カチオンであってもよい。好ましい無機カチオンは、アンモニウムイオン、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンおよび遷移金属イオンであり、より好ましくはNa+、K+、Ca2+、Mg2+、Ba2+、Fe2+、Zn2+、Mn2+およびCu2+、もっとも好ましくはK+、Ca2+、Mg2+、Ba2+、Fe2+およびZn2+である。正荷電型の塩基性有機化合物が、関連する有機カチオンである。このような好ましい正に荷電した対応物は、すべてプロトン化型のジエチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イミダゾール、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、ベンジルアミン、エチレンジアミン、メグルミン、ピロリジン、コリン、トリス-(ヒドロキシメチル)-メチルアミン、N-(2-ヒドロキシエチル)-ピロリジン、N-(2-ヒドロキシエチル)-ピペリジン、N-(2-ヒドロキシエチル)-ピペラジン、N-(2-ヒドロキシエチル)-モルホリン、L-アルギニン、L-リシン、L-アルギニンもしくはL-リシンユニットを有するオリゴペプチドまたはN末端に遊離アミノ基を有するオリゴペプチドなどである。このような塩の形成を用いて、安定性、賦形剤への適合性、溶解度および結晶を形成する能力などの複合分子の特性を全体として変更することができる。
【0066】
このように、新規な無機6'-SL塩として6'-O-シアリルラクトースのZn2+塩:
【化27】

が提供される。
さらに、本願発明は、式I:
【化28】

[式中、Aは、いずれかの有機塩基を意味し、mは、整数である]
で示される6'-SL有機塩を提供することに関する。
【0067】
有機塩基としての化合物Aは、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イミダゾール、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、ベンジルアミン、エチレンジアミン、メグルミン、ピロリジン、コリン、トリス-(ヒドロキシメチル)-メチルアミン、N-(2-ヒドロキシエチル)-ピロリジン、N-(2-ヒドロキシエチル)-ピペリジン、N-(2-ヒドロキシエチル)-ピペラジン、N-(2-ヒドロキシエチル)-モルホリン、L-アルギニン、L-リシン、L-アルギニンもしくはL-リシンユニットを有するオリゴペプチドまたはN末端に遊離アミノ基を有するオリゴペプチドなどのアミン型塩基を含むのが好ましい。これらの塩基は、6'-SLと会合する場合、プロトン化型である。特に好ましい有機アミンは、ジエチルアミン、トリス-(ヒドロキシメチル)-メチルアミン、エタノールアミンおよびコリンから選ばれる。
【0068】
6'-SLの無機および有機塩は、酸性6'-SLから得ることができる。アルコールまたはアルコール/水中の遊離酸の溶液のpHを、選択された塩基で8,5〜11に調節する;もし塩基が無機塩基ならば、金属水酸化物、金属炭酸塩および金属重炭酸塩から選ぶことができる。次いで、混合物をアルコールで希釈し、減圧濃縮する。次いで、得られるスラリーを濾過し、アルコールで洗浄する。
【0069】
無機または有機塩を得るための別法において、一般式1[式中、R1は、-OR2(ここで、R2 接触水素化によって除去しうる基である(上記参照))である]で示される化合物を、接触水素化に付して、対応する6'-SLの無機または有機塩を得る。
【0070】
強調すべきは、新規な6'-O-シアリルラクトース塩が結晶でありうることであり、それらは、αもしくはβアノマーまたはそのアノマー混合物などの単独の化学物質とみなすことができる。それらは、無水物、水和物ならびに溶媒和物で存在しうる。さらに、非晶質固体、シロップ状物または濃縮水溶液としても新規な6'-SL塩を単離することができる。
【0071】
6'-O-シアリルラクトースおよびシアル化人乳オリゴ糖は、抗菌活性、抗ウイルス活性、免疫系活性および認知発達増強活性などのそれらの独特の生物活性に直接結びつく大きな重要性をもつ。必要に応じて他のシアル酸および/またはN-アセチルラクトースアミンおよび/またはフコース含有人乳オリゴ糖との併用での6'-SLなどのシアル化人乳オリゴ糖は、腸内細菌叢を発生させ、維持することを補助するヒトの腸管システムにおける前生物として働くことが見出されている。さらに、それらは、抗炎症性であることも分かっており、したがって、これらの化合物は、合成化合物および天然化合物の両方およびその塩として、栄養産業において、たとえば、特殊調製粉乳、乳児用シリアル、臨床乳児栄養製品、幼児用配合乳などの製品にとって、あるいは児童、成人、高齢者または授乳中の女性のための栄養補助食品もしくは健康機能性食品として魅力的な成分である。したがって、本発明の6'-SLのZn2+塩および/または6'-SLの有機塩は、医薬用途および栄養用途に適している。
【0072】
もう1つの態様において、本発明は、有効成分として6'-SLのZn2+塩および/または6'-SLの有機塩ならびに添加剤、補助剤、賦形剤および希釈剤(水、ゼラチン、タルク、糖類、デンプン、アラビアゴム、植物ガム、植物油、ポリアルキレングリコール、香味料、保存剤、安定剤、乳化剤、滑沢剤、着色剤、増量剤、湿潤剤など)など(これらに限定されるものではない)の1種以上の医薬的に許容しうる担体を含む医薬組成物を提供する。適当な担体は、当分野における標準的参照テキストである「Remington's Pharmaceutical Sciences」の最新版に記載されている。投与剤形として、錠剤、散剤、顆粒剤、丸剤、懸濁液、乳剤、点滴剤、カプセル剤、シロップ剤、注射剤、液剤、エリキシル剤、エキス剤およびチンキ剤などが挙げられる。
【0073】
さらなる実施態様において、本発明の6'-SLのZn2+塩および/または6'-SLの有機塩は、医薬組成物の製造に用いられる。医薬組成物は、当分野における標準的参照テキストである「Remington's Pharmaceutical Sciences」の最新版などの当業界で周知の方法のいずれかによって製造することができる。
【0074】
さらなる実施態様において、本発明の6'-SLのZn2+塩および/または6'-SLの有機塩から選ばれる1種以上の6'-SL塩を含む、食物、飲料または飼料などの栄養製剤を提供する。栄養製剤はさらに、食用の微量栄養素、ビタミンおよびミネラルを含んでもよい。このような成分の量は、製剤が、正常で健常な乳児、小児、成人または特別の必要性を有する患者(たとえば、代謝性障害に苦しむ患者など)への用途を意図しているかどうかに応じて変わりうる。微量栄養素として、たとえば、食用の油脂、脂肪または脂肪酸(ココナツオイル、大豆油、モノグリセリド、ジグリセリド、パーム油、ひまわり油、魚油、リノール酸、リノレン酸など)、炭水化物(グルコース、フルクトース、スクロース、マルトデキストリン、デンプン、加水分解コーンスターチなど)およびカゼイン、大豆、ホエーまたはスキムミルクからのタンパク質、あるいはこれらのタンパク質の加水分解物などが挙げられるが、他の源(そのままで、または加水分解されたもの)からのタンパク質も、用いることができる。ビタミンは、ビタミンA、B1、B2、B5、B6、B12、C、D、E、H、K、葉酸、イノシトールおよびニコチン酸から選ばれる。栄養製剤は、以下のミネラルおよび微量元素を含んでもよい:Ca、P、K、Na、Cl、Mg、Mn、Fe、Cu、Zn、Se、CrまたはI。
【0075】
好ましい実施態様において、栄養製剤は、特殊調製粉乳である。特殊調製粉乳は、乳児の栄養要求をそれ自体で満たす、生後4〜6カ月の乳児への特定の栄養用途を意図する食品を意味する。栄養製剤は、1種以上のプロバイオティックビフィズス菌、フラクトオリゴ糖およびガラクトオリゴ糖などの前生物、カゼイン、大豆、ホエーまたはスキムミルクからのタンパク質、ラクトース、サッカロース、マルトデキストリン、デンプンまたはその混合物などの炭水化物、脂質(パーム油、ひまわり油、サフラワー油など)ならびに毎日の食事に不可欠なビタミンおよびミネラルを含んでもよい。特殊調製粉乳は、総量0.1-3.0 g/100 g粉乳の本発明の6'-SLのZn2+塩および/または6'-SLの有機塩を含むことができる。
【0076】
もう1つの実施態様において、栄養製剤は、本発明の6'-SLのZn2+塩および/または6'-SLの有機塩などの食品サプリメントであってもよい。食品サプリメントは、個人、好ましくは小児および成人において所望の効果を達成するのに十分な量の1種以上のプロバイオティックを含んでもよい。食品サプリメントはまた、ビタミン、ミネラル、微量元素およびその他の微量栄養素を含んでもよい。食品サプリメントは、たとえば、錠剤、カプセル剤、トローチ剤または液剤などの剤形であっってもよい。サプリメントは、結合剤、コーティング剤、乳化剤、可溶化剤、カプセル化剤、フィルム形成剤、吸着剤、担体、増量剤、分散剤、湿潤剤、ゼリー化剤、ゲル形成剤などから選ばれる従来の添加剤(これらに限定されるものではない)を含んでもよい。6'-SLのZn2+塩および/または6'-SLの有機塩の毎日の用量範囲は、0.1〜3.0 gである。
【0077】
より好ましい実施態様において、食品サプリメントは、6'-SLのZn2+塩および/または6'-SLの有機塩の投与が消化健康における有利な効果を提供するように、消化健康機能性食品である。消化健康機能性食品は、錠剤、カプセル剤、散剤などの形態で、生理的機能性の成分または要素として本発明の6'-SLのZn2+塩および/または6'-SLの有機塩を投与することによって消化健康を増強および保持する意図で用いられる加工食品である。消化サプリメント、栄養補助食品、設計された食品、健康製品などの異なる用語もまた、機能性食品を意味するために用いられてもよい。
【0078】
好ましい実施態様において、本発明の6'-SLのZn2+塩および/または6'-SLの有機塩は、食物、飲料および飼料、特に、特殊調製粉乳、食品サプリメントおよび消化健康機能性食品などの栄養製剤の製造のために用いられる。栄養製剤は、いずれかの通常の方法で製造することができる。
【0079】
一般式1、2、3および4で示される化合物は、6'-SLのための有益な合成中間体であると考えられる。本発明者らは、驚くべきことに、いくつかの一般式1、2、3および4で示される化合物が、結晶型で得られることを認識した。結晶化または再結晶は、反応混合物から生成物を単離し、汚染物から生成物を分離し、そして
、純粋な物質を得るための最も単純で安価な方法の1つである。結晶化を用いる単離または精製は、全体的技術的プロセスをロバストで費用効率の高いものにし、したがって、他の手順と比べて遊離であり、魅力的である。本発明は、6'-SLの大規模生産において商業的価値が高く、他の公知の精製方法が達成することができない高純度の中間体を提供する。いくつかの他の中間体は、結晶化する能力を示さなかったが、それらは、汚染がなく、高収率で、副産物形成反応が少ない状態で製造することができ、通常の後処理(抽出、蒸発、沈殿など)手順で、さらなる精製を行うことなく次工程で用いられる十分に高純度の生成物が得られた
【0080】
このように、価値の高い6'-SL中間体として、一般式1で示される化合物またはその塩のグループ、すなわち、一般式1A:
【化29】

[式中、R2は、接触水素化によって除去しうる基であり、ベンジル、4-メチルベンジル、4-クロロベンジルおよび1-ナフチルメチルが好ましい;およびOR2は、β型である]
で示される化合物、およびZn2+、K+、Ca2+、Mg2+、Ba2+、Fe2+、Mn2+、Cu2+塩および有機塩から選ばれる塩型における、一般式1B:
【化30】

[式中、R2は、接触水素化によって除去しうる基である]
で示される化合物を提供する。
【0081】
強調すべきは、αもしくはβアノマーのいずれか、好ましくはβアノマー、あるいはαおよびβ異性体のアノマー混合物などの一般式1Aおよび1Bで表される新規な誘導体が、単独の化学物質であるとみなされうることである。一般式1Aおよび1Bで示される新規な6'-SL中間体は、結晶性固体、油状物、シロップ状物、沈殿した非晶質性物質または噴霧乾燥製品、好ましくは結晶性固体であることを特徴としうる。結晶である場合、一般式1Aおよび1Bで示される化合物は、非晶質形状または結晶構造内に1つまたは数個の水の分子を組み込むことによる水和した結晶性形状のいずれかで存在する。同様に、一般式1Aおよび1Bで表される新規な化合物は、その構造内に有機分子および/またはイオンなどのリガンドを組み込んでいる結晶質で存在しうる。
【0082】
塩としての一般式1Bで示される化合物は、いずれかの化学量論比における、一般式1Bで示される化合物の負に荷電した酸性残基およびカチオンからなる会合イオン対を意味する。カチオンは、K+、Ca2+、Mg2+、Ba2+、Fe2+、Zn2+、Mn2+およびCu2+であり、もっとも好ましくはK+、Ca2+、Mg2+、Ba2+、Fe2+およびZn2+である。正荷電型の塩基性有機化合物も、関連する有機カチオンである。このような好ましい正に荷電した有機分子は、すべてプロトン化型のジエチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イミダゾール、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、ベンジルアミン、エチレンジアミン、メグルミン、ピロリジン、コリン、トリス-(ヒドロキシメチル)-メチルアミン、N-(2-ヒドロキシエチル)-ピロリジン、N-(2-ヒドロキシエチル)-ピペリジン、N-(2-ヒドロキシエチル)-ピペラジン、N-(2-ヒドロキシエチル)-モルホリン、L-アルギニン、L-リシン、L-アルギニンもしくはL-リシンユニットを有するオリゴペプチドまたはN末端に遊離アミノ基を有するオリゴペプチドなどである。
【0083】
好ましい実施態様は、一般式1B[式中、R2は、ベンジルであり、-OR2は、β型であり、その塩は、Zn2+塩および有機塩から選ばれ、有機塩は、エタノールアンモニウム、ジエチルアンモニウム、トリス-(ヒドロキシメチル)-メチルアンモニウムおよびコリン塩から選ばれるのが好ましい]で示される化合物に関する。
【0084】
本発明が提供する一般式1Aおよび1Bで示される新規な化合物は、当業界で既知の化学的/酵素的方法を用いることによって、6'-SLそれ自体および他の6'-SL誘導体の製造に用いることができる。新規な一般式1Aおよび1Bで示される化合物は、多数の人乳オリゴ糖の製造/調合のための新型の先駆体/中間体としても、用いることができる。一般式1Aおよび1Bで示される新規な化合物は、治療/栄養用途に適した複合オリゴ糖/複合糖質の合成のための価値の高い中間体とみなすこともできる。
【0085】
一般式2A:
【化31】

[式中、R2は、接触水素化によって除去しうる基である;
R4およびR5は、互いに独立して、必要に応じて置換されたアシルである;
R8は、-NHAcおよび-NAc2から選ばれる;および
Qは、-COO-アルキル(ここで、アルキルは、必要に応じて置換される)である]
で示される化合物を提供する。
【0086】
強調すべきは、一般式2Aで表される新規な誘導体を、αまたはβアノマーのいずれか、好ましくはβアノマー、あるいはαおよびβ異性体のアノマー混合物などの単独の化学物質とみなすことができることである。一般式2Aで示される新規な中間体は、結晶性固体、油状物、シロップ状物、沈殿した非晶質性物質または噴霧乾燥製品、好ましくは結晶性固体であることを特徴としうる。結晶である場合、一般式2Aで示される化合物は、非晶質形状または結晶構造内に1つまたは数個の水の分子を組み込むことによる水和した結晶性形状のいずれかで存在する。同様に、一般式2Aで表される新規な化合物は、その構造内に有機分子および/またはイオンなどのリガンドを組み込んでいる結晶質で存在しうる。
【0087】
一般式2A[式中、-OR2は、β型であり、R2は、ベンジル、4-メチルベンジル、4-クロロベンジルおよび1-ナフチルメチルから選ばれ、R4は、イソブチリル、ピバロイルおよび必要に応じて置換されたベンゾイルから選ばれ、ピバロイルおよびベンゾイルが好ましく、R5は、アセチルであり、Qは、-COOCH3である]で示される化合物が、特に好ましい。
【0088】
本発明が提供する一般式2Aで示される新規な化合物は、当業界で既知の化学的/酵素的方法を用いることによって、6'-SLそれ自体および他の6'-SL誘導体の製造に用いることができる。新規な一般式2Aで示される化合物は、多数の人乳オリゴ糖の製造/調合のための新型の先駆体/中間体としても、用いることができる。一般式2Aで示される新規な化合物は、治療/栄養用途に適した複合オリゴ糖/複合糖質の合成のための価値の高い中間体とみなすこともできる。
【0089】
さらに好ましい一般式2で示される化合物は、一般式2C:
【化32】

[式中、-OR2は、β型であり、R2は、接触水素化によって除去しうる基であり、ベンジル、4-メチルベンジル、4-クロロベンジルおよび1-ナフチルメチルが好ましい;および
R4は、イソブチリル、ピバロイルおよび必要に応じて置換されたベンゾイルから選ばれ、ベンゾイルが好ましい]
で示される化合物である。
【0090】
強調すべきは、一般式2Cで表される新規な誘導体を、αまたはβアノマーのいずれか、好ましくはβアノマー、あるいはαおよびβ異性体のアノマー混合物などの単独の化学物質とみなすことができることである。一般式2Aで示される新規な中間体は、結晶性固体、油状物、シロップ状物、沈殿した非晶質性物質または噴霧乾燥製品、好ましくは結晶性固体であることを特徴としうる。結晶である場合、一般式2Cで示される化合物は、非晶質形状または結晶構造内に1つまたは数個の水の分子を組み込むことによる水和した結晶性形状のいずれかで存在する。同様に、一般式2Cで表される新規な化合物は、その構造内に有機分子および/またはイオンなどのリガンドを組み込んでいる結晶質で存在しうる。
【0091】
本発明が提供する一般式2Cで示される新規な化合物は、当業界で既知の化学的/酵素的方法を用いることによって、6'-SLそれ自体および他の6'-SL誘導体の製造に用いることができる。新規な一般式2Cで示される化合物は、多数の人乳オリゴ糖の製造/調合のための新型の先駆体/中間体としても、用いることができる。一般式2Cで示される新規な化合物は、治療/栄養用途に適した複合オリゴ糖/複合糖質の合成のための価値の高い中間体とみなすこともできる。
【0092】
本願発明のもう1つの態様は、一般式2D:
【化33】

[式中、R2は、接触水素化によって除去しうる基である;
R4は、1〜3個のメトキシ基で置換されたベンジルおよびHから選ばれる;
R5は、必要に応じて置換されたアシルおよびHから選ばれる;
R8は、-NHAcおよびNAc2から選ばれる;および
Qは、-COO-アルキル(ここで、アルキルは、必要に応じて置換される)およびプロトン化された形態または脱プロトン化された形態のいずれかにおける-COOHから選ばれる;ただし、Qが、プロトン化された形態または脱プロトン化された形態のいずれかにおける-COOHであり、R8が-NHAcである場合、R4およびR5の両方が同時にHであることはできない]
で示される化合物を提供することに関する。
【0093】
強調すべきは、一般式2Dで表される新規な誘導体を、αまたはβアノマーのいずれか、好ましくはβアノマー、あるいはαおよびβ異性体のアノマー混合物などの単独の化学物質とみなすことができることである。一般式2Aで示される新規な中間体は、結晶性固体、油状物、シロップ状物、沈殿した非晶質性物質または噴霧乾燥製品、好ましくは結晶性固体であることを特徴としうる。結晶である場合、一般式2Dで示される化合物は、非晶質形状または結晶構造内に1つまたは数個の水の分子を組み込むことによる水和した結晶性形状のいずれかで存在する。同様に、一般式2Dで表される新規な化合物は、その構造内に有機分子および/またはイオンなどのリガンドを組み込んでいる結晶質で存在しうる。
【0094】
好ましい実施態様において、-OR2は、β型であり、R2は、ベンジル、4-メチルベンジル、4-クロロベンジルおよび1-ナフチルメチルから選ばれ、R4およびR5は、Hであり、R8は、-NHAcであり、Qは、-COO-アルキル(ここで、アルキルは、必要に応じて置換される)であり、-COOMeが好ましい。
【0095】
本発明が提供する一般式2Dで示される新規な化合物は、当業界で既知の化学的/酵素的方法を用いることによって、6'-SLそれ自体および他の6'-SL誘導体の製造に用いることができる。新規な一般式2Dで示される化合物は、多数の人乳オリゴ糖の製造/調合のための新型の先駆体/中間体としても、用いることができる。一般式2Dで示される新規な化合物は、治療/栄養用途に適した複合オリゴ糖/複合糖質の合成のための価値の高い中間体とみなすこともできる。
【0096】
強調すべきは、一般式4Aで示される化合物が、新規であることである。したがって、本発明は、一般式4A:
【化34】

[式中、R5は、必要に応じて置換されたアシルである;Qは、-COO-アルキル(ここで、アルキルは、必要に応じて置換される)である;およびR7は、置換ベンジルである]
で示される化合物を提供する。好ましい実施態様において、R5は、アセチルであり、Qは、-COOCH3であり、R7は、置換ベンジルであり、4位においてクロロまたはブロモで置換されるのが好ましい。
【0097】
一般式4Aで示される化合物は、βアノマー型の結晶質であるとみなすことができる。それらは、安定であり、有意な分解を起こすことなくより長い期間にわたって保存することができ、グリコシル化反応において容易に活性化することができ、優れたα選択性を示す。それらの非置換の亜リン酸ベンジル対応物は、固体でないことが知られているので、本発明の一般式4Aで示される化合物は、シアル化反応において明らかに有利な適用性を有する。
【0098】
したがって、本発明は、シアロオリゴ糖、好ましくはシアル化人乳オリゴ糖の合成における一般式4Aで示される化合物の使用を提供する。このようなシアル化HMO(シアル化人乳オリゴ糖)は、たとえば、6'-シアリルラクトース、3'-シアリルラクトース、3'-シアリル-3-フコシルラクトース、ジシアリルラクト-N-テトラオース、ジシアリルモノフコシルラクト-N-ヘキサオース、シアリルラクト-N-テトラオースa、シアリルラクト-N-テトラオースb、シアリルラクト-N-テトラオースc、シアリルラクト-N-フコペンタオースII、モノフコシル モノシアリルラクト-N-ヘキサオースI、モノシアリルラクト-N-ネオヘキサオースI、モノシアリルモノフコシルラクト-N-ネオヘキサオースなどである。
【0099】
本発明はまた、一般式4Aで示される化合物の製造に関する(反応工程式3)。非プロトン性溶媒、好ましくはジクロロメタン中、第3級アミン、好ましくはEt3Nの存在下、(R7O)2PY(ここで、Yは、ハロゲンまたはジアルキルアミノ基である)で直接ホスフィチル化するか、またはまずPCl3を加え、次いで、R7OH(R7は、置換ベンジルであり、ハロまたはメチルベンジルが好ましい)を加えるという2つの連続的ステップでホスフィチル化するか、のいずれかによって、一般式9で示される容易に入手可能なシアル酸誘導体をホスフィチル化する。両方のステップにおいて、第3級アミン塩基は、形成された塩酸を中和するのに必要であり、第2のステップにおいて、Et3Nは、好ましい塩基である。用いる溶媒は、非プロトン性溶媒から選ばれ、ジクロロメタンが、第1選択溶媒であるのが好ましい。
【化35】

強調すべきは、一般式4Bで示される化合物が、新規であることである。したがって、本発明は、一般式4B:
【化36】

[式中、R5は、必要に応じて置換されたアシルであり、アセチルが好ましい;
R6は、C2-6アルキル、C3-6シクロアルキルおよび必要に応じて置換されたベンジルから選ばれ、エチル、イソプロピル、t-ブチル、ベンジルおよびシクロヘキシルから選ばれるのが好ましい;
Qは、-COO-アルキル(ここで、アルキルは、必要に応じて置換される)であり、-COOMeが好ましい]
で示される化合物を提供する。
【0100】
一般式4Bで示される化合物は、αアノマー型の結晶質であるとみなすことができる。それらは、安定であり、有意な分解を起こすことなくより長い期間にわたって保存することができ、グリコシル化反応において容易に活性化することができ、優れたα選択性を示す。メチル、フェニルまたは4-メチルフェニルチオグリコシドなどのそれらの類縁体は、固体でないことが知られているので、本発明の一般式4Bで示される化合物は、シアル化反応において明らかに有利な適用性を有する。
【0101】
したがって、本発明は、シアロオリゴ糖、好ましくはシアル化人乳オリゴ糖の合成における一般式4Bで示される化合物の使用を提供する。このようなシアル化HMO(シアル化人乳オリゴ糖)は、たとえば、6'-シアリルラクトース、3'-シアリルラクトース、3'-シアリル-3-フコシルラクトース、ジシアリルラクト-N-テトラオース、ジシアリルモノフコシルラクト-N-ヘキサオース、シアリルラクト-N-テトラオースa、シアリルラクト-N-テトラオースb、シアリルラクト-N-テトラオースc、シアリルラクト-N-フコペンタオースII、モノフコシルモノシアリルラクト-N-ヘキサオース I、モノシアリルラクト-N-ネオヘキサオースI、モノシアリルモノフコシルラクト-N-ネオヘキサオースなどである。
【0102】
本発明はまた、一般式4B示される化合物の製造に関する。高温で、酸、好ましくはトシル酸の存在下、酢酸イソプロペニルを用いて、シアル酸エステルまたはテトラ-O-アセチルシアル酸エステルをアセチル化することができる。次いで、得られる2,4,7,8,9-ペンタ-O-アセチル-5-(N-アセチルアセトアミド)-3,5-ジデオキシ-2-チオ-D-グリセロ-D-ガラクト-non-2-ウロピラノソナートを、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、THF、ジオキサン、アセトニトリル、DMFなどの非プロトン性溶媒中、ルイス酸(三フッ化ホウ素エーテル、TfOH、TMSOTfなど)活性化において、R6SH(R6は、C2-6アルキル、C3-6シクロアルキルまたは必要に応じて置換されたベンジルであり、エチル、イソプロピル、t-ブチル、ベンジルまたはシクロヘキシルが好ましい)と反応させて、一般式4Bで示される化合物を形成する。トリメチルシリル-SR6などの活性化アルキルチオ誘導体を適用することもできる。別のアプローチにしたがって、塩基の存在下、テトラアセチルシアリルクロリドをR6SHとカップリングさせ、次いで、得られるチオグリコシドを酢酸イソプロペニルでN-アセチル化することができる(反応工程式4)。
【化37】

強調すべきは、シアル化反応における一般式4Cで示される化合物の使用が、当業界で言及されていないことである。したがって、本発明は、シアリルドナーとして用いるための一般式4C:
【化38】

[式中、R5は、必要に応じて置換されたアシルであり、アセチルであるのが好ましい;および
Qは、-COO-アルキル(ここで、アルキルは、必要に応じて置換される)であり、-COOMeが好ましい]
で示される化合物を提供する。
【0103】
一般式4Cで示される化合物は、βアノマー型の結晶質であるとみなすことができる。それらは、安定であり、有意な分解を起こすことなくより長い期間にわたって保存することができ、グリコシル化反応において容易に活性化することができ、優れたα選択性を示す。
【0104】
したがって、より好ましい実施態様において、本発明は、シアロオリゴ糖、好ましくはシアル化人乳オリゴ糖の合成における一般式4Cで示される化合物の使用を提供する。このようなシアル化HMO(シアル化人乳オリゴ糖)は、たとえば、6'-シアリルラクトース、3'-シアリルラクトース、3'-シアリル-3-フコシルラクトース、ジシアリルラクト-N-テトラオース、ジシアリルモノフコシルラクト-N-ヘキサオース、シアリルラクト-N-テトラオースa、シアリルラクト-N-テトラオースb、シアリルラクト-N-テトラオースc、シアリルラクト-N-フコペンタオースII、モノフコシルモノシアリルラクト-N-ヘキサオースI、モノシアリルラクト-N-ネオヘキサオースI、モノシアリルモノフコシルラクト-N-ネオヘキサオースなどである。
【0105】
強調すべきは、一般式3Aで示される化合物がが、新規であり、結晶性であり、αまたはβアノマーあるいはそのアノマー混合物、好ましくはβアノマーなどの単独の化学物質とみなすことができることである。それらは、無水物、水和物ならびに溶媒和物として存在する。
【0106】
したがって、本発明は、一般式3A:
【化39】

[式中、R2は、接触水素化によって除去しうる基である;およびR4は、1〜3個のメトキシ基で置換されたベンジルおよび必要に応じて置換されたアシルから選ばれるが、ただし、アセチルは排除される]
で示される化合物を提供する。
【0107】
より好ましい実施態様において、-OR2は、β型であり、R2は、ベンジル、4-メチルベンジル、4-クロロベンジルおよび1-ナフチルメチルから選ばれ、R4は、イソブチリル、ピバロイルおよびベンゾイルから選ばれる。
【0108】
本発明者らは、アセチル基が、一般式3Aで示される化合物が、シアル化反応におけるグリコシルアクセプターとして機能する場合に、都合の悪い保護基であることに気付いた。カップリング条件下、アセチル転移が常に起こり、クロマトグラフィーなどの、時間のかかる、および/または高性能および/または面倒な技術によってのみ化合物が分離されうるという、同様の物理的特性をもつ物質を含む複合混合物が形成された。転移しない傾向にあるか、または転移する傾向が低い、かさ高いアシル保護基を選択することは、グリコシド化においてほぼ例外なくそのカップリング生成物が形成されるアクセプターをもたらし、所望の化合物を得るための後処理手順および単離プロセスをより単純、迅速、強力およびコスト効率のよいもの(たとえば、結晶化)にし、このことは大規模製造または工業プロセスにおける最大の関心事の1つである。
【0109】
本発明のもう1つの態様は、上記一般式3Aで表されるグリコシルアクセプター誘導体を製造することである(反応工程式5)。出発O-ラクトシドは、フィッシャーグリコシド化(酸触媒の存在下、対応するアルコールで処理されたラクトース)によって容易に形成することができる。次いで、そのようにして得られた一般式6で示されるO-ラクトシドの4',6'位を、既知の方法により、R9-CHO(R9=1-2アルコキシまたはニトロで必要に応じて置換フェニルされた)、ベンゾフェノンまたはそのジ-O-アセタールで選択的に保護し、一般式7で示される化合物を得、次いで、アシル化またはメトキシ-ベンジル化して、一般式8で示される化合物を得る。既知の方法で、塩基の存在下、アシルハライド、無水物、活性エステルなどを用いてアシル化を行うことができる。THF、ジオキサン、DMFなどの不活性有機非プロトン性溶媒中、適当な典型的なベンジルハロゲン化物(塩化物、臭化物またはヨウ化物)およびNaHまたは粉末KOHまたはNaOHを加えることによって、ベンジルエーテル形成を行うが、試薬ベンジルハロゲン化物を溶媒として用いることもできる。ベンジル化において、相転移触媒条件を適用することもでき、有機相溶媒は、芳香族炭化水素(トルエン、ベンゼン、キシロース)から選ばれ、塩基性水溶液、好ましくは50 % NaOHまたはKOH溶液を水相として用いる。触媒として、第4級アンモニウムもしくはホスホニウム塩、またはクラウンエーテルを加えることができ、TBAIが好ましい。酸加水分解による一般式8で示される化合物からのアセタールまたはケタール型保護基の除去は、一般式3Aで示される化合物をもたらす。
【化40】

【0110】
一般式3Aで示される化合物を製造する好ましい実施態様において、出発物質として、β-ベンジルラクトシドを用いる(一般式6においてR1=OBn)。さらなる好ましい実施態様において、ベンズアルデヒド-ジメチルアセタールが、4',6'位を保護するための試薬である。一般式7で示される化合物中の遊離のヒドロキシルを保護するために、ピバロイルおよび必要に応じて置換されたベンゾイル基が好ましい。一般式8で示される化合物からベンジリデンアセタールを除去する場合、希強無機酸、有機酸(アルカン酸、スルホン酸など)およびH型イオン交換樹脂を酸触媒として優先され、p-トルエンスルホン酸が好ましく、アルコール溶媒のうち、芳香族炭化水素、塩素化アルカンまたはが望ましく、DCM、メタノールまたはその混合物が好ましい。
【0111】
さらなる態様において、上述の一般式3Aで示される化合物を6'-SLの製造に用いることができる。アクセプターとしての一般式3Aで示される化合物は、いずれの適当なシアリルドナーとも容易に反応して、前述の一般式2で示される保護された6'-SL中間体が生成され、次いで、前述した脱保護操作によって、該中間体を6'-SLおよびその塩に変換することができる。
【0112】
本発明の他の特徴は、以下の実施例によって明らかとなるが、これらは本発明の説明のために挙げるものであって、本発明を限定するものではない。
【実施例1】
【0113】

MeOH(1500 mL)中の無水シアル酸(100 g、323 mmol)および乾燥したアンバーライトIR-120(H)イオン交換樹脂(100 g)の混合物を室温にて15時間撹拌した。イオン交換樹脂を濾去し、MeOH(2x100 mL)で洗浄した。洗液を濾液と合わせ、300 mLに濃縮した。濃縮した残渣を播種して結晶化した。結晶を濾過により回収して、73.8 g(71 %)のシアル酸メチルエステルを得た。母液を濃縮し(10.5 g)、MeOH(30 mL)から再結晶して、7.4 g(7 %)のシアル酸メチルエステルを得た。総収量81.2 g(78 %)。
1H NMR(D2O) δ in ppm:1.89(dd、1H、J=13.0Hz、J=11.4Hz);2.03(s、3H);2.28(dd、1H、J=13.0Hz、J=4.7Hz);3.52(dd、1H、J=8.9Hz、J=3.0Hz);3.59(dd、1H、J=11.6Hz、J=6.1Hz);3.71(ddd、J=8.9Hz、J=2.5Hz、J=11.6Hz);3.82(dd、1H、J=11.6Hz, J=2.5Hz);3.82(s, 3H);3.90(dd, 1H, J=10.1Hz, J=10.0Hz);3.98-4.10(m, 2H, H-6, H-4)。
【実施例2】
【0114】

MeOH(1200 ml)[0.03 % 水分含量]中の無水シアル酸(100g, 323 mmol)の懸濁液に、MeOH(50 ml)中の8 % HClを加え、反応混合物を室温にて6時間撹拌した。反応混合物をトリエチルアミン(15 ml)で中和し、透明溶液を270 mLに濃縮した。
濃縮した残渣を室温にて2時間播種して結晶化した。固体を濾過により回収して、104.9 g(100 %)を得た。
【実施例3】
【0115】

DCM(175 mL)中のシアル酸メチルエステル(50 g, 155 mmol)および無水酢酸(73 ml, 775 mmol)の懸濁液を、室温にて撹拌し、次いで、70 %過塩素酸(1 mL)を30分間で滴下した。添加中、混合物の温度を還流温度まで上昇させた。反応混合物を2.5時間還流撹拌し、その後、MeOH(7.5 ml, 185 mmol)を滴下し、反応混合物を室温にてさらに撹拌した。反応混合物をDCM(175 mL)で希釈し、水(3x50 mL)で洗浄した。合わせた水相をDCM(2x100 mL)で抽出した。合わせた有機相を飽和NaHCO3(2x100 mL)で洗浄し、蒸発させた。残渣(59.6 g)を50℃にてiBuOAcに溶解し、混合物を室温に冷却し、一夜かけて結晶化を完了させた。固体を濾過により回収して、39.2 g(52 %)のテトラアセチルシアル酸メチルエステルを得た。
1H NMR(C6D6) δ in ppm:1.60, 1.63, 1.70, 1.85, 1.92(5s, 15H);2.19(dd, 1H, J=12.8Hz, J=5.7Hz);2.25(ddd, 1H, J=12.8Hz, J=10.8Hz);3.28(s, 3H);4.23(dd, 1H, J=12.4Hz, J=7.6Hz);4.26(dd, 1H);4.54(ddd, 1H, J=10.8Hz);4.78(d, 1H, J=10.2Hz);5.02(dd, 1H, J=12.4Hz, J=2.0Hz);5.26(ddd, 1H, J=10.8Hz, J=5.7Hz, J=10.5Hz);5.61(ddd, 1H, J=2.0Hz, J=7.6Hz);5.64(dd, 1H, J=2.3Hz, J=4.2Hz)。
1H(CDCl3) δ in ppm:1.91, 2.02, 2.03, 2.11, 2.15(5s, 15H);2.19(dd, 1H, J=12.8Hz, J=11.4Hz);3.26(ddd, 1H, J=12.8Hz, J=5.4Hz);3.86(s, 3H);4.03(dd, 1H, J=12.4Hz, J=7.5Hz);4.13-4.21(m, 2H);4.51(dd, 1H, J=12.4Hz, J=2.4Hz);5.22(ddd, 1H, J=11.4Hz, J=5.4Hz, J= 9.5Hz);5.25(ddd, 1H, J=2.4Hz, J=7.5Hz, J=5.6Hz);5.36(dd, 1H, J=1.5Hz, J=5.6Hz);5.71(m, 1H)。
13C NMR:20.65, 20.75, 20.93, 22.93, 36.11, 49.04, 53.18, 62.50, 68.3, 69.12, 71.32, 72.07, 94.84, 168.93, 170.12, 170.30, 170.72, 171.04, 171.43
【実施例4】
【0116】

DCM(220 mL)中のシアル酸メチルエステル(60.8 g, 188 mmol)および無水酢酸(89 ml, 940 mmol)の混合物に、過塩素酸 70 %(1.22 mL)を30分間で滴下した。添加中、混合物の温度を還流温度まで上昇させた。反応混合物を2.5時間還流撹拌した。次いで、MeOH(9.2 mL, 225 mmol)を滴下し、反応混合物を室温にてさらに撹拌した。透明な溶液を、DCM中のNa2CO3(60.8 g;573 mmol)の懸濁液に加え、混合物を室温にて2時間撹拌した。残留固体を濾去し、DCM(2x50 mL)で洗浄した。合わせたDCM相を150 mlに濃縮し、iBuOAc(150 mL)を加え、残留DCMを除去し、一夜かけて結晶化させた。結晶を濾過により回収して、65 g(71%)のテトラアセチルシアル酸メチルエステルを得た。
【実施例5】
【0117】

DCM(20 L)中のイミダゾール(1.88 kg )の懸濁液を、5℃に冷却し、PCl3(690 ml)を加え、次いで、Et3N(4.16 L)を加えた。粘稠なスラリーを0℃にて60分間撹拌し、四酢酸塩(2.59 Kg)をDCM溶液(3 リットル/kg)で加えた。温度をに25℃設定し、反応混合物を3時間撹拌した。この後、p-Cl-ベンジルアルコール(2.64 Kg)を固体で加え、反応混合物をさらに2時間撹拌した。反応混合物を110 Lの抽出容器に移し、1N HCl(26 L)で中和し、相を分離した。有機相を濃縮して油状物にし、翌日まで冷蔵庫で保管した。残渣を15 LのtBuOMeに溶解し、水(3 x 7 L)で洗浄した;有機相を蒸発させた。残渣をi-Pr2O(5 L)に溶解すると、混濁液は固体に変わった。スラリーを濾去し、固体をi-Pr2O(2x1.5L)で洗浄し、真空オーブンで乾燥した。(純度95%で2.65 Kg)。
1H NMR δ(CDCl3) in ppm:1.9-2.15(m, 16H);2.39(dd, 1H, J=4.9Hz, J=13.00Hz);3.75(s, 3H);3.85(dd, 1H, J=10.6Hz, J=2.00Hz);4.05(m,1H);4.15(dd, J=7.4, J=12.4);4.6(m, 2H);4.8-5(m, 4H);5.15(m, 2H);5.22(m, 1H)。
【実施例6】
【0118】
同様に調製した:

【実施例7】
【0119】

方法A:酢酸イソプロペニル(300 mL)中のN-アセチルノイラミン酸メチルエステル テトラ-O-酢酸塩(100 g, 0.2 mol)の懸濁液に、TsOHを加え、反応混合物を75℃にて(油浴)16時間撹拌した。2,3分後、反応物は透明になった。TLC(トルエン/アセトン 3/2)により反応の完了が確認された時点で、混合物を冷却し、500 mLのEtOAcで希釈し、1x NaHCO3(500 mL)、1x H2O(500 mL)および1x 塩水(300 mL)で洗浄した。残渣を減圧濃縮し、EtOAc(200 mL)に再溶解し、ヘプタン(280 mL)を70℃にて加えた。混合物を0℃に冷却し、2時間撹拌した。固体を濾過により回収して、102.12 g(87 %)を得た。
【0120】
方法B:酢酸イソプロペニル(500 mL)中のシアル酸メチルエステル(100 g)の懸濁液に、TsOHを加え、反応混合物を75℃(油浴)にて16時間撹拌した。2,3分後、反応物は透明になった。TLC(トルエン/アセトン 3/2)により反応の完了が確認された時点で、混合物を冷却し、500 mLのEtOAcで希釈し、1x NaHCO3(500 mL)、1x H2O(500 mL)および1x 塩水(300 mL)で洗浄した。残渣を減圧濃縮し、EtOAc(200 mL)に再溶解し、ヘプタン(280 mL)を70℃にて加えた。混合物を0℃に冷却し、2時間撹拌した。固体を濾過により回収して、101.3 g(85 %)を得た。
1H NMR(CDCl3) δ(ppm):1.95-2.23(m, 16H);2.31(s, 3H);2.39(s, 3H);2.66( dd, 1h, J=13.5Hz, J=6.3Hz);3.77(s, 3H);4.15(m, 2H);4.35(dd, 1H, J=2.4Hz, J=12.4Hz);5.15(m, 3H);5.8(m, 1H)。
13C NMR(CDCl3) δ(ppm):20.97, 21.13, 26.13, 28.24, 53.36, 54.66, 57.26, 62.03, 66.56, 67.72, 69.93, 70.57, 97.37, 166.80, 168.78, 169.80, 169.98, 170.49, 173.82
【実施例8】
【0121】

DCM(50 mL)中のN,N-ジアセチルノイラミン酸メチルエステル ペンタ-O-酢酸塩(10 g, 17.4 mmol)およびRSH(2.2当量)の0℃の冷溶液に、BF3・OEt2(2.79 mL, 1.3当量)を加え、この温度で反応混合物を3時間(tBuSHの場合、一夜)撹拌した。水性NaHCO3(25 mL)を加えて酸を中和し、相を分離し、次いで、有機相を水で洗浄し、溶媒を減圧除去した。残渣を以下のとおり結晶化した。
R=i-Pr(i-Pr2Oから結晶化) 収率75%, mp:110-111℃
1H NMR(CDCl3) δ(ppm):1.25(d, 3H, J=6.7Hz);1.35(d, 3H, J=7Hz);1.9-2.2(m, 13H);2.3(s, 3H);2.4(s, 3H);2.65(dd, 1H, J=5.1Hz, J=13.7Hz);3.25(m, 1H);3.8(s, 3H);4.2(m, 2H);4.75(dd, 1H, J=2.3Hz, J=12.4Hz);5.1(m, 1H);5.25(dd, 1H, J=2.5Hz, J=3Hz);5.45(dd, 1H, J=9.9Hz, J=2.25Hz);5.8(m, 1H)。
13C NMR(CDCl3) δ(ppm):20.88, 20.90, 21.04, 21.11, 24.83, 25.01, 26.13, 28.11, 34.29, 39.18, 52.98, 57.56, 62.59, 67.09, 69.16, 69.68, 72.57, 85.43, 169.18, 169.63, 170.35, 170.56, 170.58, 173.75, 174.49。
R=Bn(MeOHから結晶化) 収率79 %
1H NMR(CDCl3) δ(ppm):1.9-2.2(m, 13H);2.3(s, 3H);2.4(s, 3H);2.7(dd, 1H, J=5.1Hz, J=13.9Hz);3.5(s, 3H);3.8(s, 2H);4.2(m, 2H);4.7(dd, 1H, J=2.4Hz, J=12.4Hz);5.2(m, 1H);5.3(dd, 1H, J=2 Hz, J=4.2Hz);5.55(dd, 1H, J=9.9Hz, J=2 Hz);5.8(m, 1H);7.3(m, 5H)。
13C NMR(CDCl3) δ(ppm):20.91, 20.94, 21.09, 21.11, 26.16, 28.18, 32.99, 38.63, 52.80, 57.59, 62.36, 67.16, 68.65, 69.53, 71.82, 85.17, 127.41, 128.71, 129.009, 136.45, 168.43, 169.65, 170.39, 170.50, 170.66, 173.71, 174.55。
R=t-Bu(i-Pr2O/ヘプタンから結晶化) 収率80 %, mp:95-98℃
1H NMR(CDCl3) δ(ppm):1.4(s, 9H);1.9-2.2(m, 13H);2.3(s, 3H);2.4(s, 3H);2.7(dd, 1H, J=4.8Hz, J=13.5Hz);3.8(s, 3H);4.2(m, 2H);4.7(dd, 1H, J=1.5Hz, J=12.2Hz);5.1(m, 1H);5.3(dd, 1H, J=2.8 Hz, J=3.2Hz);5.55(dd, 1H, J=10Hz, J=2.7 Hz);5.8(m, 1H);7.3(m, 5H)。
13C NMR(CDCl3) δ(ppm):20.87, 20.88, 21.02, 21.09, 26.07, 28.09, 31.46, 41.58, 47.81, 52.90, 57.77, 62.76, 66.99, 69.35, 69.50, 72.62, 86.45, 169.55, 169.81, 170.38, 170.61, 170.72, 174.02, 174.56。
R=Et(i-Pr2Oから結晶化) 収率78 %, mp:137-138℃
R=シクロヘキシル(crystallized form MeOH) 収率78 %, mp:146-147℃
1H NMR(CDCl3) δ(ppm):1.2-1.8(m, 12H);1.9-2.2(m, 13H);2.3(s, 3H);2.4(s, 3H);2.65(dd, 1H, J=5.2Hz, J=13.8Hz);2.8(m, 1H);3.8(s, 3H);4.2(m, 2H);4.8(dd, 1H, J=2.1Hz, J=12.4Hz);5.05(m, 1H);5.25(t, 1H, J=2.3Hz);5.45(dd, 1H, J=9.9Hz, J=2.3Hz);5.8(m, 1H)。
13C NMR(CDCl3) δ(ppm):20.97, 20.99, 21.11, 21.15, 25.51, 26.23, 26.50, 28.16, 35.23, 35.29, 39.09, 42.05, 45.88, 53.01, 57.43, 63.05, 67.18, 69.53, 70.12, 73.33, 85.20, 169.32, 169.72, 170.45, 170.62, 170.68, 173.73, 174.51。
【実施例9】
【0122】

DMF(5 L)中のβ-ベンジルラクトシド(700 g, 1.6 mol)の懸濁液に、ベンズアルデヒド ジメチルアセタール(389.5 mL, 2.6 mmol, 1.6当量)およびp-TsOH・H2O(31.5 g, 0.17 mmol, 0.1当量)を加えた。次いで、反応混合物を40-44℃に約22時間加熱した後、白色懸濁液を得た。氷浴温度に冷却し、i-Pr2O(4 L)を加え、得られる懸濁液をこの温度でさらに1.5時間撹拌した。この混合物を濾過し、得られた白色固体を、i-Pr2O(2 × 1 L)を用いて洗浄/懸濁させた。乾燥後、所望生成物702 gを白色遊離固体で得た。得られた母液を室温にて約3日間静置すると、さらに白色固体が出現した。これを濾過し、i-Pr2O(2 × 150 mL)を用いて洗浄/懸濁させた。さらに25 gの生成物を得た。合計量:727 g(86 %)。
1H NMR δ(CD3OD) in ppm:3.3-3.45(m, 2H);3.5-3.7(m, 5H);3.95(m, 2H);4.15(m, 3H);4.40(d, 1H, J=7.8Hz);4.5(d, 1H, J=7.5Hz);4.65(d, 1H, J=11.8Hz);4.9(d, 1H, J=11.8Hz);5.55(s, 1H);7.25(m, 5H)。
13C NMR:61.75, 68.33, 70.17, 71.78, 71.86, 73.52, 74.89, 76.33, 77.35, 80.02;102.3, 103.22, 104.87;128.8-139.03
【実施例10】
【0123】

出発ペンタオール(650 g, 1.16 mol)、ピリジン(3.25 l)およびDMAP(7.1 g, 58 mmol)を反応器に入れ、PivCl(1.3 l, 10.6 mol)を1時間で加え、混合物を95℃に暖め、15時間撹拌した。反応混合物を60℃に冷却し、4.63 LのMeOHを加え、混合物を室温にて1,5時間撹拌した。固体を濾過し、1.5 LのMeOHで2回洗浄し、一夜風乾し、真空下で3日間乾燥した。
1H NMR δ(CD3OD) in ppm:1.05-1.2(4s, 36H);1.25(s, 9H);3.4(m, 1H);3.55(m, 1H);3.8(s, 3H);3.95(t, 1H, J=9.5Hz);4.05(dd, 1H, J=12.5Hz, J=1.7Hz);4.2(dd, 1H, J=11.8Hz, J=5.5Hz));4.35(dd, 1H, J=12.5Hz, J=0.9Hz);4.38(dd, 1H, J=0.3Hz, J=3.5Hz);4.55(m, 4H);4.8(m, 2H);4.95(dd, 1H);5.2(m, 1H);5.3(m, 1H), 5.45(s, 1H);6.85(m, 2H);7.2-7.4(m, 7H)。
【実施例11】
【0124】

DCM(65 ml)、MeOH(16 ml)および水(6.5 ml)中の出発物質(実施例10, 32.5 g, 33.5 mmol)の混合物に、pTsOH・H2O(2.6 g, 13.7 mmol)を加え、次いで、還流温度に加熱した。2時間後、TLC(トルエン:アセトン 5:1)は、反応の完了を示す。反応混合物を室温に冷却し、DCM(65 ml)で希釈し、飽和NaHCO3(65 ml)および水(65 ml)で洗浄した。有機相を乾燥(硫酸マグネシウム)し、濃縮して、33 gの無職油状物を得た。粗生成物を還流温度にてEtOAc(227 ml)に溶解し、石油エーテル(40-70℃, 70 ml)を加え、混合物を0℃に冷却した。固体を濾過し、石油エーテル(2x30 ml)で洗浄し、乾燥して、22.6 gの(79.2 %)アクセプターを得た。
1H NMR δ(CD3OD) in ppm:1.05-1.2(4s, 36H);1.25(s, 9H);3.4(m, 2H);3.8(m, 1H);3.95(m, 2H);4.1(m, 1H);4.2(dd, 1H, J=11.8Hz, J=5.5Hz);4.55(m, 4H);4.8(d, 1H, J=12.5Hz);4.9(dd, 1H);5.0(dd, 1H);5.2(m, 2H);7.2-7.4(m, 5H)。
【実施例12】
【0125】

ピリジン(20 mL)およびDCM(50 mL)中のペンタオール(実施例9, 5.6 g, 0.01 mol)の溶液を、氷浴で冷却し、p-クロロベンゾイルクロリド(14 mL)をゆっくりと加えた。反応混合物を室温にて24時間撹拌し、溶媒を減圧蒸発させた。残渣をDCM(70 ML)に溶解し、1N HCl(40 mL)、H2O(40 mL)、NaHCO3(40 mL)および塩水(30 mL)で洗浄した。有機相を乾燥(Na2CO3)し、溶媒を減圧蒸発させた。固体をDCM(60 mL)に溶解し、360 mLのMeOHを加えた。白色固体を濾過し、MeOHで洗浄し、乾燥して、10.6 g(81 %)を得た。
1H NMR(CDCl3) δ(ppm):3.05(m, 1H);3.75(m, 3H);4.13(dd, 1H, J=9.1Hz, J=9.5Hz);4.31(m, 1H);4.42(dd, 1H, J=4.1Hz, J=12.0Hz);4.57(m, 2H);4.69(d, 1H, J=7.7Hz);4.75(d, 1H, J=7.9Hz);4.81(d, 1H;12.5Hz);5.15(dd, 1H, J=3.5Hz, J=10.4Hz);5.30(s, 1H);5.38(dd, 1H, J=7.9Hz, J=9.6Hz);5.75(m, 2H).7.05-8.05(m, 30H)。
13C NMR:54.66, 62.92, 66.69, 68.13, 69.86, 70.76, 72.49, 72.73, 72.94, 73.13, 74.1, 76.42, 98.94, 100.81, 101.33, 126-140(42C), 169.27, 164.46, 164.78, 165.13, 165.34。
【実施例13】
【0126】

DCM/MeOH(4/1, 10 mL)およびTsOH(126mg)中のベンジリデンアセタール(実施例12, 2.0 g, 1.65 mmol)の溶液を40℃にて24時間撹拌した。反応混合物を室温に冷却し、DCMで希釈し、NaHCO3、水および塩水で洗浄した。有機相を乾燥(硫酸ナトリウム)し、溶媒を減圧除去した。白色固体をトルエンから再結晶して、1.28 g(70 %)を得た。
1H NMR(CDCl3):2.95(m, 1H);3.40(m, 3H);3.85(m, 1H);4.15(m, 2H);4.40(dd, 1H, J=5Hz, J=11.9Hz);4.5-4.8(m, 5H);5.15(dd, 1H;J=3.1Hz, 10.4Hz);5.40(dd, 1H, J=7.7Hz, J=9.4Hz);5.65(m, 2H), 7.0-8.0(m, 25H)。
【実施例14】
【0127】

氷浴で冷却した、ピリジン(40 mL)中のベンジリデン-β-ベンジルラクトシド(実施例9, 6.2 g, 11.9 mmol)の溶液に、BzCl(13.8 mL)を滴下した。反応混合物をこの温度にて30分間、室温にて一夜撹拌した。MeOHで反応を停止し、溶媒を減圧蒸発させた。残渣をDCMに溶解し、水、1N HCl、水、NaHCO3および塩水で洗浄した。有機相を乾燥(硫酸ナトリウム)し、溶媒を減圧除去した。得られた固体をEtOAc/ヘキサンから再結晶して、9.1g(73 %)の白色固体を得た。M.p.:162-164℃。
1H NMR(CDCl3) δ(ppm):2.95(m, 1H);3.58(m, 1H);3.78(m, 2H);4.25(m, 2H);4.40(dd, 1H, J=4.3Hz, J=12.1Hz);4.55(d, 1H, 12.5Hz);4.65(m, 1H);4.70(d, 1H, J=7.7Hz);4.78(d, 1H;12.5Hz);4.85(d, 1H, J=7.9Hz);5.15(dd, 1H, J=3.4Hz, J=10.4Hz);5.30(s, 1H);5.40(dd, 1H, J=7.8Hz, J=9.2Hz);5.75(m, 2H).7.05-8.05(m, 35H)。
【実施例15】
【0128】

DCM(140 mL)およびMeOH(20 mL)混合物中のペンタベンゾイル油状物(実施例14, 22.0 g, 21 mmol)の溶液に、TsOH一水和物(1.6g, 0.4eq)を加え、反応混合物を40℃にて2日間撹拌した。この後、NaHCO3の飽和溶液を加え、混合物を15分間撹拌した。相を分離し、乾燥(Na2SO4)した後、有機相を水および塩水で洗浄した。溶媒を真空蒸発させ、得られた固体をEtOAc(200 mL)に懸濁させ、スラリーを一夜撹拌し、濾過し、乾燥して、14.5 g(74 %)を得た。Mp.:220-222.5℃。
1H NMR(CDCl3):2.95(m, 1H);3.35(m, 3H);3.80(m, 1H);4.20(m, 2H);4.40(dd, 1H, J=5Hz, J=11.9Hz);4.5-4.9(m, 5H);5.07(dd, 1H;J=3.1Hz, 10.4Hz);5.45(dd, 1H, J=7.7Hz, J=9.4Hz);5.70(m, 2H), 7.0-8.1(m, 30H)。
【実施例16】
【0129】

-40℃に冷却した、CH3CN/DCM 1/1(1200 mL)中のドナー−アクセプター混合物(100 gのアクセプターおよび107 gのドナー)の溶液に、NIS(78 g)を加え、混合物を15分間撹拌した。この後、TfOH(5.1 mL)を加え、反応物を-40〜-50℃にて2時間撹拌した。次いで、Et3N(35 mL)を加え、溶液をEtOAc(750 mL)で希釈し、Na2S2O3(750 mL)を加え、溶液を明黄色になるまで撹拌した。混合物をNa2S2O3(750 mL)および塩水(500 mL)で洗浄した。有機相を乾燥(硫酸マグネシウム)し、減圧蒸発させた。粗生成物を3LのTBME中で結晶化させて、2収穫で80 gを得た。
1H NMR δ(CD3OD) in ppm:1.05-1.3(m, 45H);1.75-2.25(m, 16H);2.6(dd, 1H, J=4.5Hz, J=12.7Hz);3.5-3.75(m, 8H);3.9-4.10(m, 5H), 4.3(m, 2H);4.5(m, 4H);4.75-5(m, 4H);5.2(m, 3H);5.3(m, 2H);7.25(m, 5H)。
13C NMR:21.02;21.1;21.32;23.09;23.45;27.33;27.38;27.43;27.51;38.90;39.08;53.24;62.34;62.68;62.70;62.72;66.44;67.46;68.87;69.09;69.4;70.56;71.78;71.83;73.00;73.13;73.43;73.54;73.88;73.89;99.26;99.38;99.92;128.17;128.57;136.84;168.09;170.38;170.41;171.00;171.22;178.00。
【実施例17】
【0130】

-40℃に冷却した、CH3CN/DCM 1/1(65 mL)中のドナー−アクセプター混合物(アクセプター:5.3 g、ドナー:8.5 g)の溶液に、2 mLのMeCN中のTMSOTf(0.186 mL, 0.16当量)を加えた。反応混合物を-35〜-40℃にて3時間撹拌し、この後、Et3Nを加えて酸を中和した。溶液を30 mLのEtOAcで希釈し、有機相を30 mLの水および40 mLの塩水で洗浄し、有機相を乾燥(Na2SO4)し、溶媒を減圧蒸発させた。残渣を70℃にて20 mLのiBuOAcに溶解し、70 mLのi-Pr2Oを加えた。溶液を4℃にて一夜結晶化させた。結晶を濾過により回収し、i-Pr2Oで洗浄し、4.3 gの純粋な生成物(51 %)を得た。
【実施例18】
【0131】

-40℃に冷却した、CH3CN/DCM 1/1(65 mL)中のドナー−アクセプター混合物(アクセプター:5.3 g、ドナー:9.42 g)の溶液に、2 mLのMeCN中のTMSOTf(0.186 mL)を加えた。反応混合物を-35〜-40℃にて3時間撹拌し、この後、Et3Nを加えて酸を中和した。溶液を30 mLのEtOAcで希釈し、有機相を30 mLの水および40 mLの塩水で洗浄し、有機相を乾燥(Na2SO4)し、溶媒を減圧蒸発させた。残渣を70℃にて20 mLのiBuOAcに溶解し、70 mLのi-Pr2Oを加えた。溶液を4℃にて一夜結晶化させた。結晶を濾過により回収し、i-Pr2Oで洗浄し、4.3 gの純粋な生成物(51 %)を得た
【実施例19】
【0132】
【化41】

一般手順:-20℃に冷却した、DCM/THF混合物(75 mL + 15 mL)中のドナー(1.4当量)およびアクセプター(10.5 mmol)の溶液に、NBS(1.6当量)、次いで、TfOH(0.42当量)を加えた。反応混合物をこの温度にて30分間撹拌した。飽和水性NaHCO3(45 mL)中の7.5 % Na2S2O3の溶液を加えて反応を停止し、二相混合物を20分間撹拌し、相を分離し、有機相を水で1回洗浄した。生成物をさらに精製することなく酸性脱保護ステップに付した。
R4:ベンゾイル
1H NMR(CDCl3) δ(ppm):1.85(s, 3H);1.9(s, 3H);2-2.2(m, 13H);2.48(dd, 1H;J=4.8Hz, J=12.9Hz);3.07(m, 1H);3.2(m, 1H);3.35(m, 1H);3.65(m, 1H);3.8(m, 4H);4.1(m, 1H);4.2-4.4(m, 3H);4.4-4.6(m, 3H);4.65-4.9(m, 4H);5.05(m, 1H);5.15(M, 1H);5.25(m, 1H);5.7(m, 12H);7-7.6(m, 20H);7.8-8.1(m, 10H)。
13C NMR(CDCl3) δ(ppm):20.7, 20.8, 20.9, 21.0, 25.8, 27.4, 38.4, 52.7, 56.4, 62.2, 65.1(2C), 67.0, 68.1, 68.8, 70.1, 70.2, 72.0, 72.3, 72.6, 73.1, 73.3, 74.3, 97.8, 98.5, 101.5, 127.6, 129.6, 132.8-133.4, 136.5, 164.9, 165.2(2C), 165.6, 166.6, 169.4, 170.3, 170.8, 171.4, 173.4, 174.6。
R4:ピバロイル
1H NMR(CDCl3) δ(ppm):1.05-1.3(m, 15H);1.75(dd, 1H, J=10.9Hz, J=12.9Hz);1.95, 2.0, 2.05, 2.15, 2.25(5s, 18H);2.64(dd, 1H, J=5.5Hz, 12.9Hz);3.18(m, 1H);3.35(m, 1H);3.53(m, 1H);3.75(m, 1H);3.85(s, 3H);4.15-4.25(m, 4H);4.35-4.45(m, 2H);4.45-4.65(m,5H);4.8(m, 1H);4.95(dd, 1H, J=7.9Hz, J=9.7Hz);5.05(m, 1H);5.1-5.3(m, 5H);5.7(m, 1H);7.5(m, 5H)。
13C NMR(CDCl3) δ(ppm):20.99, 21.14, 21.19, 21.23, 27.29, 27.40, 27.42, 38.76, 38.89, 38.90, 39.06, 39.12, 53.04, 54.67, 57.00, 60.39, 62.25, 65.66, 66.97, 68.86, 69.59, 69.82, 70.45, 71.69, 72.00, 72.61, 72.77, 73.40, 73.65, 98.30, 99.25, 100.25, 128.11, 128.16, 128.53, 136.82, 166.92, 169.71, 170.56, 170.80, 171.41, 173.72, 174.71, 176.42, 177.00, 177.12, 179.91。
【実施例20】
【0133】
【化42】

4℃に冷却した、DCM(100 mL)中のドナー(10g, 17.4 mmol)およびアクセプター(1.4 当量)の溶液に、BF3・OEt2(1.6 mL, 0.75 当量)を加え、反応物をこの温度にて16時間撹拌した。NaHCO3で反応を停止し、二相混合物を10分間撹拌した。有機相を水で洗浄し、減圧蒸発した。残渣をさらに精製することなく、酸性脱保護ステップに付した。
R4:4-メチルベンゾイル
1H NMR(CDCl3) δ(ppm):1.85(s, 3H);1.9(s, 3H);2-2.2(m, 13H);2.25-2.44(m, 15H);2.48(dd, 1H;J=4.8Hz, J=12.9Hz);3.07(m, 1H);3.2(m, 1H);3.35(m, 1H);3.65(m, 1H);3.8(m, 4H);4.1(m, 1H);4.2-4.4(m, 3H);4.4-4.6(m, 3H);4.65-4.9(m, 4H);5.05(m, 1H);5.15(M, 1H);5.25(m, 1H);5.7(m, 12H);6.9(m, 2H);7-7.25(m, 13H);7.7-7.9(m, 10H)。
13C NMR(CDCl3) δ(ppm):20.7, 20.8, 20.9, 21.0, 21.14, 21.27, 21.62, 21.66, 25.8, 27.4, 38.4, 52.7, 56.4, 62.2, 65.1(2C), 67.0, 68.1, 68.8, 70.1, 70.2, 72.0, 72.3, 72.6, 73.1, 73.3, 74.3, 97.8, 98.5, 101.5, 127.6, 129.6, 132.8-133.4, 136.5, 164.9, 165.2(2C), 165.6, 166.6, 169.4, 170.3, 170.8, 171.4, 173.4, 174.6。
R4:イソブチリル
1H NMR(CDCl3) δ(ppm):1.0(m, 30H), 1.6(dd, 1H, J=1.8Hz, J=2.05Hz);1.80, 1.87, 1.90, 1.97(4s, 12H);2.12(2s, 6H);2.2-2.6(m, 6H);3.15(m, 1H);3.25(m, 1H);3.4(m, 1H);3.55-3.8(m, 6H);3.95-4.3(m, 4H);4.3-4.55(m, 5H);4.67(d, 1H, J=12Hz);4.75-5.2(m, 7H);7.1(m, 5H)。
13C NMR(CDCl3) δ(ppm):18.59, 18.80, 18.86, 18.94, 19.07, 19.12, 19.28, 19.29, 19.32, 20.84, 20.98, 20.99, 21.11, 25.95, 27.98, 33.96, 34.03, 34.07, 50.28, 52.29, 54.67, 56.79, 60.16, 61.93, 62.21, 65.51, 68.73, 69.23, 69.63, 70.51, 71.49, 72.33, 72.39, 72.82, 73.17, 73.23, 75.74, 98.19, 99.10, 101.12, 127.92, 128.04, 128.47, 136.79, 166.78, 169.64, 170.42, 170.75, 171.49, 173.66, 174.83, 175.32, 175.54, 175.64, 175.70, 176.49。
【実施例21】
【0134】
【化43】

実施例19または20で得られたシロップ状物をMeOHで希釈し、5℃に冷却し、硫酸を滴下した。反応混合物をこの温度にて48時間撹拌し、Et3Nで中和した。MeOHを蒸発させ、残渣をEtOAcに溶解し、水で1回および5/1の水/塩水で洗浄した。有機相を減圧蒸発させ、残渣を結晶化させた(収率:2つのステップで50-60 %)。
R2:ベンジル, R4:ベンゾイル
1H(CD3OD) δ(ppm):1.5(dd, 1H, J=11.7Hz, J=12.6Hz);2.0(s, 3H);2.45(dd, 1H, J=4.6Hz, J=12.8Hz);3.2(m, 1H);3.4-3.7(m, 7H);3.7-3.85(m, 5H);3.95(m, 1H);4.1(d, 1H, J=3.5Hz);4.25(dd, 1H, J=9.2Hz, J=9.5Hz);4.45-4.65(m, 3H);4.75(d, 1H, J=12.2Hz);5.15(dd, 1H, J=3.3Hz, J=10.4Hz);5.35(dd, 1H, J=8Hz, J=9.7Hz);5.64(dd, 1H, J=7.9Hz, J=10.3Hz);5.69(dd, 1H, J=9.2Hz, J=9.4Hz);7.05-7.65(m, 20H;7.8-8.1(m, 10H)。
13C(CD3OD) δ(ppm):21.62, 39.03, 52.37, 52.44, 60.04, 63.14, 65.25, 67.44, 68.41, 70.50, 70.87, 72.58, 73.24, 73.39, 73.66, 73.97, 74.79, 77.15, 127.73, 128.16, 128.27, 128.37, 128.63, 129.08, 129.41, 129.46, 129.49, 129.54, 129.59, 129.72, 129.81, 129.89, 133.18, 137.18, 165.63, 165.66, 165.95, 166.01, 166.22, 169.35, 173.99。
R2:ベンジル, R4:ピバロイル
1H NMR(CDCl3) δ(ppm):1.0-1.3(m, 45H);1.9(t, J=12.2Hz);2.05(s, 3H);2.72(m, 2H);3.15(m, 1H);3.45(m, 1H);3.55(m, 3H);3.7-3.9(m, 10H);4.02(m, 1H);4.22(dd, 1H, J=5.5Hz, J=11.5Hz);4.4-4.6(m, 4H);4.72-4.85(m, 3H);4.95(dd, 1H, J=7.9Hz, J=9.6Hz);5.13(dd, 1H, J=7.9Hz, J=10.3Hz);5.18(t, 1H, 9.4Hz);6.65(d, 1H, J=6.5Hz);7.2-7.35(m, 5H)。
13C(CDCl3) δ(ppm):23.22, 27.23, 27.29, 27.37, 27.37, 27.44, 27.52, 27.59, 31.20, 38.94, 39.07, 39.12, 53.18, 53.65, 62.32, 63.68, 66.12, 67.77, 68.72, 69.41, 69.95, 70.92, 71.70, 71.79, 73.44, 73.70, 74.03, 99.13, 99.64, 99.83, 128.74, 129.32, 133.90, 135.38, 169.61, 174.25, 176.64, 177.19, 177.57, 177.87, 178.21。
R2:ベンジル, R4:4-メチルベンゾイル
1H(CD3OD) δ(ppm):1.5(dd, 1H, J=11.7Hz, J=12.6Hz);2.0(s, 3H);2.25(s, 3H);2.31-2.43(m, 12H);2.48(dd, 1H, J=4.6Hz, J=12.8Hz);3.2(m, 1H);3.4-3.7(m, 7H);3.7-3.85(m, 5H);3.90(m, 1H);4.1(d, 1H, J=3.5Hz);4.24(dd, 1H, J=9.2Hz, J=9.5Hz);4.44-4.64(m, 3H);4.73(d, 1H, J=12.2Hz);5.12(dd, 1H, J=3.2Hz, J=10.4Hz);5.32(dd, 1H, J=8Hz, J=9.6Hz);5.57-5.70(m, 2H);6.87(m, 2H);7.05-7.3(m, 13H);7.65-7.95(m, 10H)。
13C(CD3OD) δ(ppm):21.05, 21.14, 21.27, 21.62, 21.66, 39.03, 52.37, 52.44, 60.04, 63.14, 65.25, 67.44, 68.41, 70.50, 70.87, 72.58, 73.24, 73.39, 73.66, 73.97, 74.79, 77.15, 127.73, 128.16, 128.27, 128.37, 128.63, 129.08, 129.41, 129.46, 129.49, 129.54, 129.59, 129.72, 129.81, 129.89, 133.18, 137.18, 165.63, 165.66, 165.95, 166.01, 166.22, 169.35, 173.99。
R2:4-クロロベンジル, R4:ピバロイル
1H NMR(CDCl3) δ(ppm):1.0-1.3(m, 45H);1.9(t, J=12Hz);2.05(s, 3H);2.64(d, 1H, J=5.4);2.75(dd, 1H, J=3.7Hz, J=12.5Hz);2.9(m, 1H);3.3(m, 1H);3.45(m, 1H);3.55(m, 2H);3.65-3.95(m, 10H);4.02(m, 1H);4.21(dd, 1H, J=5.3Hz, J=11.7Hz);4.4-4.6(m, 4H);4.67-4.85(m, 2H);4.95(dd, 1H, J=8.3Hz, J=9.4Hz);5.15(m, 2H);6.48(d, 1H, J=7.5Hz);7.18(m, 2H);7.28(m, 2H)。
13C(CDCl3) δ(ppm):23.22, 27.28, 27.30, 27.37, 27.43, 27.52, 27.58, 31.19, 38.93, 39.07, 39.12, 53.18, 53.65, 62.32, 63.66, 66.15, 67.81, 68.77, 69.50, 70.02, 70.99, 71.67, 71.81, 73.45, 73.59, 73.98, 99.09, 99.69, 100.01, 128.53, 129.11, 133.75, 135.19, 169.54, 174.21, 176.59, 177.08, 177.42, 177.57, 178.17。
R2:1-ナフチルメチル, R4:ピバロイル
1H NMR(CDCl3) δ(ppm):1.0-1.4(m, 45H);1.85(t, J=12.2Hz);2.05(s, 3H);2.69(dd, 1H, J=3.7Hz, J=12.5Hz);2.8(m, 1H);3.45(m, 1H;3.55(m, 3H);3.7-3.95(m, 10H);4.05(m, 1H);4.22(dd, 1H, J=5.6Hz, J=11.8Hz);4.44(d, 1H, J=7.8Hz);4.54(m, 1H);4.61(d, 1H, J=7.9Hz);4.78(dd, 1H, J=3.2Hz, J=10.4Hz);4.95(m, 2H);5.12(m, 2H);5.3(d, 1H, 11.7Hz);7.35-7。5(m, 4H);7.8(m, 2H);8.0(m,1H)。
13C(CDCl3) δ(ppm):22.96, 27.12, 27.27, 27.32, 27.37, 27.47, 31.15, 38.75, 38.83, 38.87, 39.00, 39.12, 53.62, 54.67, 55.07, 61.43, 62.27, 63.77, 65.94, 66.81, 68.61, 68.99, 69.41, 70.94, 71.65, 71.91, 73.32, 73.52, 74.31 99.25, 99.36, 99.93, 123.92, 125.31, 126.04, 126.62, 127.06, 128.72, 129.16, 131.80, 132.26, 132.26, 133.77, 169.77, 174.51, 176.41, 176.91, 177.38, 177.76, 178.07。
R2:4-メチルベンジル, R4:ピバロイル
1H NMR(CDCl3) δ(ppm):1.0-1.3(m, 45H);1.9(t, J=12.3Hz);2.05(s, 3H);2.25(s, 3H);2.65(m, 1H);2.83,(m, 1H);3.35(m, 1H);3.45(m, 1H);3.55(m, 3H);3.6-3.85(m, 12H);3.95(m, 1H);4.15(m, 1H);4.32-4.5(m, 3H);4.63-4.8(m, 2H);4.85(dd, 1H, J=8Hz, J=9.4Hz);5.08-5.15(m, 2H);7.05(m, 5H)。
13C(CDCl3) δ(ppm):21.10, 22.93, 27.02, 27.03, 27.09, 27.17, 38.64, 38.78, 38.84, 53.36, 54.89, 61.33, 62.32, 63.34, 65.87, 67.38, 68.38, 68.60, 69.16, 70.18, 70.65, 71.44, 71.69, 73.18, 73.33, 73.77, 98.71, 98.88, 99.63, 128.12, 128.99, 133.23, 137.75, 169.33, 173.98, 176.32, 176.98, 177.28, 177.56, 177.95。
【実施例22】
【0135】

方法A:5倍容のMeOH中の実施例16-21のいずれかの保護または部分保護三糖の溶液に、NaOHの1M水溶液をゆっくりと加えた。反応混合物を室温にて一夜撹拌し、アンバーライトIR 120 Hを加えて塩基を中和した。混合物を濾過し、溶媒を減圧蒸発させた。次いで、物質をMeOHおよびEtOHに溶解し、TBMEをゆっくりと加えた。沈殿を濾去し、TBMEで2回洗浄した。得られた白色固体を1M NaOHに溶解し、反応混合物を6時間撹拌した。IR-120 Hを用いて塩基を中和し、溶媒を減圧蒸発させた。EtOHと共蒸発(2回)させた後、生成物をMeOHに溶解し、i-PrOHをゆっくりと加えて、遊離酸状態の固体を得た。
【0136】
方法B:MeOH中の実施例16-21のいずれかの保護または部分保護三糖の溶液に、NaOMeを加え、反応混合物を45℃にて5時間撹拌した。冷却した溶液をヘプタンで洗浄し、アセトンを加えた。沈殿を濾去し、1M NaOHに溶解し、反応混合物を6時間撹拌した。IR-120 Hを用いて塩基を中和し、溶媒を減圧蒸発させた。EtOHと共蒸発(2回)させた後、生成物をMeOHに溶解し、i-PrOHをゆっくりと加えて、遊離酸状態の固体を得た。
R2:ベンジル
1H(CD3OD) δ(ppm):1.63(t, 1H, J=11.9Hz);2.00(s, 3H);2.78(dd, 1H, J=4.5Hz, J=12.2Hz);3.28-3.49(m, 4H);3.50-3.79(m, 9H);3.80-3.97(m, 5H);4.02(dd, 1H, J=7.5Hz, J=10Hz);4.35(m, 1H);4.42(d, 1H, J=7.8Hz);4.66(d, 1H, J=11.7Hz);7.22-7.37(m, 3H);7.38-7.46(m, 2H)。
13C(CD3OD) δ(ppm):21.55, 41.26, 52.70, 60.81, 63.21, 63.42, 68.56, 69.01, 69.30, 70.66, 71.15, 72.12, 73.08, 73.55, 73.78, 74.47, 75.28, 75.32, 80.03, 100.29, 101.89, 103.36, 127.36, 127.87, 128.01, 128.12, 137.72, 173.36, 173.88。
R2:4-クロロベンジル
1H(CD3OD) δ(ppm):1.62(t, 1H, J=12Hz);2.00(s, 3H);2.77(dd, 1H, J=4.7Hz, J=12.1Hz);3.28-3.49(m, 4H);3.50-3.79(m, 9H);3.80-3.97(m, 5H);4.02(dd, 1H, J=7.5Hz, J=10Hz);4.35(m, 1H);4.42(d, 1H, J=7.8Hz);4.66(d, 1H, J=11.7Hz);7.24(m, 2H);7.32(m, 2H)。
13C(CD3OD) δ(ppm):21.52, 41.23, 52.72, 60.79, 63.23, 63.42, 68.61, 69.03, 69.31, 70.56, 71.14, 72.13, 73.11, 73.56, 73.79, 74.48, 75.23, 75.31, 80.09, 100.17, 101.91, 103.21, 127.36, 127.89, 133.01, 136.76, 173.29, 173.78。
R2:1-ナフチルメチル
1H(CD3OD) δ(ppm):1.62(t, 1H, J=11.8Hz);2.00(s, 3H);2.78(dd, 1H, J=4.5Hz, J=12.2Hz);3.28-3.49(m, 4H);3.50-3.79(m, 9H);3.80-3.97(m, 5H);4.02(dd, 1H, J=7.6Hz, J=10.1Hz);4.35(m, 1H);4.42(d, 1H, J=7.8Hz);4.68(d, 1H, J=11.8Hz);7.32-7。54(m, 4H);7.7(m, 2H);7.95(m,1H)。
13C(CD3OD) δ(ppm):21.54, 41.28, 52.72, 60.81, 63.20, 63.44, 68.53, 69.06, 69.38, 70.64, 71.12, 72.14, 73.05, 73.54, 73.65, 74.45, 75.24, 75.33, 80.02, 100.25, 101.87, 103.21, 122.91, 124.82, 125.25, 125.93, 127.06, 128.72, 129.16, 132.80, 133.12, 135.97, 136.88, 173.36, 173.88。
R2:4-メチルベンジル
1H(CD3OD) δ(ppm):1.63(t, 1H, J=11.9Hz);2.00(s, 3H);2.32(s, 3H);2.78(dd, 1H, J=4.5Hz, J=12.2Hz);3.28-3.49(m, 4H);3.50-3.79(m, 9H);3.80-3.97(m, 5H);4.02(dd, 1H, J=7.5Hz, J=10Hz);4.35(m, 1H);4.42(d, 1H, J=7.8Hz);4.66(d, 1H, J=11.7Hz);7.21(m, 4H)。
13C(CD3OD) δ(ppm):20.02, 21.55, 41.26, 52.70, 60.81, 63.21, 63.42, 68.56, 69.01, 69.30, 70.66, 71.15, 72.12, 73.08, 73.55, 73.78, 74.47, 75.28, 75.32, 80.03, 99.98, 100.89, 102.36, 127.36, 127.87, 128.01, 128.12, 133.26, 137.72, 173.36, 173.88
【実施例23】
【0137】

メタノールおよび水(250 mL + 300 mL)混合液中の40 gの遊離酸の溶液に、4 gのPd/C(10%)を加えた。反応混合物を水素圧下(バルーン)、室温にて2日間撹拌した。次いで、混合物を、セライトバッドを通して濾過し、溶媒を減圧蒸発させた。残渣を80 mLのH2Oに溶解し、1200 mLのEtOHに滴下した。スラリーを濾過し、固体をアセトンおよび1/1のアセトン/Et2O混合液で洗浄した。固体を乾燥(硫酸マグネシウム)して、35 gの6'-O-シアリルラクトースを得た。
1H(D2O)(グルコースのアノマー混合物 0.6/0.4 β/α) :1.75(dd, 1H, J=12.0Hz, J=11.9Hz);2.05(s, 3H);2.7(dd, 1H, J=12.0Hz, J=4.6Hz);3.31(dd, 0.6H, J=7.8Hz, J=8.9Hz);3.5-3.75(m, 11.4H), 3.76-4.05(m, 8.9H);4.43(d, 1H, J=7.8Hz);4.67(d, 0.6H, J=7.8Hz), 5.23(d, 0.4H, J=3.8Hz)。
13C:19.51, 24.78, 42.82, 54.51, 60.15, 62.83, 62.99, 65.36, 66.3, 71.1, 71.24, 72.68, 73.51, 73.78, 74.35, 74.53, 75.09, 75.24, 76.42, 76.45, 77.35, 77.39, 82.35, 82.46, 94.54, 98.37, 103.01, 105.92, 105.95, 176.21, 177.64。
【実施例24】
【0138】
塩形成
酸性6'-SLまたは6'-SLグリコシドから、6'-SLまたは6'-SLグリコシドの無機および有機塩が得られた。アルコールまたはアルコール/水中の酸のpHを、エタノールアミン、ジエチルアミン、トリス-(ヒドロキシメチル)-メチルアミン塩基および水酸化コリンから選ばれる有機塩基または金属水酸化物、金属炭酸塩および金属重炭酸塩から選ばれる無機塩基で8,5-11に調節した。次いで、混合物をアルコールで希釈し、減圧濃縮した。次いで、得られたスラリーを濾過し、アルコールで洗浄した。

1H(CD3OD) δ(ppm):1.63(t, 1H, J=11.9Hz);2.02(s, 3H);2.82(m, 1H);3.33-3.45(m, 4H);3.46-3.61(m, 5H);3.62-3.97(m, 12H);4.02(dd, 1H, J=7.5Hz, J=10Hz);4.37(m, 2H);4.66(d, 1H, J=11.9Hz);7.31(m, 3H);7.41(m, 2H)。
13C(CD3OD) δ(ppm):21.10, 40.60, 52.04, 60.22, 62.78, 67.90, 68.51, 68.69, 70.11, 70.61, 70.64, 71.44, 72.44, 72.83, 73.17, 73.92, 74.50, 74.70, 79.82, 99.76, 101.23, 103.52, 127.00, 127.44, 127.56, 137.21, 172.68, 173.28。

1H(CD3OD) δ(ppm):1.71(t, 1H, J=11.1Hz);2.00(s, 3H);2.78(dd, 1H, J=4.5Hz, J=12.2Hz);3.28-3.49(m, 4H);3.50-3.79(m, 9H);3.80-3.97(m, 5H);4.02(dd, 1H, J=7.5Hz, J=10Hz);4.35(m, 1H);4.42(d, 1H, J=7.8Hz);4.66(d, 1H, J=11.7Hz);7.22-7.37(m, 3H);7.38-7.46(m, 2H)。
13C(CD3OD) δ(ppm):21.77, 41.09, 52.78, 60.87, 61.32, 63.06, 63.64, 63.21, 68.26, 69.11, 70.67, 71.22, 71.36, 72.01, 73.00, 73.37, 73.58, 73.66, 74.39, 75.19, 75.32, 75.87, 79.40, 80.35, 99.92, 101.86, 101.94, 103.86, 104.00, 127.55, 127.99, 128.13, 137.83, 174.03, 174.08

1H(CD3OD) δ(ppm):1.63(dd, 1H, J=11.7Hz, J=12.2Hz);2.00(s, 3H);2.78(dd, 1H, J=4.5Hz, J=12.2Hz);2.92(m, 4H);3.33-3.47(m, 2H);3.46-3.57(m, 5H);3.58-3.78(m, 9H);3.78-3.90(m, 5H);3.93(dd, 1H, J=2.5, J=11.7Hz);4.02(dd, 1H, J=7.5Hz, J=10Hz);4.35(m, 1H);4.42(d, 1H, J=7.8Hz);4.66(d, 1H, J=11.7Hz);7.22-7.37(m, 3H);7.38-7.46(m, 2H)。
13C(CD3OD) δ(ppm):21.55, 41.26, 44.83, 52.70, 58.85, 60.81, 63.21, 63.42, 68.56, 69.01, 69.30, 70.66, 71.15, 72.12, 73.08, 73.55, 73.78, 74.47, 75.28, 75.32, 80.03, 99.98, 100.89, 102.36, 127.36, 127.87, 128.01, 128.12, 137.72, 173.36, 173.88

1H(CD3OD) δ(ppm):1.63(dd, 1H, J=11.9Hz, J=12.1Hz);2.00(s, 3H);2.78(dd, 1H, J=4.5Hz, J=12.2Hz);3.33-3.48(m, 2H);3.48-3.79(m, 19H);3.93(dd, 1H, J=2.5, J=11.8Hz);4.02(dd, 1H, J=7.5Hz, J=10Hz);4.35(m, 1H);4.42(d, 1H, J=7.8Hz);4.66(d, 1H, J=11.7Hz);7.22-7.37(m, 3H);7.38-7.46(m, 2H)。
13C(CD3OD) δ(ppm):21.60, 41.22, 52.71, 59.62, 60.89, 61.38, 63.23, 63.39, 68.64, 68.97, 69.25, 70.64, 71.26, 73.68, 75.24, 75.27, 80.16, 100.39, 101.87, 103.94, 127.52, 127.97, 128.00, 128.11, 137.85, 173.40, 173.90

1H(CD3OD) δ(ppm):1.28(t, 6H, J=11.8Hz);1.65(dd, 1H, J=11.9Hz, J=12.1Hz);2.00(s, 3H);2.79(dd, 1H, J=4.5Hz, J=12.2Hz);3.00(q, 4H);3.33-3.57(m, 7H);3.57-3.77(m, 5H);3.78-3.89(m, 4H);3.93(dd, 1H, J=11.9Hz, J=2.4Hz);4.00(dd, 1H, J=7.1Hz, J=9.7Hz);4.35(m, 1H);4.42(d, 1H, J=7.8Hz);4.66(d, 1H, J=11.8Hz);7.22-7.37(m, 3H);7.38-7.46(m, 2H)。
13C(CD3OD) δ(ppm):10.64, 21.57, 41.29, 42.29, 52.74, 60.89, 63.23, 63.43, 68.63, 68.95, 69.30, 70.62, 71.25, 72.04, 73.06, 73.41, 73.73, 74.47, 75.26, 75.28, 80.15, 100.41, 101.90, 103.95, 127.51, 127.97, 127.99, 128.10, 137.88, 173.35, 173.85
【0139】

1H(CD3OD) δ(ppm):1.63(dd, 1H, J=11.9Hz, J=12.1Hz);1.98(s, 3H);2.80(dd, 1H, J=4.5Hz, J=12.2Hz);3.19(s, 9H);3.33-3.56(m, 8H);3.56-3.77(m, 7H);3.78-3.94(m, 5H);3.95-4.04(m, 4H);4.34(m, 1H);4.39(d, 1H, J=7.8Hz);4.66(d, 1H, J=11.8Hz);7.22-7.36(m, 3H);7.40(m, 2H)。
13C(CD3OD) δ(ppm):21.56, 40.95, 41.34, 52.75, 53.48, 53.53, 53.59, 55.92, 60.96, 63.15, 63.50, 63.84, 67.85, 68.65, 68.90, 69.31, 69.47, 70.61, 71.28, 72.05, 73.05, 73.41, 73.72, 74.45, 75.29, 76.89, 80.17, 100.42, 101.92, 103.97, 109.98 127.52, 127.97, 128.11, 137.90, 138.29, 173.26, 173.85
【0140】
6'-SL Na
1H(D2O) δ(ppm):1.54(t, 1H, J=12.1Hz);1.82(s, 3H);2.52(dd, 1H, J=4.8Hz, J=12.3Hz);3.10(m, 1H);3.27-3.55(m, 10H);3.56-3.82(m, 9H);4.23(d, 1H, J=7.8Hz);4.48(d, 0.7H, J=8Hz);5.03(d, 0.3H, J=3.7Hz)。
13C(D2O) δ(ppm):22.17, 40.19, 51.87, 52.10, 60.38, 62.71, 63.68, 68.46, 68.61, 70.87, 71.90, 72.44, 72.60, 73.78, 74.04, 74.68, 74.76, 79.80, 79.86, 96.16, 100.36, 103.33, 173.62, 174.99。
【0141】
6'-SL Zn2+
1H(D2O) δ(ppm):1.54(t, 1H, J=12.1Hz);1.82(s, 3H);2.52(dd, 1H, J=4.8Hz, J=12.3Hz);3.10(m, 1H);3.27-3.55(m, 10H);3.56-3.82(m, 9H);4.23(d, 1H, J=7.8Hz);4.48(d, 0.7H, J=8Hz);5.03(d, 0.3H, J=3.7Hz)。
13C(D2O) δ(ppm):22.16, 40.16, 51.87, 60.15, 60.31, 62.69, 63.67, 68.45, 68.60, 70.02, 70.86, 71.12, 71.72, 71.88, 72.43, 72.59, 73.77, 74.71, 74.73, 79.69, 91.90, 95.72, 100.34, 103.31, 173.63, 174.99。
【0142】
6'-SL エタノールアンモニウム塩
1H(D2O) δ(ppm):1.54(t, 1H, J=12.1Hz);1.82(s, 3H);2.52(dd, 1H, J=4.8Hz, J=12.3Hz);2.92(m, 2H);3.10(m, 1H);3.27-3.55(m, 10H);3.56-3.82(m, 11H);4.23(d, 1H, J=7.8Hz);4.48(d, 0.7H, J=8Hz);5.03(d, 0.3H, J=3.7Hz)。
13C(D2O) δ(ppm):22.16, 40.19, 41.37, 51.87, 52.09, 57.93, 60.32, 62.70, 63.67, 68.46, 68.62, 70.03, 70.87, 71.13, 71.91, 72.43, 72.60, 73.80, 74.71, 74.74, 79.69, 79.80, 95.73, 100.35, 103.32, 173.61, 174.98。
【0143】
6'-SL トリス-(ヒドロキシメチル)-メチルアンモニウム塩
1H(D2O) δ(ppm):1.54(t, 1H, J=12.1Hz);1.82(s, 3H);2.52(dd, 1H, J=4.8Hz, J=12.3Hz);3.10(m, 1H);3.56-3.82(m, 9H);4.24(d, 1H, J=7.8Hz);4.47(d, 0.7H, J=8Hz);5.02(d, 0.3H, J=3.7Hz)。
13C(D2O) δ(ppm):22.15, 40.19, 51.87, 59.90, 60.83, 62.70, 63.67, 68.46, 68.61, 70.03, 70.87, 71.13, 71.72, 71.90, 72.43, 72.60, 73.79, 74.71, 74.74, 79.70, 79.81, 95.73, 100.35, 103.32, 173.60, 174.98。
【0144】
6'-SL ジエチルアンモニウム塩
1H(D2O) δ(ppm):1.05(t, 6H, J=7.3Hz);1.54(t, 1H, J=12.1Hz);1.82(s, 3H);2.52(dd, 1H, J=4.8Hz, J=12.3Hz);2.84(q, 4H, J=7.3Hz);3.10(m, 1H);3.27-3.55(m, 10H);3.56-3.82(m, 9H);4.23(d, 1H, J=7.8Hz);4.48(d, 0.7H, J=8Hz);5.03(d, 0.3H, J=3.7Hz)。
13C(D2O) δ(ppm):10.67, 22.13, 40.18, 42.35, 51.85, 52.09, 60.15, 60.31, 62.68, 63.67, 68.45, 68.58, 70.01, 70.84, 71.71, 71.88, 72.41, 72.58, 73.78, 74.72, 79.69, 79.80, 91.89, 95.72, 100.33, 103.31, 173.59, 174.95。
【0145】
6'-SL コリン塩
1H(D2O) δ(ppm):1.54(t, 1H, J=12.1Hz);1.82(s, 3H);2.52(dd, 1H, J=4.8Hz, J=12.3Hz);2.99,(s, 9H);3.10(m, 1H);3.27-3.55(m, 12H);3.56-3.82(m, 11H);4.23(d, 1H, J=7.8Hz);4.48(d, 0.7H, J=8Hz);5.03(d, 0.3H, J=3.7Hz)。
13C(D2O) δ(ppm):22.14, 40.17, 51.85, 52.10, 53.87, 53.92, 53.97, 55.67, 60.31, 62.69, 63.67, 67.42, 67.46, 67.50, 68.45, 68.58, 70.85, 71.11, 71.88, 72.41, 72.58, 73.77, 74.72, 79.68, 79.80, 91.89, 95.72, 100.33, 103.31, 173.59, 174.95。
【実施例25】
【0146】
6'-SL K+
1 gの6'-SLを3 mLの水に溶解し、カチオン性イオン交換カラム(アンバーライトIRC50 K型)を通した。フラクション(2-7)を集め、凍結乾燥させた。
【実施例26】
【0147】
6'-SL Ca2+
1 gの6'-SLを3 mLの水に溶解し、カチオン性イオン交換カラム(アンバーライトIRC50 Ca2+型)を通した。フラクション(2-7)を集め、凍結乾燥させた。
【0148】
参考文献一覧
1. a) D.S. Newburg et al. Annu. Rev. Nutr. 2005, 25, 37-58 b) C. Kunz et al. Acta Pediatr. 1993, 82, 903-912.
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7. P.G.M. Wuts and T.W. Greene Protective Groups in Organic Synthesis, John Wiley & Sons, 2007
【0149】
略語リスト
CMP-Neu5Ac シチジン 5'-モノホスホ-N-アセチルノイラミン酸
DCM ジクロロメタン
DMF N,N'-ジメチルホルムアミド
DTPI ヨウ化2,6-ジ-tert-ブチルピリジニウム
GlcNAc N-アセチル-グルコサミン
HMOs 人乳オリゴ糖
6'-SL 6'-O-シアリルラクトース, Neu5Ac(α2-6)Gal(β1-4)Glc
NBS N-ブロモコハク酸イミド
NeuAc ノイラミン酸
NIS N-ヨードスクシンイミド
RT 室温
THF テトラヒドロフラン
TfOH トリフルオロメタンスルホン酸
TMSOTf トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル
Tol トルエン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)一般式3:
【化1】

[式中、
R1は、-OR2(ここで、R2は、接触水素化によって除去しうる基である)であるか、またはR1は、-SR3(ここで、R3は、必要に応じて置換されたアルキル、必要に応じて置換されたアリールおよび必要に応じて置換されたベンジルから選ばれる)であるか、またはR1は、-NH-C(R”)=C(R')2(ここで、各R'は、互いに独立して、-CN、-COOH、-COO-アルキル、-CO-アルキル、-CONH2、-CONH-アルキルおよび-CON(アルキル)2から選ばれる電子吸引基であるか、または2つのR'基が一緒になって、-CO-(CH2)2-4-CO-となり、それらが結合する炭素原子とともに5-7員のシクロアルカン-1,3-ジオンを形成し(このジオンにおいて、メチレン基のいずれかは、1または2個のアルキル基で必要に応じて置換される)、およびR”は、Hまたはアルキルである)である;
R4は、必要に応じて置換されたアシルおよび1〜3個のメトキシ基で置換されたベンジルから選ばれる]
で示されるアクセプターと、一般式4:
【化2】

[式中、
R5 は、必要に応じて置換されたアシルである;
R8は、-NHAcおよび-NAc2から選ばれる;
Qは、COO-アルキル(ここで、アルキルは、必要に応じて置換される);および
Xは、脱離基である]
で示されるドナーとの反応により、一般式2:
【化3】

[式中、R1、R4、R5、R8およびQは、前記と同意義である]
で示される化合物を得る;
b)一般式2の化合物の脱保護により、一般式1:
【化4】

[式中、R1は、前記と同意義である]
で示される化合物またはその塩を得る;
c)続いて、一般式1で示される化合物またはその塩を、6'-O-シアリルラクトースまたはその塩に変換する;
ステップを含む、6'-O-シアリルラクトースまたはその塩の製造方法。
【請求項2】
一般式1で示される化合物またはその塩を、
i)R1が、-OR2(ここで、R2は、接触水素化によって除去しうる基である)である場合、接触還元;または
ii)R1が、-SR3(ここで、R3は、必要に応じて置換されたアルキル、必要に応じて置換されたアリールおよび必要に応じて置換されたベンジルから選ばれる)である場合、チオ親和性試薬による活性化、次いで、加水分解;または
iii)R1が、-NH-C(R”)=C(R')2(ここで、各R'は、-CN、-COOH、-COO-アルキル、-CO-アルキル、-CONH2、-CONH-アルキルおよび-CON(アルキル)2から選ばれる電子吸引基であるか、または2つのR'基が一緒になって、-CO-(CH2)2-4-CO-となり、それらが結合する炭素原子とともに5-7員のシクロアルカン-1,3-ジオンを形成し(このジオンにおいて、メチレン基のいずれかは、1または2個のアルキル基で必要に応じて置換される)、およびR”が、Hまたはアルキルである)である場合、アミンまたはハロゲンによる処理、次いで、中性または弱酸性pHでの加水分解;
に付し、
次いで、6'-O-シアリルラクトースが得られる場合、それは必要に応じてその塩に変換され、該6'-O-シアリルラクトースの塩は、必要に応じてもう1つの6'-O-シアリルラクトースの塩に変換される;
ことを含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
R1が、-OR2(ここで、R2は、接触水素化によって除去しうる基であり、好ましくは、ベンジル、4-メチルベンジル、4-クロロベンジルおよび1-ナフチルメチルから選ばれる)である請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
請求項1に記載の一般式2で示される化合物に属する一般式2A:
【化5】

[式中、R2は、接触水素化によって除去しうる基である;
R4およびR5は、互いに独立して、必要に応じて置換されたアシルである;
R8は、-NHAcおよび-NAc2から選ばれる;および
Qは、-COO-アルキル(ここで、アルキルは、必要に応じて置換される)である]
で示される化合物を、
a)塩基触媒エステル交換反応、次いで、塩基性加水分解、任意の酸性化および任意の塩形成;または
b)塩基性加水分解、任意の酸性化および任意の塩形成;
のステップで脱保護し、一般式1で示される化合物またはその塩を得る、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
R2が、ベンジル、4-メチルベンジル、4-クロロベンジルおよび1-ナフチルメチルから選ばれる;R4が、イソブチリル、ピバロイルおよび必要に応じて置換されたベンゾイルから選ばれ、ピバロイルおよびベンゾイルが好ましい;R5が、アセチルである;Qが、-COOCH3である;および-OR2が、β型である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
請求項1に記載の一般式2で示される化合物に属する一般式2B:
【化6】

[式中、R2は、接触水素化によって除去しうる基である;
R4は、必要に応じて置換されたアシルであるが、ただし、アセチルは排除される;および
R8は、-NHAcおよび-NAc2から選ばれる]
で示される化合物を、選択的酸性脱保護に付して、一般式2C:
【化7】

[式中、R2およびR4は、前記と同意義である]
で示される化合物を得、次いで、
a)塩基触媒エステル交換反応、次いで、塩基性加水分解、任意の酸性化および任意の塩形成;または
b)塩基性加水分解、任意の酸性化および任意の塩形成;
に付して、一般式1で示される化合物またはその塩を得る、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
、選択的酸性脱保護が、一般式2Bで示される化合物[式中、-OR2は、β型であり、R2は、ベンジル、4-メチルベンジル、4-クロロベンジルおよび1-ナフチルメチルから選ばれ、R4は、イソブチリル、ピバロイルおよび必要に応じて置換されたベンゾイルから選ばれ、ベンゾイルが好ましい]において、硫酸の存在下で行われる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
請求項1に記載の一般式2で示される化合物に属する一般式2D:
【化8】

[式中、R2は、接触水素化によって除去しうる基である;
R4は、1〜3個のメトキシ基で置換されたベンジルである;
R5は、必要に応じて置換されたアシルである;
R8は、-NHAcまたは-NAc2から選ばれる;および
Qは、-COO-アルキル(ここで、アルキルは、必要に応じて置換される)である]
で表される、一般式2の化合物のグループを、以下のステップ:
a)もう1つの一般式2D[式中、R2は、前記と同意義である;R4は、1〜3個のメトキシ基で置換されたベンジルである;R5は、Hである;R8は、-NHAcである;およびQは、-COO-アルキル(ここで、アルキルは、必要に応じて置換される)である]で示される化合物が得られる塩基触媒エステル交換反応;次いで、
aa)もう1つの一般式2D[式中、R2は、前記と同意義である;各R4およびR5 は、Hである;R8は、-NHAcである;Qは、-COO-アルキル(ここで、アルキルは、必要に応じて置換される)である]で示される化合物が得られるジクロロジシアノキノン(DDQ)または硝酸セリウム(IV)アンモニウム(CAN)媒介性酸化、次いで、塩基性加水分解、任意の酸性化および任意の塩形成;または
ab)もう1つの一般式2D[式中、R2は、前記と同意義である;R4は、1〜3個のメトキシ基で置換されたベンジルである;R5は、Hである;R8は、-NHAcである;Qは、プロトン化または脱プロトン化された-COOHである]で示される化合物が得られる塩基性加水分解、任意の酸性化および任意の塩形成、次いで、ジクロロジシアノキノン(DDQ)または硝酸セリウム(IV)アンモニウム(CAN)媒介性酸化;
または
b)もう1つの一般式2D[式中、R2は、前記と同意義である;R4は、Hである;R5は、必要に応じて置換されたアシルである;R8は、-NHAcおよび-NAc2から選ばれる;およびQは、-COO-アルキル(ここで、アルキルは、必要に応じて置換される)である]で示される化合物が得られるジクロロジシアノキノン(DDQ)または硝酸セリウム(IV)アンモニウム(CAN) 媒介性酸化;次いで
ba)塩基触媒エステル交換反応、次いで、塩基性加水分解、任意の酸性化および任意の塩形成;または
bb)塩基性加水分解、任意の酸性化および任意の塩形成;
または
c)もう1つの一般式2D[式中、R2は、前記と同意義である;R4は、1〜3個のメトキシ基で置換されたベンジルである;R5は、Hである;R8は、-NHAcである;Qは、プロトン化または脱プロトン化された-COOHである]で示される化合物が得られる塩基性加水分解、任意の酸性化および任意の塩形成、次いで、ジクロロジシアノキノン(DDQ)または硝酸セリウム(IV)アンモニウム(CAN)媒介性酸化;
にしたがって脱保護して、一般式1で示される化合物またはその塩を得る、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
グリコシル化反応が、一般式4A, 4Bまたは4C:
【化9】

[式中、R5は、必要に応じて置換されたアシルである;R6は、C2-6アルキル、C3-6シクロアルキルおよび必要に応じて置換されたベンジルから選ばれる;R7は、置換ベンジルである;およびQは、-COO-アルキル(ここで、アルキルは、必要に応じて置換される)である]
で示されるドナーおよび一般式3A:
【化10】

[式中、R2は、接触水素化によって除去しうる基である;およびR4は、1〜3個のメトキシ基で置換されたベンジルおよび必要に応じて置換されたアシルから選ばれるが、ただし、アセチルは排除される]
で示されるアクセプターの使用を含む、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
6'-O-シアリルラクトースZn2+塩。
【請求項11】
6'-O-シアリルラクトース有機塩、好ましくは、6'-O-シアリルラクトースジエチルアンモニウム塩, 6'-O-シアリルラクトースエタノールアンモニウム塩, トリス-(ヒドロキシメチル)-メチルアンモニウム塩または6'-O-シアリルラクトースコリン塩。
【請求項12】
栄養添加物として使用するための請求項10または11に記載の6'-O-シアリルラクトース塩。
【請求項13】
医薬品として使用するための請求項10または11に記載の6'-O-シアリルラクトース塩。
【請求項14】
1種以上の請求項10または11に記載の6'-O-シアリルラクトース塩を含む栄養組成物。
【請求項15】
1種以上の請求項10または11に記載の6'-O-シアリルラクトース塩を含む医薬組成物。
【請求項16】
一般式1A:。
【化11】

[式中、R2は、接触水素化によって除去しうる基であり、ベンジル、4-メチルベンジル、4-クロロベンジルおよび1-ナフチルメチルが好ましい;およびOR2は、β型である]
を特徴とする、請求項1に記載の一般式1で示される化合物。
【請求項17】
Zn2+、K+、Ca2+、Mg2+、Ba2+、Fe2+、Mn2+、Cu2+塩および有機塩から選ばれる塩形態である、一般式1B:
【化12】

[式中、R2は、接触水素化によって除去しうる基である]
を特徴とする、請求項1に記載の一般式1で示される化合物
【請求項18】
R2が、ベンジルであり、-OR2が、β型であり、その塩が、Zn2+塩および有機塩から選ばれ、有機塩が、エタノールアンモニウム、ジエチルアンモニウム、トリス-(ヒドロキシメチル)-メチルアンモニウムおよびコリン塩から選ばれるのが好ましい、請求項17に記載の化合物。
【請求項19】
一般式2A:
【化13】

[式中、R2は、接触水素化によって除去しうる基である;
R4およびR5は、互いに独立して、必要に応じて置換されたアシルである;
R8は、-NHAcおよび-NAc2から選ばれる;および
Qは、-COO-アルキル(ここで、アルキルは、必要に応じて置換される)である]
で示される化合物。
【請求項20】
-OR2が、β型であり、R2が、ベンジル、4-メチルベンジル、4-クロロベンジルおよび1-ナフチルメチルから選ばれ、R4が、イソブチリル、ピバロイルおよび必要に応じて置換されたベンゾイルから選ばれ、ピバロイルおよびベンゾイルが好ましく、R5が、アセチルであり、Qが、-COOCH3である、請求項19に記載の化合物。
【請求項21】
一般式2C:
【化14】

[式中、-OR2は、β型である;R2は、接触水素化によって除去しうる基であり、ベンジル、4-メチルベンジル、4-クロロベンジルおよび1-ナフチルメチルが好ましい;および
R4は、イソブチリル、ピバロイルおよび必要に応じて置換されたベンゾイルから選ばれ、ベンゾイルが好ましい]
で示される化合物。
【請求項22】
一般式2D:
【化15】

[式中、R2は、接触水素化によって除去しうる基である;
R4は、1〜3個のメトキシ基で置換されたベンジルおよびHから選ばれる;
R5は、必要に応じて置換されたアシルおよびHから選ばれる;
R8は、-NHAcおよびNAc2から選ばれる;および
Qは、-COO-アルキル(ここで、アルキルは、必要に応じて置換される)およびプロトン化された形態または脱プロトン化された形態のいずれかにおける-COOHから選ばれる;ただし、Qが、プロトン化された形態または脱プロトン化された形態のいずれかにおける-COOHであり、R8が-NHAcである場合、R4およびR5の両方が同時にHであることはできない]
で示される化合物。
【請求項23】
-OR2が、β型であり、R2が、ベンジル、4-メチルベンジル、4-クロロベンジルおよび1-ナフチルメチルから選ばれ、R4およびR5 が、Hであり、R8が、-NHAcであり、Qが、-COO-アルキル(ここで、アルキルは、必要に応じて置換される)であり、-COOMeが好ましい、請求項22に記載の化合物。
【請求項24】
一般式4Aまたは4B:
【化16】

[式中、R5は、必要に応じて置換されたアシルであり、アセチルが好ましい;
R6は、C2-6アルキル、C3-6シクロアルキルおよび必要に応じて置換されたベンジルから選ばれ、エチル、イソプロピル、t-ブチル、ベンジルおよびシクロヘキシルから選ばれるのが好ましい;
R7は、置換ベンジルであり、4-クロロベンジルまたは4-ブロモベンジルが好ましい;および
Qは、-COO-アルキル(ここで、アルキルは、必要に応じて置換される)であり、-COOMeが好ましい]
で示される化合物。
【請求項25】
シアリルドナーとして用いるための、一般式4C:
【化17】

[式中、R5は、必要に応じて置換されたアシルでありアセチルが好ましい;および
Qは、-COO-アルキル(ここで、アルキルは、必要に応じて置換される)であり、-COOMeが好ましい]
で示される化合物。
【請求項26】
一般式3A:
【化18】

[式中、R2は、接触水素化によって除去しうる基である;および
R4は、1〜3個のメトキシ基で置換されたベンジルおよび必要に応じて置換されたアシルから選ばれるが、ただし、アセチルは排除される]
で示される化合物。
【請求項27】
-OR2が、β型であり、R2が、ベンジル、4-メチルベンジル、4-クロロベンジルおよび1-ナフチルメチルから選ばれ、R4が、イソブチリル、ピバロイルおよびベンゾイルから選ばれる、請求項26に記載の化合物。

【公表番号】特表2013−519694(P2013−519694A)
【公表日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−553182(P2012−553182)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【国際出願番号】PCT/DK2011/050052
【国際公開番号】WO2011/100979
【国際公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(508278309)グリコム・アクティーゼルスカブ (4)
【氏名又は名称原語表記】Glycom A/S
【Fターム(参考)】