説明

6−アミノ−7−ヒドロキシ−4,5,6,7−テトラヒドロ−イミダゾ[4,5,1−JK][1]−ベンゾアゼピン−2[1H]−オンおよびジルパテロールのエナンチオ選択的合成

本発明は、ケトオキシムを水素化してアミノアルコール立体異性体を選択的に形成するための方法、および特に、4,5−ジヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]ベンゾアゼピン−2,6,7[1H]−トリオン−6−オキシムもしくはこれらの塩を水素化して6−アミノ−7−ヒドロキシ−4,5,6,7−テトラヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]−ベンゾアゼピン−2[1H]−オンの立体異性体もしくはこれらの塩を選択的に形成するための方法に関する。本発明は、ジルパテロールの立体異性体もしくはこれらの塩の選択的な製造への6−アミノ−7−ヒドロキシ−4,5,6,7−テトラヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]−ベンゾアゼピン−2[1H]−オン水素化生成物もしくはこれらの塩の使用、並びに動物のための治療方法および医薬におけるこのようなジルパテロール立体異性体もしくは塩の使用にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本特許は米国仮特許出願番号60/899,336(2007年2月1日出願)に対する優先権を主張する。この特許出願の本文全体は参照により本特許に組み入れられる。
【0002】
本発明は、ケトオキシムを水素化してアミノアルコール立体異性体を選択的に形成するための方法、特に、4,5−ジヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]ベンゾアゼピン−2,6,7[1H]−トリオン−6−オキシムもしくはこれらの塩を水素化して6−アミノ−7−ヒドロキシ−4,5,6,7−テトラヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]−ベンゾアゼピン−2[1H]−オンの立体異性体もしくはこれらの塩を選択的に形成するための方法に関する。本発明は、ジルパテロールの立体異性体もしくはこれらの塩の選択的な製造への6−アミノ−7−ヒドロキシ−4,5,6,7−テトラヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]−ベンゾアゼピン−2[1H]−オン水素化生成物もしくはこれらの塩の使用、並びに動物のための治療方法および医薬におけるこのようなジルパテロール立体異性体もしくは塩の使用にも関する。
【背景技術】
【0003】
ジルパテロールは下記構造を有する公知アドレナリン作動性β−2アゴニストである。
【0004】
【化1】

【0005】
ジルパテロールのIUPAC名は4,5,6,7−テトラヒドロ−7−ヒドロキシ−6−(イソプロピルアミノ)イミダゾ[4,5,1−jk]−[1]ベンゾアゼピン−2(1H)−オンである。ジルパテロールのChemical Abstracts名は4,5,6,7−テトラヒドロ−7−ヒドロキシ−6−[(1−メチル−エチル)アミノ]−イミダゾ[4,5,1−jk][1]ベンゾアゼピン−2(1H)−オンである。
【0006】
ジルパテロールを包含する一般構造は2つのキラル原子を有する。
【0007】
【化2】

【0008】
従って、ジルパテロールは4つの立体異性体を有する。これらの立体異性体は「(6R,7R)」、「(6R,7S)」、「(6S,7R)」および「(6S,7S)」として識別することができる。ラセミトランスジルパテロール(即ち、(6R,7R)および(6S,7S)立体異性体の混合物)は文献中で「RU42173」として識別されている。これらのトランス立体異性体は下記構造を有する。
【0009】
【化3】

【0010】
ジルパテロール、様々なジルパテロール誘導体並びにジルパテロールの様々な医薬的に許容される酸付加塩およびこの誘導体を、例えば家畜、家禽および/もしくは魚類における体重増加速度の増加、給餌効率の改善(即ち、体重増加の量あたりの飼料の量の減少)および/もしくは枝肉赤身性(carcase leanness)の増加(即ち、枝肉軟組織におけるタンパク含有率の増加)に用いることができることは周知である。例えば米国特許4,900,735において、Grandadamは、ウシ、ブタ、ヒツジおよび家禽を含む温血動物の体重および肉質の増加に用いることができる、ラセミトランスジルパテロールおよびこれらの塩の畜産技術的組成物を記述する。並びに、米国特許7,207,289は、牛肉生産の増加、牛肉生産を維持しながらの飼料摂取量の減少およびウシにおける肝膿瘍の発生率の低下へのイオノフォア/マクロライド/ジルパテロール投薬計画の使用を記述する。
【0011】
ジルパテロールの製造方法は当分野において公知である。例えば米国特許4,585,770において、Frechetらは6−アミノ−7−ヒドロキシ−4,5,6,7−テトラヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]−ベンゾアゼピン−2[1H]−オン誘導体として特徴付けられる属に包含される化合物およびこれらの医薬的に許容される酸付加塩を論じる。これらの誘導体は、構造において、下記式に相当する。
【0012】
【化4】

式中、Rは様々な置換基であり得、波線は6−アミノおよび7−OH基への結合がトランス配置を有することを示す。Rがイソプロピルであるとき、この属はラセミトランスジルパテロールを包含する。
【0013】
米国特許4,585,770に報告される方法は4,5−ジヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]ベンゾアゼピン−2,6,7[1H]−トリオン−6−オキシムを中間体として用いる。この化合物は、構造において、式(I)に相当する。
【0014】
【化5】

【0015】
米国特許4,585,770において示されるように、4,5−ジヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]ベンゾアゼピン−2,6,7[1H]−トリオン−6−オキシムは当分野において長く公知である出発物質から形成することができる。米国特許4,585,770は2種類のこのような出発物質の使用を示す。両方の例において、これらの出発物質は5,6−ジヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]ベンゾアゼピン−2,7−[1H,4H]−ジオンの形成に用いられ、これを、次に、4,5−ジヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]ベンゾアゼピン−2,6,7[1H]−トリオン−6−オキシムの製造に用いることができる。
【0016】
米国特許4,585,770における例の1つにおいて、出発物質は、J.Chem.Soc.Perkins,p.261(1982)に記載される、1,3−ジヒドロ−1−(1−メチルエテニル)−2H−ベンゾイミダゾル−2−オンである。
【0017】
【化6】

【0018】
米国特許4,585,770は、1,3−ジヒドロ−1−(1−メチルエテニル)−2H−ベンゾイミダゾル−2−オンをアルキル4−ハロブチレート(即ち、R−(CH−COOR(式中、RはCl、BrもしくはIであり;およびRはC−C−アルキルである。)、例えばメチルもしくはエチル4−ブロモブチレート)および塩基(例えばアルカリ金属)と反応させてブタノエートを形成し、次にこれをアルカノール(例えばメタノールもしくはエタノール)中で酸(例えばHSO)を用いて水素化してメチルエテニル置換基を除去できることを示す。次に、この加水分解生成物は、これをアルカノール中で塩基(例えばNaOHもしくはKOH)と反応させることによってケン化に供し、カルボン酸を形成させることができる。次に、このカルボン酸を塩化チオニルと反応させて塩化物を得た後、この塩化物を有機溶媒(例えば塩化メチレンもしくはジクロロエタン)中でルイス酸(例えば塩化アルミニウム)で処理することにより、カルボン酸終止側鎖を環化して5,6−ジヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]ベンゾアゼピン−2,7−[1H,4H]−ジオンを形成することができる。
【0019】
【化7】

【0020】
米国特許4,585,770、第4欄、第3行から第5欄、第14行;および実施例14、第12欄、第68行を参照のこと。
【0021】
米国特許4,585,770における別の例において、出発物質は、Helv.,Vol 44,p.1278(1961)に記載される、1,3−ジヒドロ−1−ベンジル−2H−ベンゾイミダゾル−2−オンである。
【0022】
【化8】

【0023】
米国特許4,585,770は、1,3−ジヒドロ−1−ベンジル−2H−ベンゾイミダゾル−2−オンをエチル4−ブロモブチレートおよび水素化ナトリウムと反応させて1,3−ジヒドロ−2−オキソ−3−ベンジル−1H−ベンゾイミダゾル−1−ブタノエートを形成し、次にこれを、メタノール性NaOHと反応させることにより、ケン化に供して1,3−ジヒドロ−2−オキソ−3−ベンジル−1H−ベンゾイミダゾル−1−ブタン酸を形成できることを示す。次に、この1,3−ジヒドロ−2−オキソ−3−ベンジル−1H−ベンゾイミダゾル−1−ブタン酸を塩化チオニルと反応させて塩化物を得た後、この塩化物をジクロロエタン中で塩化アルミニウムで処理することにより、ブタン酸側鎖を環化することができる。次に、環化された生成物は、o−リン酸を用いてフェノール中で加水分解し、5,6−ジヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]ベンゾアゼピン−2,7−[1H,4H]−ジオンを形成することができる。米国特許4,585,770、実施例1、工程AからD、第6欄、第10行から第7欄、第35行を参照のこと。
【0024】
米国特許4,585,770に報告される方法を用いて、5,6−ジヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]ベンゾアゼピン−2,7−[1H,4H]−ジオンを塩基もしくは酸(例えばHCl)の存在下で亜硝酸アルキル(例えば亜硝酸tert−ブチルもしくは亜硝酸イソアミル)と反応させ、4,5−ジヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]ベンゾアゼピン−2,6,7[1H]−トリオン−6−オキシムを形成することができる。この4,5−ジヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]ベンゾアゼピン−2,6,7[1H]−トリオン−6−オキシムは、次に、(例えばパラジウム付着炭素の存在下で水素を用いる)触媒性水素化および/もしくは水素化ホウ素ナトリウムにより還元して、ラセミトランス6−アミノ−7−ヒドロキシ−4,5,6,7−テトラヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]−ベンゾアゼピン−2[1H]−オンを形成することができる。
【0025】
【化9】

【0026】
米国特許4,585,770における実例においては、4,5−ジヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]ベンゾアゼピン−2,6,7[1H]−トリオン−6−オキシムを2工程でラセミトランス6−アミノ−7−ヒドロキシ−4,5,6,7−テトラヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]−ベンゾアゼピン−2[1H]−オンに変換する。まず、4,5−ジヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]ベンゾアゼピン−2,6,7[1H]−トリオン−6−オキシムをPd炭素の存在下でHと反応させ、次に、濾過の後、この水素化生成物を水素化ホウ素ナトリウムと反応させる。米国特許4,585,770、第2欄、第50行から第4欄、第2行;および実施例1、工程E&F、第7欄、第38行から第8欄、第3行を参照のこと。
【0027】
米国特許4,585,770は、6−アミノ−7−ヒドロキシ−4,5,6,7−テトラヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]−ベンゾアゼピン−2[1H]−オンのトランス立体異性体を還元剤(例えば水素化ホウ素アルカリ金属もしくは水素化シアノホウ素アルカリ金属、例えば水素化シアノホウ素ナトリウム)の存在下においてアセトンでアルキル化してラセミトランスジルパテロールを形成できることを報告する。
【0028】
【化10】

【0029】
米国特許5,731,028および5,847,124において、Chevremontらは結晶化した無水塩化ジルパテロールおよび特に結晶の5%未満は15μm未満のサイズを有し、これらの結晶の少なくとも95%は250μm未満のサイズを有する結晶化した無水塩化ジルパテロールを論じている。Chevremontらによると、このような結晶を動物飼料に組み込んで体重および肉質を増加させることができる。Chevremontらはこのような結晶の製造方法を提供し、これらの結晶がより大きな粒子サイズを有するコーンコブ支持体に固定される動物用予備混合物の製造へのこれらの結晶の使用を論じている。彼らは、例えばこれらの結晶の製造において、有用であり得る一水和物および三水和物中間体をも論じている。
【0030】
ジルパテロールの1つの立体異性体を他の3つの立体異性体を上回って選択的に製造するのに用いることができる方法に関心が集まる。特に、1つのトランス異性体(即ち、トランス(−)立体異性体)を他の3つの異性体を上回って(即ち、他のトランスおよび両シス立体異性体を上回って)選択的に製造するのに用いることができる方法に関心が集まる。ラセミ組成物もしくは2種類以上の立体異性体のより等しい量を含有する他の組成物に対して、ほぼ1種類(もしくは唯一)のジルパテロール立体異性体を含有する組成物を用いることに利益があり得ることが考慮される。このような考慮される利益には、例えばより高い効力、より高い標的選択性、改善された取り扱い性、より少ない副作用、低減された薬物組織濃度および/もしくは有害副作用を有する他の立体異性体を排除する能力が含まれ得る。
【0031】
出願人は、6−アミノ−7−ヒドロキシ−4,5,6,7−テトラヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]−ベンゾアゼピン−2[1H]−オンもしくはジルパテロールのいずれかの1種類の立体異性体を、これらの他の3種類のそれぞれの立体異性体すべてを上回って選択的に合成するためのいかなる公知方法も知らない。
【0032】
様々なアドレナリン作動性β−2アゴニストの単一立体異性体組成物の使用に関して幾つかの考察が当分野に存在する。このような考察は、例えば米国特許6,110,974;米国特許出願公開2005/0113456;米国特許出願公開2002/0132830および国際特許出願PCT/EP2007/057036(2007年7月10日出願)に見出すことができる。しかしながら、これらの考察は、1種類の6−アミノ−7−ヒドロキシ−4,5,6,7−テトラヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]−ベンゾアゼピン−2[1H]−オンもしくはジルパテロール立体異性体を他の3種類のそれぞれの立体異性体すべてを上回って選択的に合成するための指示を提供してはいない。例えば国際特許出願PCT/EP2007/057036は、その代わりに、トランス(−)ジルパテロール立体異性体をラセミトランスジルパテロールから単離する分離技術を論じている。
【0033】
米国特許6,284,925は、報告によるとエナンチオ選択的水素化において用いることができる、鏡像異性ビスホスフィン配位子錯体の属を論じている。この配位子錯体は、構造において、下記式に相当し、
【0034】
【化11】

式中、R、R、R、RおよびRは一連の置換基から選択され;およびMは「下位族[B族]8の金属原子もしくは金属イオン、例えばNi、Co、Rh、Ru、Ir、Pd、ReもしくはPt」と定義される。米国特許6,248,925は、アセトアミドアクリレートにおけるアルケンのエナンチオ選択的水素化へのこのような配位子錯体の使用を説明する。
【0035】
【化12】

【0036】
これらの説明において、Rは水素、フェニルもしくは2−ナフチルであり;およびR’は水素もしくはメチルである。しかしながら、米国特許6,248,925は、アミノアルコールの立体異性体を選択的に製造するためのケトオキシムの二重水素化を論じてはいない。
【0037】
米国特許6,348,620はケトエステルのエナンチオ選択的水素化を論じており、
【0038】
【化13】

式中、XはO、CHR”、NR”、NNHR”であり;nはゼロ、1、2もしくは3であり;およびR、R’およびR”は一連の置換基から選択される。米国特許6,348,620は、この水素化を、構造において下記式に相当する、ビスホスフィン配位子錯体によって触媒できることを報告しており、
【0039】
【化14】

式中、R、R、R、RおよびRは一連の置換基から選択され;およびMは「下位族7もしくは8の金属原子もしくは金属イオン、例えばCo、Ni、Rh、Ru、Ir、Pd、ReもしくはPt」と定義される。米国特許6,348,620は、アミノアルコールの立体異性体を選択的に製造するためのケトオキシムの二重水素化を論じてはいない。
【0040】
米国特許出願公開2006/0241315は、報告によると遷移VIII族金属との錯体においてエナンチオ選択的水素化に用いることができる、鏡像異性ビスホスフィン配位子の属を論じている。この配位子は、構造において、下記式に相当し、
【0041】
【化15】

式中、R、R、RおよびRは一連の置換基から選択される。米国特許出願公開2006/0241315はアルケンのエナンチオ選択的水素化へのこのような配位子の使用に焦点を当てて説明する。しかしながら、米国特許出願公開2006/0241315は、アミノアルコールの立体異性体を選択的に製造するためのケトオキシムの二重水素化を論じていない。
【0042】
日本特許Ref.2915161は、光学的に活性のアミノアルコールをケトオキシムから調製するための方法を論じている。これはこの方法を2工程法と特徴付けており、
【0043】
【化16】

式中、RおよびRは独立して選択される置換されていてもよいC−C10−アルキル、シクロアルキルもしくはアリールである。両反応に同じ反応条件を用いる1工程法とは対照的に、日本特許2915161は各々の反応に対する異なる反応条件の使用を論じている。日本特許2915161は、第1工程を、一価ロジウム錯体および配位子の存在下においてHで行うことができる水素化と特徴付けている。この配位子は、構造において、下記式に相当し、
【0044】
【化17】

式中、Feはフェロセンであり、およびRはヒドロキシもしくはアルキルで置換されたアミンもしくはシクロアルキルである。日本特許2915161は、第2工程を、水素化金属を用いて、またはラネーニッケルもしくはロジウム触媒の存在下におけるHでの水素化を用いて行うことができる還元と特徴付ける。日本特許2915161は、6−アミノ−7−ヒドロキシ−4,5,6,7−テトラヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]−ベンゾアゼピン−2[1H]−オンの立体異性体もしくはこれらの塩を選択的に形成するためのいかなるケトオキシムの二重水素化をも論じてはいない。
【0045】
日本特許Ref.2001−106664はケトオキシムの2工程水素化を論じている。第1工程においては、配位子と遷移VIII族からの金属との金属錯体を含む均一触媒と共に水素を用いて、ケト基を還元する。第2工程においては、オキシム基をボランで還元する。この参考文献は、6−アミノ−7−ヒドロキシ−4,5,6,7−テトラヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]−ベンゾアゼピン−2[1H]−オンの立体異性体もしくはこれらの塩を選択的に形成するためのいかなるケトオキシムの二重水素化をも論じてはいない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0046】
【特許文献1】米国特許第4,900,735号明細書
【特許文献2】米国特許第7,207,289号明細書
【特許文献3】米国特許第4,585,770号明細書
【特許文献4】米国特許第5,731,028号明細書
【特許文献5】米国特許第5,847,124号明細書
【特許文献6】米国特許第6,110,974号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第2005/0113456号明細書
【特許文献8】米国特許出願公開第2002/0132830号明細書
【特許文献9】国際特許出願PCT/EP2007/057036号パンフレット
【特許文献10】米国特許第6,284,925号明細書
【特許文献11】米国特許第6,348,620号明細書
【特許文献12】米国特許出願公開2006/0241315号
【特許文献13】特許第2915161号公報
【特許文献14】特開第2001−106664号公報
【非特許文献】
【0047】
【非特許文献1】J.Chem.Soc.Perkins,p.261(1982)
【非特許文献2】Helv.,Vol 44,p.1278(1961)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0048】
従って、6−アミノ−7−ヒドロキシ−4,5,6,7−テトラヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]−ベンゾアゼピン−2[1H]−オンの立体異性体および、次には、ジルパテロールの立体異性体、特に、トランス立体異性体を選択的に製造するのに用いることができる方法(特に、商業的に実行可能な方法)に対する必要性が依然として存在する。本発明はこのような方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0049】
従って、簡潔に述べると、本発明は、部分的には、6−アミノ−7−ヒドロキシ−4,5,6,7−テトラヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]−ベンゾアゼピン−2[1H]−オンの立体異性体もしくはこれらの塩(「7−アミノ−6−ヒドロキシ−6,7,8,9−テトラヒドロ−2H−2,9a−ジアザベンゾ[cd]アズレン−1−オン」としても公知)を選択的に合成するための方法に関する。この方法は、4,5−ジヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]ベンゾアゼピン−2,6,7[1H]−トリオン−6−オキシム(「イミダゾ[4,5,1−jk][1]ベンゾアゼピン−2,6,7(1H)−トリオン,4,5−ジヒドロ−,6−オキシム」もしくは「8,9−ジヒドロ−2H−2,9a−ジアザベンゾ[cd]アズレン−1,6,7−トリオン−7−オキシム」としても公知)もしくはこれらの塩を触媒の存在下でHと反応させることを含む。この触媒は配位子と遷移VIII族からの金属との金属錯体を含む。
【0050】
本発明は、部分的には、ジルパテロールの立体異性体もしくはこれらの塩を選択的に合成するための方法にも関する。この方法は、4,5−ジヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]ベンゾアゼピン−2,6,7[1H]−トリオン−6−オキシムを触媒の存在下でHと反応させて6−アミノ−7−ヒドロキシ−4,5,6,7−テトラヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]−ベンゾアゼピン−2[1H]−オンの立体異性体もしくはこれらの塩を選択的に形成し、次にこれを、ジルパテロールもしくはこれらの塩に変換することを含む。6−アミノ−7−ヒドロキシ−4,5,6,7−テトラヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]−ベンゾアゼピン−2[1H]−オン(もしくはこれらの塩)を形成する反応において用いられる触媒は、配位子と遷移VIII族からの金属との金属錯体を含む。
【0051】
本発明は、部分的には、動物の給餌方法にも関する。この方法は、本発明の方法によって選択的に製造されるジルパテロール立体異性体を動物(例えばウシ動物、ブタ動物、ヒツジもしくはトリ)に給餌することを含む。このような給餌法は、例えば動物の体重増加の速度の増加、動物の給餌効率の改善および/もしくは動物の枝肉赤身性の増加に用いることができる。
【0052】
本発明は、部分的には、本発明の方法によって選択的に製造されるジルパテロール立体異性体の医薬の製造への使用にも関する。このような医薬の潜在的な用途には、動物の体重増加の速度の増加、動物の給餌効率の改善および/もしくは動物の枝肉赤身性の増加が含まれる。
【0053】
出願人の発明のさらなる利益は、本明細書を読み込むことから、当業者には明らかである。
【発明を実施するための形態】
【0054】
この好ましい実施形態の詳細な説明は、当業者に出願人の発明、この原理およびこの実際の用途を伝え、当業者が本発明を、これらが特定の用途の要求に最も適し得るものとして、この多くの形態で適合および適用することができるようにすることのみを目的とする。この詳細な説明およびこの特定の実施例は、本発明の好ましい実施形態を示すものではあるが、例証のみを目的としようとするものである。従って、本発明は本明細書に記載される好ましい実施形態に限定されるものではなく、様々に変更することができる。
【0055】
本発明は、部分的には、6−アミノ−7−ヒドロキシ−4,5,6,7−テトラヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]−ベンゾアゼピン−2[1H]−オンの立体異性体を4,5−ジヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]ベンゾアゼピン−2,6,7[1H]−トリオン−6−オキシムから選択的に合成するための方法に関する。
【0056】
【化18】

【0057】
これは二重水素化反応である。生成物構造における各波線は対応する置換基がRもしくはS立体配置のいずれかを有し得ることを表す。換言すると、この方法は4つの可能な立体異性体のうちの1つを選択的に製造するのに用いることができる。
【0058】
【化19】


【0059】
この文脈において用いられる「選択的」という用語は、この方法によって製造されるある立体異性体の量が製造されるすべての6−アミノ−7−ヒドロキシ−4,5,6,7−テトラヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]−ベンゾアゼピン−2[1H]−オン立体異性体の総量の50%超(およびより典型的に、約60%超、約75%超もしくは約85%超)を構成することを意味する。本発明の方法は、6−アミノ−7−ヒドロキシ−4,5,6,7−テトラヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]−ベンゾアゼピン−2[1H]−オンのトランス異性体を選択的に合成するのに特に適することが発見されている。幾つかの実施形態において、この方法は6R,7Rトランス異性体(式(IIa))を選択的に製造するのに用いられる。
【0060】
本発明によると、この二重水素化反応はワンポットおよび1工程法で有利に行うことができることが発見されている。具体的には、4,5−ジヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]ベンゾアゼピン−2,6,7[1H]−トリオン−6−オキシムを反応させて6−アミノ−7−ヒドロキシ−4,5,6,7−テトラヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]−ベンゾアゼピン−2[1H]−オンを形成するとき、2つの水素化反応が生じる。ヒドロキシを形成するケトンの水素化およびアミンを形成するオキシムの水素化。これらの反応の両方とも同じ触媒を用いる本発明の反応条件を用いて生じる。従って、いかなる中間体を単離することも、および/または反応混合物を別の水素化条件に供して2つの水素化反応の2番目を開始もしくは完了させることも不必要である。これは、例えば人的資源、設備経費、溶媒使用およびあらゆる単離工程の間に生じ得るあらゆる試薬もしくは生成物の損失に関する潜在的な節約;または2番目を生成しながらの最初に生成された立体中心のあらゆる潜在的エピマー化の回避になる。
【0061】
4,5−ジヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]ベンゾアゼピン−2,6,7[1H]−トリオン−6−オキシム試薬は、商業的に入手可能な材料から、例えば当分野において公知の方法を用いて調製することができる。上で技術分野の項において示されるように、このような方法には米国特許4,585,770に記載されるものが含まれる(米国特許4,585,770の全文は参照により本特許に組み入れられる。)。
【0062】
本発明の方法において用いられる触媒はキラル配位子および元素周期律表の遷移VIII族からの金属の金属錯体を含む。金属錯体は、通常、単一の配位子および遷移VIII族からの単一の金属から製造されるが、金属錯体はさらなる配位子および/もしくは金属を含むことができる。
【0063】
一般には、触媒は均一触媒を含み、即ち、本質的にすべて(もしくはすべて)の触媒が溶解する。幾つかの実施形態において、触媒の少なくとも約50重量%(およびより好ましくは少なくとも約75重量%、少なくとも約90重量%、少なくとも約95重量%、少なくとも約98重量%、少なくとも約99重量%、少なくとも約99.9重量%もしくは約100重量%)が溶媒中に溶解する。
【0064】
幾つかの実施形態において、配位子は、構造において、式(A)もしくは式(B)に相当する1以上の配位子を含む。
【0065】
【化20】

式中、
、R、RおよびRの各々は、独立して、水素、C−C−アルキル、ヒドロキシもしくはC−C−アルコキシである。あらゆるこのようなC−C−アルキルもしくはC−C−アルコキシは、次に、1以上のハロゲンによって置換されていてもよい。
【0066】
各々のRは、独立して、水素もしくはC−C−アルキルである。
【0067】
各々のRは、独立して、水素、C−C−アルキルもしくはNRである。
【0068】
およびRの各々は、独立して、水素もしくはC−C−アルキルである。その代わりに、RおよびRは、これらが共通に結合する窒素と共に、飽和複素環を形成する。
【0069】
「独立して」という用語は、各置換基を、他の置換基とは無関係に選択されるものと特徴付けるのに用いられる。従って、例えば各々のRは他のR、R、RおよびR置換基とは無関係に選択され、従って、他のR置換基と同じであっても異なっていてもよいことに加えて、R、RおよびR置換基の各々と同じであっても異なっていてもよい。
【0070】
式(A)におけるRの両方がNRである場合において、NR置換基の各々は独立して選択される。従って、例えばR置換基の一方においてはRおよびRが独立して水素もしくはC−C−アルキルであり、これに対して他方のR置換基においてはRおよびRが(これらが共通に結合する窒素と共に)飽和複素環を形成することが可能である。
【0071】
幾つかの実施形態において、Rの各々は他のR置換基と同一である。例えば幾つかのこのような実施形態において、Rの各々は水素である。ここで、この配位子は、構造において、式(AA)もしくは式(BB)に相当する。
【0072】
【化21】

【0073】
幾つかの実施形態において、各々のRは、独立して、水素もしくは1以上のハロゲンによって置換されていてもよいC−C−アルキルである。例えば幾つかのこのような実施形態において、各々のRは、独立して、水素もしくは1以上のハロゲンによって置換されていてもよいメチルである。幾つかのこのような実施形態において、各々のRは、独立して、水素、CHもしくはCFである。幾つかの実施形態において、各々のRは他のR置換基に等しい。例えば幾つかのこのような実施形態において、各々のRはHである。他の実施形態において、各々のRはCHである。並びに、さらに別の実施形態において、各々のRはCFである。
【0074】
幾つかの実施形態において、各々のRは、独立して、水素もしくはC−C−アルコキシである。幾つかの実施形態において、各々のRは、独立して、水素もしくはメトキシである。幾つかの実施形態において、各々のRは他のR置換基に等しい。例えば幾つかのこのような実施形態において、各々のRは水素である。並びに、例えば他の実施形態において、各々のRはメトキシである。
【0075】
幾つかの実施形態において、各々のRは、独立して、C−C−アルキルもしくはNRである。例えば幾つかのこのような実施形態において、Rはメチルである。他の実施形態において、Rは独立して選択されるNRである。配位子が式(A)に相当する幾つかの実施形態において、各々のRは他のR置換基に等しい。例えば幾つかのこのような実施形態において、各々のRはNRである。
【0076】
幾つかの実施形態において、各々のRは、独立して、1以上のハロゲンによって置換されるC−C−アルキルである。幾つかの実施形態において、各々のRは他のR置換基に等しい。例えば幾つかのこのような実施形態において、各々のRは、独立して、1以上のハロゲンによって置換されるメチルである、他の実施形態において、各々のRはCFである。
【0077】
幾つかの実施形態において、各々のRは他のR置換基に等しい。例えば幾つかのこのような実施形態において、各々のRは水素である。
【0078】
幾つかの実施形態において、RおよびRの各々は、独立して、C−C−アルキルである。例えば幾つかの実施形態において、RおよびRの各々はメチルである。配位子が式(A)に相当する幾つかのこのような実施形態において、各々のRはジメチルアミノ(N(CH)である。
【0079】
幾つかの実施形態において、RおよびRは、これらが共通に結合する窒素と共に、飽和複素環を形成する。この飽和複素環は、好ましくは、合計で5から6個の環原子を有する。少なくとも1個の環原子は窒素である(即ち、RおよびRが共通に結合する窒素)。残りの環原子は炭素、酸素、窒素およびイオウからなる群より独立して選択される。このような複素環の例には、ピロリジニル、ピペリジニルおよびモルホリニルが含まれる。
【0080】
配位子が式(A)に相当する幾つかの実施形態において、各々のRは飽和複素環である。
【0081】
幾つかの実施形態において、RおよびRは、これらが共通に結合する窒素と共に、ピロリジニルを形成する。配位子が式(A)に相当する幾つかのこのような実施形態において、各々のRはピロリジニルである。
【0082】
幾つかの実施形態において、配位子は式(A)に相当する。例えば幾つかのこのような実施形態において、各々のRはHである。他の実施形態において、各々のRはCHである。他の実施形態において、各々のRはCFである。他の実施形態において、各々のRはHである。他の実施形態において、各々のRはOCHである。他の実施形態において、各々のRはHである。他の実施形態において、各々のRはN(CHである。並びに、他の実施形態において、各々のRはピロリジニルである。
【0083】
構造において式(A)に相当する配位子の例には、例えば構造において式(A−1)に相当する配位子(即ち、各々のRがCHであり、各々のRがOCHであり、各々のRがHであり、および各々のRがN(CHである配位子)が含まれる。
【0084】
【化22】

【0085】
この、および他のこのような配位子は、例えば米国特許出願公開2006/0241315(参照により本特許に組み入れられる。)において論じられる。
【0086】
式Aに包含される配位子の例には、例えば式(A−1)の鏡像異性体も含まれる。この鏡像異性体は式(A−1B)に相当する。
【0087】
【化23】

式(A)に包含される配位子の例には、例えば構造において式(A−2)に相当する配位子(即ち、各々のRがHであり、各々のRがHであり、各々のRがHであり、および各々のRがN(CHである配位子)もしくはこれらの鏡像異性体も含まれる。
【0088】
【化24】

式(A−2)の配位子および他のこのような配位子は、例えば米国特許6,348,620(参照により本特許に組み入れられる。)において論じられる。
【0089】
式Aに包含される配位子の例には、例えば構造において式(A−3)に相当する配位子(即ち、各々のRがCFであり、各々のRがHであり、各々のRがHであり、および各々のRがN(CHである配位子)もしくはこれらの鏡像異性体も含まれる。
【0090】
【化25】

式Aに包含される配位子の例には、例えば構造において式(A−4)に相当する配位子(即ち、各々のRがHであり、各々のRがHであり、各々のRがHであり、および各々のRがピロリジニルである配位子)もしくはこれらの鏡像異性体も含まれる。
【0091】
【化26】

【0092】
幾つかの実施形態において、配位子は式(B)に相当する。例えば幾つかのこのような実施形態において、各々のRはCHである。他の実施形態において、各々のRはOCHである。他の実施形態において、各々のRはHである。他の実施形態において、各々のRはCHである。他の実施形態において、各々のRは、独立して、1以上のハロゲンによって置換されるメチルである。他の実施形態において、各々のRはCFである。並びに、他の実施形態において、各々のRはHである。
【0093】
式(B)に包含される配位子の例には、例えば構造において式(B−1)に相当する配位子(即ち、RがCHであり、各々のRがOCHであり、各々のRがHであり、RがCHであり、各々のRがCFであり、および各々のRがHである配位子)もしくはこれらの鏡像異性体が含まれる。
【0094】
【化27】

【0095】
広範囲の他の配位子も一般にこの反応に適する。このような配位子には、例えば構造において以下に相当する配位子(およびこれらの鏡像異性体)が含まれる。
【0096】
【化28】






【0097】
特定の立体異性体生成物に向かう反応の選択性は、一般には、触媒配位子の他の鏡像異性形態を用いることにより、この鏡像異性体生成物に向けて変化させることができる。
【0098】
遷移VIII族からの金属には、鉄(「Fe」)、コバルト(「Co」)、ニッケル(「Ni」)、ロジウム(「Rh」)、ルテニウム(「Ru」)、イリジウム(「Ir」)、オスミウム(「Os」)、白金(「Pt」)およびパラジウム(「Pd」)が含まれる。幾つかの実施形態において、遷移VIII族金属はロジウム、ルテニウムおよびイリジウムのうちの1つ以上を含む。
【0099】
幾つかの実施形態において、金属錯体はルテニウムを含む。
【0100】
金属錯体がルテニウムを含む幾つかの実施形態において、金属錯体はRuCl配位子(DMF)を含み、式中、xはゼロを上回る数字である。頭字語「DMF」は、「N,N−ジメチルホルムアミド」としても公知である、ジメチルホルムアミドに相当する。この錯体は、一般には、例えばDMF中、100℃で10分間、[Ru(C)Clを配位子と混合することによって調製することができる。
【0101】
金属錯体がルテニウムを含む他の実施形態において、金属錯体は[Ru(配位子)(p−シメン)Cl]Clを含む。この錯体は、例えばエタノールもしくはエタノール/ジクロロメタン溶媒混合液中、50℃で2時間、[Ru(p−シメン)Clを配位子と混合することによって調製することができる。
【0102】
金属錯体がルテニウムを含む他の実施形態において、金属錯体はRu(配位子)Brを含む。この錯体は、例えばアセトン中でRh(1,5−シクロ−オクタジエン)(2−メチルアリル)、配位子およびHBrを混合することによって調製することができる。
【0103】
金属錯体がルテニウムを含む他の実施形態において、金属錯体はRu(配位子)(アセチルアセトネート)(もしくは「Ru(配位子)(acac)」)を含む。この錯体は、例えばテトラヒドロフラン(「THF」)中で[Ru(η−2,4−C10)(アセチルアセトネート)]および配位子を混合することによって調製することができる。
【0104】
金属錯体がルテニウムを含む幾つかの実施形態において、配位子は、式(C−1)、式(C−2)、式(C−6)、式(C−7)、式(C−8)、式(C−9)、式(C−11)、式(C−12)、式(C−13)、式(C−14)、式(C−16)、式(C−17)、式(C−21)、式(C−22)、式(C−25)、式(C−28)、式(C−29)、式(C−30)、式(C−31)およびこれらの鏡像異性体からなる群より選択される1以上の配位子を含む。
【0105】
幾つかの実施形態において、金属錯体はロジウムを含む。
【0106】
金属錯体がロジウムを含む幾つかの実施形態において、金属錯体は[Rh−Z−ジエン]二量体から調製することができる。式中、Zはハロゲンである。このようなロジウム化合物の例には、例えば[RhCl(1,5−シクロ−オクタジエン)]、[RhCl(1,5−ヘキサジエン)]および[RhCl(1,5−ノルボルナジエン)]が含まれる。
【0107】
その代わりに、ロジウムを含む金属錯体は、例えば[Rh−(ジエン)Yから調製することができる。式中、Yは[BF]、[ClO]、[PF]もしくは配位子受容性を有さない他のアニオンである。このようなロジウム化合物の例には、例えば[Rh(ノルボルナジエン)ClO、[Rh(1,5−シクロ−オクタジエン)ClO、[Rh(1,5−シクロ−オクタジエン)BF(「Rh(COD)BF」としても公知)、[Rh(1,5−シクロ−オクタジエン)PF、[Rh(1,5−ヘキサジエン)ClO、[Rh(1,5−ヘキサジエン)BF、[Rh(1,5−ヘキサジエン)PF、[Rh(ノルボルナジエン)BFおよび[Rh(ノルボルナジエン)PFが含まれる。
【0108】
金属錯体触媒は上記ロジウム化合物から、例えば配位子をロジウム化合物と約1:1の配位子対ロジウムのモル比で混合することによって調製することができる。幾つかのこのような実施形態においては、配位子の僅かに過剰が用いられる。幾つかの実施形態においては、配位子およびロジウム化合物を、反応混合物に添加する前に、溶媒(例えば水素化反応において用いられる溶媒もしくはジクロロメタン)の存在下で混合する。他の実施形態においては、配位子およびロジウム化合物を、水素化反応混合物に別々に添加することによって混合する。これらの実施形態において、リガンド/ロジウム混合物は、好ましくは、この調製の約3時間以内に用いられる。
【0109】
幾つかの実施形態において、触媒はRh(1,5−シクロ−オクタジエン)配位子BF(もしくは「Rh(COD)配位子BF」)を含む。
【0110】
金属錯体がロジウムを含む幾つかの実施形態において、配位子は式(A)および式(B)に相当する配位子からなる群より選択される1以上の配位子(もしくはこれらの立体異性体)を含む。例えば幾つかのこのような実施形態において、配位子は式(AA)および式(BB)に相当する配位子からなる群より選択される1以上の配位子を含む。他のこのような実施形態において、配位子は、例えば式(A−1)、式(A−2)、式(A−4)、式(B−1)およびこれらの鏡像異性体に相当する配位子からなる群より選択される1以上の配位子を含むことができる。
【0111】
金属錯体がロジウムを含む幾つかの実施形態において、配位子は式(C−1)、式(C−2)、式(C−3)、式(C−4)、式(C−5)、式(C−10)、式(C−15)、式(C−18)、式(C−19)、式(C−20)、式(C−23)、式(C−24)、式(C−26)、式(C−27)、式(C−31)およびこれらの鏡像異性体に相当する配位子からなる群より選択される1以上の配位子を含む。
【0112】
4,5−ジヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]ベンゾアゼピン−2,6,7[1H]−トリオン−6−オキシムの水素化反応に投入される触媒に対するモル比は変化し得る。この比は、好ましくは、約10:1以上である。例えば幾つかの実施形態において、この比は少なくとも約25:1、少なくとも約50:1、少なくとも約100:1もしくは少なくとも約200:1である。幾つかの実施形態において、この比は約50:1から約500:1、約50:1から約400:1もしくは約50:1から約200:1である。例えば幾つかのこのような実施形態において、この比は約50:1から約150:1、約50:1から約100:1もしくは約50:1である。他の実施形態において、この比は約100:1から約200:1もしくは約100:1から約150:1である。
【0113】
4,5−ジヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]ベンゾアゼピン−2,6,7[1H]−トリオン−6−オキシム(もしくはこの塩)の水素化は、一般には、溶媒中で行う。様々な溶媒を用いることができる。溶媒は、好ましくは、試薬、生成物および反応混合物中のあらゆる他の成分と非反応性である。このような溶媒の例には、例えばメタノール、水、テトラヒドロフラン、イソプロピルアルコール、トルエン、酢酸エチルおよびジメチルホルムアミドが一般に含まれる。幾つかの実施形態において、溶媒はメタノール、水、テトラヒドロフランもしくはイソプロピルアルコールを含む。例えば幾つかのこのような実施形態において、溶媒はメタノールを含む。他の実施形態において、溶媒はイソプロピルアルコールを含む、他の溶媒、例えばホルムアミド(例えばN−メチルピロリジノン)、脂肪族アルコール(例えばエタノール)、塩素化炭化水素(例えばクロロホルム)、エーテル(例えばジオキサン)、芳香族炭化水素(例えばベンゼン)およびエステル(例えば酢酸メチル)が考慮される。
【0114】
溶媒の混合液を用いることもできる。このような混合液は、例えばメタノール、水、テトラヒドロフラン、イソプロピルアルコール、トルエン、酢酸エチル、ジメチルホルムアミドおよびジクロロメタン(「DCM」)のうちの2以上を含むことができる。幾つかの実施形態において、溶媒はメタノール、水、テトラヒドロフランもしくはイソプロピルアルコールのうちの2以上を含む。例えば幾つかのこのような実施形態において、溶媒はメタノールおよび水、メタノールおよびテトラヒドロフラン、イソプロピルアルコールおよびテトラヒドロフランもしくはトルエンおよびテトラヒドロフランを含む。例えば他の実施形態において、溶媒はメタノールおよび水を含む。体積比は溶媒混合液中で変化し得る。説明のため、溶媒がメタノールおよびテトラヒドロフランを含むときの幾つかの実施形態において、メタノールのテトラヒドロフランに対する体積比は、例えば約1:1であり得る。溶媒がトルエンおよびテトラヒドロフランを含むときの幾つかの実施形態において、トルエンのテトラヒドロフランに対する体積比は、例えば約1:1であり得る。溶媒がメタノールおよび水を含むときの幾つかの実施形態において、メタノールの水に対する体積比は、例えば約10:1であり得る。溶媒がメタノールおよびDCMを含む幾つかの実施形態において、メタノールのDCMに対する体積比は約24:1である。
【0115】
典型的に、溶媒の量は、例えば反応混合物中の試薬、生成物および他の成分が反応器に固着するのを防止(もしくは本質的に防止)し、試薬の均一な分布を促進するのに十分なものである。説明のため、幾つかの実施形態において、溶媒の4,5−ジヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]ベンゾアゼピン−2,6,7[1H]−トリオン−6−オキシムに対する比は、例えば約34から約35ml/gであり得る。他の実施形態(例えば実験規模実施形態)において、溶媒の4,5−ジヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]ベンゾアゼピン−2,6,7[1H]−トリオン−6−オキシムに対する比は、例えば約43から約44ml/gであり得る。並びに、幾つかの実施形態において、溶媒(例えば24:1の体積比のメタノール/DCM)の4,5−ジヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]ベンゾアゼピン−2,6,7[1H]−トリオン−6−オキシムに対する比は、例えば約22から約23ml/gであり得る。
【0116】
幾つかの実施形態において、4,5−ジヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]ベンゾアゼピン−2,6,7[1H]−トリオン−6−オキシム(もしくはこの塩)の塩素化は塩基の存在下で行うことができる。幾つかの実施形態において、塩基は1以上の無機塩基、例えば水酸化カリウム(「KOH」)を含む。他の実施形態において、塩基は1以上の有機塩基、例えばトリエチルアミンを含む。さらに別の実施形態において、塩基は無機および有機塩基の両方を含む。塩基の量は変化し得る。例えば幾つかの実施形態において、水素化の開始時の反応混合物中の塩基の濃度は、4,5−ジヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]ベンゾアゼピン−2,6,7[1H]−トリオン−6−オキシム(もしくはこの塩)の量に対して、約3当量以下(もしくは約1から約2当量)である。
【0117】
水素化を塩基の存在下で行う幾つかの実施形態において、触媒はルテニウムを含む。水素化を塩基の存在下で行う他の実施形態において、触媒はロジウムを含む。
【0118】
水素化を塩基(例えばKOH)の存在下で行う幾つかの実施形態において、触媒配位子は式(C−1)、式(C−2)、式(C−3)、式(C−6)、式(C−7)、式(C−8)、式(C−9)、式(C−11)、式(C−12)、式(C−13)、式(C−14)、式(C−16)、式(C−17)、式(C−21)、式(C−25)、式(C−28)、式(C−30)およびこれらの鏡像異性体からなる群より選択される配位子の群から選択される配位子を含む。
【0119】
幾つかの実施形態においては、4,5−ジヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]ベンゾアゼピン−2,6,7[1H]−トリオン−6−オキシム(もしくはこの塩)の塩素化を酸の存在下で行うことができる。酸の存在は、例えば反応を安定化し、反応を促進し、および/もしくは変換を増加させ得る。例えば幾つかの実施形態において、酸は1以上の強無機酸、例えば鉱酸、例えば硫酸(「HSO」)を含む。他の実施形態において、酸は1以上の強有機酸、例えばトリフルオロ酢酸(「CFCOH」)を含む。さらに別の実施形態において、酸は無機および有機酸の両方を含む。酸の量は変化し得る。例えば幾つかの実施形態において、水素化の開始時の反応混合物中の酸の濃度は、4,5−ジヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]ベンゾアゼピン−2,6,7[1H]−トリオン−6−オキシム(もしくはこの塩)の量に対して、約3当量以下(もしくは約1から約2当量)である。
【0120】
水素化を酸の存在下で行う幾つかの実施形態において、触媒はルテニウムを含む。水素化を酸の存在下で行う他の実施形態において、触媒はロジウムを含む。
【0121】
水素化を酸(例えばCFCOH)の存在下で行う幾つかの実施形態において、触媒配位子は、構造において、式(A−2)もしくはこれらの鏡像異性体に相当する。水素化を酸の存在下で行う他の実施形態において、触媒配位子は式(A−1)、式(A−4)、式(B−1)、式(C−3)、式(C−5)、式(C−19)、式(C−24)、式(C−26)およびこれらの鏡像異性体からなる群より選択される配位子の群より選択される配位子を含む。
【0122】
4,5−ジヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]ベンゾアゼピン−2,6,7[1H]−トリオン−6−オキシム(もしくはこの塩)の水素化は広範囲の温度にわたって行うことができる。典型的に、反応は溶媒の沸点以下、より典型的に、沸点未満である温度で行う。一般には、温度は、好ましくは、約90℃以下である。温度は、好ましくは、反応の少なくとも一部(および、より好ましくは、本質的にすべてもしくはすべて)の間、少なくとも約20℃でもある。例えば幾つかの実施形態において、温度は約20から約80℃、もしくは約25から約80℃である。幾つかのこのような実施形態において、温度は約45℃以下、約25から約45℃、もしくは約35から約45℃である。例えば幾つかの実施形態における温度は35から約40℃であり、これに対して他の実施形態における温度は約40から約45℃である。他の実施形態において、温度は約50から約80℃、約50から約75℃、もしくは約50から約65℃である。上記範囲を下回る温度を一般に用いることができるが、このような温度はより遅い反応速度を併発する傾向にある。並びに、より高い温度を一般に用いることができるが、このような温度は望ましくない副生物のより多くの生成を併発し得る。
【0123】
4,5−ジヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]ベンゾアゼピン−2,6,7[1H]−トリオン−6−オキシム(もしくはこれらの塩)の水素化は、一般には、HもしくはHの源の存在下で行う。例えば幾つかの実施形態において、水素化はHもしくはHおよび不活性気体の混合物の存在下で行う。水素化は広範囲のH圧にわたって行うことができる。一般には、H圧は好ましくは少なくとも約1bar、および一般には大気圧を上回る。この圧力は、好ましくは、約80bar以下でもある。例えば幾つかの実施形態(例えば実験規模実施形態)において、圧力は約10から約70bar、もしくは約20から約70barである。幾つかのこのような実施形態において、圧力は約20から約60barである。他の実施形態において、圧力は約40から約65barである。例えば幾つかの実施形態において、圧力は約40から約50barである。他の実施形態において、圧力は約60から約65barである。幾つかの実施形態において、H圧は約25bar未満、約16bar未満、約2から約12bar、約2から約7bar、もしくは約2から約5barである。
【0124】
好ましい反応時間(もしくは連続反応器についての滞留時間)は変化し、様々な要素に依存するが、この要素には、例えば反応温度、触媒型、触媒濃度、H圧、4,5−ジヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]ベンゾアゼピン−2,6,7[1H]−トリオン−6−オキシム濃度、4,5−ジヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]ベンゾアゼピン−2,6,7[1H]−トリオン−6−オキシムの触媒に対するモル比、溶媒の特徴、塩基もしくは酸の存在、反応器の構成およびサイズ、使用者が受容可能な変換の速度等が含まれ得る。バッチ反応器において、反応時間は、一般には約1分を上回り、より典型的に約30分を上回り、さらにより典型的に約2時間を上回り、およびさらにより典型的に約5時間を上回る。反応時間は、典型的に約36時間以下であり、およびより典型的に約24時間以下である。幾つかの実施形態において、反応時間は、例えば約18から約24時間である。これらの典型的な範囲を下回る反応時間を用いることができるが、このような反応時間はより少ない変換を併発し得る。並びに、より長い反応時間を用いることができるが、このような反応時間は不純物のより多くの生成または設備もしくは人的資源の非効率的な使用を併発し得る。
【0125】
二重水素化に用いられる反応器は様々な反応器型を含み得る。例えば幾つかの実施形態において、反応器は攪拌タンク反応器である。ガラスおよびガラス張り反応器が典型的に適するが、反応混合物に露出したときに安定なあらゆる組成物を用いることができる。
【0126】
二重水素化生成物の精製もしくは単離は、例えば当分野において公知の様々な方法を用いて達成することができる。次に、この精製生成物は、ジルパテロールの立体異性体もしくはこれらの塩を選択的に製造するのに用いることができる。その代わりに、二重水素化生成物を、例えばさらなる精製もしくは単離なしにジルパテロールの立体異性体(もしくはこれらの塩)を選択的に製造するのに用いることもできる。
【0127】
一般には、本発明によって製造される6−アミノ−7−ヒドロキシ−4,5,6,7−テトラヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]−ベンゾアゼピン−2[1H]−オン立体異性体は、対応するジルパテロール立体異性体を選択的に製造するのに用いられる。ジルパテロール立体異性体を合成する文脈において用いられる「選択的」という用語は、あるジルパテロール立体異性体の量が製造されるすべてのジルパテロール立体異性体の総量の50%超(およびより典型的に、約60%超、約75%超もしくは約85%超)を構成することを意味する。この方法が6−アミノ−7−ヒドロキシ−4,5,6,7−テトラヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]−ベンゾアゼピン−2[1H]−オンのトランス異性体を選択的に合成するのに特に適するとすると、この方法はジルパテロールの対応トランス異性体を選択的に合成するのにも特に適することになる。幾つかの実施形態において、この方法はジルパテロールの6R,7Rトランス異性体を選択的に製造するのに用いられる。出願人は、6R,7Rジルパテロール立体異性体が、偏光計による測定で、負の旋光度を有することを観察している;従って、これは「トランス(−)」立体異性体と呼ぶこともできる。
【0128】
6−アミノ−7−ヒドロキシ−4,5,6,7−テトラヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]−ベンゾアゼピン−2[1H]−オン立体異性体は、様々な方法を用いて、対応するジルパテロール立体異性体に変換することができる。一般には、これは、例えば還元アルキル化によって達成することができる。例えば以下の反応スキームに示されるように、6−アミノ−7−ヒドロキシ−4,5,6,7−テトラヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]−ベンゾアゼピン−2[1H]−オン立体異性体を還元剤の存在下においてアセトンでアルキル化し、対応するジルパテロール立体異性体を形成することができ、
【0129】
【化29】

式中、波線は対応する置換基の特定の立体配置を表す。還元剤は、例えば水素化ホウ素アルカリ金属(例えば水素化トリアセトキシホウ素ナトリウム)もしくは水素化シアノホウ素アルカリ金属(例えば水素化シアノホウ素ナトリウム)であり得る。この場合、反応は、好ましくは、溶媒中で行う。様々な溶媒(もしくは溶媒の組み合わせ)、例えばメタノールを用いることができる。反応温度は広範に変化し得る。一般には、反応温度は少なくとも約0℃および溶媒の沸点以下である。例えば幾つかの実施形態において、反応温度は、反応の少なくとも一部(およびより好ましくは、本質的にすべてもしくはすべて)の間、約ゼロから約25℃である。反応は大気圧、大気圧未満もしくは大気圧超で行うことができる。しかしながら、典型的に、ほぼ大気圧で行う。
【0130】
本発明が、水素化試薬が4,5−ジヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]ベンゾアゼピン−2,6,7[1H]−トリオン−6−オキシムの塩を含み、水素化生成物が6−アミノ−7−ヒドロキシ−4,5,6,7−テトラヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]−ベンゾアゼピン−2[1H]−オン立体異性体の塩を含み(もしくはこれに変換され)、および/もしくはジルパテロール生成物がジルパテロール塩を含む(もしくはこれに変換される)実施形態をさらに包含することは認識されるべきである。
【0131】
塩は、例えば塩基もしくは酸付加塩であり得る。一般には、酸付加塩は様々な無機もしくは有機酸を用いて調製することができ、塩基付加塩は、典型的に、様々な無機塩基を用いて調製することができる。このような塩は、典型的に、例えば当分野において公知の様々な方法を用いて、遊離塩基化合物を酸と混合する、もしくは遊離酸化合物を塩基と混合することによって形成することができる。塩は、この化学的もしくは物理的特性の1以上、例えば異なる温度および湿度における安定性または水、油もしくは他の溶媒における望ましい溶解度のため、有利であり得る。幾つかの場合において、化合物の塩は所望の立体異性体の単離もしくは精製における補助として用いることができる。(特に、塩が動物への投与を目的とし、または動物への投与を目的とする化合物もしくは塩の製造において用いるための試薬である)幾つかの実施形態において、塩は医薬的に許容される。「医薬的に許容される」という用語は、この塩を医薬製品における使用に適するものと特徴付けるのに用いられる。一般には、医薬的に許容される塩は、この塩が有し得るあらゆる有害効果を上回る1以上の利益を有する。
【0132】
酸付加塩を形成するのに典型的に用いることができる無機酸の例には、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、炭酸、硫酸およびリン酸が含まれる。有機酸の例には、例えば有機酸の脂肪族、脂環式、芳香族、芳香脂肪族(araliphatic)、複素環式、カルボン酸およびスルホン酸クラスが含まれる。有機酸の特定の例には、コレート、ソルベート、ラウレート、アセテート、トリフルオロアセテート、ホルメート、プロピオネート、スクシネート、グリコレート、グルコネート、ジグルコネート、ラクテート、マレート、酒石酸(およびこれらの誘導体、例えばジベンゾイルタートレート)、シトレート、アスコルベート、グルクロネート、マルケート、フマレート、ピルベート、アスパルテート、グルタメート、ベンゾエート、アントラニル酸、メシレート、ステアレート、サリチレート、p−ヒドロキシベンゾエート、フェニルアセテート、マンデレート(およびこれらの誘導体)、エンボネート(パモエート)、エタンスルホネート、ベンゼンスルホネート、パントテネート、2−ヒドロキシエタンスルホネート、スルファニレート、シクロヘキシルアミノスルホネート、アルギン酸(algenic acid)、β−ヒドロキシ酪酸、ガラクタレート、ガラクツロネート、アジペート、アルギネート、ブチレート、カンホレート、カンホスルホネート、シクロペンタンプロピオネート、ドデシルスルフェート、グリコヘプタノエート、グリセロホスフェート、ヘプタノエート、ヘキサノエート、ニコチネート、2−ナフタレンスルホネート、オキザレート、パルモエート、ペクチネート、3−フェニルプロピオネート、ピクレート、ピバレート、チオシアネート、トシレートおよびウンデカノエートが含まれる。
【0133】
塩基付加塩の例には、例えば金属塩が含まれ得る。金属塩には、例えばアルカリ金属(Ia族)塩、アルカリ土類金属(IIa族)塩および他の生理学的に許容される金属塩が含まれる。このような塩は、アルミニウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウムおよび亜鉛から製造することができる。例えば遊離酸化合物をNaOHと混合してこのような塩基付加塩を形成することができる。
【0134】
本発明に従って調製されるジルパテロール立体異性体(特に、6R,7R立体異性体)を含有する組成物は、一般には、例えば家畜、家禽および/もしくは魚における体重増加の速度の増加、給餌効率の改善および/もしくは枝肉赤身性の増加に用いることができる。本発明に従って調製される立体異性体組成物の使用の、ラセミジルパテロールを上回る考慮される利益には、例えばより高い効力、より高い選択性、改善された取り扱い性、より少ない副作用、より低い薬物組織濃度、および/もしくは有害副作用を有する他の立体異性体を排除する能力が含まれる。
【0135】
典型的に、この立体異性体組成物は経口投与される。幾つかの実施形態において、組成物は目的とするレシピエント動物の飲料水に添加される。他の実施形態において、立体異性体は目的とするレシピエントの飼料に、直接もしくは予備混合物の一部のいずれかとして、添加される。このような実施形態に適する経口投薬形態には、例えば固体投薬形態(例えば錠剤、ハードもしくはソフトカプセル、顆粒、粉末等)、ペーストおよび液体投薬形態(例えば溶液、懸濁液、エマルジョン、シロップ等)が含まれる。これらの投薬形態は、1以上の適切な賦形剤を場合により含む。このような賦形剤には、一般に、例えば甘味料、香味料、着色料、保存剤、不活性希釈剤(例えば炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウム、リン酸ナトリウムもしくはカオリン)、造粒および崩壊剤(例えばコーンスターチもしくはアルキン酸)、結合剤(例えばゼラチン、アカシアもしくはカルボキシメチルセルロース)並びに潤滑剤(例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸もしくはタルク)が含まれる。液体組成物は、一般には、溶媒を含む。溶媒は、好ましくは、この組成物の通常保存温度での温度で立体異性体を可溶化したままにするのに十分な化学的特性および量を有する。幾つかの場合において、1以上の保存剤を含むことが組成物にとって望ましいものであり得る。保存剤の存在は、例えば組成物をより多くの時間にわたって保存することを可能にする。
【0136】
幾つかの実施形態において、ジルパテロール立体異性体は支持体に付着した粒子の形態にあり、これが次に、目的とするレシピエント動物に給餌される。支持された立体異性体は目的とするレシピエントの飼料に、直接もしくは予備混合物の一部のいずれかとして、組み込むことができる。考慮される支持体には、例えば不活性支持体、例えば炭酸カルシウム、石灰石、牡蠣殻粉末、タルク、ダイズ外皮、ダイズ粕、ダイズ飼料、ダイズミルラン(soybean mill run)、ウィートミドリング(wheat middling)、もみ殻、コーンミール、コーンジャームミール(corn germ meal)、コーングルテン、デンプン、スクロースおよびラクトースが含まれる。特に考慮される支持体には、トウモロコシ穂軸支持体、例えば米国特許5,731,028において論じられる支持体が含まれる。トウモロコシ穂軸支持体を用いる幾つかの実施形態において、支持体のサイズは約300から約800μmである。好ましくは、支持体に付着するジルパテロール立体異性体粒子は支持体のサイズを下回る粒子サイズを有する。従って、例えば支持体が約300から約800μmである幾つかの実施形態において、立体異性体粒子(もしくは立体異性体粒子の少なくとも約95%)は約250μm未満である。幾つかの実施形態において、立体異性体粒子の大部分のサイズは約50から約200μmである。支持された立体異性体を製造するときに粉塵の生成を回避するため、極端に小さい立体異性体粒子の使用は回避することが好ましい。例えば幾つかの実施形態において、立体異性体粒子サイズ分布は、立体異性体粒子の約5%未満が約15μm未満の粒子サイズを有するようなものである。例えば米国特許5,731,028(参照により本特許に組み入れられる。)において論じられる、結晶性ラセミトランスジルパテロールの特定のサイズ分布を作成するための方法を、一般には、上述のサイズ分布を有する負のトランス立体異性体の結晶を製造するときに適用することができる。
【0137】
組成物が飼料に組み込まれるという点で、飼料混合物は、例えば目的とするレシピエントの型(例えば種および系統)、年齢、体重、活動性および状態に依存して変化する。ウシおよびブタについては、様々な飼料が当分野において周知であり、穀物;糖;穀粒;アラキディック(arachidic)、ターンソール(tournsole)およびダイズ圧搾ケーク;動物起源の粉末、例えば魚粉;アミノ酸;無機塩;ビタミン;酸化防止剤;等をしばしば含む。一般には、立体異性体組成物は、入手可能であり、および目的とするレシピエント動物に用いられる、あらゆる飼料に組み込むことができる。
【0138】
立体異性体組成物は非経口経路により、例えば直腸的に、吸入により(例えばミストもしくはエアロゾルにより)、経皮的に(例えば経皮パッチにより)もしくは非経口的に(例えば皮下注射、静脈内注射、筋肉内注射、埋め込み装置、部分的に埋め込まれた装置等)投与できることが考慮される。幾つかの特定の実施形態において、組成物はインプラント、例えば皮下インプラントによって投与される。例えばウシもしくはブタ動物への投与については、組成物を耳の後ろのインプラントもしくはクジラの髭(baleen)の形態で投与することができる。
【0139】
一般には、立体異性体組成物は立体異性体の有効量を提供する投薬形態で投与される。これは、立体異性体が組成物中の唯一の活性成分であるときに特に当てはまる。立体異性体が別の活性成分と共に投与されるという点で、この投薬量は、好ましくは、他の活性成分の量と共に有効量を構成する立体異性体の量を含む。立体異性体の文脈において、「有効量」は、目的とするレシピエント(典型的に、家畜、家禽および/もしくは魚)において体重増加の速度を増加させ、給餌効率を改善し、および/もしくは枝肉赤身性を高めるのに十分な量である。
【0140】
組成物を経口投与するとき、典型的に、毎日投薬形態を用いることが好ましい。立体異性体の好ましい合計1日用量は、典型的に、特にウシおよびブタ動物について、約0.01mg/kg(即ち、体重キログラム当たりの立体異性体のミリグラム)を上回る。幾つかのこのような実施形態において、1日用量は約0.01から約50mg/kg、約0.01から約10mg/kg、約0.05から約2mg/kg、約0.05から約1、もしくは約0.05から約0.2mg/kgである。立体異性体がレシピエント動物の試料中に投与される幾つかの実施形態において、(90%乾燥物質基準での)試料中の立体異性体の濃度は少なくとも約0.01ppm(重量基準)である。ウシ動物については、立体異性体濃度は、好ましくは、約75ppm(重量基準)以下である。例えば幾つかの実施形態において、立体異性体濃度は約38ppm以下、約0.5から約20ppm、約3から約8ppm、もしくは約3.7から約7.5ppm(重量基準)である。ブタ動物については、立体異性体濃度は、好ましくは、約45ppm(重量基準)以下である。例えば幾つかのこのような実施形態において、濃度は約23ppm以下、約0.5から約20ppm、約2から約5ppm、もしくは約2.2から約4.5ppm(重量基準)である。
【0141】
典型的に1回経口1日用量が好ましいが、例えば立体異性体のレシピエントの代謝に依存して、より短いもしくはより長い投薬間の期間を用い得ることが考慮される。より少ない用量を毎日2回以上投与して所望の合計1日用量を達成できることが考慮される。所望であれば、このような毎日複数用量を、幾つかの場合において、合計経口1日用量を増加させるのに用いることができる。
【0142】
皮下インプラントにより投与するとき、立体異性体の好ましい合計1日用量は、典型的に、特にウシおよびブタ動物について、約0.05mg/kg(即ち、体重キログラム当たりの立体異性体のミリグラム)を上回る。幾つかのこのような実施形態において、1日用量は約0.1から約0.25mg/kgである。
【0143】
立体異性体組成物を注射によって非経口投与するとき、この投薬形態における立体異性体の濃度は、好ましくは、非経口投与で許容される体積中に立体異性体の所望の治療上有効な量を提供するのに十分なものである。経口供給と同様に、注射用投薬形態は毎日1回投与することができるが、より短いもしくはより長い投薬間の期間も用い得ることが考慮される。
【0144】
投薬計画に影響を及ぼす要素には、例えば目的とするレシピエントの型(例えば種および系統)、年齢、サイズ、性別、食餌、活動性および状態;用いられる投与の型(例えば飼料による経口、飲料水による経口、皮下インプラント、他の非経口経路等);薬理学的考察、例えば投与される特定の組成物の活性、効力、薬物動態および毒性学的プロフィール;並びに立体異性体が活性成分の組み合わせの一部として投与されるかどうかが含まれる。従って、立体異性体の好ましい量は変化する可能性があり、従って、上述の典型的な投薬量から逸脱する可能性がある。このような投薬量調整の決定は、一般には、当業者の範囲内である。
【0145】
立体異性体組成物は目的とするレシピエントに1回投与できることが考慮される。しかしながら、一般には、組成物は規定時間を超えて投与される。例えば動物レシピエントが家畜動物である幾つかの実施形態において、立体異性体は少なくとも約2日間毎日、より典型的に約10から約60日間毎日、およびさらにより典型的に約20から約40日間毎日投与される。幾つかの特定の実施形態において、組成物は少なくとも仕上げ期間のほぼ最後の2日間毎日投与される。幾つかのこのような実施形態において、仕上げ期間のほぼ最後の10日からほぼ最後の60日間毎日、もしくは仕上げ期間のほぼ最後の20日からほぼ最後の40日間毎日投与される。「仕上げ期間」という用語は動物の成長期間の後期段階を指す。この期間の最中、家畜動物は、典型的に、飼養場内に拘束される。家畜動物がウシ動物である幾つかの実施形態において、この期間は約90から約225日間継続し、これは、例えばこの動物の出発体重に依存する。典型的に、この仕上げ期間に続いて、ジルパテロール立体異性体を投与しない退薬期間が存在する。この退薬期間の長さは、例えばレシピエント動物の型(例えば種および系統)、年齢、体重、活動性および状態、並びに動物の食餌中の最大許容可能立体異性体残滓濃度に依存し得る。
【0146】
(実施例)
以下の実施例は単に本発明の実施形態を例証するものであり、いかなる点でも本開示の残りに限定されるものではない。
【実施例1】
【0147】
Rh(COD)配位子BF触媒を用いて6−アミノ−7−ヒドロキシ−4,5,6,7−テトラヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]−ベンゾアゼピン−2[1H]−オンの立体異性体を選択的に形成する、4,5−ジヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]ベンゾアゼピン−2,6,7[1H]−トリオン−6−オキシムの水素化。
【0148】
【化30】

【0149】
出願人は、Rh(COD)配位子BFからなる幾つかの触媒を4,5−ジヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]ベンゾアゼピン−2,6,7[1H]−トリオン−6−オキシムのエナンチオ選択的水素化について分析している。
【0150】
各々の触媒を調製するため、配位子(0.002mmol)およびRh(COD)BF(0.002mmol)をアルゴンの下でジクロロメタン(0.1ml)に溶解した。生じる混合物を室温で10分間攪拌した。
【0151】
水素化のための準備において、4,5−ジヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]ベンゾアゼピン−2,6,7[1H]−トリオン−6−オキシム(0.1mmol)をアルゴンの下で溶媒(0.5ml)に懸濁させることによって基体懸濁液を調製した。添加物(即ち、酸もしくは塩基)が用いられた場合、添加物(0.1mmol)はこの時点で懸濁液に添加した。
【0152】
各々の水素化を行うため、触媒混合物を基体懸濁液と合わせ、生じる混合物をオートクレーブ内に導入した。オートクレーブはHでパージした。圧力は40から50barに調整し、温度は35から40℃に調整した。その後、圧力および温度をこれらのレベルで20時間維持した。冷却および圧力の解放の後、混合物のサンプル(0.1ml)を分析用に集めた。
【0153】
サンプルを分析するため、Deloxane(登録商標)(金属スカベンジャー)約25mgをサンプルに添加し、生じる懸濁液を50℃で10分間攪拌した。その後、紙を通して懸濁液を濾過し、2.5M NaOH(0.05ml)、アセトニトリル(0.5ml)および水(0.5ml;0.1%ギ酸を含有する。)で希釈した。生じる混合物をHPLCを用いて分析した。
【0154】
出願人は多くの配位子をこの手順を用いて試験した。表1はこれらの反応条件下で最良の結果であるものと出願人が認める結果を含む。
【0155】
【表1】



【0156】
エナンチオ選択性(「ee」)は、2つの立体異性体の濃度間の差を2つの立体異性体の合計濃度で除したもの(×100%)に等しい。従って、トランスエナンチオ選択性は2つのトランス立体異性体の濃度間の差を2つのトランス立体異性体の合計濃度で除したもの(×100%)に等しい。
【0157】
【数1】

【0158】
一般には、触媒の配位子の反対の光学形態を用いることにより、特定の鏡像異性体に向かう反応の選択性を他方の鏡像異性体に向けて変更できることに注意すべきである。
【実施例2】
【0159】
RuCl配位子(DMF)触媒を用いて6−アミノ−7−ヒドロキシ−4,5,6,7−テトラヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]−ベンゾアゼピン−2[1H]−オンの立体異性体を選択的に形成する4,5−ジヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]ベンゾアゼピン−2,6,7[1H]−トリオン−6−オキシムの水素化。
【0160】
【化31】

【0161】
出願人は、RuCl配位子(DMF)からなる幾つかの触媒を、4,5−ジヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]ベンゾアゼピン−2,6,7[1H]−トリオン−6−オキシムのエナンチオ選択的水素化について分析している。
【0162】
各々の触媒を調製するため、配位子(0.002mmol)および[Ru(C)Cl(0.001mmol)をアルゴンの下でジメチルホルムアミド(0.05ml)に溶解した。生じる混合物を100℃で10分間攪拌した。
【0163】
水素化の準備において、4,5−ジヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]ベンゾアゼピン−2,6,7[1H]−トリオン−6−オキシム(0.1mmol)をアルゴンの下で溶媒(0.5ml)に溶解させることによって基体懸濁液を調製した。添加物(即ち、塩基)が添加される場合、添加物(0.1mmol)はこの時点で懸濁液に添加した。
【0164】
各々の水素化を行うため、触媒混合物を基体懸濁液と合わせ、生じる混合物をオートクレーブ内に導入した。オートクレーブはHでパージした。圧力は20から60barに調整し、温度は50から80℃に調整した。その後、圧力および温度をこれらのレベルで20時間維持した。冷却および圧力の解放の後、混合物のサンプル(0.1ml)を分析用に集めた。
【0165】
サンプルを分析するため、Deloxane(登録商標)約25mgをサンプルに添加し、生じる懸濁液を50℃で10分間攪拌した。その後、紙を通して懸濁液を濾過し、2.5M NaOH(0.05ml)、アセトニトリル(0.5ml)および水(0.5ml;0.1%ギ酸を含有する。)で希釈した。生じる混合物をHPLCを用いて分析した。
【0166】
出願人はこの手順を用いて多くの配位子を試験した。表2はこれらの反応条件下で最良の結果であるものと出願人が認める結果を含む。
【0167】
【表2】


【0168】
実施例1において注記されるように、一般には、触媒の配位子の反対の光学形態を用いることにより、特定の鏡像異性体に向かう反応の選択性を鏡像異性体に向けて変更することができる。
【実施例3】
【0169】
(6R,7R)−6−アミノ−7−ヒドロキシ−4,5,6,7−テトラヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]−ベンゾアゼピン−2[1H]−オンの合成。
【0170】
【化32】

【0171】
(R,R)−(+)−2,2’−ビス[(S)−(N,N−ジメチルアミノ)(フェニル)メチル]−1,1’−ビス[ジ(3,5−ジメチル−4−メトキシフェニル)ホスフィノ]フェロセン(52.6mg;0.05mmol;上で配位子式(A−1B)と同定される。)およびビス(1,5−シクロオクタジエン)ロジウム(I)テトラフルオロボレート(20.4mg;0.05mmol;「Rh(COD)BF」としても公知)をアルゴンの下でジクロロメタン(1ml)に溶解した後、生じる混合物を室温で10分間攪拌することによって触媒溶液を調製した。平行して、4,5−ジヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]ベンゾアゼピン−2,6,7[1H]−トリオン−6−オキシム(1.15g、5.0mmol)を100mLオートクレーブに投入し、メタノール40mLに懸濁させた。オートクレーブは、20barで攪拌することなしにHで3回、および20barで攪拌しながら3回パージした。その後、メタノール4mlで希釈した触媒溶液をオートクレーブに投入した。続いて、水素圧(60bar)を印加し、混合物をこの圧力で22時間、40℃で攪拌した。この混合物を室温に冷却して圧力を解放した後、Deloxan(登録商標)THP II 2gを添加し、生じる懸濁液を55℃で10分間攪拌して濾過した。その後、溶媒を除去して生成物を得た。
【実施例4】
【0172】
(6R,7R)−4,5,6,7−テトラヒドロ−7−ヒドロキシ−6−(イソプロピルアミノ)イミダゾ[4,5,1−jk)−[1]ベンゾアゼピン−2(1H)−オンのHCl塩(即ち、トランス(−)ジルパテロールHCl)の合成。
【0173】
【化33】

【0174】
実施例3からの生成物をメタノール(6ml)およびアセトン(3ml)に溶解した。次に、生じる混合物を氷冷下で攪拌した。10分後、水素化トリアセトキシホウ素ナトリウム(1.2g、5.66mmol)を添加し、この混合物を室温にした。この温度で5時間攪拌した後、さらなる水素化トリアセトキシホウ素ナトリウム(0.25g、1.2mmol)を添加し、混合物を一晩攪拌した。その後、揮発性物質を真空中で除去し、1N HCl(6ml)および水(2ml)を生じる残滓に添加した。濾過の後、濾液を凍結乾燥した。続いて、生じる残滓をエタノール(10mL)から再結晶化した。固体を廃棄し、濾液を真空中で濃縮した。生じる残滓を熱エタノール(14mL)と共に摩砕し、残留する固体を濾過によって集めた後、乾燥させた。この所望の生成物は固体として得られた(802mg、2.7mmol、54%、81%ee)。m.p.173から174℃(分解、エタノールから);[α]=−26°(c 1.0、メタノール、20℃);vmax/cm−1(生)3403、2979、2802、2711、1699、1598、1477、1394、1268、1150、1096、1030、782、743、683;δ(400MHz,CDOD)1.40(d,J=6.3Hz,3H)、1.45(d,J=6.3Hz,3H)、2.09−2.19(m,1H)、2.55−2.63(m,1H)、3.61−3.73(m,2H)、3.87−3.95(m,1H)、4.22−4.32(m,1H)、5.02(d,J=8.4Hz,1H)、7.05(d,J=7.8Hz,1H)、7.12(dd,J=7.8Hz,J=7.8Hz,1H)、7.33(d,J=7.8Hz,1H);δ(100MHz,CDOD)18.8、20.2、28.2、40.5、50.4、61.8、71.9、110.5、122.1、122.8、122.9、127.8、129.9、156.5;m/z(API−ES)262.1(M+H)。
【実施例5】
【0175】
考慮される適切な投薬形態の第1例証。
【0176】
実施例4のHCl塩2.5もしくは5mg並びに100mgの最終重量に十分な、ラクトース、コムギデンプン、処理デンプン、コメデンプン、タルクおよびステアリン酸マグネシウムの賦形剤を含有する錠剤を調製する。
【実施例6】
【0177】
考慮される適切な投薬形態の第2例証。
【0178】
顆粒の各1日用量中に実施例4のHCl塩12.5もしくは25を含有する顆粒を調製する。
【実施例7】
【0179】
考慮される適切な投薬形態の第3例証。
【0180】
結晶性ラセミトランスジルパテロールを製造するため、米国特許5,731,028において論じられる方法論を用いて、実施例4のHCl塩を結晶化する。結晶の5%未満が15μm未満のサイズを有し、結晶の少なくとも95%が250μm未満のサイズを有する。次に、European 特許0197188(参照により本特許に組み入れられる。)において論じられる方法論を用いて、300から800μmトウモロコシ穂軸支持体に固定された結晶性HCl塩の予備混合物を得る。予備混合物中のHCl塩の濃度は3%(重量基準)である。
【0181】
本特許(請求の範囲を含む)における「含む」(「含む(comprise)」、「含む(comprises)」および「含んでいる(comprising)」)という単語は排他的にではなく包括的に解釈されるべきである。この解釈は合衆国特許法の下でこれらの単語がもたらす解釈と同じであることが意図される。
【0182】
本特許において引用されるすべての参考文献は参照により本特許に組み入れられる。
【0183】
上述の好ましい実施形態の詳細な説明は、当業者に本発明、この原理およびこの実際の用途を伝え、当業者が本発明を、これらが特定の用途の要求に最も適し得るものとして、この多くの形態で適合および適用することができるようにすることのみを目的とする。従って、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、様々に変更することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
6−アミノ−7−ヒドロキシ−4,5,6,7−テトラヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]−ベンゾアゼピン−2[1H]−オンの立体異性体もしくはこれらの塩を選択的に製造するための方法であって、
4,5−ジヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]ベンゾアゼピン−2,6,7[1H]−トリオン−6−オキシムもしくはこれらの塩を触媒の存在下でHと反応させることを含み;および
触媒が少なくとも1種類の配位子と少なくとも1種類の遷移VIII族からの金属との金属錯体を含む、
方法。
【請求項2】
遷移VIII族からの金属がルテニウムを含む、請求項1の方法。
【請求項3】
遷移VIII族からの金属がロジウムを含む、請求項1の方法。
【請求項4】
金属錯体がRh(1,5−シクロオクタジエン)配位子BFを含む、請求項3の方法。
【請求項5】
触媒が以下の配位子、
【化34】






およびこれらの鏡像異性体からなる群より選択される配位子を含む、請求項1から4のいずれか一項の方法。
【請求項6】
配位子が、構造において、式(A)もしくは式(B)に相当する、請求項1から4のいずれか一項の方法
【化35】

(R、R、RおよびRの各々は、水素、C−C−アルキル、ヒドロキシおよびC−C−アルコキシからなる群より独立して選択され、
−C−アルキルおよびC−C−アルコキシは1以上のハロゲンによって置換されていてもよく;
各々のRは、水素およびC−C−アルキルからなる群より独立して選択され;
各々のRは、水素、C−C−アルキルおよびNRからなる群より独立して選択され;および
およびRの各々については、
およびRの各々は、水素およびC−C−アルキルからなる群より独立して選択され、もしくは
およびRは、これらが共通に結合する窒素と共に、飽和複素環を形成する。)。
【請求項7】
配位子が、構造において、式(A)に相当する、請求項6の方法。
【請求項8】
配位子が、構造において、式(A−1)、
【化36】

に相当する、請求項7の方法。
【請求項9】
配位子が、構造において、式(A−1B)、
【化37】

に相当する、請求項7の方法。
【請求項10】
配位子が、構造において、式(A−2)、
【化38】

もしくはこれらの鏡像異性体に相当する、請求項7の方法。
【請求項11】
配位子が、構造において、式(A−4)、
【化39】

もしくはこれらの鏡像異性体に相当する、請求項7の方法。
【請求項12】
配位子が、構造において、式(B)に相当する、請求項6の方法。
【請求項13】
配位子が、構造において、式(B−1)、
【化40】

もしくはこれらの鏡像異性体に相当する、請求項12の方法。
【請求項14】
4,5−ジヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]ベンゾアゼピン−2,6,7[1H]−トリオン−6−オキシムもしくはこれらの塩を、均一触媒の存在下において、メタノール、水、テトラヒドロフラン、イソプロピルアルコール、トルエン、酢酸エチルおよびジメチルホルムアミドからなる群より選択される1以上の溶媒を含む溶媒中でHと反応させる、請求項1から13のいずれか一項の方法。
【請求項15】
4,5−ジヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]ベンゾアゼピン−2,6,7[1H]−トリオン−6−オキシムもしくはこれらの塩を塩基の存在下でHと反応させる、請求項1から14のいずれか一項の方法。
【請求項16】
4,5−ジヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]ベンゾアゼピン−2,6,7[1H]−トリオン−6−オキシムもしくはこれらの塩を酸の存在下でHと反応させる、請求項1から14のいずれか一項の方法。
【請求項17】
4,5−ジヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]ベンゾアゼピン−2,6,7[1H]−トリオン−6−オキシムもしくはこれらの塩を、(a)大気圧を上回り、および(b)約70bar以下のH圧でHと反応させる、請求項1から16のいずれか一項の方法。
【請求項18】
4,5−ジヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]ベンゾアゼピン−2,6,7[1H]−トリオン−6−オキシムもしくはこれらの塩を、溶媒の存在下において、(a)少なくとも約20℃および(b)反応が行われる圧力における溶媒の沸点以下である温度でHと反応させる、請求項1から17のいずれか一項の方法。
【請求項19】
立体異性体が、構造において、式(IIa)、
【化41】

に相当する、請求項1、2、3、4、6、7、12、14、15、16、17および18のいずれか一項の方法。
【請求項20】
ジルパテロールの立体異性体もしくはこれらの塩を選択的に製造するための方法であって、4,5−ジヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]ベンゾアゼピン−2,6,7[1H]−トリオン−6−オキシムを、請求項1から19のいずれか一項に従い、触媒の存在下でHと反応させて6−アミノ−7−ヒドロキシ−4,5,6,7−テトラヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]−ベンゾアゼピン−2[1H]−オンもしくはこれらの塩を形成することを含む方法。
【請求項21】
立体異性体が、構造において、式(IIIa)、
【化42】

のいずれかに相当する、請求項20の方法。
【請求項22】
6−アミノ−7−ヒドロキシ−4,5,6,7−テトラヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]−ベンゾアゼピン−2[1H]−オンもしくはこれらの塩の還元アルキル化をさらに含み;および
還元アルキル化が、6−アミノ−7−ヒドロキシ−4,5,6,7−テトラヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]−ベンゾアゼピン−2[1H]−オンを還元剤の存在下でアセトンと反応させることを含む、
請求項21および22のいずれか一項の方法。
【請求項23】
還元剤が水素化トリアセトキシホウ素ナトリウムを含む、請求項22の方法。
【請求項24】
金属錯体がRh(1,5−シクロ−オクタジエン)配位子BFを含み;
配位子が、構造において、式(A−1B)、
【化43】

に相当し、並びに
4,5−ジヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]ベンゾアゼピン−2,6,7[1H]−トリオン−6−オキシムを、
メタノールを含む溶媒の存在下において、
約25から約45℃の温度で、
約20から約60barsのH圧で、および
4,5−ジヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]ベンゾアゼピン−2,6,7[1H]−トリオン−6−オキシムおよび均一触媒が、投入された4,5−ジヒドロ−イミダゾ[4,5,1−jk][1]ベンゾアゼピン−2,6,7[1H]−トリオン−6−オキシムの投入された触媒に対するモル比が約50:1から約200:1であるように投入された反応器において、
と反応させる、
請求項23の方法。
【請求項25】
動物の体重増加の速度を増加させ、動物の給餌効率を改善し、および/もしくは動物の枝肉赤身性を高めるための方法であって、
請求項20から24のいずれかに記載される方法によってジルパテロール立体異性体もしくはこれらの塩を調製し、および
ジルパテロール立体異性体もしくはこれらの塩の有効量を動物に投与する、
ことを含む方法。
【請求項26】
動物の体重増加の速度を増加させ、動物の給餌効率を改善し、および/もしくは動物の枝肉赤身性を高めるための医薬の製造へのジルパテロール立体異性体もしくはこれらの塩の有効量の使用であって、ジルパテロール立体異性体もしくはこれらの塩が、請求項20から24のいずれかに記載される方法によって調製される使用。

【公表番号】特表2010−517968(P2010−517968A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−547692(P2009−547692)
【出願日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際出願番号】PCT/EP2008/051206
【国際公開番号】WO2008/092924
【国際公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願人】(506196247)インターベツト・インターナシヨナル・ベー・ベー (85)
【Fターム(参考)】