説明

8−クロロ−6,11−ジヒドロ−11−(4−ピペリジリデン)−5H−ベンゾ[5,6]シクロヘプタ[1,2−b]ピリジンの経口用組成物

【課題】哺乳動物への経口投与に適切であり、そして米国および国際的な保険機構の既存の健康登録要件(例えば、FDAの医薬品の製造および品質管理に関する実践規範(「GMP」)、および医薬品規制ハーモナイゼーション国際会議(「ICH」)ガイドライン)に従う定常的な化学的および物理的特性を有するデスカルボニルエトキシロラタジンを含有する薬学的組成物を提供すること。
【解決手段】抗アレルギー有効量のデスカルボニルエトキシロラタジンを、DCL−保護量の薬学的に受容可能なキャリアを含有する薬学的に受容可能なキャリア媒体中に含有する、薬学的組成物であって、ここで該組成物は、1重量%未満のN−ホルミルDCLを含有する、薬学的組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
本発明は、8−クロロ−6,11−ジヒドロ−11−(4−ピペリジリデン)−5H−ベンゾ[5,6]シクロヘプタ[1,2−b]ピリジン(本明細書以下「デスカルボニルエトキシロラタジン」または「DCL」)を含有する薬学的組成物に関し、そしてこの薬学的組成物は実質的にDCL分解産物を含有せず、そして哺乳動物におけるアレルギー反応を処置するための経口投与に適している。
米国特許第4,659,716号は、抗ヒスタミン特性を有し、実質的に鎮静特性を有さないデスカルボニルエトキシロラタジンを開示する。この米国特許はまた、デスカルボニルエトキシロラタジンを作製する方法、その薬学的組成物、および哺乳動物におけるアレルギー反応を処置するためにその組成物を使用する方法を開示する。
米国特許第5,595,997号は、デスカルボニルエトキシロラタジンを使用してアレルギー性鼻炎を処置するための薬学的組成物および方法を開示する。共有に係る同時係属中の米国特許出願番号08/886,766号(07/02/97出願)は、デスカルボニルエトキシロラタジンの多形性およびそれらを含有する薬学的組成物を開示する。
【背景技術】
【0002】
本発明者らは、本発明の薬学的組成物を開示するいかなる先行技術も知らない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
哺乳動物への経口投与に適切であり、そして米国および国際的な保険機構の既存の健康登録要件(例えば、FDAの医薬品の製造および品質管理に関する実践規範(「GMP」)、および医薬品規制ハーモナイゼーション国際会議(「ICH」)ガイドライン)に従う定常的な化学的および物理的特性を有するデスカルボニルエトキシロラタジンを含有する薬学的組成物を製造する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
(発明の要旨)
本発明者らは、先行技術において開示される賦形剤の存在下で、デスカルボニルエトキシロラタジンが変色し、そして分解することを見出した。本発明者らは、酸性の賦形剤の使用を避け、そしてデスカルボニルエトキシロラタジンをDCL保護量の薬学的に受容可能な塩基性塩を含有する薬学的に受容可能なキャリア媒体と組み合わせる場合に、これらの問題が実質的に解決されることを見出した。従って、本発明は、抗アレルギー有効量のデスカルボニルエトキシロラタジンを、DCL保護量の薬学的に受容可能な塩基性塩を含む薬学的に受容可能なキャリア媒体中に含有する薬学的組成物を提供する。
本発明の薬学的組成物は、最初の段階でも、このような組成物を25℃および約60%の相対湿度で少なくとも24ヶ月保存した後でも、約1%未満の分解産物(例えば、N−ホルミルDCL)を含有する。
好ましい実施態様において、本発明は、抗アレルギー有効量のデスカルボニルエトキシロラタジンを薬学的に受容可能なキャリア媒体中に含有する薬学的組成物を提供し、ここでこの組成物は約1重量%未満のN−ホルミルDCL、好ましくは約0.8重量%未満のN−ホルミルDCL、そしてより好ましくは約0.6%未満のN−ホルミルDCLを含有する。
別の好ましい実施態様において、本発明は、抗アレルギー有効量のデスカルボニルエトキシロラタジンを、DCL保護量の薬学的に受容可能な塩基性塩、および約45分で薬学的組成物の少なくとも約80重量%の溶解を提供するに十分な量の少なくとも1種の崩壊剤を含む薬学的に受容可能なキャリア媒体中に、含有する経口投与のための薬学的組成物を提供する。
本発明はまた、DCL保護量の二塩基性リン酸カルシウム、および約45分以内に少なくとも約80重量%の薬学的組成物の溶解を提供するに十分な量の微結晶性セルロースおよびデンプンを含有する薬学的に受容可能なキャリア媒体中に、抗アレルギー有効量のデスカルボニルエトキシロラタジンを含有する、経口投与用の薬学的組成物を提供する。
好ましい実施態様において、本発明は、DCL保護量の二塩基性リン酸カルシウム、および約45分以内に薬学的組成物の少なくとも約80重量%の溶解を提供するに十分な量の微結晶性セルロースおよびデンプンを含有する薬学的に受容可能なキャリア媒体中に、抗アレルギー有効量のデスカルボニルエトキシロラタジンを含有する、経口投与用の薬学的組成物を提供し、この組成物は約1重量%未満のN−ホルミルデスカルボニルエトキシロラタジンを含有する。
本発明はまた、抗アレルギー有効量のデスカルボニルエトキシロラタジンを、DCL−保護量の薬学的に受容可能な塩基性塩および少なくとも1種の薬学的に受容可能な崩壊剤を含有する薬学的に受容可能なキャリア媒体中に含有する、経口投与のための薬学的組成物であって、該薬学的に受容可能なキャリア媒体が酸性賦形剤を実質的に含有しない、薬学的組成物を提供する。
好ましい実施態様において、前記少なくとも1種の薬学的に受容可能な崩壊剤は、45分以内に前記薬学的組成物の少なくとも80重量%の溶解を提供するに十分な量である。
別の好ましい実施態様において、前記DCL−保護量の薬学的に受容可能な塩基性塩の前記崩壊剤に対するw/w比は、1:1〜2:1の範囲内である。
さらに別の好ましい実施態様において、前記薬学的に受容可能な塩基性塩は、カルシウム、マグネシウムまたはアルミニウム塩あるいはそれらの混合物である。
なお別の好ましい実施態様において、前記薬学的に受容可能な塩基性塩は、リン酸カルシウム塩である。
さらに別の好ましい実施態様において、上記薬学的組成物は、25℃および60%の相対湿度で少なくとも24ヶ月の間保存した後に1重量%未満のN−ホルミルデスカルボニルエトキシロラタジンを含有する。
さらに別の好ましい実施態様において、前記DCL−保護量の薬学的に受容可能な塩基性塩の前記抗アレルギー有効量のデスカルボニルエトキシロラタジンに対するw/w比は、5:1〜60:1の範囲内である。
本発明はまた、抗アレルギー有効量のデスカルボニルエトキシロラタジンを、DCL−保護量の二塩基性リン酸カルシウム、45分以内に前記薬学的組成物の少なくとも80重量%の溶解を提供するに十分な量の微結晶性セルロースおよびデンプンを含有する薬学的に受容可能なキャリア媒体中に含有する、経口投与のための薬学的組成物であって、該薬学的に受容可能なキャリア媒体が酸性賦形剤を実質的に含有しない、薬学的組成物を提供する。
好ましい実施態様において、上記薬学的組成物は、25℃および60%の相対湿度で少なくとも24ヶ月の間保存した後に1重量%未満のN−ホルミルデスカルボニルエトキシロラタジンを含有する。
本発明はまた、抗アレルギー有効量のデスカルボニルエトキシロラタジンを、DCL−保護量の二塩基性リン酸カルシウム、45分以内に前記薬学的組成物の少なくとも80重量%の溶解を提供するに十分な量の微結晶性セルロースおよびデンプンを含有する薬学的に受容可能なキャリア媒体中に含有し、そして25℃および60%の相対湿度で少なくとも24ヶ月の間保存した後に1重量%未満のN−ホルミルデスカルボニルエトキシロラタジンを含有する、経口投与のための薬学的組成物を提供する。
好ましい実施態様において、上記薬学的組成物は、以下を含有する:
【表1】


別の好ましい実施態様において、上記薬学的組成物は、以下を含有する:
【表2】


本発明の薬学的組成物の好ましい実施態様において、前記デスカルボニルエトキシロラタジンの量は、1〜10重量%の範囲内である。
好ましい実施態様において、薬学的組成物は、以下を含有する:
【表3】


本発明の薬学的組成物の好ましい実施態様では、最初に、1重量%未満のN−ホルミルデスカルボニルエトキシロラタジンを含有する。
本発明はまた、抗アレルギー有効量のデスカルボニルエトキシロラタジンを、DCL−保護量の薬学的に受容可能な塩基性塩を含有する薬学的に受容可能なキャリア媒体中に含有する、薬学的組成物であって、該薬学的に受容可能なキャリア媒体が酸性賦形剤を実質的に含有しない、薬学的組成物を提供する。
好ましい実施態様において、前記薬学的組成物は、少なくとも1種の薬学的に受容可能な崩壊剤をさらに含有する。
別の好ましい実施態様において、前記少なくとも1種の薬学的に受容可能な崩壊剤は、45分以内に前記薬学的組成物の少なくとも約80重量%の溶解を提供するに十分な量である。
別の好ましい実施態様において、前記DCL−保護量の薬学的に受容可能な塩基性塩の前記崩壊剤に対するw/w比は、1:1〜2:1の範囲内にある。
別の好ましい実施態様において、前記薬学的に受容可能な塩基性塩は、カルシウム、マグネシウムまたはアルミニウム塩あるいはそれらの混合物である。
別の好ましい実施態様において、前記薬学的に受容可能な塩基性塩は、リン酸カルシウム塩である。
別の好ましい実施態様において、上記薬学的組成物は、1重量%未満のN−ホルミルデスカルボニルエトキシロラタジンを含有する。
別の好ましい実施態様において、前記DCL−保護量の薬学的に受容可能な塩基性塩の前記抗アレルギー有効量のデスカルボニルエトキシロラタジンに対するw/w比は、5:1〜60:1の範囲内にある。
本発明はまた、抗アレルギー有効量のデスカルボニルエトキシロラタジンを、薬学的に受容可能なキャリア媒体中に含有する薬学的組成物であって、該組成物が1重量%未満のN−ホルミルDCLを含有し、ここで該薬学的に受容可能なキャリア媒体が実質的に酸性賦形剤を含有しない、薬学的組成物を提供する。
好ましい実施態様において、前記組成物は、経口投与用に適合されている。
好ましい実施態様において、前記組成物は、25℃および60%の相対湿度で少なくとも24ヶ月間保存されたものである。
本発明はまた、薬学的に受容可能なキャリア媒体中に5mgのデスカルボニルエトキシロラタジンを含有する、薬学的組成物を提供する。
好ましい実施態様において、前記組成物は、1重量%未満のN−ホルミルDCLを含有する。
本発明の薬学的組成物の好ましい実施態様では、前記DCL−保護量の薬学的に受容可能な塩基性塩の前記崩壊剤に対するw/w比が、1.5:1〜2:1の範囲内である。
本発明の薬学的組成物の好ましい実施態様では、前記DCL−保護量の薬学的に受容可能な塩基性塩の前記崩壊剤に対するw/w比は、1.25:1〜1.75:1の範囲内である。
本発明の別の実施態様では、前記DCL−保護量の薬学的に受容可能な塩基性塩の前記抗アレルギー有効量のデスカルボニルエトキシロラタジンに対するw/w比は、7:1〜11:1の範囲内である。
本発明の別の実施形態では、前記DCL−保護量の薬学的に受容可能な塩基性塩の前記抗アレルギー有効量のデスカルボニルエトキシロラタジンに対するw/w比は、10:1〜11:1の範囲内である。
本発明はまた、抗アレルギー有効量のデスカルボニルエトキシロラタジンを、薬学的に受容可能なキャリア媒体中に含有する薬学的組成物であって、該組成物が0.8重量%未満のN−ホルミルDCLを含有し、ここで該薬学的に受容可能なキャリア媒体が実質的に酸性賦形剤を含有しない、薬学的組成物を提供する。
本発明はまた、抗アレルギー有効量のデスカルボニルエトキシロラタジンを、薬学的に受容可能なキャリア媒体中に含有する薬学的組成物であって、該組成物が0.6重量%未満のN−ホルミルDCLを含有し、ここで該薬学的に受容可能なキャリア媒体が実質的に酸性賦形剤を含有しない、薬学的組成物を提供する。
本発明はまた、前記組成物が経口投与用に適合されている、薬学的組成物を提供する。
本発明はまた、前記組成物が25℃および60%の相対湿度で少なくとも24ヶ月間保存された、薬学的組成物を提供する。
本発明はさらに、以下を含有する経口投与のための好ましい薬学的組成物を提供する:
【表4】

本発明はまた、以下を含有する経口投与のための別の好ましい薬学的組成物を提供する:
【表5】

本発明はまた、以下を含有する経口投与のための別の好ましい薬学的組成物を提供する:
【表6】

本発明の薬学的組成物は、哺乳動物のアレルギー性反応の処置に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
(発明の詳細な説明)
本発明の組成物を開発する間に、デスカルボニルエトキシロラタジンは、単独または種々の賦形剤(例えば、米国特許第4,657,716号および同第5,595,997号に開示されるもの)との組み合わせで、75%の相対湿度(「RH」)および40℃の温度で保存した場合に変色することが見出された。本発明者らは、活性成分におけるこの色不安定性が、経口処方物(特に錠剤処方物)に一般的に使用される広範な種々の賦形剤の存在により生じる非常に少量の分解産物に明らかに起因することを発見した。不適切であることが見出されたこれらの賦形剤としては、酸性の賦形剤が挙げられ、これにはステアリン酸、ポビドン(povidone)、およびクロスポビドン、ならびに水中で7より小さいpH、より好ましくは約3〜5の範囲のpHを有する他の酸性の賦形剤ならびにラクトース、ラクトースモノヒドレート、安息香酸ナトリウムおよびCompritol 888の商標で販売されているGlyceryl Behenate NFのような他の賦形剤が挙げられるが、これらに限定されない。DCL、ラクトースモノヒドレートおよびステアリン酸を含有する固体散剤処方ブレンド(実施例6のものと類似する)中のステアリン酸のような酸性賦形剤の存在は、40℃および75%RHで1週間後に、大量(14%)のデスカルボニルエトキシロラタジンの分解を生じた。本発明の薬学的組成物をより長い期間(すなわち、3ヶ月)同一のストレス条件に供した場合、デスカルボニルエトキシロラタジンの約1%未満の分解が本発明の薬学的組成物中で見出された。本明細書中以下、実施例1〜5、6および10を参照のこと。好ましくは、本発明の薬学的組成物中で使用される薬学的に受容可能なキャリア媒体は、酸性賦形剤を実質的に含有しない、すなわち、約1重量%未満で酸性賦形剤を含有する。
本発明の薬学的組成物中に見出されるDCLの主な分解産物は、N−ホルミルDCLである。本発明の薬学的組成物は、最初の段階でも、少なくとも24ヶ月まで保存した後でも、約1重量%未満の分解産物を含有する。好ましくは、本発明の薬学的組成物は、このような組成物を約25℃および約60%RHで少なくとも24ヶ月保存した場合に、約0.8重量%未満、およびより好ましくは約0.6重量%未満のN−ホルミルDCLを含有する。
本明細書中で使用される用語「薬学的に受容可能な塩基性塩」は、カルシウム、マグネシウムまたはアルミニウム塩あるいはそれらの混合物を意味し、これにはカルシウム、マグネシウムおよびアルミニウムの炭酸塩、リン酸塩、ケイ酸塩および硫酸塩が挙げられるが、これらに限定されない。代表的に、適切な薬学的に受容可能な塩基性の塩には、硫酸カルシウム無水物、硫酸カルシウムの水和物(例えば、硫酸カルシウム二水和物)、硫酸マグネシウム無水物、硫酸マグネシウムの水和物、二塩基性リン酸カルシウム、二塩基性リン酸カルシウム無水物、三塩基性リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、トリケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムおよびケイ酸マグネシウムアルミニウムが挙げられる。リン酸カルシウム塩の使用が好ましい。二塩基性リン酸水和物の使用がより好ましい。二塩基性リン酸カルシウム無水物の使用が、最も好ましい。
通常、DCL保護量の本発明の組成物で使用される薬学的に受容可能な塩基性の塩は、全組成物の約50重量%である。この保護量の薬学的に受容可能な塩基性塩の、抗アレルギー量のDCLに対するw/w比は、約5:1〜約60:1の範囲内にあり、好ましくは約7:1〜約11:1であり、そして最も好ましくは約10:1〜約11:1である。
本明細書中で使用される用語「崩壊剤」は、薬学的に受容可能な材料、または本発明の組成物について薬学的に受容可能な溶解速度を提供するそのような材料の組み合わせを意味し、この溶解速度は、好ましくは、USP 23/NF 18,1995,UNITED STATE PHARMA−COPEIAL CONVENTION,INC.,Rockvile MD 20852の第1791〜1793頁のUSPパドル溶解試験<711>に従って、約45分以内に少なくとも約80重量%の本発明の組成物が溶解する速度である。通常、溶解速度は0.1N HCl中で37℃で測定する。本発明の組成物の好ましい溶解速度は、約30分以内に少なくとも約80重量%であり、そしてより好ましくは、本発明の組成物の溶解速度は約30分以内に少なくとも約90重量%である。
代表的に、適切な薬学的に受容可能な崩壊剤としては微結晶性セルロース、デンプン、例えば、予めゼラチン化されたデンプン(pregelatinized starch)およびコーンスターチ、マンニトール、クロスカルメロースナトリウムならびに粉糖(少なくとも、95重量%のショ糖と微細な粉末に粉砕されたコーンスターチの混合物)が挙げられる。本発明の薬学的組成物は、少なくとも1種、好ましくは少なくとも2種、そして最も好ましくは2種の薬学的に受容可能な崩壊剤を約1:1〜3:1のw/w比で含有する。本発明の好ましい実施態様において、この2種の薬学的に受容可能な崩壊剤は約2:1〜約3:1のw/w比の、セルロース、およびデンプン、好ましくはコーンスターチである。
薬学的に受容可能な塩基性塩の保護量の、薬学的に受容可能な崩壊剤の量に対するw/w比は、約1.1:1〜約2:1の範囲内であり、好ましくは、約1.2:1〜約1.75:1の範囲内であり、そして最も好ましくは約1.20:1〜約1.25:1の範囲内である。
予想外なことに、本発明者らは、先行技術の賦形剤(例えば、ステアリン酸またはラクトース)の非存在下でデスカルボニルエトキシロラタジンを二塩基性リン酸カルシウムおよび微結晶性セルロースを含有するキャリア媒体と合わせた場合に、開放したペトリ皿で40℃の温度および75%の相対湿度で4週間保存した場合に変色に対して安定である薬学的組成物を作製した。本発明の好ましい実施態様において、このキャリア媒体はまた、コーンスターチおよびタルクを含有する。コーンスターチの代わりに、予めゼラチン化したデンプンを置き換え得る;タルクはPEG8000で置き換え得る。この二塩基性リン酸カルシウムは、硫酸カルシウム2水和物で置きかえられ得るが、二塩基性リン酸カルシウムの使用が好ましい。実施例10の本発明の好ましい実施態様を、25℃/60%RHまたは30℃/60%RHで9ヶ月目までの間、あるいは40℃/75%RHで6ヶ月目までの間、プラスチックボトルまたはブリスターパッケージ中で保存する場合、物理的外観、水分含量、デスカルボニルエトキシロラタジンの化学アッセイおよび錠剤処方物の溶解速度に有意な変化は観察されなかった(約1〜2重量%未満)。
本発明において使用されるデスカルボニルエトキシロラタジンは、米国特許第4,659,716号の実施例VIに従って調製され得る。デスカルボニルエトキシロラタジンには、2つの多形形態(形態1および形態2)が存在し、これらは実施例1〜3および共有に係る同時係属中の米国特許出願番号第08/886,766号(07/02/97に出願)の手順に従って調製され得る。これらの2つの多形形態は、本発明の錠剤処方物の製造の間に相互変換した。多形形態のいずれかが使用され得る場合、形態Iが好ましい。
(薬学的組成物)
本発明の薬学的組成物は、活性成分として抗アレルギー有効量のデスカルボニルエトキシロラタジン、および薬学的に受容可能なキャリア媒体を含有し、このキャリア媒体は、特定の量の二塩基性リン酸ナトリウムおよび微結晶性セルロースに加えて、固体かまたは液体であり得る他の不活性な薬学的に受容可能な成分を含有し得る。固体形態の組成物としては、散剤、錠剤、分散顆粒剤(dispersible granule)、カプセル剤、カシェ剤および坐剤が挙げられる。この不活性な薬学的に受容可能なキャリア媒体には、また、希釈剤、矯味矯臭剤、可溶化剤、滑沢剤、懸濁剤、結合剤、錠剤崩壊剤またはカプセル化材料として機能し得る1つ以上の物質が挙げられる。本発明の薬学的組成物の固体投与形態は経口投与に適切であり、そしてこれには散剤、錠剤、分散顆粒剤、カプセル剤、カシェ剤、バッカル剤および坐剤が挙げられる。散剤において、このキャリア媒体は微細に分割された固体であり、これは微細に分割された活性成分と混合されている。錠剤において、活性成分は、必須の結合特性を有するキャリア媒体と適切な割合で混合され、そして所望の形状およびサイズに圧縮される。本発明の薬学的組成物(例えば、散剤および錠剤)における抗アレルギー有効量のDCLは、約0.5〜約15%であり、好ましくは約0.5〜10重量%であり、そしてより好ましくは約1〜10重量%である。用語「組成物」とは、キャリアとしてカプセル化材料を有する活性化合物の処方物を包含することを意図し、活性成分が(他のキャリアと共にか、またはそれらを伴わずに)キャリア媒体により覆われ、それゆえそれらと協働している、カプセル剤を提供する。同様に、カシェ剤も包含される。
経口投与のためのデスカルボニルエトキシロラタジンの抗アレルギー有効量は、約1〜50mg/日、好ましくは約2.5〜20mg/日、およびより好ましくは約5〜10mg/日で、単回投薬かまたは分割投薬で変化する。最も好ましい量は、1日1回、5mgである。
当然のことながら、正確な投薬および投薬レジメンは、患者の要件(例えば、彼または彼女の性別、年齢)ならびに処置されるアレルギー状態の重篤度に依存して変化し得る。特定の患者に対する適切な投薬および投薬レジメの決定は、担当の医師の技量範囲内にある。
デスカルボニルエトキシロラタジンは抗ヒスタミン特性を有する。これらの抗ヒスタミン特性は、標準的な動物モデル(例えば、モルモットに致死を誘導するヒスタミンの予防)で実証されている。デスカルボニルエトキシロラタジンの多形形態1および形態2の抗ヒスタミン活性もまた、サル(monkey)モデルで実証されている。
(一般的実験)
デスカルボニルエトキシロラタジンを、米国特許第4,659,716号の実施例VIに従って調製し得る。二塩基性リン酸カルシウム二水和物[Ca(H2PO42・2H2O]は、Rhone Poulenc Rorer,Shelton,CT 06484から入手可能であり;微結晶性セルロースはFMC Corporation Food&Pharmaceutical Products,Philadelphia,PA 19103から入手可能であり、コーンスターチNFはNational Starch&Chemical Corp.,Bridgewater,NJ 08807から入手可能であり、そしてタルクUSPはWhittaker,Clark and Daniels,Inc.,South Plainfield,NJ 07080から入手可能である。
(錠剤の形態での本発明の薬学的組成物の製造方法)
以下の手順は錠剤の処方物を例示する:
(デンプンペースト調製)
1. 撹拌器を取りつけた適切な容器中でコーンスターチのペーストの部を精製水の部に分散することによって10w/wデンプンペーストを調製する。
2. 混合しながら容器の中身を95℃まで加熱し、そしてこの温度を30分間維持する。
3. さらなる量の精製水を加熱した混合物に添加し、そしてこのように形成したデンプンペーストを約50℃まで冷却させる。
4. 混合しながらデスカルボニルエトキシロラタジンをこのデンプンペーストに添加する。
(造粒)
5. 適切な流動層処理ボウルに、二塩基性リン酸カルシウム二水和物、コーンスターチの一部、および微結晶性セルロースの一部を充填する。この処理ボウルを流動層処理器に配置する。
6. この散剤層を流動化し、そして3分間混合する。
7. 工程4のデンプンペーストを流動化した層に適切なスプレー速度(600,000の錠剤バッチサイズについては、スプレー速度は500mL/分)および22℃の層温度で押し出すことによって散剤の造粒を始める。
8. 上記造粒物が2%以下の乾燥の時点で最終的な損失を有するまで、60℃で造粒物を乾燥し続ける。
9. 乾燥した造粒物を適切なふるいまたはミルを通過させる。
10. 造粒物を適切なブレンダー中に充填し、そして微結晶性セルロース、コーンスターチおよびタルクの残りの部の必要な量を添加する。5分間ブレンドして、均一の散剤ブレンドを生成する。
得られたブレンド物は、適切なカプセル充填機で適切な2片硬カプセル剤に充填し得る。このブレンド物はまた、適切な錠剤機で適切なサイズおよび重量に圧縮され得る。
(製錠)
1. 微細な粉末のブレンド物を適切な錠剤プレスで目標の(target)錠剤重量(100mg)および7〜9s.c.u.(Strong−Cobbユニット)の硬度で圧縮する。
回転パン(rotating pan)およびヒーターを備えた適切なコーティング装置に圧縮錠を充填することによりこれらの錠剤をフィルムコーティングし得る。回転パン上の錠剤を、清澄または着色したコーチング材料を精製水に溶解して作製したコーティング溶液と、約30〜50℃の温度で接触させる。錠剤を完全にコーティングした後、つや出し粉末をコーティングした錠剤に添加してつや出ししたコーティング錠剤を提供し得る。あるいは、着色したコーティング材料は、乾燥粉末として工程5または10(好ましくは、そのプロセスの造粒段階の工程5)で添加され得る。着色コーティング材料は、好ましくは、不快な(offensive)賦形剤(例えば、ラクトース)を実質的に含有しない(すなわち、約1%未満)か、またはより好ましくは、全く含有しないことが好ましい。
【実施例】
【0006】
(実施例1〜5)
以下に列挙した成分を使用して上記の製造手順に従い、そして粉末ブレンドを錠剤に圧縮する。
【表7】

(実施例6〜9)
実施例6〜9の錠剤処方物を実施例1〜5の手順に従って調製した。
【表8】

【表9】

実施例1〜5の手順に従って調製した実施例6〜9の錠剤処方物は、40℃の温度および75%の相対湿度の下で開放したペトリ皿の中に置いた場合、1週間経たないうちに変色した。
(実施例1〜5の処方した錠剤の色安定性)
上記の実施例1〜5の錠剤の色安定性を、40℃の温度および75%の相対湿度の負荷条件下で開放ペトリ皿で研究した。この条件下で4週間の間、開放ペトリ皿中で保存した後、実施例1〜5の錠剤は変色を示さず、そして白色のままであった。実施例1〜5の手順に従って、ラクトースおよびステアリン酸のような他の賦形剤と共にデスカルボニルエトキシロラタジンを処方し、そして錠剤に成形した場合、実施例6〜9の錠剤は、同一の保存条件下で1週間たたないうちに迅速に変色した。DCL、ラクトース一水和物およびステアリン酸を1:7:0.2の重量比で含有する固体散剤処方ブレンド(実施例6の錠剤のものと類似する)もまた、同一の保存条件下(40℃の温度および75%の相対湿度)で1週間未満のうちに迅速に分解した;この固体散剤処方物中のデスカルボニルエトキシロラタジンについての化学アッセイは、初期量の約86%であり、そして処方物の色はピンクであった。
(実施例10)
実施例3の処方物を錠剤に圧縮し、そしてフィルムコーティングおよびつや出しを行ったことを除いて、実施例1〜5の手順に従う。
【表10】

1. つや出しワックスは、Carnubaワックスと白色ワックスとの1:1w/wの混合物である。
(実施例10の処方錠剤の安定性)
実施例10の処方錠剤の化学アッセイ、物理特性および光安定性を、高密度ポリエチレンビンボトルおよびブリスターパッケージ中に置いたサンプルで測定した。
実施例10の錠剤を25℃/60%相対湿度(「RH」)または30℃/60%RHで9ヶ月まで、あるいは40℃/75%RHで6ヶ月までプラスチックボトルまたはブリスターパッケージで保存した場合、物理的外観、含水率、デスカルボニルエトキシロラタジンの化学アッセイおよび溶解速度に有意な変化は観察されなかった(1〜2%未満)。少量の分解物(例えば、N−ホルミルDCL)が、40℃/75%RHで6ヶ月間、ボトル(約0.8%)およびブリスター(約1.2%)中で保存した錠剤で観察された;25℃/60%RHまたは30℃/60%RHで9ヶ月間、ブリスターまたはボトル中で保存した錠剤のサンプル中にはいずれもほんの約0.2〜0.3%の分解産物が観察されたに過ぎなかった。1重量%の錠剤の25℃/60%RHで24ヶ月間、または30℃/60%RHで12ヶ月間保存した5mgの錠剤についての医薬品規制ハーモナイゼーション国際会議(「ICH」)の不純物ガイドラインに適合することが予測される。開放皿中の錠剤を、1週間25℃でICH光条件に供した場合、分解産物の総量は0.34重量%であった。
(実施例11)
Blue Lakeを乾燥粉末で造粒段階の工程5に添加し、そしてその後に処方物を錠剤に圧縮したことを除き、実施例10の手順に従う。
【表11】

実施例11の処方物は、実施例10の処方物に対して観察されたのと類似の化学アッセイおよび物理特性および光安定性を有することが期待される。
本発明の多数の改変および変更が、当業者に明らかなように、本発明の精神および範囲から逸脱することなくなされ得る。本明細書中に記載される特定の実施態様は、単なる例示を目的として提供されており、そして本発明は添付の特許請求の範囲の文言によってのみ、およびこのような特許請求の範囲が権利を付与されるのと等価な全範囲によって、制限される。
8−クロロ−6,11−ジヒドロ−11−(4−ピペリジリデン)−5H−ベンゾ[5,6]シクロヘプタ[1,2−b]ピリジン(「DCL」)およびDCL保護量の薬学的に受容可能な塩基性塩(例えば、二塩基性リン酸カルシウム)、ならびに約45分以内で少なくとも約80重量%の薬学的組成物の溶解を提供するに十分な量の少なくとも1種の崩壊剤、好ましくは2種の崩壊剤(例えば、微結晶性セルロースおよびスターチ)を含有し、哺乳動物(例えば、ヒト)におけるアレルギー反応を処置するための経口投与に適切な安定な薬学的組成物が提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書中に記載の発明。

【公開番号】特開2010−265329(P2010−265329A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−190099(P2010−190099)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【分割の表示】特願2005−200665(P2005−200665)の分割
【原出願日】平成11年7月8日(1999.7.8)
【出願人】(596129215)シェーリング コーポレイション (785)
【氏名又は名称原語表記】Schering Corporation
【Fターム(参考)】