説明

Aタイプのプロシアニジンを含有する組成物およびその使用方法

本発明は、Aタイプのプロシアニジンを含有する、製薬、食品、食品添加物、または栄養補助食品などの組成物、およびNO反応性健康状態を治療または予防する、高血圧症、心疾患、冠動脈疾患および/または血管循環障害を治療する、心臓発作、脳梗塞、鬱血性心不全および/または腎不全を予防するまたはそのリスクを低減する、もしくは血流、例えば、腎血流を改善するために、ヒトまたは家畜動物の予防または治療処置のためのこの組成物の使用方法に関する。この組成物は、必要に応じて、追加のNO調節薬および/または心血管保護薬または治療薬を含有していてもよく、もしくはそのような薬剤と組み合わせて投与されてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Aタイプのプロシアニジンを含有する組成物、およびヒトまたは家畜動物の予防または治療処置のためのその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリフェノールは、非常に多様な化合物群である(非特許文献1)。ポリフェノールは、様々な植物中に広く生じ、その内のいくつかが食物連鎖に関係する。ある場合には、ポリフェノールは、ヒトの食餌のための重要な化合物の部類を示す。ポリフェノールのあるものは栄養ではないと考えられるが、健康への潜在的に有益な効果のために、これらの化合物に関心が生じてきた。例えば、ケルセチン(フラボノイド)が、実験的な動物研究において抗発癌性活性を有することが示されてきた(非特許文献2および3)。(+)−カテキンおよび(−)−エピカテキン(フラバン−3−オール)は、白血病ウイルス逆転写酵素活性を阻害することが示されてきた(非特許文献4)。ノボタニン(オリゴマー加水分解性タンニン)は、抗腫瘍活性を有することが示されてきた(非特許文献5)。抗突然変異物質として使用するためのプロシアニジンオリゴマーが、キッコーマン社により報告されている(特許文献1、1992年7月7日発行)。
【0003】
Bタイプのプロシアニジンなどのある種のポリフェノールは、一酸化窒素(NO)放出への、それゆえ、NOに積極的に反応する様々な健康状態の治療への有益な効果を有することが示されてきた(例えば、Romanczyk等への特許文献2参照)。
【0004】
一酸化窒素(NO)は、アテローム発生のプロセスに重大に関与する、血管の平滑筋組織の増殖、並びに血小板凝集、単球付着および走化性を阻害することが知られている。NOの濃度は、酸素遊離ラジカルとの反応のために、アテローム組織中で減少し得る。これらの反応によりNOが損失することによって、血管壁に血小板および炎症細胞が益々付着して、弛緩のNO機構がさらに損なわれることになる。このようにして、NOの損失は、アテロームプロセスを促進して、進行性疾患の状態に至るかもしれない。
【0005】
高血圧症は、血液が血管内を循環するときの血圧が正常よりも高い状態である。長期間に亘り、最高血圧が150mm Hgを超えると、または最低血圧が90mm Hgを超えると、体が損傷を受ける。高血圧症は、脳梗塞、心臓発作、心不全、および腎不全を含む血管系の病気の主要な原因である。例えば、過度の最低血圧は、血管のどこかを破裂させ得る。脳内で破裂が生じた場合には、脳梗塞になる。高血圧症はまた、アテローム性動脈硬化を引き起こすこともある血管の肥厚および狭窄を生じ得る。上昇した血圧は、血液が排出されたときの上昇した静止(拡張期)血圧を克服するために心筋が激しく働くので、心筋を肥大させることもある。この肥大はゆくゆくは、不整脈や心不全を生じ得る。高血圧症は、「サイレント・キラー」と称される。何故ならば、高血圧症は、何の症状も示さず、血圧を検査したときだけに検出できるからである。
【0006】
血圧の調節は、ある機構が、内皮一酸化窒素シンターゼまたはeNOSとして知られる、一酸化窒素シンターゼ(NOS)の構成Ca2+/カルモジュリン従属形態の発現を含む場合は複雑な出来事である。この酵素により生成されるNOは、血管の平滑筋弛緩(拡張)を生じ、これにより、血圧が低下する。NOの生成が阻害因子により遮断されたかまたはアテローム性動脈硬化などの病状において遮断されたために、NOの循環濃度が減少した場合、血管の平滑筋は、適度に弛緩しない。その結果生じた血管収縮は、血圧を上昇させる。この血管収縮は、ある種の高血圧症の原因となるかもしれない。
【特許文献1】特開平4−190774号公報
【特許文献2】米国特許第6670390号明細書
【非特許文献1】Ferriera et al.,Tetrahedron,48:10,1743-1803,1992
【非特許文献2】Deshner et al.,Carcinogenesis,7:1193-1196,191
【非特許文献3】Kato et al.,Carcinogenesis,4,1301-1305 1983
【非特許文献4】Chu et al.,J.of Natural Prod.,55:2,179-183,1992
【非特許文献5】Okuda et al.,presented at the XVIth International Conference of the Groupe Polyphenols,Lisbon,Portugal,July 13-16,1992
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
高血圧症および関連する疾病並びに脈管系の疾患を被る多くの人々を考えると、NOプールを正常な健康的レベルに維持する治療方法を見つけることに多きな関心が寄せられている。ニトログリセリンやイソソルビド・ジニトレートなどのNOを放出できる薬物は、依然として、血管弛緩療法の主流である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願の出願人等は、ここで意外なことに、NOプールを維持し、血管弛緩を誘発し、および/またはNO反応性疾病および疾患を治療するおよび/または予防するために、Aタイプのプロシアニジンを利用できることを発見した。
【0009】
本発明は、Aタイプのプロシアニジンを含有する組成物、およびヒトまたは家畜動物の予防または治療処置のためにその組成物を使用する方法に関する。
【0010】
ある態様において、本発明は、効果的な量のAタイプのプロシアニジンを含む、製薬、食品、食品添加物または栄養補助食品などの組成物に関する。この組成物は、必要に応じて、追加のNO調節薬および/または心血管保護薬または治療薬を含有していてもよく、もしくはそのような薬剤と組み合わせて投与してもよい。上述した組成物を含有するパッケージ製品、並びにNO反応性健康状態を治療または予防する、高血圧症、心疾患、冠動脈疾患および/または血管循環障害を治療する、心臓発作、脳梗塞、鬱血性心不全および/または腎不全を予防するまたはそのリスクを低減する、もしくは血流、例えば、腎血流を改善するための使用上の注意および/またはラベルも本発明の範囲に含まれる。
【0011】
別の態様において、本発明は、NO反応性健康状態を治療または予防する、高血圧症、心疾患、冠動脈疾患および/または血管循環障害を治療する、心臓発作、脳梗塞、鬱血性心不全および/または腎不全を予防するまたはそのリスクを低減する、もしくは血流、例えば、腎血流を改善するためにAタイプのプロシアニジンを使用する方法に関する。
【0012】
本出願に引用された全ての特許、特許出願および文献は、参照によりここに含まれる。矛盾がある場合には、本開示が支配する。
【0013】
本発明は、効果的な量のAタイプのプロシアニジン、または薬剤的に許容されるその塩または誘導体を含む組成物に関する。
【0014】
本発明のAタイプのプロシアニジンは、以下の化学式のフラバン−3−オール単量体ユニットn個から構成されたオリゴマーである:
【化1】

【0015】
ここで、
(i) この単量体ユニットは、フラバン間の結合4→6および/または4→8により連結されている、
(ii) 単量体ユニットの少なくとも2つが、Aタイプのフラバン間の結合(4→8;2→O→7)または(4→6;2→O→7)によりさらに連結されている、
(iii) nは2から12である。
【0016】
Aタイプのフラバノイド間の結合により連結された2つのフラバノールユニットが、2位および4位の2つの結合を含まなければならないことが当業者により理解されよう。これらは両方とも、αまたはβいずれかの立体化学を有している。すなわち、結合は、2αと4αまたは2βと4βのいずれかである。これらの結合は、Aタイプのフラバン間の結合により連結された第2のフラバノールユニットの6−O位および7−O位、または8−O位および7−O位に結合している。C−2位およびC−4位にAタイプのフラバン間の結合を含まないオリゴマーの構成フラバノールユニットにおいて、C−4位での結合は、αまたはβいずれかの立体化学を有し得る。フラバノールユニットのC−3位でのOH基は、αまたはβいずれかの立体化学を有する。フラバン−3−オール(単量体)ユニットは、(+)−カテキン、(−)−エピカテキンおよびそれぞれのエピマー(例えば、(−)−カテキンおよび(+)−エピカテキン)であってよい。
【0017】
上述したAタイプのプロシアニジンは、1つ以上の構成フラバン−3−オールユニットの1つ以上のOH基で、誘導体化、例えば、エステル化されていてもよい。それゆえ、所定のフラバン−3−オールユニットは、環の3位、5位、7位、3’位および4’位の内の1つ以上で、1つ以上のエステル基、好ましくは、没食子酸エステル基を含んでもよい。このユニットは、特に、モノ−、ジ−、トリ−、テトラ−またはペンタ−没食子酸エステルユニットであってよい。
【0018】
製品にとって、また本発明の方法において有用な化合物の例としては、整数nが3から12、4から12、5から12、4から10、または5から10である化合物が挙げられる。ある実施の形態において、nは2から4、または2から5、例えば、nは2または3である。
【0019】
ある実施の形態において、Aタイプのプロシアニジンは、エピカテキン−(4β→8;2β→O→7)−カテキン(すなわち、A1ダイマー)、または薬剤的に許容されるその塩または誘導体であり、以下の化学式を有する:
【化2】

【0020】
別の実施の形態において、Aタイプのプロシアニジンは、エピカテキン−(4β→8;2β→O→7)−エピカテキン(すなわち、A2ダイマー)であり、以下の化学式を有する:
【化3】

【0021】
さらに別の実施の形態において、Aタイプのプロシアニジンは、Aタイプのトリマーであり、以下の化学式を有する:
【化4】

【0022】
Aタイプのプロシアニジンは、天然起源のものであっても、合成により調製されてもよい。例えば、Aタイプのプロシアニジンは、実施例1に記載されたように、もしくはLou et al., Phytochemistry,51:297-308(1999)、またはKarchesy and Hemingway,J.Agric.Food Chem.,34:966-970(1986)に記載されたように、ピーナッツの皮から単離されてもよい。これらの文献の各関連部分をここに引用する。熟成したレッドピーナッツの皮は、約17質量%のプロシアニジンを含有し、二量体プロシアニジンの中でも、エピカテキン−(4β→8;2β→O→7)−カテキンが優位を占め、エピカテキン−(4β→8;2β→O→7)−エピカテキンが少量存在する。しかしながら、(4→8;2→O→7)二重結合を持つプロシアニジンに加え、(4→6;2→O→7)二重結合を持つプロシアニジンもピーナッツの皮の中に見られる。
【0023】
上述した化合物の他の供給源には、例えば、Foo et al., J.Nat.Prod.,63:1225-1228、およびPrior et al.,J.Agricultural Food Chem.,49(3):1270-76(2001)に記載されたようにクランベリーがある。これらの文献の各関連部分をここに引用する。他の供給源としては、ゴムカズラ(Ecdysanthera utilis)(Lie-Chwen et al.,J.Nat.Prod.,65:505-8(2002))およびセイヨウトチノキ(Aesculus hippocastanum)(米国特許第4863956号明細書)が挙げられる。これらの文献の各関連部分をここに引用する。
【0024】
Aタイプの化合物は、Kondo et al.,Tetrahedron Lett.,41:485(2000)に記載されたような中性条件下で1,1−ジフェニル−2−ピクリルヒドラジル(DPPH)ラジカルを用いた酸化によって、Bタイプのプロシアニジンから得てもよい。この文献の関連部分をここに引用する。天然と合成のBタイプのプロシアニジンを得る方法は、当該技術分野においてよく知られており、例えば、全てRomanczyk等の米国特許第6670390号、同第6207842号、同第6420572号、および同第6156912号の各明細書に記載されている。
【0025】
Aタイプのプロシアニジンは、ここに記載した組成物中に用いられても、主成分としてAタイプのプロシアニジンを含む抽出物(例えば、ピーナッツの皮の抽出物)の形態で投与されてもよい。
【0026】
Aタイプのプロシアニジンは、単離され、精製されてもよく、すなわち、それらは、天然に共に生じる化合物(Aタイプのプロシアニジンが天然起源のものである場合)から単離され、またはそれらの合成により調製され、いずれの場合でも、汚染化合物(不純物)のレベルは、Aタイプのプロシアニジンの有効性に著しく寄与しない、またはその有効性を減少させないようなものである。例えば、単離され精製されたA1ダイマーは、自然に共に生じるであろうA2ダイマーから、工業的に利用できる実行可能な精製および分離技法により達成できる程度まで分離される。化合物は実質的に純粋であってよく、すなわち、それらの化合物は、利用できる精製、分離および/または合成技術により達成できる最高の程度の均質性を有する。ここに用いられているように、「実質的に純粋なA1ダイマー」は、技術的かつ工業的に可能な程度までA2ダイマーから分離されており、「実質的に純粋なAタイプのトリマー」は、他のオリゴマーから(技術的かつ工業的に可能な程度まで)分離されているが、いくつかのAタイプのトリマーの混合物を含有していてもよい。言い換えれば、「単離され精製されたトリマー」という語句は、主に、一種類のトリマーを称し、一方で、「実質的に純粋なトリマー」は、トリマーの混合物を包含してもよい。
【0027】
ある実施の形態において、Aタイプのプロシアニジンは、少なくとも80%純粋、好ましくは少なくとも85%純粋、少なくとも90%純粋、少なくとも95%純粋、少なくとも98%純粋、または少なくとも99%純粋である。そのような化合物は、製薬用途に特に適している。
【0028】
使用方法
本願に記載されたどの化合物を、ここに記載した方法を実施するために用いてもよい。実施例3に示したように、Aタイプのプロシアニジンは、NOプールの維持を補助する内皮細胞における一酸化窒素(NO)経路に影響を与える。理論により拘束することを意図するものではなく、NOプールは、NO合成を誘発しおよび/またはNO分解を減少させることによって維持される。前記化合物は、収縮した血管を弛緩させる。それらの化合物は、実施例4に示したように、抗血小板療法に用いてもよい。
【0029】
それゆえ、本発明は、NO反応性疾病または疾患を、その必要のある検体に、以下の化学式:
【化5】

【0030】
のフラバン−3−オール単量体ユニットn個から構成されたAタイプのプロシアニジンオリゴマー、
または薬剤的に許容されるその塩または誘導体、
を効果的な量で投与することによって、治療または予防する方法であって、
ここで、
(i) この単量体ユニットは、フラバン間の結合4→6および/または4→8により連結されており、
(ii) 単量体ユニットの少なくとも2つが、Aタイプのフラバン間の結合(4→8;2→O→7)または(4→6;2→O→7)によりさらに連結されており、
(iii) nは2から12であり、
検体がヒトまたは家畜動物である方法に関する。
【0031】
このAタイプのプロシアニジンは、単離され精製されている、または実質的に純粋であってよい。ある実施の形態において、上記化合物は、少なくとも約80%純粋、少なくとも約85%純粋、少なくとも約90%純粋、少なくとも95%純粋、または少なくとも98%純粋であってよい。上述した方法に使用するための化合物の例としては、整数nが3から12、4から12、5から12、4から10、または5から10である化合物が挙げられる。ある実施の形態において、nは2から4、または2から5、例えば、nは2または3である。
【0032】
ここに用いているように、「NO反応性疾病または疾患」は、NOによる治療に反応する健康状態を称する。そのような状態の例としては、以下に限られないが、疾病/疾患の病状がNO経路の異常機能により生じる、NO媒介またはNO依存性疾病および疾患が挙げられる。その状態が、高血圧症、心疾患、冠動脈疾患、および/または血管循環疾患、心臓発作、脳梗塞、鬱血性心不全、腎不全、および腎臓病を含むことが好ましい。Aタイプのプロシアニジンは、単独で投与しても、別の心血管治療薬との組合せで投与してもよい。
【0033】
高血圧は、心臓発作、脳梗塞、鬱血性心不全、および腎不全のリスクを増加させるので、これらの状態を予防するために、血管弛緩を生じるAタイプのプロシアニジンを、単独で、または他の心血管保護薬との組合せで使用できる。特に適した検体としては、糖尿病、肥満症、高コレステロールレベルおよび/または喫煙と組み合わされた高血圧の検体が挙げられ、そのような患者においては、心臓発作および脳梗塞のリスクが数倍増加する。
【0034】
ここに用いているように、「治療」は、例えば、疾患の進行を遅くする、延命する、死ぬリスクを減少させる、および/または疾患のパラメータの測定可能な改善を与えることによって、心疾患などの既存の医療状態の改善を意味する。
【0035】
「予防(preventing)」という用語は、疾病の兆候の減少を含む、疾病の発症に関連するリスクを減少させることを意味する。
【0036】
ここに用いているように、「心血管保護薬または治療薬」という用語は、心臓血管系を治療または保護するのに効果的な、Aタイプのプロシアニジン以外の薬剤を称する。そのような薬剤の例は、抗血小板治療薬(例えば、アスピリンなどのCOX阻害剤、Bタイプのプロシアニジン)、NO調節薬、コレステロール低下薬(例えば、ステロール、スタノール)である。
【0037】
ある実施の形態において、本発明は以下の方法に関する:
NO反応性疾病または疾患を、その必要のある検体に、以下の化学式:
【化6】

【0038】
のエピカテキン−(4β→8;2β→O→7)−カテキン(すなわち、A1ダイマー)、または薬剤的に許容されるその塩または誘導体、を効果的な量で投与することによって、治療または予防する方法であって、ここで、検体はヒトまたは家畜動物である方法。A1ダイマーは単離され精製されていてもよい。ある実施の形態において、上述した化合物は、少なくとも約90%純粋、少なくとも約95%純粋、または少なくとも98%純粋であってよい。
【0039】
NO反応性疾病または疾患を、その必要のある検体に、以下の化学式:
【化7】

【0040】
のエピカテキン−(4β→8;2β→O→7)−エピカテキン(すなわち、A2ダイマー)、または薬剤的に許容されるその塩または誘導体、を効果的な量で投与することによって、治療または予防する方法であって、ここで、検体はヒトまたは家畜動物である方法。A2ダイマーは単離され精製されていてもよい。ある実施の形態において、上述した化合物は、少なくとも約90%純粋、少なくとも約95%純粋、または少なくとも98%純粋であってよい。
【0041】
NO反応性疾病または疾患を、その必要のある検体に、以下の化学式:
【化8】

【0042】
のAタイプのトリマー、または薬剤的に許容されるその塩または誘導体、を効果的な量で投与することによって、治療または予防する方法であって、ここで、検体はヒトまたは家畜動物である方法。Aタイプのトリマーは、単離され精製されていても、または実質的に純粋であってもよい。ある実施の形態において、上述した化合物は、少なくとも約80%純粋、少なくとも約85%純粋、少なくとも約90%純粋、少なくとも約95%純粋、または少なくとも98%純粋であってよい。
【0043】
ある実施の形態において、本発明は以下の例示の方法を提供する:
高血圧症を、その必要のある検体に、以下の化学式:
【化9】

【0044】
のフラバン−3−オール単量体ユニットn個から構成されたAタイプのプロシアニジンオリゴマー、
または薬剤的に許容されるその塩または誘導体、を効果的な量で投与することによって、治療する方法であって、
ここで、
(i) この単量体ユニットは、フラバン間の結合4→6および/または4→8により連結されており、
(ii) 単量体ユニットの少なくとも2つが、Aタイプのフラバン間の結合(4→8;2→O→7)または(4→6;2→O→7)によりさらに連結されており、
(iii) nは2から12であり、
検体がヒトまたは家畜動物である方法。
【0045】
このAタイプのプロシアニジンは、単離され精製されている、または実質的に純粋であってよい。ある実施の形態において、上記化合物は、少なくとも約80%純粋、少なくとも約85%純粋、少なくとも約90%純粋、少なくとも95%純粋、または少なくとも98%純粋であってよい。
【0046】
上述した方法に使用するための化合物の例としては、整数nが3から12、4から12、5から12、4から10、または5から10である化合物が挙げられる。ある実施の形態において、nは2から4、または2から5、例えば、nは2または3である。
【0047】
ある実施の形態において、本発明は以下の例示の方法を含む:
高血圧症を、その必要のある検体に、以下の化学式:
【化10】

【0048】
のエピカテキン−(4β→8;2β→O→7)−カテキン(すなわち、A1ダイマー)、または薬剤的に許容されるその塩または誘導体、を効果的な量で投与することによって、治療する方法であって、ここで、検体はヒトまたは家畜動物である方法。A1ダイマーは単離され精製されていてもよい。ある実施の形態において、上述した化合物は、少なくとも約90%純粋、少なくとも約95%純粋、または少なくとも98%純粋であってよい。
【0049】
高血圧症を、その必要のある検体に、以下の化学式:
【化11】

【0050】
のエピカテキン−(4β→8;2β→O→7)−エピカテキン(すなわち、A2ダイマー)、または薬剤的に許容されるその塩または誘導体、を効果的な量で投与することによって、治療する方法であって、ここで、検体はヒトまたは家畜動物である方法。A2ダイマーは単離され精製されていてもよい。ある実施の形態において、上述した化合物は、少なくとも約90%純粋、少なくとも約95%純粋、または少なくとも98%純粋であってよい。
【0051】
高血圧症を、その必要のある検体に、以下の化学式:
【化12】

【0052】
のAタイプのトリマー、または薬剤的に許容されるその塩または誘導体、を効果的な量で投与することによって、治療する方法であって、ここで、検体はヒトまたは家畜動物である方法。Aタイプのトリマーは、単離され精製されていても、または実質的に純粋であってもよい。ある実施の形態において、上述した化合物は、少なくとも約80%純粋、少なくとも約85%純粋、少なくとも約90%純粋、少なくとも約95%純粋、または少なくとも98%純粋であってよい。
【0053】
上述した化合物のいずれを用いて、必要のあるヒトの勃起障害を改善/治療する方法も本発明の範囲に含まれる。
【0054】
上述した方法に使用するための効果的な量は、ここに与えられる指図および当該技術分野における一般的な知識を用いて当業者が決めてもよい。例えば、前記効果的な量は、ほ乳類の体(例えば、血液)内における生理学的に適切な濃度を達成するようなものであってよい。そのような生理学的に適切な濃度は、少なくとも約10ナノモル(nM)、好ましくは少なくとも約20nM、または少なくとも約100nM、より好ましくは少なくとも約500nMであってよい。ある実施の形態において、ヒトなどのほ乳類の血液中に少なくとも約1マイクロモルが達成される。ここに定義したような化学式Anの化合物は、約50mg/日から約1000mg/日、好ましくは約100〜150mg/日から約900mg/日、最も好ましくは約300mg/日から約500mg/日で投与してよい。しかしながら、上述した量よりも多い量を用いてもよい。
【0055】
前記化合物を急に投与しても、または治療/予防投与を、投与計画として、すなわち、有効期間に亘り、例えば、毎日、毎月、隔月、半年、毎年続けても、または他の投与計画において、そのような期間に亘り医者が決めたように必要に応じて行ってもよい。投与は、少なくとも、治療/予防効果を示すのに要する期間に亘り続けられるであろう。前記組成物は、ほ乳類の体内の効果的な化合物のレベルを維持するために、好ましくは毎日、最も好ましくは一日二、三回、例えば、朝と晩に投与される。最も有益な結果を得るために、この組成物は、少なくとも約30日間、または少なくとも約60日間に亘り投与されるであろう。これらの投与計画は、周期的に繰り返してもよい。
【0056】
組成物および配合物
本発明の化合物は、製薬、食品、食品添加物または栄養補助食品として投与してもよい。
【0057】
ここに用いたように、「食品」は、成長、修復および生体プロセスを維持し、エネルギーを供給するために、生物の体内に用いられる、タンパク質、炭水化物および/または脂質から実質的になる材料である。食品は、ミネラル、ビタミン類および調味料などの補助物質も含有してよい。Merriam-Webster's Collegiate Dictionary, 10th Edition,1993を参照のこと。「食品」という用語は、ヒトまたは動物の消費のために適用された飲料を含む。ここに用いたように、「食品添加物」は、連邦規制基準第21編第170.3(e)(1)項において米国食品医薬品局により定義されたようなものであり、直接的および間接的な添加物を含む。ここに用いたように、「製薬」は医薬品である。Merriam-Webster's Collegiate Dictionary, 10th Edition,1993を参照のこと。製薬は薬剤と称してもよい。ここに用いたように、「栄養補助食品」は、以下の栄養成分:ビタミン、ミネラル、ハーブまたは他の植物、アミノ酸、毎日の摂取総量を増加させることによって食事を補助するためのヒト用の栄養物質、もしくは濃縮物、代謝物、構成要素、抽出物またはこれらの成分の組合せの内の一種類以上を担持または含有する、食事を補助することを意図した製品(タバコ以外)である。
【0058】
必要に応じて、別の心血管保護薬または治療薬と組み合わせて、本発明の化合物を含有する製薬は、経口、舌下、口内、鼻、直腸、静脈内、非経口および局所などの様々な様式で用途してもよい。当業者は、必要に応じて、別の心血管保護薬または治療薬と組み合わせて、Aタイプのプロシアニジンの送達を最大にするために適切な投与様式を決定することができるであろう。それゆえ、各タイプの投与のために適用された投与形態は、本発明の範囲に含まれ、錠剤、カプセル、ゼラチンカプセル(ジェルキャップ)、塊または投与単位粉末または顆粒、乳濁液、懸濁液、ペースト、クリーム、ゲル、発泡体、ゼリーまたは注射投与形態などの、固体、液体および半固体投与形態を含む。徐放性投与形態も本発明の範囲に含まれ、米国特許第5024843号、同第5091190号、同第5082668号、同第4612008号、および同第4327725号の各明細書に記載されたように調製してもよい。これらの文献の関連部分をここに引用する。適切な薬剤的に許容されるキャリア、希釈剤、または賦形剤は、当該技術分野において一般に知られており、当業者により容易に決定できる。例えば、錠剤は、効果的な量のAタイプのプロシアニジンを含有する組成物と、ソルビトール、ラクトース、セルロース、またはリン酸二カルシウムなどの必要に応じてのキャリアとを含んでもよい。
【0059】
Aタイプのプロシアニジン、および必要に応じて別の心血管保護薬または治療薬を含有する栄養補助食品は、当該技術分野に知られた方法を用いて調製してよく、例えば、リン酸二カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、硝酸カルシウム、ビタミン類、およびミネラルなどの栄養素を含んでもよい。
【0060】
さらに、本発明の組成物を含むパッケージ製品(例えば、食品、栄養補助食品、または製薬)および本発明の化合物の存在、または増加した含有量を示す、もしくは上述した組成物の使用を指示するラベルを含むパッケージ製品などの製造製品が本発明の範囲に含まれる。
【0061】
少なくとも1つの容器および少なくとも一種類のAタイプのプロシアニジン、または薬剤的に許容されるその塩または誘導体を含む組合せ治療に使用するように適用された製造製品(パッケージ製品またはキットなどの)も本発明の範囲に含まれる。この製造製品は、少なくとも一種類の追加の薬剤、心血管保護薬または治療薬(すなわち、Aタイプのプロシアニジン、もしくは薬剤的に許容されるその塩または誘導体以外の)をさらに含み、その薬剤は、別の組成物として、別の容器内、または本発明の化合物との混合物で提供されていてよい。
【0062】
上述したように、心血管保護薬または治療薬は、心臓血管系を治療するまたは保護するのに効果的である。そのような薬剤の例は、抗血小板治療薬(例えば、アスピリンなどのCOX阻害剤)、NO調節薬、コレステロール低下剤(例えば、ステロール、スタノール)である。
【0063】
ある実施の形態において、必要に応じてAタイプのプロシアニジンと共に投与される心血管保護薬または治療薬は、Bタイプのプロシアニジン、例えば、以下に記載するようなココアフラバノールおよび/またはプロシアニジンであってよい。
【0064】
本発明に使用するためのBタイプのプロシアニジンは、天然起源のもの、例えば、カカオ豆またはポリフェノールの別の天然源から由来しても、もしくは合成により調製されてもよい。例えば、Bタイプのプロシアニジンおよびその誘導体は、Romanczyk等の米国特許第6670390号明細書に記載されたものであり、その関連部分をここに引用する。当業者は、有効性または費用に基づいて天然または合成のポリフェノールを選択してよい。ポリフェノールは、カカオポリフェノールを含有するカカオ成分、例えば、チョコレートに含まれるチョコレートリカーの形態で組成物に含まれてもよく、またはカカオ成分とは独立して、例えば、抽出物、抽出分画、単離され精製された個別の化合物、プールされた抽出分画または合成された化合物として加えられてもよい。
【0065】
「カカオ成分」という用語は、チョコレートリカーなどの殻を取ったカカオニブおよびある程度または完全に脱脂されたカカオ固形物(例えば、ケーキまたは粉末)由来のカカオ固形物含有材料を称する。
【0066】
Bタイプのプロシアニジンオリゴマーは、2から約18、好ましくは2から約12、最も好ましくは2から約10の単量体ユニットを有していてよい。あるいは、このオリゴマーは、3〜18、好ましくは3〜12、より好ましくは3〜10の単量体ユニットを、または5〜18,好ましくは5〜12、より好ましくは5〜10の単量体ユニットを有していてよい。例えば、オリゴマーは、ダイマー、トリマー、テトラマー、ペンタマー、ヘキサマー、ヘプタマー、オクタマー、ノナマーおよびデカマーであってよい。オリゴマーにおいて、モノマーは、(4→6)および/または(4→8)のフラバン間の結合により連結されている。単独に(4→8)結合を持つオリゴマーは線状であり、一方で、少なくとも1つの(4→6)の存在により、枝分れオリゴマーとなる。少なくとも1つの非天然結合(6→6)、(6→8)、および(8→8)を含むオリゴマーも本発明の範囲に含まれる。そのような天然に生じないオリゴマーの合成が、国際公開第00/61547号パンフレットとして2000年10月19日に発行された国際特許出願第PCT/US00/08234号に記載されている。その関連部分をここに引用する。
【0067】
Bタイプのプロシアニジンは、カカオ豆、カカオニブ、またはチョコレートリカー、ある程度脱脂されたカカオ固形物、および/または完全に脱脂されたカカオ固形物などのカカオ成分からの抽出により調製してもよい。抽出物は、完全にまたはある程度脱脂されたカカオ粉末から調製されたものであることが好ましい。テオブローマ(Theobroma)、ヘラニア(Herrania)またはその種間および種内の交雑の任意の種からの豆を用いてもよい。抽出物は、発酵した、不十分に発酵した、または未発酵の豆から調製してもよく、発酵した豆は、カカオフェノールの量が最も少なく、未発酵の豆が最も多い。豆の選択は、豆の発酵係数に基づいて行ってもよく、例えば、抽出物は、約275以下の発酵係数(fermentation factor)を持つ豆から製造してもよい。発酵の度合いを操作することによって、カカオ成分およびその抽出物中のポリフェノールのレベルを最適化することを、国際公開第98/09533号パンフレットとして発酵された国際特許出願第PCT/US97/15893号に記載されたように行ってもよい。その関連部分をここに引用する。
【0068】
カカオポリフェノールは、カカオ加工の従来の方法(例えば、Industrial Chocolate Manufacture and Use,ed.Backett,S.T.,Blackie Acad. & Professional,New York,1997のChapters 1,5 および6に記載されている)を用いて、または従来の方法とは対照的にカカオ成分中のポリフェノールを保存した(それらの破壊を防ぐことによって)、Kealey等の米国特許第6015913号明細書に記載された改良加工方法を用いて、加工されたカカオ成分から抽出してもよい。改良されたカカオ加工方法は、従来のロースト工程を省いている。それゆえ、(a)カカオニブをローストせずにカカオの殻をゆるくするのに十分な温度と時間に亘りカカオ豆を加熱し、(b)カカオの殻からカカオニブを篩にかけ、(c)カカオニブをネジプレスし、(d)保存されたレベルのカカオポリフェノールを含有するある程度脱脂されたカカオ固形物およびカカオバターを回収することによって得られるカカオ成分を用いてよい。この改良方法は、従来の加工方法よりもずっと高いレベルの高級プロシアニジンオリゴマーを保持する。この方法により製造されたカカオ固形物は、脱脂固形物1g当たり総フラバノールおよび/またはプロシアニジンを20,000μgより多く、好ましくは25,000μg/gより多く、より好ましくは28,000μg/gより多く、最も好ましくは30,000μg/gより多く含有するであう。本発明の目的のために、フラバノールおよび/またはプロシアニジンの総量は、実施例2に記載したように決定される。
【0069】
Bタイプのプロシアニジンは、ポリフェノールがその中に溶解する溶媒を用いて、上述した供給源、または任意の他のポリフェノールまたはフラバノールもしくはプロシアニジン含有供給源から抽出してもよい。適切な溶媒としては、水またはメタノール、エタノール、アセトン、イソプロピルアルコールおよび酢酸エチルなどの有機溶媒が挙げられる。溶媒の混合物を用いてもよい。水を溶媒として使用する場合、水は、例えば、酢酸によりわずかに酸性化されていてよい。溶媒の例としては、水と有機溶媒、例えば、水性のメタノール、エタノールまたはアセトンとの混合物が挙げられる。水性有機溶媒は、例えば、約50%から約95%の有機溶媒を含んでよい。それゆえ、水中に約50%、約60%、約70%、約80%および約90%の有機溶媒を用いてよい。溶媒は、酢酸などの酸を少量、例えば、約0.5%から約1.0%の量で含んでもよい。抽出物の組成、すなわち、プロシアニジンオリゴマーの表示(すなわち、オリゴマー分布)および量は、溶媒の選択に依存する。例えば、水抽出物は主にモノマーを含有し、酢酸エチル抽出物はモノマーと低級オリゴマー、主にダイマーとトリマーを含有する、水性のメタノール、エタノールまたはアセトン抽出物はモノマーとある範囲の高級オリゴマーを含有する。モノマーおよび高級プロシアニジンオリゴマーを抽出するための溶媒の内の1つは、約70%のアセトンである。しかしながら、本発明において、どのようなポリフェノール含有抽出物も有用である。カカオポリフェノールの抽出方法は、当該技術分野において知られており、例えば、Romanczyk等の米国特許第5554645号明細書および国際公開第97/36497号パンフレットとして発行された国際特許出願第PCT/US97/05693号に記載されている。それゆえ、ある実施の形態において、カカオ抽出物は、カカオ豆をカカオ粉末に粉砕し、粉末を脱脂し、カカオポリフェノールを抽出し、抽出物を精製することによって調製される。カカオ粉末は、カカオ豆と果肉を凍結乾燥させ、凍結乾燥したカカオ豆から果肉を除去し、皮を取り、皮のない豆を粉砕することにより調製できる。
【0070】
Bタイプのカカオポリフェノール抽出物は、例えば、カフェインおよび/またはテオブロミンの除去により精製し、ゲル透過クロマトグラフィーおよび/または高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)によりさらに精製してもよい。この抽出物に高級プロシアニジンオリゴマーを豊富にさせるために、ゲル透過クロマトグラフィー(例えば、Sephadex LH−20で)を用いてもよい。例えば、選択したオリゴマーがカラムから溶出し始めるまで、モノマーおよび低級オリゴマーを含有する溶出液を収集しなくてもよい。そのような抽出の例が、当該技術分野において知られており、ここにその関連部分を引用する国際公開第97/36497号パンフレットとして発行された国際特許出願第PCT/US97/05693号の実施例5に記載されている。分取HPLC、例えば、順相クロマトグラフィーを使用することによって、抽出物は、例えば、モノマーまたは特定のオリゴマーを少なくとも50質量%含有するモノマー分画とオリゴマー分画に分画してもよい。特定の分画がモノマーまたは任意の低級オリゴマー(例えば、ダイマー、トリマーまたはテトラマー分画)を含有する場合、その分画は、特定のオリゴマー分画を約90から95質量%含有する。所望の分画は、例えば、オリゴマー3〜10または5〜10を含有するように選択したオリゴマーの組合せを得るために、分離後にプールしてもよい。当業者は、クロマトグラフィー条件を操作して、本明細書における手引き、当該技術分野における一般的な知識、および例えば、Romanczyk等の米国特許第5554645号明細書および国際公開第97/36497号パンフレットとして発行された国際特許出願第PCT/US97/05693号の教示に鑑みて、所望のプロシアニジンプロファイルを達成することができる。
【0071】
モノマー分画は一般に、モノマーのエピカテキンとカテキンの混合物を含有し、オリゴマー分画は一般に、ダイマー(ダイマー分画において)、トリマー(トリマー分画において)、テトラマー(テトラマー分画において)などの混合物を含有する。カカオはモノマー、ダイマーなどの各々について複数のタイプを含有するので、モノマーとオリゴマーの混合物は、単離された分画中に生じる。プロシアニジンの基礎的要素である二種類のモノマー、エピカテキンとカテキン、並びにオリゴマー中の化学結合により連結したモノマーの結果として、オリゴマーの変動性が生じる。それゆえ、カカオダイマーは主にB2およびB5であり、これらの各々は、エピカテキンの二種類のモノマーを含有している。個々のモノマーおよびオリゴマーは、逆相HPLCを用いて、例えば、C18カラムを用いて得てもよい。
【0072】
Bタイプのカカオポリフェノールを本発明の組成物中に、カカオ抽出物として、例えば、溶媒により生成した抽出物、カカオ分画、単離化合物として、または効果的な量のフラバノールおよび/またはプロシアニジンを含有するカカオ成分またはチョコレートの形態で、用いてもよい。カカオ成分は、従来のカカオ加工工程を用いて調製してもよいが、Kealey等の米国特許第6015913号に記載された方法を用いて調製することが好ましい。あるいは、カカオポリフェノールのレベルを上昇させるために、約275以下の発酵係数を持つカカオ豆から調製されたカカオ固形物およびチョコレートリカーを用いてもよい。これらの成分は、従来のカカオ加工方法(例えば、ローストによる)および完全に発酵した豆を用いて得られるよりも高いカカオポリフェノール含有量を有する。チョコレートは、上述した成分から従来の技法を用いて、またはその関連部分をここに引用する国際公開第99/45788号として発行された国際特許出願第PCT/US99/05414号に記載されたチョコレート製造中にカカオポリフェノールを保存するための改良プロセスを用いて調製してもよい。以下の従来のものではないプロセスの内の少なくとも1つにより調製されたチョコレートは、ここでは「保存された量のカカオポリフェノールを有するチョコレート」と称される:(i)不十分に発酵したまたは未発酵のカカオ豆からカカオ成分を調製する、(ii)カカオ成分製造プロセス中にカカオポリフェノールを保存する、(iii)チョコレート製造プロセス中にカカオポリフェノールを保存する。
【0073】
合成のBタイプのプロシアニジンを用いてもよく、このプロシアニジンは、当該技術分野において公知であり、その関連部分をここに引用する国際公開第99/19319号として発行された国際特許出願第PCT/US98/21392号に記載されたような方法により調製される。
【0074】
フラバノールおよび/またはプロシアニジン誘導体も有用であろう。これらの例としては、没食子酸エステル(例えば、没食子酸エピカテキンおよび没食子酸カテキン)などのモノマーとオリゴマーのエステル;モノ−またはジ−糖類部分(例えば、β−D−グルコース)などの糖類部分により誘導体化された化合物、グリコシル化されたモノマーとオリゴマー、およびそれらの混合物;結腸内フローラ代謝により生成されるプロシアニジンの酵素開裂生成物を除いて、硫酸化、グルクロニド化、およびメチル化形態などのプロシアニジンモノマーとオリゴマーの代謝産物が挙げられる。これらの誘導体は、天然供給源からのものであっても、合成により調製されたものであってもよい。
【0075】
Aタイプおよび/またはBタイプのプロシアニジンおよび随意的な別の心血管保護薬/治療薬を含む食品は、ヒトまたは家畜用途に適用してもよく、ペットフードを含む。食品は、菓子類以外のものであってよい。しかしながら、好ましいコレステロール低下食品は、ブラックチョコレート、低脂肪チョコレートおよびチョコレート被覆キャンディーであってよいキャンディーを含む、ミルクチョコレート、甘みを加えたチョコレートおよび甘みをわずかに加えたチョコレートなどの、米国の食品に関する商品規格(SOI)および非SOIのチョコレートを含む菓子類である。他の例としては、焼いた製品(例えば、ブラウニー、焼いたスナック、クッキー、ビスケット)、香辛料、グラノラバー、トッフィーチュー、食事代替バー、スプレッド、シロップ、粉末の飲料ミックス、ココアまたはチョコレート風味の飲料、プリン、餅、風味の良いソースなどが挙げられる。所望であれば、食品はチョコレートまたはココア風味であってよい。食品は、チョコレートおよびナッツ、例えば、ピーナッツ、クルミ、アーモンド、およびヘーゼルナッツを含有するグラノラバーなどのキャンディーバーであってよい。ここに記載した食品に皮付きナッツを加えると、例えば、ピーナッツの皮は約17%のフラバノールおよびプロシアニジンを含有し、アーモンドの皮は約30%のフラバノールおよびプロシアニジンを含有するので、ポリフェノール総含有量も増すであろうことに留意されたい。挽いたピーナッツの皮を本発明の組成物に加えてもよい。ある実施の形態において、ナッツの皮、例えば、ピーナッツの皮が、チョコレートキャンディーのヌガーに加えられる。
【0076】
ある実施の形態において、チョコレート以外の食品は、少なくとも約5μg/gから約10mg/g、例えば、少なくとも5μg/g、好ましくは少なくとも10μg/g、より好ましくは少なくとも100μg/gのフラバノールおよび/またはBタイプのプロシアニジンおよび/またはAタイプのプロシアニジンを含有する。所望であれば、チョコレート以外の食品は、以下に記載するチョコレート食品に見られるよりもずっと高いレベルのカカオプロシアニジンを含有しても差し支えない。
【0077】
チョコレート菓子類はミルクチョコレートまたはブラックチョコレートであってもよい。ある実施の形態において、チョコレートは、製品中の非脂肪カカオ固形物の総量に基づいて、チョコレート1グラム当たり、少なくとも3,600μg、好ましくは少なくとも4,000μg、好ましくは少なくとも4,500μg、より好ましくは少なくとも5,000μg、最も好ましくは少なくとも5,500μgのフラバノールおよび/またはBタイプのプロシアニジンおよび/またはAタイプのプロシアニジンを含む。別の実施の形態において、チョコレートは、製品中の非脂肪カカオ固形物に基づいて、1グラム当たり、少なくとも6,000μg、好ましくは少なくとも6,500μg、より好ましくは少なくとも7,000μg、最も好ましくは少なくとも8,000μgのフラバノールおよび/またはBタイプのプロシアニジンおよび/またはAタイプのプロシアニジンを、さらにより好ましくは10,000μg/gで含有する。
【0078】
ミルクチョコレート菓子は、ミルクチョコレート製品中の非脂肪カカオ固形物の総量に基づいて、ミルクチョコレート1グラム当たり、少なくとも1,000μg、好ましくは少なくとも1,250μg、より好ましくは少なくとも1,500μg、最も好ましくは少なくとも2,000μgのフラバノールおよび/またはBタイプのプロシアニジンおよび/またはAタイプのプロシアニジンを有していてよい。好ましい実施の形態において、ミルクチョコレート菓子は、ミルクチョコレート製品中の非脂肪カカオ固形物の総量に基づいて、ミルクチョコレート1グラム当たり、少なくとも2,500μg、好ましくは少なくとも3,000μg、より好ましくは少なくとも4,000μg、最も好ましくは少なくとも5,000μgのフラバノールおよび/またはBタイプのプロシアニジンおよび/またはAタイプのプロシアニジンを含有する。
【0079】
L−アルギニンを、様々な量で食品に加えてもよい。一般に、カカオは、ある程度脱脂されたカカオ固形物の100グラム当たり1から1.1グラムのL−アルギニンを含有する。その量は、カカオの100グラム当たり0.8から1.5グラムに及んで差し支えない。ある実施の形態において、本発明のチョコレート食品は、L−アルギニンを、カカオ成分中に自然に生じる量よりも多い量で含有する。食品中に用いられるカカオ成分とL−アルギニンの量を知ることによって、当業者は、最終製品中のL−アルギニンの総量を容易に決定できる。食品は、一般に、食品1g当たり、少なくとも5μg/g、好ましくは少なくとも30μg/g、または少なくとも60μg/g、さらに好ましくは少なくとも200μg/gのL−アルギニンを含有する。
【0080】
一日の有効量のフラバノールおよび/またはAタイプおよび/またはBタイプのプロシアニジンは、一回分で提供してもよい。それゆえ、菓子類(例えば、チョコレート)は、少なくとも約100mg/1回分(例えば、150〜200、200〜400mg/1回分)を含有してよい。
【0081】
本発明を以下の非限定的実施例においてさらに説明する。
【実施例】
【0082】
実施例1−Aタイプのプロシアニジンの抽出および単離
抽出
微細に粉砕したピーナッツの皮(498g)をヘキサンで脱脂した(2000mlで2回)。周囲温度で5分間、3500rpmの遠心分離によりヘキサンを除去して、捨てた。残留したヘキサンを、一晩で蒸発させた。翌日、脱脂したピーナッツの皮を2時間に亘り周囲温度でアセトン:水:酢酸(70:29.5:0.5v/v/v)により抽出した(2000mlで2回)。抽出物を遠心分離により回収した(周囲温度で5分間、3500rpm)。分圧下で回転蒸発により有機溶媒を除去した(40℃)。抽出溶媒の水性部分を凍結乾燥により除去して、褐色−赤色の殻の固い固体を得た(51.36g)。
【0083】
粗製ピーナッツ皮抽出物のゲル透過
上述したように得た粗製ピーナッツ皮抽出物(24g)を70%のメタノール(150ml)中に溶解させ、1時間に亘り冷蔵し、3秒間に亘り渦流にかけ、次いで、室温で5分間に亘り3500rpmで遠心分離した。メタノール中で予め膨潤させたSephadex LH−20(400g)を収容する大きなカラムの頂上に上清を装填した。カラムを10mL/分の流量で100%メタノールにより定組成で溶離した。それぞれ250mLの29の分画を収集し、全部で8つの分画(i〜viii)を得るために、NP−HPLC(Adamson et al., J.Ag.Food Chem.,47:4184-4188,1999)により決定された組成にしたがって組み合わせた。分画iはモノマーのエピカテキンとカテキンを含有し、分画ii〜viiはダイマー、トリマーまたはそれらの混合物を含有した。分画v(1.8g)およびvii(2.7g)は、それぞれ、ダイマーとトリマーを優位に含有し、これらをさらなる精製のために選択した。
【0084】
Aタイプのダイマーとトリマーの精製
分画v(1.8g)を20%メタノール中0.1%の酢酸中に溶解させた(40mg/ml)。勾配条件下Hypersil ODS(250×23mm)で分離を行った。移動相は、水中0.1%の酢酸(移動相A)およびメタノール中0.1%の酢酸(移動相B)からなった。勾配条件は、0〜10分で20%のBの定組成、10〜60分で20〜40%のBの線形勾配、60〜65分で40〜100%のBの線形勾配であった。分離は、280nmでモニタした。いくつかの分取分離から等しい保持時間による分画を組み合わせ、不完全真空下において40℃で回転蒸発させ、凍結乾燥した。5つの分画(a〜e)を得た。分画dおよびeは、それぞれ、ダイマーA1およびA2として、LCMSにより特徴付けられた。A1およびA2ダイマー以外に、4つの異なるダイマーがピーナッツの皮から以前に単離された(Lou et al.,Phytochemistry 51,297-308,1999)。
【0085】
分画viiを上述したように精製して、先に示した化学式を有するA結合を持つ単独のトリマーを得た。
【0086】
精製した化合物の構造を質量分析により確認し、化合物の純度を、UV280nmでHPLCを用いて決定した。A1ダイマーは95%の純度であり、A2ダイマーは91%の純度であり、Aトリマーは84%の純度であった。
【0087】
実施例2:フラバノール/プロシアニジンの決定
プロシアニジンを以下のように定量した:市販の(−)−エピカテキン、およびHammerstone,J.F.et al.,J.Ag.Food Chem.;1999;47(10)490-496; Lazarus,S.A. et al.,J.Ag.food Chem.;1999;47(9);3693-3701;およびAdamson,G.E.et al.,J.Ag.Food Chem.;1999;47(10)4184-4188に記載された方法により精製された状態で得たダイマーからデカマーを用いて、複合体標準物を製造した。これらの化合物を用いた標準原液を、先に引用したAdamsonの文献に記載された順相HPLC法を用いて分析し、それぞれ、276nmおよび316nmの励起波長および発光波長で蛍光を検出した。ピークをグループ化し、それらの面積を、オリゴマーの任意の一群内の全ての異性体からの寄与を含むように合計し、二次適合(fit)を用いて校正曲線を作成した。モノマーと小さなオリゴマーはほとんど線形のプロットを有した。これは、モノマー基準の校正曲線およびダイマー基準の校正曲線を作成するための線形回帰の先の使用と一致する。
【0088】
次いで、これらの校正曲線を用いて、以下のように調製した試料中のプロシアニジンレベルを計算した:最初に、3つのヘキサン抽出物(それぞれ45ml)を用いて、カカオまたはチョコレート試料(約8グラム)を脱脂した。次に、1グラムの脱脂材料を5mlのアセトン/水/酢酸の混合物(70:29.5:0.5v/v/v)により抽出した。次いで、脱脂材料中のプロシアニジンの量を、試料からのHPLCデータを、上述したように得た校正曲線(精製オリゴマーを用いた)と比較することによって決定した。試料に関する脂肪の百分率(チョコレートについては1グラムの試料サイズを、リカーについては0.5グラムの試料サイズを用いた)を、the Association of Officail Analytical Chemists(AOAC Official Method 920.177)による標準化方法を用いて決定した。次いで、オリゴマー試料(脂肪を含む)中の総プロシアニジンレベルの量を計算した。カラム毎の変動を防ぐために、各試料の実行前に、校正を行った。
【0089】
実施例3−NO生成および血管弛緩へのAタイプのプロシアニジンの効果
実施例1に記載したように得た化合物を、それぞれ、インビトロの無血清ヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)培養系および半ビボのウサギ大動脈環モデルを用いて、一酸化窒素(NO)生成および血管弛緩へのそれらの効果について調査した。内皮細胞によるNO生成および予め収縮させた大動脈環の弛緩は、試験化合物の心血管効果を評価するための2つの主要なマーカーである。
【0090】
インビトロ実験
単独のドナーから得られたHUVECを、必須成長因子、栄養素およびミネラルが補給された無血清の低タンパク質(0.5g/l)無抗生物質細胞培養培地内で培養した。培養した細胞は、内皮マーカーを発現し(フォン・ウィルブランド因子、CD31抗原、Dil−Ac−LDLの摂取)、群集に増殖したときに、典型的な「栗石モルホロジー」を示した。細胞培養培地を、アポ−トランスフェリン、スーパーオキシドジスムターゼ、およびカタラーゼと交換して、それらの自己酸化媒介過酸化水素成形を含む試験化合物の二次効果を排除した。
【0091】
試験化合物を、NO生成を急に(2時間)および慢性に(24時間で5回の投与が行われた)調節する潜在能力について評価した。正の対照(アセチルコリンおよび/またはヒスタミン)および負の対照L−NNMA(NOシンターゼ阻害因子)を全ての実験に含めた。細胞の数および総タンパク質を用いて、アッセイ内の変動を評価した。試験化合物の潜在的な毒性効果もモニタした(MTTの低下を測定した)。
【0092】
NO生成は、細胞培養培地中に存在した全ての主要な一酸化窒素最終生成物(硝酸塩、亜硝酸塩、ニトロソチオールを含むNOx)の総量を測定することによって評価した。この目的のために、NOxは、95℃で塩化バナジウム(III)/HClにより直接還元して、NOを生成した。その後、培養培地から放出されたNOの量を、NO分析器(コロラド州、ボールダー所在のシーバース・インストルメンツ社(Sievers Instruments, Inc.))を用いてオゾンとNOとの間の化学量論的反応中に放出された化学発光を測定することによって評価した。
【0093】
ここに提示したデータは、3つの実験から得たものであり、細胞培養培地中に存在する(NOxとして)NO濃度(μモル/l)±標準偏差(SD)として表されている。データは、十分に補給された細胞培養培地中に本質的に存在するNOxについて補正され、その試料をそこから取り出した培地の容積に関して標準化した。データは、95%の信頼度でスチューデントt検定を用いて分析した。0.005以下のP値は、統計的に有意であると定義された。
【0094】
急な効果の試験に関して、HUVECを、37℃および5%のCO2で、100nM、1μM、および10μMの濃度で2時間と24時間に亘りA2ダイマーとAタイプのトリマー一回の投与と共に培養した。2時間後、NO生成についての効果は全く観察されなかった。一回の投与から24時間後、1μMの濃度では効果は全く観察されなかった。両方の試験化合物は、10μMの濃度で対照レベルよりもNO生成を増大させた(2つの内、A2の方が良好に機能した)が、いずれも、統計的に有意なレベルまでは増大させなかった。MTTアッセイに基づいて、試験化合物は、毒性効果は持たなかった。
【0095】
慢性の効果の試験に関して、それぞれ、24時間に亘り、試験化合物を5回、順次投与して培養した。各24時間の処理後、培養培地を取り替えた。A2ダイマーとAタイプのトリマーを試験した。Aタイプのトリマーは、NO生成において統計的に有意な増大を示した(p=0.041)。
【0096】
半ビボ実験
Aタイプのプロシアニジンの内皮細胞依存性弛緩への効果を、Karim et al.,J.Nutrl Supple.,130(8S):2105S-2108S(2000)により先に記載されたように行った半ビボ実験で試験した。その関連部分をここに引用する。この方法を使用することの利点は、この方法が機能的心血管終点を評価することである。この方法は、急な出来事のみを評価できるものであり、薬物誘発タンパク質発現/活性の同定はできない。
【0097】
手短に言えば、雄のニュージーランドホワイトウサギからウサギ大動脈環を得た。単離後、環を、酸素化したクレープス緩衝液内に取り付け、NE(10-6M)で予め収縮させた。張力が定常状態に到達したときに、試験化合物の累積濃度を適用した(10-9から10-4M)。
【0098】
この実験に、正の対照のアセチルコリン(10-6M)および負の対照のL−NAMEを含めた。NOシンターゼ(NOS)阻害因子であるL−NAMEを使用することにより、内皮細胞依存性弛緩イベントと内皮細胞独立性弛緩イベントとの間で識別できる。大動脈環の露出が同様の対照を表す。各試験化合物の添加前に、400U/mlのカタラーゼを大動脈浴中に加えて、観察された効果が、培養培地中の過酸化水素(H22)の生成により生じないことを確実にした。弛緩応答は、長い間に大動脈環により及ぼされた張力の減少の関数(g)として測定した。得られたデータは、ノルエピネフリン(NE)収縮環のパーセントの弛緩として表した。上述したものと同じ統計的手法を用いた。用量応答曲線を、使用した濃度に対して平均の弛緩パーセント(±SE)をプロットすることによって得た。
【0099】
半ビボスクリーニングの結果は、A1とA2ダイマーの両方およびAタイプのトリマーが、10-4Mの濃度で血管弛緩を誘発し、その濃度で、A1ダイマーは、93.20±3.46%の血管弛緩を誘発し、A2ダイマーは、85.00±2.91%の血管弛緩を誘発し、Aタイプのトリマーは、56.5±16.56%の血管弛緩を誘発したことを示している。さらに、A1とA2ダイマーの両方は、正の対照(アセチルコリン)よりも強力な弛緩剤であり、その差は、A1ダイマーに関して、p=0.005で統計的に有意であった。
【0100】
弛緩応答は、血管がL−NAMEにより予め処理されたか露出されたかのいずれかの場合に弱まった。アセチルコリンは、一般に、10-7Mの濃度で弛緩応答を生じ、10-6Mの濃度で最大の弛緩に到達した。血管がビヒクルのみにより処理されたときには、応答は観察されなかった。
【0101】
試験化合物により媒介された用量依存性弛緩が図1A〜Cに表されている。
【0102】
実施例4:全血中の血小板へのA1ダイマーの効果
A1ダイマー[A1D]の血小板凝集は、血小板計数技法、およびフローサイトメトリーによる血小板/単球複合体(P/M)および血小板/好中球複合体(P/N)の形成を用いて測定した。後の実験において、白血球に関連する血小板の活性化状態(CD62P)と、白血球自体の活性化状態(CD11b)も測定した。
【0103】
材料および方法
A1ダイマー[A1D]をエタノール中に溶解させた。一旦溶液になったら、生理食塩水によるさらなる希釈も可能であった。ヒルジン(Revasc(商標))をノバルティス(Novartis)社(スイス国、バーゼル)から得て、−20℃でガラスの水薬瓶内で生理食塩水中5mg/mlの溶液として貯蔵した。コラーゲン(Nycomed)はアクシス・シールド・ダイアグノスティクス(Axis Shield Diagnostics)(英国、ダンディー)からのものであった。濃縮物は、製造業者により供給された等張性グルコース緩衝液を用いて原液(1mg/ml)から調製した。アスピリン(アセチルサリチル酸−ASA)、アデノシン二リン酸(ADP)、血小板活性化因子(PAF)、アラキドン酸(AA)およびエピネフリンはシグマ(Sigma)社からのものであった。固定液は、0.16%w/vのホルムアルデヒドを含有する140mMのNaCl、4.6mMのNa2EDTA、4.5mMのNa2HPO4、および1.6mMのKH2PO4、pH7.4からなるものであった。
【0104】
血液試料は、メディカル・エンジニアリング・ユニット(Medical Engineering Unit)(ノッティンガム大学)により製造されたマルチサンプル・アジテータ(MSA)を用いて研究した。MSAを用いて、血液試料を37℃に維持し、必要に応じて1,000rpmの撹拌速度で血液の少量の試料を撹拌した。
【0105】
15mWのパワーおよび488nmの波長で動作する5Wレーザを備えたFACScan(英国、ベクトン・ディキンソン)または633nmで動作する追加の赤色三角レーザを備えたLSRIIフローサイトメータ(英国、ベクトン・ディキンソン)で市販の蛍光標識付け抗体を用いてフローサイトメトリーを行った。
【0106】
血液の採取
血液は、過去10日間にアスピリンやNSAIDSを摂取していない健康な志願者から得た。この血液を、ヒルジン(最終濃度50μg/ml)および少量の調査中のフラバノールまたは対照としてのエタノールを含有した目盛り付きポリスチレン管中に分配した。血液中のエタノールの最終濃度は常に0.3%であった。ある実験において、アスピリン(ASA)または対照としての生理食塩水も管中に含んでいた。次いで、管に蓋をし、三回逆さまにして、確実に適切な混合を行い、次いで、実験を行う前に30分間に亘り37℃でMSA内に配置した。その間、血液は静置されていた。さらに別の血液試料を、抗凝血剤としてK2EDTAを含有した市販の真空採血管(Vacutainer(登録商標))中に採取した。
【0107】
血小板の凝集
30分間の前保温後、血液のアリコート(480μl)を、それぞれ撹拌棒が入れられた小さなポリスチレン管中に分配し、MSAにおいて2分間に亘り撹拌した。2分後、それらの管に作用薬またはビヒクル対照の溶液(20μl)を加えた。次いで、これらの10分までMSAにおいて撹拌し、その時点で、1:2の比率(v/v)で固定液と少量の副試料と混合することによって、血小板凝集体を固定した。固定試料中の血小板計数は、UltraFlo−100全血血小板計数器を用いて決定した。血小板凝集は、EDTA試料の血小板計数に関して単独の血小板の損失パーセントとして計算した。
【0108】
血小板−白血球複合体の形成
血小板−白血球複合体の形成は、血小板凝集を測定するのに用いたのと同じ撹拌試料中で測定した。副試料を、作用薬を添加してから4分後または10分後に採取し、適切な抗体または抗体の混合物中に移した。次いで、これらを20分以上に亘り室温で暗所においてインキュベーションした。赤血球溶解および洗浄工程の後、細胞懸濁液をFACScanまたはLSRIIフローサイトメータのいずれかに適用した。白血球は、線形増幅により得られた前方散乱(細胞サイズ)および側方散乱(細胞の粒度)プロファイルのドットプロットから論理ゲイティングにより同定した。単球は、それらの前方散乱−側方散乱プロファイルおよびCD14(PE)陽性率により同定した。一方で、好中球は、同じように同定したが、CD14発現については陰性であった。白血球個体群を同定するために、「パン(pan)」白血球マーカーであるCD45(perCP)も用いた。蛍光パラメータは、対数増幅により得た。血小板単球(P/M)および血小板好中球(P/N)複合体は、単球個体群(P/Mmf)または好中球個体群(P/Nmf)のメジアンCD42a(FITC)蛍光として定量した。白血球の活性化は、CD11b(AlexaFluor647)発現(単球についてはCD11b−Mおよび好中球についてはCD11b−N)により測定した。血小板の活性化(P−セレクチン発現)は、(P/MにはCD62P−MおよびP/NにはCD62P−N)として白血球に関連する血小板のCD62P(PE)陽性率により測定した。
【0109】
三色を一緒に使用する実験において、蛍光プローブを測定するためにFACScanを用いたが、四色を研究するためには、LSRIIが必要であった。LSRIIは、感度の高い機械装置であり、FACScanよりも高い蛍光値(mf)を生じる。FACScanで得られた結果は、LSRIIで得られた結果と直接比較することはできない。
【0110】
結果
凝集、P/MおよびP/NへのA1ダイマーの効果
血液を3人の異なる志願者から得て、血小板凝集および血小板/白血球複合体の形成は、コラーゲン(0、0.125、0.25および0.5μg/ml)に対して測定した。これらの実験において、アスピリンは100μMの濃度で使用し、A1ダイマーは0.3mMの濃度で使用した。凝集は、作用薬の添加から4分後と10分後に測定し、血小板/白血球複合体は、10分後にだけ形成した。
【0111】
異なる志願者からの血液のコラーゲンに対する絶対応答は様々であった。このことは、フラバノールの相対的な阻害効果は、使用した特定のコラーゲン濃度に対する志願者の感応性に依存したことを意味する。この理由のために、比較目的で、結果を分析するための適切な手段は、使用したコラーゲン濃度とは関係ないA1ダイマーに関する平均値を計算することであろうと決定した。これらの結果が図2に示されている(Aタイプのプロシアニジン以外の特定の化合物もこれらの実験において試験したが、それらはここでの議論には関係ないので、特定しなかった)。3種類の血液試料の各々について、3つの濃度のコラーゲンを用いたので、結果は、9つの個々の値の平均(±sem)である。
【0112】
A1ダイマーは、コラーゲン誘起の血小板凝集を阻害した。ASA対照も凝集、P/MおよびP/Nを効果的に阻害した。
【0113】
この時点から先は、コラーゲンを血液に添加した後に形成された複合体における血小板および白血球両方の活性化の程度の尺度を含めることを決めた。P−セレクチン(CD62P)は、形成した複合体における白血球に関連する血小板について測定した。白血球の活性化は、発現されたCD11bの量として測定した。四色分析を用いた。
【0114】
フラバノールのコラーゲン誘発凝集、P/M、P/N、CD62P−M、CD62P−N、CD11b−MおよびCD11b−Nへの効果の比較
血液を3人の異なる志願者から得て、血小板凝集(4分)および血小板/白血球複合体の形成(10分)は、コラーゲン(0、0.125、0.25および0.5μg/ml)に対して測定した。これと同時に、複合体における血小板および白血球の活性化は、CD62PおよびCD11b抗体によるインキュベーションにより測定した。これらの実験において、アスピリンは100μMの濃度で使用し、A1ダイマーは0.3mMの濃度で使用した。これらの結果が図3に示されている(Aタイプのプロシアニジン以外の特定の化合物もこれらの実験において試験したが、それらはここでの議論には関係ないので、特定しなかった)。以前のとおり、3つのコラーゲン濃度全てについての全ての結果を含め、平均を計算する(±sem、n=9)ことにより、分析を行った。
【0115】
A1ダイマーは、コラーゲン誘起の血小板凝集を阻害した。しかしながら、A1Dは白血球の活性化は阻害しない(単球および白血球上のCD11b)ことは注目に値した。アスピリンもCD11bへの効果はなかった。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】予め収縮した大動脈環におけるAタイプのプロシアニジンにより媒介された用量依存性弛緩を表すグラフ。A)A2ダイマー、B)A1ダイマー、C)Aタイプのトリマー。
【図2】A1ダイマーに関する血小板凝集実験の結果を表すグラフ
【図3】A1ダイマーに関する血小板凝集実験の結果を表すグラフ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
NO反応性疾病または疾患を、その必要のある検体に、以下の化学式:
【化1】

の単量体ユニットn個から構成されたAタイプのプロシアニジンオリゴマー、
または薬剤的に許容されるその塩または誘導体、
を効果的な量で投与することによって、治療または予防する方法であって、
ここで、
(i) 前記単量体ユニットは、フラバン間の結合4→6および/または4→8により連結されており、
(ii) 前記単量体ユニットの少なくとも2つが、Aタイプのフラバン間の結合(4→8;2→O→7)または(4→6;2→O→7)によりさらに連結されており、
(iii) nは2から12であり、
前記検体がヒトまたは家畜動物であることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記Aタイプのプロシアニジンが単離され精製されていることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記AタイプのプロシアニジンがA1ダイマーであることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記A1ダイマーが単離され精製されていることを特徴とする請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記AタイプのプロシアニジンがA2ダイマーであることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記A2ダイマーが単離され精製されていることを特徴とする請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記AタイプのプロシアニジンがAタイプのトリマーであることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記Aタイプのトリマーが実質的に純粋であることを特徴とする請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記Aタイプのトリマーが化学式:
【化2】

を有していることを特徴とする請求項7記載の方法。
【請求項10】
前記NO反応性疾病または疾患が、高血圧症、心疾患、冠動脈疾患、血管循環障害および/または腎臓病であることを特徴とする請求項1から9いずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記検体が、心臓発作、脳梗塞、鬱血性心不全および/または腎不全のリスクがあることを特徴とする請求項1から9いずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記検体が、糖尿病、肥満症、高コレステロールレベルおよび/または喫煙のうちのいずれかと組み合わせて高血圧を患っていることを特徴とする請求項1から9いずれか1項記載の方法。
【請求項13】
高血圧症を、その必要のある検体に、以下の化学式:
【化3】

の単量体ユニットn個から構成されたAタイプのプロシアニジンオリゴマー、
または薬剤的に許容されるその塩または誘導体、を効果的な量で投与することによって、治療する方法であって、
ここで、
(i) 前記単量体ユニットは、フラバン間の結合4→6および/または4→8により連結されており、
(ii) 前記単量体ユニットの少なくとも2つが、Aタイプのフラバン間の結合(4→8;2→O→7)または(4→6;2→O→7)によりさらに連結されており、
(iii) nは2から12であり、
前記検体がヒトまたは家畜動物であることを特徴とする方法。
【請求項14】
前記Aタイプのプロシアニジンが単離され精製されていることを特徴とする請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記AタイプのプロシアニジンがA1ダイマーであることを特徴とする請求項13記載の方法。
【請求項16】
前記A1ダイマーが単離され精製されていることを特徴とする請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記AタイプのプロシアニジンがA2ダイマーであることを特徴とする請求項13記載の方法。
【請求項18】
前記A2ダイマーが単離され精製されていることを特徴とする請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記AタイプのプロシアニジンがAタイプのトリマーであることを特徴とする請求項13記載の方法。
【請求項20】
前記Aタイプのトリマーが実質的に純粋であることを特徴とする請求項19記載の方法。
【請求項21】
前記Aタイプのトリマーが化学式:
【化4】

を有していることを特徴とする請求項19記載の方法。
【請求項22】
前記検体が、糖尿病、肥満症、高コレステロールレベルおよび/または喫煙のいずれかを患っていることを特徴とする請求項13から21いずれか1項記載の方法。
【請求項23】
単離され精製されたA1ダイマーを含む薬剤組成物。
【請求項24】
単離され精製されたA2ダイマーを含む薬剤組成物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2007−519750(P2007−519750A)
【公表日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−551611(P2006−551611)
【出願日】平成17年1月28日(2005.1.28)
【国際出願番号】PCT/US2005/003406
【国際公開番号】WO2005/072726
【国際公開日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【出願人】(390037914)マーズ インコーポレイテッド (80)
【氏名又は名称原語表記】MARS INCORPORATED
【Fターム(参考)】