説明

Aピラーおよびフロントガラスクロスメンバの部位の車体構造およびその製造方法

本発明は、Aピラー(2)およびフロントガラスクロスメンバ(3)の部位の車体構造に関し、車体の両側にそれぞれ一つのAピラー(2)を備え、そのピラー構造は車両長手方向に沿って配置された垂直なAピラー内部鋼板(8S)からなっており、車体構造がさらに、水平に配置されたフロントガラスクロスメンバ(3)を備え、その両端のそれぞれが、対応する前記Aピラー内部鋼板(8S)と溶接接続によって接続される車体構造において、前記フロントガラスクロスメンバ(3)が、長尺のアルミニウム梁部材(4A)と、前記アルミニウム梁部材(4A)の両端のそれぞれから延長しかつ部材全長に比べて短い鋼板アダプタ部材(5S)と、からなる複合構成部品として製造され、前記鋼板アダプタ部材(5S)の一端が、それぞれ対応する前記Aピラー内部鋼板(8S)には溶接接続(16)によって接続される一方、他端が前記アルミニウム梁部材(4A)にはリベット接続(17)によって接続されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部に記載のAピラーおよびフロントガラスクロスメンバの部位の車体構造と、請求項7の前提部に記載の製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の一般に知られている従来の構造では、それぞれ対向するAピラーが鋼板から形成され、車両長手方向に沿って配置された垂直なAピラー内部鋼板を有する。ここで、水平に配置されたフロントガラスクロスメンバも鋼板から作製され、両端のそれぞれで、対応するAピラー内部鋼板と溶接接続によって接続される。
【0003】
現代の車体では、重量を低減して燃料消費を削減するために、軽量金属または軽量合金、特にアルミニウムからなる素材がますます多く使用されている。軽量金属素材の剛性および接合技術は、車体構造に関して生じる問題を、各車体位置に正確に適合した素材の組合せや、適切な構成部材の組合せや、大量生産による低コスト化などの手段によって解決することができるという点で、従来の鋼板単独構造とは異なっている。
【0004】
これに関し、複合車体部品を使用することが知られており(ドイツ国特許公開公報第19843824号)、この複合車体部品は、車体外装の大面積の軽量金属部材と、これを周縁部で補強する鋼部材とからなり、これらの部材は、レーザ接合によって継ぎ目が封止されて接続される。鋼部材は、特に最終組立工程において、従来の溶接技術によって隣接する鋼部材と接続することができる。ここで使用される、複合車体部品を製造するために軽量金属と鋼とをレーザ接合する技術では、重ね合わせ接続部の片側のみ露出していればよく、したがって、露出度合に関して、例えばリベット接続など、両側が露出していることを必要とする他の既知の接続技術に比べて自由度がある。しかし、レーザ接合技術は労力とコストがかかるため、車体の大量生産においては、利用制限付きでしか使用できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】ドイツ国特許公開公報第19843824号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、所要の剛性を備える軽量構造を、大量生産での使用に適した接続技術を用いて製造できるように、Aピラーおよびフロントガラスクロスメンバの部位におけるこの種の従来の車体構造を改良することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、フロントガラスクロスメンバが、長尺のアルミニウム梁部材と、その端部のそれぞれにおいてアルミニウム梁部材を延長しつつも部材全長に比べて短い鋼板アダプタ部材と、からなる複合構成部品として製造されることによって解決される。その際、鋼板アダプタ部材の一端は、それぞれ対応するAピラー内部鋼板と溶接接続によって接続され、他端はアルミニウム梁部材とリベット接続によって接続される。軽量金属部材と鋼部材とを接続するためには、リベット接続がとりわけ車体構造に適していて、安定していて、低コストで、そして広範な各種状況に適用可能な接続方法であると実証されており、本発明の場合にも使用すべきものであると考えられる。フロントガラスクロスメンバとして鋼製梁部材に替えてアルミニウム梁部材を用いる目的である軽量化の度合は、フロントガラスクロスメンバ全体がアルミニウム梁部材として製造されるとき最大になる。しかし、そのようなアルミニウム梁部材は鋼板製Aピラーに対してリベット接続によって接続することができない。なぜなら、リベット接続のためには、比較的大きい体積のリベット工具が両側から近接しなければならないが、接続部位には複数の梁部材が錯綜しており近接できないからである。そこで、低コストで有用なリベット接続技術を使用できるようにするため、長尺のアルミニウム部品の両側に比較的短い鋼板アダプタ部材がリベット接続によって接続される。そのようなフロントガラスクロスメンバは、好ましくは、複合部品として、最終組立工程前に事前取付けモジュールとしてあらかじめ製造することができる。このとき、鋼板アダプタ部材はできるだけ短くすべきであり、リベット接続のために必要な露出度合を確保するため以上に長くは選択すべきでなく、比較的長尺のアルミニウム梁部材による重量面での利点をできるだけ失わないようにする。そして特に最終組立工程において、鋼板アダプタ部材は、従来の溶接接続によってAピラー鋼板と容易に接続することができる。
【0008】
アダプタ要素の長さは、部材全長の約5%〜10%に相当し、これにより、リベット接続を形成するために導入される、例えばパンチリベット接続用のパンチリベット工具の型の大きさに相当する。
【0009】
フロントガラスクロスメンバが接続されるAピラー内部鋼板は、下側のAピラー下側内部鋼板と、Aピラー下側内部鋼板に接続されたAピラー上側内部鋼板とからなり、それらの接続部が、ほぼ窓枠の高さで、窓枠よりも少し下に位置する。そして、フロントガラスクロスメンバが、Aピラー上側内部鋼板の下側領域に接続される。
【0010】
好ましい実施形態の一つにおいては、アルミニウム梁部材が、上側の梁部材上側アルミニウム板および下側の梁部材下側アルミニウム板から製造される。その際、梁部材上側アルミニウム板と両側の鋼板アダプタ支持体部品は、少なくとも1箇所のリベット接続によって接続され、鋼板アダプタ部材は、それぞれ少なくとも1つの折り曲げられた溶接フランジによって、対応するAピラー内部鋼板に着接され、その位置で少なくとも1箇所の抵抗スポット溶接によって接続が形成される。それに対し、梁部材下側アルミニウム板が、Aピラー内部鋼板まで接近し、Aピラー内部鋼板に、少なくとも1つの折り曲げられたリベットフランジによって着接し、その位置で、より良く近接できるため、リベット接続を直接形成することができる。
【0011】
追加の構造として、Aピラー外部鋼板が、Aピラー内部鋼板に上から被さり、重ね合わせ接続部によって鋼板アダプタ部材の上に載置される。その下に位置する梁部材下側アルミニウム板には、この重ね合わせ接続部の下方に、溶接トングの電極を導入するために貫通穴が設けられ、それにより、Aピラー外部鋼板と鋼板アダプタ部材の接続のための抵抗スポット溶接を形成することができる。
【0012】
上述のリベット接続は、目的に応じてパンチリベットによって行われ、基本的には半中空リベットによって実現可能な強度で十分である。しかしまた、条件によっては、より高い強度および剛性を生み出すために、中実リベットによるパンチリベット、場合によってはさらに、対応する重ね合わせ接続部での接着を行うことができる。
【0013】
製造方法に関しては、本発明の目的は、フロントガラスクロスメンバが、アルミニウム梁部材と、リベット接続によって接続された鋼板アダプタ部材とからなる複合構成部品として製造されることによって解決される。その後、最終組立工程において、フロントガラスクロスメンバが、鋼板アダプタ部材によって、それぞれAピラー内部鋼板に抵抗スポット溶接で接続され、必要に応じて、梁部材下側アルミニウム板によって、それぞれのAピラー内部鋼板にリベット接続によって直接接続される。その後、Aピラー外部鋼板は、必要に応じて、梁部材下側アルミニウム板にある貫通穴を通した抵抗スポット溶接によって、それぞれの鋼板アダプタ部材に接続される。
【0014】
このような方法より、個々の構成部品の所要の接続を簡単に低コストで形成することができる。
本発明を図面に基づいてさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】Aピラーおよびフロントガラスクロスメンバの部位の車体構造の左内側の概略上面斜視図
【図2】図1のA−A線に沿った概略断面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1に、左側のAピラー2およびフロントガラスクロスメンバ3(一部のみ示す)の内側領域の斜め上から見た車体構造の概略図を示す。フロントガラスクロスメンバ3は、長尺のアルミニウム梁部材4Aと、両端に接続された鋼板アダプタ部材5Sとからなる複合構成部品として製造される(参照符号Aはアルミニウム部材を表し、参照符号Sは鋼部材を表す)。
【0017】
さらに具体的には、A−A線に沿った図2の概略断面図から、アルミニウム梁部材4Aが、梁部材上側アルミニウム板6Aおよび梁部材下側アルミニウム板7Aからなることを読み取ることができる。ここで、各鋼板アダプタ部材5Sは、梁部材上側アルミニウム板6Aに、その延長部として接続される。
【0018】
Aピラー2はAピラー内部鋼板8Sからなり、Aピラー内部鋼板8Sはさらに、下側のAピラー下側内部鋼板9Sおよび上側のAピラー上側内部鋼板10Sから形成され、それらの接続部18は窓枠の少し下にある。フロントガラスクロスメンバ3は、Aピラー上側内部鋼板10Sに接続される。
【0019】
図2から分かるように、梁部材上側アルミニウム板6Aは、鋼板アダプタ部材5Sによって両端から延長され、重ね合わせ接続部11において半中空リベット接続12(概略的に示される)によって接続される。さらに、鋼板アダプタ部材5Sは、端部で折り曲げられた溶接フランジ13を有する。梁部材下側アルミニウム板7Aの長さは、梁部材上側アルミニウム板6Aに両側に接続された鋼板アダプタ部材5Sを加えたものに対応し、それぞれ1つの折り曲げられたリベットフランジ14を端部に有する。さらに、鋼板アダプタ部材5Sの下方にそれぞれ1つの貫通穴15がある。フロントガラスクロスメンバ3は事前取付けモジュールとして製造することができる。
【0020】
次いで、最終組立工程のために、フロントガラスクロスメンバ3は、溶接フランジ13およびリベットフランジ14によって、両側でそれぞれAピラー上側内部鋼板10Sに近接し、溶接フランジ13では溶接接続16で接続され、リベットフランジ14では、半中空リベットを用いたパンチリベットによってリベット接続17で接続される。
【0021】
次いで、Aピラー内部鋼板8Sに上から被さるAピラー外部鋼板19Sが装着され、Aピラー外部鋼板19Sは、貫通穴15の上方で、重ね合わせ接続部20を介して鋼板アダプタ部材5Sに上から重ねられる。そこで、抵抗スポット溶接によってAピラー外部鋼板19Sと鋼板アダプタ部材5Sとの溶接接続21が形成される。
【符号の説明】
【0022】
1 車体構造
2 Aピラー
3 フロントガラスクロスメンバ
4A アルミニウム梁部材
5S 鋼板アダプタ部材
6A 梁部材上側アルミニウム板
7A 梁部材下側アルミニウム板
8S Aピラー内部鋼板
9S Aピラー下側内部鋼板
10S Aピラー上側内部鋼板
11 重ね合わせ接続部
12 半中空リベット接続
13 溶接フランジ
14 リベットフランジ
15 貫通穴
16 溶接接続
17 リベット接続
18 (Aピラーにおける)接続部
19S Aピラー外部鋼板
20 重ね合わせ接続部
21 溶接接続

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Aピラー(2)およびフロントガラスクロスメンバ(3)の部位の車体構造であって、
車体構造は、車体の両側にそれぞれ1つのAピラー(2)を備え、そのピラー構造は車両長手方向に沿って配置された垂直なAピラー内部鋼板(8S)からなっており、
車体構造がさらに、水平に配置されたフロントガラスクロスメンバ(3)を備え、その両端のそれぞれが、対応する前記Aピラー内部鋼板(8S)と溶接接続によって接続される車体構造において、
前記フロントガラスクロスメンバ(3)が、長尺のアルミニウム梁部材(4A)と、前記アルミニウム梁部材(4A)の両端のそれぞれから延長しかつ部材全長に比べて短い鋼板アダプタ部材(5S)と、からなる複合構成部品として製造され、
前記鋼板アダプタ部材(5S)の一端がそれぞれ対応する前記Aピラー内部鋼板(8S)に溶接接続(16)によって接続され、他端が前記アルミニウム梁部材(4A)にリベット接続(17)によって接続される
ことを特徴とする車体構造。
【請求項2】
鋼板アダプタ部材の長さが、部材全長の5%〜10%に相当し、その長さが、リベット接続(17)を形成するために用いられるパンチリベット工具の型の所要の大きさに相当することを特徴とする請求項1に記載の車体構造。
【請求項3】
Aピラー内部鋼板(8S)が、Aピラー下側内部鋼板(9S)と、これに接続されたAピラー上側内部鋼板(10S)とからなり、これらの接続部(18)が、窓枠よりも下で窓枠に近い高さに位置し、
フロントガラスクロスメンバ(3)が、前記Aピラー上側内部鋼板(10S)の下部に接続される
ことを特徴とする請求項1または2に記載の車体構造。
【請求項4】
アルミニウム梁部材が、梁部材上側アルミニウム板および梁部材下側アルミニウム板からなり、
前記梁部材上側アルミニウム板(6A)と鋼板アダプタ部材(5S)とが、それらの重ね合わせ接続部(11)において、少なくとも1箇所のリベット接続(12)によって接続され、
前記鋼板アダプタ部品(5S)が、Aピラー内部鋼板(8S)に隣接して折り曲げられた少なくとも1つの溶接フランジ(13)を有し、溶接フランジにおいて少なくとも1つの抵抗スポット溶接によって溶接接続(16)が形成され、
前記梁部材下側アルミニウム板(7A)が、前記Aピラー内部鋼板(8S)まで接近しており、少なくとも1つの折り曲げられたリベットフランジ(14)によって前記Aピラー内部鋼板(8S)に隣接し、リベットフランジにおいて少なくとも1つのリベット接続(17)が形成される
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の車体構造。
【請求項5】
Aピラー外部鋼板(19S)が、Aピラー内部鋼板(8S)上方に被さり、重ね合わせ接続部(20)を介して鋼板アダプタ部材(5S)上に重なっており、
梁部材下側アルミニウム板(7A)に、前記Aピラー外部鋼板(19S)と鋼板アダプタ部材(5S)とを接続する抵抗スポット溶接による溶接接続(21)を形成するための溶接トングの電極が差し込まれる貫通穴(15)が設けられている
ことを特徴とする請求項4に記載の車体構造。
【請求項6】
前記リベット接続(12、17)が、対応する重ね合わせ接続部(11、14)において、半中空リベットまたは中実リベットを用いたパンチリベットによって、あるいはパンチリベットと接着とによって、形成されることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の車体構造。
【請求項7】
請求項5または6のいずれか一項に記載のAピラーおよびフロントガラスクロスメンバの部位の車体構造の製造方法であって、
フロントガラスクロスメンバ(3)を、アルミニウム梁部材(4A)と、アルミニウム梁部材にリベット接続(12)によって接続された鋼板アダプタ部材(5S)とからなる複合構成部品として、事前組立てモジュールとして製造し、
最終組立工程において、前記フロントガラスクロスメンバ(3)を、鋼板アダプタ部材(5S)を介して各Aピラー内部鋼板(8S)に抵抗スポット溶接による溶接接続(16)によって接続し、アルミニウム板下側梁部材(7A)を介して各Aピラー内部鋼板(8S)にリベット接続(17)によって直接接続し、
その後、各Aピラー外部鋼板(19S)を、貫通穴(15)を通した抵抗スポット溶接による溶接接続(21)によって、各鋼板アダプタ部材(5S)に接続する
ことを特徴とする車体構造の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−520207(P2012−520207A)
【公表日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−500157(P2012−500157)
【出願日】平成22年7月10日(2010.7.10)
【国際出願番号】PCT/EP2010/004218
【国際公開番号】WO2011/032614
【国際公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(591006586)アウディ アクチェンゲゼルシャフト (34)
【氏名又は名称原語表記】AUDI AG
【住所又は居所原語表記】D−85045 Ingolstadt,Germany
【Fターム(参考)】