説明

A/D変換器

【課題】従来の四重積分型A/D変換器に比べて、精度の低下を防止しつつ単位時間当たりの変換回数を増やすことが可能なA/D変換器を提供する。
【解決手段】積分器1において入力電圧Vinを第1積分期間だけ積分した後に参照電圧VREFを第2積分期間だけ積分する第1の二重積分と第1の基準電圧(グラウンド電圧)VAGNDを第1積分期間だけ積分した後に参照電圧VREFを第2積分期間だけ積分する第2の二重積分とが選択的に行われる。ディジタル回路7は、第1の二重積分における第2積分期間に対応した第1のカウント値を被減数、第2の二重積分における第2積分期間に対応した第2のカウント値を減数として被減数から減数を減算して得た差分値をディジタル値として出力する機能を有し、差分値を求めるにあたり、第2のカウント値を時系列で入力される2つの第1のカウント値に対する減数として共用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、A/D変換器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、センサと、センサの出力電圧を増幅する増幅回路(プリアンプ)と、増幅回路から出力される出力電圧(アナログ値)をディジタル値に変換するA/D変換器とを備えたセンサ装置が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
また、従来から、アナログ値をディジタル値に変換するA/D変換器の一種として、四重積分型A/D変換器が知られている(例えば、特許文献2,3)。
【0004】
一般的に、四重積分型A/D変換器は、演算増幅器と抵抗とコンデンサとを有する積分器を備えており、グラウンド電圧を積分する第1期間、参照電圧を積分する第2期間、入力電圧を積分する第3期間、参照電圧を積分する第4期間がサイクリックに現われるように積分器の入力が制御される。そして、四重積分型A/D変換器では、第4期間のカウント値から第2期間のカウント値を減算することにより、演算増幅器のオフセット電圧や、低周波雑音をキャンセルするようにしている。
【0005】
四重積分型A/D変換器は、演算増幅器のオフセット誤差の影響を低減でき、低雑音特性が得られるというメリットがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−237117号公報
【特許文献2】米国特許第3872466号
【特許文献3】特開2009−38433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の第1期間〜第4期間がサイクリックに現われるように積分器の入力が制御される従来の四重積分型A/D変換器では、二重積分型A/D変換器に比べて、変換時間が長くなり、単位時間(例えば、1秒)当たりの変換回数が減るというデメリットがある。
【0008】
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、従来の四重積分型A/D変換器に比べて、精度の低下を防止しつつ単位時間当たりの変換回数を増やすことが可能なA/D変換器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のA/D変換器は、演算増幅器と抵抗とコンデンサとを有する積分器と、前記積分器に入力電圧と前記入力電圧とは逆極性の参照電圧とグラウンド電圧との1つを択一的に入力させる入力切替部と、前記積分器の出力電圧を基準電圧と比較するコンパレータと、前記積分器において前記入力電圧を第1積分期間だけ積分した後に前記参照電圧を第2積分期間だけ積分する第1の二重積分と前記グラウンド電圧を前記第1積分期間だけ積分した後に前記参照電圧を前記第2積分期間だけ積分する第2の二重積分とが選択的に行われるように前記入力切替部を制御する機能を有する制御手段と、前記第2積分期間毎に前記コンパレータの出力が反転するまで一定周期のクロックパルスをカウントしカウント値を出力するカウンタと、前記第1の二重積分における前記第2積分期間に対応した前記カウント値からなる第1のカウント値と前記第2の二重積分における前記第2積分期間に対応した前記カウント値からなる第2のカウント値とが入力されるディジタル回路とを備え、前記ディジタル回路は、前記第1のカウント値を被減数、前記第2のカウント値を減数として前記被減数から前記減数を減算して得た差分値をディジタル値として出力する機能を有し、時系列で入力される前記第1のカウント値ごとに前記差分値を求めるにあたり、前記第2のカウント値を時系列で入力される少なくとも2つの前記第1のカウント値に対する前記減数として共用することを特徴とする。
【0010】
このA/D変換器において、前記ディジタル回路は、前記差分値を求めるにあたり、前記第2のカウント値を、時系列で前記第2のカウント値の前後に入力される前記各第1のカウント値に対する前記減数として共用することが好ましい。
【0011】
このA/D変換器において、前記ディジタル回路は、前記差分値を求めるにあたり、前記第2のカウント値を、時系列で前記第2のカウント値の後に入力される前記各第1のカウント値に対する前記減数として共用することが好ましい。
【0012】
このA/D変換器において、前記ディジタル回路は、前記差分値を求めるにあたり、前記第2のカウント値を、時系列で前記第2のカウント値の前後に入力される複数ずつの前記各第1のカウント値に対する前記減数として共用することが好ましい。
【0013】
このA/D変換器において、前記ディジタル回路は、前記差分値を求めるにあたり、時系列で並ぶ2つの前記第2のカウント値の平均値を、当該2つの前記第2のカウント値の間に入力される複数の前記各第1のカウント値に対する前記減数として共用することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明のA/D変換器においては、従来の四重積分型A/D変換器に比べて、精度の低下を防止しつつ単位時間当たりの変換回数を増やすことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施形態1のA/D変換器の回路図である。
【図2】同上のA/D変換器の動作説明図である。
【図3】同上のA/D変換器の状態図である。
【図4】実施形態2のA/D変換器の動作説明図である。
【図5】同上のA/D変換器の状態図である。
【図6】実施形態3のA/D変換器の動作説明図である。
【図7】同上のA/D変換器の状態図である。
【図8】実施形態4のA/D変換器の動作説明図である。
【図9】同上のA/D変換器の状態図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(実施形態1)
本実施形態のA/D変換器は、図1に示すように、積分器1と、積分器1への入力を切り替える入力切替部2と、コンパレータ3と、カウンタ4と、クロックパルス発生部6と、ディジタル回路7とを備えている。また、A/D変換器は、入力切替部2を制御する機能を有する制御手段である制御回路5を備えている。なお、制御回路5は、適宜のプログラムを搭載したマイクロコンピュータなどにより構成してもよいし、タイミングコントロール回路や、それぞれ所望の機能を実現するように設計した複数の回路などの組み合わせにより構成してもよい。
【0017】
積分器1は、演算増幅器OP1を備え、演算増幅器OP1の反転入力端子に抵抗(入力抵抗)Rが接続されるとともに、演算増幅器OP1の反転入力端子と出力端子との間にコンデンサCが接続されている。ここで、積分器1は、演算増幅器OP1の非反転入力端子の電位が、第1の基準電圧VAGNDに設定されるように構成されている。要するに、積分器1は、演算増幅器OP1と抵抗RとコンデンサCとを用いた反転積分器の構成となっており、抵抗RとコンデンサCとの直列回路を有している。なお、本実施形態では、第1の基準電圧VAGNDをグランド電圧に設定してあり、演算増幅器OP1の非反転入力端子をグラウンドに接地してある。
【0018】
これに対し、入力切替部2は、積分器1に、入力電圧Vinと当該入力電圧Vinとは逆極性の参照電圧VREFと第1の基準電圧AGNDとのいずれか1つを択一的に入力させることができる構成となっている。
【0019】
入力切替部2は、積分器1への入力電圧Vinの入力経路に設けられたアナログスイッチSW1と、積分器1への参照電圧VREFの入力経路に設けられたアナログスイッチSW2と、積分器1への第1の基準電圧VAGNDの入力経路に設けられたアナログスイッチSW3とを備えている。各アナログスイッチSW1〜SW3は、nチャネルMOSトランジスタにより構成することが好ましく、これにより、pチャネルMOSトランジスタにより構成する場合に比べて、オン抵抗を低減できるとともに、高速動作が可能となる。
【0020】
上述の入力電圧Vinとしては、例えば、図示しないセンサ(例えば、赤外線センサなど)の出力電圧をプリアンプ(図示せず)などにより増幅して得られた電圧信号がある。なお、センサは赤外線センサに限らず、例えば、赤外線センサ以外の物理量センサや、化学量センサなどでもよい。
【0021】
制御回路5は、図2に示すように、積分器1において入力電圧Vinを第1積分期間T1だけ積分した後に参照電圧VREFを第2積分期間T2だけ積分する第1の二重積分(この際の出力電圧Voutを実線で示す)と第1の基準電圧(ここでは、グラウンド電圧)VAGNDを第1積分期間T1だけ積分した後に参照電圧VREFを第2積分期間T2だけ積分する第2の二重積分(この際の出力電圧Voutを一点鎖線で示す)とが選択的に行われるように入力切替部2を制御する機能を有している。ここにおいて、入力切替部2は、上述の3つのアナログスイッチSW1〜SW3を具備しており、各アナログスイッチSW1〜SW3それぞれのオンオフが制御回路5からの制御信号S1〜S3によって制御される。ここで、制御回路5は、図2に示すように、積分器1において第1の二重積分と第2の二重積分とが選択的に行われる(交互に繰り返される)ように、入力切替部2を制御する機能を有している。
【0022】
ところで、積分器1は、コンデンサCに、リセット用のアナログスイッチSW4が並列接続されている。したがって、積分器1は、リセット用のアナログスイッチSW4がオンされることにより、コンデンサCの残留電荷を放電させるリセット期間T3(図2参照)を設けることができる。このアナログスイッチSW4のオンオフは上述の制御回路5からの制御信号S4によって制御される。アナログスイッチSW4は、nチャネルMOSトランジスタにより構成することが好ましく、これにより、pチャネルMOSトランジスタにより構成する場合に比べて、オン抵抗を低減できるとともに、高速動作が可能となる。
【0023】
また、上述のコンパレータ3は、積分器1の出力電圧Voutを第2の基準電圧VSSと比較する。また、上述のカウンタ4は、一定周期のクロックパルスを出力する上述のクロックパルス発生部6からのクロックパルスをカウントしカウント値を出力する。このカウンタ4は、制御回路5からのカウント開始信号によって積分器1の第2積分期間T2の開始と同時に動作(カウント動作)が開始され、その後にコンパレータ3の出力が変化(反転)したときに動作(カウント動作)が終了される。したがって、カウンタ4は、第2積分期間T2において積分器1の出力電圧Voutが第1の基準電圧VAGNDに戻るまでの放電期間T4(図2参照)のみクロックパルスをカウントしカウント値を上述のディジタル回路7へ出力する。ここにおいて、カウンタ4は、カウント開始信号よりも前に制御回路5から与えられるリセット信号によりカウント値がリセットされる。したがって、カウンタ4は、第2積分期間T2毎にコンパレータ3の出力が反転するまで一定周期のクロックパルスをカウントしカウント値を出力することとなる。一方、ディジタル回路7は、カウンタ4のカウント値が入力されることとなる。
【0024】
したがって、制御回路5が入力切替部2を上述のように制御することによって、第1の二重積分の第1積分期間T1には、入力電圧VinとコンデンサCの容量値と抵抗Rの抵抗値とで決まる第1の電流が流れてコンデンサCが充電され、第2積分期間T2には参照電圧VREFとコンデンサCの容量値と抵抗Rの抵抗値とで決まる第2の電流が流れてコンデンサCの電荷が放電される。第1の二重積分の際の積分器1の出力電圧Voutの絶対値は、第1積分期間T1においては入力電圧Vinの値に比例した傾きで増加し、第2積分期間T2においては一定の傾きで減少するので、放電期間T4の長さは、入力電圧Vinに比例する。さらに説明すれば、第1の二重積分の際の第1積分期間T1の終了時における積分器1の出力電圧VoutをVaとすると、
【0025】
【数1】

となる。したがって、第1の二重積分の際の第1積分期間T1は、
【0026】
【数2】

となる。一方、第1の二重積分の際の放電期間T4をT4sとすると、
【0027】
【数3】

となる。そして、(2)式および(3)式から、
【0028】
【数4】

となる。したがって、第1の二重積分における第2積分期間T2に対応するカウンタ4のカウント値(第1のカウント値)は、入力電圧Vinに比例した値となる。なお、積分器1の第2積分期間T2は、積分器1のコンデンサCの容量値と抵抗Rの抵抗値とで決まる時定数に基づいて決定すればよい。
【0029】
また、第2の二重積分の第1積分期間T1には、演算増幅器OP1のオフセット電圧および低周波の雑音電圧を含む雑音電圧VosとコンデンサCの容量値と抵抗Rの抵抗値とで決まる第1の電流が流れてコンデンサCが充電され、第2積分期間T2には参照電圧VREFとコンデンサCの容量値と抵抗Rの抵抗値とで決まる第2の電流が流れてコンデンサCの電荷が放電される。第2の二重積分の際の積分器1の出力電圧Voutの絶対値は、第1積分期間T1においては雑音電圧Vosの値に比例した傾きで増加し、第2積分期間T2においては一定の傾きで減少するので、放電期間T4の長さは、雑音電圧Vosに比例する。さらに説明すれば、第2の二重積分の際の第1積分期間T1の終了時における積分器1の出力電圧VoutをVaとすると、
【0030】
【数5】

となる。したがって、第2の二重積分の際の第1積分期間T1は、
【0031】
【数6】

となる。一方、第2の二重積分の際の放電期間T4をT4nとすると、
【0032】
【数7】

となる。そして、(6)式および(7)式から、
【0033】
【数8】

となる。したがって、第2の二重積分における第2積分期間T2に対応するカウンタ4のカウント値(第2のカウント値)は、雑音電圧Vosに比例した値となる。
【0034】
なお、本実施形態では、第1積分期間T1、第2積分期間T2、リセット期間T3それぞれを各別に設定した一定値としてある。具体例としては、第1積分期間T1を2msec、第2積分期間T2を0.8msec、リセット期間T3を0.3msecとしてあるが、これらの値は一例であり、特に限定するものではない。また、図2では、カウンタ4のカウント値が出力されるタイミングを矢印で図示してある。
【0035】
カウンタ4としては、12ビットのカウンタを用いている。なお、カウンタ4は、12ビットのカウンタに限らず、例えば、8ビットのカウンタや16ビットのカウンタなどを用いてもよい。また、クロックパルス発生部6は、例えば、発振器やクロックパルス発生回路などにより構成すればよい。また、クロックパルス発生部6は、制御回路5に設けてもよい。
【0036】
ディジタル回路7は、第1の二重積分における第2積分期間T2に対応したカウント値からなる第1のカウント値と第2の二重積分における第2積分期間T2に対応したカウント値からなる第2のカウント値とが入力される。
【0037】
このディジタル回路7は、第1のカウント値を被減数、第2のカウント値を減数として被減数から減数を減算して得た差分値をディジタル値として出力する機能を有している。また、ディジタル回路7は、時系列で入力される第1のカウント値ごとに差分値を求めるにあたり、第2のカウント値を、時系列で入力される2つの第1のカウント値に対する減数として共用する。より具体的には、ディジタル回路7は、差分値を求めるにあたり、第2のカウント値を、時系列で当該第2のカウント値の前後に入力される各第1のカウント値に対する減数として共用する。ここにおいて、ディジタル回路7は、第1のカウント値および第2のカウント値を適宜記憶させるメモリ8と、差分値を求める演算器9とを備えている。したがって、第1のカウント値、第2のカウント値は、適宜、メモリ8に記憶され、演算器9において減算を行う際にメモリ8から読み出される。演算器9は、上述の減算を行う機能を有している。
【0038】
ディジタル回路7は、制御回路5からの読み出しタイミング信号が入力される度に、演算器9において上述の差分値を求める演算が行われ、求められた差分値をディジタル値として出力する。要するに、ディジタル回路7は、制御回路5からの読み出しタイミング信号が入力される度に、上述のディジタル値を出力する。なお、第1の二重積分を行うことにより第1のカウント値を求める状態を「信号サンプル(1)」、「信号サンプル(2)」と呼び、第2の二重積分を行うことにより第2のカウント値を求める状態を「オフセット低周波雑音サンプル」と呼び、「信号サンプル(1)」で求めた第1のカウント値から「オフセット低周波雑音サンプル」で求めた第2のカウント値を減算して得た差分値をディジタル値として出力する状態を「信号(1)出力」と呼び、「信号サンプル(2)」で求めた第1のカウント値から「オフセット低周波雑音サンプル」で求めた第2のカウント値を減算して得た差分値をディジタル値として出力する状態を「信号(2)出力」と呼ぶことにすれば、A/D変換器の状態図は、図3のようになる。
【0039】
以上説明した本実施形態のA/D変換器では、ディジタル回路7が、時系列で入力される第1のカウント値ごとに第2のカウント値との差分値を求めるにあたり、第2のカウント値を時系列で入力される2つの第1のカウント値に対する減数として共用するので、従来の四重積分型A/D変換器に比べて、精度の低下を防止しつつ単位時間(例えば、1秒)当たりの変換回数を増やすことが可能となる。また、本実施形態のA/D変換器では、ディジタル回路7が、差分値を求めるにあたり、第2のカウント値を、時系列で当該第2のカウント値の前後に入力される各第1のカウント値に対する減数として共用するので、連続した2回のサンプリング動作で雑音電圧Vosをキャンセルする相関二重サンプリング(Correlated DoubleSampling:CDS)が可能となり、第2のカウント値を時系列で入力される2つの第1のカウント値に対する減数として共用することによる精度の低下をなくすことが可能となる。
【0040】
(実施形態2)
本実施形態のA/D変換器の基本構成は、実施形態1において説明した図1と同じなので、図示を省略する。以下、実施形態1と相違する動作について図1および図4を参照しながら適宜説明する。
【0041】
本実施形態では、制御回路5が、図4に示すように、時系列的に並ぶ2回の第2の二重積分の間に、第1の二重積分が複数回(図示例では、3回であるが、2回以上であればよい)行われるように、入力切替部2を制御する機能を有している。
【0042】
本実施形態のA/D変換器は、ディジタル回路7が、時系列で入力される第1のカウント値ごとに差分値を求めるにあたり、第2のカウント値を、時系列で入力される3つの第1のカウント値に対する減数として共用する。ただし、共用の対象とする第1のカウント値の数は3つに限らず、少なくとも2つであればよく、例えば、2つでもよいし、4つでもよい。なお、共用の対象とする第1のカウント値の数は、第2のカウント値の実質的な変化がないとみなせる時間(CDSと同様の効果が得られる時間)に応じて適宜設定すればよい。
【0043】
ここで、本実施形態におけるディジタル回路7では、差分値を求めるにあたり、第2のカウント値を、時系列で当該第2のカウント値の後に入力される3つの各第1のカウント値に対する減数として共用する。
【0044】
ディジタル回路7は、制御回路5からの読み出しタイミング信号が入力される度に、演算器9において上述の差分値を求める演算が行われ、求められた差分値をディジタル値として出力する。要するに、本実施形態においても、ディジタル回路7は、制御回路5からの読み出しタイミング信号が入力される度に、上述のディジタル値を出力する。なお、第1の二重積分を行うことにより第1のカウント値を求める状態を「信号サンプル(1)」、「信号サンプル(2)」、「信号サンプル(3)」と呼び、第2の二重積分を行うことにより第2のカウント値を求める状態を「オフセット低周波雑音サンプル」と呼び、「信号サンプル(1)」で求めた第1のカウント値から「オフセット低周波雑音サンプル」で求めた第2のカウント値を減算して得た差分値をディジタル値として出力する状態を「信号(1)出力」と呼び、「信号サンプル(2)」で求めた第1のカウント値から「オフセット低周波雑音サンプル」で求めた第2のカウント値を減算して得た差分値をディジタル値として出力する状態を「信号(2)出力」と呼び、「信号サンプル(3)」で求めた第1のカウント値から「オフセット低周波雑音サンプル」で求めた第2のカウント値を減算して得た差分値をディジタル値として出力する状態を「信号(3)出力」と呼ぶことにすれば、A/D変換器の状態図は、図5のようになる。
【0045】
以上説明した本実施形態のA/D変換器では、ディジタル回路7が、時系列で入力される第1のカウント値ごとに第2のカウント値との差分値を求めるにあたり、第2のカウント値を時系列で入力される少なくとも2つの第1のカウント値に対する減数として共用するので、従来の四重積分型A/D変換器に比べて、精度の低下を防止しつつ単位時間当たりの変換回数を増やすことが可能となる。また、本実施形態のA/D変換器では、共用の対象とする第1のカウント値を3つ以上とすることにより、実施形態1に比べて、単位時間当たりの変換回数を増やすことが可能となる。
【0046】
(実施形態3)
本実施形態のA/D変換器の基本構成は、実施形態1において説明した図1と同じなので、図示を省略する。以下、実施形態1と相違する動作について図1および図6を参照しながら適宜説明する。
【0047】
本実施形態では、制御回路5が、図6に示すように、減数とする第2のカウント値を求める際の第2の二重積分の前後に、第1の二重積分が複数回(図示例では、3回であるが、2回以上であればよい)ずつ行われるように、入力切替部2を制御する機能を有している。
【0048】
本実施形態のA/D変換器は、ディジタル回路7が、時系列で入力される第1のカウント値ごとに差分値を求めるにあたり、第2のカウント値を、時系列で入力される6つの第1のカウント値に対する減数として共用する。
【0049】
ここで、本実施形態におけるディジタル回路7では、差分値を求めるにあたり、第2のカウント値を、時系列で当該第2のカウント値の前後に入力される3つずつの各第1のカウント値に対する減数として共用する。ただし、第2のカウント値を共用する第1のカウント値の数については、第2のカウント値の前後で3つずつとしてあるが、3つずつに限らず、複数ずつであればよく、例えば、2つずつでもよいし、4つずつでもよい。また、第2のカウント値を共用する第1のカウント値の数については、第2のカウント値の前後で必ずしも同じである必要はない。なお、共用の対象とする第1のカウント値の数は、第2のカウント値の実質的な変化がないとみなせる時間(CDSと同様の効果が得られる時間)に応じて適宜設定すればよい。
【0050】
ディジタル回路7は、制御回路5からの読み出しタイミング信号が入力される度に、演算器9において上述の差分値を求める演算が行われ、求められた差分値をディジタル値として出力する。要するに、本実施形態においても、ディジタル回路7は、制御回路5からの読み出しタイミング信号が入力される度に、上述のディジタル値を出力する。なお、第1の二重積分を行うことにより第1のカウント値を求める状態を「信号サンプル(1)」、「信号サンプル(2)」、・・・、「信号サンプル(6)」と呼び、第2の二重積分を行うことにより第2のカウント値を求める状態を「オフセット低周波雑音サンプル」と呼び、「信号サンプル(1)」、「信号サンプル(2)」、・・・、「信号サンプル(6)」それぞれで求めた第1のカウント値から「オフセット低周波雑音サンプル」で求めた第2のカウント値を減算して得た差分値をディジタル値として出力する状態をそれぞれ「信号(1)出力」、「信号(2)出力」、・・・、「信号(6)出力」と呼ぶことにすれば、A/D変換器の状態図は、図7のようになる。
【0051】
以上説明した本実施形態のA/D変換器では、ディジタル回路7が、時系列で入力される第1のカウント値ごとに第2のカウント値との差分値を求めるにあたり、第2のカウント値を時系列で入力される少なくとも2つの第1のカウント値に対する減数として共用するので、従来の四重積分型A/D変換器に比べて、精度の低下を防止しつつ単位時間当たりの変換回数を増やすことが可能となる。また、本実施形態のA/D変換器では、共用の対象とする第1のカウント値を第2のカウント値の前後で複数ずつとすることにより、実施形態1,2に比べて、単位時間当たりの変換回数を増やすことが可能となる。
【0052】
(実施形態4)
本実施形態のA/D変換器の基本構成は、実施形態1において説明した図1と同じなので、図示を省略する。以下、実施形態1と相違する動作について図1および図8を参照しながら適宜説明する。
【0053】
本実施形態では、制御回路5が、図4に示すように、時系列的に並ぶ2回の第2の二重積分の間に、第1の二重積分が複数回(図示例では、3回であるが、2回以上であればよい)行われるように、入力切替部2を制御する機能を有している。
【0054】
本実施形態のA/D変換器は、ディジタル回路7が、時系列で入力される第1のカウント値ごとに差分値を求めるにあたり、第2のカウント値を、時系列で入力される複数(図8の例では、3つであるが、2つ以上であればよい)の第1のカウント値に対する減数として共用する。
【0055】
ただし、本実施形態におけるディジタル回路7では、時系列で並ぶ2つの第2のカウント値の平均値を、当該2つの第2のカウント値の間に入力される複数の各第1のカウント値に対する減数として共用する。
【0056】
このディジタル回路7は、演算器9が、上述の平均値および差分値を求める機能を有している。ここにおいて、演算器9は、時系列で並ぶ2つの第2のカウント値を加算する加算器(図示せず)と、加算器により求められた加算値を2で除することにより上述の平均値を求める除算器(図示せず)と、第1のカウント値から平均値を減算する減算器(図示せず)とを備えている。
【0057】
ディジタル回路7は、制御回路5からの読み出しタイミング信号が入力される度に、演算器9において上述の差分値を求める演算が行われ、求められた差分値をディジタル値として出力する。要するに、ディジタル回路7は、制御回路5からの読み出しタイミング信号が入力される度に、上述のディジタル値を出力する。なお、第1の二重積分を行うことにより複数の第1のカウント値を求める状態をそれぞれ「信号サンプル(1)」、「信号サンプル(2)」、「信号サンプル(3)」と呼び、第2の二重積分を行うことにより第2のカウント値を求める状態を「オフセット低周波雑音サンプル」と呼び、上述の平均値を求める状態を「平均値算出」と呼び、「信号サンプル(1)」で求めた第1のカウント値から2つの第2のカウント値の平均値を減算して得た差分値をディジタル値として出力する状態を「信号(1)出力」と呼び、「信号サンプル(2)」で求めた第1のカウント値から2つの第2のカウント値の平均値を減算して得た差分値をディジタル値として出力する状態を「信号(2)出力」と呼び、「信号サンプル(3)」で求めた第1のカウント値から2つの第2のカウント値の平均値を減算して得た差分値をディジタル値として出力する状態を「信号(3)出力」と呼ぶことにすれば、A/D変換器の状態図は、図9のようになる。
【0058】
以上説明した本実施形態のA/D変換器では、ディジタル回路7が、時系列で入力される第1のカウント値ごとに第2のカウント値との差分値を求めるにあたり、第2のカウント値を時系列で入力される少なくとも2つの第1のカウント値に対する減数として共用するので、従来の四重積分型A/D変換器に比べて、精度の低下を防止しつつ単位時間当たりの変換回数を増やすことが可能となる。
【0059】
また、本実施形態のA/D変換器では、時系列で並ぶ2つの第2のカウント値の平均値を、当該2つの第2のカウント値の間に入力される複数の各第1のカウント値に対する減数として共用するので、第2のカウント値を決める雑音電圧Vosがディジタル値に与える影響をさらに低減することが可能となり、より一層の高精度化を図ることが可能となる。
【0060】
ところで、上述の各実施形態1〜4のA/D変換器では、複数のセンサ素子部を有するセンサから各センサ素子部の出力をプリアンプで増幅しアナログマルチプレクサにより順次入力させるような場合に、A/D変換の高精度化を図りながらも、全てのセンサ素子部それぞれの出力に対応するディジタル値を得るのに要する時間を短くすることが可能となる。したがって、例えば、センサが上記特許文献1に開示された赤外線アレイセンサであれば、フレームレートを短くすることが可能となる。なお、上記特許文献1に開示された赤外線アレイセンサでは、感温部および当該感温部の出力電圧を取り出すためのMOSトランジスタを具備する複数の画素部それぞれが、センサ素子部を構成する。
【符号の説明】
【0061】
1 積分器
2 入力切替部
3 コンパレータ
4 カウンタ
5 制御回路(制御手段)
6 クロックパルス発生部
7 ディジタル回路
8 メモリ
9 演算器
T1 第1積分期間
T2 第2積分期間
in 入力電圧
out 出力電圧
AGND 第1の基準電圧(グラウンド電圧)
REF 参照電圧
ss 第2の基準電圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
演算増幅器と抵抗とコンデンサとを有する積分器と、前記積分器に入力電圧と前記入力電圧とは逆極性の参照電圧とグラウンド電圧との1つを択一的に入力させる入力切替部と、前記積分器の出力電圧を基準電圧と比較するコンパレータと、前記積分器において前記入力電圧を第1積分期間だけ積分した後に前記参照電圧を第2積分期間だけ積分する第1の二重積分と前記グラウンド電圧を前記第1積分期間だけ積分した後に前記参照電圧を前記第2積分期間だけ積分する第2の二重積分とが選択的に行われるように前記入力切替部を制御する機能を有する制御手段と、前記第2積分期間毎に前記コンパレータの出力が反転するまで一定周期のクロックパルスをカウントしカウント値を出力するカウンタと、前記第1の二重積分における前記第2積分期間に対応した前記カウント値からなる第1のカウント値と前記第2の二重積分における前記第2積分期間に対応した前記カウント値からなる第2のカウント値とが入力されるディジタル回路とを備え、前記ディジタル回路は、前記第1のカウント値を被減数、前記第2のカウント値を減数として前記被減数から前記減数を減算して得た差分値をディジタル値として出力する機能を有し、時系列で入力される前記第1のカウント値ごとに前記差分値を求めるにあたり、前記第2のカウント値を時系列で入力される少なくとも2つの前記第1のカウント値に対する前記減数として共用することを特徴とするA/D変換器。
【請求項2】
前記ディジタル回路は、前記差分値を求めるにあたり、前記第2のカウント値を、時系列で前記第2のカウント値の前後に入力される前記各第1のカウント値に対する前記減数として共用することを特徴とする請求項1記載のA/D変換器。
【請求項3】
前記ディジタル回路は、前記差分値を求めるにあたり、前記第2のカウント値を、時系列で前記第2のカウント値の後に入力される前記各第1のカウント値に対する前記減数として共用することを特徴とする請求項1記載のA/D変換器。
【請求項4】
前記ディジタル回路は、前記差分値を求めるにあたり、前記第2のカウント値を、時系列で前記第2のカウント値の前後に入力される複数ずつの前記各第1のカウント値に対する前記減数として共用することを特徴とする請求項1記載のA/D変換器。
【請求項5】
前記ディジタル回路は、前記差分値を求めるにあたり、時系列で並ぶ2つの前記第2のカウント値の平均値を、当該2つの前記第2のカウント値の間に入力される複数の前記各第1のカウント値に対する前記減数として共用することを特徴とする請求項1記載のA/D変換器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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