説明

AC電源装置、帯電装置および画像形成装置

【課題】簡易な構成でBTL出力の正転と反転との間の直流電位を抑制して、消費電力を低減できるAC電源装置、帯電装置および画像形成装置を提供すること。
【解決手段】本発明は、トランスを駆動して交流電圧を出力するAC電源装置において、三角波生成部205と、オフセットした振幅の正弦波を生成する正弦波生成部206と、正弦波生成部206による正弦波と三角波生成部205による三角波とをもとにPWM信号を生成する比較器207と、PWM信号の正転信号および反転信号をそれぞれ正弦波に復元して出力するLPF202と、LPF202の正転出力側とトランス203との間に設けられ、正弦波の振幅のオフセットに対応した直流成分を除去する電解コンデンサ261とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、AC電源装置、帯電装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置においては、帯電プロセスの一手法であるAC帯電のように高圧AC電源が必要な場合、トランスを駆動する回路に、オーディオ機器などで用いられるBTL(Balanced Transformer Less)方式を利用することが既に知られている。
【0003】
しかし、従来までのAC電源装置において、BTL方式D級アンプでトランスを駆動する回路では、正弦波の振幅中心電圧と三角波の振幅中心電圧とを一致させるのが難しかった。この結果、正弦波の振幅中心電圧と三角波の振幅中心電圧とのずれによりBTL出力の正転と反転の間にDCオフセット成分が生じて無駄なDC電流が流れることで消費電力が高くなるという問題があった。
【0004】
具体的には、図15を参照して、従来のトランス駆動ICについて説明する。図15に示すように、トランス駆動IC2011では、三角波生成部2051、正弦波生成部2061、比較器2207、インバータ2210およびスイッチング駆動部2211,2212によって構成されている。比較器2207から配線2208に出力され、スイッチング駆動部2211から出力されたPWM信号は、接続点A10において接続するローパスフィルタ2202によって正弦波に復元され、また、配線2209に出力され、インバータ2210において反転後にスイッチング駆動部2212から出力されたPWM信号の反転信号は、接続点A20において接続するローパスフィルタ2202によって正弦波に復元される。ここで、三角波生成部2051および正弦波生成部2061において、振幅中心電圧が一致するように三角波および正弦波を生成した場合であっても、トランス駆動IC2011の固体ばらつきや電源電圧、温度などの環境によって、三角波の振幅中心電圧と正弦波の振幅中心電圧とが一致しない場合がある。この状態では、図15のLPF出力B10に出力される復元後の正転側の正弦波の振幅中心電圧と、図15のLPF出力B20に出力される復元後の反転側の正弦波の振幅中心電圧とにずれが発生してしまい、この差分を取った波形W311(図16参照)の振幅中心電圧は、0Vに対してV321分のオフセットを持つこととなる。トランス2203の1次側巻き線に、このように振幅中心電圧がそれぞれ一致しない正転側の正弦波および反転側の正弦波が流れ込むと、正転側出力端子と反転側出力端子との間にDC電流が流れ、消費電流が大きくなってしまい、トランス駆動IC2011自体も破損してしまうおそれがある。
【0005】
従来、この正弦波の振幅中心電圧と三角波の振幅中心電圧とのずれを検出する構成として、2出力端子間に並列CR回路の時定数によるバイアス回路を有するトランジスタを挿入して、BTL出力の正転と反転との間のDC成分を検出する構成が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。BTL出力の正転と反転との間のDC成分に対する検出結果はフィードバックされ、正弦波の振幅中心電圧と三角波の振幅中心電圧とがずれないように調整される。
【0006】
また、交流高圧出力の、正極性部および負極性部の(電圧*時間)積分値を検出し、所望の目標値に応じた値に制御することで、DC成分が重畳されるAC成分波形の正/負極性で適切な対称性を維持し、直流成分の発生を防止する構成が提案されている(たとえば、特許文献2参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1および特許文献2の構成によると、BTL出力の正転と反転との間のDC成分を検出する回路あるいは正弦波の振幅中心電圧と三角波の振幅中心電圧とを一致させるための制御回路といった複雑な構成の回路がさらに必要となるため、トランスを駆動する駆動回路のチップ面積、消費電力および設計コストが増大してしまうという問題があった。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、簡易な構成でBTL出力の正転と反転との間の直流成分を抑制して、消費電力を低減できるAC電源装置、帯電装置および画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかるAC電源装置は、トランスを駆動して交流電圧を出力するAC電源装置であって、三角波を生成する三角波生成手段と、オフセットした振幅の正弦波を生成する正弦波生成手段と、前記正弦波生成手段によって生成された正弦波と、前記三角波生成手段によって生成された三角波とをもとにパルス幅変調信号を生成するパルス幅変調信号生成手段と、前記パルス幅変調信号の正転信号を正弦波に復元して出力するとともに、前記パルス幅変調信号の反転信号を正弦波に復元して出力する出力手段と、前記出力手段の正転出力側と前記トランスとの間、あるいは、前記出力手段の反転出力側と前記トランスとの間に設けられ、前記正弦波の振幅のオフセットに対応した直流電位を除去する電解コンデンサと、を備えたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明にかかる帯電装置は、上記に記載されたAC電源装置と、前記AC電源装置と接続し、AC電源装置から供給される電力をもとに帯電する帯電部と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明にかかる画像形成装置は、上記に記載されたAC電源装置と、前記AC電源装置と接続し、AC電源装置から供給される電力をもとに帯電する帯電装置と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、オフセットした振幅の正弦波と三角波とをもとに生成されたパルス幅変調信号の正転信号が正弦波に復元されて出力される正転出力側とトランスとの間、あるいは、パルス幅変調信号の反転信号が正弦波に復元されて出力される反転出力側とトランスとの間に電解コンデンサを設けた簡易な構成で、正弦波の振幅のオフセットに対応した直流成分を除去して消費電力を低減可能としている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、実施の形態にかかるMFPの縦断面図である。
【図2】図2は、図1に示す電源装置を構成するAC電源装置の構成を示す図である。
【図3】図3は、図2に示す正弦波生成部を説明する図である。
【図4】図4は、図4は、図3に示す振幅生成部の構成を示す図である。
【図5】図5は、図2に示す三角波生成部、正弦波生成部、比較器およびスイッチング制御部から出力される信号波形の一例を示す図である。
【図6】図6は、図2に示す比較器から正転側のスイッチング駆動部に出力されるPWM信号の一例を示す図である。
【図7】図7は、図2に示す正転側のLPF出力に出力される出力波形と、反転側のLPF出力に出力される出力波形の一例を示す図である。
【図8】図8は、図2に示す電解コンデンサとトランスとの間の電位点の波形と、反転側のLPF出力に出力される出力波形の一例を示す図である。
【図9】図9は、図2に示す電解コンデンサとトランスとの間の電位点の波形と反転側のLPF出力に出力される出力波形との差分を取った波形の一例を示す図である。
【図10】図10は、従来のトランス駆動ICの構成を説明する図である。
【図11】図11は、図10に示す三角波生成部、正弦波生成部から出力される信号波形の一例を示す図である。
【図12】図12は、図10に示す比較器から正転側のスイッチング駆動部に出力されるPWM信号の一例を示す図である。
【図13】図13は、図10に示す正転側のLPF出力および反転側のLPF出力に出力される出力波形の一例を示す図である。
【図14】図14は、図10に示す正転側のLPF出力および反転側のLPF出力に出力される出力波形の差分を取った波形の一例を示す図である。
【図15】図15は、従来のトランス駆動ICの構成を説明する図である。
【図16】図16は、図15に示す構成における正転側のLPF出力の波形と反転側のLPF出力の波形との差分を取った波形の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる画像形成装置をMFP(Multi Function Peripheral)に適用した例を説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付している。
【0015】
(実施の形態)
まず、実施の形態について説明する。図1は、実施の形態にかかるMFPの縦断面図である。MFP1は、複写機能と、これ以外の機能、例えば、プリンタ機能、ファクシミリ機能とを備えていて、図示しない操作部のアプリケーション切り替えキーの操作により、複写機能、プリンタ機能、ファクシミリ機能を順次に切り替えて選択することが可能である。これにより、複写機能の選択時には複写モードとなり、プリンタ機能の選択時にはプリントモードとなり、ファクシミリモードの選択時にはファクシミリモードとなる。
【0016】
次に、MFP1の概略構成および複写モードの際の動作について説明する。図1において、自動原稿送り装置(以下、ADFという)101において、原稿台102に画像面を上にして置かれた原稿は、図示しない操作部上のスタートキーが押下されると、給紙ローラ103、給送ベルト104によってコンタクトガラス105上の所定の位置に給送される。ADF101は、一枚の原稿の給送完了毎に原稿枚数をカウントアップするカウント機能を有する。コンタクトガラス105上の原稿は、画像読取装置106によって画像情報が読み取られた後に、給送ベルト104、排送ローラ107によって排紙台108上に排出される。
【0017】
原稿セット検知器109で原稿台102上に次の原稿が存在することが検知された場合には、同様に原稿台102上の一番下の原稿が給紙ローラ103、給送ベルト104によってコンタクトガラス105上の所定の位置に給送される。このコンタクトガラス105上の原稿は、画像読取装置106によって画像情報が読み取られた後に、給送ベルト104、排送ローラ107によって排紙台108上に排出される。ここに、給紙ローラ103、給送ベルト104および排送ローラ107は搬送モータによって駆動される。
【0018】
第1給紙装置110、第2給紙装置111および第3給紙装置112は、それぞれ選択されたときに、その積載された転写紙を給紙し、この転写紙は縦搬送ユニット116によって感光体117に当接する位置まで搬送される。感光体117は、例えば感光体ドラムが用いられていて、図示しないメインモータにより回転駆動される。
【0019】
画像読取装置106で原稿から読み取られた画像データは、図示しない画像処理装置で所定の画像処理が施された後、書き込みユニット118によって光情報に変換され、感光体117には帯電装置128により一様に帯電された後に書き込みユニット118からの光情報で露光されて静電潜像が形成される。この感光体117上の静電潜像は、現像装置119により現像されてトナー像となる。書き込みユニット118、感光体117、現像装置119や、その他の図示しない感光体117の周りの周知の装置などにより、プリンタエンジンを構成している。帯電装置128は、電源装置130から供給される電力をもとに帯電する。なお、複数種のインクに対応させて、感光体117、現像装置119および帯電装置128は、それぞれ複数設けられる。
【0020】
搬送ベルト120は、用紙搬送の手段および転写の手段を兼ねていて電源から転写バイアスが印加され、縦搬送ユニット116からの転写紙を感光体117と等速で搬送しながら感光体117上のトナー像を転写紙に転写する。この転写紙は、定着装置121によりトナー像が定着され、排紙ユニット122により排紙トレイ123に排出される。感光体117は、トナー像転写後に図示しないクリーニング装置により残存トナーのクリーニングがなされる。
【0021】
以上の動作は、通常のモードで用紙の片面に画像を複写するときの動作である。両面モードで転写紙の両面に画像を複写する場合には、各給紙トレイ113〜115のいずれかより給紙されて表面に上述のように画像が形成された転写紙は、排紙ユニット122により排紙トレイ123側ではなく、両面入紙搬送路124側に切り替えられ、反転ユニット125によりスイッチバックされて表裏が反転され、両面搬送ユニット126へ搬送される。
【0022】
この両面搬送ユニット126へ搬送された転写紙は、両面搬送ユニット126により縦搬送ユニット116へ搬送され、縦搬送ユニット116により感光体117に当接する位置まで搬送され、感光体117上に上述と同様に形成されたトナー像が裏面に転写されて、定着装置121でトナー像が定着されることにより両面コピーとなる。この両面コピーは排紙ユニット122により排紙トレイ123に排出される。
【0023】
また、転写紙を反転して排出する場合には、反転ユニット125によりスイッチバックされて表裏が反転された転写紙は、両面搬送ユニット126に搬送されずに反転排紙搬送路127を経て排紙ユニット122により排紙トレイ123に排出される。
【0024】
プリントモードでは、前述の画像処理装置からの画像データの代りに、外部からの画像データが書き込みユニット118に入力されて、前述と同様に転写紙上に画像が形成される。
【0025】
さらに、ファクシミリモードでは、画像読取装置106からの画像データが図示しないファクシミリ送受信部により相手に送信され、相手からの画像データがファクシミリ送受信部で受信されて前述の画像処理装置からの画像データの代りに書き込みユニット118に入力されることにより、前述と同様に転写紙上に画像が形成される。
【0026】
また、このMFP1には、図示しない大量用紙供給装置(以下、LCTという)と、およびソート、穴あけ、ステイプルなどを行うフィニッシャーと、原稿読み取りのためのモード、複写倍率の設定、給紙段の設定、フィニッシャーで後処理の設定、オペレータに対する表示などを行う操作部とを備えている。
【0027】
ここで、本実施形態のMFP1が有する電源装置130のうち交流電流を供給するAC電源装置の構成について説明する。図2は、図1に示す電源装置を構成するAC電源装置の構成を示す図である。
【0028】
図2に示すように、AC電源装置は、2組のSEPP(Single Ended Push Pull)のOTL(Output Transformer Less)回路を互いに逆位相で動作させるBTL方式D級アンプに1次側巻き線が接続するトランス203を駆動して、トランス203の2次側巻き線の出力点204から交流電流を出力する。
【0029】
トランス203を駆動するトランス駆動IC201は、三角波生成部205、正弦波生成部206、比較器207、インバータ210およびスイッチング駆動部211,212によって構成されている。
【0030】
三角波生成部205は、コントローラ250から、生成する三角波の振幅を設定する振幅設定信号と、所定のクロック信号とが入力されることによって、所定の振幅で三角波を生成し、比較器207に出力する。
【0031】
正弦波生成部206は、コントローラ250から、生成する矩形波の振幅を設定する振幅設定信号と、所定のクロック信号とが入力されることによって、所定の振幅で矩形波を生成し、生成した矩形波を用いて正弦波を生成して比較器207に出力する。正弦波生成部206は、オフセットした振幅の矩形波を生成し、この矩形波を用いてオフセットした振幅の正弦波を生成する。
【0032】
比較器207は、三角波生成部205によって生成された三角波と、正弦波生成部206によって生成された正弦波とを比較し、パルス幅変調信号(PWM信号)を生成し、出力する。
【0033】
PWM信号は、配線208を経由して正転側のスイッチング駆動部211に入力し、スイッチング駆動部211は、PWM信号を出力点A1に出力する。また、PWM信号は、配線208から分岐する配線209を経由して、インバータ210に入力され、インバータ210において反転された後、反転側のスイッチング駆動部212に入力する。スイッチング駆動部212は、PWM信号の反転信号を出力点A2に出力する。
【0034】
トランス駆動IC201は、出力点A1,A2においてローパスフィルタ(LPF)202と接続する。LPF202は、出力点A1に出力されたPWM信号の正転信号を正弦波に復元し、LPF出力B1に出力する。LPF202は、出力点A2に出力されたPWM信号の反転信号を正弦波に復元し、LPF出力B2に出力する。LPF出力B2は、トランス203の1次側巻き線の一端に接続する。
【0035】
そして、LPF出力B1とトランス203の1次側巻き線の他端との間には、電解コンデンサ261が設けられる。電解コンデンサ261は、交流成分を通し、直流成分を除去する機能を有する。ここで、LPF出力B1,B2は、低い周波数(例えば、画像形成装置のAC電源装置では周波数1kHzである。)であるため、この周波数で交流成分を通すためには大容量のコンデンサが必要となる。
【0036】
本実施の形態では、電界コンデンサ261とトランス203との間の電位点B11のDC電位よりもLPF出力B1のDC電位のほうが高くなるように、正弦波生成部206が生成する矩形波の振幅をオフセットさせて、電界コンデンサ261のLPF出力B1側の極を正極とし、電界コンデンサ261のトランス203側の極を負極としている。電界コンデンサの極性が上記設定と逆になってしまうと、コンデンサ部材から発煙、電解液の漏れ、破裂等が発生する場合もあるため、上記設定を保持できるように電位点B11の電位よりも、LPF出力B1の電位を高く維持する必要がある。
【0037】
次に、図2に示す正弦波生成部206の構成について詳細に説明する。図3は、正弦波生成部206を説明する図である。図3に示すように、振幅生成部220およびローパスフィルタ(LPF)230によって構成される。
【0038】
振幅生成部220には、コントローラ250から、生成する矩形波の振幅を設定する振幅設定信号Saと、クロック信号Scとが入力される。振幅生成部220は、振幅設定信号Saによって設定される振幅であって、クロック信号Scの周期を持った矩形波を生成する。振幅生成部220が生成した矩形波は、LPF230によって正弦波に復元される。振幅生成部220には、コントローラ250によって、さらにDCオフセット調整信号Seが入力される。
【0039】
図4を参照して、振幅生成部220の構成について説明する。図4は、振幅生成部220の構成を示す図である。図4は、振幅生成部220を構成する各構成部位とともにLPF230も示す。
【0040】
図4に示すように、振幅生成部220は、クロック信号Scが入力されるスイッチ224、インバータ223を介してクロック信号Scの反転信号が入力されるスイッチ225、スイッチ224に直列に接続される可変電流源221、スイッチ225に直列に接続されるとともに接地された可変電流源222、抵抗R1,R2を有する。さらに、振幅生成部220においては、可変電流源240が、直列の抵抗R1、R2とLPF230との間に接続される。この可変電流源240には、DCオフセット調整信号Seが入力する。
【0041】
振幅生成部220は、振幅設定信号Saによって可変電流源221および可変電流源222の電流値を調整し、クロック信号ScのH信号またはL信号にしたがってスイッチ224,225のON/OFFを切り替え、抵抗R1および抵抗R2に順に電流を流すことによって、所定の振幅を有する矩形波を出力する。
【0042】
さらに、振幅生成部220においては、DCオフセット調整信号Seにしたがい、可変電流源240から抵抗R2に電流を流すことによって、LPF230に出力される矩形波の振幅をオフセットする。この結果、正弦波生成部206から出力される正弦波も振幅がオフセットされたものとなる。コントローラ250は、DCオフセット調整信号Seを出力することによって、電解コンデンサ261におけるトランス203側の極のDC電位よりもLPF出力B1側極のDC電位が高くなるように、矩形波の振幅をオフセットする。
【0043】
次に、三角波生成部205、正弦波生成部206、比較器207およびスイッチング制御部211,212から出力される信号波形について説明する。図5は、三角波生成部205から出力される三角波および正弦波生成部206から出力される正弦波の一例を示す図である。図6は、比較器207から正転側のスイッチング駆動部211に出力されるPWM信号の一例を示す図である。図7は、正転側のLPF出力B1に出力される出力波形と、反転側のLPF出力B2に出力される出力波形の一例を示す図である。図8は、電解コンデンサ261とトランス203の1次側巻き線との間の電位点B11の波形と、反転側のLPF出力B2に出力される出力波形の一例を示す図である。図9は、電位点B11の波形と反転側のLPF出力B2に出力される出力波形との差分を取った波形の一例を示す図である。
【0044】
図5に示すように、上述したように、正弦波生成部206から出力される正弦波W22は、振幅がオフセットしたものとなる。このため、三角波生成部205から出力される三角波W21の振幅中心電圧V23と、正弦波W22の振幅中心電圧V24とは一致しない。
【0045】
この状態で、比較器207から出力されたPWM信号S25の正転信号(図6参照)およびPWM信号S25の反転信号を正弦波に復元した場合、図7に示すように、復元した正転側のLPF出力B1に出力される出力波形W27の振幅中心電圧V29と、反転側のLPF出力B2に出力される出力波形W28の振幅中心電圧V30とは、正弦波生成部206が生成した矩形波の振幅のオフセットに対応して、ずれることとなる。このままの状態で、トランス203の1次側巻き線に正転側の正弦波および反転側の正弦波が流れ込むと、正転側出力端子と反転側出力端子との間にはDC電流が流れることとなる。
【0046】
本実施の形態では、復元した正転側のLPF出力B1とトランス203の1次側巻き線の接続点との間に電解コンデンサ261を設け、この電解コンデンサ261によって、正弦波生成部206による矩形波のオフセットに応じてずれた復元後の正弦波の正転波形と反転波形とのずれ分に対応するDC電流に相当するDC電位を除去する。
【0047】
このため、図8に示すように、電解コンデンサ261を通った後の正転側の電位点B11の正弦波W27cの振幅中心電圧V29cと、反転側のLPF出力B2に出力される出力波形W28の振幅中心電圧V30とは一致することとなり、正弦波W27cと正弦波W28との差分を取った波形W31(図9参照)の振幅中心電圧は0Vとなる。
【0048】
したがって、正弦波W27cと正弦波W28との差分を取った波形W31の振幅中心電圧が0Vである状態で、トランス203の1次側巻き線に正転側の正弦波および反転側の正弦波が流れ込むと、正転側出力端子と反転側出力端子との間にはDC電流が流れないために、低消費電流での動作が可能となる。
【0049】
ここで、従来では、フィードバック制御によって三角波の振幅中心電圧と正弦波の振幅中心電圧とのオフセット調整を行っていた。たとえば、図10に示すトランス駆動IC2012においては、積分器2043による三角波中心電圧ダミー回路2512の出力値と正弦波中心電圧ダミー回路2522の出力値との差分の積分値を参照して、オフセット調整部2442が、三角波生成部2052が生成する三角波の中心電圧と正弦波生成部2062が生成する正弦波の振幅中心電圧とのオフセットを補正して、三角波の振幅中心電圧と正弦波の中心電圧とを一致させている。三角波生成部2052において、三角波の振幅中心電圧を電源電圧とグランドの抵抗分圧とにより生成した電圧によって設定していた場合には、その構成と全く同じ回路を三角波中心電圧ダミー回路2512として別に設け、積分器2043に三角波の振幅中心電圧を入力する。正弦波中心電圧ダミー回路2522も同様に、正弦波の振幅中心電圧を入力できる構成で形成される。なお、三角波生成部2052および正弦波生成部2062と積分器2043とが近接して設けられる場合には、三角波の振幅中心電圧を設定する電圧および正弦波の振幅中心電圧を設定する電圧を直接入力してもよい。
【0050】
この場合には、図11に示すように、比較器207に入力される三角波W212の振幅中心電圧V232と正弦波W222の振幅中心電圧V242とはともに一致するため、比較器207から出力されたPWM信号S252の正転信号(図12参照)およびPWM信号S252の反転信号を正弦波に復元した場合、復元した正転側のLPF出力B1に出力される出力波形W272の振幅中心電圧V292と、反転側のLPF出力B2に出力される出力波形W282の振幅中心電圧V302とは一致する(図13参照)。この結果、正弦波W272と正弦波W282との差分を取った波形W312(図14)の振幅中心電圧は0Vとなり、正転側出力端子と反転側出力端子との間にはDC電流は流れないため、低消費電流での動作が可能となる。
【0051】
しかしながら、トランス駆動IC2012においては、三角波および正弦波のオフセットを検出する回路および正弦波の振幅中心電圧と三角波の振幅中心電圧とを一致させるための制御回路をさらに設ける必要があるため、トランスを駆動する駆動回路のチップ面積、消費電力および設計コストが増大してしまう。
【0052】
これに対し、本実施の形態では、正弦波生成部206から出力されるDC電位が増減すると、LPF出力B1の電位も連動して増減することから、電位点B11よりもLPF出力B1のDC電位を高くするために、正弦波生成部206が生成する矩形波の振幅をオフセットし、電解コンデンサ261によって、正弦波生成部206による矩形波のオフセットに対応した復元後の正弦波の正転波形と反転波形とのずれ分に対応するDC電位を除去している。
【0053】
このため、本実施の形態においては、電解コンデンサ261を追加しただけの簡易な回路構成でBTL出力の正転と反転との間の直流成分を抑制して、消費電力を低減することができる。これにともない、帯電装置128の消費電力およびMFP1本体における消費電力も低減できる。さらに、複数の帯電装置128それぞれに、このAC電源装置を設けた場合にもさらに消費電力を低減できる。また、本実施の形態においては、電解コンデンサ261を追加するのみで足りるため、トランス駆動回路のチップ面積および設計コストも増大を抑制できる。
【0054】
なお、矩形波の振幅をオフセットするには、矩形波の所定の振幅に対応する電流とは別の電流を抵抗R2に流せばよいため、この抵抗R2に流す別の電流を、たとえばAC電源装置とは別の画像形成装置内の充電用電流源から供給させてもよい。正弦波生成部206に対して矩形波の振幅におけるオフセット調整を、充電用電流源のオン動作あるいはオフ動作をもとに行うことによって、さらに簡易に矩形波の振幅におけるオフセット調整が可能になる。
【0055】
また、LPF出力B2におけるDC電位変動幅が予め分かっている場合は、コントローラ250は、その最大値よりもLPF出力B1のDC電位が高くなるように、所定の振幅に対応する電流とは別に供給する電流の供給量を、初期条件として予め設定しておいてもよい。また、コントローラ250は、MFP1の起動時に、所定の振幅に対応する電流とは別の電流の供給量を設定してもよい。このように、オフセットの調整を、MFP1の処理動作中ではなく、MFP1の装置起動時に行なうことによって、より効率的に矩形波の振幅におけるオフセット調整を行なうことができる。
【0056】
また、実施の形態では、正転側のLPF出力B1とトランス203の1次側巻き線のとの間に電解コンデンサ261を設けた場合を例に説明したが、もちろん、反転側のLPF出力B2とトランス203の1次側巻き線との間に電解コンデンサ261を設けてもよい。この場合にも、電界コンデンサ261のLPF出力B2側の極が正極となり、トランス203側の極が負極となるように、正弦波生成部206が生成する正弦波にオフセットを持たせる。また、正転側のLPF出力B1とトランス203のとの間、および反転側のLPF出力B2とトランス203との間のいずれにも電解コンデンサを設けた場合には、矩形波生成部206が生成する矩形波の振幅をオフセットせずとも、いずれの電解コンデンサについてもトランス側の極が負極となる。
【0057】
また、MFPに限らず、デジタル複写機、プリンタ、ファクシミリ、スキャナ機能やコピー、ファクシミリ、プリンタなどの画像形成処理を行うものであれば、本実施の形態を適用することができる。
【符号の説明】
【0058】
1 デジタル複写機
102 原稿台
103 給紙ローラ
104 給送ベルト
105 コンタクトガラス
106 画像読取装置
107 排送ローラ
108 排紙台
109 原稿セット検知器
110 給紙装置
111 給紙装置
112 給紙装置
113〜115 各給紙トレイ
116 縦搬送ユニット
117 感光体
118 ユニット
119 現像装置
120 搬送ベルト
121 定着装置
122 排紙ユニット
123 排紙トレイ
124 両面入紙搬送路
125 反転ユニット
126 両面搬送ユニット
127 反転排紙搬送路
128 帯電装置
130 電源装置
203 トランス
205,2051,2052 三角波生成部
206,2061,2062 正弦波生成部
207 比較器
210,223 インバータ
211,212 スイッチング駆動部
220 振幅生成部
221,222 可変電流源
224,225 スイッチ
240 可変電流源
250 コントローラ
261 電解コンデンサ
2043 積分器
2051 三角波生成部
2442 オフセット調整部
2512 三角波中心電圧ダミー回路
2522 正弦波中心電圧ダミー回路
201,2011,2012 トランス駆動IC
R1,R2 抵抗
【先行技術文献】
【特許文献】
【0059】
【特許文献1】特開平09−116353号公報
【特許文献2】特開2006−251018号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランスを駆動して交流電圧を出力するAC電源装置であって、
三角波を生成する三角波生成手段と、
オフセットした振幅の正弦波を生成する正弦波生成手段と、
前記正弦波生成手段によって生成された正弦波と、前記三角波生成手段によって生成された三角波とをもとにパルス幅変調信号を生成するパルス幅変調信号生成手段と、
前記パルス幅変調信号の正転信号を正弦波に復元して出力するとともに、前記パルス幅変調信号の反転信号を正弦波に復元して出力する出力手段と、
前記出力手段の正転出力側と前記トランスとの間、あるいは、前記出力手段の反転出力側と前記トランスとの間に設けられ、前記正弦波の振幅のオフセットに対応した直流成分を除去する電解コンデンサと、
を備えたことを特徴とするAC電源装置。
【請求項2】
前記正弦波生成手段は、矩形波を生成する矩形波生成手段を備え、前記矩形波生成手段によって生成された矩形波を用いて正弦波を生成し、
当該AC電源装置は、
前記矩形波生成手段が生成する矩形波の振幅をオフセットするオフセット調整手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載のAC電源装置。
【請求項3】
前記オフセット調整手段は、前記電解コンデンサにおける前記トランス側の極の電位よりも前記出力手段の正転出力側あるいは前記出力手段の反転出力側の極の電位が高くなるように矩形波の振幅をオフセットすることを特徴とする請求項2に記載のAC電源装置。
【請求項4】
前記矩形波生成手段は、所定の振幅に対応する電流が抵抗に供給されることによって矩形波を形成し、
前記オフセット調整手段は、前記抵抗に対し、前記所定の振幅に対応する電流とは別の電流を供給することによって、前記矩形波生成手段が生成する矩形波の振幅をオフセットさせることを特徴とする請求項2または3に記載のAC電源装置。
【請求項5】
前記オフセット調整手段は、前記所定の振幅に対応する電流とは別の電流として当該AC電源装置外の充電用電流源から電流を供給させることを特徴とする請求項4に記載のAC電源装置。
【請求項6】
前記オフセット調整手段は、当該AC電源装置が電力を供給する装置の起動時に、前記所定の振幅に対応する電流とは別の電流の供給量を設定することを特徴とする請求項4または5に記載のAC電源装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一つに記載されたAC電源装置と、
前記AC電源装置と接続し、AC電源装置から供給される電力をもとに帯電する帯電部と、
を備えたことを特徴とする帯電装置。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか一つに記載されたAC電源装置と、
前記AC電源装置と接続し、AC電源装置から供給される電力をもとに帯電する帯電装置と、
を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
前記AC電源装置および前記帯電装置は、それぞれ複数設けられることを特徴とする請求項8に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−55141(P2012−55141A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−197941(P2010−197941)
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】