説明

AC/DC入力対応電源装置

【課題】部品点数を削減して小型化を図ることができると共に、効率を良くすることができるAC/DC入力対応電源装置を提供する。
【解決手段】PFC回路の入力段に、AC100〜240V用に巻き数が最適化されたコイル1とDC−48V用に巻き数が最適化されたコイル2を用意し、入力(IN)にDC−48Vが与えられた場合は、スイッチ(SW)4を切り替えてDC−48V用のコイル2を選択し、入力(IN)にAC100〜240Vが与えられた場合は、スイッチ(SW)4を切り替えてAC100〜240V用のコイル1を選択する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、AC電源とDC電源から給電可能なAC/DC入力対応電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信基地局は、PHS基地局に代表される低出力で小型の屋外設置タイプの基地局と、携帯電話基地局に代表される高出力で大型のキャビネット内に設置するタイプの基地局がある。しかしながら、大型であった携帯電話基地局も小型化の技術が進んでおり、設置性の面からも屋外設置タイプが求められつつある。屋外設置の小型基地局の場合、どこからでも給電できるように商用電源の直接供給が求められるが、一方で、災害時の停電対策のためにバッテリバックアップを備えた整流器からの直流給電も求められる。
【0003】
このため、無線通信基地局に求められる電源として、AC100Vの商用電源とDC−48V電源を共用で利用でき、かつ、小型基地局に求められる小型化を考慮した電源回路が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
図1は、一般的なAC入力電源のブロック図であり、図2は、一般的なDC入力電源のブロック図である。PFC(Power Factor Correction)出力は高圧のDC電圧となるが、図ではDC400Vとしている。また、電源出力として、電力増幅(PA)用と制御用にそれぞれ30〜50Vと5〜12Vを用意しているが、電源系統の増減やその他の電圧の電源系統も考えられる。
【0005】
AC入力とDC入力の両方に対応する場合、AC入力対応の電源装置とDC入力対応の電源装置の2つを用意し、電源装置を取り換えることで、基地局のラインナップとして対応することが考えられる。ただし、2機種の基地局になることと、2種類の電源装置を開発する必要がある。
【0006】
また、1種類の電源装置でAC入力とDC入力の両方に対応する場合、以下の3つタイプの電源装置が考えられる。1つ目は、図3に示すように、DC−48V入力との共用利用のために、AC入力の変換過程においてDC−48Vを作るDC/DC回路を追加した電源装置である。2つ目は、図4に示すように、AC入力との共用利用のために、DC−48V入力にインバータ回路を追加した電源装置である。3つ目は、図5に示すように、AC入力との共用利用のために、DC−48VからDC400Vに昇圧するDC/DC回路を追加した電源装置である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−332231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、図3〜図5に示すいずれの電源装置も、部品点数(回路数)が多くなってしまい、基地局の小型化を図るうえで問題がある。また、図3の電源装置では、AC入力は、PFC回路と2つのDC/DC回路の3つの回路を経るため、電力消費により効率が悪化する。図4の電源装置では、DC入力は、インバータ回路とPFC回路とDC/DC回路の3つの回路を経るため、電力消費により効率が悪化する。屋外基地局の場合は放熱も問題となるため、効率が悪化し、熱損失が大きくなると、放熱面積を確保するために大きなフィン(FIN)を用意しなければならず、小型化という目的に反することになる。
【0009】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、部品点数を削減して小型化を図ることができると共に、効率を良くすることができるAC/DC入力対応電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明は、PFC回路とDC/DCコンバータ回路からなるAC/DC入力対応電源装置であって、前記PFC回路の入力段に、コイルを備え、前記PFC回路に入力される電圧に応じて、前記コイルの巻き数を選択できることを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、前記PFC回路の入力段に、巻き数の異なる2つのコイルを設け、前記PFC回路に入力される電圧に応じて、前記コイルの何れかを選択できるようにしたことを特徴とする。
【0012】
また、前記2つのコイルは、中間タップ付きコイルの中間タップより一方側のコイルであって、DC用に巻き数が最適化されたコイルと、前記中間タップ付きコイルの全体のコイルであって、AC用に巻き数が最適化されたコイルであることが好ましい。
【0013】
また、本発明は、AC/DC入力対応電源装置に用いられるPFC回路であって、コイルを備え、前記PFC回路に入力される電圧に応じて、前記コイルの巻き数を選択できることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、PFC回路の入力段にコイルを設けて、PFC回路の入力に与えられる電圧に応じて、コイルの巻き数を選択できるようにしたので、部品点数を削減して小型化を図ることができると共に、効率を良くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】一般的なAC入力電源のブロック図である。
【図2】一般的なDC入力電源のブロック図である。
【図3】AC入力とDC入力の両方に対応した電源装置の一例を示す図である。
【図4】AC入力とDC入力の両方に対応した電源装置の一例を示す図である。
【図5】AC入力とDC入力の両方に対応した電源装置の一例を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態に係るAC/DC入力対応電源装置のブロック図である。
【図7】PFC回路の一般的な構成例を示すブロック図である。
【図8】本発明の第1の実施形態に係るPFC回路の具体的な構成例を示すブロック図である。
【図9】本発明の第2の実施形態に係るPFC回路の具体的な構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。図6は、本発明の実施の形態に係るAC/DC入力対応電源装置のブロック図である。本発明の実施の形態に係るAC/DC入力対応電源装置は、力率を改善するPFC(Power Factor Correction)回路と、高圧入力のDC/DCコンバータ回路(以下、DC/DC回路という)からなる。PFC回路は、具体的には、図5のDC/DC(昇圧)回路とPFC回路を合わせたものである。共用入力となるため、PFC回路は、図1のPFC回路と比べると大きくなるが、本発明の実施の形態に係る電源装置は、回路数が2つであり、図3〜図5の電源装置よりも回路数が少なくなるため、図3〜図5の電源装置よりも小型化が可能である。
【0017】
図7は、PFC回路の一般的な構成例を示すブロック図である。図7に示すPFC回路は、コイル1と、スイッチング素子6と、スイッチング素子6を制御する制御回路7と、整流ダイオード8と、コンデンサ9を備えている。PFC回路の入力(IN)にAC100〜240Vが与えられると、AC100〜240Vの電圧は、スイッチング素子6でスイッチングされ、整流ダイオード8で整流されて、DC400Vまで昇圧される。
【0018】
図8は、本発明の第1の実施形態に係るPFC回路の具体的な構成例を示すブロック図である。図7の入力(IN)に、AC100〜240VだけではなくDC−48Vを共用入力することを考えると、回路自体にDCが供給されること自体は問題ないが、入力範囲の下限を拡げる必要がある。
【0019】
そこで、図8に示すように、AC100〜240V用に巻き数が最適化されたコイル1とDC−48V用に巻き数が最適化されたコイル2と、スイッチ(SW)4を入力段に設け、入力(IN)に与えられる電圧に応じて、コイル1とコイル2をスイッチ(SW)4により選択できるようにしている。
【0020】
入力(IN)にDC−48Vが与えられた場合は、スイッチ(SW)4を切り替えてDC−48V用に巻き数が最適化されたコイル2を選択し、入力(IN)にAC100〜240Vが与えられた場合は、スイッチ(SW)4を切り替えてAC100〜240V用に巻き数が最適化されたコイル1を選択する。
【0021】
これにより、AC/DC入力対応電源が実現可能となる。第1の実施形態に係るPFC回路は、DC−48V用のコイル2とスイッチ(SW)4を追加した以外は、図7のPFC回路と同様の構成である。
【0022】
第1の実施形態に係るAC/DC入力対応電源装置は、図7の回路に、コイル2と、スイッチ(SW)4を追加するだけであるため、回路数の低減による小型化と効率の最適化を図ることができる。
【0023】
図9は、本発明の第2の実施形態に係るPFC回路の具体的な構成例を示すブロック図である。第2の実施形態に係るPFC回路は、図8のように巻き数の異なる2つのコイルを用いる代わりに、図9に示すように、コイル3の中間タップと中間タップに接続されたスイッチ(SW)5を利用して巻き数を変更するものである。
【0024】
コイル3は、中間タップ付きのコイルであり、コイル3aとコイル3bからなる。コイル3bは、DC−48V用に巻き数が最適化されたコイルであり、コイル3(コイル3a+コイル3b)は、AC100〜240V用に巻き数が最適化されたコイルである。
【0025】
入力(IN)にDC−48Vが与えられた場合は、スイッチ(SW)5を閉じてDC−48V用に巻き数が最適化されたコイル3bを選択し、入力(IN)にAC100〜240Vが与えられた場合は、スイッチ(SW)5を開いてAC100〜240V用に巻き数が最適化されたコイル3(コイル3a+コイル3b)を選択する。
【0026】
これにより、AC/DC入力対応電源が実現可能となる。第2の実施形態に係るPFC回路は、コイル3にタップを設け、スイッチ(SW)5を追加した以外は、図7のPFC回路と同様の構成である。
【0027】
第2の実施形態に係るAC/DC入力対応電源装置は、図7の回路に、スイッチ(SW)5を追加するだけであるため、回路数の低減による小型化と効率の最適化を図ることができる。
【符号の説明】
【0028】
1、2、3 コイル
4、5 スイッチ(SW)
6 スイッチング素子
7 制御回路
8 整流ダイオード
9 コンデンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
PFC回路とDC/DCコンバータ回路からなるAC/DC入力対応電源装置であって、
前記PFC回路の入力段に、コイルを備え、
前記PFC回路に入力される電圧に応じて、前記コイルの巻き数を選択できることを特徴とするAC/DC入力対応電源装置。
【請求項2】
前記PFC回路の入力段に、巻き数の異なる2つのコイルを設け、
前記PFC回路に入力される電圧に応じて、前記コイルの何れかを選択できるようにしたことを特徴とする請求項1に記載のAC/DC入力対応電源装置。
【請求項3】
前記2つのコイルは、中間タップ付きコイルの中間タップより一方側のコイルであって、DC用に巻き数が最適化されたコイルと、前記中間タップ付きコイルの全体のコイルであって、AC用に巻き数が最適化されたコイルであることを特徴とする請求項2に記載のAC/DC入力対応電源装置。
【請求項4】
AC/DC入力対応電源装置に用いられるPFC回路であって、
コイルを備え、
前記PFC回路に入力される電圧に応じて、前記コイルの巻き数を選択できることを特徴とするPFC回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−239287(P2012−239287A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−106263(P2011−106263)
【出願日】平成23年5月11日(2011.5.11)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】