AM検波器及びその方法並びにそれを用いた受信機
【課題】 航空機など移動体通信システムにおいて、デジタルAM検波方式の受信機の場合に、リアルタイムで離調ノイズを軽減する。
【解決手段】 それぞれが互いに異なりかつ本来のローカル周波数に対して離調した複数のローカル周波数源3−1〜3−nを用いて、受信波を周波数変換器2−1〜2−nでそれぞれ周波数変換し、これら周波数変換出力を、A/D変換器5−1〜5−nでデジタル化して、デジタル検波回路6−1〜6−nでそれぞれデジタルAM検波する。そして、これら検波出力を合成/平均化処理回路9で加算して平均化する。これにより、リアルタイムで離調ノイズが軽減される。
【解決手段】 それぞれが互いに異なりかつ本来のローカル周波数に対して離調した複数のローカル周波数源3−1〜3−nを用いて、受信波を周波数変換器2−1〜2−nでそれぞれ周波数変換し、これら周波数変換出力を、A/D変換器5−1〜5−nでデジタル化して、デジタル検波回路6−1〜6−nでそれぞれデジタルAM検波する。そして、これら検波出力を合成/平均化処理回路9で加算して平均化する。これにより、リアルタイムで離調ノイズが軽減される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はAM検波器及びその方法並びにそれを用いた受信機に関し、特に移動体通信システムに用いて好適なデジタルAM検波方式に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常の無線通信においては、送信側が送信した電波の周波数と受信側の周波数とは、完全に同期をとることは困難である。特に、移動体通信では、移動に伴うドップラー効果や、電波伝搬の状況により、周波数ずれが発生することは避けられないものである。AM通信方式の場合、受信側が周波数ずれ(ΔF)した電波を受信してデジタル検波する(特許文献1参照)と、離調に伴うノイズ(Δf)、すなわち離調音が発生する。以下にそのメカニズムを説明する。
【0003】
一般に、受信されたAM波は、図9に示す如く、中間周波数に変換され、更にデジタル信号に変換されてデジタル信号の状態で、その振幅が検出されるいわゆるAM検波が行われる。詳述すると、空中線1による受信電波は周波数変換回路2に入力されて局部発振器3からのローカル周波数を用いて中間周波数に変換され、中間周波数増幅器4により増幅され、更にA/D変換器5においてデジタル信号に変換される。このデジタル信号はデジタル検波回路6においてAM検波されてD/A変換器7を介して図示せぬ復調部へ導出される。
【0004】
デジタル検波回路6でのデジタルAM検波では、入力された信号のベクトルが実軸成分(I)と虚軸成分(Q)とに分離されて振幅検波が行われる(図10参照)。この振幅と位相は理論的には式(1)で求められるものである。
振幅=√(I2 +Q2 ) 位相=tan-1(Q/I) ……(1)
【0005】
ここで、図9の局部発振器3のローカル周波数を仮想的に受信周波数に設定すると、中間周波(IF)信号は完全なベースバンド信号となる。しかしながら、上述した搬送波の周波数ずれ(ΔF)があると、IとQの位相がずれ、式(1)の振幅計算における平方根の計算がI−Q平面上の全象限において必要となる。
【0006】
一方、当該平方根の計算を、デジタル信号を用いて、有限の桁数でかつ実時間内で処理するためには、通常近似処理を行うため、2分円誤差や4分円誤差を含むことになる(図11の点線)。このように、受信信号の搬送波の周波数ずれ(ΔF)による位相回転が発生すると、その回転に応じて、真の振幅が一定であるにもかかわらず、振幅計算結果に周期的な誤差が現れる現象が生ずる。この誤差が音声復調時に可聴音となって出力されてしまうことになる。これがいわゆる「離調に伴うノイズ(Δf)」、すなわち「離調音」となるのである。
【0007】
【特許文献1】特許第3031922号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来、この離調ノイズ(Δf)を削減するためには、離調周波数を検出してローカル周波数をそれに伴って変化させ、同期をとる同期検波か、または遅延検波を行う必要があり、これらいずれの検波方式でも、信号の差分を利用し、システムにフィードバックするための遅延時間を生ずるという問題がある。
【0009】
本発明の目的は、フィードバックによる遅延時間を生ずることなく、受信信号の搬送波の周波数ずれ(ΔF)により生じる離調ノイズ(Δf)を軽減するようにしたAM検波回路におけるノイズ低減システム及びその方法並びにそれを用いた受信機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明にるAM検波器は、受信波を中間周波数に変換してデジタルAM検波するAM検波器であって、それぞれが互いに異なりかつ本来のローカル周波数に対して離調した複数のローカル周波数を用いて、前記受信波をそれぞれ周波数変換する手段と、これら周波数変換出力をそれぞれデジタルAM検波する手段と、これら検波出力を平均化する手段とを含むことを特徴とする。
【0011】
本発明による受信機は上記のAM検波器を用いたことを特徴とする。
【0012】
本発明によるAM検波方法は、受信波を中間周波数に変換してデジタルAM検波するAM検波方法であって、それぞれが互いに異なりかつ本来のローカル周波数に対して離調した複数のローカル周波数を用いて、前記受信波をそれぞれ周波数変換するステップと、これら周波数変換出力をそれぞれデジタルAM検波するステップと、これら検波出力を平均化するステップとを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、フィードバックによる遅延時間を生ずることなく離調ノイズ(Δf)を軽減できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。図1は本発明の実施の形態のブロック図であり、図9と同等部分は同一符号により示している。本実施の形態における受信電波の帯域は、VHF(30〜300MHz)帯やUHF(300〜3000MHz)帯であるとし、一例として、受信波の搬送周波数は127.500MHzであり、本来の局部発振周波数は32.256MHzであるとするが、これに限定されるものではない。
【0015】
空中線1による受信電波は信号分岐回路8へ入力されてn分岐(nは2以上の整数)され、n個の周波数変換回路2−1〜2−nへそれぞれ供給される。各周波数変換回路2−1〜2−nにおいては、それぞれ対応して設けられた局部発振器3−1〜3−nからのローカル周波数を用いて中間周波数に変換されることになる。
【0016】
これら局部発振器3−1〜3−nの各々は、わずかに離調したローカル周波数発振源を有しており、例えば、それぞれ100Hzずつずれた中間周波数IF1 〜IFn となるようなローカル周波数を生成するものとする。これら中間周波数信号は中間周波数増幅器4−1〜4−nによってそれぞれ増幅されたあと、A/D変換器5−1〜5−nにおいてデジタル信号にそれぞれ変換される。これらデジタル信号はデジタル検波回路6−1〜6−nにおいてそれぞれAM検波されることになる。これら検波出力は合成/平均化処理回路9において加算合成されて平均化処理が行われ、D/A変換器7を介して図示せぬ復調部へ導出される。
【0017】
この様な構成において、送信側から送信された搬送波をY0 とし、また受信側において空中線1で受信されたときに、搬送波が周波数ずれ(Δy)を含んだ電波をYとしたとき、Yは次式で表せる。
Y=Y0 +Δy ……(2)
この電波は信号分岐回路8でn分岐され、周波数変換回路2−1〜2−nでそれぞれ中間周波数信号に変換されるが、このとき、各中間周波数は、検波したときの誤差成分が、合成/平均化処理回路9で合成したときに波形のピークが重ならないように、わずかに離調した周波数となっており、上述した如く、それぞれ100Hzずつずれたものとなっている。
【0018】
検波回路6−1〜6−nはデジタルAM検波機能を有し、各中間周波数の入力をそれぞれI,Q成分に分けて検波する。検波後の離調に伴うノイズ波形成分Δfは、次式で示される。
Δfk =A(sqrt)sin(2π・fk ・t) (k=1〜n)……(3)
この式(3)で示される波形はCW(Continuous Wave )であり、A(sqrt)は、平方根の検波回路が持つ誤差関数である。この誤差関数は、検波時に使用される式(1)の平方根の値が近似値となることに起因するものである。
【0019】
上記の式(3)の波形を図2〜図5に示しており、n=4の場合であり、図2がk=1、図3がk=2、図4がk=3、図5がk=4の場合を、それぞれ示している。
【0020】
合成/平均化処理回路9は、各デジタル検波回路6−1〜6−nで得られた、離調に伴うノイズ波形成分Δfk を加算して平均化する。これら各波形は、図2〜図5に示すように、わずかに離調した周波数成分を有しており、ピークは一致しない。平均化処理は、式(4)により行われることになる。
【数1】
【0021】
この平均化処理後の出力波形を図6に示しており、各ノイズ成分波形のピークが互いにずれているために、波形のレベルが分散されていることが判る。すなわち、各周波数IF1 〜IFn に一定ノイズが含まれた波形を平均化することにより、各々のΔf成分が1/nとなってS/Nが改善されるのである。
【0022】
なお、図7は、例として、n=4の場合の4つの中間周波数を用いて、各中間周波数をデジタルAM検波した後の各波形の離調に伴うノイズレベルを示し、図8は合成/平均化処理後の離調に伴うノイズレベルを示したものである。
【0023】
上述したように、本発明では、受信機内にわずかに離調した複数のローカル周波数源を設け、受信電波を複数の中間周波数の信号に変換してデジタルAM検波するものであるが、その際に、発生する離調ノイズは、ローカル周波数の離調量に応じてそれぞれ異なる波形となる。一方、本来受信目的のAM信号はローカル周波数の如何にかかわらず一定である。そのために、これら出力を時間軸で加算合成して平均化処理を行えば、リアルタイムで離調ノイズ成分のみを低減できることになるのである。
【0024】
なお、上記の例においては、離調の度合を、それぞれ100Hzずつ離れたIF周波数となるようなローカル周波数を選んでいるが、一般的には、以下のように選ぶことになる。すなわち、2つの周波数の波形でピークが周期的に一致する場合に、これらを合成すると、ピークが加算されてノイズ抑圧(S/N改善)とはならないことから、2つの周波数の場合には、それらの周波数の整数倍では、位相の関係でピークが一致するケースが存在してこのようなケースを除くことが必要になる。そこで、一般に複数の周波数に適用する場合には、素数であればピークは一致しなくなるので、具体的な離調周波数の数値は、そのなかから選択することになる。
【0025】
本発明は、デジタルAM検波処理を利用したマルチモード対応無線受信機に適用でき、航空機と地上間、または航空機間でのデジタル通信装置や、VDL(VHFデジタルリンク)システムによる通信装置に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施の形態のブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態において、4つの中間周波数IF1 〜IF4 のうちIF1 を用いた場合におけるデジタルAM検波した場合の離調に伴うノイズ波形Δf1 を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態において、4つの中間周波数IF1 〜IF4 のうちIF2 を用いた場合におけるデジタルAM検波した場合の離調に伴うノイズ波形Δf2 を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態において、4つの中間周波数IF1 〜IF4 のうちIF3 を用いた場合におけるデジタルAM検波した場合の離調に伴うノイズ波形Δf3 を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態において、4つの中間周波数IF1 〜IF4 のうちIF4 を用いた場合におけるデジタルAM検波した場合の離調に伴うノイズ波形Δf4 を示す図である。
【図6】図2〜図5の各波形を合成/平均化した場合の離調に伴うノイズ波形を示す図である。
【図7】4つの中間周波数を用いた場合において、デジタルAM検波後の各波形の離調に伴うノイズレベルを示す図である。
【図8】図7の場合において、合成/平均化処理後の離調に伴うノイズレベルを示す図である。
【図9】従来技術を示すブロック図である。
【図10】デジタルAM検波方式(A/D変換後、IQ分離してAM検波)の理論図である。
【図11】デジタルAM検波方式で生じる近似誤差の概念図である。
【符号の説明】
【0027】
1 空中線
2−1〜2−n 周波数変換回路
3−1〜3−n 局部発振器
4−1〜4−n 中間周波数増幅器
5−1〜5−n A/D変換器
6−1〜6−n デジタル検波回路
7 D/A変換器
8 信号分岐回路
9 合成/平均化処理回路
【技術分野】
【0001】
本発明はAM検波器及びその方法並びにそれを用いた受信機に関し、特に移動体通信システムに用いて好適なデジタルAM検波方式に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常の無線通信においては、送信側が送信した電波の周波数と受信側の周波数とは、完全に同期をとることは困難である。特に、移動体通信では、移動に伴うドップラー効果や、電波伝搬の状況により、周波数ずれが発生することは避けられないものである。AM通信方式の場合、受信側が周波数ずれ(ΔF)した電波を受信してデジタル検波する(特許文献1参照)と、離調に伴うノイズ(Δf)、すなわち離調音が発生する。以下にそのメカニズムを説明する。
【0003】
一般に、受信されたAM波は、図9に示す如く、中間周波数に変換され、更にデジタル信号に変換されてデジタル信号の状態で、その振幅が検出されるいわゆるAM検波が行われる。詳述すると、空中線1による受信電波は周波数変換回路2に入力されて局部発振器3からのローカル周波数を用いて中間周波数に変換され、中間周波数増幅器4により増幅され、更にA/D変換器5においてデジタル信号に変換される。このデジタル信号はデジタル検波回路6においてAM検波されてD/A変換器7を介して図示せぬ復調部へ導出される。
【0004】
デジタル検波回路6でのデジタルAM検波では、入力された信号のベクトルが実軸成分(I)と虚軸成分(Q)とに分離されて振幅検波が行われる(図10参照)。この振幅と位相は理論的には式(1)で求められるものである。
振幅=√(I2 +Q2 ) 位相=tan-1(Q/I) ……(1)
【0005】
ここで、図9の局部発振器3のローカル周波数を仮想的に受信周波数に設定すると、中間周波(IF)信号は完全なベースバンド信号となる。しかしながら、上述した搬送波の周波数ずれ(ΔF)があると、IとQの位相がずれ、式(1)の振幅計算における平方根の計算がI−Q平面上の全象限において必要となる。
【0006】
一方、当該平方根の計算を、デジタル信号を用いて、有限の桁数でかつ実時間内で処理するためには、通常近似処理を行うため、2分円誤差や4分円誤差を含むことになる(図11の点線)。このように、受信信号の搬送波の周波数ずれ(ΔF)による位相回転が発生すると、その回転に応じて、真の振幅が一定であるにもかかわらず、振幅計算結果に周期的な誤差が現れる現象が生ずる。この誤差が音声復調時に可聴音となって出力されてしまうことになる。これがいわゆる「離調に伴うノイズ(Δf)」、すなわち「離調音」となるのである。
【0007】
【特許文献1】特許第3031922号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来、この離調ノイズ(Δf)を削減するためには、離調周波数を検出してローカル周波数をそれに伴って変化させ、同期をとる同期検波か、または遅延検波を行う必要があり、これらいずれの検波方式でも、信号の差分を利用し、システムにフィードバックするための遅延時間を生ずるという問題がある。
【0009】
本発明の目的は、フィードバックによる遅延時間を生ずることなく、受信信号の搬送波の周波数ずれ(ΔF)により生じる離調ノイズ(Δf)を軽減するようにしたAM検波回路におけるノイズ低減システム及びその方法並びにそれを用いた受信機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明にるAM検波器は、受信波を中間周波数に変換してデジタルAM検波するAM検波器であって、それぞれが互いに異なりかつ本来のローカル周波数に対して離調した複数のローカル周波数を用いて、前記受信波をそれぞれ周波数変換する手段と、これら周波数変換出力をそれぞれデジタルAM検波する手段と、これら検波出力を平均化する手段とを含むことを特徴とする。
【0011】
本発明による受信機は上記のAM検波器を用いたことを特徴とする。
【0012】
本発明によるAM検波方法は、受信波を中間周波数に変換してデジタルAM検波するAM検波方法であって、それぞれが互いに異なりかつ本来のローカル周波数に対して離調した複数のローカル周波数を用いて、前記受信波をそれぞれ周波数変換するステップと、これら周波数変換出力をそれぞれデジタルAM検波するステップと、これら検波出力を平均化するステップとを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、フィードバックによる遅延時間を生ずることなく離調ノイズ(Δf)を軽減できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。図1は本発明の実施の形態のブロック図であり、図9と同等部分は同一符号により示している。本実施の形態における受信電波の帯域は、VHF(30〜300MHz)帯やUHF(300〜3000MHz)帯であるとし、一例として、受信波の搬送周波数は127.500MHzであり、本来の局部発振周波数は32.256MHzであるとするが、これに限定されるものではない。
【0015】
空中線1による受信電波は信号分岐回路8へ入力されてn分岐(nは2以上の整数)され、n個の周波数変換回路2−1〜2−nへそれぞれ供給される。各周波数変換回路2−1〜2−nにおいては、それぞれ対応して設けられた局部発振器3−1〜3−nからのローカル周波数を用いて中間周波数に変換されることになる。
【0016】
これら局部発振器3−1〜3−nの各々は、わずかに離調したローカル周波数発振源を有しており、例えば、それぞれ100Hzずつずれた中間周波数IF1 〜IFn となるようなローカル周波数を生成するものとする。これら中間周波数信号は中間周波数増幅器4−1〜4−nによってそれぞれ増幅されたあと、A/D変換器5−1〜5−nにおいてデジタル信号にそれぞれ変換される。これらデジタル信号はデジタル検波回路6−1〜6−nにおいてそれぞれAM検波されることになる。これら検波出力は合成/平均化処理回路9において加算合成されて平均化処理が行われ、D/A変換器7を介して図示せぬ復調部へ導出される。
【0017】
この様な構成において、送信側から送信された搬送波をY0 とし、また受信側において空中線1で受信されたときに、搬送波が周波数ずれ(Δy)を含んだ電波をYとしたとき、Yは次式で表せる。
Y=Y0 +Δy ……(2)
この電波は信号分岐回路8でn分岐され、周波数変換回路2−1〜2−nでそれぞれ中間周波数信号に変換されるが、このとき、各中間周波数は、検波したときの誤差成分が、合成/平均化処理回路9で合成したときに波形のピークが重ならないように、わずかに離調した周波数となっており、上述した如く、それぞれ100Hzずつずれたものとなっている。
【0018】
検波回路6−1〜6−nはデジタルAM検波機能を有し、各中間周波数の入力をそれぞれI,Q成分に分けて検波する。検波後の離調に伴うノイズ波形成分Δfは、次式で示される。
Δfk =A(sqrt)sin(2π・fk ・t) (k=1〜n)……(3)
この式(3)で示される波形はCW(Continuous Wave )であり、A(sqrt)は、平方根の検波回路が持つ誤差関数である。この誤差関数は、検波時に使用される式(1)の平方根の値が近似値となることに起因するものである。
【0019】
上記の式(3)の波形を図2〜図5に示しており、n=4の場合であり、図2がk=1、図3がk=2、図4がk=3、図5がk=4の場合を、それぞれ示している。
【0020】
合成/平均化処理回路9は、各デジタル検波回路6−1〜6−nで得られた、離調に伴うノイズ波形成分Δfk を加算して平均化する。これら各波形は、図2〜図5に示すように、わずかに離調した周波数成分を有しており、ピークは一致しない。平均化処理は、式(4)により行われることになる。
【数1】
【0021】
この平均化処理後の出力波形を図6に示しており、各ノイズ成分波形のピークが互いにずれているために、波形のレベルが分散されていることが判る。すなわち、各周波数IF1 〜IFn に一定ノイズが含まれた波形を平均化することにより、各々のΔf成分が1/nとなってS/Nが改善されるのである。
【0022】
なお、図7は、例として、n=4の場合の4つの中間周波数を用いて、各中間周波数をデジタルAM検波した後の各波形の離調に伴うノイズレベルを示し、図8は合成/平均化処理後の離調に伴うノイズレベルを示したものである。
【0023】
上述したように、本発明では、受信機内にわずかに離調した複数のローカル周波数源を設け、受信電波を複数の中間周波数の信号に変換してデジタルAM検波するものであるが、その際に、発生する離調ノイズは、ローカル周波数の離調量に応じてそれぞれ異なる波形となる。一方、本来受信目的のAM信号はローカル周波数の如何にかかわらず一定である。そのために、これら出力を時間軸で加算合成して平均化処理を行えば、リアルタイムで離調ノイズ成分のみを低減できることになるのである。
【0024】
なお、上記の例においては、離調の度合を、それぞれ100Hzずつ離れたIF周波数となるようなローカル周波数を選んでいるが、一般的には、以下のように選ぶことになる。すなわち、2つの周波数の波形でピークが周期的に一致する場合に、これらを合成すると、ピークが加算されてノイズ抑圧(S/N改善)とはならないことから、2つの周波数の場合には、それらの周波数の整数倍では、位相の関係でピークが一致するケースが存在してこのようなケースを除くことが必要になる。そこで、一般に複数の周波数に適用する場合には、素数であればピークは一致しなくなるので、具体的な離調周波数の数値は、そのなかから選択することになる。
【0025】
本発明は、デジタルAM検波処理を利用したマルチモード対応無線受信機に適用でき、航空機と地上間、または航空機間でのデジタル通信装置や、VDL(VHFデジタルリンク)システムによる通信装置に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施の形態のブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態において、4つの中間周波数IF1 〜IF4 のうちIF1 を用いた場合におけるデジタルAM検波した場合の離調に伴うノイズ波形Δf1 を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態において、4つの中間周波数IF1 〜IF4 のうちIF2 を用いた場合におけるデジタルAM検波した場合の離調に伴うノイズ波形Δf2 を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態において、4つの中間周波数IF1 〜IF4 のうちIF3 を用いた場合におけるデジタルAM検波した場合の離調に伴うノイズ波形Δf3 を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態において、4つの中間周波数IF1 〜IF4 のうちIF4 を用いた場合におけるデジタルAM検波した場合の離調に伴うノイズ波形Δf4 を示す図である。
【図6】図2〜図5の各波形を合成/平均化した場合の離調に伴うノイズ波形を示す図である。
【図7】4つの中間周波数を用いた場合において、デジタルAM検波後の各波形の離調に伴うノイズレベルを示す図である。
【図8】図7の場合において、合成/平均化処理後の離調に伴うノイズレベルを示す図である。
【図9】従来技術を示すブロック図である。
【図10】デジタルAM検波方式(A/D変換後、IQ分離してAM検波)の理論図である。
【図11】デジタルAM検波方式で生じる近似誤差の概念図である。
【符号の説明】
【0027】
1 空中線
2−1〜2−n 周波数変換回路
3−1〜3−n 局部発振器
4−1〜4−n 中間周波数増幅器
5−1〜5−n A/D変換器
6−1〜6−n デジタル検波回路
7 D/A変換器
8 信号分岐回路
9 合成/平均化処理回路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信波を中間周波数に変換してデジタルAM検波するAM検波器であって、
それぞれが互いに異なりかつ本来のローカル周波数に対して離調した複数のローカル周波数を用いて、前記受信波をそれぞれ周波数変換する手段と、
これら周波数変換出力をそれぞれデジタルAM検波する手段と、
これら検波出力を平均化する手段とを含むことを特徴とするAM検波器。
【請求項2】
請求項1記載のAM検波器を含むことを特徴とする受信機。
【請求項3】
移動体通信に用いられることを特徴とする請求項2記載の受信機。
【請求項4】
受信波を中間周波数に変換してデジタルAM検波するAM検波方法であって、
それぞれが互いに異なりかつ本来のローカル周波数に対して離調した複数のローカル周波数を用いて、前記受信波をそれぞれ周波数変換するステップと、
これら周波数変換出力をそれぞれデジタルAM検波するステップと、
これら検波出力を平均化するステップとを含むことを特徴とするAM検波方法。
【請求項1】
受信波を中間周波数に変換してデジタルAM検波するAM検波器であって、
それぞれが互いに異なりかつ本来のローカル周波数に対して離調した複数のローカル周波数を用いて、前記受信波をそれぞれ周波数変換する手段と、
これら周波数変換出力をそれぞれデジタルAM検波する手段と、
これら検波出力を平均化する手段とを含むことを特徴とするAM検波器。
【請求項2】
請求項1記載のAM検波器を含むことを特徴とする受信機。
【請求項3】
移動体通信に用いられることを特徴とする請求項2記載の受信機。
【請求項4】
受信波を中間周波数に変換してデジタルAM検波するAM検波方法であって、
それぞれが互いに異なりかつ本来のローカル周波数に対して離調した複数のローカル周波数を用いて、前記受信波をそれぞれ周波数変換するステップと、
これら周波数変換出力をそれぞれデジタルAM検波するステップと、
これら検波出力を平均化するステップとを含むことを特徴とするAM検波方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−136007(P2008−136007A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−320989(P2006−320989)
【出願日】平成18年11月29日(2006.11.29)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年11月29日(2006.11.29)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】
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