説明

AM検波回路及びAM検波方法

【課題】検波信号の精度を損なうことなく処理量を削減して復調する。
【解決手段】AM検波回路(120)は、第1ゼロクロス検出部(122)と、第2ゼロクロス検出部(123)と、保持部(127)とを具備する。振幅変調(AM)された受信信号に基づいて、LowIF方式の複素IF信号が生成される。第1ゼロクロス検出部(122)は、その複素IF信号の実部を示すIF_I信号のゼロクロス点を検出する。第2ゼロクロス検出部(123)は、複素IF信号の虚部を示すIF_Q信号のゼロクロス点を検出する。保持部(127)は、第1ゼロクロス検出部がIF_I信号のゼロクロス点を検出したときのIF_Q信号の振幅の絶対値と、第2ゼロクロス検出部がIF_Q信号のゼロクロス点を検出したときのIF_I信号の振幅の絶対値とを保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振幅変調(AM)信号の検波回路、検波方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、AM(Amplitude Modulation)/FM(Frequency Modulation)チューナシステムでは、コイル・ダイオード等の部品を半導体チップに実装する、いわゆるシリコンチューナが一般化しつつあり、低価格化が進んでいる。更なる廉価化要求に対応するため、最低限必要な機能に絞り込み回路規模や演算量等の削減によるコスト低減が望まれている。
【0003】
RF(Radio Frequency)回路をCMOSプロセスなどにより実装するシリコンチューナでは、IF(Intermediate Frequency)信号として、複素数に分解して表わされる複素信号が用いられる。中間周波数は、従来のIF信号より低い周波数を使用するZeroIFあるいはLowIFといわれる周波数が用いられる。ZeroIFでは、変換されるIF信号は、スーパーヘテロダイン方式において一般に知られるIF信号の周波数(例えば455kHz)を0Hzとした場合のIF信号である。また、LowIFでは、IF信号は、スーパーヘテロダイン方式において一般に知られるIF信号の周波数より低い周波数のIF信号である。ZeroIF、LowIFいずれの場合も、複素信号は、複素数の実部として表される信号(以降、I信号と称す)と、複素数の虚部として表される信号(以降、Q信号と称す)との間に90度の位相差を持つ。一般的に、AM復調(検波)処理では、I信号、Q信号の極座標で表されるベクトルの大きさを求めることにより、AM検波信号が得られる。
【0004】
特開平09−284054号公報には、PSN(Phase Shift Networks)絶対値検波方式を改良したデジタルAM復調器が開示されている。絶対値加算された信号がサンプリング条件を満足せずとも、小さい歪みでクオリティの高い復調信号を得ることができる。包絡線検波方式では、復調に必要とされる平方根処理により実装上の回路規模が大きくなる。この技術は、その平方根処理を用いることなく、復調信号を得る方法である。
【0005】
図1は、その復調方法によるラジオ受信機の構成を示すブロック図である。ラジオ受信機は、AD変換器902と、移相回路903と、移相絶対値信号生成部920−1〜920−nと、加算回路904と、乗算回路905と、ハイパスフィルタ906と、D/Aコンバータ907とを具備する。移相絶対値信号生成部920−1〜920−nは、それぞれ、乗算回路912、913と、加算回路914と、絶対値変換回路915とを備える。また、乗算回路912、913に係数を供給する位相係数発生器910、911、乗算回路905に係数を供給する補正係数発生器916を備える。移相回路903と、乗算回路912、913と、加算回路914とは、PSNマトリクス909を形成する。入力信号inは、AD変換器902によりデジタル信号に変換され、移相回路903に供給される。移相回路903は、IF信号を複素信号のI信号とQ信号とに分離する。乗算回路912、913は、I信号とQ信号とに所望の位相差を持たせるために、I信号、Q信号各系統に独立に乗算する。加算回路914は、双方の乗算結果を加算する。絶対値変換回路915は、加算結果から絶対値を求める。加算回路904は、各系統の絶対値変換結果を加算する。乗算回路905は、加算結果の補正を行う。ハイパスフィルタ906は、補正後の信号からDC成分を除去する。D/Aコンバータ907は、DC成分除去によって得られたAM検波信号をアナログ信号outに変換する。
【0006】
このように、平方根処理を不要としている一方で、n組の移相絶対値信号生成部920は、それぞれ乗算回路912、913、加算回路914、絶対値変換回路915を備える。すなわち、I、Q各系統に独立した乗算を行う乗算回路と、各乗算結果を加算する加算回路と、絶対値を求める絶対値変換回路とを一組の要素とし、この要素n個によってAM検波信号を得る。nが2の場合、乗算回路4個、加算回路2個、絶対値変換回路2個、補正用乗算回路1個が必要となる。また、従来技術で得られる検波信号の精度は、n(移相絶対値信号生成部920の個数)すなわち回路規模とトレードオフの関係となっている。したがって、検波信号の精度を上げるためには、包絡線検波方式による実装と同等かそれ以上の回路規模が必要になり、回路規模の削減ができない。
【0007】
また、特開2010−178220号公報には、アンテナで受信したラジオ電波を中間周波数に変換して出力する同調回路と、同調回路からの中間周波数の信号を復調処理して復調信号を出力する復調回路とを備えるラジオ受信機が開示されている。このラジオ受信機は、復調回路に、中間周波数から同相成分の信号と直交成分の信号を生成するPLL回路を有する。PLL回路には、妨害局による混信時の中間周波数の、基準中間周波数からの周波数ずれを検出できる周波数カウンタが設けられる。周波数カウンタによって検出した周波数ずれを示す信号は、PLL回路に設けられる発振器に入力される。発振器の発振周波数は、周波数ずれを示す信号に基づいて補正される。この技術は、隣接局混信状態でのラジオ電波の受信時に混信した状態と非混信成分の信号を抽出して、隣接局による妨害を除去または回避して復調信号の音質の低下を防止するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平09−284054号公報
【特許文献2】特開2010−178220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、検波信号の精度を損なうことなく処理量を削減して復調するAM検波回路、AM検波方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下に、[発明を実施するための形態]で使用される番号・符号を用いて、課題を解決するための手段を説明する。これらの番号・符号は、[特許請求の範囲]の記載と[発明を実施するための形態]との対応関係を明らかにするために付加されたものである。ただし、それらの番号・符号を、[特許請求の範囲]に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いてはならない。
【0011】
本発明の観点では、AM検波回路(120)は、第1ゼロクロス検出部(122)と、第2ゼロクロス検出部(123)と、保持部(127)とを具備する。振幅変調(AM)された受信信号に基づいて、LowIF方式の複素IF信号が生成される。第1ゼロクロス検出部(122)は、その複素IF信号の実部を示すIF_I信号のゼロクロス点を検出する。第2ゼロクロス検出部(123)は、複素IF信号の虚部を示すIF_Q信号のゼロクロス点を検出する。保持部(127)は、第1ゼロクロス検出部がIF_I信号のゼロクロス点を検出したときのIF_Q信号の振幅の絶対値と、第2ゼロクロス検出部がIF_Q信号のゼロクロス点を検出したときのIF_I信号の振幅の絶対値とを保持する。このように、乗算・加算・平方根演算と等価なAM検波信号を得ることにより、検波信号の精度を損なうことなく、演算回路または処理を削減できる。
【0012】
本発明の他の観点では、AM検波方法は、振幅変調(AM)された受信信号を入力して、LowIF方式の複素中間周波数信号を生成するステップと、複素中間周波数信号の実部を示すIF_I信号と、虚部を示すIF_Q信号とにゼロクロス点を検出するステップと、IF_I信号にゼロクロス点が検出されるときにIF_Q信号の振幅の絶対値を保持するステップと、IF_Q信号にゼロクロス点が検出されるときにIF_I信号の振幅の絶対値を保持するステップとを具備する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、検波信号の精度を損なうことなく処理量を削減して復調するAM検波回路、AM検波方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、特開平09−284054号公報に開示されるデジタルAM復調器の構成を示す図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態に係るAM信号受信機の構成を示すブロック図である。
【図3】図3は、本発明の実施の形態に係る検波回路の構成を示すブロック図である。
【図4】図4は、AM変調なしの場合の複素IF信号の波形を示す図である。
【図5】図5は、AM変調なしの場合の複素IF信号を極座標表示した図である。
【図6】図6は、AM変調ありの場合の複素IF信号の波形を示す図である。
【図7】図7は、AM変調ありの場合の複素IF信号を極座標表示した図である。
【図8】図8は、本発明の実施の形態に係る検波回路の動作を示すタイミング図である。
【図9】図9は、発明の実施の形態に係るAM検波処理の状態遷移図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0016】
図2は、本発明の実施の形態に係るLowIF方式のAM信号受信機100の構成を示すブロック図である。AM信号受信機100は、高周波増幅器102と、周波数変換部110と、検波回路120と、低周波増幅器130とを具備する。高周波増幅器102は、低雑音増幅器であり、入力された信号を選択および増幅する。周波数変換部110は、局部発振器112と、混合器114、116とを備え、高周波増幅器102で増幅した受信信号を一定の低い周波数に変換する回路である。この低い周波数が中間周波数と呼ばれる。低周波増幅器130は、検波処理された信号を、スピーカ等を駆動できるように増幅する。
【0017】
検波回路120は、図3に示されるように、ゼロクロス検出(I)部122と、ゼロクロス検出(Q)部123と、選択信号生成部124と、選択部(MUX)125と、絶対値変換部(ABS)126と、保持部(HOLD)127と、論理和部128と、ハイパスフィルタ(HPF)129とを具備する。ゼロクロス検出(I)部122は、信号IF_Iの0点通過点(ゼロクロス)を検出し、検出タイミングを示す信号ZX_Iを生成する。ゼロクロス検出(Q)部123は、信号IF_Qの0点通過点を検出し、検出タイミングを示す信号ZX_Qを生成する。選択信号生成部124は、選択部125で用いる選択論理を指示する選択信号SELを生成する。選択部125は、信号IF_Iおよび信号IF_Qのうち、後段に伝播する信号を選択して出力する。絶対値変換部126は、入力信号IFMを絶対値変換して絶対値IF信号IFAを生成する。保持部127は、絶対値変換部126から出力される絶対値IF信号IFAの値を保持する。論理和部128は、保持部127で用いる保持タイミング信号ENを生成する。ハイパスフィルタ9は、入力信号のDC(直流)成分を除去してAM検波信号DTCを出力する。
【0018】
ゼロクロス検出(I)部122は、信号IF_Iを入力し、選択信号生成部124と論理和部128とに検出信号ZX_Iを出力する。ゼロクロス検出(Q)部123は、信号IF_Qを入力し、選択信号生成部124と論理和部128とに検出信号ZX_Qを出力する。選択信号生成部124は、ゼロクロス検出(I)部122から信号ZX_I、ゼロクロス検出(Q)部123から信号ZX_Qを入力し、選択部125に選択信号SELを出力する。選択部125は、信号IF_I、信号IF_Qおよび選択信号SELを入力し、絶対値変換部126に信号IFMを出力する。絶対値変換部126は、選択部125から信号IFMを入力し、保持部127に絶対値変換後の信号IFAを出力する。論理和部128は、ゼロクロス検出(I)部122から信号ZX_I、ゼロクロス検出(Q)部123から信号ZX_Qを入力し、値を保持するタイミングを示す保持タイミング信号ENを保持部127に出力する。保持部127は、絶対値変換部126から信号IFAを、論理和部128から保持タイミング信号ENを入力し、ハイパスフィルタ129へ信号VCTを出力する。ハイパスフィルタ(HPF)129は、保持部127から保持信号VCTを入力し、保持信号が有するDC(直流)成分を除去してAM検波信号DTCを出力する。
【0019】
図4、図5は、AM変調なし(変調度0%)の場合の複素IF信号(信号IF_I、信号IF_Q)の波形を示す図である。
【0020】
図4には、振幅を縦軸とし、時間を横軸とし、信号IF_I、信号IF_Qとして示される複素IF信号がプロットされる。信号IF_Iと信号IF_Qとは同じ周波数の信号であり、その間に90度の位相差を有する。
【0021】
図5には、図4と同じ信号が極座標にプロットされる。図5では、信号IF_Iの振幅を横軸とし、信号IF_Qの振幅を縦軸として示される。
【0022】
図4に示される時刻A1の状態は、図5の極座標では位置A2に示される。同じように、図4に示される時刻B1、C1、D1の状態は、図5極座標では位置B2、C2、D2に示される。IF信号の1周期は、極座標では1回転に相当する。
【0023】
また、信号IF_Iと信号IF_Qとは、同じ周波数の信号であって、常に90度の位相差を持つため、図5において極座標上の位置は一定の角速度で移動するように示される。すなわち、極座標位置A2から極座標位置B2、極座標位置B2から極座標位置C2、極座標位置C2から極座標位置D2、極座標位置D2から極座標位置A2のそれぞれに遷移する時間は、常に一定となる。
【0024】
次に、図6、図7は、本発明のAM変調あり(変調度>0%)の場合の複素IF信号(信号IF_I、信号IF_Q)の波形を示す図である。
【0025】
図6には、振幅を縦軸とし、時間を横軸とし、信号IF_I、信号IF_Qとして示される複素IF信号がプロットされる。図4に示される信号と同じように、信号IF_Iと信号IF_Qとは同じ周波数の信号であり、その間に90度の位相差を有する。
【0026】
図7には、図6と同じ信号が極座標にプロットされる。図7では、信号IF_Iの振幅を横軸とし、信号IF_Qの振幅を縦軸として示される。図6、図7に点線で示される波形は、AM変調なし(変調度0%)の場合の複素IF信号であり(図4、図5参照)、AM変調あり(変調度>0%)のIF信号は実線で示される。
【0027】
図6に示されるように、AM変調された信号は、周波数が一定であり、変調による変化が振幅方向にしか現れない。したがって、図7に示されるように、信号IF_I、信号IF_Qによって示される極座標の位置の遷移は、一定の角速度となる。図7では、AM検波信号は、ベクトルの大きさVに相当する。
【0028】
図8は、本実施の形態に係る検波回路120の動作を示すタイミング図である。ここに示される信号IF_I、信号IF_Qは、図6、図7で説明されたAM変調ありの場合の複素IF信号と同様である。
【0029】
図8に示されるタイミングAは、図6に示される時刻A1、図7に示される極座標位置A2に相当する。信号IF_Iが0点を通過し(図8(a))、ゼロクロス検出部122はゼロクロス検出信号ZX_Iを1クロック分Highにする(図8(c))。このとき、選択信号SELはLowレベルであり(図8(e))、選択部125は信号IF_Qのレベルを示す信号IFMを絶対値変換部126に出力し、絶対値変換部126はその絶対値変換後の信号IFAを保持部127に出力している。保持部127は、保持タイミング信号ENに応答して(図8(f))絶対値変換後の振幅の値を保持する(図8(g))。保持される値は、信号IF_Qの振幅の絶対値であり(図8(b))、極座標上のベクトルの大きさに等しい。保持部127から出力される信号VCTは、ハイパスフィルタ129によりDC成分が除去され、AM変調成分が抽出される(図8(h))。保持部127が振幅の値を保持した後、選択信号生成部124は、信号IF_Iを選択するように選択信号SELをHighレベルに切り替える(図8(e))。
【0030】
図8に示されるタイミングBは、図6に示される時刻B1、図7に示される極座標位置B2に相当する。信号IF_Qが0点を通過し(図8(b))、ゼロクロス検出部123はゼロクロス検出信号ZX_Qを1クロック分Highにする(図8(d))。このとき、選択信号SELはHighレベルであり(図8(e))、選択部125は信号IF_Iのレベルを示す信号IFMを絶対値変換部126に出力し、絶対値変換部126はその絶対値変換後の信号IFAを保持部127に出力している。保持部127は、保持タイミング信号ENに応答して(図8(f))絶対値変換後の振幅の値(VECT(a)、VECT(b)…)を保持する(図8(g))。保持される値は、信号IF_Iの振幅の絶対値であり(図8(a))、極座標上のベクトルの大きさに等しい。保持部127から出力される信号VCTは、ハイパスフィルタ129によりDC成分が除去され、AM変調成分が抽出される(図8(h))。保持部127が振幅の値を保持した後、選択信号生成部124は、信号IF_Qを選択するように選択信号SELをLowレベルに切り替える(図8(e))。タイミングC、タイミングDも同様に、保持部127は各タイミングにおけるベクトル大きさを保持し、ハイパスフィルタ129からAM変調成分を示す信号DTCが出力される(図8(h))。
【0031】
以降タイミングA〜Dの動作が繰り返される。信号IF_I、I信号F_Qは、一定周波数の信号であるので、ゼロクロス点が等間隔に出現し、常に一定のサンプリング時間で連続的に信号IF_I、信号IF_Qにより示されるベクトルの大きさが正確に得られる。ハイパスフィルタ129は、得られたベクトルの大きさを示す信号VCTからDC成分を除去してAM検波信号DTCを出力する。
【0032】
図9は、本発明のAM検波処理の状態遷移図である。
【0033】
(a) AM検波処理は、信号IF_Iにゼロクロス点を検出すると、イベント待ち状態S1から、IF_Q信号保持状態S2に遷移(T1)する。
(b) IF_Q信号保持状態S2では、AM検波処理は、信号IF_Qの絶対値を変数AMDETに保持する。その後イベント待ち状態S1に遷移(T2)する。
(c) AM検波処理は、信号IF_Qにゼロクロス点を検出すると、イベント待ち状態S1から、IF_I信号保持状態S3に遷移(T3)する。
(d) IF_I信号保持状態S3では、AM検波処理は、信号IF_Iの絶対値を変数AMDETに保持する。その後イベント待ち状態S1に遷移(T4)する。
(e) IF_Q信号保持状態S2とIF_I信号保持状態S1以外は、イベント待ち状態S1であり、IF_Iゼロクロス検出かIF_Qゼロクロス検出のイベントを待つ(T4)。
【0034】
図6、図7は、本発明のAM変調ありの場合の複素IF信号動作を示す図であり、図6、図7を用いてメカニズムを説明する。
【0035】
図7において、極座標位置A2、極座標位置B2、極座標位置C2、極座標位置D2のそれぞれの位置で得られるベクトルの大きさは、式(1)により求められ、ベクトルの大きさと等しい。
(ベクトルの大きさ)=√(I×Q) ・・・(1)
【0036】
例えば、図7極座標位置A2は、IF_I信号のゼロクロス位置、つまり、I=0であるから、ベクトルの大きさいは式(2)で表される。
√(0+Q)=√Q=Q ・・・(2)
【0037】
説明した通り、本発明のAM検波装置によれば、複素IF信号のI、Q信号各系統のゼロクロス検出回路122、123、選択信号生成回路124、選択回路125、絶対値変換部126、保持部127、論理和部128を有することにより、平方根処理と同じ程度の精度でAM検波信号を得ることが可能である。すなわち、乗算、加算のような複雑な演算処理あるいは時間を要する演算処理が不要であり、回路の簡素化ができる。なお、IF信号は、量子化されたデジタル信号とすることが好ましい。AD変換器は、周波数変換部110の前後どちらに設けられてもよい。周波数変換部110の前段にAD変換器を設ける場合、周波数変換部110もデジタル信号処理を行うことになる。
【0038】
本発明では、LowIFの周波数が低いため、時間分解能を検討しておく。AM検波として抽出すべき周波数帯域は、放送局間隔の単位10kHz(北米の場合、日本、欧州は9kHz)が上限である。一方LowIFとして一般に用いられる中間周波数は、数十kHz〜数百kHz程度である。本発明による構成では、IF信号の90度位相毎にゼロクロス点が出現するため、IF信号から得られるサンプル数は、IF信号周波数の4倍である。例えば、中間周波数fIF=10kHzの場合でも40kHzのサンプリング周波数となるため、AM検波処理に十分なサンプル数を得ることができる。したがって、低い周波数のLowIFにおいても時間分解能は十分である。
【0039】
以上、実施の形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施の形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0040】
100 AM信号受信機
102 高周波増幅器
110 周波数変換部
112 局部発振器
114、116 混合器
120 検波回路
122、123 ゼロクロス検出部
124 選択信号生成部
125 選択部(MUX)
126 絶対値変換部(ABS)
127 保持部(HOLD)
128 論理和部
129 ハイパスフィルタ(HPF)
130 低周波増幅器
902 AD変換器
903 移相回路
904 加算回路
905 乗算回路
906 ハイパスフィルタ
907 D/Aコンバータ
909 PSNマトリクス
910、911 位相係数発生器
912、913 乗算回路
914 加算回路
915 絶対値変換回路
916 補正係数発生器
920−1〜920−n 移相絶対値信号生成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振幅変調(AM)された受信信号に基づいて生成されるLowIF方式の複素IF信号の実部を示すIF_I信号のゼロクロス点を検出する第1ゼロクロス検出部と、
前記複素IF信号の虚部を示すIF_Q信号のゼロクロス点を検出する第2ゼロクロス検出部と、
前記第1ゼロクロス検出部が前記IF_I信号のゼロクロス点を検出したときの前記IF_Q信号の振幅の絶対値と、前記第2ゼロクロス検出部が前記IF_Q信号のゼロクロス点を検出したときの前記IF_I信号の振幅の絶対値とを保持する保持部と
を具備する
AM検波回路。
【請求項2】
前記保持部は、前記IF_Q信号のゼロクロス点および前記IF_I信号のゼロクロス点を検出するタイミングに同期して保持する信号の振幅の絶対値を出力し、
前記保持部から出力される信号の直流成分を除去するハイパスフィルタをさらに具備する
AM検波回路。
【請求項3】
前記IF_I信号と前記IF_Q信号とを入力し、前記ゼロクロス点の検出に応答して一方の信号を切り替えて出力する選択部と、
前記選択部から出力される信号の絶対値を算出する絶対値変換部と
を更に具備し、
前記選択部は、前記IF_I信号のゼロクロス点が検出されると前記IF_I信号を出力するように切り替え、前記IF_Q信号のゼロクロス点が検出されると前記IF_Q信号を出力するように切り替える
AM検波回路。
【請求項4】
前記IF_I信号及び前記IF_Q信号はデジタル信号であり、
前記IF_I信号及び前記IF_Q信号のゼロクロス点の検出と、前記IF_I信号及び前記IF_Q信号の振幅の絶対値の算出および保持とは、デジタル信号処理である
請求項1から請求項3のいずれかに記載のAM検波回路。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載のAM検波回路を備える
AM信号受信機。
【請求項6】
振幅変調(AM)された受信信号を入力して、LowIF方式の複素中間周波数信号を生成するステップと、
前記複素中間周波数信号の実部を示すIF_I信号と、虚部を示すIF_Q信号とにゼロクロス点を検出するステップと、
前記IF_I信号にゼロクロス点が検出されるときに前記IF_Q信号の振幅の絶対値を保持するステップと、
前記IF_Q信号にゼロクロス点が検出されるときに前記IF_I信号の振幅の絶対値を保持するステップと、
を具備する
AM検波方法。
【請求項7】
前記IF_I信号及び前記IF_Q信号にゼロクロス点が検出されるタイミングに同期して、前記保持される前記IF_I信号及びIF_Q信号の振幅の絶対値を出力するステップと、
前記同期して出力された信号の直流成分を除去して出力するステップと
をさらに具備する
請求項6に記載のAM検波方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−42211(P2013−42211A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−175987(P2011−175987)
【出願日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】