説明

ATMネットワークシステム、及び障害排除方法

【課題】ATMスイッチの交換処理を阻害する障害を自動的に排除できるATMネットワークシステムを提供できる。
【解決手段】本発明によるATMネットワークシステムは、セル101を送出する複数の処理装置1と、ATMスイッチ2と、ATMスイッチ2に接続される制御装置3とを具備する。ATMスイッチ2は、複数の処理装置1に対応して接続される複数のポート23を備え、複数のポート23間におけるセル101のスイッチングを行う。制御装置3は、入力されるセル101の流量106が所定の基準流量105を越えるポート23と、ポート23に対応する処理装置1との接続を切り離す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ATM(Anchronous Transfer Mode)ネットワークシステム、及びATMネットワークシステムにおける障害排除方法に関し、特に、ATMスイッチに接続された処理装置に発生する障害の監視及びその障害の排除方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の処理装置を収容したATM(Asynchronous Transfer Mode:非同期転送モード)スイッチでは、網内に送出されるセルの輻輳を避けるため、各処理装置から送出されるセルの流量を制限する方式が採用されている。すなわち、処理装置毎に設定された帯域幅を各ポート(通信チャネル)に割り当て、監視しているセルの流量に基づいて、この帯域幅を超えた量のセルを廃棄、又はバッファに一時格納する。このため、ATMスイッチは、各処理装置から送出されるセルの流量を監視するUPC(Usage Parameter Control ;使用量パラメタ制御装置)やNPC(Network Parameter Control ; ネットワークパラメタ制御装置)を備えている。
【0003】
しかしながら、処理装置のセルの生成や出力に係わる装置(例えばATMセルジェネレータ回路)に障害が発生すると、処理装置は、セルをATMスイッチに送出しつづける状態となる場合がある。このような場合、障害となった処理装置に上記のような制限を掛けることができないため、セルがATMスイッチに流入しつづけてしまう。ATMスイッチに接続されている他の処理装置のサービスに悪影響を与えることとなる。このため、他の処理装置が本来受信しないはずのセルを多量に受信し続け、処理能力が低下する。あるいは、ATMスイッチの通信を圧迫するため、セルの交換処理能力が低下する。
【0004】
このような障害を排除するためには、この障害が発生した処理装置をATMスイッチから物理的に切り離す必要がある。しかし、従来技術によるATMネットワークシステムでは、保守者によってこの切り離しが行われている。このため障害排除に時間がかかり、サービス品質が低下する時間が長期に渡り継続してしまう。
【0005】
以下に示されるように、ネットワークシステムにおける障害監視、障害排除に係る従来技術が記載されている。
【0006】
特開2005−236789号公報には、セル送信部から送出されるセルの流量が閾値以上である場合、当該セル送信部からのセルの送出を停止するATM通信装置が記載されている(特許文献1参照)。特許文献1に記載のATM通信装置では、CPUによる演算処理によって、閾値を超えるセルの流量を送出するセル送信部を特定する。この際、CPUは、送出されたセルをバッファされる際に得られたセルのヘッダに基づいて、セルの流量の測定とセル送信部の特定を行う。このため、特許文献1に記載のATM通信装置では、接続するデータ送信部が多い場合、CPUにおける処理量が増大し、セルの送出停止までの時間が増大する可能性がある。又、上記のようなATMスイッチを用いたATMネットワークシステムに適用すると、上記のような障害が発生した処理装置からはセルが送出されなくなるが、この処理装置に対して送信されるセルを停止することはできない。
【0007】
特開2001−339407号公報には、障害が発生した処理装置をシステムから切り離して、障害を排除するLAN通信システムが記載されている(特許文献2参照)。特許文献2に記載のLAN通信システムは、通常時に使用される処理装置と、予備の処理装置を備える。このシステムでは使用中の処理装置に障害が発生した場合、その処理装置の電源を切断し予備の処理装置に切り替える。しかし、このシステムでは障害発生を通知する異常通知が処理装置から発行されるため、異常通知が発行できないような障害が発生した場合、処理装置の切り替えができない。
【0008】
特開2004−096460号公報には、伝送路の故障発生時のポートの2重化切り替え動作を実行するイーサネットスイッチが記載されている(特許文献3参照)。特許文献3に記載のイーサネットスイッチは、通常時に使用される運用リンクに接続された第1ポートと、予備リンクに接続された第2ポートとを備え、運用リンクに障害が発生した場合、第1ポートの使用を停止し、第2リンクの使用に切り替える。しかし、このスイッチでは、ポートへ大量のデータが流入するような障害に対して対処する事が困難である。
【0009】
又、ATMスイッチに接続するモジュール(処理装置)の障害監視を周期的に実行する障害監視方法が特開平07−202902号公報に記載されている(特許文献4参照)。
【特許文献1】特開2005−236789号公報
【特許文献2】特開2001−339407号公報
【特許文献3】特開2004−096460号公報
【特許文献4】特開平07−202902号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、ATMスイッチの交換処理を阻害する障害を自動的に排除できるATMネットワークシステムを提供することである。
【0011】
本発明の他の目的は、ATMスイッチに接続される他の処理装置に対して影響を与える障害を排除できるATMネットワークシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
以下に、[発明を実施するための最良の形態]で使用される番号・符号を括弧付きで用いて、[課題を解決するための手段]を説明する。この番号・符号は、[特許請求の範囲]の記載と[発明を実施するための最良の形態]の記載との対応関係を明らかにするために付加されたものであるが、[特許請求の範囲]に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いてはならない。
【0013】
本発明によるATMネットワークシステムは、セル(101)を送出する複数の処理装置(1〜1、1’〜1’)と、ATM(Asynchronous Transfer Mode)スイッチ(2、2’)と、ATMスイッチ(2、2’)に接続される制御装置(3、3’)とを具備する。ATMスイッチ(2、2’)は、複数の処理装置(1〜1、1’〜1’)にそれぞれ接続される複数のポート(23〜23)を備え、複数のポート(23〜23)間におけるセル(101)のスイッチングを行う。制御装置(3、3’)は、入力されるセル(101)の流量(106)が所定の基準流量(105)を越えるポート(23)と、ポート(23)に対応する処理装置(1)との接続を切り離す。以上のように、ATMスイッチ(2、2’)におけるセル(101)の流量に基づいて処理装置(1、1’)で発生する障害を監視することができる。又、流量に異常がある場合、障害のある処理装置(1、1’)とATMスイッチ(2、2’)のポート(23)とを切り離すことで、障害の発生した処理装置(1、1’)が接続するポート(2、2’)へのセル(101)の出力及び入力を止めることができる。
【0014】
ATMスイッチ(2、2’)は、複数のポート(23〜23)にそれぞれ接続される複数の流量判定部(21〜21)を備えることが好ましい。複数の流量判定部(21〜21)の各々は、対応する複数のポート(23〜23)の各々に入力されるセル(101)の流量を測定し、測定流量(106)が所定の基準流量(105)を越える場合、制御装置(3、3’)に障害通知信号(104)を発行する。制御装置(3、3’)は障害通知信号(104)に応じて、測定流量(106)が基準流量(105)を越えるポート(23)と、このポート(23)に対応する処理装置(1、1’)との接続を切り離す。以上のように、本発明によれば、ポート(23)毎にセル(101)の流量を測定し、障害判定を実行する障害判定部(21)を設けているため、障害発生した処理装置(1、1’)を迅速に特定し、それぞれ独立して処理装置(1、1’)の切り離しを制御できる。
【0015】
第1の態様に係るATMネットワークシステムによれば、制御装置(3)は、処理装置(1)からポート(23)に入力されるセル(101)の流量が所定の基準流量(105)を越える場合、この処理装置(1)に電源停止信号(103)を発行する。処理装置(1)は、電源停止信号(103)に応答して自身への電力を供給を停止する。電力の供給されない処理装置(1)は、セル(101)をATMスイッチ(2)に転送できなくなる。このため、ATMスイッチ(1)への異常セルの流入を止めることができ、他の処理装置(1)が実施する通信サービスやATMスイッチ(2)における交換処理に等に影響を与える障害を排除することができる。
【0016】
又、複数の流量判定部(21〜21)と制御部(3)との間に設けられる障害通知用バス(4)と、制御装置(3)と複数の処理装置(1〜1)との間に設けられる電源制御用バス(5)とを更に具備することが好ましい。処理装置(1)から入力されるセル(101)の測定流量(106)が基準流量(106)を越えると判定した流量判定部(21)は、障害通知用バス(4)を介して制御部(3)に障害通知信号(104)を発行する。制御装置(3)は障害通知信号(104)に基づき、電源用制御バス(5)を介して処理装置(1)に対し電源停止信号(103)を発行する。本発明によれば、障害通知用バス(4)と電源制御用バス(5)をそれぞれ通信線に対し独立に設けることで、処理装置間の通信疎通状況に影響されずに障害の監視及び電源の制御が行える。
【0017】
第2の態様に係るATMネットワークシステムによれば、制御装置(3’)は、処理装置(1’)からポート(23)に入力されるセル(101)の流量(106)が所定の基準流量(105)を越える場合、使用ポート制御信号(107)をATMスイッチ(2’)に発行する。ATMスイッチ(2’)は、使用ポート制御信号(107)に基づきポート(23)の使用を停止する。このように障害が発生した処理装置(1’)に接続されるポート(23)を使用しないことで、障害対象の処理装置(1’)から送出されるセル(101)の流入を防ぐことができる。
【0018】
又、複数の流量判定部(21〜21)と制御部(3’)との間に設けられる障害通知用バス(4)と、制御装置(3’)と複数の処理装置(1’〜1’)との間に設けられるスイッチ制御用バス(5’)とを更に具備することが好ましい。測定流量(106)が基準流量(105)を越えると判定した流量判定部(21)は、障害通知用バス(4)を介して制御部(3’)に障害通知信号(104)を発行する。制御装置(3’)は障害通知信号(104)に応答して、スイッチ制御用バス(5’)を介してATMスイッチ(2’)に対し使用ポート制御信号(107)を発行する。本発明によれば、障害通知用バス(4)とスイッチ制御用バス(5’)をそれぞれ通信線に対し独立に設けることで、処理装置間の通信疎通状況に影響されずに障害の監視及び電源の制御が行える。
【0019】
以上のように、本発明によるATMネットワークシステムによれば、障害となった処理装置(1、1’)がATMスイッチ(2、2’)を介して、他の処理装置のサービス停止、などの悪影響を与える可能性がある。この影響を自動的に抑止することで、サービス停止時間を極力短くすることができる。又、1つの処理装置(1)が障害となり、その影響で他の処理装置(1)のサービス品質が低下してしまうことを防止することができる
【発明の効果】
【0020】
本発明によるATMネットワークシステムは、ATMスイッチの交換処理を阻害する障害を自動的に排除することができる。
【0021】
又、ATMスイッチに接続される他の処理装置に対して影響を与える障害を排除することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、添付図面を参照して、本発明によるATMネットワークシステムの実施の形態が説明される。図面において同一、又は類似の参照符号は、同一、類似、又は等価な構成要素を示している。又、同一符号の構成が複数の場合、その符号に下付の符号を付しその構成を総称する場合は、下付符号のない符号で示される。
【0023】
(第1の実施の形態)
以下、図1及び図2を参照して、本発明によるATMネットワークシステムの第1の実施の形態が説明される。
(第1の実施の形態におけるATMネットワークシステムの構成)
図1を参照して本発明によるATMネットワークシステムの第1の実施の形態における構成が説明される。図1は、本発明によるATMネットワークシステムの第1の実施の形態における構成を示すブロック図である。本発明によるATMネットワークシステムは、複数の処理装置1〜1と、ATMスイッチ2と、制御装置3とを具備する。ATMスイッチ2は複数の処理装置1〜1に接続され、複数の処理装置1〜1間で伝送されるデータの交換処理を実行する。又、ATMネットワークシステムは、制御装置3に接続された障害通知用バス4と、電源制御用バス5とを具備している。処理装置1〜1は障害通知用バス4及び電源制御用バスを介して制御装置3に接続されている。又、ATMスイッチ2は障害通知用バス4を介して制御装置3に接続されている。制御装置3は、障害通知用バス4を介して通知される障害通知信号104及び104’に応答して、処理装置1の電源を制御するコンピュータ装置である。
【0024】
ATMスイッチ2は、処理装置1〜1のそれぞれに対応して接続される複数の流量判定部21〜21と、流量判定部21〜21のそれぞれに対応して接続される複数のポート23〜23と、ポート23間におけるATMセル101の交換処理を行うスイッチ部22とを備える。ここで、ATMスイッチ2に接続される処理装置1の数は3台とは限らず、ATMスイッチ2が備えるポート23の数や流量判定部21の数もこの限りではない。複数のポート23〜23のそれぞれは、仮想チャネル識別子や仮想パス識別子に例示される回線番号に対応付けられている。スイッチ部22は、処理装置1から送信されるATMセル101のヘッダに含まれる宛て先回線番号に従ってスイッチングし、回線番号に対応するポート23に接続している処理装置1に転送する。処理装置1は、CPUとメモリとを備えるコンピュータ装置である。処理装置1〜1の各々は接続先のポート23〜23の回線番号が設定され、対応するポート23に接続される。例えば、処理装置1は、ヘッダの回線番号「000」に対応するポート23に接続される。
【0025】
図2は、処理装置1と流量判定部21の構成を示すブロック図である。図2を参照して、処理装置1は、電源制御部11と、電源12と、ATM生成部と、ATMセル送受信部とを備える。ATMセル生成部13は、図示しないCPUとメモリによって構成され、他の処理装置に転送するデータからATMセル101を生成する。ATMセル生成部13は、他の処理装置1に転送するデータを固定長のデータに分割し、宛て先の回線番号を含むヘッダを付与してATMセル101を生成する。ATMセル送受信部14は、ATMスイッチ2に通信接続し、ATMセル101の送受信を制御する。
【0026】
ここで、ATMセル生成部13及びATM送受信部14は、電源12から供給される電源によって動作する。電源12は、電源制御部11が発行する電源制御信号103に応答して、ATMセル生成部13及びATM送受信部14に対して供給する電源のオン・オフを決定する。電源制御部11は、電源制御用バス5を介して発行される命令をデコードして、電源12に対し電源制御信号103を発行する。又、制御装置3から送信される電源停止信号102に応答して電源12を停止させるための電源制御信号103を発行する。
【0027】
制御装置3は、各処理装置1とATMスイッチ2から、障害通知用バス4を介して通知される障害通知信号104及び104’によって、各処理装置1及びATMスイッチ2で発生する障害を監視するコンピュータ装置である。制御装置3は、障害通知信号104及び104’をトリガに、電源制御用バス5を介して、電源停止信号102を発行し処理装置の電源を制御する。ここで、障害通知信号104には、障害が発生した処理装置1を識別する識別子(例えば、回線番号)が含まれている。制御装置3は、障害通知信号104に含まれる識別子に基づき障害が発生した処理装置1を特定する。又、その特定した処理装置1に電源停止信号102を電源制御用バス5に送出する。
【0028】
ATMスイッチ2から発行される障害通知信号104及び104’には、障害情報として障害の種類に対応した障害内容識別子や、障害規模を示す情報が含まれても良い。例えば、障害通知信号104には、スイッチ部22の各ポート23に入力されたATMセル101の流量の測定値(流量測定値106)が含まれても良い。この場合、制御部3は、このような障害通知信号104に含まれる障害情報や、障害発生した処理装置の識別子に基づき、障害処理装置やその障害内容を表示、あるいは通知する装置を更に具備することが好ましい。制御部3が、障害通知信号104に含まれる障害情報を音声や文字データによって通知することで、監視者は、障害排除のため切り離した障害処理装置やその障害内容を把握することができる。
【0029】
ATMスイッチ2は、ポート23毎に接続され、接続するポート23に入力されるATMセル101の流量を計測する流量判定部21を備えている。図2を参照して、流量判定部23は、流量測定部211と、基準値格納部212と、比較部212とを備えている。流量測定部211は、一定時間を通知するタイマと、接続しているポート23に入力されたATMセル101のヘッダの数をカウントするカウンタとを備える。カウンタは一定時間の間に入力されるヘッダの総数を計数する。流量測定部211は、タイマから通知される一定時間毎に、カウンタで計数されたヘッダの総数をATMセル101の流量測定値106として比較部213に通知する。基準値格納部212は、障害判定に使用する流量基準値105が格納された記憶装置である。流量基準値105は、例えば、帯域制御やパス制御を規定するATMセル101の流量に基づいて設定される障害判定用の閾値である。具体的には、帯域制御を規定する送出量に障害と見なす閾値を加えた値が流量基準値105として設定される。流量基準値105は、ポート23毎に異なる値が設定されても同じ値が設定されても構わない。又、流量基準値105の設定方法は、事前にATMネットワークシステムの保守者によって設定されても良いし、ATMスイッチ2に通信接続した処理装置1から申告される設定値に基づいて設定されても良い。
【0030】
比較部213は流量測定値106と流量基準値105とを比較し、当該ポート23に接続された処理装置1における障害の有無を判定する。又、流量異常と判定すると、そのポートの回線番号を付加した障害通知信号104を制御部3に送信する。この際、測定流量106を障害通知信号104に含ませても構わない。詳細には、比較部213は流量測定値106と流量基準値105との大小を比較する比較器と、流量測定値106が流量基準値105より大きい場合、対応するポートの回線番号を付加した障害通知信号104を制御部3に送信する通知回路とを備える。又、比較部213における判定処理は、ATMスイッチ2内に設けられたCPU(図示なし)による演算処理によって行われても構わない。この場合、流量基準値106が各ポート23に対応付けられて、図示しない記憶装置に格納されていることが好ましい。CPUは各ポート23の流量判定部211から送信される流量測定値106に応答して記憶装置から当該ポート23に対応する流量基準値23を抽出し、比較処理を行う。
【0031】
(動作)
図1及び図2を参照して、本発明によるATMネットワークシステムの第1の実施の形態における障害排除動作が説明される。
【0032】
ATMスイッチ2に接続された処理装置1〜1の各々のATMセル送受信部14は、ATMセル101の送出量(例えば帯域制御を規定する送出量)をATMスイッチ2に申告する。ATMスイッチ2は、申告された送出量に所定の閾値を加えて流量基準値105を算出し、送信元の回線番号に対応する基準値格納部212に格納する。尚、処理装置1は、ATMセル101の送出量の申告とともに流量基準値105を送信しても構わない。この場合、ATMスイッチ2は送信された流量基準値105を対応する基準値格納部212に直接格納する。流量基準値105が設定されると処理装置1は運用状態となり、ATMセル101の送受信を開始する。又、ATMスイッチ2は、処理装置1から申告されたATMセル101の送出量に基づき、図示しないUPCやNPCによってATMセル101の廃棄やスムージングによる転送処理等を行うことで帯域制御やパス制御を実行する。
【0033】
ここで、処理装置1において、障害発生を通知可能な障害が発生した場合の障害排除方法が説明される。通知可能な障害とは、例えば処理装置1内部のバスやデータ通路、ATMセル生成部13におけるパリティエラ、パイロットパタンエラ、クロック断等である。処理装置1〜1が運用されている間にこのような障害が発生した場合、障害が発生した処理装置1は障害通知用バス4を介して制御装置3に障害発生を通知する。処理装置1は、自身の識別番号、障害内容を含む障害通知信号104’を制御装置3に送信する。制御装置3は、障害通知信号104’に含まれる情報に基づき、障害が発生した処理装置名や障害内容を表示する。又、障害内容を参照し、障害が発生した処理装置を切り離す必要があるかどうかを判断する。切り離す必要がある場合、制御装置3は電源停止信号102を電源制御用バス5を介して障害の発生した処理装置1に発行する。電源停止信号102を受信した処理装置1の電源制御部11は、電源12に電源制御信号103を出力して電源12を停止させる。尚、障害内容に応じて処理装置の切り離しの要否を判定するため、制御装置3は障害内容と障害排除方法(例えば処理装置1の電源断)とが対応付けられたテーブルを保持していることが好ましい。
【0034】
次に、処理装置1において、障害発生を通知できないような障害が発生した場合の障害排除方法が説明される。本実施の形態では、処理装置1のATMセル生成部13に障害が発生した場合について説明される。運用状態にある処理装置1において、ATMセル生成部13が誤動作し、フルレートでATMセル101を送信し続ける状態になる場合がある。このような障害が発生した場合、通常、処理装置1は障害が発生したことを認識せず、障害通知信号104’を制御装置3に送信しない。又、ATMスイッチ2に異常な量のATMセル101が流入すると、交換処理能力は低下し、他の処理装置1、1に対する通信サービスに悪影響を及ぼす。
【0035】
一方、流量判定部21は、処理装置1からポート23に入力されるATMセル101の流量を監視している。流量判定部21の流量測定部211は一定時間毎のATMセル数を流量測定値106として比較部213に出力する。比較部213は、流量測定値106を取得すると、基準値格納部212から流量基準値105を取得して比較する。流量基準値105より流量測定値106が小さい場合、障害なしと判定しATM流量の監視を続ける。しかし、流量測定値106が流量基準値105より大きい場合、対象処理装置1に障害が発生したと判定し、障害通知信号104を発行する。すなわち、上記のような障害がATMセル生成部13に発生した場合、ATMスイッチ2において障害判定や障害通知を自動実行することができる。
【0036】
比較部213は障害を検出すると、監視対象の回線番号及び流量測定値106を含めた障害通知信号104を、障害通知用バス4を介して制御装置3に送信する。制御装置3は、送信された障害通知信号104に含まれた回線番号に対応する処理装置を特定する。この際、制御装置3は、回線番号と処理装置を特定する識別子が対応付けられたテーブルを保持していることが好ましい。制御装置3は、特定した処理装置1に電源停止信号102を発行する。電源停止信号102を受信した処理装置1の電源制御部11は、電源12に電源制御信号103を発行して電源12からATMセル生成部13への電力を供給を停止させる。又、ATMスイッチ2’は、ポート23宛ての通信を遮断したことを他の処理装置1’、1’に通知することが好ましい。この際、通知を受けた処理装置1’、1’は、処理装置1'宛てのATMセル101の送信を停止する。
【0037】
以上のような制御により、処理装置1から不正なATMセルは送出されなくなり、異常なATMセルの送出によって通信を阻害されていた他の処理装置1及び1のサービスや、ATMスイッチ2における交換処理サービスを改善することができる。
【0038】
本発明によるATMネットワークシステムは、処理装置1において発生し、処理装置1が通知できない障害が発生した場合でも、障害処理装置を特定でき、且つ自動的にその処理装置1をシステムから切り離すことができる。又、障害通知用バス4と電源制御用バス5とが独立に設けられているため、処理装置1間における通信疎通状態の影響を受けることなく障害通知や電源制御を実行できる。
【0039】
(第2の実施の形態)
以下、図3及び図4を参照して、本発明によるATMネットワークシステムの第2の実施の形態が説明される。第1の実施の形態と同一符号の構成は、動作や機能が同様であるので説明は省略される。
【0040】
(第2の実施の形態におけるATMネットワークシステムの構成)
図3を参照して本発明によるATMネットワークシステムの第2の実施の形態における構成が説明される。図3は、本発明によるATMネットワークシステムの第3の実施の形態における構成を示すブロック図である。本発明によるATMネットワークシステムは、複数の処理装置1’〜1’と、ATMスイッチ2’と、制御装置3’とを具備する。又、処理装置1’〜1’と制御装置3’との間は、障害通知用バス4で接続されている。更に、ATMスイッチ2’と制御装置3’との間は、障害通知用バス4及びスイッチ制御用バス5’で接続されている。第2の実施の形態におけるATMネットワークシステムでは、障害対象の処理装置1’に接続されたATMスイッチ2’のポート23の開け閉めを制御して障害対象の処理装置1’をATMスイッチ2’から切り離す。
【0041】
ATMスイッチ2’は第1の実施の形態におけるATMスイッチ2のスイッチ部22に替えて、スイッチ制御用バス5’に接続されるスイッチ部22’を備える構成である。スイッチ部22’は、処理装置1’から送信されるATMセル101のヘッダに含まれる宛て先回線番号に従ってスイッチングし、回線番号に対応するポート23に接続している処理装置1に転送する。又、スイッチ制御用バス5’を介して制御装置3’出力される使用ポート制御信号107に応答して障害対象のポート23を閉じ、このポート23への入出力を停止する。
【0042】
処理装置1’は、ATMセル生成部13とATMセル送受信部14とを備え、第1の実施の形態における電源制御部11を備えないコンピュータ装置である。処理装置1’〜1’の各々は接続先のポート23〜23の回線番号が設定され、対応するポート23に接続される。例えば、処理装置1’は、ヘッダの回線番号「000」に対応するポート23に接続される。
【0043】
制御部3’は、各処理装置1’とATMスイッチ2’から、障害通知用バス4を介して通知される障害通知信号104及び104’によって、各処理装置1’及びATMスイッチ2’で発生する障害を監視するコンピュータ装置である。制御装置3’は、障害通知信号104をトリガに、スイッチ制御用バス5’を介して使用ポート制御信号107を発行し、スイッチ部22’におけるポート23の使用を制御する。ここで、障害通知信号104には、障害が発生した処理装置1’に接続されたポートの回線番号が含まれている。制御装置3は、障害通知信号104に含まれる回線番号に基づき障害が発生したポート23を特定する。
【0044】
(動作)
図3及び図4を参照して、本発明によるATMネットワークシステムの第2の実施の形態における障害排除動作が説明される。
ATMスイッチ2’に接続された処理装置1’〜1’の各々のATMセル送受信部14は、ATMセル101の送出量(例えば帯域制御を規定する送出量)をATMスイッチ2’に申告する。ATMスイッチ2’は、申告された送出量に所定の閾値を加えて流量基準値105を算出し、送信元の回線番号に対応する基準値格納部212に格納する。尚、処理装置1’は、ATMセル101の送出量の申告とともに流量基準値105’を送信しても構わない。この場合、ATMスイッチ2’は送信された流量基準値105’を対応する基準値格納部212に直接格納する。流量基準値105が設定されると処理装置1’は運用状態となり、ATMセル101の送受信を開始する。又、ATMスイッチ2’は、処理装置1’から申告されたATMセル101の送出量に基づきATMセル101の廃棄やスムージングによる転送処理等を行うことで帯域制御やパス制御を実行する。
【0045】
ここで、処理装置1’において、障害発生を通知できないような障害が発生した場合の障害排除方法が説明される。本実施の形態では、処理装置1’のATMセル生成部13に障害が発生した場合について説明される。運用状態にある処理装置1’において、ATMセル生成部13が大量のATMセル101を送信し続ける状態になる場合がある。このような障害が発生した場合、通常、処理装置1’は障害が発生したことを認識せず、障害を制御装置3に通知することができない。
【0046】
一方、流量判定部21は、処理装置1’からポート23に入力されるATMセル101の流量を監視している。流量判定部21は、流量測定値106が流量基準値105より大きい場合、対象処理装置1に障害が発生したと判定し、障害通知信号104を発行する。比較部213は障害を検出すると、監視対象の回線番号及び流量測定値106を含めた障害通知信号104を、障害通知用バス4を介して制御装置3に送信する。制御装置3は、送信された障害通知信号104に含まれた回線番号に対応するポート23を特定する。制御装置3は、特定したポート23を閉じるための使用ポート制御信号107を発行する。使用ポート制御信号107を受け取ったスイッチ部22’は、使用ポート制御信号107で指定されたポート23に至るスイッチ回路を閉じる。又、ATMスイッチ2’は、ポート23宛ての通信を遮断したことを他の処理装置1’、1’に通知することが好ましい。この際、通知を受けた処理装置1’、1’は、処理装置1'宛てのATMセル101の送信を停止する。
【0047】
以上のような制御により、処理装置1’からATMスイッチ2’に入力される不正なATMセルはなくなり、異常なATMセルの送出によって通信を阻害されていた他の処理装置1’及び1’のサービスや、ATMスイッチ2’における交換処理サービスを改善することができる。
【0048】
第2の実施の形態におけるATMネットワークシステムは、処理装置1’において発生し、処理装置1’が通知できない障害が発生した場合でも、障害処理装置に接続するポートを特定でき、且つ自動的にその処理装置1’をシステムから切り離すことができる。又、障害通知用バス4とスイッチ制御用バス5’とが独立に設けられているため、処理装置1’間における通信疎通状態の影響を受けることなく障害通知やポートの制御を実行できる。
【0049】
以上、本発明によるATMネットワークシステムによれば、流量判定部23をポート毎に設けているため、ポートに接続される処理装置毎の障害判定を至短時間に行うことができる。又、ATMスイッチにおけるATMの流量に基づいて処理装置の障害を検出し、障害対象の処理装置の切り離しを行うため、障害状態を判断できない処理装置や、障害発生を通知不能な処理装置を排除することができる。
【0050】
以上、本発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は上記実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の変更があっても本発明に含まれる。本実施の形態における制御装置は、ATMスイッチの外部に設けられているがATMスイッチ内に設けられても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】図1は、本発明によるATMネットワークシステムの第1の実施の形態における構成図である。
【図2】図2は、本発明によるATMネットワークシステムの第1の実施の形態における信号の流れを示すブロック図である。
【図3】図3は、本発明によるATMネットワークシステムの第2の実施の形態における構成図である。
【図4】図4は、本発明によるATMネットワークシステムの第2の実施の形態における信号の流れを示すブロック図である。
【符号の説明】
【0052】
1、1〜1、1、1’〜1’:処理装置
2、2’:ATMスイッチ
3、3’:制御装置
4:障害通知用バス
5:電源制御用バス
5’:スイッチ制御用バス
11:電源制御部
12:電源
13:ATMセル生成部
14:ATMセル送受信部
21、21〜21:流量判定部
22、22’:スイッチ部
23、23〜23:ポート
211:流量判定部
212:基準値格納部
213:比較部
101:ATMセル
102:電源停止信号
103:電源制御信号
104、104’:障害通知信号
105:流量基準値
106:流量測定値
107:使用ポート制御信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルを送出する複数の処理装置と、
前記複数の処理装置にそれぞれ接続される複数のポートを備え、前記複数のポート間における前記セルのスイッチングを行うATM(Asynchronous Transfer Mode)スイッチと、
前記ATMスイッチに接続される制御装置とを具備し、
前記制御装置は、入力されるセルの流量が所定の基準流量を越えるポートと、前記ポートに対応する処理装置との接続を切り離す
ATMネットワークシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のATMネットワークシステムにおいて、
前記ATMスイッチは、前記複数のポートにそれぞれ接続される複数の流量判定部を備え、
前記複数の流量判定部の各々は、対応する前記複数のポートの各々に入力されるセルの流量を測定し、前記測定流量が所定の基準流量を越える場合、前記制御装置に障害通知信号を発行し、
前記制御装置は前記障害通知信号に応じて、前記測定流量が前記基準流量を越えるポートと、前記ポートに対応する処理装置との接続を切り離す
ATMネットワークシステム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のATMネットワークシステムにおいて、
前記制御装置は、処理装置からポートに入力されるセルの流量が所定の基準流量を越える場合、前記処理装置に電源停止信号を発行し、
前記処理装置は、前記電源停止信号に応答して自身への電力を供給を停止する
ATMネットワークシステム。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のATMネットワークシステムにおいて、
前記制御装置は、処理装置からポートに入力されるセルの流量が所定の基準流量を越える場合、使用ポート制御信号を前記ATMスイッチに発行し、
前記ATMスイッチは、前記使用ポート制御信号に基づき前記ポートの使用を停止する
ATMネットワークシステム。
【請求項5】
請求項3に記載のATMネットワークシステムにおいて、
前記複数の流量判定部と前記制御部との間に設けられる障害通知用バスと、
前記制御装置と前記複数の処理装置との間に設けられる電源制御用バスとを更に具備し、
処理装置から入力されるセルの測定流量が前記基準流量を越えると判定した流量判定部は、前記障害通知用バスを介して前記制御部に前記障害通知信号を発行し、
前記制御装置は前記障害通知信号に基づき、前記電源用制御バスを介して前記処理装置に対し前記電源停止信号を発行する
ATMネットワークシステム。
【請求項6】
請求項4に記載のATMネットワークシステムにおいて、
前記複数の流量判定部と前記制御部との間に設けられる障害通知用バスと、
前記制御装置と前記複数の処理装置との間に設けられるスイッチ制御用バスとを更に具備し、
前記測定流量が前記基準流量を越えると判定した流量判定部は、前記障害通知用バスを介して前記制御部に前記障害通知信号を発行し、
前記制御装置は前記障害通知信号に応答して、前記スイッチ制御用バスを介して前記ATMスイッチに対し前記使用ポート制御信号を発行する
ATMネットワークシステム。
【請求項7】
複数の処理装置に接続された複数のポート間でセルのスイッチングを行うATM(Asynchronous Transfer Mode)スイッチにおいて、前記複数のポートの各々に入力されるセルの流量を測定するステップと、
前記測定流量が所定の基準流量を越えるポートと、前記ポートに対応する処理装置との接続を切り離すステップとを具備する
障害排除方法。
【請求項8】
請求項7に記載の障害排除方法において、
前記流量が所定の基準流量を越えるポートに接続する処理装置に対し電源停止信号を発行するステップと、
前記処理装置が、前記電源停止信号に応答して自身への電力の供給を停止するステップとを備える
障害排除方法。
【請求項9】
請求項7に記載の障害排除方法において、
前記流量が所定の基準流量を越える場合、前記ATMスイッチに使用ポート制御信号を発行するステップと、
前記ATMスイッチが、前記使用ポート制御信号に応答して前記流量が所定の閾値を越えたポートの使用を停止するステップとを備える
障害排除方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−214796(P2007−214796A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−31400(P2006−31400)
【出願日】平成18年2月8日(2006.2.8)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.イーサネット
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】