説明

Anthozoa綱の非生物発光性種由来の蛍光タンパク質、そのようなタンパク質をコードする遺伝子、およびそれらの使用

【課題】新規な蛍光タンパク質、そのタンパク質をコードするDNA配列を同定する方法、およびそれらの使用を提供することを課題とする。
【解決手段】上記課題は、Anthozoa綱由来の非生物発光生物由来の新規な蛍光タンパク質(具体的には、amFP486、cFP484、zFP506、zFP538、dsFP483、drFP583、asFP600、dgFP512、およびdmFP592からなる群より選択される、単離および精製された蛍光タンパク質)を提供することにより解決された。その蛍光タンパク質をコードする核酸配列を同定する方法、さらにそのタンパク質を分析する方法が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
本発明は、分子生物学の分野に関する。より具体的には、本発明は、新規な蛍光タンパク質、そのタンパク質をコードするDNA配列を同定する方法、およびそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
(関連技術の説明)
蛍光標識は、目的のタンパク質、細胞、または生物を標識するための特に有用なツールである。伝統的に、目的のタンパク質は精製され、次いで蛍光団誘導体に共有結合的に結合体化される。インビボ研究のために、次いで、タンパク質−色素複合体が、マイクロピペッティングまたは可逆的透過化処理の方法を使用して、目的の細胞に挿入される。しかし、色素吸着工程および色素挿入工程は、プロセスを、骨が折れかつ制御することが困難にする。目的のタンパク質を標識する代替的な方法は、目的のタンパク質を発現する遺伝子を、マーカーを発現する遺伝子に連結または融合させ、次いで融合産物を発現することである。タンパク質標識のこの方法のための代表的なマーカーは、β−ガラクトシダーゼ、ホタルルシフェラーゼおよび細菌ルシフェラーゼである。しかし、これらのマーカーは、外因性の基質または補因子を必要とし、従ってインビボ研究のためには用途が限定される。
【0003】
外因性補因子または基質を必要としないマーカーは、クラゲであるAequorea victoriaのグリーン蛍光タンパク質(GFP)であり、このタンパク質は、395nmに最大励起を有し、475nmに第2の励起ピークおよび510nmに最大発光を有する。GFPは、238アミノ酸タンパク質であり、アミノ酸65〜67が発色団の形成に関与する。
【0004】
遺伝子発現およびタンパク質局在の研究のためのGFPの使用は、非特許文献1、および非特許文献2によって詳細に議論される。さらに、非特許文献3は、細胞中で細胞内オルガネラを可視化するためのツールとしての野生型GFPの使用を議論するが、一方非特許文献4は、野生型GFPを使用して、分泌経路に沿ったタンパク質輸送の可視化を報告する。植物細胞におけるGFPの発現は、非特許文献5によって議論されるが、一方Drosophila胚におけるGFP発現は、非特許文献6によって記載される。
【0005】
野生型GFPおよび変異型GFP S65Tの結晶構造は、GFPの三次元構造がバレルに類似することを示す(非特許文献7;非特許文献8)。バレルは、コンパクトな構造中のβシートからなり、ここで、その中心において、発色団を含有するαヘリックスは、バレルによって遮蔽されている。コンパクトな構造は、GFPを、多様な条件下および/または厳しい条件下(例えば、プロテアーゼ処理)で非常に安定にして、一般に、GFPを極度に有用なレポーターにする。しかし、GFPの安定性は、短期間の事象または反復する事象を決定することについて、GFPを最適より下にする。
【0006】
多数の研究が行われており、種々の研究目的のために、GFPの特性を改善し、そして、有用かつ最適化されたGFP試薬を生成する。GFPの新しいバージョンが開発され(例えば、「ヒト化」されたGFP DNA)、そのタンパク質産物が哺乳動物細胞中で合成を増大される(非特許文献9;非特許文献10)。そのような1つのヒト化タンパク質は、「増強されたグリーン蛍光タンパク質(EGFP)」である。GFPへの他の変異は、ブルー光、シアン光、およびイエロー−グリーン光放射バージョンを生じた。GFPの大きな有用性に関わらず、GFPに類似しているかまたは異なる特性を有する他の蛍光タンパク質が、当該分野において有用である。新規な蛍光タンパク質は、可能な新規な色を生じるか、またはpH依存性の蛍光を生成する。より大きな励起についての新規なスペクトルおよびより良好な適合性に基づいて、新規な蛍光タンパク質の他の有用な利点には、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)の可能性を含む。
【0007】
先行技術は、そのDNAコード配列が公知である新規な蛍光タンパク質において不完全である。本発明は、当該分野におけるこの長年にわたる必要性を満足する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Chalfieら、Science 263(1994)、802−805頁
【非特許文献2】Heimら、Proc.Natl.Acad.Sci.91(1994)、12501−12504
【非特許文献3】Rizzutoら、Curr.Biology 5(1995)、635−642
【非特許文献4】KaetherおよびGerdes、Febs Letters 369(1995)、267−271
【非特許文献5】HuおよびCheng、Febs Letters 369(1995)、331〜334
【非特許文献6】Davisら、Dev.Biology 170(1995)、726〜729
【非特許文献7】Ormoら、Science 273(1996)1392〜1395
【非特許文献8】Yangら、Nature Biotechnol.14(1996)、1246−1251
【非特許文献9】Haasら、Current Biology 6(1996)315〜324
【非特許文献10】Yangら、Nucleic Acids Research 24(1996)4592〜4593
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の要旨)
本発明は、amFP486、cFP484、zFP506、zFP538、dsFP483、drFP583、asFP600、dgFP512、およびdmFP592からなる群より選択される、単離および精製された蛍光タンパク質に関する。
【0010】
本発明の1つの実施形態において、サンプル中の核酸配列の存在をスクリーニングする工程を包含する、蛍光タンパク質をコードするDNA配列を同定する方法が提供され、ここで上記核酸配列は、配列番号3、5、8、11、12、および14からなる群より選択される配列を有するペプチドをコードする。上記核酸配列の存在は、上記蛍光タンパク質をコードするDNA配列を同定する。
【0011】
本発明の別の実施形態において、サンプル中の核酸配列の存在をスクリーニングする工程を包含する、蛍光タンパク質をコードするDNA配列を同定する方法が提供され、ここで上記核酸配列は、配列番号4、6、7、9、10、13、15、および16からなる群より選択されるプライマーとハイブリダイズする。上記核酸配列の存在は、蛍光タンパク質をコードするDNA配列を同定する。
【0012】
本発明のさらに別の実施形態において、細胞中で蛍光タンパク質を分析する方法が提供され、上記方法は、上記細胞中で配列番号55〜63からなる群より選択されるアミノ酸配列を有する蛍光タンパク質をコードする核酸配列を発現する工程;および上記タンパク質からの蛍光シグナルを測定する工程を包含する。この方法はさらに、上記シグナルに従って上記細胞を分別する工程を包含する。好ましくは、上記細胞は、蛍光活性化細胞分別法によって分別される。なお好ましくは、上記核酸配列が、上記蛍光タンパク質に融合された目的のタンパク質をコードする目的の遺伝子を含み、ここで上記目的のタンパク質は上記蛍光タンパク質と異なる。検出された蛍光シグナルは、上記細胞中の上記目的の遺伝子の存在を、およびさらに、上記目的のタンパク質の存在を示す。上記蛍光タンパク質の細胞内局在を同定することによって、上記目的のタンパク質の細胞内局在もまた、同定される。
【0013】
本発明の他のおよびさらなる局面、特色、および利点は、開示の目的のために与えられる本発明の現在好ましい実施形態の以下の記載から明白である。
【0014】
本発明は、例えば以下を提供する。
(項目1) 蛍光タンパク質をコードするDNA配列を同定する方法であって、以下:
サンプル中の核酸配列の存在をスクリーニングする工程であって、ここで該核酸配列は、配列番号3、5、8、11、12、および14からなる群より選択される配列を有するペプチドをコードし、該核酸配列の存在は、該蛍光タンパク質をコードするDNA配列を同定する工程、
を包含する方法。
(項目2) 蛍光タンパク質をコードするDNA配列を同定する方法であって、以下:
サンプル中の核酸配列の存在をスクリーニングする工程であって、ここで該核酸配列は、配列番号4、6、7、9、10、13、15、および16からなる群より選択されるプライマーとハイブリダイズし、該核酸配列の存在は、該蛍光タンパク質をコードするDNA配列を同定する工程、
を包含する方法。
(項目3) 細胞中で蛍光タンパク質を分析する方法であって、以下:
a)該細胞中で配列番号55〜63からなる群より選択されるアミノ酸配列を有する蛍光タンパク質をコードする核酸配列を発現する工程;および
b)該タンパク質からの蛍光シグナルを測定する工程、
を包含する方法。
(項目4) 前記シグナルに従って前記細胞を分別する工程をさらに包含する、項目3に記載の方法。
(項目5) 前記分別する工程は、前記細胞を、蛍光活性化細胞分別法によって分別することを包含する、項目4に記載の方法。
(項目6) 前記核酸配列が、前記蛍光タンパク質に融合された目的のタンパク質をコードする目的の遺伝子を含み、該目的のタンパク質は該蛍光タンパク質と異なる、項目3に記載の方法。
(項目7) 前記蛍光シグナルは、前記細胞中の前記目的の遺伝子の存在を示す、項目6に記載の方法。
(項目8) 前記細胞は、前記蛍光タンパク質に融合された目的のタンパク質をさらに含む、項目7に記載の方法。
(項目9) 前記蛍光タンパク質の細胞内局在を同定することによって、前記目的のタンパク質の細胞内局在が同定される工程をさらに包含する、項目8に記載の方法。
(項目10) amFP486、cFP484、zFP506、zFP538、dsFP483、drFP583、asFP600、dgFP512、およびdmFP592からなる群より選択される、単離および精製された蛍光タンパク質。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、標的フラグメントを単離するために使用される3’−RACEの改変されたストラテジーを示す。使用されたオリゴヌクレオチドの配列を表2に示す。Dp1およびDp2は、第1および第2のPCRにおいてそれぞれ使用された縮重プライマーである(縮重プライマーの配列については、表3および表4を参照のこと)。
【図2】図2Aは、新規な蛍光タンパク質の多重アラインメントを示す。番号付けは、Aequorea victoriaグリーン蛍光タンパク質(GFP)に基づく。Zoanthus由来の2つのタンパク質およびDiscosoma由来の4つのタンパク質を、互いの間で比較する:シリーズの第1のタンパク質中の残基と一致する残基と同一の残基を、ダッシュで表す。導入したギャップをドットで表す。A.victoria GFPの配列において、βシートを形成するストレッチに下線を付す;側鎖がβ−canの内部を形成する残基に影を付ける(Yangら、Nature Biotechnol.14,1246−1251(1996)に従う)。図2Bは、cFP484のN末端部分を示し、これは、他のタンパク質とは相同性を有さない。推定シグナルペプチドに下線を付す。
【図3】図3は、Anemonia majano、amFP486由来の新規な蛍光タンパク質の励起および発光スペクトルを示す。
【図4】図4は、Clavularia、cFP484由来の新規な蛍光タンパク質の励起および発光スペクトルを示す。
【図5】図5は、Zoanthus、zFP506由来の新規な蛍光タンパク質の励起および発光スペクトルを示す。
【図6】図6は、Zoanthus、zFP538由来の新規な蛍光タンパク質の励起および発光スペクトルを示す。
【図7】図7は、Discosoma striata、dsFP483由来の新規な蛍光タンパク質の励起および発光スペクトルを示す。
【図8】図8は、Discosoma、drFP583由来の新規な蛍光タンパク質の励起および発光スペクトルを示す。
【図9】図9は、Anemonia sulcata、asFP600由来の新規な蛍光タンパク質の励起および発光スペクトルを示す。
【図10】図10は、Discosoma、dgFP512由来の新規な蛍光タンパク質の励起および発光スペクトルを示す。
【図11】図11は、Discosoma、dmFP592由来の新規な蛍光タンパク質の励起および発光スペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(発明の詳細な説明)
本明細書において用いる場合、用語「GFP」は、Aequorea victoria由来の塩基性のグリーン蛍光タンパク質をいう。これには、より大きい蛍光を提供するかまたは異なる色で蛍光発光するように操作されたGFPの先行技術のバージョンを含む。Aequorea victoriaのGFPの配列(配列番号54)は、Presherら、Gene 111(1992)、229〜33に開示されている。
【0017】
本明細書において用いる場合、用語「EGFP」は、2つのアミノ酸置換を有するGFPの変異改変体をいう:F64LおよびS65T(Heimら、Nature 373(1995),663〜664)。用語「ヒト化」は、ヒト細胞におけるタンパク質の発現についてコドンを最適化するようにGFP核酸配列に作製された変化をいう(Yangら、Nucleic Acids Research 24(1996)、4592〜4593)。
【0018】
本発明に従って、従来の分子生物学、微生物学および組換えDNA技術(当業
者の範囲内)が使用され得る。このような技術は、文献中で十分に説明される。例えば、Maniatis、FritschおよびSambrook、「Molesular Cloning:A Laboratory Manual(1982);「DNA Cloning:A Practical Approach」第I巻およびII巻(D.N.Glover編,1985);「Oligonucleotide Synthesis」(M.J.Gait編,1984);Nucleic Acid Hybridization」(B.D.HamesおよびS.J.Higgins編(1985));「Transcription and Translation」(B.D.HamesおよびS.J.Higgins編(1984));「Animal Cell Cult
ure」(R.I.Freshney編(1986));「Immobilized Cells and Enzymes」(IRL Press,(1986));B.Perbal、「A Practical Guide To Molecular Cloning」(1984)を参照のこと。
【0019】
「ベクター」は、プラスミド、ファージまたはコスミドのようなレプリコンである。ここでは、付着したセグメントの複製をもたらすように、別のDNAセグ
メントが付着され得る。
【0020】
「DNA分子」は、一本鎖形態または二本鎖ヘリックスのいずれかでの、デオキシリボヌクレオチド(アデニン、グアニン、チミンまたはシトシン)のポリマー形成をいう。この用語は、この分子の一次構造および二次構造のみをいい、そして任意の特定の3次形態に限定しない。従って、この用語は、とりわけ、直線状DNA分子(例えば、制限フラグメント)、ウイルス、プラスミド、および染色体に見出される二本鎖DNAを含む。
【0021】
DNA「コード配列」は、適切な調節配列の制御下に配置された場合、インビボで転写されポリペプチドに翻訳されるDNA配列である。コード配列の境界は、5’(アミノ)末端の開始コドンおよび3’(カルボキシ)末端の翻訳終止コドンにより決定される。コード配列としては以下が挙げられるがこれらに限定されない:原核生物配列、真核生物mRNA由来のcDNA、真核生物(例えば、哺乳動物)DNA由来ゲノムDNA配列、および合成DNA配列。ポリアデニル化シグナルおよび転写終止配列は、コード配列の3’側に位置付けされ得る。
【0022】
本明細書において用いる場合、用語「ハイブリダイゼーション」は、反対側の核酸鎖の残基の間の水素結合により安定化された逆平行の二重鎖を形成する2つの核酸鎖の会合のプロセスをいう。
【0023】
用語「オリゴヌクレオチド」は、短い(100塩基長未満)の核酸分子をいう。
【0024】
本明細書において用いる場合、「DNA調節配列」は、プロモーター、エンハンサー、ポリアデニル化シグナル、ターミネーターなどのような転写制御配列および翻訳制御配列である。これは、宿主細胞中のコード配列の発現を提供し、そして/または発現を調節する。
【0025】
「プロモーター配列」は、細胞中のRNAポリメラーゼに結合し得、そして下流(3’方向)コード配列の転写を開始し得るDNA調節領域である。本発明を規定する目的のために、このプロモーター配列を、転写開始部位によりその3’末端で結合し、上記の検出可能バックグラウンドレベルで転写を開始するのに必要な最小数の塩基またはエレメントを含むように上流(5’方向)に伸長する。プロモーター配列内に、転写開始部位、およびRNAポリメラーゼの結合の原因であるタンパク質結合ドメインが見出される。真核生物プロモーターは、しばしば(ただし常にではない)「TATA」ボックスおよび「CAT」ボックスを含む。種々のプロモーター(誘導プロモーターを含む)が、本発明の種々のベクターを駆動するために用いられ得る。
【0026】
本明細書において用いる場合、用語「制限エンドヌクレアーゼ」および「制限酵素」は、それぞれが特異的ヌクレオチド配列でまたはその近位で二本鎖DNAを切断する細菌酵素をいう。
【0027】
細胞は、外因性DNAまたは異種DNAが細胞の内側に導入された場合、このようなDNAにより「形質転換」または「トランスフェクト」されている。形質転換するDNAは、細胞のゲノムに組み込まれてもよいし、または組み込まれなくても(共有結合)よい。原核生物細胞、酵母細胞および哺乳動物細胞において、例えば、形質転換DNAは、プラスミドのようなエピソームのエレメント上に維持され得る。真核生物細胞に関しては、安定に形質転換された細胞は、形質転換DNAが染色体に組み込まれており、それにより形質転換DNAが染色体複製を通じて娘細胞に遺伝される細胞である。この安定性は、この真核生物細胞が形質転換DNAを含む娘細胞の集団からなる細胞株またはクローンを樹立する能力により実証される。「クローン」は、単一の細胞または有糸分裂による共通の祖先に由来する細胞の集団である。「細胞株」は、多くの世代についてインビトロで安定に増殖し得る初代細胞のクローンである。
【0028】
DNA構築物の「異種」領域は、事実上、より大きい分子との会合が見出されていない、より大きいDNA分子内の、同定可能なDNAセグメントである。従って、この異種領域が哺乳動物遺伝子をコードする場合、この遺伝子は、供給源の生物体のゲノム中の哺乳動物ゲノムDNAに隣接しないDNAと、通常隣接する。別の実施例では、異種DNAは、2つの異なる供給源由来の遺伝子の部分が(融合タンパク質産物を産生するように)一緒にされている構築物中にコード配列を含む。対立遺伝子改変体または天然に存在する変異事象は、本明細書において規定されるようなDNAの異種領域を生じない。
【0029】
本明細書において用いる場合、用語「レポーター遺伝子」は、異種プロモーターまたはエンハンサーエレメントに結合したコード配列(そしてその産物は、その構築物が組織または細胞中に導入される場合、容易にそして定量的にアッセイされ得る)をいう。
【0030】
本明細書において記載されるアミノ酸は、「L」異性体形態であることが好ましい。このアミノ酸配列は、1文字コードで与えられる(A:アラニン;C:システイン;D:アスパラギン酸;E:グルタミン酸;F:フェニルアラニン;G:グリシン;H:ヒスチジン;I:イソロイシン;K:リジン;L:ロイシン;M:メチオニン;N:アスパラギン;P:プロリン;Q:グルタミン;R:アルギニン;S:セリン;T:トレオニン;V:バリン;W:トリプトファン;Y:チロシン;X:任意の残基)。NH2は、ポリペプチドのアミノ末端に存在する遊離のアミノ基をいう。COOHは、ポリペプチドのカルボキシ末端に存在する遊離のカルボキシ基をいう。標準的ポリペプチド命名法に従って、J.Biol.Chem.243(1969)、3552〜59を用いる。
【0031】
本発明は、amFP486、cFP484、zFP506、zFP538、dsFP483、drFP583、asFP600、dgFP512およびdmFP592からなる群より選択される単離かつ精製された蛍光タンパク質に関する

【0032】
本発明の1つの実施形態において、蛍光タンパク質をコードするDNA配列を同定する方法が提供される。この方法は、サンプル中の核酸配列の存在についてのスクリーニングの工程であって、ここで、この核酸配列は、配列番号3、5、8、11、12および14からなる群より選択される配列を有するペプチドをコードする工程、を包含する。核酸配列の存在は、蛍光タンパク質をコードするDNA配列を同定する。
【0033】
本発明の別の実施形態において、蛍光タンパク質をコードするDNA配列を同定する方法が提供される。この方法は、サンプル中の核酸配列の存在についてのスクリーニングの工程であって、ここで、この核酸配列は、配列番号4、6、7、9、10、13、15および16からなる群より選択されるプライマーにハイブリダイズする工程、を包含する。核酸配列の存在は、蛍光タンパク質をコードするDNA配列を同定する。
【0034】
本発明のなお別の実施形態において、細胞中の蛍光タンパク質を分析する方法が提供される。この方法は、細胞中の配列番号55〜63からなる群より選択されるアミノ酸配列を有する蛍光タンパク質をコードする核酸配列を発現する工程;およびこのタンパク質由来の蛍光シグナルを測定する工程、を包含する。この方法は、さらにシグナルに従って細胞をソートする工程を包含する。好ましくは、この細胞は蛍光発色セルソーティング(fluorescence activated cell sorting:蛍光標示式細胞ソーティング)によりソートされる。なお好ましくは、この核酸配列は、蛍光タンパク質に融合される(ここで目的のタンパク質は蛍光タンパク質とは別である)、目的のタンパク質をコードする目的の遺伝子を含む。検出された蛍光シグナルは、目的の遺伝子、およびさらに細胞中の目的のタンパク質の存在を示す。蛍光タンパク質の細胞内位置を同定することにより、目的のタンパク質の細胞内位置がまた同定される。
【0035】
以下の実施例は、本発明の種々の実施形態を例示する目的のために与えられ、そしていかなる様式でも本発明を限定することは意図されない。
【実施例】
【0036】
(実施例1)
(生物学的材料)
新規な蛍光タンパク質を、Anthozoaのいくつかの属から同定した。これらの属は、いかなる生物発光も示さないが、通常の白色光または紫外光の下で観察した場合に、蛍光色を有する。6つの種を選択した(表1を参照のこと)。
【0037】
【表1】


(実施例2)
(cDNAの調製)
全RNAを、ChomczynskiおよびSacchi(Chomczynski P.ら、Anal.Biochem.162(1987)、156〜159)のプロトコルに従って、目的の種から単離した。第1鎖cDNAを、SMART PCR cDNA合成キット(CLONTECH)を提供されたプロトコルに従って使用して、1〜3μgの全RNAから開始して合成したが、唯一、このキット中に提供された「cDNA合成プライマー」をプライマーTN3(5’−CGCAGTCGACCG(T)13、配列番号1)(表2)で置き換える変更を行った。次いで、増幅されたcDNAサンプルを、提供されたプロトコルに記載されたように調製したが、ただし、PCRに使用した2つのプライマーがTSプライマー(5’−AAGCAGTGGTATCAACGCAGAGT、配列番号2)(表2)およびTN3プライマー(表2)であった(ともに、0.1μMの濃度)ことが異なる。20〜25回のPCRサイクルを実施して、cDNAサンプルを増幅した。この増幅されたcDNAを水で20倍希釈し、そしてこの希釈物のうちの1μlを、続く手順にて使用した。
【0038】
(表2)
cDNA合成およびRACEにて使用したオリゴ
【0039】
【表2】


(実施例3)
(オリゴの設計)
新規な蛍光タンパク質のcDNAのフラグメントを単離するために、縮重プライマーを使用するPCRを実施した。縮重プライマーは、蛍光タンパク質のファミリー中で最も変化しないと予測された領域におけるmRNAの配列と一致するように設計した。このような4つのストレッチを選択し(表3)、そして縮重プライマーの変異体を設計した。このようなプライマーはすべて、mRNAの3’末端に関した。すべてのオリゴを、使用前にゲル精製した。表2は、cDNA合成およびRACEにおいて使用したオリゴを示す。
【0040】
(表3)
(重要なアミノ酸ストレッチおよび蛍光タンパク質の単離のために使用した対応縮重プライマー)
【0041】
【表3】


(実施例4)
(nFPの3’−cDNAフラグメントの単離)
3’−RACEの改変型ストラテジーを使用して、標的フラグメントを単離した(図1を参照のこと)。このRACEストラテジーは、連続する2つのPCR工程を含んだ。第1のPCR工程は、第1の縮重プライマー(表4)およびcDNA合成のために使用されたTN3プライマーと同一の3’部分を有する、T7−TN3プライマー(配列番号17)(T7−TN3の配列については、表2)を含んだ。このPCR工程において長い方であるT7−TN3プライマーを置き換えた理由は、短い方であるTN3プライマーを使用した場合、特にT7−TN3プライマーを低濃度(0.1μM)にて使用した場合に、生じるバックグラウンド増幅が効果的に抑制されたことである(Frohmanら(1998)PNAS USA、85、8998〜9002)。第2のPCR工程は、TN3プライマー(配列番号1、表2)および第2の縮重プライマー(表4)を含んだ。
【0042】
(表4)
(nFP cDNAの3’フラグメントの特異的増幅を生じる、第1および第2のPCRのための縮重プライマーの組み合わせ)
【0043】
【表4】


第1のPCR反応を、以下のように実施した:増幅されたcDNAサンプルの20倍希釈物1μlを反応混合物に添加した。この反応混合物は、提供された緩衝液を含む1× Advantage KlenTaq Polymerase Mix(CLONTECH)、200μM dNTP、0.3μMの第1の縮重プライマー(表4)および0.1μMのT7−TN3(配列番号17)プライマーを、総量20μlにて含んでいた。サイクルのプロフィールは、以下の(Hybaid OmniGene Thermocycler、チューブコントロールモード)であった:95℃で10秒、55℃で1分、72℃で40秒を1サイクル;95℃で10秒、62℃で30秒、72℃で40秒を24サイクル。次いで、この反応物を水で20倍希釈し、そしてこの希釈物のうちの1μlを第2のPCR反応物に添加した。この第2のPCR反応物は、製造業者により提供された緩衝液を含む1× Advantage KlenTaq Polymerase Mix(CLONTECH)、200μM dNTP、0.3μMの第2の縮重プライマー(表4)および0.1μMのTN3プライマーを含んでいた。サイクルのプロフィールは、以下の(Hybaid OmniGene Thermocycler、チューブコントロールモード)であった:95℃で10秒、55℃(GEG/GNGまたはPVMに関して)または52℃(NFPに関して)で1分、72℃で40秒を1サイクル;95℃で10秒、62℃(GEG/GNGまたはPVMに関して)または58℃(NFPに関して)で30秒、72℃で40秒を13サイクル。PCRの産物を、製造業者のプロトコルに従って、PCR−Scriptベクター(Stratagene)中にクローニングした。
【0044】
縮重プライマーの異なる組み合わせを、各種由来のDNAに対する第1および第2のPCR反応において試し続けて、特異的増幅を生じるプライマーの組み合わせを見出した。この特定の増幅とは、予期されるサイズの顕著なバンド(NGHおよびGEG/GNGについて約650〜800bp、そしてNFPおよびPVMについて約350〜500bp(時に、少数の弱いバンドを伴う))が、2つのPCR反応後にアガロースゲル上で検出されたことを意味する。Anthozoa綱の異なる種についてのプライマーの選り抜きの組み合わせを、表4に列挙する。プライマーの他のいくつかの組み合わせもまた、正確なサイズのフラグメントの増幅を生じたが、これらのフラグメントの配列は、同定された他の蛍光タンパク質またはAequorea victoria GFPに対して、相同性を示さなかった。
【0045】
(実施例5)
(全長cDNAのコピーの取得)
得られた新規な蛍光タンパク質cDNAの3’フラグメントを配列決定する際に、2つの5’指向性(directed)入れ子(nested)プライマーをcDNAについて合成し(表5)、次いでこのcDNAの5’末端を、連続する2つのPCRを使用して増幅した。その次のPCR反応において、「ステップアウトPCR」という新規なアプローチを使用して、バックグラウンドの増幅を抑制した。このステップアウト反応混合物は、製造業者により提供された緩衝液を用いる1× Advantage KlenTaq Polymerase Mix(CLONTECH)、200μM dNTP、0.2μMの第1の遺伝子特異的プライマー(表5を参照のこと)、0.02μMのT7−TSプライマー(配列番号18)、0.1μMのT7プライマー(配列番号19)および増幅されたcDNAサンプルの20倍希釈物1μlを、総容量20μlにて含んでいた。サイクルのプロフィールは、以下の(Hybaid OmniGene Thermocycler、チューブコントロールモード)であった:95℃で10秒、60℃で30秒、72℃で40秒を23〜27サイクル。増幅の産物を水で50倍希釈し、そしてこの希釈物のうちの1μlを、第2の(入れ子)PCRに添加した。この反応は、提供された緩衝液を含む1× Advantage KlenTaq Polymerase Mix(CLONTECH)、200μM dNTP、0.2μMの第2の遺伝子特異的プライマーおよび0.1μMのTSプライマー(配列番号2)を、総容量20μlにて含んでいた。サイクルのプロフィールは、以下の(Hybaid OmniGene Thermocycler、チューブコントロールモード)であった:95℃で10秒、60℃で30秒、72℃で40秒を12サイクル。次いで増幅の産物を、製造業者のプロトコルに従って、pAtlasベクター(CLONTECH)中にクローニングした。
【0046】
(表5)
(5’−RACEに使用した遺伝子特異的プライマー)
【0047】
【表5】


(実施例6)
(E.coliにおけるnFPの発現)
新規な蛍光タンパク質発現のためのDNA構築物を調製するために、以下の2つのプライマーを各DNAについて合成した:そのcDNAの3’−UTRに位置するアニーリング部位を有する5’指向性「下流」プライマー、および翻訳開始部位(最初のATGコドンを含まない)の部位に対応する3’指向性「上流」プライマー(表6)。両方のプライマーは、制限エンドヌクレアーゼについての部位をコードする5’−ヒール(heel)を有した;さらに、この上流プライマーは、そのPCR産物をpQE30ベクター(Qiagen)中に、このベクターにコードされる6×HisタグとnFPのリーディングフレームの融合が生じるような様式でクローニングすることを可能にするように設計した。PCRを以下のように実施した:増幅されたcDNAサンプルの20倍希釈物1μlを反応混合物に添加した。この反応混合物は、製造業者により提供された緩衝液を含む1× Advantage KlenTaq Polymerase Mix(CLONTECH)、200μM dNTP、0.2μMの上流プライマーおよび0.2μMの下流プライマーを、最終容量20μlにて含んでいた。サイクルのプロフィールは、以下の(Hybaid OmniGene Thermocycler、チューブコントロールモード)であった:95℃で10秒、60℃で30秒、72℃で40秒を23〜27サイクル。この増幅工程の産物を、フェノール−クロロホルム抽出およびエタノール沈殿により精製し、次いで標準的プロトコルに従ってこのプライマーの配列に対応する制限エンドヌクレアーゼを使用して、pQE30ベクター中にクローニングした。
【0048】
すべてのプライマーを、XL−1 blue E.coli中にて増幅し、そしてプラスミドDNAミニプレップキット(CLONTECH)によって精製した。この組換えクローンを、コロニーの色によって選択し、そして3mlのLB培地(100μg/mlのアンピシリンを補充)中にて37℃で一晩増殖させた。この一晩培養物100μlを、100μg/mlのアンピシリンを含む新鮮なLB培地200mlに移し、そして37℃、200rpmにて、OD6000.6〜0.7まで増殖させた。次いで、1mM IPTGをこの培養物に添加し、そしてインキュベーションを、37℃でさらに16時間進行させた。この細胞を収集し、そして組換えタンパク質(N末端に6×Hisタグを組み込んでいる)を、製造業者のプロトコルに従って、TALONTM金属アフィニティー樹脂(CLONTECH)を使用して精製した。
【0049】
(表6)
(発現構築物へとクローニングするためにnFPの全長コード領域を得るために使用したプライマー)
【0050】
【表6】


(実施例7)
(新規な蛍光タンパク質およびこのタンパク質をコードするcDNA)
蛍光タンパク質をコードする7つの全長cDNAを得(配列番号45〜51)、そして7つの新規な蛍光タンパク質を産生した(配列番号53〜59)。これらの単離された新規な蛍光タンパク質のスペクトル特性を表7に示し、そしてこれらの新規なタンパク質についての発光スペクトルおよび励起スペクトルを、表3〜11に示す。
【0051】
(表7)
(単離したNFPのスペクトル特性)
【0052】
【表7】


*相対量子収率は、A.victoria GFPの量子収率と比較して決定した。
**相対輝度は、励起係数に量子収率を掛けて、A.victoria GFPについての量子収率で割ったものである。
【0053】
蛍光タンパク質の多重整列を図2Aに示す。番号付けは、Aequorea victoriaのグリーン蛍光タンパク質(GFP、配列番号54)に基づく。これらの新規な蛍光タンパク質のアミノ酸配列に、配列番号55〜63と名付ける。Zoanthus由来の2つのタンパク質およびDiscosoma由来の4つのタンパク質を、互いの間で比較する:このシリーズの第1のタンパク質中の対応残基と同一である残基を、ダッシュによって示す。導入されたギャップを、点によって示す。A.victoria GFPの配列において、βシートを形成するストレッチに下線を付す:側鎖がこのβ−canの内側を形成する残基に影を付ける。図2Bは、cFP484のN末端部分を示す、この部分は、他のタンパク質との相同性を有さない。推定シグナルペプチドに下線を付す。
【0054】
以下の参考文献を、本明細書中に引用した。
1.Ormoら(1996)Science 273:1392〜1395。
2.Yang,F.ら(1996)Nature Biotech 14:1246〜1251。
3.Cormackら(1996)Gene 173、33〜38。
4.Haasら(1996)Current Biology 6.315〜324。
5.Yangら(1996)Nucleic Acids Research 24、4592〜4593。
6.Ghodaら(1990)J.Biol.Chem.265:11823〜11826。
7.Prasher D.C.ら(1992)Gene 111:229〜33。
8.Kainら(1995)Biotechniques 19(4)650〜55。
9.Chomczynski P.ら(1987)Anal.Biochem.162、156〜159。
10.Frohmanら(1998)PNAS USA、85、8998〜9002。
【0055】
本明細書中で言及されるいずれの特許または刊行物も、本発明が属する分野の当業者レベルの指標である。これらの特許および刊行物は、各個々の刊行物が参考として援用されると詳細かつ個別に示されたのと同じ程度に、参考として本明細書中で援用される。
【0056】
本発明が、言及された対象を実行しそして目的および利益を得るため、ならびに本発明に固有の対象を実行しそして目的および利益を得るために、十分に適合されることを、当業者は容易に理解する。これらの実施例は、本明細書中に記載の方法、手順、処理、分子、および特定の化合物とともに、好ましい実施形態の現在の代表であり、例示であり、そして本発明の範囲に対する限定としては意図されない。特許請求の範囲の範囲によって規定されるような本発明の意図内に包含される、本発明における変化および他の使用は当業者が思い付く。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−268798(P2010−268798A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−141050(P2010−141050)
【出願日】平成22年6月21日(2010.6.21)
【分割の表示】特願2000−586958(P2000−586958)の分割
【原出願日】平成11年12月10日(1999.12.10)
【出願人】(500481499)クロンテック・ラボラトリーズ・インコーポレーテッド (2)
【Fターム(参考)】