BHLHB2タンパク質制御に基づく脂肪酸代謝促進剤
【課題】本発明は、脂質代謝に関連する遺伝子を同定し、優れた脂質代謝促進剤を提供することを課題とする。
【解決手段】低インスリン血症型糖尿病モデルであるAkitaマウスと、非糖尿病の正常モデルであるA/JマウスのF2子孫についてQTL(量的形質遺伝子座)解析し、体重、血糖値および血中インスリン値に関連する遺伝子が第6染色体上の座位に存在することを見出した。更に検討を重ねた結果、第6染色体上のBhlhb2が筋細胞において脂肪酸のβ酸化を抑制することを確認した。すなわちBHLHB2タンパク質の阻害またはBhlhb2の発現抑制により脂質代謝が改善される。
【解決手段】低インスリン血症型糖尿病モデルであるAkitaマウスと、非糖尿病の正常モデルであるA/JマウスのF2子孫についてQTL(量的形質遺伝子座)解析し、体重、血糖値および血中インスリン値に関連する遺伝子が第6染色体上の座位に存在することを見出した。更に検討を重ねた結果、第6染色体上のBhlhb2が筋細胞において脂肪酸のβ酸化を抑制することを確認した。すなわちBHLHB2タンパク質の阻害またはBhlhb2の発現抑制により脂質代謝が改善される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インスリン誘導性転写因子であるBHLHB2をコードするBhlhb2遺伝子の発現またはBHLHB2タンパク質の機能を抑制して生体の脂質代謝を促進させることを特徴とする脂肪酸代謝促進剤に関する。
【背景技術】
【0002】
2型糖尿病(インスリン非依存型糖尿病)および肥満は、遺伝および環境要因の両方により引き起こされる複雑な疾患である。近年は、ライフスタイルの欧米化に伴い、日本においても生活習慣病の患者が急増しており、適切な予防法や新たな薬剤の開発が望まれている。肥満、即ち脂肪組織の過剰状態は、その主要構成成分である脂肪細胞の増殖や分化機構と密接に関連する。日本人に関係する肥満関連物質として、β3アドレナリン受容体(β3AR)、脱共役タンパク質1(UCP1)、β2アドレナリン受容体(β2AR)などが一般的に知られている。その他では、脂質代謝改善タンパク質として、BMAL1について報告がある(特許文献1)。
【0003】
2型糖尿病は、遺伝的背景と肥満がその大半を占め、遺伝的要因の場合はインスリン抵抗性が問題となる。2型糖尿病や肥満の原因となる遺伝子を見つけるために、げっ歯動物とヒトの遺伝子について分析を行った報告がある(非特許文献1)。ここでは、2型糖尿病(T2D)の修飾遺伝子を確認するために、低インスリン血症型糖尿病モデルであるAkitaマウスと非糖尿病の正常モデルであるA/JマウスのF2子孫を用いてQTL(量的形質遺伝子座)解析を行った。そこで3つのQTLが認められ、マウスの第6、14および15染色体においてDbm1 (diabetic modifier QTL 1)、Dbm3 (diabetic modifier QTL 3)およびDbm4 (diabetic modifier QTL 4)を確認したことが報告されている。特に第6染色体上のQTLに関し、Aj/Aj、Aj/AkおよびAk/Akの各タイプの雄のマウスについて体重、血糖値およびインスリン値を測定したところ、各タイプについて差が認められた。QTL解析により糖尿病形質と関係する遺伝子座が発見されたが、各QTLにおいて多くの遺伝子が存在するために、真正の修飾遺伝子を識別することは困難である。
【0004】
高炭水化物摂取後のラット肝臓において、インスリンにより転写が促進される因子として、basic helix-loop-helix型転写調節因子であるSHARP-2(DEC1、STRA13またはBHLHB2ともいう。)が同定されている。正常ラットでの高炭水化物摂取後、または糖尿病を発症したラットではインスリンの投与により、BHLHB2をコードする遺伝子Bhlhb2のmRNA濃度が増加することが報告されている(非特許文献2)。また、肝臓におけるインスリン誘導性転写調節因子STRA13の糖代謝調節機構について報告がある(非特許文献3)。ここでは、マウス肝臓におけるStra13 の発現はインスリンにより誘導されること、さらにdb/db肥満マウスおよびSTZ糖尿病マウスの肝臓にStra13 を過剰発現させると、血糖値が低下することが示されている。このことから、Stra13 (Bhlhb2)を過剰に発現させることが、1型および2型糖尿病の治療標的となる可能性が示されている。
【0005】
Stra13 (Bhlhb2)が肝臓においてインスリンにより誘導されるとの知見から、Stra13を用いて肝臓におけるインスリン応答性を評価する方法、Stra13を用いてインスリン抵抗性糖尿病等のインスリン応答性を制御する物質をスクリーニングする方法、さらにはStra13の発現促進物質を有効成分とするインスリン抵抗性若しくは糖代謝悪化の予防、改善または治療薬等について開示がある(特許文献2)。しかしながら、Stra13 (Bhlhb2)の脂質代謝に対する作用についての開示は一切ない。
【特許文献1】特開2005−247740号公報
【特許文献3】特開2005−6645号公報
【非特許文献1】Mammalian Genome; 17, 927-940 (2006)
【非特許文献2】J. Biological Chemistry; 278(33), p.30719-30724 (2003)
【非特許文献3】糖尿病; 48, S-49, I-2-1 (2005)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、脂質代謝に関連する遺伝子を同定し、優れた脂質代謝促進剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明者らは低インスリン血症型糖尿病モデルであるAkitaマウスと、非糖尿病の正常モデルであるA/JマウスのF2子孫を用いて、QTL(量的形質遺伝子座)解析を行なった。QTL解析により見出した体重、血糖値および血中インスリン値を決定する第6染色体上の座位に関してコンジェニックマウスを作製した。更に検討を重ねた結果、Bhlhb2がこの座位の糖尿病形質を修飾する作用を有することを見出した。かかるBhlhb2の発現により筋細胞において脂肪酸のβ酸化が抑制されることを確認し、Bhlhb2の発現制御により脂質代謝が改善されることを初めて見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち本発明は、以下よりなる。
1.BHLHB2タンパク質阻害剤を有効成分とする脂質代謝促進剤。
2.BHLHB2タンパク質阻害剤が、BHLHB2タンパク質をコードする遺伝子Bhlhb2の発現抑制剤である前項1に記載の脂質代謝促進剤。
3.Bhlhb2の発現抑制剤がRNAiである前項2に記載の脂質代謝促進剤。
4.候補化合物とBHLHB2タンパク質の相互作用を測定し、BHLHB2タンパク質を阻害しうる物質を選別することを特徴とする脂質代謝促進剤のスクリーニング方法。
5.候補化合物とBHLHB2タンパク質の相互作用が、BHLHB2タンパク質をコードする遺伝子Bhlhb2の発現を抑制する作用である前項4に記載のスクリーニング方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、インスリン誘導性転写因子であるBHLHB2をコードするBhlhb2、即ち糖尿病形質の修飾遺伝子であるBhlhb2が、筋肉中の脂肪酸酸化を抑制することを確認した。これにより、BHLHB2タンパク質の機能を抑制する、またはBHLHB2をコードするBhlhb2遺伝子の発現を抑制することで、生体の脂質代謝を改善させることができる。脂質代謝を改善させることにより、肥満を解消することができ、さらには肥満が原因で生じる生活習慣病、たとえば糖尿病などの発病を予防することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
1.コンジェニックマウスの作製
マウスの第6染色体上のDbm1座位は、血糖値、血中インスリン濃度および体重に関して遺伝的な修飾領域であることが示唆されている(非特許文献1)。
本発明において、脂質代謝に関連する遺伝子を識別するために、低インスリン血症型糖尿病のAkitaマウス(Yoshioka M. et al., Diabetes; 46, p.887-894 (1997))と、非糖尿病の正常モデルであるA/JマウスのF2子孫を用いてQTL(量的形質遺伝子座)解析を行い、さらにコンジェニックマウスモデルを作製した。Akitaマウスは、常染色体優性遺伝形式で10週齢までに糖尿病を発症するC57BL/6系統由来の自然発症型2型糖尿病モデルマウスである。インスリン2遺伝子(Ins2)のヘテロ接合体において、Cys96Tyr変異があり、低インスリン血症型糖尿病であり、雄は雌より重篤な糖尿病を発症することが知られている。
【0011】
そこで、本発明ではA/JマウスとAkitaマウスの戻し交雑により、遺伝背景がA/Jマウス由来で、第6染色体上のミクロサテライトマーカーD6Mit229からD6Mit133の間に位置する部分がAkitaマウス由来であるコンジェニックマウスを構築した(図1AおよびB参照)。上記コンジェニックマウスには、上記の変異を含むほか、Dbm1座位とは異なる座位において、低インスリン血症型のIns2変異体(Cys96Tyr変異)を含むIns2-ヘテロ型(Akitaマウス由来)と、変異のない正常インスリン型のIns2を含むIns2-野生型(A/Jマウス由来)がある。
【0012】
Dbm1座位の範囲は35 Mb以上であり100を超える遺伝子を含むことから、糖尿病形質の候補修飾遺伝子を絞り込むため、サブコンジェニックマウスを構築した。図1Bに示すように、マーカーD6Mit250からD6Mit148(サブコンジェニック(1))と、マーカーD6Mit286からD6Mit54(サブコンジェニック(2))の間の同型接合体のAkita対立遺伝子を含む2種類のサブコンジェニックマウス1および2を構築した。
【0013】
2.コンジェニックマウスの表現型の確認
第6染色体上のコンジェニックマウスにおいて対照マウス(Aj/Aj)(正常型)とコンジェニックマウス(Ak/Ak)について、Ins2-ヘテロ型若しくはIns2-野生型の血糖値、血中インスリン濃度および体重について各々の表現型を調べた。各マウスについて、食餌摂取量については差を認めなかった。以降、対照マウスを単に「Aj/Aj」といい、コンジェニックマウスを「Ak/Ak」という場合がある。
【0014】
1)血糖値
Ins2-ヘテロ型ではAj/AjおよびAk/Akともに、グルコース投与後30分で血糖値はピークを示し、60および120分経過後であっても血糖値は穏やかに低下したが、血糖値はAj/Ajに比べてAk/Akのほうが低値であった。一方、Ins2-野生型ではAj/AjとAk/Akともに、30分で血糖値はピークを示したが、120分経過後ではグルコース投与前と同程度に血糖値は低下し、その値はAj/AjとAk/Akの間に殆ど差を認めなかった。また、血糖値は、Ins2-野生型に比べてIns2-ヘテロ型のほうが高い値を示した(図2A,B)。
【0015】
2)血中インスリン濃度
Ins2-野生型では、グルコース投与後120分での血中インスリン濃度は、Aj/Ajに比べてAk/Akのほうが有意に低値であった(図2C)。
【0016】
3)体重
体重についてはIns2-ヘテロ型およびIns2-野生型で、Aj/Ajのほうが、Ak/Akに比べてやや重い傾向であった(図2D)。
【0017】
4)脂肪組織重量
脂肪組織重量として副睾丸周囲白色脂肪(EWAT)の重量を調べたところ、Ins2-ヘテロ型およびIns2-野生型のいずれについても、Aj/AjのほうがAk/Akに比べて重い傾向であり(p<0.10)、Ins2-野生型のAj/Ajが最も重い平均値」を示した(図3A)。一方、肝臓重量についてはIns2-ヘテロ型のほうがIns2-野生型に比べてやや重い平均値を示したが、EWAT重量ほどの差を認めなかった(図3B)。
【0018】
3.サブコンジェニックマウスの表現型の確認
Dbm1座位でのより狭い領域において、糖尿病形質の修飾遺伝子を含むか否かを判断するために、コンジェニックマウス、およびサブコンジェニックマウスについて、血糖値、体重および血中インスリン濃度を測定し、対照マウスと比較した(表1)。Ins2-ヘテロ型のサブコンジェニックマウス1では、コンジェニックマウスと同様に対照マウスと比較し体重減少が観察されたが、2種のサブコンジェニックマウスと対照マウスの間では血糖値の差は認められなかった。一方、Ins2-野生型の場合は、サブコンジェニックマウスの体重および血中インスリン濃度は対照マウスに比べて減少する傾向を認めた。Ins2-野生型のコンジェニックマウスでは血中インスリン濃度に違いは認められなかった。
【0019】
【表1】
【0020】
4.Dbm1座位上の糖尿病形質の修飾遺伝子の確認
これらの結果から、主な修飾遺伝子は、マーカーD6Mit250からD6Mit54の間の狭いサブコンジェニック(1)(2)に共通する領域に存在することが示唆された。
【0021】
【表2】
【0022】
サブコンジェニック(1)(2)に共通する領域に存在する14種の候補修飾遺伝子を表2に示した。いくつかの遺伝子の発現は組織特異的であった。Chl1、Cntn6、Cntn4、Il5raおよびGrm7の各遺伝子は、筋肉、白色脂肪組織(EWAT)、肝臓および膵臓のような、糖あるいは脂質代謝に関連する組織では発現していなかった。また、Cntn6およびCntn4は、脳または精巣特異的に発現するので、それらの遺伝子はDbm1座位におけるインスリン感受性および体重変化に関する原因遺伝子ではないことが示唆された(表2)。
【0023】
5.糖尿病形質の候補修飾遺伝子
QTL解析において、表現型の差は親マウス系統のゲノム多型による糖尿病形質修飾遺伝子がコードするアミノ酸の違いや発現量の違い等を含めた機能の違いによって引き起こされると仮定する。そこで、マウス・全ゲノム・ブラウザを使用し、14種の遺伝子すべてについてAkitaマウスの由来であるC57BL/6とA/Jマウスの間のエクソンSNPを探索した。アミノ酸置換を来すSNPを含む遺伝子は、Cntn6、Cntn4およびSetmarの3種であった(表3)。
【0024】
【表3】
【0025】
筋肉において、Setmar、Bhlhb2およびEdem1の各遺伝子は、Ak/AkのほうがAj/Ajに比べて高い発現を認めた。一方、肝臓では各遺伝子の発現について殆ど差を認めなかった。また14種の候補遺伝子についてEWATでの発現の差は認められなかった(表3)。
【0026】
AkitaおよびA/Jマウスについて、エクソン、プロモーター領域またはイントロン領域におけるゲノムの多型を有する糖尿病形質を修飾する候補遺伝子として、Cntn6、Cntn4、Setmar、Itpr1、Bhlhb2、Edem1の6種が挙げられた。筋肉特異的に発現量の異なる候補遺伝子として、Setmar、Bhlhb2およびEdem1の3種が挙げられた。
【0027】
6.筋細胞における脂肪酸酸化に関連する修飾遺伝子の確認
筋肉特異的に発現量が異なるSetmar、Bhlhb2およびEdem1の3種の候補修飾遺伝子について、培養筋細胞中での遺伝子発現抑制の影響を検討した。C2C12(マウス筋芽細胞株)細胞中で各候補遺伝子に対するRNAiを用いて各候補遺伝子の発現を阻害した。長鎖脂肪酸のβ-酸化は、カルニチンパルミトール転移酵素1(Cpt1)によって律速制御され、生体での脂肪量が決定される。そこで、前記3種の候補遺伝子の制御とCpt1の発現との関係を遺伝子発現レベルを測定し、検討した。
【0028】
その結果、Bhlhb2特異的なsiRNAによりBhlhb2遺伝子の発現を抑制したとき、Cpt1遺伝子の発現が増加した。一方、SetmarまたはEdem1に特異的なsiRNAで各遺伝子の発現を34%または45%に抑制した場合でも、Cpt1遺伝子の発現量は有意な変動を示さなかった(表4)。
【0029】
以上により筋肉でのBhlhb2修飾遺伝子の多型がコンジェニックマウスの体重減少や血糖値低下に影響を及ぼすことが考えられ、Bhlhb2遺伝子がDbm1座位における糖尿病形質の主な修飾遺伝子で、体重に影響を及ぼすと考えられた。ここでBhlhb2は、肥満についての新規な修飾遺伝子で、筋細胞における脂肪酸酸化を抑制することが示唆される。他の5種の候補遺伝子、Cntn6、Cntn4、Setmar、Itpr1、およびEdem1は、コンジェニックマウスにおいて、対照マウスと比較して糖尿病形質に関する修飾遺伝子として優れた候補であるとはいえない。
【0030】
BHLHB2は、basic helix-loop-helix型転写調節因子ファミリー(bHLH)の1種である。このファミリーは、多くの遺伝子のプロモーターまたはエンハンサー領域に存在する、いわゆるEボックス(CANNTG)の塩基配列に結合する。Bhlhb2は、Dec1、Stra13、またはSharp2とも呼ばれる。
【0031】
以上の知見から、本発明においてBHLHB2タンパク質が脂肪酸酸化を抑制する機能を有していることが初めて確認された。そこで、BHLHB2タンパク質を阻害することで、脂肪酸酸化の抑制作用が軽減され、脂質代謝が促進されることが考えられた。そして脂質代謝が改善されることにより、生体内の脂質が分解されやすくなり、肥満の解消に結びつくものと考えられる。そこで、本発明はBHLHB2タンパク質阻害剤を有効成分とする脂質代謝促進剤におよぶ。BHLHB2タンパク質を阻害することにより、Cpt1遺伝子の発現が増加し、脂質代謝が促進され、肥満が改善されるからである。
【0032】
BHLHB2タンパク質阻害剤としてのBHLHB2タンパク質を阻害する方法は特に限定されず、タンパク質そのものを阻害しても良いし、または遺伝子の発現を抑制させて該タンパク質の産生を抑制することもできる。また、BHLHB2タンパク質が脂肪酸酸化、即ち脂肪酸代謝について抑制作用を有することから、かかる脂肪酸酸化または脂質代謝抑制作用を排除する薬剤であれば、脂質代謝を改善しうる。そこで、脂肪酸酸化または脂質代謝抑制作用を排除しうる化合物をスクリーニングすることにより、より効果的な脂質代謝促進剤を提供することができる。従って、本発明は候補化合物とBHLHB2タンパク質の相互作用を測定することを特徴とする脂質代謝促進剤のスクリーニング方法にも及ぶ。さらに、候補化合物とBHLHB2タンパク質の相互作用は、例えばBhlhb2の発現抑制作用によることができる。
【0033】
ここで、Bhlhb2のメッセンジャーRNAと特異的に作用するRNAi、あるいはBHLHB2タンパク質と相互作用する物質、すなわちBHLHB2タンパク質を阻害する物質として、具体的にはdecoy、抗体様結合タンパク質などが挙げられる。さらにBHLHB2タンパク質の量を減らす方法または阻害する方法として、プロモーターの抑制、タンパク質の分解促進、メチレーションやタンパク質の何らかの修飾などが挙げられる。本発明の脂質代謝促進剤としては、RNAi、decoyおよび抗体様結合タンパク質や、上述の如く、BHLHB2タンパク質に関するプロモーターの抑制剤、タンパク質分解酵素、メチレーションなどの修飾に用いられる修飾剤などが挙げられる。
【実施例】
【0034】
本発明の理解を助けるために、以下に実施例を示して具体的に本発明を説明するが、本発明は本実施例に限定されるものでないことはいうまでもない。
【0035】
(実施例1)コンジェニックマウスの構築
7週齢の雄のAkitaマウスおよび雌のA/Jマウスを用いた。マウスは、12時間の明暗サイクルと温度と湿度のコントロール環境下で飼育した。A/Jマウスをレシピエントとし、AkitaマウスをDbm1のドナーとし、戻し交雑の繰り返しによりAkita対立遺伝子を備えたコンジェニックマウスを構築した。コンジェニックマウスおよびサブコンジェニックマウスの第6染色体のDbm1座位の構成は、図1A,Bに示した。
【0036】
(実験例1)細胞培養でのCpt1遺伝子発現の確認(1)
マウス筋芽細胞株であるC2C12細胞をATCCから購入した。C2C12細胞を10%FCSを含むDMEM培地(Invitrogen社)を用いて5% CO2下、37℃で培養し維持した。筋芽細胞を分化させるために2%のウマ血清(HS)を含むDMEMに培地を交換し、分化した骨格筋細胞が大量に得られるまで、2日間継続して培養した。
【0037】
siRNAによるSetmar、Bhlhb2およびEdem1の各遺伝子の抑制と脂肪酸酸化マーカーであるCpt1の発現について調べた。各遺伝子のsiRNAは、Setmar siRNA(Mm_Setmar_5_HP siRNA、QIAGEN社)、Bhlhb2 siRNA (Bhlhb2-MSS209735、Invitrogen社)およびEdem1 siRNA(Edem1-MSS208154、Invitrogen社)を用い、陰性コントロールsiRNA (Medium Duplexes、Invitrogen社)を用いた。siRNAのトランスフェクションは、1μL/100μLのリポフェクタミンTM(Lipofectamine) RNAi Max(Invitrogen社)を用い、無血清培地中で指示書に従って行った。in vitroでの脂肪酸酸化の確認のため、RNA精製および分析は、siRNAトランスフェクションの2日後に行なった。
Cpt1の発現は、逆転写定量的PCR法を用い、18S、リボソーマルRNAの発現量で標準化することにより確認した。
【0038】
その結果、siRNAがBhlhb2遺伝子の発現を55±3%まで抑制したとき、Cpt1遺伝子の発現は150%(p<0.01)まで著しく増加した(表4)。一方、SetmarまたはEdem1に特異的なsiRNAで各遺伝子の発現を34%または45%まで抑制した場合でも、Cpt1遺伝子の表現量は有意な変動を示さなかった(表4)。
【0039】
【表4】
【0040】
(実験例2)細胞培養でのCpt1遺伝子発現の確認(2)
マウス筋芽細胞株であるC2C12細胞を実験例1と同様に培養し、維持し、骨格筋細胞に分化させた。siRNAによるBhlhb2遺伝子抑制あるいはアデノウイルス(Ad)のベクターによるBhlhb2遺伝子過剰発現させたときのC2C12細胞における脂肪酸酸化マーカーであるCpt1の発現について調べた。Cpt1の発現は、実験例1と同手法により確認した。
【0041】
Bhlhb2のアデノウイルスによる発現ベクター(Ad-Bhlhb2)およびBhlhb2 cDNAを含まないコントロール・ベクター(Ad-Ctl)は、AdEasyのアデノウイルスのベクター・システム(STRATAGENE社)により得た。
【0042】
Ad-Bhlhb2またはAd-Ctlは、C2C12細胞に8×103efu/wellで3系について12時間感染させ、培養液を2%のウマ血清(HS)を含むDMEMに培地を交換した。in vitroでの脂肪酸酸化の確認のため、RNA精製および分析は、アデノウイルス感染の3日後に行なった。
【0043】
また、Ad-Bhlhb2を用いてBhlhb2遺伝子の過剰発現させたC2C12細胞では、Cpt1発現のレベルは対照に比べて30%まで抑制されたが、siRNAを作用させてBhlhb2遺伝子の発現を抑制した場合は、対照に比べてCpt1表現のレベルは高くなる傾向を示した(図4)。
【0044】
(実験例3)脂肪酸酸化分析
実験例2と同手法にてsiRNAによりBhlhb2遺伝子を抑制したとき、あるいはアデノウイルスベクター(Ad-Bhlhb2)によるBhlhb2遺伝子過剰発現させたときのC2C12細胞における脂肪酸酸化度について調べた。
脂肪酸酸化度は、パルミチン酸からの[14C]O2生産によって測定した。C2C12細胞は、0.5mMの[1-14C]パルミチン酸(4μCi/μmol、NEC-075H、パーキン・エルマー社)および2% BSA(シグマ社)を含むDMEM (1.5g/lグルコース、Invitrogen社)を含むコラーゲンコートした12ウェルのマイクロプレート中で1 mL/ウェルで培養した。プレートをプラスチックフィルムで密閉し、生成した14CO2を1cm2の紙フィルタに収集し、2M NaOHの50μLに浸した。37℃で3時間加温後、60%(v/v)の過塩素酸(ナカライテスク社)を100μL加えて反応を終了させ、次に紙フィルタ中の14CO2を測定するために1時間放置した。紙フィルタは、500μLの水を含むシンチレーションバイヤルに加え10mLのシンチレーション用溶液(AQUASOL-2、パーキン・エルマー社)と混合した。また、放射活性はTri-Carb2500TRTM液体シンチレーション計数器(PACKARD)で測定した。
【0045】
Bhlhb2遺伝子に対するsiRNAの濃度を変えて、Bhlhb2遺伝子に作用させたときの相対的なBhlhb2遺伝子発現量およびパルミチン酸の酸化度を調べた。その結果、siRNAの濃度依存的にBhlhb2発現量は低下したが、Bhlhb2発現量およびその場合のパルミチン酸の酸化の度合いは増加傾向を示した(図5)。
【0046】
Ad-Bhlhb2を用いてBhlhb2を過剰発現させた場合とBhlhb2を含まないAd-Ctlを用いた場合のパルミチン酸(脂肪酸)の酸化度を図6に示した。その結果、Bhlhb2を過剰発現させた場合では脂肪酸の酸化が抑制された。
【産業上の利用可能性】
【0047】
以上詳述したように、本発明により、インスリン誘導性転写因子であるBHLHB2をコードするBhlhb2、即ち糖尿病形質の修飾遺伝子であるBhlhb2が、筋肉中の脂肪酸酸化を抑制することを確認した。これにより、BHLHB2タンパク質の機能を抑制する物質、またはBHLHB2をコードするBhlhb2遺伝子の発現を抑制することで、生体の脂質代謝を改善させることができる。脂質代謝を改善させることにより、肥満を解消することができ、さらには肥満が原因で生じる生活習慣病、たとえば糖尿病などの発病を予防することができる。
したがって、本発明はBhlhb2メッセンジャーRNA阻害剤またはBHLHB2タンパク質阻害剤を有効成分とする脂質代謝促進剤を提供することができ、抗肥満剤として使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1A】低インスリン血症型糖尿病のAkitaマウスと非糖尿病の正常モデルであるA/JマウスのF2子孫を用いて作製したコンジェニックマウスモデルの第6染色体の遺伝子座位の構成を示す図である。ここにおいて、線で示される遺伝子座位は、A/Jマウス由来であり、長方形で示される遺伝子座位は、Akitaマウス由来である。
【図1B】コンジェニックマウスモデルおよびサブコンジェニックマウス1、2の第6染色体上のDbm1遺伝子座位の構成を示す図である。
【図2A】Aj/AjマウスおよびAk/AkマウスのIns2-ヘテロ型での血糖値を示す図である。
【図2B】Aj/AjマウスおよびAk/AkマウスのIns2-野生型での血糖値を示す図である。
【図2C】Aj/AjマウスおよびAk/AkマウスのIns2-野生型での血中インスリン濃度を示す図である。
【図2D】Aj/AjマウスおよびAk/AkマウスのIns2-野生型およびIns2ヘテロ型での体重を示す図である。
【図3A】Aj/AjマウスおよびAk/Akマウスの脂肪組織(EWAT:副睾丸周囲白色脂肪) 重量を示す図である。
【図3B】Aj/AjマウスおよびAk/Akマウスの肝臓重量を示す図である。
【図4】アデノウイルスベクターを用いてBhlhb2を過剰発現させた場合とsiRNAを用いてBhlhb2の発現を抑制した場合のCpt1遺伝子の発現量の相対値を示す図である。
【図5】Bhlhb2に対するsiRNA濃度を変えてBhlhb2の発現を抑制したときのパルミチン酸(脂肪酸)の酸化度を示す図である。
【図6】アデノウイルスベクター(Ad-Bhlhb2)を用いてBhlhb2を過剰発現させた場合とBhlhb2を含まないアデノウイルスベクター(Ad-Ctl)を用いた場合のパルミチン酸(脂肪酸)の酸化度を示す図である。
【符号の説明】
【0049】
Aj/Aj 対照マウス(正常マウス)
Ak/Ak コンジェニックマウス
【技術分野】
【0001】
本発明は、インスリン誘導性転写因子であるBHLHB2をコードするBhlhb2遺伝子の発現またはBHLHB2タンパク質の機能を抑制して生体の脂質代謝を促進させることを特徴とする脂肪酸代謝促進剤に関する。
【背景技術】
【0002】
2型糖尿病(インスリン非依存型糖尿病)および肥満は、遺伝および環境要因の両方により引き起こされる複雑な疾患である。近年は、ライフスタイルの欧米化に伴い、日本においても生活習慣病の患者が急増しており、適切な予防法や新たな薬剤の開発が望まれている。肥満、即ち脂肪組織の過剰状態は、その主要構成成分である脂肪細胞の増殖や分化機構と密接に関連する。日本人に関係する肥満関連物質として、β3アドレナリン受容体(β3AR)、脱共役タンパク質1(UCP1)、β2アドレナリン受容体(β2AR)などが一般的に知られている。その他では、脂質代謝改善タンパク質として、BMAL1について報告がある(特許文献1)。
【0003】
2型糖尿病は、遺伝的背景と肥満がその大半を占め、遺伝的要因の場合はインスリン抵抗性が問題となる。2型糖尿病や肥満の原因となる遺伝子を見つけるために、げっ歯動物とヒトの遺伝子について分析を行った報告がある(非特許文献1)。ここでは、2型糖尿病(T2D)の修飾遺伝子を確認するために、低インスリン血症型糖尿病モデルであるAkitaマウスと非糖尿病の正常モデルであるA/JマウスのF2子孫を用いてQTL(量的形質遺伝子座)解析を行った。そこで3つのQTLが認められ、マウスの第6、14および15染色体においてDbm1 (diabetic modifier QTL 1)、Dbm3 (diabetic modifier QTL 3)およびDbm4 (diabetic modifier QTL 4)を確認したことが報告されている。特に第6染色体上のQTLに関し、Aj/Aj、Aj/AkおよびAk/Akの各タイプの雄のマウスについて体重、血糖値およびインスリン値を測定したところ、各タイプについて差が認められた。QTL解析により糖尿病形質と関係する遺伝子座が発見されたが、各QTLにおいて多くの遺伝子が存在するために、真正の修飾遺伝子を識別することは困難である。
【0004】
高炭水化物摂取後のラット肝臓において、インスリンにより転写が促進される因子として、basic helix-loop-helix型転写調節因子であるSHARP-2(DEC1、STRA13またはBHLHB2ともいう。)が同定されている。正常ラットでの高炭水化物摂取後、または糖尿病を発症したラットではインスリンの投与により、BHLHB2をコードする遺伝子Bhlhb2のmRNA濃度が増加することが報告されている(非特許文献2)。また、肝臓におけるインスリン誘導性転写調節因子STRA13の糖代謝調節機構について報告がある(非特許文献3)。ここでは、マウス肝臓におけるStra13 の発現はインスリンにより誘導されること、さらにdb/db肥満マウスおよびSTZ糖尿病マウスの肝臓にStra13 を過剰発現させると、血糖値が低下することが示されている。このことから、Stra13 (Bhlhb2)を過剰に発現させることが、1型および2型糖尿病の治療標的となる可能性が示されている。
【0005】
Stra13 (Bhlhb2)が肝臓においてインスリンにより誘導されるとの知見から、Stra13を用いて肝臓におけるインスリン応答性を評価する方法、Stra13を用いてインスリン抵抗性糖尿病等のインスリン応答性を制御する物質をスクリーニングする方法、さらにはStra13の発現促進物質を有効成分とするインスリン抵抗性若しくは糖代謝悪化の予防、改善または治療薬等について開示がある(特許文献2)。しかしながら、Stra13 (Bhlhb2)の脂質代謝に対する作用についての開示は一切ない。
【特許文献1】特開2005−247740号公報
【特許文献3】特開2005−6645号公報
【非特許文献1】Mammalian Genome; 17, 927-940 (2006)
【非特許文献2】J. Biological Chemistry; 278(33), p.30719-30724 (2003)
【非特許文献3】糖尿病; 48, S-49, I-2-1 (2005)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、脂質代謝に関連する遺伝子を同定し、優れた脂質代謝促進剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明者らは低インスリン血症型糖尿病モデルであるAkitaマウスと、非糖尿病の正常モデルであるA/JマウスのF2子孫を用いて、QTL(量的形質遺伝子座)解析を行なった。QTL解析により見出した体重、血糖値および血中インスリン値を決定する第6染色体上の座位に関してコンジェニックマウスを作製した。更に検討を重ねた結果、Bhlhb2がこの座位の糖尿病形質を修飾する作用を有することを見出した。かかるBhlhb2の発現により筋細胞において脂肪酸のβ酸化が抑制されることを確認し、Bhlhb2の発現制御により脂質代謝が改善されることを初めて見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち本発明は、以下よりなる。
1.BHLHB2タンパク質阻害剤を有効成分とする脂質代謝促進剤。
2.BHLHB2タンパク質阻害剤が、BHLHB2タンパク質をコードする遺伝子Bhlhb2の発現抑制剤である前項1に記載の脂質代謝促進剤。
3.Bhlhb2の発現抑制剤がRNAiである前項2に記載の脂質代謝促進剤。
4.候補化合物とBHLHB2タンパク質の相互作用を測定し、BHLHB2タンパク質を阻害しうる物質を選別することを特徴とする脂質代謝促進剤のスクリーニング方法。
5.候補化合物とBHLHB2タンパク質の相互作用が、BHLHB2タンパク質をコードする遺伝子Bhlhb2の発現を抑制する作用である前項4に記載のスクリーニング方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、インスリン誘導性転写因子であるBHLHB2をコードするBhlhb2、即ち糖尿病形質の修飾遺伝子であるBhlhb2が、筋肉中の脂肪酸酸化を抑制することを確認した。これにより、BHLHB2タンパク質の機能を抑制する、またはBHLHB2をコードするBhlhb2遺伝子の発現を抑制することで、生体の脂質代謝を改善させることができる。脂質代謝を改善させることにより、肥満を解消することができ、さらには肥満が原因で生じる生活習慣病、たとえば糖尿病などの発病を予防することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
1.コンジェニックマウスの作製
マウスの第6染色体上のDbm1座位は、血糖値、血中インスリン濃度および体重に関して遺伝的な修飾領域であることが示唆されている(非特許文献1)。
本発明において、脂質代謝に関連する遺伝子を識別するために、低インスリン血症型糖尿病のAkitaマウス(Yoshioka M. et al., Diabetes; 46, p.887-894 (1997))と、非糖尿病の正常モデルであるA/JマウスのF2子孫を用いてQTL(量的形質遺伝子座)解析を行い、さらにコンジェニックマウスモデルを作製した。Akitaマウスは、常染色体優性遺伝形式で10週齢までに糖尿病を発症するC57BL/6系統由来の自然発症型2型糖尿病モデルマウスである。インスリン2遺伝子(Ins2)のヘテロ接合体において、Cys96Tyr変異があり、低インスリン血症型糖尿病であり、雄は雌より重篤な糖尿病を発症することが知られている。
【0011】
そこで、本発明ではA/JマウスとAkitaマウスの戻し交雑により、遺伝背景がA/Jマウス由来で、第6染色体上のミクロサテライトマーカーD6Mit229からD6Mit133の間に位置する部分がAkitaマウス由来であるコンジェニックマウスを構築した(図1AおよびB参照)。上記コンジェニックマウスには、上記の変異を含むほか、Dbm1座位とは異なる座位において、低インスリン血症型のIns2変異体(Cys96Tyr変異)を含むIns2-ヘテロ型(Akitaマウス由来)と、変異のない正常インスリン型のIns2を含むIns2-野生型(A/Jマウス由来)がある。
【0012】
Dbm1座位の範囲は35 Mb以上であり100を超える遺伝子を含むことから、糖尿病形質の候補修飾遺伝子を絞り込むため、サブコンジェニックマウスを構築した。図1Bに示すように、マーカーD6Mit250からD6Mit148(サブコンジェニック(1))と、マーカーD6Mit286からD6Mit54(サブコンジェニック(2))の間の同型接合体のAkita対立遺伝子を含む2種類のサブコンジェニックマウス1および2を構築した。
【0013】
2.コンジェニックマウスの表現型の確認
第6染色体上のコンジェニックマウスにおいて対照マウス(Aj/Aj)(正常型)とコンジェニックマウス(Ak/Ak)について、Ins2-ヘテロ型若しくはIns2-野生型の血糖値、血中インスリン濃度および体重について各々の表現型を調べた。各マウスについて、食餌摂取量については差を認めなかった。以降、対照マウスを単に「Aj/Aj」といい、コンジェニックマウスを「Ak/Ak」という場合がある。
【0014】
1)血糖値
Ins2-ヘテロ型ではAj/AjおよびAk/Akともに、グルコース投与後30分で血糖値はピークを示し、60および120分経過後であっても血糖値は穏やかに低下したが、血糖値はAj/Ajに比べてAk/Akのほうが低値であった。一方、Ins2-野生型ではAj/AjとAk/Akともに、30分で血糖値はピークを示したが、120分経過後ではグルコース投与前と同程度に血糖値は低下し、その値はAj/AjとAk/Akの間に殆ど差を認めなかった。また、血糖値は、Ins2-野生型に比べてIns2-ヘテロ型のほうが高い値を示した(図2A,B)。
【0015】
2)血中インスリン濃度
Ins2-野生型では、グルコース投与後120分での血中インスリン濃度は、Aj/Ajに比べてAk/Akのほうが有意に低値であった(図2C)。
【0016】
3)体重
体重についてはIns2-ヘテロ型およびIns2-野生型で、Aj/Ajのほうが、Ak/Akに比べてやや重い傾向であった(図2D)。
【0017】
4)脂肪組織重量
脂肪組織重量として副睾丸周囲白色脂肪(EWAT)の重量を調べたところ、Ins2-ヘテロ型およびIns2-野生型のいずれについても、Aj/AjのほうがAk/Akに比べて重い傾向であり(p<0.10)、Ins2-野生型のAj/Ajが最も重い平均値」を示した(図3A)。一方、肝臓重量についてはIns2-ヘテロ型のほうがIns2-野生型に比べてやや重い平均値を示したが、EWAT重量ほどの差を認めなかった(図3B)。
【0018】
3.サブコンジェニックマウスの表現型の確認
Dbm1座位でのより狭い領域において、糖尿病形質の修飾遺伝子を含むか否かを判断するために、コンジェニックマウス、およびサブコンジェニックマウスについて、血糖値、体重および血中インスリン濃度を測定し、対照マウスと比較した(表1)。Ins2-ヘテロ型のサブコンジェニックマウス1では、コンジェニックマウスと同様に対照マウスと比較し体重減少が観察されたが、2種のサブコンジェニックマウスと対照マウスの間では血糖値の差は認められなかった。一方、Ins2-野生型の場合は、サブコンジェニックマウスの体重および血中インスリン濃度は対照マウスに比べて減少する傾向を認めた。Ins2-野生型のコンジェニックマウスでは血中インスリン濃度に違いは認められなかった。
【0019】
【表1】
【0020】
4.Dbm1座位上の糖尿病形質の修飾遺伝子の確認
これらの結果から、主な修飾遺伝子は、マーカーD6Mit250からD6Mit54の間の狭いサブコンジェニック(1)(2)に共通する領域に存在することが示唆された。
【0021】
【表2】
【0022】
サブコンジェニック(1)(2)に共通する領域に存在する14種の候補修飾遺伝子を表2に示した。いくつかの遺伝子の発現は組織特異的であった。Chl1、Cntn6、Cntn4、Il5raおよびGrm7の各遺伝子は、筋肉、白色脂肪組織(EWAT)、肝臓および膵臓のような、糖あるいは脂質代謝に関連する組織では発現していなかった。また、Cntn6およびCntn4は、脳または精巣特異的に発現するので、それらの遺伝子はDbm1座位におけるインスリン感受性および体重変化に関する原因遺伝子ではないことが示唆された(表2)。
【0023】
5.糖尿病形質の候補修飾遺伝子
QTL解析において、表現型の差は親マウス系統のゲノム多型による糖尿病形質修飾遺伝子がコードするアミノ酸の違いや発現量の違い等を含めた機能の違いによって引き起こされると仮定する。そこで、マウス・全ゲノム・ブラウザを使用し、14種の遺伝子すべてについてAkitaマウスの由来であるC57BL/6とA/Jマウスの間のエクソンSNPを探索した。アミノ酸置換を来すSNPを含む遺伝子は、Cntn6、Cntn4およびSetmarの3種であった(表3)。
【0024】
【表3】
【0025】
筋肉において、Setmar、Bhlhb2およびEdem1の各遺伝子は、Ak/AkのほうがAj/Ajに比べて高い発現を認めた。一方、肝臓では各遺伝子の発現について殆ど差を認めなかった。また14種の候補遺伝子についてEWATでの発現の差は認められなかった(表3)。
【0026】
AkitaおよびA/Jマウスについて、エクソン、プロモーター領域またはイントロン領域におけるゲノムの多型を有する糖尿病形質を修飾する候補遺伝子として、Cntn6、Cntn4、Setmar、Itpr1、Bhlhb2、Edem1の6種が挙げられた。筋肉特異的に発現量の異なる候補遺伝子として、Setmar、Bhlhb2およびEdem1の3種が挙げられた。
【0027】
6.筋細胞における脂肪酸酸化に関連する修飾遺伝子の確認
筋肉特異的に発現量が異なるSetmar、Bhlhb2およびEdem1の3種の候補修飾遺伝子について、培養筋細胞中での遺伝子発現抑制の影響を検討した。C2C12(マウス筋芽細胞株)細胞中で各候補遺伝子に対するRNAiを用いて各候補遺伝子の発現を阻害した。長鎖脂肪酸のβ-酸化は、カルニチンパルミトール転移酵素1(Cpt1)によって律速制御され、生体での脂肪量が決定される。そこで、前記3種の候補遺伝子の制御とCpt1の発現との関係を遺伝子発現レベルを測定し、検討した。
【0028】
その結果、Bhlhb2特異的なsiRNAによりBhlhb2遺伝子の発現を抑制したとき、Cpt1遺伝子の発現が増加した。一方、SetmarまたはEdem1に特異的なsiRNAで各遺伝子の発現を34%または45%に抑制した場合でも、Cpt1遺伝子の発現量は有意な変動を示さなかった(表4)。
【0029】
以上により筋肉でのBhlhb2修飾遺伝子の多型がコンジェニックマウスの体重減少や血糖値低下に影響を及ぼすことが考えられ、Bhlhb2遺伝子がDbm1座位における糖尿病形質の主な修飾遺伝子で、体重に影響を及ぼすと考えられた。ここでBhlhb2は、肥満についての新規な修飾遺伝子で、筋細胞における脂肪酸酸化を抑制することが示唆される。他の5種の候補遺伝子、Cntn6、Cntn4、Setmar、Itpr1、およびEdem1は、コンジェニックマウスにおいて、対照マウスと比較して糖尿病形質に関する修飾遺伝子として優れた候補であるとはいえない。
【0030】
BHLHB2は、basic helix-loop-helix型転写調節因子ファミリー(bHLH)の1種である。このファミリーは、多くの遺伝子のプロモーターまたはエンハンサー領域に存在する、いわゆるEボックス(CANNTG)の塩基配列に結合する。Bhlhb2は、Dec1、Stra13、またはSharp2とも呼ばれる。
【0031】
以上の知見から、本発明においてBHLHB2タンパク質が脂肪酸酸化を抑制する機能を有していることが初めて確認された。そこで、BHLHB2タンパク質を阻害することで、脂肪酸酸化の抑制作用が軽減され、脂質代謝が促進されることが考えられた。そして脂質代謝が改善されることにより、生体内の脂質が分解されやすくなり、肥満の解消に結びつくものと考えられる。そこで、本発明はBHLHB2タンパク質阻害剤を有効成分とする脂質代謝促進剤におよぶ。BHLHB2タンパク質を阻害することにより、Cpt1遺伝子の発現が増加し、脂質代謝が促進され、肥満が改善されるからである。
【0032】
BHLHB2タンパク質阻害剤としてのBHLHB2タンパク質を阻害する方法は特に限定されず、タンパク質そのものを阻害しても良いし、または遺伝子の発現を抑制させて該タンパク質の産生を抑制することもできる。また、BHLHB2タンパク質が脂肪酸酸化、即ち脂肪酸代謝について抑制作用を有することから、かかる脂肪酸酸化または脂質代謝抑制作用を排除する薬剤であれば、脂質代謝を改善しうる。そこで、脂肪酸酸化または脂質代謝抑制作用を排除しうる化合物をスクリーニングすることにより、より効果的な脂質代謝促進剤を提供することができる。従って、本発明は候補化合物とBHLHB2タンパク質の相互作用を測定することを特徴とする脂質代謝促進剤のスクリーニング方法にも及ぶ。さらに、候補化合物とBHLHB2タンパク質の相互作用は、例えばBhlhb2の発現抑制作用によることができる。
【0033】
ここで、Bhlhb2のメッセンジャーRNAと特異的に作用するRNAi、あるいはBHLHB2タンパク質と相互作用する物質、すなわちBHLHB2タンパク質を阻害する物質として、具体的にはdecoy、抗体様結合タンパク質などが挙げられる。さらにBHLHB2タンパク質の量を減らす方法または阻害する方法として、プロモーターの抑制、タンパク質の分解促進、メチレーションやタンパク質の何らかの修飾などが挙げられる。本発明の脂質代謝促進剤としては、RNAi、decoyおよび抗体様結合タンパク質や、上述の如く、BHLHB2タンパク質に関するプロモーターの抑制剤、タンパク質分解酵素、メチレーションなどの修飾に用いられる修飾剤などが挙げられる。
【実施例】
【0034】
本発明の理解を助けるために、以下に実施例を示して具体的に本発明を説明するが、本発明は本実施例に限定されるものでないことはいうまでもない。
【0035】
(実施例1)コンジェニックマウスの構築
7週齢の雄のAkitaマウスおよび雌のA/Jマウスを用いた。マウスは、12時間の明暗サイクルと温度と湿度のコントロール環境下で飼育した。A/Jマウスをレシピエントとし、AkitaマウスをDbm1のドナーとし、戻し交雑の繰り返しによりAkita対立遺伝子を備えたコンジェニックマウスを構築した。コンジェニックマウスおよびサブコンジェニックマウスの第6染色体のDbm1座位の構成は、図1A,Bに示した。
【0036】
(実験例1)細胞培養でのCpt1遺伝子発現の確認(1)
マウス筋芽細胞株であるC2C12細胞をATCCから購入した。C2C12細胞を10%FCSを含むDMEM培地(Invitrogen社)を用いて5% CO2下、37℃で培養し維持した。筋芽細胞を分化させるために2%のウマ血清(HS)を含むDMEMに培地を交換し、分化した骨格筋細胞が大量に得られるまで、2日間継続して培養した。
【0037】
siRNAによるSetmar、Bhlhb2およびEdem1の各遺伝子の抑制と脂肪酸酸化マーカーであるCpt1の発現について調べた。各遺伝子のsiRNAは、Setmar siRNA(Mm_Setmar_5_HP siRNA、QIAGEN社)、Bhlhb2 siRNA (Bhlhb2-MSS209735、Invitrogen社)およびEdem1 siRNA(Edem1-MSS208154、Invitrogen社)を用い、陰性コントロールsiRNA (Medium Duplexes、Invitrogen社)を用いた。siRNAのトランスフェクションは、1μL/100μLのリポフェクタミンTM(Lipofectamine) RNAi Max(Invitrogen社)を用い、無血清培地中で指示書に従って行った。in vitroでの脂肪酸酸化の確認のため、RNA精製および分析は、siRNAトランスフェクションの2日後に行なった。
Cpt1の発現は、逆転写定量的PCR法を用い、18S、リボソーマルRNAの発現量で標準化することにより確認した。
【0038】
その結果、siRNAがBhlhb2遺伝子の発現を55±3%まで抑制したとき、Cpt1遺伝子の発現は150%(p<0.01)まで著しく増加した(表4)。一方、SetmarまたはEdem1に特異的なsiRNAで各遺伝子の発現を34%または45%まで抑制した場合でも、Cpt1遺伝子の表現量は有意な変動を示さなかった(表4)。
【0039】
【表4】
【0040】
(実験例2)細胞培養でのCpt1遺伝子発現の確認(2)
マウス筋芽細胞株であるC2C12細胞を実験例1と同様に培養し、維持し、骨格筋細胞に分化させた。siRNAによるBhlhb2遺伝子抑制あるいはアデノウイルス(Ad)のベクターによるBhlhb2遺伝子過剰発現させたときのC2C12細胞における脂肪酸酸化マーカーであるCpt1の発現について調べた。Cpt1の発現は、実験例1と同手法により確認した。
【0041】
Bhlhb2のアデノウイルスによる発現ベクター(Ad-Bhlhb2)およびBhlhb2 cDNAを含まないコントロール・ベクター(Ad-Ctl)は、AdEasyのアデノウイルスのベクター・システム(STRATAGENE社)により得た。
【0042】
Ad-Bhlhb2またはAd-Ctlは、C2C12細胞に8×103efu/wellで3系について12時間感染させ、培養液を2%のウマ血清(HS)を含むDMEMに培地を交換した。in vitroでの脂肪酸酸化の確認のため、RNA精製および分析は、アデノウイルス感染の3日後に行なった。
【0043】
また、Ad-Bhlhb2を用いてBhlhb2遺伝子の過剰発現させたC2C12細胞では、Cpt1発現のレベルは対照に比べて30%まで抑制されたが、siRNAを作用させてBhlhb2遺伝子の発現を抑制した場合は、対照に比べてCpt1表現のレベルは高くなる傾向を示した(図4)。
【0044】
(実験例3)脂肪酸酸化分析
実験例2と同手法にてsiRNAによりBhlhb2遺伝子を抑制したとき、あるいはアデノウイルスベクター(Ad-Bhlhb2)によるBhlhb2遺伝子過剰発現させたときのC2C12細胞における脂肪酸酸化度について調べた。
脂肪酸酸化度は、パルミチン酸からの[14C]O2生産によって測定した。C2C12細胞は、0.5mMの[1-14C]パルミチン酸(4μCi/μmol、NEC-075H、パーキン・エルマー社)および2% BSA(シグマ社)を含むDMEM (1.5g/lグルコース、Invitrogen社)を含むコラーゲンコートした12ウェルのマイクロプレート中で1 mL/ウェルで培養した。プレートをプラスチックフィルムで密閉し、生成した14CO2を1cm2の紙フィルタに収集し、2M NaOHの50μLに浸した。37℃で3時間加温後、60%(v/v)の過塩素酸(ナカライテスク社)を100μL加えて反応を終了させ、次に紙フィルタ中の14CO2を測定するために1時間放置した。紙フィルタは、500μLの水を含むシンチレーションバイヤルに加え10mLのシンチレーション用溶液(AQUASOL-2、パーキン・エルマー社)と混合した。また、放射活性はTri-Carb2500TRTM液体シンチレーション計数器(PACKARD)で測定した。
【0045】
Bhlhb2遺伝子に対するsiRNAの濃度を変えて、Bhlhb2遺伝子に作用させたときの相対的なBhlhb2遺伝子発現量およびパルミチン酸の酸化度を調べた。その結果、siRNAの濃度依存的にBhlhb2発現量は低下したが、Bhlhb2発現量およびその場合のパルミチン酸の酸化の度合いは増加傾向を示した(図5)。
【0046】
Ad-Bhlhb2を用いてBhlhb2を過剰発現させた場合とBhlhb2を含まないAd-Ctlを用いた場合のパルミチン酸(脂肪酸)の酸化度を図6に示した。その結果、Bhlhb2を過剰発現させた場合では脂肪酸の酸化が抑制された。
【産業上の利用可能性】
【0047】
以上詳述したように、本発明により、インスリン誘導性転写因子であるBHLHB2をコードするBhlhb2、即ち糖尿病形質の修飾遺伝子であるBhlhb2が、筋肉中の脂肪酸酸化を抑制することを確認した。これにより、BHLHB2タンパク質の機能を抑制する物質、またはBHLHB2をコードするBhlhb2遺伝子の発現を抑制することで、生体の脂質代謝を改善させることができる。脂質代謝を改善させることにより、肥満を解消することができ、さらには肥満が原因で生じる生活習慣病、たとえば糖尿病などの発病を予防することができる。
したがって、本発明はBhlhb2メッセンジャーRNA阻害剤またはBHLHB2タンパク質阻害剤を有効成分とする脂質代謝促進剤を提供することができ、抗肥満剤として使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1A】低インスリン血症型糖尿病のAkitaマウスと非糖尿病の正常モデルであるA/JマウスのF2子孫を用いて作製したコンジェニックマウスモデルの第6染色体の遺伝子座位の構成を示す図である。ここにおいて、線で示される遺伝子座位は、A/Jマウス由来であり、長方形で示される遺伝子座位は、Akitaマウス由来である。
【図1B】コンジェニックマウスモデルおよびサブコンジェニックマウス1、2の第6染色体上のDbm1遺伝子座位の構成を示す図である。
【図2A】Aj/AjマウスおよびAk/AkマウスのIns2-ヘテロ型での血糖値を示す図である。
【図2B】Aj/AjマウスおよびAk/AkマウスのIns2-野生型での血糖値を示す図である。
【図2C】Aj/AjマウスおよびAk/AkマウスのIns2-野生型での血中インスリン濃度を示す図である。
【図2D】Aj/AjマウスおよびAk/AkマウスのIns2-野生型およびIns2ヘテロ型での体重を示す図である。
【図3A】Aj/AjマウスおよびAk/Akマウスの脂肪組織(EWAT:副睾丸周囲白色脂肪) 重量を示す図である。
【図3B】Aj/AjマウスおよびAk/Akマウスの肝臓重量を示す図である。
【図4】アデノウイルスベクターを用いてBhlhb2を過剰発現させた場合とsiRNAを用いてBhlhb2の発現を抑制した場合のCpt1遺伝子の発現量の相対値を示す図である。
【図5】Bhlhb2に対するsiRNA濃度を変えてBhlhb2の発現を抑制したときのパルミチン酸(脂肪酸)の酸化度を示す図である。
【図6】アデノウイルスベクター(Ad-Bhlhb2)を用いてBhlhb2を過剰発現させた場合とBhlhb2を含まないアデノウイルスベクター(Ad-Ctl)を用いた場合のパルミチン酸(脂肪酸)の酸化度を示す図である。
【符号の説明】
【0049】
Aj/Aj 対照マウス(正常マウス)
Ak/Ak コンジェニックマウス
【特許請求の範囲】
【請求項1】
BHLHB2タンパク質阻害剤を有効成分とする脂質代謝促進剤。
【請求項2】
BHLHB2タンパク質阻害剤が、BHLHB2タンパク質をコードする遺伝子Bhlhb2の発現抑制剤である請求項1に記載の脂質代謝促進剤。
【請求項3】
Bhlhb2の発現抑制剤がRNAiである請求項2に記載の脂質代謝促進剤。
【請求項4】
候補化合物とBHLHB2タンパク質の相互作用を測定し、BHLHB2タンパク質を阻害しうる物質を選別することを特徴とする脂質代謝促進剤のスクリーニング方法。
【請求項5】
候補化合物とBHLHB2タンパク質の相互作用が、BHLHB2タンパク質をコードする遺伝子Bhlhb2の発現を抑制する作用である請求項4に記載のスクリーニング方法。
【請求項1】
BHLHB2タンパク質阻害剤を有効成分とする脂質代謝促進剤。
【請求項2】
BHLHB2タンパク質阻害剤が、BHLHB2タンパク質をコードする遺伝子Bhlhb2の発現抑制剤である請求項1に記載の脂質代謝促進剤。
【請求項3】
Bhlhb2の発現抑制剤がRNAiである請求項2に記載の脂質代謝促進剤。
【請求項4】
候補化合物とBHLHB2タンパク質の相互作用を測定し、BHLHB2タンパク質を阻害しうる物質を選別することを特徴とする脂質代謝促進剤のスクリーニング方法。
【請求項5】
候補化合物とBHLHB2タンパク質の相互作用が、BHLHB2タンパク質をコードする遺伝子Bhlhb2の発現を抑制する作用である請求項4に記載のスクリーニング方法。
【図1A】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【公開番号】特開2009−167117(P2009−167117A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−5099(P2008−5099)
【出願日】平成20年1月14日(2008.1.14)
【出願人】(304020292)国立大学法人徳島大学 (307)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年1月14日(2008.1.14)
【出願人】(304020292)国立大学法人徳島大学 (307)
【Fターム(参考)】
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