説明

C型肝炎ウイルス阻害剤の組み合わせ

本発明は概して、抗ウイルス化合物に関するものであり、より具体的には、C型肝炎ウイルス(HCV)を阻害することができる化合物の組み合わせ、該化合物を含有する組成物、ならびに該組み合わせを用いたC型肝炎の処置方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2009年10月12日に出願された米国仮特許出願第61/250,648号の利益を主張する。
【技術分野】
【0002】
本発明は概して、抗ウイルス化合物に関するものであり、より具体的には、C型肝炎ウイルス(HCV)を阻害することができる化合物の組み合わせ、該化合物を含有する組成物、ならびに該組み合わせを用いたC型肝炎の処置方法に関する。
【背景技術】
【0003】
HCVは主要なヒト病原体であり、世界中で推定1億7千万人が感染しており−これはヒト免疫不全ウイルス1型による感染数のおよそ5倍である。これらHCV感染者のかなりの割合が、肝硬変および肝細胞癌を含む重篤な進行性肝疾患を発症する。
【0004】
HCVはプラス鎖RNAウイルスである。5'非翻訳領域における推定アミノ酸配列および広範な類似性の比較に基づいて、HCVはフラビウイルス科の独立した属として分類されている。フラビウイルス科の全てのメンバーは、単一の連続したオープンリーディングフレームの翻訳を介して全ての公知のウイルス-特異的タンパク質をコードするプラス鎖RNAゲノムを含有するエンベロープに包まれたビリオンを有する。
【0005】
HCVゲノム全体にわたって、ヌクレオチドおよびコードされたアミノ酸配列内に、プルーフリーディング能が欠如しているコード化RNA依存性RNAポリメラーゼの高いエラー率に起因する、かなりの多様性が見いだされる。少なくとも6つの主要な遺伝子型がキャラクタライズされており、世界中に分布した50を超えるサブタイプが記載されている。HCVの遺伝的多様性の臨床的意義によって、単独療法による処置の間に生じる変異の傾向が示されており、従って、用いられるさらなる処置の選択肢が望まれている。発症および療法における遺伝子型の潜在的な調節作用は依然として捉えにくい。
【0006】
一本鎖HCV RNAゲノムは約9500ヌクレオチド長であり、約3000のアミノ酸である単一の大きなポリタンパク質をコードする単一のオープンリーディングフレーム(ORF)を有する。感染細胞において、このポリタンパク質は、細胞プロテアーゼおよびウイルスプロテアーゼにより複数の部位で切断され、構造タンパク質および非構造(NS)タンパク質を生じる。HCVの場合、成熟非構造タンパク質(NS2、NS3、NS4A、NS4B、NS5A、およびNS5B)の生成は、2つのウイルスプロテアーゼによりもたらされる。1つめのものはメタロプロテアーゼであり、NS2-NS3接合部を切断すると考えられており;2つめは、NS3のN-末端領域内に含まれるセリンプロテアーゼ(本明細書においてNS3プロテアーゼとも称される)であり、NS3の下流、すなわちNS3-NS4A切断部位においてシスで、残りのNS4A-NS4B、NS4B-NS5A、NS5A-NS5B部位についてトランスでの両方における以降の切断の全てを仲介する。該NS4Aタンパク質は、NS3プロテアーゼの補助因子として作用し、NS3および他のウイルスのレプリカーゼ成分の膜局在を補助することの両方によって、複数の機能を果たすと思われる。NS3-NS4A複合体の形成は、効率的なポリタンパク質プロセシング、切断イベントのタンパク質分解効率の増大をもたらす適切なプロテアーゼ活性に必要である。該NS3タンパク質はまた、ヌクレオシドトリホスファターゼおよびRNAヘリカーゼ活性を示す。NS4Bは、HCV複製複合体がアセンブリーすると考えられる小胞体膜構造(membranous web)の形成に関与する、内在性膜タンパク質である。NS5B(本明細書においてHCVポリメラーゼとも称される)はRNA-依存性RNAポリメラーゼであり、レプリカーゼ複合体において、他のHCVタンパク質(NS5Aを含む)を用いたHCVの複製に関与する。
【0007】
ほとんどの慢性HCV感染症患者の処置のための現在の標準的な治療は、ペグインターフェロン-αおよびリバビリンのレジメンである。しかしながら、高い割合の患者がこの療法に対して反応せず、また処置は大きな副作用を伴う。従って、より安全でより有効な療法の開発が強く必要とされている。現在、多くの低分子HCV阻害剤が臨床試験中であるけれども、いくつかの試験からの臨床データに基づくと、阻害剤の組み合わせが、HCV感染患者における持続性ウイルス陰性化(sustained viral response)を達成するのに必要とされうることが明らかである。処置中の患者における耐性の出現、および処置後のウイルスリバウンドが、プロテアーゼ阻害剤、ならびにヌクレオシドおよび非ヌクレオシドHCV阻害剤を用いた処置において認められている。最大の効果を達成するため、および強力にウイルスを根絶させるために、組み合わせ療法(とりわけ異なるHCVウイルス標的を標的とするもの)を用いることが重要であろう。in vitro レプリコン-ベースの組み合わせ研究により、HCV阻害剤の様々な組み合わせによって相乗効果の相加が達成されることが示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
共願である特許出願WO2008/021927は、HCVによりコードされるNS5Aタンパク質の機能を阻害する化合物を開示している。米国特許第6,995,174号はHCVによりコードされるNS3プロテアーゼの機能を阻害する化合物を開示している。本発明は、HCVの処置に有用である、特異的なHCV NS5A阻害剤およびHCV NS3プロテアーゼ阻害剤の組み合わせを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の態様において、本発明は、治療上有効な量の式(I):
【化1】

の化合物もしくは医薬的に許容されるその塩、および治療上有効な量の式(II):
【化2】

の化合物もしくは医薬的に許容されるその塩、ならびに医薬的に許容される担体を含有する組成物を提供する。第1の態様の第1の実施態様において、式(II)の化合物もしくは医薬的に許容されるその塩に対する式(I)の化合物もしくは医薬的に許容されるその塩の比率は、約1:3〜約3:1である。第1の態様の第2の実施態様において、式(II)の化合物もしくは医薬的に許容されるその塩に対する式(I)の化合物もしくは医薬的に許容されるその塩の比率は、約1:2.5〜約2.5:1である。第1の態様の第3の実施態様において、式(II)の化合物もしくは医薬的に許容されるその塩に対する式(I)の化合物もしくは医薬的に許容されるその塩の比率は、約1:1である。第1の態様の第4の実施態様において、式(II)の化合物もしくは医薬的に許容されるその塩に対する式(I)の化合物もしくは医薬的に許容されるその塩の比率は、約1:2.5である。第1の態様の第5の実施態様において、式(II)の化合物もしくは医薬的に許容されるその塩に対する式(I)の化合物もしくは医薬的に許容されるその塩の比率は、約2.5:1である。
【0010】
第1の態様の第6の実施態様において、本発明は、治療上有効な量の式(I):
【化3】

の化合物もしくは医薬的に許容されるその塩、および治療上有効な量の式(II):
【化4】

の化合物もしくは医薬的に許容されるその塩、抗HCV活性を有する1もしくは2個のさらなる化合物、ならびに医薬的に許容される担体を含有する組成物を提供する。第7の実施態様において、該さらなる化合物のうち少なくとも1つは、インターフェロンまたはリバビリンである。第8の実施態様において、該インターフェロンは、インターフェロンα2B、ペグインターフェロンα、インターフェロンλ、ペグインターフェロンλ、コンセンサスインターフェロン、インターフェロンα2A、またはリンパ芽球様インターフェロンタウから選択される。
【0011】
第2の態様において、本発明は、治療上有効な量の式(I):
【化5】

の化合物もしくは医薬的に許容されるその塩、および治療上有効な量の式(II):
【化6】

の化合物もしくは医薬的に許容されるその塩、ならびに医薬的に許容される担体を含有する、治療上有効な量の組成物を患者に投与することを含む、患者においてHCV感染症を処置する方法を提供する。第2の態様の第1の実施態様において、式(II)の化合物もしくは医薬的に許容されるその塩に対する式(I)の化合物もしくは医薬的に許容されるその塩の比率は、約1:3〜約3:1である。第2の態様の第2の実施態様において、式(II)の化合物もしくは医薬的に許容されるその塩に対する式(I)の化合物もしくは医薬的に許容されるその塩の比率は、約1:2.5〜約2.5:1である。第2の態様の第3の実施態様において、式(II)の化合物もしくは医薬的に許容されるその塩に対する式(I)の化合物もしくは医薬的に許容されるその塩の比率は、約1:1である。第2の態様の第4の実施態様において、式(II)の化合物もしくは医薬的に許容されるその塩に対する式(I)の化合物もしくは医薬的に許容されるその塩の比率は、約1:2.5である。第2の態様の第5の実施態様において、式(II)の化合物もしくは医薬的に許容されるその塩に対する式(I)の化合物もしくは医薬的に許容されるその塩の比率は、約2.5:1である。
【0012】
第2の態様の第6の実施態様において、本発明は、治療上有効な量の式(I):
【化7】

の化合物もしくは医薬的に許容されるその塩、および治療上有効な量の式(II):
【化8】

の化合物もしくは医薬的に許容されるその塩、ならびに医薬的に許容される担体を含有する治療上有効な量の組成物を患者に投与することを含む、患者においてHCV感染症を処置する方法であって、抗HCV活性を有する1もしくは2個のさらなる化合物を該組成物の前、後、もしくは同時に投与することをさらに含む、該方法を提供する。第7の実施態様において、該さらなる化合物のうち少なくとも1つはインターフェロンまたはリバビリンである。第8の実施態様において、該インターフェロンは、インターフェロンα2B、ペグインターフェロンα、インターフェロンλ、ペグインターフェロンλ、コンセンサスインターフェロン、インターフェロンα2A、またはリンパ芽球様インターフェロンタウから選択される。
【0013】
第3の態様において、本発明は、治療上有効な量の式(I):
【化9】

の化合物もしくは医薬的に許容されるその塩、および治療上有効な量の式(II):
【化10】

の化合物もしくは医薬的に許容されるその塩、ならびに医薬的に許容される担体を含有する組成物を提供し、ここで、式(II)の化合物もしくは医薬的に許容されるその塩に対する式(I)の化合物もしくは医薬的に許容されるその塩の比率は、約1:10である。
【0014】
本発明の他の態様は、本明細書に記載の実施態様の適切な組み合わせを含んでよい。
【0015】
さらに他の態様および実施態様が、本明細書の記載中に見出されうる。
【0016】
本明細書に記載の全ての特許、特許出願、および参考文献は、引用によりその全体が本明細書に援用される。一貫性に欠ける場合、本出願の開示(定義を含む)を優先する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書に用いられるように、以下の用語は以下に示される意味を有する。
【0018】
本明細書において用いる単数形「a」、「an」および「the」は、他に明確に指示されない限り、複数の言及も含む。
【0019】
本発明の特定の化合物はまた、異なる安定した立体構造形態で存在していてよく、それは分離可能でありうる。非対称単結合について制限された回転に起因するねじれ非対称(Torsional asymmetry)、例えば、立体障害または環の歪みにより、異なる配座異性体の分離が可能になりうる。本発明には、これら化合物の各配座異性体およびその混合物が含まれる。
【0020】
本発明の化合物は、医薬的に許容される塩として存在し得る。本明細書で用いる用語「医薬的に許容される塩」は、本発明の化合物の塩または双性イオン形態を意味し、それは水もしくは油-溶性もしくは分散性であり、適切な医学的判断の範囲内で、妥当な利益/リスク比に見合って、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題もしくは合併症を伴わずに患者の組織に接触して用いるのに適していて、それらの使用目的に有効である。該塩は化合物の最終的な単離および精製の間に製造することができるか、あるいは別途、適切な窒素原子を適切な酸と反応させることにより製造することができる。代表的な酸付加塩としては、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、クエン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、硫酸水素塩、酪酸塩、ショウノウ酸塩(camphorate)、カンファースルホン酸塩;ジグルコン酸塩(digluconate)、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メシチレンスルホン酸塩、メタンスルホン酸塩、ナフチレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩(palmoate)、ペクチン酸塩(pectinate)、過硫酸塩、3-フェニルプロプリオン酸塩(phenylproprionate)、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、トリクロロ酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、リン酸塩、グルタミン酸塩、炭酸水素塩、パラ-トルエンスルホン酸塩、およびウンデカン酸塩が挙げられる。医薬的に許容される付加塩の形成に用いることができる酸の例としては、無機酸(例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、およびリン酸)および有機酸(例えばシュウ酸、マレイン酸、コハク酸、およびクエン酸)が挙げられる。
【0021】
塩基付加塩は、カルボキシ基を、適切な塩基(例えば、金属カチオンのヒドロキシド、カーボネート、もしくはビカーボネート)と反応させるか、あるいはアンモニア、または有機第一級、第二級、もしくは第三級アミンと反応させることによる、化合物の最終的な単離および精製の間に製造することができる。医薬的に許容される塩のカチオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、およびアルミニウム、ならびに無毒性の第四級アミンカチオン(例えば、アンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジエチルアミン、エチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、N,N-ジメチルアニリン、N-メチルピペリジン、N-メチルモルホリン、ジシクロヘキシルアミン、プロカイン、ジベンジルアミン、N,N-ジベンジルフェネチルアミン、およびN,N'-ジベンジルエチレンジアミン)が挙げられる。塩基付加塩の形成に用いることができる他の代表的な有機アミンとしては、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペリジン、およびピペラジンが挙げられる。
【0022】
本発明は、治療上有効な量の式(I)および(II)の化合物または医薬的に許容されるその塩、ならびに1つ以上の医薬的に許容される担体、希釈剤、もしくは賦形剤を含む、医薬組成物を提供する。本明細書で用いる用語「治療上有効な量」は、有意義な患者利益(例えば、ウイルス量の持続的減少)を示すのに十分である各活性成分の総量を言う。単独で投与される個々の活性成分に適用する場合、該用語は成分単独の量を言う。組み合わせに適用する場合、該用語は、組み合わせて、連続して、あるいは同時に投与されるかどうかにかかわらず、治療効果をもたらす活性成分を合わせた量を言う。該式(I)および(II)の化合物および医薬的に許容されるその塩は上記の通りである。該担体、希釈剤、または賦形剤は、製剤の他の成分に適合し、そのレシピエントに有害でないという意味で許容可能でなくてはならない。本発明の別の態様によると、式(I)および(II)の化合物もしくは医薬的に許容されるその塩を、1つ以上の医薬的に許容される担体、希釈剤、もしくは賦形剤と混合することを含む、医薬製剤の製造方法もまた提供する。本明細書で用いる用語「医薬的に許容される」は、適切な医学的判断の範囲内で、妥当な利益/リスク比に見合って、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題もしくは合併症を伴わずに患者の組織に接触して用いるのに適していて、それらの使用目的に有効である、化合物、物質、組成物、および/または剤形を言う。
【0023】
医薬製剤は、単位用量あたり所定の量の活性成分を含む単位剤形であってもよい。通常、本発明の医薬組成物は、1日あたり約1から約5回の投与か、あるいは持続投与され得る。そのような投与は、長期治療または救急治療として用いることができる。担体材料と組み合わせて単一剤形を製造する活性成分の量は、処置する症状、症状の重篤性、投与回数、投与経路、用いた化合物の排出速度、処置期間、ならびに患者の年齢、性別、体重、および状態によって変わり得る。好ましい単位用量製剤は、活性成分の、本明細書において上記した1日量もしくはそれ以下、またはその適当な画分を含むものである。通常、化合物の至適用量よりかなり少ない少用量で処置を開始する。その後、該条件下で最適な効果に達するまで投与量を少しずつ増加させる。概して、いずれの有害または有毒な副作用も引き起こさずに抗ウイルス効果が通常得られる濃度レベルで、該化合物を投与することが最も望ましい。
【0024】
本発明の組成物は抗HCV活性を有する2つの化合物の組み合わせを含有するので、両化合物は、単独療法レジメンにおいて通常投与される用量より少ないかもしくは同等である用量であり得る。本発明の化合物の各々が、1日あたり約0.01〜約250ミリグラム/キログラム(「mg/kg」)体重、好ましくは1日あたり約0.05〜約100 mg/kg体重である投与量レベルが、HCV介在疾患の予防および治療のための単独療法においては典型的である。本発明の組成物を、1つ以上のさらなる治療薬もしくは予防薬とともに、例えばモノリシック(monolithic)および/または二層/多層の錠剤の形態で、一緒に製剤化してもよいか、あるいは、該治療薬もしくは予防薬と別個に投与してもよい。
【0025】
医薬製剤は、いずれの適当な経路、例えば、経口(頬側または舌下を含む)、直腸、経鼻、局所的(頬側、舌下、または経皮を含む)、膣、または非経口(皮下、皮内、筋肉内、関節内、滑液嚢内(intrasynovial)、胸骨内、髄腔内、病巣内、静脈内、または皮内注射もしくは注入を含む)経路による投与に適応しうる。そのような製剤は、薬学の分野において公知のいずれの方法よっても(例えば、活性成分と担体もしくは賦形剤を会合させることにより)、製造されうる。経口投与または注射による投与が好ましい。
【0026】
経口投与に適応した医薬製剤は、カプセル剤もしくは錠剤;粉末剤もしくは顆粒剤;水性もしくは非水性液体中の液剤もしくは懸濁剤;食用フォーム剤もしくはホイップ剤;または水中油液体エマルジョン剤もしくは油中水エマルジョン剤といった、別々のユニットであってよい。
【0027】
例えば、経口投与用に、錠剤もしくはカプセル剤の形態において、活性薬剤成分は、経口で無毒の医薬的に許容される不活性担体(例えばエタノール、グリセロール、水など)と合わせることができる。粉末剤は、化合物を適切な微粒子サイズに細かく粉末化し、同様に粉末化された食用炭水化物(例えばデンプンまたはマンニトール)などの医薬担体と混合することにより製造される。着香剤、保存剤、分散剤、および着色剤もまた存在し得る。
【0028】
カプセル剤は、上記のように粉末混合物を製造し、成型ゼラチンシース(gelatin sheath)に詰めることにより製造される。充填工程の前に、流動化剤および滑沢剤(例えばコロイド状シリカ、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、または固体のポリエチレングリコール)を粉末混合物に加えることができる。カプセル剤が摂取される際の薬剤の有効性を高めるために、崩壊剤または可溶化剤(例えば寒天、炭酸カルシウムまたは炭酸ナトリウム)を加えることもできる。
【0029】
さらに、所望される場合もしくは必要な場合、適切な結合剤、滑沢剤、崩壊剤、および着色剤を混合物に加えることもできる。適切な結合剤としては、デンプン、ゼラチン、天然糖(例えばグルコースもしくはβ-ラクトース)、コーンシロップ、天然および合成ガム(例えばアカシア、トラガカントもしくはアルギン酸ナトリウム)、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコールなどが挙げられる。これらの剤形に用いられる滑沢剤としては、オレイン酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどが挙げられる。崩壊剤としては、限定はしないが、デンプン、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、キサンタンガムなどが挙げられる。錠剤は、例えば、粉末混合物を製造し、顆粒化もしくは充填し、滑沢剤および崩壊剤を加え、そして錠剤に圧縮することにより製剤化される。粉末混合物は、適切に粉末化された化合物と、上記の希釈剤もしくは塩基、ならびに適宜、結合剤(例えばカルボキシメチルセルロース、アルギネート(aliginate)、ゼラチン(gelating)、もしくはポリビニルピロリドン)、溶解遅延剤(例えばパラフィン)、吸収促進剤(例えば第四級塩)および/または吸収剤(例えばベントナイト、カオリン、もしくはリン酸水素カルシウム)とを混合することにより製造される。結合剤(例えばシロップ、デンプン糊、アカシア粘液(acadia mucilage)、またはセルロース系物質もしくはポリマー系物質の溶液)で湿らせて、ふるいに押し通すことにより、粉末混合物を顆粒化することができる。顆粒化の代替法として、該粉末混合物を錠剤機に通して、不完全に成型されたスラグを得た後、顆粒に粉砕することができる。該顆粒を、ステアリン酸、ステアリン酸塩、タルク、または鉱物油の添加により滑らかにして、錠剤成形型への接着を防ぐことができる。次いで、滑らかにした混合物を錠剤へと圧縮する。本発明の化合物はまた、自由流動性不活性担体と合わせて、顆粒化工程もしくは成形工程(slugging step)を経ずに直接、錠剤へと圧縮することができる。シェラックのシールコート(sealing coat)、糖もしくはポリマー材のコーティング、およびワックスの艶出しコーティングから成る、澄明もしくは不透明な保護コーティングを施すことができる。これらのコーティングに染料を加えて、異なる単位用量と区別することができる。
【0030】
経口液剤(例えば液剤、シロップ剤、およびエリキシル剤)は、所定の分量が所定の量の化合物を含むように単位用量形態で製造することができる。シロップ剤は、適切に風味付けされた水溶液中に化合物を溶解させることにより製造でき、一方、エリキシル剤は無毒のビヒクルを用いることにより製造される。可溶化剤および乳化剤(例えばエトキシ化イソステアリルアルコールおよびポリオキソエチレンソルビトールエーテル)、保存剤、香味添加剤(例えばペパーミント油あるいは天然甘味剤、またはサッカリンもしくは他の人工甘味剤など)を加えることもできる。
【0031】
必要に応じて、経口投与のための単位用量製剤をマイクロカプセル化することができる。該製剤はまた、例えば、ポリマー、ワックスなどの中に粒子状物質をコーティングまたは組み込むことによって、放出を遅延もしくは持続するように製造され得る。
【0032】
式(I)および(II)の化合物、および医薬的に許容されるその塩はまた、リポソームデリバリーシステム(例えば、小型の単層ベシクル、大型の単層ベシクル、および多重層ベシクル)の形態で投与することもできる。リポソームは、様々なリン脂質、例えばコレステロール、ステアリルアミン、またはホスファチジルコリンから形成することができる。
【0033】
式(I)の化合物および医薬的に許容されるその塩はまた、化合物分子が結合した個々の担体としてモノクローナル抗体を用いることによって送達されうる。該化合物はまた、標的化可能な薬剤担体としての可溶性ポリマーと結合させてもよい。そのようなポリマーとしては、ポリビニルピロリドン、ピラン共重合体、ポリヒドロキシプロピルメタクリルアミドフェノール、ポリヒドロキシエチルアスパルトアミドフェノール、またはパリトイル(palitoyl)残基で置換されたポリエチレンオキシドポリリシンを挙げることができる。さらに、該化合物は、薬剤の制御放出を達成するのに有用な生分解性ポリマーの類、例えば、ポリ乳酸、ポリイプシロンカプロラクトン(polepsilon caprolactone)、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリジヒドロピラン、ポリシアノアクリレート、およびヒドロゲルの架橋もしくは両親媒性ブロック共重合体に結合していてよい。
【0034】
経皮投与に適した医薬製剤は、長期間、レシピエントの表皮と密接な接触を維持することを目的とした、個別のパッチであってもよい。例えば、Pharmaceutical Research, 3(6), 318 (1986)に一般的に記載されるように、該活性成分はイオントフォレーシスによってパッチから送達されうる。
【0035】
局所投与に適した医薬製剤は、軟膏剤、クリーム剤、懸濁剤、ローション剤、粉末剤、液剤、ペースト剤、ゲル剤、スプレー剤、エアロゾル剤、または油剤として製剤化されうる。
【0036】
眼または他の外部組織、例えば口および皮膚の処置において、該製剤は好ましくは、局所用軟膏剤もしくはクリーム剤として塗布される。軟膏剤に製剤化する場合、該活性成分はパラフィン系(paraffinic)または水-混和性のいずれかの軟膏基剤とともに用いられうる。別法として、該活性成分は水中油型クリーム基剤もしくは油中水型基剤(water-in oil base)を用いてクリーム剤に製剤化されうる。
【0037】
眼への局所投与に適した医薬製剤としては、該活性成分が適切な担体(とりわけ水性溶媒)に溶解もしくは懸濁されている点眼剤が挙げられる。
【0038】
口への局所投与に適した医薬製剤としては、ドロップ剤(lozenge)、トローチ剤(pastille)、および口腔洗浄剤(mouth wash)が挙げられる。
【0039】
直腸投与に適した医薬製剤は、坐薬または浣腸剤であってよい。
【0040】
担体が固体である、経鼻投与に適した医薬製剤としては、粗粉末(course powder)が挙げられ、それは、嗅ぎ薬を摂取する方法、すなわち、鼻に近づけられた粉末剤の容器から鼻腔を介して急速吸入することにより、投与される。鼻腔用スプレーもしくは点鼻薬として投与するための、担体が液体である適切な製剤としては、活性成分の水性または油性液剤が挙げられる。
【0041】
吸入による投与に適した医薬製剤としては、微粒子粉末もしくは微粒子ミストが挙げられ、それは様々なタイプの定量加圧(metered, dose pressurized)エアロゾル剤、ネブライザー、または吸入器を用いて発生されうる。
【0042】
膣内投与に適した医薬製剤は、ペッサリー、タンポン、クリーム剤、ゲル剤、ペースト剤、フォーム剤、またはスプレー製剤であってよい。
【0043】
非経口投与に適した医薬製剤としては、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤(bacteriostat)、および製剤を対象のレシピエントの血液と等張にする塩(soute)を含みうる水性および非水性の無菌注射液剤;ならびに懸濁化剤および増粘剤を含みうる水性および非水性の無菌懸濁剤が挙げられる。該製剤は、単位用量もしくは複数用量(multi-dose)容器、例えば、密封アンプルおよびバイアルに入っていてよく、使用の直前に無菌の液体担体(例えば注射用の水)の添加のみを必要とする凍結乾燥状態で保存してもよい。即時調製(Extemporaneous)注射液剤および懸濁剤は、無菌粉末剤、顆粒剤、および錠剤から調製されうる。
【0044】
具体的に上述した成分に加えて、該製剤は、当該製剤のタイプに関して当分野で通常の他の薬剤を含んでもよい(例えば経口投与に適した製剤は香味剤を含んでもよい)ことが理解されるべきである。
【0045】
該用語「患者」には、ヒトおよび他の哺乳動物の両方が含まれる。
【0046】
該用語「処置」は:(i)疾患、障害、および/または症状に罹りやすいが、まだ罹患していると診断されていない患者において、疾患、障害、または症状の発症を予防すること;(ii)疾患、障害、または症状の抑制、すなわち、その進行を抑止すること;ならびに(iii)疾患、障害、または症状を軽減すること、すなわち、疾患、障害、および/または症状の退行をもたらすことを言う。
【0047】
以下の表1に、本発明の組成物とともに投与することができる化合物のいくつかの実例を記載する。本発明の組成物は、併用療法において、一緒にもしくは別個に、または該化合物を組成物中に混合することによって、他の抗HCV活性化合物とともに投与することができる。
表1
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】

【表5】

【0048】
本発明の化合物は、実験用試薬として用いてもよい。化合物は、ウイルス複製アッセイの設計、HCV疾患メカニズムの知識をさらに高めるための動物アッセイ系(animal assay system)および構造生物学研究の検証に対する研究ツールの提供において有益でありうる。さらに、本発明の化合物は、例えば競合阻害により、他の抗ウイルス性化合物の結合部位の確立または決定に有用である。
【0049】
本発明の化合物はまた、物質のウイルス汚染を処置もしくは予防するのに用いてもよく、それにより、そのような物質(例えば血液、組織、手術器具および手術着、実験器具および実験着、ならびに採血または輸血の器具および材料)と接触する、実験もしくは医療の関係者または患者のウイルス感染の危険性を低下させうる。
【0050】
本開示は特定の実施態様に関連して記載されるが、それはその発明の範囲を制限することを意図するものではない。一方、本開示は、全ての代替形態、改変形態、および同等形態を、特許請求の範囲内に含み得るものとして包含する。従って、特定の実施態様を含む以下の実施例は、本発明の1つの実例を説明し、該実施例は特定の実施態様の例示目的であり、そしてその方法および概念的態様の最も有用で且つ容易に理解される記載であると考えられるものを提供するために提示するものであると解される。
【0051】
出発物質は、商業的供給源から得ることができるか、または当業者には公知の十分に確立した文献の方法によって製造することができる。
【実施例】
【0052】
化合物
HCV NS5A阻害剤(式(I)の化合物)は、共願である特許出願WO2008/021927もしくはWO2009/020825に記載の方法に従って製造することができる。HCV NS3阻害剤(式(II)の化合物)は、共願である米国特許第6,995,174号および共願である米国特許出願第12/547,158号に記載の方法に従って製造することができる。リコンビナントIL-29(rIL-29もしくはrIFNλ1)は、IL-29の修飾N-末端メチオニル化形態として大腸菌において発現される。リコンビナントIL-28A(rIFNλ2)およびrIL28B(rIFNλ3)もまた、大腸菌において発現される。ペグrIFNλ1(pegIFNλ)は、rIFNλ1(分子量 19.6 kDa)および20 kDa 直線状ポリエチレングリコール(peg)鎖の共有結合型複合体(covalent conjugate)である。rIFNλ1およびpegIFNλの両方とも、Zymogeneticsによって合成され、アミノ酸解析、N-末端シークエンシング、サイズ排除クロマトグラフィー多角度光散乱測定システム(SEC-MALS)、ペプチドマップ解析、および全質量分析(whole mass analysis)を含む多くの方法によって広くキャラクタライズされている。rIFNλ1についての解析をまとめると、該精製タンパク質は、予期される立体構造中に2つのジスルフィド結合を有する主に1つの形態であることが確認される。また、該解析によって、該配列は、該タンパク質がさらなるN-末端メチオニンを有していてグリコシル化を有しない点において、cDNA配列および大腸菌中の発現に基づいて予期されるとおりであることが確認される。pegIFNλについての解析をまとめると、該分子の該タンパク質部分は依然として予期される形態であり、予期される立体構造を有することが確認される。加えて、該解析によって、該分子は、予期されるとおり、N-末端において優位にペグ化されていることが示された。SEC-MALSおよび全質量分析による改正によって、分子量は、rIFNλ1と20 kDa pegとの結合から予期されるとおり、約39.6 kDaであることが確認される。
【0053】
細胞株
これらの研究に用いたHuh-7細胞株は、Dr. Ralf Bartenschlager(ハイデルベルグ大学, ハイデルベルグ, ドイツ)から入手し、DMEM(10%FBS、10 U/mlペニシリンおよび10 μg/mlストレプトマイシンを含有)中で増殖させた。これらの研究に用いたHCVレプリコンは、WO2004014852に記載の方法を用いて、Bristol-Myers Squibbにて産生された。公表された遺伝子型1b HCVレプリコンのコード配列(Lohmann, V., F. Korner, J.-O. Koch, U. Herian, L. Theilmann, and R. Bartenschlager 1999, Science 285:110-113)は、EMBL受託番号AJ242652に記載の配列、ヌクレオチド1801〜7758を用いて、Operon Tehnologies, Inc. (Alameda, CA)によって合成された。次いで、該機能性レプリコンを、標準的な分子生物学的技法を用いて、プラスミドpGem9zf(+)(Promega, Madison, WI)にアセンブリーした。ルシフェラーゼ・レポーターをコードするレプリコンを作製するために、ヒト化ウミシイタケルシフェラーゼタンパク質をコードする遺伝子をネオマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子の上流に導入した。得られたレプリコンは、(i)カプシドタンパク質の最初の12個のアミノ酸に融合したHCV 5' UTR、(ii)ウミシイタケルシフェラーゼ遺伝子、(iii)ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子(neo)、(iv)脳心筋炎ウイルス(EMCV)からのIRES、ならびに(v)HCV NS3〜NS5B遺伝子およびHCV 3' UTRから成る。
【0054】
該1aレプリコンは、上記のクローンを用いて、標準的な分子クローニング技法を用いて、1b HCV 配列をpCV-H77c(Yanagi, M., R. Purcell, S. Emerson, J. Bukh 1997, PNAS, 94:8738-8743; Jens Bukh, National Institute of Health, Bethesda, MD 20892)からの遺伝子型1a配列で置き換えることにより、作製された。より効率的な1aレプリコンを得るために、適応的変異 P1496L(NS3)およびS2204I(NS5A)を、製造者による記載の通りにQuick Change XL Site-Directed Mutagenesis Kit(Stratagene Corporation, La Jolla, CA)を用いて、導入した。
【0055】
HCVレプリコン細胞株を、Lohmanら(Lohmann, V., F. Korner, J.-O. Koch, U. Herian, L. Theilmann, and R. Bartenschlager 1999, Science 285:110-113)により記載された通りにコロニーから単離し、全ての実験に用いた。要するに、レプリコンクローンを、ScaIならびに製造者の説明書に従ってT7 MegaScript transcription kit (Ambion, Austin, TX)を用いてin vitroで合成されたRNA転写物を用いて、直線化した。10〜20 μgのin vitro転写レプリコンRNAを、DMRIE-C試薬(Invitrogen Corporation, Carlsbad, CA)を用いて製造者のプロトコールに従ってトランスフェクションすることにより、4-5 X 106個のHuh-7 細胞に導入した。24時間後、0.5 mg/mL Geneticin(G418, Gibco-BRL, Rockville, MD)を含有する選択培地を加え、3〜5日ごとに培地を交換した。約4週間後、さらなる分析のために細胞を増殖させた。細胞を、37℃にて、10%熱失活仔ウシ血清(Sigma)、ペニシリン/ストレプトマイシン、および0.5 mg/ml G418を有するDMEM(Gibco-BRL, Rockville, MD)中で維持した。
【0056】
細胞培養 細胞毒性およびルシフェラーゼアッセイ
化合物の有効性を決定するために、96-ウェルプレートに、104/ウェルの密度で、10%FBSを含有するDMEM培地中に、HCVレプリコン細胞を播種した。終夜培養した後、DMSOに連続希釈した化合物またはDMSO単独を個々のウェルに加え、最終DMSO濃度を0.5%にした。次いで、細胞プレートを37℃で3日間培養した後、細胞毒性およびHCV阻害についてアッセイした。Alamar blue アッセイを用いて細胞生存率を測定し、CC50値を、半数影響(median effect)式を用いて算出した。
【0057】
その後、プレートをPBSで2回洗浄し、ウミシイタケルシフェラーゼ活性を、製造者の説明書に従ってDual-Glo Luciferase Assay System(Promega Corporation, Madison, WI)を用いてアッセイした。TopCount NXT マイクロプレートシンチレーションおよびルシフェラーゼカウンター(Packard Instrument Company)にてプレートを読み取った。50%有効濃度(EC50)を、Excel Fit(Version 2.0, Build 30)を用いることによって算出した。既知のx(化合物濃度)およびy(DMSOのみのコントロールウェルに対する%)値を用い、y=A+((B-A)/(1+((C/x)^D)))(ここで、AおよびBは、各々、曲線の最低および最高プラトーに等しく、Cは曲線の中間でのx値に等しく、そしてDはスロープファクターに等しい)として示されるExcel Fit方程式205を用いて、EC50を算出した。
【0058】
組み合わせ研究
阻害剤組み合わせ研究のために、IFN-αならびにHCV NS5AおよびNS3プロテアーゼの阻害剤を、11濃度で各々試験した。ストック溶液(目的の最終アッイ濃度の200倍)を、DMSO中に3倍希釈することにより調製し、細胞/培地に加えた。該化合物を、単独療法として、ならびに様々な濃度比で式(I)の化合物と組み合わせて、試験した。細胞を化合物に3日間曝露した後、上記の通りにルシフェラーゼアッセイを用いて、HCV阻害の量を決定した。これらの組み合わせ剤の潜在的な細胞毒性もまた、並行して、Alamar blue染色により分析した。アンタゴニズム、相加性、もしくは相乗作用の程度を、薬物濃度の範囲にわたって決定し、組み合わせ反応曲線をフィットさせて、薬物処置組み合わせの抗ウイルス効果を評価した。組み合わせた薬物の効果を合わせて、Chou Chou T. Theoretical Basis, Experimental Design, and Computerized Simulation of Synergism and Antagonism in Drug Combination Studies. Pharmacological Reviews. 2006; 58(3):621-81の方法を用いて解析した。
【0059】
全ての評価を、生物統計学ソフトウェアSAS Proc NLIN、および4つのパラメーターのロジスティックを用いて、コンピュータ処理した。全ての組み合わせ指標を、アイソボログラム法を用いて、相加性からの逸脱について試験した。漸近信頼区間もまた、各々の組み合わせ指標について算出された。これらの区間を用いて、該限界(bound)を1と比較することにより、相加性からの逸脱について検定した − 1より大きい下限はアンタゴニズムを示し、1未満の上限は相乗作用を示し、そして該区間に含まれる1の値は相加性を示す。
【0060】
結果
抗ウイルス療法に対する抵抗性が、慢性ウイルス感染症の患者の管理において主要な問題となっている。持続性ウイルス陰性化を達成するために、組み合わせ療法(とりわけ、別個のHCVウイルス標的を標的とするもの)を用いることが不可欠であろう。本願において出願人らは、HCVレプリコンを用いて、式(I)のHCV NS5A阻害剤と式(II)のNS3プロテアーゼ阻害剤を組み合わせた場合、ならびにIFN-α、pegIFNλ、もしくはrIFNλ1と両化合物を組み合わせた場合の効果を比較する場合の、アンタゴニズム、相加性もしくは相乗作用の程度を評価している。
【0061】
表2〜6に示す実験について、式(I)のNS5A阻害剤および式(II)のNS3プロテアーゼ阻害剤を、HCVレプリコン系を用いて、単独かもしくは様々なインターフェロンとの組み合わせのいずれかにおいて試験し、各々ならびに組み合わせ指標(CI)についての推定EC50値を報告する。これらの組み合わせ剤の潜在的な細胞毒性能もまた並行して分析され、いずれもCC50値に達しなかった。
【0062】
式(I)のNS5A阻害剤と式(II)のNS3プロテアーゼ阻害剤の組み合わせを、遺伝子型1aおよび1bレプリコン細胞の両方において評価した。表2に示されるとおり、遺伝子型1aにおける2つの実験からの全般的な結果によると、1つの実験において、2.5:1の比のNS5A阻害剤:NS3プロテアーゼ阻害剤で75%および95%有効量にて、相乗効果を伴う相加性が認められたことが示される。

表2: 遺伝子型1aにおける、式(I)のHCV NS5A阻害剤と式(II)のNS3プロテアーゼ阻害剤の組み合わせ
【表6】

【0063】
遺伝子型1bにおける、式(I)のNS5A阻害剤(compound)と式(II)のNS3プロテアーゼ阻害剤との組み合わせの効果を、表3に要約する。全体として、全ての3つの実験の結果は相加性/相乗作用の混合を示した。

表3: 遺伝子型1bにおける、式(I)のNS5A阻害剤と式(II)のNS3プロテアーゼ阻害剤との組み合わせ
【表7】

【0064】
式(I)のNS5A阻害剤をまた、IFN-αおよび式(II)のNS3阻害剤との3つの薬剤の組み合わせ実験において、遺伝子型1bレプリコン細胞を用いて、試験した。4つの実験からの結果によると、50%有効濃度にて相加性/相乗作用、そして75および90%有効濃度にて相乗作用が示されている(表4)。

表4: 式(I)のNS5A阻害剤とIFN-αおよび式(II)のNS3阻害剤を用いた3剤の組み合わせ(Triple Combination)
【表8】

【0065】
pegIFNλ、式(II)のNS3プロテアーゼ阻害剤、および式(I)のNS5A阻害剤の3剤の組み合わせを、相加性について試験した。これらの実験からのデータを、表5に要約する。全3つの実験において、50%有効濃度で、相加性が観察された。75および90%有効濃度では、実験1および3において相加性が観察され、実験2において相乗作用が観察された。全体として、これらの結果によると、pegIFNλ、NS3プロテアーゼ阻害剤、およびNS5A阻害剤の組み合わせについては相加性および相乗作用が示される。これらの結果は、式(II)のNS3プロテアーゼ阻害剤および式(I)のNS5A阻害剤と組み合わせてrIFNλ1を用いた結果と一致している(表6)。

表5: PegIFNλ、式(I)のNS5A阻害剤、および式(II)のNS3プロテアーゼ阻害剤を用いた、3剤の組み合わせ研究
【表9】


a 250/1/1000の比で試験した化合物

表6: rIFNλ1、式(I)のNS5A阻害剤、および式(II)のNS3阻害剤を用いた、3剤の組み合わせ研究
【表10】


a 250/1/1000の比で試験した化合物
【0066】
これらの結果は、レプリコン細胞と式(I)のNS5A阻害剤および式(II)のHCV NS3プロテアーゼ阻害剤との組み合わせ療法(イントロンA、rIFNλ1、もしくはpegIFNλの有無にかかわらず)が相乗的な抗ウイルス効果を相加させることを示す。重要なことに、これらの組み合わせのいずれについても、拮抗作用または細胞毒性の増大は観察されなかった。従って、これらの組み合わせは、HCV感染患者における組み合わせレジメンにおける優れた候補である。
【0067】
本発明は前述の例示的な実施例に限定されず、そしてその本質的特性から逸脱することなく他の特定の形態において具体化することができることが当業者には明白であろう。従って該実施例は、あらゆる点で、制限するものではなく例示的なものとしてみなされ、そして、前述の実施例に対してよりはむしろ特許請求の範囲を参照すべきであり、従って、特許請求の範囲と同等の意味および範囲内となる全ての変更を包含すると意図することが望ましい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療上有効な量の式(I):
【化1】

の化合物もしくは医薬的に許容されるその塩、および治療上有効な量の式(II):
【化2】

の化合物もしくは医薬的に許容されるその塩、ならびに医薬的に許容される担体を含有する組成物。
【請求項2】
式(II)の化合物もしくは医薬的に許容されるその塩に対する式(I)の化合物もしくは医薬的に許容されるその塩の比率が約1:3〜約3:1である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
式(II)の化合物もしくは医薬的に許容されるその塩に対する式(I)の化合物もしくは医薬的に許容されるその塩の比率が約1:2.5〜約2.5:1である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
式(II)の化合物もしくは医薬的に許容されるその塩に対する式(I)の化合物もしくは医薬的に許容されるその塩の比率が約1:1である、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
式(II)の化合物もしくは医薬的に許容されるその塩に対する式(I)の化合物もしくは医薬的に許容されるその塩の比率が約1:2.5である、請求項3に記載の組成物。
【請求項6】
式(II)の化合物もしくは医薬的に許容されるその塩に対する式(I)の化合物もしくは医薬的に許容されるその塩の比率が約2.5:1である、請求項3に記載の組成物。
【請求項7】
抗HCV活性を有する1または2個のさらなる化合物をさらに含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
該さらなる化合物のうち少なくとも1つがインターフェロンまたはリバビリンである、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
該インターフェロンが、インターフェロンα2B、ペグインターフェロンα、コンセンサスインターフェロン、インターフェロンα2A、インターフェロンλ、ペグインターフェロンλ、またはリンパ芽球様インターフェロンタウから選択される、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
患者に治療上有効な量の請求項1に記載の組成物を投与することを含む、患者においてHCV感染を処置する方法。
【請求項11】
式(II)の化合物もしくは医薬的に許容されるその塩に対する式(I)の化合物もしくは医薬的に許容されるその塩の比率が約1:3〜約3:1である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
式(II)の化合物もしくは医薬的に許容されるその塩に対する式(I)の化合物もしくは医薬的に許容されるその塩の比率が約1:2.5〜約2.5:1である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
式(II)の化合物もしくは医薬的に許容されるその塩に対する式(I)の化合物もしくは医薬的に許容されるその塩の比率が約1:1である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
式(II)の化合物もしくは医薬的に許容されるその塩に対する式(I)の化合物もしくは医薬的に許容されるその塩の比率が約1:2.5である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
式(II)の化合物もしくは医薬的に許容されるその塩に対する式(I)の化合物もしくは医薬的に許容されるその塩の比率が約2.5:1である、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
抗HCV活性を有する1または2個のさらなる化合物を、請求項1に記載の組成物より前、後、もしくは同時に投与することをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
該さらなる化合物のうち少なくとも1つがインターフェロンまたはリバビリンである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
該インターフェロンが、インターフェロンα2B、ペグインターフェロンα、コンセンサスインターフェロン、インターフェロンα2A、インターフェロンλ、ペグインターフェロンλ、またはリンパ芽球様インターフェロンタウから選択される、請求項17に記載の方法。

【公表番号】特表2013−507439(P2013−507439A)
【公表日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−534245(P2012−534245)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【国際出願番号】PCT/US2010/051898
【国際公開番号】WO2011/046811
【国際公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(391015708)ブリストル−マイヤーズ スクイブ カンパニー (494)
【氏名又は名称原語表記】BRISTOL−MYERS SQUIBB COMPANY
【Fターム(参考)】