説明

C環4位でカップリングしているフラボノイド、プロアントシアニジン、及びそれらのアナログの調製方法

本発明は、C環4位でカップリングしているフラボノイド、プロアントシアニジン、及びそれらのアナログを調製する新規の方法に関する。本発明の特定の適用によれば、プロアントシアニジン及びプロアントシアニジンアナログの調製方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、C環4位でカップリングしているフラボノイド、プロアントシアニジン、及びそれらのアナログを調製する新規プロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
プロアントシアニジン(プロシアニジン、オリゴマープロアントシアニジン(OPC,oligomeric proanthocyanidin)、又は縮合型タンニンとしても知られる)は、植物に遍在するものであり、ヒトの食餌の重要な構成要素である。抗酸化性、抗アテローム硬化性、抗炎症性、抗腫瘍性、骨粗鬆症性、及び抗ウイルス効果を含めて、広範囲の潜在的に重要な生物活性は、このクラスの化合物に起因している。
【0003】
プロアントシアニジンは、フラバノールのダイマー、トリマー、オリゴマー、又はポリマーである。フラバノール(フラバン−3−オールとも呼ぶ)は、フラボノイドの一クラスであり、式(A)の(+)−カテキン(化合物1)及び式(A)の(−)−エピカテキン(化合物2)が含まれる。化合物1又は化合物2は、モノマー単位として、それらの4位と8位、又は4位と6位を介して結合して、プロアントシアニジンを生成する。これらの化合物の化学及び生物学の進歩は、純粋な遊離フェノール化合物の単離及び合成が困難であるため遅々としたものであった。
【0004】
【化1】


式(A)
【0005】
フラバン−3,4−ジオールのC環4位におけるフラバニル、フラボノイド、及び他のフェノール部分の導入によるプロアントシアニジン及びそのアナログの生成は当技術分野で周知であり、適切な求核性単位及び求電子性単位の酸触媒縮合によって実現された。これらの初期の立体選択的合成方法が、アカシア・メアンシー(Acacia mearnsii)(ブラックワトル(Black Wattle))及びシノプシス属(Schinopsis spp)に由来する経済的に重要なプロフィセチニジン及びプロロビネチニジンをテトラマーレベルまで構造解明するのに重要な役割を果たした。
【0006】
しかし、上記の方法は、植物材料において低濃度で存在する光学活性出発材料を得るのに必要とされた労力を要する抽出手順によって妨げられた。
【0007】
プロアントシアニジンダイマー、トリマー、テトラマー、高次オリゴマー、及びポリマー、並びにそれらのアナログへの合成経路は、市販の(+)−カテキン(化合物1)及び(−)−エピカテキン(化合物2)のC環4位のベンジル位において求電子性を増大する目的でC環4位に脱離基を導入することによって大いに向上した。したがって、C環4位に脱離基を導入するには、合成において追加のステップの実行、すなわち本明細書でC環4位官能化前駆体と呼ぶものの調製が必要である。それに関連する別の欠点を以下に述べる。
【0008】
C環4位官能化前駆体の調製は、当技術分野で周知であり、様々な方法の中でもとりわけ、化合物1及び2のC環4位における選択的臭素化によって実現される。臭素化は、ペルアセタートでしか可能でなく、競合する臭素化に対する芳香族環の反応性は、電子吸引性のアセタート基によって抑制される。しかし、重合度を制御するために、縮合の前に、求電子性種のC環8位における保護が必要であった。
【0009】
C環4位における硫黄又は酸素の導入を必要とする他の方法も報告されており、フラバン−3−オールのC環4位においてフラバニル又はフェノール部分を導入して、プロアントシアニジン及びそれらのアナログを生成する中間ステップとして使用された。
【0010】
本明細書に上述された従来技術方法に関連する別の欠点は、C環4位官能化前駆体の望ましくない自己縮合に帰する。このようなC環4位に脱離基を有する前駆体の自己縮合は、重合度に顕著な影響を及ぼす。したがって、重合度は制御するのが困難であり、その結果したがってダイマー、トリマー、テトラマー、及び高次オリゴマーの複合混合物、並びにアナログの複合混合物が生成される。C環4位官能化前駆体はそれぞれ、求電子中心を含み、その結果として、前記前駆体と求核試薬の間にC−C結合が形成した後、1つの求電子中心及び1つの求核中心が存在し、これらはさらに反応するおそれがあり、不都合なことに、重合度を制御することができないことを理解されたい。前駆体及び求核試薬が同一である場合は、望ましくないことにダイマー、トリマー、テトラマー、及び高次オリゴマーの複合混合物が生成され、前駆体及び求核試薬が同一でない場合は、望ましくないことにアナログの複合混合物が生成される。本発明によって、重合度の制御の改善及び自己重合の低減が可能になる。
【0011】
それにもかかわらず、カテキン又はエピカテキンなど、フラバン−3−オールのC環4位炭素における脱離基の導入を必要とするプロアントシアニジン及びそれらのアナログを合成調製する既知の方法の別の欠点は、公知のプロセスでは、一般に3,4−トランス異性体のプロアントシアニジンが優勢に生成され、一般に非常に低収率で3,4−シス異性体が生成されることが容易になることである。逆に、本発明は、3,4−シス異性体の収率を大幅に改善することが可能になる。
【0012】
「フラボノイド」という用語は、本明細書及び従属項において、そのより広い意味で使用されるフラバノイドとも呼ぶ化合物を含む。
【0013】
本明細書において、「プロアントシアニジン」という用語は、本質的に、フラボノイド基本骨格構造を有する同一モノマー単位2〜20個が、このような単位の鎖においてある単位の芳香族環の炭素と別の単位のC環4位炭素との間の炭素−炭素フラバニル間結合で結合している、マルチマーである化合物を意味する。したがって、化合物カテキン−(4β→8)−カテキンは、その用語が本発明の本明細書及び添付の特許請求の範囲において示す意味に従うプロアントシアニジンの一例である。
【0014】
本明細書では、「プロアントシアニジンアナログ」という表現は、本質的に、フラボノイド基本骨格構造を有するモノマー単位1〜20個から構成され、フラボノイド基本骨格を有する単位が1個を超えて存在する場合、このような単位の鎖においてある単位の芳香族環の炭素と別の単位のC環4位炭素との間の炭素−炭素フラバニル間結合で結合しているが、フラボノイド基本骨格モノマー単位の少なくとも一部は、構造が他と異なり、単位の1又は複数は、1又は複数の非フラボノイド基本骨格単位とすることができ、ただし、このような1又は複数の非フラボノイド単位は、求核性芳香族部分を含み、このような求核性芳香族部分の炭素は、フラボノイド基本骨格単位のC環4位炭素と炭素−炭素結合を形成することを条件とする化合物を意味する。したがって、化合物(2R,4R)−4−(1,3,5−トリ−O−メチルフロログルシノール)−5,7,3’,4’−テトラ−O−メチル−フラバン−3−オンは、本発明に関する本明細書及び添付の特許請求の範囲においてその表現に帰する意味の範囲内にあるプロアントシアニジンアナログの一例である。
【0015】
また、本明細書において、「ダイマー」及び「トリマー」という用語はそれぞれ、2及び3個の同一構成要素単位が結合している結合体を意味し、オリゴマー及びポリマーという用語は対応する意味を有する。したがって、本発明の方法に従うダイマーの生成によって、プロアントシアニジンが生じる。
【0016】
さらに、本明細書において、「付加物」という用語は、炭素−炭素結合で一緒に結合している同一でない2個の構成要素単位の結合体を意味する。本発明の方法に従う付加物の生成によって、プロアントシアニジンアナログが生じる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の第1の態様によれば、フラバン−3−オール構造を有する化合物の非置換C環4位炭素に求核性芳香族部分を導入する方法であって、
(a)フラバン−3−オール構造を有する化合物のヒドロキシ基をオキソ基に転化して、前記化合物のフラバン−3−オンを生成するステップ;
(b)前記化合物のフラバン−3−オンを、酸化剤の存在下で求核性芳香族部分を含む化合物と接触させるステップ;
(c)前記フラバン−3−オン化合物のC環4位炭素と求核性芳香族部分の炭素との間に炭素−炭素結合を形成させるステップ;及び
(d)フラバン−3−オン部分を還元して、C環4位炭素において求核性部分で置換されている対応するフラバン−3−オール化合物を得るステップ
を含む方法が提供される。
【0018】
本発明の第2の態様によれば、置換基をそのC環3位及びC環4位炭素に3,4−シス立体配置で有するフラボノイドを調製する方法であって、
(a)フラバン−3−オール構造を有し、C環4位炭素において非置換である化合物を用意するステップ;
(b)求核性芳香族部分を有する化合物を用意するステップ;
(c)フラバン−3−オール構造を有する化合物のヒドロキシ基をオキソ基に転化して、前記化合物のフラバン−3−オンを生成するステップ;
(d)前記化合物のフラバン−3−オンを、酸化剤の存在下で求核性芳香族部分を含む化合物と接触させるステップ;
(e)フラバン−3−オン化合物のC環4位炭素と求核性芳香族部分の炭素との間に炭素−炭素結合を形成させるステップ;
(f)フラバン−3−オン部分を還元して、対応するフラバン−3−オール化合物を得るステップであって、前記化合物が、その化合物の3,4−シス立体配置と3,4−トランス立体配置との混合物中でC環4位炭素において求核性芳香族部分で置換されているステップ;及び
(g)前記化合物の3,4−シス立体配置と3,4−トランス立体配置を分離するステップ
を含む方法が提供される。
【0019】
上記の2つの方法において使用されるフラバン−3−オール化合物が、これらの方法の酸化又は還元ステップで反応する傾向を有する反応性置換基を含む場合、このような反応性置換基を、酸化又は還元ステップが行われる前に保護することができ、必要に応じてこのような保護基を除去して、元の置換基に戻すことができる。
【0020】
上記の2つの方法によって得られた生成物は、C環3位ヒドロキシ置換基又はC環4位求核性芳香族部分を他の何らかの置換基で置換することによってさらに誘導体化することができる。したがって、得られた化合物をアセチル化して、C環3位ヒドロキシ基をアセタート基に転化してもよい。
【0021】
本発明の特定の適用によれば、プロアントシアニジン及びプロアントシアニジンアナログの調製方法が提供され、方法は、
(a)式(I)で表わされるフラバン−3−オールの3−オキソ−誘導体(以下「3−オキソ−誘導体」)を用意するステップ:
【0022】
【化2】

【0023】
[式中、
、R、R、R、R、R、R、R、及びRはそれぞれ独立に、−H基、−OH基、ヒドロカルビル基、糖部分、及び−OR10からなる群から選択され;
10は、ヒドロカルビル基、アシル基、及びベンジル基からなる群から選択され;
〜R10のいずれか1つにおけるヒドロカルビル基、及びアシル基は、1〜10個の炭素原子を含む];
(b)プロアントシアニジン又はプロアントシアニジンアナログの少なくとも一部分を構成することになっており、求核性芳香族部分を有する追加の化合物(以下「追加化合物」)を用意するステップ;
(c)3−オキソ−誘導体及び追加化合物の各フェノール基及び各糖ヒドロキシ基を保護して、保護された前記3−オキソ−誘導体及び保護された前記追加化合物を生成するステップ;
(d)前記保護された3−オキソ−誘導体又はいずれのフェノール性ヒドロキシ基も糖ヒドロキシ基も含まない前記3−オキソ−誘導体を、酸化剤の存在下で、前記保護された追加化合物又はいずれのフェノール基も糖ヒドロキシ基も含まない前記追加化合物と接触させるステップ;
(e)3−オキソ−誘導体の4位における炭素原子(式(I)において「*」で示す)と前記追加化合物の求核性芳香族部分の一部分である炭素原子との間に直接C−C結合を形成させるステップ;
(f)任意で、かつ前記追加化合物が、そのC環4位において置換基を有さず、そのC環3位においてヒドロキシ基を有するフラボノイド基本骨格構造を有する場合、ヒドロキシド基を酸化して、第2の3−オキソ−誘導体を生成するステップ;
(g)さらに任意で、プロアントシアニジン又はプロアントシアニジンアナログの少なくとも一部分を構成するための、求核性芳香族部分を有する第2の追加化合物(以下「第2の追加化合物」)を用意するステップ;
(h)第2の3−オキソ−誘導体を、酸化剤の存在下で第2の追加化合物と接触させるステップ;
(i)任意で、得られるプロアントシアニジン又はプロアントシアニジンアナログに所望の数のモノマー単位を組み込むことを実現するのに必要な回数だけ、ステップ(f)、(g)、及び(h)を繰り返すステップ;
(j)さらに任意で、得られたプロアントシアニジン又はプロアントシアニジンアナログを還元して、得られる生成物に導入されたそれぞれの3−オキソ誘導体単位の様々なC環3位におけるオキソ基をヒドロキシド基に転化するステップ;及び
(k)任意で、フェノール又は糖ヒドロキシの保護基のいずれか又はすべてを除去して、脱保護したヒドロキシ化合物を得るステップ
を含む。
【0024】
式(I)の化合物のC環2位における立体化学によって、式(I)の生成物がα若しくはβ型又はその両方の混合物として存在することが可能になることを当業者は理解されよう。さらに、式(I)の化合物の上記の立体化学が、鏡像異性体として純粋で光学活性な生成物をもたらすことも理解されよう。
【0025】
フラバン−3−オールの3−オキソ−誘導体はフラバン−3−オールから調製することができ、フラバン−3−オールの3位におけるヒドロキシ基がオキソ基に酸化される。これは、当技術分野で公知であるいずれの手段でも実現することができる。このような調製は、例えばDess-Martin酸化と呼ぶ手順で行うことができる。そのようにすることによって、3−オキソ−誘導体は、C環3位オキソ置換基によってC環4位における求電子性を増強させたことが想定される。
【0026】
〜R10として選択することができるヒドロカルビル基は、直鎖状ヒドロカルビル基又は環状ヒドロカルビル基とすることができる。
【0027】
直鎖状ヒドロカルビル基は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、及びデシルからなる群から選択することができる。
【0028】
環状ヒドロカルビルは、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、及びシクロデシルからなる群から選択されてもよい。
【0029】
10として選択することができるヒドロカルビル基は、好ましくはベンジル基又はアシル基である。
【0030】
糖部分は、単糖、二糖、オリゴ糖、多糖、及びこれらの糖のアナログからなる群から選択することができる。
【0031】
求核性芳香族部分を有する化合物は、フェノール、フラバニル、又はフラボノイド部分を有する化合物とすることができる。
【0032】
求核性芳香族部分を有する化合物がフェノール部分を有する化合物である場合、前記フェノール部分を含む化合物(以下「フェノール種」)は、好ましくは1,3,5トリ−メトキシベンゼンである。3−オキソ−誘導体とフェノール種のカップリングによって、3−オキソ−誘導体及びフェノール部分を含む4−アリール−フラバン−3−オン付加物の生成が起こる。
【0033】
求核性芳香族部分を有する化合物がフラバニル又はフラボノイド部分を有する化合物である場合、前記フラバニル又はフラボノイド部分を含む化合物(以下「フラバノール種」)は、好ましくはフラバン−3−オール、最も好ましくは5,7,3’,4’−テトラ−O−メチルカテキンである。3−オキソ−誘導体とフラバノール種のカップリングによって、3−オキソ−誘導体とフラバノール又はフラボノイド部分を含む付加物の生成が起こる。
【0034】
本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、他の適切な求核性芳香族部分を有する化合物を使用できることが当業者には理解されよう。
【0035】
酸化剤は、AgBF、Pb(OAc)、DDQ、OsO、トレンス試薬、KMnO、及びクロロクロム酸ピリジニウムからなる群から選択することができる。本発明の好ましい実施形態において、酸化剤はAgBFである。AgBFは、(BF対イオンを含む弱酸化剤である。AgBFの場合に、最も高い収率が得られた。特定の理論に拘泥するものではないが、(BF対イオンが、C−C結合形成中に生成されるキニンメチド中間体の安定化を促進することが示唆される。
【0036】
求核性芳香族部分を有する化合物、3−オキソ−誘導体、及び酸化剤を、溶媒の存在下で混合することができる。溶媒は、好ましくはテトラヒドロフラン(本明細書では「THF」と記載)、ジエチルエーテル、又はC−C結合を介してカップリングすることになっている前記化合物と3−オキソ−誘導体を溶解することができる任意の非プロトン性溶媒からなる群から選択される。
【0037】
本発明の好ましい実施形態において、R、R、R、及びRは同じであり、R、R、R、R、及びRはHである。好ましくは、R、R、R、及びRはそれぞれ、OR10であり、R10は−CHであり、C環2位は(2R)立体配置である。このような場合、3−オキソ−誘導体は、式(II)で表わされるテトラ−O−メチル−3−オキソ−カテキンである。
【0038】
【化3】

【0039】
フラバン−3−オールを3−オキソ−誘導体に酸化することによって、式(I)及び(II)におけるベンゼン環「A」の反応性が、3−オキソ−誘導体及び求核性芳香族部分を有する化合物の原子間の自己縮合が回避される程度に低下する。これは、3−オキソ誘導体が化合物の求核性芳香族部分にカップリングすると生成する付加物の単離を可能にする。
【0040】
3−オキソ−誘導体と同じでないフェノール種を3−オキソ−誘導体と接触させる場合、得られた付加物は、式(III)で表わされるプロアントシアニジンアナログである。
【0041】
【化4】

【0042】
フラバノール種を3−オキソ−誘導体と接触させる場合、得られたプロアントシアニジンは式(IV)で表わされる。
【0043】
【化5】

【0044】
式(III)及び(IV)で表わされる得られた化合物を、還元、特に金属ヒドリド還元にかけることができ、付加物のシス−及びトランス−ジアステレオマーが生成される。驚くべきことに、金属ヒドリド還元は、圧倒的に化合物の3,4−シス立体化学をもたらす。この還元ステップにおいて、3−オキソ−誘導体の3位におけるオキソ基がヒドロキシ基で置換される。金属ヒドリド還元は、当技術分野で公知である任意の手段に従って行うことができる。本発明の好ましい実施形態において、NaBHを使用して、付加物の金属ヒドリド還元を実現する。上記に示唆するように、カルボニル基の還元は、3,4−シス異性体が圧倒的に生成されるように立体選択的に行われる。本明細書に上述される本発明の方法で調製された置換基をそのC環3位及びC環4位炭素に有するフラボノイド化合物の混合物であって、このような化合物の3,4−シス立体配置が、このような化合物の3,4−トランス立体配置より多い量で存在する混合物は、したがって本発明の別の態様である。
【0045】
本発明は、酸化にかけることになっているフラバノール部分を有する得られた化合物(式(IV))であって、カップリングしたフラバノール種のC環4位を活性化するために、フラバノール種(この種は3−オキソ誘導体にカップリングしている)の3位におけるヒドロキシ基がオキソ基に酸化される化合物をさらに提供する。次いで、この活性化されたダイマーを、本明細書に上述されるように酸化剤、好ましくはAgBFの存在下で、本明細書に上述されたタイプの求核性芳香族部分を有するさらなる化合物と接触させて、トリマーを得ることができる。このようにして、重合の制御が実現される。前記酸化を行わない場合、得られる付加物は、その後の反応にかけることができない。
【0046】
本発明の別の実施形態によれば、R10がベンジルである場合、カップリング後にフェニル基を除去するように、水素化を行うことができる。R10がアセタートである場合、前記アセタートは、弱酸又は塩基によって除去することができる。このようにして、遊離フェノール性プロアントシアニジン及びそれらのアナログを生成することができる。
【0047】
本発明の上記及び他の特徴について、以下にさらに詳細に記載する。
[実施例]
【0048】
次に、以下の非限定的な実施例を参照して、本発明を説明する。
【0049】
一般的情報:
NMRスペクトル
NMR実験をBrucker Avance分光計(600MHz)で実施した。SiMeを基準物質としてすべてのNMR試料に添加した。
質量スペクトル
MASPEC IIデータシステムを備えたVG 70 SEQ質量分析計を用いて、高分解能質量スペクトルを70eVで記録した。
スプレー試薬:濃HSO中ホルムアルデヒド(40%)の2%(v/v)溶液。
TLC溶媒の略語:A=アセトン、DCM=ジクロロメタン、EtOAc=酢酸エチル、EtOH=エタノール、H=ヘキサン、MeOH=メタノール、T=トルエン。
IRスペクトル:IRスペクトルをBruker Tensor 27 FT-IRシングルビーム機器で記録した。使用した標準試料セルは、ZnSe単結晶を装備したPike Miracle1回反射減衰全反射(ATR)であった。測定は400cm−1〜4000cm−1の範囲にわたって行われ、キャリアは使用せず、バックグラウンド測定はその都度行った。
【実施例1】
【0050】
フラバン−3−オールの3−オキソ−誘導体(化合物4)を、下記のスキーム1に示すようにフラバン−3−オールから調製した。
【0051】
【化6】


スキーム1
【0052】
スキーム1を参照して、フラバン−3−オール、さらに具体的には5,7,3’,4’−テトラ−O−メチルカテキン(化合物3)を、以下の通り調製した。
【0053】
乾燥した(+)−カテキン(10g、35mmol)を、不活性雰囲気(N)中で乾燥アセトン(250mL)に溶解した。KCO(38g、276mmol)を反応混合物に添加し、懸濁した。1時間撹拌した後、硫酸ジメチル(87mg、276mmol)を30分かけてゆっくりと添加し、反応混合物を2時間還流した。KCOを濾去し、アセトンを減圧下で除去し、過剰の(CHSOを冷アンモニア(80mL、25%(v/v)NH/HO)で分解した。続いて、反応混合物を酢酸エチル(2回×100mL)で抽出し、水(2回×70mL)及び塩水(70mL)で洗浄し、MgSOで乾燥し、溶媒を減圧下で除去した。化合物3が灰白色非結晶固体として得られた(11.9g、99%)。
【0054】
次いで、化合物3を酸化ステップにかけて、3−オキソ−誘導体、さらに具体的には(2R)−5,7,3’4’−テトラキス(メチルオキシ)フラバン−3−オン(化合物4)を調製した。これは、以下の通り実現された。
【0055】
雰囲気中、Dess−Martinペルヨージナン(7.5mL、DCM中0.3M DMP溶液)を、化合物3(560mg、1.6mmol)の乾燥CHCl(5mL)溶液に添加した。5分間撹拌した後、含水CHCl(20mL)を45分間かけて滴下すると、濁った反応混合物が生じた。反応混合物をエーテル(30mL)で抽出し、10%Naと飽和NaHCOの混合物(2回×30mL、1:1(v/v))で洗浄し、2層を分液した。水相をエーテル(20mL)で抽出し、有機相を合わせて、水及び塩水で洗浄し、無水チオリン酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を真空下で除去した。粗生成物をSiO(4×4cm、H:EtOAc 6:4)で濾過し、溶離液から白色針状物として晶出させた。収量:451mg、95%(回収された化合物4:85mg)。
【0056】
スキーム1を参照して、求核性芳香族部分が、フェノール部分、すなわち1,3,5トリ−メトキシベンゼンの形のフェノール種である本発明の実施形態において、3−オキソ−誘導体、さらに具体的には(2R)−5,7,3’4’−テトラキス(メチルオキシ)フラバン−3−オン(化合物4)を、THF中Ag(BFの存在下でそれと接触させて、それぞれスキーム1に示すC環4位フロログルシノール付加物(化合物5)(45%)及び化合物6(13%)、具体的には(2R,4S)−及び(2R,4R)−4−(1,3,5−トリ−O−メチルフロログルシノール)−5,7,3’4’−テトラ−O−メチル−フラバン−3−オンを生成する。C環4位フロログルシノール付加物は、以下の通り得られた。
【0057】
雰囲気中、化合物4(50mg、0.145mmol)及びAg(BF(215mg、1.1mmol)をTHF(2mL)に溶解した。1,3,5−トリ−O−メチルフロログルシノール(50mg、0.093mmol)のTHF(3mL)溶液を滴下し、反応混合物を1時間還流した。反応混合物を真空下で濃縮した後、SiO(2cm×4cm、H:EtOAc 6:4)で濾過し、続いてSiO(T:EtOAc 8:2)で分離して、化合物5(Rf:0.40、34mg、70%)及び化合物6(Rf:0.30、9mg、21%)を得た。
【0058】
C環4位フロログルシノール付加物のスペクトル特性を以下に示す。
【0059】
化合物5:実測値 510.18842、C2830 計算値 510.18898、(M+H) 511(43)、m/z 343(100)、315(22)、287(10)。IR:vmax 2959、1724、1593cm−1H NMR:δ(CDCl)3.51〜3.84(s,21H,7×OCH)、5.10(s,1H,4−H)、5.63(d,J=0.5Hz 1H,2−H)、5.99(d,J=2.0Hz,2H,6−H)、6.10(s,2H,3”/5”−H)、6.31(d,J=2.0Hz,1H,8−H)、6.77(d,J=8.0Hz,1H,5’−H)、6.90(dd,J=2.0,8.0Hz,1H,6’−H)、6.94(d,J=2.0Hz,1H,2’−H)。13C NMR:δ(CDCl)38.1(C−4)、55.2〜55.9(7×OCH)、82.8(C−2)、91.0(C−3”/5”)、92.8(C−6)、94.1(C−8)、106.1、109.4(C−2’)、111.1(C−5’)、111.3(C−6’)、118.3(C−1”)、128.1(C−1’)、148.8(C−3’)、149.0(C−4’)、154.1、158.4(C−2”/6”)、158.7、160.0(C−4”)、160.1(C−7)、206.4(C−3)。CD:λ nm(θ)、184.60(6.573×10)、194.20(7.232×10)、200.40(−8×10)、211.60(6.762×10)、237.20(3.221×10)、258.60(5.108×10)、290.00(8.759×10)。
【0060】
化合物6:実測値 510.18826、C2830 計算値 510.18898、(M+H) 511(68)、m/z 343(100)、315(82)、287(53)。IR :vmax 2925、1731、1594cm−1H NMR:δ(CDCl)3.58〜3.89(s,21H,7×OCH)、5.24(d,J=2Hz,1H,4−H)、5.34(d,J=2Hz,1H,2−H)、6.07(d,J=2.0Hz,1H,6−H)、6.08(s,2H,3”/5”−H)、6.27(d,J=2.0Hz,1H,8−H)、6.89(d,J=8.0Hz,1H,5’−H)、6.96(d,J=2.0Hz,1H,2’−H)、6.98(dd,J=2.0,8.0Hz,1H,6’−H)。13C NMR:δ(CDCl)29.4、40.4(C−4)、54.9〜55.9(7×OCH)、84.8(C−2)、91.2(C−3”/5”)、93.4(C−6)、93.8(C−8)、107.8、110.9(C−5’)、111.2(C−1”)、111.7(C−2’)、121.5(C−6’)、127.8(C−1’)、148.9(C−4’)、149.4(C−3’)、156.5、158.5(C−2”/6”)、158.8(C−4”)、159.7(C−5)、160.1(C−7)、205.2(C−3)。CD:nm(θ)、210.50(−5.362×10)、233.00(−1.464×10)、273.50(5.963×10)、293.00(6.651×10)、344.50(4.432×10)。
【0061】
過剰のAgBFが必要であること、及び銀鏡(AgからAgへの還元)が観察されることから、下記のスキーム2に示される2電子酸化機構が示唆される。
【0062】
【化7】


スキーム2
【0063】
スキーム2を参照して、中間カルボカチオン(化合物9)は、ベンジル位であると共に、カルボニル基に対してα位である。非求核性(BF対イオンによって、化合物9又はそのキノンメチド互変異性体(化合物10及び11)のさらなる安定化が実行可能である。
【0064】
続いて、NaOH/MeOH水溶液中でNaBHを用いた化合物5及び6の還元によって、それぞれ4−アリールフラバン−3−オール誘導体である化合物14(98%)及び化合物16(95%)がもたらされた。
【0065】
これをスキーム3に示す。
【0066】
【化8】


スキーム3
【0067】
さらに具体的には、(2R,3S,4S)−及び(2R,3S,4R)−4−(1,3,5−トリ−O−メチルフロログルシノール)−5,7,3’4’−テトラ−O−メチルフラバン−3−オール(化合物14及び16)を、以下の通り調製した。
【0068】
エタノール(200mL)に、NaOH水溶液(10ml、2.00M)、続いてNaBH(7.71g、0.20mol)を添加した。化合物5(20mg、0.04mmol)のエタノール(5mL)溶液に、上記で調製されたNaBH溶液(1mL)をゆっくりと添加した。反応混合物を5分間撹拌した後、エタノールを減圧下で除去し、過剰のNaBHを水(1mL)で分解し、続いて混合物をエーテル(2回×10mL)で抽出した。有機相を水(10mL)で洗浄し、MgSOで乾燥し、真空下で蒸発乾固して、化合物14(20mg、98%)を白色非結晶固体として得た。
【0069】
全く同じようにして、化合物16を調製した。
【0070】
H NMR結合定数及びCDデータにより、それぞれ化合物14及び16の(2R,3S,4S)及び(2R,3S,4R)絶対配置の帰属が可能になった。
【0071】
C環4位フロログルシノール付加物のスペクトル特性を以下に記載する。
【0072】
化合物14:実測値 512.20408、C2832 計算値 512.20463、(M+H) 513(58)、m/z 345(76)、333(100)、317(72)、303(20)、191(22)。IR:vmax 3515、2936、2836、1607cm−1H NMR:δ(CDCl)3.35〜3.87(7×s,21H,7×OCH)、4.23(dd,J=6.3,9.0Hz,1H,3−H)、4.94(d,J=6.3Hz,1H,4−H)、4.96(d,J=9.0Hz,1H,2−H)、6.01(d,J=2.4Hz,1H,6−H)、6.14(非常な広幅s,1H,H−3”/5”(D))6.21(非常な広幅s,1H,H−3/5(D))、6.19(d,J=2.4Hz,1H,8−H)、6.23(非常な広幅s,1H,3”/5”−H)、6.85(d,J=9.0Hz,1H,5’−H)、6.98(d,J=2.0Hz,1H,2’−H)、6.99(dd,J=2.0,9.0Hz,1H,6’−H)。13C NMR:δ(CDCl)32.2(C−4)、55.2〜56.3(6×s,7×OCH)、71.8(C−3)、78.2(C−2)、91.4(C−8)、91.9(C−3”/5”)、92.7(C−6)、93.6(C−3”/5”)、105.5、109.8、110.4(C−2’)、111.0(C−5’)、120.2(C−6’)、132.0、148.9、149.0、156.3、158.2、159.5、160.0。CD:□ nm(θ)、211.60(6.762×10)、237.20(3.221×10)、258.60(5.108×10)、290.00(8.759×10)。
【0073】
化合物16:実測値 512.20406、C2832 計算値 512.20463、(M+H) 513(60)、m/z 345(80)、333(100)、317(75)、191(21)。IR:vmax 3526、2941、2828、1598cm−1H NMR:δ(DMSO)3.28〜3.78(7×s,21H,7×OCH)、3.98(m,1H,3−H)、4.21(d,J=6.0Hz,1H,4−Hrot.)、4.81(d,J=6.5Hz,1H,4−H)、4.85(d,J=10.0Hz,1H,2−H)、5.99(d,J=2.3Hz,1H,H−6)、6.02(d,J=10.0Hz,1H,8−H)、6.14(br s,1H,3”/5”−H)、6.25(br s,1H,3”/5”−H)、6.86(dd,J=1.8,8.3Hz,1H,6’−H)、6.90(d,J=1.8Hz,1H,2’−H)、6.91(d,J=8.3Hz,1H,5’−H)。13C NMR:δ(DMSO):32.1(C−4)、55.4〜56.9(6×s,7×OCH)、70.40(C−3)、78.4(C−2)、91.15(C−6)、92.7(C−3”/5”)、93.0(C−8)、93.8(C−3”/5”)、106.1、111.4、111.7、112.0(C−5’)、120.8(C−6’)、133.4、148.7、148.8、156.5、158.2、159.4、159.5、160.0、160.6。CD:□ nm(θ)、210.50(−5.362×10)、233.00(−1.464×10)、273.50(5.963×10)、293.00(6.651×10)、344.50(4.432×10)。
【実施例2】
【0074】
化合物の求核性芳香族部分がフラバニル部分である本発明の実施形態において、ファバン−3−オールの形のフラバノール種を3−オキソ−誘導体と接触させて、プロアントシアニジン付加物を生成した。さらに具体的には、本明細書に記載されるように調製されたスキーム1の化合物3及び化合物4を、溶媒のTHF中AgBFの存在下で相互に接触させて、(2R,4S:2R,3S)−5,7,3’4’−テトラ−O−メチルフラバン−3−オン−[4→8]−5,7,3’,4’−テトラ−O−メチル−フラバン−3−オール(化合物18)及び(2R,4R:2R,3S)−5,7,3’4’−テトラ−O−メチルフラバン−3−オン−[4→8]−5,7,3’,4’−テトラ−O−メチルフラバン−3−オール(化合物19)をそれぞれ生成した。これを下記のスキーム4に示す。
【0075】
【化9】

【0076】
スキーム1及びスキーム4を参照して、化合物18及び19を、以下の通り調製した。
【0077】
雰囲気中、化合物4(50mg、0.145mmol)及びAgBF(215mg、1.1mmol)をTHF(3mL)に溶解した。化合物3(150mg、0.435mmol)のTHF(3mL)溶液を滴下し、反応混合物を4時間還流した。反応混合物をSiO(2×4cm、T:A 7:3)で濾過し、続いてPLC(T:A 7:3)で分離して、それぞれ化合物18(Rf:0.32、68mg、72%)及び化合物19(Rf:0.12、12mg、12%)を得た。
【0078】
C環4位フロログルシノール付加物のスペクトル特性を以下に記載する。
【0079】
化合物18:実測値 688.23363、C384012 計算値 688.25198、[M+H] 689(96)m/e 509(52)、343(100)、315(28)、287(19)。IR:vmax 2939、2838、1720、1611cm−1H NMR:δ(CDCl)2.55[dd,J=9.4,16.2Hz,1H,4−H(F)]、3.06[dd,J=5.6,16.2Hz,1H,4−H(F)]、3.53〜3.89(8×s,24H,8×OCH)、3.93[m,1H,3−H(F)]、4.49[d,J=8.5,1H,2−H(F)]、5.09[s,1H,4−H(C)]、5.39[s,1H,2−H(C)]、5.98[d,J=2.4Hz,1H,6−H(A)]、6.09[d,J=2.4Hz,1H,H−8(A)]、6.11[s,1H,6−H(D)]、6.70[d,J=8.4Hz,1H,5−H(B)]、6.79[ddd,J=1.0,2.0,8.4Hz,1H,6−H(B)]、6.83[d,J=2.0Hz,1H,2−H(B)]、6.88[d,J=8.8Hz,1H,5−H(E)]、6.94[dd,J=2.0,8.8Hz,1H,6−H(E)]、6.94[d,J=2.0Hz,1H,2−H(E)]。13C NMR:δ(CDCl)27.8(C−4(F))、30.9、38.2(C−3(F))、55.3〜56.2(8×OCH)、68.8(C−4(C))、81.6(C−2(F))、82.6(C−2(C))、88.6(C−6(D))、92.8(C−8(A))、94.0(C−6(A))、101.8、106.1、109.3(C−2(B))、110.0、110.1(C−2(E))、110.9(C−5(E))、111.1(C−5(B))、118.2(C−6(B))、119.6(C−6(E))、128.0(C−1(B))、130.7(C−1(E))、148.7(C−3(B))、148.9(C−4(B))、149.0(C−3(E))、149.1(C−4(E))、152.4(C−8(D))、154.2(C−5(D))、156.9、157.1(C−7(D))、158.6(C−5(A))、159.8(C−7(A))、206.1(C−3)。CD:□ nm(θ)、202.00(4.076×10)、214.20(1.445×10)、237.60(6.305×10)、259.00(1.141×10)、289.20(1.659×10)、348.20(−1.932×10)。
【0080】
化合物19:実測値 688.24550、C384012 計算値 688.25198、[M+H] 689(100)m/e 509(30)、343(86)、315(20)、287(14)。IR:vmax 2935、2838、1720、1612、1517cm−1H NMR:δ(CDCl)2.62(dd,J=7.3,16.5Hz,1H,4−H(F)ax)、2.83(dd,J=5.2,16.5Hz,1H,4−H(F)eq)、3.63〜3.88(8×s,24H,8×OCH)、4.04〜4.08[m,1H,3−H(F)]、4.85[d,J=6.5Hz,1H,2−H(F)]、5.19[d,J=1.4Hz,1H,2−H(C)]、5.42[s,1H,4−H(C)]、6.08[d,J=2.4Hz,1H,6−H(A)]、6.09[s,1H,6−H(D)]、6.14[d,J=2.4Hz,1H,8−H(A)]、6.72[dd,J=1.9,8.3Hz,1H,6−H(E)]、6.77[d,J=8.3Hz,1H,5−H(E)]、6.80[d,J=1.90Hz,1H,2−H(E)]、6.84[dd,J=1.6,8.1Hz,1H,6−H(B)]、6.85[d,J=8.1Hz,1H,5−H(B)]、6.88[d,J=1.6Hz,1H,2−H(B)]。13C NMR:δ(CDCl)26.4(C−4(F))、30.9(C−3(F))、40.6(C−4(C))、55.3〜56.2(8×OCH)、68.1、81.4(C−2(F))、84.7(C−2(C))、89.0(C−6(D))、93.5(C−6(A))、94.0(C−8(A))、101.2,107.8,109.4(C−2(E))、109.9、111.0(C−5(B))、111.1(C−5(E))、112.0(C−2(B))、119.1(C−6(E))、121.4(C−6(B))、127.6、130.9、148.9、149.0、149.1、149.4、152.4、156.6、156.7、157.3、158.9、159.7、206.1(C−3)。CD:□ nm(θ)、183.20(3.958×10)、188.80(−1.789×10)、192.60(7.21×10)、195.00(−6.758×10)、202.20(4.926×10)、211.80(−4.122×10)、289.80(1.573×10)。
【0081】
化合物18の金属ヒドリド還元によって、カテキン−[4β→8]−カテキンの2,3−トランス−3,4−シスオクタ−O−メチルエーテル20を得た。これを下記のスキーム5に示す。
【0082】
【化10】

【0083】
さらに具体的には、化合物20及び21を、以下の通り調製した。
【0084】
(2R,3S,4S:2R,3S)−5,7,3’4’−テトラ−O−メチルフラバン−3−オール−[4→8]−5,7,3’,4’−テトラ−O−メチル−フラバン−3−オール(化合物20):200mlのエタノールに、NaOH水溶液(10ml、2.00M)、続いてNaBH(7.71g、0.20mol)を添加した。化合物18(18mg、0.03mmol)のメタノール(5mL)溶液に、上記のNaBH溶液(1mL)をゆっくりと添加した。反応混合物を5分間撹拌した後、メタノールを減圧下で除去し、過剰のNaBHを水(1mL)で分解し、続いて混合物を酢酸エチル(2回×10mL)で抽出した。有機相を水(10mL)で洗浄し、MgSOで乾燥し、真空下で蒸発乾固した。PLC(トルエン:酢酸エチル;5:5)によって、化合物20(21mg、97%、Rf:0.42)が白色非結晶固体として得られた。化合物20をアセチル化して、オクタメチルエーテルジアセタート(化合物21)を白色非結晶固体(23mg、100%)として得た。
【0085】
C環4位フロログルシノール付加物のスペクトル特性を以下に記載する。
【0086】
化合物20:実測値 690.26917、C384212 計算値 690.26763、[M+H] 691(100)m/e 511(32)、495(12)、345(35)。IR:vmax 2927、2837、1700、1595、1518cm−1H NMR:δ(DMSO,145℃)2.53(dd,J=6.9,16.2Hz,1H,4−H(F)ax)、2.89(dd,J=5.1,16.2Hz,1H,4−H(F)eq)、3.49〜3.82(7×s,21H,7×OCH)、3.92〜3.94[m,1H,3−H(F)]、4.06[dd,J=6.4,9.2Hz,1H,3−H(C)]、4.33[br s,1H,2−H(F)]、4.89[d,1H,J=6.4Hz,4−H(C)]、4.98[d,1H,J=9.2Hz,H−2(C)]、5.75[br s,1H,6−H(D)]、6.00[br s,1H,6/8−H(A)]、6.30[br s,1H,6/8−H(A)]、6.80〜6.96[m,6H,2,5,6−H(E)/(D)]。13C NMR:δ(DMSO)29.0(C−4(F))、32.6(C−4(C))、41.1(1×OCH)、55.5〜57.1(7×OCH)、67.2(C−3(F))、70.7(C−3(C))、78.3(C−2(C))、79.1(C−6/8(A))、79.3(C−6/8(A))、79.5、82.2、91.9、92.5、94.1、107.0、110.4、113.2、113.4、113.5、113.8、120.6、121.1、133.0、133.9、149.6、154.3、156.3、157.0、158.6、158.7、159.6。CD:□ nm(θ)、205.50(−1.924×10)、212.00(1.204×10)、221.00(−1.051×10)、227.50(6.870×10)、233.00(−1.796×10)、242.5.80(2.583×10)、277.00(3.277×10)。
【0087】
化合物21:実測値 774.28859、C384212 計算値 774.28876、 774(78)m/e 714(100)、654(31)、511(35)、345(18)。IR:vmax 2927、2837、1700、1595、1518cm−1H NMR:δ(CDCl,25℃)1.72及び1.80(2×s,2×3H,2×COCH)、1.83及び1.99(2×s,2×3H,2×COCH3rot.)、2.60(dd,J=8.8,16.5Hz,1H,4−H(F)ax)、2.70(dd,J=5.2,17.6Hz,1H,4−H(F)ax rot.)、2.82(dd,J=2.6,17.6Hz,1H,4−H(F)eq rot.)、3.16(dd,J=6.5,16.5Hz,1H,4−H(F)eq)、3.33〜3.87(15×s,48H,16×OCH)、4.08[d,J=8.9Hz,1H,2−H(F)]、5.01[d,1H,J=6.3Hz,4−H(C)]、5.14(d,1H,J=6.0Hz,4−H(C)rot.)、5.14〜5.18[m,1H,3−H(F)]、5.20(d,J=3.6Hz,1H,2−H(F)rot.)、5.25(d,1H,J=10.4Hz,2−H(C)rot.)、5.30[d,J=2.4Hz,1H,6/8−H(A)]、5.31[d,1H,J=10.4Hz,2−H(C)]、5.32〜5.34(m,1H,3−H(F)rot.)、5.46[dd,J=6.3,10.4Hz,1H,3−H(C)]、5.50(dd,J=6.0,10.4Hz,1H,3−H(C)rot.)、5.84[d,J=2.4Hz,1H,6/8−H(A)]、6.03(d,J=2.3Hz,1H,6/8−H(A)rot.)、6.11(s,1H,6−H(D)rot.)、6.18(d,J=2.3Hz,1H,6/8−H(A)rot.)、6.19[s,1H,6−H(D)]、6.63[dd,J=2.0,8.2Hz,1H,6−H(E)]、6.68[d,J=2.0Hz,1H,2−H(E)]、6.72[d,J=8.2Hz,1H,5−H(E)]、6.80[dd,J=1.8,8.3Hz,1H,6−H(B)]、6.81(d,J=8.3Hz,1H,5−H(B)rot)、6.82(d,J=8.3Hz,1H,5−H(E)rot)、6.86[d,J=1.8Hz,1H,2−H(B)]、6.87(d,J=1.8Hz,1H,2−H(E)rot.)、6.92(dd,J=1.8,8.3Hz,1H,6−H(B)rot.)、6.93(d,J=1.8Hz,1H,2−H(B)rot)、6.96[d,J=8.3Hz,1H,5−H(B)]、6.97(dd,J=1.8,8.3Hz,1H,6−H(E)rot.)。13C NMR:δ(CDCl3,25℃)20.8〜21.3(2×COCH及び2×COCH3rot.)、21.9(C−4(F)rot.)、26.7(C−4(F))、26.7、30.3(C−4(C)rot.)、30.4(C−4(C))、54.8〜56.6(8×OCH及び8×OCH3rot.)、69.2(C−3(F)rot)、69.9(C−3(F))、71.8(C−3(C))、72.1(C−3(C)rot.)、75.5(C−2(C))、75.9(C−2(C)rot.)、77.9(C−2(F)rot.)、79.3(C−2(F))、88.7(C−6(D)rot.)、91.0(C−6(D))、91.5(C−6/8(A)rot.)、91.6(C−6/8(A))、92.0(C−6/8(A))、92.7(C−6/8(A)rot.)、100.2、103.0、104.8、105.3、109.0、109.2、109.5(C−2(B))、110.0(C−2(E))、110.4(C−5(E))、110.7(C−2(E)rot.)、110.7、110.8(C−6(B))、111.1、118.1、119.6(C−6(E))、120.4(C−6(B)rot.)、120.4(C−6(E)rot.)、129.8、131.1、131.2、131.2、148.3(C−OCH)、148.6、148.7(2×C−OCH)、148.7、148.9(3×s)、152.9、154.4、155.8、156.4、156.8、157.0、157 7、158.1、158.3、158.7、159.1、159.6、169.3〜170.3(4×COCH)。CD:□ nm(θ)、213.50(−3.878×10)、221.00(2.202×10)、230.50(−4.873×10)、248.00(7.377×10)、288.00(−7.828×10)、330.00(2.544×10)。
【0088】
上記から、本発明による方法の出発材料は、求電子中心しか含まない3−オキソ−誘導体、及び求核中心しか含まない第2の化合物を含むことが理解されよう。本発明の方法に従って、C−C結合が形成され、式(IV)が還元された後、得られたダイマー生成物は、3−オキソ−誘導体にカップリングしているフラバノール種の3−ヒドロキシ基を3−オキソ基に酸化して、それによってC環4位が活性化され、さらなる重合の制御が可能にならない限り、これ以上反応することができない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のステップを含む、フラバン−3−オール構造を有する化合物の非置換C環4位炭素に求核性芳香族部分を導入する方法:
(a)フラバン−3−オール構造を有する化合物のヒドロキシ基をオキソ基に転化して、前記化合物のフラバン−3−オンを生成するステップ;
(b)前記化合物のフラバン−3−オンを、酸化剤の存在下で求核性芳香族部分を含む化合物と接触させるステップ;
(c)前記フラバン−3−オン化合物のC環4位炭素と求核性芳香族部分の炭素との間に炭素−炭素結合を形成させるステップ;及び
(d)フラバン−3−オン部分を還元して、C環4位炭素において求核性部分で置換されている対応するフラバン−3−オール化合物を得るステップ。
【請求項2】
以下のステップを含む、置換基をそのC環3位及びC環4位炭素に3,4−シス立体配置で有するフラボノイドを調製する方法:
(a)フラバン−3−オール構造を有し、C環4位炭素において非置換である化合物を用意するステップ;
(b)求核性芳香族部分を有する化合物を用意するステップ;
(c)フラバン−3−オール構造を有する化合物のヒドロキシ基をオキソ基に転化して、前記化合物のフラバン−3−オンを生成するステップ;
(d)前記化合物のフラバン−3−オンを、酸化剤の存在下で求核性芳香族部分を含む化合物と接触させるステップ;
(e)フラバン−3−オン化合物のC環4位炭素と求核性芳香族部分の炭素との間に炭素−炭素結合を形成させるステップ;
(f)フラバン−3−オン部分を還元して、対応するフラバン−3−オール化合物を得るステップであって、前記化合物が、その化合物の3,4−シス立体配置と3,4−トランス立体配置との混合物中でC環4位炭素において求核性芳香族部分で置換されているステップ;及び
(g)前記化合物の3,4−シス立体配置と3,4−トランス立体配置を分離するステップ。
【請求項3】
(a)式(I)で表わされるフラバン−3−オールの3−オキソ−誘導体(以下「3−オキソ−誘導体」)を準備するステップ;
【化1】


[式中、
、R、R、R、R、R、R、R、及びRはそれぞれ独立に、−H基、−OH基、ヒドロカルビル基、糖部分、及び−OR10からなる群から選択され;
10は、ヒドロカルビル基、アシル基、及びベンジル基からなる群から選択され;
〜R10のいずれか1つにおけるヒドロカルビル基、及びアシル基は、1〜10個の炭素原子を含む];
(b)プロアントシアニジン又はプロアントシアニジンアナログの少なくとも一部分を構成する、求核性芳香族部分を有する追加の化合物(以下「追加化合物」)を用意するステップ;
(c)3−オキソ−誘導体及び追加化合物の各フェノール基及び各糖ヒドロキシ基を保護して、保護された前記3−オキソ−誘導体及び保護された前記追加化合物を生成するステップ;
(d)前記保護された3−オキソ−誘導体又はいずれのフェノール性ヒドロキシ基も糖ヒドロキシ基も含まない前記3−オキソ−誘導体を、酸化剤の存在下で、前記保護された追加化合物又はいずれのフェノール基も糖ヒドロキシ基も含まない前記追加化合物と接触させるステップ;
(e)3−オキソ−誘導体の4位における炭素原子(式(I)において「*」で示す)と前記追加化合物の求核性芳香族部分の一部分である炭素原子との間に直接C−C結合を形成させるステップ;
(f)任意で、かつ前記追加化合物が、そのC環4位において置換基を有さず、そのC環3位においてヒドロキシ基を有するフラボノイド基本骨格構造を有する場合、ヒドロキシド基を酸化して、第2の3−オキソ−誘導体を生成するステップ;
(g)さらに任意で、プロアントシアニジン又はプロアントシアニジンアナログの少なくとも一部分を構成するための、求核性芳香族部分を有する第2の追加化合物(以下「第2の追加化合物」)を用意するステップ;
(h)第2の3−オキソ−誘導体を、酸化剤の存在下で第2の追加化合物と接触させるステップ;
(i)任意で、得られるプロアントシアニジン又はプロアントシアニジンアナログに所望の数のモノマー単位を組み込むことを実現するのに必要な回数だけ、ステップ(f)、(g)、及び(h)を繰り返すステップ;
(j)さらに任意で、得られたプロアントシアニジン又はプロアントシアニジンアナログを還元して、得られる生成物に導入されたそれぞれの3−オキソ誘導体単位の様々なC環3位におけるオキソ基をヒドロキシド基に転化するステップ;及び
(k)任意で、フェノール又は糖ヒドロキシの保護基のいずれか又はすべてを除去して、脱保護したヒドロキシ化合物を得るステップ
を含む、プロアントシアニジン及びプロアントシアニジンアナログを調製するための、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
〜R10として選択することができるヒドロカルビル基が、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、及びデシルからなる直鎖状ヒドロカルビル基の群、並びにシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、及びシクロデシルからなる環状ヒドロカルビル基の群である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
10として選択することができるヒドロカルビル基が、ベンジル基又はアシル基である、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
糖部分が、単糖、二糖、オリゴ糖、多糖、及びこれらの糖のアナログからなる群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
求核性芳香族部分を有する化合物が、フェノール、フラバニル、又はフラボノイド部分を有する化合物からなる群から選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項8】
求核性芳香族部分を有する化合物が、保護されたフェノール部分を有する化合物であり、好ましくは1,3,5トリ−メトキシベンゼンである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項9】
求核性芳香族部分を有する化合物が、保護されたフラバニル又はフラボノイド部分を有する化合物であり、好ましくは5,7,3’,4’−テトラ−O−メチルカテキンである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項10】
酸化剤が、AgBF、Pb(OAc)、DDQ、OsO、トレンス試薬、KMnO、及びクロロクロム酸ピリジニウムからなる群から選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項11】
酸化剤がAgBFである、請求項14に記載の方法。
【請求項12】
求核性芳香族部分を有する化合物、3−オキソ−誘導体、及び酸化剤が、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、又は前記化合物及び3−オキソ−誘導体を溶解することができる任意の非プロトン性溶媒からなる群から選択される溶媒の存在下で混合される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項13】
以下のステップを含む、置換基をそのC環3位及びC環4位炭素に有するフラボノイド化合物の混合物を調製する方法であって、
(a)フラバン−3−オール構造を有し、C環4位炭素において非置換である化合物を用意するステップ;
(b)求核性芳香族部分を有する化合物を用意するステップ;
(c)フラバン−3−オール構造を有する化合物のヒドロキシ基をオキソ基に転化して、前記化合物のフラバン−3−オンを生成するステップ;
(d)前記化合物のフラバン−3−オンを、酸化剤の存在下で求核性芳香族部分を含む化合物と接触させるステップ;
(e)フラバン−3−オン化合物のC環4位炭素と求核性芳香族部分の炭素との間に炭素−炭素結合を形成させるステップ;及び
(f)フラバン−3−オン部分を還元して、対応するフラバン−3−オール化合物を得るステップであって、前記化合物は、その化合物の3,4−シス立体配置と3,4−トランス立体配置の混合物中でC環4位炭素において求核性芳香族部分で置換されているステップ。
【請求項14】
請求項13に記載の方法で調製された、置換基をそのC環3位及びC環4位炭素を有するフラボノイド化合物の混合物であって、前記化合物の3,4−シス立体配置が、前記化合物の3,4−トランス立体配置より多い量で存在する混合物。

【公表番号】特表2011−522034(P2011−522034A)
【公表日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−512265(P2011−512265)
【出願日】平成21年6月5日(2009.6.5)
【国際出願番号】PCT/IB2009/052396
【国際公開番号】WO2009/147645
【国際公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(510312891)ユニバーシティー オブ ザ フリー ステート (2)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY OF THE FREE STATE
【Fターム(参考)】