説明

C(10)エチルエステルおよびC(10)シクロプロピルエステル置換タキサン

C(10)にエチルエステルまたはシクロプロピルエステル置換基、C(9)にケト置換基、C(7)にヒドロキシ置換基、C(3')にチエニル置換基、そしてC(3')にシクロブチルオキシカルバメートまたはシクロペンチルオキシカルバメート置換基を持つタキサン、該タキサンを含有する医薬組成物、処置および投与の方法、ならびに該タキサンを含有する医薬の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は抗腫瘍剤として有用な新規タキサンに関する。
【背景技術】
【0002】
テルペンのタキサンファミリーは、バッカチンIIIや、一般にTaxol(登録商標)とも呼ばれるパクリタキセルを含み、生物学分野でも化学分野でも、少なからぬ関心が寄せられてきた。パクリタキセル自体はがん化学療法剤として使用され、広範囲にわたる腫瘍阻害活性を有する。パクリタキセルは2'R,3'S立体配置を持ち、次の構造式で表される:
【化1】

[式中、Acはアセチルであり、Bzはベンゾイルであり、Phはフェニルである]。
【0003】
Colinらは、米国特許第4,814,470号において、一定のパクリタキセル類似体がパクリタキセルの活性よりも有意に高い活性を持つことを報告した。一般にドセタキセルと呼ばれるこれらの類似体の一つ(Taxotere(登録商標)ともいう)は、次の構造式を持つ:
【化2】

[式中、Acはアセチルであり、Bzはベンゾイルであり、Phはフェニルである]。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
パクリタキセルとドセタキセルは有用な化学療法剤であるが、一定のがんタイプに対する限られた効力や、さまざまな用量で投与された時の患者に対する毒性など、その有効性には限界がある。さらに、一定の腫瘍はパクリタキセルおよび/またはドセタキセルに対して耐性を示している。したがって、低い毒性と、パクリタキセルおよび/またはドセタキセル耐性腫瘍および非耐性腫瘍に関して改善された効力とを持つ、さらなる化学療法剤が、今も必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の概要
したがって、本発明のさまざまな態様には、毒性に関して、そして抗腫瘍剤としての効力に関して、パクリタキセルおよびドセタキセルに引けを取らないタキサンの提供が含まれる。一般に、これらのタキサンは、C(10)にエチルエステルまたはシクロプロピルエステル置換基、C(9)にケト置換基、C(7)にヒドロキシ置換基、C(3')にチエニル置換基、そしてC(3')にシクロブチルオキシカルバメートまたはシクロペンチルオキシカルバメート置換基を持つ。
【0006】
したがって簡単に言うと、本発明は、タキサンそのもの、そのプロドラッグ、タキサン(およびそのプロドラッグ)と医薬上許容される担体とを含む医薬組成物、処置および投与の方法、ならびにタキサン(およびそのプロドラッグ)を含む医薬品の製造方法に関する。
【0007】
ある特定態様において、本発明は、次に挙げる構造(1)を持つタキサンに関する:
【化3】

[式中、R10aはエチルまたはシクロプロピルであり、X3はチエニルであり、X10はシクロブチルまたはシクロペンチルである]。
【0008】
もう一つの特定態様において、本発明は、構造(1)のタキサンと少なくとも1つの医薬上許容される担体とを含む医薬組成物に関する。
【0009】
もう一つの特定態様において、本発明は、哺乳動物における腫瘍成長を阻害する方法であって、構造(1)のタキサンと少なくとも1つの医薬上許容される担体とを含む医薬組成物の処置有効量をその哺乳動物に投与することを含む方法に関する。ある特定実施形態では、腫瘍が多剤耐性腫瘍である。
他の目的および特徴は、一部は明白であるだろうし、一部は以下に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】MX1試験(e219R1)(静脈内単回投与)において化合物18926、18365、およびドセタキセルで処置されたマウスに関する平均腫瘍成長曲線を表す図である。
【図2】MX1試験(e220)(静脈内q4d×4投与)において化合物19244で処置されたマウスに関する平均腫瘍成長曲線を表す図である。
【図3】MX1試験(e223)(静脈内単回投与)において化合物19244およびドセタキセルで処置されたマウスに関する平均腫瘍成長曲線を表す図である。
【図4】SKMES試験(e220)(静脈内単回投与)において化合物19244およびドセタキセルで処置されたマウスに関する平均腫瘍成長曲線を表す図である。
【図5】SKMES試験(e82)(化合物19244を静脈内q4d×4投与)において化合物19244およびドセタキセルで処置されたマウスに関する平均腫瘍成長曲線を表す図である。
【図6】HT29試験(e138)(化合物19244を静脈内q4d×4投与)において化合物19244、パクリタキセル、およびドセタキセルで処置されたマウスに関する平均腫瘍成長曲線を表す図である。
【図7】HT29試験(e139)(化合物18926、17932、および18365を静脈内q4d×4投与)において化合物18926、17932、および18365で処置されたマウスに関する平均腫瘍成長曲線を表す図である。
【図8】HT29試験(e133)(化合物19244を静脈内q4d×4投与)において化合物19244で処置されたマウスに関する平均腫瘍成長曲線を表す図である。
【図9】HT29試験(e210)(化合物19244および18365を静脈内および経口q4d×4投与)において化合物19244および18365で処置されたマウスに関する平均腫瘍成長曲線を表す図である。
【図10】HT29試験(e212)(18926を静脈内および経口q4d×4投与)において化合物18926で処置されたマウスに関する平均腫瘍成長曲線を表す図である。
【図11】A375試験(e209)(化合物18926、19244、および18365を静脈内q4d×4投与)において、化合物18926、18365、および19244で処置されたマウスに関する平均腫瘍成長曲線を表す図である。
【図12】MSTO-211H試験(004)(18926を静脈内q4d×4投与)において化合物18926で処置されたマウスに関する平均腫瘍成長曲線を表す図である。
【図13】MSTO-211H試験(008)(19244を静脈内q4d×4投与)において化合物19244で処置されたマウスに関する平均腫瘍成長曲線を表す図である。
【図14】MSTO-211H試験(101)(化合物18926および18365を静脈内q4d×4投与)において化合物18926および18365で処置されたマウスに関する平均腫瘍成長曲線を表す図である。
【図15】MSTO-211H試験(091)(化合物18926および18365を静脈内q4d×4投与)において化合物18926、18365、および種々の抗がん化合物で処置されたマウスに関する平均腫瘍成長曲線を表す図である。
【図16】BxPC-3試験において賦形剤および化合物19244で処置されたラットに関する平均腫瘍成長曲線を表す図である。
【図17】BxPC-3試験においてドセタキセルおよび化合物18365で処置されたラットに関する平均腫瘍成長曲線を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
詳細な説明
本発明のタキサンは次に挙げる化学構造(1)を持つ:
【化4】

[式中、R10aはエチルまたはシクロプロピルであり、X3はチエニルであり、X10はシクロブチルまたはシクロペンチルである]。
【0012】
式(1)に関して上述したように、X3はチエニルである。したがって、例えば、X3は2-チエニルまたは3-チエニルであることができる。好ましい一実施形態では、X3が2-チエニルである。
【0013】
これと共に、タキサンが式(1)で示される一定の実施形態では、R10aがエチルであり、X10がシクロブチルまたはシクロペンチルである。したがって例えば、R10aがエチルであり、X10がシクロブチルであるか、またはR10aがエチルであり、X10がシクロペンチルであることができる。タキサンが式(1)で示される別の実施形態では、R10aがシクロプロピルであり、X10がシクロブチルまたはシクロペンチルである。したがって例えば、R10aがシクロプロピルであり、X10がシクロブチルであるか、またはR10aがシクロプロピルであり、X10がシクロペンチルであることができる。これらの実施形態のそれぞれにおいて、X3はチエニル(例えば2-チエニルまたは3-チエニル)である。また、より好ましくは、これらの実施形態において、X3は2-チエニルである。
【0014】
別の組み合わせでは、タキサンが式(1)で示される一定の実施形態において、R10aがエチルまたはシクロプロピルであり、X10がシクロブチルである。したがって例えば、R10aがエチルであり、X10がシクロブチルであるか、またはR10aがシクロプロピルであり、X10がシクロブチルであることができる。タキサンが式(1)で示される別の実施形態では、R10aがエチルまたはシクロプロピルであり、X10がシクロペンチルである。したがって例えば、R10aがエチルであり、X10がシクロペンチルであるか、またはR10aがシクロプロピルであり、X10がシクロペンチルであることができる。これらの実施形態において、X3はチエニル(例えば2-チエニルまたは3-チエニル)である。また、より好ましくは、これらの実施形態において、X3は2-チエニルである。
【0015】
一般に、C(7)ヒドロキシ置換基およびC(10)シクロプロピルカルボニルオキシまたはエチルカルボニルオキシ置換基は、独立して、αまたはβ立体化学配置を持つことができる。したがって、タキサン化合物が化学構造(1)で示される場合、C(7)置換基とC(10)置換基がそれぞれα立体化学配置を持つか、C(7)置換基とC(10)置換基がそれぞれβ立体化学配置を持つか、C(7)置換基がβ立体化学配置を持ちC(10)置換基がα立体化学配置を持つか、またはC(7)置換基がα立体化学配置を持ちC(10)置換基がβ立体化学配置を持つことができる。したがって例えば、さまざまな実施形態において、タキサンは、これら化学構造部分の立体化学配置を示す以下の式の1つ以上で示されうる:
【0016】
【化5】

[式中、R10a、X3、およびX10は、式(1)に関して定義したとおりである]。
【0017】
ある実施形態では、タキサンが式(1bb)で示され(すなわちC(7)置換基とC(10)置換基がどちらもβ立体化学配置を持つ)、式中、R10aはエチルまたはシクロプロピルであり、X3はチエニルであり、X10はシクロブチルまたはシクロペンチルである。より好ましくは、この実施形態において、X3は2-チエニルである。
【0018】
式(1)で示される好ましいタキサンのいくつかには、R10aおよびX10に、次に挙げる置換基の具体的な組み合わせを持つものが含まれる。
【表1】

【0019】
上記表1に記載の組み合わせのそれぞれにおいて(すなわち化合物17932、18365、18926、19244について)、タキサンのX3置換基はチエニルである。より好ましくは、これらの組み合わせにおいて、X3は2-チエニルである。したがって例えば、好ましいタキサンのいくつかは、式(1A)、(1B)、(1C)、または(1D)の1つ以上で示される。
【0020】
【化6】

【0021】
例えば、式(1A)、(1B)、(1C)、および(1D)で示されるタキサンのC(7)置換基とC(10)置換基がどちらもβ立体化学配置を持つ実施形態の場合、これらのタキサンは、それぞれ式(1AA)、(1BB)、(1CC)、または(1DD)で示される。
【化7】

【0022】
従来の化学療法剤を使った化学療法は、腫瘍細胞における多剤耐性(MDR)の発生(これにより、腫瘍細胞は構造的、機能的に無関係な種々の化合物に対する交差耐性を獲得する)によって、しばしば妨害される。一般的な形態の多剤耐性は、数ある機序のなかでもとりわけ、抗血管新生;薬物排出トランスポーター(すなわち薬物排出ポンプ)の過剰発現;チューブリンの薬物結合部位の後天性突然変異;チューブリンアイソフォームの発現差異;アポトーシス機序の変化;微小管の束化および重合(例えばG2/M停止およびアポトーシスにつながるもの);ならびに成長因子経路の活性化が原因であると考えられている。これらの(および他の)多剤耐性機序のそれぞれまたは2つ以上の寄与は依然として不明であるが、多剤耐性と薬物排出トランスポーター発現レベルは、さまざまな腫瘍タイプで関連づけられている。例えばDumontetら, J. Clin. Oncol. 17, 1061-1070 (1999);Gottesmanら, Nat. Rev. Cancer 2, 48-58 (2002)を参照されたい。
【0023】
本発明の化合物は、パクリタキセルおよびドセタキセル耐性腫瘍を含む多剤耐性腫瘍に対して有効である。したがって、特定の態様において、本明細書に記載の化合物は、哺乳動物における腫瘍成長を阻害するための方法であって、腫瘍が多剤耐性腫瘍(すなわち多剤耐性を示す腫瘍細胞を含む腫瘍)である方法に使用することができる。これに加えて、またはこれに代えて、腫瘍は1つまたはそれ以上の従来の化学療法剤に対して耐性であってもよい。例えば腫瘍は、薬剤の中でも、カルボプラチン、ドセタキセル、ドキソルビシン、ゲムシタビン、イリノテカン、パクリタキセル、ペメトレキセド、およびビンクリスチンなどに対して耐性であってもよい。特定の一実施形態では、腫瘍がパクリタキセルに対して耐性であるか、ドセタキセルに対して耐性であるか、またはパクリタキセルとドセタキセルの両方に対して耐性である。
【0024】
さまざまな実施形態において、例えば、多剤耐性腫瘍細胞は薬物排出トランスポーターを過剰発現させる。薬物排出トランスポーターのなかでも、ATP結合カセットトランスポーター、例えばP-糖タンパク質(P-gp)、MDR関連タンパク質(例えばMDR-1、MDR-2、MDR-3など)、乳がん耐性タンパク質(例えばBCRP1)および/または多剤耐性関連タンパク質(MRP)(例えばMRP-1、MRP-2、MRP-3、MRP-9など)の過剰発現が、腫瘍細胞における多剤耐性の媒介に関連づけられている。したがってある実施形態では、過剰発現される薬物排出トランスポーターがATP結合カセットトランスポーターである。より典型的には、この実施形態において、薬物排出トランスポーターがP-糖タンパク質、MDR関連タンパク質、乳がん耐性タンパク質、多剤耐性関連タンパク質、またはそれらの組み合わせである。これらの実施形態において、本化合物は、上皮細胞癌、例えば脳、乳房、大腸、腎臓、肝臓、肺(非小細胞肺癌を含む)、卵巣、膵臓、腎臓および皮膚腫瘍タイプを含む、多種多様な腫瘍タイプに対して有効であることができる。例えば、パクリタキセルやドセタキセルとは異なり、化合物17932、18365、18926、および19244は、MDR関連タンパク質(例えばMDR-1)を過剰発現させる腫瘍細胞、例えばDLD-1大腸癌細胞株および786-0腎臓癌細胞株などの成長を阻害するのに、極めて効果的である。もう一つの例として、化合物18926、18365、19244は、MRP-2およびBCRP1を過剰発現させる腫瘍細胞、例えばMSTO-211H中皮腫細胞の成長を阻害するのに(パクリタキセルおよびドセタキセルと比較して)極めて効果的である。もう一つの例として、化合物18926、18365、19244は、MRP-9を過剰発現させる腫瘍細胞、例えばA375メラノーマの成長を阻害するのに(パクリタキセルおよびドセタキセルと比較して)極めて効果的である。特定の一理論に束縛されるものではないが、パクリタキセルやドセタキセルなどの従来の化学療法剤と比較して、これらの改善された効果の根拠は、少なくとも一つには、化合物とこれらの薬物排出ポンプおよび他の薬物排出ポンプとの相互作用が減少しているためであると考えられる。
【0025】
好都合なことに、また関与する機序がどうであれ、本明細書に記載する化合物は、パクリタキセルおよび/またはドセタキセル感受性および耐性腫瘍株を含む一定の腫瘍タイプに関し、従来使用されているタキサンよりも優れた形で、インビトロでもインビボでも、がんに対して効果的である。他の薬剤と組み合わせて使用するにせよ、そうでないにせよ、化合物17932、18365、18926、および/または19244を含む医薬組成物は、パクリタキセルおよびドセタキセル(それぞれTaxol(登録商標)およびTaxotere(登録商標))による処置の適応となるがんを処置するために使用することができる。驚いたことに、本化合物は、多種多様な腫瘍タイプ(例えば脳、大腸、肺、卵巣、膵臓、腎臓、および皮膚がんから派生したものを含む)に対してパクリタキセルおよび/またはドセタキセルの活性よりも数オーダー高い(例えば2倍、5倍、10倍、またはそれ以上の)活性を示す。限定するわけではないが、化合物17932、18365、18926、および/または19244を含む医薬組成物は、単独で、または組み合わせて、脳のがん、乳がん、大腸がん、肺がん(非小細胞肺がんを含む)、卵巣がん、膵がん、前立腺がん、AIDS関連カポジ肉腫、中皮腫、胃がん、および腎がんを処置するために使用することができる。本化合物は経口投与しても静脈内投与しても忍容性がかなり高く、単回投与または複数回投与で効果的であることができ、改善された毒性プロファイルを持つ。本発明の化合物は、非Cremophor(登録商標)賦形剤中でも有効である。
【0026】
化合物17932、18365、18926、および/または19244は、パクリタキセルおよびドセタキセルに対して不応性/耐性であるものを含むいくつかのヒト腫瘍ヌードマウス異種移植モデルにおいて、著しく有効である。化合物17932、18365、18926、および/または19244は、静脈内経路および経口経路により、単回投与スケジュールまたは複数回投与スケジュールで、効果的に投与することができる。試験した異種移植モデルの大半において、本化合物は、経口投与として、4日毎または7日毎の複数回投与スケジュールで投与した場合に、パクリタキセルおよびドセタキセルより優れた効力を示す。化合物17932、18365、18926、および19244は、これらのマウス異種移植モデルにおいて幅広い治療係数を示す。体重減少によって示される最大耐容量を十分に下回る用量でも効力が維持される。本化合物は、異種移植モデルで観察される効力で示されるとおり、経口投与で優れたバイオアベイラビリティを示し、スプラーグ・ドーリーラットに経口投与および静脈内投与した場合に好ましい毒性プロファイルを示す。例えば本化合物は、パクリタキセルおよびドセタキセルと比較して、著しく低い神経毒性(例えば軸索変性によって測定されるもの)を持つ。複数回投与レジメンにおける優れた効力、低い毒性、幅広い治療係数により、臨床現場では、特にヒト試験で毎週投与する場合に、用量強度を増加させる機会が与えられる。例えば、本発明の化合物は(パクリタキセルおよびドセタキセルと同じように)3週間ごとのスケジュールで投与するか、1週間ごとのスケジュールで投与することができる。1週間ごとのスケジュールは、例えば、投与頻度(dosing density)の増加を可能にすることができ、特に経口投与の場合は、患者の利便性を改善することができる。そのような経口投与レジメンは、比較的低い用量を使って、1日単位で行うことができる。好都合なことに、これらおよび他の経口投与レジメンは、抗血管新生メトロノミック投与スケジュール(パクリタキセルおよびドセタキセルの場合、それらは経口投与ではあまり効果的でないため、この投与スケジュールは望ましくない)の一部として使用することができる。
【0027】
本発明のタキサンは、β-ラクタムを、タキサン四環核とC(13)金属オキシド置換基とを持つアルコキシドで処理することで、C(13)にβ-アミドエステル置換基を持つ化合物を形成させ(この反応はHoltonの米国特許第5,466,834号(この文献は参照によりその全てが本明細書に組み込まれる)に詳述されている)、次にヒドロキシ保護基を除去することによって得ることができる。一般に、これらの方法で使用されるβ-ラクタムは、式(I):
【化8】

[式中、P2はヒドロキシ保護基であり、X3はチエニル(例えば2-チエニル)であり、X5はシクロブチルオキシカルボニルまたはシクロペンチルオキシカルボニルである]
で示され、アルコキシドは式(II):
【化9】

[式中、Mは金属またはアンモニウムであり、P7は水素またはヒドロキシ保護基であり、R10はシクロプロピルカルボニルオキシまたはプロピオニルオキシであり、Acはアセチルであり、Bzはベンゾイルである]
で示される。
【0028】
構造式(II)のアルコキシドは、C(7)ヒドロキシ基を選択的に保護してからC(10)ヒドロキシ基をエステル化し、次に金属アミドで処理することにより、10-デアセチルバッカチンIII(10-DAB)(またはその誘導体)から製造することができる。本発明の一態様では、10-DABのC(7)ヒドロキシ基を、例えばDenisら(J. Am. Chem. Soc, 1988, 110, 5917)(この文献は参照によりその全てが本明細書に組み込まれる)によって記述されているように、シリル基で選択的に保護する。
【0029】
あるいは、例えばHoltonらの米国特許第7,288,665号(この文献は参照によりその全てが本明細書に組み込まれる)に記述されているように、タキサンのC(10)ヒドロキシ基を塩基の非存在下で選択的にアシル化することもできる。タキサンのC(10)ヒドロキシ基の選択的アシル化に使用することができるアシル化剤には、置換または無置換アルキルまたはアリール無水物がある。タキサンのC(10)ヒドロキシ基のアシル化は、多くのアシル化剤で、十分な速度で進行するだろうが、反応混合物にルイス酸を含めることによって反応速度を増加させうることが見いだされている。好ましいルイス酸には、塩化亜鉛、塩化第二スズ、三塩化セリウム、塩化第一銅、三塩化ランタン、三塩化ジスプロシウム、および三塩化イッテルビウムなどがある。アシル化剤が無水物である場合は、塩化亜鉛または三塩化セリウムが、特に好ましい。
【0030】
好ましいワンポットプロトコールでは、C(7)ヒドロキシル基を保護するために10-DABのN,N-ジメチルホルムアミド溶液を2〜3当量の4-N,N-ジメチルアミノピリジンの存在下、化学量論量のシリル化剤で処理した後、アシル化剤(塩化プロピオニルまたは塩化シクロプロピルカルボニル)で処理することにより、C(10)ヒドロキシル基を周囲温度で選択的にアシル化した。このプロセスにより、製造時間が短縮され、溶媒要件が緩和される。例えばHoltonらの米国特許出願公開第2005/0228037号(この文献は参照によりその全てが本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
【0031】
C(7)置換基およびC(10)置換基に特定の立体化学配置を持つ化合物(例えば上記の化合物1aa、1bb、1ab、および1ba)は、これらの立体化学配置を持つ出発物質(例えば10-DAB)または中間体を使って製造できることは、理解されるだろう。例えば10-DABのC(7)-エピマーの製造が、Georgら, Journal of Organic Chemistry, 63, 8926-8934 (1998)(この文献は参照によりその全てが本明細書に組み込まれる)によって例示されている。例えば10-α10-DABの製造は、Appendinoら, Tetrahedron Letters 36, 18, 3233-3236 (1995)(この文献は参照によりその全てが本明細書に組み込まれる)によって例示されている。C(7)位の立体化学配置は、Chaudharyら, Journal of Organic Chemistry 58, 3798-3799 (1993)(この文献は参照によりその全てが本明細書に組み込まれる)に記載されているように、化合物(適当に置換された側鎖が結合しているもの)を塩基で処理することによって改変することができる。これに加えて、またはこれに代えて、Appendinoら(前掲)およびDattaら, Tetrahedron Letters 36, 12, 1985-1988 (1995)(この文献は参照によりその全てが本明細書に組み込まれる)によって例示される酸化-還元-エステル化シーケンスを使用し、次に挙げる反応スキーム(式中、X10、X3、およびR10aは式(1)に関して定義したとおりであり、PGはヒドロキシ保護基である)で、さまざまなC(10)α異性体を得ることができる:
【0032】
【化10】

[式中、R10a、X3およびX10は式(1)に関して定義したとおりである]。
【0033】
上記の酸化-還元-エステル化シーケンスにおいて、C(10)ヒドロキシ基の典型的酸化剤は、過ルテニウム酸テトラプロピルアンモニウム(TPAP)であり、C(10)ケト基の典型的還元剤は水素化ホウ素ナトリウムである。C(7)ヒドロキシ基およびC(2')ヒドロキシ基にはさまざまな保護基を使用することができ、本明細書では項を改めてそのいくつかを説明する(例えばトリアルキルシリル)。
【0034】
適当なβ-ラクタム(I)カップリングパートナーを合成するための好ましいワンポットプロトコールでは、光学的に純粋なβ-ラクタムのテトラヒドロフラン溶液を、そのヒドロキシ基を保護(P2)するために触媒量のp-トルエンスルホン酸の存在下、化学量論量の2-メトキシ-プロペンで処理した後、適当なクロロホルメート(シクロブチルまたはシクロペンチル)で処理することにより、周囲温度でX10置換基を導入した。例えばHoltonらの米国特許出願公開第2005/0228037号(この文献は参照によりその全てが本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
【0035】
β-ラクタム(I)出発物質を製造し分割するためのプロセスは、当技術分野では一般によく知られている。例えばβ-ラクタムは、Holtonの米国特許第5,430,160号(第9欄2〜25行)またはHoltonの米国特許第6,649,632号(第7欄45行〜第8欄60行)および米国特許出願公開第2006/0281914号(1頁の段落番号[0021]〜6頁の段落番号[0060](これらの各文献は参照によりその全てが本明細書に組み込まれる)に記述されているように製造することができる。その結果生じるβ-ラクタムのエナンチオマー混合物は、例えばPatelの米国特許第5,879,929号(第16欄1行〜第18欄27行)またはPatelの米国特許第5,567,614号に記述されているようなリパーゼまたは酵素を使って、またはHoltonの米国特許第6,548,293号(第3欄30〜61行)に記載されているような肝ホモジネートを使って、立体選択的加水分解を行うことにより(これらの各文献は参照によりその全てが本明細書に組み込まれる)、または米国特許出願公開第2006/0281918号(1頁の段落番号[0022]〜8頁の段落番号[0071])(この文献は参照によりその全てが本明細書に組み込まれる)に記述されているように、光学活性プロリンアシル化剤で処理した後、未反応のエナンチオマーまたはジアステレオマーの一方を選択的に回収することにより、分割することができる。例えば米国特許第6,649,632号には、β-ラクタムのC(4)位にフリル置換基を持つβ-ラクタムの製造が開示されている。当業者に明白な変更を加えることにより、これらの先行特許および特許出願に例示されているように、また下記実施例11でさらに開示するように、β-ラクタムC(4)位にチエニル置換基を持つβ-ラクタムを製造することができる。
【0036】
本発明の化合物はその塩の形で提供することができる。通例、塩は医薬上許容される塩、すなわち医薬上許容される無毒性の酸(無機酸および有機酸を含む)から製造される塩でありうる。適切な無毒性酸には、アミンなどの塩基性残基に対して、無機酸および有機酸、例えば酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、クエン酸、エテンスルホン酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩化水素酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ムチン酸、硝酸、パモ酸、パントテン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、バルバチン酸(barbaric acid)、p-トルエンスルホン酸などが含まれる。カルボン酸などの酸性残基のアルカリ塩または有機塩には、例えば次に挙げる塩基から誘導されるアルカリ塩およびアルカリ土類金属塩が含まれる:水素化ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化リチウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、アンモニア、トリメチルアンモニア、トリエチルアンモニア、エチレンジアミン、リジン、アルギニン、オルニチン、コリン、N,N"-ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、ジエタノールアミン、プロカイン、n-ベンジルフェネチルアミン、ジエチルアミン、ピペラジン、トリス(ヒドロキシメチル)-アミノメタン、水酸化テトラメチルアンモニウムなど。本明細書に記載する組成物の医薬上許容される塩は、化合物を化学量論量の適当な塩基または酸と水中または有機溶媒中またはそれら二つの混合物中で反応させることによって製造することができ、一般的には、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール、またはアセトニトリルなどの非水性溶媒が好ましい。適切な塩のリストが「Remington's Pharmaceutical Sciences」第17版(Mack Publishing Company、ペンシルベニア州イーストン、1985)の1418頁に掲載されており、この文献は参照によりその全てが本明細書に組み込まれる。
【0037】
これに加えて、またはこれに代えて、本化合物はプロドラッグの形で提供することもできる。一般に、医薬上許容される誘導体またはプロドラッグは、レシピエントに投与されたときに、本発明の化合物またはその阻害活性代謝産物もしくは残基を直接的または間接的に与えることができる、本発明化合物の任意の医薬上許容される塩、エステル、エスエルの塩または他の誘導体である。特に好ましい誘導体またはプロドラッグは、その化合物を患者に投与した時に本発明化合物のバイオアベイラビリティを(例えば経口投与された化合物をより容易に血中に吸収させることによって)増加させるもの、または生物学的コンパートメント(例えば脳またはリンパ系)への親化合物の送達を親化合物と比較して強化するものである。医薬上許容されるプロドラッグには、次に挙げる基の1つ以上で誘導体化された本発明のタキサンが含まれるが、これらに限るわけではない:ホスフェート、ピバロイルオキシメチル、アセトキシメチル、フタリジル、インダニル、メトキシメチル、メチルピリジニウムメシレート、バイカーボネート、オニウム塩、ホスホノオキシメチルカーボネート、シンナメート、アミノ酸、ベンゾイル、アシル、チオアリール、ポリエチレングリコール系基(polyethylene glycol based)、エステル結合(ester linked)、ポリアルキレンオキシド、デキストラン、ポリビニルアルコール、糖質系ポリマー、オリゴペプチド、ポリグルタミン酸、ポリアミノ酸、2-ハロゲン化アザアレーンのオニウム塩、高極性アミノ糖など。本発明のタキサン分子中の、プロドラッグ形成に適した位置には、C(2')およびC(7)位があるが、これらに限るわけではない。さまざまな形態のプロドラッグが当技術分野ではよく知られている。そのようなプロドラッグ誘導体の例については、次に挙げる文献を参照されたい:(a)H. Bundgaard編「Design of Prodrugs」(Elsevier、1985)およびK. Widderら編「Methods in Enzymology」第42巻の309〜396頁(Acamedic Press、1985);(b)Krosgaard-LarsenおよびH. Bundgaard編「A Textbook of Drug Design and Development」の第5章、H. Bundgaard著「Design and Application of Prodrugs」、113〜191頁(1991);(c) H. Bundgaard, Advanced Drug Delivery Reviews, 8, 1 -38 (1992);(d)H. Bundgaardら, Journal of Pharmaceutical Sciences, 77, 285 (1988);および(e)N. Kakeyaら, Chem. Pharm. Bull., 32, 692 (1984)、これらの各文献は参照によりその全てが本明細書に組み込まれる。
【0038】
本発明のタキサン類は、ヒトを含む哺乳動物において腫瘍増殖抑制に有用であり、好ましくは、抗腫瘍有効量の本発明化合物を少なくとも1つの薬学的または薬理学的に許容しうる担体と共に含む医薬組成物の形態で投与する。担体は、賦形剤、ビヒクル、補助剤、アジュバントまたは希釈剤としてもこの分野では知られているが、担体は、薬学的に不活性であり、好適なコンシステンシーまたは形状を組成物に付与し、そして抗腫瘍化合物の治療効力を損なわない任意の物質である。担体は、哺乳動物またはヒトに投与されたときに有害なアレルギー反応または他の望ましくない反応を生じさせない場合に「薬学的または薬理学的に許容しうる」。
【0039】
本発明の抗腫瘍化合物を含有する医薬組成物は任意の従来の方法で調製することができる。適切な調製は、選択した投与経路に依存する。本発明の組成物は、標的組織に投与経路を介して達する限り、任意の投与経路のために調製することができる。好適な投与経路には、経口投与、非経口(例えば、静脈内、動脈内、皮下、直腸内、皮下、筋肉内、眼窩内、嚢内、髄腔内、腹腔内または胸骨内)投与、局所(例えば、鼻腔、経皮、眼内)投与、ぼうこう内投与、くも膜下投与、腸内投与、肺投与、リンパ管内投与、洞内投与、膣投与、経尿道投与、皮内投与、耳投与、乳房内投与、口内投与、正位投与、気管内投与、病巣内投与、経皮投与、内視鏡的投与、経粘膜投与、舌下投与および腸管投与が含まれるが、これらに限定されない。
【0040】
本発明の組成物に使用する薬学的に許容しうる担体は当業者にはよく知られており、下記のような多数の要因に基づいて選択する:使用する特定の抗腫瘍化合物、ならびにその濃度、安定性および意図するバイオアベイラビリティー;組成物で処置する疾患、障害または状態;被投与体、その年齢、大きさおよび全身の健康状態;ならびに投与経路。好適な担体は当業者によって容易に決定される(例えば、J.G.Nairn、Remington's Pharmaceutical Science(A.Gennaro編)、Mack Publishing Co.、Easton、Pa.(1985年)、1492頁〜1517頁を参照のこと、その内容は参考として本明細書中に組み込まれる)。
【0041】
本発明の組成物は、好ましくは、錠剤、分散性粉末剤、ピル剤、カプセル剤、ゲルキャップ剤、カプレット剤、ゲル剤、リポソーム剤、顆粒剤、溶液剤、懸濁剤、エマルジョン剤、シロップ剤、エリキシル剤、トローチ剤、糖衣剤、ロゼンジ剤、または経口投与し得る任意の他の投薬形態として調製する。本発明において有用な経口投薬形態を調製するための技術および組成物は下記の参考文献に記載されている:7 Modern Pharmaceutics、9章および10章(Banker & Rhodes編、1979年);Lieberman他、Pharmaceutical Dosage Forms: Tablets(1981年);Ansel、Introduction to Pharmaceutical Dosage Forms、第2版(1976年)。
【0042】
経口投与される本発明の組成物は、有効な抗腫瘍量の本発明化合物を、薬学的に許容しうる担体内に含む。固体投薬形態に好適な担体には、糖、デンプンおよび他の従来の物質が含まれる。そのような従来の物質には、ラクトース、タルク、スクロース、ゼラチン、カルボキシルメチルセルロース、寒天、マンニトール、ソルビトール、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、カオリン、アルギン酸、アラビアゴム、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、サッカリンナトリウム、炭酸マグネシウム、トラガカント、微結晶セルロース、コロイド状二酸化ケイ素、クロスカルメロースナトリウム、タルク、ステアリン酸マグネシウムおよびステアリン酸が含まれる。さらに、そのような固体投薬形態はコーティングなしでもよく、あるいは知られている技術でコーティングして、例えば、崩壊および吸収を遅らせることができる。
【0043】
本発明の抗腫瘍化合物はまた、非経口投与するために好ましく調製することができ、例えば、静脈内経路、動脈内経路、皮下経路、直腸内経路、皮下経路、筋肉内経路、眼窩内経路、嚢内経路、髄腔内経路、腹腔内経路または胸骨内経路で注射するために調製しうる。非経口投与する本発明の組成物は、有効な抗腫瘍量の抗腫瘍化合物を薬学的に許容しうる担体内に含む。非経口投与に好適な投薬形態には、溶液剤、懸濁剤、分散剤、エマルジョン剤、または非経口投与され得る任意の他の投薬形態が含まれる。非経口投与形態を調製するための技術および組成物はこの分野で知られている。
【0044】
経口的または非経口的に投与する液体の投薬形態を調製する際に使用する好適な担体には、非水性の薬学的に許容しうる極性溶媒、例えばオイル、アルコール、アミド、エステル、エーテル、ケトン、炭化水素およびこれらの混合物、ならびに水、生理食塩液、デキストロース溶液(例えばDW5)、電解質溶液または任意の他の水性の薬学的に受容可能な液体が含まれる。
【0045】
好適な非水性の薬学的に許容しうる極性溶媒には、下記のものが含まれるが、それらに限定されない:アルコール(例えば、α-グリセロールホルマール、β-グリセロールホルマール、1,3-ブチレングリコール、2個〜30個の炭素原子を有する脂肪族アルコールまたは芳香族アルコール、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、t-ブタノール、ヘキサノール、オクタノール、アミレン水和物、ベンジルアルコール、グリセリン(グリセロール)、グリコール、へキシレングリコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ラウリルアルコール、セチルアルコールまたはステアリルアルコール、ポリアルキレングリコール(例えば、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール)などの脂肪アルコールの脂肪酸エステル、ソルビタン、スクロースおよびコレステロールなど);アミド(例えば、ジメチルアセトアミド(DMA)、ベンジルベンゾアートDMA、ジメチルホルムアミド、N-(β-ヒドロキシエチル)ラクトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド アミド、2-ピロリジノン、1-メチル-2-ピロリジノン、またはポリビニルピロリドン);
【0046】
エステル(例えば、1-メチル-2-ピロリジノン、2-ピロリジノン、アセタートエステル(モノアセチン、ジアセチンおよびトリアセチンなど)、脂肪族エステルまたは芳香族エステル、例えば、カプリル酸エチルまたはオクタン酸エチル、オレイン酸アルキル、安息香酸ベンジル、酢酸ベンジルなど、ジメチルスルホキシド(DMSO)、グリセリンのエステル(クエン酸モノグリセリル、クエン酸ジグリセリルまたはクエン酸トリグリセリル、あるいは酒石酸モノグリセリル、酒石酸ジグリセリルまたは酒石酸トリグリセリル)、安息香酸エチル、酢酸エチル、炭酸エチル、乳酸エチル、オレイン酸エチル、ソルビタンの脂肪酸エステル、脂肪酸由来のPEGエステル、グリセリルモノステアラート、グリセリドエステル(モノグリセリド、ジグリセリドまたはトリグリセリドなど)、ミリスチン酸イソプロピルなどの脂肪酸エステル、PEGヒドロキシオレアートおよびPEGヒドロキシステアラートなどの脂肪酸由来のPEGエステル、N-メチルピロリジノン、プルロニック60、ポリオキシエチレンソルビトールオレイン酸ポリエステル(ポリ(エトキシル化)30〜60ソルビトールポリ(オレアート)2〜4、ポリ(オキシエチレン)15〜20モノオレアートなど、ポリ(オキシエチレン)15〜20モノ12-ヒドロキシステアラート、およびポリ(オキシエチレン)15〜20モノレシノレアート、ポリオキシエチレンソルビタンエステル(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミタート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウラート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアラート、およびICI Americas社(Wilmington、DE)から得られるPolysorbate(登録商標)20、40、60または80など)、ポリビニルピロリドン、ポリオキシル40水素化ひまし油およびポリオキシエチル化ひまし油(例えば、Cremophor(登録商標)EL溶液またはCremophor(登録商標)RH40溶液)などのアルキレンオキシ修飾脂肪酸エステル、
【0047】
サッカリド脂肪酸エステル(すなわち、単糖(例えば、リボース、リブロース、アラビノース、キシロース、リキソースおよびキシルロースなどのペントース、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノースおよびソルボースなどのヘキソース、ならびにトリオース、テトロース、ヘプトースおよびオクトース)または二糖(例えば、スクロース、マルトース、ラクトースおよびトレハロース)またはオリゴ糖またはこれらの混合物とC4〜C22脂肪酸(例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸およびステアリン酸などの飽和脂肪酸、ならびにパルミトレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、エルカ酸およびリノレン酸などの不飽和脂肪酸)との縮合生成物)、またはステロイドエステル);2個〜30個の炭素原子を有するアルキルエーテル、アリールエーテルまたは環状エーテル(例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメチルイソソルビド、ジエチレングリコールモノエチルエーテル);グリコフロール(テトラヒドロフルフリルアルコールポリエチレングリコールエーテル);3個〜30個の炭素原子を有するケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン);4個〜30個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素または環状脂肪族炭化水素または芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン、シクロヘキサン、ジクロロメタン、ジオキソラン類、ヘキサン、n-デカン、n-ドデカン、n-ヘキサン、スルホラン、テトラメチレンスルホン、テトラメチレンスルホキシド、トルエン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、またはテトラメチレンスルホキシド);
【0048】
鉱物起源、植物起源、動物起源または合成起源のオイル(例えば、鉱油、例えば脂肪族炭化水素またはワックス型炭化水素、芳香族炭化水素、脂肪族系および芳香族系の混合炭化水素、および精製パラフィン油、植物油(亜麻仁油、きり油、紅花油、ダイズ油、ひまし油、綿実油、ラッカセイ油、ナタネ油、ココナッツ油、パーム油、オリーブ油、コーン油、トウモロコシ胚芽油、ゴマ油、杏仁油およびピーナツ油など)およびグリセリド(モノグリセリド、ジグリセリドまたはトリグリセリドなど)、動物油(魚油、海産油、マッコウ鯨油、タラ肝油、ハリバ油、スクアレン油、スクアラン油およびサメ肝油)、オレイック(oleic)油、およびポリオキシエチル化ひまし油);1個〜30個の炭素原子および必要に応じて1個以上のハロゲン置換基を有するハロゲン化アルキルまたはハロゲン化アリール;塩化メチレン;モノエタノールアミン;石油ベンジン;トロラミン;ω-3多不飽和脂肪酸(例えば、α-リノレン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサペンタエン酸またはドコサヘキサエン酸);12-ヒドロキシステアリン酸およびポリエチレングリコールのポリグリコールエステル(BASF社(Ludwigshafen、ドイツ)から得られるSolutol(登録商標)HS-15);ポリオキシエチレングリセロール;ラウリン酸ナトリウム;オレイン酸ナトリウム;またはソルビタンモノオレアート。
【0049】
本発明において使用される他の薬学的に許容しうる溶媒は当業者にはよく知られており、The Chemotherapy Source Book(Williams & Wilkens Publishing)、The Handbook of Pharmaceutical Excipients(American Pharmaceutical Association(Washington, D.C.)およびThe Pharmaceutical Society of Great Britain(London、英国)、1968年)、Modern Pharnmceutics(G. Banker他編、第3版)(Maecel Dekker, Inc.、New York、New York、1995年)、The Pharmacological Basis of Therapeutics(Goodman & Gilman、McGraw Hill Publishing)、Pharmaceutical Dosage Forms(H. Lieberman他編)(Maecel Dekker, Inc.、New York、New York、1980年)、Remington's Pharmaceutical Sciences(A. Gennaro編、第19版)(Mack Publishing、Easton、PA、1995年)、The United States Pharmacopeia 24、The National Formulary 19(National Publishing、Philadelphia、PA、2000年)、A.J. Spiegel他、Use of Nonaqueous Solvents in Parenteral Products、JOURNAL OF PHARMACEUTICAL SCIENCES、第52巻、第10号、917頁〜927頁(1963)において明らかにされている。
【0050】
好適な溶媒には、抗腫瘍化合物を安定化させることが知られている溶媒が含まれ、トリグリセリドが多いオイル(例えば、紅花油、ダイズ油またはそれらの混合物)、およびアルキレンオキシ修飾脂肪酸エステル(ポリオキシル40水素化ひまし油およびポリオキシエチル化ひまし油(例えば、Cremophor EL(登録商標)溶液またはCremophor RH40(登録商標)溶液)など)などが含まれる。市販のトリグリセリドが多いオイルには、Intralipid(登録商標)乳化ダイズ油(Kabi-Pharmacia Inc.、Stockholm、スェーデン)、Nutralipid(登録商標)エマルジョン(McGaw、Irvine、California)、Liposyn(登録商標)II 20%エマルジョン(1mlの溶液あたり、100mgの紅花油、100mgのダイズ油、12mgの卵ホスファチドおよび25mgのグリセリンを含有する20%の脂肪エマルジョン溶液;Abbott Laboratories、Chicago、Illinois)、Liposyn(登録商標)III 20%エマルジョン(1mlの溶液あたり、100mgの紅花油、100mgのダイズ油、12mgの卵ホスファチドおよび25mgのグリセリンを含有する20%の脂肪エマルジョン溶液;Abbott Laboratories、Chicago、Illinois)、ドコサヘキサエノイル基を総脂肪酸含有量に基づいて25重量%〜100重量%のレベルで含有する天然または合成のグリセロール誘導体(Dhasco(登録商標)(Martek Biosciences Corp.(Columbia、MD)から得られる)、DHA Maguro(登録商標)(Daito Enterprises(Los Angeles、CA)から得られる)、Soyacal(登録商標)およびTravemulsion(登録商標)が含まれる。エタノールは、抗腫瘍化合物を溶解して、溶液およびエマルジョンなどを調製する際に使用する好ましい溶媒である。
【0051】
さらなる補助成分を、製薬分野でよく知られている様々な目的で本発明の組成物に含ませることができる。このような成分の多くは、抗腫瘍化合物の投与部位での保持を向上する性質、組成物の安定性を保護する性質、pHを制御する性質、抗腫瘍化合物の医薬製剤への加工を容易にする性質などをもたらしうる。通例、これらの成分はそれぞれが、個々に、組成物全体の約15重量%未満で存在し、好ましくは約5重量%未満であり、より好ましくは組成物全体の約0.5重量%未満である。充填剤または希釈剤などのいくつかの成分は、製剤分野で知られているように組成物全体の90重量%までを構成することができる。
【0052】
そのような添加剤には、タキサンの再沈殿を防止するための凍結防止剤、表面活性剤、湿潤化剤または乳化剤(例えば、レシチン、ポリソルベート-80、プルロニック60、ポリオキシエチレンステアラート、およびポリエトキシル化ひまし油)、保存剤(例えば、p-ヒドロキシ安息香酸エチル)、微生物防腐剤(例えば、ベンジルアルコール、フェノール、m-クレゾール、クロロブタノール、ソルビン酸、チメロサールおよびパラベン)、pH調節剤または緩衝化剤(例えば、酸、塩基、酢酸ナトリウム、ソルビタンモノステアラート)、浸透圧調節剤(例えば、グリセリン)、増粘剤(例えば、モノステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸、セチルアルコール、ステアリルアルコール、グアーゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、トリステアリン、セチルワックスエステル、ポリエチレングリコール)、着色剤、色素、流動補助剤、不揮発性シリコーン(例えば、シクロメチコーン)、クレイ(例えば、ベントナイト)、付着剤、増量剤、風味剤、甘味剤、吸着剤、充填剤(例えば、ラクトース、スクロース、マンニトールまたはソルビトールなどの糖、セルロースあるいはリン酸カルシウム)、
【0053】
希釈剤(例えば、水、生理食塩水、電解質溶液)、結合剤(例えば、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、米デンプンまたはジャガイモデンプンなどのデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、糖、ポリマー、アラビアゴム)、崩壊剤(例えば、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、米デンプン、ジャガイモデンプンまたはカルボキシルメチルデンプンなどのデンプン、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸またはアルギン酸ナトリウムなどのその塩、クロスカルメロースナトリウムまたはクロスポビドン)、滑沢剤(例えば、シリカ、タルク、ステアリン酸またはステアリン酸マグネシウムなどのその塩、あるいはポリエチレングリコール)、コーティング剤(例えば、アラビアゴムを含む濃縮糖溶液、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコールまたは二酸化チタン)、および酸化防止剤(例えば、メタ重亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、デキストロース、フェノール類、およびチオフェノール類)が含まれる。
【0054】
上記経路による投薬形態の投与は、例えば、患者の生理学的状態、投与目的が治療的または予防的であるかどうか、および医師に知られ、そして医師によって評価される他の要因に依存して連続的または間断的であり得る。
【0055】
本発明の医薬組成物を投与するための投薬量および投薬計画は、癌処置において通常の技術を有する者であれば容易に決定し得る。抗腫瘍化合物の投薬量は、被投与体の年齢、性別、健康状態および体重、併用される処置の種類(併用される場合)、処置頻度、ならびに所望する効果の性質に依存しうると理解される。どのような投与様式の場合でも、送達される抗腫瘍化合物の実際の量、そして本明細書中に記載される好都合な効果を達成するために必要な投薬スケジュールは、部分的には、抗腫瘍化合物のバイオアベイラビリティー、処置する障害、所望の処置用量、および当業者に明かな他の要因のような要因にも依存しうる。動物(特にヒト)に投与する用量は、本発明の範囲において、妥当な期間にわたって動物において所望する治療的応答が達成されるのに十分でなければならない。好ましくは、抗腫瘍化合物の有効量は、経口的または別の経路で投与されたとしても、そのような経路で投与されたときに所望する治療的応答を生じさせうる任意の量である。
【0056】
好ましくは、経口投与する組成物は、1つまたはそれ以上の経口製剤における単回用量が、患者体表面積1m2あたり少なくとも20mgの抗腫瘍化合物を含有するように、あるいは患者体表面積1m2あたり少なくとも50mg、100mg、150mg、200mg、300mg、400mgまたは500mgの抗腫瘍化合物を含有するように調製する。この場合、ヒトの平均体表面積は1.8m2である。好ましくは、経口投与する組成物の単回用量は、患者体表面積1m2あたり約20mg〜約600mgの抗腫瘍化合物を含有し、より好ましくは約25mg/m2〜約400mg/m2、さらにより好ましくは約40mg/m2〜約300mg/m2、より一層好ましくは約50mg/m2〜約200mg/m2、そしてより一層好ましくは約50mg/m2〜約100mg/m2の抗腫瘍化合物を含有する。好ましくは、非経口投与する組成物は、単回用量が、患者体表面積1m2あたり少なくとも20mgの抗腫瘍化合物を含有するように、あるいは患者体表面積1m2あたり少なくとも40mg、50mg、100mg、150mg、200mg、300mg、400mgまたは500mgの抗腫瘍化合物を含有するように調製する。好ましくは、1つまたはそれ以上の非経口製剤における単回用量は、患者体表面積1m2あたり約20mg〜約500mgの抗腫瘍化合物を含有し、より好ましくは約40mg/m2〜約400mg/m2、さらにより好ましくは約60mg/m2〜約350mg/m2、そしてさらにより好ましくは約50mg/m2〜約100mg/m2の抗腫瘍化合物を含有する。しかし、投薬量は、所望する治療的効果を達成するために必要に応じて調節し得る投薬スケジュールに依存して変化し得る。本明細書中に記載する有効用量範囲は、本発明を限定するものではなく、好ましい用量範囲を表していることに留意しなければならない。最も好ましい投薬量は、被投与体毎に調節し得、そして過度な実験を行うことなく当業者が決定しうる。
【0057】
液体の医薬組成物における抗腫瘍化合物の濃度は、好ましくは組成物1mlあたり約0.001mg〜約20mgの間であり、より好ましくは組成物1mlあたり約0.01mg〜約10mgの間であり、より一層好ましくは約0.1mg/ml〜約7mg/mlの間であり、さらにより好ましくは約0.1mg/ml〜約5mg/mlの間である。1つの実施形態においては、該製剤中の化学構造(1)の抗腫瘍化合物の濃度が0.15〜4mg/mlである。抗腫瘍化合物は低い濃度で溶液に最も溶解し得るために、比較的低い濃度が一般には好ましい。経口投与用の固体医薬組成物における抗腫瘍化合物の濃度は、組成物の総重量に基づいて、好ましくは約5重量%〜約50重量%の間であり、より好ましくは約8重量%〜約40重量%の間であり、最も好ましくは約10重量%〜約30重量%の間である。
【0058】
1つの実施形態において、経口投与用の溶液剤を調製するために、抗腫瘍化合物を溶解し得る任意の薬学的に許容しうる溶媒(例えば、エタノールまたはポリエチレングリコール)に抗腫瘍化合物を溶解して溶液とする。界面活性剤、例えばCremophor EL(登録商標)溶液、ポリソルベート80、Solutol(登録商標)HS 15、またはVitamin E TPGSである担体の適量を攪拌下に溶液に加え、患者に経口投与するための薬学的に許容しうる溶液を形成する。得られる組成物は、約15%までのエタノールおよび/または約15%までの界面活性剤(とりわけ、これらの濃度は約7〜15体積%のエタノールと、同体積の界面活性剤でありうる)、および75〜90体積%の範囲の蒸留水を含有しうる。矯味目的で、蒸留水の一部を、希釈したチェリーまたはラズベリーシロップで置き替えることができ、好ましくは約10〜30%をシロップとし、残部を水としうる。1つの実施形態において、この製剤中の化学構造(1)の抗腫瘍化合物の濃度は2〜4mg/mlである。所望する場合、経口製剤中である濃度で投与されたときに有害な生理学的作用を生じさせることが当分野で知られているエタノールを最少量で含むように、あるいはエタノールを含まないように、前記のような溶液剤を調製しうる。好ましい実施形態において、溶液剤は、エタノール約10%、ポリソルベート80(例えばTween(登録商標)80)、ポリエトキシル化ひまし油(例えばCremophor(登録商標))およびそれらの混合物から選択する界面活性剤約10%、並びに蒸留水約80%を含有する。
【0059】
別の実施形態において、経口投与用の粉末剤または錠剤を調製するために、抗腫瘍化合物を溶解し得る任意の薬学的に許容しうる溶媒(例えば、エタノールまたはポリエチレングリコール)に抗腫瘍化合物を溶解して溶液とする。必要に応じ、溶液を減圧下に乾燥させて溶媒を蒸発させることができる。Cremophor EL(登録商標)溶液などのさらなる担体を乾燥前の溶液に加えることができる。得られた溶液を減圧下に乾燥し、ガラス状物とする。その後、ガラス状物を結合剤と混合し、粉末剤とする。粉末剤を、患者に経口投与する錠剤を調製するために、充填剤または他の従来の錠剤化剤と混合し、加工しうる。粉末剤を上記のような任意の液体担体に入れて、経口投与用の溶液、エマルジョン、懸濁剤などを調製してもよい。
【0060】
非経口投与用のエマルジョン剤を調製するためには、抗腫瘍化合物を溶解し得る任意の薬学的に許容しうる溶媒(例えば、エタノールまたはポリエチレングリコール)に抗腫瘍化合物を溶解して溶液としうる。Liposyn(登録商標)II、Liposyn(登録商標)III、またはIntralipid(登録商標)エマルジョンなどのエマルジョンである担体の適量を攪拌下に溶液に加えて、患者に非経口投与する薬学的に許容しうるエマルジョンを調製する。得られる組成物は例えば、約10%までのエタノールおよび/または約90%を越える担体(とりわけ、この濃度は約5〜10体積%のエタノールと、約90〜95体積%の担体でありうる)を含有しうる。1つの実施形態において、この投与液剤中の化学構造(1)の抗腫瘍化合物の濃度は約1〜2mg/mlである。所望する場合、非経口製剤中である濃度で投与されたときに有害な生理学的作用を生じさせることが当分野で知られているエタノールまたはCremophor(登録商標)溶液を最少量で含むように、あるいはエタノールまたはCremophor(登録商標)溶液を含まないように、前記のようなエマルジョンを調製しうる。好ましい実施形態において、エマルジョンは、約5%のエタノール、および約95%の担体(例えばIntralipid(登録商標)20%、Liposyn(登録商標)II 20%、またはそれらの混合物)を含有する。この好ましい実施形態において、エマルジョンは、有害な生理学的作用を引き起こすことが知られている剤、例えばポリエトキシル化ひまし油(例えばCremophor(登録商標))およびポリソルベート80(例えばTween(登録商標)80)を含有しない。
【0061】
非経口投与用の溶液剤を調製するために、抗腫瘍化合物を溶解し得る任意の薬学的に許容しうる溶媒(例えば、エタノールまたはポリエチレングリコール)に抗腫瘍化合物を溶解して溶液としうる。界面活性剤、例えばCremophor(登録商標)溶液、ポリソルベート80、またはSolutol(登録商標)HS15である担体の適量を攪拌下に溶液に加え、患者に非経口投与するための薬学的に許容しうる溶液を形成する。得られる組成物は例えば、約10%までのエタノールおよび/または約10%までの界面活性剤(とりわけ、この濃度は約5〜10体積%のエタノールと、同体積の界面活性剤でありうる)、および80〜90体積%の範囲の生理食塩液を含有しうる。所望する場合、非経口用製剤中である濃度で投与されたときに有害な生理学的作用を生じさせることが当分野で知られているエタノールまたはCremophor(登録商標)溶液を最少量で含むように、あるいはエタノールまたはCremophor(登録商標)溶液を含まないように、上記のような溶液剤を調製しうる。好ましい実施形態において、溶液剤は、エタノール約5%、ポリソルベート80(例えばTween(登録商標)80)またはポリエトキシル化ひまし油(例えばCremophor(登録商標))約5%、および生理食塩液(0.9%塩化ナトリウム)約90%を含有する。起こりうる副作用(例えば過敏性反応)を抑制または排除するために、この実施形態の投与を受ける患者には、好ましくはデキサメタゾン、ジフェンヒドラミンまたは該副作用を抑制もしくは排除することが当分野で知られている任意の他の剤で前処置する。
【0062】
他の適当な非経口製剤は、リポソームを包含する。リポソームは通例、脂質化合物を含む両親媒性化合物の球形または楕円形のクラスターまたは凝集体で、通例1つまたはそれ以上の同心層、例えば単層または二層の形態である。リポソームはイオン性または非イオン性脂質から調製しうる。非イオン性脂質のリポソームは、ニオソームとも称される。リポソームに関する参考文献は下記のものを包含する:(a) Liposomes Second Edition: A Practical Approach, V. TorchillinおよびV. Weissig編, Oxford University Press, 2003; (b) M. Malmstein, Surfactants and Polymers in Drug Delivery, Marcel Dekker Inc., 2002; および(c) Mullerら, Emulsions and Nanosuspensions for the Formulation of Poorly Soluble Drugs, Medpharm Scientific Publishers, 1998。
【0063】
所望する場合、経口投与または非経口投与用の上記エマルジョン剤または溶液剤は、この分野で知られているように、濃縮された形態で、IVバッグ、バイアルまたは他の従来の容器に入れることができ、そして使用前に許容しうるタキサン濃度が得られるように、生理食塩水などの任意の薬学的に許容しうる液体で希釈することができる。
【0064】
略号および定義
本発明をより一層明確にすると共に、本発明を実施する当業者の指針となるように、以下に定義および方法を記載する。別段の注記がない限り、用語は当業者による従来の用法に従って理解されるものとする。
【0065】
立体異性体に関し、化合物のキラル炭素原子への置換基の結合について、式(1)(および本明細書に記載する他の式)で示される化合物における結合の、実線による指定は、それらの基がそのページの平面よりも下または上に存在しうることを示す。
【化11】

本明細書に開示する化合物の異性体は、ラセミ体、ラセミ混合物、および個々のエナンチオマーまたはジアステレオマーを含めて、全て考えられる。
【0066】
本明細書において単独でまたは別の基の一部として使用される用語「アセタール」および「ケタール」は、それぞれ次の式によって表される部分を意味する:
【化12】

[式中、X1およびX2は、独立して、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロシクロ、またはへテロアリールであり、X3はヒドロカルビルまたは置換ヒドロカルビルであって、各基名は当該用語に関して定義するとおりである。また波線は、別の部分または化合物への当該アセタール部分またはケタール部分の結合点を表す]。
【0067】
本明細書において単独でまたは別の基の一部として使用される用語「アシル」は、有機カルボン酸の-COOH基からヒドロキシル基を除去することによって形成される部分、例えばX4C(O)-(式中、X4は、X1、X1O-、X1X2N-、またはX1S-であり、X1はヒドロカルビル、ヘテロ置換ヒドロカルビル、またはヘテロシクロであり、X2は水素、ヒドロカルビルまたは置換ヒドロカルビルである)を示す。典型的なアシル部分には、アセチル、プロピオニル、ベンゾイル、ピリジニルカルボニルなどがある。
【0068】
本明細書において単独でまたは別の基の一部として使用される用語「アシルオキシ」は、酸素結合(-O-)を介して結合された上述のアシル基、例えばX4C(O)O-(式中、X4は用語「アシル」に関して定義したとおりである)を示す。
【0069】
本明細書において単独でまたは別の基の一部として使用される用語「アルコキシ」は、-OX5基(式中、X5は用語「アルキル」に関して定義するとおりである)を示す。典型的なアルコキシ部分には、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、または2-プロポキシ、n-、イソ-、またはt-ブトキシなどがある。
【0070】
本明細書において単独でまたは別の基の一部として使用される用語「アルケノキシ」は-OX6基(式中、X6は用語「アルケニル」に関して定義するとおりである)を示す。典型的なアルケノキシ部分には、エテノキシ、プロペノキシ、ブテノキシ、ヘキセノキシなどがある。
【0071】
本明細書において単独でまたは別の基の一部として使用される用語「アルキノキシ」は、-OX7基(式中、X7は用語「アルキニル」に関して定義するとおりである)を示す。典型的なアルキノキシ部分には、エチノキシ、プロピノキシ、ブチノキシ、ヘキシノキシ、などがある。
【0072】
別段の表示がない限り、本明細書に記載するアルキル基は、好ましくは、主鎖中に1〜8個の炭素原子を含有し、最大20個の炭素原子を含む、低級アルキルである。それらは直鎖、分枝鎖または環状であることができ、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ヘキシルなどが、これに含まれる。
【0073】
本明細書において単独でまたは別の基の一部として使用される用語「シクロアルキル」は、炭素原子数が3〜10の環状飽和一価架橋または非架橋炭化水素基を示す。典型的なシクロアルキル部分には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、またはアダマンチルがある。さらに、場合によっては、1個または2個の環炭素原子を-CO-基で置き換えてもよい。
【0074】
別段の表示がない限り、本明細書に記載するアルケニル基は、好ましくは、主鎖中に2〜8個の炭素原子を含有し、最大20個の炭素原子を含む、低級アルケニルである。それらは直鎖、分枝鎖または環状であることができ、エテニル、プロペニル、イソプロペニル、ブテニル、イソブテニル、ヘキセニルなどが、これに含まれる。
【0075】
別段の表示がない限り、本明細書に記載するアルキニル基は、好ましくは、主鎖中に2〜8個の炭素原子を含有し、最大20個の炭素原子を含む、低級アルキニルである。それらは直鎖または分枝鎖であることができ、エチニル、プロピニル、ブチニル、イソブチニル、ヘキシニルなどが、これに含まれる。
【0076】
本明細書において単独でまたは別の基の一部として使用される用語「アミン」または「アミノ」は、式-N(X8)(X9)の基(式中、X8およびX9は、独立して、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロアリール、またはヘテロシクロであるか、X8とX9が全体として、典型的には環内に3〜8個の原子を持つ、置換または無置換脂環式、アリール、または複素環式部分を形成する(各基名は当該用語に関して定義するとおりである))を表す。例えば「置換アミン」は、X8およびX9の少なくとも一方が水素以外である、式-N(X8)(X9)の基を指す。例えば「無置換アミン」は、X8およびX9がどちらも水素である、式-N(X8)(X9)の基を指す。
【0077】
本明細書において単独でまたは別の基の一部として使用される用語「アミド(amido)」または「アミド(amide)」は、式-CON(X8)(X9)の基(式中、X8およびX9は用語「アミン」または「アミノ」に関して定義したとおりである)を表す。例えば「置換アミド」は、X8およびX9の少なくとも一方が水素以外である、式-CON(X8)(X9)の基を指す。例えば「無置換アミド」は、X8およびX9がどちらも水素である、式-CON(X8)(X9)の基を指す。
【0078】
本明細書において単独でまたは別の基の一部として使用される用語「アリール」または「Ar」は、置換されていてもよい同素環式芳香族基、好ましくは環部分に6〜12個の炭素を含む単環式または二環式基、例えばフェニル、ビフェニル、ナフチル、置換フェニル、置換ビフェニルまたは置換ナフチルなどを示す。フェニルおよび置換フェニルは、より好ましいアリールである。
【0079】
本明細書において単独でまたは別の基の一部として使用される用語「アルカリール」または「アルキルアリール」は、-(アリーレン)-X11基(式中、X11は用語「アルキル」に関して定義したとおりである)を示す。
【0080】
本明細書において単独でまたは別の基の一部として使用される用語「シアノ」は、式-CNの基を示す。
【0081】
別段の表示がない限り、本明細書において単独でまたは別の基の一部として使用される用語「エステル」は、式-COOX12の基(式中、X12はアルキルまたはアリールであり、各基名は当該用語に関して定義するとおりである)を示す。
【0082】
本明細書において単独でまたは別の基の一部として使用される用語「エーテル」は、2つの炭素原子に結合した酸素原子を含有する化合物または部分を包含する。例えばエーテルには、アルコキシ基で置換されたアルキル、アルケニル、またはアルキニル基を指す「アルコキシアルキル」が含まれる。
【0083】
本明細書で使用する用語「炭化水素」および「ヒドロカルビル」は、炭素および水素の元素だけからなる有機化合物または有機基を示す。これらの部分には、アルキル、アルケニル、アルキニル、およびアリール部分が含まれる。これらの部分には、他の脂肪族または環状炭化水素基で置換されたアルキル、アルケニル、アルキニル、およびアリール部分、例えばアルカリール、アルケンアリールおよびアルキンアリールなども含まれる。別段の表示がない限り、これらの部分は、好ましくは、1〜20個の炭素原子を含む。
【0084】
本明細書において単独でまたは別の基の一部として使用される用語「ハライド」、「ハロゲン」または「ハロ」は、塩素、臭素、フッ素、およびヨウ素を指す。
用語「ヘテロ原子」は、炭素および水素以外の原子を意味するものとする。
【0085】
本明細書において単独でまたは別の基の一部として使用される用語「複素芳香族」または「ヘテロアリール」は、少なくとも1つの環に少なくとも1つのヘテロ原子を持ち、好ましくは各環に5個または6個の原子を持つ、置換されていてもよい芳香族基を示す。複素芳香族基は、好ましくは、1個または2個の酸素原子、1個または2個の硫黄原子、および/または1個もしくは4個の窒素原子を環内に持ち、炭素原子またはヘテロ原子を介して分子の残りの部分に結合することができる。典型的な複素芳香族には、フリル、チエニル、ピリジル、オキサゾリル、ピロリル、インドリル、キノリニル、またはイソキノリニルなどがある。典型的な置換基には次に挙げる基の1つ以上がある:ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ケト(すなわち=O)、ヒドロキシ、保護ヒドロキシ、アシル、アシルオキシ、アルコキシ、アルケノキシ、アルキノキシ、アリールオキシ、ハロゲン、アミド、アミノ、ニトロ、シアノ、チオール、ケタール、アセタール、エステルおよびエーテル。
【0086】
本明細書において単独でまたは別の基の一部として使用される用語「ヘテロシクロ」または「複素環式」は、少なくとも1つの環内に少なくとも1つのヘテロ原子を持ち、各環内に好ましくは5個または6個の原子を持つ、置換されていてもよい完全飽和または不飽和単環式または二環式芳香族または非芳香族基を示す。ヘテロシクロ基は、好ましくは、環内に1個または2個の酸素原子、1個または2個の硫黄原子、および/または1〜4個の窒素を持ち、炭素原子またはヘテロ原子を介して分子の残りの部分に結合することができる。典型的なヘテロシクロには、複素芳香族、例えばフリル、チエニル、ピリジル、オキサゾリル、ピロリル、インドリル、キノリニル、またはイソキノリニルなどがある。典型的な置換基には次に挙げる基の1つ以上がある:ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ケト、ヒドロキシ、保護ヒドロキシ、アシル、アシルオキシ、アルコキシ、アルケノキシ、アルキノキシ、アリールオキシ、ハロゲン、アミド、アミノ、ニトロ、シアノ、チオール、ケタール、アセタール、エステルおよびエーテル。
【0087】
本明細書で使用する用語「ヒドロキシ保護基」は、遊離ヒドロキシル基を保護し(「保護ヒドロキシ」)、保護を要した反応の後で、その分子の残りの部分を損なわずに除去することができる基を示す。ヒドロキシル基用のさまざまな保護基とその合成は、T. W. GreeneおよびP. G. M. Wuts著「Protective Groups in Organic Synthesis」第3版(John Wiley and Sons、1999)に見いだすことができる。典型的なヒドロキシ保護基にはメトキシメチル、1-エトキシエチル、ベンジルオキシメチル、(β-トリメチルシリルエトキシ)メチル、テトラヒドロピラニル、2,2,2-トリクロロエトキシカルボニル、t-ブチル(ジフェニル)シリル、トリアルキルシリル、ジメチルフェニルシリル、トリクロロメトキシカルボニルおよび2,2,2-トリクロロエトキシメチルがある。
【0088】
本明細書において単独でまたは別の基の一部として使用される用語「ヒドロキシ」は、式-OHの基を示す。
【0089】
本明細書において単独でまたは別の基の一部として使用される用語「ケト」は、二重結合した酸素部分(すなわち=O)を示す。
【0090】
本明細書において単独でまたは別の基の一部として使用される用語「ニトロ」は、式-NO2の基を示す。
【0091】
本明細書にいう「置換ヒドロカルビル」部分は、炭素原子以外の少なくとも1つの原子で置換されたヒドロカルビル部分、例えば炭素鎖原子が窒素、酸素、ケイ素、リン、ホウ素、硫黄、またはハロゲン原子などのヘテロ原子で置換されている部分である。これらの置換基には、ハロゲン、ヘテロシクロ、アルコキシ、アルケノキシ、アルキノキシ、アリールオキシ、ヒドロキシ、保護ヒドロキシ、ケト、アシル、アシルオキシ、ニトロ、アミノ、アミド、ニトロ、シアノ、チオール、ケタール、アセタール、エステル、エーテル、およびチオエーテルがある。
【0092】
本明細書において単独でまたは別の基の一部として使用される用語「チオエーテル」は、2つの異なる炭素原子またはヘテロ原子に結合した硫黄原子(すなわち-S-)を含有する化合物および部分を示し、2つの硫黄原子が互いに結合していて、そのそれぞれが炭素原子またはヘテロ原子にも結合しているもの(すなわちジチオエーテル(-S-S-))を含有する化合物および部分も包含する。チオエーテルの例には、アルキルチオアルキル、アルキルチオアルケニル、およびアルキルチオアルキニルがあるが、これらに限るわけではない。用語「アルキルチオアルキル」は、アルキル基に結合している硫黄原子に結合したアルキル、アルケニル、またはアルキニル基を持つ化合物を包含する。同様に用語「アルキルチオアルケニル」および「アルキルチオアルキニル」は、アルキニル基に共有結合している硫黄原子にアルキル、アルケニル、またはアルキニル基が結合している化合物または部分を指す。
【0093】
本明細書において単独でまたは別の基の一部として使用される用語「チオール」は、式-SHの基を示す。
【0094】
本明細書では、「Ac」はアセチルを意味し、「Bz」はベンゾイルを意味し、「TES」はトリエチルシリルを意味し、「TMS」はトリメチルシリルを意味し、「LAH」は水素化アルミニウムリチウムを意味し、「10-DAB」は10-デスアセチルバッカチンIIIを意味し、「THF」はテトラヒドロフランを意味し、「DMAP」は4-ジメチルアミノピリジンを意味し、「LHMDS」または「LiHMDS」はリチウムヘキサメチルジシラジドを意味し、「TESCl」はトリエチルシリルクロリドを意味し、「TMSCl」はトリメチルシリルクロリドを意味し、「DMF」はN,N-ジメチルホルムアミドを意味し、「MOP」は2-メトキシプロペンを意味し、「LDA」はリチウムジイソプロピルアミドを意味し、「-OSiEt3」は-O-トリエチルシリルを意味し、「-O-SiMe3」は-O-トリメチルシリルを意味し、「nBuLi」または「BuLi」はn-ブチルリチウムを意味し、「DME」はジメトキシエタンを意味し、「ACN」はアセトニトリルを意味し、「cPr」はシクロプロピルを意味し、「cPent」はシクロペンチルを意味し、「cPentO」はシクロペンチルオキシカルボニルを意味し、「cBoc」はシクロブトキシカルボニルを意味する。
【0095】
本発明を詳細に説明したので、本願特許請求の範囲に定義する本発明の範囲から逸脱することなく、変更および改変が可能であることは明らかだろう。さらにまた、本明細書の実施例はいずれも限定を意図しない実施例として記載されることを理解すべきである。
【0096】
実施例1:10-シクロプロピルカルボニル-7-トリエチルシリル-10-DAB
【化13】

【0097】
10-DAB(10.00g、18.36mmol)を、無水DMFに、窒素下で磁気撹拌しながら、6.0mL/g(60.0mL)の割合で、3当量のDMAP(6.73g、55.09mmol)と一緒に溶解した。その透明な帯黄色溶液に、周囲温度(22〜25℃)で、1.05当量のクロロトリエチルシラン(2.91g、19.28mmol)を約15分かけて滴下した。1時間後、HNMR反応モニタリングにより、出発物質10-DABの約3%が未反応のまま残っていることが示された。3.8%のクロロトリエチルシランを調整量として加え、反応をほぼ完了させるために2時間撹拌したところ、約1%の出発物質が未反応のまま残った。この反応に1.05当量のシクロプロパンカルボニルクロリド(2.02g、19.28mmol)を周囲温度で約30分かけて加えた。18時間撹拌した後、HNMRモニタリングにより、約1.5%の7-TES-10-DABが未反応のまま残っていることが示された。2.6%のシクロプロパンカルボニルクロリドを調整量として加え、さらに2時間撹拌したところ、TLC(2:3 E:H)では、反応がほぼ完了していた。次に反応混合物を約800mLの氷冷水中に0℃で撹拌しながら注ぎ込んだ。1.0時間後、固形生成物を減圧濾過によって集めた。濾過ケーキを冷水で洗浄し、約400mLの酢酸エチルに溶解した。酢酸エチル溶液を分液漏斗に移し、水、飽和NaHCO3溶液およびブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥し、濾過し、濃縮することにより、15.4759gの粗生成物を得た。この粗製物を、3:2 E:Hを使って、短いシリカゲルのパッドで濾過した。濾液を濃縮することにより、13.5239gの生成物を91.9%のHPLC純度で得た。この生成物を還流下の酢酸エチル(8.0mL/g)に溶解し、次にヘキサン類(16mL/g)を加えた。結晶化した生成物のスラリーを室温まで冷却し、さらに0℃に冷却した。白色結晶生成物をブフナー漏斗で集め、氷冷酢酸エチル:ヘキサン類(1:4 E:H)で洗浄した。濾過ケーキを減圧乾燥してから、減圧下でオーブン乾燥(78℃および<0.1mmHg)することにより、10.34gの生成物(14.22mmol、77.46%)を97.4%のHPLC純度で得た。
【0098】

【0099】
実施例2:10-プロピオニル-7-トリエチルシリル-10-デアセチル-バッカチン
【化14】

【0100】
実施例1の手法を使って、10.00gの10-DABをトリエチルクロロシランおよび塩化プロピオニルとDMAPの存在下で反応させることにより、7.94gの10-プロピオニル-7-TES-10-DAB(収率60.5%)を95.8%のHPLC純度で得た。
【0101】


【0102】
実施例3:2'-MOP-7-TES-17932
【化15】

【0103】
10-cPr-7-TES-10-DAB(209mg、0.287mmol)およびN-cPentO-(O-MOP)-SIT302(111mg、0.316mmol)の無水テトラヒドロフラン(8mL)溶液に、窒素下で磁気撹拌しながら、-45℃において、0.316mL(0.316mmol)のリチウムヘキサメチルジシラジドを投入し、4時間撹拌した。反応を1mLの炭酸水素ナトリウム水溶液でクエンチし、10mLの酢酸エチルで希釈した。その混合物を各10mLのH2O、炭酸水素ナトリウム、およびブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧下で除去し、その粗固形物をフラッシュクロマトグラフィーで精製することにより、250mgの2'-MOP-7-TES-17932(80.6%)を得た。
【0104】

【0105】
実施例4:2'MOP-7-TES-18926
【化16】

【0106】
10-Pr-7-TES-10-DAB(7.72g、10.81mmol)およびN-cPentO-(O-MOP)-SIT302(4.59g、12.98mmol)の無水テトラヒドロフラン(70mL)溶液に、-45℃で、12.97mL(12.97mmol)のリチウムヘキサメチルジシラジドを投入し、1.5時間撹拌した。反応を15mLの炭酸水素ナトリウム水溶液でクエンチし、50mLのH2O、50mLの炭酸水素ナトリウムおよび50mLのブラインで洗浄した。有機層を70mLのヘプタンで希釈し、塩基処理したシリカゲルのプラグで濾過した。残留生成物を酢酸エチル/ヘプタンの1:1混合物200mLでプラグカラムからフラッシュした。溶媒を減圧除去することにより、15.08gの粗泡状物を得た。酢酸エチル/ヘプタン(1:1)からの結晶化により、9.6gの2'-MOP-7-TES-18926を白色固形物(83%)として得た。
【0107】

【0108】
実施例5:2'-MOP-7-TES-18365
【化17】

【0109】
10-シクロプロパンカルボキシル-7-TES-10-DAB(8.00g、11.00mmol)を、無水THFに、窒素下で磁気撹拌しながら、0.13M(84.7mL)の濃度で溶解した。その透明な溶液に、-45℃で、1.14当量の1.0Mリチウムビス(トリメチルシリル)アミド(2.10g、12.55mmol)/THF溶液を、約10〜15分かけて加えた。その溶液を-45℃で45分間撹拌した。この溶液に、-45℃で、1.14当量のN-cBoc-(O-MOP)-SIT302(4.26g、12.55mmol)の溶液を約5〜10分かけて加え、次に-5℃〜-10℃で撹拌した。TLC(2:3 E:H)分析によると、カップリングは約3時間で完了した。反応を15mLの飽和炭酸水素ナトリウム水溶液でクエンチし、150mLの酢酸エチル150mlで抽出し、50mLのブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過した。濾液を濃縮することにより、14.76gの粗生成物を得た。この粗製物を、1:2.5 E:Hおよび1%トリエチルアミンを使ってプラグ濾過した。濾液を減圧下で濃縮することにより、11.65gの生成物を得た。さらに、IPA(5ml/g+1%トリエチルアミン)を使って生成物を再結晶し、減圧下(<0.1mmHg)で恒量になるまで乾燥して、10.51g(9.86mmol、89.60%)を得た。
【0110】


【0111】
実施例6:2'-MOP-7-TES-19244
【化18】

上述のLHMDSカップリング法を使って、2'-MOP-7-TES-19244を、10-プロピオニル-7-TES-10-DABおよびN-cBoc-(O-MOP)-SIT302から製造した。
【0112】

【0113】
実施例7:化合物18926
【化19】

【0114】
2'-MOP-7-TES-18926(9.6g、8.98mmol)のアセトニトリル(70mL)溶液に、25mLの0.2N HClを室温で加えた。24時間撹拌した後、反応を70mLの酢酸エチルで希釈し、各50mLのH2O、炭酸水素ナトリウム、およびブラインで洗浄した。有機層を、シリカゲルのパッドに通し、150mLの酢酸エチルでフラッシュした。溶媒を減圧下で除去し、粗生成物を酢酸エチル:ヘプタン(1:1)から結晶化することにより、6.09gの化合物18926(76.9%)を得た。
【0115】

C45H55NO15Sとして、計算値 C 61.28、H 6.29;実測値 C 61.13、H 6.40
[α]20D=-56.4°(C=1、MeOH)
【0116】
実施例8:化合物17932
【化20】

上述の脱保護法を使って、250mgの2'-MOP-7-TES-17932を0.2M HCl/アセトニトリルで処理し、精製して、化合物17932(155mg)を得た。
【0117】

C46H55NO15Sとして、計算値 C 61.80、H 6.22;実測値 C 61.61、H 6.29
[α]20D=-47.6°(C=1、MeOH)
【0118】
実施例9:化合物18365
【化21】

【0119】
上述の脱保護法を使って、10.51g(9.86mmol)の2'-MOP-7-TES-18365を0.2M HCl/アセトニトリルで処理し、酢酸エチル:ヘプタン(5.8:11.7mL/g)からの再結晶後に、8.08gの化合物18365を97.09%のHPLC純度で得た。
【0120】

【0121】
実施例10:化合物19244
【化22】

【0122】
上述の脱保護法を使って、10.61g(10.07mmol)の2'-MOP-7-TES-19244を0.2M HCl/アセトニトリルで処理し、酢酸エチル:ヘプタン(6.0:11.0mL/g)からの再結晶後に、5.70g(6.57mmol、65%)の化合物19244を、97.59%のHPLC純度で得た。
【0123】


【0124】
実施例11:ラセミSIT302
【化23】

【0125】
0℃の、ヘキサメチルジシラザン(HMDS、230mL、1.1mol)の無水ジメトキシエタン(100mL)溶液に、2.5M n-ブチルリチウム溶液(nBuLi、400mL、1.0mol)を、反応温度が40℃未満に維持されるように、20分かけて加えた。添加後、2-チオフェンカルボキサルデヒド(112.15g、1.0mol)を反応混合物に、反応温度が40℃未満に維持されるように、30分かけて加えた。添加が完了した後、混合物を0℃に冷却し、トリス(トリメチルシロキシ)エチレン(322g、1.1mol)を加え、出発エチレン物質の消失により反応が完了したと決定されるまで(48時間)、混合物を撹拌した。反応混合物をトリメチルシリルクロリド(TMSCl、108.16g、1.0当量)でクエンチし、ヘキサン類(500mL)で希釈した。リチウム塩を焼結濾過器で濾去した。濾液を濃縮することにより、固形物を得た。ヘキサン類(500mL)を加え、その混合物を0℃で45分間撹拌してから、ブフナー漏斗で収集した。濾過ケーキを冷ヘキサン類で洗浄することにより、粗製(214.5g)ラセミ中間体ビス-(トリメチルシリル)-SIT302のオフホワイト固形物を得た。
【0126】

【0127】
ビス-シリル化中間体を無水メタノール(500mL)にとり、2つのトリメチルシリル保護基を除去するために、周囲温度の20〜24℃において触媒量のトリメチルシリルクロリド(5.4g、0.05mol)で処理した。TLC(3:1 酢酸エチル:ヘキサン類)でモニターしたところ、脱シリル化は1時間で完了して、最終生成物(Rf約0.2)を与えた。反応混合物をトリエチルアミン(12.7mL)で塩基性にし、濃縮することにより、結晶性生成物のスラリーを得た。酢酸エチル(500mL)を加え、濃厚なスラリーになるまで40℃で濃縮した後、周囲温度(20〜24℃)に冷却した。結晶を減圧濾過によってブフナー漏斗で集め、冷酢酸エチルで洗浄し、恒量になるまで乾燥して、74.5g(44%)のラセミSIT302を得た。第2クロップの分離は試みなかった。
【0128】

【0129】
実施例12:N-BOC-プロリンエステルによる速度論的分割
【化24】

【0130】
0〜5℃において窒素下で機械的に撹拌したアセトニトリル中のラセミSIT302(846g、5.0mol)およびN-Boc-プロリン無水物(1132g、2.75mol、Benoiton N. L.ら, Synthesis 1978, 928)の透明な無水溶液に、速度論的に制御されるエステル化が触媒されるように、N-メチルベンゾイミダゾール(6.6g、0.05mol)を加えた。0〜5℃で24時間の撹拌後に、TLC(3:1 E/H、CAM染色)とHNMRモニタリングにより、エステル対アルコール比が37:63であることが示された。1%のN-メチルベンゾイミダゾール(6.6g、0.05mol)を追加することで、さらに24時間の撹拌後に、この比を50:50に到達させた。混合物を周囲温度まで温め、溶媒を減圧下で除去した後、酢酸エチル(4L)を加えた。混合物をさらに濃縮して、約1.50Lの溶媒を除去した。混合物を20〜22℃の周囲温度で1時間放置してから、結晶を減圧濾過によって集め、冷酢酸エチルで洗浄した。結晶を、252g(収率60%)の恒量に達するまで乾燥して、99.4%の光学純度を得た。母液をさらに処理し、3%酢酸/水で洗浄し、体積が約1Lになるまで酢酸エチルを濃縮することにより、結晶の第2クロップ(99.1%の光学純度で52g)を得た。合わせた総収率は71.9%で、光学および化学純度は>99%だった。
【0131】

【0132】
実施例13:N-CPentO-(O-MOP)-SIT302
【化25】

【0133】
-45℃のトリホスゲン(5.5g、18.54mmol)のトルエン(45.0mL)溶液に、ジイソプロピルエチルアミン(0.89mL、5.15mmol)を窒素雰囲気下で滴下した。その混合物にシクロペンタノール(4.72mL、51.5mmol)を滴下し、1時間撹拌した。シクロペンチルクロロホルメート形成の進行をNMRでモニターした。別のフラスコで、3.5g(20.68mmol)のSIT302を、窒素雰囲気下で100mLの無水テトラヒドロフランに溶解し、-10℃に冷却した。この溶液にp-トルエンスルホン酸(196mg、1.03mmol)を加え、次に2.37mL(24.81mmol)の2-メトキシプロペンを滴下した。10分後に、ワンポット反応の第1ステップが完了した。その溶液をトリエチルアミン(8.6mL、62.04mmol)およびDMAP(500mg、4.09mmol)で塩基性にし、0℃に温めた。反応に、シクロペンチルホルメートのトルエン溶液31.02mL(31.02mmol)を投入し、室温まで徐々に温めた。5時間撹拌した後、100mLのヘプタンを加え、その有機混合物を100mLのH2O、100mLの炭酸水素ナトリウム水溶液、および100mLのブラインで洗浄した。有機層をトリエチルアミン塩基処理したシリカゲルのパッドに通し、酢酸エチル/ヘプタンの1:1混合物200mLでフラッシュした。溶媒を蒸発させると結晶が形成されて、5.75gのN-cPentO-(O-MOP)-SIT302(78.8%)を得た。
【0134】

【0135】
実施例14:O-MOP-N-シクロブトキシカルボニル-SIT302
【化26】

上述の手法を使って、N-cBoc-(O-MOP)-SIT302を、1%トリエチルアミンを含有するヘキサン類からの再結晶後に、69.45%の収率で得た。
【0136】

【0137】
実施例15:MTTアッセイを使った化合物18926、19244、17932および18365とパクリタキセルおよびドセタキセルとのインビトロ細胞毒活性の比較
細胞毒性およびIC50の決定
化合物18926、18365、17932、19244、パクリタキセル(PTX、1)およびドセタキセル(TXT、2)を、それらがAmerican Type Tissue Cultureから得られる次の細胞株:MALME-3(ヒト皮膚メラノーマ)、MSTO-211H(ヒト胸膜中皮腫)、HT29(ヒト大腸腺癌)、DLD-1(ヒト大腸腺癌)、PANC-1(ヒト膵腺癌)、A549(ヒト肺癌)、A375(ヒト皮膚メラノーマ)、786-0(ヒト腎細胞腺癌)、SK-MEL-28(ヒト皮膚メラノーマ)、およびNCI DCTD Tumor/Cell Line Repositoryから得られる次の細胞株:SNB-19(ヒト脳膠芽腫)、HOP-18(ヒト肺NSCLC)、OVCAR4(ヒト卵巣癌)およびOVCAR5(ヒト卵巣癌)、TK-10(腎細胞癌)の増殖に及ぼす作用について分析した。化合物17932はこれらの細胞株のうち4つで試験し、残りの化合物はこれらの細胞株の全てで試験した。全ての細胞株を、RPMI-1640組織培養培地(TCM、抗生物質および10%ウシ胎仔血清を添加したもの)で維持し、5%CO2を含有する湿潤空気中、37℃で培養した。試験化合物の抗増殖効果を評価するために、172μLの腫瘍細胞懸濁液(1.45×104細胞/ml)を96穴プレートの各ウェルに加え、細胞を付着させるために、空気中の5%CO2下、37℃で24時間インキュベートした。別の96穴プレートでTCM/DMSOでの2倍薬物希釈を3つ一組にして7回行い、腫瘍細胞を含むウェルに28μLを移した(最終体積200μL/0.1%DMSO)。プレートを72時間インキュベートし、細胞生存度を決定するために、5mg/mL MTT(3-[4,5-ジメチルチアゾル-2-イル]-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド)を含む50μLの温かいTCMを各ウェルに加え、37℃で1時間インキュベートした。プレートを処理し、得られた溶液の吸光度をプレートリーダーにより570nmで測定した。(ブランクウェルを差し引いた後で)試験ウェルの吸光度を薬物非含有ウェルの吸光度で割り、無処理培養物の吸光度を50%にする薬剤濃度(IC50)を、データの最良適合曲線の解析(GraphPad Prism version 4.00 for Windows)によって決定した。試験はTaxolog, Inc.(フロリダ州タラハシー)によって行われた。
【0138】
【表2】

【0139】
【表3】

【0140】
【表4】

【0141】
実施例16:BxPC-3がん細胞株における化合物18365および19244とドセタキセル(TXT)とのインビトロ細胞毒性の比較
BxPC-3がん細胞株(供給元ATCC)と培養培地は、Oncodesign(フランス)が購入し、用意した。
【0142】
腫瘍細胞(1ウェルあたり5,000細胞)を96穴平底マイクロタイタープレート(Ref 167008、バッチ083310、Nunc、Dutscher、フランス・ブリュマト)にプレーティングし、37℃で24時間インキュベートしてから、10%FBSを含む100μlの薬物非含有RPMI1640培地中で処理した。腫瘍細胞株を10種類の濃度の試験物質およびTXT(1/2段階希釈によって40〜0.07nM)と共に72時間インキュベートした。実験を3回繰り返し、各アッセイは4つ一組にして行った。対照細胞は賦形剤のみで処理した。処理の最後に、細胞毒活性をMTTアッセイで評価した。これらの試験はOncodesign(フランス)で行われた。
【0143】
BxPC-3細胞株における18365、19244、およびTXT化合物のIC50決定実験の結果の要約。
【表5】

【0144】
【表6】

【0145】
実施例17:MX1ヒト腫瘍異種移植片を有するヌードマウスにおける化合物18926および18365のインビボ活性
この異種移植片試験はノースカロライナ州のPiedmont Research Center(PRC)で行われた。雌無胸腺ヌードマウス(nu/nu Harlan)は、試験の1日目(D1)に、7週齢で体重(BW)範囲は15.1〜24.6gだった。これらの動物には、水(逆浸透水、1ppm Cl)と、18.0%粗タンパク質、5.0%粗脂肪、および5.0%粗繊維からなるNIH31 Modified and Irradiated Lab Diet(登録商標)とを、自由に摂取させた。固定マイクロアイソレータ中、12時間の照明周期、21〜22℃(70〜72°F)および40〜60%の湿度で、照射ALPHA-dri(登録商標)bed-o-cobs(登録商標)実験動物用敷料上に、マウスを収容した。PRCは、拘束、飼育管理、外科手技、飼料および水分調節、ならびに獣医学的ケアに関して、実験動物の管理と使用に関する指針(Guide for Care and Use of Laboratory Animals)の勧告に厳密に従う。PRCにおける動物プログラムは、実験動物の管理と使用に関して認められている基準の遵守を保証する国際実験動物管理公認協会(AALAC International)による認証を受けている。
【0146】
腫瘍植え込み
この試験で利用されるヒトMX-1乳癌は、逐次移植により、無胸腺ヌードマウスで維持した。腫瘍片(1mm3)を各試験マウスの右わき腹の皮下に植え込んだ。腫瘍を週に2回モニターし、その後、平均体積が80〜120mm3に達したら毎日モニターした。試験のD1に、63〜144mm3の腫瘍サイズを持ち、群平均腫瘍サイズが約88mm3である処置群に、動物を分けた。腫瘍サイズ(単位:mm3)は次の式から算出した:
【数1】

[式中、w=腫瘍の幅(mm)およびl=腫瘍の長さ(mm)である]。
腫瘍重量は1mgが腫瘍体積1mm3に相当すると仮定して見積もった。
【0147】
化合物18365および18926を、10%エタノール、10%Cremophor EL(登録商標)および80%の5%デキストロース水溶液中に調剤し、マウス20グラムあたり0.3mLの投与体積で、各マウスの体重に合わせて投与した。50%エタノールおよび50%Tween(登録商標)80にTXTを溶解して、6.67×溶液を調製し、それをD5Wで希釈して7.5%エタノールおよび7.5%Tween(登録商標)80および85%D5Wを含有する静脈内投与溶液とし、それをマウス20グラムあたり0.2mLの投与体積で、各マウスの体重に合わせて投与した。全ての薬物溶液を投与の日に新しく調製した。
【0148】
処置
マウスを1群あたり5匹の群に分けた。静脈内(i.v.)処置をD1に1回施した(qd×1)。対照群1には賦形剤1を静脈内投与した。群9〜11には、それぞれ7.5、15、および30mg/kgの化合物18365を静脈内投与した。群12〜14には、それぞれ7.5、15、および30mg/kgの化合物18926を静脈内投与した。群25には25mg/kgの化合物2を静脈内投与した。
【0149】
エンドポイント
各動物は、その新生物が所定のエンドポイントサイズ(1500mm3)に達するか、または試験の最後か、どちらか早い時点で、安楽死させた。各マウスについてエンドポイント到達時間(TTE)を次の式によって算出した。
【数2】

[式中、TTEは日数で表され、エンドポイント体積はmm3の単位で表され、bは、対数変換腫瘍成長データセットの線形回帰によって得られる直線の切片であり、mはその直線の傾きである]。データセットは、試験エンドポイント体積を超えた最初の観察と、エンドポイント体積に到達する直前の3つの連続する観察とから構成される。算出されるTTEは、通常、腫瘍サイズを理由として動物を安楽死させる日よりも少ない。エンドポイントに到達しない動物には、試験最終日に相当するTTE値(61日)が割り当てられる。処置関連(TR)原因または非処置関連転移(NTRm)原因によって死亡したと分類される動物には、死亡の日に相当するTTE値が割り当てられる。非処置関連(NTR)原因によって死亡したと分類される動物は、TTE算出から除外される。処置効力は、対照群と比較した処置群のTTE中央値の増加と定義される腫瘍成長遅延(TGD):
TGD = T-C
を日数で表すか、対照群のTTE中央値に対する百分率で表したもの:
【数3】

から決定した
[式中、
T=処置群のTTE中央値
C=対照群1のTTE中央値
である]。
【0150】
MTVおよび退縮応答の基準
処置効力を、この試験において最終日に残っている動物の腫瘍体積からも決定し、退縮応答の数からも決定した。MTV(n)は、腫瘍がエンドポイント体積に達しなかった残存動物の数nにおける、D61での腫瘍体積中央値と定義される。処置は動物中の腫瘍の部分的退縮(PR)または完全退縮(CR)を引き起こしうる。PRは、試験中の連続した3回の測定について腫瘍体積がそのD1体積の50%以下であり、それら3回の測定のうち1回以上が13.5mm3以上であったことを示す。CRは、試験中の連続した3回の測定について腫瘍体積が13.5mm3未満であったことを示す。試験終了時にCRを持つ動物はさらに無腫瘍生存例(TFS)と分類される。
【0151】
毒性
動物の体重をD1〜D5は毎日測定し、その後は、試験が完了するまで週に2回測定した。有害薬物関連副作用の明白な徴候について、マウスを頻繁に調べた。最大耐用量(MTD)に関し、許容される毒性を、試験中に起こる20%未満の群平均BW減少、および10匹中1匹以下のTR死と定義した。死亡例は、それが臨床徴候および/または剖検により、処置副作用に起因すると証明されるか、投薬期間中または最後の投薬から10日以内に起こった、未知の原因によるものである場合に、TRと分類される。死亡例は、その死亡が処置副作用に関係することを示す証拠がない場合に、NTRと分類される。死亡例は、それが浸潤および/または転移による腫瘍播種の結果として起こった可能性があることを剖検が示す場合に、NTRmと分類される。対照群1には賦形剤1を静脈内投与し、TTE解析の対照として、また静脈内処置群の統計的評価のための一次対照として利用した。群1マウスのTTE中央値は32.1日だった。5匹全てのマウスにおける腫瘍が1500mm3エンドポイント体積まで成長した。したがってこの61日試験において可能な最大%TGDは90だった。結果の要約を以下に示す。
【0152】
【表7】

【0153】
15および30mg/kgの化合物18365(群10および11)は、D5に、それぞれ6.8%および16%の最大群平均BW減少を引き起こした。7.5、15、および30mg/kgの化合物18926(群12〜14)は、それぞれ7.6%(D3)、6.6%(D4)、および15.5%(D5)の最大群平均BW減少を引き起こした。賦形剤処置群1では全ての腫瘍が1500mm3エンドポイント体積に到達し、退縮した腫瘍はなかったことから、この腫瘍モデルは申し分なく機能した。したがって全ての生存例および退縮応答は薬物処置に起因すると考えることができた。最小有効用量は、統計的に有意な結果をもたらし、かつ少なくとも1例のD61生存例および/または少なくとも1例の退縮応答を生じた、最も低い用量と定義した。賦形剤1処置は32.1のTTE中央値をもたらした(群1)。群1のTTE中央値に基づき、この試験における最大%TGDは90ということになった。化合物18365は7.5mg/kgで有意でない活性を示した(群9)。化合物18365は15mg/kgでわずかに有効(minimally effective)であって(群10)、1例のPRおよび2例のTFSをもたらし、群平均BW減少は6.8%だった。30mg/kgレジメン(群11)は5例のTFSを生じ、群平均BW減少は16%だった。化合物18926は7.5mg/kgで有意でない活性を示した(群12)。活性はわずかに有効な15mg/kg用量で急激に増加し(群13)、これは4例のTFSを生じ、群平均BW減少は6.6%だった。30mg/kg処置(群14)は5例のTFSをもたらし、15.5%の平均BW減少を引き起こした。25mg/kg qd×1の化合物2は、1例の一過性CRおよび4例のTFSをもたらし、群平均体重減少は10.2%だった。この試験についての平均腫瘍成長を図1に示す。
【0154】
実施例18:MX1ヒト腫瘍移植片を有するヌードマウスにおける化合物19244のインビボ活性
この試験は、先に述べたように、PRCで行われた。化合物19244を4日に1回のスケジュールで4回投与した。ドセタキセルは週に1回で3回投与した。試験のD1に、動物を、63〜144mm3の腫瘍サイズおよび約87mm3の群平均腫瘍サイズを持つ処置群に分けた。静脈内化合物19244は、7.5mg/kgで3例のTFSおよび2例の一過性CRを生じ、15mg/kgで5例のTFSを生じ、30mg/kgで4例のTFSおよび1例のPRを生じた。それぞれの最大群平均BW減少(D19に3.1%、7.6%、および18.9%)は、投薬量と共にほぼ倍増した。結果の要約を示す。
【0155】
【表8】

この試験についての平均腫瘍成長を図2に示す。
【0156】
実施例19:MX1ヒト腫瘍移植片を有するヌードマウスにおける化合物19244のインビボ活性
この試験は、先に述べたように、PRCで行われた。化合物19244およびドセタキセルを1日1回のスケジュールで投与した。3匹の化合物2処置マウスがD60まで生き残り、3例の腫瘍が退縮した(1例の一過性CRおよび2例のTFS)。7.5および15mg/kgの化合物19244は、それぞれ約-3および83の%TGDをもたらし、活性は有意でなかった(ログランク検定)。これらの低用量では60日生存例または退縮は生じなかった。30mg/kgでは化合物19244が235の%TGDをもたらし、有意な活性を示した。2匹のマウスがD60まで生き残り、全ての腫瘍が退縮した(1例のPR、2例の一過性CR、および2例のTFS)。結果の要約を示す。
【0157】
【表9】

この試験についての平均腫瘍成長を図3に示す。
【0158】
実施例20:SKMESヒト腫瘍異種移植片を有するヌードマウスにおける化合物19244のインビボ活性
この試験は、先に述べたように、PRCで行われた。SKMESはヒト肺がん細胞株である。この試験では、化合物2および全ての薬剤を、静脈内単剤療法として、単回30mg/kg用量(qd×1)で投与した。5%エタノールおよび95%の20%Liposyn(登録商標)IIからなる賦形剤中に、試験薬剤を調剤した。対照マウスにはこの賦形剤をqd×1投与した。化合物2は、7.5%エタノール、7.5%Tween(登録商標)80、および85%D5W(5%デキストロース水溶液)からなる賦形剤中に調剤した。十分に定着した(約124mm3)皮下SKMES肺腫瘍を有するヌードマウス5匹ずつの群で、投与を1日目に開始した。腫瘍成長のエンドポイント体積を1,500mm3とした。試験は23日目に終了した。
【0159】
【表10】

【0160】
化合物19244は、このモデルでは単回投与で活性であり、1例の完全応答と1例のTFSをもたらした。
この試験についての平均腫瘍成長を図4に示す。
【0161】
実施例21:SKMESヒト腫瘍異種移植片を有するヌードマウスにおける化合物19244のインビボ活性
PRCにおいて、化合物19244を、ヒトSKMES肺癌異種移植片に対する抗腫瘍活性について調べた。化合物19244を、5%エタノールおよび95%の20%Liposyn(登録商標)IIからなる賦形剤中、30mg/kgで、4日ごとに1日1回、4回にわたって(q4d×4)、静脈内(i.v.)投与した。対照マウスにはこの賦形剤をq4d×4投与した。陽性参照群には、7.5%エタノール、7.5%Tween(登録商標)80、および85%D5W(5%デキストロース水溶液)からなる賦形剤中の化合物2を、25mg/kgで、週に1回、3週間にわたって(q7d×3)投与した。投与は、進行した(upstaged)(約182mm3)皮下SKMES腫瘍を有するヌードマウス5匹ずつの群で、1日目に開始した。
【0162】
化合物19244は、このモデルでは単回投与で活性であり、2例の部分的応答と3例のTFSをもたらした。
この試験についての平均腫瘍成長を図5に示す。
【0163】
実施例22:HT29ヒト腫瘍異種移植片を有するヌードマウスにおける化合物19244のインビボ活性
PRCにおいて、化合物19244を、ヒトHT29大腸癌異種移植片に対する抗腫瘍活性について調べた。化合物19244を、5%エタノールおよび95%の20%Liposyn(登録商標)IIの賦形剤中、30mg/kgで、4日ごとに1日1回、4回にわたって(q4d×4)、静脈内(i.v.)投与した。対照マウスにはこの賦形剤をq4d×4投与した。各群のマウスは6匹だった。1つの陽性参照群には30mg/kgのパクリタキセルをq4d×4投与し、もう一つの陽性参照群には、25mg/kgの化合物2を、週に1回、3週間にわたって(q7d×3)投与した。パクリタキセルは、5%エタノール、5%Cremophor EL(登録商標)、および90%のデキストロース(5%)水溶液(D5W)中に調剤した。化合物2は、7.5%エタノール、7.5%Tween(登録商標)80、および85%D5W中に調剤した。投与は、進行した(約259mm3)皮下HT29腫瘍を有するヌードマウス6匹ずつの群で、1日目に開始した。腫瘍成長のエンドポイント体積は1,000mm3とした。試験継続期間は59日とした。パクリタキセルは比較的弱い活性を示し、忍容性の高い化合物2レジメンは、1例のLTTFSと4例のPR応答をもたらした。化合物19244は、より多くの退縮応答と低いMTVを与える点で化合物2をしのぎ、化合物19244は1例のLTTFSを含む6例の退縮応答をもたらした。この試験についての平均腫瘍成長を図6に示す。
【0164】
【表11】

【0165】
実施例23:HT29ヒト腫瘍異種移植片を有するヌードマウスにおける化合物18365、18926、および17932のインビボ活性
この試験はPRCで行われた。各試験薬剤を、4日ごとに1日1回、4回にわたって(q4d×4)、20または25mg/kgで静脈内(i.v.)投与した。対照マウスには、試験薬剤賦形剤である5%エタノールおよび95%の20%Liposyn(登録商標)IIを、q4d×4スケジュールで投与した。陽性参照群には、7.5%エタノール、7.5%Tween(登録商標)80、および85%D5W(5%デキストロース水溶液)からなる賦形剤中、25mg/kgの化合物2を、週に1回、3週間にわたって(q7d×3)投与した。投与は、進行した(約260mm3)皮下HT29腫瘍を有するヌードマウス6匹ずつの群で、1日目に開始した。腫瘍成長のエンドポイント体積は1,000mm3とした。試験継続期間は61日とした。化合物2は210の%TGDをもたらし、1例のLTTFSと5例のPR応答をもたらした。試験の最終日(61日目)に残っている動物の腫瘍体積中央値と定義されるMTVは、5匹のマウスで196mm3であった。化合物2は14.4%の忍容できる群平均体重(BW)減少を引き起こした。2.化合物17932および化合物18926は、20mg/kgで、それぞれ78mm3および83mm3のMTVをもたらしたが、これは化合物2処置マウスの196mm3というMTVより低い。これらの試験薬剤はそれぞれ5例のPR応答を与え、治癒活性はなかった。25mg/kgの化合物18365は5例の61日生存例をもたらした。化合物18365は、この試験では最も大きい治癒活性を示し、2例のCRおよび4例のPR応答を、1例のTR死と共にもたらした。
【0166】
【表12】

この試験についての平均腫瘍成長を図7に示す。
【0167】
実施例24:HT29ヒト腫瘍異種移植片を有するヌードマウスにおける化合物19244のインビボ活性
この試験はPRCで行われた。化合物19244を5%エタノールおよび95%Liposyn(登録商標)II(5%E 95%L-II)中に調剤し、30mg/kgで、4日ごとに1日1回、4回にわたって(q4d×4)、静脈内(i.v.)投与した。対照マウスには5%E 95%L-II賦形剤をq4d×4投与した。陽性参照群には、5%デキストロース水溶液中の7.5%エタノールおよび7.5%Tween(登録商標)80からなる賦形剤中、30mg/kgの化合物2による、週に1回、3週間の(q7d×3)静脈内治療を施した。投与は、進行した(約225mm3)皮下HT29腫瘍を有するヌードマウス6匹ずつの群で、1日目に開始した。腫瘍成長のエンドポイント体積は1,000mm3とした。化合物19244は172の%TGDをもたらし、5例の55日生存例をもたらした。化合物19244は0というMTVをもたらしたが、処置関連(TR)死が1例あったので、最大耐容量(MTD)を超えて投与された可能性がある。化合物19244は治癒活性に関して化合物2より優れていた。
【0168】
【表13】

この試験についての平均腫瘍成長を図8に示す。
【0169】
実施例25:HT29ヒト腫瘍異種移植片を有するヌードマウスにおける化合物19244および18365の経口および静脈内投与によるインビボ活性
この試験はPRCで行われた。化合物18365および化合物19244はどちらも、4日に1回のスケジュールで4回の投与により、HT29異種移植片腫瘍モデルにおいて経口および静脈内投与により活性を示す。経口試験用の製剤はエタノールおよびCremophor製剤とし、静脈内投与される化合物18365および化合物19244の製剤は5%エタノールおよび95%Liposyn II 20%とした。ドセタキセル(化合物2)製剤は前述のようにエタノールおよびTween(登録商標)80製剤とした。
【0170】
【表14】

この試験についての平均腫瘍成長を図9に示す。
【0171】
実施例26:HT29ヒト腫瘍異種移植片を有するヌードマウスにおける化合物19244および18365の経口および静脈内投与によるインビボ活性
この試験はPRCで行われた。化合物18365および化合物19244はどちらも、4日に1回のスケジュールで4回の投与により、HT29異種移植片腫瘍モデルにおいて経口および静脈内投与により活性を示す。経口試験用の製剤はエタノールおよびCremophor製剤とし、静脈内投与される化合物18365および化合物19244の製剤は5%エタノールおよび95%Liposyn II 20%とした。ドセタキセル(化合物2)製剤は前述のようにエタノールおよびTween(登録商標)80製剤とした。
【0172】
【表15】

この試験についての平均腫瘍成長を図10に示す。
【0173】
実施例27:A375ヒト腫瘍異種移植片を有するヌードマウスにおける化合物19244、18926、および18365の静脈内投与によるインビボ活性
Piedmont Research Center, LLCにおいて、化合物18926、18365、および19244を、ヒトA375メラノーマ異種移植片に対する抗腫瘍活性についてスクリーニングした。全ての試験薬剤を、5%エタノールおよび95%の20%Liposyn(登録商標)IIからなる賦形剤中、30mg/kgで、4日に1回、4回にわたって(q4d×4)、静脈内投与した。対照マウスには、この賦形剤をq4d×4レジメンで静脈内投与した。陽性対照群には、D5W中の7.5%エタノール、7.5%Tween(登録商標)80からなる賦形剤中の化合物2を、25mg/kgで、週に1回、3週間にわたって(qwk×3)投与した。処置は、定着した(約100mm3)皮下A375腫瘍を有するヌードマウス6匹ずつの群で、1日目に開始した。エンドポイントは2,000mm3の腫瘍体積とし、試験を56日目に終了した。効力を、腫瘍成長遅延ならびに部分退縮および完全退縮の数によって評価した。56日目まで持続するCRを持つ動物は、長期無腫瘍生存例(TFS)と分類した。賦形剤対照における腫瘍は全て進行性に成長して、29日目またはそれ以前に、18.1日の中央値で、エンドポイントに到達した。陽性対照である化合物2は、8.9日という有意な腫瘍成長遅延をもたらしたが、退縮は全くもたらさなかった。
【0174】
本発明化合物は、試験した用量レベルにおいて著しく有効であり、処置したマウスの大半で退縮をもたらした。
【表16】

この試験についての平均腫瘍成長を図11に示す。
【0175】
実施例28:MSTO-211Hヒト腫瘍異種移植片を有するヌードマウスにおける化合物18926およびドセタキセルの静脈内投与によるインビボ活性
MSTO-211Hは耐性中皮腫がん細胞株である。Taxolog, Inc.(フロリダ州タラハシー)において、化合物18926およびドセタキセルを、ヌードマウス中のヒトMSTO-211H中皮腫異種移植片に対する抗腫瘍活性について調べた。化合物18926を、5%エタノールおよび95%の20%Liposyn(登録商標)IIからなる賦形剤中、25mg/kgで、4日に1回、4回にわたって(q4d×4)、静脈内投与した。対照マウスにはこの賦形剤をq4d×4レジメンで静脈内投与した。陽性対照群には、D5W中の7.5%エタノール、7.5%Tween(登録商標)80からなる賦形剤中の化合物2を、25mg/kgで、週に1回、3週間にわたって(qwk×3)投与した。処置は、定着した(約225mm3)皮下MSTO-211H腫瘍を有するヌードマウス6匹ずつの群で、1日目に開始した。試験を48日目に終了した。賦形剤対照における腫瘍は全て進行性に成長して、20日目またはそれ以前にエンドポイントに達した。陽性対照である化合物2は、退縮を一切もたらさなかった。化合物18926はこのモデルで非常に活性が高く、腫瘍最下点サイズは32mg(平均)で、222mgの初期腫瘍重量に対して85%の腫瘍退縮になった。どちらの化合物も大きな体重減少を示し、ドセタキセルでは31%の最大体重減少が、また化合物18926では24%の体重減少が見られた。
この試験についての平均腫瘍成長を図12に示す。
【0176】
実施例29:MSTO-211Hヒト腫瘍異種移植片を有するヌードマウスにおける化合物19244およびドセタキセルの静脈内投与によるインビボ活性
Taxolog, Inc.(フロリダ州タラハシー)において、化合物19244およびドセタキセルを、ヌードマウス中のヒトMSTO-211H中皮腫異種移植片に対する抗腫瘍活性について調べた。化合物19244を、5%エタノールおよび95%の20%Liposyn(登録商標)IIからなる賦形剤中、30mg/kgで、4日に1回、4回にわたって(q4d×4)、静脈内投与した。対照マウスにはこの賦形剤をq4d×4レジメンで静脈内投与した。陽性対照群には、D5W中の7.5%エタノール、7.5%Tween(登録商標)80からなる賦形剤中の化合物2を、25mg/kgで、週に1回、3週間にわたって(qwk×3)投与した。処置は、定着した(約220mm3)皮下MSTO-211H腫瘍を有するヌードマウス6匹ずつの群で、1日目に開始した。試験を48日目に終了した。賦形剤対照における腫瘍は全て進行性に成長して、30日目またはそれ以前にエンドポイントに達した。陽性対照である化合物2は、退縮を一切もたらさなかった。化合物19244はこのモデルで非常に活性が高く、腫瘍最下点サイズは51mg(平均)で、220mgの初期腫瘍重量に対して77%の腫瘍退縮になった。どちらの化合物も大きな体重減少を示し、ドセタキセルでは24%の最大体重減少が、また化合物19244では21%の体重減少が見られた。
この試験についての平均腫瘍成長を図13に示す。
【0177】
実施例30:MSTO-211Hヒト腫瘍異種移植片を有するヌードマウスにおける化合物18926および18365の静脈内投与によるインビボ活性
Taxolog, Inc.(フロリダ州タラハシー)において、化合物18365および18926を、ヌードマウス中のヒトMSTO-211H中皮腫異種移植片に対する抗腫瘍活性について調べた。10%エタノール、10%Cremophor EL(登録商標)および80%のD5Wからなる賦形剤中、化合物18926を20mg/kgで、また化合物18365を25mg/kgの用量で、4日に1回、4回にわたって(q4d×4)、静脈内投与した。対照マウスにはこの賦形剤をq4d×4レジメンで静脈内投与した。陽性対照群には、D5W中の7.5%エタノール、7.5%Tween(登録商標)80からなる賦形剤中の化合物2を、25mg/kgで、週に1回、3週間にわたって(qwk×3)投与した。処置は、定着した(約220mm3)皮下MSTO-211H腫瘍を有するヌードマウス5匹ずつの群で、1日目に開始した。試験は継続中であり、まだ終わっていない。化合物18926および18365はどちらもこの試験で非常に活性が高く、どちらの化合物でも有意な退縮が見られている。どちらの化合物も体重減少を示し、化合物18926では16%の最大体重減少が、また化合物18365では18%の体重減少と1例のTRが見られた。
この試験についての平均腫瘍成長を図14に示す。
【0178】
実施例31:MSTO-211Hヒト腫瘍異種移植片を有するヌードマウスにおける化合物18926および18365ならびに他の抗がん化合物の静脈内投与によるインビボ活性
Taxolog, Inc.(フロリダ州タラハシー)において、化合物18365および18926を、他の抗がん化合物と共に、以下のプロトコールに従って、ヌードマウス中のヒトMSTO-211H中皮腫異種移植片に対する抗腫瘍活性について調べた。
【0179】
【表17】

【0180】
処置は、定着した(約185mm3)皮下MSTO-211H腫瘍を有するヌードマウス5匹ずつの群で、1日目に開始した。化合物18365はこの試験で非常に活性が高く、腫瘍退縮が見られた。化合物18926は、この試験において、この用量では毒性だった。
この試験についての平均腫瘍成長を図15に示す。
【0181】
実施例32:BxPC-3ヒト膵腫瘍異種移植片を有するヌードラットにおける化合物18365、19244、およびドセタキセルの静脈内投与によるインビボ活性
Oncodesign(France)において、化合物18365および19244を、ヌードラット中のヒトBxPC-3ヒト膵臓異種移植モデルに対する抗腫瘍活性について調べた。
【0182】
方法:γ線源(7.0Gy、Co60、INRA、フランス・ディジョン)による全身照射の24時間後に、200μlのRPMI1640培地中の20×106個のBxPC-3細胞を、8匹の雌ヌードラットの右脇腹に皮下注射して、腫瘍材料を生じさせた。腫瘍サイズが約1,000mm3に達したら、レシピエント雌ヌードラットへの移植のために、腫瘍を外科的に切除した。全身照射(7.0Gy、Co60、INRA、フランス・ディジョン)の24時間後、D0に、新鮮なBxPC-3腫瘍片を52匹の雌ヌードラットの右脇腹の皮下に外科用プライヤーを使って植え込み(1片/ラット)、皮膚を縫合した。平均腫瘍体積が321.6±131.2mm3に達したD21に、抗腫瘍活性試験を開始した。処置を開始する前に、移植を受けた52匹中42匹の腫瘍保有ラットを6匹ずつの7群にランダムに割り当てた。各群の平均腫瘍体積は同等であり、他の群との間に統計的な差はなかった(分散分析)。
【0183】
処置スケジュールを以下の表に要約する。
【表18】

【0184】
各処置の間に回復しない重篤な体重減少が観察されたので、元のQ7D×4処置スケジュールを、化合物および用量に合わせて調節した。5mg/kg/注射では、化合物18365およびTXTについて、4回の処置をD21、D28、D42およびD49に施し、化合物19244については、体重の回復が遅かったので、D21、D42およびD49に3回だけ注射を行った。7mg/kg/注射では、重篤な体重減少が起こったので、D21とD42に2回だけ処置を行った。
【0185】
化合物18365
賦形剤処置群のラットでの腫瘍の平均倍加時間(DT)は10.9±6.0日だった。5mg/kg/注射の化合物18365で処置されたラットでの腫瘍の平均倍加時間は24.7±10.4日に増加したが、賦形剤群と比較して有意差はなかった。7mg/kg/注射で処置した時は、1匹しかDT評価に利用できなかったので、DT解析を行わなかった。賦形剤処置ラットに関して、1,000mm3の体積に達するまでの時間(T to V)は30.0±2.7日だった。5mg/kg/注射の化合物18365で処置した群に関する1,000mm3へのT to Vは、賦形剤処置群と比較して、統計的に有意(p=0.0007)に増加した(64.3±16.3日)。7mg/kg/注射で処置した場合は、十分な数の動物を利用できず(1匹だけ)、結論を下せなかった。
【0186】
5mg/kg/注射の化合物18365は、D53に、11.0%の最良T/C%値をもたらした(n=5)。T/C%値はD33での42%より低かった。この群では、D81(最終屠殺時)に、2匹で、完全な腫瘍退縮が記録された。7mg/kg/注射の化合物18365は、D53に、13.2%の最良T/C%値をもたらした(n=3)。T/C%値はD33での42%より低かった。5および7mg/kg/注射の反復静脈内注射により、それぞれ合計4回(D21、D28、D42およびD49)および2回(D21およびD42)の投与で処置した場合の、化合物18365の著しい抗腫瘍活性が、皮下BxPC-3腫瘍を有するヌードラットのモデルで証明された。5mg/kg/注射では、化合物18365の反復静脈内処置が、皮下BxPC-3腫瘍を有するヌードラットによって、十分には忍容されなかった。重篤な体重減少が観察され、D33で(重要な閾値(significant threshold)に近い)-16.9±6.1%に達し、それが処置日を遅らせることになった。スケジュールQ7D×4をD21、D28、D42およびD49における処置に変更した。D35に、体重が回復しなかったために、ラットを1匹(ID3171)だけ屠殺した。
【0187】
7mg/kg/注射では、化合物18365による反復静脈内処置が、皮下BxPC-3腫瘍を有するヌードラットによって忍容されなかった。1回目の処置後に、重篤で統計的に有意な体重減少が観察された(MBWC D21-D26は、7mg/kg/注射の化合物18365で処置した群および賦形剤で処置した群について、それぞれ-16.5±7.2および-2.0±4.8%だった。p<0.0001)。体重減少および体重を回復するのに要する時間が、処置の回数を減少させることになった。スケジュールQ7D×4をD21およびD42における2回だけの処置に変更した。2回目の処置も重篤な体重減少をもたらし、体重回復は1匹でしか観察されなかった。3匹のラットは死亡しているのが見つかり(D23、D27およびD49)、2匹は屠殺した(D53およびD70)。7mg/kg/注射の化合物18365で処置された6匹のうち1匹のラットだけが試験の終了時に生存していた。
【0188】
化合物19244
5mg/kg/注射では、化合物19244による反復静脈内処置が、皮下BxPC-3腫瘍を有するヌードラットにより、十分に忍容された。1回目の注射後に重篤かつ統計的に有意な体重減少が観察された(MBWC D21-D26は、5mg/kg/注射の化合物19244で処置した群および賦形剤で処置した群について、それぞれ-15.9±5.6および-2.0±4.8%だった。p<0.0001)。体重の減少が処置回数を減少をさせ、処置日を遅らせることになった。スケジュールQ7D×4をD21、D42およびD49における処置に変更した。5mg/kg/注射の化合物19244で処置した場合、3匹のラットが死亡しているのが見つかった(D34、D49およびD55)。7mg/kg/注射では、化合物19244による反復静脈内処置が、皮下BxPC-3腫瘍を有するヌードラットにより、忍容されなかった。1回目の処置後に重篤で統計的に有意な体重減少が観察された(MBWC D21-D26は、7mg/kg/注射の化合物19244で処置した群および賦形剤で処置した群について、それぞれ-20.1±5.7および-2.0±4.8%だった。p<0.0001)。体重減少および体重を回復するのに要する時間が、処置の回数を減少させることになった。スケジュールQ7D×4をD21およびD42における2回だけの処置に変更した。3匹のラットは死亡しているのが見つかり(D27、D28およびD31)、1匹はD49に屠殺した。7mg/kg/注射の化合物19244で処置した6匹のラットのうち、試験の最後に生存していたのは、2匹だけであった。
【0189】
5mg/kg/注射の化合物19244で処置したラットでの腫瘍の平均倍加時間は、19.3±6.5日に増加したが、賦形剤群(10.9±6.0日のDT)と比較して、その差は統計的に有意でなかった。7mg/kg/注射で処置した場合は、十分な数の動物を利用できず(1匹だけ)、結論を下せなかった。
【0190】
5mg/kg/注射の化合物19244で処置した群では1,000mm3へのT to Vが、賦形剤処置群と比べて増加した(46.0±11.6日)が、その差は統計的に有意でなかった(p=0.0240)。7mg/kg/注射で処置した場合、十分な数の動物を利用できず(1匹だけ)、結論を下せなかった。
【0191】
5mg/kg/注射の化合物19244は、D53に、27.7%の最良T/C%値をもたらした(n=4)。T/C%値はD33での42%より低かった。7mg/kg/注射の化合物18365は、D53に、8.9%の最良T/C%値をもたらした(n=2)。T/C%値はD33での42%より低かった。
【0192】
5および7mg/kg/注射の反復静脈内注射により、それぞれ合計3回(D21、D42およびD49)および2回(D21およびD42)の投与で処置した場合、化合物19244の著しい抗腫瘍活性が、皮下BxPC-3腫瘍を有するヌードラットのモデルで証明された。
【0193】
TXT
5mg/kg/注射では、TXTによる反復静脈内処置が、皮下BxPC-3腫瘍を有するヌードラットにより、十分には忍容されなかった。重篤な体重減少が観察され、D33で(重要な閾値に近い)-15.4±8.2%に達し、処置日を遅らせることになった。スケジュールQ7D×4をD21、D28、D42およびD49における処置に変更した。1匹のラットをD35に屠殺し、2匹はD58に死亡しているのが見つかった。
【0194】
7mg/kg/注射では、TXTによる反復静脈内処置が、皮下BxPC-3腫瘍を有するヌードラットにより、忍容されなかった。1回目の処置後に重篤で統計的に有意な体重減少が観察された(MBWC D21-D26は、7mg/kg/注射のTXTで処置した群および賦形剤で処置した群について、それぞれ-16.3±7.0および-2.0±4.8%だった。p<0.0001)。体重減少および体重を回復するのに要する時間が、処置の回数を減少させることになった。スケジュールQ7D×4をD21およびD42における2回だけの処置に変更した。2匹のラットは死亡しているのが見つかり(D28およびD29)、2匹は屠殺した(D60およびD70)。7mg/kg/注射のTXTで処置した6匹のラットのうち、試験の最後に生存していたのは、2匹だけだった。
【0195】
5mg/kg/注射のTXTで処置したラットでの腫瘍の平均倍加時間は、DT評価に利用できる動物がなかったため、算出することができなかった。7mg/kg/注射で処置した場合は、十分な数の動物を利用できず(2匹だけ)、結論を下せなかった。
【0196】
5または7mg/kg/注射のTXTで処置した群では1,000mm3へのT to Vが、賦形剤処置群と比べて増加したが、評価には1匹または2匹しか利用できなかった。
【0197】
5mg/kg/注射のTXTは、D60に、3.8%の最良T/C%値をもたらした(n=2)。T/C%値はD33での42%より低かった。この群では、D81(最終屠殺時)に、1匹で、完全な腫瘍退縮が記録された。7mg/kg/注射のTXTは、D56に、12.3%の最良T/C%値をもたらした。T/C%値はD33での42%より低かった。
【0198】
5および7mg/kg/注射の反復静脈内注射により、それぞれ合計4回(D21、D28、D42およびD49)および2回(D21およびD42)の投与で処置した場合、TXTの著しい抗腫瘍活性が、皮下BxPC-3腫瘍を有するヌードラットのモデルで証明された。
【0199】
ラット異種移植片試験から得られた結果の要約。
・毒性ラット異種移植片試験
-18365
・5mg/kg:16.9%の体重減少。1匹を体重減少により屠殺。
・7mg/kg:3匹が死亡していた。2匹を体重減少により屠殺。
-19244
・5mg/kg:3匹が死亡していた。
・7mg/kg:3匹が死亡していた。1匹を屠殺。
-ドセタキセル
・5mg/kg:2匹が死亡していた。1匹を屠殺。
・7mg/kg:2匹が死亡していた。2匹を屠殺。
【0200】
結論として、この異種移植片試験により、ドセタキセルと同じスケジュールおよび同じ用量で投与すると、化合物18365の方が、ヌードラットにおいて毒性が低く、忍容性が高いことが示された。図15に賦形剤対照群および化合物19244群について腫瘍成長を示す。図16に化合物18365群およびドセタキセル群について腫瘍成長を示す。
【0201】
実施例33:ラットにおけるインビボ毒性評価
毒性を250〜300gのスプラーグ・ドーリーラットで評価した。静脈内投与に12mg/kgの用量を使って、1用量群につき3匹のラットを使用した。動物を観察し、4日目および10日目に臨床化学データを集めた。ラットを11日目に安楽死させ、安楽死時に、さらなる検査のために神経を切除して固定した。
【0202】
各ラットを後述のようにスコア化し、全てのパラメータを組み込んだ最終毒性スコアを割り当てる。死亡したラットには0というスコアを割り当てる。下記表18に、スコアへの各毒性パラメータの寄与の仕方に関する基準を記載する。ほとんどのパラメータは正の値を与え、可能な合計スコアは最大130になる。体重、白血球および血小板の減少については、回復を考慮する。パラメータが回復を示さない場合は、合計から-5を差し引く。合計スコアを13で割ることで、それを0から10までの尺度にする。神経毒性スコアの場合、-10は軸索変性病変が見られることを示し、0は病変がないことを示す。同じ方法で、週に1回、3週間にわたる投与レジメンを使った試験における毒性を測定した。この場合は、最後の投与の4日後に臨床化学データを得た。
【0203】
軸索変性を定量的にも測定して、一定表面積について変性した軸索の数を計算した。
【表19】

【0204】
【表20】

【0205】
ラット毒性試験e206では、5.9のスコアを示すドセタキセルを対照として、化合物19244が7.7のスコアを持っていた。12mg/kgの用量は72mg/m2に相当し、これは3週間に1回投与される場合のドセタキセルのヒト用量に似ている。化合物19244は、この試験において、ドセタキセルに似たスコアを持つだけでなく、軸索変性もドセタキセル対照より少なかった。これは、末梢ニューロパシーのリスクが低いという臨床現場における潜在的利益を示しうる。この試験では死亡例はなかった。先に述べたように、化合物19244はエタノールおよびLiposyn II 20%製剤中に調剤し、ドセタキセルはエタノールおよびTween(登録商標)80に基づく製剤中に調剤した。
【0206】
【表21−A】

【0207】
【表21−B】

【0208】
ラット毒性試験e195では、化合物17932が8.1(7.3、7.7、および9.2の平均)のスコアを持っていた。これはドセタキセル既存対照より低い。また、化合物17932は軸索変性をほとんど示さなかった。化合物17932はエタノールおよびLiposyn II 20%製剤中に調剤した。
【0209】
【表22】

【0210】
ラット毒性試験e196では、化合物18365が、ドセタキセル既存対照より低い7.7のスコアを持っていた。また、化合物18365は軸索変性を全く示さなかった。化合物18365はエタノールおよびLiposyn II 20%製剤中に調剤した。
【0211】
【表23】

【0212】
ラット毒性試験e199では、6.4のスコアを示すドセタキセルを対照として、化合物18926が7.4のスコアを持っていた。化合物18926は、この試験において、ドセタキセルに似たスコアを持つだけでなく、化合物18926は軸索変性も示さなかった。これは、末梢ニューロパシーのリスクが低いという臨床現場における潜在的利益を示しうる。この試験では死亡例はなかった。先に述べたように、化合物18926はエタノールおよびLiposyn II 20%製剤中に調剤し、ドセタキセルはエタノールおよびTween(登録商標)80に基づく製剤中に調剤した。
【0213】
【表24−A】

【0214】
【表24−B】

【0215】
e371単回投与試験では、化合物18365、18926、および19244をドセタキセルと比較した。化合物18365、18926、および19244はエタノール、Cremophor EL(登録商標)およびD5W製剤(10:10:80)中に調剤し、ドセタキセルはエタノール-Tween(登録商標)80に基づく製剤中に調剤した。化合物18365、18926、および19244はいずれも、ドセタキセルより少ない軸索変性を示すと共に、より高い(より安全な)ラット毒性スコアを示した。
【0216】
【表25−A】

【0217】
【表25−B】

【0218】
【表25−C】

【0219】
【表25−D】

【0220】
e371反復投与試験では、化合物18365、18926、および19244をドセタキセルと比較した。化合物18365、18926、および19244はエタノール、Cremophor EL(登録商標)およびD5W製剤(10:10:80)中に調剤し、ドセタキセルはエタノール-Tween(登録商標)80に基づく製剤中に調剤した。化合物18365および18926はドセタキセルより少ない軸索変性を示し、化合物19244は、週に1回投与した場合、ドセタキセルに似ていた。単回投与試験と比較して、化合物18926は、週に1回投与した場合、ドセタキセルより低いスコアを示した。これは、臨床現場において、化合物18926は、週に1回のスケジュールより3週間に1回のスケジュールで使用した方が良いかもしれないことを示している。しかしこの試験では死亡例はなかった。
【0221】
【表26−A】

【0222】
【表26−B】

【0223】
【表26−C】

【0224】
【表26−D】

【0225】
e346反復投与試験では、化合物17932、18365、18926、および19244をドセタキセルと比較した。化合物18365、18926、および19244はエタノール、Lyposyn II 20%製剤に基づく製剤(5:95)中に調剤し、ドセタキセルはエタノール、Tween(登録商標)80に基づく製剤中に調剤した。化合物18365、17932、および18926はいずれも、ドセタキセルよりはるかに少ない軸索変性を示した。化合物19244は、週に1回投与した場合、やはり多くの軸索変性を示したが、それでもドセタキセルよりは少なかった。単回投与試験と比較して、化合物18926は、週に1回投与した場合、ドセタキセルより低いスコアを示した。これは、臨床現場において、化合物18926は、週に1回のスケジュールより3週間に1回のスケジュールで使用した方が良いかもしれないことを示している。しかしこの試験では死亡例はなかった。
【0226】
【表27−A】

【0227】
【表27−B】

【0228】
【表27−C】

【0229】
【表27−D】

【0230】
【表27−E】

【0231】
【表27−F】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1):
【化1】

[式中、R10aはエチルまたはシクロプロピルであり、X3はチエニルであり、X10はシクロブチルまたはシクロペンチルである]
で示される構造を持つタキサン。
【請求項2】
R10aがエチルであり、X10がシクロブチルまたはシクロペンチルである、請求項1に記載のタキサン。
【請求項3】
R10aがシクロプロピルであり、X10がシクロブチルまたはシクロペンチルである、請求項1に記載のタキサン。
【請求項4】
R10aがエチルまたはシクロプロピルであり、X10がシクロブチルである、請求項1に記載のタキサン。
【請求項5】
R10aがエチルまたはシクロプロピルであり、X10がシクロペンチルである、請求項1に記載のタキサン。
【請求項6】
X3が2-チエニルである、請求項1〜5のいずれかに記載タキサン。
【請求項7】
式(1aa)、(1bb)、(1ab)、および(1ba):
【化2】

のいずれかで示される構造を持つ、請求項1〜6のいずれかに記載のタキサン。
【請求項8】
式(1bb):
【化3】

で示される構造を持つ、請求項1〜6のいずれかに記載のタキサン。
【請求項9】
式(1A)、(1B)、(1C)、および(1D):
【化4】

のいずれかで示される構造を持つ、請求項1に記載のタキサン。
【請求項10】
式(1AA)、(1BB)、(1CC)、および(1DD):
【化5】

のいずれかで示される構造を持つ、請求項1に記載のタキサン。
【請求項11】
式(1):
【化6】

[式中、R10aはエチルまたはシクロプロピルであり、X3はチエニルであり、X10はシクロブチルまたはシクロペンチルである]
で示される構造を持つタキサンと、少なくとも1つの医薬上許容される担体とを含む医薬組成物。
【請求項12】
R10aがエチルであり、X10がシクロブチルまたはシクロペンチルである、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
R10aがシクロプロピルであり、X10がシクロブチルまたはシクロペンチルである、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項14】
R10aがエチルまたはシクロプロピルであり、X10がシクロブチルである、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項15】
R10aがエチルまたはシクロプロピルであり、X10がシクロペンチルである、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項16】
X3が2-チエニルである、請求項11〜15のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項17】
タキサンが、式(1aa)、(1bb)、(1ab)、および(1ba):
【化7】

のいずれかで示される構造を持つ、請求項11〜16のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項18】
タキサンが、式(1bb):
【化8】

で示される構造を持つ、請求項11〜16のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項19】
タキサンが、式(1A)、(1B)、(1C)、および(1D):
【化9】

のいずれかで示される構造を持つ、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項20】
タキサンが、式(1AA)、(1BB)、(1CC)、および(1DD):
【化10】

のいずれかで示される構造を持つ、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項21】
タキサンの濃度が約0.01mg/mL〜10mg/mLである、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項22】
組成物が経口投与用の単一投与単位形であり、その投与単位形が患者の体表面積1m2あたり少なくとも20mgのタキサンを含有する、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項23】
投与単位形が患者の体表面積1m2あたり約25mg〜約400mgのタキサンを含有する、請求項22に記載の医薬組成物。
【請求項24】
投与単位形が患者の体表面積1m2あたり約50mg〜約200mgのタキサンを含有する、請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項25】
組成物が非経口投与用の単一投与単位形であり、その投与単位形が患者の体表面積1m2あたり少なくとも20mgのタキサンを含有する、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項26】
投与単位形が患者の体表面積1m2あたり約40mg〜約400mgのタキサンを含有する、請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項27】
投与単位形が患者の体表面積1m2あたり約60mg〜約350mgのタキサンを含有する、請求項26に記載の医薬組成物。
【請求項28】
投与単位形が患者の体表面積1m2あたり約50mg〜約100mgのタキサンを含有する、請求項26に記載の医薬組成物。
【請求項29】
約10%までのエタノールを含む、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項30】
経口投与用である、請求項29に記載の医薬組成物。
【請求項31】
経口溶液の形態である、請求項30に記載の医薬組成物。
【請求項32】
少なくとも約90%の蒸留水を含む、請求項31に記載の医薬組成物。
【請求項33】
約10%未満の界面活性剤を含む、請求項31に記載の医薬組成物。
【請求項34】
界面活性剤が、ポリソルベート80、ポリエトキシル化ヒマシ油、またはそれらの組み合わせである、請求項33に記載の医薬組成物。
【請求項35】
非経口投与用である、請求項29に記載の医薬組成物。
【請求項36】
エマルションの形態である、請求項35に記載の医薬組成物。
【請求項37】
エタノール溶液と脂肪エマルションとを混合することによって製造される、請求項36に記載の医薬組成物。
【請求項38】
脂肪エマルションが約10〜約20%の脂肪を含有する、請求項37に記載の医薬組成物。
【請求項39】
溶液である、請求項35に記載の医薬組成物。
【請求項40】
少なくとも約85%の食塩液を含む、請求項39に記載の医薬組成物。
【請求項41】
約10%未満の界面活性剤を含む、請求項40に記載の医薬組成物。
【請求項42】
界面活性剤が、ポリソルベート80、ポリエトキシル化ヒマシ油、またはそれらの組み合わせである、請求項41に記載の医薬組成物。
【請求項43】
哺乳動物において腫瘍成長を阻害する方法であって、式(1):
【化11】

[式中、R10aはエチルまたはシクロプロピルであり、X3はチエニルであり、X10はシクロブチルまたはシクロペンチルである]
で示される構造を持つタキサンと少なくとも1つの医薬上許容される担体とを含む医薬組成物の処置有効量を、その哺乳動物に投与することを含む方法。
【請求項44】
R10aがエチルであり、X10がシクロブチルまたはシクロペンチルである、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
R10aがシクロプロピルであり、X10がシクロブチルまたはシクロペンチルである、請求項43に記載の方法。
【請求項46】
R10aがエチルまたはシクロプロピルであり、X10がシクロブチルである、請求項43に記載の方法。
【請求項47】
R10aがエチルまたはシクロプロピルであり、X10がシクロペンチルである、請求項43に記載の方法。
【請求項48】
X3が2-チエニルである、請求項43〜47のいずれかに記載の方法。
【請求項49】
タキサンが、式(1aa)、(1bb)、(1ab)、および(1ba):
【化12】

のいずれかで示される構造を持つ、請求項43〜48のいずれかに記載の方法。
【請求項50】
タキサンが、式(1bb):
【化13】

で示される構造を持つ、請求項43〜48のいずれかに記載の方法。
【請求項51】
タキサンが、式(1A)、(1B)、(1C)、および(1D):
【化14】

のいずれかで示される構造を持つ、請求項43に記載の方法。
【請求項52】
タキサンが、式(1AA)、(1BB)、(1CC)、および(1DD):
【化15】

のいずれかで示される構造を持つ、請求項43に記載の方法。
【請求項53】
腫瘍が多剤耐性を示す腫瘍細胞を含む、請求項43〜52のいずれかに記載の方法。
【請求項54】
多剤耐性腫瘍細胞が薬物排出トランスポーターを過剰発現させる、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
薬物排出トランスポーターがATP結合カセットトランスポーターである、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
ATP結合カセットトランスポーターが、P-糖タンパク質、MDR関連タンパク質、乳がん耐性タンパク質、多剤耐性関連タンパク質、またはそれらの組み合わせである、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
腫瘍がパクリタキセルに対して耐性である、請求項43〜56のいずれかに記載の方法。
【請求項58】
腫瘍がドセタキセルに対して耐性である、請求項43〜56のいずれかに記載の方法。
【請求項59】
腫瘍が上皮細胞癌である、請求項43〜58のいずれかに記載の方法。
【請求項60】
腫瘍が、脳膠芽腫、乳癌、大腸癌、腎臓癌、肝臓癌、肺癌、卵巣癌、膵臓癌、腎臓癌、または皮膚メラノーマである、請求項43〜59のいずれかに記載の方法。
【請求項61】
腫瘍が、脳膠芽腫、大腸癌、肺癌、卵巣癌、膵臓癌、腎臓癌、または皮膚メラノーマである、請求項43〜59のいずれかに記載の方法。
【請求項62】
腫瘍が、大腸癌、肺癌、膵臓癌、腎臓癌、または皮膚メラノーマである、請求項43〜59のいずれかに記載の方法。
【請求項63】
腫瘍が、大腸癌、肺癌、腎臓癌、または皮膚メラノーマである、請求項43〜59のいずれかに記載の方法。
【請求項64】
腫瘍が、SNB-19脳膠芽腫、HCT116大腸癌、HT-29大腸癌、DLD-1大腸癌、A549肺癌、HOP-18肺癌、MSTO-211H中皮腫、A375メラノーマ、MALME-3メラノーマ、SK-MEL-28メラノーマ、OVCAR4卵巣癌、OVCAR5卵巣癌、PANC-1膵腺癌、BxPC-3膵臓癌、786-0腎臓癌、またはTK-10腎臓癌である、請求項43〜59のいずれかに記載の方法。
【請求項65】
腫瘍が、SNB-19脳膠芽腫、HCT116大腸癌、HT-29大腸癌、DLD-1大腸癌、A549肺癌、HOP-18肺癌、MSTO-211H中皮腫、A375メラノーマ、SK-MEL-28メラノーマ、OVCAR5卵巣癌、PANC-1膵腺癌、786-0腎臓癌、またはTK-10腎臓癌である、請求項43〜59のいずれかに記載の方法。
【請求項66】
腫瘍が、DLD-1大腸癌、OVCAR5卵巣癌、A549肺癌、MSTO-211H中皮腫、A375メラノーマ、786-0腎臓癌、またはTK-10腎臓癌である、請求項43〜59のいずれかに記載の方法。
【請求項67】
腫瘍が、DLD-1大腸癌、MSTO-211H中皮腫、A375メラノーマ、または786-0腎臓癌である、請求項43〜59のいずれかに記載の方法。
【請求項68】
医薬組成物が経口投与される、請求項43〜59のいずれかに記載の方法。
【請求項69】
医薬組成物が非経口投与される、請求項43〜59のいずれかに記載の方法。
【請求項70】
医薬組成物が界面活性剤を含む、請求項43〜59のいずれかに記載の方法。
【請求項71】
界面活性剤が、ポリソルベート80、ポリエトキシル化ヒマシ油、またはそれらの組み合わせである、請求項43〜59のいずれかに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公表番号】特表2011−517455(P2011−517455A)
【公表日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−503034(P2011−503034)
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【国際出願番号】PCT/US2009/038119
【国際公開番号】WO2009/145981
【国際公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.WINDOWS
【出願人】(510261681)フロリダ・ステイト・ユニバーシティ・リサーチ・ファウンデイション・インコーポレイテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】FLORIDA STATE UNIVERSITY RESEARCH FOUNDATION, INC.
【Fターム(参考)】