説明

C10アルカン酸グリシドエステル及びその使用

2−プロピルヘプタン酸グリシドエステル、4−メチル−2−プロピルヘキサン酸グリシドエステル又はこれらの混合物(まとめてグリシドエステルと略す)に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2−プロピルヘプタン酸グリシドエステル、4−メチル−2−プロピルヘキサン酸グリシドエステル又はその混合物(まとめてグリシドエステルと略す)に関する。
【0002】
グリシジルエステルは、その物理的及び化学的性質に基づいて、多くの使用可能性を有している。これは、例えばポリアクリレート、ポリエステル又はエポキシド系のための反応性希釈剤として使用されるか、例えば顔料のために適した分散助剤としてか、あるいは、特にオリゴマー及びポリマーの改質化のための合成における中間産物として使用される。特に、分枝のC10アルカン酸グリシドエステル、例えばバーサチック酸のグリシドエステルが、例えば商標Cadura(R)E 10(Shell社)として入手可能であるか、あるいは、ネオデカン酸のグリシドエステルが商標Glydexx(R)(Exxon社)として入手可能であることが知られている。
【0003】
Agnieszka Bukowskaらは、J. Chem.Technol Biotechnol 74 ; 1145-1148 (1999)において、相当するカルボン酸とエピクロロヒドリンとのクロム(II)塩の存在下での反応及び引き続いてのアセトニトリル及び炭酸カリウムの使用下でのグリシドエステルへの閉環反応によって、グリシドエステルを製造することを記載している。生成物は、蒸留により精製する。
【0004】
US 6433217は、α−C原子で分枝のグリシジルエステル、特にバーサチック酸のエステルを、触媒の存在下でカルボン酸とエピクロロヒドリンとの反応、引き続いてのアルカリ金属水酸化物の添加及び蒸留による後処理によって製造することを開示している。
【0005】
反応性希釈剤又は例えば顔料のための分散助剤又はポリマー類似反応によるポリマーの改質化のためのグリシドエステルの使用は、商業的に知られている。EP 1042 402では、例えば被覆組成物中の使用が記載されている。
【0006】
これにより、可能な限り良好な使用技術的性質を有し、かつ、可能な限り簡単かつ廉価に製造される、代替的なグリシドエステルが要求される。
【0007】
したがって、前記に定義したグリシドエステル及びその使用が見出された。また、その製造方法も見出された。
【0008】
グリシドエステル及びその製造について
本発明によるグリシドエステルは、式
【化1】

の2−プロピルヘプタン酸グリシドエステルであるか、あるいは、式
【化2】

の4−メチル−2−プロピルヘキサン酸グリシドエステルであるか、あるいは、これらの混合物である。
【0009】
本発明によるグリシドエステルは、1barで、21℃で液体である。
【0010】
2−プロピルヘプタン酸グリシドエステル、4−メチル−2−プロプルヘキサン酸グリシドエステル又はこれらの混合物は、ペンテンの二量化及び引き続いての酸化によって簡単に得られ、この場合、これは、例えばDE-A 102 39 134に記載されている。ペンテンの二量化の際には、一般に、2−プロピルヘプテン及び4−メチル−2−プロピルヘキセンから成る混合物が生じる。この混合物は後処理され、かつその純粋な化合物をその後にカルボン酸に酸化され、かつさらに使用することができる。
【0011】
しかしながらこれに関して一般には必然性が生じることなく、それというのもこれらのカルボン酸及びこれらのカルボン酸から誘導されるグリシドエステルは、本発明の範囲内においてさらなる使用に適しているためである。したがって、好ましくはこの混合物は、アルケンを分離することなしに、相当するカルボン酸混合物に酸化する。二量化及び引き続いての酸化において、他の副生成物、例えばギ酸エステル、例えばギ酸1−プロピル−ヘキシルエステル又はギ酸3−メチル−1−プロピル−ペンチルエステル、ノナノール又は6−メチル−オクタン−4−オールとギ酸との混合物が生じてもよく、グリシドエステルの製造及びさらなる使用前にこれら副生成物の分離除去は、必要ではない。
【0012】
しかしながらこれらの副生成物の量は、100質量部の2−プロピルヘプタン酸、4−メチル−2−プロピルヘキサン酸又はその質量合計に対して、好ましくは20質量部を下回り、特に好ましくは10質量部を下回り、とりわけ好ましくは5質量部を下回る。
【0013】
特に好ましくは、本発明によるグリシドエステルは、2−プロピルヘプタン酸グリシドエステル及び4−メチル−2−プロピルヘキサン酸グリシドエステルから成る混合物である。
【0014】
これに関して特に好ましくは、これら化合物の割合が、1〜99質量%の2−プロピルヘプタン酸グリシドエステル及び1〜99質量%の4−メチル−2−プロピルヘキサン酸グリシドエステルであり、その際、%は、これらの合計に対する。
【0015】
特に好ましくは、10〜90質量%、特に20〜80質量%の2−プロピルヘプタン酸グリシドエステル及び10〜90質量%、特に20〜80質量%の4−メチル−2−プロピルヘキサン酸グリシドエステルからの混合物から構成される。
【0016】
本発明によるグリシドエステルの製造方法として、例えば以下の方法が考えられる:
カルボン酸メチルエステルとグリシジルアセテート又は−プロピオネートとを、触媒としてのナトリウムメチラート又は水酸化アンモニウムと一緒に反応させるDE-A 2107084に記載の方法:この場合、生じたメチルアセテートは蒸留除去される。
【0017】
カルボン酸と、エピクロロヒドリン(2.5倍モル過剰量)及び炭酸ナトリウム(酸に対して0.5モル)の沸騰性混合物との反応。DE-A 2446944に記載されている。水分離器中で、反応水とエピクロロヒドリンとを分離する。エピクロロヒドリンは返送される。すべての水を除去する場合には、トリエチルベンジルアンモニウムクロリドの添加をおこない、その後に110〜115℃で攪拌し、かつ濾過後(NaCl)蒸留的に後処理をおこなう。
【0018】
他の方法は、カルボン酸とグリシドールと、アクリル化試薬としてのカルボン酸ジイミド(例えばDCC)及び触媒としてのピリジン(例えばDMAP)とを、EP-A 0697018にしたがってエステル化するものである。尿素を濾別し、触媒を、酸性イオン交換体を用いて除去する。50%濃度の水性酢酸を用いて残留するカルボン酸ジイミドを分解する。溶剤を減圧下で除去する。粗生成物を有機溶剤中に導入し、かつ冷却によって残留する尿素を晶出する。溶剤を減圧下で蒸留除去する。生成物は、残留物(Rueckstand)として残る。
【0019】
US 5036154にしたがって、反応を、タングステン酸ナトリウムを用いるアリルエステルの接触エポキシ化によって、70%濃度のHを用いて実施する。これは、相転移触媒(PTC)としてトリオクチルアンモニウムクロリドを用いての、2相反応(水/トルエン)である。
【0020】
EP 1115714は、ネオデカン酸と、約4倍モル過剰量のエピクロリヒドリンとを、イソプロパノール(水混和性アルコール)、水及びNaOHの存在下で、反応させることを記載している。
【0021】
ネオデカン酸、エピクロロヒドリン及び溶剤を装入し、その後に56℃で50%濃度のNaOHを供給する。温度を84℃に上昇させ、その後に50℃に冷却する。下相の分離後に、50℃で24%濃度のNaOHを供給する。40分後に相分離を実施する。有機相を100mbar、110℃の最終条件にまで制限する。過剰量のエピクロロヒドリンを、水蒸気蒸留により除去する。その後に、55℃で50%濃度のNaOHを添加する。反応時間後に水を用いて2回に亘って抽出をおこない、有機相を、蒸気を用いてストリッピングし、かつ真空下で乾燥させる(120℃、40mbar)。
【0022】
WO 00/44836によれば、2−エチルヘキサン酸1モル及びNaOH2モルから、トルエン中で酸のナトリウム塩を製造する。生じた水を、トルエンを用いて共沸蒸留する。50℃で3mlのエピクロロヒドリンをゆっくりと添加する。混合物を還流下で加熱する。反応の終了後にエピクロロヒドリンを留去する。生成物を減圧下で蒸留する。
【0023】
本発明によるグリシドエステルを製造するための好ましい方法は、以下の工程a)〜c)によって特徴付けられる:
a)2−プロピルヘプタン酸、4−メチル−2−プロピルヘキサン酸又はその混合物を、クロム塩の存在下で、エピクロロヒドリンと一緒に反応させ、
b)得られるヒドロキシ化合物を、アルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物の存在下でグリシドエステルに変換し、かつ、
c)得られる混合物を、引き続いて、場合によっては抽出的に後処理をおこなう。
【0024】
工程a)において、エピクロロヒドリンを、好ましくは1モルのアルカンカルボン酸に対して0.9〜2モル、特に好ましくは1〜1.5モルの量で使用する。
【0025】
クロム塩は、クロム(II)又はクロム(III)の任意の塩であり、これに関して特に、カルボン酸塩(アルカノエート)、例えば酢酸クロム(II)又はクロム(II)エチルヘキサノエート又はクロム(II)水酸化物又はさらに混合アニオン(水酸化物及びアルカノエート)が考えられる。
【0026】
クロム塩は、アルカンカルボン酸1モルに対して、好ましくは0.0001〜0.01モル、特に好ましくは0.0005〜0.005モルの量で使用する。
【0027】
工程a)における反応は、好ましくは大気圧(1bar)及び30〜100℃、好ましくは60〜90℃の温度で実施する。反応において溶剤を一緒に使用することができるが、しかしながら一般には溶剤を必要としない。
【0028】
これに関して工程a)における反応は、好ましくはガスクロマトグラフィーによって観察し、好ましくは、アルカンカルボン酸のヒドロキシ化合物への完全な反応を実施する。
【0029】
工程b)は、好ましくは工程a)の直後に引き続いておこない、この場合、これは、工程a)の反応に引き続いて、後処理することなしに実施する。
【0030】
アルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物は、任意の水酸化物、好ましくはアルカリ金属水酸化物、例えばNaOH又はKOHである。
【0031】
アルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物は、好ましくは、工程a)中で得られたヒドロキシ化合物1モルに対して1〜2モルの量で使用し、この場合、このモル量は、好ましくはアルカンカルボン酸の使用された量に相当し、それというのも、工程a)中で好ましくは完全な反応を実施するためである。
【0032】
工程b)中の反応は、好ましくは同様に、大気圧(1bar)及び30〜100℃、好ましくは30〜80℃の温度で実施する。
【0033】
滴加速度は好ましくは、温度が選択された範囲で維持される程度に選択され、この場合、これはアルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物の添加後、好ましくは2、3時間、例えば2時間攪拌される。反応の制御は、好ましくはガスクロマトグラフィーによって実施する。
【0034】
引き続いて、好ましくは工程b)によって得られた混合物について、抽出による後処理をおこなう。特に好ましくは、抽出による後処理は水を用いておこなう。得られた水相及び有機相を分離し、かつ有機相を、好ましくは乾燥剤、例えば硫酸ナトリウムを添加することにより乾燥させる。
【0035】
グリシドエステルは、本発明による方法の際により大きい純度及び収率で得ることができる。本発明による方法を用いて、さらに極めて簡単かつ廉価な方法を、アルカンカルボン酸の合成のために提供する。
【0036】
使用について
本発明によるグリシドエステルは、例えば反応性希釈剤として適している。反応性希釈剤は、組成物に添加した際にその粘度を減少させ、後の組成物の硬化の際に反応性希釈剤と一緒に反応することができる組成物の成分と結合し、その結果、得られた生成物、例えば被覆又は成形品の構成成分となる。
【0037】
グリシドエステルを反応性希釈剤として使用する場合には、当該組成物は、グリシド基と反応性の化合物を有していなければならず、例えば、カルボン酸基、ヒドロキシル基又は第1級又は第2級アミノ基を含有する化合物である。例えば温度上昇又はエネルギー線を用いての照射によって、組成物を硬化させる場合には、これに応じて結合が生じる。
【0038】
グリシドエステルを含有する組成物は、好ましくは21℃で、1barで液体でなければならず、かつ硬化可能でなければならない。該組成物は、特に、熱的に硬化可能な被覆剤組成物である。
【0039】
組成物は、好ましくは少なくとも0.1質量%、特に好ましくは少なくとも0.5質量%、とりわけ好ましくは少なくとも1質量%又はさらに少なくとも3質量%、ないしは、特に好ましい実施態様においては少なくとも5質量%の本発明によるグリシドエステルを含有し;この場合、このグリシドエステルの量は、しかしながら、一般には50質量%を上回ることなく、好ましくは30質量%又は20質量%を上回ることがない。これに関して、%の表示は、水及び有機溶剤を除く組成物のすべての構成成分に対するものである。
【0040】
グリシド基と反応性の化合物としては低分子量の化合物が考えられるが、しかしながらさらにオリゴマー又はポリマーの化合物も考えられる。
【0041】
ポリマーの化合物として、例えばラジカル重合によって得られるポリマー、例えばポリアクリレート又はポリビニルエステル、ポリエステル又はポリウレタンが挙げられるが、この場合、グリシドエステルと反応性の基、例えばカルボン酸基、ヒドロキシル基又はアミノ基を含む。
【0042】
適した組成物は、特に通常のエポキシドを含有するが、この際、本願明細書中以下においては、本発明によるグリシドエステルとは別に少なくとも1個のエポキシド基を有する化合物に関して使用される。グリシドエステルは同様にエポキシ基を含有する。その後に、エポキシド及びグリシドエステルは、同様の方法で、例えばアミン系硬化剤又は酸無水物系硬化剤を添加することによって硬化することができる。
【0043】
特に好ましくは、硬化可能な組成物は2〜6個、特に好ましくは2〜4個及びとりわけ好ましくは2個のエポキシ基を有するエポキシドを含有する。
【0044】
エポキシドのエポキシ基に関して、特にグリシジルエーテル基が重要であり、この場合、これは、例えばアルコール基とエピクロリヒドリンとの反応の際に生じるものである。
【0045】
エポキシドは、一般に1000g/molを下回る平均分子量Mnを有する低分子量化合物又は高分子量化合物(ポリマー)であってもよい。これは、脂肪族、さらには脂環式化合物又は芳香族基を有する化合物であってもよい。
【0046】
特にエポキシドは、2個の芳香族又は脂肪族の6員環を有する化合物又はこれらのオリゴマーであってもよい。
【0047】
技術的意味においてエポキシドは、エピクロロヒドリンと、少なくとも2個の反応性H原子を有する化合物、特にポリオールとの反応によって得ることができる。
【0048】
技術的意味において、エポキシドは、エピクロロヒドリンと、少なくとも2個、好ましくは2個のヒドロキシル基及び2個の芳香族又は脂肪族6員環を有する化合物との反応によって得られるエポキシドであり;この場合、このような化合物として特にビスフェノールA及びビスフェノールF並びに水素化ビスフェノールA及びビスフェノールFが挙げられる。
【0049】
さらに、エピクロロヒドリンと他のフェノール、例えばクレゾール又はフェノールアルデヒドアダクト、例えばフェノールホルムアルデヒド樹脂、特にノボラックとの反応生成物が考えられる。
【0050】
さらに当然のことながら、そのエポキシド基がエピクロロヒドリン由来のものではないエポキシドが挙げられる。例えば、そのエポキシドが、グリシジル(メタ)アクリレートとの反応によるエポキシ基、例えばグリシジル(メタ)アクリレートとのラジカル共重合によるエポキシ基を含有することが考えられる。この組成物においてさらにERL-4221(CAS Nummer 2386-87-0、Dow社)が挙げられる:
【化3】

【0051】
組成物の使用に関しては、好ましくは20〜100℃、特に好ましくは20〜40℃、とりわけ好ましくは20℃において液体のエポキシドが挙げられてもよい。固体のエポキシドは、適した溶剤又は好ましくは反応性希釈剤としての本発明によるグリシドエステル中において溶解することができる。
【0052】
組成物は、エポキシド化合物の場合に、好ましくはさらに少なくとも1種の硬化剤を含有する。
【0053】
酸無水物系架橋剤、例えば無水フタル酸、無水トリメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、4−メチル−テトラヒドロフタル酸無水物、3−メチル−テトラヒドロフタル酸無水物、4−メチル−ヘキサヒドロフタル酸無水物又は3−メチル−ヘキサヒドロフタル酸無水物が考えられる。
【0054】
特にアミン、公知のアミン系架橋剤は、特に脂肪族ポリアミン、例えばジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン又はプロピレンオキシド及びアンモニアをベースとするアミン(ポリエーテルアミン)が考えられる。
【0055】
架橋剤の反応性に依存して、これらは予め早期に組成物に添加するか(一成分系ないしは1K−系)、あるいは、使用直前に添加することができる(二成分系ないしは2K−系)。
【0056】
好ましい組成物は、少なくとも30質量%、好ましくは少なくとも50質量%、特に好ましくは少なくとも70質量%のエポキシド化合物から構成される(場合により使用される溶剤を除く)。
【0057】
好ましい実施態様において、組成物は不活性溶剤を場合によっては副次的量(100質量部のエポキシド化合物に対して20質量部を下回り、好ましくは10質量部を下回るか、あるいは、5質量部を下回る)を含有し、かつ特に好ましくは溶剤を含有しない(100%系)。
【0058】
エポキシド含有組成物は、例えば被覆剤又は含浸剤として、接着剤として、複合材料として、成形体を製造するためにか、あるいは、成形品の包埋、結合又は固化のための鋳込材料として適している。これら及び以下に示す事項に関しては、1K系と同様に2K系にも適用される。
【0059】
被覆剤としては、例えばラッカーが挙げられる。特に、本発明による組成物(1K又は2K)を用いて、耐ひっかき性保護ラッカーを任意の支持体、例えば金属、プラスチック又は木材上で得ることができる。組成物は、電気的適用における絶縁被覆として、例えば電線及びケーブルのための絶縁被覆として適している。さらにフォトレジストの製造のための使用が挙げられる。これは特にリペアラッカーとして、例えば管を解体することなしに管の修繕をする際に適している(現場硬化管(CIPP)更生術)。これは床材の補強に適している。
【0060】
接着剤として、1K−又は2K−構造接着剤が選択される。構造接着剤は、成形部材を互いに堅牢に結合させるために役立つ。この成形部材は、任意の材料からのものであってもよく;この材料はプラスチック、金属、木材、皮革、セラミック等が考えられる。これに関して、さらに溶融接着剤(ホットメルト接着剤)であってもよく、これは液体であり、かつより高い温度においてのみ加工可能なものである。これはさらに床用接着剤であってもよい。この組成物は、さらにプリント基板(電子回路)、特にSMT方法によるもの(表面実装技術)を製造するための接着剤として適している。
【0061】
複合材料(コンポジット)においては、種々の材料、例えばプラスチック及び補強材料(繊維、炭素繊維)を互いに結合する。
【0062】
この組成物は、例えば含浸繊維、例えばプリプレグの製造及びその複合材料のためのさらなる加工に適している。
【0063】
複合材料を製造する方法として、含浸繊維又は含浸繊維組織(例えばプリプレグ)を、貯蔵後に硬化させるか、あるいは、押出成形、引抜成形、巻取り成形及びレジントランスファーモールディング技術(RTM)又はレジンインフュージョン技術(RI)が挙げられる。
【0064】
特にこの繊維は本発明による組成物を浸透させ、その後に高い温度で硬化させることができる。浸透中及び場合によっては引き続いての貯蔵中においては、硬化が全く生じないか又はわずかにのみ生じる。
【0065】
成形品の包埋、結合又は固化のための鋳込材料として、組成物は、例えば電気的適用において使用する。これは、フリップチップアンダーフィルとして、あるいは、ポッティング、キャスティング及び(グラブトップ式)カプセル化のための電鋳樹脂(Elektrogiessharze)として適している。
【0066】
当該組成物を用いて製造された被覆又は成形品又はその他の製品は、極めて良好な使用技術的特性、特に高い堅牢度、耐引掻性、良好な化学薬品耐性、良好な硬度及び弾性により特徴付けられる。
【0067】
本発明によるグリシドエステルは、さらに分散剤又は乳化助剤として適している。
【0068】
特に、顔料のための分散助剤としての使用が考えられる。顔料組成物、例えば顔料ペースト又は顔料分散液は、好ましくは100質量部の顔料に対して0.1〜30質量部、特に好ましくは0.05〜20質量部のグリシジルエステルを含有する。
【0069】
さらにグリシドエステルは、低分子量のみならずさらにポリマー化合物の化学的改質化に適している。本質的な前提条件として、この化合物は、グリシドエステルのグリシド基と反応性の官能基を含有している。例えば、前記に示すヒドロキシル基、第1級又は第2級アミノ基並びにカルボキシル基が考えられる。このようにして改質化された低分子量の化合物又はポリマー化合物は、例えば結合剤として、特にラッカー系における結合剤として適している。これは水及び溶剤不含の結合剤、例えば照射硬化型結合剤であってもよい。好ましい結合剤はポリアクリレート樹脂であり、この場合、これは40質量%を上回る、特に好ましくは60質量%を上回るC〜C20−アルキル(メタ)アクリレートから成る。
【0070】
特にグリシドエステルは、ラジカル重合によって得られるポリマー、例えばポリアクリレート、重縮合物、例えばポリエステル、又は重付加物、例えばポリウレタンの改質化のために適している。
【0071】
不飽和性化合物(モノマー)のラジカル重合によって得られる、適したポリマーは、好ましくは、少なくとも40質量%、好ましくは少なくとも60質量%、特に好ましくは少なくとも80質量%がいわゆる主モノマーからなる。
【0072】
この主モノマーは、C〜C20−アルキル(メタ)アクリレート、20個までの炭素原子を有するカルボン酸のビニルエステル、20個までの炭素原子を有するビニル芳香族化合物、エチレン性不飽和ニトリル、ビニルハロゲン化物、1〜10個の炭素原子を有するアルコールのビニルエーテル、2〜8個の炭素原子及び二重結合1個又は2個を有する脂肪族炭化水素又はこれらのモノマーの混合物から選択される。
【0073】
例えば、C〜C10−アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、例えばメタクリル酸メチル、アクリル酸メチル、n−ブチルアクリラート、アクリル酸エチル及び2−エチルヘキシルアクリラートが挙げられる。
【0074】
特に(メタ)アクリル酸アルキルエステルの混合物も適している。
【0075】
炭素原子1〜20個を有するカルボン酸のビニルエステルは、例えばラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニルエステル及び酢酸ビニルである。
【0076】
ビニル芳香族化合物として、ビニルトルエン、α−及びp−メチルスチレン、α−ブチルスチレン、4−n−ブチルスチレン、4−n−デシルスチレン及び好ましくはスチレンが考えられる。ニトリルの例は、アクリロニトリル及びメタクリロニトリルである。
【0077】
ビニルハロゲン化物は、塩素、フッ素又は臭素で置換されたエチレン性不飽和化合物、好ましくは塩化ビニル及び塩化ビニリデンである。
【0078】
ビニルエーテルとして、例えばビニルメチルエーテル又はビニルイソブチルエーテルを挙げることができる。好ましくは、1〜4個の炭素原子を含有するアルコールのビニルエーテルである。
【0079】
2〜8個の炭素原子及び1個又は2個のオレフィン性二重結合を有する炭化水素として、エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン及びクロロプレンを挙げることができる。
【0080】
好ましい主モノマーは、C〜C10−アルキル(メタ)アクリレート及びアルキル(メタ)アクリレートとビニル芳香族化合物、特にスチレンとの混合物(ポリアクリレート)である。
【0081】
主モノマーの他に、ポリマーは好ましくは他のモノマーを含有しており、この場合、これは、例えばカルボン酸基、ヒドロキシル基又はアミノ基を有するモノマーである。これらの官能基を含むことによって、本発明によるグリシドエステルとの結合を可能にする。このようなモノマーとして、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、C〜C10ヒドロキシアクリレート、アクリルアミド又はメタクリルアミドが挙げられる。
【0082】
2−プロピルヘプタン酸グリシドエステル、4−メチル−2−プロピルヘキサングリシドエステル又はその混合物を、反応性希釈剤として含有する組成物は、特に低い粘度を有する。これに応じて、これらのグリシドエステルを用いて改質化された結合剤もまた低い粘度を有する。
【0083】
低い粘度によって、特により高い固体含量又はより高い顔料の含量を可能にする。結合剤、特にポリアクリレート樹脂を含有するものは、良好な支持体湿潤及び顔料湿潤を有する。
【0084】
組成物及び結合剤は、良好な使用技術的性質、例えば硬度、可とう性及び光沢を有する。
【0085】

比較例1
2−エチルヘキサン酸グリシドエステルの合成は、文献(J. Chem.Technol Biotechnol 74 ; 1145-1148, 1999)記載と同様におこなった。
酸(72.0g)を、クロム(III)アセテート−水酸化物(0.10g)と一緒に、フラスコ(250mlの四つ首フラスコ、冷却器、滴加漏斗、マグネットステーラーを備える)中に装入し、加熱し、かつ80℃に達した後に、エピクロロヒドリン(46.3g)を1時間に亘って滴加した(わずかに発熱性)。その温度で一晩に亘って攪拌した後に、この混合物を500mlのフラスコ中に、乾燥KCO(100g)を含むアセトニトリル(100ml)を添加しながら移し、かつ還流下(=82℃)で2実施日に亘って撹拌した。冷却した混合物を濾過後にロータリーエバポレーター中で濃縮し、かつ残留物を3回に亘って氷水で浸透させることにより抽出した。収率65%。
【0086】
比較例2
触媒としてCr(II)−エチルヘキサノエートを用いての2−エチルヘキサン酸グリシドエステルの合成
酸(72.0g)を、クロム(III)エチルヘキサノエート(0.24g)と一緒に、フラスコ(250mlの四つ首フラスコ、冷却器、滴加漏斗、マグネットステーラーを備える)中に装入し、加熱し、かつ80℃に達した後に、エピクロロヒドリン(46.3g)を1時間に亘って滴加した(わずかに発熱性)。6時間に亘る撹拌後に、この混合物を500mlのフラスコ中に、乾燥KCO(69.1g)を含むアセトニトリル(100ml)を添加しながら移し、かつ還流下(=82℃)で激しく撹拌した。反応経過は、GC評価により観察した。しかしながら、塩化物のエポキシドへの変換が停止したため、20gのKCOをさらに加えて、2実施日に亘ってさらに攪拌した。反応搬出物は、塩残留物の除去(ガラス吸引フィルターによる)後にロータリーエバポレーター中で濃縮し、かつ残留物を減圧下(1.5mbar)で蒸留した。
【0087】
【表1】

【0088】
製造例1
蒸留による後処理を用いての2−プロピルヘプタン酸グリシドエステルの合成
酸(86.0g)を、クロム(III)アセテート−水酸化物(0.10g)と一緒に、フラスコ(500mlの四つ首フラスコ、冷却器、インテンシブステーラー及び滴加漏斗を備える)中に装入し、加熱し、かつ80℃に達した後に、エピクロロヒドリン(46.3g)を1時間に亘って滴加した(わずかに発熱性)。6時間に亘る撹拌後に、この混合物を、乾燥KCO(100g)を含むアセトニトリル(100ml)の添加により、還流下(=82℃)で撹拌した。反応経過は、GC評価により観察した。蒸留後の収率:61%。
【0089】
製造例2
抽出による後処理を用いての2−プロピルヘプタン酸グリシドエステルの合成
酸(688g)を、クロム塩(0.8g)と一緒に、反応器(3lのジャケット式反応器、インペラーステーラー並びに直列に連結された2個のガス冷却器を備える。反応器のジャケット及びガス冷却器は、それぞれ加熱及び冷却サーモスタットを備えている)中に装入し、加熱し、かつ80℃に達した後に、エピクロロヒドリン(398g)を2時間に亘って滴加し、かつ24時間に亘って後攪拌した。GC制御後に、完全に反応した中間生成物を、水酸化アンモニウム水溶液(480g、50%濃度)と混合した。この際、温度は滴加速度により55℃に維持した。2時間に亘っての後攪拌の後に、3lの水で希釈し、この温度で10分に亘って撹拌し、かつ30分の沈澱時間後に2相を分離した。上の有機相は、硫酸ナトリウムを用いて2回に亘って乾燥させた。乾燥剤の濾別後の水分測定は0.4%の水を示し、その結果、55℃の浴温度で、生成物を窒素流中でさらに乾燥させた。残留するエピクロロヒドリンを、Nで3時間に亘って115℃でストリッピングすることにより除去した。収率:66%。
【0090】
使用例
グリシジル2−プロピルヘプタノエートを用いて改質化されたアクリレート樹脂の製造
間接加熱(熱媒油)又は制御可能な電気抵抗加熱;生成物温度制御装置;保護ガス導入口;無段階制御可能な撹拌機、2個の供給容器及び還流冷却器を備えた実験室用反応器中で、158〜172℃の沸点の範囲を有するアルキル芳香族化合物を含む溶剤298g及び2−プロピルヘプタン酸グリシドエステル241.6gを計量供給し、かつ攪拌下で加熱し、その際、保護ガス(窒素)を貫流させた。
【0091】
スチレン201.3g、メチルメタクリレート145.0g、2−ヒドロキシエチルメタクリレート147.4g及びアクリル酸70.1gを別個に計量供給し、この場合、これらは予め混合し、かつ第1の供給容器中に入れた(モノマー混合物)。第2の供給容器は、前記芳香族溶剤40.3g及びtert.−ブチル−ペルエチルヘキサノエート40.3g(開始溶液)の混合物を収容していた。実験室用反応器の内容物を、140℃に加熱し、かつ連続的に攪拌した。その後に、開始剤溶液の一定供給を4.75時間に亘って開始した。開始溶液供給の15分後に、モノマー混合物の一定供給を開始した。全供給時間に亘って、温度は可能な限り正確に140℃に保持した。モノマー供給終了後に、開始溶液供給をさらに30分に亘って続けた。開始溶液供給の終了後に、固体の測定を開始した(EN ISO 3251、約1.0g、15’180℃)。これは140℃で、固体が71%を上回り、かつ、もはや任意の顕著な生じることがなくなるまで維持したが、しかしながら少なくとも3回測定した。その後に冷却し、かつ生じるアクリレート樹脂溶液を搬出した。前記芳香族溶剤16.1gを用いて、70.0±1.0%の固体(60’130℃)に調整した。
【0092】
得られたアクリレート樹脂は、6.8mg/KOH/gの酸価、148mgKOH/gのOH価及び26.4Pa・s(23℃)の粘度を有していた。
【0093】
得られたアクリレート樹脂は、二成分系ラッカーの製造に特に適しており、この場合、これは硬化剤としてポリイソシアネート付加物を含有し、この場合、これは例えばヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート三量体である。しかしながらさらにこれらは他のラッカー系においても良好な性質を示すものである。
【0094】
ここで記載された2−プロピルヘプタン酸−改質化アクリレート樹脂は、通常のOH基含有アクリレート樹脂と比較して有利である。このように得られるラッカーは、同様の反応条件下で、しかしながら記載された方法でのグリシドエステル改質化を含まないアクリレート樹脂と比較して顕著に低い粘度を有し、かつ、かなり高い適用固体を可能にし、これは低いVOC値を意味する。このようにして改質化されたアクリレート樹脂は、ラッカー系に対して改善された顔料湿分、改善された噴霧性、改善された支持体湿潤、改善された光沢及び適用された膜の充実(Fuelle)を生じる。改質化により生じる種々の反応性のOH基は、塗膜における分子架橋構造の伸長に関する架橋の利点を生じる。
【0095】
2,2,3,5−テトラメチルヘキサン酸のグリシドエステルをベースとするすでに公知の生成物と比較して、2−プロピルヘプタン酸のグリシドエステルをベースとする結合剤は、低い溶液粘度を示し、この場合、これは5〜10%高い適用固体を有するラッカー系の処方を可能にし(特に、VOC調整を遵守するための近年の塗料工業における要求近)、改善された適用挙動(流れ)及び改善された可とう性を示す。比較目的で達成されたラッカーの硬度は、設定された要求を充足するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2−プロピルヘプタン酸グリシドエステル、4−メチル−2−プロピルヘキサン酸グリシドエステル又はその混合物(まとめてグリシドエステルと略す)。
【請求項2】
混合物が、2−プロピルヘプタン酸グリシドエステル及び4−メチル−2−プロピルヘキサン酸グリシドエステルの質量合計に対して、1〜99質量%の2−プロピルヘプタン酸グリシドエステル及び1〜99質量%の4−メチル−2−プロピルヘキサン酸グリシドエステルから成る、請求項1に記載のグリシドエステル。
【請求項3】
a)2−プロピルヘプタン酸、4−メチル−2−プロピルヘキサン酸又はその混合物を、クロム塩の存在下でエピクロロヒドリンと反応させ、
b)得られたヒドロキシ化合物を、アルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物の存在下でグリシドエステルに変換し、かつ、
c)得られた混合物を、場合によっては抽出による後処理をおこなう、請求項1又は2に記載のグリシドエステルの製造方法。
【請求項4】
反応性希釈剤としての、請求項1又は2に記載のグリシドエステルの使用。
【請求項5】
エポキシド化合物を含有する組成物のための反応性希釈剤としての、請求項1又は2に記載のグリシドエステルの使用。
【請求項6】
請求項1又は2に記載のグリシドエステルを含有する、21℃、1barで液体の硬化可能な組成物。
【請求項7】
水及び有機溶剤を除く組成物のすべての構成成分に対して、少なくとも0.1質量%のグリシドエステルを含有する、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
分散助剤又は乳化助剤としての、請求項1又は2に記載のグリシドエステルの使用。
【請求項9】
顔料のための分散助剤としての、請求項1又は2に記載のグリシドエステルの使用。
【請求項10】
100質量部の顔料に対して、請求項1又は2に記載のグリシドエステル0.05〜20質量部を含有する、顔料調製物。
【請求項11】
ラジカル重合によって得られるポリマー、例えばポリアクリレート、重縮合物、例えばポリエステル又は重付加物、例えばポリウレタンの改質化のための、請求項1又は2に記載のグリシドエステルの使用。
【請求項12】
請求項1又は2に記載のグリシドエステルと反応することによって改質化される、ラジカル重合によって得られるポリマー、例えばポリアクリレート、重縮合物、例えばポリエステル又は重付加物、例えばポリウレタン。

【公表番号】特表2010−531332(P2010−531332A)
【公表日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−513891(P2010−513891)
【出願日】平成20年6月24日(2008.6.24)
【国際出願番号】PCT/EP2008/058036
【国際公開番号】WO2009/000839
【国際公開日】平成20年12月31日(2008.12.31)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】