説明

CA6抗原特異的な細胞毒性コンジュゲートおよびその使用方法

【課題】細胞結合剤および細胞毒性物質を含む細胞毒性コンジュゲート、該コンジュゲートを含む療法用組成物、該コンジュゲートを細胞増殖の阻害および疾患の処置に使用する方法、ならびに細胞毒性コンジュゲートを含むキットを提供する。
【解決手段】CA6グリコトープを認識して結合するモノクローナル抗体またはそのエピトープ結合フラグメント。また、ネズミ抗CA6モノクローナル抗体、DS6、またはそのエピトープ結合フラグメントのヒト化もしくはリサーフェシングしたバージョン。前記抗体もしくはエピトープ結合フラグメントと細胞毒性物質を含む細胞毒性コンジュゲート。該コンジュゲートを含む療法用組成物、該コンジュゲートを細胞増殖の阻害および疾患の処置に使用する方法、ならびに前記細胞毒性コンジュゲートを含むキット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
[01] 本出願は、米国仮特許出願60/488,447(2003年7月21日出願)による優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
[02] 本発明は、ネズミ抗CA6グリコトープ(glycotope)モノクローナル抗体、およびそのヒト化またはリサーフェシング(表面再建)した(resurfaced)バージョンに関する。本発明はまた、前記の抗CA6グリコトープモノクローナル抗体のエピトープ結合フラグメント、および前記の抗CA6グリコトープモノクローナル抗体のヒト化またはリサーフェシングしたバージョンのエピトープ結合フラグメントに関する。
【0003】
[03] 本発明はさらに、細胞結合剤および細胞毒性物質を含む細胞毒性コンジュゲート、該コンジュゲートを含む療法用組成物、該コンジュゲートを細胞増殖の阻害および疾患の処置に使用する方法、ならびに細胞毒性コンジュゲートを含むキットに関する。細胞結合剤は特に、CA6グリコトープを認識して結合するモノクローナル抗体もしくはそのエピトープ結合フラグメント、またはそのヒト化もしくはリサーフェシングしたバージョンである。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
[04] 周囲の癌以外の細胞および組織に害を与えることなく標的癌細胞を特異的に破壊する抗癌療法薬を開発する試みは多数あった。そのような療法薬は、ヒト患者の癌療法を大幅に改良する可能性をもつ。
【0005】
[05] 有望な方法のひとつは、細胞結合剤、たとえばモノクローナル抗体と、細胞毒を連結することであった(Sela et al., Immunoconjugates 189-216(C. Vogel編, 1987);Ghose et al., Targeted Drugs 1-22(E. Goldberg編, 1983);Diener et al., Antibody mediated delivery systems 1-23(J. Rodwell編, 1988);Pietersz et al., Antibody mediated delivery systems 25-53(J. Rodwell編, 1988);Bumol et al., Antibody mediated delivery systems 55-79(J. Rodwell編, 1988))。細胞結合剤の選択により、癌細胞表面に発現する分子の発現プロフィールに基づいて特定のタイプの癌細胞のみを認識して結合するようにこれらの細胞毒性コンジュゲートを設計できる。
【0006】
[06] そのような細胞毒性コンジュゲートには、多様なネズミモノクローナル抗体に連結した細胞毒、たとえばメトトレキセート(methotrexate)、ダウノルビシン(daunorubicin)、ドキソルビシン(doxorubicin)、ビンクリスチン(vincristine)、ビンブラスチン(vinblastine)、メルファラン(melphalan)、マイトマイシンC、およびクロラムブシル(chlorambucil)が用いられている。場合によっては、たとえば下記の介在キャリヤー分子により薬物分子が抗体分子に連結された:血清アルブミン(Garnet et al., 46 Cancer Res. 2407-2412 (1986);Ohkawa et al., 23 Cancer Immunol. Immunolther. 81-86 (1986);Endo et al., 47 Cancer Res. 1076-1080 (1980))、デキストラン(Hurwitz et al., 2 Appl. Biochem. 25-35 (1980);Manabi et al., 34 Biochem. Pharmacol. 289-291 (1985);Dillman et al., 46 Cancer Res. 4886-4891 (1986);Shoval et al., 85 Proc. Natl. Acad. Sci. 8276-8280 (1988))、またはポリグルタミン酸(Tsukada et al., 73 J. Natl. Canc. Inst. 721-729 (1984);Kato et al., 27 J. Med. Chem. 1602-1607 (1984);Tsukada et al., 52 Br. J. Cancer 111-116 (1985))。
【0007】
[07] ある程度の有望性を示した具体的なコンジュゲートの一例は、結腸直腸腫瘍および膵臓腫瘍に発現する抗原CanAgに対して形成されたC242抗体と、メイタンシン(maytansine)誘導体DM1のコンジュゲートである(Liu et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 93: 8618-8623 (1996))。このコンジュゲートのインビトロ評価は、細胞表面に発現したCanAgに対するそれの結合親和性が見掛けK値3×10−11Mと高く、CanAg陽性細胞に対するそれの細胞毒力価がIC50 6×10−11Mと高いことを指摘した。この細胞毒性は過剰の非結合抗体により遮断され、またこのコンジュゲートに対する抗原陰性細胞の感受性は100倍以上低かったので、細胞毒性は抗原依存性であった。各標的細胞に対する高い親和性と高い抗原選択的細胞毒性の両方を備えた抗体−DM1コンジュゲートの他の例には、下記とのコンジュゲートが含まれる:huN901、ヒトCD56に対するヒト化バージョン抗体;huMy9−6、ヒトCD33に対するヒト化バージョン抗体;huN242、CanAg Muc1エピトープに対するヒト化バージョン抗体;huJ591、PSMAに対する脱免疫化抗体;トラスツヅマブ(trastuzumab)、Her2/neuに対するヒト化抗体;ビバツヅマブ(vivatuzumab)、CD44v6に対するヒト化抗体。
【0008】
[08] 特定のタイプの癌細胞を特異的に認識する他の細胞毒性コンジュゲートの開発は、癌患者を処置するために用いる方法の改良を続ける際に重要であろう。
[09] そのために本発明は、癌細胞表面に発現した分子/受容体を認識して結合する抗体の開発、ならびに抗体などの細胞結合剤および細胞毒性物質を含む、癌細胞表面に発現した分子/受容体を特異的にターゲティングする新規な細胞毒性コンジュゲートの開発を目的とする。
【0009】
[10] より具体的には、本発明は、癌細胞が発現するMuc1ムチン受容体上の新規なCA6シアログリコトープ(sialoglycotope)の特性解明、およびMuc1ムチンの新規なCA6シアログリコトープを認識し、CA6グリコトープ発現細胞の増殖を阻害するために細胞毒性物質と関連して使用できる抗体、好ましくはヒト化抗体の提供を目的とする。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明の概要
[11] 本発明は、Muc1ムチン受容体の新規なCA6シアログリコトープを特異的に認識して結合する抗体またはそのエピトープ結合フラグメントを含む。他の態様において本発明は、Muc1ムチン受容体の新規なCA6シアログリコトープ(”CA6グリコトープ”)を認識するヒト化抗体またはそのエピトープ結合フラグメントを含む。
【0011】
[12] 他の好ましい態様において本発明は、ネズミ抗CA6モノクローナル抗体DS6(”DS6抗体”)、およびリサーフェシングまたはヒト化したバージョンのDS6抗体であって、該抗体またはそのエピトープ結合フラグメントのL鎖およびH鎖の両方において、表面に露出した残基を既知のヒト抗体表面にいっそう近似するものに置換した抗体を含む。本発明のヒト化抗体およびそのエピトープ結合フラグメントは、それらを投与するヒト対象においてそれらの免疫原性が完全ネズミバージョンよりはるかに少ない(または完全に非免疫原性である)という点で改良された特性をもつ。したがって、本発明のヒト化抗体およびそのエピトープ結合フラグメントは、Muc1ムチン受容体上の新規なシアログリコトープ、すなわちCA6グリコトープを特異的に認識するが、ヒトに対して免疫原性ではない。これらのヒト化抗体およびそのエピトープ結合フラグメントを、薬物、たとえばメイタンシノイド(maytansinoid)類にコンジュゲートさせて、Muc1 CA6シアログリコトープへその薬物をターゲティングすることにより、抗原発現細胞に対して特異的な細胞毒性をもつプロドラッグを形成できる。したがって、そのような抗体および低分子高毒性薬物(たとえばメイタンシノイド類、タキサン(taxane)類、およびCC−1065類似体)を含む細胞毒性コンジュゲートを、腫瘍、たとえば胸部腫瘍および卵巣腫瘍の処置のための療法薬として使用できる。
【0012】
[13] 本発明のヒト化バージョンDS6抗体を、それらのL鎖およびH鎖両方の可変部の各アミノ酸配列、L鎖およびH鎖可変部の遺伝子のDNA配列、CDRの同定、それらの表面アミノ酸の同定、ならびに組換え形態でそれらを発現させる手段の開示に関して、本明細書中で完全に解明する。
【0013】
[14] 1態様においては、SEQ ID NO:1〜3により表わされるアミノ酸配列:
【0014】
【化1】

【0015】
を有するCDRを含むH鎖、およびSEQ ID NO:4〜6により表わされるアミノ酸配列:
【0016】
【化2】

【0017】
を有するCDRを含むL鎖をもつ、ヒト化DS6抗体またはそのエピトープ結合フラグメントを提供する。
[15] SEQ ID NO:7またはSEQ ID NO:8により表わされるアミノ酸配列:
【0018】
【化3】

【0019】
との少なくとも90%の配列同一性を備えたアミノ酸配列を有するL鎖可変部をもつ、ヒト化DS6抗体およびそのエピトープ結合フラグメントをも提供する。
[16] 同様に、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10、またはSEQ ID NO:11により表わされるアミノ酸配列:
【0020】
【化4】

【0021】
との少なくとも90%の配列同一性を備えたアミノ酸配列を有するH鎖可変部をもつ、ヒト化DS6抗体およびそのエピトープ結合フラグメントを提供する。
[17] 他の態様においては、SEQ ID NO:8:
【0022】
【化5】

【0023】
に対応するアミノ酸配列を有する、ヒト化またはリサーフェシングしたL鎖可変部をもつ、ヒト化DS6抗体およびそのエピトープ結合フラグメントを提供する。
[18] 同様に、それぞれSEQ ID NO:10、またはSEQ ID NO:11:
【0024】
【化6】

【0025】
に対応するアミノ酸配列を有する、ヒト化またはリサーフェシングしたH鎖可変部をもつ、ヒト化DS6抗体およびそのエピトープ結合フラグメントを提供する。
[19] 本発明のヒト化DS6抗体およびそのエピトープ結合フラグメントは、L鎖および/またはH鎖アミノ酸残基の1以上の位置(表1の星印の残基により定められる)における置換をも含むことができる。これらの位置は、ヒト残基に交換する必要のあるネズミ表面フレームワーク残基であって、CDRから5Å以内にある残基を表わす。たとえば、ネズミ配列(SEQ ID NO:7)の第1アミノ酸残基Qは、抗体をヒト化するためにEに置換された(SEQ ID NO:8)。しかし、この残基はCDRに近接するので、抗体の親和性を維持するためにネズミ残基Qへの復帰変異が必要となる可能性がある。
【0026】
【表1】

【0027】
[20] これをさらに表2に示す。この表には、muDS6可変部表面残基を、最も相同性の高い3つのヒト可変部表面残基とアラインしたものを示す。表1のアミノ酸残基は、表2の下線を施したアミノ酸残基に対応する。
【0028】
【表2】

【0029】
[21] 本発明はさらに、(1)CA6グリコトープを認識して結合する細胞結合剤、および(2)細胞毒性物質を含む、細胞毒性コンジュゲートを提供する。細胞毒性コンジュゲートにおいて、細胞結合剤はCA6グリコトープに対して高い親和性をもち、細胞毒性物質はCA6グリコトープ発現細胞に対して高度の細胞毒性をもち、したがって本発明の細胞毒性コンジュゲートは有効な殺細胞薬を形成する。
【0030】
[22] 好ましい態様において、細胞結合剤は抗CA6抗体またはそのエピトープ結合フラグメント、より好ましくはヒト化した抗CA6抗体またはそのエピトープ結合フラグメントであり、細胞毒性物質は直接に、または開裂性もしくは非開裂性のリンカーを介して、抗体またはそのエピトープ結合フラグメントに共有結合している。より好ましい態様において、細胞結合剤はヒト化DS6抗体またはそのエピトープ結合フラグメントであり、細胞毒性物質はタキソール(taxol)類、メイタンシノイド類、CC−1065またはCC−1065類似体である。
【0031】
[23] 本発明の好ましい態様において、細胞結合剤はヒト化した抗CA6抗体であり、細胞毒性物質はメイタンシノイド類またはタキサンなどの細胞毒である。
[24] より好ましくは、細胞結合剤はヒト化した抗CA6抗体DS6であり、細胞毒性物質はメイタンシン化合物、たとえばDM1またはDM4である。
【0032】
[25] 本発明は、CA6グリコトープ発現細胞の増殖を阻害する方法をも含む。好ましい態様においては、CA6グリコトープ発現細胞の増殖を阻害する方法をインビボで実施して細胞を死滅させるが、インビトロおよびエクスビボでの用途も含まれる。
【0033】
[26] 本発明は、細胞毒性コンジュゲートおよび医薬的に許容できるキャリヤーまたは賦形剤を含む、療法用組成物をも提供する。
[27] 本発明はさらに、本発明の療法用組成物を用いて癌を伴う対象を処置する方法を含む。好ましい態様において、細胞毒性コンジュゲートは抗CA6抗体および細胞毒性物質を含む。より好ましい態様において、細胞毒性コンジュゲートはヒト化DS6抗体−DM1コンジュゲート、ヒト化DS6抗体−DM4コンジュゲート、またはヒト化DS6抗体−タキサンコンジュゲートを含み、このコンジュゲートを医薬的に許容できるキャリヤーまたは賦形剤と共に投与する。
【0034】
[28] 本発明には、抗CA6抗体−細胞毒性物質コンジュゲート、および使用のための指示を含む、キットも含まれる。好ましい態様において、抗CA6抗体はヒト化DS6抗体であり、細胞毒性物質はメイタンシン化合物、たとえばDM1もしくはDM4、またはタキサン類であり、指示は癌を伴う対象を処置する際に本発明のコンジュゲートを使用するための指示である。キットは、医薬的に許容できる配合物を調製するのに必要な成分、たとえばコンジュゲートが凍結乾燥状態または濃縮形態である場合には希釈剤、および配合物を投与するのに必要な成分をも含む。
【0035】
[29] 本発明は、CA6グリコトープを特異的に認識して結合する抗体の誘導体をも含む。好ましい態様において、抗体誘導体は、CA6グリコトープを結合する抗体をリサーフェシングまたはヒト化することにより調製され、それらの誘導体は宿主に対する免疫原性が低下している。
【0036】
[30] 本発明はさらに、研究または診断の用途に使用するためにさらに標識されたヒト化抗体またはそのフラグメントを提供する。好ましい態様において、標識は放射性標識、発蛍光団、発色団、造影剤または金属イオンである。
【0037】
[31] 癌を伴う疑いのある対象に、標識したヒト化抗体またはそのエピトープ結合フラグメントを投与し、対象の体内での標識分布を測定またはモニターすることを含む、診断方法も提供される。
【0038】
[32] 本発明は、本発明のヒト化抗体コンジュゲートを単独で、または他の細胞毒性物質もしくは療法薬と組み合わせて投与することにより、癌を伴う対象を処置する方法をも提供する。癌は、たとえば胸部癌(乳癌)、結腸癌、卵巣癌、子宮内膜癌、骨肉腫、子宮頸癌、前立腺癌、肺癌、滑膜癌、膵臓癌、CA6を発現する肉腫もしくは癌、またはCA6グリコトープを主に発現する他の癌であってまだ判定されていないもののうち1種類以上であってよい。
【0039】
[33] 別途記載しない限り、本明細書に引用したすべての参考文献および特許を本明細書に援用する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】図1は、DS6抗体が特定の癌細胞系の表面に結合する能力を判定するために実施した試験の結果を示す。DS6第1抗体およびFITCコンジュゲートした抗マウスIgG(H+L)第2抗体と共にインキュベートした細胞系の蛍光を、フローサイトメトリーにより測定した。DS6抗体は、Caov−3(図1A)およびT−47D(図1B)細胞を、それぞれ1.848nMおよび2.586nMの見掛けKdで結合した。抗原陰性細胞系SK−OV−3(図1C)およびColo205(図1D)は、抗原特異的結合を示さなかった。
【図2】図2は、エピトープ発現のドットブロット分析の結果を示す。Caov−3(図2Aおよび図2B)、SKMEL28(図2C)およびColo205(図2D)細胞溶解物を個別にニトロセルロース膜上にスポットし、次いで個別にプロナーゼ、プロテイナーゼK、ノイラミニダーゼまたは過ヨウ素酸と共にインキュベートした。次いで膜を、DS6抗体(図2A)、CM1抗体(図2B)、R24抗体(図2C)、またはC242抗体(図2D)でイムノブロッティングした。
【図3】図3は、DS6の抗原発現のドットブロット分析結果を示す。Caov−3細胞溶解物を個別にPVDF膜上にスポットし、次いでトリフルオロメタンスルホン酸(TFMSA)の存在下でインキュベートした。次いで膜を、CM1抗体(1および2)またはDS6抗体(3および4)でイムノブロッティングした。
【図4】図4は、DS6の抗原のグリコトープ分析の結果を示す。N−グリカナーゼ(”N−gly”)、O−グリカナーゼ(”O−gly”)、および/またはシアリダーゼ(”S”)で前処理したCaov−3細胞溶解物をニトロセルロース上にスポットし、次いでDS6抗体またはCM1抗体(Muc1 VNTR)でイムノブロッティングした。
【図5−1】図5は、DS6の抗原のウェスタンブロット分析の結果を示す。細胞溶解物を免疫沈降(”IP”)させ、DS6抗体でイムノブロッティングした。抗原は、抗原陽性Caov−3(図5Aおよび図5B)およびT47D(図5C)細胞にみられた>250kDaのタンパク質バンドに対応する。抗原陰性SK−OV−3(図5D)およびColo205(図5E)細胞系は、このバンドを示さない。免疫沈降の後、Caov−3細胞溶解物のプロテインGのバンドを、(図5A)ノイラミニダーゼ(”N”)または(図5B)過ヨウ素酸(”PA”)と共にインキュベートした。抗体(”α”)、IP前(”Lys”)およびIP後フロースルー(”FT”)溶解物対照を、同一ゲル上に流した。Caov−3免疫沈降物を同様にN−グリカナーゼ(”N−gly”)、O−グリカナーゼ(”O−gly”)、および/またはシアリダーゼ(”S”)と共にインキュベートし(図5F参照)、ブロットを代わりにビオチニル化−DS6およびストレプトアビジン−HRPで検査した。
【図5−2】図5は、DS6の抗原のウェスタンブロット分析の結果を示す。細胞溶解物を免疫沈降(”IP”)させ、DS6抗体でイムノブロッティングした。抗原は、抗原陽性Caov−3(図5Aおよび図5B)およびT47D(図5C)細胞にみられた>250kDaのタンパク質バンドに対応する。抗原陰性SK−OV−3(図5D)およびColo205(図5E)細胞系は、このバンドを示さない。免疫沈降の後、Caov−3細胞溶解物のプロテインGのバンドを、(図5A)ノイラミニダーゼ(”N”)または(図5B)過ヨウ素酸(”PA”)と共にインキュベートした。抗体(”α”)、IP前(”Lys”)およびIP後フロースルー(”FT”)溶解物対照を、同一ゲル上に流した。Caov−3免疫沈降物を同様にN−グリカナーゼ(”N−gly”)、O−グリカナーゼ(”O−gly”)、および/またはシアリダーゼ(”S”)と共にインキュベートし(図5F参照)、ブロットを代わりにビオチニル化−DS6およびストレプトアビジン−HRPで検査した。
【図6】図6は、Caov−3(図6A)およびHeLa(図6B)細胞溶解物についてのDS6抗体およびCM1抗体の免疫沈降および/またはイムノブロッティングの結果を示す。オーバーラップしたCM1とDS6ウェスタンブロット信号は、DS6の抗原がMuc1タンパク質上にあることを表わす。HeLa細胞溶解物では、タンデム反復配列の個数が異なる別個の対立遺伝子により支配されたMuc1発現により、Muc1ダブレットが生じる。
【図7】図7は、DS6抗体サンドイッチELISAの設計(図7A)および標準曲線(図7B)を示す。標準曲線は、既知濃度の市販CA15−3標準品を用いて作成された(1 CA15−3単位=1 DS6単位)。
【図8】図8は、定量ELISA標準曲線を示す。検出抗体(ストレプトアビジン−HRP/ビオチン−DS6)信号の標準曲線(図8C)は、プレート結合したヤギ抗マウスIgGにより捕獲された(図8A)またはELISAプレートに直接結合した(図8B)、既知濃度のビオチン−DS6を用いて作成された。
【図9】図9は、ネズミDS6抗体のL鎖(図9A)およびH鎖(図9B)可変部のcDNA配列およびアミノ酸配列を示す。各配列中の3つのCDRに下線を施した(Kabat定義)。
【図10】図10は、Kabat定義により判定したネズミDS6抗体のL鎖(図10A)およびH鎖(図10B)CDRを示す。AbMモデリングソフトウェアによれば、H鎖CDRに関する定義にわずかな差が生じる(図10C)。
【図11】図11は、ネズミDS6抗体のL鎖(”muDS6LC”)(SEQ ID NO:7の残基1〜95)およびH鎖(”muDS6HC”)(SEQ ID NO:9の残基1〜98)のアミノ酸配列を、IgV?ap4(SEQ ID NO:23)およびIgVh J558.41(SEQ ID NO:24)遺伝子の生殖系列配列とアラインさせたものを示す。灰色は配列の相異を示す。
【図12】図12は、ネズミDS6(muDS6)L鎖(”muDS6LC”)およびH鎖(”muDS6HC”)配列に最も相同性が高く、Brookhaevenデータベースに解決済み構造ファイルをもつ、10種類のL鎖およびH鎖抗体配列を示す。相同性が最も高いものから最も低いものの順に配列を並べた。
【図13−1】図13は、ネズミDS6抗体L鎖可変部のいずれのフレームワーク残基が表面アクセス可能であるかを推定するための表面アクセシビリティーデータおよび計算値を示す。平均表面アクセシビリティー25〜35%の位置をマーク(??)し、第2ラウンドの分析を行った。DS6抗体のL鎖可変部(図13A)およびH鎖可変部(図13B)。
【図13−2】図13は、ネズミDS6抗体L鎖可変部のいずれのフレームワーク残基が表面アクセス可能であるかを推定するための表面アクセシビリティーデータおよび計算値を示す。平均表面アクセシビリティー25〜35%の位置をマーク(??)し、第2ラウンドの分析を行った。DS6抗体のL鎖可変部(図13A)およびH鎖可変部(図13B)。
【図14】図14は、prDS6v1.0哺乳動物発現プラスミド地図を示す。このプラスミドを用いて、組換えキメラおよびヒト化DS6抗体を構築し、発現させた。
【図15】図15は、ネズミDS6抗体(”muDS6”)およびヒト化DS6抗体(”huDS6”)(v1.0およびv1.2)のL鎖(図15A)およびH鎖(図15B)可変ドメインのアミノ酸配列を示す。
【図16】図16は、ヒト化DS6抗体(”huDS6”)(v1.0およびv1.2)のL鎖可変部のcDNA配列およびアミノ酸配列を示す。
【図17】図17は、ヒト化DS6抗体(”huDS6”)v1.0(図17A)およびv1.2(図17B)のH鎖可変部のcDNA配列およびアミノ酸配列を示す。
【図18】図18は、WISH細胞について実施したアッセイからのmuDS6およびhuDS6クローンのフローサイトメトリー結合曲線を示す。(図18A)キメラ、v1.0、およびv1.2ヒトDS6クローンの結合親和性(それぞれKd=3.15、3.71および4.20nM)は、(図18B)裸およびビオチニル化ネズミDS6の結合親和性(それぞれKd=1.93および2.80nM)と同等であった。
【図19】図19は、huDS6抗体とmuDS6の競合結合アッセイの結果を示す。(図19A)WISH細胞をビオチン−muDS6およびストレプトアビジン−DTAFと共にインキュベートして、見掛けKdが6.76nMの結合曲線を得た。(図19B)種々の濃度の裸muDS6、huDS6 v1.0およびv1.2を2nMのビオチン−muDS6と結合させ、次いでストレプトアビジン−DTAFと結合させた。
【図20】図20は、DS6抗体−DM1コンジュゲートと対比した非コンジュゲートDS6抗体の結合親和性の測定結果を示す。これらの結果は、DM1コンジュゲーションが抗体の結合親和性に有害な作用を及ぼさないことを立証する。DS6抗体−DM1コンジュゲートの見掛けKd(3.902nM)(”DS6−DM1”)は、裸の抗体のもの(2.020nM)(”DS6”)よりわずかに大きかった。
【図21】図21は、抗ネズミIgG(H+L)DM1コンジュゲート(2°Ab−DM1)の存在下または不存在下での、DS6抗体を用いた間接的な細胞生存率アッセイの結果を示す。抗原陽性Caov−3細胞は、二次コンジュゲート(”DS6+2°Ab−DM1”)の存在下でのみ、DS6抗体依存性で死滅した(IC50=424.9pM)。
【図22】図22は、DS6抗体およびヒト化DS6抗体の補体依存性細胞毒性(CDC)の結果を示す。これらの結果は、HPAC細胞(図22A)およびZR−75−1細胞(図22B)に対してDS6抗体またはヒト化DS6抗体(v1.0およびv1.2)のCDC仲介作用がないことを立証した。
【図23−1】図23は、遊離メイタンシンと対比したDS6抗体−DM1コンジュゲートのインビトロ細胞毒性アッセイの結果を示す。コロニー形成アッセイにおいて、DS6の抗原が陽性である卵巣癌(図23A)、乳癌(図23B)、子宮頸癌(図23C)および膵臓癌(図23D)細胞系を、DS6抗体−DM1コンジュゲートへの連続曝露の細胞毒性について試験した(左パネル)。これらの細胞系を、遊離メイタンシンへの72時間曝露により同様にメイタンシン感受性について試験した(右パネル)。試験した卵巣癌細胞系は、OVCAR5、TOV−21G、Caov−4およびCaov−3であった。試験した乳癌細胞系は、T47D、BT−20およびBT−483であった。試験した子宮頸癌細胞系は、KB、HeLaおよびWISHであった。試験した膵臓癌細胞系は、HPAC、Hs766TおよびHPAF−IIであった。
【図23−2】図23は、遊離メイタンシンと対比したDS6抗体−DM1コンジュゲートのインビトロ細胞毒性アッセイの結果を示す。コロニー形成アッセイにおいて、DS6の抗原が陽性である卵巣癌(図23A)、乳癌(図23B)、子宮頸癌(図23C)および膵臓癌(図23D)細胞系を、DS6抗体−DM1コンジュゲートへの連続曝露の細胞毒性について試験した(左パネル)。これらの細胞系を、遊離メイタンシンへの72時間曝露により同様にメイタンシン感受性について試験した(右パネル)。試験した卵巣癌細胞系は、OVCAR5、TOV−21G、Caov−4およびCaov−3であった。試験した乳癌細胞系は、T47D、BT−20およびBT−483であった。試験した子宮頸癌細胞系は、KB、HeLaおよびWISHであった。試験した膵臓癌細胞系は、HPAC、Hs766TおよびHPAF−IIであった。
【図23−3】図23は、遊離メイタンシンと対比したDS6抗体−DM1コンジュゲートのインビトロ細胞毒性アッセイの結果を示す。コロニー形成アッセイにおいて、DS6の抗原が陽性である卵巣癌(図23A)、乳癌(図23B)、子宮頸癌(図23C)および膵臓癌(図23D)細胞系を、DS6抗体−DM1コンジュゲートへの連続曝露の細胞毒性について試験した(左パネル)。これらの細胞系を、遊離メイタンシンへの72時間曝露により同様にメイタンシン感受性について試験した(右パネル)。試験した卵巣癌細胞系は、OVCAR5、TOV−21G、Caov−4およびCaov−3であった。試験した乳癌細胞系は、T47D、BT−20およびBT−483であった。試験した子宮頸癌細胞系は、KB、HeLaおよびWISHであった。試験した膵臓癌細胞系は、HPAC、Hs766TおよびHPAF−IIであった。
【図23−4】図23は、遊離メイタンシンと対比したDS6抗体−DM1コンジュゲートのインビトロ細胞毒性アッセイの結果を示す。コロニー形成アッセイにおいて、DS6の抗原が陽性である卵巣癌(図23A)、乳癌(図23B)、子宮頸癌(図23C)および膵臓癌(図23D)細胞系を、DS6抗体−DM1コンジュゲートへの連続曝露の細胞毒性について試験した(左パネル)。これらの細胞系を、遊離メイタンシンへの72時間曝露により同様にメイタンシン感受性について試験した(右パネル)。試験した卵巣癌細胞系は、OVCAR5、TOV−21G、Caov−4およびCaov−3であった。試験した乳癌細胞系は、T47D、BT−20およびBT−483であった。試験した子宮頸癌細胞系は、KB、HeLaおよびWISHであった。試験した膵臓癌細胞系は、HPAC、Hs766TおよびHPAF−IIであった。
【図24−1】図24は、DS6抗体−DM1コンジュゲートのインビトロ細胞毒性アッセイの結果を示す。MTT細胞生存率アッセイにおいて、ヒトの卵巣癌(図24A、図24Bおよび図24C)、乳癌(図24Dおよび図24E)、子宮頸癌(図24Fおよび図24G)および膵臓癌(図23Hおよび図24I)細胞系は、DS6抗体−DM1コンジュゲート依存性で死滅した。裸のDS6はこれらの細胞の増殖に有害な作用を及ぼさなかった。これは、細胞毒性にとってDM1コンジュゲーションが必要であることを示す。
【図24−2】図24は、DS6抗体−DM1コンジュゲートのインビトロ細胞毒性アッセイの結果を示す。MTT細胞生存率アッセイにおいて、ヒトの卵巣癌(図24A、図24Bおよび図24C)、乳癌(図24Dおよび図24E)、子宮頸癌(図24Fおよび図24G)および膵臓癌(図23Hおよび図24I)細胞系は、DS6抗体−DM1コンジュゲート依存性で死滅した。裸のDS6はこれらの細胞の増殖に有害な作用を及ぼさなかった。これは、細胞毒性にとってDM1コンジュゲーションが必要であることを示す。
【図25】図25Aは、DS6抗体−DM1コンジュゲートが、樹立した皮下KB腫瘍異種移植体に及ぼすインビボ抗腫瘍効果試験の結果を示す。腫瘍細胞を0日目に接種し、6日目に第1回の処理を行った。免疫コンジュゲート処理を1日1回、合計5回続けた。腫瘍体積が1500mmを超えた時点で、PBS対照動物を安楽死させた。コンジュゲートをDM1 150または225μg/kgの用量で投与した:それぞれ5.7および8.5mg/kgの抗体濃度に相当する。試験期間中、マウスの体重(図25B)をモニターした。
【図26−1】図26は、DS6抗体−DM1コンジュゲートが、樹立した皮下腫瘍異種移植体に及ぼす抗腫瘍効果試験の結果を示す。OVCAR5(図26Aおよび図26B)、TOV−21G(図26Cおよび図26D)、HPAC(図26Eおよび図26F)、およびHeLa(図26Gおよび図26H)細胞を0日目に接種し、6および13日目に免疫コンジュゲート処理を行った。腫瘍体積が1000mmを超えた時点で、PBS対照動物を安楽死させた。コンジュゲートをDM1 600μg/kgの用量で投与した:これは27.7mg/kgの抗体濃度に相当する。試験期間中、腫瘍体積(図26A、図26C、図26E、および図26G)およびマウスの体重(図26B、図26D、図26F、および図26H)をモニターした。
【図26−2】図26は、DS6抗体−DM1コンジュゲートが、樹立した皮下腫瘍異種移植体に及ぼす抗腫瘍効果試験の結果を示す。OVCAR5(図26Aおよび図26B)、TOV−21G(図26Cおよび図26D)、HPAC(図26Eおよび図26F)、およびHeLa(図26Gおよび図26H)細胞を0日目に接種し、6および13日目に免疫コンジュゲート処理を行った。腫瘍体積が1000mmを超えた時点で、PBS対照動物を安楽死させた。コンジュゲートをDM1 600μg/kgの用量で投与した:これは27.7mg/kgの抗体濃度に相当する。試験期間中、腫瘍体積(図26A、図26C、図26E、および図26G)およびマウスの体重(図26B、図26D、図26F、および図26H)をモニターした。
【図26−3】図26は、DS6抗体−DM1コンジュゲートが、樹立した皮下腫瘍異種移植体に及ぼす抗腫瘍効果試験の結果を示す。OVCAR5(図26Aおよび図26B)、TOV−21G(図26Cおよび図26D)、HPAC(図26Eおよび図26F)、およびHeLa(図26Gおよび図26H)細胞を0日目に接種し、6および13日目に免疫コンジュゲート処理を行った。腫瘍体積が1000mmを超えた時点で、PBS対照動物を安楽死させた。コンジュゲートをDM1 600μg/kgの用量で投与した:これは27.7mg/kgの抗体濃度に相当する。試験期間中、腫瘍体積(図26A、図26C、図26E、および図26G)およびマウスの体重(図26B、図26D、図26F、および図26H)をモニターした。
【図26−4】図26は、DS6抗体−DM1コンジュゲートが、樹立した皮下腫瘍異種移植体に及ぼす抗腫瘍効果試験の結果を示す。OVCAR5(図26Aおよび図26B)、TOV−21G(図26Cおよび図26D)、HPAC(図26Eおよび図26F)、およびHeLa(図26Gおよび図26H)細胞を0日目に接種し、6および13日目に免疫コンジュゲート処理を行った。腫瘍体積が1000mmを超えた時点で、PBS対照動物を安楽死させた。コンジュゲートをDM1 600μg/kgの用量で投与した:これは27.7mg/kgの抗体濃度に相当する。試験期間中、腫瘍体積(図26A、図26C、図26E、および図26G)およびマウスの体重(図26B、図26D、図26F、および図26H)をモニターした。
【図27】図27は、DS6抗体−DM1コンジュゲートが腹腔内OVCAR5腫瘍に及ぼすインビボ有効性試験の結果を示す。腫瘍細胞を0日目に腹腔内注射し、6および13日目に免疫コンジュゲート処理を行った。体重減少が20%を超えた時点で、動物を安楽死させた。
【図28】図28は、HeLa細胞への裸およびタキサン−コンジュゲートDS6抗体の結合親和性試験で得たフローサイトメトリー結合曲線を示す。タキサン(MM1−202)コンジュゲーションは、抗体の結合親和性に有害な影響を及ぼさない。DS6−MM1−202コンジュゲートの見掛けKd(1.24nM)は、裸のDS6抗体のもの(629pM)よりわずかに大きかった。
【発明を実施するための形態】
【0041】
発明の詳細な説明
[62] 本発明は、特に抗CA6モノクローナル抗体、抗CA6ヒト化抗体、および抗CA6抗体フラグメントを提供する。本発明の抗体および抗体フラグメントはそれぞれ、細胞表面のCA6グリコトープを特異的に認識して結合するように設計される。多くのヒト腫瘍がCA6を発現することが知られている:漿液性卵巣癌の95%、子宮内膜様卵巣癌の50%、子宮頸部の新生物の50%、子宮内膜の新生物の69%、外陰の新生物の80%、胸部癌の60%、膵臓腫瘍の67%、および尿路上皮の腫瘍の48%;しかし、正常なヒト組織が発現することは稀である。
【0042】
[63] Kearse et al., Int. J. Cancer 88(6): 866-872 (2000)による報文は、CA6エピトープが存在するタンパク質はCA6エピトープを含むN−結合炭水化物をもつ80kDaのタンパク質であると誤って同定した;その際、彼らはハイブリドーマ上清を同定に用いた。その後、本発明者らは精製したDS6を用いて、CA6エピトープは250kDaを超える非ジスルフィド結合−糖タンパク質のO−結合炭水化物上にあることを立証した。さらに、この糖タンパク質をムチンMuc1と同定した。異なるMuc1対立遺伝子は可変数タンデム反復配列(VNTR)ドメインに異なる数のタンデム反復配列をもつので、細胞はしばしばサイズの異なる2つの別個のMuc1タンパク質を発現する(Taylor-Papadimitriou, Biochim. Biophys. Acta 1455 (2-3): 301-13 (1999))。VNTRドメインの反復数の相異およびグリコシル化の相異のため、Muc1の分子量は細胞系毎に異なる。
【0043】
[64] CA6免疫反応性が過ヨウ素酸に対して感受性であることは、CA6が炭水化物エピトープ、すなわち”グリコトープ”であることを示す。さらにCA6免疫反応性がビブリオコレラ(Vibrio cholerae)由来のノイラミニダーゼ処理に対対して感受性であることは、CA6がシアル酸依存性グリコトープ、すなわち”シアログリコトープ”であることを示す。
【0044】
[65] CA6の特性解明についての詳細は実施例2にある(後記を参照)。CA6についての詳細はさらに下記にある:
【0045】
【化7】

【0046】
[66] 本発明には、2つの主成分を含む細胞毒性コンジュゲートも含まれる。第1成分は、CA6グリコトープを認識して結合する細胞結合剤である。細胞結合剤は、細胞毒性コンジュゲートが目標とする細胞のみを認識して結合するほど高度の特異性で、Muc1上のCA6シアログリコトープを認識すべきである。高度の特異性により、コンジュゲートは非特異的結合から生じる副作用がほとんどなしに、標的を定めて作用することができる。
【0047】
[67] 他の態様において、本発明の細胞結合剤はまた、コンジュゲートの細胞毒性薬物部分が細胞に作用しうるのに十分な期間、および/またはコンジュゲートが細胞にインターナリゼーションされるのに十分な期間、コンジュゲートが標的細胞と接触しているほど高度の親和性で、CA6グリコトープを認識する。
【0048】
[68] 好ましい態様において、細胞毒性コンジュゲートは細胞結合剤として抗CA6抗体、より好ましくはネズミDS6抗CA6モノクローナル抗体を含む。より好ましい態様において、細胞毒性コンジュゲートはヒト化DS6抗体またはそのエピトープ結合フラグメントを含む。DS6抗体はCA6を高度の特異性で認識することができ、細胞毒性物質を異常な細胞または組織、たとえば癌細胞へ、標的を定めて指向させる。
【0049】
[69] 本発明の細胞毒性コンジュゲートの第2成分は、細胞毒性物質である。好ましい態様において、細胞毒性物質はタキソール類、メイタンシノイド類、たとえばDM1もしくはDM4、CC−1065またはCC−1065類似体である。好ましい態様において本発明の細胞結合剤は、直接に、または開裂性もしくは非開裂性のリンカーを介して、細胞毒性物質に共有結合している。
【0050】
[70] 細胞結合剤、細胞毒性物質、およびリンカーについて、以下に詳述する。
細胞結合剤
[71] 療法薬としての本発明化合物の有効性は、適切な細胞結合剤を慎重に選択することに依存する。細胞結合剤は、現在知られている、または将来知られる、いかなる種類であってもよく、これにはペプチドおよび非ペプチドが含まれる。細胞結合剤は、細胞を特異的または非特異的に結合しうるいかなる化合物であってもよい。一般に、これらは抗体(特にモノクローナル抗体)、リンホカイン、ホルモン、増殖因子、ビタミン、栄養輸送分子(たとえばトランスフェリン)、または他のいずれかの細胞結合性の分子もしくは物質であってよい。
【0051】
[72] 使用できる結合剤のより具体的な例には、下記のものが含まれる:
(a)ポリクローナル抗体;
(b)モノクローナル抗体;
(c)抗体のフラグメント、たとえばFab、Fab’、およびF(ab’)、Fv(Parham, J. Immunol. 131: 2895-2902 (1983);Spring et al., J. Immunol. 113: 470-478 (1974);Nisonoff et al., Arch. Biochem. Biophys. 89: 230-244 (1960));
(d)インターフェロン(たとえばα、β、γ);
(e)リンホカイン、たとえばIL−2、IL−3、IL−4、IL−6;
(f)ホルモン、たとえばインスリン、TRH(チロトロピン放出ホルモン)、MSH(メラニン細胞刺激ホルモン)、ステロイドホルモン、たとえばアンドロゲンおよびエストロゲン;
(g)増殖因子、たとえばコロニー刺激因子、たとえばEGF、TGF−α、FGF、VEGF、G−CSF、M−CSFおよびGM−CSF(Burgess, Immunology Today 5: 155-158 (1984));
(h)トランスフェリン(O'Keefe et al., J. Biol. Chem. 260: 932-937 (1985));ならびに
(i)ビタミン、たとえば葉酸類。
【0052】
抗体
[73] 適切な細胞結合剤の選択は、標的とする個々の細胞集団に依存する事項であるが、適切な抗体を入手または調製できれば一般に抗体が好ましく、モノクローナル抗体がより好ましい。
【0053】
[74] モノクローナル抗体法により、特異的モノクローナル抗体の形のきわめて特異的な細胞結合剤を調製できる。当技術分野で特に周知の方法は、マウス、ラット、ハムスターその他のいずれかの哺乳動物を目的の抗原、たとえば無傷の標的細胞、標的細胞から単離した抗原、全ウイルス体、弱毒した全ウイルス体、およびウイルスタンパク質、たとえばウイルスコートタンパク質で免疫化することにより産生されるモノクローナル抗体を作製する方法である。感作されたヒト細胞も使用できる。モノクローナル抗体を作製するための他の方法は、scFv(一本鎖可変部)、特にヒトscFvのファージライブラリーの使用である(たとえば、Griffiths et al., USP 5,885,793および5,969,108;McCafferty et al., WO 92/01047;Liming et al., WO 99/06587を参照)。
【0054】
[75] 典型的な抗体は、ジスルフィド結合により連結した2つの同一H鎖と2つの同一L鎖からなる。可変部は、抗体のH鎖およびL鎖の一部であって、抗体間で配列が異なり、抗原に対する個々の抗体の結合および特異性において協調する部分である。変動は必ずしも抗体可変部全体に均一に分布するわけではない。変動は一般に、L鎖およびH鎖両方の可変部において、可変部の相補性決定領域(CDR)または超可変部と呼ばれる3つのセグメント内に集中している。より高度に保存された部分の可変部はフレームワーク領域と呼ばれる。H鎖およびL鎖の可変部は4つのフレームワーク領域を含み、これらは多くの場合βシート構造をとり、各フレームワーク領域は3つのCDRにより連結し、CDRはβシート構造を連結するループを形成し、場合によりβシート構造の一部を形成する。各鎖中のCDRはフレームワーク領域によって近接した状態に保持され、他方の鎖のCDRと共に抗体の抗原結合部位の形成に寄与している(E.A.Kabat et al., Sequences of Immunological Interest, 第5版, 1991, NIH)。
【0055】
[76] 定常部は、H鎖の一部である。それは抗原への抗体の結合に直接には関係しないが、抗体依存性の細胞毒性における抗体の関与など、実際には多様なエフェクター機能を示す。
【0056】
[77] 本発明に使用するのに適したモノクローナル抗体には、ネズミDS6モノクローナル抗体が含まれる(USP 6,596,503;ATCC寄託番号PTA−4449)。
ヒト化またはリサーフェシングしたDS6抗体
[78] 好ましくは、ヒト化した抗CA6抗体を本発明の細胞結合剤として使用する。そのようなヒト化抗体の好ましい態様は、ヒト化DS6抗体またはそのエピトープ結合フラグメントである。
【0057】
[79] ヒト化の目標は、抗体の完全な抗原結合親和性および特異性を維持した状態で、異種抗体、たとえばネズミ抗体をヒトに導入するために免疫原性を低下させることである。
【0058】
[80] ヒト化抗体は、リサーフェシングおよびCDRグラフト形成など幾つかの方法により調製できる。本発明において用いるリサーフェシング法は、分子モデリング、統計学的分析および変異誘発を併用して、抗体可変部の非CDR表面を標的宿主の既知抗体の表面に類似するように変化させる。
【0059】
[81] 抗体をリサーフェシングする方策および方法、ならびに異なる宿主内での抗体の免疫原性を低下させる他の方法は、USP 5,639,641(Pedersenら)に開示されており、その全体を本明細書に援用する。要約すると、好ましい方法においては、(1)抗体H鎖およびL鎖可変部プールの位置アラインメントを作成して、H鎖およびL鎖可変部フレームワーク表面に露出した一組の位置を求め、その際すべての可変部についてのアラインメント位置が少なくとも約98%同一であり;(2)げっ歯類の抗体(またはそのフラグメント)について、H鎖およびL鎖可変部フレームワーク表面に露出した一組のアミノ酸残基を決定し;(3)げっ歯類の表面露出した一組のアミノ酸残基に最も近い同一性を有する、H鎖およびL鎖可変部フレームワーク表面に露出した一組のアミノ酸残基を同定し;(4)工程(2)で決定した、H鎖およびL鎖可変部フレームワーク表面に露出した一組のアミノ酸残基において、げっ歯類抗体の相補性決定領域のいずれかの残基のいずれかの原子から5Å以内にあるアミノ酸残基以外を、工程(3)で決定したH鎖およびL鎖可変部フレームワーク表面に露出した一組のアミノ酸残基で置換し;こうして(5)結合特異性をもつヒト化したげっ歯類抗体を製造する。
【0060】
[82] 下記を含めた他の多様な方法で抗体をヒト化することができる:CDRグラフト形成(EP 0 239 400;WO 91/09967;USP 5,530,101;および5,585,089)、ベニーリング(veneering)またはリサーフェシング(EP 0 592 106;EP 519 596;Padlan E.A., 1991, Molecular Immunology 28 (4/5): 489-498;Studnika G.M. et al., 1994, Protein Engineering 7(6): 805-814;Roguska M.A. et al., 1994, PNAS 91: 969-973)、および連鎖シャフリング(USP 5,565,332)。ヒト抗体は、ファージディスプレー法を含めた多様な既知方法により調製できる。USP 4,444,887、4,716,111、5,545,806、および5,814,318;ならびに国際特許出願公開WO 98/46645、WO 98/50433、WO 98/24893、WO 98/16654、WO 96/34096、WO 96/33735、およびWO 91/10741も参照(これらの参考文献の全体を本明細書に援用する)。
【0061】
[83] 好ましい態様において、本発明はMuc1ムチン上の新規なシアログリコトープ(CA6グリコトープ)を認識するヒト化抗体またはそのフラグメントを提供する。他の態様において、ヒト化抗体またはそのエピトープ結合フラグメントは、さらにCA6グリコトープ発現細胞の増殖を阻害する能力をもつ。
【0062】
[84] より好ましい態様においては、ヒト化またはリサーフェシングしたバージョンのDS6抗体であって、該抗体またはそのフラグメントのL鎖およびH鎖の両方において表面に露出した残基を既知のヒト抗体表面にいっそう近似するものに置換した抗体が提供される。本発明のヒト化DS6抗体またはそのエピトープ結合フラグメントは、改良された特性をもつ。たとえば、発明のヒト化DS6抗体またはそのエピトープ結合フラグメントは、Muc1ムチン上の新規なシアログリコトープ(CA6グリコトープ)を特異的に認識する。より好ましくは、本発明のヒト化抗体およびそのエピトープ結合フラグメントは、さらにCA6グリコトープ発現細胞の増殖を阻害する能力をもつ。本発明のヒト化抗体およびそのエピトープ結合フラグメントを、薬物、たとえばメイタンシノイド類にコンジュゲートさせると、新規なMuc1シアログリコトープCA6へその薬物をターゲティングすることにより抗原発現細胞に対して特異的な細胞毒性をもつプロドラッグを形成できる。そのような抗体および低分子高毒性薬物(たとえばメイタンシノイド類、タキサン類、およびCC−1065類似体)を含む細胞毒性コンジュゲートを、腫瘍、たとえば胸部腫瘍および卵巣腫瘍の処置のための療法薬として使用できる。
【0063】
[85] 本発明のヒト化バージョンDS6抗体を、それらのH鎖およびL鎖両方の可変部の各アミノ酸配列、L鎖およびH鎖両方の可変部の遺伝子のDNA配列、CDRの同定、それらの表面アミノ酸の同定、ならびに組換え形態でそれらを発現させる手段の開示に関して、本明細書中で完全に解明する。
【0064】
[86] 1態様においては、SEQ ID NO:1〜3により表わされるアミノ酸配列:
【0065】
【化8】

【0066】
を有するCDRを含むH鎖をもつ、ヒト化抗体またはそのエピトープ結合フラグメントを提供する。
[87] H鎖CDRをAbMモデリングソフトウェアにより決定すると、それらはSEQ ID NO:20〜22:
【0067】
【化9】

【0068】
により表わされる。
[88] 同態様において、ヒト化抗体またはそのエピトープ結合フラグメントは、SEQ ID NO:4〜6により表わされるアミノ酸配列:
【0069】
【化10】

【0070】
を有するCDRを含むL鎖をもつ。
[89] SEQ ID NO:7またはSEQ ID NO:8により表わされるアミノ酸配列:
【0071】
【化11】

【0072】
との少なくとも90%の配列同一性を備えたアミノ酸配列を有するL鎖可変部をもつ、ヒト化抗体およびそのエピトープ結合フラグメントをも提供する。
[90] 同様に、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10、またはSEQ ID NO:11により表わされるアミノ酸配列:
【0073】
【化12】

【0074】
との少なくとも90%の配列同一性を備えたアミノ酸配列を有するH鎖可変部をもつ、ヒト化抗体およびそのエピトープ結合フラグメントを提供する。
[91] 他の態様においては、SEQ ID NO:8:
【0075】
【化13】

【0076】
に対応するアミノ酸配列を有するヒト化またはリサーフェシングしたL鎖可変部をもつ、ヒト化抗体およびそのエピトープ結合フラグメントを提供する。
[92] 同様に、それぞれSEQ ID NO:10、またはSEQ ID NO:11:
【0077】
【化14】

【0078】
に対応するアミノ酸配列を有するヒト化またはリサーフェシングしたH鎖可変部をもつ、ヒト化抗体およびそのエピトープ結合フラグメントを提供する。
[93] 本発明のヒト化抗体およびそのエピトープ結合フラグメントは、muDS6の結合親和性および特異性を保持するために、L鎖および/またはH鎖可変部のCDRに近接するヒト表面アミノ酸残基の1以上の位置において、対応する表1の星印の残基(Kabat番号表示)により定められるmuDS6表面残基で交換されたバージョンをも含む。
【0079】
【表3】

【0080】
[94] DS6抗体のL鎖およびH鎖ならびにそのヒト化バージョンの一次アミノ酸およびDNA配列を本明細書に開示する。ただし、本発明の範囲はこれらの配列を含む抗体およびフラグメントに限定されるのではなく、Muc1受容体上の腫瘍特異的ユニークグリコトープとしてのCA6に特異的に結合するすべての抗体およびフラグメントが本発明に含まれる。好ましくは、CA6に特異的に結合する抗体およびフラグメントは、その受容体の生物活性に拮抗する。より好ましくは、そのような抗体はさらに実質的にアゴニスト活性をもたない。したがって本発明の抗体および抗体フラグメントは、DS6抗体またはそのヒト化誘導体とはそれらの骨格、CDR、ならびに/あるいはL鎖およびH鎖のアミノ酸配列が異なっていても、なお本発明の範囲に含まれる可能性がある。
【0081】
[95] DS6抗体のCDRをモデリングにより同定し、それらの分子構造を推定した。この場合も、CDRはエピトープ認識にとって重要であるが、それらは本発明の抗体および抗体フラグメントに必須ではない。したがって、たとえば本発明の抗体の親和性変異により生じる改良された特性をもつ抗体およびフラグメントが提供される。
【0082】
[96] DS6が由来すると思われるマウスL鎖IgV?ap4生殖系列遺伝子およびH鎖IgVh J558.41生殖系列遺伝子を、DS6抗体の配列とアラインさせたものを図11に示す。この比較により、CDR中の幾つかを含めて、DS6抗体中に可能な体細胞変異を同定する。
【0083】
[97] DS6抗体のH鎖およびL鎖可変部の配列、ならびにDS6抗体のCDRの配列は、これまで知られておらず、それらを図9Aおよび9Bに示す。そのような情報を用いて、ヒト化バージョンのDS6抗体を製造できる。
【0084】
抗体フラグメント
[98] 本発明の抗体には、前記に述べた全長抗体およびエピトープ結合フラグメントの両方が含まれる。本明細書中で用いる”抗体フラグメント”には、全長抗体が認識するエピトープに結合する能力を保持する抗体部分がいずれも含まれ、一般に”エピトープ結合フラグメント”と呼ばれる。抗体フラグメントの例には、Fab、Fab’およびF(ab’)、Fd、一本鎖Fv(scFv)、一本鎖抗体、ジスルフィド結合Fv(dsFv)、ならびにVまたはV領域を含むフラグメントが含まれるが、これらに限定されない。一本鎖抗体を含めたエピトープ結合フラグメントは、可変部(1以上)を単独で、または下記のものの全体もしくは一部と組み合わせて含むことができる:ヒンジ部、C1、C2、およびC3ドメイン。
【0085】
[99] そのようなフラグメントは、FabフラグメントまたはF(ab’)フラグメントの一方または両方を含むことができる。好ましくは、抗体フラグメントは全抗体の6つのCDRすべてを含むが、そのような領域すべてより少ない領域、たとえば3、4または5つのCDRを含むフラグメントも機能性である。さらに、これらのフラグメントは下記の免疫グロブリンクラスのいずれかのメンバーであってもよく、あるいはそれらのメンバーを結合していてもよい:IgG、IgM、IgA、IgD、またはIgE、およびそのサブクラス。
【0086】
[100] FabおよびF(ab’)フラグメントは、パパイン(Fabフラグメント)またはペプシン(F(ab’)フラグメント)などの酵素を用いるタンパク質分解開裂により調製することができる。
【0087】
[101] 一本鎖FV(scFv)フラグメントは、抗体L鎖可変部(V)の少なくとも1つのフラグメントに連結した抗体H鎖可変部(V)の少なくとも1つのフラグメントを含む、エピトープ結合フラグメントである。リンカーは、一本鎖抗体フラグメントが由来する全抗体の標的分子結合特異性を維持するように、(V)および(V)領域が連結した際にそれらの適正な三次元フォールディングが確実に起きるように選択された短かいフレキシブルペプチドであってよい。(V)または(V)配列のカルボキシル末端は、相補的な(V)または(V)配列のアミノ酸末端に、リンカーにより共有結合していてもよい。
【0088】
[102] 本発明の一本鎖抗体フラグメントは、本明細書に記載する全抗体の少なくとも1つの可変部または相補性決定領域(CDR)をもつが、これらの抗体の定常ドメインの一部または全部を欠如する、アミノ酸配列を含む。これらの定常ドメインは抗原結合には必要ないが、全抗体の構造の主要部分を構成する。したがって一本鎖抗体フラグメントは、定常ドメインの一部または全部を含む抗体の使用に伴う問題の一部を克服することができる。たとえば一本鎖抗体フラグメントは、生体分子とH鎖定常部の不都合な相互作用または他の目的外の生物活性がないという傾向をもつ。さらに、一本鎖抗体フラグメントは全抗体よりかなり小さく、したがって毛管透過性が全抗体より大きいので、一本鎖抗体フラグメントはより効率的に標的抗原結合部位に局在化して結合することができる。また、抗体フラグメントは原核細胞において比較的大規模に産生することができ、したがってそれらの製造が容易になる。さらに、相対的に小さいサイズの一本鎖抗体フラグメントは、全抗体よりレシピエントにおいて免疫反応を誘発する可能性がより少ない。
【0089】
[103] 一本鎖抗体フラグメントは、当業者に周知の分子クローニング、抗体ファージディスプレーライブラリー、またはこれらに類する方法で調製できる。これらのタンパク質は、たとえば真核細胞、または細菌を含めた原核細胞において産生できる。本発明のエピトープ結合フラグメントは、当技術分野で既知の種々のファージディスプレー法によっても調製できる。ファージディスプレー法では、機能性抗体ドメインをコードするポリヌクレオチド配列を保有するファージ粒子の表面に、機能性抗体ドメインを表示させる。特に、そのようなファージを用いて、レパトアまたはコンビナトリアル抗体ライブラリー(たとえばヒトまたはネズミ)から発現するエピトープ結合ドメインを表示させることができる。目的抗原を結合するエピトープ結合ドメインを発現するファージを、抗原により、たとえば固体表面またはビーズに結合または捕獲させた標識抗原により、選択または同定することができる。これらの方法に用いるファージは一般に、ファージ遺伝子IIIまたは遺伝子VIIIタンパク質のいずれかに組換え融合させたFab、Fvまたはジスルフィド安定化Fv抗体ドメインをもつファージから発現させたfdおよびM13結合ドメインを含む、繊維状ファージである。
【0090】
[104] 本発明のエピトープ結合フラグメントの製造に使用できるファージディスプレー法の例には、下記に開示されるものが含まれる;
【0091】
【化15】

【0092】
これらそれぞれの全体を本明細書に援用する。
[105] ファージを選択した後、前記フラグメントをコードするファージ領域を単離し、選択した宿主(哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞、酵母、および細菌を含む)において、たとえば下記に詳述する組換えDNA法で発現させることにより、エピトープ結合フラグメントを製造できる。たとえば、下記に開示される当技術分野で既知の方法によりFab、Fab’およびF(ab’)フラグメントを組換え製造する技術も使用できる;国際特許出願公開WO 92/22324;Mullinax et al., 1992, BioTechniques 12(6): 864-869;Sawai et al., 1995, AJRI 34: 26-34;およびBetter et al., 1988, Science 240: 1041-1043;これらの参考文献の全体を本明細書に援用する。一本鎖Fvおよび抗体を製造するために使用できる技術の例には、USP 4,946,778および5,258,498;Huston et al., 1991, Methods in Enzymology 203: 46-88;Shu et al., 1993, PNAS 90: 7995-7999;Skerra et al., 1988, Science 240: 1038-1040に記載のものが含まれる。
【0093】
機能均等物
[106] 本発明には、抗CA6抗体およびヒト化した抗CA6抗体の機能均等物も含まれる。用語”機能均等物”には、たとえば相同配列をもつ抗体、キメラ抗体、人工抗体および修飾抗体が含まれ、その際、機能均等物はそれぞれ、CA6に結合する能力により規定される。”抗体フラグメント”と呼ばれる分子グループと”機能均等物”と呼ばれるグループに重複があることは、当業者に理解されるであろう。機能均等物を製造する方法は、たとえば国際特許出願公開WO 93/21319;欧州特許出願239,400;国際特許出願公開WO 89/09622;欧州特許出願338,745;および欧州特許出願EP 332,424に開示されており、これらそれぞれの全体を本明細書に援用する。
【0094】
[107] 相同配列をもつ抗体は、本発明の抗CA6抗体およびヒト化した抗CA6抗体のアミノ酸配列との配列相同性をもつアミノ酸配列を有する抗体である。好ましくは、相同性は本発明の抗CA6抗体およびヒト化した抗CA6抗体の可変部のアミノ酸配列との相同性である。本明細書中のアミノ酸配列に適用する”配列相同性”は、たとえばPearson and Lipman, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85, 2444-2448 (1988)によるFASTA検索法により判定して、他のアミノ酸配列との少なくとも約90%、91%、92%、93%、または94%の配列相同性、より好ましくは少なくとも約95%、96%、97%、98%、または99%の配列相同性をもつ配列と定義される。
【0095】
[108] 本明細書中で用いるキメラ抗体は、抗体の異なる部分が異なる動物種に由来するものである。たとえばネズミモノクローナル抗体に由来する可変部をもつ抗体をヒト免疫グロブリン定常部と対合させる。キメラ抗体の作製方法は当技術分野で既知である。たとえばMorrison, 1985, Science 229: 1202;Oi et al., 1986, BioTechniques 4: 214;Gillies et al., 1989, J. Immunol. Methods 125: 191-202;USP 5,807,715;4,816,567;および4,816,397を参照;それらの全体を本明細書に援用する。
【0096】
[109] ヒト化形のキメラ抗体は、たとえばマウス抗体の相補性決定領域をヒトフレームワークドメイン中へ置換することにより作製できる;たとえば国際特許出願公開WO 92/22653を参照。ヒト化キメラ抗体は、実質的または全体的に、対応するヒト抗体領域に由来する定常部および相補性決定領域(CDR)以外の可変部と、実質的または全体的にヒト以外の哺乳動物に由来するCDRをもつ。
【0097】
[110] 人工抗体には、scFvフラグメント、ジアボディー、トリアボディー、テトラボディーおよびmruが含まれる(Winter, G. and Milstein, C., 1991, Nature 349: 293-299;Hudson, P.J., 1999, Current Opinion in Immunology 11: 548-557による概説を参照);これらはそれぞれ抗原結合能をもつ。一本鎖Fvフラグメント(scFv)の場合、抗体のVおよびVドメインがフレキシブルペプチドにより連結される。一般にこのリンカーペプチドはアミノ酸残基約15個の長さである。リンカーがこれよりはるかに小さく、たとえばアミノ酸5個の場合、ジアボディーが形成され、これは二価scFv二量体である。リンカーをアミノ酸残基3個未満に短かくすると、トリアボディーおよびテトラボディーと呼ばれる三量体および四量体構造が形成される。抗体の最小結合単位は、CDR、一般にH鎖のCDR2であり、これは別個に使用できるのに十分な特異的認識能および結合能をもつ。そのようなフラグメントは、分子認識単位、すなわちmruと呼ばれる。そのようなmru数個を短かいリンカーペプチドで結合させ、したがって1個のmruより高いアビディティーをもつ人工的な結合タンパク質を形成することができる。
【0098】
[111] 本発明の機能均等物には、修飾抗体、たとえば抗体にいずれかのタイプの分子を共有結合させることにより修飾された抗体も含まれる。たとえば修飾抗体には、たとえばグリコシル化、ペジル化(pegylation)、リン酸化、アミド化、既知の保護基/遮断基による誘導体化、タンパク質分解開裂、細胞性リガンドまたは他のタンパク質への結合などにより修飾された抗体が含まれる。共有結合は抗体が抗イディオタイプ応答を発するのを妨げない。これらの修飾は既知の方法により実施でき、これには特異的な化学的開裂、アセチル化、ホルミル化、ツニカマイシンの代謝合成などが含まれるが、これらに限定されない。さらに、修飾抗体は1以上の非古典アミノ酸を含むことができる。
【0099】
[112] 機能均等物は、異なるフレームワーク内の異なる鎖上にある異なるCDRを交換することにより製造できる。たとえば異なるH鎖の置換により、特定の一組のCDRについて異なるクラスの抗体が得られ、これによりたとえばIgG1−4、IgM、IgA1−2、IgD、IgE抗体タイプおよびイソタイプを製造することができる。同様に、特定の一組のCDRを完全合成フレームワーク内に埋め込むことにより、本発明の範囲に含まれる人工抗体を製造できる。
【0100】
[113] 機能均等物は、当技術分野で既知の多様な方法を用いた、特定の一組のCDRを囲む可変部および/または定常部の配列内における変異、欠失および/または挿入によって容易に製造できる。
【0101】
[114] 本発明の抗体フラグメントおよび機能均等物には、DS6抗体と比較して検出可能な、CA6への結合度をもつ分子が含まれる。検出可能な結合度には、CA6へのネズミDS6抗体の結合能の少なくとも10〜100%の範囲、好ましくは少なくとも50%、60%または70%、より好ましくは少なくとも75%、80%、85%、90%、95%または99%のすべての数値が含まれる。
【0102】
改良された抗体
[115] CDRは、エピトープ認識および抗体結合にとって第1に重要である。しかし、抗体がそれのコグネイトエピトープを認識して結合する能力を妨げることなく、CDRを構成する残基を交換することができる。たとえばエピトープ認識には影響を与えずにエピトープに対する抗体の結合親和性を高める交換を行うことができる。
【0103】
[116] したがって本発明の範囲には、同様に特異的にCA6を認識し、好ましくはより高い親和性で結合する、改良バージョンのネズミおよびヒト両方の抗体が含まれる。
[117] 幾つかの研究は、一次抗体配列の知見に基づいて抗体の配列内の多様な位置に1以上のアミノ酸交換を導入することが、抗体の特性、たとえば結合および発現レベルに及ぼす影響を探索した(Yang, W.P. et al., 1995, J. Mol. Biol., 254, 392-403;Rader, C. et al., 1998, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 95: 8910-8915;Vaughan, T.J. et al., 1998, Nature Biotechnology, 16, 535-539)。
【0104】
[118] これらの研究において、オリゴヌクレオチド仲介による部位特異的変異誘発、カセット変異誘発、誤りがちなPCR、DNAシャフリング、または大腸菌(E.coli)のミューテーター株などの方法で、H鎖およびL鎖遺伝子のCDR1、CDR2、CDR3またはフレームワーク領域の配列を変化させることにより、一次抗体の均等物が形成された(Vaughan, T.J. et al., 1998, Nature Biotechnology, 16, 535-539;Adey, N.B. et al.,”Phage Display of Peptides and Proteins”,1996, 16章, pp.277-291, 編者Kay, B.K. et al., Academic Press)。一次抗体の配列を変化させるこれらの方法により、二次抗体の親和性が改良された
【0105】
【化16】

【0106】
[119] 抗体の1以上のアミノ酸残基を変化させる同様な特異的方式により、本明細書に記載する抗体配列を用いて、CA6に対する改良された親和性など、改良された機能をもつ抗CA6抗体を開発することができる。
【0107】
[120] 改良された抗体には、動物の免疫化、ハイブリドーマ形成、および特異的特性をもつ抗体の選択のための標準法により製造された、改良された特性をもつ抗体も含まれる。
【0108】
細胞毒性物質
[121] 本発明の細胞毒性コンジュゲートに用いられる細胞毒性物質は、細胞死に至らせ、または細胞死を誘発し、または何らかの様式で細胞の生存性を低下させる、いかなる化合物であってもよい。好ましい細胞毒性物質には、たとえば後記に定めるメイタンシノイドおよびメイタンシノイド類似体、タキソイド類、CC−1065およびCC−1065類似体、ドラスタチン(dolastatin)およびドラスタチン類似体が含まれる。これらの細胞毒性物質を、本明細書に開示する抗体、抗体フラグメント、機能均等物、改良された抗体およびそれらの類似体にコンジュゲートさせる。
【0109】
[122] 細胞毒性コンジュゲートは、インビトロ法により製造できる。薬物またはプロドラッグを抗体に結合させるために、連結基を用いる。適切な連結基は当技術分野で周知であり、これにはジスルフィド基、チオエーテル基、酸不安定基、光不安定基、ペプチダーゼ不安定基およびエステラーゼ不安定基が含まれる。好ましい連結基は、ジスルフィド基およびチオエーテル基である。たとえばジスルフィド交換反応を用いて、または抗体と薬物またはプロドラッグの間にチオエーテル結合を形成することにより、コンジュゲートを構築できる。
【0110】
メイタンシノイド類
[123] 細胞毒性コンジュゲートを形成するために本発明に使用できる細胞毒性物質には、メイタンシノイドおよびメイタンシノイド類似体が含まれる。適切なメイタンシノイドの例には、メイタンシノール(maytansinol)およびメイタンシノール類似体が含まれる。メイタンシノイドは、微小管形成を阻害し、哺乳動物細胞に対して毒性の高い薬物である。
【0111】
[124] 適切なメイタンシノール類の例には、修飾された芳香環をもつもの、および他の位置に修飾をもつものが含まれる。そのような適切なメイタンシノイド類は、下記USPに記載されている:
【0112】
【化17】

【0113】
[125] 修飾された芳香環をもつ適切なメイタンシノール類似体の具体例には、下記のものが含まれる:
[126] (1)C−19−デクロロ(USP 4,256,746)(アンサマイトシン(ansamytocin)P2のLAH還元により製造);
[127] (2)C−20−ヒドロキシ(またはC−20−デメチル)+/−C−19−デクロロ(USP 4,361,650および4,307,016)(ストレプトミセス属(Streptomyces)もしくはアクチノミセス属(Actinomyces)を用いる脱メチル、またはLAHを用いる脱クロロにより製造);および
[128] (3)C−20−デメトキシ,C−20−アシルオキシ(−OCOR)+/−デクロロ(USP 4,294,757)(塩化アシルを用いるアシル化により製造)。
【0114】
[129] 他の位置に修飾をもつ適切なメイタンシノール類似体の具体例には、下記のものが含まれる:
[130] (1)C−9−SH(USP 4,424,219)(メイタンシノールとHSまたはPの反応により製造);
[131] (2)C−14−アルコキシメチル(デメトキシ/CHOR)(USP 4,331,598);
[132] (3)C−14−ヒドロキシメチルまたはアシルオキシメチル(CHOHまたはCHOAc)(USP 4,450,254)(ノカルディア属(Nocardia)から製造);
[133] (4)C−15−ヒドロキシ/アシルオキシ(USP 4,364,866)(ストレプトミセス属によるメイタンシノールの変換により製造);
[134] (5)C−15−メトキシ(USP 4,313,946および4,315,929)(トレビア・ヌーディフロラ(Trewia nudiflora)から単離);
[135] (6)C−18−N−デメチル(USP 4,362,663および4,322,348)(ストレプトミセス属によるメイタンシノールの脱メチルにより製造);および
[136] (7)4,5−デオキシ(USP 4,371,533)(メイタンシノールの三塩化チタン/LAH還元により製造)。
【0115】
[137] 好ましい態様において、本発明の細胞毒性コンジュゲートは、チオール含有メイタンシノイド(DM1)、正式にはN2’−デアセチル−N2’−(3−メルカプト−1−オキソプロピル)−メイタンシンと呼ばれるものを細胞毒性物質として使用する。DM1は、下記の構造式(I)により表わされる:
【0116】
【化18】

【0117】
[138] 他の好ましい態様において、本発明の細胞毒性コンジュゲートは、チオール含有メイタンシノイドN2’−デアセチル−N2’−(4−メチル−4−メルカプト−1−オキソペンチル)−メイタンシンを細胞毒性物質として使用する。DM4は、下記の構造式(II)により表わされる:
【0118】
【化19】

【0119】
[139] 本発明の他の態様においては他のメイタンシン類を使用でき、これには硫黄原子を保有する炭素原子におけるモノまたはジ−アルキル置換をもつチオール−およびジスルフィド含有メイタンシノイドが含まれる。これらには、下記をもつメイタンシノイドが含まれる:C−3、C−14ヒドロキシメチル、C−15ヒドロキシ、またはC−20デスメチル、アシル基がヒンダードスルフヒドリル基を保有するアシル化アミノ酸側鎖、その際チオール官能基を保有するアシル基の炭素原子は1または2つの置換基をもち、それらの置換基はCH3、C2H5、1〜10個の炭素原子をもつ直鎖もしくは分枝鎖アルキルもしくはアルケニル、3〜10個の炭素原子をもつ環式アルキルもしくはアルケニル、フェニル、置換フェニル、または複素環式芳香族もしくはヘテロシクロアルキル基であり、さらに置換基の1つはHであってもよく、アシル基はカルボニル官能基と硫黄原子の間に少なくとも3個の炭素原子長さの直鎖をもつ。
【0120】
[140] そのような他のメイタンシン類には、式(III)により表わされる化合物が含まれる:
【0121】
【化20】

【0122】
式中:
Y’は、
【0123】
【化21】

【0124】
を表わし、ここで
およびRは、それぞれ独立して、CH、C、1〜10個の炭素原子を有する直鎖アルキルもしくはアルケニル、3〜10個の炭素原子を有する分枝鎖もしくは環式アルキルもしくはアルケニル、フェニル、置換フェニル、または複素環式芳香族もしくは複素環式基であり、さらにRはHであってもよく;
A、B、Dは、3〜10個の炭素原子を有するシクロアルキルもしくはシクロアルケニル、単純もしくは置換されたアリールまたは複素環式芳香族もしくは複素環式基であり;
、R、R、R、R、R、R、R10、R11およびR12は、それぞれ独立して、H、CH、C、1〜10個の炭素原子を有する直鎖アルキルもしくはアルケニル、3〜10個の炭素原子を有する分枝鎖もしくは環式アルキルもしくはアルケニル、フェニル、置換フェニル、または複素環式芳香族もしくは複素環式基であり;
l、m、n、o、p、q、r、s、tおよびuは、それぞれ独立して0または1〜5の整数であり、ただしl、m、n、o、p、q、r、s、tおよびuのうち少なくとも2つはいかなる場合にもゼロではなく;
Zは、H、SRまたは−CORであり、ここでRは1〜10個の炭素原子を有する直鎖アルキルもしくはアルケニル、3〜10個の炭素原子を有する分枝鎖もしくは環式アルキルもしくはアルケニル、または単純もしくは置換されたアリールまたは複素環式芳香族もしくは複素環式基である。
【0125】
[141] 式(III)の好ましい態様には、下記の式(III)の化合物が含まれる:
がメチルであり、RがHであり、ZがHである;
およびRがメチルであり、ZがHである;
がメチルであり、RがHであり、Zが−SCHである;
およびRがメチルであり、Zが−SCHである。
【0126】
[142] そのような他のメイタンシン類には、式(IV−L)、(IV−D)または(IV−D,L)により表わされる化合物も含まれる:
【0127】
【化22】

【0128】
式中:
Yは、
【0129】
【化23】

【0130】
を表わし、ここで
およびRは、それぞれ独立して、CH、C、1〜10個の炭素原子を有する直鎖アルキルもしくはアルケニル、3〜10個の炭素原子を有する分枝鎖もしくは環式アルキルもしくはアルケニル、フェニル、置換フェニル、または複素環式芳香族もしくは複素環式基であり、さらにRはHであってもよく;
、R、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して、H、CH、C、1〜10個の炭素原子を有する直鎖アルキルもしくはアルケニル、3〜10個の炭素原子を有する分枝鎖もしくは環式アルキルもしくはアルケニル、フェニル、置換フェニル、または複素環式芳香族もしくは複素環式基であり;
l、mおよびnは、それぞれ独立して1〜5の整数であり、さらにnは0であってもよく;
Zは、H、SRまたは−CORであり、ここでRは1〜10個の炭素原子を有する直鎖もしくは分枝鎖アルキルもしくはアルケニル、3〜10個の炭素原子を有する環式アルキルもしくはアルケニル、または単純もしくは置換されたアリールまたは複素環式芳香族もしくは複素環式基であり;
Mayは、C−3の側鎖、C−14ヒドロキシメチル、C−15ヒドロキシを有する、またはC−20デスメチルであるメイタンシノイドを表わす。
【0131】
[143] 式(IV−L)、(IV−D)および(IV−D,L)の好ましい態様には、下記の式(IV−L)、(IV−D)および(IV−D,L)の化合物が含まれる:
がメチルであり、RがHであり、R、R、RおよびRがそれぞれHであり、lおよびmがそれぞれ1であり、nが0であり、ZがHである;
およびRがメチルであり、R、R、RおよびRがそれぞれHであり、lおよびmが1であり、nが0であり、ZがHである;
がメチルであり、RがHであり、R、R、RおよびRがそれぞれHであり、lおよびmがそれぞれ1であり、nが0であり、Zが−SCHである;
およびRがメチルであり、R、R、RおよびRがそれぞれHであり、lおよびmが1であり、nが0であり、Zが−SCHである。
【0132】
[144] 好ましくは、細胞毒性物質は式(IV−L)で表わされる。
[145] そのような他のメイタンシン類には、式(V)により表わされる化合物も含まれる:
【0133】
【化24】

【0134】
式中:
Yは、
【0135】
【化25】

【0136】
を表わし、ここで
およびRは、それぞれ独立して、CH、C、1〜10個の炭素原子を有する直鎖アルキルもしくはアルケニル、3〜10個の炭素原子を有する分枝鎖もしくは環式アルキルもしくはアルケニル、フェニル、置換フェニル、または複素環式芳香族もしくは複素環式基であり、さらにRはHであってもよく;
、R、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して、H、CH、C、1〜10個の炭素原子を有する直鎖アルキルもしくはアルケニル、3〜10個の炭素原子を有する分枝鎖もしくは環式アルキルもしくはアルケニル、フェニル、置換フェニル、または複素環式芳香族もしくは複素環式基であり;
l、mおよびnは、それぞれ独立して1〜5の整数であり、さらにnは0であってもよく;
Zは、H、SRまたは−CORであり、ここでRは1〜10個の炭素原子を有する直鎖アルキルもしくはアルケニル、3〜10個の炭素原子を有する分枝鎖もしくは環式アルキルもしくはアルケニル、または単純もしくは置換されたアリールまたは複素環式芳香族もしくは複素環式基である。
【0137】
[146] 式(V)の好ましい態様には、下記の式(V)の化合物が含まれる:
R1がメチルであり、R2がHであり、R5、R6、R7およびR8がそれぞれHであり;lおよびmがそれぞれ1であり;nが0であり;ZがHである;
およびRがメチルであり;R、R、RおよびRがそれぞれHであり;lおよびmが1であり;nが0であり;ZがHである;
がメチルであり、RがHであり、R、R、RおよびRがそれぞれHであり、lおよびmがそれぞれ1であり、nが0であり、Zが−SCHである;
およびRがメチルであり、R、R、RおよびRがそれぞれHであり、lおよびmが1であり、nが0であり、Zが−SCHである。
【0138】
[147] そのような他のメイタンシン類には、さらに式(VI−L)、(VI−D)または(VI−D,L)により表わされる化合物が含まれる:
【0139】
【化26】

【0140】
式中:
は、
【0141】
【化27】

【0142】
を表わし、ここで
およびRは、それぞれ独立して、CH、C、1〜10個の炭素原子を有する直鎖アルキルもしくはアルケニル、3〜10個の炭素原子を有する分枝鎖もしくは環式アルキルもしくはアルケニル、フェニル、置換フェニル、または複素環式芳香族もしくは複素環式基であり、さらにRはHであってもよく;
、R、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して、H、CH、C、1〜10個の炭素原子を有する直鎖環式アルキルもしくはアルケニル、3〜10個の炭素原子を有する分枝鎖もしくは環式アルキルもしくはアルケニル、フェニル、置換フェニル、または複素環式芳香族もしくは複素環式基であり;
l、mおよびnは、それぞれ独立して1〜5の整数であり、さらにnは0であってもよく;
は、SRまたはCORであり、ここでRは1〜10個の炭素原子を有する直鎖アルキルもしくはアルケニル、3〜10個の炭素原子を有する分枝鎖もしくは環式アルキルもしくはアルケニル、または単純もしくは置換されたアリールまたは複素環式芳香族もしくは複素環式基であり;
Mayは、メイタンシノイドである。
【0143】
[148] そのような他のメイタンシン類には、式(VII)により表わされる化合物も含まれる:
【0144】
【化28】

【0145】
式中:
’は、
【0146】
【化29】

【0147】
を表わし、ここで
およびRは、それぞれ独立して、CH、C、1〜10個の炭素原子を有する直鎖分枝鎖アルキルもしくはアルケニル、3〜10個の炭素原子を有する環式アルキルもしくはアルケニル、フェニル、置換フェニル、または複素環式芳香族もしくは複素環式基であり、さらにRはHであってもよく;
A、BおよびDは、それぞれ独立して、3〜10個の炭素原子を有するシクロアルキルもしくはシクロアルケニル、単純もしくは置換されたアリールまたは複素環式芳香族もしくは複素環式基であり;
、R、R、R、R、R、R、R10、R11およびR12は、それぞれ独立して、H、CH、C、1〜10個の炭素原子を有する直鎖アルキルもしくはアルケニル、3〜10個の炭素原子を有する分枝鎖もしくは環式アルキルもしくはアルケニル、フェニル、置換フェニル、または複素環式芳香族もしくは複素環式基であり;
l、m、n、o、p、q、r、s、tおよびuは、それぞれ独立して0または1〜5の整数であり、ただしl、m、n、o、p、q、r、s、tおよびuのうち少なくとも2つはいかなる場合にもゼロではなく;
は、SRまたは−CORであり、ここでRは1〜10個の炭素原子を有する直鎖アルキルもしくはアルケニル、3〜10個の炭素原子を有する分枝鎖もしくは環式アルキルもしくはアルケニル、または単純もしくは置換されたアリールまたは複素環式芳香族もしくは複素環式基である。
【0148】
[149] 式(VII)の好ましい態様には、R1がメチルであり、R2がHである式(VII)の化合物が含まれる。
[150] 前記のメイタンシノイド類を、抗CA6抗体DS6またはその相同体もしくはフラグメントにコンジュゲートさせることができる。その際、メイタンシノイドのC−3にあるアシル化アミノ酸側鎖のアシル基にあるチオール−もしくはジスルフィド官能基、C−14ヒドロキシメチル、C−15ヒドロキシ、またはC−20デスメチルを用いて、抗体をメイタンシノイドに結合させ、その際、アシル化アミノ酸側鎖のアシル基のチオール−もしくはジスルフィド官能基は1または2つの置換基をもつ炭素原子にあり、それらの置換基はCH、C、1〜10個の炭素原子をもつ直鎖アルキルもしくはアルケニル、3〜10個の炭素原子をもつ分枝鎖もしくは環式アルキルもしくはアルケニル、フェニル、置換フェニル、または複素環式芳香族もしくはヘテロシクロアルキル基であり、さらに置換基の1つはHであってもよく、アシル基はカルボニル官能基と硫黄原子の間に少なくとも3個の炭素原子長さの直鎖をもつ。
【0149】
[151] 本発明の好ましいコンジュゲートは、式(VIII)のメイタンシノイドにコンジュゲートした抗CA6抗体DS6またはその相同体もしくはフラグメントを含むものである:
【0150】
【化30】

【0151】
式中:
’は、
【0152】
【化31】

【0153】
を表わし、ここで
A、BおよびDは、それぞれ独立して、3〜10個の炭素原子を有するシクロアルキルもしくはシクロアルケニル、単純もしくは置換されたアリールまたは複素環式芳香族もしくは複素環式基であり;
、R、R、R、R、R、R、R10、R11およびR12は、それぞれ独立して、H、CH、C、1〜10個の炭素原子を有する直鎖アルキルもしくはアルケニル、3〜10個の炭素原子を有する分枝鎖もしくは環式アルキルもしくはアルケニル、フェニル、置換フェニル、または複素環式芳香族もしくは複素環式基であり;
l、m、n、o、p、q、r、s、tおよびuは、それぞれ独立して0または1〜5の整数であり、ただしl、m、n、o、p、q、r、s、tおよびuのうち少なくとも2つはいかなる場合にも非ゼロではない。
【0154】
[152] 好ましくは、Rがメチルであり、RがHであり、あるいはRおよびRがメチルである。
[153] 本発明のより好ましいコンジュゲートは、式(IX−L)、(IX−D)または(IX−D,L)のメイタンシノイドにコンジュゲートした抗CA6抗体DS6またはその相同体もしくはフラグメントを含むものである:
【0155】
【化32】

【0156】
式中:
は、
【0157】
【化33】

【0158】
を表わし、ここで
およびRは、それぞれ独立して、CH、C、1〜10個の炭素原子を有する直鎖アルキルもしくはアルケニル、3〜10個の炭素原子を有する分枝鎖もしくは環式アルキルもしくはアルケニル、フェニル、置換フェニル、または複素環式芳香族もしくは複素環式基であり、さらにRはHであってもよく;
、R、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して、H、CH、C、1〜10個の炭素原子を有する直鎖アルキルもしくはアルケニル、3〜10個の炭素原子を有する分枝鎖もしくは環式アルキルもしくはアルケニル、フェニル、置換フェニル、または複素環式芳香族もしくは複素環式基であり;
l、mおよびnは、それぞれ独立して1〜5の整数であり、さらにnは0であってもよく;
Mayは、C−3の側鎖、C−14ヒドロキシメチル、C−15ヒドロキシを有する、またはC−20デスメチルであるメイタンシノイドを表わす。
【0159】
[154] 式(IX−L)、(IX−D)および(IX−D,L)の好ましい態様には、下記の式(IX−L)、(IX−D)および(IX−D,L)の化合物が含まれる:
がメチルであり、RがHであるか、あるいはRおよびRがメチルである;
がメチルであり、RがHであり、R、R、RおよびRがそれぞれHであり;lおよびmがそれぞれ1であり;nが0である;
およびRがメチルであり;R、R、RおよびRがそれぞれHであり;lおよびmが1であり;nが0である。
【0160】
[155] 好ましくは、細胞毒性物質は式(IX−L)で表わされる。
[156] 本発明のより好ましいコンジュゲートは、式(X)のメイタンシノイドにコンジュゲートした抗CA6抗体DS6またはその相同体もしくはフラグメントを含むものである:
【0161】
【化34】

【0162】
式中の置換基は前記の式(IX)について定めたものである。
[157] 特に好ましいものは、前記化合物においてRがHであり、Rがメチルであり、R、R、RおよびRがそれぞれHであり、lおよびmがそれぞれ1であり、nが0である化合物である。
【0163】
[158] さらに特に好ましいものは、前記化合物においてRおよびRがメチルであり、R、R、RおよびRがそれぞれHであり、lおよびmが1であり、nが0である化合物である。
【0164】
[159] さらに、L−アミノアシル立体異性体が好ましい。
[160] 出願中の米国特許出願10/849,136(2004年5月20日出願)に教示される各メイタンシノイドも、本発明の細胞毒性コンジュゲート中に使用できる。米国特許出願10/849,136の開示内容全体を本明細書に援用する。
【0165】
ジスルフィドを含む連結基
[161] メイタンシノイド類を細胞結合剤、たとえばDS6抗体に連結するために、メイタンシノイド類は連結部分を含む。連結部分には、完全に有効なメイタンシノイド類を特定の部位で放出しうる化学結合が含まれる。適切な化学結合は当技術分野で周知であり、これにはジスルフィド結合、酸不安定結合、光不安定結合、ペプチダーゼ不安定基およびエステラーゼ不安定基が含まれる。好ましいものはジスルフィド結合である。
【0166】
[162] 連結部分には、反応性化学基も含まれる。好ましい態様において、反応性化学基はジスルフィド結合連結部分を介してメイタンシノイドに共有結合することができる。
[163] 特に好ましい反応性化学基は、N−スクシンイミジルエステルおよびN−スルホスクシンイミジルエステルである。
【0167】
[164] 反応性化学基を有する連結基を含む特に好ましいメイタンシノイド類は、メイタンシノールおよびその類似体のC−3エステルであって、連結部分はジスルフィド結合を含み、反応性化学基はN−スクシンイミジルエステルまたはN−スルホスクシンイミジルエステルを含む。
【0168】
[165] メイタンシノイド類の多数の位置を連結部分の化学連結のための位置として使用できる。たとえば、ヒドロキシ基をもつC−3位、ヒドロキシメチルで修飾されたC−14位、ヒドロキシで修飾されたC−15位、およびヒドロキシ基をもつC−20位がすべて有用であると予想される。しかし、C−3位が好ましく、メイタンシノールのC−3位が特に好ましい。
【0169】
[166] 連結部分をもつメイタンシノールのエステルの合成を、ジスルフィド結合を含む連結部分に関連して記載するが、他のメイタンシノイド類を使用できるのと同様に、他の化学結合(前記)をもつ連結部分も本発明に関して使用できることは当業者に理解されるであろう。他の化学結合の具体例には、酸不安定結合、光不安定結合、ペプチダーゼ不安定基およびエステラーゼ不安定基が含まれる。USP 5,208,020(本明細書に援用する)の開示内容は、そのような結合をもつメイタンシノイド類の製造を教示している。
【0170】
[167] 反応性基を有するジスルフィド部分をもつメイタンシノイドおよびメイタンシノイド誘導体の合成は、USP 6,441,163および6,333,410、ならびに米国特許出願10/161,651に記載されており、それぞれを本明細書に援用する。
【0171】
[168] 反応性基を含むメイタンシノイド類、たとえばDM1を、抗体、たとえばDS6抗体と反応させて、細胞毒性コンジュゲートを製造する。これらのコンジュゲートは、HPLCまたはゲル濾過により精製できる。
【0172】
[169] そのような抗体−メイタンシノイドコンジュゲートを製造するための幾つかの優れた方法が、USP 6,333,410、ならびに米国特許出願09/867,598、10/161,651および10/024,290に提示されており、それぞれの全体を本明細書に援用する。
【0173】
[170] 一般に、水性緩衝液中の抗体溶液を、反応性基を有するジスルフィド部分をもつメイタンシノイドの過剰モルと共にインキュベートしてもよい。過剰のアミン(たとえばエタノールアミン、タウリンなど)の添加により、反応混合物を反応停止することができる。次いでメイタンシノイド−抗体コンジュゲートをゲル濾過により精製することができる。
【0174】
[171] 抗体分子当たり結合したメイタンシノイド類の個数は、252nmおよび280nmにおける吸光度の比を分光光度法で測定することにより判定できる。平均1〜10個のメイタンシノイド分子/抗体分子が好ましい。
【0175】
[172] 抗体とメイタンシノイド薬物のコンジュゲートを、それらが多様な不都合な細胞系の増殖を抑制する活性についてインビトロで評価することができる。たとえばヒト類表皮癌細胞系A−431、ヒト小細胞肺癌細胞系SW2、ヒト胸部腫瘍細胞系SKBR3、およびバーキットリンパ腫細胞系Namalwaなどの細胞系を用いて、これらの化合物の細胞毒性を容易に評価することができる。評価すべき細胞を本発明化合物に24時間曝露し、細胞の生存率を既知の方法による直接アッセイ法で測定することができる。次いでアッセイ結果からIC50値を計算できる。
【0176】
PEGを含む連結基
[173] PEG連結基を用いてメイタンシノイド類を細胞結合剤に結合させることもできる;米国特許出願10/024,290に記載。これらのPEG連結基は、水および非水性溶媒の両方に可溶性であり、1以上の細胞毒性物質を細胞結合剤に結合させるために使用できる。PEG連結基の例にはヘテロ二官能性PEGリンカーが含まれ、これはこのリンカーの反対側の末端において、一端では官能性スルフヒドリル基またはジスルフィド基により、他端では活性エステルにより、細胞毒性物質と細胞結合剤に結合する。
【0177】
[174] PEG連結基を用いる細胞毒性コンジュゲートの合成の一般例として、具体的な詳細について再び米国特許出願10/024,290を援用する。反応性PEG部分をもつ1以上の細胞毒性物質を細胞結合剤と反応させることにより合成を開始し、それぞれの反応性PEG部分の末端活性エステルを細胞結合剤のアミノ酸残基で置換して、PEG連結基により細胞結合剤に共有結合した1以上の細胞毒性物質を含む細胞毒性コンジュゲートを得る。
【0178】
タキサン類
[175] 本発明による細胞毒性コンジュゲート中に用いる細胞毒性物質は、タキサン類またはその誘導体であってもよい。
【0179】
[176] タキサン類は、癌の処置に広く用いられている天然の細胞毒性産物パクリタキセル(paclitaxel)(タキソール、Taxol)、および半合成誘導体ドセタキセル(docetaxel)(タキソテレ、Taxotere)の2種類の化合物を含む化合物群である。タキサン類は有糸分裂紡錘体毒であり、チューブリンの開重合を阻害して細胞死に至らせる。ドセタキセルおよびパクリタキセルは癌の処置に有用な薬剤であるが、正常細胞に対するそれらの非特異的毒性のため、それらの抗腫瘍活性には限界がある。さらに、パクリタキセルおよびドセタキセルなどの化合物自体は、細胞結合剤のコンジュゲート中に使用するのに十分なほど有効ではない。
【0180】
[177] 細胞毒性コンジュゲートの製造に使用するのに好ましいタキサンは、式(XI)のタキサンである:
【0181】
【化35】

【0182】
[178] 本発明の細胞毒性コンジュゲート中に使用できるタキサン類の合成方法、およびタキサン類を細胞結合剤、たとえば抗体にコンジュゲートさせる方法は、USP 5,416,064、5,475,092、6,340,701、6,372,738および6,436,931、ならびに米国特許出願10/024,290、10/144,042、10/207,814、10/210,112および10/369,563に詳述されている。
【0183】
CC−1065類似体
[179] 本発明による細胞毒性コンジュゲート中に用いられる細胞毒性物質は、CC−1065またはその誘導体であってもよい。
【0184】
[180] CC−1065は、ストレプトミセス・ゼレンシス(Streptomyces zelensis)の培養ブロスから単離された有効な抗腫瘍性抗生物質である。CC−1065は、慣用される抗癌薬、たとえばドキソルビシン、メトトレキセートおよびビンクリスチンより、インビトロで約1000倍有効である(B.K. Bhuyan et al., Cancer Res., 42, 3532-3537 (1982))。CC−1065およびその類似体は、USP 6,372,738、6,340,701、5,846,545および5,585,499に開示されている。
【0185】
[181] CC−1065の細胞毒効力は、そのアルキル化活性およびそのDNA結合活性またはDNAインターカレーション活性と相関する。これら2つの活性は、この分子の別個の部分にある。たとえばアルキル化活性はシクロプロパピロロインドール(CPI)サブユニット中に含まれ、DNA結合活性は2つのピロロインドールサブユニット中にある。
【0186】
[182] CC−1065は細胞毒性物質として、ある種の魅力的な特色をもつが、療法使用には限界がある。CC−1065をマウスに投与すると、遅延性肝毒性を生じ、12.5μg/kgの静脈内1回投与後、50日目に死亡した{V.L. Reynolds et al., J. Antibiotics, XXIX, 319-334 (1986)}。これは、遅延毒性を生じない類似体を開発する試みに拍車をかけ、CC−1065をモデルとしたより単純な類似体が報告された{M.A. Warpehoski et al., J. Med. Chem., 31, 590-603 (1988)}。
【0187】
[183] 他の系列の類似体では、CPI部分がシクロプロパベンゾインドール(CBI)部分で置換された{D.L.Boger et al., J. Org. Chem., 55, 5823-5833 (1990);D.L. Boger et al., BioOrg. Med. Chem. Lett., 1, 115-120 (1991)}。これらの化合物は、マウスにおいて遅延毒性を生じることなく親化合物の高いインビトロ力価を保持している。CC−1065と同様にこれらの化合物はアルキル化剤であり、DNAの副溝に共有結合様式で結合して、細胞死に至らせる。しかし、最も有望な類似体アドゼレシン(Adozelesin)およびカルゼレシン(Carzelesin)の臨床評価は、失望すべき結果をもたらした{B.F.Foster et al., Investigational New Drugs, 13, 321-326 (1996);I. Wolff et al., Clin. Cancer Res., 2, 1717-1723 (1996)}。これらの薬物はそれらの高い全身毒性のため、低い療法効果を示す。
【0188】
[184] CC−1065類似体の療法有効性は、腫瘍部位へ標的を定めて送達することによりインビボ分布を変化させ、標的外の組織に対する毒性を低下させ、これにより全身毒性を低下させることによって、大幅に改良できる。この目標を達成するために、CC−1065の類似体および誘導体と、腫瘍細胞を特異的にターゲティングする細胞結合剤のコンジュゲートが報告された{USP;5,475,092;5,585,499;5,846,545}。これらのコンジュゲートは一般に、インビトロでの高い標的特異的毒性、およびマウスのヒト腫瘍異種移植モデルにおける著しい抗腫瘍活性を示す{R.V.J. Chari et al., Cancer Res., 55, 4079-4084 (1995)}。
【0189】
[185] 本発明の細胞毒性コンジュゲート中に使用できるCC−1065類似体を合成する方法、およびこれらの類似体を細胞結合剤、たとえば抗体にコンジュゲートさせる方法は、USP 5,475,092、5,846,545、5,585,499、6,534,660および6,586,618、ならびに米国特許出願10/116,053および10/265,452に詳述されている。
【0190】
他の薬物
[186] メトトレキセート、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、メルファラン、マイトマイシンC、およびクロラムブシル、カリケアマイシン(calicheamicin)、ツブリシン(tubulysin)およびツブリシン類似体、デュオカルマイシン(duocarmycin)およびデュオカルマイシン類似体、ドラスタチンおよびドラスタチン類似体も、本発明のコンジュゲートの製造に適切である。これらの薬物分子も、中間キャリヤー分子、たとえば血清アルブミンにより、抗体分子に連結させることができる。たとえば米国特許出願09/740991に記載されるドキサルビシンおよびダウノルビシン化合物も、有用な細胞毒性物質であろう。
【0191】
療法用組成物
[187] 本発明は、下記のものを含む療法用組成物をも提供する:
(a)有効量の1種類以上の細胞毒性コンジュゲート、および
(b)医薬的に許容できるキャリヤー。
【0192】
[188] 本発明は、特定の細胞集団の増殖を阻害する方法であって、標的細胞または標的細胞を含む組織と、有効量の細胞毒性コンジュゲートとを、または細胞毒性コンジュゲートを単独でまたは他の細胞毒性物質もしくは療法薬と組み合わせて含む療法剤とを、接触させることを含む方法をも提供する。
【0193】
[189] 本発明は、本発明の療法用組成物を用いて癌を伴う対象を処置する方法をも含む。
[190] 細胞毒性コンジュゲートを、インビトロ力価および特異性について、これまでに記載された方法で評価することができる(たとえばR.V.J. Chari et al., Cancer Res., 55, 4079-4084 (1995)を参照)。抗腫瘍活性は、マウスのヒト腫瘍異種移植モデルにおいて、同様にこれまでに記載された方法で評価することができる(たとえばLiu et al., Proc. Natl. Acad. Sci. 93: 8618-8623 (1996)を参照)。
【0194】
[191] 医薬的に許容できる適切なキャリヤーは周知であり、当業者が臨床状況に基づいて決定できる。本明細書中で用いるキャリヤーには、希釈剤および賦形剤が含まれる。
[192] 適切なキャリヤー、希釈剤および/または賦形剤の例には、下記のものが含まれる:(1)ダルベッコのリン酸緩衝食塩水、pH約7.4、1〜25mg/mlのヒト血清アルブミンを含有するもの、または含有しないもの、(2)0.9%の食塩水(0.9% w/vの塩化ナトリウム(NaCl))、および(3)5%(w/v)のデキストロース;酸化防止剤、たとえばトリプタミン(tryptamine)および安定剤Tween 20を含有してもよい。
【0195】
[193] 特定の細胞集団の増殖を阻害する方法は、インビトロ、インビボ、またはエクスビボで実施できる。本明細書中で用いる増殖阻害は、短期間または長期間のいずれであっても、細胞の増殖を遅延させ、細胞の生存性を低下させ、細胞死に至らせ、細胞を溶解し、および細胞死を誘発することを意味する。
【0196】
[194] インビトロ使用の例には下記のものが含まれる:自己骨髄を同一患者に移植する前に罹患または悪性細胞を殺すための処理;骨髄を移植する前にコンピテントT細胞を殺して移植片対宿主疾患(GVHD)を防止するための処理;目的変異体以外の標的抗原を発現しないすべての細胞を殺すため、または不都合な抗原を発現する変異体を殺すための、細胞培養物の処理。
【0197】
[195] 臨床以外のインビトロ使用の条件は、当業者が容易に決定できる。
[196] 臨床エクスビボ使用の例は、癌の処置または自己免疫疾患の処置に際して自己移植前に骨髄から腫瘍細胞またはリンパ球様細胞を除去すること、あるいは移植片対宿主疾患(GVHD)を防止するために移植前に自己または同種異系骨髄または組織からコンピテントT細胞および他のリンパ球様細胞を除去することである。処理は、下記に従って実施できる。骨髄を患者または他の個体から採取し、次いで本発明の細胞毒性物質を添加した血清含有培地中でインキュベートする。濃度約10μM〜1pM、約30分〜約48時間、37℃である。濃度およびインキュベーション時間の厳密な条件、すなわち用量は、当業者が容易に決定できる。インキュベーション後、骨髄細胞を血清含有培地で洗浄し、既知の方法に従って静脈内注入により患者に戻す。患者が骨髄の採取時と処理済み細胞の再注入時との間に他の処置、たとえば切除化学療法または全身照射のコースを受ける場合、処置済み骨髄細胞を標準的な医療装置により液体窒素中に凍結保存しておく。
【0198】
[197] 臨床インビボ使用については、本発明の細胞毒性コンジュゲートを溶液として調製し、これを無菌性および内毒素濃度について検査する。細胞毒性コンジュゲート投与のための適切なプロトコルの例は、下記のとおりである。コンジュゲートを週1回、4週間、静脈内ボーラスとして毎週投与する。ボーラス用量を50〜100mlの生理食塩水中において投与し、これに5〜10mlのヒト血清アルブミンを添加してもよい。投与量は、静脈内に1回当たり10μg〜100mg(1日100ng〜1mg/kg)である。より好ましくは、投与量は50μg〜30mgである。最も好ましくは、投与量は1〜20mgである。4週間の処置後、患者は週1回基準の処置を継続して受けることができる。投与経路、賦形剤、希釈剤、投与量、時間などに関する具体的な臨床プロトコルは、当業者が臨床状況に基づいて決定できる。
【0199】
[198] 特定の細胞集団を殺すためのインビボ法またはエクスビボ法により処置できる病的状態の例には、たとえば下記を含めたいずれかのタイプの悪性疾患が含まれる:肺癌、胸部癌、結腸癌、前立腺癌、腎癌、膵臓癌、卵巣癌、子宮頸癌およびリンパ器官の癌、骨肉腫、滑膜癌、CA6を発現する肉腫または癌、ならびにCA6グリコトープを主に発現する他の癌であってまだ判定されていないもの;自己免疫疾患、たとえば全身性狼瘡、リウマチ様関節炎、および多発硬化症;移植片拒絶、たとえば腎移植片拒絶、肝移植片拒絶、肺移植片拒絶、心臓移植片拒絶、および骨髄移植片拒絶;移植片対宿主疾患;ウイルス感染症、たとえばmV感染症、HIV感染症、エイズなど;ならびに寄生虫感染症、たとえばジアルジア症、アメーバ症、住血吸虫症、ならびに当業者が判定する他の疾患。
【0200】
キット
[199] 本発明には、たとえば前記の細胞毒性コンジュゲートおよび特定の細胞タイプを殺すのにその細胞毒性コンジュゲートを使用するための指示を含むキットも含まれる。指示には、細胞毒性コンジュゲートをインビトロ、インビボまたはエクスビボで使用するための指示が含まれる。
【0201】
[200] 一般にキットは細胞毒性コンジュゲートを収容するためのコンパートメントを備えている。細胞毒性コンジュゲートは、キットに収容できる凍結乾燥した形、液状または他の形状であってよい。キットには、キット中の指示に述べられた方法を実施するのに必要な他の構成部材、たとえば凍結乾燥粉末を再構成するための無菌溶液、患者に投与する前に細胞毒性コンジュゲートと組み合わせる他の薬剤、およびコンジュゲートを患者に投与するのを補助する用具を収容してもよい。
【0202】
他の態様
[201] 本発明はさらに、研究または診断用途に使用するためにさらに標識したモノクローナル抗体、ヒト化抗体、およびそのエピトープ結合フラグメントを提供する。好ましい態様において、標識は放射性標識、発蛍光団、発色団、造影剤または金属イオンである。
【0203】
[202] 癌を伴う疑いのある対象に標識抗体またはそのエピトープ結合フラグメントを投与し、対象の体内における標識の分布を測定またはモニターする診断法も提供される。
【実施例】
【0204】
実施例
[203] 本発明の広い範囲は以下の実施例を参照すると最も良く理解される。これらは本発明を特定の態様に限定するためのものではない。
【0205】
実施例1:フローサイトメトリー結合アッセイによる抗原陽性および陰性細胞系の同定
[204] フローサイトメトリー分析を用いて、DS6エピトープであるCA6を細胞表面に局在化させた。ヒト細胞系は下記のもの以外をアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)から入手した:OVCAR5細胞(Kearse et al., Int. J. Cancer 88(6): 866-872 (2000))、OVCAR8およびIGROV1細胞(M. Seiden, Massachusetts General Hospital)。すべての細胞を、4mMのL−グルタミン、50U/mlのペニシリン、50μg/mlのストレプトマイシン(Cambrex Bio Science、メーン州ロックランド)および10% v/vのウシ胎仔血清(Atlas Biologicals、コロラド州フォート・コリンズ)を補充したRPMI 1640(以下、培地と呼ぶ)で増殖させた。細胞を37℃、5%CO、加湿インキュベーター内に維持した。
【0206】
[205] 細胞(1〜2×10−5個/ウェル)を氷上で3〜4時間、96ウェルプレート内でFACS緩衝液(2%のヤギ血清、RPMI)中に調製した系列希釈濃度のDS6抗体と共にインキュベートした。細胞を卓上型遠心機により1500rpm、4℃で5分間遠心した。培地を除去した後、次いでウェルに150μlのFACS緩衝液を再充填した。次いでこの洗浄工程を繰り返した。FITC標識したヤギ抗マウスIgG(Jackson Immunoresearch)をFACS緩衝液に1:100希釈し、細胞と共に氷上で1時間インキュベートした。信号の光減退を防ぐために、プレートに箔で蓋をした。2回の洗浄後、細胞を1%ホルムアルデヒドで固定し、フローサイトメーターにより分析した。
【0207】
[206] 腫瘍免疫組織化学から予想されたように、卵巣、胸部、子宮頸部および膵臓に由来する細胞系には主にCA6エピトープがみられた(表3)。しかし、他の腫瘍タイプの若干の細胞系が示すCA6発現は限定されていた。DS6抗体は135.6pMの見掛けKで結合する(PC−3細胞において、表3)。抗原陽性細胞における結合曲線(図1)の最大平均蛍光(表3)は、抗原の相対密度を示唆する。
【0208】
【表4】

【0209】
平均最大相対平均蛍光
実施例2:DS6エピトープの特性解明
[207] タンパク質分解(プロナーゼおよびプロテイナーゼK)および/または糖分解(ノイラミニダーゼおよび過ヨウ素酸)処理により消化したCA6陽性細胞溶解物(Caov−3)のドットブロットをイムノブロッティングすることにより、DS6の抗原CA6の特性を分析した。陽性対照として、多様なタイプのエピトープを認識する他の抗体を、抗原陽性細胞系の溶解物について試験した(Caov−3とCM1;Colo205とC242;SKMEL28とR24)。CM1は、Muc1の可変数タンデム反復ドメイン(VNTR)のタンパク質エピトープを認識する抗体であり、したがってタンパク質エピトープについての対照となる。C242は、Muc1上の新規な結腸直腸癌特異的なシアル酸依存性グリコトープ(CanAg)に結合し、タンパク質上のグリコトープについての対照となる。R24は、黒色腫に特異的なGD3ガングリオシドに結合し、したがって非タンパク質骨格上のグリコトープについての対照となる。
【0210】
[208] Caov−3、Colo205およびSKMEL28細胞を15cmの組織培養プレートに接種した。培地(30mL/プレート)を細胞溶解前日に交換した。改変RIPA緩衝液(50mMのトリス−HCl、pH7.6、150mMのNaCl、5mMのEDTA、1%のNP40、0.25%のデオキシコール酸ナトリウム)、プロテアーゼ阻害薬(PMSF、ペプスタチンA、ロイペプチン、およびアプロチニン)、およびPBSを、氷上で予冷した。培地をプレートから吸引した後、細胞を10mlの冷却PBSで2回洗浄した。以後のすべての工程を氷上および/または4℃の低温室内で実施した。最後のPBS洗浄後、細胞を1〜2mLの溶解用緩衝液(RIPA緩衝液に新たにプロテアーゼ阻害薬を添加して、最終濃度1mMのPMSF、1μMのペプスタチンA、10μg/mlのロイペプチン、および2μg/mlのアプロチニンにしたもの)中で溶解した。溶解物を細胞リフターによりプレートから掻き取り、懸濁液を18G注射針で吸引排出(5〜10回)することにより摩砕処理した。溶解物を10分間回転させ、次いで微量遠心機により最大速度(13K rpm)で10分間遠心した。ペレットを廃棄し、次いで上清をBradfordタンパク質アッセイキット(Biorad)によりアッセイした。
【0211】
[209] 溶解物(2μl)を、ピペットで乾燥0.2μmニトロセルロース膜上へ直接滴下した。スポットを約30秒間風乾した。それぞれが1個のスポットを含むように、膜を細断した。スポットを、プロナーゼ(1mg/mlの酵素、50mMのトリス、pH7.5、5mMのCaCl)、プロテイナーゼK(1mg/mlの酵素、50mMのトリス、pH7.5、5mMのCaCl)、ノイラミニダーゼ(20mU/mlの酵素、50mMの酢酸ナトリウム、pH7.5、5mMのCaCl、100μg/mlのBSA)、または過ヨウ素酸(20mM、0.5Mの酢酸ナトリウム、pH5)の存在下に37℃で1時間インキュベートした。試薬はRoche(酵素)およびVWR(過ヨウ素酸)から購入された。膜をT−TBS洗浄用緩衝液(0.1%Tween 20、1×TBS)中で洗浄し(5分)、遮断用緩衝液(3%のBSA、T−TBS)中、室温で2時間遮断し、遮断用緩衝液中2μg/mlの第1抗体(すなわちDS6、CM1、C242、R24)と共に4℃で一夜インキュベートした。膜をT−TBS中で5分間、3回洗浄し、次いでHRPコンジュゲートしたヤギ抗マウス(またはヒト)IgG第2抗体(Jackson Immunoresearch;遮断用緩衝液中に1:2000希釈)中、室温で1時間インキュベートした。これらのイムノブロットを3回洗浄し、ECLシステム(Amersham)により現像した。
【0212】
[210] 消化した対照溶解物のイムノブロット(図2)は、CM1信号がタンパク質エピトープを認識する抗体について予想されたとおりタンパク質分解処理により破壊されたが、糖分解消化物は影響を受けないことを示した。C242信号は、タンパク質上のグリコトープを認識する抗体について予想されたとおり、タンパク質分解または糖分解のいずれの処理によっても破壊された。タンパク質分解処理により影響されなかったR24信号は、ガングリオシドを認識する抗体について予想されたとおり、ノイラミニダーゼまたは過ヨウ素酸処理により破壊された。消化したCaov−3溶解物のドットブロットのDS6イムノブロットは、タンパク質分解および糖分解のいずれの化合物による処理においても信号消失を示した。したがって、C242と同様に、DS6はタンパク質コア上の炭水化物エピトープに結合する。さらに、DS6イムノブロットの信号はノイラミニダーゼ処理に感受性であった。したがって、CanAgと同様に、CA6はシアル酸依存性グリコトープである。
【0213】
[211] CA6の炭水化物性を確認するために、Caov−3溶解物をPVDF膜にスポットし、化学的脱グリコシル剤トリフルオロメタンスルホン酸(TFMSA)により、窒素下に周囲温度で5分間処理した。ブロットをT−TBSで洗浄し、CM1またはDS6でイムノブロッティングした(図3)。DS6信号は酸処理に際して破壊され、CA6がグリコトープである証拠がさらに得られた。TFMSA処理に際してCM1信号が増強したのは、この酸処理がフィルター上のタンパク質に影響を及ぼさないことを指摘し、かつ糖分解処理はCM1が認識するタンパク質エピトープを露出させたことを示唆する。
【0214】
[212] CA6が存在する炭水化物の構造をさらに解明するために、ドットブロットをN−グリカナーゼ、O−グリカナーゼおよび/またはシアリダーゼで消化した(図4)。Caov−3細胞溶解物(100μg、30μl)を100℃で5分間、SDSおよびβ−メルカプトエタノールを含有する変性用緩衝液(Glyko)2.5μlと共にインキュベートした。変性した溶解物を次いで1μlのN−グリカナーゼ、O−グリカナーゼおよび/またはシアリダーゼA(Glyko)により37℃で1時間消化した。消化した溶解物を次いでニトロセルロース上にスポットし(2μl)、前記と同様にイムノブロッティングした。
【0215】
[213] N−グリカナーゼはDS6イムノブロット信号に明らかな影響を及ぼさなかった。しかし、シアリダーゼで消化した試料は信号を発生しなかった。O−グリカナーゼはシアリダーゼによる前処理なしではシアル化O−結合炭水化物を消化できないので、O−グリカナーゼ単独で処理した試料のDS6信号には影響がなかった。これに対し、N−グリカナーゼは、活性にとってグリコシド酵素による前処理を必要としない。N−グリカナーゼ処理がDS6信号に影響を及ぼさないという事実は、CA6エピトープがシアル化O−結合炭水化物鎖上に存在する可能性が最も高いことを示唆する。
【0216】
実施例3:CA6エピトープが存在する抗原の解明
[214] CA6シアログリコトープが存在する抗原を同定するために、DS6免疫沈降物をSDS−PAGEおよびウェスタンブロット法により分析した。細胞溶解物の上清(1mL/試料;3〜5mgのタンパク質)を、4℃で1〜2時間回転させながら、1mlのRIPA緩衝液で平衡化したプロテインGビーズ(30μl)により予備清澄化した。以後のすべての工程を氷上および/または4℃の低温室内で実施した。予備清澄処理済みビーズを微量遠心機で短時間(2〜3秒)遠心した。予備清澄化した上清を新たな試験管に移し、2μgのDS6と共に回転させながら一夜インキュベートした。新たな平衡化したプロテインGビーズ(30μl)を溶解物に添加し、回転させながら1時間インキュベートした。このビーズ−溶解物懸濁液を微量遠心機で短時間遠心し、所望によりこの免疫沈降後溶解物の試料を採取した。ビーズを1mlのRIPA緩衝液で5〜10回洗浄した。
【0217】
[215] 免疫沈降したDS6試料を、次いで30μlのノイラミニダーゼ(20mUのノイラミニダーゼ(Roche)、50mMの酢酸ナトリウム、pH5、5mMのCaCl、100μg/mlのBSA)または30μlの過ヨウ素酸(20mMの過ヨウ素酸(VWR)、0.5Mの酢酸ナトリウム、pH5)により37℃で1時間消化した。次いでそれらを30μlの2×試料装填用緩衝液(β−メルカプトエタノールを含有)に再懸濁した。ビーズを5分間煮沸し、装填用緩衝液の上清を4−12%または4−20%トリス−グリシンゲル(Invitrogen)に装填した。ゲルをLaemli電気泳動用緩衝液中、125vで1.5時間展開した。Mini Transブロット転写装置(Biorad)により、20mAで一夜、ゲル試料を0.2μmのニトロセルロース膜(Invitrogen)上へ転写した。前記の実施例2に記載したように、膜をDS6でイムノブロッティングした。
【0218】
[216] あるいは、免疫沈降したビーズをまず変性させ、次いでN−グリカナーゼ、O−グリカナーゼおよび/またはシアリダーゼA(Glyko)により酵素消化した。ビーズを27μlのインキュベーション用緩衝液および2μlの変性溶液(Glyko)に再懸濁し、100℃で5分間インキュベートした。室温に冷却した後、界面活性剤溶液(2μl)を添加し、試料を1μlのN−グリカナーゼ、O−グリカナーゼおよび/またはシアリダーゼAと共に37℃で4時間インキュベートした。5×試料装填用緩衝液(7μl)を添加した後、試料を5分間煮沸した。試料を前記と同様にSDS−PAGE処理し、イムノブロッティングした。
【0219】
[217] DS6は、抗原陽性細胞溶解物中にみられる>250kDaのタンパク質バンドを免疫沈降させる(図5A、BおよびC)。ある細胞系(すなわちT−47D)ではダブレットがみられる。この>250kDaのバンドは、ノイラミニダーゼまたは過ヨウ素酸で処理したCaov−3免疫沈降物中では破壊されており(図5AおよびB)、これはCA6エピトープがこの>250kDaのバンド上にあることを示唆する。>250kDaのバンドは免疫沈降物のN−グリカナーゼ処理に不感受性であることも示され、これはCA6がO−結合炭水化物上にあることと一致する(図5F)。250kDaのバンドがCA6抗原であることをさらに支持するものは、DS6の抗原が陰性である細胞からはDS6はそのようなバンドを免疫沈降しないという事実である(図5DおよびE)。
【0220】
[218] 幾つかの系列の証拠から、CA6抗原はMuc1であることが示唆された。分子量が高く、O−結合炭水化物特異的な糖分解酵素に対して感受性であるので、CA6抗原はムチンであると思われた。ムチンの過剰発現は特に胸部および卵巣の腫瘍において解明されており、DS6の主な腫瘍反応性と一致する。さらに、CA6はCanAg(Muc1上のシアログリコトープ)と同様に過ヨウ素酸沈降に不感受性であり、これはCA6抗原が著しくO−グリコシル化されていることを示唆する。あるDS6発現細胞系においてDS6が>250kDaのダブレットを免疫沈降させたという所見は、CA6がMuc1であることを示唆した。ヒトMuc1の特色は、タンデム反復配列の個数が異なる2つのMuc1対立遺伝子の存在により分子量の異なる2つのMuc1タンパク質が生成することである。
【0221】
[219] CA6がMuc1上にあるかどうかを調べるために、Caov−3からのDS6免疫沈降物をSDS−PAGE処理し、DS6またはMuc1 VNTR抗体CM1でイムノブロッティングした。図6Aから分かるように、CM1はDS6が免疫沈降させた>250kDaのバンドと強く反応する。図6Bでは、HeLa細胞溶解物からのDS6およびCM1の免疫沈降物が、DS6またはCM1のいずれで免疫沈降させた場合にも同じ>250kDaのダブレットを示す。これらの結果は、CA6エピトープが実際にMuc−1タンパク質上にあることを指摘する。HeLa(およびT−47D)細胞にみられるDS6ダブレットは、タンデム反復配列の個数が異なる別個の対立遺伝子によりMuc−1発現が支配されているという事実により説明できる。
【0222】
[220] CM1およびDS6は、同じMuc−1タンパク質ではあるが異なるエピトープに結合する。Caov−3溶解物のドットブロットをトリフルオロメタンスルホン酸(TFMSA)で化学的に脱グリコシルすると、DS6信号が破壊された(図3)。しかし、この同じ処理によりCM1信号は増強した。脱グリコシルは、CM1抗体に対する隠れたエピトープを露出させた可能性がある。さらに、DS6およびCM1のフローサイトメトリー結合の結果を比較すると(表4)、CA6エピトープはMuc1を発現するすべての細胞上に存在するわけではないことが立証される。高濃度のMuc1 CanAgシアログリコトープを発現することが知られている細胞系Colo205(表3)にCA6エピトープが存在しない点に注目すると、興味深い。
【0223】
【表5】

【0224】
MMF=最大平均相対蛍光
実施例4:放出されたCA6エピトープの定量分析
[221] CA6エピトープは、多くの癌患者において血流中へ放出されることが知られている分子Muc1上に存在するので、そのような濃度がDS6抗体療法の妨げとなるかを判定するために定量操作を行った。循環抗体が抗原に結合すると、血中から免疫複合体が急速にクリアランスされると考えられる。抗体投与量の有意部分が急速に循環から排除されると、腫瘍に到達する量が減少し、抗体療法薬の抗腫瘍活性が低下する可能性がある。有効性の高い細胞毒性化合物に抗体をコンジュゲートさせると、コンジュゲートの急速なクリアランスは非特異的毒性を高める可能性がある。したがって、抗体−低分子薬物コンジュゲート、たとえばDS6−DM1の場合、高濃度の放出抗原が抗腫瘍効果を低下させ、かつ用量を制限する毒性を高める可能性があると予想された。
【0225】
[222] 抗体療法薬についての最近の臨床試験により、放出抗原濃度が薬物動態に及ぼす影響に関する情報が得られた。たとえばher2/neuを発現する転移性乳癌の治療に用いられる抗体トラスツヅマブ(ハーセプチン、Herceptin)を用いた臨床試験で、Her2/neu濃度が500ng/mL未満の場合はトラスツヅマブクリアランスの薬物動態は変化しないことが示された(Pegram et al., J. Clin. Oncol. 16(8): 2659-71 (1998))。放出されたHer2/neuの分子量が110,000ダルトンであると仮定すると、4.5nM未満のモル濃度の放出Her2/neuは薬物動態にほとんど影響しないと思われる。
【0226】
[223] 他の例では、カンツヅマブメルタンシン(cantuzumab mertansine)(huC242−DM1)を用いた臨床試験により、処理前放出CanAg(C242のエピトープ)濃度と抗体クリアランスの薬物動態に相関性がないことが指摘された(Tolcher et al., J. Clin. Oncol. 21(2): 211-22 (2003))。DS6が認識するCA6エピトープと同様に、CanAgエピトープはMuc1上にあるユニークな腫瘍特異的O−結合シアログリコトープである。しかし、CanAgエピトープの不均一性のため、モル量で定量するのは困難である。一般的な集団において、Muc1対立遺伝子の長さは可変数タンデム反復(VNTR)ドメインのタンデム反復配列の個数に応じて異なる。各タンデム反復配列中に、O−結合グリコシル化のための部位が幾つかある。CanAg発現の複雑さに加えて、固有のグリコシルトランスフェラーゼ活性が細胞毎に異なる。したがって、一人の患者においてすら、Muc1分子当たり広範なCanAgエピトープの可能性がある。さらに、Muc1分子当たりのCanAgエピトープの比率は、患者集団全体で異なるであろう。このため、血清試料中へ放出されたCanAgをサンドイッチELISAにより測定する。この場合、CanAgエピトープをもつ放出Muc1をC242で捕獲し、ビオチニル化C242/ストレプトアビジンHRP系により検出する。放出CanAgを、Muc1のモル濃度ではなく、血清のml当たりのエピトープ数に比例する標準単位(U)で定量する。同様に、放出CA6エピトープの定量についても類似の状況が生じる。これに対し、トラスツズマブについては放出her2/neu分子当たり1つのエピトープしかなく、放出抗原の定量は大幅に簡略化される。
【0227】
[224] 放出CA6エピトープ濃度と、トラスツズマブおよびカンツヅマブメルタンシンを用いた臨床試験でみられるものとの相関性を調べるために、Muc1上のシアログリコトープのように複雑な放出エピトープのモル濃度を求めるための方法を開発した。まず、DS6のための簡単なサンドイッチELISAアッセイ法を確立した。このアッセイ法の概念を図7Aに示す。DS6を用いて、CA6エピトープをもつMuc1を捕獲した。各Muc1分子が複数のCA6エピトープをもつので、ビオチニル化DS6もトレーサー抗体として用いた。捕獲されたCA6に結合したビオチニル化DS6を、基質としてのABTSを用いてストレプトアビジン−HRPにより検出した。卵巣癌患者の血清から、または乳癌患者において放出Muc1をモニターするために用いる市販のMuc1試験キット(CA15−3)より得た標準品から、CA6エピトープを捕獲した。DS6の単位/mlをCA15−3標準品の単位/mlと等しく任意に設定した。
【0228】
[225] 図7Bに、CA15−3標準品を用いたDS6サンドイッチELISAの結果を示す。得られた曲線は、CA15−3アッセイにおいてCA15−3標準品を用いて得たものときわめて類似する。DS6の単位/mlをCA6のモル濃度に換算するためには、信号をDS6のピコグラム数に換算するビオチニル化DS6標準曲線が必要である。CA6エピトープとビオチニル化DS6抗体の化学量論的量を1:1、ビオチニル化DS6の分子量を160,000ダルトンと仮定して、試料の添加体積当たり捕獲されたCA6のモル数を計算することができる。
【0229】
[226] 図8AおよびBには、ビオチニル化DS6の標準曲線を作成するための2つの別法を表わす。図8Aでは、ヤギ抗マウスIgGポリクローナル抗体を用いてビオチニル化DS6を捕獲し、これを図7に示したサンドイッチELISAに用いたものと同じ方法で検出する。図8Bに示した方法では、ビオチニル化DS6を直接にELISAプレート上に配置し、図8Aと同様に検出する。図8Cにみられるように、各方法で作成したビオチニル化DS6標準曲線は良く一致する。
【0230】
[227] 表5に、多様な放出抗原についての卵巣癌患者の血清試料の分析を示す。一般にCA125 ELISAを用いて放出CA125の単位/mlを測定することにより、卵巣癌患者の治療をモニターする。血清試料についてCA125状態を求めた。一般にCA15−3 ELISAを用い、DS6が認識するものとは異なるエピトープを認識する抗体の捕獲および検出を利用して放出Muc1の単位/mlを測定することにより、乳癌患者をモニターする。表5では、卵巣癌患者の血清試料においてCA15−3を測定する。
【0231】
【表6】

【0232】
市販のELISAキットにより測定
市販のCA15−3標準品により測定(1 CA15−3 U=1 DS6 U)
ヤギ抗マウスIgGおよびビオチン−DS6標準曲線
ビオチン−DS6標準曲線
[228] 表5に報告したCA15−3値については、CanAg Diagnosticsから市販されるCA15−3エンザイムイムノアッセイキットを用いた。DS6の単位/mlについては、CA15−3標準品(CanAg Diagnosticsから市販されるCA15−3エンザイムイムノアッセイキットより)をDS6サンドイッチELISAに用いて標準曲線を作成した。DS6の単位/mlをCA15−3の単位/mlと等しく任意に設定した。最後の2欄において、放出CA6のピコモル濃度(pM)は、図8Cに示したビオチニル化DS6の標準曲線を用いて計算された。
【0233】
[229] CanAg濃度の定量分析について、CanAg血清濃度はカンツヅマブメルタンシン臨床試験に参加した患者について処置前に報告されたものである(Tolcher et al., J. Clin. Oncol. 21(2): 211-22 (2003))。DS6について記載したものと同様なELISAアッセイにより、CanAg標準品を用いてCanAg標準曲線を作成した。C242を用いてCanAg標準品を捕獲した。捕獲したCanAgの検出は、ビオチニル化C242トレーサーを用い、続いて基質としてのABTSを用いてストレプトアビジン−HRPで現像することにより達成された。ビオチニル化DS6について行ったようにビオチニル化−C242標準曲線を作成し、循環CanAgエピトープの単位/mlをモル濃度に換算することができた。表6に、カンツヅマブメルタンシン臨床試験患者からのCanAg濃度および対応する循環CanAgモル濃度計算値を報告する。
【0234】
【表7】

【0235】
サンドイッチELISAにより測定した循環CanAgの処理前濃度
ヤギ抗マウスIgGおよびビオチン−C242標準曲線
ビオチン−C242標準曲線
[230] 卵巣癌患者における放出CA6のpM濃度とCanAg陽性癌患者における放出CanAgについて計算したものとを比較すると、一般に放出CA6濃度は放出CanAg濃度と類似することが示される。さらに、卵巣癌患者の血清試料16中2つだけが4.5nMより高い濃度をもつ(信号が標準曲線の範囲外にある血清試料5および9);これは、これより高いとHer2/neu陽性乳癌患者についての臨床試験でハーセプチンの薬物動態に変化がみられた濃度である。4.5nMより高いCanAg濃度は、臨床試験患者37人中3人のみにみられた。この臨床試験では、放出CanAg濃度とより急速なカンツヅマブメルタンシンクリアランスの相関性はなかった。ただし、最高CanAg濃度(31240U/ml)の患者は、輸注後8時間しかサンプリングしなかった。これらの結果は、Muc1の特定のエピトープ、たとえばCA6およびCanAgは癌患者において放出されるが、抗体療法処置を妨げる濃度で放出されるわけではないことを示す。
【0236】
実施例6:ネズミDS6抗体可変部のクローニング
[231] ネズミモノクローナル抗体、たとえばDS6は、ヒトの免疫系により異物と認識されるので、臨床設定での有用性に限界がある。患者はヒト抗ネズミ抗体(HAMA)を急速に発現し、その結果ネズミ抗体は急速にクリアランスされる。このため、ネズミDS6(muDS6)の可変部をリサーフェシングしてヒト化DS6(huDS6)抗体を作製した。
【0237】
[232] ネズミDS6抗体可変部をRT−PCRによりクローニングした。DS6ハイブリドーマ細胞の周密T175フラスコから、Quiagen RNeasy miniprepキットにより全RNAを精製した。RNA濃度をUV分光光度法により測定し、4〜5μgの全RNAについて、Gibco Superscript IIキットおよびランダム四量体プライマーを用いてRT反応を行った。
【0238】
[233] 縮重プライマーを用い、Wang Z et al., J. Immunol Methods, 1月13日; 233 (1-2): 167-77 (2000)に記載の方法に従って、PCR反応を実施した。縮重PCR反応にはRT反応ミックスをそのまま使用した。3’側L鎖プライマー、HindKL
【0239】
【化36】

【0240】
および3’側H鎖プライマー、BamIgG1
【0241】
【化37】

【0242】
を用い、5’末端に対するPCRプライマーは、L鎖についてはSac1MK
【0243】
【化38】

【0244】
H鎖についてはEcoR1MH1
【0245】
【化39】

【0246】
とEcoR1MH2
【0247】
【化40】

【0248】
の等量ミックスであった(混合塩基:H=A+T+C、S=G+C、Y=C+T、K=G+T、M=A+C、R=A+G、W=A+T、V=A+C+G、N=A+T+G+C)。
[234] 10%DMSOを補充した以外は、PCR反応は標準的であった(50μlの反応ミックスが、最終濃度1×の反応用緩衝液(ROCHE)、各2mMのdNTP、各1mMのプライマー、2μlのRT反応体、5μlのDMSO、および0.5μlのTaq(ROCHE)を含有)。MJ researchサーモサイクラーにより、Wang Z et al.,(J. Immunol Methods, 1月13日; 233 (1-2): 167-77 (2000))から応用したプログラムを用いてPCR反応を実施した:1)94℃、3分;2)94℃、15秒;3)45℃、1分;4)72℃、2分;5)工程2に戻って29回;6)最終延長工程72℃、10分で終了。PCRプライマーにより作製したPCR生成物を、制限酵素によりpBluescript II SK+(Stratagene)中へクローニングした。Seqwright配列決定サービスによりH鎖およびL鎖クローンの配列を決定した。
【0249】
[235] 5’末端cDNA配列を確認するために、さらにPCRおよびクローニングを行った。縮重PCRクローンから決定したDS6のL鎖およびH鎖cDNA配列をNCBI Blast検索フェブサイトに入力し、提示したシグナル配列をもつネズミ抗体配列を保存した。これらのシグナルペプチドから、関連DNA配列間で保存されている延長配列を用いてPCRプライマーを設計した。EcoR1制限部位をリーダー配列プライマー(表7)に付加し、これらを前記のRT−PCR反応に用いた。
【0250】
【表8】

【0251】
[236] ポリメラーゼ生成配列エラーの可能性を同定して回避するために、幾つかの個々のL鎖およびH鎖クローンの配列を決定した。L鎖およびH鎖両方のRT−PCRクローンについて1つの配列のみが得られた。これらの配列は、ネズミDS6 L鎖およびH鎖配列を増幅してシグナル配列に延長することができるプライマーを設計するのに十分であった。これらのフォローアップPCR反応から得た後続クローンにより、最初の縮重プライマーにより変化した可変部の5’末端配列が確認された。種々のcDNAクローンからの累積結果により、図9に示す最終的なネズミDS6 L鎖およびH鎖配列が得られた。KabatおよびAbM定義を用いて、3つのL鎖およびH鎖CDRを同定した(図9および10)。NCBI IgBlastデータベースの検索により、muDS6抗体のL鎖可変部はネズミIgV?ap4生殖系列遺伝子に由来する可能性が最も高く、H鎖可変部はネズミIgVh J558.41生殖系列遺伝子に由来する可能性が最も高いことが示された(図11)。
【0252】
実施例7:DS6抗体の可変部表面残基の決定
[237] Pedersenら(1994)およびRoguskaら(1996)が記載した抗体リサーフェシング法は、ネズミ抗体可変配列の表面残基を推定することから始まる。表面残基は、その全表面積の少なくとも30%に水分子が到達できるアミノ酸と定義される。muDS6の表面残基を見いだすための構造が未決定であったので、本発明者らは10種類の抗体を127の抗体構造ファイル中で最も相同性の高い配列とアラインさせた(図12)。アラインしたこれらの配列について、各Kabat位置に対する溶媒アクセシビリティーを平均した(図13AおよびB)。
【0253】
[238] 平均アクセシビリティー25〜35%の表面位置について、両側をフランキングする2つの同一残基を含む抗体サブセットの比較により、第2ラウンドの分析を行った(図13AおよびB)。第2ラウンドの分析後、muDS6のH鎖についての推定表面残基21個は23個に増加し、30%より高い推定表面アクセシビリティーをもつ残基のリストにTyr3およびLys23が加えられた。本発明者らがリサーフェシングした大部分の抗体においてH鎖CDR1のKabat定義を用いるが、DS6については計算に際して故意にではなくAbM定義を用いたので、H鎖残基T28は他の場合と同様なフレームワーク表面残基と定義されなかった。第2ラウンドの分析Ala80の表面アクセシビリティーが30.5%から27.8%に低下したので、L鎖表面位置の数は16から15に減少した。合わせて、muDS6のH鎖およびL鎖可変部配列は38個の推定表面アクセシブルフレームワーク残基をもつ。
【0254】
実施例8:ヒト抗体の選択
[239] ネズミDS6可変部の表面位置を、Kabatデータベースにおいてヒト抗体配列の対応する位置と比較した(Johnson G., Wu TT. Nucleic Acids Res. 1月1日; 29 (1): 205-6 (2001))。抗体データベース処理ソフトウェア(Searle, 1998)を用いて、天然H鎖およびL鎖ヒト抗体対から表面残基を抽出してアラインした。特にCDRから5Å以内にある位置を考慮して最も同一性の高い表面残基をもつヒト抗体可変部表面を、ネズミDS6抗体可変部表面残基と交換するために選択した。
【0255】
実施例9:キメラおよびヒト化抗体の発現ベクター
[240] H鎖およびL鎖対合配列を単一の哺乳動物発現ベクター中へクローニングした。ヒト可変配列に対するPCRプライマーにより、ヒトシグナル配列をpBluescript IIクローニングベクター中に付加できる制限部位を形成した。次いで、それぞれL鎖またはH鎖についてEcoR1およびBsiWIまたはHindIIIおよびApaIを用いて、哺乳動物発現プラスミド中へこれらの可変配列をクローニングした(図14)。L鎖可変配列をヒトIgKappa定常部上へ読み枠を一致させてクローニングし、H鎖可変配列をヒトIgGamma1定常部配列中へクローニングした。最終発現プラスミドにおいて、ヒトCMVプロモーターはL鎖およびH鎖両方のcDNA配列の発現を誘発する。
【0256】
実施例10:DS6活性に負の影響を及ぼす可能性のある残基の同定
[241] 現在では大部分のヒト化に際し、問題となる可能性のある残基としてCDRに近接する残基を同定するために対象抗体の分子モデルを構築する。リサーフェシングした抗体の数が増えており、問題の想定に際して歴史的経験から作業することは少なくともモデル構築と同程度に有効であるので、DS6については分子モデルを構築しなかった。その代わりにネズミDS6表面残基を従来リサーフェシングされた抗体のものと比較し、抗体の結合活性に対する影響について低リスク残基から高リスク残基までを同定した。
【0257】
[242] 従来のヒト化から入手できる解明済み抗体構造および分子モデルの両方において、類似の残基セットについてCDRから5Å以内にあるものを繰り返し同定する。このデータを用いて、CDRに近接していると思われるネズミDS6残基、およびおそらく5Å以内にあるものを、表1に挙げる。これらの位置の多くも従来のヒト化に際して交換されたが、H鎖の位置74のみはこれまで結合活性を失わせた。ネズミ抗体の結合活性を保存するために、huC242およびhuB4の両方においてこの位置のネズミ残基は保持された。他方、ヒト化6.2G5C6においては、この同一位置を対応するヒト残基に交換しても活性は失われなかった(6.2G5C6は抗IGF1−R抗体であり、しばしば単に抗C6と呼ばれる)。表1の残基はいずれもヒト化抗体において問題を提起する可能性があるが、H鎖残基P73はこの位置における従来の経験のため特に問題である。
【0258】
実施例11:最も相同性の高いヒト表面の選択
[243] muDS6をリサーフェシングするための候補となるヒト抗体表面を、Kabat抗体配列データベースからSRソフトウェアを用いて求めた。このソフトウェアは、抗体データベースに対して特定の残基位置のみを検索するためのインターフェースを提供する。天然対を保存するために、L鎖およびH鎖両方の表面残基を相互比較した。配列同一性をランク付けするために、Kabatデータベースから最も相同性の高いヒト表面をアラインした。SR Kabatデータベースソフトウェアによりアラインしたトップ3つの表面を表2に示す。次いでこれらの表面を比較して、表1で同定した残基にするために必要な交換が最少であるのはどのヒト表面であるかを同定した。抗Rh(D)抗体28E4は表面残基交換の必要な数が最も少なく(合計11)、問題となる可能性のある残基のリストに含まれるのはこれらのうち3個のみである。28E4抗体は最も相同性の高いヒト表面を提供するので、muDS6をリサーフェシングするための最良の候補である。
【0259】
実施例12:ヒト化DS6抗体のDNA配列の構築
[244] PCR変異誘発により、前記11個の表面残基をDS6のものと交換した。リサーフェシングしたヒトDS6遺伝子を構築するために、ネズミDS6可変部cDNAクローンにPCR変異誘を行った。リサーフェシングしたDS6に必要なアミノ酸変化を生じさせるために、下記の表8に示すヒト化用プライマーセットを設計した。
【0260】
【表9】

【0261】
[245] 10%DMSOを補充した以外は、PCR反応は標準的であった(50μlの反応ミックスが、最終濃度1×の反応用緩衝液(ROCHE)、各2mMのdNTP、各1mMのプライマー、100ngの鋳型、5μlのDMSO、および0.5μlのTaq(ROCHE)を含有)。MJ researchサーモサイクラーで下記のプログラムを用いて操作した:1)94℃、3分;2)94℃、15秒;3)55℃、1分;4)72℃、1分;5)工程2に戻って29回;6)最終延長工程72℃、4分で終了。PCR生成物をそれらに対応する制限酵素で消化し、pBluescriptクローニングベクター中へクローニングした。アミノ酸の変化を確認するために、クローンの配列を決定した。
【0262】
[246] H鎖残基P73の交換は過去に問題を生じたので、2つのバージョンのH鎖を構築した:1つはヒト28E4 T73を含むもの、1つはネズミP73を保持したもの。両バージョンのヒト化DS6において、他の10個の表面残基をネズミのものからヒト28E4残基に交換した(表2)。通常の命名法に従えば、最もヒトに近いものはバージョン1.0である。これは11個すべてのヒト表面残基をもつからである。さらにバージョンが必要な場合、ネズミP73を保持したH鎖バージョンをバージョン1.2と命名し、バージョン1.1は最大数のネズミ残基を含むバージョンのために残しておく。2つのヒト化バージョンのアミノ酸配列をネズミDS6アミノ酸配列とアラインさせて図15AおよびBに示す。両方のヒト化DS6抗体遺伝子を、一過性および安定トランスフェクションのために抗体発現プラスミド(図14)中へクローニングした。ヒト化バージョンv1.0とv1.2のL鎖可変部のcDNA配列およびアミノ酸配列は同一であり、図16に示される。ヒト化バージョンv1.0およびv1.2のH鎖cDNA配列およびアミノ酸配列を図17AおよびBに示す。
【0263】
実施例13:CHO細胞におけるhuDS6の発現および精製ならびに親和性測定
[247] ヒト化バージョンがmuDS6の結合親和性を保持しているかどうかを判定するためには、抗体を発現させ、精製する必要があった。CHO細胞に各抗体発現プラスミドをトランスフェクションした。huDS6の一過性発現レベルはきわめて低かったので、安定な細胞系を選択した。
【0264】
[248] CHODG44細胞(4.32×10個/プレート)を15cmのプレート内で非選択培地(Alpha MEM+ヌクレオチド(Gibco);4mMのL−グルタミン、50U/mlのペニシリン、50μg/mlのストレプトマイシン、および10% v/vのFBSを補充したもの)に接種し、37℃、5%COの加湿インキュベーターに入れた。翌日、PolyfectトランスフェクションのためのQuiagen推奨プロトコル改変版を用いて、細胞にhuDS6 v1.0およびv1.2発現プラスミドをトランスフェクションした。非選択培地を細胞から吸引した。プレートを7mlの予熱(37℃)PBSで洗浄し、20mlの非選択培地を補給した。プラスミドDNA(11μg)を800μlのハイブリドーマSFM(Gibco)中へ希釈した。次いで70μlのPolyfect(Quiagen)をこのDNA/SFM混合物に添加した。次いでPolyfect混合物を数秒間穏やかに渦撹拌し、周囲温度で10分間インキュベートした。非選択培地(2.7ml)を混合物に添加した。最終混合物を、接種した細胞と共に24時間インキュベートした。
【0265】
[249] トランスフェクション混合物/培地をプレートから除去し、次いで細胞をトリプシン処理し、計数した。次いで細胞を96ウェルプレート内の選択培地(Alpha MEM−ヌクレオチド;4mMのL−グルタミン、50U/mlのペニシリン、50μg/mlのストレプトマイシン、10% v/vのFBS、1.25mg/mlのG418を補充したもの)(250μl/ウェル)に、種々の密度(1800、600、200、および67個/ウェル)で接種した。必要ならば培地を補充しながら、細胞を2〜3週間インキュベートした。定量ELISAにより、ウェルを抗体産生レベルについてスクリーニングした。Immunolon 2HB 96ウェルプレートをヤギ抗ヒトIgG F(ab)抗体(Jackson Immunoresearch;1μg/ウェル、50mM炭酸ナトリウム緩衝液(pH9.6)100μl中)でコーティングし、周囲温度で揺動しながら1.5時間インキュベートした。以後のすべての工程を周囲温度で実施した。ウェルをT−TBS(0.1%Tween 20、TBS)で2回洗浄し、200μlの遮断用緩衝液(1%BSA、T−TBS)で1時間遮断した。ウェルをT−TBSで2回洗浄した。別のプレート内で、抗体標準品EM164(100ng/ml)および培養上清を遮断用緩衝液により系列希釈した(1:2または1:3)。これらの希釈液(100μl)をELISAプレートに移し、1時間インキュベートした。ウェルをT−TBSで3回洗浄し、遮断用緩衝液中に1:3000希釈したヤギ抗ヒトIgG Fc−AP(Jackson Immunoresearch)100μlと共に45分間インキュベートした。ウェルをT−TBSで5回洗浄した後、100μlのPNPP現像試薬(10mg/mlのPNPP(p−ニトロフェニルホスフェート・二ナトリウム塩;Pierce)、0.1Mのジエタノールアミン、pH10.3の緩衝液)により25分間現像した。405nmにおける吸光度をELISAプレートリーダーで測定した。標準曲線の直線部分の吸光度の読み(培養上清の)を用いて、抗体濃度を判定した。
【0266】
[250] ELISAにより同定した産生度が最も高いクローンを、次いで展延し、凍結細胞ストックを調製した。精製するのに十分な量を産生させるために、細胞を30mlの選択培地で15cmのプレートに展延し(約1×10個/プレート)、1週間インキュベートした。培養上清を250mlのコニカルチューブ中へ採集し、卓上型遠心機で遠心し(2000rpm、5分、4℃)、次いで0.2μmの濾過装置により無菌的に濾過した。
【0267】
[251] DS6を精製するために、濾過した培養上清にNaOHペレットを添加して最終pH8.0にした。Hi Trap rProtein Aカラム(Amersham)を20〜50カラム体積の結合用緩衝液で平衡化した。上清を蠕動ポンプでカラムに装入した。次いでカラムを50カラム体積の結合用緩衝液で洗浄した。結合した抗体を溶離用緩衝液(100Mmの酢酸、50mMのNaCl、pH3)により、フラクションコレクターに取り付けた試験管中へ溶離した。溶出した抗体を、次いで中和用緩衝液(2MのKHPO、pH10.0)により中和し、次いでPBS中で一夜透析した。透析した抗体を0.2μmのシリンジフィルターにより濾過した。280nmにおける吸光度を測定して最終タンパク質濃度を判定した。
【0268】
[252] 精製huIgGの親和性をフローサイトメトリーによりmuDS6と比較した。第1組の実験では、CA6発現細胞系WISHへの直接結合を測定した。図18Aに示すように、キメラDS6、huDS6 v1.0、およびhuDS6 v1.2は、それぞれ3.15nM、3.71nM、および4.2nMの見掛けKDをもつきわめて類似した親和性を示す;これは、リサーフェシングがCDRを撹乱しなかったことを示唆する。これらの親和性は、図18Bに示すmuDS6のもの(Kd=1.93nM)よりわずかに低いだけである。
【0269】
huDS6の各バージョンがmuDS6の親和性を保持することを確認するために、比較結合実験を行った。この方式の利点は、ネズミ抗体とヒト抗体の両方に同一の検出系、すなわちビオチン−muDS6/ストレプトアビジン−DTAFを用いることである。結合の間接的な検出に用いる第2試薬が単なる原因で、場合により見掛けKdの実験測定値が変動する可能性がある。ビオチン−muDS6の見掛けKdをヤギ抗マウスFITCを用いた場合(Kd=2.80nM;図18B)またはストレプトアビジン−DTAFを用いた場合(Kd=6.76nM;図19A)で比較することにより、これを説明する。muDS6、huDS6 v1.0、およびhuDS6 v1.2がビオチン−muDS6と競合する能力を比較した競合結合アッセイの結果を、図19Bに示す。見掛けEC50は、muDS6、huDS6 v1.0、およびhuDS6 v1.2についてそれぞれ12.18nM、37.07nM、および22.64nMである。これらの結果は、ヒト化DS6を作製するためのmuDS6のリサーフェシングが結合親和性をほとんど低下させないことを示す。
【0270】
実施例14:DS6−DM1細胞毒性コンジュゲートの調製
[253] DS6抗体(8mg/ml)を8倍モル過剰のN−スクシンイミジル−4−(2−ピリジルジチオ)ペンタノエート(SPP)により修飾して、ジチオピリジル基を導入した。95% v/vの緩衝液A(50mMのKPi、50mMのNaCl、2mMのEDTA、pH6.5)および5% v/vのDMA中、室温で2時間、反応を実施した。わずかに膨張した反応混合物をNAPまたはSephadex G25カラム(緩衝液A中で平衡化)によりゲル濾過した。280nmにおける抗体の吸光度、ならびに280および343nmにおけるDTT放出2−メルカプトピリジン(Spy)の吸光度を測定することにより、修飾度を判定した。次いで抗体2.5mg/mLの修飾DS6を、Spyより1.7倍モル過剰のN2’−デアセチル−N2’−(3−メルカプト−1−オキソプロピル)−メイタンシン(L−DM1)を用いてコンジュゲートさせた。この反応は、DMA(3% v/v)を含む緩衝液A(97% v/v)中で実施された。反応物を室温で一夜、約20時間インキュベートした。不透明な反応混合物を遠心し(1162×g、10分)、次いで緩衝液B(1×PBS、pH6.5)中で平衡化したNAP−25またはS300(Tandem 3、3×26/10脱塩用カラム、G25媒体)カラムにより上清をゲル濾過した。ペレットを廃棄した。コンジュゲートを0.22μmのMillex−GVフィルターにより無菌的に濾過し、Slide−A−Lyzerを含む緩衝液B中で透析した。濾過した材料の252nmおよび280nm両方における吸光度を測定することにより、DS6の分子当たり連結したDM1分子の個数を判定した。DM1/抗体比は4.36であることが認められ、コンジュゲートDS6の工程収率は55%であった。コンジュゲート抗体の濃度は1.32mg/mLであった。この精製コンジュゲートをサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により生化学的に解明し、92%が単量体であることが認められた。精製コンジュゲート中のDM1の分析は、99%が抗体に共有結合していることを示した。図20に、Cao−3細胞へのDS6−DM1コンジュゲートおよび非修飾DS6のフローサイトメトリー結合は、DS6のコンジュゲーションにより親和性がわずかに低下したにすぎないことを示す。
【0271】
実施例15:DS6−DM1のインビトロ細胞毒性
[254] 裸の抗体としてのDS6は、細胞培養において増殖または成長の阻害活性を示さなかった(図21)。しかし、ヤギ抗ヒトIgG H鎖およびL鎖へのDM1コンジュゲートの存在下でDS6を細胞と共にインキュベートすると、DS6はこのコンジュゲートを細胞へ効果的にターゲティングおよび送達して間接的な細胞毒性を生じるのにきわめて有効である(図21)。裸のDS6に固有の活性をさらに試験するために、ネズミおよびヒト化DS6を用いる補体依存性細胞毒性(CDC)アッセイを実施した。HPACおよびZR−75−1細胞(25000個/ウェル)を、96ウェルプレート内で、5%ヒトまたはウサギ血清ならびに種々の希釈度のネズミまたはヒトDS6の存在下に、200μlのRHBP培地(RPMI−1640;0.1%のBSA、20mMのHEPES(pH7.2〜7.4)、100U/mlのペニシリン、および100ug/mlのストレプトマイシン)に接種した。細胞を37℃で2時間インキュベートした。次いでAlamar Blue(最終濃度10%)試薬(Biosource)を上清に添加した。細胞を5〜24時間インキュベートした後、蛍光を測定した。ネズミおよびヒト化DS6は両方とも、補体依存性細胞毒性(CDC)アッセイに影響を及ぼさなかった(図22)。これは、DS6を療法に使用するためには毒性エフェクター分子へのコンジュゲーションが必要なことを示唆する。
【0272】
[255] 種々のDS6陽性細胞系において2つの異なるアッセイ様式を用いて、メイタンシノイドにコンジュゲートしたDS6抗体の細胞毒性を検査した。6ウェルプレート上で、培地中に希釈したコンジュゲート2ml中に細胞(1000〜2500個/ウェル)を接種して、コロニー形成アッセイを実施した。一般に3×10−11〜3×10−9Mの数種類の濃度のコンジュゲートに細胞を連続曝露し、37℃、6%COの加湿チャンバー内で5〜9日間インキュベートした。ウェルをPBSで洗浄し、コロニーを1% w/vクリスタルバイオレット/10% v/vホルムアルデヒド/PBS溶液で染色した。次いで、結合しなかった色素を蒸留水でウェルから十分に洗い去り、プレートを自然乾燥させた。Leica StereoZoom 4解剖顕微鏡によりコロニーを計数した。
【0273】
[256] コロニー数/接種細胞数としてコロニー形成率(PE)を計算した。処理細胞のPE/非処理細胞のPEとして生存率を計算した。細胞生存率をコンジュゲートのモル濃度に対してグラフにすることにより、IC50濃度を判定した。コロニー形成アッセイ(図23)において、DS6−DM1は800pMの推定IC50でCao−3細胞を殺すのに有効であった。抗原陰性細胞A375は、試験したDS6−DM1の最高濃度3×10−9Mのコンジュゲートにより、わずかしか影響を受けなかった;これは、コンジュゲートの殺細胞活性が特異的に抗原発現細胞に向けられていることを立証する。しかし、他の多くのDS6陽性細胞系は、メイタンシンに対して明らかに感受性であるにもかかわらず免疫コンジュゲートに対して格別感受性ではなかった。子宮頸部細胞系(HeLa、KB、およびWISH)はコンジュゲートに対して感受性であったが、特定数の卵巣および胸部細胞系のみが細胞毒効果を示した。膵臓細胞系は影響を受けないように思われた。
【0274】
[257] MTTアッセイにおいて、細胞を96ウェルプレートに1000〜5000個/ウェルの密度で接種した。裸のDS6またはDS6−DM1免疫コンジュゲートの系列希釈液と共に、細胞を培地200μlに接種した。試料を三重に試験した。次いで細胞と抗体/コンジュゲートの混合物を2〜7日間インキュベートした時点で、MTT([3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド)]アッセイにより細胞の生存率を評価した。MTT(50μg/ウェル)を培養上清に添加し、37℃で3〜4時間インキュベートした。培地を除去し、MTTホルマザンをDMSO(175μl/ウェル)に溶解した。540〜545nmにおける吸光度を測定した。MTT細胞生存率アッセイ(図24C)において、免疫コンジュゲートは1.61nMの推定IC50でCao−3細胞を効果的に殺すことができた。効果のない裸の抗体と比較して、最高濃度のコンジュゲートを含むウェルには生存細胞が含まれなかった(図21および24)。
【0275】
[258] 他の細胞系に関するMTTアッセイの結果はわずかに異なっていた(図24A、BおよびD〜I)。多くの場合、若干の細胞毒性がみられたが、コンジュゲートは全細胞集団を完全に殺すことはできなかった(WISH細胞を除く)。BT−20、OVCAR5、およびHPAC細胞は特に抵抗性であった:最高濃度のコンジュゲート(32nM)のウェルにおいて、50%を超える細胞がなお生存していた。
【0276】
実施例16:コンジュゲートのインビボ抗腫瘍活性
[259] DS6−DM1コンジュゲートのインビボ活性を立証するために、SCIDマウスにヒト腫瘍異種移植体を樹立した。ヒト子宮頸癌細胞系KBの皮下モデルを開発した。KB細胞をインビトロ増殖させ、採集し、無血清培地100μL中5×10個を各マウスの右肩下に注射し、6日間増殖させて平均腫瘍体積144±125mmになった時点で薬物処理を開始した。マウスに、PBS、DM1 150μg/kgのコンジュゲート、またはDM1 225μg/kgのコンジュゲート(各群2匹のマウス)を6日間、毎日、静脈内投与した。処理期間中、1日1回、中毒反応をモニターした。処理期間中、腫瘍体積(図25A)および対応する体重(図25B)をモニターした。
【0277】
[260] PBS対照で処理したKB腫瘍は、約4日間の倍増時間で急速に増殖した。これに対し、コンジュゲートで処理したマウスは両群とも完全な腫瘍退縮を示した;225μg/kgおよび150μg/kg投与群で、それぞれ処理開始後14日目および18日目。150μg/kg投与量では、腫瘍遅延が約70日間であった。225μg/kgの処理では120日目に試験を終了した時点で腫瘍再発の証拠はなかったので、治癒した。図25Bにみられるように、150μg/kg群のマウスは体重減少を示さなかった;これは、この用量が十分に耐容されることを示した。高い方の用量では、マウスは3%の一時的な体重減少を生じたにすぎない。5日間の処理期間中、マウスは目に見える中毒徴候を示さなかった。これらを合わせると、この試験はDS6−DM1処理によりマウスのKB異種移植腫瘍を無毒性用量で治癒しうることを立証する。
【0278】
[261] DS6−DM1活性をさらに皮下異種移植モデルのパネルについて試験した(図26参照)。異種移植体の形成に用いた腫瘍細胞系は、ある程度のインビトロメイタンシン感受性およびCA6エピトープ密度を示した(下記の表9を参照)。OVCAR5細胞およびTOV−21Gは卵巣腫瘍細胞系である;HPACは膵臓腫瘍細胞系である;HeLaは子宮頸部腫瘍細胞系である。OVCAR5およびTOV−21G細胞は低い表面CA6発現を示す;HeLa細胞は中間レベルの表面CA6発現を示す;HPACは高いCA6表面発現密度を示す。TOV−21GおよびHPAC細胞はメイタンシン感受性である;OVCAR5およびHeLa細胞はメイタンシン感受性が2〜7倍低い。
【0279】
【表10】

【0280】
平均最大相対平均蛍光
[262] 前記の4細胞系をインビトロ増殖させ、採集し、無血清培地100μL中1×10個を各マウスの右肩下に注射し(各モデル当たり6匹のマウス)、6日間増殖させて、平均腫瘍体積がOVCAR5の被験群および対照群についてはそれぞれ57.6±6.7および90.2±13.4mm、HPACの被験群および対照群についてはそれぞれ147±29.6および176.2±18.9mm、HeLaの被験群および対照群についてはそれぞれ194.3±37.2および201.7±71.7mm、TOV−21Gの被験群および対照群についてはそれぞれ96.6±22.8および155.6±13.4mmになった時点で、薬物処理を開始した。各モデルについて3匹の対照マウスを週1回のPBSで2回、3匹の被験マウスを週1回のコンジュゲート(DM1 600μg/kg)で2回、静脈内処理した。処理期間中、1日1回、中毒反応をモニターし、処理期間中、腫瘍体積および体重をモニターした。種々のモデルについてのコンジュゲート効果を図26A、C、EおよびGにグラフで示し、対応する体重を図26B、D、FおよびHにプロットする。OVCAR5、TOV−21GおよびHPAC細胞系は、各モデルのPBS対照にみられるように、進行性腫瘍を形成した。HeLaモデルは、対数増殖開始前に約3週間の遅滞期があった。すべてのモデルにおいて、DS6−DM1コンジュゲート処理によりすべてのマウスで腫瘍が完全に退縮した。TOV−21G、HPACおよびHeLaモデルについて、マウスは61日目に腫瘍のない状態を維持している。OVCAR5モデルでは、腫瘍接種後、約45日目に腫瘍が再発した。したがって、このモデルではDS6−DM1処理が腫瘍増殖を約34日間遅延させている。OVCAR5細胞はメイタンシン感受性がより低く、かつCA6エピトープ発現が低いので、この増殖遅延は重要である。CA6エピトープ密度がより高いモデル、またはより高いメイタンシン感受性をもつモデルでは、腫瘍退縮がより著しい。2回投与しただけである点に注目することが重要である。体重減少はみられなかったので、この試験に採用した投与計画は明らかにマウスに対する毒性がなかった。追加またはより多量のコンジュゲートの投与により治癒を達成できると思われる。
【0281】
[263] ヒトの卵巣癌は多くが腹膜の疾患である。OVCAR5細胞は、SCIDマウスの腹腔内(IP)モデルとしてヒト疾患と同様に進行増殖して腫瘍結節を形成し、腹水を産生する。IPモデルにおける活性を立証するために、OVCAR5 IP腫瘍を伴うマウスをDS6−DM1により処理した(図27)。OVCAR5細胞をインビトロ増殖させ、採集し、無血清培地100μL中1×10個を腹腔内注射した。腫瘍を6日間増殖させた時点で処理を開始した。マウスを週1回で2週間、PBSまたはDM1 600μg/kg量のDS6−DM1コンジュゲートで処理し、腹膜疾患により生じる体重減少をモニターした。28日目までにPBS群のマウスは20%を超える体重が減少し、安楽死させた。処理群は体重減少が20%を超えた後、45日目に安楽死させた。この試験は、OVCAR5はメイタンシンに対する感受性がより低く、かつ細胞当たりのCA6エピトープが少ないという事実にもかかわらず、DS6−DM1が進行性OVCAR5モデルにおいて腫瘍の増殖を遅延しうることを立証する。採用した投与計画は目に見える中毒徴候を誘発しなかったので、追加およびより多量を用いてさらに腫瘍増殖の遅延または治癒を達成できると思われる。
【0282】
実施例17:DS6−SPP−タキソイドMM1−202細胞毒性コンジュゲートの合成および特性解明
[264] DS6をN−スルホスクシンイミジル4−ニトロ−2−ピリジル−ペンタノエート(SSNPP)リンカーにより修飾した。90%緩衝液A中50mgのDS6抗体に、DMA中10当量のSSNPPを添加した。抗体の最終濃度は8mg/mlであった。反応物を室温で4時間撹拌し、次いでG25クロマトグラフィーにより精製した。分光光度法で280nm(抗体)および325(リンカー)における吸光により、抗体の修飾度を測定し、リンカー3.82/抗体をもつことが認められた。抗体の回収量は43.3mgであり、87%の収率が得られた。DS6−ニトロSPPのコンジュゲートをタキソイドMM1−202(1812P.16)とコンジュゲートさせた。42mg規模で、90%の緩衝液A、10%のDM1中においてコンジュゲーションを実施した。前記のタキソイドを0.43当量/リンカー(各回)で4回、約20時間かけて添加した。この時点までに反応物は顕著に混濁した。G25精製の後、約64%の収率で回収された生成コンジュゲートはタキソイド約4.3/抗体を含み、未反応リンカー約1当量が残っていた。未反応リンカーを不活性化するために、一夜撹拌しながら1当量のシステイン/未反応リンカーをコンジュゲートに添加した。システインを添加すると明瞭な黄色の呈色が認められ、チオピリジンの遊離が指示された。次いで反応溶液を緩衝液B/0.01% Tween 20中で透析し、続いて緩衝液B単独中で数日間かけてさらに透析した。最終コンジュゲートは薬物2.86/抗体を含んでいた。抗体回収量は14.7mgであり、全体として35%の収率が得られた。コンジュゲートをさらにSECにより生化学的に解明し、単量体89%、二量体10.5%、およびより高分子量の凝集体0.5%を含むことが認められた。
【0283】
[265] HeLa細胞に対するDS6−SPP−タキソイドMM1−202とDS6抗体の結合を比較したフローサイトメトリー分析の結果を図28に示す。この結果は、DS6がタキサンにコンジュゲートした場合に結合活性を保持することを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
SEQ ID NO:1〜6よりなる群から選択されるアミノ酸配列:
【化1】

を有する少なくとも1つの相補性決定領域を含む、抗体またはそのエピトープ結合フラグメント。
【請求項2】
少なくとも1つのH鎖可変部またはそのフラグメントおよび少なくとも1つのL鎖可変部またはそのフラグメントを含み、その際、少なくとも1つのH鎖可変部またはそのフラグメントがそれぞれSEQ ID NO:1〜3により表わされるアミノ酸配列:
【化2】

を有する順次3つの配列相補性決定領域を含み、少なくとも1つのL鎖可変部またはそのフラグメントがそれぞれSEQ ID NO:4〜6により表わされるアミノ酸配列:
【化3】

を有する順次3つの配列相補性決定領域を含む、抗体またはそのエピトープ結合フラグメント。
【請求項3】
L鎖可変部またはそのフラグメントが、SEQ ID NO:7またはSEQ ID NO:8により表わされるアミノ酸配列:
【化4】

に対して少なくとも90%の配列同一性を有する、請求項2に記載の抗体またはそのエピトープ結合フラグメント。
【請求項4】
L鎖可変部またはそのフラグメントが、SEQ ID NO:7またはSEQ ID NO:8のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有する、請求項3に記載の抗体またはそのエピトープ結合フラグメント。
【請求項5】
L鎖可変部またはそのフラグメントが、SEQ ID NO:7またはSEQ ID NO:8のアミノ酸配列を有する、請求項3に記載の抗体またはそのエピトープ結合フラグメント。
【請求項6】
H鎖可変部またはそのフラグメントが、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10およびSEQ ID NO:11よりなる群から選択されるアミノ酸配列:
【化5】

に対して少なくとも90%の配列同一性を有する、請求項2に記載の抗体またはそのエピトープ結合フラグメント。
【請求項7】
H鎖可変部またはそのフラグメントが、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10またはSEQ ID NO:11のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有する、請求項6に記載の抗体またはそのエピトープ結合フラグメント。
【請求項8】
H鎖可変部またはそのフラグメントが、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10またはSEQ ID NO:11のアミノ酸配列を有する、請求項6に記載の抗体またはそのエピトープ結合フラグメント。
【請求項9】
請求項1、2、3または6のいずれか1項に記載の抗体またはそのエピトープ結合フラグメントをコードするポリヌクレオチド。
【請求項10】
請求項1、2、3または6のいずれか1項に記載の抗体またはそのエピトープ結合フラグメントのL鎖またはH鎖をコードするポリヌクレオチド。
【請求項11】
請求項9に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項12】
請求項10に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項13】
ベクターが該抗体またはそのエピトープ結合フラグメントを発現する発現ベクターである、請求項11に記載のベクター。
【請求項14】
ベクターが該抗体またはそのエピトープ結合フラグメントを発現する発現ベクターである、請求項12に記載のベクター。
【請求項15】
下記を含むリサーフェシング法により作製された、CA6グリコトープに結合するヒト化したげっ歯類抗体またはそのエピトープ結合フラグメント:
(a)げっ歯類およびヒトの抗体H鎖およびL鎖可変部のプールのx線結晶学的構造により得た相対アクセシビリティー分布から位置アラインメントを作成して、H鎖およびL鎖可変部フレームワーク表面に露出した一組の位置を求め、その際げっ歯類およびヒトのすべての可変部のアラインメント位置が少なくとも約98%同一であり;
(b)げっ歯類の抗体またはそのエピトープ結合フラグメントについて、工程(a)で求めたH鎖およびL鎖可変部フレームワーク表面に露出した一組の位置を用いて、H鎖およびL鎖可変部フレームワーク表面に露出した一組のアミノ酸残基を決定し;
(c)ヒト抗体アミノ酸配列から、工程(b)で決定したH鎖およびL鎖可変部フレームワーク表面に露出した一組のアミノ酸残基に最も近い同一性を有する、H鎖およびL鎖可変部フレームワーク表面に露出した一組のアミノ酸残基を同定し;
(d)げっ歯類の抗体またはそのエピトープ結合フラグメントの可変部フレームワークアミノ酸配列において、工程(b)で決定したH鎖およびL鎖可変部フレームワーク表面に露出した一組のアミノ酸残基を、工程(c)で同定したH鎖およびL鎖可変部フレームワーク表面に露出した一組のアミノ酸残基で置換し;
(e)げっ歯類の抗体またはそのエピトープ結合フラグメントの可変部、および工程(d)で特定した置換により得られたげっ歯類の抗体またはそのエピトープ結合フラグメントの可変部の三次元モデルを構築し;
(f)工程(e)で構築した三次元モデルを比較し、工程(b)または(c)で決定した組から、げっ歯類の抗体またはそのエピトープ結合フラグメントの相補性決定領域のいずれかの残基のいずれかの原子から5Å以内にあるアミノ酸残基を同定し;
(g)工程(f)で同定したいずれかの残基をヒトのアミノ酸残基から元のげっ歯類のアミノ酸残基に交換し、これにより表面に露出したアミノ酸残基のヒト化用の一組を決定し;
(h)工程(b)で決定したげっ歯類抗体可変部フレームワーク表面に露出した一組のアミノ酸残基を、工程(g)で決定したヒト化用の、可変部フレームワーク表面に露出した一組のアミノ酸残基で置換し;そして
(i)CA6グリコトープに結合するヒト化したげっ歯類抗体またはそのエピトープ結合フラグメントを作製する。
【請求項16】
ヒト化したげっ歯類抗体またはそのエピトープ結合フラグメントがエピトープ結合フラグメントである、請求項15に記載のヒト化したげっ歯類抗体またはそのエピトープ結合フラグメント。
【請求項17】
エピトープ結合フラグメントが、Fabフラグメント、Fab’フラグメント、F(ab’)フラグメント、Fdフラグメント、一本鎖Fv(scFv)フラグメント、一本鎖抗体、ジスルフィド結合Fv(sdFv)フラグメント、およびVまたはVドメインのいずれかを含むフラグメントよりなる群から選択される、請求項16に記載のヒト化したげっ歯類抗体またはそのエピトープ結合フラグメント。
【請求項18】
表面に露出したアミノ酸残基が、溶媒アクセシビリティー30%を超える残基である、請求項15または16に記載のヒト化したげっ歯類抗体またはそのエピトープ結合フラグメント。
【請求項19】
SEQ ID NO:1〜6よりなる群から選択されるアミノ酸配列:
【化6】

を有する少なくとも1つの相補性決定領域を含む、請求項15に記載のヒト化したげっ歯類抗体またはそのエピトープ結合フラグメント。
【請求項20】
少なくとも1つのH鎖可変部またはそのフラグメントおよび少なくとも1つのL鎖可変部またはそのフラグメントを含み、その際、少なくとも1つのH鎖可変部またはそのフラグメントがそれぞれSEQ ID NO:1〜3により表わされるアミノ酸配列:
【化7】

を有する順次3つの配列相補性決定領域を含み、少なくとも1つのL鎖可変部またはそのフラグメントがそれぞれSEQ ID NO:4〜6により表わされるアミノ酸配列:
【化8】

を有する順次3つの配列相補性決定領域を含む、請求項15に記載のヒト化したげっ歯類抗体またはそのエピトープ結合フラグメント。
【請求項21】
SEQ ID NO:7またはSEQ ID NO:8のアミノ酸配列:
【化9】

性を有するL鎖可変部を含む、請求項15に記載のヒト化したげっ歯類抗体またはそのエピトープ結合フラグメント。
【請求項22】
SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10およびSEQ ID NO:11よりなる群から選択されるアミノ酸配列:
【化10】

を有するH鎖可変部を含む、請求項15に記載のヒト化したげっ歯類抗体またはそのエピトープ結合フラグメント。
【請求項23】
CA6グリコトープ発現細胞に結合する改良された抗体またはそのエピトープ結合フラグメントであって、下記により作製される改良された抗体またはそのエピトープ結合フラグメント:
(a)SEQ ID NO:1〜11:
【化11】

よりなる群から選択される少なくとも1つの配列を含む抗体またはそのエピトープ結合フラグメントをコードするDNAポリヌクレオチドを調製し;
(b)該DNAポリヌクレオチドがコードするアミノ酸配列の少なくとも1つの残基を変化させるように、(a)のDNAポリヌクレオチドに少なくとも1つのヌクレオチドの変異、欠失または挿入を導入し;
(c)(b)のDNAポリヌクレオチドがコードする抗体または抗体フラグメントを発現させ;そして
(d)発現した抗体または抗体フラグメントをCA6グリコトープ発現細胞への結合親和性の改良についてスクリーニングし、これにより、改良された抗体またはそのエピトープ結合フラグメントを得る。
【請求項24】
少なくとも1つのヌクレオチドの変異、欠失または挿入を、オリゴヌクレオチド仲介による部位特異的変異誘発、カセット変異誘発、誤りがちなPCR、DNAシャフリング、および大腸菌(E.coli)のミューテーター株の使用よりなる群から選択される方法により行う、請求項23に記載の改良された抗体またはそのエピトープ結合フラグメント。
【請求項25】
細胞結合剤および細胞毒性物質を含み、細胞結合剤がCA6グリコトープに結合する、細胞毒性コンジュゲート。
【請求項26】
細胞結合剤と細胞毒性物質が共有結合している、請求項25に記載の細胞毒性コンジュゲート。
【請求項27】
細胞結合剤と細胞毒性物質がPEG連結基により共有結合している、請求項25に記載の細胞毒性コンジュゲート。
【請求項28】
細胞結合剤と細胞毒性物質が、細胞毒性物質のチオールまたはジスルフィド官能基により共有結合している、請求項25に記載の細胞毒性コンジュゲート。
【請求項29】
細胞結合剤が、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、抗体のフラグメント、ヒト化またはリサーフェシングした抗体、抗体の機能均等物、改良された抗体、インターフェロン、リンホカイン、ホルモン、増殖因子、トランスフェリンおよびビタミンよりなる群から選択されるメンバーである、請求項25に記載の細胞毒性コンジュゲート。
【請求項30】
抗体のフラグメントが、Fabフラグメント、Fab’フラグメント、F(ab’)フラグメント、Fdフラグメント、一本鎖Fv(scFv)フラグメント、一本鎖抗体、ジスルフィド結合Fv(sdFv)フラグメント、およびVLまたはVHドメインのいずれかを含むフラグメントよりなる群から選択される、請求項29に記載の細胞毒性コンジュゲート。
【請求項31】
細胞結合剤が、抗CA6モノクローナル抗体またはそのエピトープ結合フラグメントである、請求項25に記載の細胞毒性コンジュゲート。
【請求項32】
細胞結合剤が、ネズミ抗CA6モノクローナル抗体DS6またはそのエピトープ結合フラグメントである、請求項25に記載の細胞毒性コンジュゲート。
【請求項33】
細胞結合剤が、ヒト化バージョンのネズミ抗CA6モノクローナル抗体DS6またはそのエピトープ結合フラグメントである、請求項25に記載の細胞毒性コンジュゲート。
【請求項34】
細胞毒性物質が、メイタンシノイド化合物、タキソイド化合物、CC−1065化合物、ドラスタチン化合物、ダウノルビシン化合物、およびドキソルビシン化合物よりなる群から選択されるメンバーである、請求項25に記載の細胞毒性コンジュゲート。
【請求項35】
細胞毒性物質が、式(I)のメイタンシンDM1:
【化12】

である、請求項34に記載の細胞毒性コンジュゲート。
【請求項36】
細胞毒性物質が、式(II)のメイタンシンDM4:
【化13】

である、請求項34に記載の細胞毒性コンジュゲート。
【請求項37】
細胞毒性物質が、式(III)のメイタンシン:
【化14】

[式中:
Y’は、
【化15】

を表わし、ここで
およびRは、それぞれ独立して、CH、C、1〜10個の炭素原子を有する直鎖アルキルもしくはアルケニル、3〜10個の炭素原子を有する分枝鎖もしくは環式アルキルもしくはアルケニル、フェニル、置換フェニル、または複素環式芳香族もしくはヘテロシクロアルキル基であり、さらにRはHであってもよく;
A、B、Dは、3〜10個の炭素原子を有するシクロアルキルもしくはシクロアルケニル、単純もしくは置換されたアリールまたは複素環式芳香族もしくはヘテロシクロアルキル基であり;
、R、R、R、R、R、R、R11およびR12は、それぞれ独立して、H、CH、C、1〜10個の炭素原子を有する直鎖アルキルもしくはアルケニル、3〜10個の炭素原子を有する分枝鎖もしくは環式アルキルもしくはアルケニル、フェニル、置換フェニル、または複素環式芳香族もしくはヘテロシクロアルキル基であり;
l、m、n、o、p、q、r、sおよびtは、それぞれ独立して0または1〜5の整数であり、ただしl、m、n、o、p、q、r、sおよびtのうち少なくとも2つはいかなる場合にもゼロではなく;
Zは、H、SRまたは−CORであり、ここでRは1〜10個の炭素原子を有する直鎖アルキルもしくはアルケニル、3〜10個の炭素原子を有する分枝鎖もしくは環式アルキルもしくはアルケニル、または単純もしくは置換されたアリールまたは複素環式芳香族もしくはヘテロシクロアルキル基である]である、請求項34に記載の細胞毒性コンジュゲート。
【請求項38】
がHであり、Rがメチルであり、ZがHである、請求項37に記載の細胞毒性コンジュゲート。
【請求項39】
およびRがメチルであり、ZがHである、請求項37に記載の細胞毒性コンジュゲート。
【請求項40】
がHであり、Rがメチルであり、Zが−SCHである、請求項37に記載の細胞毒性コンジュゲート。
【請求項41】
およびRがメチルであり、Zが−SCHである、請求項37に記載の細胞毒性コンジュゲート。
【請求項42】
細胞毒性物質が、式(IV−L)、(IV−D)および(IV−D,L)よりなる群から選択されるメイタンシン:
【化16】

[式中:
Yは、
【化17】

を表わし、ここで
およびRは、それぞれ独立して、CH、C、1〜10個の炭素原子を有する直鎖アルキルもしくはアルケニル、3〜10個の炭素原子を有する分枝鎖もしくは環式アルキルもしくはアルケニル、フェニル、置換フェニル、または複素環式芳香族もしくはヘテロシクロアルキル基であり、さらにRはHであってもよく;
、R、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して、H、CH、C、1〜10個の炭素原子を有する直鎖アルキルもしくはアルケニル、3〜10個の炭素原子を有する分枝鎖もしくは環式アルキルもしくはアルケニル、フェニル、置換フェニル、または複素環式芳香族もしくはヘテロシクロアルキル基であり;
l、mおよびnは、それぞれ独立して1〜5の整数であり、さらにnは0であってもよく;
Zは、H、SRまたは−CORであり、ここでRは1〜10個の炭素原子を有する直鎖もしくは分枝鎖アルキルもしくはアルケニル、3〜10個の炭素原子を有する環式アルキルもしくはアルケニル、または単純もしくは置換されたアリールまたは複素環式芳香族もしくはヘテロシクロアルキル基であり;
Mayは、C−3の側鎖、C−14ヒドロキシメチル、C−15ヒドロキシを有する、またはC−20デスメチルであるメイタンシノイド類を表わす]である、請求項34に記載の細胞毒性コンジュゲート。
【請求項43】
がHであり、Rがメチルであり、R、R、RおよびRがそれぞれHであり、lおよびmがそれぞれ1であり、nが0であり、ZがHである、請求項42に記載の細胞毒性コンジュゲート。
【請求項44】
およびRがメチルであり、R、R、RおよびRがそれぞれHであり、lおよびmが1であり、nが0であり、ZがHである、請求項42に記載の細胞毒性コンジュゲート。
【請求項45】
がHであり、Rがメチルであり、R、R、RおよびRがそれぞれHであり、lおよびmがそれぞれ1であり、nが0であり、Zが−SCHである、請求項42に記載の細胞毒性コンジュゲート。
【請求項46】
およびRがメチルであり、R、R、RおよびRがそれぞれHであり、lおよびmが1であり、nが0であり、Zが−SCHである、請求項42に記載の細胞毒性コンジュゲート。
【請求項47】
細胞毒性物質が、式(IV−L)で表わされる、請求項42に記載の細胞毒性コンジュゲート。
【請求項48】
細胞毒性物質が、式(V)のメイタンシン:
【化18】

[式中:
Yは、
【化19】

を表わし、ここで
およびRは、それぞれ独立して、CH、C、1〜10個の炭素原子を有する直鎖アルキルもしくはアルケニル、3〜10個の炭素原子を有する分枝鎖もしくは環式アルキルもしくはアルケニル、フェニル、置換フェニル、または複素環式芳香族もしくはヘテロシクロアルキル基であり、さらにRはHであってもよく;
、R、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して、H、CH、C、1〜10個の炭素原子を有する直鎖アルキルもしくはアルケニル、3〜10個の炭素原子を有する分枝鎖もしくは環式アルキルもしくはアルケニル、フェニル、置換フェニル、または複素環式芳香族もしくはヘテロシクロアルキル基であり;
l、mおよびnは、それぞれ独立して1〜5の整数であり、さらにnは0であってもよく;
Zは、H、SRまたは−CORであり、ここでRは1〜10個の炭素原子を有する直鎖アルキルもしくはアルケニル、3〜10個の炭素原子を有する分枝鎖もしくは環式アルキルもしくはアルケニル、または単純もしくは置換されたアリールまたは複素環式芳香族もしくはヘテロシクロアルキル基である]である、請求項34に記載の細胞毒性コンジュゲート。
【請求項49】
R1がHであり、R2がメチルであり、R5、R6、R7およびR8がそれぞれHであり;lおよびmがそれぞれ1であり;nが0であり;ZがHである、請求項48に記載の細胞毒性コンジュゲート。
【請求項50】
およびRがメチルであり;R、R、RおよびRがそれぞれHであり;lおよびmが1であり;nが0であり;ZがHである、請求項48に記載の細胞毒性コンジュゲート。
【請求項51】
がHであり、Rがメチルであり、R、R、RおよびRがそれぞれHであり、lおよびmがそれぞれ1であり、nが0であり、Zが−SCHである、請求項48に記載の細胞毒性コンジュゲート。
【請求項52】
およびRがメチルであり、R、R、RおよびRがそれぞれHであり、lおよびmが1であり、nが0であり、Zが−SCHである、請求項48に記載の細胞毒性コンジュゲート。
【請求項53】
細胞毒性物質が、式(VI−L)、(VI−D)および(VI−D,L)よりなる群から選択されるメイタンシン:
【化20】

[式中:
は、
【化21】

を表わし、ここで
およびRは、それぞれ独立して、CH、C、1〜10個の炭素原子を有する直鎖アルキルもしくはアルケニル、3〜10個の炭素原子を有する分枝鎖もしくは環式アルキルもしくはアルケニル、フェニル、置換フェニル、または複素環式芳香族もしくはヘテロシクロアルキル基であり、さらにRはHであってもよく;
、R、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して、H、CH、C、1〜10個の炭素原子を有する直鎖環式アルキルもしくはアルケニル、3〜10個の炭素原子を有する分枝鎖もしくは環式アルキルもしくはアルケニル、フェニル、置換フェニル、または複素環式芳香族もしくはヘテロシクロアルキル基であり;
l、mおよびnは、それぞれ独立して1〜5の整数であり、さらにnは0であってもよく;
は、SRまたはCORであり、ここでRは1〜10個の炭素原子を有する直鎖アルキルもしくはアルケニル、3〜10個の炭素原子を有する分枝鎖もしくは環式アルキルもしくはアルケニル、または単純もしくは置換されたアリールまたは複素環式芳香族もしくはヘテロシクロアルキル基であり;
Mayは、メイタンシノイド類である]である、請求項34に記載の細胞毒性コンジュゲート。
【請求項54】
細胞毒性物質が、式(VII)のメイタンシン:
【化22】

[式中:
’は、
【化23】

を表わし、ここで
およびRは、それぞれ独立して、CH、C、1〜10個の炭素原子を有する直鎖分枝鎖アルキルもしくはアルケニル、3〜10個の炭素原子を有する環式アルキルもしくはアルケニル、フェニル、置換フェニル、または複素環式芳香族もしくはヘテロシクロアルキル基であり、さらにRはHであってもよく;
A、BおよびDは、それぞれ独立して、3〜10個の炭素原子を有するシクロアルキルもしくはシクロアルケニル、単純もしくは置換されたアリールまたは複素環式芳香族もしくはヘテロシクロアルキル基であり;
、R、R、R、R、R、R、R11およびR12は、それぞれ独立して、H、CH、C、1〜10個の炭素原子を有する直鎖アルキルもしくはアルケニル、3〜10個の炭素原子を有する分枝鎖もしくは環式アルキルもしくはアルケニル、フェニル、置換フェニル、または複素環式芳香族もしくはヘテロシクロアルキル基であり;
l、m、n、o、p、q、r、sおよびtは、それぞれ独立して0または1〜5の整数であり、ただしl、m、n、o、p、q、r、sおよびtのうち少なくとも2つはいかなる場合にもゼロではなく;
は、SRまたは−CORであり、ここでRは1〜10個の炭素原子を有する直鎖アルキルもしくはアルケニル、3〜10個の炭素原子を有する分枝鎖もしくは環式アルキルもしくはアルケニル、または単純もしくは置換されたアリールまたは複素環式芳香族もしくはヘテロシクロアルキル基である]である、請求項34に記載の細胞毒性コンジュゲート。
【請求項55】
R1がHであり、R2がメチルである、請求項54に記載の細胞毒性コンジュゲート。
【請求項56】
細胞毒性物質が、式(VIII)のメイタンシン:
【化24】

[式中:
’は、
【化25】

を表わし、ここで
A、BおよびDは、それぞれ独立して、3〜10個の炭素原子を有するシクロアルキルもしくはシクロアルケニル、単純もしくは置換されたアリールまたは複素環式芳香族もしくはヘテロシクロアルキル基であり;
、R、R、R、R、R、R、R11およびR12は、それぞれ独立して、H、CH、C、1〜10個の炭素原子を有する直鎖アルキルもしくはアルケニル、3〜10個の炭素原子を有する分枝鎖もしくは環式アルキルもしくはアルケニル、フェニル、置換フェニル、または複素環式芳香族もしくはヘテロシクロアルキル基であり;
l、m、n、o、p、q、r、sおよびtは、それぞれ独立して0または1〜5の整数であり、ただしl、m、n、o、p、q、r、sおよびtのうち少なくとも2つはいかなる場合にも非ゼロではない]である、請求項34に記載の細胞毒性コンジュゲート。
【請求項57】
がHであり、Rがメチルである、請求項56に記載の細胞毒性コンジュゲート。
【請求項58】
およびRがメチルである、請求項56に記載の細胞毒性コンジュゲート。
【請求項59】
細胞毒性物質が、式(IX−L)、(IX−D)および(IX−D,L)よりなる群から選択されるメイタンシン:
【化26】

[式中:
は、
【化27】

を表わし、ここで
およびRは、それぞれ独立して、CH、C、1〜10個の炭素原子を有する直鎖アルキルもしくはアルケニル、3〜10個の炭素原子を有する分枝鎖もしくは環式アルキルもしくはアルケニル、フェニル、置換フェニル、または複素環式芳香族もしくはヘテロシクロアルキル基であり、さらにRはHであってもよく;
、R、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して、H、CH、C、1〜10個の炭素原子を有する直鎖アルキルもしくはアルケニル、3〜10個の炭素原子を有する分枝鎖もしくは環式アルキルもしくはアルケニル、フェニル、置換フェニル、または複素環式芳香族もしくはヘテロシクロアルキル基であり;
l、mおよびnは、それぞれ独立して1〜5の整数であり、さらにnは0であってもよく;
Mayは、C−3の側鎖、C−14ヒドロキシメチル、C−15ヒドロキシを有する、またはC−20デスメチルであるメイタンシノイド類を表わす]である、請求項34に記載の細胞毒性コンジュゲート。
【請求項60】
がHであり、Rがメチルであるか、あるいはRおよびRがメチルである、請求項59に記載の細胞毒性コンジュゲート。
【請求項61】
がHであり、Rがメチルであり、R、R、RおよびRがそれぞれHであり;lおよびmがそれぞれ1であり;nが0である、請求項59に記載の細胞毒性コンジュゲート。
【請求項62】
およびRがメチルであり;R、R、RおよびRがそれぞれHであり;lおよびmが1であり;nが0である、請求項59に記載の細胞毒性コンジュゲート。
【請求項63】
細胞毒性物質が、式(IX−L)で表わされる、請求項60に記載の細胞毒性コンジュゲート。
【請求項64】
細胞毒性物質が、式(IX−L)で表わされる、請求項61に記載の細胞毒性コンジュゲート。
【請求項65】
細胞毒性物質が、式(IX−L)で表わされる、請求項62に記載の細胞毒性コンジュゲート。
【請求項66】
細胞毒性物質が、式(X)のメイタンシン:
【化28】

[式中:
は、
【化29】

を表わし、ここで
およびRは、それぞれ独立して、CH、C、1〜10個の炭素原子を有する直鎖アルキルもしくはアルケニル、3〜10個の炭素原子を有する分枝鎖もしくは環式アルキルもしくはアルケニル、フェニル、置換フェニル、または複素環式芳香族もしくはヘテロシクロアルキル基であり、さらにRはHであってもよく;
、R、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して、H、CH、C、1〜10個の炭素原子を有する直鎖アルキルもしくはアルケニル、3〜10個の炭素原子を有する分枝鎖もしくは環式アルキルもしくはアルケニル、フェニル、置換フェニル、または複素環式芳香族もしくはヘテロシクロアルキル基であり;
l、mおよびnは、それぞれ独立して1〜5の整数であり、さらにnは0であってもよく;
Mayは、C−3の側鎖、C−14ヒドロキシメチル、C−15ヒドロキシを有する、またはC−20デスメチルであるメイタンシノイド類を表わす]である、請求項34に記載の細胞毒性コンジュゲート。
【請求項67】
がHであり、Rがメチルであり、R、R、RおよびRがそれぞれHであり、lおよびmがそれぞれ1であり、nが0である、請求項66に記載の細胞毒性コンジュゲート。
【請求項68】
およびRがメチルであり;R、R、RおよびRがそれぞれHであり;lおよびmが1であり;nが0である、請求項66に記載の細胞毒性コンジュゲート。
【請求項69】
細胞結合剤が、ヒト化バージョンのネズミ抗CA6モノクローナル抗体DS6またはそのエピトープ結合フラグメントであり、かつ細胞毒性物質がDM1またはDM4である、請求項25に記載の細胞毒性コンジュゲート。
【請求項70】
細胞毒性物質が、式(II)のタキサン:
【化30】

である、請求項34に記載の細胞毒性コンジュゲート。
【請求項71】
CA6グリコトープ発現細胞の増殖を阻害する方法であって、CA6グリコトープ発現細胞を請求項25に記載の細胞毒性コンジュゲートと接触させることを含む方法。
【請求項72】
CA6グリコトープ発現細胞の増殖を阻害するための請求項71に記載の方法であって、細胞毒性コンジュゲートが細胞結合剤としての抗CA6モノクローナル抗体またはそのエピトープ結合フラグメントおよび細胞毒性物質としてのDM1またはDM4を含む方法。
【請求項73】
CA6グリコトープ発現細胞の増殖を阻害するための請求項71に記載の方法であって、細胞毒性コンジュゲートが細胞結合剤としての抗CA6モノクローナル抗体またはそのエピトープ結合フラグメントおよび細胞毒性物質としてのタキサン類を含む方法。
【請求項74】
CA6グリコトープ発現細胞の増殖を阻害するための請求項71に記載の方法であって、細胞毒性コンジュゲートが細胞結合剤としてのヒト化バージョンのネズミ抗体DS6またはそのエピトープ結合フラグメントおよび細胞毒性物質としてのDM1またはDM4を含む方法。
【請求項75】
CA6グリコトープ発現細胞の増殖を阻害するための請求項71に記載の方法であって、細胞毒性コンジュゲートが細胞結合剤としてのヒト化バージョンのネズミ抗体DS6またはそのエピトープ結合フラグメントおよび細胞毒性物質としてのタキサン類を含む方法。
【請求項76】
CA6グリコトープ発現細胞の増殖を阻害するための請求項71に記載の方法であって、増殖の阻害により細胞が死滅する方法。
【請求項77】
CA6グリコトープ発現細胞の増殖を阻害するための請求項71に記載の方法であって、インビボ、インビトロまたはエクスビボで実施する方法。
【請求項78】
請求項25に記載の細胞毒性コンジュゲートおよび医薬的に許容できるキャリヤーまたは賦形剤を含む、療法用組成物。
【請求項79】
細胞毒性コンジュゲートが細胞結合剤としてのヒト化バージョンのネズミ抗体DS6またはそのエピトープ結合フラグメントおよび細胞毒性物質としてのDM1またはDM4を含む、請求項78に記載の療法用組成物。
【請求項80】
細胞毒性コンジュゲートが細胞結合剤としてのヒト化バージョンのネズミ抗体DS6またはそのエピトープ結合フラグメントおよび細胞毒性物質としてのタキサン類を含む、請求項78に記載の療法用組成物。
【請求項81】
癌を伴う対象の処置方法であって、癌を伴う対象に療法有効量の請求項78に記載の療法用組成物を投与し、癌を伴う対象をこれにより処置する方法。
【請求項82】
細胞毒性コンジュゲートが細胞結合剤としてのヒト化バージョンのネズミ抗体DS6またはそのエピトープ結合フラグメントおよび細胞毒性物質としてのDM1またはDM4を含む、請求項81に記載の癌を伴う対象の処置方法。
【請求項83】
細胞毒性コンジュゲートが細胞結合剤としてのヒト化バージョンのネズミ抗体DS6またはそのエピトープ結合フラグメントおよび細胞毒性物質としてのタキサン類を含む、請求項81に記載の癌を伴う対象の処置方法。
【請求項84】
癌が、CA6グリコトープを発現または過剰発現する癌である、請求項81に記載の癌を伴う対象の処置方法。
【請求項85】
癌が、漿液性卵巣癌、子宮内膜様卵巣癌、子宮頸部の新生物、子宮内膜の新生物、外陰の新生物、胸部癌、膵臓腫瘍、および尿路上皮の腫瘍よりなる群から選択される、請求項81に記載の癌を伴う対象の処置方法。
【請求項86】
請求項25に記載の細胞毒性コンジュゲートを含み、さらに
a)細胞毒性コンジュゲートを収容するコンパートメント;および
b)キットを使用するための指示
を含むキット。
【請求項87】
細胞毒性コンジュゲートが細胞結合剤としてのヒト化バージョンのネズミ抗体DS6またはそのエピトープ結合フラグメントおよび細胞毒性物質としてのDM1またはDM4を含む、請求項86に記載のキット。
【請求項88】
細胞毒性コンジュゲートが細胞結合剤としてのヒト化バージョンのネズミ抗体DS6またはそのエピトープ結合フラグメントおよび細胞毒性物質としてのタキサン類を含む、請求項86に記載のキット。
【請求項89】
指示が、癌を伴う対象を処置するための指示を含む、請求項86に記載のキット。
【請求項90】
癌が、CA6グリコトープを発現または過剰発現する癌である、請求項89に記載のキット。
【請求項91】
癌が、漿液性卵巣癌、子宮内膜様卵巣癌、子宮頸部の新生物、子宮内膜の新生物、外陰の新生物、胸部癌、膵臓腫瘍、および尿路上皮の腫瘍よりなる群から選択される、請求項90に記載のキット。
【請求項92】
請求項78に記載の療法用組成物を含み、さらに
a)療法用組成物を収容するコンパートメント;および
b)キットを使用するための指示
を含むキット。
【請求項93】
細胞毒性コンジュゲートが細胞結合剤としてのヒト化バージョンのネズミ抗体DS6またはそのエピトープ結合フラグメントおよび細胞毒性物質としてのDM1またはDM4を含む、請求項92に記載のキット。
【請求項94】
細胞毒性コンジュゲートが細胞結合剤としてのヒト化バージョンのネズミ抗体DS6またはそのエピトープ結合フラグメントおよび細胞毒性物質としてのタキサン類を含む、請求項92に記載のキット。
【請求項95】
指示が、癌を伴う対象を処置するための指示を含む、請求項92に記載のキット。
【請求項96】
癌が、CA6グリコトープを発現または過剰発現する癌である、請求項95に記載のキット。
【請求項97】
癌が、漿液性卵巣癌、子宮内膜様卵巣癌、子宮頸部の新生物、子宮内膜の新生物、外陰の新生物、胸部癌、膵臓腫瘍、および尿路上皮の腫瘍よりなる群から選択される、請求項96に記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13−1】
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【図13−2】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23−1】
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【図23−2】
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【図23−3】
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【図23−4】
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【図24−1】
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【図24−2】
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【図25】
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【図26−1】
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【図26−2】
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【図26−3】
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【図26−4】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2011−92194(P2011−92194A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−262151(P2010−262151)
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【分割の表示】特願2006−521193(P2006−521193)の分割
【原出願日】平成16年7月21日(2004.7.21)
【出願人】(504039155)イミュノジェン・インコーポレーテッド (36)
【Fターム(参考)】