説明

CABACにおける絶対値と正負記号の分離(SAVS)を使用したdQPの2値化

【課題】符号化効率を高めて符号化の複雑度を低減することを目的とする新たな符号化規格が開発されている。本発明は、CABACエントロピ符号化におけるデルタQP(dQP)符号化の改善を示すものである。
【解決手段】符号化及び/又は復号中にコンテキスト適応型2値算術符号化(CABAC)を利用するビデオ符号化システム又は装置を、本発明により非ゼロのデルタQP(dQP)を高度に2値化するように構成する。2値化中、単進符号化を使用してdQPの値と正負記号を別個に符号化し、その後dQP非ゼロフラグも含む2進列に組み合わせる。本発明は、dQPの正値及び負値の統計的対称を利用してビットを節約し、従って符号化効率を高める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願との相互参照〕
本出願は、2011年6月30日に出願された米国仮特許出願第61/503,430号の優先権を主張するとともに、2011年6月15日に出願された米国仮特許出願第61/497,281号の優先権を主張するものであり、これらの両特許出願はその全体が引用により本明細書に組み入れられる。これらの出願の各々に対して優先権が主張される。
【0002】
〔連邦政府が支援する研究又は開発に関する記述〕
該当なし
【0003】
〔コンパクトディスクで提出された資料の引用による組み入れ〕
該当なし
【0004】
〔著作権保護を受ける資料の通知〕
本特許文献中の資料の一部は、アメリカ合衆国及びその他の国の著作権法に従って著作権保護を受ける。著作権の権利所有者は、合衆国特許商標庁の一般公開ファイル又は記録内に表される通りに第三者が特許文献又は特許開示を複製することには異議を唱えないが、それ以外は全ての著作権を留保する。著作権所有者は、限定するわけではないが米国特許法施行規則§1.14に従う権利を含め、本特許文献を秘密裏に保持しておく権利のいずれも本明細書によって放棄するものではない。
【0005】
本発明は、一般にビデオ符号化に関し、より詳細には、高効率ビデオ符号化規格内のコンテキスト適応型2値算術符号化(CABAC)での2値符号化に関する。
【背景技術】
【0006】
ビデオを効率的に記憶して通信するには、空間的及び時間的冗長性を低減させるための符号化機構が必要である。符号化技術は数多く存在するが、現在では、ビデオデータストリームをそれぞれ圧縮及び解凍する符号器/復号器(コーデック)の効率を高める努力が行われている。コーデックの目的は、送信の高速化と記憶空間の節約のためにデジタルビデオフレームのサイズを縮小することにある。長年にわたるビデオ符号化の進歩が結集した結果、最先端のコーデックでは高レベルの符号化効率が実現されるようになった。しかしながら、さらに高い効率で符号化を行ってさらにビデオビットレートを低下させることが望まれている。
【0007】
これらの開発中の符号化規格のうちの最新のものは、MPEG規格委員会とVCEG規格委員会の共同努力であるビデオ符号化共同研究部会(JCT−VC)から高効率ビデオ圧縮符号化(HEVC)と呼ばれている。
【0008】
この開発規格は、高効率構成及び低複雑度構成を含むとともに複数の符号化ツールを含み、低複雑度構成のコンテキスト適応型可変長符号化(CAVLC)、及び高効率構成のコンテキスト適応型2値算術符号化(CABAC)のいずれかを含む。高効率構成は、内部動作及び適応ループフィルタに高ビット精度を使用してこれをサポートする。
【0009】
HEVCは符号化単位(CU)構造を採用しているが、マクロブロック構造(従来のMPEG−2又はAVCコーデックなど)との主な違いは、サイズが固定サイズ(16×16など)ではなく、最大128×128まで変更できる点である。1つの最大符号化単位(LCU)がフラット領域及びビジー領域の両方を表し、このため高レベルの主観的品質を得るために1つのLCUに1つのQP値を与えるだけでは不十分である。従って、HEVCは、LCUを符号化単位(CU)に分離し、これらの各々をCUごとに異なる固有のQPによって表す。次に、現在のCUのQPと、8×8、16×16、32×32又は64×64などのサイズのCU範囲内で選択した予測アルゴリズムに基づく予測QPとの間の差分としてデルタQP(dQP)を定義することができる。HEVCでは、高度ビデオ符号化(AVC)規格と同じようにQP予測を行うことができるが、本発明の教示から逸脱することなく、本発明とともにあらゆる所望の技術を利用することもできる。
【0010】
HEVC符号化規格の試験モデルHM3.0では、CABACにおいてデルタQP(dQP)エントロピ符号化を使用し、この符号化は、(1)dQPがゼロか否かのフラグを付け、(2)dQPが非ゼロの場合には、正負記号の付いたdQPを正負記号の付かないコード番号にマップし、単進符号を使用して正負記号の付かないコード番号を2進列にマップする、という2つのステップで構成される。なお、単進符号化とは、自然数「n」を、n個の1の後にゼロを付けたもの、又はn−1個の1の後にゼロを付けたもので表すエントロピ符号化のことである。例えば、5は、単進表現では111110又は11110と表すことができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、符号化効率を高めて符号化の複雑度を低減することを目的とする新たな符号化規格が開発されている。本発明は、CABACエントロピ符号化におけるデルタQP(dQP)符号化の改善を示すものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、dQPの対称分布に適応するように、CABACにおいて異なるモードのdQPの2値化を利用する。現在のHM3.0試験モデルのアプローチは、同じ絶対値の非ゼロのdQPに異なる長さを割り当てる。しかしながら、統計では、dQPの分布は対称性を有し、このため絶対値は同じであるが正負記号が異なる非ゼロのdQPは同様の確率を有する傾向にあることが示されている。しかしながら、本発明は、デルタQPなどの正負記号の付いたシンタックスを使用し、正及び負の値に関して対称性を示す全てのビデオ符号化システム及び規格に適用できると理解されたい。
【0013】
dQPの真の分布に適応させるために、本発明は、(1)dQPがゼロか否かを示すフラグを付け、(2)dQPが非ゼロの場合には、単進符号を使用してdQPの絶対値を2進列にマップする、という修正したステップを使用してCABACにおけるdQPの2値化を実行する。その後、dQPの正負記号を符号化する。或いは、最初にdQPの正負記号を符号化して、その後dQPの絶対値を符号化してもよい。本明細書では、これらの選択肢を、いずれも絶対値と正負記号の分離(SAVS)と呼ぶ。
【0014】
本明細書の以下の部分では、本発明のさらなる態様及び実施形態を示すが、詳細な説明は、本発明の好ましい実施形態を、これに限定することなく十分に開示するためのものである。
【0015】
例示のみを目的とする以下の図面を参照することにより、本発明がより完全に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態によるCABACベースのビデオ符号器のブロック図である。
【図2】本発明の実施形態によるCABACベースのビデオ符号器のブロック図である。
【図3】本発明の実施形態による新たな2値化方法を示すフロー図である。
【図4A】図4Bの本発明の方法との比較を示す、dQP=−3の例におけるHM3.0による2値化の処理フローである。
【図4B】図4AのHM3.0との比較を示す、dQP=−3の例における本発明の方法による2値化の処理フローである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
コンテキスト適応型2値算術符号(CABAC)は、進化するHEVC規格で使用するための2つのエントロピ符号化方式の一方であり、H.264/AVCビデオ符号化規格で行われていたものである。一般に、CABAC符号化は、2値化、コンテキストモデル化、及び2値算術符号化で構成される。本発明の絶対値と正負記号の分離(SAVS)方法は、CABACで使用するための2値化を洗練させたものであり、同じ値の正符号及び負符号の確率の統計的対称に特によく適している。
【0018】
HEVC試験モデル(HM)3.0では、個々のCUが異なるQPを有することができる。CUの符号化に使用するQPを示すために、現在のCUのQPと予測QPの間の「dQP」で表される差分をシンタックス内で符号化する。HEVCの高効率(HE)構成では、dQPの値が、コンテキスト適応型2値算術符号化(CABAC)によって符号化される。この符号化処理は、(1)非ゼロのdQPにフラグを付け、(2)正負記号の付いたdQPを正負記号の付かないコード番号にマップし、単進符号を使用してコード番号を2進列にマップする、という2つのステップで構成される。
【0019】
HM3.0のアプローチは、絶対値が同じ非ゼロのdQPに異なる長さを割り当てる。例えば、dQP=−1には3ビットを割り当て、dQP=1には2ビットを割り当てる。統計では、dQPの分布は対称性を有し、絶対値は同じであるが正負記号が異なる非ゼロのdQPは同じ確率を有する傾向にあることが示されている。
【0020】
本発明では、dQPの正負記号とdQPの絶対値が別個に符号化されるようにdQPを符号化する。dQPが非ゼロの場合を示すフラグを符号化し、次にdQPの絶対値とdQPの正負記号を別個に符号化し、或いはdQPの正負記号を符号化した後に絶対値を符号化する。別個に符号化したdQPの正負記号と絶対値を最終的な2進列に組み合わせる。なお、本発明によれば、dQPの絶対値とdQPの正負記号を符号化する順序を入れ替えてもよい。
【0021】
図1及び図2に、本発明による、CABACを使用してSAVS2値化機構で符号化を行うように構成された、符号器10及び復号器50を備えた符号化装置の実施形態例を示す。
【0022】
図1及び図2に示す本発明の実施形態では、開発作業を最小化して互換性を最大化するために、本発明を別の従来のビデオ符号化(符号化及び/又は復号)システムのCABAC処理ブロック内で実施する。
【0023】
図1に示す符号器10は、1又はそれ以上のプロセッサ44により実行される符号化要素12を有する。この例では、ビデオフレーム入力14の他に、参照フレーム16及びフレーム出力18を示している。動き予測(ME)22及び動き補償(MC)24とともにインター予測20を示す。インター予測とイントラ予測の間のスイッチとともにイントラ予測26を示す。順方向変換部30、量子化段32、及びSAVSでのCABAC符号化34への出力とともに加算接点28を示す。図示の逆量子化部36及び逆変換部38は、加算接点40に結合され、デブロッキングフィルタ及び/又はループフィルタなどのフィルタ42が後に続く。
【0024】
図示の符号器は、符号化に関連するプログラムを実行するための少なくとも1つの処理装置(CPUなど)46及び少なくとも1つのメモリ48を含むような処理手段44とともに実現されると理解されたい。また、本発明の要素は、媒体上に記憶されたプログラムとして実現することができ、これに符号器10及び/又は復号器50のCPUが実行のためにアクセスできると理解されるであろう。
【0025】
図2の復号器50には、実質的に図1に示す符号器に含まれる要素の一部である処理手段76とともに、参照フレーム54及びビデオ出力74に作用する復号ブロック52を示す。本発明の実施形態によれば、この復号器ブロックは、符号化したビデオ信号56を受け取り、この信号が、SAVSによるCABACエントロピ復号器58、逆量子化部60、逆変換部62を通じて処理される。逆変換部62の出力と、動き補償68とともに示すインター予測66とイントラ予測70の間の選択との間には加算部64を示している。加算接点64からの出力は、ループフィルタ、デブロッキングフィルタ、又はこれらの組み合わせとして構成できるフィルタ72によって受け取られる。この復号器は、符号化に関連するプログラムを実行するための少なくとも1つの処理装置78及び少なくとも1つのメモリ80を含む処理手段76とともに実現されると理解されたい。また、本発明の要素は、媒体上に記憶されたプログラムとして実現することができ、これに処理装置(CPU)78が実行のためにアクセスすることができる。
【0026】
このプログラムは、一時的伝播信号を構成するだけでなくあらゆる所望の形及び数の静的又は動的メモリ装置に含まれるようなプログラムを実際に保持できるという点で非一時的有形(物理)コンピュータ可読媒体であるメモリから実行できると理解されたい。これらのメモリ装置を、本明細書において非一時的媒体と見なされるように(停電などの)全ての条件下でデータを保持するように実現する必要はない。
【0027】
本明細書で説明するプログラムは、一時的伝播信号を構成するだけでなくあらゆる所望の形及び数の静的又は動的メモリ装置に含まれるようなプログラムを実際に保持できるという点で非一時的有形(物理)コンピュータ可読媒体を含む(1又は複数の)メモリ装置から実行できると理解されたい。これらのメモリ装置を、本明細書において非一時的媒体と見なされるように、永久に又は(停電などの)全ての条件下でデータを保持するように実現する必要はない。
【0028】
図3は、CABAC SAVS方法のフロー図である。dQP値の決定時などに、dQPフラグが符号化される(90)。一例として、ある関数を使用して現在のCUのQPを符号化し、この関数内部で、まず現在のCUのQPと予測QPの差異としてdQPを取得し、その後dQPフラグを符号化する。dQPフラグが非ゼロであると判明した場合(92)、単進符号化を使用してdQPの絶対値をマップ(変換)する(94)。正負記号も単進符号に別個にマップし(96)、その後これらの別個の符号を文字列に組み合わせる(98)。ステップ94及び96の順序は、処理に影響を与えずに逆にすることもできると理解されたい。dQPがゼロである場合、符号化すべきdQPの値が存在せず、例えばQPを符号化するための関数がdQPフラグのみを戻す。なお、dQPが非ゼロであるかどうかを示すために、dQPフラグは常に符号化される。説明したdQPが非ゼロの例では、dQPが常に1つの「1」ビットから開始すると認識されるであろう。
【0029】
図4Aに、HM3.0試験仕様のCABACによる2値化の例を示す。ステップ100においてdQPが−3に等しいこの例では、ステップ102において、この値(正負記号及び絶対値)が、コード番号が5の単一のエンティティとして単進符号化され、ステップ104において、5つの2進桁数字をとるビット列「111110」が得られることが分かる。この例及び以下で説明する図4Bの文字列には、dQPの符号化よりも前の非ゼロのdQPビットを示していない。
【0030】
図4Bに、CABAC SAVSによる2値化の例を示す。正負記号と絶対値を別個に符号化する同じ−3の符号化例110を示す。ステップ112において3の絶対値をとり、ステップ114においてコード番号2が、及びステップ116において3つの2進桁数字を必要とするビット列110が得られる。同様に、ステップ118において正負記号を符号化し、ステップ120においてコード番号1が、及びステップ122においてビット列1が得られる。ステップ124において、これらのビット列を組み合わせ、組み合わせの順序に応じて1101又は1110が得られる。従来の符号化には6つの数字が使用されるのに対し、この符号化に必要な2進数字の数は合計4つであることを理解されたい。
【0031】
従って、これらから分かるように、本発明は、とりわけ以下の独創的な実施形態を含む。
【0032】
1.ビデオ符号化を行うための装置であって、ビデオを符号化及び/又は復号するように構成されたコンピュータと、前記コンピュータ上で実行されるように構成されたプログラムとを備え、前記プログラムが、時間的及び/又は空間的冗長性を低減させるためにインター予測及び/又はイントラ予測を実行し、符号化中に変換及び量子化を実行し、及び/又は復号中に逆変換及び逆量子化を実行し、符号化及び/又は復号中にコンテキスト適応型2値算術符号化(CABAC)を実行し、(a)単進符号化を使用してdQPの絶対値をマップし、(b)dQPの正負記号を別個に符号化し、(c)正負記号の2進列と絶対値の2進列を組み合わせることにより非ゼロのデルタQP(dQP)の2値化を実行するように構成されることを特徴とする装置。
【0033】
2.前記プログラムが、前記dQPの絶対値を符号化する前に前記dQPの正負記号を符号化すべく前記コンピュータ上で実行されるように選択的に構成されることを特徴とする実施形態1に記載の装置。
【0034】
3.前記ビデオ符号化装置が、ブロックサイズが固定されず、CUごとに異なる独自のQPを各々が有する複数のCUに最大符号化単位(LCU)が分離された符号化単位(CU)構造を利用し、現在のCUのQPと予測QPの間の差分を示すデルタQP(dQP)がシンタックス内で符号化されることを特徴とする実施形態1に記載の装置。
【0035】
4.前記ビデオ符号化が、高効率ビデオ符号化(HEVC)規格に従って実行されることを特徴とする実施形態1に記載の装置。
【0036】
5.前記ビデオ符号化が、前記高効率ビデオ符号化(HEVC)規格内の高効率符号化モードで実行されることを特徴とする実施形態4に記載の装置。
【0037】
6.前記装置が、符号器/復号器(コーデック)を備えることを特徴とする実施形態1に記載の装置。
【0038】
7.前記プログラムが、前記非ゼロのdQP及びその正負記号を符号化する前に、dQPが非ゼロであることを示すフラグビットを符号化すべく前記コンピュータ上で実行されるように構成されることを特徴とする実施形態1に記載の装置。
【0039】
8.前記2値化が、所与の絶対値に関して正又は負である確率が同じdQPの値から恩恵を受けることを特徴とする実施形態1に記載の装置。
【0040】
9.ビデオ符号化を行う方法であって、時間的及び/又は空間的冗長性を低減させるためにインター予測及び/又はイントラ予測を実行するステップと、符号化中に変換及び量子化を実行し、及び/又は復号中に逆変換及び逆量子化を実行するステップと、符号化及び/又は復号中にコンテキスト適応型2値算術符号化(CABAC)を実行するステップと、(a)単進符号化を使用してdQPの絶対値をマップし、(b)dQPの正負記号を別個に符号化し、(c)正負記号の2進列と絶対値の2進列を組み合わせることにより非ゼロのデルタQP(dQP)の2値化を実行するステップとを含むことを特徴とする方法。
【0041】
10.前記dQPの正負記号の符号化が、前記dQPの絶対値をマップする前に選択的に行われることを特徴とする実施形態1に記載の方法。
【0042】
11.前記ビデオ符号化方法が、ブロックサイズが固定されず、CUごとに異なる独自のQPを各々が有する複数のCUに最大符号化単位(LCU)が分離された符号化単位(CU)構造を利用し、現在のCUのQPと予測QPの間の差分を示すデルタQP(dQP)がシンタックス内で符号化されることを特徴とする実施形態9に記載の方法。
【0043】
12.前記ビデオ符号化が、高効率ビデオ符号化(HEVC)規格に従って実行されることを特徴とする実施形態9に記載の方法。
【0044】
13.前記ビデオ符号化が、前記高効率ビデオ符号化(HEVC)規格内の高効率符号化モードで実行されることを特徴とする実施形態12に記載の方法。
【0045】
14.前記装置が、符号器/復号器(コーデック)を備えることを特徴とする実施形態9に記載の方法。
【0046】
15.前記非ゼロのdQP及びその正負記号を符号化する前に、dQPが非ゼロであることを示すフラグビットが符号化されることを特徴とする実施形態9に記載の方法。
【0047】
16.前記2値化が、所与の絶対値に関して正又は負である確率が同じdQPの値から恩恵を受けることを特徴とする実施形態9に記載の方法。
【0048】
17.ビデオ符号化を行うように構成されたコンピュータ上で実行可能なコンピュータプログラムを含む非一時的コンピュータ可読媒体であって、前記ビデオ符号化が、時間的及び/又は空間的冗長性を低減させるためにインター予測及び/又はイントラ予測を実行するステップと、符号化中に変換及び量子化を実行し、及び/又は復号中に逆変換及び逆量子化を実行するステップと、符号化及び/又は復号中にコンテキスト適応型2値算術符号化(CABAC)を実行するステップと、(a)単進符号化を使用してdQPの絶対値をマップし、(b)dQPの正負記号を別個に符号化し、(c)正負記号の2進列と絶対値の2進列を組み合わせることにより非ゼロのデルタQP(dQP)の2値化を実行するステップとを含むことを特徴とするコンピュータ可読媒体。
【0049】
18.前記プログラムが、前記dQPの絶対値をマップする前に前記dQPの正負記号を符号化すべく前記コンピュータ上で実行されるように選択的に構成されることを特徴とする実施形態17に記載のコンピュータ可読媒体。
【0050】
19.前記ビデオ符号化が、ブロックサイズが固定されず、CUごとに異なる独自のQPを各々が有する複数のCUに最大符号化単位(LCU)が分離された符号化単位(CU)構造を利用し、現在のCUのQPと予測QPの間の差分を示すデルタQP(dQP)がシンタックス内で符号化されることを特徴とする実施形態17に記載のコンピュータ可読媒体。
【0051】
20. 前記ビデオ符号化が、高効率ビデオ符号化(HEVC)規格に従って高効率符号化モードで実行されることを特徴とする実施形態17に記載のコンピュータ可読媒体。
【0052】
本発明の実施形態は、本発明の実施形態による方法及びシステムを示すフロー図、及び/又はコンピュータプログラム製品としても実現できるアルゴリズム、式、又はその他の計算表現を参照しながら説明することができる。この点、ハードウェア、ファームウェア、及び/又はコンピュータ可読プログラムコード論理の形で具体化された1又はそれ以上のコンピュータプログラム命令を含むソフトウェアなどの様々な手段により、フロー図の各ブロック又はステップ、及びフロー図のブロック(及び/又はステップ)の組み合わせ、アルゴリズム、式、又は計算表現を実現することができる。理解されるように、このようなあらゆるコンピュータプログラム命令を、以下に限定されるわけではないが、汎用コンピュータ又は専用コンピュータ、又は機械を生産するためのその他のあらゆるプログラマブル処理装置を含むコンピュータ上にロードして、コンピュータ又はその他のプログラマブル処理装置上で実行されるコンピュータプログラム命令が、(単複の)フロー図の(単複の)ブロック内に特定される機能を実施するための手段を生み出すようにすることができる。
【0053】
従って、フロー図のブロック、アルゴリズム、式、又は計算表現は、特定の機能を実行するための手段の組み合わせ、特定の機能を実行するためのステップの組み合わせ、及びコンピュータ可読プログラムコード論理手段の形で具体化されるような、特定の機能を実行するためのコンピュータプログラム命令をサポートする。特定の機能又はステップを実行する専用ハードウェアベースのコンピュータシステム、又は専用ハードウェアとコンピュータ可読プログラムコード論理手段の組み合わせにより、本明細書で説明したフロー図の個々のブロック、アルゴリズム、式、又は計算表現、及びこれらの組み合わせを実施できる点も理解されよう。
【0054】
さらに、コンピュータ可読プログラムコード論理の形で具体化されるようなこれらのコンピュータプログラム命令を、コンピュータ又はその他のプログラマブル処理装置に特定の態様で機能するように指示することができるコンピュータ可読メモリに記憶して、これらのコンピュータ可読メモリに記憶された命令が、(単複の)フロー図の(単複の)ブロック内に特定した機能を実施する命令手段を含む製造の物品を作り出すようにすることができる。コンピュータプログラム命令をコンピュータ又はその他のプログラマブル処理装置上にロードし、コンピュータ又はその他のプログラマブル処理装置上で一連の動作ステップが実行されるようにしてコンピュータで実施される処理を生成し、コンピュータ又はその他のプログラマブル処理装置上で実行される命令が、(単複の)フロー図の(単複の)ブロック、(単複の)アルゴリズム、(単複の)式、又は(単複の)計算表現内で特定される機能を実施するためのステップを提供するようにすることができる。
【0055】
上記の説明から、以下の態様を含む様々な方法で本発明を具体化できることが理解されよう。
【0056】
上記の説明は多くの詳細を含んでいるが、これらは本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の現在のところ好ましい実施形態の一部を例示するものにすぎないと解釈すべきである。従って、本発明の範囲は、当業者にとって明らかになると考えられる他の実施形態も完全に含み、従って添付の特許請求の範囲以外のいかなるものによっても本発明の範囲を限定すべきではなく、特許請求の範囲では、単数形による要素への言及は、明述しない限り「唯一」を意味するものではなく、「1又はそれ以上」を意味するものであると理解されよう。当業者には周知の上述した好ましい実施形態の要素の構造的及び機能的同等物も引用により本明細書に明確に組み入れられ、本特許請求の範囲に含まれることを意図している。さらに、本発明が解決しようとする個々の及び全ての課題は本特許請求の範囲に含まれるので、装置及び方法がこれらの問題に対応する必要はない。さらに、本開示の要素、構成要素又は方法ステップは、これらが特許請求の範囲に明示されているかどうかにかかわらず、一般に公開されることを意図するものではない。本明細書における請求項の要素については、この要素が「〜のための手段」という表現を使用して明確に示されていない限り、米国特許法112条第6項の規定によって解釈すべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビデオ符号化を行うための装置であって、
ビデオを符号化及び/又は復号するように構成されたコンピュータと、
前記コンピュータ上で実行されるように構成されたプログラムと、
を備え、前記プログラムが、
時間的及び/又は空間的冗長性を低減させるためにインター予測及び/又はイントラ予測を実行し、
符号化中に変換及び量子化を実行し、及び/又は復号中に逆変換及び逆量子化を実行し、
符号化及び/又は復号中にコンテキスト適応型2値算術符号化(CABAC)を実行し、
(a)単進符号化を使用してdQPの絶対値をマップし、
(b)dQPの正負記号を別個に符号化し、
(c)正負記号の2進列と絶対値の2進列を組み合わせる、
ことにより非ゼロのデルタQP(dQP)の2値化を実行する、
ように構成されることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記プログラムが、前記dQPの絶対値を符号化する前に前記dQPの正負記号を符号化すべく前記コンピュータ上で実行されるように選択的に構成される、
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記ビデオ符号化装置が、ブロックサイズが固定されず、CUごとに異なる独自のQPを各々が有する複数のCUに最大符号化単位(LCU)が分離された符号化単位(CU)構造を利用し、
現在のCUのQPと予測QPの間の差分を示すデルタQP(dQP)がシンタックス内で符号化される、
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記ビデオ符号化が、高効率ビデオ符号化(HEVC)規格に従って実行される、
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記ビデオ符号化が、前記高効率ビデオ符号化(HEVC)規格内の高効率符号化モードで実行される、
ことを特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記装置が、符号器/復号器(コーデック)を備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記プログラムが、前記非ゼロのdQP及びその正負記号を符号化する前に、dQPが非ゼロであることを示すフラグビットを符号化すべく前記コンピュータ上で実行されるように構成される、
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記2値化が、所与の絶対値に関して正又は負である確率が同じdQPの値から恩恵を受ける、
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項9】
ビデオ符号化を行う方法であって、
時間的及び/又は空間的冗長性を低減させるためにインター予測及び/又はイントラ予測を実行するステップと、
符号化中に変換及び量子化を実行し、及び/又は復号中に逆変換及び逆量子化を実行するステップと、
符号化及び/又は復号中にコンテキスト適応型2値算術符号化(CABAC)を実行するステップと、
(a)単進符号化を使用してdQPの絶対値をマップし、
(b)dQPの正負記号を別個に符号化し、
(c)正負記号の2進列と絶対値の2進列を組み合わせる、
ことにより非ゼロのデルタQP(dQP)の2値化を実行するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
前記dQPの正負記号の符号化が、前記dQPの絶対値をマップする前に選択的に行われる、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記ビデオ符号化方法が、ブロックサイズが固定されず、CUごとに異なる独自のQPを各々が有する複数のCUに最大符号化単位(LCU)が分離された符号化単位(CU)構造を利用し、
現在のCUのQPと予測QPの間の差分を示すデルタQP(dQP)がシンタックス内で符号化される、
ことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記ビデオ符号化が、高効率ビデオ符号化(HEVC)規格に従って実行される、
ことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記ビデオ符号化が、前記高効率ビデオ符号化(HEVC)規格内の高効率符号化モードで実行される、
ことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記装置が、符号器/復号器(コーデック)を備える、
ことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記非ゼロのdQP及びその正負記号を符号化する前に、dQPが非ゼロであることを示すフラグビットが符号化される、
ことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項16】
前記2値化が、所与の絶対値に関して正又は負である確率が同じdQPの値から恩恵を受ける、
ことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項17】
ビデオ符号化を行うように構成されたコンピュータ上で実行可能なコンピュータプログラムを含む非一時的コンピュータ可読媒体であって、前記ビデオ符号化が、
時間的及び/又は空間的冗長性を低減させるためにインター予測及び/又はイントラ予測を実行するステップと、
符号化中に変換及び量子化を実行し、及び/又は復号中に逆変換及び逆量子化を実行するステップと、
符号化及び/又は復号中にコンテキスト適応型2値算術符号化(CABAC)を実行するステップと、
(a)単進符号化を使用してdQPの絶対値をマップし、
(b)dQPの正負記号を別個に符号化し、
(c)正負記号の2進列と絶対値の2進列を組み合わせる、
ことにより非ゼロのデルタQP(dQP)の2値化を実行するステップと、
を含むことを特徴とするコンピュータ可読媒体。
【請求項18】
前記プログラムが、前記dQPの絶対値をマップする前に前記dQPの正負記号を符号化すべく前記コンピュータ上で実行されるように選択的に構成される、
ことを特徴とする請求項17に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項19】
前記ビデオ符号化が、ブロックサイズが固定されず、CUごとに異なる独自のQPを各々が有する複数のCUに最大符号化単位(LCU)が分離された符号化単位(CU)構造を利用し、
現在のCUのQPと予測QPの間の差分を示すデルタQP(dQP)がシンタックス内で符号化される、
ことを特徴とする請求項17に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項20】
前記ビデオ符号化が、高効率ビデオ符号化(HEVC)規格に従って高効率符号化モードで実行される、
ことを特徴とする請求項17に記載のコンピュータ可読媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【公開番号】特開2013−5450(P2013−5450A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−137298(P2012−137298)
【出願日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】