説明

CATVシステム及びそのCATVシステムに用いられる接続器

【課題】 複数の光ノードに効率的に電力を供給可能なCATVシステム、及び、そのCATVシステムに利用される接続器を提供する。
【解決手段】 CATVシステム1Aは光・同軸ハイブリッド型のものであり、ヘッドエンド3に光伝送路9を介して接続され第1及び第2の加入者宅5A,5Bに第1及び第2の同軸ケーブル19Aを介して接続される第1及び第2の光ノード11A,11Bと、第1の光ノード11Aに接続されており電力を供給する電源供給器25と、第1及び第2の同軸ケーブルが接続される接続器とを備え、第1及び第2の光ノードは光伝送路からの光信号を電気信号に変換して同軸ケーブルに出力し、同軸ケーブルからの電気信号を光信号に変換して光伝送路に出力し、第1の光ノードは電源供給器から供給される電力の一部を第1の同軸ケーブルに出力し、接続器は第1の同軸ケーブルから入力される電力を選択的に第2の同軸ケーブルに出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CATVシステム、及び、そのCATVシステムに用いられる接続器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、CATVシステムにおいて、ケーブルインターネットやケーブルテレビ電話などを実現するために、ヘッドエンドと加入者宅とを繋ぐ伝送路を、光信号を伝送する光伝送路と、電気信号を伝送する同軸ケーブルとを組み合わせて構成する光・同軸ハイブリッド型のものが知られている。この光・同軸ハイブリッド型のCATVシステムでは、ヘッドエンドに接続された幹線上に光ノードが設けられており、光ノードが担当するサービスエリアとしてのセルに含まれる複数の加入者宅と光ノードとが同軸ケーブルによって接続されている。この光ノードには、電源供給器が接続されており、電源供給器から供給される電力によって、光ノードは、光伝送路から入力される光信号を電気信号に変換して同軸ケーブルに出力する。
【特許文献1】特開平9−102761号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、1つのヘッドエンドが担当するサービスエリアが加入者宅数に応じて分割され、単位サービスエリアとしての複数のセルを有する場合、従来のCATVシステムの構成では、各セル内に設置された光ノード毎に電源供給器を設けることになる。そのため、セル数に対応した数の電源供給器が必要となり、結果として、各光ノードに効率的に電力の供給ができていないという問題点があった。
【0004】
そこで、本発明は、複数の光ノードに効率的に電力を供給可能なCATVシステム、及び、そのCATVシステムに利用される接続器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明に係るCATVシステムは、光伝送路と同軸ケーブルとを介してヘッドエンドと複数の加入者宅とが接続される光・同軸ハイブリッド型のCATVシステムであって、ヘッドエンドに光伝送路を介して接続されると共に、加入者宅のうちの第1の加入者宅に第1の同軸ケーブルを介して接続される第1の光ノードと、ヘッドエンドに光伝送路を介して接続されると共に、加入者宅のうちの第2の加入者宅に第2の同軸ケーブルを介して接続される第2の光ノードと、第1の光ノードに接続されており、電力を供給する電源供給器と、第1の同軸ケーブルと第2の同軸ケーブルとが接続される接続器と、を備え、第1及び第2の光ノードは、光伝送路から入力される光信号を電気信号に変換して第1及び第2の同軸ケーブルに出力すると共に、第1及び第2の同軸ケーブルから入力される電気信号を光信号に変換して光伝送路に出力し、第1の光ノードは、電源供給器から供給される電力の一部を第1の同軸ケーブルに出力し、接続器は、第1の同軸ケーブルから入力される電力を選択的に第2の同軸ケーブルに出力することを特徴とする。
【0006】
この構成では、電源供給器から電力が供給される第1の光ノードは、ヘッドエンドからの光信号を変換した電気信号と電源供給器からの電力の一部とを第1の同軸ケーブルに出力するので、第1の同軸ケーブルでは、電力と電気信号とが伝送される。そして、接続器には、第1及び第2の同軸ケーブルが接続されており、接続器は第1の同軸ケーブルから入力される電気信号及び電力のうちの電力を選択的に通すことから第2の同軸ケーブルに電力が供給されることになる。その結果として、第2の光ノードに電力が供給される。すなわち、CATVシステムでは、1つの電源供給器によって第1及び第2の光ノードに電力を供給できており、効率的に第1及び第2の光ノードへ電力を供給できる。
【0007】
また、接続器は、第1及び第2の同軸ケーブル間において電力を選択的に通すことから、第1及び第2の同軸ケーブルによって伝送される電気信号が互いに干渉することを抑制できている。
【0008】
また、本発明に係るCATVシステムでは、ヘッドエンドに光伝送路を介して接続されると共に、加入者宅のうちの第3の加入者宅に第3の同軸ケーブルを介して接続される第3の光ノードを更に備え、第3の光ノードは、光伝送路から入力される光信号を電気信号に変換して第3の同軸ケーブルに出力すると共に、第3の同軸ケーブルから入力される電気信号を光信号に変換して光伝送路に出力し、接続器には、第3の同軸ケーブルが更に接続されており、接続器は、第1の同軸ケーブルから入力される電力を選択的に第2及び第3の同軸ケーブルに出力することが好ましい。
【0009】
この構成では、接続器には、第1〜第3の同軸ケーブルが接続されており、第1の同軸ケーブルから入力される電力を第2及び第3の同軸ケーブルに選択的に出力する。これにより、第2及び第3の同軸ケーブルに接続された第2及び第3の光ノードに電力を供給できる。すなわち、1つの電源供給器によって3つの光ノードに電力を供給できるので、CATVシステムとして更に効率的に電力を供給できている。また、接続器は、電力を選択的に通すため、接続器に接続されている第1〜第3の同軸ケーブルから入力される電気信号が互いに干渉することが抑制されている。
【0010】
更に、本発明に係るCATVシステムが備える接続器は、1MHzより低い周波数成分を有する電力を選択的に通すフィルタ回路部を有することが好適である。
【0011】
CATVシステムで利用される電気信号の周波数帯域は、加入者宅側からヘッドエンド側に伝送される上り信号としての電気信号と、ヘッドエンド側から加入者宅側に伝送される下り信号としての電気信号とで分けられている。具体的には、上り信号としての電気信号の周波数帯域は、例えば、10〜55MHzであり、下り信号としての電気信号の周波数帯域は、例えば、70〜770MHzである。
【0012】
したがって、接続器が、1MHzより低い周波数成分を有する電力を選択的に通すことによって、例えば、接続器に第1及び第2の同軸ケーブルが接続されている場合には、第2の同軸ケーブルを介して第2の光ノードに電力を供給できる一方、第1及び第2の同軸ケーブルで伝送される電気信号が互いに干渉することがより確実に抑制される。また、例えば、接続器に第1〜第3の同軸ケーブルが接続されている場合には、第2及び第3の同軸ケーブルを介して第2及び第3の光ノードに電力を供給できる一方、第1〜第3の同軸ケーブルで伝送される電気信号が互いに干渉することをより確実に抑制できる。
【0013】
また、本発明に係る接続器は、光伝送路及び同軸ケーブルが接続されており、光伝送路から入力される光信号を電気信号に変換して同軸ケーブルに出力すると共に、同軸ケーブルから入力される電気信号を光信号に変換して光伝送路に出力する複数の光ノードを有しており、光ノードのうちの1つの光ノードは、供給される電力の一部をその光ノードに接続された同軸ケーブルに出力するCATVシステムに利用される接続器であって、光ノードの各々に接続された同軸ケーブルに接続される複数の入出力端子と、入出力端子に接続されており、入出力端子のうちの1つの入出力端子から入力される電力を選択的に通すフィルタ回路部と、入出力端子の各々に接続されており、フィルタ回路部に並列に設けられると共に、同軸ケーブルから入力される電気信号を終端する終端回路部とを備えることを特徴とする。
【0014】
この構成では、フィルタ回路部は電力を選択的に通すので、複数の入出力端子の1つに接続された同軸ケーブルから入力される電力を他の入出力端子から取り出すことができる。その結果、それらの入出力端子に接続される同軸ケーブルを介してその同軸ケーブルが接続されている光ノードに電力を供給することが可能である。これにより、複数の光ノードの1つに電力を供給することによって他の光ノードにも電力が供給されることになるので、CATVシステムが有する複数の光ノードに効率的に電力を供給できる。また、フィルタ回路部が電力を選択的に通すことから、入出力端子から入力される電気信号は終端回路部に入力されて終端されることになる。その結果として、接続器に接続された複数の同軸ケーブルの各々によって伝送される電気信号が互いに干渉することが抑制されている。
【0015】
また、本発明に係る接続器のフィルタ回路部は、フィルタ回路部は、入出力端子のうちの一つの入出力端子に接続された同軸ケーブルから入力される電力を、他の入出力端子に接続された同軸ケーブルに分配して出力することが好ましい。この場合、複数の入出力端子のうちの一つから入力される電力を、他の入出力端子に接続された同軸ケーブルに分配して出力するため、それらの入出力端子に接続された同軸ケーブルを介してその同軸ケーブルに接続された光ノードに確実に電力を供給できる。
【0016】
更に、本発明に係る接続器が有するフィルタ回路部は、1MHzより低い周波数成分を有する電力を選択的に通すことが好適である。
【0017】
前述したように、通常、CATVシステムで利用される電気信号の周波数帯域は、例えば、上り信号としての電気信号の周波数帯域が約10〜55MHzであり、下り信号としての電気信号の周波数帯域が約70〜770MHzである。そのため、フィルタ回路部が1MHzより低い周波数成分を有する電力を選択的に通すことによって、接続器に接続された同軸ケーブルを介して光ノードに確実に電力を供給でき、また、接続器に接続された同軸ケーブルによってそれぞれ伝送される電気信号の干渉が更に抑制できている。
【発明の効果】
【0018】
本発明によるCATVシステム及び接続器によれば、複数の光ノードに効率的に電力を供給することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面と共に本発明のCATVシステム及びそのCATVシステムに利用される接続器の好適な実施形態について説明する。なお、以下の説明においては、同一の要素には同一の符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0020】
図1に示すように、CATVシステム1Aは、複数の加入者宅に放送番組等を配信すると共に、図示しないインターネット網や電話網などに接続されたヘッドエンド3を有している。そして、CATVシステム1Aは、ヘッドエンド3と複数の加入者宅との間の伝送路に光伝送路と同軸ケーブルとを組み合わせた光・同軸ハイブリッド型(HFC型)のものであり、ヘッドエンド3と複数の加入者宅との双方向通信が可能であってテレビ放送の配信のみならず、例えば、ケーブルインターネットやケーブルテレビ電話も実現可能となっている。
【0021】
以下の説明では、ヘッドエンド側を上流側とし、加入者宅側を下流側とする。また、ヘッドエンドと加入者宅との間で送受信される放送信号、映像信号、音声信号、インターネット信号などをデータ信号と称す。下りデータ信号には、放送信号、映像信号、音声信号、インターネット信号等が主に含まれており、上りデータ信号には、インターネット信号や音声信号が主に含まれている。また、複数の加入者宅のうち後述するセル7Aに含まれる加入者宅を第1の加入者宅5Aと称し、セル7Bに含まれる加入者宅を第2の加入者宅5Bと称し、セル7Cに含まれる加入者宅を第3の加入者宅5Cと称す。
【0022】
ヘッドエンド3が担当するサービスエリアは、加入者宅数に応じて単位サービスエリアとしての3つのセル7A〜7Cに分割されている。セル7A,7B,7C内には、光伝送路9によってヘッドエンド3に接続された第1の光ノード11A、第2の光ノード11B及び第3の光ノード11Cが設置されている。第1〜第3の光ノード11A〜11Cは、例えば、互いに200〜1000m程度離して配置されており、第1〜第3の光ノード11A〜11Cが担当するセル7A〜7C内の第1〜第3の加入者宅5A〜5Cの数は、例えば、10〜2000件である。
【0023】
光伝送路9は、ヘッドエンド3に接続された光ケーブル13と、光ケーブル13から分岐した光ケーブル15A,15B,15Cを有する。光ケーブル13上には光合分波器としての光カプラが収納された3つの光クロージャ17A,17B,17Cが設けられている。
【0024】
光クロージャ17Aには、一端が第1の光ノード11Aに接続された光ケーブル15Aが接続されている。また、光クロージャ17Bには、一端が第2の光ノード11Bに接続された光ケーブル15Bが接続されている。更に、光クロージャ17Cには、一端が第3の光ノード11Cに接続された光ケーブル15Cが接続されている。
【0025】
なお、各光ケーブル13,15A〜15Cは、上りデータ信号用の光ファイバ及び下りデータ信号用の光ファイバを有しているとしてもよいし、双方向に対して1本の光ファイバを有するとしてもよい。
【0026】
この構成では、ヘッドエンド3が光ケーブル13に出力した下りデータ信号としての光信号は、各光クロージャ17A〜17Cによって光分岐されて各光ケーブル15A〜15Cを介して第1〜第3の光ノード11A〜11Cに入力されることになる。また、第1〜第3の光ノード11A〜11Cが光ケーブル15A〜15Cに出力した上りデータ信号としての光信号は、光クロージャ17A〜17C及び光ケーブル13を介してヘッドエンド3に入力されることになる。
【0027】
次に、各セル7A〜7C内のネットワークについて説明する。セル7A内に設置された第1の光ノード11Aには、複数の第1の同軸ケーブル19Aが接続されている。第1の光ノード11Aは、光ケーブル15Aから入力された光信号を電気信号に変換して、各第1の同軸ケーブル19Aに出力する。また、第1の光ノード11Aは、各第1の同軸ケーブル19Aから入力される電気信号を光信号に変換して光ケーブル15Aに出力する。
【0028】
各第1の同軸ケーブル19A上には、光分岐器としての複数のタップオフ21Aが設けられており、タップオフ21Aと第1の加入者宅5Aとは引き込み線としての同軸ケーブル23Aによって接続されている。これにより、第1の光ノード11Aと第1の加入者宅5Aとは、第1の同軸ケーブル19A、タップオフ21A及び同軸ケーブル23Aを介して接続されるので、第1の光ノード11Aと第1の加入者宅5Aとは、電気信号を送受信できることになる。
【0029】
セル7B内のネットワークの構成は、セル7Aの場合の構成と同様である。すなわち、セル7Bが有する第2の光ノード11Bには、複数の第2の同軸ケーブル19Bが接続されており、第2の同軸ケーブル19B上に設けられた複数のタップオフ21Bと第2の加入者宅5Bとが引き込み線としての第2の同軸ケーブル23Bによって接続されている。これにより、第2の光ノード11Bとセル7B内の第2の加入者宅5Bとは、電気信号を送受信できることになる。
【0030】
また、セル7C内のネットワークの構成も、セル7Aの場合の構成と同様である。すなわち、セル7Cが有する第3の光ノード11Cには、複数の第3の同軸ケーブル19Cが接続されており、第3の同軸ケーブル19C上に設けられた複数のタップオフ21Cと第3の加入者宅5Cとが引き込み線としての第3の同軸ケーブル23Cによって接続されている。これにより、光ノード11Cとセル7C内の第3の加入者宅5Cとは、電気信号を送受信できることになる。
【0031】
なお、第1〜第3の加入者宅5A〜5Cから出力される上りデータ信号としての電気信号の周波数帯域は、約10〜55MHzであり、第1〜第3の光ノード11A〜11Cが光信号を変換して出力する下りデータ信号としての電気信号の周波数帯域は、約70〜770MHzである。
【0032】
また、図1に示すように、CATVシステム1Aは、第1〜第3の光ノード11A〜11Cに電力を供給するための電源供給器25、及び、接続器としてのパワースプリッタ27を有する。
【0033】
電源供給器25は、第1の光ノード11Aに電力供給用配線29を利用して接続されており、第1の光ノード11Aに電力を直接供給する。この際、第1の光ノード11Aは、電源供給器25から供給された電力の少なくとも一部を周波数50Hz以下の交流又は直流の電源電流として電気信号に重畳して第1の同軸ケーブル19Aに出力する。これにより、第1の同軸ケーブル19Aには、電力としての電源電流と下りデータ信号としての電気信号とが一緒に伝送されることになる。そして、図1に示すように、この第1の同軸ケーブル19Aは、パワースプリッタ27を介して他のセル7B,7C内のネットワークを構成する第2及び第3の同軸ケーブル19B,19Cに電気的に接続されている。
【0034】
パワースプリッタ27は、第1の同軸ケーブル19Aを流れる電源電流を、第2及び第3の同軸ケーブル19B,19Cに分配して出力する。これにより、第1の光ノード11Aから第1の同軸ケーブル19Aに出力された電源電流は、第2及び第3の同軸ケーブル19B,19Cを介して第2及び第3の光ノード11B,11Cに入力されるので、第2及び第3の光ノード11B,11Cに電力が供給されることになる。このように、電源供給器25によって第1〜第3の光ノード11A〜11Cに電力を供給することから、電源供給器25の電源容量は、第1〜第3の光ノード11A〜11Cに電力を供給可能な容量を要していればよく、例えば、320VA(ボルトアンペア)である。
【0035】
また、パワースプリッタ27は、第1〜第3の同軸ケーブル19A〜19Cの各々から入力される電気信号を他の第1〜第3の同軸ケーブル19A〜19Cに通さないように遮断する。これにより、各セル7A〜7C内のネットワークを構成する第1〜第3の同軸ケーブル19A〜19Cの各々によって伝送される電気信号が互いに干渉することがないようになっている。
【0036】
このパワースプリッタ27についてより詳細に説明する。
【0037】
図2は、パワースプリッタの一例を示す回路図である。パワースプリッタ27は、同軸ケーブルと接続される4つの入出力端子31,33,35,37と、フィルタ回路部39と、4つの終端回路部41,43,45,47とを有している。
【0038】
フィルタ回路部39は、一端が各入出力端子31〜37に接続された4つのチョークコイル49,51,53,55を有し、各チョークコイル49〜55の他端は互いに電気的に接続されている。そして、各チョークコイル49〜55に並列にコンデンサ57が接続されている。
【0039】
これにより、フィルタ回路部39は、フィルタ回路部39が有する各チョークコイル49〜55とコンデンサ57との組み合わせによって4つのローパスフィルタが構成されることになる。そして、チョークコイル49〜55及びコンデンサ57は、1MHz以上の周波数成分を有する電気信号を遮断し、1MHzより低い周波数成分を有する電源電流を通すように選択されている。従って、フィルタ回路部39は、第1の同軸ケーブル19Aから入出力端子31を通して入力される電源電流及び電気信号のうち電源電流を選択的に他の入出力端子33〜37に通すことになる。
【0040】
また、終端回路部41は、一端が入出力端子31に接続されておりチョークコイル49に並列に設けられたコンデンサ59と、コンデンサ59に直列に接続されておりコンデンサ59と反対側の端が接地された終端抵抗61とを有している。このコンデンサ59は、1MHz以上の周波数成分を有する電気信号を通すように選択されている。これにより、終端回路部41はハイパスフィルタとして機能し、入出力端子31から入力される上り又は下りのデータ信号としての電気信号が終端回路部41に好適に入力されることになる。
【0041】
そして、終端抵抗61は、コンデンサ59との組み合わせによって入出力端子31から入力される電気信号が終端されるように選択されている。これにより、入出力端子31から入力される電気信号は、終端回路部41によって確実に終端される。
【0042】
終端回路部43〜47の構成は、終端回路部41の構成と同様であり、入出力端子33〜37に接続されておりチョークコイル51〜55に並列に設けられたコンデンサ63〜67と、一端がコンデンサ63〜67に直列に接続され他端が設置された終端抵抗69〜73とを有する。そして、終端回路部43〜47は、入出力端子33〜37から入力される電気信号を終端する。
【0043】
上記構成では、入出力端子31〜37は互いに等価であるため、入出力端子31〜37に第1〜第3の同軸ケーブル19A〜19Cの何れを接続してもパワースプリッタ27の動作は同じである。そこで、図1に示すように、入出力端子31に第1の同軸ケーブル19Aを接続し、入出力端子33に第2の同軸ケーブル19Bを接続し、入出力端子35に第3の同軸ケーブル19Cを接続した場合についてパワースプリッタ27の動作について説明する。
【0044】
前述したように第1の同軸ケーブル19Aには、10MHz以上の周波数成分を有する高周波信号としての電気信号と50Hzより低い周波数成分を有する電源電流が伝送されるので、入出力端子31には、電気信号と電源電流とが一緒に入力される。入出力端子31の後段には、チョークコイル49とコンデンサ59とが並列に設けられていることから、電気信号はチョークコイル49側には流れないでコンデンサ59側に流れて終端される。換言すれば、入出力端子31〜37を電気的に接続するフィルタ回路部39によって電気信号は遮断されるので、入出力端子31から入力された電気信号は、他の入出力端子33〜37には流れない。
【0045】
一方、電源電流が有する周波数成分は1MHzより低いため、チョークコイル49側に流れることから、電源電流は、フィルタ回路部39に選択的に入力される。そして、フィルタ回路部39内において、チョークコイル49の他端には、入出力端子33,35に接続されたチョークコイル51,55が接続されているので、電源電流は、チョークコイル49を通過した後、入出力端子33,35にそれぞれ分配されて第2及び第3の同軸ケーブル19B,19Cに出力される。
【0046】
また、第2及び第3の同軸ケーブル19B,19Cから入出力端子33,35を通して入力される電気信号は、入出力端子31から入力される電気信号と同様に、フィルタ回路部39には入力されずに(フィルタ回路部39によって遮断されて)終端回路部43,45にそれぞれ入力される。すなわち、同軸ケーブル19B,19Cから入出力端子33,35を通して入力される電気信号は、入出力端子31から入力される電気信号と同様に、パワースプリッタ27内で遮断されることになる。
【0047】
図1に示すように、CATVシステム1Aでは、このパワースプリッタ27を利用して、第1〜第3の同軸ケーブル19A〜19Cを互いに電気的に接続し、第1の同軸ケーブル19Aによって伝送される電源電流を第2及び第3の同軸ケーブル19B,19Cを通して第2及び第3の光ノード11B,11Cに入力している。これにより、1つの電源供給器25によって第1〜第3の光ノード11A〜11Cに電力を供給することができることから、第1〜第3の光ノード11A〜11Cへの効率的な給電が実現されている。この場合、第1〜第3の光ノード11A〜11Cの各々に電源供給器を設ける場合に比べて電源供給器の数が減少するので、CATVシステム1Aの構築に伴うコストが低減する。
【0048】
ところで、通常、上りデータ信号には、第1〜第3の加入者宅5A〜5Cを互いに区別するための識別信号が付与されている。そのため、電力を供給するために、仮に、第1〜第3の同軸ケーブル19A〜19Cを、電気信号も通過可能なように電気的に接続すると、第1〜第3の加入者宅5A〜5Cの各々から出力された電気信号が干渉し、どのセル内のどの加入者宅から出力された電気信号か判別できない虞がある。
【0049】
これに対して、パワースプリッタ27は、1MHzより低い周波数成分を有する電源電流を選択的に通し、1MHz以上の周波数成分を有する電気信号を遮断するので、第1〜第3の同軸ケーブル19A〜19Cの各々によって伝送される電気信号が干渉することがない。従って、どのセル内のどの加入者宅から出力された電気信号かを確実に特定することができる。そのため、光伝送路9及び第1〜第3の同軸ケーブル19A〜19Cを介してインターネット信号などを伝送しても、各セル7A〜7C内の第1〜第3の加入者宅5A〜5Cとヘッドエンド3との双方向通信が確実にできる。
【0050】
(第2の実施形態)
図3は、本発明に係るCATVシステムの他の実施形態を示すブロック図である。CATVシステム1Bの構成は、セル7D及びパワースプリッタ75を有する点で、図1に示したCATVシステム1Aの構成と主に相違する。この点を中心にしてCATVシステム1Bについて説明する。
【0051】
ヘッドエンド3が担当するサービスエリアは、加入者宅数に応じて単位サービスエリアとしての3つのセル7A、セル7B、セル7Dに分割されている。
【0052】
そして、セル7D内のネットワークの構成は、セル7Aの場合と同様の構成を有している。すなわち、第4の光ノード11Dに複数の第4の同軸ケーブル19Dが接続されており、第4の同軸ケーブル19D上に設けられた複数のタップオフ21Dと第4の加入者宅5Dとが引き込み線としての同軸ケーブル23Dによって接続されている。これにより、第4の光ノード11Dと第4の加入者宅5Dとが電気信号を送受信できることになっている。また、第4の光ノード11Dには、光ケーブル13上に設けられた光クロージャ17Dに一端が接続された光ケーブル15Dが接続されており、ヘッドエンド3と第4の光ノード11Dとは、データ信号としての光信号を送受信できるようになっている。
【0053】
CATVシステム1Bにおいて、第1の同軸ケーブル19Aと第4の同軸ケーブル19Dとは、パワースプリッタ75によって電気的に接続されている。このパワースプリッタ75の構成は、図1及び図2に示したパワースプリッタ27の構成と同じであるため、説明を省略する。第1の同軸ケーブル19A及び第4の同軸ケーブル19Dは、パワースプリッタ75が有する入出力端子33,31にそれぞれ接続されている。
【0054】
このCATVシステム1Bでは、CATVシステム1Aの場合と同様に、第1の同軸ケーブル19Aによって伝送される電源電流は、パワースプリッタ27を通して第2の同軸ケーブル19Bに入力される。また、第1の同軸ケーブル19Aによって伝送される電源電流は、パワースプリッタ75を通して第4の同軸ケーブル19Dに入力される。そのため、1つの電源供給器25によって第1の光ノード11A,第2の光ノード11B、第3の光ノード11Dにも確実に電力を供給できることになる。
【0055】
また、パワースプリッタ27,75は電気信号を遮断するので、電力を供給するためにパワースプリッタ27,75を利用して第1の同軸ケーブル19A、第2の同軸ケーブル19B及び第4の同軸ケーブル19Dを互いに電気的に接続してもそれらによってそれぞれ伝送される電気信号は互いに干渉しない。そのため、上りデータ信号がどのセルの加入者宅から出力されたものか確実に特定することが可能である。
【0056】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、接続器(パワースプリッタ27)は、4つの入出力端子31〜37を有するとしたが、入出力端子の数は2以上であれば特に限定されない。そして、入出力端子の数に応じてチョークコイルの数や終端回路部の数を変えればよい。
【0057】
また、フィルタ回路部39では、4つのチョークコイル49〜55に対して1つのコンデンサ57を設けているが、チョークコイル49〜55毎にコンデンサを設けてもよい。更に、CATVシステム1A(1B)では、ヘッドエンド3のサービスエリアが3つのセル7A〜7C(7A,7B,7D)に分割されているとしたが、1つのヘッドエンド3に対するセルの数は特に限定されず、ヘッドエンド3が担当するサービスエリアの加入者宅数に応じて変えればよい。
【0058】
例えば、CATVシステム1Aにおいて、他の光ノードを更に設ける場合には、その光ノードに接続された同軸ケーブルは、パワースプリッタ27の入出力端子37に接続することも可能である。また、CATVシステム1Bにおいて、他の光ノードを更に設ける場合には、その光ノードに接続された同軸ケーブルは、パワースプリッタ27,57の入出力端子35,37に接続することもできる。
【0059】
更に、接続器の数は、光ノードの数に応じて変えればよく、また、CATVシステム1A及びCATVシステム1Bに示すように、光ノードの配置や接続器への同軸ケーブルの接続の仕方などに応じて変えればよい。
【0060】
更にまた、第1〜第4の光ノード11A〜11Dの構成は同じとしたが、例えば、第2〜第4の光ノード11B〜11Dには、電力としての電源電流を電気信号に重畳して出力する機能はなくてもよい。
【0061】
また、第1〜第4の同軸ケーブル19A〜19Dには、タップオフ21A〜21Dが設けられているとしたが、更に他の中継器などが設けられていても良く、CATVシステム1A,1Bでは、第1〜第4の同軸ケーブル19A〜19D上に設けられた中継器への電力も供給可能である。
【0062】
更に、接続器としてのパワースプリッタ27,75が有するフィルタ回路部39は、電気信号を遮断するとしたが、画像障害等の前述した電気信号の干渉の影響がでない程度に電気信号を減衰できていればよい。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明に係るCATVシステムの一実施形態の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明に係る接続器の一実施形態の構成を示す回路図である。
【図3】本発明に係るCATVシステムの他の実施形態の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0064】
1A,1B…CATVシステム、3…ヘッドエンド、5A…第1の加入者宅、5B…第2の加入者宅、5C…第3の加入者宅、9…光伝送路、11A…第1の光ノード、11B…第2の光ノード,11C…第3の光ノード、21A〜21C…タップオフ分岐器、23A〜23C…加入者宅への引込同軸ケーブル、25…電源供給器、27,75…パワースプリッタ(接続器)、31,33,35,37…入出力端子、39…フィルタ回路部、41,43,45,47…終端回路部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光伝送路と同軸ケーブルとを介してヘッドエンドと複数の加入者宅とが接続される光・同軸ハイブリッド型のCATVシステムであって、
前記ヘッドエンドに前記光伝送路を介して接続されると共に、前記加入者宅のうちの第1の加入者宅に第1の同軸ケーブルを介して接続される第1の光ノードと、
前記ヘッドエンドに前記光伝送路を介して接続されると共に、前記加入者宅のうちの第2の加入者宅に第2の同軸ケーブルを介して接続される第2の光ノードと、
前記第1の光ノードに接続されており、電力を供給する電源供給器と、
前記第1の同軸ケーブルと前記第2の同軸ケーブルとが接続される接続器と、
を備え、
前記第1及び第2の光ノードは、前記光伝送路から入力される光信号を電気信号に変換して前記第1及び第2の同軸ケーブルに出力すると共に、前記第1及び第2の同軸ケーブルから入力される電気信号を光信号に変換して前記光伝送路に出力し、
前記第1の光ノードは、前記電源供給器から供給される電力の一部を前記第1の同軸ケーブルに出力し、
前記接続器は、前記第1の同軸ケーブルから入力される電力を選択的に前記第2の同軸ケーブルに出力することを特徴とするCATVシステム。
【請求項2】
前記ヘッドエンドに前記光伝送路を介して接続されると共に、前記加入者宅のうちの第3の加入者宅に第3の同軸ケーブルを介して接続される第3の光ノードを更に備え、
前記第3の光ノードは、前記光伝送路から入力される光信号を電気信号に変換して前記第3の同軸ケーブルに出力すると共に、前記第3の同軸ケーブルから入力される電気信号を光信号に変換して前記光伝送路に出力し、
前記接続器には、前記第3の同軸ケーブルが更に接続されており、
前記接続器は、前記第1の同軸ケーブルから入力される電力を選択的に前記第2及び第3の同軸ケーブルに出力することを特徴とする請求項1に記載のCATVシステム。
【請求項3】
前記接続器は、1MHzより低い周波数成分を有する電力を選択的に通すフィルタ回路部を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のCATVシステム。
【請求項4】
光伝送路及び同軸ケーブルが接続されており、前記光伝送路から入力される光信号を電気信号に変換して前記同軸ケーブルに出力すると共に、前記同軸ケーブルから入力される電気信号を光信号に変換して前記光伝送路に出力する複数の光ノードを有しており、前記光ノードのうちの1つの光ノードは、供給される電力の一部をその光ノードに接続された同軸ケーブルに出力するCATVシステムに利用される接続器であって、
前記光ノードの各々に接続された同軸ケーブルに接続される複数の入出力端子と、
前記入出力端子に接続されており、前記入出力端子のうちの1つの入出力端子から入力される電力を選択的に通すフィルタ回路部と、
前記入出力端子の各々に接続されており、前記フィルタ回路部に並列に設けられると共に、前記同軸ケーブルから入力される前記電気信号を終端する終端回路部とを備えることを特徴とする接続器。
【請求項5】
前記フィルタ回路部は、前記入出力端子のうちの一つの入出力端子に接続された同軸ケーブルから入力される電力を、他の入出力端子に接続された同軸ケーブルに分配して出力することを特徴とする請求項4に記載の接続器。
【請求項6】
前記フィルタ回路部は、1MHzより低い周波数成分を有する電力を選択的に通すことを特徴とする請求項4又は5に記載の接続器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−229491(P2006−229491A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−39682(P2005−39682)
【出願日】平成17年2月16日(2005.2.16)
【出願人】(500241273)株式会社ブロードネットマックス (10)
【Fターム(参考)】