説明

CCTVカメラ用レンズの絞り装置及び絞り装置ユニット

【目的】 絞りと光学フィルタの機構部とがレンズ鏡筒内に設けられた小型なCCTVカメラ用レンズの絞り装置を得る。また、夜間撮影時に赤外光まで透過光量を規制できる絞り装置を得る。。
【構成】 絞りユニット基板の表裏に光学フィルタと絞りを可動に沿わせて設け、この光学フィルタと絞りを駆動する絞り駆動手段とフィルタ駆動手段を含む全ての要素をレンズ鏡筒内に配置したCCTVカメラ用レンズの絞り装置。光学フィルタは、赤外領域の光を遮断する赤外カットフィルタとし、絞り羽根には、絞り開口を形成する透光部分に、赤外領域の透過率が可視光領域の透過率とほぼ同等乃至同等以下の分光透過率特性または赤外領域の光を遮断する分光透過率特性を有するNDフィルタを貼り付けることができる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【技術分野】本発明は、赤外カットフィルタなどの光学フィルタが搭載されたCCTV(監視カメラシステム)用レンズの絞り装置に関する。さらに本発明は、可視光波長域(400〜700nm程度)から近赤外波長域(700〜1000nm程度)まで実用可能な昼夜監視カメラシステム用レンズの絞り装置に関する。
【0002】
【従来の技術及びその問題点】昼夜監視カメラシステムとして、カメラボディのカラー撮像素子(CCD)上に昼間は可視光領域の光を結像させてカラー撮影を行い、夜間は可視光領域の光に加えて近赤外光領域の光を結像させてモノクロ撮影を行いTVモニタ上に監視像を映し出すシステムが知られている。このシステムは、昼間の撮影時には撮像素子前方(ボディ内またはレンズ鏡筒内)に近赤外カットフィルタを位置させて可視波長域の光のみに基づいてカラー撮影が行われる。夜間のモノクロ撮影時には、同フィルタを撮像素子の前方から取り除き赤外波長域及び可視波長域の光をモノクロ映像として検出する。
【0003】図9(a)、(b)は、赤外カットフィルタを備える従来型のCCTVカメラの構成を示す図である。赤外カットフィルタ22は、図9(a)、(b)に示されるようにカメラ本体10の中に設けられている。図9(a)では、赤外カットフィルタ22が光路上に配置されているので、レンズ鏡筒18に入射した光は、絞り装置21'を介してカメラ本体10に入射し、赤外力ットフィルタ22を透過してCCD11に達し被写体像として投影される。一方、図9(b)では赤外カットフィルタ22が光路上から取り除かれているので、レンズ鏡筒18に入射した光は、絞り装置21'を介してカメラ本体10に入射すると赤外カットフィルタ22を介することなくCCD11へ投影される。レンズ鏡筒18内の絞り装置21’は、レンズ鏡筒18内に設けられたガルバノメータ等の絞り装置用アクチュエータ24により駆動されその開口の大きさが調整される。一方、カメラ本体10内の赤外カットフィルタ22は、カメラ本体10内に設けられたモータ等の赤外カットフィルタ用アクチュエータ25'により駆動され、図9(a)、(b)のように光軸L上に配置されたり、光軸L上から取り除かれたりする。
【0004】しかし、カメラ本体10とレンズ鏡筒18とが一体化されたCCTVカメラなどでは、カメラ本体自体が小型であるため、赤外カットフィルタのためのユニットをカメラ本体内に設けることは困難である。
【0005】また、従来の絞り装置においては、赤外カットフィルタ22を挿入しない夜間モノクロ撮影時における光量の制御範囲を広げるために、絞り羽根に、絞り開口上に位置するNDフィルタを貼り付けた構成が知られている。しかし、従来のNDフィルタは、赤外光に対しては透過率が上がった状態、いわゆる抜けた状態となる。この従来のNDフィルタの分光透過率特性の一例を図10に示した。このような分光透過率特性のNDフィルタではモノクロ撮影の際の可視光と赤外光を含む全光量を均一に抑えることができず、また可視光に比べて赤外光の透過量が多くなる。その結果、赤外光の反射が強い被写体部分が明るく写り、見づらい画像となる。
【0006】
【発明の目的】本発明は、以上の問題意識に基づき、絞りと光学フィルタの機構部とがレンズ鏡筒内に設けられた小型なCCTVカメラ用レンズの絞り装置を得ることを目的としている。また本発明は、夜間撮影時に赤外光まで透過光量を規制できる絞り装置を得ることを目的とする。
【0007】
【発明の概要】本発明のCCTVカメラ用レンズの絞り装置は、レンズ鏡筒内に設けられた絞りと、絞りを保持するための平板形状をした絞りユニット基板と、絞りの開口の大きさを調整するための絞り駆動手段と、波長に応じて光を遮断または透過する光学フィルタと、光学フィルタを光路上に抜き差しするためのフィルタ駆動手段とを備え、絞りと光学フィルタとが絞りユニット基板に沿わせて配置されており、絞り、上記絞りユニット基板、上記絞り駆動手段、上記光学フィルタ、及び上記フィルタ駆動手段の全てが上記レンズ鏡筒内に配置されていることを特徴としている。
【0008】絞りは2枚の絞り羽根を有し、光学フィルタは2つの開口を有する平板形状をしたフィルタ固定板の少なくとも一方の開口に設けられ、2枚の絞り羽根及びフィルタ固定板は、それぞれ絞りユニット基板の第1及び第2の面に沿わせて配置されることが好ましい。これにより、絞り装置をより薄く小型にすることができる。
【0009】フィルタ駆動手段は、光学フィルタが光路上に挿入されたときの光学フィルタの位置と、光学フィルタが光路上から取り除かれたときの光学フィルタの位置とを保持するためのラッチング機構を備えることが好ましい。これにより、フィルタの抜き差しを行うためにフィルタ駆動手段が駆動されているとき以外は、ラッチング機構により、光学フィルタの位置を保持することができるためフィルタ駆動手段(アクチュエータ)の電力消費を減ずることができる。
【0010】また、絞り装置の耐久性を向上させ、コストを削減し、回路構成を簡略化し更に小型化するには、フィルタ駆動手段にガルバノメータを用いることが好ましい。
【0011】光学フィルタは、具体的には、赤外領城の光を遮断する赤外カットフィルタである。赤外領城は、波長約700nm〜1000nmの波長領域である。
【0012】絞り羽根には、絞り開口を形成する透光部分に、別の光学フィルタを設けることができる。この別の光学フィルタとしては、NDフィルタが好ましい。特に夜間撮影時の赤外光を減少させるため、このNDフィルタは、赤外領域の透過率が可視光領域の透過率とほぼ同等乃至同等以下の分光透過率特性、または、赤外領域の光を遮断する分光透過率特性を有するフィルタとすることが好ましい。また、このNDフィルタの表面反射率は、約2%以下とすることが好ましい。
【0013】本発明は、別の態様によると、カラー撮像素子を備えたCCTVカメラのレンズ鏡筒内に設けられる絞り装置ユニットであって、撮影開口を有する平板部を備えた絞りユニット基板と、撮影開口に択一して対応する一対の開口を備えていて、該開口の一方に赤外領域の光を遮断する赤外カットフィルタを有し、ユニット基板の平板部の表裏の一方の面に移動可能に支持されたフィルタ固定板と、平板部の他方の面に移動可能に支持され、相対移動位置に応じて撮影開口に重なる絞り開口の大きさを変化させる2枚の絞り板と、この2枚の絞り板の少なくとも一方に、絞り開口上に位置するようにして貼り付けたNDフィルタと、絞りユニット基板上に、平板部を挟んで支持された一対のアクチュエータと、を設け、この一対のアクチュエータの一方を、フィルタ固定板を往復移動させてその一対の開口を択一して撮影開口上に位置させる赤外カットフィルタ用アクチュエータとし、他方を、2枚の絞り板を互いに反対方向に相対移動させて絞り開口を変化させる絞り駆動用アクチュエータとしたことを特徴としている。赤外領域は、波長約700nm〜1000nmの波長領域である。
【0014】NDフィルタは、赤外領域の透過率が可視光領域の透過率とほぼ同等乃至同等以下の分光透過率特性、または赤外領域の光を遮断する分光透過率特性を有するフィルタを用いると、夜間のモノクロ撮影で見やすい画像が得られる。NDフィルタの表面反射率は、約2%以下であることが好ましい。また、NDフィルタは、樹脂ベースに金属薄膜を蒸着したフィルタから構成することが好ましい。
【0015】一対のアクチュエータは、絞りユニット基板の撮影開口を中心として、略対称位置に該絞りユニット基板に固定する(180゜対向配置)と、小型にできバランスがよい。
【0016】フィルタ固定板の一対の開口のうち、赤外カットフィルタを備えない側の開口には、透光性平行平面板を設けることができる。そして、赤外カットフィルタ用アクチュエータにより、昼光撮影時には赤外カットフィルタをカラー撮像素子の前方に位置させ、夜間撮影時には透光性平行平面板をカラー撮像素子の前方に位置させることで、ピントずれを補正できる。
【0017】このCCTVカメラ用絞り装置ユニットは、フィルタ固定板を、その一対の開口の一方と他方が撮影開口上に位置するときにそれぞれラッチするラッチング機樽を備えることが好ましい。
【0018】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1(a)、(b)は、本発明の一実施形態である絞り装置の構造を模式的に示す図である。図1(a)は、赤外カットフィルタ(光学フィルタ)が光軸(光路)上に挿入された状態を示し、図1(b)は、赤外カットフィルタが光軸(光路)上から取り除かれた状態を示している。
【0019】本実施形態のCCTVカメラは、カメラ本体10とレンズ鏡筒部18が一体的に構成されており、カメラ本体10には、例えばCCD11などの撮像素子が搭載されており、レンズ鏡筒部18には、撮像レンズ(図示せず)や絞り装置ユニット(絞り装置)20が設けられている。絞り装置ユニット20は、絞り21、赤外カットフィルタ22、絞りユニット基板23、絞り用ガルバノメータ(絞り装置用アクチュエータ)24及びフィルタ用ガルバノメータ(赤外カットフィルタ用アクチュエータ)25等からなる。絞り用ガルバノメータ24は、絞り21の駆動に用いられ、フィルタ用ガルバノメータ25は、赤外カットフィルタ22の駆動に用いられる。
【0020】図1(a)において、光は、図左手方向から撮像レンズ(図示せず)を介してレンズ鏡筒部18に入射し、絞り21、赤外カットフィルタ22を経てCCD11の撮像面に結像される。このとき、赤外波長城の光は選択的にカット(遮断)されるのでCCD11の撮像面には可視波長域の光による映像のみが結像される。このときの映像はカラー映像として取得される。一方、図1(b)では、赤外カットフィルタ22がフィルタ用ガルバノメータ25により、光軸L上から退避されているので、レンズ鏡筒部18に入射した光は、絞り21のみを介してCCD11に結像される。すなわちCCD11では、可視波長域の光のほか赤外波長域の光も受光される。このときCCD11で撮像された映像はモノクロ映像として取得される。なお、絞りユニット基板23には、後述するように入射した光が通過するのに十分な円形開口が設けられており、光はこの開口を通してCCD11の受光面に達する。
【0021】絞り21は、2枚の絞り羽根(図2参照)から構成される従来公知の絞りである。すなわち絞り羽根は、形の異なる薄い金属板からなり、これら金属板を重ねることにより絞りのための開口が形成される。開口の大きさは、ユニット基板23に沿って2枚の絞り羽根の配置をずらすことにより調整される。
【0022】図2(a)、(b)は、2枚の絞り羽根30a、30bの平面形状をそれぞれ示している。絞り羽根30a、30bには、それぞれ略V字切欠成形部31a、31bが形成されている。破線で描かれた略扇形の部材は、写真用のフィルムをベースにした薄く軽量なNDフィルタ32a、32bであり、破線で示された位置に接着剤などにより固着される。NDフィルタ32a、32bは、一方のみを絞り羽根30a、30bに接着してもよい。図において右側に延びるアーム30a、3bは、絞り用ガルバノメータ24の動力を絞り羽根に伝達するためのものであり、アーム33a、33bの先端部にはスロット34a、34bが形成されている。スロット34a、34bは、絞り用ガルバノメータ24の駆動用レバーに設けられたピン状突起部と係合される。
【0023】図3(a)、(b)は、赤外カットフィルタ22が取り付けられるフィルタ固定板40の平面形状を表している。
【0024】フィルタ固定板40は、例えば図中左方向へ延びるアーム43を備える略長方形の薄い金属板であり、アーム43の長手方向にその長辺を持つ。フィルタ固定板40には、長辺に沿って大きさの等しい2つの円形開口41、42が形成されており、円形開口41は、破線で示された赤外カットフィルタ22により覆われている。図3(a)の実施形態では、円形開口42は素通しの単純穴であり、何も設けられていない。赤外カットフィルタ22は、4つの爪部22aと接着剤によりフィルタ固定板40の円形開口41周囲に固着されている。アーム43の先端部にはスロット44が形成されており、後述するようにフィルタ用ガルバノメータ25の駆動用レバーに設けられたピン状突起部と係合される。なお、円形開口41、42の直径は、絞りユニット基板23に設けられた円形開口(撮影開口)51(図4参照)の直径に略等しく本実施形態における最大の絞り開口(撮影開口)に相当する。
【0025】赤外カットフィルタ22は、例えば、図8に示す分光透過率特性曲線Xに示すように、約700nm以上の赤外光をカットする分光透過率特性を有する。より具体的には、可視光域から近赤外光(約700nm〜1000nm程度)までの波長領域の光に対して、透過率が概ね5%程度以下の分光透過率特性を有している。この赤外カットフィルタ22は、例えば多層膜からなる蒸着干渉フィルタとして形成される。
【0026】一方、NDフィルタ32a、32bは、例えば図8の分光透過率特性Yに示すように、赤外光の透過率が可視光領域の透過率とほぼ同等乃至同等以下の分光透過率特性を有している。このNDフィルタ32a、32bは、例えば、樹脂ベースに多層膜からなる金属薄膜を蒸着して形成される。このように赤外光領域においても可視光領域の透過率とほぼ同等の分光透過率特性を有すると、昼間カラー撮影を行う場合は色特性を損なうことなく透過光量を制限することが可能になり、モノクロ撮影を行う場合は、感度を有する赤外の波長帯に対しても十分にFナンバーを上げて透過光量を制限することが可能になる
【0027】NDフィルタ32a、32bの分光透過率特性としては、図8の透過率曲線Zに示すように、赤外領域をカットする特性としてもよい。このような特性のNDフィルタ32a、32bを撮影光路上に位置させてモノクロ撮影を行えば、赤外光の反射率が高い部分が明るく映り、あたかも赤外光撮影に見える、といった現象は生じない。
【0028】また、NDフィルタ32a、32bは、その表面の反射率が約2%以下に抑えられていることが好ましい。このような低反射率とすると、NDフィルタ32a、32bの表面反射が少なく、NDフィルタ32a、32b表面で反射した光によってゴースト、フレアーなどを生じるおそれがない。
【0029】次に図4〜図7を参照して、本実施形態の絞り装置(絞り装置ユニット)について説明する。絞りユニット基板23は、平板部50を有し、この平板部50の表面(第1の面)側には、絞り羽根30a、30bが重ねられた状態で沿わせて配置されるとともに、ガルバノメータ24、25が取り付けられる。一方、絞りユニット基板23の平板部50の裏面(第2の面)には、フィルタ固定板40が沿わせて配置される。平板部50の略中央部付近(撮像光学系の光軸Lが通る部分)には、入射光を通すための円形の開口51が形成されている。ガルバノメータ24、25は、絞りユニット基板23の両端部に、撮影開口51に関して略対称位置に配置されている(180゜対向配置)。
【0030】また平板部50の周囲には肉厚の枠部54が形成されている。枠部54には、絞りユニット基板23をレンズ鏡筒内の支持部材(図示せず)に固定するための2つの突出部55が設けられている。突出部55の中央には、ビスを通すための穴55aが形成されており、絞りユニット基板50は2つの穴55aに挿通されるビスによりレンズ鏡筒内に固定される。また、平板部50の表面側及び裏面側の枠部には、平板部50に配置された絞り羽根30a、30b及びフィルタ固定板40が、平板部55の各面に沿って摺動でき、かつ各面から離れないように支持するための爪状部材56が設けられている。図4(a)、(b)に示されるように本実施形態では、表面側に4つ、裏面側に3つの爪状部材56が設けられている。
【0031】絞り用ガルバノメータ24は、図4の右側(図5、6の上側)の台部52の円形の破線で示される位置に取り付けられる。一方、フィルタ用ガルバノメータ25は図4の左側(図5、図6の下側)の台部53の円形の破線で示される位置に取り付けられ、各台部52、53に描かれた円形破線の中心には、ガルバノメータ24、25の回転軸を押通するための軸孔52a、53aが各々設けられている。
【0032】図4(c)の側面図においては、図面下側が表面側、上側が裏面側に対応している。すなわち、左右の台部52、53は、平板部50よりも図において低い位置に設けられている。台部52、53の裏面側は各台部52、53の形状に略沿って凹状の空間52b、53bが形成されており、各ガルバノメータの回転軸24c、25cは、軸孔52a、53aを通ってこの凹状の空聞52b、53bに達している。各ガルバノメータの回転軸に取付けられる駆動レバー24a、24b及び25aは、この凹状の空間52b、53bにそれぞれ納められている。
【0033】絞り用ガルバノメータ24が取り付けられる台部52の平板部50側の側面には開口52cが形成されている。また、平板部50は台部52の手前で終了し端面50aを形成している。すなわち、凹状の空間52bは、平板部50の表面側の空間と連通し、絞り羽根30a、30bのアーム33a、33bは開口52cを通って凹状の空間52bに納められた駆動レバー24a、24bのピン状突起部24d、24eとスロット34a、34bを介してそれぞれ係合される。一方、フィルタ固定板40のアーム34は、その先端部に設けられたスロット44を介して凹状の空間53bに納められた駆動レバー25aのピン状突起部25dに系合される。
【0034】絞り用ガルバノメータ24の回転軸24cに取り付けられた駆動レバー24a、24bは、バネ57により回転軸24c回りに(図6において反時計回り)付勢されている。図5、図6は、絞り用ガルバノメータ24が駆動されていないときの配置を示しており、駆動レバー24a、24bにはバネ57の付勢力のみが作用し、駆動レバー24a、24bは図6において反時計回り(図7の時計回り)に最も回転された位置にある。このとき、絞り羽根30aは台部52側に最も引き寄せられた位置にあり、絞り羽根30bは台部52側から最も遠い位置にある。すなわち、2つの略V字切欠成形部31a、31bは、開口51の略中央部において重なり合い略正方形の絞り開口(光路)を形成する。このときこの正方形の絞り開口上には、図5の破線で示されるように、略扇状のNDフィルタ33a、33bが重なり合って位置し、絞り開口を通る光の光量を減衰させる。NDフィルタ33a、33bが、図8のYやZのような分光透過率特性をもつものであれば、赤外光が遮断される。
【0035】絞り用ガルバノメータ24が駆動され、駆動レバー24a、24bが図6の時計回り(図5の反時計回り)に回動されると、絞り羽根30aは台部52から遠ざかる方向へ移動され、絞り羽根30bは台部52の方向へ移動される。これにより、2つの略V字切欠成形部31a、31bが形成する開口は駆動レバー24a、24bの回動とともに大きくなり、駆動レバー24a、24bの回動が時計回り(図6において)に最大となる位置に達したとき、円形開口51は2つの略V字切欠成形部31a、31bが形成する開口に完全に包含される。また、このときNDフィルタ33a、33bはともに円形開口51の外側にあり、絞りの大きさは円形開口51に一致する。つまり、NDフィルタ33a、33bは共に撮影光路(円形開口51)から退避する。
【0036】一方、フィルタ用ガルバノメータ25の回転軸25cには、駆動レバー25aの他にラッチング用レバー58の基部が取り付けられている。ラッチング用レバー58は例えばデルリン(商標名)等の合成樹脂材料からなるもので、その先端部(自由端部)に円弧状のアーム部を備え、その先端には回転軸25cの半径方向に突出するラッチング用の突起部58aが設けられている。このラッチング用レバー58は円弧状のアーム部が撓むことによりバネ性を有し、台部53の凹状の空間53bに形成されたラッチング用の固定溝59a、59bとともにラッチング機構をなす。図6において突起部58aは固定溝59aに係止されており、このときフィルタ用ガルバノメータ25の駆動レバー25aは反時計回りへの回動端にある。すなわち、フィルタ固定板40は台部53寄りに配置され、円形開口42の中心が光軸Lに一致する位置に保持される。したがって、図6に示される配置では、光は円形開口42を通してカメラ本体10へ入射する。
【0037】また、フィルタ用ガルバノメータ25が駆動され、図6において時計回りに駆動用レバー25aが回動されると、ラッチング用レバー58の突起部58aは固定溝59aから外れ、その後固定溝59bにおいて係止される。この係止位置が駆動レバー25aの時計回りの回動端である。このとき駆動用レバー25aの回動にともなって、フィルタ固定板40は台部52の方向へ移動され、円形開口41の中心が光軸Lに一致する位置に保持される。すなわち、光は円形開口41に設けられている赤外カットフィルタ22を通してカメラ本体10へ入射する。
【0038】以上のように、フィルタ用ガルバノメータ25を正逆に回動させることにより、赤外カットフィルタ22は、レンズ鏡筒18内において光路上から抜き差しされる。
【0039】絞り用ガルバノメータ24及びフィルタ用ガルバノメータ25には2対の電極端子61a、61b及び62a、62b(図5参照)がそれぞれ設けられている。電極端子61a、61bは、ガルバノメータを駆動するための電力を供給するためのものであり、電極端子61b、62bは、例えば各ガルバノメータの回転速度を検出するためにメータ内に設けられたジェネレータに接続される端子である。各電極端子に接続されたコード61、62はそれぞれの制御回路等(図示せず)へ導かれる。
【0040】以上のように、本実施形態によれば、赤外カットフィルタを光路上に抜き差しするための機構と2枚の絞り羽根による絞り機構とが一体的なユニットとして構成されているので、赤外カットフィルタに関わる機構をより小型に構成でき、赤外カットフィルタをレンズ鏡筒内に納めることができる。すなわち、赤外カットフィルタを駆動するための機構を別途カメラ本体内に設ける必要がなく、空間を効率よく利用することができるためカメラの小型化が可能となる。
【0041】また本実施形態では、絞り羽根とフィルタ固定板の駆動用アクチュエータとしてガルバノメータを用いているが、別の駆動装置であってもよい。しかし、ガルバノメータは小型のアクチュエータとして好適であり、装置の更なる小型化が可能となるとともに、モータを駆動装置に用いるときに比べ耐久性も向上され回路構成も簡略となる。これにより、製造コストも削減される。また、一対のガルバノメータを絞りユニット基板に180゜対向配置することにより、小型でバランスのよい絞り装置ユニットが得られる。本実施形態では、ガルバノメータにはジェネレータが設けられていたが、例えばフィルタ用のガルバノメータにはジェネレータは無くともよい。
【0042】絞りユニット基板の各面に、フィルタ固定板と絞り羽根とを挟着保持する平板状のカバー部材を取り付けることも可能であるが、本実施形態のように爪状部材を用いると、絞り装置の厚さを削減できるとともに、部材のコストを低減できる。
【0043】本実施形態において、フィルタ固定板には赤外カットフィルタを装着したが、カメラの用途に応じてフィルタの種類は変更可能である。同様に、絞り板には図9のY、Zに示すような分光透過率特性のNDフィルタを設けたが、カメラの用途によって、絞り板にフィルタを設けるか否かを含め、その分光透過率特性は自由に設定できる。
【0044】しかし、フィルタ固定板に例えば図9のXに示すような分光透過率特性の赤外カットフィルタを設け、絞り板に図9のY、Zに示すような分光透過率特性のNDフィルタを設けることにより、昼間はカラー撮影、夜間はモノクロ撮影を行うCCTVカメラに好適に用いることができる。
【0045】さらに、本発明は、レンズ鏡筒部18に配置される撮影レンズの構成を問わない。すなわち、撮影レンズとしては、古くは可視光領域を重視した収差補正を行ったレンズ系を用い、近赤外光領域の撮影(夜間撮影)では、ピント位置を補正するため、赤外カットフィルタに代えて、別の所定厚さの透光性平行平面板を挿入することが行われていたが、最近は、昼間撮影夜間撮影におけるピント移動を許容できる範囲に補正したレンズ系も提案されている。本発明はいずれのタイプの撮影レンズを用いてもよい。透光性平行平面板を挿入する場合には、フィルタ固定板40の赤外カットフィルタ22を備えない側の開口42に、図3(b)に示すように、透光性平行平面板22Xを設けることができる。この透光性平行平面板22Xは、昼間撮影夜間撮影におけるピント移動を許容できる範囲に補正したレンズ系に用いる場合、赤外カットフィルタ22と光学的厚さ(屈折率×厚さ)が同一の透光性平行平面板とする。また、可視光領域を重視した収差補正を行ったレンズ系においては、近赤外光領域の撮影(夜間撮影)でのピント位置の補正ができる厚さの透光性平行平面板とする。
【0046】本実施形態のCCTVカメラはカメラ本体とレンズ鏡筒部とが一体的に構成されたカメラであったが、レンズ鏡筒部とカメラ本体とが分離可能な構成であってもよい。
【0047】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、絞りと光学フィルタの機構部とがレンズ鏡筒内に設けられた小型なCCTVカメラ用レンズの絞り装置を得ることができる。また、2枚の絞り羽根と、光学フィルタを固定するためのフィルタ固定板とを絞りユニット基板の表面及び裏面に沿わせて配置することにより、絞り装置をより薄く小型にすることができる。さらに、絞り羽根に赤外光の透過率が可視光領域の透過率とほぼ同等乃至同等以下、または非常に低い分光透過率特性を有するNDフィルタを貼り付けた態様では、カラー撮影では色特性を損なうことなく透過光量を制限することが可能になり、モノクロ撮影では可視光と赤外光を含む全光量を十分に抑え、赤外光の反射が強い被写体部分が明るく写るという現象を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるCCTV用カメラの絞り装置の一実施形態を模式的に示す図である。
【図2】絞り装置の2枚の絞り羽根の平面形状を表す図である。
【図3】赤外カットフィルタが取り付けられるフィルタ固定板の平面形状を表す図である。
【図4】絞りユニット基板の表面図、裏面図、側面図である。
【図5】絞り羽根及びフィルタ固定板を取り付けた絞りユニット基板を表面側から見た図である。
【図6】絞り羽根及びフィルタ固定板を取り付けた絞りユニット基板を裏面側から見た図である。
【図7】絞り羽根及びフィルタ固定板を取り付けた絞りユニット基板を側面側から見た図である。
【図8】本発明の絞り装置に用いる赤外カットフィルタ、及びNDフィルタの分光透過率特性の例を示すグラフ図である。
【図9】赤外カットフィルタが備えられた、従来のCCTV用カメラの構造を模式的に示す図である。
【図10】従来の一般的なNDフィルタの分光透過率特性を示すグラフ図である。
【符号の説明】
18 レンズ鏡筒部
21 絞り
22 赤外カットフィルタ
22X 平行平面板
23 絞りユニット基板
24 絞り用ガルバノメータ(アクチュエータ)
25 フィルタ用ガルバノメータ(アクチュエータ)
30a 30b 絞り羽根
32a 32b NDフィルタ
40 フィルタ固定板

【特許請求の範囲】
【請求項1】 CCTVカメラ用のレンズ鏡筒内に設けられた絞りと、上記絞りを保持するための平板形状をした絞りユニット基板と、上記絞りの開口の大きさを調整するための絞り駆動手段と、波長に応じて光を遮断または透過する光学フィルタと、上記光学フィルタを光路上に抜き差しするためのフィルタ駆動手段とを備え、上記絞りと上記光学フィルタとが上記絞りユニット基板に沿わせて配置され、上記絞り、上記絞りユニット基板、上記絞り駆動手段、上記光学フィルタ、及び上記フィルタ駆動手段の全てを上記レンズ鏡筒内に配置したことを特徴とするCCTVカメラ用レンズの絞り装置。
【請求項2】 上記絞りが2枚の絞り羽根を有し、上記光学フィルタが2つの開口を有する平板形状をしたフィルタ固定板の少なくとも一方の開口に設けられ、上記2枚の絞り羽根及びフィルタ固定板とがそれぞれ上記絞りユニット基板の第1及び第2の面に沿わせて配置され、上記フィルタ駆動手段は上記フィルタ固定板の2つの開口を択一して光路上に移動させる請求項1に記載のCCTVカメラ用レンズの絞り装置。
【請求項3】 上記光学フィルタが上記光路上に挿入されたときの上記光学フィルタの位置と、上記光学フィルタが上記光路上から取り除かれたときの上記光学フィルタの位置とを保持するためのラッチング機構を上記フィルタ駆動手段が備える請求項1に記載のCCTVカメラ用レンズの絞り装置。
【請求項4】 上記光学フィルタは、赤外領域の光を遮断する赤外カットフィルタである請求項1ないし3のいずれか1項に記載のCCTVカメラ用レンズの絞り装置。
【請求項5】 上記絞り羽根には、絞り開口を形成する透光部分に、別の光学フィルタが設けられている請求項2ないし4のいずれか1項に記載のCCTVカメラ用レンズの絞り装置。
【請求項6】 上記別の光学フィルタは、NDフィルタである請求項5に記載のCCTVカメラ用レンズの絞り装置。
【請求項7】 上記NDフィルタは、赤外領域の透過率が可視光領域の透過率とほぼ同等乃至同等以下の分光透過率特性を有する請求項6に記載のCCTVカメラ用レンズの絞り装置。
【請求項8】 上記NDフィルタは、赤外領域の光を遮断する分光透過率特性を有する請求項6に記載のCCTVカメラ用レンズの絞り装置。
【請求項9】 上記赤外領域は、波長約700nm〜1000nmである請求項4ないし8のいずれか1項に記載のCCTVカメラ用レンズの絞り装置。
【請求項10】 上記NDフィルタの表面反射率は、約2%以下である請求項6ないし9のいずれか1項に記載のCCTVカメラ用レンズの絞り装置。
【請求項11】 上記NDフィルタは、樹脂ベースに金属薄膜を蒸着したフィルタである請求項7ないし10のいずれか1項に記載のCCTVカメラ用レンズの絞り装置。
【請求項12】 カラー撮像素子を備えたCCTVカメラのレンズ鏡筒内に設けられる絞り装置ユニットであって、撮影開口を有する平板部を備えた絞りユニット基板と、上記撮影開口に択一して対応する一対の開口を備えていて、該開口の一方に赤外領域の光を遮断する赤外カットフィルタを有し、上記ユニット基板の平板部の表裏の一方の面に移動可能に支持されたフィルタ固定板と、上記平板部の他方の面に移動可能に支持され、相対移動位置に応じて撮影開口に重なる絞り開口の大きさを変化させる2枚の絞り板と、この2枚の絞り板の少なくとも一方に、絞り開口上に位置するようにして貼り付けたNDフィルタと、上記絞りユニット基板上に、上記平板部を挟んで支持された一対のアクチュエータと、を備え、この一対のアクチュエータの一方は、上記フィルタ固定板を往復移動させてその一対の開口を択一して撮影開口上に位置させる赤外カットフィルタ用アクチュエータであり、他方は、上記2枚の絞り板を互いに反対方向に相対移動させて絞り開口を変化させる絞り駆動用アクチュエータであるCCTVカメラ用レンズの絞り装置ユニット。
【請求項13】 上記NDフィルタは、赤外領域の透過率が可視光領域の透過率とほぼ同等乃至同等以下の分光透過率特性、または赤外領域の光を遮断する分光透過率特性を有するCCTVカメラ用レンズの絞り装置ユニット。
【請求項14】 上記一対のアクチュエータは、上記絞りユニット基板の撮影開口を中心として、略対称位置に該絞りユニット基板に固定されているCCTVカメラ用レンズの絞り装置ユニット。
【請求項15】 上記フィルタ固定板の一対の開口のうち、赤外カットフィルタを備えない側の開口には、透光性平行平面板が備えられ、上記赤外カットフィルタ用アクチュエータは、昼光撮影時には上記赤外カットフィルタをカラー撮像素子の前方に位置させ、夜間撮影時には上記透光性平行平面板をカラー撮像素子の前方に位置させるCCTVカメラ用レンズの絞り装置ユニット。
【請求項16】 上記フィルタ固定板を、その一対の開口の一方と他方が撮影開口上に位置するときにそれぞれラッチするラッチング機構を有する請求項12ないし15のいずれか1項に記載のCCTVカメラ用レンズの絞り装置ユニット。
【請求項17】 上記赤外領域は、波長約700nm〜1000nmである請求項12ないし16のいずれか1項に記載のCCTVカメラ用レンズの絞り装置ユニット。
【請求項18】 上記NDフィルタの表面反射率は、約2%以下である請求項12ないし17のいずれか1項に記載のCCTVカメラ用レンズの絞り装置ユニット。
【請求頃19】 上記NDフィルタは、樹脂ベースに金属薄膜を蒸着したフィルタである請求項12ないし18のいずれか1項に記載のCCTVカメラ用レンズの絞り装置ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図8】
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【図10】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【公開番号】特開2002−189238(P2002−189238A)
【公開日】平成14年7月5日(2002.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−295592(P2001−295592)
【出願日】平成13年9月27日(2001.9.27)
【出願人】(000116998)ペンタックス プレシジョン株式会社 (4)
【Fターム(参考)】