説明

CGRP拮抗薬による胃腸障害の治療

【課題】内臓痛及び胃腸障害、例えば、機能性腸疾患や炎症性腸疾患を予防及び治療するための方法の提供。
【解決手段】CGRP拮抗薬として作用する化合物の有効な量を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CGRP拮抗薬として作用する化合物の有効な量の使用によって内臓痛及び胃腸障害、例えば、機能性腸疾患や炎症性腸疾患を予防及び治療するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内臓は、腹腔の臓器を包含する。内臓と関連がある疼痛は、消化内臓痛と非消化内臓痛に分けることができる。一般的に遭遇する胃腸障害としては、機能性腸疾患や炎症性腸疾患が挙げられる。これらの胃腸障害には、胃食道逆流、消化不良、過敏性腸症候群や機能性腹痛症候群、クローン病、回腸炎、潰瘍性結腸炎を含む、現在やや制御されているだけの広範囲の病態が含まれ、全て定期的に内臓痛が生じる。
“過敏性結腸”、“痙攣性結腸”又は“粘液性大腸炎”とも呼ばれる過敏性腸症候群(IBS)、は、排便の障害と関連がある下腹部の不快感又は疼痛を特徴とする。症状の種類は患者間で異なり得るものであり、主におこる便秘又は下痢から主におこる疼痛までさまざまである。
これは最も共通の慢性胃腸障害であり、世界の人口の約20%が罹っている。この生物心理社会的疾患は、神経系の調節異常、腸運動の変質及び内臓知覚の増大を伴う。
これらの障害の全てが、種々の心理社会的要因と環境要因(例えば、感染、炎症)によって調整される、腸神経系による消化管と脳との間の両方向伝達(脳腸軸)の調節異常から生じる。GI活性を調節する脳と消化管において、5-ヒドロキシトリプタミン(5-HT、セロトニン)とその5-HT3受容体と5-HT4受容体のような非常に多くの神経伝達物質が見出されている。IBS患者に対する現在の方法は、症候群の正の診断、根底にある器質性疾患の排除、及び治療試験の実施に基づく。従来の対症療法には、止瀉薬、緩下薬及び増量剤/繊維、低用量三環系抗うつ薬、疼痛のための抗痙攣薬、及び‘代替療法’(例えば、精神療法、催眠療法))が含まれている。
この治療を支持する科学的な証拠は、限られている。新規な方法には、内臓鎮痛剤とセロトニン作用薬やセロトニン拮抗薬が含まれる。ひどい下痢患者には5-HT3受容体拮抗薬(例えば、アロセトロン)と選択的なM3タイプ抗コリン作用薬が、便秘には5-HT4作動薬(例えば、テガセロド)、疼痛にはα2-アドレナリン作動薬(例えば、クロニジン)、コレシストキニン拮抗薬、カッパオピオイド作動薬(例えば、フェドトジン)、及びニューロキニン拮抗薬が必要とされる; これらの薬剤の一部は、まだ研究中である。脳-消化管軸を理解することは、IBSの効果的な治療の開発において重要である(Med. Science Monit. 2004, 10(6), RA125-131)。
内臓過敏症は、IBSの三つの根底にある機序の一つとして提唱され、このことは、IBSに罹患している患者が内臓事象の知覚を増強するという事実によって支持される。この内臓過敏症は、内臓求心性機序、おそらくペプチド性C-線維の感作の結果であると思われる。これらの求心性C-線維は、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)を含有し、このペプチドが侵害受容に親和的であることがわかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】PCT/EP97/04862
【特許文献2】PCT/EP03/11762
【特許文献3】PCT/EP03/11763
【特許文献4】PCT/EP2004/000087
【特許文献5】PCT/EP2005/003094
【特許文献6】PCT/GB99/03154
【特許文献7】PCT/US03/16576
【特許文献8】PCT/US2003/038799
【特許文献9】PCT/US2004/007226
【特許文献10】PCT/US2004/007289
【特許文献11】PCT/US2004/007686
【特許文献12】PCT/US2004/007678
【特許文献13】PCT/US2004/007715
【特許文献14】PCT/US2004/010851
【特許文献15】PCT/US2004/011254
【特許文献16】PCT/US2004/011280
【特許文献17】PCT/US2004/020206
【特許文献18】PCT/US2004/021888
【特許文献19】PCT/US2004/020209
【特許文献20】PCT/US2004/040721
【特許文献21】PCT/US2005/002199
【特許文献22】PCT/US2005/010330
【特許文献23】PCT/US2005/031617
【特許文献24】PCT/US2005/031712
【特許文献25】PCT/US2005/031713
【特許文献26】PCT/US2005/032036
【特許文献27】PCT/US2005/032041
【特許文献28】PCT/US2005/032288
【特許文献29】PCT/US2005/035654
【特許文献30】US2006/0094707
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Med. Science Monit. 2004, 10(6), RA125-131
【非特許文献2】Bourdu et al., Gastroenterology 2005, 128, 1996-2008
【非特許文献3】Diop et al., J. Phamacol. Exp. Ther. 2002, 302, 1013-1022
【非特許文献4】Plourde et al. Am. J. Physiol. 1997, 273, G191-G196
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、IBSの症状が、CGRPの作用に拮抗する物質(CGRP拮抗薬)か又は知覚神経終末からのCGRPの放出を阻害するか又は低下させる物質(CGRP放出インヒビター)によって効果的に予防され、これらの痛ましい結果が実質的に改善されることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
従って、本発明は、予防と積極的治療の双方を含む、IBSと戦うためのCGRP拮抗薬(A)及び/又は放出インヒビターの使用に関する。本発明の使用は、好ましくは、単一物質による単一療法を含むが、活性物質の指定されたグループからの多くの物質(B)による併用療法も含まれる。
本発明は、また、IBSの治療用医薬組成物を調製するためのCGRP拮抗薬及び/又は放出インヒビターの使用並びに活性物質として一つ以上のCGRP拮抗薬及び/又は放出インヒビターを含有する対応する医薬組成物に関する。
既知のCGRPの作用に拮抗するか又は知覚神経終末からのCGRPの放出を阻害するいかなる医薬的に許容され得る活性物質も本発明のために用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
CGRP拮抗薬の例としては、国際特許出願PCT/EP97/04862に記載されるアミノ酸誘導体だけでなく、国際特許出願PCT/EP03/11762、PCT/EP03/11763、PCT/EP2004/000087、PCT/EP2005/003094、PCT/US03/16576、PCT/US2004/040721、PCT/US2003/038799、PCT/US2005/010330、PCT/GB99/03154、PCT/US2004/007226、PCT/US2004/007289、PCT/US2004/007686、PCT/US2004/007678、PCT/US2004/007715、PCT/US2004/011254、PCT/US2004/010851、PCT/US2004/011280、PCT/US2004/020206、PCT/US2004/021888、PCT/US2004/020209、PCT/US2005/002199、PCT/US2005/031713、PCT/US2005/031617、PCT/US2005/031712、PCT/US2005/032036、PCT/US2005/032041、PCT/US2005/032288、PCT/US2005/035654、US2006/0094707に記載される非ペプチド活性物質が挙げられる。
CGRP放出インヒビターの例としては、セロトニン5-HT1D-作動薬、例えば、アビトリプタン、エレトリプタン、ナラトリプタン、リザトリプタン、スマトリプタン又はゾルミトリプタンだけでなく、5-HT1F-作動薬又はNPY-作動薬が挙げられる。
上記CGRP拮抗薬の中で、以下の化合物(A)は、例えば、IBSの治療のために、対応する医薬組成物の調製のために、対応する医薬組成物の成分として、用いることができる。
それ故、本発明の第一の目的は、以下の医薬製剤:
活性物質(A)1mgを含有する粉末吸入のためのカプセル、
活性物質(A)1mgを含有する噴霧器用の吸入用溶液、
活性物質(A)1mgを含有する噴射剤ガス圧式定量エアゾール、
活性物質(A)1mgを含有する鼻内噴霧剤、
活性物質(A)20mgを含有する錠剤、
活性物質(A)20mgを含有するカプセル剤、
活性物質(A)10mgを含有する経鼻適用のための水溶液、
活性物質(A)5mgを含有する経鼻適用のための水溶液、
活性物質(A)20mgを含有する経鼻適用のための懸濁液
の一つとしてIBSの治療用薬剤を調製するための、下記化合物からなる群より選ばれるCGRP拮抗薬(A)の使用である
【0008】
【化1】

【0009】
【化2】

【0010】
【化3】

【0011】
【化4】

【0012】
これらのエナンチオマー、ジアステレオマー、混合物又は塩、特に有機又は無機の酸又は塩基との医薬的に許容され得る塩。
本発明の述べた個々の化合物(A)は、国際特許出願PCT/EP97/04862、PCT/EP2005/003094に記載され、前記適用に記載されるプロセスに従って調製することができる。
これらの化合物は、経口的に適用されたものであり、0.01〜100mg/kgの用量範囲で活性である。
用いられる用語及び定義
一つ以上の水素原子、例えば、一つ、二つ、三つ、四つ又は五つの水素原子が重水素によって置き換えられている、その塩を含む、本発明の化合物も本発明の内容に含まれる。
本発明の化合物は、酸性基、主にカルボキシル基、及び/又は塩基性基、例えば、アミノ官能基を有してもよい。それ故、本発明の化合物は、特に、内部塩として、医薬的に使用可能な無機酸、例えば、臭化水素酸、リン酸、硝酸、塩酸、硫酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸又は有機酸、例えば、リンゴ酸、コハク酸、酢酸、フマル酸、マレイン酸、マンデル酸、乳酸、酒石酸、クエン酸との塩として又は医薬的に使用可能な塩基、例えば、アルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、アンモニア、水酸化亜鉛、水酸化アンモニウム又は有機アミン、例えば、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミンとの塩として存在してもよい。
上文に述べたように、本発明の化合物は、その塩、特に医薬使用のために、その生理的に且つ薬理的に許容され得る塩に変換されてもよい。これらの塩は、一方では、式Iの化合物と無機酸又は有機酸との生理的に且つ薬理的に許容され得る酸付加塩の形であってもよい。もう一方では、フェノールのOH基を含有する場合には、本発明の化合物は、無機塩基との反応によって対イオンとしてアルカリ金属カチオン又はアルカリ土類金属カチオンとの生理的に且つ薬理的に許容され得る塩に変換されてもよい。酸付加塩は、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、メタンスルホン酸、酢酸、フマル酸、コハク酸、乳酸、クエン酸、酒石酸又はマレイン酸を用いて調製されてもよい。また、上述の酸の混合物を用いることも可能である。式Iの化合物のアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩は、好ましくは、そのアルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物や水素化物であり、アルカリ金属、特にナトリウムやカリウムの水酸化物や水素化物が好ましく、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムが特に好ましい。
【0013】
本発明の化合物がキラル元素を一つだけを有する場合には、ラセミ体として存在してもよいが、純粋なエナンチオマー、即ち、(R)又は(S)の形で得ることもできる。好ましい化合物は、ラセミ体として又は(R)形として存在することもできる。
しかしながら、本出願には、本発明の化合物に複数のキラル元素がある場合に存在する対掌体の個々のジアステレオマー対又はその混合物だけでなく、上述のラセミ体が調製される個々の光学活性エナンチオマーも含まれる。
本発明は、問題の化合物、必要により、個々の光学異性体、個々のエナンチオマーの混合物又はラセミ体の形で、互変異性体の形で、また、遊離塩基又は薬理的に許容され得る酸との対応する酸付加塩 - 例えば、ハロゲン化水素酸 - 例えば、塩酸又は臭化水素酸又は有機酸 - 例えば、シュウ酸、フマル酸、ジグリコール酸又はメタンスルホン酸との酸付加塩の形であってもよい化合物に関する。
併用
本発明のCGRP拮抗薬(A)は、単一療法として使用し得るが、IBSの治療のための他の活性化合物(B)と組合わせて使用し得る。
このために、化合物(B)は、一つ以上の従来の不活性担体及び/又は希釈剤と共に、例えば、コーンスターチ、ラクトース、グルコース、ミクロクリスタリンセルロース、ステアリン酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、クエン酸、酒石酸、水、水/エタノール、水/グリセロール、水/ソルビトール、水/ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、セチルステアリルアルコール、カルボキシメチルセルロース又は脂肪物質、例えば、固い脂肪又はこれらの適切な混合物と従来のガレヌス製剤、例えば、素錠又はコーティング錠、カプセル剤、散剤、懸濁液剤、液剤、定量エアゾール剤又は坐薬に処方されてもよい5-HT1作動薬、例えば、5-HT3拮抗薬、5-HT4作動薬、混合した5-HT3拮抗薬/5-HT4作動薬、セロトニンノルエピネフリン再取り込み阻害薬、抗痙攣薬、抗コリン作用薬、緩下薬、バラスト、止瀉薬、三環系抗うつ薬及びSSRI、オピオイド、局部麻酔薬、α2作動薬、カンナビノイド、P2X3/P2X2/3拮抗薬、CCK-拮抗薬、VR-1/TRPV1拮抗薬、ニューロキニン拮抗薬、β3アドレナリン受容体作用薬、NSAID、COX 2インヒビター及びプロバイオティクスからなる群より選ぶことができる。
5-HT1作動薬は、アビトリプタン、エレトリプタン、ナラトリプタン、リザトリプタン、スマトリプタン又はゾルミトリプタン又はこれらの医薬的に許容され得る塩からなる群より選ばれてもよい。
【0014】
5-HT3拮抗薬は、アロセトロン、シランセトロン、グラニセトロン又はこれらの医薬的に許容され得る塩からなる群より選ばれてもよい。
5-HT4作動薬は、テガセロド、プルカロプリド又はこれらの医薬的に許容され得る塩からなる群より選ばれてもよい。
混合された5-HT3拮抗薬/5-HT4作動薬は、レンザプリド、シサプリド又はこれらの医薬的に許容され得る塩からなる群より選ばれてもよい。
セロトニンノルエピネフリン再取り込み阻害薬は、ベンラファキシン、デュロキセチン及びミルナシプラン又はこれらの医薬的に許容され得る塩からなる群より選ばれてもよい。
抗痙攣薬は、ピナベリウム、メベベリン、アルベリン又はこれらの医薬的に許容され得る塩からなる群より選ばれてもよい。
抗コリン作用薬は、ザミフェナシン、ダリフェナシン又はその医薬的に許容され得る塩からなる群より選ばれてもよい。
緩下薬は、ラクツロース及びポリエチレングリコールからなる群より選ばれてもよい。
バラストは、メチルセルロース及びオオバコからなる群より選ばれてもよい。
止瀉薬は、ロペラミド、コレスチラミン又はこれらの医薬的に許容され得る塩からなる群より選ばれてもよい。
三環系抗うつ薬及びSSRIは、アミトリプチリン、イミプラミン又はこれらの医薬的に許容され得る塩からなる群より選ばれてもよい。
オピオイドは、フェドトジン、トリメブチン又はこれらの医薬的に許容され得る塩からなる群より選ばれてもよい。
局所麻酔薬は、トリメブチン又はこの医薬的に許容され得る塩からなる群より選ばれてもよい。
α2作動薬は、クロニジン又はこの医薬的に許容され得る塩からなる群より選ばれてもよい。
カンナビノイドは、レモナバント又はこの医薬的に許容され得る塩からなる群より選ばれてもよい。
ニューロキニン拮抗薬は、エズロピタント、ネパデュラント(nepadulant)又はこれらの医薬的に許容され得る塩からなる群より選ばれてもよい。
β3-アドレナリン受容体作動薬は、ソラベグロン又はYM178又はこれらの許容され得る医薬的に許容され得る塩からなる群より選ばれてもよい。
【0015】
NSAIDは、アクロフェナック、アセメタシン、アセチルサリチル酸、アザチオプリン、セレコビクス(celecobix)、ジクロフェナク、ジフルニサル、フェンブフェン、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、レフルノミド、ロルノキシカム、メフェナム酸、メロキシカム、ナプロキセン、フェニルブタゾン、ピロキシカム、スルファサラジン、ゾメピラック又はこれらの医薬的に許容され得る塩からなる群より選ばれてもよい。
COX 2インヒビターは、メロキシカム、ロフェコキシブ、バルデコキシブ、パレコキシブ、エトリコキシブ、セレコキシブ又はこれらの医薬的に許容され得る塩からなる群より選ばれてもよい。
プロバイオティクスは、ビフィドバクテリウムであってもよい。
製剤
本発明に従って調製される化合物は、単独で又は必要により片頭痛の治療用の他の活性物質と組合わせて静脈内、皮下、筋肉内、関節内、直腸内又は鼻腔内経路、吸入、局所的、経皮的又は経口的によって投与されてもよく、エアゾール製剤が吸入に特に適する。併用剤は、同時に又は順次投与されてもよい。
投与に適切な形としては、例えば、錠剤、カプセル剤、液剤、シロップ剤、乳剤又は吸入用散剤又はエアゾール剤が挙げられる。一つ又は複数の医薬的に活性な化合物の割合は、全体の組成物の0.1〜90質量%、好ましくは0.5〜50質量%の範囲でなければならない。即ち、上文に述べた用量範囲を達成するのに充分な量でなければならない。
製剤は、錠剤、散剤、カプセル剤(例えば、硬ゼラチンカプセル)の散剤の形で、又は液剤又は懸濁液剤として経口的に投与されてもよい。吸入によって服用される場合、活性物質の組み合わせは粉末、水溶液、水性エタノール溶液又は噴射剤ガス製剤で投与されてもよい。
好ましくは、それ故、医薬製剤は、上文に記載した好ましい実施態様の式Iの一つ以上の化合物を含有することを特徴とする。
【0016】
式Iの化合物を経口投与する場合が特に好ましく、1日2回投与される場合が最も好ましい。適切な錠剤は、例えば、活性物質と既知の賦形剤、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム又はラクトースのような不活性の希釈剤、コーンスターチ又はアルギン酸のような崩壊剤、デンプン又はゼラチンのような結合剤、ステアリン酸マグネシウム又はタルクのような滑沢剤及び/又はカルボキシメチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、又はポリ酢酸ビニルのような遅延放出剤とを混合することによって得られてもよい。錠剤は、また、数層を備えてもよい。
コーティング錠は、錠剤コーティングに通常用いられる物質、例えば、コリドン又はシェラック、アラビアゴム、タルク、二酸化チタン又は砂糖で錠剤と同様にして製造されたコアを被覆することによって調製されてもよい。遅延放出を達成するか又は配合禁忌を防止するために、コアは、多くの層からなってもよい。同様に、錠剤コーティングは、場合により前述の錠剤のための賦形剤を用いて、遅延放出を達成するために多くの層からなってもよい。
本発明の活性物質又はその組み合わせを含有するシロップ剤は、更に、サッカリン、シクラメート、グリセロール又は砂糖のような甘味剤及び香味増強剤、例えば、バニリン又はオレンジエキスのような香味剤を含有してもよい。これらは、また、懸濁補助剤又はカルボキシルメチルセルロースナトリウムのような増粘剤、湿潤剤、例えば、脂肪アルコールとエチレンオキシドとの縮合生成物、又はp-ヒドロキシベンゾエートのような防腐剤を含有してもよい。
一つ以上の活性物質又は活性物質の組み合わせを含有するカプセル剤は、例えば、活性物質とラクトース又はソルビトールのような不活性担体とを混合し、それらをゼラチンカプセルに装填することによって、調製するのがよい。
適切な坐薬は、例えば、中性脂肪又はポリエチレングリコール又はこれらの誘導体のようなこのために供給される担体と混合することによって、製造するのがよい。
用いることができる賦形剤としては、例えば、水、パラフィンのような医薬的に許容され得る有機溶媒(例えば、石油留分)、植物油(例えば、ラッカセイ油又はゴマ油)、単官能性アルコール又は多官能性アルコール(例えば、エタノール又はグリセロール)、担体、例えば、天然鉱物末(例えば、カオリン、クレー、タルク、チョーク)、合成鉱物粉末(例えば、高度に分散したケイ酸やケイ酸塩、砂糖(例えば、甘ショ糖、ラクトース、グルコース)、乳化剤(例えば、リグニン、亜硫酸パルプ廃液、メチルセルロース、デンプン、ポリビニルピロリドン)及び滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ステアリン酸、ラウリル硫酸ナトリウム)が挙げられる。
【0017】
経口使用の場合、錠剤が、指定される担体に加えて、デンプン、好ましくはポテトデンプン、ゼラチン等の種々の追加の物質と共にクエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、リン酸二カルシウムのような添加剤を含有してもよいことは明らかである。ステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、タルクのような滑沢剤もまた、錠剤を製造するために用いてもよい。水性懸濁液剤の場合、上記の賦形剤に加えて活性物質を種々の香味増強剤又は着色剤と組み合わせてもよい。
治療方法
本発明のCGRP拮抗薬(A)は、齧歯動物における内臓痛のモデルに活性である。このモデルにおいては結腸刺激(例えば、ブチレート、トリニトロベンゼンスルホン酸又は酢酸点滴注入による)によって過敏症が誘導される。疼痛挙動、例えば、腹部収縮を誘導するために結腸直腸バルーン膨満を適用した(Bourdu et al., Gastroenterology 2005, 128, 1996-2008; Diop et al., J. Phamacol. Exp. Ther. 2002, 302, 1013-1022; Plourde et al. Am. J. Physiol. 1997, 273, G191-G196を参照のこと)。
前述のモデルにおいて化合物が結腸過敏症を逆転させたので、本発明のCGRP拮抗薬(A)が、IBS患者、但し疝痛や月経困難症の患者においても内臓痛/過敏症、特に腹痛の治療に使用し得ることが主張される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内臓痛を予防又は治療するのに有効な薬剤の調製のための下記化合物より選ばれるCGRP拮抗薬(A)の使用
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

これらのエナンチオマー、ジアステレオマー、混合物又はこれらの生理的に許容され得る塩。
【請求項2】
胃腸障害を予防又は治療するのに有効な薬剤の調製のための下記化合物より選ばれるCGRP拮抗薬(A)の使用
【化6】

【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

これらのエナンチオマー、ジアステレオマー、混合物又はこれらの生理的に許容され得る塩。
【請求項3】
内臓痛が、機能性腸疾患及び炎症性腸疾患からなる群より選ばれることを特徴とする、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
機能性腸疾患が、胃食道逆流、消化不良、過敏性腸症候群及び機能性腹痛症候群からなる群より選ばれることを特徴とする、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
炎症性腸疾患が、クローン病、回腸炎及び潰瘍性結腸炎からなる群より選ばれることを特徴とする、請求項3に記載の使用。
【請求項6】
機能性腸疾患が、過敏性腸症候群であることを特徴とする、請求項3に記載の使用。
【請求項7】
単一の活性物質による単一療法として行われることを特徴とする、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項8】
薬剤が、活性物質を一つだけ含有することを特徴とする、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
薬剤が、経口投与のための製剤であることを特徴とする、請求項7に記載の使用。
【請求項10】
活性物質として請求項1に記載の群より選ばれる一つ以上のCGRP拮抗薬(A)を含有し、必要により一つ以上の不活性担体及び/又は希釈剤と共に含有してもよい、内臓痛及び胃腸障害の治療又は予防のための医薬組成物。
【請求項11】
胃食道逆流、消化不良、過敏性腸症候群及び機能性腹痛症候群のような機能性腸疾患、又はクローン病、回腸炎、潰瘍性結腸炎のような炎症性腸疾患からなる群より選ばれる疾患を治療又は予防するための請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
過敏性腸症候群を治療又は防止するための請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
経口投与に適した形である、請求項10〜12のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
内臓痛の予防又は治療方法であって、治療を必要としている患者に下記化合物より選ばれるCGRP拮抗薬(A)の有効な量を投与することを含む、前記方法
No. 構造
【化11】

【化12】

【化13】

【化14】

これらのエナンチオマー、ジアステレオマー、混合物又はこれらの生理的に許容され得る塩。
【請求項15】
障害が、機能性腸疾患又は炎症性腸疾患である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
機能性腸疾患が、胃食道逆流、消化不良、過敏性腸症候群又は機能性腹痛症候群である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
障害が、過敏性腸症候群である、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項18】
炎症性腸疾患が、クローン病、回腸炎又は潰瘍性結腸炎である請求項15に記載の方法。

【公表番号】特表2009−539800(P2009−539800A)
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−513686(P2009−513686)
【出願日】平成19年6月6日(2007.6.6)
【国際出願番号】PCT/EP2007/055543
【国際公開番号】WO2007/141285
【国際公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(503385923)ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (976)
【Fターム(参考)】