説明

CHP−ゲムシタビン複合剤および抗腫瘍薬、特に抗転移薬としてのその使用

本発明は、シス−ヒドロキシプロリン(CHP)およびゲムシタビンを含む複合剤および腫瘍の予防および治療での同剤の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シス−ヒドロキシプロリン(CHP)およびゲムシタビンを含む複合剤および腫瘍の予防および治療での同剤の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
腫瘍または癌とは、局所に限定された組織容量の増加であり、ゆえに広義では、浮腫、急性および/または慢性炎症に起因する任意の限局性腫脹、例えば炎症に起因する器官腫脹を表す。さらに厳密に言えば、腫瘍とは新規組織の形成を表し、この形成は、自発的な、不定に脱抑制された、自律的かつ不可逆的な自己組織の過剰成長の形式であり、通常、多かれ少なかれ特定細胞および組織機能の明らかな損失を伴うものである。前記の自律的かつ不可逆的な過剰成長の結果は、生物、例えばヒトの重大な機能障害を伴い、死を招く可能性がある。
【0003】
癌または腫瘍疾患の劇的な結果を背景に、前記病変を処置するための種々の薬剤が開発されている。このような多数の薬剤は、特異的活性を欠き、種々の副作用を有する点で不利益を有する。特に高用量の特定の抗癌剤は多数の副作用を生じさせ、劇的な結果にもかかわらず、早期に患者が治療を中止する原因になる。
【0004】
抗腫瘍薬を発見する際の別の問題は、種々の誘導体、または元の薬剤およびその誘導体が動物モデルおよびヒトの両環境において異なる効果を示すことである。例えば、種々の元の薬剤は抗腫瘍効果を全く有さないか、あるいは低い抗腫瘍効果しか有さないことが知られている。一方、その誘導体または変換産物は有効な腫瘍阻害効果を有するかもしれないが、同様に腫瘍促進効果を有するかもしれない。
【0005】
Klohe et al. (1985)によれば、例えばシス−ヒドロキシプロリンは有効な抗腫瘍薬に必要な特性を欠いている。1933〜1946年の期間にNational Cancer Instituteが実施した上記および他のアミノ酸に関する初期陽性試験を考慮して、それ以後数年間に、癌治療において薬物として使用されるプロリンおよびヒドロキシプロリンの誘導体が合成されている(EP 02 23 850)。CHPの効果が低い(Klohe et al.)ために、種々のCHP誘導体の組み合わせを使用することも提唱されている。その理由は、後者は腫瘍処置に関する医薬剤として相乗効果を有すると言われているからである(US 6,066,665)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記複合調製物の相乗効果は部分的にしか再現性がないことが見出され、さらに、開発された誘導体は、副作用を伴う非常に高濃度で使用することしかできなかった。
【発明の効果】
【0007】
したがって本発明の目的は、CHPに基づく癌治療用の薬剤および方法を提供することであった。この薬剤および方法によって、容易で、安全で、かつ有効な適用が可能になる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
CHPおよびゲムシタビンの組み合わせは、腫瘍細胞に対して非常に有効であることを発見した。したがって本発明は、先行技術において抗腫瘍特性が不十分であると報告されている化合物、すなわち非誘導体化CHPが、化学療法薬のゲムシタビンと組み合わせると、癌細胞に対して効果を有し、驚くべきことに、その効果は個別の化合物の効果より高いという驚くべき教示を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の意義でのCHPには、4−ヒドロキシ−L−プロリンのシス異性体またはその塩が含まれ、これはCHP誘導体ではない。さらに詳細には、本発明の意義でのゲムシタビンは塩酸ゲムシタビン、すなわち2'−デオキシ−2',2'−ジフルオロシチジンである。例えば、本発明の意義での複合剤とは、CHPおよびゲムシタビンがともに溶液または固形物、例えば錠剤中に含まれる性質の薬剤であり、この場合、CHPとゲムシタビンの比は自由に変動させてよい。CHPとゲムシタビンの比は1:10,000〜10,000:1の範囲であるのが好ましい。患者の腫瘍および症状に応じて、CHPとゲムシタビンの比は上記範囲内で変動させることができる。当然、前記少なくとも2種の成分−CHPおよびゲムシタビン−を溶液または固形物中に一緒に組み入れ、その放出がタイムシフト様式で生じるようにすることもできる。しかし、本発明の意義での複合剤は、2つの別個の溶液または2つの別個の固形物から構成されていてもよく、この場合、一方の溶液または固形物は本質的にゲムシタビンを含み、他方の溶液または固形物は本質的にCHPを含む。2溶液または固形物は共通の担体または別個の担体を伴ってよい。例えば、2溶液および/または2固形物は、共通の担体であるカプセル中に存在させることができる。前記本発明の複合剤の製剤は、CHPの投与およびゲムシタビンの投与がタイムシフト様式で生じる場合に有益である。すなわち生物は、例えば注入または経口投与によって、まずCHPと接触し、タイムシフト様式で複合剤の他の成分と接触する。当然、慣用の製薬技術的方法および手順を用いて、生物がまずゲムシタビンと接触し、その後CHPと接触するように複合剤を提供することも可能である。ゆえに、好ましくは生物は複合剤の成分と経時的に接触する。本発明の複合剤の2成分を投与する間の期間またはCHPまたはゲムシタビンの初期放出は、患者の年齢、性別、全般的健康、腫瘍の種類、または他のパラメータに依存し、例えばこれは担当医師が事前の検査を使用して決定することができる。
【0010】
当然、本発明の薬剤は、慣用の補助剤、好ましくは担体、アジュバントおよび/またはビヒクルを含んでもよい。例えば、担体は、充填剤、希釈剤、結合剤、湿気付与剤、崩壊剤(disintegrants)、溶解遅延剤、吸収促進剤、湿潤剤、吸着剤および/または滑沢剤であってよい。本事象では、複合剤とは特に薬物または医薬剤を参照する。
【0011】
本発明の好ましい実施態様では、前記薬剤は、抗ウイルス、殺真菌または抗菌剤および/または免疫刺激剤の群由来の1種またはそれ以上の追加の薬剤を含む。さらにまた、前記薬剤は追加の化学療法薬を含んでよく、該化学療法薬は、好ましくはアリトレチノイン(alitretinoin)、アルデスロイキン(aldesleukin)(IL−2)、アルトレタミン(altretamine)、オール−トランス−レチノイン酸(all-trans-retinoic acid)(トレチノイン(tretinoin))、アミノグルテチミド(aminoglutethimide)、アナグレリド(anagrelide)、アナストロゾール(anastrozole)、アスパラギナーゼ(asparaginase)(大腸菌(E. coli))、アザチオプリン(azathioprine)、ビカルタミド(bicalutamide)、ブレオマイシン(bleomycin)、ブスルファン(busulfan)、カペシタビン(capecitabine)、カルボプラチン(carboplatin)、カルムスチン(carmustine)、クロランブシル(chlorambucil)、シスプラチン(cisplatin)、クラドリビン(cladribine)(2−CDA)、シクロホスファミド(cyclophosphamide)、シタラビン(cytarabine)、ダカルバジン(dacarbazine)、ダクチノマイシンD(dactinomycin D)、ダウノルビシン(daunorubicin)(ダウノマイシン(daunomycin))、リポソームのダウノルビシン(liposomal daunorubicin)、デキサメタゾン(dexamethasone)、ドセタキセル(docetaxel)、ドキソルビシン(doxorubicin)、リポソームのドキソルビシン(liposomal doxorubicin)、エピルビシン(epirubicin)、リン酸エストラムスチン(estramustine phosphate)、エトポシド(etoposide)(VP−16−213)、エキセメスタン(exemestane)、フロクスウリジン(floxuridine)、5−フルオロウラシル(5-fluorouracil)、フルダラビン(fludarabine)、フルオキシメステロン(fluoxymesterone)、フルタミド(flutamide)、ゲムシタビン(gemcitabine)、ゲムツズマブ(gemtuzmab)、酢酸ゴセレリン(goserelin acetate)、ヒドロキシ尿素(hydroxyurea)、イダルビシン(idarubicin)、イホスファミド(ifosfamide)、イマトミブメシラート(imatmib mesylate)、イリノテカン(irinotecan)、α−インターフェロン(α-interferon)、レトロゾール(letrozole)、酢酸ロイプロリド(leuprolide acetate)、レバミゾール−HCl(levamisole-HCl)、ロムスチン(lomustine)、酢酸メゲストロール(megestrol acetate)、メルファラン(melphalan)(L−フェニルアラニンマスタード(L-phenylalanine mustard))、6−メルカプトプリン(6-mercaptopurine)、メトトレキセート(methotrexate)、メトキサレン(methoxsalen)(8−MOP)、マイトマイシンC(mitomycin C)、ミトタン(mitotane)、ミトキサントロン(mitoxantrone)、ニルタミド(nilutamide)、ナイトロジェンマスタード(nitrogen mustard)(塩酸メクロレタミン(mechlorethamine hydrochloride))、オクトレオチド(octreotide)、パクリタキセル(paclitaxel)、ペガスパルガーゼ(pegaspargase)、ペントスタチン(pentostatin)(2'−デオキシコホルマイシン(2'-deoxycoformycin))、プリカマイシン(plicamycin)、ポルフィマー(porfimer)、プレドニゾン(prednisone)、プロカルバジン(procarbazine)、リツキシマブ(rituximab)、ストレプトゾトシン(streptozotocin)、タモキシフェン(tamoxifen)、テニポシド(teniposide)(VM−26)、6−チオグアニン(6-thioguanine)、サリドマイド(thalidomide)、チオテパ(thiotepa)、トポテカン(topotecan)、トレミフェン(toremifene)、トラスツズマブ(trastuzumab)、トリメトレキセート(trimetrexate)、ビンブラスチン(vinblastine)、ビンクリスチン(vincristine)および/またはビノレルビン(vinorelbine)である。また、1種またはそれ以上の前述の薬剤によってゲムシタビンを部分的または完全に置換することが好ましい可能性がある。
【0012】
また本発明は、細胞増殖、細胞分化および/または細胞分裂に関連する疾患の診断、予防、継続管理、治療、および/またはアフターケアにおける本発明の薬剤の使用に関する。
【0013】
本発明の好ましい実施態様では、前記疾患は腫瘍、特に新生物腫瘍、炎症性腫瘍、膿瘍、浸出液および/または浮腫である。特に好ましい様式では、腫瘍は固形腫瘍または白血病である。
【0014】
本発明の別の好ましい実施態様では、本発明の薬剤は、ゲル剤、粉剤(poudrage)、粉末剤、錠剤、徐放錠、プレミックス、エマルジョン、ブリューアップ(brew-up)製剤、点滴剤(drops)、濃縮物(concentrate)、顆粒剤(granulate)、シロップ剤、ペレット剤、大形丸剤、カプセル剤、エアロゾル剤、噴霧剤および/または吸入剤として製剤化し、ならびに/あるいはこの剤形で使用する。錠剤、被覆錠剤、カプセル剤、丸剤および顆粒剤には、不透明化剤を場合により含む慣用のコーティングおよびエンベロープを付加することができ、また、活性物質(群)の放出が腸管の特定領域でのみ、あるいは好ましくは特定領域で、場合により遅延様式で生じるようにこれらを構成することができる。この目的で、ポリマー物質およびワックス(ろう)を包埋材料として使用することができる。
【0015】
好ましくは、経口投与において任意の経口的に許容される剤形で本発明の薬物を使用することができ、該剤形には、非限定的にカプセル剤、錠剤および水性懸濁液剤および溶液剤が含まれる。経口適用のための錠剤の場合、頻繁に使用される担体には、ラクトースおよびコーンスターチが含まれる。また典型的には、滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウムを加える。カプセルの剤形での経口投与に関して使用可能な希釈剤には、ラクトースおよび乾燥コーンスターチが含まれる。水性懸濁液剤の経口投与では、活性物質を乳化剤および懸濁化剤と組み合わせる。
【0016】
また、所望であれば、特定の甘味料および/または香料および/または着色剤を加えることができる。
【0017】
また活性物質(群)は、場合により1種またはそれ以上の上記指定の担体材料を用いるマイクロカプセル化形式で存在させることができる。
【0018】
坐剤には、活性物質(群)に加えて、慣用の水溶性または水不溶性担体、例えばポリエチレングリコール、脂肪、例えばココア脂肪および高級エステル(例えば、C14アルコールとC16脂肪酸のエステル)または前記物質の混合物を含ませてよい。
【0019】
軟膏剤、ペースト剤、クリーム剤およびゲル剤には、活性物質(群)に加えて、慣用の担体、例えば動物および植物性脂肪、ワックス、パラフィン、デンプン、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、シリカ、タルクおよび酸化亜鉛または前記物質の混合物を含ませてよい。
【0020】
粉末剤および噴霧剤には、活性物質(群)に加えて、慣用の担体、例えばラクトース、タルク、シリカ、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウムおよびポリアミド粉末または前記物質の混合物を含ませてよい。さらに、噴霧剤には、慣用のプロペラント、例えばクロロフルオロ−炭化水素を含ませてよい。
【0021】
溶液剤およびエマルジョンには、活性物質CHPおよびゲムシタビンに加えて、慣用の担体、例えば溶媒、可溶化剤および乳化剤、例えば水、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油、特に綿実油、ピーナッツ油、トウモロコシ油、オリーブ油、ヒマシ油およびゴマ油、グリセリン、グリセリンフォーマル(glycerol formal)、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール、およびソルビタンの脂肪酸エステル、または前記物質の混合物を含ませてよい。非経口適用では、溶液剤およびエマルジョンを滅菌および血液等張形式で存在させてもよい。
【0022】
懸濁液剤には、活性物質に加えて、慣用の担体、例えば液状希釈剤、例えば水、エチルアルコール、プロピレングリコール、懸濁化剤、例えばエトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、微結晶性セルロース、メタ水酸化アルミニウム(aluminum metahydroxide)、ベントナイト、寒天、およびトラガカント、または前記物質の混合物を含ませてよい。
【0023】
薬物は滅菌注射用製剤形式で、例えば滅菌注射用水性または油性懸濁液剤として存在させることができる。また前記懸濁液剤は、適切な分散剤または湿潤剤(例えばTween 80)および懸濁化剤を使用し、当技術分野において既知の方法を用いて製剤化することができる。滅菌注射用製剤は、無毒の、非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の滅菌注射用溶液または懸濁液、例えば1,3−ブタンジオール中の溶液であってもよい。使用可能な許容ビヒクルおよび溶媒には、マンニトール、水、リンガー溶液、および等張性塩化ナトリウム溶液が含まれる。さらにまた、滅菌性の不揮発油が溶媒または懸濁用媒体として慣習的に使用される。この目的で、任意の低刺激(mild)の不揮発油、例えば合成モノ−またはジグリセリドを使用することができる。脂肪酸、例えばオレイン酸およびそのグリセリド誘導体を注射用薬剤の製造に使用することができ、例えば天然の製薬的に許容される油、例えばオリーブ油またはヒマシ油を、特にそのポリオキシエチル化形式で使用する。前記油剤(oil solutions)または油性懸濁液剤には、長鎖アルコールまたは類似のアルコールを希釈剤または分散剤として含ませてもよい。
【0024】
前述の製剤の剤形には、着色剤、保存剤、ならびに臭気および食味改善用添加物、例えばペパーミント油およびユーカリ油、および甘味料、例えばサッカリンを含ませてもよい。好ましくは、活性物質CHPおよび/またはゲムシタビンは、混合物全体の約0.1〜99.5重量%、より好ましくは約0.5〜95重量%の濃度で前述の医薬調製物中に存在させるべきであろう。
【0025】
前述の医薬調製物には、CHPおよびゲムシタビンに加えて、追加の医薬活性物質を含ませてよい。上記指定の医薬調製物の製造は周知の方法にしたがって通常の様式で行われ、例えば活性物質(群)を担体材料(群)と混合することによって行われる。
【0026】
前述の調製物は、経口、経直腸、非経口(静脈内、筋肉内、皮下)、大槽内、腟内、腹腔内経路、局所(粉末剤、軟膏剤、点滴剤)でヒトおよび動物に適用し、腫瘍の治療に使用することができる。注射溶液、経口治療用の溶液剤および懸濁液剤、ゲル剤、ブリューアップ(brew-up)製剤、エマルジョン、軟膏剤または点滴剤が適切な調製物としての候補である。局所治療では、眼および皮膚用製剤、銀および他の塩、点耳剤、眼軟膏、粉末剤または溶液剤を使用することができる。動物では、適切な製剤中で食餌または飲料水を介して摂取を行うことができる。さらに、薬物または複合剤を他の担体材料、例えばプラスチック(局所治療用プラスチック鎖)、コラーゲンまたは骨セメント中に組み入れることができる。
【0027】
本発明の別の好ましい実施態様では、CHPおよび/またはゲムシタビンを0.1〜99.5、好ましくは0.5〜95、より好ましくは20〜80重量%の濃度で医薬調製物中に組み入れる。すなわち、CHPおよび/またはゲムシタビンは、上記指定の医薬調製物、例えば錠剤、丸剤、顆粒剤および他の調製物中に、好ましくは混合物全体の0.1〜99.5重量%の濃度で存在させる。当業者は、単一投与剤形を製造するために担体材料と組み合わせる活性物質の量、すなわち本発明の化合物の量が、処置対象の患者および具体的な投与の種類に応じて変化する事実を認識する。患者の症状が改善した後、腫瘍がさらに成長するのを阻害または予防するか、あるいは転移および浸潤を抑制する維持量を得るために調製物中の活性化合物の比率を修正することができる。症状に応じて、改善された症状が保持されるレベルに投与の用量または頻度、または両者を引き続き減少させることができる。症状が所望のレベルに緩和されたら、処置を終了すべきであろう。しかし、万一疾患の何らかの症状が再発すれば、患者は長期ベースで断続的な処置を必要とするであろう。したがって、医薬調製物の混合物全体中の化合物の比率、すなわちその濃度、ならびに組成またはその組み合わせは変更可能であり、当業者はこれを修正し、適応させることができる。
【0028】
当業者は、本発明の化合物を生物、好ましくはヒトまたは動物と種々の経路で接触させることができる事実を認識する。さらにまた当業者は、医薬剤は個別に種々の用量で適用することができる事実も熟知している。適用は、疾患が可能な限り効果的に抑制されるように、あるいは予防的投与によって該疾患の開始が予防されるように行われるべきであろう。適用の濃度および種類は、当業者が慣用の検査を使用して決定することができる。本発明の化合物の好ましい適用法は、粉末剤、錠剤、液状混合物、点滴剤、カプセル剤等の剤形での経口適用、坐剤、溶液剤等の剤形での経直腸適用、注射剤、注入剤および溶液剤の剤形での非経口適用、および軟膏剤、パッド、包帯、洗浄剤等の剤形での局所適用である。本発明の化合物との接触は好ましくは予防または治療様式で行う。
【0029】
例えば、選択された形式の適用、用量、適用計画、アジュバントの選択等の適性は、処置手順の経過において、患者、すなわちヒトまたは動物から血清一定量を採取し、癌細胞の存在に関して検査することによって決定することができる。代わりにあるいは同時に、患者の免疫学的体質(constitution)、特に代謝に重要な器官の健康に関する全般的調査を得るために、肝臓の状態、さらに、T細胞または免疫系の他の細胞の量を慣用の様式で決定することができる。さらに、所望の効果に関して患者の臨床症状を観察することができる。不十分な抗腫瘍有効性しか達成されない場合、患者を、本発明の薬剤を使用する追加の処置に付することができ、この処置は、場合により、健康全般の改善をもたらすことが期待される他の周知の薬物を用いて修飾する。明らかに、医薬剤の担体またはビヒクルを修飾し、あるいは投与経路を変更することも可能である。経口摂取に加え、本発明の化合物の治療的投与についての別の好ましい経路として、例えば筋肉内または皮下注射または血管内への注射を想定することができる。同時に、カテーテルまたは外科用チューブを通した供給を使用することもできる。
【0030】
本発明の化合物を使用する際の上記指定の濃度に加えて、0.05〜500mg/体重kg/24時間、好ましくは5〜100mg/体重kgの総量でCHPおよび/またはゲムシタビンを使用することができる。有益には、前記の量は、障害の症状または応答性の病的な生理的条件の症状を予防または改善するために使用される治療的な量である。
【0031】
明らかに、用量は、対象者の年齢、健康および体重、疾患の程度、必要な同時処置の種類、処置の頻度および所望の効果および副作用の種類に依存する。0.05〜500mg/体重kgの一日量を一回量または複数回量として適用し、所望の結果を供給することができる。特に、医薬剤を約1〜10回投与/日で典型的に使用し、あるいは別法としてまたは追加的に持続注入として使用する。前記投与を長期または救急治療として適用することができる。当然、単一剤形を製造するために担体材料と組み合わせる活性物質の量は、処置対象の宿主(host)および投与の具体的種類に応じて変化させてよい。好ましい様式では、一日量を2〜5回の適用にわたって分配し、この場合、各適用では0.05〜500mg/体重kgの活性物質含量を含む1〜2錠剤を投与する。当然、例えば5000mg/kgの濃度までの高い活性物質含量を選択することも可能である。錠剤は徐放錠であってもよく、この場合は、1日あたりの適用回数を1〜3回に減らす。徐放錠の活性物質含量は3〜3000mgであってよい。上記活性物質を注射によって投与する場合、好ましくは1〜10回/日で本発明の化合物と宿主を接触させるか、あるいは持続注入を使用して接触させ、この場合、1〜4000mg/日の量が好ましい。前記好ましい1日あたりの総量はヒト医学および獣医学の両者において有益であることが見出された。前述の用量から逸脱することが必要になることがあり、これは処置対象の宿主の性質および体重、疾患の種類および重症度、薬物の製剤および適用の種類、および投与が行われる期間または間隔に依存する。ゆえに、場合によっては生物を前述の量より少量と接触させることが好ましいことがある。一方、他の場合には、上記指定の活性物質の量を上回る必要がある。当業者は各事例で必要とされる最適用量および活性物質の適用法の種類を決定することができる。
【0032】
別の特に好ましい本発明の実施態様では、医薬剤を1〜100、特に2〜50mg/体重kgの単一投与で使用する。1日あたりの総量と同様に、当業者は適用あたりの一回量の量を変更することができる。同様に、本発明で使用される化合物を獣医学において使用することができる。この場合、前述の単一濃度および製剤を飼料または飼料配合または飲料水とともに用いる。一回量には、好ましくは、1回の適用において投与される活性物質の量を含ませる。通常、この量は、一日量の全量、半分、または一日量の3分の1または4分の1に相当する。したがって投与単位には、好ましくは1、2、3または4またはそれ以上の一回量または0.5、0.3または0.25の一回量を含ませてよい。好ましい様式では、本発明の化合物の一日量を、2〜10回の適用、好ましくは2〜7回、より好ましくは3〜5回の適用にわたって分配する。当然、本発明の薬剤の持続注入も可能である。
【0033】
本発明の特に好ましい実施態様では、本発明の化合物の各経口適用において1〜2錠剤を投与する。本発明の錠剤には、当業者に周知のコーティングおよびエンベロープを付加することができ、あるいは宿主の好ましい特定領域でのみ活性物質(群)が放出されるように錠剤を構成することができる。
【0034】
好ましい実施態様では、処置または予防的阻止、または再発予防対象の癌性疾患または腫瘍は、耳−鼻−咽頭領域、肺、縦隔、消化管、泌尿生殖器系、婦人科学系、乳房、内分泌系、皮膚の癌性疾患または腫瘍疾患、骨および軟組織肉腫、中皮腫、黒色腫、中枢神経系の新生物、乳児期の癌性疾患または腫瘍疾患、リンパ腫、白血病、腫瘍随伴症候群、未知の原発腫瘍を伴う転移(CUP症候群)、腹膜癌症(peritoneal carcinomatoses)、免疫抑制関連悪性腫瘍および/または腫瘍転移の群から選択される。
【0035】
さらに具体的には、前記腫瘍は下記種類の癌を含んでよい:乳房、前立腺および結腸の腺癌;気管支を発端にする全形式の肺癌;骨髄癌、黒色腫、肝細胞腫、神経芽細胞腫;乳頭腫;アプドーマ、分離腫、鰓腫;悪性カルチノイド症候群;カルチノイド心疾患、癌腫(例えば、ウォーカー癌、基底細胞癌、扁平基底癌(squamobasal carcinoma)、ブラウン・ピアース癌、管癌、エールリッヒ腫瘍、上皮内癌(in situ carcinoma)、2型癌(cancer-2 carcinoma)、メルケル細胞癌、粘膜癌、非小細胞性気管支癌、エンバク細胞癌、乳頭状癌、硬癌、細気管支肺胞上皮癌、気管支癌、扁平上皮癌および移行上皮癌);組織球性機能障害;白血病(例えばB細胞白血病、混合細胞白血病、ヌル細胞白血病、T細胞白血病、慢性T細胞白血病、HTLV−II関連白血病、急性リンパ球性白血病、慢性リンパ球性白血病、肥満細胞白血病、および骨髄球性白血病に関連);悪性組織球増殖症、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、孤立性形質細胞腫;細網内皮症、軟骨芽細胞腫;軟骨腫、軟骨肉腫;線維腫;線維肉腫;巨細胞腫;組織球腫;脂肪腫;脂肪肉腫;白血肉腫;中皮腫;粘液腫;粘液肉腫;骨腫;骨肉腫;ユーイング肉腫;滑膜腫;腺線維腫;腺様リンパ腫;癌肉腫、脊索腫、頭蓋咽頭腫、未分化胚細胞腫、過誤腫;間葉細胞腫;中腎腫、筋肉腫、エナメル上皮腫、セメント腫;歯牙腫;奇形腫;胸腺腫、絨毛膜癌;腺癌、腺腫;胆管腫;コレステリン腫;円柱腫(cylindroma);嚢胞腺癌、嚢腺腫;顆粒膜細胞腫;男女性胚腫(gynadroblastoma);汗腺腫;島細胞腫瘍;ライディッヒ細胞腫;乳頭腫;セルトリ細胞腫、卵胞膜細胞腫、平滑筋腫;平滑筋肉腫;筋芽細胞腫;筋腫;筋肉腫;横紋筋腫;横紋筋肉腫;上衣細胞腫;節神経細胞腫、神経膠腫;髄芽腫、髄膜腫;神経鞘腫;神経芽細胞腫;神経上皮腫、神経線維腫、神経腫、傍神経節腫、非クロム親和性傍神経節腫、角化血管腫、好酸球増加随伴性血管類リンパ組織増殖症;硬化性血管腫(sclerotizing angioma);血管腫症;グロムス血管腫;血管内皮腫;血管腫;血管外皮細胞腫、血管肉腫;リンパ管腫、リンパ管筋腫(lymphangiomyoma)、リンパ管肉腫;松果体腫;葉状嚢肉腫;血管肉腫;リンパ管肉腫;粘液肉腫、卵巣癌;肉腫(例えば、ユーイング肉腫、試験的に、カポジ肉腫および肥満細胞肉腫);新生物(例えば、骨新生物、乳房新生物、消化器系の新生物、結腸直腸新生物、肝臓新生物、膵臓新生物、下垂体新生物、精巣新生物、眼窩新生物、頭部および頸部の新生物、中枢神経系の新生物、聴覚器官、骨盤、気道および尿生殖路の新生物);神経線維腫症および頸部扁平上皮形成異常(cervical squamous cell dysplasia)。
【0036】
好ましい実施態様では、処置または予防的阻止、または再発予防対象の癌性疾患または腫瘍は、下記の群から選択される:耳−鼻−咽頭領域の腫瘍、例えば内鼻(inner nose)、副鼻腔、上咽頭、唇、口腔、中咽頭、喉頭、下咽頭、耳、唾液腺の腫瘍、および傍神経節腫、肺の腫瘍、例えば非小細胞性気管支癌、小細胞性気管支癌、縦隔の腫瘍、消化管の腫瘍、例えば食道、胃、膵臓、肝臓、胆嚢および胆道、小腸の腫瘍、結腸および直腸癌および肛門癌、泌尿生殖器の腫瘍、例えば腎臓、尿管、膀胱、前立腺、尿道、陰茎および精巣の腫瘍、婦人科学的腫瘍、例えば子宮頸部、膣、外陰の腫瘍、子宮癌、悪性栄養膜疾患、卵巣癌、卵管の腫瘍(Tuba Faloppii)、腹腔の腫瘍、乳癌、内分泌器官の腫瘍、例えば甲状腺、副甲状腺、副腎皮質の腫瘍、内分泌膵臓腫瘍、カルチノイド腫瘍およびカルチノイド症候群、多発性内分泌腫瘍、骨および軟組織肉腫、中皮腫、皮膚腫瘍、黒色腫、例えば皮膚および眼内黒色腫、中枢神経系の腫瘍、乳児期の腫瘍、例えば網膜芽細胞腫、ウィルムス腫瘍、神経線維腫症、神経芽細胞腫、ユーイング肉腫腫瘍ファミリー、横紋筋肉腫、リンパ腫、例えば非ホジキンリンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、中枢神経系の原発性リンパ腫、ホジキン病(morbus Hodgkin)、白血病、例えば急性白血病、慢性骨髄球性およびリンパ性白血病、形質細胞新生物、脊髄形成異常症候群、腫瘍随伴症候群、未知の原発腫瘍を伴う転移(CUP症候群)、腹膜癌症、免疫抑制関連悪性腫瘍、例えばエイズ関連悪性腫瘍、例えばカポジ肉腫、エイズ関連リンパ腫、中枢神経系のエイズ関連リンパ腫、エイズ関連ホジキン病およびエイズ関連肛門性器腫瘍、移植関連悪性腫瘍、転移型腫瘍、例えば脳転移、肺転移、肝転移、骨転移、胸膜および心膜転移、および悪性腹水。
【0037】
別の好ましい実施態様では、処置または予防的阻止、または再発予防対象の癌性疾患または腫瘍は、乳癌、消化管の腫瘍、例えば結腸癌、胃癌、大腸癌および小腸癌、膵臓癌、卵巣癌、肝癌、肺癌、腎細胞癌、多発性骨髄腫のような癌性疾患または腫瘍疾患を含む群から選択される。
【0038】
限定を意図することなく、下記の実施例を参照して本発明をさらに詳細に説明する。
【実施例1】
【0039】
材料および方法:
特に記載しない限り、American Type Culture Collection(ATCC, Rockville, MD)から入手したセルラインを使用し、インキュベーター(5%HO、37℃)においてRPMI−1640重炭酸塩培地(Seromed, Berlin, Germany)中で培養し、単層で集密化させた。細胞のマイコプラズマ混入に関して検査した。培地は10%非働化(heat-inactivated)ウシ胎児血清(Seromed)および4mMグルタミンを含んだ。標準的手順にしたがって細胞を培養し、継代させた(0.03%トリプシン+0.02%EDTA、週3回)。細胞数はTOA Sysmex micro-cell counter(TOA, Tokyo, Japan)を使用して測定した。
【0040】
化学物質および溶液:
特に記載しない限り、化学物質はSigma(St. Louis, MO)から入手した。試験用の成分は供給された状態のまま使用した。CHPはPBS(リン酸緩衝食塩水、ダルベッコ)中の5mg/ml原液の形式で使用し、その一定量を−20℃で凍結した。関連成分は2mg/ml原液の形式で使用し、−20℃で凍結した。
【0041】
細胞周期分析および化学受容性(chemosensitivity)アッセイ:
トリプシン処理によって細胞を取得し、PBS中で洗浄し、70%エタノール中−20℃で20分間固定した。次いで、細胞をPBS中で再度洗浄し、0.05% Monidet P40/PBS中の20μg/mlヨウ化プロピジウム(PI)、5μg/ml RNアーゼAを含む染色溶液中に移し、室温で一晩インキュベートした。フローサイトメトリー(Coulter XL-MLC, Coulter, Miami, Florida)を用いて洗浄済み細胞を分析した。この分析ではMulticycle AV software(Phoenix)を使用して、PIヒストグラムの細胞周期分布を算出した。Gl/0期(間期)、S期(DNA合成)およびG2M期(有糸分裂細胞)の細胞の割合を測定した。PIヒストグラムからアポトーシス性subGl細胞を算出した。すべての実験は2回繰り返して実施した。
【0042】
化学受容性アッセイは、10細胞/ウェルおよび100μlの培地を有する96ウェルマイクロタイタープレートで実施し、試験対象の成分を容量100μl中で供給した。マイクロタイタープレート上で全成分を希釈し、細胞培養条件下で4日間プレートをインキュベートした。ただし、適用時間と反応間の比率が測定対象であった試験を除く。MTTアッセイを使用して、細胞の生存度、例えばミトコンドリアの活性、すなわち細胞生存率と細胞数の比率を測定した。この試験は当業者に周知の方法にしたがって実施した。
【0043】
アポトーシスアッセイ:
標準的な実験室手法にしたがって、アネキシンV/PI染色実験を使用してアポトーシスまたは壊死細胞をアッセイした。
【0044】
結果:腫瘍セルラインでのCHP活性の測定
表1
CHP抗増殖活性についてのセルラインスクリーニング
【表1】

【0045】
CHPと組み合わせてゲムシタビンまたは他の機能上の類似化合物を使用すると、驚くべきことに、選択セルラインで測定される表1の値を相乗様式で有意に改善できることが実証可能であった。また、これらの試験において、本発明の複合剤の効果がセルライン間で著しく変化することが実証された。
【0046】
この点を膵臓癌腫セルラインに関して例示様式で説明する。400μg/ml:4μg/mlの比でCHPおよびゲムシタビンを含有する複合剤を投与し、両化合物を同時放出すると、拮抗効果を示す。すなわち、細胞は長期間生存する。該複合剤中のゲムシタビンの濃度を変化させ、0.25、0.05または1μg/mlにし、CHPの濃度を変化させることによって、約15〜25%の拮抗効果が確認された。特に、これらの結果は膵臓癌腫セルラインにおいて認められた。一方、他のセルラインでは、CHPおよびゲムシタビンを同時放出する複合剤を投与すると細胞増殖の阻害効果を有した。
【0047】
また、CHPおよびゲムシタビンを経時的に放出する本発明の複合剤を試験した。これらの薬剤の製造は当業者に周知の製薬技術的方法にしたがって行った。細胞培養中で薬剤を使用した。この薬剤は最初にCHPを放出し、その後ゲムシタビンを放出する。この放出はそれぞれ24時間および48時間後である。最初にCHPと接触し、すなわちCHPで前処理された膵臓癌腫細胞は、後にゲムシタビンと接触した際に耐性を示すことが見出された。したがって、0.25μg/mlを超える高いゲムシタビン濃度では、例えば、細胞は約5%高い耐性を示し、低いゲムシタビン濃度では20%まで高い耐性を示した。すなわち、CHPおよびゲムシタビンを経時的に放出する複合剤を投与して、細胞を最初にCHPと接触させ、次いでゲムシタビンと接触させるようにすると、膵臓腫瘍細胞のゲムシタビン感受性が低下する。これらの結果を他のセルラインで繰り返すことが可能であり、前述の複合剤を投与しても、これらの細胞のゲムシタビンに対する耐性は低いことが選択細胞を用いて実証された。最初にゲムシタビンを放出し、その後CHPを放出する複合剤を使用すると、著しい相乗効果が認められた。驚くべきことに、膵臓癌腫セルラインでは、複合剤中のCHP濃度が非常に低い場合に相乗効果が生じ、一方、複合剤中のCHP濃度が100μg/mlを超える場合に拮抗効果が生じた。1μg/mlゲムシタビンを放出し、その後、それぞれ12、24および48時間後にCHPを放出する複合剤を使用した。
【0048】
表2はPANC−1細胞に対する複合剤の効果を示す。
【表2】

【0049】
すなわち、膵臓腫瘍の経時的処置は、該腫瘍を最初にゲムシタビンと接触させ、次いでCHPと接触させた場合に特に有望であり、この場合は、上記のように低いCHP濃度を選択すべきであろう。使用される薬剤は、種々の溶解度の担体およびビヒクル中にCHPおよびゲムシタビンを含む薬剤である。さらにまた、ゲムシタビンおよびCHPが別個の溶液中で提供されるキットを使用する。これらの溶液は、キットに含まれる指示書にしたがって使用される。ゆえに、タイムシフト型放出および最初にあるいはその後の時点で放出される成分または化合物に応じて、種々の種類の腫瘍に関する種々の特異性を示す複合剤が入手可能である。驚くべきことに、本発明の複合剤が腫瘍細胞の各細胞周期を変更することがさらに実証可能であった。使用対象の複合剤および使用対象の細胞に応じて、S期またはG2MもしくはGl/O期の変更または喪失が存在した。さらにまた、複合剤での処置の結果、いくつかの細胞がアポトーシス/壊死細胞に遷移することが観察された。また、ゲムシタビンに加えて他の化学療法薬、例えばオキソプラチン(oxoplatin)またはドキソルビシンを使用した場合に複合剤の多様な特異性が達成されることが実証可能であった。この結果は、ゲムシタビン部分がオキソプラチンまたはドキソルビシンまたは別の化学療法薬によって完全に置換された複合剤を使用した場合にも実証された。CHPシス型の代わりにトランス−ヒドロキシプロリンを使用することによって、複合剤の特異性をさらに修飾することが可能であった。
【0050】
さらにまた、本発明で開示される複合剤をヒトで臨床的に試験した。こうして、CHP−ゲムシタビン複合剤およびCHP−カペシタビン複合剤を用いて、良好な結果が達成された。ゲムシタビンは、局所進行型または転移性の膵臓腺癌を有する患者の初期処置に関して1996年にU.S. Food and Drug Administrationの認可を受けている。推奨される用量および処置サイクルは、7週間にわたる1g/m/週を含み、次いで1週の休止期間を含む。以後の処置サイクルは、3週間の1g/m/週の用量を含み、同様に次いで1週の休止期を含む。しかし、上記推奨される処置は強力な副作用を含まないわけではない。ゲムシタビン投与の典型的な副作用の1つは例えば骨髄の損傷であり、この損傷によって血球新生の機能障害が生じ、血液細胞がほとんど成熟できないようになる。その結果、貧血、好中球減少および全般的な免疫抑制になる。骨髄の損傷に起因する副作用は骨髄抑制と称される。他の副作用は、強い発汗、下痢、発熱またはインフルエンザ様症状、吐き気、下痢および嘔吐、呼吸困難、末梢浮腫、血尿、タンパク尿、脱毛、ならびに注射部位での湿疹および反応である。
【0051】
上記欠点は、ゲムシタビンおよびCHPを用いる下記の併用療法処置を使用して回避することができる。腫瘍処置の進行を毎月測定した。この測定では、コンピュータ断層撮影法、臨床検査室化学、腫瘍マーカーの測定および身体の全般的健康、例えば血液学的検査を使用した。前記併用療法を用いて、前述の副作用の発生を伴わない非常に良好な腫瘍処置が可能であることが見出された。
【0052】
CHP−ゲムシタビン複合剤を用いる処置計画
1.処置1〜7日:1日8gのCHP(静脈内)。
2.以後8日間の処置:8gの静脈内CHPを週3回および8gの経口CHPを週4回。
3.腫瘍の進行が測定された場合、同様にRECISTに基づく指針の観点から、追加のゲムシタビン投与を開始する。
4.ゲムシタビン用量は1000mg/mであり、1、8および15日目に静脈内投与する。
5.このサイクルを29日目に繰り返す。
6.ゲムシタビン注入と同時に、CHPを経口投与し、その用量は4gである。
7.3〜6日目、10〜13日目、および17〜26日目にCHPの同時投与を行う(結果的に28日の処置サイクルになる)。
【0053】
カペシタビンおよびCHPを含む併用療法を用いて、結腸直腸腺癌および肝臓転移を患う多数の患者を処置することができる。この腫瘍の標準的処置は、21日の処置サイクルの経過でのゲムシタビン投与である。患者を14日間処置し、次いで7日の休止期を置く。推奨されるカペシタビン用量は2,500mg/m/日である。別個の2用量中の薬剤を各食事の30分後に経口投与する。カペシタビンを投与すると、ゲムシタビン投与に関して既述の多数の副作用が生じる(上記参照のこと)。驚くべきことに、カペシタビンとCHPを組み合わせると、CHPおよびカペシタビンを別々に投薬する処置と比較して、腫瘍処置の効率は良好であり、副作用が減少する。ゆえに前記併用療法によって、低用量のカペシタビンおよびわずか10日間の短い処置サイクルの使用が可能になる。前記併用療法は患者に良好に寛容される。
【0054】
組織学的に判定された結腸直腸腺癌および肝臓転移を患う患者I−K(年齢68歳、男性)およびS−M(年齢76歳、男性)を、下記治療計画にしたがって、カペシタビンおよびCHPの併用療法の処置サイクルを使用して処置した:
1.10日間連続のカペシタビン投与(各500mgを含む2×3錠剤)、その後10日間のいわゆる洗い出し期間、および
2.経口溶液剤としての30日間連続のCHP投与(各回の用量8g)。
【0055】
CHP−ゲムシタビン併用療法の場合と同様に治療の成功を判定した。
【0056】
CHP−ゲムシタビンおよびCHP−カペシタビン併用療法の両者で、腫瘍処置の良好な治療的成功が認められ、この場合、CHPの存在下において、低用量および短い処置サイクルで化学療法薬ゲムシタビンおよびカペシタビンを使用することができた(個別の医薬剤を別々に投与した場合と比較)。特に消化管で発生する副作用、例えば腹痛、下痢、例えば下痢および嘔吐、嘔吐自体、ならびに疲労の一般的症状、ならびに口内炎、貧血および他の副作用が減少した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シス−ヒドロキシプロリン(CHP)およびゲムシタビンを含む複合剤。
【請求項2】
製薬的に許容される担体、アジュバントおよび/またはビヒクルを含むことを特徴とする、請求項1に記載の薬剤。
【請求項3】
担体が、充填剤、希釈剤、結合剤、湿気付与剤、崩壊剤、溶解遅延剤、吸収促進剤、湿潤剤、吸着剤および/または滑沢剤を含む群から選択されることを特徴とする、請求項2に記載の薬剤。
【請求項4】
ビヒクルが、リポソーム、シオソーム(siosomes)および/またはニオソームを含む群から選択されることを特徴とする、請求項2に記載の薬剤。
【請求項5】
薬剤が、ゲル剤、粉剤(poudrage)、粉末剤、注入溶液剤、錠剤、徐放錠、プレミックス、プロドラッグ、エマルジョン、ブリューアップ(brew-up)製剤、点滴剤、濃縮物、顆粒剤、シロップ剤、ペレット剤、大形丸剤、カプセル剤、エアロゾル剤、噴霧剤および/または吸入剤であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の薬剤。
【請求項6】
CHPおよびゲムシタビンが、0.1〜99.5、好ましくは0.5〜95、より好ましくは20〜80重量%の濃度で製剤中に存在することを特徴とする、請求項5に記載の薬剤。
【請求項7】
CHPおよびゲムシタビンが、500:1〜1:500、好ましくは100:1〜1:100、より好ましくは50:1〜1:50の比で製剤中に存在することを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の薬剤。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の複合剤を含むことを特徴とする抗腫瘍剤。
【請求項9】
細胞増殖、細胞分化および/または細胞分裂に関連する疾患の予防、治療、継続管理および/またはアフターケアにおける、請求項1〜8のいずれかに記載の薬剤の使用。
【請求項10】
疾患が腫瘍であることを特徴とする、前記請求項9に記載の使用。
【請求項11】
腫瘍成長、腫瘍伝播、腫瘍血管形成、腫瘍侵襲、腫瘍浸潤および/または腫瘍転移が阻害または予防されることを特徴とする、請求項9または10に記載の使用。
【請求項12】
腫瘍疾患が、新生物腫瘍、炎症性腫瘍および/または膿瘍、浸出液および/または浮腫の群から選択されることを特徴とする、前記請求項9〜11のいずれかに記載の使用。
【請求項13】
腫瘍が固形腫瘍または白血病であることを特徴とする、請求項10〜12のいずれかに記載の使用。
【請求項14】
固形腫瘍が尿生殖路および/または消化管の腫瘍であることを特徴とする、前記請求項9〜13のいずれかに記載の使用。
【請求項15】
腫瘍が、結腸癌、胃癌、膵臓癌、小腸癌、卵巣癌、(子宮)頸部癌、肺癌、前立腺癌、乳癌、腎細胞癌、脳腫瘍、頭部−咽頭腫瘍、肝癌、および/または上記腫瘍の転移であることを特徴とする、請求項10〜14のいずれかに記載の使用。
【請求項16】
固形腫瘍が、乳房、気管支、結腸直腸、および/または前立腺癌および/または上記腫瘍の転移であることを特徴とする、請求項13または14に記載の使用。
【請求項17】
尿生殖路の腫瘍が膀胱癌および/または該腫瘍の転移であることを特徴とする、請求項14に記載の使用。
【請求項18】
継続管理が抗腫瘍処置の効果をモニターすることであることを特徴とする、請求項9〜17のいずれかに記載の使用。
【請求項19】
請求項1〜8に記載の薬剤が、腫瘍転移、腫瘍侵襲、腫瘍成長、腫瘍伝播、腫瘍浸潤および/または腫瘍血管形成の予防、阻止、診断、減弱、治療、継続管理および/またはアフターケアに使用されることを特徴とする、請求項9〜18のいずれかに記載の使用。
【請求項20】
継続管理が抗腫瘍処置の効果をモニターすることであることを特徴とする、請求項9〜19のいずれかに記載の使用。
【請求項21】
請求項1〜8に記載の薬剤が併用療法で使用されることを特徴とする、請求項9〜20のいずれかに記載の使用。
【請求項22】
併用療法が、化学療法、細胞増殖抑制剤での処置および/または放射線治療を含むことを特徴とする、前記請求項21に記載の使用。
【請求項23】
併用療法が、補助的な、生物学的に指定される形式の治療を含むことを特徴とする、前記請求項21〜22に記載の使用。
【請求項24】
該形式の治療が免疫療法であることを特徴とする、前記請求項23に記載の使用。
【請求項25】
細胞増殖抑制剤および/または放射線照射に対する腫瘍細胞の感受性を増加させる、請求項9〜24のいずれかに記載の使用。
【請求項26】
細胞の生存度、増殖率を阻害するための、アポトーシスおよび/または細胞周期停止を誘発するための、請求項9〜25のいずれかに記載の使用。
【請求項27】
調製物が、経口、経膣、経直腸、鼻腔、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、局部および/または局所的に使用されることを特徴とする、請求項9〜26のいずれかに記載の使用。
【請求項28】
請求項1〜8に記載の薬剤が、0.05〜1000mg/kg、好ましくは5〜450mg/体重kg/24時間の総量で使用されることを特徴とする、請求項9〜27のいずれかに記載の使用。

【公表番号】特表2007−513894(P2007−513894A)
【公表日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−543364(P2006−543364)
【出願日】平成16年12月13日(2004.12.13)
【国際出願番号】PCT/DE2004/002760
【国際公開番号】WO2005/056005
【国際公開日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【出願人】(506126255)
【Fターム(参考)】