説明

CO2回収システム

【課題】リボイラの熱エネルギーをより軽減し、省エネルギー化を図るCO2回収システムを提供する。
【解決手段】ボイラ11やガスタービン等の産業設備から排出されたCO2を含有する排ガス12を冷却水13によって冷却する冷却塔14と、冷却されたCO2を含有する排ガス12とCO2を吸収するCO2吸収液15とを接触させて前記排ガス12からCO2を除去するCO2吸収塔16と、CO2を吸収したCO2吸収液(リッチ溶液)17からCO2を放出させて吸収液15を再生する第1の吸収液再生塔18−1及び第2の吸収液再生塔18−2とを有し、第2の吸収液再生塔出口の第2リーン溶液を減圧フラッシュさせ、そのフラッシュ蒸気を第1の吸収液再生塔に投入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス中に含まれるCO2を除去する吸収液を用いたCO2回収システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球の温暖化現象の原因の一つとして、CO2による温室効果が指摘され、地球環境を守る上で国際的にもその対策が急務となってきた。CO2の発生源としては化石燃料を燃焼させるあらゆる人間の活動分野に及び、その排出抑制への要求が一層強まる傾向にある。これに伴い尿素等の原料(化学用途)、原油増産、及び地球温暖化対策として、大量の化石燃料を使用する火力発電所などの動力発生設備を対象に、ボイラの燃焼排ガスをアミン系CO2吸収液と接触させ、燃焼排ガス中のCO2を除去、回収する方法及び回収されたCO2を大気へ放出することなく貯蔵する方法が精力的に研究されている。
【0003】
大量の燃焼排ガス中のCO2を回収・貯蔵する実用的な方法として、例えばアミン水溶液等のCO2吸収液と接触させる化学吸収法がある。前記のようなCO2吸収液を用い、燃焼排ガスからCO2を除去・回収する工程としては、CO2吸収塔において燃焼排ガスとCO2吸収液とを接触させる工程、CO2を吸収した吸収液を吸収液再生塔において加熱し、CO2を遊離させると共に吸収液を再生して再びCO2吸収塔に循環して再使用するものが採用されている(特許文献1)。
【0004】
この従来の化学吸収法によるCO2回収装置の運転は、吸収液再生塔において高温のスチーム等でアミン水溶液とCO2とを分離させているが、このスチーム(エネルギー)の消費を最小化させる必要があった。そのため、これまで、二種類以上の異なるCO2吸収液を混合して用いる方法(特許文献2、3)、CO2吸収液を送給するプロセスを改良する方法が検討されていた(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−51537号公報
【特許文献2】特開2001−25627号公報
【特許文献3】特開2005−254212号公報
【特許文献4】米国特許第6800120号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述のCO2吸収液を用いて燃焼排ガスのようなCO2を含有する排ガスからCO2を吸収除去・回収するシステムにおいては、燃焼設備に付加して設置されるため、その操業費用もできるだけ低減させる必要がある。特に吸収液を再生する吸収液再生塔においては、多量の熱エネルギーを消費するので、スチームのエネルギーをより軽減し、可能な限り省エネルギー化が可能なプロセスとする必要がある。
【0007】
また、従来のCO2回収システムが大型化し、CO2回収量が1日当たり例えば1000t以上の処理量となると、再生工程において要するリボイラの熱エネルギーも多量に消費することになるため、スチームのエネルギーをより軽減し、省エネルギー化を図る必要がある。
【0008】
本発明は、前記問題に鑑み、リボイラの熱エネルギーをより軽減し、省エネルギー化を図るCO2回収システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するための本発明の第1の発明は、冷却されたCO2を含有する排ガスとCO2を吸収するCO2吸収液とを接触させて前記排ガスからCO2を除去するCO2吸収塔と、CO2を吸収したCO2吸収液からCO2を放出させて吸収液を再生する第1の吸収液再生塔と、第1の吸収液再生塔から排出された第1リーン溶液から残存するCO2を放出させて吸収液を再生する第2の吸収液再生塔と、第2の吸収液再生塔から排出された第2リーン溶液をフラッシュさせるフラッシュドラムと、該フラッシュドラムで発生した蒸気を第1の吸収液再生塔に投入することを特徴とするCO2回収システムにある。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、第1のリーン溶液と前記フラッシュドラムでフラッシュさせた第3のリーン溶液とを熱交換するリーン・リーン溶液熱交換器を有することを特徴とするCO2回収システムにある。
【0011】
第3の発明は、第1の発明において、第1の吸収液再生塔の塔内部を鉛直軸方向の中間部分で、セミリーン溶液を抜き出すポートと、セミリーン溶液が抜き出され、抜き出しポートより底部側の戻し入れポートに戻しいれる循環ラインと、循環ラインに介装され、フラッシュドラムでフラッシュさせた第3のリーン溶液とセミリーン溶液とが熱交換するセミリーン・リーン溶液熱交換器と、を有することを特徴とするCO2回収システムにある。
【0012】
第4の発明は、第1の発明において、第1のリーン溶液と、フラッシュドラムでフラッシュさせた第3のリーン溶液とが熱交換するリーン・リーン溶液熱交換器と、第1の吸収液再生塔の塔内部を鉛直軸方向の中間部分で、セミリーン溶液を抜き出すポートと、セミリーン溶液が抜き出され、抜き出しポートより底部側の戻し入れポートに戻しいれる循環ラインと、循環ラインに介装され、前記第3のリーン溶液とセミリーン溶液とが熱交換するセミリーン・リーン溶液熱交換器と、を有することを特徴とするCO2回収システムにある。
【0013】
第5の発明は、第1乃至4のいずれか一つの発明において、CO2を含有する排ガスを冷却水によって冷却する冷却塔を有することを特徴とするCO2回収システムにある。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、CO2を吸収したCO2吸収液(リッチ溶液)からCO2を放出させて吸収液を再生する第1の吸収液再生塔及び第2の吸収液再生塔とを有し、第2の吸収液再生塔出口の第2リーン溶液を減圧フラッシュさせ、そのフラッシュ蒸気を第1の吸収液再生塔に投入することで、リボイラの熱エネルギーをより軽減し、省エネルギー化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、実施例1に係るCO2回収システムの概略図である。
【図2】図2は、実施例1に係る第1の吸収液再生塔及び第2の吸収液再生塔の要部を示す図である。
【図3】図3は、実施例2に係る第1の吸収液再生塔及び第2の吸収液再生塔の要部を示す図である。
【図4】図4は、実施例3に係る第1の吸収液再生塔及び第2の吸収液再生塔の要部を示す図である。
【図5】図5は、実施例4に係る第1の吸収液再生塔及び第2の吸収液再生塔の要部を示す図である。
【図6】図6は、従来技術に係るCO2回収システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【実施例1】
【0017】
本発明による実施例に係るCO2回収システムについて、図面を参照して説明する。図1は、CO2回収システムの概略図である。
図1に示すように、CO2回収システム10は、例えばボイラ11やガスタービン等の産業設備から排出されたCO2を含有する排ガス12を冷却水13によって冷却する冷却塔14と、冷却されたCO2を含有する排ガス12とCO2を吸収するCO2吸収液15とを接触させて前記排ガス12からCO2を除去するCO2吸収塔16と、CO2を吸収したCO2吸収液(リッチ溶液)17からCO2を放出させて第1のリーン吸収液(第1のリーン溶液)15Aを再生する第1の吸収液再生塔18−1及び第2のリーン吸収液(第2のリーン溶液)15Bを再生する第2の吸収液再生塔18−2とを有する。
このシステムでは、第1の吸収液再生塔18−1でCO2を除去した第1のリーン溶液15Aは、第2の吸収液再生塔18−2に送られ、ここで、再度CO2を除去して第2のリーン溶液15Bとし、その後、フラッシュドラム50で減圧フラッシュさせることで、気体側の水蒸気52を第1の吸収液再生塔18−1の熱源として利用し、フラッシュドラム50でフラッシュさせた液体側は、第3のリーン吸収液(第3のリーン溶液)15Cとし、その後冷却されて、CO2吸収塔16側に送られ再度排ガス12中のCO2を吸収するCO2吸収液15として利用する。
【0018】
このCO2回収システムを用いたCO2回収方法では、まずCO2を含有する排ガス12は、排ガス送風機20により昇圧された後、冷却塔14に送られ、ここで冷却水13により冷却され、CO2吸収塔16に送られる。
CO2吸収塔16は、塔内部に充填部16A、16Bが設けられ、塔下部に配設される充填部16Aで排ガス12とCO2吸収液15との対向接触効率を向上させている。塔上部に配設される充填部16Bでは、排ガス12と冷却水19との対向接触効率を向上させている。
【0019】
前記CO2吸収塔16において、排ガス12は例えばアミン系の吸収液15と交向流接触し、排ガス12中のCO2は、化学反応(R−NH2+H2O+CO2→R−NH3HCO3)によりCO2吸収液15に吸収され、CO2が除去された浄化排ガス21は系外に放出される。CO2を吸収したCO2吸収液17は「リッチ溶液」とも呼称される。このリッチ溶液17は、リッチソルベントポンプ22により昇圧され、リッチ・リーン溶液熱交換器23において、再生された第3のリーン吸収液15Cとの熱交換により加熱され、その後、第1の吸収液再生塔18−1に供給される。
リッチ溶液17は、CO2吸収塔16からリッチ溶液供給ラインL1により第1の吸収液再生塔18−1に供給されている。また、第3のリーン溶液15Cは、第2の吸収液再生塔18−2からフラッシュドラム50でフラッシュさせた後のリーン溶液供給ラインL2によりリーン溶液ポンプ53を介してCO2吸収塔16に供給されている。リッチ・リーン溶液熱交換器23は両者の交差点に設けられている。
なお、フラッシュドラムでフラッシュさせた第3のリーン溶液15Cは、リーンソルベントクーラ31により冷却され、CO2吸収液15としてCO2吸収塔16内に導入されている。
【0020】
図2は、第1の吸収液再生塔18−1及び第2の吸収液再生塔18−2の要部を示す図である。
リッチ・リーン溶液熱交換器23により熱交換されたリッチ溶液17は、第1の吸収液再生塔18−1の上部から塔内部に導入され、第1の吸収液再生塔18−1内を流下する際に、水蒸気52による吸熱反応を生じて、大部分のCO2を放出し、再生される。第1の吸収液再生塔18−1内で一部または大部分のCO2を放出した吸収液は「セミリーン溶液」と呼称される。このセミリーン溶液は、第1の吸収液再生塔18−1の下部に至る頃には、大部分のCO2が除去された第1のリーン溶液15Aとなる。
【0021】
ついで、第1の吸収液15Aは、第2の吸収液再生塔18−2に導入され、第2の吸収液再生塔18−2内を流下する際に、水蒸気による吸熱反応を生じて、残存するほとんどのCO2を放出し、再生される。CO2が除去されることにより再生されたこの第2のリーン溶液15Bは再生過熱器24で飽和水蒸気25により間接的に過熱され、塔内に水蒸気を供給している。
【0022】
また、第1及び第2の吸収液再生塔18−1、18−2においては、共に各々の塔頂部からは塔内においてリッチ溶液17及びセミリーン溶液から放出された水蒸気を伴ったCO2ガス26が導出され、コンデンサ27により水蒸気が凝縮され、分離ドラム28にて水26bが分離され、CO2ガス26aが系外に放出されて回収される。分離ドラム28にて分離された水26bは凝縮水循環ポンプ29にて吸収液再生塔18の上部に供給される。
【0023】
また、第2の吸収液再生塔18−2で再生された第2リーン溶液15Bは、フラッシュドラム50に導入され、フラッシュすることで、リーン溶液15は100℃となり、リッチ・リーン溶液熱交換器23に導入される第3のリーン溶液15Cの温度は100℃以下となり、50℃でリッチ・リーン溶液熱交換器23に導入され、熱交換された後のリッチ溶液17の温度は95℃となる。図2中、符号51は減圧弁である。
【0024】
フラッシュドラムでフラッシュさせた第3のリーン溶液15Cは、前記リッチ・リーン溶液熱交換器23にて前記リッチ溶液17により冷却され、つづいてリーンソルベントポンプ30にて昇圧され、さらにリーンソルベントクーラ31にて冷却された後、再びCO2吸収塔16に供給され、CO2吸収液15として再利用される。
【0025】
なお、図1中、符号11aはボイラ11やガスタービン等の産業設備の煙道であり、11bは煙突、18A、18Bは充填部、18Cはミストエリミネータである。前記CO2回収システムは、既設の排ガス12源からCO2を回収するために後付で設けられる場合と、新設排ガス12源に同時付設される場合とがある。煙突11bには開閉可能な扉を設置し、CO2回収システムの運転時は閉止する。また排ガス12源は稼動しているが、CO2回収システムの運転を停止した際は開放するように設定する。
【0026】
本実施例では、第1及び第2の吸収液再生塔18−1、18−2を有すると共に、第2の吸収液再生塔18−2から排出された第2リーン溶液15Bの熱を回収するリーン溶液降温手段としてフラッシュドラム50を設けており、第2のリーン溶液15Bの熱を有効利用するようにしている。
【0027】
第1のリーン15Aは、第1の吸収液再生塔18−1から第1のリーン溶液供給ラインL3により第2の吸収液再生塔18−2に供給されている。また、第2のリーン溶液15Bは第2の吸収液再生塔18−2から第2のリーン溶液供給ラインL4によりフラッシュドラム50に供給されている。
【0028】
フラッシュドラム50からフラッシュされた水蒸気52は、フラッシュドラム50から伸びる水蒸気供給ラインL5により第1の吸収液再生塔18−1に供給されている。
一方の減圧された第3のリーン溶液15Cは、フラッシュドラム50から伸びるリーン溶液供給ラインL2によりCO2吸収塔16に供給されている。
【0029】
すなわち、第2のリーン溶液15Bは第2の吸収液再生塔18−2で飽和水蒸気25により間接的に加熱された水蒸気により過熱されているので、120℃程度で系外に排出され、フラッシュドラム50に導入される。
この際、フラッシュドラム50によりその熱を回収し、第2のリーン溶液15Bの温度を降下させ、第3のリーン溶液15Cとすることで、リッチ・リーン溶液熱交換器23の熱交換容量を小さくすることができる。
【0030】
ここで、第2の吸収液再生塔18−2から排出される第2のリーン溶液15Bの温度T1が例えば120℃の場合、フラッシュドラム50で第2のリーン溶液15Bをフラッシュすることで、フラッシュの後の第3のリーン溶液15Cの温度T2は100℃程度となる。
【0031】
例えばリッチ溶液17の温度T3が50℃の場合、リッチ・リーン溶液熱交換器23に導入される第3のリーン溶液15Cの温度T2が100℃以下で熱交換されるので、熱交換後のリッチ溶液17の温度T4は95℃となる。また、第3のリーン溶液15Cの熱交換後の温度T5は55℃に低下する。なお、水蒸気として第1の吸収液再生塔18−1から外部に排出する温度T6は82.5℃であり、第2の吸収液再生塔18−2から外部に排出する温度T7は85℃である。なお、第1の吸収液再生塔18−1から第2の吸収液再生塔18−2に供給される第1のリーン溶液15Aの温度T8は95℃である。
ここで、吸収液再生塔18の塔内は0.9kg/cm2Gである。
【0032】
よって、第1の吸収液再生塔18−1に導入されるリッチ溶液17の温度が従来よりも低いので、第1の吸収液再生塔18−1でのリボイラ熱量の低下を図ることができる。
ここで、第1及び第2の吸収液再生塔18−1、18−2のリボイラ熱量の内訳は、(a)リッチ溶液17を再生するための反応熱量Q1(404kcal/kgCO2)、(b)吸収液再生塔18から溶液として持ち出される損失熱量Q2(55kcal/kgCO2)、(c)第1及び第2の吸収液再生塔18−1、18−2からCO2と共に排出される水蒸気として持ち出される損失熱量Q3(162kcal/kgCO2)の総和QR(621kcal/kgCO2)となる。
【0033】
これに対し、図6に示す従来技術のCO2回収システム100のように、リーン溶液15の熱を回収しない場合、例えばリッチ溶液17の温度T3が50℃の場合、リッチ・リーン溶液熱交換器23に導入されるリーン溶液15の温度T1が120℃で熱交換されるので、熱交換後のリッチ溶液17の温度T4は110℃となる。なお、リーン溶液15の熱交換後の温度T5は60℃に低下する。なお、水蒸気として外部に排出する温度T6は92.5℃である。
【0034】
よって、リボイラ熱量の内訳は、(a)吸収液を再生するための反応熱量Q1(404kcal/kgCO2)、(b)吸収液再生塔18から溶液として持ち出される損失熱量Q2(110cal/kgCO2)、(c)吸収液再生塔18からCO2と共に排出される水蒸気として持ち出される損失熱量Q3(151kcal/kgCO2)の総和QR(665kcal/kgCO2)となる。
【0035】
このように、図2に示す本発明に係るCO2回収システム10Aの第1及び第2の吸収液再生塔18−1、18−2のリボイラ熱量は、621kcal/kgCO2であるのに対し、図6に示す従来技術に係るCO2回収システム100の吸収液再生塔18のリボイラ熱量は、665kcal/kgCO2であり、大幅なリボイラ熱量の低減を図ることができることが判明した。
【0036】
以上説明したように、本発明によれば、リーン溶液の熱を有効的に回収することで、吸収液再生塔側における熱量の総和を大幅に低減することができると共に、ランニングコストの大幅な低減となる。
【0037】
なお従来技術における提案では、吸収液再生塔18の塔内に供給するリッチ溶液17の温度を上昇させて、塔内でのリボイラ熱量を下げることを主眼として検討していたが、本発明のように、塔内のみならず、(b)吸収液再生塔18から溶液(リーン溶液)として持ち出される損失熱量Q2と、(c)吸収液再生塔18からCO2と共に排出される水蒸気として持ち出される損失熱量Q3とを考慮して全体として低減することとしたので、リーン溶液15の熱を回収することで、システム全体のエネルギー効率の向上を図ることができる。
【実施例2】
【0038】
本発明による実施例に係るCO2回収システムについて、図面を参照して説明する。図3は、実施例2に係る第1の吸収液再生塔及び第2の吸収液再生塔の要部を示す図である。実施例1と同一部材についは同一符号を付してその説明は省略する。
図3に示すように、CO2回収システム10Bは、図2に示すCO2回収システム10Aにおいて、第1の吸収液再生塔18−1から第2の吸収液再生塔18−2に第1のリーン溶液15Aを供給する第1のリーン溶液供給ラインL3と、フラッシュドラム50からの第3のリーン溶液15Cを供給する供給ラインL6との交差部に介装され、第1のリーン溶液15Aと第3のリーン溶液15Cとを熱交換するリーン・リーン溶液熱交換器61を有する。
【0039】
ここで、第2の吸収液再生塔18−2で再生された第2リーン溶液15Bは、フラッシュドラム50に導入され、フラッシュすることで、第3のリーン溶液15Cは100℃となっているが、リーン・リーン溶液熱交換器61により熱交換されることで、さらに温度が低下され、リッチ・リーン溶液熱交換器23に導入され、リッチ溶液17と熱交換する。
【0040】
例えば第1のリーン溶液15Aの温度T8が95℃の場合、第3のリーン溶液15Cの温度T2が100℃であるので、第1のリーン溶液15Aの温度T9が97.5℃に上昇する。これに対し、第3のリーン溶液15Cの温度T10が97.5℃に低下する。
そして、リッチ溶液17の温度T3が50℃の場合、リッチ・リーン溶液熱交換器23に導入される温度T10が97.5℃の第3のリーン溶液15Cにより熱交換されるので、熱交換後のリッチ溶液17の温度T4は92.5℃となる。また、第3のリーン溶液15Cの熱交換後の温度T5は55℃に低下する。なお、水蒸気として第1の吸収液再生塔18−1から外部に排出する温度T6は80℃であり、第2の吸収液再生塔18−2から外部に排出する温度T7は85℃である。
ここで、吸収液再生塔18の塔内は0.9kg/cm2Gである。
【0041】
よって、第1の吸収液再生塔18−1に導入されるリッチ溶液17の温度が従来よりも低いので、第1の吸収液再生塔18−1でのリボイラ熱量の低下を図ることができる。
ここで、第1及び第2の吸収液再生塔18−1、18−2のリボイラ熱量の内訳は、(a)リッチ溶液17を再生するための反応熱量Q1(404kcal/kgCO2)、(b)吸収液再生塔18から溶液として持ち出される損失熱量Q2(55kcal/kgCO2)、(c)第1及び第2の吸収液再生塔18−1、18−2からCO2と共に排出される水蒸気として持ち出される損失熱量Q3(142kcal/kgCO2)の総和QR(601kcal/kgCO2)となる。
【実施例3】
【0042】
本発明による実施例に係るCO2回収システムについて、図面を参照して説明する。図4は、実施例3に係る第1の吸収液再生塔及び第2の吸収液再生塔の要部を示す図である。実施例1と同一部材についは同一符号を付してその説明は省略する。
図4に示すように、CO2回収システム10Cは、図2に示すCO2回収システム10Aにおいて、第1の吸収液再生塔18−1の塔内部を鉛直軸方向の中間部分で、セミリーン溶液55を抜き出すポートAと、セミリーン溶液55が抜き出され、抜き出しポートAより底部側の戻し入れポートBに戻し入れる循環ラインL7と、循環ラインL7に介装され、第3のリーン溶液15Cとセミリーン溶液55とが熱交換するセミリーン・リーン溶液熱交換器62とを有する。図4中、符号18A−1、18A−2は充填部、18Dはチムニートレイである。
【0043】
ここで、第2の吸収液再生塔18−2で再生された第2リーン溶液15Bは、フラッシュドラム50に導入され、フラッシュすることで、リーン溶液15は100℃となっている。
セミリーン溶液55は、循環ラインL6の抜き出しポートAより抜き出され、セミリーン・リーン溶液熱交換器62において、第3のリーン溶液15Cとセミリーン溶液55とが熱交換し、セミリーン溶液55は温度が上昇し、その後、ポートBより第1の吸収液再生塔18−1内に導入される。これにより、第1の吸収液再生塔18−1内の水蒸気量を低減することができる。
【0044】
これに対し、第3のリーン溶液15Cはセミリーン・リーン溶液熱交換器62により、温度が実施例1よりも低下し、温度が低下して第3のリーン溶液15Cはリッチ・リーン溶液熱交換器23に導入され、リッチ溶液17と熱交換する。
【0045】
ここで、第2の吸収液再生塔18−2から排出される第2のリーン溶液18Bの温度T1が例えば120℃の場合、フラッシュドラム50で第2のリーン溶液15Bをフラッシュすることで、フラッシュの後の第3のリーン溶液15Cの温度T2は100℃程度となる。
セミリーン溶液55は、循環ラインL6の抜き出しポートAより抜き出され、セミリーン・リーン溶液熱交換器62において、第3のリーン溶液15Cとセミリーン溶液55とが熱交換し、温度T11が85℃のセミリーン溶液55の温度T12が97.5℃まで上昇し、その後、ポートBより第1の吸収液再生塔18−1内に導入される。これにより、第1の吸収液再生塔18−1内の水蒸気量を低減することができる。
【0046】
これに対し、第3のリーン溶液15Cはセミリーン・リーン溶液熱交換器62により、温度が実施例1よりも低下し、温度T13が87.5℃まで低下する。
【0047】
例えばリッチ溶液17の温度T3が50℃の場合、リッチ・リーン溶液熱交換器23に導入される温度T13が87.5℃の第3のリーン溶液15Cにより熱交換されるので、熱交換後のリッチ溶液17の温度T4は82.5℃となる。また、第3のリーン溶液15Cの熱交換後の温度T5は55℃に低下する。なお、水蒸気として第1の吸収液再生塔18−1から外部に排出する温度T6は77.5℃であり、第2の吸収液再生塔18−2から外部に排出する温度T7は87.5℃である。
ここで、吸収液再生塔18の塔内は0.9kg/cm2Gである。
【0048】
よって、第1の吸収液再生塔18−1に導入されるリッチ溶液17の温度が従来よりも低いので、第1の吸収液再生塔18−1でのリボイラ熱量の低下を図ることができる。
ここで、第1及び第2の吸収液再生塔18−1、18−2のリボイラ熱量の内訳は、(a)リッチ溶液17を再生するための反応熱量Q1(404kcal/kgCO2)、(b)吸収液再生塔18から溶液として持ち出される損失熱量Q2(55kcal/kgCO2)、(c)第1及び第2の吸収液再生塔18−1、18−2からCO2と共に排出される水蒸気として持ち出される損失熱量Q3(134kcal/kgCO2)の総和QR(593kcal/kgCO2)となる。
【0049】
このように、図4に示す本発明に係るCO2回収システム10Cの第1及び第2の吸収液再生塔18−1、18−2のリボイラ熱量は、593kcal/kgCO2であるのに対し、図6に示す従来技術に係るCO2回収システム100の吸収液再生塔18のリボイラ熱量は、665kcal/kgCO2であり、大幅なリボイラ熱量の低減を図ることができることが判明した。
【実施例4】
【0050】
本発明による実施例に係るCO2回収システムについて、図面を参照して説明する。図5は、実施例4に係る第1の吸収液再生塔及び第2の吸収液再生塔の要部を示す図である。実施例1乃至3と同一部材についは同一符号を付してその説明は省略する。
図5に示すように、CO2回収システム10Dは、図3に示すCO2回収システム10Bと図4に示すCO2回収システム10Cとを統合したものであり、第1のリーン溶液15Aと第3のリーン溶液15Cとが熱交換するリーン・リーン溶液熱交換器61と、第3のリーン溶液15Cとセミリーン溶液55とが熱交換するセミリーン・リーン溶液熱交換器62と、を有する。
【0051】
ここで、第2の吸収液再生塔18−2から排出される第2のリーン溶液15Bの温度T1が例えば120℃の場合、フラッシュドラム50で第2のリーン溶液15Bをフラッシュすることで、フラッシュの後の第3のリーン溶液15Cの温度T2は100℃程度となる。
セミリーン溶液55は、循環ラインL6の抜き出しポートAより抜き出され、セミリーン・リーン溶液熱交換器62において、第3のリーン溶液15Cとセミリーン溶液55とが熱交換し、温度T11が85℃のセミリーン溶液55の温度T12が97.5℃まで上昇し、その後、ポートBより第1の吸収液再生塔18−1内に導入される。これにより、第1の吸収液再生塔18−1内の水蒸気量を低減することができる。
【0052】
これに対し、第3のリーン溶液15Cはセミリーン・リーン溶液熱交換器62により、温度が実施例1よりも低下し、温度T13が87.5℃まで低下する。
【0053】
第1のリーン溶液15Aの温度T8が95℃の場合、第3のリーン溶液15Cの温度T13が87.5℃であるので、第1のリーン溶液15Aの温度T9が90℃に上昇する。これに対し、第3のリーン溶液15Cの温度T10が92.5℃に低下する。
そして、リッチ溶液17の温度T3が50℃の場合、リッチ・リーン溶液熱交換器23に導入される温度T10が92.5℃の第3のリーン溶液15Cにより熱交換されるので、熱交換後のリッチ溶液17の温度T4は87.5℃となる。また、第3のリーン溶液15Cの熱交換後の温度T5は55℃に低下する。なお、水蒸気として第1の吸収液再生塔18−1から外部に排出する温度T6は80℃であり、第2の吸収液再生塔18−2から外部に排出する温度T7は85℃である。
ここで、吸収液再生塔18の塔内は0.9kg/cm2Gである。
【0054】
よって、第1の吸収液再生塔18−1に導入されるリッチ溶液17の温度が従来よりも低いので、第1の吸収液再生塔18−1でのリボイラ熱量の低下を図ることができる。
ここで、第1及び第2の吸収液再生塔18−1、18−2のリボイラ熱量の内訳は、(a)リッチ溶液17を再生するための反応熱量Q1(404kcal/kgCO2)、(b)吸収液再生塔18から溶液として持ち出される損失熱量Q2(55kcal/kgCO2)、(c)第1及び第2の吸収液再生塔18−1、18−2からCO2と共に排出される水蒸気として持ち出される損失熱量Q3(142kcal/kgCO2)の総和QR(601kcal/kgCO2)となる。
【0055】
このように、図5に示す本発明に係るCO2回収システム10Dの第1及び第2の吸収液再生塔18−1、18−2のリボイラ熱量は、601kcal/kgCO2であるのに対し、図6に示す従来技術に係るCO2回収システム100の吸収液再生塔18のリボイラ熱量は、665kcal/kgCO2であり、大幅なリボイラ熱量の低減を図ることができることが判明した。
【0056】
以上のリボイラ熱量の関係を表1に示す。
【0057】
【表1】

表1に示すように、実施例3のシステムが一番エネルギー効率が良好であることが判明した。
【0058】
以上より、本発明のCO2回収システムによれば、CO2回収量が1日当たり例えば1000t以上の処理量となる大型化した場合における吸収液再生に要するリボイラの熱エネルギーの大幅な軽減を図ることができ、システム全体の省エネルギー化を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
以上のように、本発明に係るCO2回収システムによれば、リボイラの熱エネルギーをより軽減し、省エネルギー化を図ることができる。
【符号の説明】
【0060】
10、10A〜10D CO2回収システム
11 ボイラ
12 排ガス
15 CO2吸収液(リーン溶液)
15A 第1のリーン吸収液(第1のリーン溶液)
15B 第2のリーン吸収液(第2のリーン溶液)
15C 第3のリーン吸収液(第3のリーン溶液)
16 CO2吸収塔
17 リッチ溶液
18−1 第1の吸収液再生塔
18−2 第2の吸収液再生塔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却されたCO2を含有する排ガスとCO2を吸収するCO2吸収液とを接触させて前記排ガスからCO2を除去するCO2吸収塔と、
CO2を吸収したCO2吸収液からCO2を放出させて吸収液を再生する第1の吸収液再生塔と、
第1の吸収液再生塔から排出された第1リーン溶液から残存するCO2を放出させて吸収液を再生する第2の吸収液再生塔と、
第2の吸収液再生塔から排出された第2リーン溶液をフラッシュさせるフラッシュドラムと、該フラッシュドラムで発生した蒸気を第1の吸収液再生塔に投入することを特徴とするCO2回収システム。
【請求項2】
請求項1において、
第1のリーン溶液と前記フラッシュドラムでフラッシュさせた第3のリーン溶液とを熱交換するリーン・リーン溶液熱交換器を有することを特徴とするCO2回収システム。
【請求項3】
請求項1において、
第1の吸収液再生塔の塔内部を鉛直軸方向の中間部分で、セミリーン溶液を抜き出すポートと、
セミリーン溶液が抜き出され、抜き出しポートより底部側の戻し入れポートに戻しいれる循環ラインと、
循環ラインに介装され、フラッシュドラムでフラッシュさせた第3のリーン溶液とセミリーン溶液とが熱交換するセミリーン・リーン溶液熱交換器と、を有することを特徴とするCO2回収システム。
【請求項4】
請求項1において、
第1のリーン溶液と、フラッシュドラムでフラッシュさせた第3のリーン溶液とを熱交換するリーン・リーン溶液熱交換器と、
第1の吸収液再生塔の塔内部を鉛直軸方向の中間部分で、セミリーン溶液を抜き出すポートと、
セミリーン溶液が抜き出され、抜き出しポートより底部側の戻し入れポートに戻しいれる循環ラインと、
循環ラインに介装され、前記第3のリーン溶液とセミリーン溶液とを熱交換するセミリーン・リーン溶液熱交換器と、を有することを特徴とするCO2回収システム。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一つにおいて、
CO2を含有する排ガスを冷却水によって冷却する冷却塔を有することを特徴とするCO2回収システム。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−115780(P2012−115780A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−268865(P2010−268865)
【出願日】平成22年12月1日(2010.12.1)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【Fターム(参考)】