説明

CO2回収装置及びろ過膜装置の洗浄方法

【課題】石炭焚きボイラに適用可能とし、リーン溶液中に含まれる固形分をCO2吸収液の損失を抑えつつ、かつCO2吸収液の濃度を低下させずに除去することができるCO2回収装置及びろ過膜装置の洗浄方法を提供する。
【解決手段】CO2回収装置10Aは、排ガス1001AからCO2を除去する吸収塔1004と、リッチ溶液1006を再生する再生塔1007と、再生塔1007から放出されたCO2ガス中の水蒸気を凝縮し、水を分離する分離ドラム1026とを有するCO2回収装置であって、リーン溶液1008中に残存する固形分11をフィルター12でろ過するろ過膜装置13を有し、凝縮水1014−1を洗浄水16Aとして用いてフィルター12を洗浄し、再度系内に戻すようにしている。フィルター12の取替え時にCO2吸収液1005が希釈されることなくフィルター12に付着したCO2吸収液1005を回収し、フィルター12を洗浄する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス中のCO2等を除去するCO2吸収液中に残存する煤塵、フライアッシュを含有する固形分をろ過し、捕集したフィルターの交換を行うCO2回収装置及びろ過膜装置の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球の温暖化現象の原因の一つとして、CO2による温室効果が指摘され、地球環境を守る上で国際的にもその対策が急務となってきた。CO2の発生源としては化石燃料を燃焼させるあらゆる人間の活動分野に及び、その排出抑制への要求が一層強まる傾向にある。これに伴い大量の化石燃料を使用する火力発電所などの動力発生設備を対象に、ボイラの燃焼排ガスをアミン系CO2吸収液と接触させ、燃焼排ガス中のCO2を除去、回収する方法及び回収されたCO2を大気へ放出することなく貯蔵する方法が精力的に研究されている。
【0003】
また前記のようなCO2吸収液を用い、燃焼排ガスからCO2を除去・回収する方法としては、吸収塔において燃焼排ガスとCO2吸収液とを接触させる工程、CO2を吸収した吸収液を再生塔において加熱し、CO2を遊離させると共にCO2吸収液を再生する工程とからなり、再生したCO2吸収液を再び吸収塔に循環させて再使用するものが採用されている(特許文献1)。
【0004】
従来のCO2回収装置1000は、図8に示すように、例えばボイラやガスタービン等の産業設備から排出されたCO2を含有するCO2含有排ガス1001Aを冷却塔1002において冷却水1003によって冷却する。そして、冷却されたCO2含有排ガス1001Aを吸収塔1004においてアルカノールアミンをベースとするCO2吸収液1005と向流接触し、CO2含有排ガス1001AからCO2を除去する。そして、CO2を吸収したCO2吸収液(リッチ溶液)1006は、再生塔1007においてCO2を放出し、再生塔1007下部に至る頃には、大部分のCO2が除去され、リーン溶液1008としてCO2吸収液1005を再生するものである。この再生されたCO2吸収液(リーン溶液)1008が再び吸収塔1004に送給され、CO2吸収液1005として再利用される。
【0005】
この従来のCO2回収装置1000を用いたCO2回収方法では、吸収塔1004において、CO2含有排ガス1001Aは、吸収塔1004の下部側に設けられたCO2回収部1010で、液分散器であるノズル1011−1から供給されるCO2吸収液1005と向流接触し、CO2含有排ガス1001A中のCO2は、例えば、化学反応(R−NH2+H2O+CO2→R−NH3HCO3)によりCO2吸収液1005に吸収される。
【0006】
そして、CO2が除去された後のCO2除去排ガス1001Bは、水洗部1013−1、でノズル1011−2から供給されるCO2吸収液1005を含む凝縮水1014−1と気液接触して、CO2除去排ガス1001Bに同伴するCO2吸収液1005が回収される。また、凝縮水受部1015−1で回収されたCO2吸収液1005を含む凝縮水1014−1は、第一の循環ラインL1を介して送給され、水洗部1013−1の洗浄水として再利用される。
【0007】
更に、水洗部1013−2においても、CO2吸収液除去排ガス1001Cはノズル1011−3から供給されるCO2吸収液1005を含む凝縮水1014−2と気液接触し、CO2吸収液除去排ガス1001C中に残存するCO2吸収液1005が回収される。また、凝縮水受部1015−2で回収されたCO2吸収液1005を含む凝縮水1014−2は第二の循環ラインL2を介して送給され、水洗部1013−2の洗浄水として再利用される。
【0008】
その後、吸収塔1004の頂部からCO2吸収液1005の除去されたCO2吸収液除去排ガス1001Cが排出される。
【0009】
また、リッチ溶液1006は、リッチ・リーン溶液熱交換器1016においてリーン溶液1008により加熱され、リッチ溶液供給ライン1017を介して再生塔1007に供給される。再生塔1007内部に供給されたリッチ溶液1006は、吸熱により、大部分のCO2を放出する。再生塔1007内で一部のCO2を放出したCO2吸収液1005は「セミリーン溶液」と呼称される。この図示しないセミリーン溶液は、再生塔1007底部に至る頃には、大部分のCO2が除去されたリーン溶液1008となる。リーン溶液1008はリーン溶液供給ライン1018を介して吸収塔1004に送給される。また、リーン溶液1008は再生加熱器1020で飽和スチーム1021により加熱され、再生加熱器1020で使用された飽和スチーム1021はスチーム凝縮水1022として排出される。
【0010】
一方、再生塔1007の塔頂部からは水蒸気を伴ったCO2ガス1024が放出され、コンデンサ1025により水蒸気が凝縮され、分離ドラム1026にて水が分離された後、CO2ガス1027が系外に放出されて回収される。分離ドラム1026にて分離された水1028は、CO2吸収液回収用水循環ライン1029を介して再生塔1007の上部、水洗部1013−2の頂部に供給され、CO2吸収液回収用水1030として利用される。
【0011】
尚、図8中、前記CO2回収装置1000は、既設の排ガス源からCO2を回収するために後付で設けられる場合と、新設排ガス源に同時付設される場合とがある。
【0012】
【特許文献1】特開平5−245339号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ここで、これまで従来のCO2回収装置1000は、ガス焚きボイラにおいて用いられていたが、近年では、石炭焚きボイラにおいても用いられている。今後、従来のCO2回収装置1000を石炭焚きボイラにも対応するような場合、図示しない脱硫装置等で除去しきれない煤塵、フライアッシュ(石炭灰)等を含有する固形分が、ガス焚きボイラよりも多量に排出される。
【0014】
こうした固形分は吸収塔1004で除去されるが、これらの前記固形分はリーン溶液1008中に蓄積されていくため、今後、石炭焚きボイラにも用いるようにする場合、CO2吸収液中の固形分を除去するろ過膜装置を設ける必要がある。
【0015】
このCO2吸収液1005中の固形分はろ過膜装置のフィルターのエレメント又はろ過材によって捕集・除去される。また、前記フィルターとしては、例えばカートリッジフィルター、プレコートフィルターが用いられる。
【0016】
しかしながら、フィルターやろ過材の取換えを行う際、フィルターにCO2吸収液が付着しているため、フィルターやろ過材をそのまま廃棄するとCO2吸収液1005の損失が大きくなる、という問題がある。
【0017】
また、フィルターに付着したCO2吸収液1005の洗浄に水を用い、この水を排水として放出するとアミン等のCO2吸収液1005が含まれているため、排水中のCOD値が高く、そのまま系外に排水として処理できない、という問題がある。
【0018】
また、フィルターに付着しているCO2吸収液を外部から供給される水により洗浄すると、CO2吸収液1005のアミン濃度が低下する、という問題がある。
【0019】
そのため、今後、石炭焚きボイラにおいて用い、煤塵量が多大となった場合でも、ガス焚きボイラに用いる場合と同様に運転することができ、前記リーン溶液1008中に含有されている多くの前記固形分を連続的に除去できるCO2回収装置の出現が望まれている。
【0020】
本発明は、前記問題に鑑み、石炭焚きボイラに適用可能とし、リーン溶液中に含まれる固形分をCO2吸収液の損失を抑えつつ、かつCO2吸収液の濃度を低下させずに除去することができるCO2回収装置及びろ過膜装置の洗浄方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上述した課題を解決するための本発明の第1の発明は、CO2を含有する排ガスとCO2吸収液とを接触させてCO2を除去する吸収塔と、CO2を吸収したリッチ溶液を熱交換により再生する再生塔と、前記再生塔から放出された水蒸気を伴ったCO2ガス中の水蒸気を凝縮し、水を分離する分離ドラムとを有し、該再生塔でCO2を除去したリーン溶液を前記吸収塔で再利用するCO2回収装置であって、前記吸収塔が、CO2を含有する排ガスとCO2吸収液とを接触させて前記排ガス中のCO2を吸収するCO2回収部と、前記CO2回収部の上段側に配設され、CO2を除去したCO2除去排ガスを冷却すると共に、同伴するCO2吸収液を回収する少なくとも一つ以上の水洗部と、前記各水洗部の下方側に配設され、前記各水洗部内の凝縮水を回収する凝縮水受部とを有すると共に、前記リーン溶液、前記リッチ溶液の何れか一方又は両方の溶液中に残存する固形分をフィルターによりろ過するろ過膜装置を有し、系内を循環している低濃度のCO2吸収液を用いて前記フィルターを洗浄し、洗浄に用いた低濃度のCO2吸収液を再度系内に戻すことを特徴とするCO2回収装置にある。
【0022】
第2の発明は、第1の発明において、前記吸収塔の前記凝縮水受部で回収された凝縮水、前記分離ドラムにて分離された水の何れか一方又は両方の低濃度のCO2吸収液を洗浄水として用いることを特徴とするCO2回収装置にある。
【0023】
第3の発明は、第1又は2の発明において、前記ろ過膜装置に前記リーン溶液を送給するリーン溶液分岐ラインに前記低濃度のCO2吸収液を送給する洗浄水送給ラインを有することを特徴とするCO2回収装置にある。
【0024】
第4の発明は、第1乃至3の何れか一つの発明において、前記フィルターを洗浄した低濃度のCO2吸収液を前記凝縮水受部に送給する洗浄水返送ラインを有することを特徴とするCO2回収装置にある。
【0025】
第5の発明は、第1乃至4の何れか一つの発明において、前記フィルターが、ろ過材を溶解させた低濃度のCO2吸収液を用いて前記フィルターにコーティング層を形成するものであることを特徴とするCO2回収装置にある。
【0026】
第6の発明は、第1乃至5の何れか一つの発明において、前記CO2吸収液がアミン系吸収液であることを特徴とするCO2回収装置にある。
【0027】
第7の発明は、COを含有する排ガスとCO吸収液とを吸収塔のCO2回収部内で接触させてCO2を除去した後、該CO2を吸収したリッチ溶液を再生塔で再生し、その後再生したCO2を除去したリーン溶液中に残存する固形分をろ過膜装置に設けられているフィルターによりろ過するろ過膜装置の洗浄方法であって、系内を循環している低濃度のCO2吸収液を前記ろ過膜装置に送給し、前記低濃度のCO2吸収液を用いて前記フィルターを洗浄し、前記フィルターを洗浄した前記低濃度のCO2吸収液を再度系内に戻すことを特徴とするろ過膜装置の洗浄方法にある。
【0028】
第8の発明は、第7の発明において、前記吸収塔の前記凝縮水受部で回収された凝縮水、分離ドラムにて分離された水の何れか一方又は両方の低濃度のCO2吸収液を洗浄水として用いることを特徴とするろ過膜装置の洗浄方法にある。
【0029】
第9の発明は、第7又は8の発明において、前記CO2吸収液がアミン系吸収液であることを特徴とするろ過膜装置の洗浄方法にある。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、CO2吸収液中に残存する固形分をフィルターによりろ過した際に前記フィルターに付着しているCO2吸収液を低濃度のCO2吸収液中に回収し、前記フィルターを洗浄するろ過膜装置を有し、前記フィルターを洗浄した洗浄水を再度系内に戻すようにしている。このため、前記フィルター取替え時において、外部から水を系内に供給する必要がないため、系内を循環する前記CO2吸収液が水により希釈されることなく、フィルターに付着している前記CO2吸収液を洗浄水中に回収し、前記フィルターを洗浄することができる。また、前記CO2吸収液を系外に放出することなく、前記フィルターを洗浄することができるため、前記CO2吸収液の濃度の低下を防止すると共に、前記CO2吸収液の損失を大幅に削減することができる。
【0031】
これにより、石炭焚きボイラにも適用可能となり、吸収塔で除去される煤塵量が多大となっても、連続的にリーン溶液中の多量の固形分を処理することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【実施例1】
【0033】
本発明による実施例1に係るCO2回収装置について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施例1に係るCO2回収装置の概略図である。図中、前記図8に示した装置と同一構成には同一符号を付して重複した説明は省略する。尚、図8に示す冷却塔1002の図は省略する。
【0034】
図1に示すように、本実施例に係るCO2回収装置10Aは、CO2を含有する排ガス1001AとCO2吸収液1005とを接触させてCO2を除去する吸収塔1004と、CO2を吸収したリッチ溶液1006を熱交換により再生する再生塔1007と、再生塔1007から放出された水蒸気を伴ったCO2ガス中の水蒸気を凝縮し、水を分離する分離ドラム1026とを有し、再生塔1007でCO2を除去したリーン溶液(再生液)1008を吸収塔1004で再利用するCO2回収装置であって、吸収塔1004が、CO2を含有する排ガス1001AとCO2吸収液1005とを接触させてCO2含有排ガス1001A中のCO2を吸収するCO2回収部1010と、CO2回収部1010の上段側に配設され、CO2を除去したCO2除去排ガス1001Bを冷却すると共に、同伴するCO2吸収液1005を回収する第一の水洗部1013−1、第二の水洗部1013−2と、第一の水洗部1013−1、第二の水洗部1013−2の下方側に配設され、第一の水洗部1013−1、第二の水洗部1013−2内の凝縮水1014−1、1014−2を回収する第一の凝縮水受部1015−1、第二の凝縮水受部1015−2とを有すると共に、リーン溶液1008中に残存する固形分11をフィルター12によりろ過するろ過膜装置13を有し、系内を循環している低濃度のCO2吸収液を用いてフィルター12を洗浄し、洗浄に用いた低濃度のCO2吸収液を再度系内に戻すようにするものであって、第一の凝縮水受部1015−1で回収されたCO2吸収液1005を含む凝縮水1014−1をろ過膜装置13にリーン溶液1008を送給するリーン溶液分岐ライン14−1に送給する第一の洗浄水送給ライン15Aを有するものである。
また、本発明では、低濃度のCO2吸収液として第一の凝縮水受部1015−1で回収されたCO2吸収液1005を含む凝縮水1014−1を用い、このろ過膜装置13に送給する凝縮水1014−1を洗浄水16Aとする。
【0035】
フィルター12で、リーン溶液1008A中に残存する固形分11を捕集することにより、固形分11が除去されたリーン溶液1008Bをリーン溶液供給ライン1018に供給することができる。
【0036】
また、ろ過膜装置13でリーン溶液1008Aをろ過している時は、バルブV11、V12を開放すると共に、バルブV13を閉鎖する。これにより、リーン溶液供給ライン1018より一部抜出したリーン溶液1008Aは、ろ過膜装置13にリーン溶液1008Aを送給するリーン溶液分岐ライン14−1を介してろ過膜装置本体17内に送給され、フィルター12でリーン溶液1008A中に残存する固形分11を捕集する。そして、固形分11が除去されたリーン溶液1008Bがリーン溶液分岐ライン14−2を介してリーン溶液供給ライン1018に供給される。
【0037】
また、ろ過膜装置13は、フィルター12に付着しているCO2吸収液1005をろ過膜装置本体17に送給された洗浄水16Aを用いて、フィルター12に付着しているCO2吸収液1005を洗浄水16A中に回収し、フィルター12を洗浄するろ過膜装置である。
【0038】
本実施例に係るCO2回収装置10Aにおいては、凝縮水受部1015−1で回収されたCO2吸収液1005を含む凝縮水1014−1をリーン溶液分岐ライン14−1に送給する第一の洗浄水送給ライン15Aを有するものである。
【0039】
第一の洗浄水送給ライン15Aを設けることで、リーン溶液分岐ライン14−1にCO2吸収液1005を含む凝縮水1014−1を送給することができるため、CO2吸収液1005を含む凝縮水1014−1を洗浄水16Aとして用いることができる。
【0040】
ろ過膜装置本体17内に洗浄水16Aを送給し、フィルター12を洗浄する時は、バルブV11は閉鎖すると共に、バルブV12、V13、V14を開放する。これにより、CO2吸収液1005を含む凝縮水1014−1が洗浄水16Aとしてろ過膜装置13内に送給され、フィルター12に付着しているCO2吸収液1005を洗浄水16A中に回収し、フィルター12を洗浄することができる。フィルター12を洗浄した洗浄水16Aは、リーン溶液分岐ライン14−2を介してリーン溶液供給ライン1018に供給される。
【0041】
また、第一の循環ラインL1のCO2吸収液1005を含む凝縮水1014−1には、CO2吸収液1005が例えば4wt%程度含有され、リッチ溶液供給ライン1017のリッチ溶液1006には、CO2吸収液1005が例えば50wt%程度含有されている。
【0042】
よって、フィルター12の取替え時において、外部から水をろ過膜装置13内に供給する必要がないため、系内を循環するCO2吸収液1005が外部から供給される水により希釈されることなく、CO2吸収液1005を含む凝縮水1014−1によりフィルター12に付着したCO2吸収液1005を回収し、フィルター12を洗浄することができる。
【0043】
また、フィルター12の洗浄には第一の洗浄水送給ライン15AのCO2吸収液1005を含む凝縮水1014−1のように系内を循環している水を用い、リーン溶液供給ライン1018中のCO2吸収液1005に供給しているため、フィルター12に付着したアミン等のCO2吸収液1005を洗浄した排水が系外に放出されることがない。このため、CO2吸収液1005を系外に放出することなくフィルター12を洗浄することができるため、CO2吸収液1005の濃度の低下を防止すると共に、CO2吸収液1005の損失を大幅に削減することができる。
【0044】
また、フィルター12としては、カートリッジフィルター、プレコートフィルターが用いられるのが好ましいが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば中空糸膜、焼結金属、MF膜(精密濾過膜)などのCO2吸収液1005中の固形分11をろ過できるものであればよい。
【0045】
また、フィルター12としてプレコートフィルターを用いる時のフィルターの取替え方法について説明する。
【0046】
図2は、フィルターへのコーティング層の形成、洗浄の工程を示すフローチャートである。
【0047】
図2に示すように、フィルター12としてプレコートフィルターを用いる場合、フィルター12は、ろ過材を溶解させた低濃度のCO2吸収液として洗浄水16Aを用いてフィルター12にコーティング層を形成するものである。
【0048】
即ち、フィルター12としてプレコートフィルターを用いる場合には、図2に示すように、フィルター12表面にコーティング層を形成するコーティング層形成工程S11と、CO2吸収液1005中の固形分11をろ過して除去する固形分ろ過工程S12と、洗浄水16Aを用いてフィルター12表面に付着したCO2吸収液1005を回収し、フィルター12を洗浄するフィルター洗浄工程S13とを繰り返し行うようにするものである。
【0049】
まず、コーティング層形成工程S11では、フィルター12のコーティング層を構成するろ過材を洗浄水16Aに溶解させ、このろ過材の溶解させた洗浄水16Aをフィルター12に付け、コーティング層を形成する。
【0050】
そして、固形分ろ過工程S12では、CO2吸収液1005をリーン溶液分岐ライン14−1を介してろ過膜装置13に送給し、リーン溶液1008Aをろ過し、リーン溶液1008A中に残存する固形分11を捕集する。そして、固形分11が除去されたリーン溶液1008Bはリーン溶液供給ライン1018に供給される。
【0051】
そして、フィルター洗浄工程S13では、洗浄水16Aをろ過膜装置13に送給し、フィルター12に付着しているCO2吸収液1005を洗浄水16A中に回収し、フィルター12を洗浄する。そして、洗浄水16Aを抜いた後、圧縮した空気をろ過膜装置本体17内に供給し、ろ過材を吹き飛ばしてコーティング層を除去する。
【0052】
そして、上述と同様に、再度、ろ過材を溶解させた洗浄水16Aを用いてフィルター12に新しくコーティング層を形成する。
【0053】
よって、フィルター12のコーティング層を形成する時、フィルター12を洗浄する時のいずれの場合においても、外部からろ過膜装置13内に水を供給する必要がないため、CO2吸収液1005が希釈されることなく、フィルター12のコーティング層を形成することができると共に、フィルター12に付着したCO2吸収液1005を回収し、フィルター12を洗浄することができる。従って、フィルター12を洗浄する場合の他にフィルター12にコーティング層を形成する場合においても系内を循環している水を有効に利用することができる。
【0054】
また、排ガス量が例えば1,000,000Nm3/Hで一般的な煤塵量は例えば5.0mg/Nm3とすると、冷却塔1002や図示しない脱硫装置等で除去されなかった煤塵等は、吸収塔1004で除去する必要がある。この時、吸収塔1004で除去される煤塵量は、1,000,000(Nm3/H)×5.0(mg/Nm3)=5.0Kg/Hと多大となる。また、一般にフィルターの一本当たりの煤塵の捕集量は100g〜200g程度であるので、約50本/Hのフィルターの取替えが必要となる。
【0055】
これに対し、フィルター12を洗浄及びコーティング層を形成する際に、系内を循環している水を用いることで、吸収塔1004で除去される煤塵量が多大となっても、連続的に比較的多くのリーン溶液中の固形分を短時間で処理することができる。
【0056】
このように、本実施例に係るCO2回収装置10Aによれば、アミン等のCO2吸収液1005中に残存する固形分11をろ過したフィルター12を洗浄する工程において、フィルター12に付着しているCO2吸収液1005を低濃度のCO2吸収液1005である凝縮水1014−1中に回収し、フィルター12を洗浄するろ過膜装置13を有し、フィルター12を洗浄した洗浄水16Aを再度系内に戻すようにしている。このため、フィルター12の取替え時において、外部から水を系内に供給する必要がないため、系内を循環するCO2吸収液1005が水により希釈されることなく、フィルター12表面に付着しているCO2吸収液1005を洗浄水16A中に回収し、フィルター12を洗浄することができる。また、CO2吸収液1005を系外に放出することなく、フィルター12を洗浄することができるため、CO2吸収液1005の濃度の低下を防止すると共に、CO2吸収液1005の損失を大幅に削減することができる。
【0057】
これにより、石炭焚きボイラにも適用可能となると共に、CO2回収装置が大型化し、吸収塔1004で除去される煤塵量が例えば5.0Kg/Hと多大となっても、連続的に比較的多くのリーン溶液中の固形分を短時間で処理することができる。
【0058】
また、本実施例に係るCO2回収装置10Aにおいては、水洗部を二つ設けるようにしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、一つ又は三つ以上設けるようにしてもよい。
【実施例2】
【0059】
本発明による実施例2に係るCO2回収装置について、図3を参照して説明する。
図3は、本発明の実施例2に係るCO2回収装置の概略図である。図中、前記図1に示す本発明の実施例1に係るCO2回収装置10Aと同一構成には同一符号を付して重複した説明は省略する。尚、冷却塔1002の図は省略する。
【0060】
図3に示すように、本実施例に係るCO2回収装置10Bは、洗浄水として前記図1に示す本発明の実施例1に係るCO2回収装置10AのCO2吸収液1005を含む凝縮水1014−1に代えて第二の循環ラインL2を循環しているCO2吸収液1005を含む凝縮水1014−2を用いるものである。
【0061】
即ち、本実施例に係るCO2回収装置10Bは、図3に示すように、前記図1に示す本発明の実施例1に係るCO2回収装置10Aの第一の洗浄水送給ライン15Aに代えて、第二の循環ラインL2から凝縮水受部1015−2で回収されたCO2吸収液1005を含む凝縮水1014−2をリーン溶液分岐ライン14−1に送給する第二の洗浄水送給ライン15Bを有するものである。
【0062】
第二の洗浄水送給ライン15Bを設けることで、リーン溶液分岐ライン14−1にCO2吸収液1005を含む凝縮水1014−2を送給することができるため、CO2吸収液1005を含む凝縮水1014−2を洗浄水16Bとして用いることができる。
【0063】
ろ過膜装置本体17内に洗浄水16Bを送給し、フィルター12を洗浄する時は、バルブV11は閉鎖すると共に、バルブV12、V13、V15を開放する。これにより、CO2吸収液1005を含む凝縮水1014−2が洗浄水16Bとしてろ過膜装置13内に送給され、フィルター12に付着しているCO2吸収液1005を洗浄水16B中に回収し、フィルター12を洗浄することができる。フィルター12を洗浄した洗浄水16Bは、リーン溶液分岐ライン14−2を介してリーン溶液供給ライン1018に供給される。
【0064】
また、第二の循環ラインL2のCO2吸収液1005を含む凝縮水1014−2には、CO2吸収液1005が例えば0.9wt%程度含有され、リッチ溶液供給ライン1017のリッチ溶液1006には、上述の通りCO2吸収液1005が例えば50wt%程度含有されている。
【0065】
よって、フィルター12の取替え時において、外部から水をろ過膜装置13内に供給する必要がないため、系内を循環するCO2吸収液1005が外部から供給される水により希釈されることなく、CO2吸収液1005を含む凝縮水1014−2によりフィルター12に付着したCO2吸収液1005を回収し、フィルター12を洗浄することができる。
【0066】
また、フィルター12の洗浄には第二の洗浄水送給ライン15BのCO2吸収液1005を含む凝縮水1014−2のように系内を循環している水を用い、リーン溶液供給ライン1018中のCO2吸収液1005に供給しているため、フィルター12に付着したアミン等のCO2吸収液1005を洗浄した排水が系外に放出されることがない。このため、CO2吸収液1005を系外に放出することなくフィルター12を洗浄することができる。
【0067】
従って、本実施例に係るCO2回収装置10Bによれば、CO2吸収液1005を含む凝縮水1014−2を洗浄水16Bとしてろ過膜装置本体17内に送給し、フィルター12を洗浄することで、系内を循環するCO2吸収液1005が水により希釈されることなく、フィルター12表面に付着しているCO2吸収液1005を洗浄水16B中に回収し、フィルター12を洗浄することができる。また、CO2吸収液1005を系外に放出することなく、フィルター12を洗浄することができるため、CO2吸収液1005の濃度の低下を防止すると共に、CO2吸収液1005の損失を大幅に削減することができる。
【実施例3】
【0068】
本発明による実施例3に係るCO2回収装置について、図4を参照して説明する。
図4は、本発明の実施例3に係るCO2回収装置の概略図である。図中、前記図1に示す本発明の実施例1に係るCO2回収装置10Aと同一構成には同一符号を付して重複した説明は省略する。尚、冷却塔1002の図は省略する。
【0069】
図4に示すように、本実施例に係るCO2回収装置10Cは、洗浄水として前記図1に示す本発明の実施例1に係るCO2回収装置10AのCO2吸収液1005を含む凝縮水1014−1に代えて、再生塔1007から放出され、分離ドラム1026にて分離された水1028を用いるものである。
【0070】
即ち、本実施例に係るCO2回収装置10Cは、図4に示すように、前記図1に示す本発明の実施例1に係るCO2回収装置10Aの第一の洗浄水送給ライン15Aに代えて、分離ドラム1026にて分離された水1028をリーン溶液分岐ライン14−1に送給する第三の洗浄水送給ライン15Cを有するものである。
【0071】
第三の洗浄水送給ライン15Cを設けることで、リーン溶液分岐ライン14−1に水1028を送給することができるため、水1028を洗浄水16Cとして用いることができる。
【0072】
ろ過膜装置本体17内に洗浄水16Cを送給し、フィルター12を洗浄する時は、バルブV11は閉鎖すると共に、バルブV12、V13、V16を開放する。これにより、水1028が洗浄水16Cとしてろ過膜装置13内に送給され、フィルター12に付着しているCO2吸収液1005を洗浄水16C中に回収し、フィルター12を洗浄することができる。フィルター12を洗浄した洗浄水16Cは、リーン溶液分岐ライン14−2を介してリーン溶液供給ライン1018に供給される。
【0073】
また、CO2吸収液回収用水循環ライン1029の水1028には、CO2吸収液1005が例えば0.5wt%程度含有され、リッチ溶液供給ライン1017のリッチ溶液1006には、上述の通りCO2吸収液1005が例えば50wt%程度含有されている。
【0074】
よって、フィルター12の取替え時において、外部から水をろ過膜装置13内に供給する必要がないため、系内を循環するCO2吸収液1005が外部から供給される水により希釈されることなく、水1028によりフィルター12に付着したCO2吸収液1005を回収し、フィルター12を洗浄することができる。
【0075】
また、フィルター12の洗浄にはCO2吸収液回収用水循環ライン1029のCO2吸収液を含む水1028のように系内を循環している水を用い、リーン溶液供給ライン1018中のCO2吸収液1005に供給しているため、フィルター12に付着したアミン等のCO2吸収液1005を洗浄した排水が系外に放出されることがない。このため、CO2吸収液1005を系外に放出することなくフィルター12を洗浄することができる。
【0076】
従って、本実施例に係るCO2回収装置10Cによれば、水1028を洗浄水16Cとしてろ過膜装置本体17内に送給し、フィルター12を洗浄することで、系内を循環するCO2吸収液1005が水により希釈されることなく、フィルター12表面に付着しているCO2吸収液1005を洗浄水16C中に回収し、フィルター12を洗浄することができる。また、CO2吸収液1005を系外に放出することなく、フィルター12を洗浄することができるため、CO2吸収液1005の濃度の低下を防止すると共に、CO2吸収液1005の損失を大幅に削減することができる。
【実施例4】
【0077】
本発明による実施例4に係るCO2回収装置について、図5を参照して説明する。
図5は、本発明の実施例4に係るCO2回収装置の概略図である。図中、前記図1に示す本発明の実施例1に係るCO2回収装置10A、前記図3に示す本発明の実施例2に係るCO2回収装置10Bと同一構成には同一符号を付して重複した説明は省略する。尚、冷却塔1002の図は省略する。
【0078】
図5に示すように、本実施例に係るCO2回収装置10Dは、洗浄水として前記図3に示す本発明の実施例2に係るCO2回収装置10BのCO2吸収液1005を含む凝縮水1014−2を用い、フィルター12を洗浄した後、洗浄後のCO2吸収液1005を含む凝縮水1014−2をリーン溶液供給ライン1018に代えて第一の循環ラインL1に送給するようにしたものである。
【0079】
即ち、本実施例に係るCO2回収装置10Dは、図5に示すように、前記図3に示す本発明の実施例2に係るCO2回収装置10Bのリーン溶液分岐ライン14−2に代えて、ろ過膜装置13でフィルター12を洗浄した後の洗浄水16Bを第一の循環ラインL1に送給する第一の洗浄水返送ライン18Aを有するものである。
【0080】
第一の洗浄水返送ライン18Aを設けることで、フィルター12を洗浄した後の洗浄水16Bを第一の循環ラインL1に送給することができるため、洗浄水16BをCO2吸収液1005を含む凝縮水1014−1と混合することができ、第一の水洗部1013−1においてCO2除去排ガス1001Bに同伴するCO2吸収液1005を回収するのに用いることができる。
【0081】
ろ過膜装置本体17内に洗浄水16Bを送給し、フィルター12を洗浄する時は、バルブV11、V12は閉鎖すると共に、バルブV13、V15、V17を開放する。これにより、CO2吸収液1005を含む凝縮水1014−2が洗浄水16Bとしてろ過膜装置13内に送給され、フィルター12に付着しているCO2吸収液1005を洗浄水16B中に回収し、フィルター12を洗浄することができる。フィルター12を洗浄した洗浄水16Bは、第一の洗浄水返送ライン18Aを介して第一の循環ラインL1に供給される。
【0082】
また、第二の循環ラインL2のCO2吸収液1005を含む凝縮水1014−2には、上述の通りCO2吸収液1005が例えば0.8wt%程度含有され、第一の循環ラインL1のCO2吸収液1005を含む凝縮水1014−1には、上述の通りCO2吸収液1005が例えば4.0wt%程度含有されている。
【0083】
よって、フィルター12の取替え時において、外部から水をろ過膜装置13内に供給する必要がないため、CO2吸収液1005が外部から供給される水により希釈されることなく、CO2吸収液1005を含む凝縮水1014−2によりフィルター12に付着したCO2吸収液1005を回収し、フィルター12を洗浄することができる。
【0084】
また、フィルター12の洗浄には第二の洗浄水送給ライン15BのCO2吸収液1005を含む凝縮水1014−2を用いているため、フィルター12に付着したCO2吸収液1005を洗浄した排水が系外に放出されることがない。このため、CO2吸収液1005を系外に放出することなくフィルター12を洗浄することができる。
【0085】
従って、本実施例に係るCO2回収装置10Dによれば、ろ過膜装置本体17内にCO2吸収液1005を含む凝縮水1014−2を洗浄水16Bとして送給し、フィルター12を洗浄することで、系内を循環するCO2吸収液1005が水により希釈されることなく、フィルター12表面に付着しているCO2吸収液1005を洗浄水16B中に回収し、フィルター12を洗浄することができる。また、CO2吸収液1005を系外に放出することなく、フィルター12を洗浄することができるため、CO2吸収液1005の濃度の低下を防止すると共に、CO2吸収液1005の損失を大幅に削減することができる。
【実施例5】
【0086】
本発明による実施例5に係るCO2回収装置について、図6を参照して説明する。
図6は、本発明の実施例6に係るCO2回収装置の概略図である。図中、前記図1に示す本発明の実施例1に係るCO2回収装置10A、前記図4に示す本発明の実施例3に係るCO2回収装置10C、前記図5に示す本発明の実施例4に係るCO2回収装置10Dと同一構成には同一符号を付して重複した説明は省略する。尚、冷却塔1002の図は省略する。
【0087】
図6に示すように、本実施例に係るCO2回収装置10Eは、洗浄水として前記図4に示す本発明の実施例3に係るCO2回収装置10Cの水1028を用い、フィルター12を洗浄した後、洗浄後の水1028をリーン溶液供給ライン1018に代えて第一の循環ラインL1に送給するようにしたものである。
【0088】
即ち、本実施例に係るCO2回収装置10Eは、図6に示すように、前記図4に示す本発明の実施例3に係るCO2回収装置10Cのリーン溶液分岐ライン14−2に代えて、ろ過膜装置13でフィルター12を洗浄した後の洗浄水16Cを第一の循環ラインL1に送給する第一の洗浄水返送ライン18Aを有するものである。
【0089】
ろ過膜装置本体17内に洗浄水16Cを送給し、フィルター12を洗浄する時は、バルブV11、V12は閉鎖すると共に、バルブV13、V16、V17を開放する。これにより、水1028が洗浄水16Cとしてろ過膜装置13内に送給され、フィルター12に付着しているCO2吸収液1005を洗浄水16C中に回収し、フィルター12を洗浄することができる。フィルター12を洗浄した洗浄水16Cは、第一の洗浄水返送ライン18Aを介して第一の循環ラインL1に供給される。
【0090】
また、CO2吸収液回収用水循環ライン1029の水1028には、上述の通りCO2吸収液1005が例えば0.5wt%程度含有され、第一の循環ラインL1のCO2吸収液1005を含む凝縮水1014−1には、上述の通りCO2吸収液1005が例えば4.0wt%程度含有されている。
【0091】
よって、フィルター12の取替え時において、外部から水をろ過膜装置13内に供給する必要がないため、CO2吸収液1005が外部から供給される水により希釈されることなく、水1028によりフィルター12に付着したCO2吸収液1005を回収し、フィルター12を洗浄することができる。
【0092】
また、フィルター12の洗浄にはCO2吸収液回収用水循環ライン1029の水1028を用いているため、フィルター12に付着したCO2吸収液1005を洗浄した排水が系外に放出されることがない。このため、CO2吸収液1005を系外に放出することなくフィルター12を洗浄することができる。
【0093】
従って、本実施例に係るCO2回収装置10Eによれば、ろ過膜装置本体17内に水1028を洗浄水16Cとして送給し、フィルター12を洗浄することで、系内を循環するCO2吸収液1005が水により希釈されることなく、フィルター12表面に付着しているCO2吸収液1005を洗浄水16C中に回収し、フィルター12を洗浄することができる。また、CO2吸収液1005を系外に放出することなく、フィルター12を洗浄することができるため、CO2吸収液1005の濃度の低下を防止すると共に、CO2吸収液1005の損失を大幅に削減することができる。
【実施例6】
【0094】
本発明による実施例6に係るCO2回収装置について、図7を参照して説明する。
図7は、本発明の実施例6に係るCO2回収装置の概略図である。図中、前記図1に示す本発明の実施例1に係るCO2回収装置10A、前記図4に示す本発明の実施例3に係るCO2回収装置10Cと同一構成には同一符号を付して重複した説明は省略する。尚、冷却塔1002の図は省略する。
【0095】
図7に示すように、本実施例に係るCO2回収装置10Fは、洗浄水として前記図4に示す本発明の実施例3に係るCO2回収装置10Cの水1028を用いてフィルター12を洗浄した後、洗浄後の水1028をリーン溶液供給ライン1018に代えて第二の循環ラインL2に送給するようにしたものである。
【0096】
即ち、本実施例に係るCO2回収装置10Fは、図7に示すように、前記図6に示す本発明の実施例5に係るCO2回収装置10Eの第一の洗浄水返送ライン18Aに代えて、ろ過膜装置13でフィルター12を洗浄した後の洗浄水16Cを第二の循環ラインL2に送給する第二の洗浄水返送ライン18Bを有するものである。
【0097】
第二の洗浄水返送ライン18Bを設けることで、フィルター12を洗浄した後の洗浄水16Cを第二の循環ラインL2に送給することができるため、洗浄水16CをCO2吸収液1005を含む凝縮水1014−2と混合することができ、第二の水洗部1013−2においてCO2除去排ガス1001Bに同伴するCO2吸収液1005を回収するのに用いることができる。
【0098】
ろ過膜装置本体17内に洗浄水16Cを送給し、フィルター12を洗浄する時は、バルブV11、V12は閉鎖すると共に、バルブV13、V16、V18を開放する。これにより、水1028が洗浄水16Cとしてろ過膜装置13内に送給され、フィルター12に付着しているCO2吸収液1005を洗浄水16C中に回収し、フィルター12を洗浄することができる。フィルター12を洗浄した洗浄水16Cは、第二の洗浄水返送ライン18Bを介して第二の循環ラインL2に供給される。
【0099】
また、CO2吸収液回収用水循環ライン1029の水1028には、上述の通りCO2吸収液1005が例えば0.5wt%程度含有され、第二の循環ラインL2のCO2吸収液1005を含む凝縮水1014−2には、上述の通りCO2吸収液1005が例えば0.8wt%程度含有されている。
【0100】
よって、フィルター12の取替え時において、外部から水をろ過膜装置13内に供給する必要がないため、CO2吸収液1005が外部から供給される水により希釈されることなく、水1028によりフィルター12に付着したCO2吸収液1005を回収し、フィルター12を洗浄することができる。
【0101】
また、フィルター12の洗浄にはCO2吸収液回収用水循環ライン1029の水1028を用いているため、フィルター12に付着したCO2吸収液1005を洗浄した排水が系外に放出されることがない。このため、CO2吸収液1005を系外に放出することなくフィルター12を洗浄することができる。
【0102】
従って、本実施例に係るCO2回収装置10Fによれば、ろ過膜装置本体17内に水1028を洗浄水16Cとして送給し、フィルター12を洗浄することで、系内を循環するCO2吸収液1005が水により希釈されることなく、フィルター12表面に付着しているCO2吸収液1005を洗浄水16C中に回収し、フィルター12を洗浄することができる。また、CO2吸収液1005を系外に放出することなく、フィルター12を洗浄することができるため、CO2吸収液1005の濃度の低下を防止すると共に、CO2吸収液1005の損失を大幅に削減することができる。
【0103】
また、本発明では、フィルター12に付着している固形分11を除去する方法として、洗浄水16A〜16Cを用いて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、溶液中のCO2吸収液1005の濃度が低いところから高いところに送給できればよく、他のCO2吸収液1005が循環しているライン中の溶液を用いるようにしてもよい。
【0104】
また、本発明では、リーン溶液供給ライン1018より一部抜出したリーン溶液1008A中に残存する固形分11を除去するようにしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、リッチ溶液1006を一部抜出し、リッチ溶液1006中の固形分11を除去するようにしてもよい。
【0105】
また、本発明では、リーン溶液1008、リッチ溶液1006の両方から溶液を一部抜き出し、リーン溶液1008及びリッチ溶液1006中に残存する固形分11を除去するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0106】
以上のように、本発明に係るCO2回収装置及びろ過膜装置の洗浄方法は、アミン等のCO2吸収液中に残存する固形分をろ過したフィルター洗浄する工程において、系内を循環している低濃度のCO2吸収液を洗浄水として用い、フィルターの洗浄後、再度系内に戻しているため、前記CO2吸収液の希釈化を防ぎ、前記CO2吸収液を系外に放出することなく、前記フィルターを洗浄することで、リーン溶液中の多量の固形分を処理することができるため、石炭焚きボイラにも適用可能となり、吸収塔で除去される煤塵量が多大となっても、CO2回収装置で用いられる前記CO2吸収液中の前記固形分の処理を行うCO2回収装置に用いるのに適している。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】本発明の実施例1に係るCO2回収装置の概略図である。
【図2】フィルターへのコーティング層の形成、洗浄の工程を示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施例2に係るCO2回収装置の概略図である。
【図4】本発明の実施例3に係るCO2回収装置の概略図である。
【図5】本発明の実施例4に係るCO2回収装置の概略図である。
【図6】本発明の実施例5に係るCO2回収装置の概略図である。
【図7】本発明の実施例6に係るCO2回収装置の概略図である。
【図8】従来のCO2回収装置の概略図である。
【符号の説明】
【0108】
10A〜10F CO2回収装置
11 固形分
12 フィルター
13 ろ過膜装置
14−1、14−2 リーン溶液分岐ライン
15A 第一の洗浄水送給ライン
15B 第二の洗浄水送給ライン
15C 第三の洗浄水送給ライン
16A〜16C 洗浄水
17 ろ過膜装置本体
18A 第一の洗浄水返送ライン
18B 第二の洗浄水返送ライン
1001A CO2含有排ガス
1001B CO2除去排ガス
1002 冷却塔
1003 冷却水
1004 吸収塔
1005 CO2吸収液
1006 リッチ溶液
1007 再生塔
1008 リーン溶液
1010 CO2回収部
1011−1〜1011−3 ノズル
1013−1 第一の水洗部
1013−2 第二の水洗部
1014−1、1014−2 CO2吸収液を含む凝縮水
1015−1、1015−2 凝縮水受部
1016 リッチ・リーン溶液熱交換器
1017 リッチ溶液供給ライン
1018 リーン溶液供給ライン
1020 再生加熱器
1021 飽和スチーム
1022 スチーム凝縮水
1024 水蒸気を伴ったCO2ガス
1025 コンデンサ
1026 分離ドラム
1027 CO2ガス
1028 水
1029 CO2吸収液回収用水循環ライン
1030 CO2吸収液回収用水
L1 第一の循環ライン
L2 第二の循環ライン
11〜V18 バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
CO2を含有する排ガスとCO2吸収液とを接触させてCO2を除去する吸収塔と、CO2を吸収したリッチ溶液を熱交換により再生する再生塔と、前記再生塔から放出された水蒸気を伴ったCO2ガス中の水蒸気を凝縮し、水を分離する分離ドラムとを有し、該再生塔でCO2を除去したリーン溶液を前記吸収塔で再利用するCO2回収装置であって、
前記吸収塔が、CO2を含有する排ガスとCO2吸収液とを接触させて前記排ガス中のCO2を吸収するCO2回収部と、
前記CO2回収部の上段側に配設され、CO2を除去したCO2除去排ガスを冷却すると共に、同伴するCO2吸収液を回収する少なくとも一つ以上の水洗部と、
前記各水洗部の下方側に配設され、前記各水洗部内の凝縮水を回収する凝縮水受部とを有すると共に、
前記リーン溶液、前記リッチ溶液の何れか一方又は両方の溶液中に残存する固形分をフィルターによりろ過するろ過膜装置を有し、
系内を循環している低濃度のCO2吸収液を用いて前記フィルターを洗浄し、洗浄に用いた低濃度のCO2吸収液を再度系内に戻すことを特徴とするCO2回収装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記吸収塔の前記凝縮水受部で回収された凝縮水、前記分離ドラムにて分離された水の何れか一方又は両方の低濃度のCO2吸収液を洗浄水として用いることを特徴とするCO2回収装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記ろ過膜装置に前記リーン溶液を送給するリーン溶液分岐ラインに前記低濃度のCO2吸収液を送給する洗浄水送給ラインを有することを特徴とするCO2回収装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一つにおいて、
前記フィルターを洗浄した低濃度のCO2吸収液を前記凝縮水受部に送給する洗浄水返送ラインを有することを特徴とするCO2回収装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか一つにおいて、
前記フィルターが、ろ過材を溶解させた低濃度のCO2吸収液を用いて前記フィルターにコーティング層を形成するものであることを特徴とするCO2回収装置。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか一つにおいて、
前記CO2吸収液がアミン系吸収液であることを特徴とするCO2回収装置。
【請求項7】
COを含有する排ガスとCO吸収液とを吸収塔のCO2回収部内で接触させてCO2を除去した後、該CO2を吸収したリッチ溶液を再生塔で再生し、その後再生したCO2を除去したリーン溶液中に残存する固形分をろ過膜装置に設けられているフィルターによりろ過するろ過膜装置の洗浄方法であって、
系内を循環している低濃度のCO2吸収液を前記ろ過膜装置に送給し、前記低濃度のCO2吸収液を用いて前記フィルターを洗浄し、前記フィルターを洗浄した前記低濃度のCO2吸収液を再度系内に戻すことを特徴とするろ過膜装置の洗浄方法。
【請求項8】
請求項7において、
前記吸収塔の前記凝縮水受部で回収された凝縮水、分離ドラムにて分離された水の何れか一方又は両方の低濃度のCO2吸収液を洗浄水として用いることを特徴とするろ過膜装置の洗浄方法。
【請求項9】
請求項7又は8において、
前記CO2吸収液がアミン系吸収液であることを特徴とするろ過膜装置の洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−179546(P2009−179546A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−22649(P2008−22649)
【出願日】平成20年2月1日(2008.2.1)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】