説明

CPUボードの時刻管理装置及びその方法

【課題】 実装が容易で、時刻変更によって運用を停止しないネットワーク管理への対処法を実現可能なCPUボードの時刻管理装置を提供する。
【解決手段】 伝送装置2に電源が入ることによってCPUボード1が動作可能となり、RTC11の時刻を起動時の時刻とする。外部端末3からOSI通信でCPUボード1に時刻設定がされた場合、AP13はRTC11の時刻と設定された時刻との差分を算出し、算出結果をメモリ16に保存しておく。正常に設定処理が完了した場合、CPUボード1は要求元の外部端末3とそれ以外の外部端末4とにそれぞれ処理結果を応答する。以降、外部端末3,4からCPUボード1に対する時刻取得要求を受信した場合、AP13は取得要求受信時の時刻をRTC11から取得し、メモリ16に格納してある算出結果を加減算した時刻を外部端末3,4にそれぞれ応答する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はCPUボードの時刻管理装置及びその方法に関し、特に伝送装置に実装されるCPUカードにおける時刻情報の管理に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、伝送装置においては、高度な監視制御機能、信頼性のある通信プロトコルの使用が要求され、CPU(中央処理装置)を実装したカードを実装する場合が多い。
【0003】このCPUカードを伝送装置に実装する場合、WS(workstation)等の外部端末から伝送装置のCPUカードに対して各種操作を行う際には、時刻情報が必須情報となる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上述した従来のCPUボードにおける時刻情報の管理では、装置の時刻を正確な時刻とするため、装置を運用中に外部端末から定期的に時刻設定を行っているため、装置の運用中の時刻設定が必須機能となる。
【0005】しかしながら、CPUボードで実装するOS(operating system)では、CPUボード内のRTC(real time clock)を使用して無活動監視タイマ等のタイマ情報を管理しているので、CPUボードのRTCの時刻を直接制御する場合、何らかの対応策を実装する必要がある。
【0006】そこで、本発明の目的は上記の問題点を解消し、実装が容易で、時刻変更によって運用を停止しないネットワーク管理への対処法を実現することができるCPUボードの時刻管理装置及びその方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明によるCPUボードの時刻管理装置は、OSI(open systems interconnection)プロトコル及びTCP/IP(transmission control protocol/internetprotocol)プロトコルの少なくとも一方を実装し、前記OSIプロトコルの無活動監視及び前記TCP/IPプロトコルのキープアライブの少なくとも一方の機能を実現するCPUボードの時刻管理を行う時刻管理装置であって、前記CPUボード内の時刻を管理するRTC(real time clock)と、前記RTCの時刻と外部から設定された時刻との差分を管理する管理手段とを備えている。
【0008】本発明によるCPUボードの時刻管理方法は、OSI(open systems interconnection)プロトコル及びTCP/IP(transmission control protocol/internetprotocol)プロトコルの少なくとも一方を実装し、前記OSIプロトコルの無活動監視及び前記TCP/IPプロトコルのキープアライブの少なくとも一方の機能を実現するCPUボードの時刻管理を行う時刻管理方法であって、前記CPUボード内の時刻を管理するRTC(real time clock)の時刻と外部から設定された時刻との差分を管理するステップを備えている。
【0009】すなわち、本発明のCPUボードの時刻管理装置は、OSI(open systems interconnection)プロトコル、またはTCP/IP(transmission control protocol/internet protocol)プロトコルを実装し、OSIの無活動監視、またはTCP/IPのキープアライブの機能を実現するCPUボードにおいて、これらの機能に影響を与えず、CPUボードの時刻を管理する方式を提供するものである。
【0010】より具体的に説明すると、本発明のCPUボードの時刻管理装置では、CPUボードがボード内の時刻を管理するRTC(real time clock)とOSIプロトコル、またはTCP/IPプロトコルを実装し、無活動監視タイマ、またはキープアライブの時刻を管理しているOS(operating system)(通信スタックを含む)と、RTCの時刻と設定された時刻との差分を管理するアプリケーション(AP)と、CPUとから構成されている。
【0011】アプリケーションがRTCの時刻とCPUボードに設定された時刻との差分を管理することによって、RTCの時刻を直接制御せず、CPUボードの時刻を管理するため、OSで管理している無活動監視タイマやキープアライブの時刻に影響を及ぼすことがない。
【0012】このような構造とすることによって、上記の課題に対する実装が容易であるとともに、時刻変更によって運用を停止しないネットワーク管理への対処法を提供することが可能となる。
【0013】
【発明の実施の形態】次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の実施の形態によるCPUボードの構成を示すブロック図である。図1R>1において、CPUボード1はボード内の時刻を管理するRTC(real time clock)11とOSI(open systems interconnection)プロトコル、またはTCP/IP(transmission control protocol/internet protocol)プロトコルを実装し、無活動監視タイマ、キープアライブの時刻を管理しているOS12(通信スタックを含む)と、RTC11の時刻と外部から設定された時刻との差分を管理するアプリケーション(AP)13と、CPU14とから構成されている。
【0014】アプリケーション13がRTC11の時刻と外部からCPUボード1に設定された時刻との差分を管理することによって、RTC11の時刻を直接制御せず、CPUボード1の時刻を管理するため、OS12で管理している無活動監視タイマやキープアライブの時刻に影響を及ぼすことがない。
【0015】図2は本発明の一実施例によるCPUボードを用いた伝送装置の構成を示すブロック図である。図2において、外部端末3は伝送装置2に実装されるCPUボード3とOSI通信を実施し、外部端末4はCPUボード1とTCP/IP通信を行う。
【0016】すなわち、外部端末3,4はそれぞれCPUボード1とイーサネット(R)ケーブルで接続され、外部端末3はCPUボード1とOSI通信が可能であり、外部端末4はCPUボード1とTCP/IP通信が可能である。また、外部端末3,4はそれぞれCPUボード1に対して時刻設定及び時刻取得を行うことが可能である。
【0017】CPUボード1は伝送装置2に実装され、ボード内の時刻を管理するRTC11と、無活動監視制御、キープアライブ制御を実施するOS12と、外部端末3,4から設定された時刻を管理するAP13と、外部端末3,4からの制御に応答するAP15とを実装し、AP13はAP14の一部である。また、CPUボード1にはAP13,14を動作させるためのCPU14とメモリ16とが実装されている。
【0018】図3は図2のAP13の動作を示すフローチャートである。これら図2及び図3を参照して本発明の一実施例による時刻管理における時刻設定及び時刻取得の処理動作について説明する。
【0019】まず、伝送装置2に電源が入ることによってCPUボード1が動作可能となる。ここで、上述したように、外部端末3はCPUボード1とOSI通信用のコネクションが確立可能な端末であり、外部端末4はCPUボード3とTCP/IPの通信が可能である。
【0020】CPUボード1はRTC11の時刻を起動時の時刻とする(図3ステップS1)。外部端末3からOSI通信でCPUボード1に時刻設定がされた場合、RTC11の時刻をそのまま制御してしまうと、OS12で管理している無活動監視タイマやキープアライブタイマに影響を与えてしまい、外部端末3とCPUボード1とのOSIコネクション、あるいは外部端末4とCPUボード1とのTCP/IPコネクションが切断されてしまう。
【0021】そのため、例えば外部端末3からの時刻変更要求を受信した場合(図3ステップS2)、CPUボード3に実装されているAP13はRTC11の時刻と設定された時刻との差分を算出し(図3ステップS3)、算出結果をメモリ16に保存しておく(図3ステップS4)。
【0022】正常に設定処理が完了した場合(図3ステップS5)、CPUボード1は要求元の外部端末3とそれ以外の外部端末4とにそれぞれ処理結果を応答する(図3ステップS6)。ここで、要求元ではない外部端末4にはCPUボード1の古い時刻と新しい時刻とを処理結果として通知する。
【0023】以降、外部端末3,4からCPUボード1に対する時刻取得要求を受信した場合(図3ステップS7)、AP13は取得要求受信時の時刻をRTC11から取得し(図3ステップS8)、メモリ16に格納してある算出結果(RTC11の時刻と設定された時刻との差分)を加減算した時刻を外部端末3,4にそれぞれ応答する(図3ステップS9,S10)。
【0024】外部端末3または外部端末4から再度、時刻設定要求を受信した場合、AP13はRTC11及びメモリ16に格納されている算出結果を基に正規時刻を算出し、設定要求との時刻との差分を算出結果としてメモリ16に格納する。
【0025】上記の制御によって、CPUボード1に対する時刻設定においてRTC11の時刻に影響を及ぼさないため、OS12で管理している無活動監視タイマやキープアライブタイマには影響を及ぼさない。
【0026】このように、装置時刻を管理するCPUボード1の時刻変更が、OS12が管理に使用するRTC11の時刻に影響を及ぼさないため、CPUボード1が管理する装置時刻が変更になっても、伝送装置2とOSI接続またはTCP/IPでキープアライブ管理をしている外部端末3,4とのコネクションが切断されない。
【0027】また、伝送装置2の運用中の時刻変更で外部端末3,4と再度、コネクションを確立する必要がないので、伝送装置2の運用中において時刻変更を行うことが可能になる。
【0028】さらに、伝送装置2の時刻を管理するRTC11は1つ実装すればよく、伝送装置2の時刻管理用のRTCとOS用のRTCとを区別して実装する必要がなくなる。よって、上記の課題に対する実装が容易であるとともに、時刻変更によって運用を停止しないネットワーク管理への対処法を提供することができる。
【0029】図4は本発明の他の実施例によるCPUボードを用いた伝送装置の構成を示すブロック図である。図4においては伝送装置7内に複数のCPUカード5,6が存在する場合の構成を示している。つまり、図4に示す構成は伝送装置7内の処理の機能分担上、CPUボードを複数に分割する必要がある場合の構成を示している。
【0030】外部端末3はCPUボード5とOSI通信を実施し、外部端末4はCPUボード6とTCP/IP通信を実施している。CPUボード5,6は図2に示すCPUボード1の構成に加え、CPUボード5とCPUボード6とをイーサネット(R)ケーブルやRS(recommended standard)232Cケーブル等で相互に接続して通信可能としている。
【0031】外部端末3からCPUボード5に対して時刻設定を実施した場合、CPUボード5は図2に示すCPUボード1の制御をするとともに、CPUボード6に対して外部端末3から設定された時刻情報を設定する。CPUボード6はCPUボード5と同様に、図2に示すCPUボード1と同様の制御を実施し、正常に設定処理が終了した場合、CPUボード5に制御結果を応答する。CPUボード5は自ボードの処理結果及びCPUボード6の処理結果にしたがって、外部端末3に処理結果を応答する。
【0032】外部端末4から時刻設定要求を受信した場合、CPUボード6は上記と同様に、CPUボード5に対して時刻情報を設定し、CPUボード5の処理結果及び自ボードの処理結果にしたがって、外部端末4に処理結果を応答する。
【0033】また、外部端末3から時刻設定をした場合、CPUボード6が処理した結果、時刻変更通知を外部端末4に通知し、外部端末4が時刻変更処理をすると、外部端末3,4の時刻を合わせることが可能となる。同様に、外部端末4から時刻変更をした場合、CPUボード5が時刻変更通知を外部端末3に通知することによって、外部端末3,4の時刻を合わせることが可能となる。
【0034】尚、上記の本発明の一実施例及び他の実施例ではCPUボード1,5,6を伝送装置2,7に実装する場合について説明したが、上記のような時刻設定及び時刻取得が必要な装置であれば、本発明を適用することができる。
【0035】
【発明の効果】以上説明したように本発明は、OSIプロトコル及びTCP/IPプロトコルの少なくとも一方を実装し、OSIプロトコルの無活動監視及びTCP/IPプロトコルのキープアライブの少なくとも一方の機能を実現するCPUボードの時刻管理を行う際に、CPUボード内の時刻を管理するRTCの時刻と外部から設定された時刻との差分を管理することによって、実装が容易で、時刻変更によって運用を停止しないネットワーク管理への対処法を実現することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態によるCPUボードの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施例によるCPUボードを用いた伝送装置の構成を示すブロック図である。
【図3】図2のアプリケーションの動作を示すフローチャートである。
【図4】本発明の他の実施例によるCPUボードを用いた伝送装置の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
1,5,6 CPUボード
2,7 伝送装置
3,4 外部端末
11 RTC
12 OS
13,15 アプリケーション
14 CPU
16 メモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 OSI(open systems interconnection)プロトコル及びTCP/IP(transmission control protocol/internet protocol)プロトコルの少なくとも一方を実装し、前記OSIプロトコルの無活動監視及び前記TCP/IPプロトコルのキープアライブの少なくとも一方の機能を実現するCPUボードの時刻管理を行う時刻管理装置であって、前記CPUボード内の時刻を管理するRTC(real time clock)と、前記RTCの時刻と外部から設定された時刻との差分を管理する管理手段とを有することを特徴とする時刻管理装置。
【請求項2】 前記管理手段は、外部からの時刻取得要求を受信した時に前記RTCの時刻と前記差分とを演算して外部に通知するよう構成したことを特徴とする請求項1記載の時刻管理装置。
【請求項3】 前記管理手段は、前記RTCの時刻を直接制御せず、前記RTCの時刻と前記CPUボードに設定された時刻との差分を管理するアプリケーションからなることを特徴とする請求項1または請求項2記載の時刻管理装置。
【請求項4】 OSI(open systems interconnection)プロトコル及びTCP/IP(transmission control protocol/internet protocol)プロトコルの少なくとも一方を実装し、前記OSIプロトコルの無活動監視及び前記TCP/IPプロトコルのキープアライブの少なくとも一方の機能を実現するCPUボードの時刻管理を行う時刻管理方法であって、前記CPUボード内の時刻を管理するRTC(real time clock)の時刻と外部から設定された時刻との差分を管理するステップを有することを特徴とする時刻管理方法。
【請求項5】 前記差分を管理するステップは、外部からの時刻取得要求を受信した時に前記RTCの時刻と前記差分とを演算して外部に通知するようにしたことを特徴とする請求項4記載の時刻管理方法。
【請求項6】 前記差分を管理するステップは、前記RTCの時刻を直接制御せず、前記RTCの時刻と前記CPUボードに設定された時刻との差分を管理するアプリケーションによって実行されるようにしたことを特徴とする請求項4または請求項5記載の時刻管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2003−66170(P2003−66170A)
【公開日】平成15年3月5日(2003.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−258901(P2001−258901)
【出願日】平成13年8月29日(2001.8.29)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】