説明

Cerberus、Cocoおよびこれらの誘導体の使用

本開示は、部分的に、GDF/BMPアンタゴニストのグループに属する2種のヒトタンパク質、CerberusおよびCocoが、ミオスタチン、GDF11およびNodalに結合してこれらを拮抗するという発見、そしてさらに、ミオスタチン/GDF11結合ドメインが、これらのタンパク質のシステイン−ノットドメインに存在するという発見に関する。本開示は、ミオスタチン、nodalおよびGDF−11に関連する種々の障害の処置において使用するためのCerberus/Cocoポリペプチドまたはこれらの改変体に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2006年12月8日に出願された、米国仮特許出願第60/873,933号の利益を主張し、この仮特許出願は、その全体が本明細書により参考として援用される。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
トランスフォーミング増殖因子−βスーパーファミリーのタンパク質は、TGF−β、アクチビン、インヒビン、骨形成タンパク質(BMP)およびミューラー阻害物質(MIS)を含むサイトカインの大きなファミリーを表す(概説については、非特許文献1を参照のこと)。これらのタンパク質は、保存されたC末端システイン−ノットモチーフを含み、そして、原形質膜レセプターの多様なファミリーに対するリガンドとして機能する。TGF−βファミリーのメンバーは、多様な細胞のタイプに対して広範な生物学的作用を及ぼす。このファミリーの多くのメンバーは、胚発生の間に、パターンの形成および組織の特殊化において重要な機能を持つ;成体では、これらの因子は、組織修復および免疫系の調節のようなプロセスに関与する。
【0003】
TGF−βスーパーファミリーのタンパク質の活性は、種々の手段により調節を受ける。タンパク質のBMPサブファミリーのタンパク質に対する負の調節の一つは、いわゆる骨形成タンパク質(BMP)アンタゴニスト/抑制因子の比較的大きなファミリーの全体にわたってである。これらのBMP抑制因子は、BMPに結合し、その膜レセプターへのBMPの結合に干渉し、それによって、発生および形態発生の間にその作用を拮抗する、タンパク質のサブグループを表す。
【0004】
BMP抑制因子はさらに、構造解析、特に、そのC末端に特徴的な「Cys−ノット」構造における構造的に保存されたCys残基の数に基づいて、以下の3つの群のタンパク質に分けられ得る:8員環Cys−ノットBMP抑制因子、9員環Cys−ノットBMP抑制因子、または10員環Cys−ノットBMP抑制因子。その8員環(CANサブファミリー)抑制因子は、さらなるシステイン残基の保存配列に基づいて、さらに以下の4つのサブグループに分けられ得る−グレムリン(gremlin)およびPRDC、CerberusおよびCoco、ならびに、USAG−Iを伴うDANおよびスクレロスチン(sclerostin)。いくつかのモデル有機体のゲノムにおけるこれらのヒトBMPアンタゴニストのオーソログ(ortholog)もまた同定されており、その系統発生的関係性が解析されている(非特許文献2、本明細書中に参考として援用される)。
【0005】
ミオスタチンすなわち増殖/分化因子8(GDF−8)もまた、トランスフォーミング増殖因子−β(TGF−β)スーパーファミリーに属している(非特許文献3)。ヒトミオスタチン遺伝子はクローニングされており(非特許文献4)、そして、ミオスタチンの免疫反応性が、ヒトの骨格筋の1型および2型の両方の線維で検出可能であることが報告されている。機能に関しては、ミオスタチンは、骨格筋の成長および発生の負の調節において役割を担う可能性がある(Nestorら、非特許文献4 上掲)。
【0006】
ミオスタチンノックアウトマウスを用いた研究は、ミオスタチンが筋発生の重要な負の調節因子であるという最初の証拠を提供した(非特許文献3)。ミオスタチンヌル(null)マウスでは、動物は、野生型マウスよりもかなり大きく、そして、大幅かつ広範囲に及ぶ骨格筋重量の増加を有していた。さらに、筋重量の増加によって特徴付けられる2品種のウシが、ミオスタチンをコードする配列に変異を有する(非特許文献5)。ヒトの小児における天然に存在するミオスタチンの機能低下は、筋肉全体の肥大、および尋常でない強度の家族歴と関連している(Schuelkeら、2004 Jun 24;350(26):2682−8)。ミオスタチンに対する抗体は、筋萎縮性側索硬化症を含む筋肉の障害の動物モデルにおいて有益な作用を有することが報告されている(非特許文献6)。
【0007】
さらに、免疫反応性ミオスタチンの血清および筋肉内の濃度は、健康な男性と比べて筋肉を消耗しているHIVに感染した男性において増加しており、そして、除脂肪体重指数(fat−free mass index)と逆相関していることに注目すべきである。これらのデータは、ミオスタチンが成人男性における骨格筋成長の負の調節因子であり、そして、HIVに感染した男性における筋肉の消耗に寄与しているという仮説を支持する(Nestorら、非特許文献4 上掲)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Massagueら、Trends Cell Biol.7:187−192,1997
【非特許文献2】Avsian−KretchmerおよびHsueh,Mol Endocrinol.18(1):1−12,2004
【非特許文献3】McPherronら、Nature 387:83−90(1997)
【非特許文献4】Nestorら、Proc.Natl.Acad.Sci.95:14938−43(1998)
【非特許文献5】McPherronら、Proc.Natl.Acad.Sci.94:12457−61(1997)
【非特許文献6】Holzbauerら、Neurobiol Dis.2006 Sep;23(3):697−707
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の知見をかんがみて、特に、状態または疾患状態(例えば、加齢に関連するもろさ、自己免疫不全症候群(Autoimmune Deficiency Syndrome)(AIDS)における悪液質、多発性硬化症、筋ジストロフィー、ALSおよび癌−悪液質など)の結果として筋肉の消耗を受けている個体において、ミオスタチンの活性を調節する様式に対する必要性が存在する。本発明は、このような筋肉消耗状態を有する個体を助けるために利用され得る方法および組成物を提供し、そして、さらに、ミオスタチン遺伝子発現の調節に見通しを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明の要旨
本開示は、部分的に、GDF/BMPアンタゴニストのグループに属する2種のヒトタンパク質、CerberusおよびCocoが、ミオスタチン、GDF11およびNodalに結合してこれらを拮抗するという発見、そしてさらに、ミオスタチン/GDF11結合ドメインが、これらのタンパク質のシステイン−ノットドメインに存在するという発見に関する。さらに、Cerberusに関して、ミオスタチン/GDF11の結合およびアンタゴニスト活性は、BMP4/2の結合およびアンタゴニスト活性とは分離され得る。したがって、本開示は、部分的に、CerberusもしくはCocoまたはこれらの改変体のミオスタチン結合部分を含むポリペプチドを投与することによって、インビボでミオスタチンおよびGDF11を拮抗するための方法を提供する。本発明の一局面は、Nodal、ミオスタチン、GDF11、そして、特定の形態で、BMP4および/またはBMP2の機能/シグナル伝達を阻害するための、Cerberus、Coco(ヒトまたは非ヒト動物に由来するもの)またはこれらの誘導体(まとめて、本明細書中で「Cerberus/Cocoタンパク質」)のポリペプチドおよびその薬学的調製物を提供する。特定の実施形態では、本発明のCerberus/Cocoポリペプチドの調製物は、Nodal、ミオスタチン、GDF11および/または別のBMP(例えば、BMP4)に対する親タンパク質の結合親和性の全てまたは実質的な部分を保持する、改変体CerberusまたはCocoタンパク質を包含し得る。特定の実施形態では、本発明のCerberus/Cocoポリペプチドは、BMP4および/またはBMP2への結合を排除または低減する一方で、ミオスタチンおよび/またはGDF11への親タンパク質の結合親和性の全てまたは実質的な部分を保持する、改変体CerberusまたはCocoタンパク質を包含する。特定の実施形態では、本開示は、全長のヒトCerberusがヒトの血清の存在下で不安定であるという観察を提供し、したがって、少なくとも24時間の期間にわたり、そして、必要に応じて、2日、3日、5日、7日、14日もしくは21日、またはそれよりも長い期間にわたり血清中で安定なCerberusの変化形態(BMP4結合形態および選択的ミオスタチン/GDF11/Nodal結合形態の両方)が調製され得る。この観察は、Cocoに外挿され得、したがって、少なくとも24時間の期間にわたり、そして、必要に応じて、2日、3日、5日、7日、14日もしくは21日、またはそれよりも長い期間にわたり血清中で安定なCocoの変化形態が調製され得る。特定の実施形態では、本開示は、Cerberus/Cocoポリペプチドまたはこれらの改変体の(少なくとも)ミオスタチン結合ドメインを含むミオスタチンアンタゴニストタンパク質を含有する、ミオスタチンを阻害するための薬学的調製物を提供する。ミオスタチンアンタゴニストタンパク質は、1以上のnodalおよび/またはミオスタチンに結合し、そして中和する。好ましくは、薬学的調製物は、ヒトまたは獣医学的な治療として投与するために適切となるように、発熱物質を実質的に含まない。
【0011】
ミオスタチンは、筋肉成長のアンタゴニストとして広く認識されている。
【0012】
さらに、ミオスタチンヌルマウスは、特定の状態において、肥満および糖尿病に対する抵抗性を示している。したがって、本明細書中に記載されるCerberus/Cocoタンパク質および薬学的調製物は、被験体における筋肉もしくは脂肪組織の異常な量、成長もしくは代謝活性によって少なくとも部分的に特徴付けられる病理学的状態の重症度を低減させるために使用され得る。例えば、本発明の薬学的調製物は、加齢に関連する消耗、加齢に関連するもろさ、悪液質、食欲不振、デュシェーヌ筋ジストロフィー(DMD)症候群、ベッカー筋ジストロフィー(BMD)症候群、顔面肩甲上腕(FSH)筋ジストロフィー、他の筋ジストロフィー、AIDS消耗症候群、神経筋疾患、運動ニューロン疾患、神経筋接合部の疾患、および炎症性筋障害のような消耗性障害を防止、その重症度を改善または低減するために有効な量で投与され得る。過剰のBMP4活性は、種々の結合組織の病理学的な骨化と関連している。したがって、抗BMP4活性を保持するCerberus/Cocoタンパク質および薬学的調製物は、少なくとも部分的に、筋、腱および靭帯のような組織における異常な骨化によって特徴付けられる病理的な状態の重症度を低減するために使用され得る。BMP4はまた、骨棘の発生および滑膜の肥厚;進行性骨化性線維形成異常症(FOP);およびアテローム性動脈硬化症(特に、病変を起こしやすい領域でのアテローム発生の早期段階における炎症性応答);ならびに、頭蓋骨癒合症を含む、変形性関節症(OA)にも関連している。Nodalのシグナル伝達は、特定の癌、特に黒色腫と関連している。したがって、抗Nodal活性を保持するCerberus/Cocoタンパク質および薬学的調製物は、腫瘍、特に、Nodalが腫瘍の増殖および成長に関与している黒色腫のような特定の腫瘍を処置するために使用され得る。
【0013】
本発明の別の局面は、BMP(例えば、BMP−4)のシグナル伝達を実質的に損ねることなく(例えば、実質的にBMP−4または他のBMPに結合しない)、Nodalおよび/またはミオスタチンの機能を特異的に阻害するためのCerberus/Cocoタンパク質誘導体の薬学的調製物を提供する。本発明のこの局面の例示的な調製物としては、CerberusもしくはCocoのN末端短縮型バージョン、または、システイン−コアを含む他のフラグメントを含むポリペプチドが挙げられる。これらのいわゆる「N末端短縮型Cerberus/Coco誘導体」は、被験体における筋肉もしくは脂肪組織の異常な量、成長もしくは代謝活性によって少なくとも部分的に特徴付けられる病理学的状態の重症度を低減させるために使用され得る。例えば、本発明の薬学的調製物は、悪液質、食欲不振、DMD症候群、BMD症候群、AIDS消耗症候群、筋ジストロフィー、神経筋疾患、運動ニューロン疾患、神経筋接合部の疾患、および炎症性筋障害のような消耗性障害を防止、その重症度を改善または低減するために有効な量で投与され得る。
【0014】
特定の実施形態では、ミオスタチンインヒビターは、Cerberus/Cocoタンパク質のミオスタチン結合ドメインを含むポリペプチドである。例えば、Cerberusタンパク質改変体は、ヒト、マウスまたは他の種のCerberusに由来し得、ヒトもしくはマウスのCerberusタンパク質と少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、もしくは少なくとも約99%またはそれより高い配列の類似性もしくは同一性を共有するヒトもしくはマウスのCerberus改変体配列を含み、そして、野生型のCerberusのミオスタチンに対する結合親和性を実質的に保持し得る。同様に、Cocoタンパク質改変体は、ヒト、マウスまたは他の種のCocoに由来し得、ヒトもしくはマウスのCocoタンパク質と少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、もしくは少なくとも約99%またはそれより高い配列の類似性もしくは同一性を共有するヒトもしくはマウスのCoco改変体配列を含み、そして、野生型のCocoのミオスタチンに対する結合親和性を実質的に保持し得る。
【0015】
特定の関連する実施形態では、ミオスタチンインヒビターは、Cerberus/Cocoタンパク質のミオスタチン結合ドメインを含むポリペプチドであり、このポリペプチドは、BMP−4またはBMP−2に実質的に結合しない。例えば、ミオスタチン結合ドメインは、ヒト、マウスもしくは他の種のN末端短縮型のCerberusに由来し得、そのアミノ酸残基は、配列番号1もしくは2の残基106〜119のいずれか1つから始まり、配列番号1もしくは2の残基241の後の任意の残基において終わり、好ましくは、配列番号1もしくは2の残基241と残基267との間の任意の残基で終わる(全ての残基の番号を含む)。
【0016】
例えば、ヒトCerberusの残基106〜119は、以下:
PPGTQSLIQPIDGM(配列番号7)
のとおりである。
ヒトCerberusの残基241〜267は、以下:
CKVKTEHEDGHILHAGSQDSFIPGVSA(配列番号8)
のとおりである。
【0017】
また、Cerberus由来の改変体配列、例えば、ミオスタチン結合活性は保持するが、他のBMP結合活性は失っている、CerberusのN末端短縮型ミオスタチン結合ドメインも包含される。改変体配列は、(例えば、GDF−8、GDF−11またはnodalの結合に関する)インヒビターの選択性を変更するか、ミオスタチンに関する他の結合特性(例えば、K、および/または、KonもしくはKoffの速度)を変更するか、または、生体内分布(biodistribution)、または、インビボもしくは保管中の(on the shelf)半減期を改善するための方法として所望され得る。
【0018】
特定の好ましい実施形態では、ミオスタチン結合ドメインを含むCerberusポリペプチド(全長もしくはN末端短縮型)は、1μM以下のK、より好ましくは、100nM、10nMもしくはさらには1nM以下のKでミオスタチンに結合する。
【0019】
特定の関連する実施形態では、ミオスタチンインヒビターは、配列番号5もしくはGenBankアクセッション番号22749329に示されるヒトCocoタンパク質のようなCocoタンパク質のミオスタチン結合ドメインを含むポリペプチドである。
【0020】
特定の好ましい実施形態では、ミオスタチン結合ドメインを含むCocoポリペプチド(全長もしくはN末端短縮型)は、1μM以下のK、より好ましくは、100nM、10nMもしくはさらには1nM以下のKでミオスタチンに結合する。
【0021】
特定の実施形態では、Cerberus/Cocoポリペプチド(例えば、そのミオスタチン結合ドメイン)は、ミオスタチン結合ドメインに加えて、インビボ安定性、インビボ半減期、取り込み/投与、組織局在化もしくは分布、タンパク質複合体の形成および/または精製のうちの1以上を増強する1以上のポリペプチド部分を含む融合タンパク質の一部である。例えば、融合タンパク質は、免疫グロブリンFcドメインを含み得る。融合タンパク質は、エピトープタグ、FLAGタグ、ポリヒスチジン配列、または、GST融合物のような精製配列を含み得る。
【0022】
特定の実施形態では、Cerberus/Cocoポリペプチド(例えば、そのミオスタチン結合ドメイン)は、グリコシル化アミノ酸、PEG化アミノ酸、ファルネシル化アミノ酸、アセチル化アミノ酸、ビオチン化アミノ酸、脂質部分に結合されたアミノ酸または有機誘導体化因子(organic derivatizing agent)に結合されたアミノ酸のような、1以上の改変アミノ酸残基を含むタンパク質の一部である。
【0023】
特定の実施形態では、本発明の改変体Cerberus/Cocoポリペプチドは、例えば、GDF−11および/またはnodalと比べて、ミオスタチンに対する結合および阻害に選択的である。例えば、改変体Cerberus/Cocoポリペプチドは、GDF−11および/もしくはnodalへの結合についてのそのKの少なくとも2分の1より小さい、なおより好ましくは、少なくとも5分の1、10分の1、100分の1、さらには1000分の1よりも小さい、ミオスタチンの結合に対する解離定数(K)を有するものであり得る。結合の速度論の理由であれ、生体内分布の理由であれ、本発明の改変体Cerberus/Cocoポリペプチドはまた、例えば、GDF−11および/もしくはnodal活性の阻害についてのそのEC50の少なくとも2分の1より小さい、なおより好ましくは、少なくとも5分の1、10分の1、100分の1、さらには1000分の1より小さい、ミオスタチン活性の阻害、または、特定の生理学的結果(例えば、筋成長の促進)についてのEC50を有するインヒビター、のように、相対的なインビボでの効力に基づいて選択され得る。
【0024】
特定の実施形態では、本発明の改変体Cerberus/Cocoポリペプチドは、例えば、他のBMPタンパク質(例えば、BMP−4)と比べて、ミオスタチンに対する結合および阻害に選択的である。例えば、改変体Cerberus/Cocoポリペプチドは、BMP−4への結合についてのそのKの少なくとも2分の1より小さい、なおより好ましくは、少なくとも5分の1、10分の1、100分の1、さらには1000分の1よりも小さい、ミオスタチンの結合に対する解離定数(K)を有するものであり得る。結合の速度論の理由であれ、生体内分布の理由であれ、本発明の改変体Cerberus/Cocoポリペプチドはまた、例えば、BMP−4活性の阻害についてのそのEC50の少なくとも2分の1より小さい、なおより好ましくは、少なくとも5分の1、10分の1、100分の1、さらには1000分の1より小さい、ミオスタチン活性の阻害、または、特定の生理学的結果(例えば、筋成長の促進)についてのEC50を有するインヒビター、のように、相対的なインビボでの効力に基づいて選択され得る。
【0025】
特定の好ましい実施形態では、その改変体Cerberus/Cocoポリペプチド結合ドメインは、1μM以下のK、より好ましくは、100nM、10nMもしくはさらには1nM以下のKでミオスタチンに結合する。
【0026】
一般に、本発明のミオスタチンインヒビター調製物は、ヒト患者における使用に適切である。好ましい実施形態では、本発明の改変体Cerberus/Cocoポリペプチドの調製物は、ヒト患者への投与に適切であるように、発熱物質を実質的に含まない。
【0027】
他の実施形態では、本発明の改変体Cerberus/Cocoポリペプチドは、非ヒト動物、特に、他の哺乳動物に投与され得る。例えば、本開示の化合物は、ニワトリ、シチメンチョウ、家畜動物(例えば、ヒツジ、ブタ、ウマ、ウシなど)、愛玩動物(例えば、ネコおよびイヌ)に与えられ得、または、成長を加速し、そして、タンパク質/脂質比を改善するために、水産養殖における有用性を有し得る。さらに例示するために、本発明の改変体Cerberusポリペプチドは、食肉生産に関して生じる動物の成長を促進するかもしくは飼料効率を高めて、鮮肉の品質を高めるため、または、乳牛における牛乳生産を増加させるために使用され得る。
【0028】
本開示の別の局面は、ヒト患者における筋組織の成長の促進における使用のための、本明細書中に記載されるような改変体Cerberus/Cocoポリペプチドの薬学的調製物と、ラベルもしくは指示書とを含む包装された医薬品に関する。
【0029】
本開示のなお別の局面は、非ヒト哺乳動物における筋組織の成長の促進における獣医学的使用のための、本明細書中に記載されるような改変体Cerberus/Cocoポリペプチドの薬学的組成物と、ラベルもしくは指示書とを含む包装された医薬品に関する。
【0030】
本開示の別の局面は、1以上の本発明の改変体Cerberus/Cocoポリペプチドの薬学的調製物を投与することにより、ミオスタチンのインビボでのシグナル伝達を阻害するための方法に関する。本発明の方法は、ヒト患者または非ヒト動物において、筋肉の成長を促進するため、脂肪細胞への分化を促進するため、そして/または、骨の成長もしくは鉱化作用を促進するために使用され得る。
【0031】
特定の実施形態では、本開示の処置方法は、少なくとも部分的に、被験体における筋肉もしくは脂肪組織の異常な量、成長もしくは代謝活性によって特徴付けられる病理学的状態の重症度を低減するために使用され得る。例えば、本開示の薬学的調製物は、悪液質、食欲不振、DMD症候群、BMD症候群、AIDS消耗症候群、筋ジストロフィー、神経筋疾患、運動ニューロン疾患、神経筋接合部の疾患、および炎症性筋障害のような消耗性障害を防止、その重症度を改善または低減するために有効な量で投与され得る。
【0032】
本発明のミオスタチンを含むレジメンで処置され得る例示的な筋ジストロフィーとしては以下が挙げられる:デュシェーヌ筋ジストロフィー(DMD)、ベッカー筋ジストロフィー(BMD)、エメリー−ドライフス筋ジストロフィー(EDMD)、肢帯筋ジストロフィー(LGMD)、顔面肩甲上腕筋ジストロフィー(FSHまたはFSHD)(また、ランドジー−デジェリーヌとしても公知)、筋緊張性ジストロフィー(MMD)(また、シュタイネルト病としても公知)、眼咽頭筋ジストロフィー(OPMD)、遠位筋ジストロフィー(Distal Muscular Dystrophy)(DD)および先天性筋ジストロフィー(CMD)。
【0033】
本発明のミオスタチンを含むレジメンで処置され得る例示的な運動ニューロン疾患としては以下が挙げられる:筋萎縮性側索硬化症(ALS)(また、ルー・ゲーリグ病としても公知)、小児進行性脊髄性筋萎縮(SMA、SMA1またはWH)(また、SMA1型、ヴェルドニッヒ−ホフマンとしても公知)、中間型脊髄性筋萎縮(Intermediate Spinal Muscular Atrophy)(SMAまたはSMA2)(また、SMA2型としても公知)、若年性脊髄性筋萎縮(SMA、SMA3またはKW)(また、SMA3型、クーゲルベルク−ヴェランデルとしても公知)、球脊髄性筋萎縮(Spinal Bulbar Muscular Atrophy)(SBMA)(また、ケネディ病およびX連鎖SBMAとしても公知)、および成人脊髄性筋萎縮(Adult Spinal Muscular Atrophy)(SMA)。
【0034】
本発明のミオスタチンを含むレジメンで処置され得る例示的な炎症性筋障害としては以下が挙げられる:皮膚筋炎(PM/DM)、多発性筋炎(PMlDM)、および封入体筋炎(IBM)。
【0035】
本発明のミオスタチンを含むレジメンで処置され得る例示的な神経筋接合部の疾患としては以下が挙げられる:重症筋無力症(MG)、ランバート−イートン症候群(LES)、および先天性筋無力症症候群(Congenital Myasthenic Syndrome)(CMS)。
【0036】
本発明のミオスタチンを含むレジメンで処置され得る例示的な内分泌異常に起因する筋障害としては以下が挙げられる:甲状腺機能亢進性筋障害(Hyperthyroid Myopathy)(HYPTM)および甲状腺機能低下性筋障害(Hypothyroid Myopathy)(HYPOTM)。
【0037】
本発明のミオスタチンを含むレジメンで処置され得る末梢神経の例示的な疾患としては以下が挙げられる:シャルコー−マリー−ツース病(CMT)、ドゥジュリーヌ−ソッタ病(DS)およびフリートライヒ運動失調(FA)。
【0038】
本発明のミオスタチンを含むレジメンで処置され得る他の例示的な筋障害としては以下が挙げられる:先天性筋緊張症(MC)、先天性パラミオトニア(PC)、中心コア病(CCD)、ネマリン筋障害(NM)、筋細管筋障害(MTMもしくはMM)、および周期性四肢麻痺(PP)。
【0039】
本発明のミオスタチンを含むレジメンで処置され得る筋肉の例示的な代謝性疾患としては、以下が挙げられる:ホスホリラーゼ欠損症(MPDもしくはPYGM)、酸性マルターゼ欠損症(AMD)、ホスホフルクトキナーゼ欠損症(PFKM)、脱分枝酵素欠損症(DBD)、ミトコンドリア性筋障害(MITO)、カルニチン欠損症(CD)、カルニチンパルミチルトランスフェラーゼ欠損症(CPT)、ホスホグリセレートキナーゼ欠損症(PGK)、ホスホグリセレートムターゼ欠損症(PGAMもしくはPGAMM)、乳酸デヒドロゲナーゼ欠損症(LDHA)、およびミオアデニル酸デアミナーゼ欠損症(MAD)。
【0040】
本発明の方法はまた、肥満またはII型糖尿病の処置のような、代謝障害を防止、その重症度を改善または低減するために使用され得る。さらに例示すると、本発明の改変体Cerberus/Cocoポリペプチド調製物は、被験体における体脂肪の割合を減少させるために使用され得る。
【0041】
なお他の実施形態では、改変体Cerberus/Cocoポリペプチド調製物は、加齢に関連するもろさを低減するような方法の一部として使用され得る。
【0042】
本発明の薬学的組成物はまた、脊髄損傷および卒中のようなCNS傷害/疾患、ならびに、PNS傷害/疾患を含む、多数の神経系疾患状態を処置するためのミオスタチンアンタゴニストとしても使用され得る。
【0043】
一局面では、本開示は、ヒトCerberus(配列番号2)のアミノ酸162〜241の配列に対して少なくとも90%同一なアミノ酸配列を含むミオスタチンアンタゴニストタンパク質を提供し、このタンパク質は、少なくとも24時間の期間にわたり実質的に血清に対して安定である。
【0044】
特定の実施形態では、ミオスタチンアンタゴニストタンパク質は、以下:ヒトCerberusのアミノ酸156〜241の配列、ヒトCerberusのアミノ酸156〜267の配列、ヒトCerberusのアミノ酸141〜241の配列、ヒトCerberusのアミノ酸141〜267の配列、ヒトCerberusのアミノ酸119〜241の配列、ヒトCerberusのアミノ酸41〜241の配列、ヒトCerberusのアミノ酸41〜267の配列、ヒトCerberusのアミノ酸18〜241の配列またはヒトCerberusのアミノ酸18〜267の配列のうちの1種以上に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%同一なアミノ酸配列を含む。
【0045】
特定の実施形態では、ミオスタチンアンタゴニストタンパク質は、37℃において24時間のヒト血清への曝露後に、少なくとも50%のミオスタチンアンタゴニスト活性を保持する。ミオスタチンアンタゴニスト活性は、例えば、A204細胞ベースのアッセイで評価され得る。
【0046】
特定の実施形態では、ミオスタチンアンタゴニストタンパク質は、ヒト血清における切断が低減もしくは排除されるような、配列番号2のアミノ酸配列に関する改変を含む。配列番号2のアミノ酸配列に関する改変は、以下の配列:ヒトCerberusの配列SHCLPAK、ヒトCerberusの配列MFRKTPまたはヒトCerberusの配列NQRELPのうち1以上における切断を低減もしくは排除し得る。
【0047】
別の局面では、本開示は、ヒトCoco(配列番号5)のアミノ酸101〜185の配列に対して少なくとも90%同一なアミノ酸配列を含むミオスタチンアンタゴニストタンパク質を提供し、このタンパク質は、少なくとも24時間の期間にわたって、実質的に血清に対して安定である。
【0048】
特定の実施形態では、ミオスタチンアンタゴニストタンパク質は、以下:ヒトCocoのアミノ酸101〜189の配列、ヒトCocoのアミノ酸95〜185の配列、ヒトCocoのアミノ酸95〜189の配列、ヒトCocoのアミノ酸22〜185の配列またはヒトCocoのアミノ酸22〜189の配列のうちの1種以上に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%同一なアミノ酸配列を含む。
【0049】
特定の実施形態では、ミオスタチンアンタゴニストタンパク質は、37℃において24時間のヒト血清への曝露後に、少なくとも50%のミオスタチンアンタゴニスト活性を保持する。ミオスタチンアンタゴニスト活性は、例えば、A204細胞ベースのアッセイで評価され得る。
【0050】
特定の実施形態では、ミオスタチンアンタゴニストタンパク質は、ヒト血清における切断が低減もしくは排除されるような、配列番号5のアミノ酸配列に関する改変を含む。配列番号5のアミノ酸配列に関する改変が、以下のヒトCocoの配列:PARKRWおよびSRRRVKの一方もしくは両方における切断を低減もしくは排除し得る。
【0051】
特定の実施形態では、ミオスタチンアンタゴニストタンパク質は、インビボ安定性、インビボ半減期、取り込み/投与、組織局在化もしくは分布、タンパク質複合体の形成および/または精製のうちの1以上を増強する1つのさらなるポリペプチド部分を含む融合タンパク質であり得る。特定の実施形態では、融合タンパク質は、免疫グロブリン重鎖定常ドメインの一部を含む。特定の実施形態では、融合タンパク質は、免疫グロブリンのFcドメインを含む。特定の実施形態では、ミオスタチンアンタゴニストタンパク質は、グリコシル化アミノ酸、PEG化アミノ酸、ファルネシル化アミノ酸、アセチル化アミノ酸、ビオチン化アミノ酸、脂質部分に結合されたアミノ酸および有機誘導体化因子に結合されたアミノ酸から選択される1以上の改変アミノ酸残基を含む。
【0052】
特定の実施形態では、ミオスタチンアンタゴニストタンパク質は、第二のミオスタチンインヒビタードメインをさらに含む融合タンパク質であり、この融合タンパク質は、ミオスタチンに選択的に結合し、そして、ALK7もしくはALK4レセプターの結合と競合するポリペプチド親和性試薬である。特定の実施形態では、親和性試薬は、以下:(i)抗体因子、(ii)ミオスタチンに選択的に結合し、そして、ALK7もしくはALK4レセプターの結合と競合するペプチドもしくは骨組ペプチド、(iii)ALK7もしくはALK4のミオスタチン結合ドメイン、または(iv)ミオスタチンに選択的に結合し、そして、ALK7もしくはALK4レセプターの結合と競合する小さな有機分子、のうちの1以上である。適切な抗体因子の例としては、例えば、組換え抗体;モノクローナル抗体;Vドメイン;Vドメイン;scFv;Fabフラグメント;Fab’フラグメント;F(ab’);Fv;またはジスルフィド結合したFvが挙げられる。特定の実施形態では、抗体因子は、完全ヒト抗体またはヒト化キメラ抗体またはこれらの抗原結合フラグメントである。
【0053】
別の局面では、本開示は、本明細書中に記載される1以上のミオスタチンアンタゴニストタンパク質を含む薬学的調製物を提供する。
【0054】
別の局面では、本開示は、患者においてミオスタチンおよび/またはGDF11および/またはNodalを阻害するための方法を提供し、この方法は、本明細書中に記載される1以上のミオスタチンアンタゴニストタンパク質の有効量を患者に投与する工程を包含する。特定の実施形態では、患者におけるミオスタチンおよび/またはGDF11および/またはNodalの阻害は、ミオスタチンおよび/またはGDF11および/またはNodalによって調節される遺伝子の発現の検出可能な変化を引き起こす。
【0055】
別の局面では、本開示は、患者において筋重量を増加させるための方法を提供し、この方法は、本明細書中に記載される1以上のミオスタチンアンタゴニストタンパク質の有効量を患者に投与する工程を包含する。
【0056】
別の局面では、本開示は、CerberusもしくはCocoポリペプチドまたはこれらの改変体のミオスタチン結合ドメインを含むミオスタチンアンタゴニストタンパク質を含む、発熱物質を実質的に含まない薬学的調製物を提供し、ここで、ミオスタチンアンタゴニストタンパク質は、(a)Nodal、GDF11および/またはミオスタチンのうちの1以上に結合し、そして、そのシグナル伝達活性を阻害し;そして、(b)BMP4には実質的に結合しない。
【0057】
特定の実施形態では、ミオスタチンアンタゴニストタンパク質は、筋組織の成長を促進する。
【0058】
特定の実施形態では、ミオスタチン結合ドメインは、以下のアミノ酸配列の1つまたは両方に対して、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一であるアミノ酸配列を有する:配列番号2のアミノ酸162〜241、配列番号5のアミノ酸101〜189。特定の実施形態では、ミオスタチン結合ドメインは、配列番号2のアミノ酸162〜241および配列番号5のアミノ酸101〜189、またはこれらの任意の天然に存在するヒト対立遺伝子改変体からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して同一な(at identical)アミノ酸配列を有する。
【0059】
特定の実施形態では、ミオスタチンアンタゴニストタンパク質は、全長の成熟なヒトCerberusタンパク質を含まない。
【0060】
特定の実施形態では、ミオスタチンアンタゴニストタンパク質は、インビボ安定性、インビボ半減期、取り込み/投与、組織局在化もしくは分布、タンパク質複合体の形成および/または精製のうちの1以上を増強する1つのさらなるポリペプチド部分を含む融合タンパク質である。特定の実施形態では、融合タンパク質は、免疫グロブリン重鎖定常ドメインの一部を含む。特定の実施形態では、融合タンパク質は、免疫グロブリンのFcドメインを含む。
【0061】
特定の実施形態では、ミオスタチンアンタゴニストタンパク質は、グリコシル化アミノ酸、PEG化アミノ酸、ファルネシル化アミノ酸、アセチル化アミノ酸、ビオチン化アミノ酸、脂質部分に結合されたアミノ酸および有機誘導体化因子に結合されたアミノ酸から選択される1以上の改変アミノ酸残基を含む。
【0062】
特定の実施形態では、ミオスタチンアンタゴニストタンパク質は、第二のミオスタチンインヒビタードメインをさらに含む融合タンパク質であり、この融合タンパク質は、ミオスタチンに選択的に結合し、そして、ALK7もしくはALK4レセプターの結合と競合するポリペプチド親和性試薬である。特定の実施形態では、親和性試薬は、以下:(i)抗体因子、(ii)ミオスタチンに選択的に結合し、そして、ALK7もしくはALK4レセプターの結合と競合するペプチドもしくは骨組ペプチド、(iii)ALK7もしくはALK4のミオスタチン結合ドメイン、または(iv)ミオスタチンに選択的に結合し、そして、ALK7もしくはALK4レセプターの結合と競合する小さな有機分子、のうちの1以上である。適切な抗体因子の例としては、例えば、組換え抗体;モノクローナル抗体;Vドメイン;Vドメイン;scFv;Fabフラグメント;Fab’フラグメント;F(ab’);Fv;またはジスルフィド結合したFvが挙げられる。特定の実施形態では、抗体因子は、完全ヒト抗体またはヒト化キメラ抗体またはこれらの抗原結合フラグメントである。
【0063】
別の局面では、本開示は、患者においてミオスタチンおよび/またはGDF11を阻害するための方法を提供し、この方法は、CerberusもしくはCocoのポリペプチドまたはこれらの改変体のミオスタチン結合ドメインを含むミオスタチンアンタゴニストタンパク質の有効量を患者に投与する工程を包含し、ここで、ミオスタチンアンタゴニストタンパク質は、nodal、GDF11および/またはミオスタチンの1以上に結合し、そのシグナル伝達活性を阻害する。特定の実施形態では、ミオスタチン結合ドメインは、配列番号2のアミノ酸162〜241および配列番号5のアミノ酸101〜189からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一なアミノ酸配列を有する。特定の実施形態では、ミオスタチン結合ドメインは、配列番号2のアミノ酸162〜241および配列番号5のアミノ酸101〜189、またはこれらの任意の天然に存在するヒト対立遺伝子改変体からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して同一なアミノ酸配列を有する。特定の実施形態では、患者におけるミオスタチンおよび/またはGDF11の阻害が、ミオスタチンおよび/またはGDF11によって調節される遺伝子の発現の検出可能な変化を引き起こす。特定の実施形態では、ミオスタチンアンタゴニストが実質的にBMP4に結合しない。
【0064】
別の局面では、本開示は、骨格筋重量の増加を必要とする患者において骨格筋重量を増加させるための方法を提供し、この方法は、CerberusもしくはCocoのポリペプチドまたはこれらの改変体のミオスタチン結合ドメインを含むミオスタチンアンタゴニストタンパク質の有効量を患者に投与する工程を包含し、ここで、ミオスタチンアンタゴニストタンパク質は、nodal、GDF11および/またはミオスタチンの1以上に結合し、そのシグナル伝達活性を阻害する。特定の実施形態では、ミオスタチン結合ドメインは、配列番号2のアミノ酸162〜241および配列番号5のアミノ酸101〜189からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%同一なアミノ酸配列を有する。特定の実施形態では、ミオスタチン結合ドメインは、配列番号2のアミノ酸162〜241および配列番号5のアミノ酸101〜189、またはこれらの任意の天然に存在するヒト対立遺伝子改変体からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して同一なアミノ酸配列を有する。特定の実施形態では、ミオスタチンアンタゴニストが実質的にBMP4に結合しない。
【0065】
別の局面では、本開示は、哺乳動物における筋組織の成長を促進するための薬物の調製のための、CerberusもしくはCocoのポリペプチドまたはこれらの改変体のミオスタチン結合ドメインを含むミオスタチンアンタゴニストタンパク質を含むミオスタチンアンタゴニストタンパク質の使用を提供し、ここで、ミオスタチンアンタゴニストタンパク質は、nodal、GDF11および/またはミオスタチンの1以上に結合し、そのシグナル伝達活性を阻害する。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】図1は、Wnt、NodalおよびBMPがCerberusに結合している、概略図を示す。BMP−2および高度に関連するBMP−4は、おそらくは同じ領域において、Cerberusに対して競合的に結合する。他のより関連性が低いかもしくは関連のないタンパク質(例えば、TGF−β1、EGFおよびPDGF)は、BMP−4と競合しない。CerberusのN末端短縮型バージョンは、依然としてXnr−1(マウスNodalのXenopusホモログ)に結合する(Piccoloら、Nature 397:707−710,1999から改作)。
【図2】Caronte−FcのGDF−11への結合。トレーシングは、Caronte−FcがBiaCoreチップ上のGDF−11に結合することを示す。GDF−11は、標準的なアミンカップリング処理を用いてBiaCore CM5チップ上に固定化された。トレース:Caronte−Fc(200μg/ml;R&D Systems)を、GDF−11をカップリングさせたチップ上に注入した。
【図3】A−204レポーター遺伝子アッセイ。この図は、レポーターベクターであるpGL3(CAGA)12を示す(Dennlerら、1998,EMBO 17:3091−3100に記載されたもの)。CAGA12モチーフが、TGF−β応答性遺伝子(PAI−1遺伝子)中に存在しており、したがって、このベクターは、Smad2およびSmad3を介してシグナル伝達する因子に一般に使用される。
【図4】Caronte−Fcは、A−204レポーター遺伝子アッセイにおいてGDF−11のシグナル伝達を阻害する。ActRIIA−Fc(「IIA muG2a」)融合物もまた、GDF−11のシグナル伝達を阻害する。
【図5】Caronte−Fcは、A−204レポーター遺伝子アッセイにおいてアクチビンAを阻害しない。ActRIIA−Fc融合物(「IIA muG2a」)は、予想どおりに、アクチビンAのシグナル伝達を阻害する。
【図6】Cerberus−FcおよびCaronte−Fcはともに、A−204レポーター遺伝子アッセイにおいてGDF−8のシグナル伝達を阻害する。
【図7】ヒトCoco−Fc(マウスFc)は、細胞ベースのアッセイにおいてGDF−11のシグナル伝達を阻害する。ヒトCoco−mFcを発現する細胞からの馴化培地を、GDF−11の存在下でのA−204レポーター遺伝子の発現に対する作用について調べた。
【図8】ヒトCerberus−Fcは、ヒト血清中で分解する。ヒトCerberus−Fcを発現する細胞からの馴化培地を、種々の量のヒト血清(加えた血清の割合を上部に示す)と共に37℃にて一晩インキュベートし、SDS−PAGEにより分けた。Cerberusを、一次抗体:ビオチン化ポリクローナル抗Cerberus抗体および二次抗体:アビジン−HRPを用いてウェスタンブロットにより検出した。左レーンは、分子量標準物質である。およそ70kDの主要なバンドは、Cerberus−Fcであり、これは、5%ヒト血清と共にインキュベートした場合、完全に分解されている。
【発明を実施するための形態】
【0067】

詳細な説明
I.概要
Cerberusは、発生中に前内中胚葉(anterior endomesoderm)において発現される(Bouwmeesterら、Nature 382:595−601,1996;Piccoloら、Nature 397:707−10,1999;Rodriguezら、Nature 401:243−51,1999)。Caronte(ニワトリオーソログ)は、ニワトリ胚における左右非対称性に関与している(Rodriguez、上掲)。Cerberusは、細胞外空間において多効果の増殖因子アンタゴニストとして機能し、そして、BMP−4、nodalおよびWntによるシグナル伝達を阻害する(Beloら、Genesis 26:265−70,2000)。マウスのCerberusは、独立の部位を介してBMPタンパク質およびnodalに結合するが(Piccolo、上掲)、XenopusのCerberusもまた、Wntタンパク質に結合してその作用を阻害する(Belo、上掲)。Cerberusは、体幹構造(trunk structure)を持たない異所性の頭部を誘導するという独特の特性を持つ(Piccolo、上掲)。Cerberusの発現は、原腸形成の間に、内胚葉におけるnodalに関するシグナルによって、そして、Spemannオーガナイザー因子によって活性化される(Yamamotoら、Dev Biol 257:190−204,2003)。
【0068】
Cerberusのオーソログは、Xenopus tropicalisおよびFugu rubripesに見られ得るが、無脊椎動物においては欠失している。Fugu rubripesでは、Cerberusに対する唯一のオーソログが存在する。Cerberusに対する全てのオーソログ遺伝子は、2つのエキソンを有する;第1の8アミノ酸のシスチン−ノットドメインは、第1エキソンの3’末端によってコードされ、モチーフの残りは第2エキソンによってコードされる。いくつかのオーソログでは、推定のタンパク質分解による切断部位は、シスチン−ノットドメインの開始点の上流に見られ得る。
【0069】
Cocoは、Nodalのシグナル伝達を阻害するタンパク質のCerberus/Danファミリーの別のメンバーである。
【0070】
本開示は、一部において、Nodal、GDF−11および/またはミオスタチンの機能を阻害するためのCocoまたはCerberus誘導体を提供する。特定の実施形態では、CocoおよびCerberus誘導体は、BMP(例えば、BMP−4)のシグナル伝達を実質的に損ねることなく(例えば、BMP−4または他のBMPに実質的に結合しない)、Nodal、GDF−11および/またはミオスタチンの機能を阻害する。本発明のCerberus誘導体はまた、BMP(例えば、BMP−4)のシグナル伝達を阻害するためにも使用され得る。
【0071】
本開示の例示的な調製物としては、CerberusもしくはCocoのN末端短縮型バージョンを含むCerberusポリペプチド誘導体が挙げられる。これらのいわゆる「Cerberus誘導体」または「Coco誘導体」は、少なくとも部分的に、被験体における筋肉もしくは脂肪組織の異常な量、発生もしくは代謝活性によって特徴付けられる病理学的状態の重症度を低減させるために使用され得る。例えば、本開示の薬学的調製物は、悪液質、食欲不振、DMD症候群、BMD症候群、AIDS消耗症候群、筋ジストロフィー、神経筋疾患、運動ニューロン疾患、神経筋接合部の疾患、および炎症性筋障害のような消耗性障害を防止、その重症度を改善または低減するために有効な量で投与され得る。
【0072】

II.定義
本明細書中で使用される用語は、一般に、本開示の文脈の範囲内で、かつ、各々の用語が使用される特定の文脈において、当該分野におけるその通常の意味を有する。本開示の組成物および方法、ならびに、これらの作成方法および使用方法の記載において、専門家にさらなる案内を提供するために、特定の用語が以下または本明細書中の他の場所で論じられている。用語の任意の使用の範囲および意味は、その用語が使用される特定の文脈から明らかである。
【0073】
「約」および「およそ」は、一般に、測定の性質または正確さを仮定して、測定された量についての誤差の容認可能な程度を意味する。代表的には、例示的な誤差の程度は、所与の値または値の範囲の、20パーセント(%)内、好ましくは10パーセント(%)内、そしてより好ましくは5%内である。
【0074】
あるいは、そして、特に生物学的な系において、用語「約」および「およそ」は、所与の値のあるオーダーの大きさの範囲内、好ましくは、5倍以内、そしてより好ましくは2倍以内の値を意味し得る。本明細書中に与えられる数量は、特に明記しない限り近似値であり、明白に記述されない場合には、用語「約」または「およそ」は、推量され得ることを意味する。
【0075】
本開示の方法は、配列を互いに比較する工程を包含し得、この比較には、野生型配列の1以上の変異体/配列改変体に対する比較を含む。このような比較は代表的には、例えば、当該分野で周知の配列アラインメントのプログラムおよび/またはアルゴリズム(例えば、少数の名を挙げれば、BLAST、FASTAおよびMEGALIGN)を用いた、ポリマー配列のアラインメントを含む。当業者は、変異が残基の挿入または欠失を含むようなこのようなアラインメントにおいて、配列のアラインメントは、挿入もしくは欠失された残基を含まないポリマー配列中に「ギャップ」(代表的には、―または「A」で表される)を導入することを容易に理解し得る。
【0076】
「相同」は、そのあらゆる文法的な形態および語の綴りのバリエーションにおいて、同種の生物におけるスーパーファミリーに由来するタンパク質、ならびに、異なる種の生物に由来する相同なタンパク質を含む、「共通する進化の起源」を有する2タンパク質間の関係をいう。このようなタンパク質(およびこれをコードする核酸)は、%同一性の観点であれ、特定の残基もしくはモチーフおよび保存された位置の存在によるものであれ、その配列類似性によって反映されるように、配列の相同性を有する。
【0077】
用語「配列類似性」は、そのあらゆる文法的な形態において、共通する進化の起源を共有していても共有していなくても、核酸もしくはアミノ酸間の同一性もしくは対応性の程度をいう。
【0078】
しかし、一般的な用法および本願において、用語「相同」は、「高度に」のような副詞で修飾されるとき、配列の類似性を指す場合があり、そして、共通する進化の起源に関連していてもしていなくてもよい。
【0079】
核酸分子は、核酸分子の一本鎖形態が、温度および溶液のイオン強度の適切な条件下で他の核酸分子にアニーリングし得る場合、cDNA、ゲノムDNAまたはRNAのような別の核酸分子と「ハイブリダイズ可能」である(Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第2版(1989)Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.を参照のこと)。温度およびイオン強度の条件は、ハイブリダイゼーションの「ストリンジェンシー」を決定する。相同な核酸についての予備的なスクリーニングには、55℃のT(融解温度)に対応する低いストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件が使用され得る(例えば、5×SSC、0.1% SDS、0.25% ミルク、およびホルムアミドなし;または、30% ホルムアミド、5×SSC、0.5% SDS)。
【0080】
中程度のストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件は、より高いTに対応する(例えば、40% ホルムアミド、および5×SSCまたは6×SSC)。高ストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件は、最も高いTに対応する(例えば、50% ホルムアミド、5×SSCまたは6×SSC)。SSCは、0.15M NaCl、0.015M クエン酸Naである。
【0081】
「高ストリンジェンシーの条件」は、構造的に関連するが、構造的に似ていない核酸のハイブリダイゼーションを可能にする、ハイブリダイゼーション条件を包含するということは、当該分野で充分に理解される。用語「ストリンジェント」は、高度に相補的な核酸のみのアニーリングを可能にする任意の数多くの代替的なハイブリダイゼーションおよび洗浄の条件を記載するものとして当業者に理解される当該分野の用語である。
【0082】
例示的な高ストリンジェントのハイブリダイゼーション条件は、約1Mの塩濃度において形成されるDNA二重鎖の融解温度(T)を下回る、約20〜27℃に等価である。多くの等価な手順が存在し、そして、いくつかの一般的な分子クローニングのマニュアルが、ストリンジェントなハイブリダイゼーションのための適切な条件を記載しており、さらに、これらの条件下で安定であると予測されるハイブリッドの長さを計算するための等式を提供している(例えば、Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,N.Y.(1989)、6.3.1−6もしくは13.3.6;または、Sambrookら、(1989)Molecular Cloning,第2版,Cold Spring Harbor Pressの9.47−9.57頁を参照のこと)。
【0083】
ハイブリダイゼーションは、2つの核酸が相補的な配列を含むことを必要とし、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーにもよるが、塩基間のミスマッチが可能である。核酸をハイブリダイズさせるための適切なストリンジェンシーは、核酸の長さ、相補性の度合い、当該分野で周知の変数に依存する。2つのヌクレオチド配列間の類似性または相同性の程度が大きければ大きいほど、これらの配列を持つ核酸のハイブリッドに対するTの値が高くなる。核酸ハイブリダイゼーションの相対的な安定性(より高いTに対応する)は、以下の順で低下する:RNA:RNA、DNA:RNA、DNA:DNA。長さ100ヌクレオチドを超えるハイブリッドについて、Tの計算式が導かれている(Sambrookら、上掲、9.51を参照のこと)。より短い核酸、すなわち、オリゴヌクレオチドを用いたハイブリダイゼーションについては、ミスマッチの位置がより重要となり、オリゴヌクレオチドの長さがその特異性を決定する(Sambrookら、上掲、11.8を参照のこと)。ハイブリダイゼーション可能な核酸についての最小の長さは、少なくとも約10ヌクレオチド;好ましくは、少なくとも約15ヌクレオチドであり;そして、より好ましくは、長さは少なくとも約20ヌクレオチドである。
【0084】
特定されない限り、用語「標準的なハイブリダイゼーション条件」は、約55℃のTを指し、上に示されるような条件を利用する。好ましい実施形態では、Tは60℃である;より好ましい実施形態では、Tは65℃である。特定の実施形態では、「高ストリンジェンシー」は、0.2×SSCにおいて68℃、50%ホルムアミド、4×SSCにおいて42℃、または、これらの2つの条件下で観察されるものと等価なハイブリダイゼーションのレベルを与える条件下での、ハイブリダイゼーションおよび/または洗浄の条件を指す。
【0085】
オリゴヌクレオチド(例えば、オリゴヌクレオチドプローブまたはプライマー)についての適切なハイブリダイゼーション条件は、代表的には、オリゴヌクレオチドのより低い融解温度に起因して、全長核酸(例えば、全長cDNA)についてのものとは幾分異なる。オリゴヌクレオチドの融解温度は、関与するオリゴヌクレオチド配列の長さに依存するので、適切なハイブリダイゼーション温度は、使用されるオリゴヌクレオチド分子に依存して変化する。例示的な温度は、37℃(14塩基のオリゴヌクレオチドについて)、48℃(17塩基のオリゴヌクレオチドについて)、55℃(20塩基のオリゴヌクレオチドについて)、および60℃(23塩基のオリゴヌクレオチドについて)であり得る。オリゴヌクレオチドのための例示的な適切なハイブリダイゼーション条件としては、6×SSC、0.05%ピロリン酸ナトリウム中での洗浄、または、等価なレベルのハイブリダイゼーションを与える他の条件が挙げられる。
【0086】
「ポリペプチド」、「ペプチド」または「タンパク質」は、「ペプチド結合」と呼ばれる化学結合によって互いに連結されたアミノ酸の鎖を説明するために交換可能に用いられる。タンパク質またはポリペプチドは、酵素を含めて、「ネイティブ」または「野生型」であっても(これらが天然に存在することを意味する);「変異体」、「改変体」または「改変」であっても(これらが、作製されたか、変更されたか、誘導されたか、あるいは、ネイティブなタンパク質もしくは別の変異体とは幾分異なるか、または、変更されていることを意味する)よい。
【0087】
本明細書中で使用される場合、用語「Cerberus/Cocoタンパク質」は、ヒトCerberusおよびCocoタンパク質、ならびに、他の種に由来するホモログ(例えば、CaronteはニワトリのCerberusホモログである)、および天然に存在する形態の生物学的活性を保持する誘導体(変更された配列を持つ形態および短縮型形態を含む)を示すために用いられる。
【0088】
「CerberusもしくはCerberus様タンパク質」は、マウス(NCBI参照配列番号NP_034017)またはヒト(NCBI参照配列番号NP_005445)のCerberusタンパク質(また、それぞれ、US2002/0164682 A1(この全内容は本明細書中に参考として援用される)の配列番号2および8を参照のこと)のような哺乳動物CerberusおよびCerberus様タンパク質、ならびに、哺乳動物Cerberusタンパク質のC末端部分の高度に保存されたシステインのパターンに対して配列相同性を共有する他のタンパク質を指す。Cerberusタンパク質についての例示的なアミノ酸配列としては、以下が挙げられる:
マウスCerberusタンパク質(NCBI参照配列番号NP_034017)(配列番号1):
【0089】
【数1】

ヒトCerberusタンパク質(NCBI参照配列番号NP_005445)(配列番号2):
【0090】
【数2】

マウスおよびヒトのCerberusは、配列番号1および7としてUS2002/0164682 A1(本明細書中に参考として援用される)において開示されるようなものである。
NM_009887.1(マウスCerberus mRNA)(配列番号3)。
【0091】
【数3】

NCBI参照配列番号NM_005454.1(ヒトCerberus mRNA)(配列番号4)。
【0092】
【数4】

また、Cerberus関連タンパク質は、XenopusおよびDrosophila、C.elegans、ゼブラフィッシュにおけるファミリーメンバーを含む他の種、ならびに、全ての哺乳動物(例えば、ラット、マウスおよびヒト)にも存在するものと予測される。「CerberusまたはCerberus様タンパク質」はまた、対立遺伝子改変体または変異誘発もしくは欠失により誘導された改変体のようなCerberusタンパク質の改変体、および、Cerberusタンパク質のフラグメントも包含し、これらの改変体およびフラグメントは、ミオスタチン結合活性を保持する。「Cerberus様」タンパク質はまた、本明細書中にさらに記載されるタンパク質を含め、構造的および/または機能的類似性を共有するタンパク質のファミリーを示すためにも使用される。このようなタンパク質は、全長にわたって、または少なくとも、ヒトもしくはマウスのCerberusのミオスタチン結合ドメイン内で、ヒトもしくはマウスのCerberusタンパク質と有意な配列同一性(例えば、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、もしくは少なくとも約99%またはそれより高い)を共有するアミノ酸配列を有し得る。Cerberus様タンパク質はまた、ストリンジェントな条件下で、ヒトもしくはマウスのCerberusについてのコード配列と、特に、ミオスタチン結合ドメインについてのコード配列の部分とハイブリダイズする核酸配列によってコードされるアミノ酸配列を有するタンパク質を包含する。Cerberus誘導体または改変体の配列は、N末端のBMP結合ドメインを欠失していても欠失していなくともよい。ヒトCerberusの多様な対立遺伝子改変体が公知であり、これとしては、A65G(65位のアラニンのグリシンへの改変)、Vl79IおよびL221Vが挙げられる。
【0093】
「CocoまたはCoco様タンパク質」は、GenBankアクセション番号22749329のヒトCocoタンパク質のような哺乳動物Cocoタンパク質および関連のホモログ、ならびに、哺乳動物Cocoタンパク質のC末端部分の高度に保存されたシステインのパターンに対して配列相同性を共有する他のタンパク質を指す。ヒトCocoタンパク質についての例示的なアミノ酸配列は、以下:
【0094】
【数5】

である。
【0095】
配列番号5のアミノ酸1〜21は、代替のリーダー配列と置き換えられ得るシグナルペプチドに対応する。成熟な分泌型Cocoポリペプチドは、配列番号5のアミノ酸22〜189に対応するものと予測されるが、シグナルペプチドプロセシング酵素の不正確さは、22位のグリシンからアミノ末端もしくはカルボキシ末端へと向かう1〜5アミノ酸の範囲の位置における、代替的もしくはさらなる切断をもたらし得る。本明細書中に開示されるように、tPAリーダー配列または異種性のリーダー配列が、ネイティブなリーダー配列の代わりに使用され得る。推奨されるリーダー配列は以下のとおりである:
(i)ミツバチメリチン(mellitin)(HBML):MKFLVNVALVFMVVYISYIYA(配列番号8)
(ii)組織プラスミノーゲンアクチベーター(TPA):MDAMKRGLCCVLLLCGAVFVSP(配列番号9)。
【0096】
ヒトCocoをコードする配列は、GenBankアクセション番号22749328(本明細書中に参考として援用される)に開示される(配列番号6)。
【0097】
【数6】

また、Coco関連タンパク質は、XenopusおよびDrosophila、C.elegans、ゼブラフィッシュにおけるファミリーメンバーを含む他の種、ならびに、全ての哺乳動物(例えば、ラット、マウスおよび非ヒト霊長類)にも存在するものと予測される。「CocoまたはCoco様タンパク質」はまた、対立遺伝子改変体または変異誘発もしくは欠失により誘導された改変体のような天然に存在するCocoタンパク質の改変体、および、Cocoタンパク質のフラグメントも包含し、これらの改変体およびフラグメントは、ミオスタチン結合活性を保持する。「Coco様」タンパク質はまた、本明細書中にさらに記載されるタンパク質を含め、構造的および/または機能的類似性を共有するタンパク質のファミリーを示すためにも使用される。このようなタンパク質は、全長にわたって、または少なくとも、ヒトCocoのミオスタチン結合ドメイン内で、ヒトCocoタンパク質と有意な配列同一性(例えば、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、もしくは少なくとも約99%またはそれより高い)を共有するアミノ酸配列を有し得る。Coco様タンパク質はまた、ストリンジェントな条件下で、ヒトCocoについてのコード配列と、特に、ミオスタチン結合ドメインについてのコード配列の部分とハイブリダイズする核酸配列によってコードされるアミノ酸配列を有するタンパク質を包含する。Coco誘導体または改変体の配列は、N末端のBMP結合ドメインを欠失していても欠失していなくともよい。
【0098】
特にそうでないと記述されない限り、「Cerberus(誘導体)治療薬」またはその文法的なバリエーションは、Cerberus治療薬の全長またはN末端短縮型バージョンを包含する。
【0099】
本明細書中で使用される場合、用語「CerberusまたはCerberus様活性」とは、本開示の哺乳動物Cerberus様タンパク質によって示される活性の1以上を指す。特に、「CerberusまたはCerberus様活性」は、ニューロンならびに/または関連の神経細胞および組織(例えば、脳細胞、シュワン細胞、グリア細胞および星状細胞)の形成、成長、増殖、分化、維持を誘導、増強および/または阻害する能力を含む。「CerberusまたはCerberus様」活性はまた、神経内分泌系組織または外胚葉組織の分子マーカー(例えば、OTX2、N−CAM、MASH、クロマグラニン(chromagranin)およびAP2)を誘導する能力、ならびに、ニューロンならびに/または関連の神経細胞および組織(例えば、脳細胞、シュワン細胞、グリア細胞および星状細胞)の形成を誘導する能力も含む。「CerberusまたはCerberus様活性」はまた、リガンドおよびそのタンパク質レセプターの相互作用を調節する能力を含み得る。「CerberusまたはCerberus様活性」はさらに、他の細胞および/または組織(例えば、結合組織、器官および創傷治癒)の形成、分化、増殖および/または維持を調節する能力を含み得る。特に、「CerberusまたはCerberus様活性」は、心臓、脾臓、肝臓、膵臓、胃、腎臓、肺および脳の細胞および組織、ならびに、骨芽細胞および骨、軟骨細胞および軟骨、腱、表皮および筋肉の形成、成長、増殖、分化および/または維持を増強および/または阻害する能力を含み得る。「CerberusまたはCerberus様活性」はまた、本明細書中の実施例および説明に記載されるアッセイにおける、CerberusおよびCerberus様タンパク質の活性を含む。
【0100】
マウスおよびヒトにおけるCerberusおよびCerberus様ヌクレオチド配列は、配列番号1および7としてUS 2002/0164682 A1(本明細書中に参考として援用される)に開示される。また、NCBI参照配列番号NM_005454.1(ヒト)およびNM_009887.1(マウス)も参照のこと。
【0101】
特定の関連する実施形態では、ミオスタチンインヒビターは、ヒトCocoタンパク質のようなCocoタンパク質のミオスタチン結合ドメインを含むポリペプチドである。
【0102】
用語「抗体」および「抗体因子」は、本明細書中で交換可能に使用され、そして、体液性応答のインビトロもしくはインビボでの産生によって得られる免疫グロブリン分子を指し、そして、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体の両方を包含する。この用語はまた、キメラ抗体(例えば、ヒト化マウス抗体)、異種結合(heteroconjugate)抗体(例えば、二重特異性(bispecific)抗体)、および組換え単鎖Fvフラグメント(scFv)のような、遺伝子操作された形態を含む。用語「抗体」はまた、抗体の抗原結合形態(例えば、Fab’、F(ab’)、Fab、Fv、rIgGおよび逆転(inverted)IgG)を含む。
【0103】
用語「抗原結合フラグメント」は、標的エピトープに結合する抗体のあらゆる部分を含む。抗原結合フラグメントは、例えば、CDR3領域を含むポリペプチド、または、ミオスタチンエピトープの親和性および特異性を保持する免疫グロブリン分子の他のフラグメントであり得る。
【0104】
「特異的に結合する」は、リガンドの全体または一部の、その標的分子を欠く組成物に関係する特定の標的分子(すなわち、「結合パートナー」または「結合部分」)との優先的な会合の関係を含む。当然のことながら、特定の程度の非特異的な相互作用が、本発明のミオスタチン中和抗体と他のタンパク質との間で生じ得ることが認識される。それにもかかわらず、特異的な結合は、ミオスタチンタンパク質の特異的な認識により媒介されるものと識別され得る。代表的には、特異的な結合は、抗体と他のタンパク質(例えば、GDF11)との間よりも、抗体とミオスタチンタンパク質との間にかなり強力な会合をもたらす。このような条件下での抗体によるミオスタチンに対する特異的な結合は、特定のタンパク質に対するその特異性について選択された抗体を必要とする。その同系の一価抗原に対する抗体結合部位の親和性定数(affinity constant)(Kdに対し、Ka)は、少なくとも10Mであり、通常は少なくとも10Mであり、好ましくは少なくとも10Mであり、より好ましくは、少なくとも1010Mであり、そして最も好ましくは少なくとも1011Mである。種々の免疫アッセイ形式が、ミオスタチンに対して選択的に反応性の抗体を選択するために適切である。例えば、タンパク質に対して選択的に反応性のモノクローナル抗体を選択するために、固相ELISA免疫アッセイが慣用的に使用されている。特異的な反応性を決定するために使用され得る免疫アッセイの形式および条件の説明については、HarlowおよびLane(1988)Antibodies,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Publications,New Yorkを参照のこと。
【0105】
競合的結合形式の免疫アッセイは、抗体のミオスタチンとの交差反応性を決定するため、例えば、試験抗体がミオスタチン中和抗体であるかどうかを同定するために使用され得る。例えば、ミオスタチンタンパク質またはそのフラグメントが固体支持体に固定される。固定された抗原に対するTGFレセプター(例えば、ActRIIまたはALK7)の結合と競合させるために、試験抗体がこのアッセイに加えられる。固定されたミオスタチン抗原に対するTGFレセプターの結合と競合する試験抗体の能力が比較される。
【0106】
同様に、競合的結合形式の免疫アッセイは、交差反応性の傾向を決定するため、例えば、ミオスタチン中和抗体の特異性を決定するために使用され得る。例えば、ミオスタチンタンパク質またはそのミオスタチンエピトープが、固体支持体に固定される。固定された抗原に対する潜在的なミオスタチン中和抗体の結合と競合させるために、他のタンパク質(例えば、GDF−11、NodalもしくはBMP−4、またはミオスタチンと配列相同性を持つ他のタンパク質)に由来するエピトープが、このアッセイに加えられる。固定されたミオスタチン抗原に対する潜在的なミオスタチン中和抗体の結合と競合する試験ペプチドの能力が比較される。標準的な計算を用いて、他の抗原に対する潜在的なミオスタチン中和抗体の交差反応性の割合が計算される。特定の好ましい実施形態では、本発明のミオスタチン中和抗体は、GDF−11に対して10%未満の交差反応性を有する。他の好ましい実施形態では、本発明のミオスタチン中和抗体は、BMP−4に対して、1%未満、5%未満もしくは10%未満の交差反応性を有する。
【0107】

III.例示的なCerberusおよびCoco誘導体
特定の実施形態では、ミオスタチンインヒビターは、ヒトまたはマウスのCerberusタンパク質の全長にわたって、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、もしくは少なくとも約99%またはそれより高い配列同一性を共有するCerberusポリペプチドである。
【0108】
特定の他の実施形態では、ミオスタチンインヒビターは、ヒト、マウスもしくは他の種から得たCerberus配列を含むポリペプチド、その改変体もしくは誘導体(CerberusのN末端短縮型バージョンを含む)である。それぞれ、配列番号2および8としてUS2002/0164682 A1に開示される全長のマウスおよびヒトのCerberusタンパク質はまた、NCBI参照配列の形式で以下に開示される:
ヒトCerberus全長タンパク質(配列番号2):
【0109】
【数7】

残基106〜119(このいずれかの残基から、本発明のCerberus誘導体が開始し得る)および残基241〜267(このいずれかの残基までで、本発明のCerberus誘導体が終結し得る)に下線が付される。
【0110】
マウスCerberus全長タンパク質(配列番号1):
【0111】
【数8】

残基106〜119(このいずれかの残基から、本発明のCerberus誘導体が開始し得る)および残基241〜272(このいずれかの残基までで、本発明のCerberus誘導体が終結し得る)に下線が付される。マウスのタンパク質は、C末端の5つの追加の残基があることを除いて、配列の全体にわたりヒトのタンパク質に対して大部分相同であることに注意されたい。したがって、非ヒトCerberus誘導体が使用される場合は常に、残基数は、ヒト配列に対応するものを参照する。
【0112】
上述のように、特定の実施形態では、ヒトCerberus誘導体タンパク質の好ましいフラグメントは、N末端の残基106〜119(含めてある)のいずれかの位置から開始し、そして、残基241の後のいずれかの位置で終結するものである。種々のさらなるCerberusおよびCocoの誘導体および改変体が、実施例に記載される。
【0113】
また、ミオスタチン結合活性を保持し、必要に応じて、BMP−4結合を実質的に欠く、野生型ミオスタチン結合ドメインの変異体または改変体を含む、Cerberus由来の改変体配列が含まれる。BMP結合親和性を持たない改変体配列は、インヒビターの選択性(例えば、GDF−11またはnodalの結合に対するもの、ここでは、一方のタンパク質に対する優先的な結合が生じる。また、より優先的な−野生型よりも親和性の高い−ミオスタチンへの結合、または、より識別的な(discrimitory)−野生型の短縮型バージョンよりも親和性の低い−BMP−4への結合が含まれる)を変更するか、ミオスタチンに関する他の結合特性(例えば、K、および/または、KonもしくはKoffの速度)を変更するか、または、生体内分布(biodistribution)、または、インビボもしくは保管中の半減期を改善するための方法として所望され得る。
【0114】
同定されたタンパク質のデータベースにおける相同性検索に基づき、特定の他のCerberus配列が以下に列挙され、そして、本発明の改変体Cerberusポリペプチドは、これらのタンパク質からも誘導され得る。これらの配列は、インターネット上で利用可能な公的データベースから検索されたものであるので、これらのデータベースが更新されると、他の種におけるタンパク質のさらなるホモログが得られる可能性がある。さらに、他の種のCerberusタンパク質(特に、哺乳動物のもの)は、PCR、低ストリンジェンシーのハイブリダイゼーション、標的種において同定されたCerberusホモログと交差反応する抗体を用いた、発現ライブラリーのAb媒介性のスクリーニングなどのような標準的な分子生物学的プロトコールによって容易に得られ得る。
【0115】
例えば、DNAStar製のMegaAlign(上掲)のようなソフトウェアを用いた配列アラインメントは、タンパク質ファミリーの既知のメンバーにおいて、最も保存された領域を同定し得る。その後、このような最も保存された領域をカバーする縮重オリゴと、標的生物に由来する鋳型DNAとを用いて、PCRが行われ得る。好ましい実施形態では、このような保存された領域は、キナーゼドメインおよび/またはリガンド結合ドメインを含む。
【0116】
これらの同じ保存された領域は、中程度〜低いストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件(定義の節を参照のこと)において核酸ライブラリーをスクリーニングするためのプローブを生成するために使用され得る。
【0117】
特定の実施形態では、ミオスタチンインヒビターは、ヒトもしくはマウスのCerberusタンパク質の全長にわたり、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、もしくは少なくとも約99%またはそれより高い配列同一性を共有するCerberusポリペプチドである。
【0118】
特定の他の実施形態では、ミオスタチンインヒビターは、ヒト、マウスもしくは他の種から得られたCoco配列を含むポリペプチド、その改変体もしくは誘導体(CocoのN末端短縮型バージョンを含む)である。全長のヒトCocoタンパク質は、上に開示される。
【0119】
種々のCerberusおよびCocoポリペプチドは、融合タンパク質として調製され得る。融合タンパク質は、インビボ安定性、インビボ半減期、取り込み/投与、組織局在化もしくは分布、タンパク質複合体の形成および/または精製のうちの1以上を増強する1以上のさらなるポリペプチド部分を含み得る。例えば、融合タンパク質は、免疫グロブリン重鎖の定常領域の一部(例えば、免疫グロブリンFcドメイン)およびそこからの精製サブ配列(エピトープタグ、FLAGタグ、ポリヒスチジン配列およびGST融合物から選択される)を含み得る。ミオスタチンアンタゴニストタンパク質は、以下:グリコシル化アミノ酸、PEG化アミノ酸、ファルネシル化アミノ酸、アセチル化アミノ酸、ビオチン化アミノ酸、脂質部分に結合されたアミノ酸および有機誘導体化因子に結合されたアミノ酸から選択される1以上の改変されたアミノ酸残基を含み得る。
【0120】
融合タンパク質またはカップリングしたタンパク質系(例えば、架橋による非融合性の共役結合)はまた、第二のミオスタチンインヒビタードメインを含み得、これは、ミオスタチンに選択的に結合し、そして、ALK7もしくはALK4レセプターの結合と競合するポリペプチド親和性試薬である。親和性試薬は、抗体因子であり得る。抗体因子は、例えば、組換え抗体;モノクローナル抗体;Vドメイン;Vドメイン;scFv;Fabフラグメント;Fab’フラグメント;F(ab’);Fv;またはジスルフィド結合したFv、完全ヒト抗体またはヒト化キメラ抗体、あるいはこれらの抗原結合フラグメントであり得る。親和性試薬は、ミオスタチンに選択的に結合し、そして、ALK7もしくはALK4レセプターの結合と競合するペプチドもしくは足場を持つペプチドである。親和性試薬は、ALK7またはALK4のミオスタチン結合ドメインを含み得る。例えば、ALK7またはALK4(好ましくは、ヒトALK7またはALK4)の細胞外ドメインが使用され得る。親和性試薬は、ミオスタチンに選択的に結合し、そして、ALK7もしくはALK4レセプターの結合と競合する小さな有機分子であり得る。
【0121】
ヒトALK7のミオスタチン結合ドメインの一例が以下に示される:
LKCVCLLCDSSNFTCQTEGACWASVMLTNGKEQVIKSCVSLPELNAQVFCHSSNNVTKTECCFTDFCNNITLHLP(配列番号9)
ヒトALK4のミオスタチン結合ドメインの一例が以下に示される:
ALLCACTSCLQANYTCETDGACMVSIFNLDGMEHHVRTCIPKVELVPAGKPFYCLSSEDLRNTHCCYTDY(配列番号10)。
【0122】
本明細書中に示されるように、Caronte(Cerberusのニワトリオーソログ)は、A204レポーター遺伝子アッセイにおいて、アクチビンAのシグナル伝達を実質的に阻害しない。同様に、本発明者らは、ヒトCerberusおよびCocoがアクチビンAを阻害しないことを決定した。したがって、このようなミオスタチンアンタゴニストは、好ましくは、アクチビンAが媒介するシグナル伝達との相互作用をほとんど示さないか、または全く示さない。
【0123】

IV.例示的な治療的用途
本発明のCocoおよびCerberusポリペプチド(例えば、全長およびN末端短縮型のCerberus誘導体またはCoco誘導体)は、ミオスタチンの存在から生じるか、または、ミオスタチンの存在によって悪化される多数の疾患を処置するために、多数の治療環境において使用され得る。ミオスタチンの発現または活性の低下は、筋成長を促進し、脂肪の蓄積を阻害し、そして、糖尿病モデルの文脈においてグルコースの恒常性を正常化するために有益であることが示されている。
【0124】
特定の実施形態では、本発明のポリペプチドおよびその誘導体は、筋ジストロフィーの処置の一部として使用され得る。用語「筋ジストロフィー」は、骨格筋、そしてときおり、心筋および呼吸筋の漸次的な弱化および劣化によって特徴付けられる変性性の筋肉疾患の一群を指す。筋ジストロフィーは、筋肉における顕微鏡的な変化から始まる、進行性の筋消耗および弱化によって特徴付けられる遺伝子障害である。経時的に筋肉が変性すると、人間の筋肉の強度が低下する。本発明のミオスタチンを含むレジメンで処置され得る例示的な筋ジストロフィーとしては、以下が挙げられる:デュシェーヌ筋ジストロフィー(DMD)、ベッカー筋ジストロフィー(BMD)、エメリー−ドライフス筋ジストロフィー(EDMD)、肢帯筋ジストロフィー(LGMD)、顔面肩甲上腕筋ジストロフィー(FSHまたはFSHD)(また、ランドジー−デジェリーヌとしても公知)、筋緊張性ジストロフィー(MMD)(また、シュタイネルト病としても公知)、眼咽頭筋ジストロフィー(OPMD)、遠位筋ジストロフィー(DD)、先天性筋ジストロフィー(CMD)。
【0125】
デュシェーヌ筋ジストロフィー(DMD)は、1860年代に、フランス人神経学者Guillaume Benjamin Amand Duchenneによって最初に記述された。ベッカー筋ジストロフィー(BMD)は、1950年代に最初にこのDMDの変種を記述したドイツ人医師Peter Emil Beckerによって後に命名される。DMDは、3500人に1人の少年を冒す、男性において最も頻発する遺伝性疾患の一つである。DMDは、X染色体の短腕上に位置するジストロフィン遺伝子が破壊されるときに生じる。男性は、1コピーのX染色体のみを有するので、1コピーのジストロフィン遺伝子のみを有する。ジストロフィンタンパク質がないと、筋肉は、収縮および弛緩のサイクルの間に、容易に損傷を受ける。早期の疾病筋肉では再生によって補われるが、後期では、筋前駆細胞が進行中の損傷に追いつけず、そして、健康な筋肉が機能的でない繊維−脂肪組織に取って代わられる。
【0126】
DMDにおいて、少年は、早くも3歳から、筋肉の弱化の徴候を示し始める。この疾患は、腕、脚および体幹における骨格筋または随意筋を次第に弱化させる。十代前半またはそれより早い時期までに、少年の心筋および呼吸筋もまた冒され得る。BMDは、DMDのかなり穏やかなバージョンである。その発症は、十代または若い成人においてであるのが通常であり、そして、その経過は、DMDよりも遅く、そして、かなり予測不能である(DMDおよびBMDはほぼ専ら少年を冒すが、稀に、少女を冒し得る)。
【0127】
1980年代まで、いかなる種類の筋ジストロフィーの原因についてもあまり知られていなかった。1986年に、ジストロフィン遺伝子の欠失が、DMDの原因として同定された。BMDは、同じ遺伝子における異なる変異から生じる。BMD患者は、いくらかのジストロフィンを有するが、それは、量が不十分であるか、質が劣っているかのいずれかである。いくらかのジストロフィンを有することで、BMDを罹患する人の筋肉が、DMDを罹患する人ほどひどくまたは急速に変性することから保護されている。
【0128】
最近の研究者らは、インビボでのミオスタチン機能をブロックまたは排除することで、DMDおよびBMDの患者における少なくとも特定の症状を効率的に処置し得ることを実証している(Bogdanovichら、上掲;Wagnerら、上掲)。したがって、本発明のCerberus誘導体(特に、そのN末端短縮型バージョン)は、DMDおよびBMDの患者において、インビボでのミオスタチンの機能をブロックする代替的な手段を構成する。
【0129】
同様に、本発明のCocoまたはCerberus誘導体(特に、そのN末端短縮型バージョン)は、筋成長を必要とする他の疾患状態において、筋重量を増加させるための有効な手段を提供する。例えば、Gonzalez−Cadavidら、(上掲)は、ミオスタチンの発現が、ヒトにおける除脂肪体重(fat−free mass)と逆相関していること、そして、ミオスタチン遺伝子の発現の増加が、AIDS消耗症候群を有する男性における体重の減少と関連していることを報告した。AIDS患者においてミオスタチンの機能を阻害することによって、完全には排除されないとしても、AIDSの少なくとも特定の症状が軽減され得、したがって、AIDS患者のクオリティオブライフを有意に向上させる。
【0130】
ミオスタチン機能の喪失はまた、栄養摂取の減少を伴わない脂肪の喪失と関連しているので(Zimmersら、上掲;McPherronおよびLee、上掲)、本発明のCocoまたはCerberus誘導体は(特に、そのN末端短縮型バージョン)はさらに、肥満およびII型糖尿病の発症を遅らせるか、または予防するための治療剤として使用され得る。
【0131】
癌性の食欲不振−悪液質症候群は、とりわけ、癌の最も人を衰弱させ、かつ生命を脅かす局面である。癌性の食欲不振−悪液質症候群における進行性の体重の減少は、多くのタイプの癌に共通する特徴であり、そして、乏しいクオリティオブライフおよび化学療法に対する乏しい応答を担うのみならず、体重の減少を伴わないかなりの腫瘍を有する患者において見られるものよりも短い生存時間も担う。食欲不振、脂肪および筋肉組織の消耗、精神的な疲労およびクオリティオブライフの低下に伴い、悪液質が、癌と宿主との間の複雑な相互作用から生じる。これは、癌患者の中でもとりわけ、最も一般的な死因であり、そして、死亡時に80%において存在している。これは、タンパク質、炭水化物および脂質の代謝に影響を与える、代謝性カオスの複雑な例である。腫瘍は、直接的および間接的の両方で異常を生じ、食欲不振および体重の減少をもたらす。現在、このプロセスを制御または逆進させる処置はない。
【0132】
癌性の食欲不振−悪液質症候群は、サイトカインの産生、脂質動員因子およびタンパク質分解誘導因子の放出、ならびに、中間代謝における変化に影響を及ぼす。食欲不振は一般的であるが、食物摂取の減少だけでは、癌患者で見られる身体組成の変化の説明はできず、そして、養分摂取を増加させても、消耗性症候群を逆進させることができない。罹病前の体重の5%を超える故意でない体重の減少が6ヶ月の期間内に生じる場合、癌を罹患する患者において、悪液質が疑われるべきである。
【0133】
成体マウスにおけるミオスタチンの全身性の過剰発現は、ヒトの悪液質症候群で見られるものと類似する顕著な筋肉および脂肪の喪失を誘導することが分かっているので(Zimmersら、上掲)、薬学的組成物としての本発明のCocoまたはCerberus誘導体(特に、そのN末端短縮型バージョン)は、筋成長が望まれる悪液質症候群の症状を予防、処置または軽減するために、ミオスタチンアンタゴニスト/ブロッカーとして有益に使用され得る。
【0134】
特定の実施形態では、本発明の改変体CocoまたはCerberusポリペプチド(特に、N末端短縮型Cerberus誘導体)は、神経変性を伴う疾患の宿主の症状を予防、処置または軽減するために有益に使用され得る薬学的組成物を形成するために使用され得る。いかなる特定の理論にも束縛されることは望まないが、本発明のCerberus誘導体は、野生型ALK7レセプターを介して媒介される抑制性のフィードバック機構と拮抗し得、こうして、新しい神経の成長および分化を可能にする。本発明のCerberus誘導体は、薬学的組成物として、アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(PD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、ハンチントン病などを含む神経変性を伴う疾患の症状を予防、処置または軽減するために有益に使用され得る。
【0135】
アルツハイマー病(AD)は、漸次的に生じ、記憶の喪失、異常な挙動、人格の変化、および、思考能の低下をもたらす、慢性的な不治でかつ止められない中枢神経系(CNS)の障害である。これらの喪失は、特定のタイプの脳細胞の死、および、これらの間の連絡の崩壊に関連している。
【0136】
ADは、子供の発育の逆として説明されている。ADを罹患する多くの人において、症状は、60歳より上で出現する。最も早い症状としては、近時の記憶の喪失、誤った判断、および人格の変化が挙げられる。疾患の後期では、ADを罹患する人は、自分の手を洗うなどのような単純な作業のやり方を忘れる可能性がある。ADを罹患する人は最終的に、あらゆる理性的な力を失い、自身の毎日の世話を他の人に依存するようになる。最終的には、この疾患は、人をかなり衰弱させて、患者は寝たきりになり、代表的には、並存の疾患を発症する。AD患者は、疾患の発症から8〜20年で、最も一般的には肺炎で亡くなる。
【0137】
パーキンソン病(PD)は、漸次的に生じ、そして、制御できない身体の動作、固縮、振戦、および、歩行困難をもたらす、慢性的な不治でかつ止められないCNSの障害である。これらの運動系の問題は、筋肉の活動の制御を助ける化学物質であるドパミンを生成する脳の領域における脳細胞の死に関連している。
【0138】
PDを罹患する多くの人において、症状は50歳より上で出現する。PDの最初の症状は、末端部(特に、手または唇において)に影響を及ぼす顕著な振戦である。それに続くPDの特徴的な症状は、強直または動きの遅速化、引きずり歩行(shuffling walk)、前傾姿勢およびバランス機能不全である。記憶の喪失、痴呆、抑うつ、情動の変化、嚥下困難、異常発語(abnormal speech)、性的不能ならびに、膀胱および腸の問題のような、広範囲の二次的な症状がある。これらの症状は、フォークを持つ、または、新聞を読むなどの、慣用的な活動を阻み始める。最終的には、PDを罹患する人は、全く無力となり、寝たきりになる。PDを罹患する人は、通常、肺炎で亡くなる。
【0139】
筋萎縮性側索硬化症(ALS;ルー・ゲーリグ病;運動ニューロン疾患)は、脳と骨格筋とをつなぐCNSの構成要素である運動ニューロンを攻撃する、慢性的な不治のCNS障害である。ALSでは、運動ニューロンは劣化して、最終的には死滅し、そして、患者の脳は通常、完全に機能するままに留まり、鋭敏であるが、動作の指令が、筋肉に達することはない。
【0140】
多くの人が、40歳〜70歳の間の年齢で、ALSを罹患していると診断される。弱化する最初の運動ニューロンは、腕または脚に至る運動ニューロンである。ALSを罹患する人は、歩行が困難で有り得、物を落とし、転倒し、言語が不鮮明であり、および制御不能に泣き笑いし得る。最終的には、肢の筋肉が不使用ために萎縮し始める。この筋肉の弱化は、人を衰弱させ、そして、人は、車椅子を必要とするか、または、ベッドの外では活動できなくなる。多くのALS患者は、疾患の発症から3〜5年で、呼吸不全、または、肺炎のような人工呼吸器による補助の合併症で亡くなる。
【0141】
これらの神経学的疾患の原因は、大部分は不明なままである。これらは、慣習的に別個の疾患として定義されているが、明らかに、基本的なプロセスの非常な類似性を示し、そして、共通して、単なる偶然として考えられるよりもはるかに大きな症状の重なりを示している。現在の疾患の定義は、この重なりの問題を適切に扱っておらず、神経変性傷害の新しい分類が必要とされている。
【0142】
ハンチントン病(HD)は、脳の特定の領域におけるニューロンの遺伝子によりプログラムされた変性から生じる、別の神経変性疾患である。この変性は、制御できない動作、知的能力の喪失および情動の乱れを引き起こす。HDは、家族性の疾患であり、野生型遺伝子における優性変異により、親から子へと受け継がれる。HDのいくつかの早期の症状は、気分変動、抑うつ、被刺激性、または、運転すること、新しい物事を学習すること、事実を記憶していること、もしくは、決定を行うことの不調(trouble)である。疾患が進行するにつれ、知的作業に対する集中が次第に困難となり、そして、患者は、自分自身で食事をすること、そして、嚥下することが困難となり得る。疾患の進行速度および発症の年齢は、人ごとに多様である。
【0143】
テイ−サックス病およびザントホフ病は、リソソームのβ−ヘキソサミニダーゼの欠失によって引き起こされる糖脂質蓄積症である(Gravelら、The Metabolic Basis of Inherited Disease,Scriverら編、McGraw−Hill,New York,pp.2839−2879,1995)。両方の障害において、GM2ガングリオシドおよびβ−ヘキソサミニダーゼに対する関連の糖脂質基質が、神経系に蓄積し、急性の神経変性を誘発する。重症な形態の多くにおいて、症状の発症は、早期新生児期に始まる。その後、急な神経変性の経過が続き、罹患した新生児は、運動機能障害、てんかん発作、視覚喪失および難聴を示す。死は、通常、2〜5歳の年齢で起こる。アポトーシス性の機構による神経の喪失が示されている(Huangら、Hum.Mol.Genet.6:1879−1885,1997)。
【0144】
アポトーシスは、免疫系におけるAIDSの病因において役割を担うことが周知である。しかし、HIV−1もまた、神経学的疾患を誘導する。Shiら(J.Clin.Invest.98:1979−1990,1996)は、インビトロモデルおよびAIDS患者に由来する脳組織における、中枢神経系(CNS)のHIV−1感染により誘導されるアポトーシスを調べ、そして、初代脳培養物のHIV−1感染が、インビトロで、ニューロンおよび星状細胞におけるアポトーシスを誘導したことを見出した。ニューロンおよび星状細胞のアポトーシスはまた、11人中10人のAIDS患者(5人中5人のHIV−1による痴呆を有する患者、そして、5人中4人の非痴呆患者を含む)に由来する脳組織においても検出された。
【0145】
神経の喪失はまた、ヒトにおけるクロイツフェルト−ヤコブ病、ウシにおけるBSE(狂牛病)、ヒツジおよびヤギにおけるスクラピー、ならびにネコにおけるネコ海綿状脳症(FSE)のような、プリオン病の著しい特徴でもある。
【0146】
N末端短縮型Cerberus誘導体を含む本発明のCerberusおよびCocoポリペプチドはまた、以下に記載されるもののような種々のPNS障害の症状を予防、処置および軽減するためにも有用である。PNSは、CNSへ至るか、または、CNSから分岐する神経から構成される。末梢神経は、多様な系列の身体の機能(感覚神経、運動神経および自律神経の機能を含む)を取り扱う。個体が末梢神経障害を有する場合、PNSの神経が損傷を受けている。神経損傷は、疾患、物理的傷害、中毒または栄養失調のような多数の原因から生じ得る。これらの因子は、求心性もしくは遠心性のいずれかの神経に影響を与え得る。損傷の原因に依存して、神経細胞軸索、その保護性のミエリン鞘またはこの両方が、傷害され得るか、または、破壊され得る。
【0147】
用語「末梢神経障害」は、脳および脊髄の外側の神経−末梢神経−が損傷を受けている広範囲の障害を包含する。末梢神経障害はまた末梢神経炎とも称され得、また、多くの神経が関与している場合には、用語「多発性神経障害」または「多発性神経炎」が使用され得る。
【0148】
末梢神経障害は、広範囲に及ぶ障害であり、そして、多くの根底にある原因が存在する。これらの原因には一般的なものもあれば(例えば、糖尿病)、極めて稀なものもある(例えば、アクリルアミド中毒および特定の遺伝性障害)。末梢神経障害の最も一般的な世界的な原因は、らい病である。らい病は、細菌Mycobacterium lepraeによって引き起こされ、この菌は、冒された人の末梢神経を攻撃する。世界保健機関によって集められた統計によれば、世界中で推定115万人がらい病を有している。
【0149】
らい病は、米国では極めて稀であり、米国では、糖尿病が最も一般に知られる末梢神経障害の原因である。米国および欧州において1700万人超が糖尿病に関連する多発性神経障害を有すると推定されている。多くの神経障害は特発性であり、既知の原因を見出すことができない。米国における最も一般的な遺伝性の末梢神経障害は、シャルコー−マリー−ツース病であり、これは、およそ12.5万人を冒している。
【0150】
より知られる末梢神経障害の別の例はギラン−バレー症候群であり、これは、サイトメガロウイルス、エプスタイン−バーウイルスおよびヒト免疫不全ウイルス(HIV)のようなウイルス性疾患、または、Campylobacter jejuniおよびLyme病を含む細菌感染に関連する合併症から生じる。世界的な発生率は、年間、10万人におよそ1.7症例である。末梢神経障害の他の周知の原因としては、慢性アルコール中毒、水痘−帯状疱疹ウイルス感染、ボツリヌス中毒およびポリオが挙げられる。末梢神経障害は、一次の症状として発症しても、別の疾患に起因していてもよい。例えば、末梢神経障害は、アミロイド神経障害、特定の癌または遺伝性の神経学的障害のような疾患の一症状に過ぎない。このような疾患は、末梢神経系(PNS)および中枢神経系(CNS)ならびに他の身体組織に影響を及ぼし得る。
【0151】
本発明のCerberusおよびCocoポリペプチドを用いて処置可能な他のPNS疾患としては以下が挙げられる:腕神経叢神経障害(腕神経叢の頚根および第一胸根(cervical and first thoracic root)、神経幹、索および上腕神経叢の末梢神経構成要素の疾患。臨床的な症状発現としては、局部疼痛、感覚異常;上肢における筋肉の弱化および感覚の低下が挙げられる。これらの障害は、外傷(出生時の傷害を含む);胸郭出口症候群;新生物、神経炎、放射線治療;および他の状態に関連し得る。Adamsら、Principles of Neurology,第6版,pp1351−2)を参照のこと;糖尿病性神経障害(真性糖尿病に関連する末梢神経、自律神経および脳神経の障害)。これらの状態は、通常、神経に供給している小さな血管(神経の脈管)に関わる糖尿病性の微小血管傷害から生じる。糖尿病性神経障害に付随し得る比較的一般的な状態としては、以下が挙げられる:第三脳神経麻痺(third nerve palsy);単発神経障害;多発性単神経炎;糖尿病性筋萎縮症;疼痛性多発性神経障害(painful polyneuropathy);自律神経障害;および胸腹部神経障害(thoracoabdominal neuropathy)(Adamsら、Principles of Neurology,第6版,p1325を参照のこと);単発神経障害(孤立性であるか、または、びまん性末梢神経機能障害の証拠に対し不均衡な、単一の末梢神経を含む疾患または外傷。多発性単神経炎は、多発性でかつ孤立性の神経傷害によって特徴付けられる状態を指す。単発神経障害は、虚血;外傷性傷害;圧迫;結合組織の疾患;蓄積外傷疾患;および他の状態を含む広範な種々の原因から生じ得る);神経痛(末梢神経または脳神経の進路または分布に沿って生じる、強烈もしくはずきずきと痛む疼痛);末梢神経系新生物(末梢神経組織から生じる新生物。これには、神経線維腫;神経鞘腫;顆粒細胞腫瘍;および悪性神経鞘腫が含まれる。DeVita Jrら、Cancer:Principles and Practice of Oncology,第5版,pp1750−1を参照のこと);神経圧迫症候群(内部もしくは外部の原因からの神経もしくは神経根の機械的な圧迫。これらは、例えば、ミエリン鞘機能不全または軸索の喪失に起因する神経のインパルスに対する伝導ブロックをもたらし得る。神経および神経鞘の傷害は、虚血;炎症;または直接的な機械的作用によって引き起こされ得る);神経炎(末梢神経または脳神経の炎症を示す一般的な用語。臨床的な症状発現としては、疼痛;感覚異常;不全麻痺;または知覚過敏(hyperthesia)が挙げられ得る);多発性神経障害(複数の末梢神経の疾患。冒される神経のタイプ(例えば、感覚神経、運動神経または自律神経)によって、神経傷害の分布(例えば、遠位 対 近位)によって、一次に影響を及ぼされる神経の構成要素(例えば、脱髄性 対 軸索性)によって、病因によって、または、遺伝形質のパターンによって、種々の形態が分類される)。
【0152】
特定の実施形態では、本発明の全長のCocoまたはCerberusポリペプチドまたはその改変体は、以下に記載されるもののような、過剰もしくは所望されないレベルのBMPによって特徴付けられる疾患または状態の処置の一部として使用される。
【0153】
筋、腱および靭帯の異所性骨化は、整形外科医が直面する共通の問題である。Hannallahら(J Bone Joint Surg Am.2004 Jan;86−A(1):80−91)は、Noggin(BMP[骨形成タンパク質]アンタゴニスト)の異所性骨化を抑制する能力を調べた。3つの多様な用量のNogginを発現する筋肉由来の幹細胞が、BMP−4を発現する筋肉由来の幹細胞によって誘発される異所性骨化を抑制した。3つの多様な用量のNogginを発現する筋肉由来の幹細胞の各々はまた、脱髄した骨基質によって誘発される異所性骨化も有意に抑制した。アキレス腱切除術を受けた11匹の動物の全てが、コントロールの肢における傷害部位において異所性骨化を発症した。対照的に、Nogginを発現する筋肉由来の幹細胞で処置した肢は、異所性骨化の形成における83%の減少を有し、そして、11匹中8匹の動物は、異所性骨化の放射線撮像による徴候を有さなかった(p<0.05)。したがって、筋肉由来の幹細胞により媒介されるNogginの送達は、動物モデルにおけるBMP−4によって引き起こされる異所性骨化、脱髄した骨基質および外傷を抑制し得、BMPインヒビター(NogginまたはCerberus)を送達するための遺伝子治療が、身体の標的領域における異所性骨化を抑制するための効果的な方法となり得ることを示唆した。また、Glaserら(J Bone Joint Surg Am.2003 Dec;85−A(12):2332−42)も参照のこと。
【0154】
変形性関節症(OA)は、骨棘の発生、線維症および関節軟骨損傷によって特徴付けられる関節の疾患である。外因性のトランスフォーミング増殖因子β(TGF−β)アイソフォームおよび骨形成タンパク質(BMP)の作用は、OAの病因におけるこれらの増殖因子の役割を示唆している。Scharstuhlら(Arthritis Rheum.2003 Dec;48(12):3442−51)は、TGF−βおよびBMPのシグナル伝達をブロックするために、TGF−βおよびBMPアンタゴニストのアデノウイルスによる過剰発現を使用した。研究されたインヒビターには、マウス潜伏期関連ペプチド(murine latency−associated peptide)1(mLAP−1)と呼ばれる分泌型の汎特異的TGF−βアンタゴニスト、細胞内阻害性Smad6(BMPアンタゴニスト)およびSmad7(TGF−β/BMPインヒビター)が含まれる。パパインの関節内注射は、滑膜および靭帯においていくつかのTGF−βおよびBMPのアイソフォームのタンパク質発現を増加させた。関節内へのアデノウイルストランスフェクションは、滑膜内層におけるトランスジーンの強い発現をもたらした。mLAP−1、Smad6およびSmad7の過剰発現は、コントロールにおけるものと比較して、骨棘の形成の有意な減少をもたらした。Smad6およびSmad7の過剰発現はまた、滑膜の肥厚を有意に低下させた。さらに、分泌型のTGF−βインヒビターであるmLAP−1は、関節軟骨におけるPGの喪失を増加させた。これらの結果は、骨棘および滑膜肥厚の発生における過剰な外因性TGF−βおよびBMPの中心的な役割を示し、OAの病因における過剰な外因性TGF−βおよびBMPの関与を示している。対照的に、外因性TGF−βによる靭帯損傷の防止は、関節軟骨におけるTGF−βの保護性の役割を意味する。したがって、本発明のCocoまたはCerberusの薬学的組成物は、OA(骨棘および滑膜肥厚の発生を含む)を処置するためのBMPアンタゴニストとして使用され得る。
【0155】
正常な卵巣胚上皮(OSE)細胞および卵巣癌(OC)細胞の解析において、ShepherdおよびNachtigal(Endocrinology.2003 Aug;144(8):3306−14)は、BMP4 mRNAの発現を観察し、そして、初代OC細胞が、成熟なBMP4を生成することを見出した。さらに、下流のシグナル伝達経路の各メンバーが、初代のOSE細胞およびOC細胞において発現された。Smad1は、リン酸化され、そして、BMP4での処理の際に、正常なOSE細胞およびOC細胞において、核転座を受けた。興味深いことに、BMP標的遺伝子ID1およびID3は、正常なOSEでは、2〜3倍の増加であったのに対し、初代のOC細胞において10〜15倍アップレギュレートされた。いくつかの初代OC細胞の増殖は、BMP4処理によって比較的不変であった;しかし、初代OC細胞の長期にわたるBMP4処理は、細胞密度の低下、ならびに、細胞の拡延性および粘着性の増加をもたらした。これらのデータは、正常なOSE細胞およびOC細胞におけるBMPシグナル伝達の存在および推定の機能を示し、したがって、本発明のCerberusの薬学的調製物は、OCの病因においてBMP4シグナル伝達を調節するために使用され得る。
【0156】
異所性骨形成によって特徴付けられる稀な遺伝性無能化疾患(genetic disabling disease)である進行性骨化性線維形成異常症(FOP)は、多方面にわたる医療にとり特に関心が持たれている。なぜなら、その病因に関与する骨形成タンパク質(特に、BMP−4)が、骨格の形態形成において役割を担うことが知られており、さらに、BMP−4に対する遺伝子アンタゴニスト(例えば、noggin)が、層板状の骨形成の予防において有用であり得るからである。Blaszczykら(Eur J Dermatol.2003 May−Jun;13(3):234−7)を参照のこと。したがって、本発明のCerberusの治療薬はまた、FOPを処置するためにも使用され得る。
【0157】
アテローム性動脈硬化症は、現在、分枝動脈における流れが妨げられた状態(律動様ずれ応力(OS)を含む)に曝露された動脈領域において優先的に生じる炎症性疾患と見られている。Sorescuら(J Biol Chem.278(33):31128−35,2003)は、BMP4が、病巣となりがちな領域におけるアテローム発生の早期段階において重要な役割を担う、機械感覚性の(mechanosensitive)炎症性因子であることを示唆している。したがって、本発明のCerberusの治療薬は、これらの領域におけるアテローム発生の早期段階においてBMP−4誘導性の炎症性応答を制御するために使用され得る。
【0158】
頭蓋発生の間に、頭の結合組織の間質は膜内骨化を受けて、頭蓋骨(頭蓋冠)を形成する。頭蓋冠骨が前進して脳を覆うと、頭蓋冠プレート間に線維性の縫合が形成する。脳の拡大は、頭蓋縫合(cranial suture)複合体内での一連の組織相互作用による頭蓋冠の成長と結び付けられる。頭蓋骨癒合症、すなわち、未熟な頭蓋縫合の癒合は、異常な頭蓋の形状、盲および精神遅滞をもたらす。最近の研究は、線維芽細胞増殖因子レセプター(fgfr)における機能獲得型変異が、頭蓋骨癒合症の症候性形態と関連していることを実証している。骨形成タンパク質(BMP)のアンタゴニストであるNogginは、胚の神経管、体節および骨格のパターン形成に必要とされる。Warrenら(Nature.2003 Apr 10;422(6932):625−9)は、nogginが、開存性の縫合間葉において生後に発現されるが、癒合している頭蓋縫合では発現されないこと、そして、nogginの発現が、FGF2および症候性fgfrのシグナル伝達によって抑制されることを示している。nogginの発現がないと、インビトロおよびインビボでの頭蓋縫合の癒合が防止されるので、症候性fgfr媒介性の頭蓋骨癒合症は、異常に高いBMP活性につながる、noggin発現の不適切なダウンレギュレーションの結果であり得ることが示唆される。したがって、本発明のCerberusおよびCocoの治療薬は、BMP活性をダウンレギュレートして、このような状態を予防または処置するために使用され得る。
【0159】
V.例示的な処方物
本発明の組成物は、単独で、または、他の化合物/薬学的組成物との組み合わせ治療の一部として使用され得る。
【0160】
本発明の方法において使用するための、可溶性のCocoまたはCerberusポリペプチド(N末端短縮型Cerberus誘導体を含む)の治療薬は、水、緩衝化生理食塩水、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)、またはこれらの適切な混合物のような生物学的に受容可能な媒体と共に投与するために簡便に処方され得る。選択した媒体中の活性成分の最適な濃度は、医薬化学者に周知の手順によって、経験的に決定され得る。本明細書中で使用される場合、「生物学的に受容可能な媒体」は、薬学的調製物の所望される投与経路に適切であり得る、任意およびあらゆる溶媒、分散媒などを包含する。薬学的に活性な物質のためのこのような媒体の使用は、当該分野で公知である。任意の従来の媒体または因子が、治療薬の活性と調和できない場合を除いて、本開示の薬学的調製物におけるその使用が企図される。適切なビヒクルおよび他のタンパク質を含むその処方物は、例えば、書籍、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Remington’s Pharmaceutical Sciences.Mack Publishing Co.,Easton,Pa.,USA 1985)に記載される。これらのビヒクルは、注射可能な「デポジット処方物(deposit formulation)」を含む。
【0161】
本開示の薬学的処方物はまた、獣医学的組成物(例えば、獣医学的用途のため(例えば、家畜類(ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタおよびウマなど)または愛玩動物(例えば、ネコおよびイヌ)の処置のため)に適したCocoまたはCerberus誘導体治療薬の薬学的調製物)を含み得る。
【0162】
本開示の方法はまた、再充填可能もしくは生分解性のデバイスによって提供され得る。近年、タンパク質性の生物製剤(proteinacious biopharmaceutical)を含む薬物の制御された送達のための種々の緩慢放出ポリマーデバイスが開発されており、そして、インビボで試験されている。生分解性ポリマーおよび非生分解性ポリマーの両方を含む種々の生体適合性ポリマー(ヒドロゲルを含む)が、特定の標的部位での治療薬の持続放出のための埋没物を形成するために使用され得る。
【0163】
本開示による薬学的組成物は、単回用量または複数回用量のいずれかで投与され得る。本開示の薬学的組成物は、個々の治療剤として、または他の治療剤との組み合わせるかのいずれかで投与され得る。本開示の処置は、従来の治療と併用され得、これらは、連続して投与されても、同時に投与されてもよい。本開示の薬学的組成物は、CocoもしくはCerberus誘導体が標的細胞/組織/臓器に到達することを可能とするあらゆる手段によって投与され得る。いくつかの実施形態では、投与経路は、標的細胞が存在する臓器の血液供給源への、もしくは細胞内への直接的な、経口投与、膀胱内投与、静脈内投与、動脈内投与、腹腔内投与、局所投与からなる群より選択される経路を含む。静脈内投与が好ましい投与様式である。静脈内投与は、注入ポンプの助けにより達成され得る。
【0164】
句「非経口投与」および「非経口投与される」とは、本明細書中で使用される場合、通常は注射による、経腸投与および局所投与以外の投与様式を意味し、そして、限定はされないが、静脈内、筋肉内、動脈内、鞘内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、クモ膜下、脊椎内および胸骨内(intrastermal)の注射および注入が挙げられる。
【0165】
句「全身投与」、「全身投与される」、「末梢投与」および「末梢投与される」とは、本明細書中で使用される場合、化合物、薬物または他の物質の、中枢神経系内への直接投与以外の投与であって、その投与の結果、化合物、薬物または他の物質が患者の系に入り、したがって、代謝および他の同様のプロセスに供されるような投与を意味する(例えば、皮下投与)。
【0166】
これらの化合物は、任意の適切な投与経路(経口、膀胱内、例えばスプレーなどにより鼻に(nasally)、直腸に(rectally)、膣内、非経口、クモ膜下槽内、および、散剤、軟膏もしくはドロップにより局所的に(頬側に(buccally)および舌下を含む)が挙げられる)によって、治療のためにヒトおよび他の動物に投与され得る。
【0167】
選択される投与経路とは無関係に、適切な水和形態で使用され得る本開示の化合物および/または本開示の薬学的組成物は、以下に記載されるような薬学的に受容可能な投薬形態で、または、当業者に公知の他の従来の方法によって処方され得る。
【0168】
本開示の薬学的組成物中の活性成分の実際の投与量レベルは、患者に対する毒性を伴わずに、個々の患者、組成物および投与様式について所望の治療応答を達成するために有効な活性成分の量を達成するように変更され得る。
【0169】
選択される投与量のレベルは、用いられる本開示の特定の化合物、または、そのエステル、塩もしくはアミドの活性、投与経路、投与時間、用いられる特定の化合物の排泄速度、処置の期間、用いられる特定の治療薬と併用して用いられる他の薬物、化合物および/もしくは物質、処置される患者の年齢、性別、体重、状態、全身の健康状態および前病歴、ならびに、医療分野において周知の同様の因子を含む、種々の因子に依存する。
【0170】
当該分野の通常の技術を有する医師または獣医師は、必要とされる薬学的組成物の有効量を容易に決定および処方し得る。例えば、医師または獣医師は、所望の治療効果を達成するために必要とされるものよりも少ないレベルの、薬学的組成物において用いられる本開示の化合物の用量から開始して、所望の効果が達成されるまで、漸次的に投薬量を増加させ得る。
【0171】
一般に、本開示の化合物の適切な一日量は、治療効果を生じるのに有効な最低の用量である化合物の量である。このような有効用量は、一般に、上記のような因子に依存する。一般に、患者のための本開示の化合物の静脈内、脳室内(intracerebrovenitricular)および皮下の用量は、1日につき体重1キログラムあたり約0.0001mg〜約100mgの範囲である。
【0172】
所望される場合、活性化合物の有効な一日量は、1日を通して適切な間隔で分けて、必要に応じて単位投与量形態で別々に投与される、2回、3回、4回、5回、6回またはそれ以上の準用量(sub−dose)として投与され得る。
【0173】
用語「処置」はまた、予防、治療および治癒を包含することも意図される。
【0174】
この処置を受ける患者は、この処置を必要とするあらゆる動物であり、これには、霊長類、特に、ヒト、および他の非ヒト哺乳動物(例えば、ウマ、ウシ、ブタおよびヒツジ);ならびに、家禽およびペット一般が含まれる。
【0175】
本開示の化合物は、単独で、または、薬学的に受容可能なキャリアとの混合物において投与され得、そしてまた、ペニシリン、セファロスポリン、アミノグリコシドおよび糖ペプチドのような他の抗菌剤と組み合わせて投与され得る。したがって、組み合わせ治療(conjunctive therapy)は、最初に投与したものの治療効果が、次に投与されるときに完全に消失されないような方法での、活性化合物の連続的、同時および別個の投与を含む。
【0176】
特定の処方物と組み合わせると、本発明のCocoまたはCerberus誘導体は、有効な可溶性因子であり得る。治療用ポリペプチドは、可溶性を促進する第2のペプチドと共に融合ペプチドとして提供され得る。例を挙げると、本開示のCerberus誘導体は、免疫グロブリンのヒンジもしくはFc部分の全体もしくはフラグメント(可溶性および/または血清安定性を促進し得る)との融合ポリペプチドの一部として提供され得る。
【0177】
本開示はまた、本明細書中に記載されるような本発明のポリペプチド誘導体のペプチド模倣配列を企図する。
【0178】
一般に、本明細書中で使用される用語法および本開示において利用される実験室の手順は、分子、生化学、微生物学および組換えDNAの技術を包含する。このような技術は、文献において徹底的に説明されている。例えば、以下を参照のこと:「Molecular Cloning:A laboratory Manual」Sambrookら、(1989);「Current Protocols in Molecular Biology」第I〜III巻 Ausubel,R.M.,編(1994);Ausubelら、「Current Protocols in Molecular Biology」,John Wiley and Sons,Baltimore,Md.(1989);Perbal,「A Practical Guide to Molecular Cloning」,John Wiley & Sons,New York(1988);Watsonら、「Recombinant DNA」,Scientific American Books,New York;Birrenら、(編)「Genome Analysis:A Laboratory Manual Series」,第1〜4巻,Cold Spring Harbor Laboratory Press,New York(1998);米国特許第4,666,828号;同第4,683,202号;同第4,801,531号;同第5,192,659および同第5,272,057号に示されるような方法;「Cell Biology:A Laboratory Handbook」,第I〜III巻 Cellis,J.E.,編(1994);「Current Protocols in Immunology」第I〜III巻 Coligan J.E.,編(1994);Stitesら、(編),「Basic and Clinical Immunology」(第8版),Appleton & Lange,Norwalk,CT(1994);MishellおよびShiigi(編)、「Selected Methods in Cellular Immunology」,W.H.Freeman and Co.,New York(1980);利用可能な免疫アッセイは、特許文献および科学技術文献に詳細に記載されており、例えば以下を参照のこと:米国特許第3,791,932号;同第3,839,153号;同第3,850,752号;同第3,850,578号;同第3,853,987号;同第3,867,517号;同第3,879,262号;同第3,901,654号;同第3,935,074号;同第3,984,533号;同第3,996,345号;同第4,034,074号;同第4,098,876号;同第4,879,219号;同第5,011,771および同第5,281,521号;「Oligonucleotide Synthesis」Gait,M.J.,編(1984);「Nucleic Acid Hybridization」Hames,B.D.,およびHiggins S.J.,編(1985);「Transcription and Translation」Hames,B.D.,およびHiggins S.J.,編(1984);「Animal Cell Culture」Freshney,R.I.,編(1986);「Immobilized Cells and Enzymes」IRL Press,(1986);「A Practical Guide to Molecular Cloning」Perbal,B.,(1984)および「Methods in Enzymology」第1〜317巻,Academic Press;「PCR Protocols:A Guide To Methods And Applications」,Academic Press,San Diego,Calif.(1990);Marshakら、「Strategies for Protein Purification and Characterization−A Laboratory Course Manual」CSHL Press(1996);これらは全て、完全に本明細書中に示されるかの如く、参考として援用される。他の一般的な参考文献は、本明細書の全体にわたり提供される。これらの文献における手順は、当該分野で周知であると考えられるが、読み手の便のために提供される。これらの文献に含まれる情報は全て、本明細書中に参考として援用される。
【実施例】
【0179】
本開示は、ここで、一般的に記載されているが、以下の実施例を参照することによって、より容易に理解される。以下の実施例は、特定の実施形態および本開示の実施形態を例示する目的のためだけに含まれるものであり、本開示を限定することを意図するものではない。
【0180】

実施例1.CaronteおよびヒトCerberusタンパク質の供給源
Caronte−Fc(Gallus gallusに由来するCerberusホモログ)を、R&D Systems(Minneapolis,MN)に注文した。ヒトCerberus配列の全長およびN末端短縮型形態を、C末端をIgG1のFc部分(ヒトおよびマウスの両方のIgG1 Fc融合物を生成した)に融合させてか、または、融合させずに、ヒトCMV由来の発現ベクター中にクローニングした。これらの構築物を、ポリエチレンイミン(PEI)を用いてHEK293細胞中に一過性にトランスフェクトした。培養した後、細胞を回収し、そして、精製のために馴化培地を回収した。
【0181】
以下の構築物を調べた:

ヒトCerberus、全長、Fcなし(配列番号11)
【0182】
【数9】


ヒトCerberus、全長、Fcあり(TGGGリンカーおよびFcに下線を付す;ネイティブなシグナル配列には、点線の下線を付す)(配列番号12)
【0183】
【数10】


ヒトCerberus、短縮型、Fcあり(TGGGリンカーおよびFcに下線を付す)(配列番号13)
【0184】
【数11】


3つの異なるリーダー配列を検討した:
(i)ミツバチメリチン(HBML):MKFLVNVALVFMVVYISYIYA(配列番号14)
(ii)組織プラスミノーゲンアクチベーター(TPA):MDAMKRGLCCVLLLCGAVFVSP(配列番号15)
(iii)ネイティブ:MHLLLFQLLVLLPLGKT(配列番号16)。
【0185】

異種性またはネイティブなリーダー配列は、最初の30個のアミノ酸内の任意の位置にあるタンパク質配列に融合させ得る。モデリングは、18位の「TRH...」から開始する生成物を生じることを示唆する。本明細書において表される生成物の解析は、ネイティブなリーダーは、より代表的に、16位の「KTT...」から開始する生成物を生じることを示す。それゆえ、異種のリーダー配列は、16位または18位にN末端を融合させ得る。
【0186】

実施例2.CaronteはGDF−11に結合する
GDF−11は、神経学的プロセスを調節するミオスタチンの近いホモログである。GDF−11を、標準的なアミンカップリング手順を用いて、BiaCore CM5チップ上に固定した。トレース:Caronte(200μg/ml;R&D Systems)を、GDF−11をカップリングさせたチップ上に注入した。図2のトレーシングは、GDF−11へのCaronteの結合を示す。
【0187】

実施例3.CaronteおよびヒトCerberusは、GDF−11およびミオスタチン媒介性のシグナル伝達を阻害する
A−204レポーター遺伝子アッセイを用いて、GDF−11、ミオスタチンおよびアクチビンAによるシグナル伝達に対する、CaronteおよびCerberusの作用を評価した。細胞株:ヒト横紋筋肉腫(筋肉由来)。レポーターベクター:pGL3(CAGA)12(Dennlerら、1998,EMBO 17:3091−3100に記載されるもの)。図3を参照のこと。CAGA12モチーフは、TGF−β応答性遺伝子(PAI−1遺伝子)内に存在しており、したがって、このベクターは、一般に、Smad2およびSmad3を介してシグナル伝達される因子に用いられる。
1日目:A−204細胞の48ウェルプレートへの分割。
2日目:pGL3(CAGA)12の10μgまたはpGL3(CAGA)12(10μg)+pRLCMV(1μg)と、Fugeneとを用いてトランスフェクトしたA−204細胞。
3日目:因子(0.1% BSAを含む培地中に希釈したもの)を添加。インヒビターは、細胞に加える前に、1時間にわたって因子と予備インキュベートする必要がある。6時間後に細胞をPBSでリンスし、そして細胞を溶解させる。
【0188】
この次に、ルシフェラーゼアッセイを行う。あらゆるインヒビターの非存在下で、アクチビンAは、レポーター遺伝子の発現の10倍の刺激と、約20ng/mlのED50とを示した。GDF−8:ED50:約5ng/ml、15倍の刺激。GDF−11:16倍の刺激、ED50:約1.5ng/ml。
【0189】
図4に示されるように、Caronteは、A−204レポーター遺伝子アッセイにおいてGDF−11のシグナル伝達を阻害する。ActRIIA−Fc(「IIA muG2a」)融合物もまた、GDF−11のシグナル伝達を阻害する。図5に示されるように、Caronteは、A−204レポーター遺伝子アッセイにおいてアクチビンAを阻害しない。ActRIIA−Fc融合物(「IIA muG2a」)は、予測された通り、アクチビンAのシグナル伝達を阻害する。したがって、Caronteは、アクチビンAのシグナル伝達には影響を与えないが、GDF−11/ミオスタチンの選択的なインヒビターである。このタイプの選択性は、Caronte、CerberusおよびCocoが、治療薬として使用された場合の副作用が比較的少ないことを示唆する。予測された通り、Cerberusは、Caronteとかなり似た挙動を示し、ミオスタチンのシグナル伝達を阻害した。図6を参照のこと。ヒトのCerberusおよびCocoのアクチビンAに対する結合を調べるために、同様の実験を行い、そして、これらの実験は、これらの分子がアクチビンAに結合しないことを確認する。
【0190】

実施例4.ヒトCocoタンパク質の供給源
全長ヒトCocoを、C末端をIgG1のFc部分(ヒトおよびマウスの両方のIgG1 Fc融合物を生成した)に融合させてか、または、融合させずに、ヒトCMV由来の発現ベクター中にクローニングした。これらの構築物を、ポリエチレンイミン(PEI)を用いてHEK293細胞中に一過性にトランスフェクトした。培養した後、細胞を回収し、そして、精製のために馴化培地を回収した。
【0191】
以下の構築物を作製し、マウスFc融合物もまた作製し、そして、これらを本明細書中に示されるアッセイにおいて使用した:
ヒトCoco、全長、Fcあり(TGGGリンカーおよびmFc)(配列番号17)
【0192】
【数12】

以下の構築物は、短縮型のCerberus−Fc融合タンパク質と同様である:
ヒトCoco、短縮型、Fcあり(TGGGリンカーおよびmFc)(配列番号18)
【0193】
【数13】

3つの異なるリーダー配列を検討した:
(i)ミツバチメリチン(HBML):MKFLVNVALVFMVVYISYIYA(配列番号14)
(ii)組織プラスミノーゲンアクチベーター(TPA):MDAMKRGLCCVLLLCGAVFVSP(配列番号15)
(iii)ネイティブ:MLLGQLSTLLCLLSGALPTGS(配列番号19)。
【0194】
異種性またはネイティブなリーダー配列は、最初の30個のアミノ酸内の任意場所に、特に、N末端をアミノ酸16〜23のいずれかに融合させ得る。
【0195】

実施例5:ヒトCocoは、GDF−11のシグナル伝達を阻害する
ヒトCoco−mFcを発現する細胞からの馴化培地を、GDF−11の存在下でA−204レポーター遺伝子発現に対する作用について調べた。
【0196】
図7に示されるように、Coco−mFcを含む馴化培地は、A−204レポーター遺伝子アッセイにおいて、Cerberusとかなり類似して、GDF−11のシグナル伝達を阻害する。同様の実験が、Coco−mFcがNodalのシグナル伝達を阻害することを示した。
【0197】

実施例6:ヒトCerberus−Fcは、ヒト血清中で分解される
血清の存在下でのCerberusポリペプチドの安定性を評価した。ヒトCerberus−Fcを発現する細胞からの馴化培地を、種々の量のヒト血清(加えた血清の割合を上部に示す)と共に37℃にて一晩インキュベートし、SDS−PAGEにより分けた。ウェスタンブロット(図8)は、5%ヒト血清と共にインキュベートした場合に、Cerberusが完全に分解されていることを示した。
【0198】
開裂フラグメントのN末端の配列決定は、タンパク質分解が以下の部位において起こったことを明らかにした(開裂を^で示す):
38 NQR^ELP 43
138 MFR^KTP 143
207 SHC^LPA 212。
【0199】

実施例7:血清に対して安定なヒトCerberusおよびCocoポリペプチド
血清に対して安定なCerberusポリペプチドを生成するために、種々の改変が開裂部位および周囲の配列に導入され得る。Cerberusの短縮形態において、L212開裂部位のみが残り(アミノ酸の番号付けは、全長のネイティブなCerberus配列、配列番号2を参照する)、したがって、配列SHCLPA中のアミノ酸のいずれか、いくつか、または全ての改変が、この開裂部位を除くために変更され得る。一般に、改変は、アラニンもしくはセリンのような小さな非荷電の基への改変である。C211および/またはL212のセリンもしくはアラニンへの改変が、特に望ましい。さらに、または代替的に、N連結グリコシル化部位(NXT/S)は、アミノ酸202〜222の範囲内のある位置に導入され得る。N連結グリコシル化部位はまた、タンパク質の3次元構造において212位に近いと予測される位置にも導入され得る。用いられるCerberus分子の長さに依存して、同様の改変が、他の部位38NQR^ELP43および138MFR^KTP143の各々に作製され得る。38NQR^ELP43開裂部位に関して特に望ましい改変は、配列38NQ(S/T)ELP43を作製するRのS/Tへの改変であり、これは開裂部位を除くと同時に、N連結グリコシル化部位を導入するものである。さらに、E41およびK141において開裂された生成物が、ミオスタチン結合活性を保持していることが実験により示された。したがって、E41またはK141から始まるCerberusのN末端短縮型形態は、これらの部位における開裂に対して抵抗性であり、そして活性を保持する。短縮形態の活性は、最小のミオスタチン結合ドメインが、配列番号2のアミノ酸162〜241に位置するシステイン−ノットであることを示唆している。
【0200】
1以上の変更(以下で、角括弧[]内に示される;例えば、”[R(T)]”は、通常その位置にあるアルギニンが、スレオニンで置き換えられ得ることを意味する)を有するCerberus構築物は、開裂をブロックし、そして、改善された薬力学的特性を与えるものと予測される、N連結グリコシル化部位を有する。以下の構築物は、例えば、tPAリーダー配列およびFc配列と共に発現され得る
【0201】
【数14】


Cocoは、Cerberusと同様の様式の挙動を示すと予測されるが、Cocoにおける2つの同様の開裂部位は、以下の配列:150PAR^KRW155および168SRR^RVK173におけるシステイン−ノットドメイン内に生じる。これらの位置におけるアミノ酸が、開裂を除くために変更され得る:アラニンおよびセリンが特に好ましいアミノ酸である。さらに、もしくは代替的に、N連結グリコシル化部位(NXT/S)は、これらの位置のいずれか、またはその付近に導入され得る。Cerberusの短縮形態の活性は、Cocoの最小のミオスタチン結合ドメインが、配列番号5のアミノ酸101〜185に位置するシステイン−ノットであることを示唆している。
【0202】
1以上の変更(以下で、角括弧[]内に示される)を有するCoco構築物は、開裂をブロックし、そして、改善された薬力学的特性を与えるものと予測される、N連結グリコシル化部位を有する。以下の構築物は、例えば、tPAリーダー配列およびFc配列と共に発現され得る
【0203】
【数15】


実施例8:CerberusおよびCocoのシステイン改変体
いくつかのタンパク質では、奇数のシステイン残基が、タンパク質の凝集を引き起こし得るか、または、他の方法でタンパク質の生成を妨害し得る、遊離スルフヒドリル基を生じる。ネイティブなCocoおよびネイティブなCerberusは共に、奇数のシステイン残基を有する。Cerberusの発現を改善するために、より少ないシステイン残基を持つ改変体、および、1以上のシステインの近くに変更を持つ改変体を作製した。配列番号2に対し、以下の改変を作製した:
C176G;
C206G;
C223G;
N222D。
【0204】
これらのタンパク質は各々が、発現可能でありかつGDF11への結合を保持しており、これらのタンパク質の生化学的活性がインタクトなままであったことを示している。Cocoについても(配列番号5に対して)、同様の特定の改変を作製し得る:
C115G;
C145G;
C162G。
【0205】
したがって、本開示は、1以上のシステイン残基が欠失もしくは置換された、CerberusおよびCoco改変体を提供する。置換される場合には、置換アミノ酸は、他の19の必須アミノ酸のいずれかであり得るが、G、A、SおよびTが好ましい。
【0206】

等価物
当業者は、本明細書中に記載される本発明の特定の実施形態に対する多くの等価物を認識するか、または、慣用的に過ぎない実験を用いて確認し得る。このような等価物は、添付の特許請求の範囲によって包含されることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトCerberus(配列番号2)のアミノ酸162〜241の配列に対して少なくとも80%同一なアミノ酸配列を含むミオスタチンアンタゴニストタンパク質であって、該タンパク質は、少なくとも24時間の期間にわたって、実質的に血清に対して安定である、タンパク質。
【請求項2】
ヒトCerberusのアミノ酸156〜241の配列に対して少なくとも90%同一なアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のミオスタチンアンタゴニストタンパク質。
【請求項3】
ヒトCerberusのアミノ酸156〜267の配列に対して少なくとも90%同一なアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のミオスタチンアンタゴニストタンパク質。
【請求項4】
ヒトCerberusのアミノ酸141〜241の配列に対して少なくとも90%同一なアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のミオスタチンアンタゴニストタンパク質。
【請求項5】
ヒトCerberusのアミノ酸141〜267の配列に対して少なくとも90%同一なアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のミオスタチンアンタゴニストタンパク質。
【請求項6】
ヒトCerberusのアミノ酸119〜241の配列に対して少なくとも90%同一なアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のミオスタチンアンタゴニストタンパク質。
【請求項7】
ヒトCerberusのアミノ酸41〜241の配列に対して少なくとも90%同一なアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のミオスタチンアンタゴニストタンパク質。
【請求項8】
ヒトCerberusのアミノ酸41〜267の配列に対して少なくとも90%同一なアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のミオスタチンアンタゴニストタンパク質。
【請求項9】
ヒトCerberusのアミノ酸18〜241の配列に対して少なくとも90%同一なアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のミオスタチンアンタゴニストタンパク質。
【請求項10】
ヒトCerberusのアミノ酸18〜267の配列に対して少なくとも90%同一なアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のミオスタチンアンタゴニストタンパク質。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載のミオスタチンアンタゴニストタンパク質であって、該タンパク質が、37℃において24時間のヒト血清への曝露後に、少なくとも50%のミオスタチンアンタゴニスト活性を保持する、タンパク質。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれかに記載のミオスタチンアンタゴニストタンパク質であって、ミオスタチンアンタゴニスト活性がA204細胞ベースのアッセイで評価される、タンパク質。
【請求項13】
請求項1〜10のいずれかに記載のミオスタチンアンタゴニストタンパク質であって、該タンパク質が、ヒト血清における切断が低減もしくは排除されるような、配列番号2のアミノ酸配列に関する改変を含む、タンパク質。
【請求項14】
請求項1〜10のいずれかに記載のミオスタチンアンタゴニストタンパク質であって、該タンパク質が、ヒトCerberusの配列SHCLPAK内における切断を低減もしくは排除する、配列番号2のアミノ酸配列に関する改変を含む、タンパク質。
【請求項15】
請求項6〜10のいずれかに記載のミオスタチンアンタゴニストタンパク質であって、該タンパク質が、ヒトCerberusの配列MFRKTP内における切断を低減もしくは排除する、配列番号2のアミノ酸配列に関する改変を含む、タンパク質。
【請求項16】
請求項9〜10のいずれかに記載のミオスタチンアンタゴニストタンパク質であって、該タンパク質が、ヒトCerberusの配列NQRELP内における切断を低減もしくは排除する、配列番号2のアミノ酸配列に関する改変を含む、タンパク質。
【請求項17】
ヒトCoco(配列番号5)のアミノ酸101〜185の配列に対して少なくとも90%同一なアミノ酸配列を含むミオスタチンアンタゴニストタンパク質であって、該タンパク質は、少なくとも24時間の期間にわたって、実質的に血清に対して安定である、タンパク質。
【請求項18】
ヒトCocoのアミノ酸101〜189の配列に対して少なくとも90%同一なアミノ酸配列を含む、請求項17に記載のミオスタチンアンタゴニストタンパク質。
【請求項19】
ヒトCocoのアミノ酸95〜185の配列に対して少なくとも90%同一なアミノ酸配列を含む、請求項17に記載のミオスタチンアンタゴニストタンパク質。
【請求項20】
ヒトCocoのアミノ酸95〜189の配列に対して少なくとも90%同一なアミノ酸配列を含む、請求項17に記載のミオスタチンアンタゴニストタンパク質。
【請求項21】
ヒトCocoのアミノ酸22〜185の配列に対して少なくとも90%同一なアミノ酸配列を含む、請求項17に記載のミオスタチンアンタゴニストタンパク質。
【請求項22】
ヒトCocoのアミノ酸22〜189の配列に対して少なくとも90%同一なアミノ酸配列を含む、請求項17に記載のミオスタチンアンタゴニストタンパク質。
【請求項23】
請求項17〜22のいずれかに記載のミオスタチンアンタゴニストタンパク質であって、該タンパク質が、37℃において24時間のヒト血清への曝露後に、少なくとも50%のミオスタチンアンタゴニスト活性を保持する、タンパク質。
【請求項24】
請求項17〜22のいずれかに記載のミオスタチンアンタゴニストタンパク質であって、ミオスタチンアンタゴニスト活性がA204細胞ベースのアッセイで評価される、タンパク質。
【請求項25】
請求項17〜22のいずれかに記載のミオスタチンアンタゴニストタンパク質であって、該タンパク質が、ヒト血清における切断が低減もしくは排除されるような、配列番号5のアミノ酸配列に関する改変を含む、タンパク質。
【請求項26】
請求項17〜22のいずれかに記載のミオスタチンアンタゴニストタンパク質であって、該タンパク質が、以下のヒトCocoの配列:PARKRWおよびSRRRVKの一方もしくは両方における切断を低減もしくは排除する、配列番号5のアミノ酸配列に関する改変を含む、タンパク質。
【請求項27】
請求項1〜10および17〜22のいずれかに記載のミオスタチンアンタゴニストタンパク質であって、該ミオスタチンアンタゴニストタンパク質が、インビボ安定性、インビボ半減期、取り込み/投与, 組織局在化もしくは分布、タンパク質複合体の形成および/または精製のうちの1以上を増強する1つのさらなるポリペプチド部分を含む融合タンパク質である、タンパク質。
【請求項28】
前記融合タンパク質が、免疫グロブリン重鎖定常ドメインの一部を含む、請求項27に記載のミオスタチンアンタゴニストタンパク質。
【請求項29】
前記融合タンパク質が、免疫グロブリンのFcドメインを含む、請求項27に記載のミオスタチンアンタゴニストタンパク質。
【請求項30】
請求項27に記載のミオスタチンアンタゴニストタンパク質であって、前記の該ミオスタチンアンタゴニストタンパク質が、グリコシル化アミノ酸、PEG化アミノ酸、ファルネシル化アミノ酸、アセチル化アミノ酸、ビオチン化アミノ酸、脂質部分に結合されたアミノ酸および有機誘導体化因子に結合されたアミノ酸から選択される1以上の改変アミノ酸残基を含む、タンパク質。
【請求項31】
請求項1〜10および17〜22のいずれかに記載のミオスタチンアンタゴニストタンパク質であって、該ミオスタチンアンタゴニストタンパク質が、第二のミオスタチンインヒビタードメインをさらに含む融合タンパク質であり、ミオスタチンに選択的に結合し、そして、ALK7もしくはALK4レセプターの結合と競合するポリペプチド親和性試薬である、タンパク質。
【請求項32】
前記親和性試薬が抗体因子である、請求項31に記載のミオスタチンアンタゴニストタンパク質。
【請求項33】
前記抗体因子が、組換え抗体;モノクローナル抗体;Vドメイン;Vドメイン;scFv;Fabフラグメント;Fab’フラグメント;F(ab’);Fv;またはジスルフィド結合したFvである、請求項32に記載のミオスタチンアンタゴニストタンパク質。
【請求項34】
前記抗体因子が、完全ヒト抗体またはヒト化キメラ抗体またはこれらの抗原結合フラグメントである、請求項32に記載のミオスタチンアンタゴニストタンパク質。
【請求項35】
前記親和性試薬が、ミオスタチンに選択的に結合し、そして、ALK7もしくはALK4レセプターの結合と競合するペプチドもしくは骨組ペプチドである、請求項31に記載のミオスタチンアンタゴニストタンパク質。
【請求項36】
前記親和性試薬が、ALK7もしくはALK4のミオスタチン結合ドメインである、請求項31に記載のミオスタチンアンタゴニストタンパク質。
【請求項37】
前記親和性試薬が、ミオスタチンに選択的に結合し、そして、ALK7もしくはALK4レセプターの結合と競合する小さな有機分子である、請求項31に記載のミオスタチンアンタゴニストタンパク質。
【請求項38】
請求項1〜37のいずれかに記載のミオスタチンアンタゴニストタンパク質を含む薬学的調製物。
【請求項39】
患者においてミオスタチンおよび/またはGDF11を阻害するための方法であって、該方法は、請求項1〜37のいずれかに記載のポリペプチドの有効量を該患者に投与する工程を包含する、方法。
【請求項40】
患者におけるミオスタチンおよび/またはGDF11の阻害が、ミオスタチンおよび/またはGDF11によって調節される遺伝子の発現に検出可能な変化を引き起こす、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
患者において筋重量を増加させるための方法であって、該方法は、請求項1〜37のいずれかに記載のポリペプチドの有効量を該患者に投与する工程を包含する、方法。
【請求項42】
CerberusもしくはCocoポリペプチドまたはこれらの改変体のミオスタチン結合ドメインを含むミオスタチンアンタゴニストタンパク質を含む、発熱物質を実質的に含まない薬学的調製物であって、該ミオスタチンアンタゴニストタンパク質は、以下:
a.nodal、GDF11および/またはミオスタチンのうちの1以上に結合し、そして、そのシグナル伝達活性を阻害し;そして
b.BMP4には実質的に結合しない、
薬学的調製物。
【請求項43】
前記ミオスタチンアンタゴニストタンパク質が筋組織の成長を促進する、請求項42に記載の薬学的調製物。
【請求項44】
前記ミオスタチン結合ドメインが、配列番号2のアミノ酸162〜241および配列番号5のアミノ酸101〜189からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一なアミノ酸配列を有する、請求項42に記載の調製物。
【請求項45】
前記ミオスタチン結合ドメインが、配列番号2のアミノ酸162〜241および配列番号5のアミノ酸101〜189、またはこれらの任意の天然に存在するヒト対立遺伝子改変体からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して同一なアミノ酸配列を有する、請求項42に記載の調製物。
【請求項46】
前記ミオスタチンアンタゴニストタンパク質が、全長の成熟なヒトCerberusタンパク質を含まない、請求項42に記載の調製物。
【請求項47】
前記ミオスタチンアンタゴニストタンパク質が、インビボ安定性、インビボ半減期、取り込み/投与、組織局在化もしくは分布、タンパク質複合体の形成および/または精製のうちの1以上を増強する1つのさらなるポリペプチド部分を含む融合タンパク質である、請求項42に記載の調製物。
【請求項48】
前記融合タンパク質が免疫グロブリン重鎖定常ドメインの一部を含む、請求項47に記載の調製物。
【請求項49】
前記融合タンパク質が免疫グロブリンのFcドメインを含む、請求項47に記載の調製物。
【請求項50】
前記の該ミオスタチンアンタゴニストタンパク質が、グリコシル化アミノ酸、PEG化アミノ酸、ファルネシル化アミノ酸、アセチル化アミノ酸、ビオチン化アミノ酸、脂質部分に結合されたアミノ酸および有機誘導体化因子に結合されたアミノ酸から選択される1以上の改変アミノ酸残基を含む、請求項47に記載の調製物。
【請求項51】
前記ミオスタチンアンタゴニストタンパク質が、第二のミオスタチンインヒビタードメインをさらに含む融合タンパク質であり、ミオスタチンに選択的に結合し、そして、ALK7もしくはALK4レセプターの結合と競合するポリペプチド親和性試薬である、請求項42に記載の調製物。
【請求項52】
前記親和性試薬が抗体因子である、請求項51に記載の調製物。
【請求項53】
前記抗体因子が、組換え抗体;モノクローナル抗体;Vドメイン;Vドメイン;scFv;Fabフラグメント;Fab’フラグメント;F(ab’);Fv;またはジスルフィド結合したFvである、請求項52に記載の調製物。
【請求項54】
前記抗体因子が、完全ヒト抗体またはヒト化キメラ抗体またはこれらの抗原結合フラグメントである、請求項52に記載の調製物。
【請求項55】
前記親和性試薬が、ミオスタチンに選択的に結合し、そして、ALK7もしくはALK4レセプターの結合と競合するペプチドもしくは骨組ペプチドである、請求項51に記載の調製物。
【請求項56】
前記親和性試薬が、ALK7もしくはALK4のミオスタチン結合ドメインである、請求項51に記載の調製物。
【請求項57】
前記親和性試薬が、ミオスタチンに選択的に結合し、そして、ALK7もしくはALK4レセプターの結合と競合する小さな有機分子である、請求項51に記載の調製物。
【請求項58】
患者においてミオスタチンおよび/またはGDF11を阻害するための方法であって、該方法は、CerberusもしくはCocoのポリペプチドまたはこれらの改変体のミオスタチン結合ドメインを含むミオスタチンアンタゴニストタンパク質の有効量を該患者に投与する工程を包含し、ミオスタチンアンタゴニストタンパク質は、nodal、GDF11および/またはミオスタチンの1以上に結合し、そのシグナル伝達活性を阻害する、方法。
【請求項59】
前記ミオスタチン結合ドメインが、配列番号2のアミノ酸162〜241および配列番号5のアミノ酸101〜189からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一なアミノ酸配列を有する、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記ミオスタチン結合ドメインが、配列番号2のアミノ酸162〜241および配列番号5のアミノ酸101〜189、またはこれらの任意の天然に存在するヒト対立遺伝子改変体からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して同一なアミノ酸配列を有する、請求項58に記載の方法。
【請求項61】
患者におけるミオスタチンおよび/またはGDF11の阻害が、ミオスタチンおよび/またはGDF11によって調節される遺伝子の発現に検出可能な変化を引き起こす、請求項58に記載の方法。
【請求項62】
前記ミオスタチンアンタゴニストが実質的にBMP4に結合しない、請求項58に記載の方法。
【請求項63】
骨格筋重量の増加を必要とする患者において骨格筋重量を増加させるための方法であって、該方法は、CerberusもしくはCocoのポリペプチドまたはこれらの改変体のミオスタチン結合ドメインを含むミオスタチンアンタゴニストタンパク質の有効量を該患者に投与する工程を包含し、ミオスタチンアンタゴニストタンパク質は、nodal、GDF11および/またはミオスタチンの1以上に結合し、そのシグナル伝達活性を阻害する、方法。
【請求項64】
前記ミオスタチン結合ドメインが、配列番号2のアミノ酸162〜241および配列番号5のアミノ酸101〜189からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一なアミノ酸配列を有する、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記ミオスタチン結合ドメインが、配列番号2のアミノ酸162〜241および配列番号5のアミノ酸101〜189、またはこれらの任意の天然に存在するヒト対立遺伝子改変体からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して同一なアミノ酸配列を有する、請求項63に記載の方法。
【請求項66】
前記ミオスタチンアンタゴニストが実質的にBMP4に結合しない、請求項63に記載の方法。
【請求項67】
哺乳動物における筋組織の成長を促進するための薬物の調製のための、CerberusもしくはCocoのポリペプチドまたはこれらの改変体のミオスタチン結合ドメインを含むミオスタチンアンタゴニストタンパク質を含むミオスタチンアンタゴニストタンパク質の使用であって、該ミオスタチンアンタゴニストタンパク質は、nodal、GDF11および/またはミオスタチンの1以上に結合し、そのシグナル伝達活性を阻害する、使用。
【請求項68】
ヒトCerberus(配列番号2)のアミノ酸162〜241の配列に対して少なくとも90%同一なアミノ酸配列を含むミオスタチンアンタゴニストタンパク質であって、前記ポリペプチド内の少なくとも1つのシステインが、配列番号2に対して欠失または置換されている、タンパク質。
【請求項69】
ヒトCoco(配列番号5)のアミノ酸101〜185の配列に対して少なくとも90%同一なアミノ酸配列を含むミオスタチンアンタゴニストタンパク質であって、前記ポリペプチド内の少なくとも1つのシステインが、配列番号5に対して欠失または置換されている、タンパク質。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2010−512326(P2010−512326A)
【公表日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−540329(P2009−540329)
【出願日】平成19年12月10日(2007.12.10)
【国際出願番号】PCT/US2007/025180
【国際公開番号】WO2008/073351
【国際公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(509125475)アクセルロン ファーマ, インコーポレイテッド (21)
【Fターム(参考)】