説明

D−N−カルバモイル−α−アミノ酸の製造法

【課題】D−N−カルバモイル−α−アミノ酸の効率よい製造方法の提供。
【解決手段】バチルス属、アグロバクテリウム属またはシュードモナス属の特定の微生物に由来するヒダントイナーゼに関与する遺伝子を含むDNA断片と、ベクターDNAおよび形質転換した微生物。該組換体DNAとで形質転換した微生物の生産するヒダントイナーゼを用いる、5−置換ヒダントインよりD−N−カルバモイル−α−アミノ酸の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、D−N−カルバモイル−α−アミノ酸の製造法、特に、5−置換ヒダントインを不斉的に開裂加水分解して対応するD−N−カルバモイル−α−アミノ酸に変換する酵素(以下、ヒダントイナーゼという)に関与する遺伝子を有する新規形質転換体を使用したD−N−カルバモイル−α−アミノ酸の製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
光学活性なD−N−カルバモイル−α−アミノ酸は、対応する光学活性なD−α−アミノ酸に変換することができ、光学活性なD−α−アミノ酸は医薬中間体として重要な化合物である。特に、半合成ペニシリン類や半合成セファロスポリン類の製造中間体としての、D−フェニルグリシン、D−パラヒドロキシフェニルグリシンなどが工業的に有用な化合物として挙げられる。
【0003】
D−N−カルバモイル−α−アミノ酸の製造法としては、5−置換ヒダントインを不斉的に開裂加水分解して対応するD−N−カルバモイル−α−アミノ酸に、微生物の酵素作用を利用して変換する方法が知られており、特許文献1−4に記載されている。
【0004】
また、5−置換ヒダントインを対応するD−N−カルバモイル−α−アミノ酸に変換する酵素であるヒダントイナーゼに関与する遺伝子を、高温菌より取得して、これを中温菌に導入することにより、ヒダントイナーゼ活性を有する組換え体微生物を製造する方法については、特許文献5に記載されている。また、特許文献6にはアグロバクテリウムに属する菌からヒダントイナーゼ遺伝子断片を分離し、エシェリヒア・コリまたはアグロバクテリウム属細菌に導入して活性を発現させている。
【0005】
上記の、微生物の酵素作用を利用する方法は、酵素の供給源として知られる微生物ではいずれも酵素生産量が十分でなく、さらに、培養培地が高価である等の欠点を有していた。
【0006】
また、特許文献5に示される組換え体微生物については、ヒダントイナーゼ活性を有する胞子形成高温菌と比較して数倍程度しか酵素活性が向上しておらず酵素の生産量は十分とはいいがたい。
【0007】
また、上記組換え体微生物を用いて、5−置換ヒダントインを不斉的に開裂加水分解して対応するD−N−カルバモイル−α−アミノ酸を生成蓄積させた例は全く示されていない。
【0008】
【特許文献1】特開昭53−91189号公報
【特許文献2】特開昭53−44690号公報
【特許文献3】特開昭53−69884号公報
【特許文献4】特開昭53−133688号公報
【特許文献5】特開昭62−87089号公報
【特許文献6】国際公開第94/00577号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような問題を解決すべく、酵素の生産性が極めて高い微生物を創製するとともに、このようにして得られた酵素源を使用して、D−N−カルバモイル−α−アミノ酸を効率よく生産することを目的とする。
【0010】
組換えDNA手法を用いて、ヒダントイナーゼを生産する微生物を取得する方法については、特許文献5および6に示されているが、ヒダントイナーゼ遺伝子の供給源となる微生物は、本発明でヒダントイナーゼ遺伝子を取得した微生物とは全く異なるものである。さらにヒダントイナーゼ遺伝子の塩基配列や、アミノ酸配列も、本発明のものとはかなり相違がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、下記を提供する:
1. バチルス(Bacillus) sp.KNK245(FERM BP−4863)、アグロバクテリウム(Agrobacterium) sp.KNK712(FERM BP−1900)またはシュードモナス(Pseudomonas) sp.KNK003A(FERM BP−3181)に由来するヒダントイナーゼに関与する遺伝子を含むDNA断片と、ベクターDNAとの組換え体DNAを用いエシェリヒア属、シュードモナス属、フラボバクテリウム属、バチルス属、セラチア属、アグロバクテリウム属、コリネバクテリウム属またはブレビバクテリウム属に属する微生物のような宿主菌体を形質転換して得られる形質転換体の生産する当該酵素を、水性媒体中で5−置換ヒダントインに作用させるD−N−カルバモイル−α−アミノ酸の製造法。
2.宿主微生物が、エシェリヒア属、シュードモナス属、フラボバクテリウム属、バチルス属、セラチア属、アグロバクテリウム属、コリネバクテリウム属またはブレビバクテリウム属に属する微生物から選ばれる、1記載の形質転換微生物。
3.形質転換微生物がエシェリヒア・コリ(Escherichia coli)HB101 pTH102、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)HB101 pTH103、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)HB101 pTH104(FERM BP−4864)、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)HB101 pAH1043(FERM BP−4865)またはエシェリヒア・コリ(Escherichia coli)HB101 pPHD301(FERM BP−4866)である、2記載の形質転換微生物。
4.1〜3いずれか1項記載の形質転換微生物を使用することを特徴とする、5−置換ヒダントインを不斉的に加水分解して対応するD−N−カルバモイル−α−アミノ酸に変換する酵素の製造法。
5.4記載の製造法で得られた酵素を使用することを特徴とする5−置換ヒダントインからD−N−カルバモイル−α−アミノ酸の製造法。
6.5−置換ヒダントインが一般式(1):
【化1】

(式中、Rはフェニル基、水酸基で置換されたフェニル基、アルキル基、置換アルキル基、アラルキル基またはチエニル基を示す。)で表わされる化合物である5記載の製造法。
7.バチルス sp.KNK245(FERM BP−4863)由来のヒダントイナーゼをコードする遺伝子を含むDNA断片と、プラスミド(pUCNT)との組換えにより得られ、図2〜4のいずれかに示す制限酵素切断地図を有する組換えプラスミド。
8.組換えプラスミドが、pTH102、pTH103またはpTH104である7記載の組換プラスミド。
9.アグロバクテリウム sp.KNK712(FERM BP−1900)由来のヒダントイナーゼをコードする遺伝子を含むDNA断面とプラスミドpUC18との組換えによって得られ、図1の制限酵素地図を有する組換えプラスミド。
10.組換えプラスミドがpAH1043である9記載の組換えプラスミド。
11.シュードモナス sp.KNK003A(FERM BP−3181)由来のヒダントイナーゼをコードする遺伝子を含むDNA断片と、プラスミドpUC18の組換えによって得られ、図5の制限酵素地図を有する組換えプラスミド。
12.組換えプラスミドがpPHD301である11記載の組換えプラスミド。
13.配列表配列番号1のアミノ酸配列のアミノ酸番号1〜457のアミノ酸配列の全部または一部をコードする5−置換ヒダントインを不斉的に開裂加水分解して、対応するD−N−カルバモイル−α−アミノ酸に変換する酵素活性を示す蛋白質の遺伝子。
14.配列表配列番号1のアミノ酸配列のアミノ酸番号1〜457のアミノ酸配列の全部または一部を含み、5−置換ヒダントインを不斉的に加水分解して対応するD−N−カルバモイル−α−アミノ酸に変換する活性を有する酵素蛋白質。
15.配列表配列番号3のアミノ酸配列のアミノ酸番号1〜485のアミノ酸配列の全部または一部をコードする5−置換ヒダントインを不斉的に開裂加水分解して、対応するD−N−カルバモイル−α−アミノ酸に変換する酵素活性を示す蛋白質の遺伝子。
16.配列表配列番号1の塩基番号1〜2518の塩基配列の全部または一部もしくはこれと等価の塩基配列を持ち、5−置換ヒダントインを不斉的に開裂加水分解して、対応するD−N−カルバモイル−α−アミノ酸に変換する酵素活性を示す蛋白質の遺伝子を含むDNA断片。
17.配列表配列番号3の塩基番号1〜1569の塩基配列の全部または一部もしくはこれと等価の塩基配列を持ち、5−置換ヒダントインを不斉的に開裂加水分解して、対応するD−N−カルバモイル−α−アミノ酸に変換する酵素活性を示す蛋白質の遺伝子を含むDNA断片。
18.配列表配列番号3のアミノ酸配列のアミノ酸番号1〜485のアミノ酸配列の全部または一部を含み、5−置換ヒダントインを不斉的に加水分解して対応するD−N−カルバモイル−α−アミノ酸に変換する活性を有する酵素蛋白質。
【発明の効果】
【0012】
本発明により得られるようなヒダントイナーゼの生産性が極めて高い形質転換体はこれまで知られておらず、この形質転換体の酵素を作用させることにより非常に効率良く経済的にD−N−カルバモイル−α−アミノ酸を製造することが可能になった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明に用いる遺伝子を含むDNA断片は、バチルス sp.KNK245 アグロバクテリウム sp.KNK712またはシュードモナス sp.KNK003Aから得ることができる。アグロバクテリウム sp.KNK712およびシュードモナス sp.KNK003Aは、各々、FERM BP−1900およびFERM BP−3181の受託番号の下、本出願人により既に通産省工業技術院生命工学工業技術研究所に寄託され、また、WO92/10579にその詳細が記載されている公知株である。また、バチルス sp.KNK245は、この度、本発明者らにより、新たに見いだされた菌株で、1994年11月12日より、FERM BP−4863の受託番号の下、同研究所に寄託されている。
【0014】
つぎに、バチルス sp.KNK245の菌学的性質を示す。
【表1−1】

【表1−2】

かかる菌株からヒダントイナーゼ遺伝子を得るには、通常以下の様に行う。
【0015】
まず、微生物の菌体より染色体DNAを抽出し、つぎに、染色体DNAを適当な制限酵素、例えば、Sau3AI等で部分加水分解した後に、ベクターDNAと結合させて、種々の染色体DNAの断片をもつ組換え体DNAを遺伝子ライブラリーとして得る(特開昭58−126789号および米国特許第4,237,224号明細書参照)。
【0016】
そして、この遺伝子ライブラリーから目的とする遺伝子を含む組換え菌を選択するが、これは発現した蛋白を酵素活性等を指標として検出したり、蛋白のN末端配列を解析してそれに対応するDNAプローブを合成してコロニーハイブリダイゼーション等で遺伝子の存在を検出すること等によって行うことができる。また、既知のヒダントイナーゼの塩基配列をもとに適当な部分の配列を合成したDNAプライマーを用い、コロニーハイブリダイゼーションやポリメラーゼ・チェイン・リアクション(PCR)法によって遺伝子を取得することもできる。遺伝子が取得できると、その塩基配列を解析する。また、ヒダントイナーゼを生産する微生物および、この酵素遺伝子を導入した組換え微生物を培養して、生産した酵素を精製し、その蛋白の分子量を決定するとともに、アミノ末端付近のアミノ酸配列を気相プロテインシークエンサーなどで決定する。
【0017】
ついで、これらのDNA塩基配列と蛋白のアミノ末端配列とを比較し、ヒダントイナーゼ蛋白をコードした塩基配列部分の蛋白への翻訳開始部位を決定し、この部位より翻訳終止コドンまでの遺伝子部分に酵素蛋白がコードされていることを蛋白の分子量との関係も考慮して確かめ、目的とする遺伝子であることを確認する(Molecular Cloning, A LaboratoryManual, 2nd Ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press 第4章、第13章)。これにより、アグロバクテリウム sp.KNK712およびシュードモナス sp.KNK003Aより配列表の配列番号1および3のDNA断片を得た。また、バチルス sp. KNK245からもヒダントイナーゼをコードする遺伝子を含むDNA断片を得た。よく知られているごとく、こうして得られた当該酵素をコードした遺伝子および/またはこれを含むDNA断片は、通常、1つのアミノ酸に複数の塩基コドンが対応していることから、当該遺伝子および/またはDNA断片に対応するアミノ酸配列をコードした他の塩基配列を持つDNA断片と等価である。
【0018】
本発明に用いるベクターとしては、エシェリヒア属、シュードモナス属、フラボバクテリウム属、バチルス属、セラチア属、コリネバクテリウム属またはブレビバクテリウム属に属する細菌の細胞内で自律複製できる微生物由来のプラスミド、ファージまたはその誘導体が使用出来る。
【0019】
例えば、「組換えDNA実験指針 −解説・Q&A−」(組換えDNA実験指針研究会編、科学技術庁ライフサイエンス課監修、第一法規出版(株)、平成3年9月24日改訂)25〜27頁および36〜38頁に記載の宿主−ベクター系を用いることが出来る。また、強力な構造プロモーターをもつように改質したベクターを使用して、ベクター上の適切な位置に翻訳開始部位を連結した組換えDNAを使用することにより酵素の生産量を上昇させることができる。これらの断片の両端を制限酵素で切断して、適当なベクターとの組換え体DNAを作製して、エシェリヒア属、シュードモナス属、フラボバクテリウム属、バチルス属、セラチア属、アグロバクテリウム属、コリネバクテリウム属またはブレビバクテリウム属に属する微生物を直接形質転換してヒダントイナーゼを生産する組換え体微生物を取得することができる。
【0020】
上記の属の菌種を直接形質転換しないで、例えば、エシェリヒア・コリのような他の微生物の宿主ベクター系にて目的遺伝子を一旦クローン化し、しかる後に適当なベクターとの組換え体DNAを作製してから、上記の属の菌種を形質転換しても、同様にヒダントイナーゼを生産する組換え体微生物を取得することができる。
【0021】
組換え体製造のためには、S.N.Cohen et al.米国特許第4,237,224号明細書、遺伝子操作実験法[高木康敬編著、講談社サイエンティフィック(1980)、Method in Enzymology,68,Recombinant DNA[Ray Mv編、Academic Press(1979)]、特開昭58−126789号明細書などの文献の記載が広く応用できる。
【0022】
クローンした目的遺伝子の不要なDNAを取り除き、強力なプロモーターを持つように改質したベクターを使用して、ベクター上の適切な位置に翻訳開始部位を連結した組換えDNAを使用して上記の宿主菌を形質転換し、得られる形質転換株を用いることにより、目的酵素の生産量を上昇させることができる。
【0023】
形質転換株は、通常の栄養培地に培養することにより、導入した組換え体DNAの形質を発現させることができる。組換え体DNAに遺伝子DNAまたはベクターDNA由来の性質が付与されている場合は、その性質にあわせて培地に薬剤を補ってもよい。
【0024】
このようにして得られた形質転換株を酵素源として得るには、通常の培地を用いて培養を行なえばよいが、必要に応じて、ヒダントイン化合物、ウラシル、イソプロピル−1−チオ−β−D−ガラクトサイド(IPTG)などの添加、温度上昇など、酵素誘導のための処理を行なうこともできる。形質転換株の培養のために用いられる培地は、通常、炭素源、窒素源および無機イオンを含有する普通の培地であってよい。これにビタミン、アミノ酸などの有機微量栄養素を添加すると、好ましい結果が得られる場合が多い。炭素源としては、グルコースやシュークロースのような炭水化物、酢酸のような有機酸、アルコール類などが適宜使用される。窒素源としては、アンモニアガス、アンモニア水、アンモニウム塩などが用いられる。無機イオンとしては、リン酸イオン、マグネシウムイオン、カリウムイオン、鉄イオン、マンガンイオン、コバルトイオン、ニッケルイオン、銅イオン、アルミニウムイオン、モリブデンイオンなどが使用されてよい。
【0025】
培養は、好気的条件下にpH4〜8、温度25〜60℃の適当な範囲に制御しつつ、1〜10日間培養を行なえば、望ましい結果が得られる。
【0026】
形質転換株の産生する酵素を作用する態様としては、当該転換株の培養液、菌体、菌体処理物、菌体から抽出した酵素、固定化菌体などを挙げることができる。
【0027】
菌体としては、培養終了後の培養液そのまま、培養液より分離された菌、洗浄された菌体などいずれも使用可能である。菌体処理物としては凍結乾燥菌体、アセトン乾燥菌体、トルエンや界面活性剤と接触させた菌体、リゾチームで処理した菌体、超音波処理した菌体、機械的に摩砕した菌体などの他、これら菌体の処理物から得られたヒダントイナーゼ活性を有する酵素抽出液、さらには、これらの菌体の固定化物、菌体処理物の不溶化物、酵素蛋白の固定化用担体(例えば、陰イオン交換樹脂)への固定化物などが使用出来る。なお、固定化法については、例えば、特開昭63−185382号明細書が参考になる。
【0028】
固定化に使用される支持体としては、デュオライト(Duolite)A568またはDS17186(ローム・アンド・ハース社:登録商標)などのフェノールホルムアルデヒド陰イオン交換樹脂、アンバーライト(Amberlite)IRA935、IRA945、IRA901(ローム・アンド・ハース社:登録商標)、レワタイト(Lewatit)OC1037(バイエル社:登録商標)、ダイアイオン(Diaion)EX−05(三菱化成工業:登録商標)などのポリスチレン樹脂のような各種アミンやアンモニウム塩あるいはジエタノールアミン型の官能基を持つ各種の陰イオン交換樹脂が適している。その他DEAE−セルロースなどの支持体も使用することができる。
【0029】
さらに、酵素の吸着をより強固かつ安定にするため、通常、架橋剤を用いるが、好適な例として、グルタルアルデヒトを挙げることができる。使用する酵素は、精製酵素だけでなく、部分精製酵素、菌体破砕液、無細胞抽出液など種々の精製度のものが使用できる。固定化酵素の調製は支持体に酵素を吸着後、架橋処理をする等の通常の調製法が使用できる。
【0030】
本発明における酵素反応の基質となる、5−置換ヒダントインは特に限定するものではなく、通常この種の反応に使用されるもの、いずれでもよい。例えば、一般式(1):
【化2】

で表わされる化合物が挙げられる。
【0031】
一般式(1)の化合物における置換基Rは広範囲にわたることができるが、特に、医薬中間体のように産業上有用な化合物を与えるためには、Rがフェニル基、水酸基で置換されたフェニル基、アルキル基、置換アルキル基、アラルキル基、またはチエニル基であるのが好ましい。水酸基で置換されたフェニル基の場合、水酸基は1つもしくはそれ以上であって、o−、m−、p−いづれの位置に置換していてもよいが、p−ヒドロキシフェニル基が代表的である。アルキル基は炭素数1〜4であって、対応するD−N−カルバモイル−α−アミノ酸がD−N−カルバモイル−アラニン、D−N−カルバモイル−バリン、D−N−カルバモイル−ロイシン、D−N−カルバモイル−イソロイシンなどとなる基である。置換アルキル基は炭素数1〜4のアルキル基が水酸基、アルキルチオ基、カルボキシル基、アミノ基、フェニル基、水酸基で置換されたフェニル基、アミド基などで置換されたものであって、対応するD−N−カルバモイル−アミノ酸がD−N−カルバモイル−セリン、D−N−カルバモイル−スレオニン、D−N−カルバモイル−メチオニン、D−N−カルバモイル−システイン、D−N−カルバモイル−アスパラギン、D−N−カルバモイル−グルタミン、D−N−カルバモイル−チロシン、D−N−カルバモイル−トリプトファン、D−N−カルバモイル−アスパラギン酸、D−N−カルバモイル−グルタミン酸、D−N−カルバモイル−ヒスチジン、D−N−カルバモイル−リジン、D−N−カルバモイル−アルギニン、D−N−カルバモイル−シトルリンなどとなる基である。アラルキル基は炭素数7〜8のたとえばベンジル、フェネチル基であって、対応するD−N−カルバモイル−α−アミノ酸がD−N−カルバモイル−フェニルアラニンなどとなる基である。
【0032】
水性媒体としては、水、緩衝液、エタノールのような有機溶媒を含むものが使用される。さらに必要に応じて、微生物の成育に必要な栄養素、抗酸化剤、界面活性剤、補酵素、ヒドロキシルアミン、金属などを水性媒体に添加することもできる。
【0033】
上記微生物の菌体を水溶性媒体中で培養しながら、菌体と5−置換ヒダントインを接触せしめて作用させる場合には、5−置換ヒダントインを含み、かつ微生物の生育に必要な炭素源、窒素源、無機イオンなどの栄養素を含む水性媒体が用いられる。さらにビタミン、アミノ酸などの有機・微量栄養素を添加すると、好ましい結果が得られる場合が多い。炭素源としては、グルコース、シュークロースのような炭水化物、酢酸のような有機酸、アルコール類などが適宜に使用される。窒素源としては、アンモニアガス、アンモニア水、アンモニウム塩などが用いられる。無機イオンとしては、リン酸イオン、マグネシウムイオン、カリウムイオン、鉄イオン、マンガンイオン、コバルトイオン、ニッケルイオン、銅イオン、アルミニウムイオン、モリブデンイオンなどが使用されてよい。
【0034】
培養は好気的条件下に、pH4〜8、温度25〜60℃の適当な範囲に制御しつつ行う。1〜10日間程度培養を行なえば、5−置換ヒダントインはD−N−カルバモイル−α−アミノ酸のみに効率よく交換される。
【0035】
一方、上記微生物の培養液をそのまま、培養菌体、菌体処理物、酵素抽出液、菌体の固定化物、菌体の不溶化物あるいは酵素蛋白質の固定化物と、5−置換ヒダントインを溶解または懸濁した水性媒体中で反応を行う場合は、10〜80℃の適当な温度に調節し、pHを4〜9.5に保ちつつ暫時静置または撹拌すればよい。かくして、5〜100時間程度経過すれば、ヒダントイナーゼによる基質がD−特異的加水分解反応と、基質の化学的なラセミ化が同時に進行して、D型、DL型あるいは、L型の5−置換ヒダントインはすべて対応するD−N−カルバモイル−α−アミノ酸に変換され、水性媒体中に多量に蓄積される。また、5−置換ヒダントインは反応の進行に伴って分割して添加してもよい。
【0036】
生成したD−N−カルバモイル−α−アミノ酸は、常套の分離方法により分離、精製することができる。
【0037】
以上述べた方法により得られる分離、精製したD−N−カルバモイル−α−アミノ酸、あるいはヒダントイナーゼ反応により得られた反応液をそのまま用いて、D−N−カルバモイル−α−アミノ酸を化学的に、もしくは脱カルバモイル活性を有する酵素の作用により変換して、D−α−アミノ酸を容易に取得することができる。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明する。
【実施例1】
【0038】
ヒダントイナーゼ活性菌の土壌からの分離
土壌サンプル0.5gを生理食塩水2mlに懸濁後、放置して上澄液を1滴、分離用寒天平板培地(肉エキス1.0%、ペプトン1.0%、イーストエキス1.0%、塩化ナトリウム0.3%、寒天2.0%;pH7.5)に塗布した。これを50℃で2日間培養し、得られたコロニーを、同分離用平板培地にウラシル0.1%および塩化マンガン20ppmを添加した平板培地に移植して、さらに50℃で1日培養した。こうして得られた菌体を、反応基質液(DL−(パラヒドロキシフェニル)ヒダントイン30mM、亜硫酸ナトリウム0.1%、炭酸緩衝液50mM)100μlに懸濁し、50℃で2時間反応させた。つぎに、反応液をTLCプレートにスポットし、ブタノール:酢酸:水(4:1:1)の展開溶媒で展開後、10%p−ジメチルアミノベンズアルデヒドの濃塩酸溶液を用いて黄色スポットを検出することにより、N−カルバモイルパラヒドロキシフェニルグリシンを生成する菌株を選択した。このようにして2740個のコロニーからヒダントイナーゼ高活性菌であるバチルス sp. KNK245(FERM BP−4863)を分離した。
【実施例2】
【0039】
バチルス sp. KNK245由来のヒダントイナーゼのN末端アミノ酸配列の決定
バチルス sp. KNK245株一白金耳を500ml坂口フラスコ中の種母培地(肉エキス1.0%、ペプトン1.0%、イーストエキス0.5%;pH7.5)100mlに植菌し、55℃で19時間培養した。ついで、その2%を2リットル坂口フラスコの本培養培地(肉エキス1.0%、ペプトン1.0%、イーストエキス0.5%、ウラシル0.1%、塩化マンガン4水和物20ppm;pH7.5)500mlに植菌して55℃で19時間培養した。得られた9リットルの培養ブロスから菌体を遠心分離により集菌した。これを0.2MTris−HCl(pH8.0)20mM硫酸マンガンに懸濁し、超音波粉砕した後、遠心分離を行い。無細胞抽出液を得た。つぎに、硫安沈殿による分画、DEAE−Sepharose、フェニル−Sepharoseを用いて32倍まで精製した。さらに、硫安を用いてヒダントイナーゼの結晶を取得した。この結晶を水に溶解して、470A型気相プロテイン・シーケンサー(アプライド・バイオシステムズ社製)により解析したことろ、ヒダントイナーゼはN末端に、
Met−Lys−Lys−Ile−Ile−Lys−Asn−Gly−Thr−Ile−Val−Thr−
なるアミノ酸配列を持つことが判った。
【実施例3】
【0040】
アグロバクテリウム sp.KNK712(FERM BP−1900)由来のヒダントイナーゼに関与する遺伝子を含むプラスミドの取得
ヒダントイナーゼ遺伝子は、WO92/10579に記載されているプラスミドpAHD101にクローン化されたDNA断片上に存在していることを以下の方法で検討することにより見出した。pAHD101を常法によりエシェリヒア・コリJM109に形質転換し、100mg/リットルのアンピシリンを含むL−ブロス(ペプトン10g/リットル、イーストエキス5g/リットル、塩化ナトリウム5g/リットル;pH7.0)50mlに植菌し、37℃で16時間培養した。ついで、培養液50mlを集菌し、上澄液を取り除き、50mlの基質溶液(0.5% 5−(パラヒドロキシフェニル)ヒダントイン、0.05%Triton X−100、0.05Mリン酸緩衝液;pH8.7)に菌体を懸濁し、窒素気流下、37℃で3時間反応を行った。この反応液をTLCにスポットし、展開後、p−ジメチルアミノベンズアルデヒドの塩酸溶液で発色したところ、標準品と一致するD−N−カルバモイル−(パラヒドロキシフェニル)グリシンのスポットを示した。以上のことから、pAHD101の形質転換株はヒダントイナーゼをコードする遺伝子を発現していることが確認できた。
プラスミドpAHD101をSacIおよびSalIで切断して、挿入断片を短縮化して得られた2.1kbpの断片を、pUC18のSacI,SalI切断フラグメントと連結してプラスミドpAH1043を得た(図1参照)。
また、DNAシークエンスキット(アプライド・バイオシステムズ社製)を用いて、ヒダントイナーゼ遺伝子の塩基配列の決定を行なった。この結果を配列表配列番号1に示した。
プラスミドpAH1043でエシェリヒア・コリ HB101を形質転換し形質転換株エシェリヒア・コリ HB101 pAH1043(FERM BP−4865)を得た。
【実施例4】
【0041】
バチルス sp.KNK245の染色体DNAとベクターDNAの組換え体DNAの創製
2リットルの液体培地(肉エキス10g/リットル、ペプトン10g/リットル、イーストエキス5g/リットル;pH7.5)でバチルス sp.KNK245(FERM BP−4863)を45℃で24時間培養した後、集菌し、菌体を得た。得られた菌体よりMarmur法に従って染色体DNAを抽出した。この染色体DNA1μgにBamHIを10U添加し、37℃で16時間反応させて完全分解を行なった。
一方、別にプラスミドpUC19をBamHIで完全切断し、これを先に得られた染色体からのDNA断片とT4DNAリガーゼによって連結し、多種の組換え体プラスミドの混液を得た。
【実施例5】
【0042】
バチルス sp.KNK245由来のヒダントイナーゼ遺伝子の取得
実施例3に示したアグロバクテリウム sp.KNK712(FERM BP−1900)および特開昭62−87089号に示されたLu1220株由来のヒダントイナーゼ遺伝子の塩基配列をもとに、これらの配列の1155bpの長さの塩基をはさみ、各相補鎖の配列を有する逆向きの2種類のプライマー1および2(表2)を合成した。実施例4で調製した、バチルス sp.KNK245由来の染色体DNAを鋳型として合成した2種類のプライマーを用いてポリメラーゼチェーンリアクション(PCR)を行なったところ、1.2kbp程度のフラグメントを得ることができた。このフラグメントの塩基配列の決定を、DNAシークエンスキット(アプライド・バイオシステムズ社製)を用いて決定したところ、既知のヒダントイナーゼ遺伝子の塩基配列と相同性が高く、得られたPCRフラグメントはヒダントイナーゼ遺伝子の一部であることがわかった。つぎに、このフラグメントの各相補鎖の配列を有する2種類の逆向きのプライマー3および4(表2)を合成した。
さらに、実施例4の組換え体DNAのベクター部分の配列を有するプライマー5(表2)を合成して、先に合成したプライマーと、このプライマーを用いて、実施例1の組換え体DNAを鋳型にPCRを行ない、ヒダントイナーゼ遺伝子の前半部分と後半部分を含む2種類のDNA断片を得た。そしてこれらのDNA断片の塩基配列を決定した。実施例2で示したヒダントイナーゼ蛋白質のN末端アミノ酸配列から予想される塩基配列から翻訳開始コドンを決定して、先に決定した塩基配列の結果と合わせてヒダントイナーゼをコードする遺伝子の全塩基配列を決定した。
つぎに、このようにして得られた塩基配列をもとに、ヒダントイナーゼ遺伝子の開始コドンの付近の配列に制限酵素NdeIの切断配列をもつプライマー6(表2)とヒダントイナーゼ遺伝子内のPstI切断部位の配列をもつプライマー7(表2)を合成して、これらのプライマーを用い、実施例1の染色体DNAを鋳型としてPCRを行ない、1.2kbのフラグメント1を得た。つぎに、先のPstI切断部位で逆向きのプライマー8(表2)と、終止コドンの後の配列を有し、HindIII切断部位の配列をもつプライマー9(表2)を合成して、実施例1の染色体DNAを鋳型としてPCRを行ない、0.25kbのフラグメント2を得た。フラグメント1を、NdeIとPstIで、フラグメント2を、PstIとHindIIIで、WO94/03613に示されるpUC19の改良ベクタープラスミドpUCNTをNdeIとHindIIIで、それぞれ切断した断片をT4DNAリガーゼにより連結することによりヒダントイナーゼ遺伝子を含むプラスミドpTH102を得た(図2参照)。
【表2】

【実施例6】
【0043】
バチルス sp.KNK245ヒダントイナーゼ遺伝子の発現用組換え体DNAの創製
実施例5のフラグメント2を得るのと同様の方法でPCRを行ない、0.25kbのフラグメント3を得た。ただし、この時使用した合成プライマーは、フラグメント2を得る時に使用したPstI切断部位をもつプライマーの代わりに、PstI切断部位近くのNdeI切断部位を1塩基置換して、NdeIで切断できなくしたプライマー10(表2)と、終止コドン付近のプライマーのかわりに、終止コドン以降の塩基の数をさらに減少させたプライマー11(表2)を使用した。つぎに、実施例5のpTH102を取得するのと同じ方法でフラグメント1と3とpUCNTからプラスミドpTH103を得た(図3参照)。
さらに、pTH103を得るのと同様の方法で、ただし、終止コドン付近のプライマー11の終止コドンTAGをTAAに変異させたプライマー12(表2)を使用して、pTH104を得た(図4参照)。
pTH104で形質転換されたエシェリヒア・コリHB101をエシェリヒア・コリHB101 pTH104とした。この菌株は、生命工学工業技術研究所にFERM BP−4864の寄託番号の下、1994年11月2日より寄託してある。
【実施例7】
【0044】
シュードモナス sp.KNK003A(FERM BP−3181)由来の、ヒダントイナーゼに関与する遺伝子を含むプラスミドの取得
実施例3と同様の方法によって、WO92/10579に記載されているプラスミドpPHD301にヒダントイナーゼ遺伝子が存在することを見出した。
エシェリヒア・コリHB101をpPHD301で形質転換してエシェリヒア・コリHB101pPHD301(FERM BP−4866)を得た。また、pPHD301の制限酵素地図を図5に示す。
また、実施例3と同様に、ヒダントイナーゼ遺伝子の塩基配列の決定を行い、その結果を配列表の配列番号3に示した。
【実施例8】
【0045】
形質転換株から得られた酵素による5−(パラヒドロキシフェニル)ヒダントインのD−N−カルバモイル−(パラヒドロキシフェニル)グリシンへの変換
実施例6で得られた形質転換株のエシェリヒア・コリHB101pTH104を、アンピシリン100μg/mlと塩化マンガン4水和物400ppmを含む2YT・ブロス(ポリペプトン16g/リットル、イーストエキス10g/リットル、塩化ナトリウム5g/リットル;pH7.0)50mlに植菌し、37℃で24時間培養した。この培養液50mlから菌体を集菌し、0.05M炭酸緩衝液pH8.7に懸濁して50mlとした。これにTritonX−100を終濃度0.05%となるように加えた後、5−(パラヒドロキシフェニル)ヒダントインを1.5g加えて、6N苛性ソーダでpH8.7にpHコントロールしながら、窒素気流下、40℃に保温しながら3時間撹拌して反応を行なった。反応後の反応液を遠心分離して上清の生成D−N−カルバモイル−(パラヒドロキシフェニル)グリシンの比色定量を、10%パラジメチルアミノベンズアルデヒドの濃塩酸溶液による発色で行ったところ変換収率97.5%でD−N−カルバモイル−(パラヒドロキシフェニル)グリシンが生成していた。
この反応液を塩酸でpH5に調整し、遠心分離した後、上澄液を濃縮して、塩酸でpH2に調整した後、4℃に保存して析出した結晶を濾集した。水−エタノールより再結して、970mgのD−N−カルバモイル−(パラヒドロキシフェニル)グリシンを得た。融点176〜177℃、[α]D20=−177.0°(C=0.5、5%エタノール)。
【実施例9】
【0046】
固定化ヒダントイナーゼの調製
実施例7と同様の方法で得られたエシェリヒア・コリHB101pTH104の培養液1リットルを集菌後、1mM硫酸マンガン水溶液に懸濁後、60mlにしてpH8.5に調整し、超音波により菌体の破砕を行なった。このようにして得られた酵素液にpH8.5に平衡化した陰イオン交換樹脂Duolite A−568を20g加え、15℃で20時間撹拌して、酵素を吸着させた。この液に終濃度0.1%となるようにグルタールアルデヒドを加え、1時間撹拌し、架橋処理を行なった。この後、樹脂を濾集、洗浄して固定化ヒダントイナーゼ20gを得た。
【実施例10】
【0047】
固定化酵素による5−(パラヒドロキシフェニル)ヒダントインのD−N−カルバモイル−(パラヒドロキシフェニル)グリシンへの変換
実施例9で得た固定化ヒダントイナーゼ5gを、窒素通気した40℃の1mM硫酸マンガン水溶液100mlに加えた後、5−(パラヒドロキシフェニル)ヒダントイン3gを添加して6N水酸化ナトリウムでpH8.7にコントロールしながら、40℃、窒素通気下3時間撹拌して反応を行なった。反応後、静置して反応液を吸引採取した後、実施例8と同様の方法で生成カルバモイルアミノ酸を精製し、D−N−カルバモイル−(パラヒドロキシフェニル)グリシンを2.2g得た。
【実施例11】
【0048】
バチルス sp.KNK245ヒダントイナーゼ遺伝子のバチルス・サブチルスでの発現
実施例5に記載の方法に準じて、バチルス sp.KNK245由来の染色体DNAを鋳型として、プライマー12および13(表2)を用いてPCRを行い、1.7kbのフラグメントを得た。これをBamHIおよびHindIIIで切断し、同様に切断したプラスミドpHY300PLK(宝酒造)とライゲートしてプラスミドpTHB301を得た。その制限酵素地図を図6に示す。
このプラスミドpTHB301をバチルス・サブチルスISW1214(宝酒造より入手)、バチルス・サブチルスYS−11(IAM12019)またはバチルス・サブチルス3115(IAM12020)に、電気穿孔法(島津製作所製GTE−10型使用、10KV/cm,2ms)で導入し、実施例4に示す培地に、MnCl2・4H2Oを0.02g/リットル添加した培地で、37℃、20時間培養した。菌体を集めて、超音波により破砕することにより、無細胞抽出液を調製したところ、バチルス sp.KNK245を同条件で培養したときと比較して、ヒダントイナーゼの比活性は、いずれも約2.2倍高かった。
【実施例12】
【0049】
バチルス sp.KNK245ヒダントイナーゼ遺伝子の好熱菌での発現
実施例11で作製したプラスミドpTHB301をプロトプラスト法
(J.Bacteriol.,149,824(1982)に準じる)でバチルス・ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus)IFO12550に形質転換し、実施例11と同様の方法で培養し、無細胞抽出液を調製した。同条件で調製したバチルス sp.KNK245の無細胞抽出液と比較して、ヒダントイナーゼの比活性は約3.6倍高かった。
以上記載したとおり、本発明によれば、ヒダントイナーゼの生産性が極めて高い微生物が創製でき、これを酵素源として使用することにより、D−N−カルバモイル−α−アミノ酸が効率よく生産できる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】プラスミドpAH1043の制限酵素地図である。
【図2】プラスミドpTH102の制限酵素地図である。
【図3】プラスミドpTH103の制限酵素地図である。
【図4】プラスミドpTH104の制限酵素地図である。
【図5】プラスミドpPHD301の制限酵素地図である。
【図6】プラスミドpTHB301の制限酵素地図である。
【図7−1】配列表を示す。
【図7−2】配列表の続き。
【図7−3】配列表の続き。
【図7−4】配列表の続き。
【図7−5】配列表の続き。
【図7−6】配列表の続き。
【図7−7】配列表の続き。
【図7−8】配列表の続き。
【図7−9】配列表の続き。
【図7−10】配列表の続き。
【図7−11】配列表の続き。
【図7−12】配列表の続き。
【図7−13】配列表の続き。
【図7−14】配列表の続き。
【図7−15】配列表の続き。
【図7−16】配列表の続き。
【図7−17】配列表の続き。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バチルス(Bacillus)sp.KNK245(FERM BP−4863)の染色体DNAを鋳型として、下記に示すプライマー6とプライマー7のプライマーセットを用いてPCRを行い、得られたフラグメントをNdeIとPstIで切断したDNA断片と、
バチルス(Bacillus)sp.KNK245(FERM BP−4863)の染色体DNAを鋳型として、下記に示すプライマー8とプライマー9のプライマーセット、プライマー10とプライマー11のプライマーセット、およびプライマー10とプライマー12のプライマーセットからなる群から選択されるプライマーセットを用いてPCRを行い、得られたフラグメントをPstIとHindIIIで切断したDNA断片を、
ベクタープラスミドpUCNTをNdeIとHindIIIで切断したものへT4DNAリガーゼで連結して得られる、
5−置換ヒダントインを不斉的に開裂加水分解して対応するD−N−カルバモイル−α−アミノ酸に変換する酵素(以下、ヒダントイナーゼという)をコードする遺伝子を含む組み換えDNAの、lacプロモーター直後のNdeIサイトからHindIIIサイトまでに含まれる、ヒダントイナーゼをコードする遺伝子を含むDNA断片と、
ベクターDNAとの組換体DNAを用いて宿主微生物を形質転換して得られる形質転換微生物。

【請求項2】
ベクターDNAがpUCNTであり、組み換えプラスミドが下記
【化1】

【化2】

【化3】

のいずれかに示す制限酵素地図で示される組換えプラスミドである、請求項1記載の形質転換微生物。
【請求項3】
宿主微生物が、エシェリヒア属、シュードモナス属、フラボバクテリウム属、バチルス属、セラチア属、アグロバクテリウム属、コリネバクテリウム属またはブレビバクテリウム属に属する微生物から選ばれる請求項1または2記載の形質転換微生物。
【請求項4】
形質転換微生物がエシェリヒア・コリ(Escherichia coli)HB101 pTH104(FERM BP−4864)である、請求項3記載の形質転換微生物。
【請求項5】
請求項1〜4いずれかに記載の形質転換微生物、またはシュードモナス(Pseudomonas) sp.KNK003A(FERM BP−3181)に由来し、かつ、配列表配列番号3のアミノ酸配列を有している、5−置換ヒダントインを不斉的に開裂加水分解して対応するD−N−カルバモイル−α−アミノ酸に変換する酵素(以下、ヒダントイナーゼという)をコードする遺伝子を含むDNA断片と、ベクターDNAとの組換体DNAを用いて、宿主微生物を形質転換して得られる形質転換微生物を使用することを特徴とする5−置換ヒダントインを不斉的に加水分解して対応するD−N−カルバモイル−α−アミノ酸に変換する酵素の製造法。
【請求項6】
宿主微生物が、エシェリヒア属、シュードモナス属、フラボバクテリウム属、バチルス属、セラチア属、アグロバクテリウム属、コリネバクテリウム属またはブレビバクテリウム属に属する微生物から選ばれる請求項5記載の製造法。
【請求項7】
形質転換微生物がエシェリヒア・コリ(Escherichia coli)HB101 pTH104(FERM BP−4864)、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)HB101 pAH1043(FERM BP−4865)またはエシェリヒア・コリ(Escherichia coli)HB101 pPHD301(FERM BP−4866)である請求項6記載の製造法。
【請求項8】
請求項5〜7いずれかに記載の製造法で得られた酵素を使用することを特徴とする5−置換ヒダントインからD−N−カルバモイル−α−アミノ酸の製造法。
【請求項9】
5−置換ヒダントインが一般式(1):
【化4】

(式中、Rはフェニル基、水酸基で置換されたフェニル基、アルキル基、置換アルキル基、アラルキル基またはチエニル基を示す。)で表わされる化合物である請求項8記載の製造法。
【請求項10】
バチルス(Bacillus)sp.KNK245(FERM BP−4863)の染色体DNAを鋳型として、下記に示すプライマー6とプライマー7のプライマーセットを用いてPCRを行い、得られたフラグメントをNdeIとPstIで切断したDNA断片と、
バチルス(Bacillus)sp.KNK245(FERM BP−4863)の染色体DNAを鋳型として、下記に示すプライマー8とプライマー9のプライマーセット、プライマー10とプライマー11のプライマーセット、およびプライマー10とプライマー12のプライマーセットからなる群から選択されるプライマーセットを用いてPCRを行い、得られたフラグメントをPstIとHindIIIで切断したDNA断片を、
ベクタープラスミドpUCNTをNdeIとHindIIIで切断したものへT4DNAリガーゼで連結して得られる、5−置換ヒダントインを不斉的に開裂加水分解して対応するD−N−カルバモイル−α−アミノ酸に変換する酵素(以下、ヒダントイナーゼという)をコードする遺伝子を含む組み換えDNAの、lacプロモーター直後のNdeIサイトからHindIIIサイトまでに含まれる、ヒダントイナーゼをコードする遺伝子を含むDNA断片と、
ベクタープラスミドとの組み換えプラスミド。

【請求項11】
ベクタープラスミドがpUCNTであり、下記
【化5】

【化6】

【化7】

のいずれかに示す制限酵素地図で示される、請求項10記載の組換えプラスミド。
【請求項12】
プラスミドpAHD101をSacIおよびSalIで切断して、得られた2.1kbpの断片を、pUC18のSacI、SalI切断フラグメントと連結して得られ、下記
【化8】

の制限酵素地図で示される組換えプラスミド。
【請求項13】
エシェリヒア・コリHB101 pAH1043(FERM BP−4865)。
【請求項14】
請求項10記載のプラスミドであって、下記
【化9】

の制限酵素地図で示される組み換えプラスミドの、lacプロモーター直後のNdeIサイトからHindIIIサイトまでに含まれており、5−置換ヒダントインを不斉的に開裂加水分解して対応するD−N−カルバモイル−α−アミノ酸に変換する酵素活性を示す蛋白質の遺伝子。
【請求項15】
請求項11記載のプラスミドであって、下記
【化10】

の制限酵素地図で示される組み換えプラスミドを発現して得られる、5−置換ヒダントインを不斉的に開裂加水分解して対応するD−N−カルバモイル−α−アミノ酸に変換する酵素活性を示す蛋白質をコードする遺伝子を含むDNA断片。
【請求項16】
請求項11記載のプラスミドであって、下記
【化11】

の制限酵素地図で示される組み換えプラスミドの、lacプロモーター直後のNdeIサイトからHindIIIサイトまでの遺伝子によりコードされるアミノ酸配列に含まれるアミノ酸配列を有し、5−置換ヒダントインを不斉的に開裂加水分解して対応するD−N−カルバモイル−α−アミノ酸に変換する活性を有する酵素蛋白質。
【請求項17】
配列表配列番号3のアミノ酸配列を有する、5−置換ヒダントインを不斉的に開裂加水分解して、対応するD−N−カルバモイル−α−アミノ酸に変換する酵素活性を示す蛋白質の遺伝子。
【請求項18】
配列表配列番号3の塩基番号60〜1517の塩基配列を有し、5−置換ヒダントインを不斉的に開裂加水分解して、対応するD−N−カルバモイル−α−アミノ酸に変換する酵素活性を示す蛋白質の遺伝子を含むDNA断片。
【請求項19】
配列表配列番号3のアミノ酸配列を含み、5−置換ヒダントインを不斉的に加水分解して対応するD−N−カルバモイル−α−アミノ酸に変換する活性を有する酵素蛋白質。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【図7−3】
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【図7−4】
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【図7−5】
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【図7−6】
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【図7−7】
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【図7−8】
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【図7−9】
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【図7−10】
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【図7−11】
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【図7−12】
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【図7−13】
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【図7−14】
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【図7−15】
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【図7−16】
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【図7−17】
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【公開番号】特開2007−105048(P2007−105048A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−317249(P2006−317249)
【出願日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【分割の表示】特願平8−520361の分割
【原出願日】平成7年12月26日(1995.12.26)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】