説明

DC−DCコンバータ

【課題】トランスの高周波化による小型化及びノイズを低減することができるDC−DCコンバータ。
【解決手段】直流電源Vinの両端に接続され且つ直列に接続された複数のスイッチ素子Q1,Q2と、複数のスイッチ素子を一定の発振周波数信号で交互にオン/オフさせる第1制御回路10aと、複数のスイッチ素子の接続点と直流電源の一端とに接続され、トランスTの1次巻線PとコンデンサCriとが直列に接続された直列回路と、トランスの2次巻線S1,S2に発生する電圧を整流及び平滑して直流電圧を取り出す整流平滑回路D1,D2,Coと、トランスの1次巻線又は2次巻線の両端に接続された制御用スイッチ素子Q3と、制御用スイッチ素子をオン/オフさせることにより直流電圧を所定電圧に制御する第2制御回路30とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DC−DCコンバータに関し、特にDC−DCコンバータの出力電圧制御に関する。
【背景技術】
【0002】
図10は従来のDC−DCコンバータを示す回路図である。図10に示すDC−DCコンバータの動作を説明する。まず、直流電源Vinの電圧が印加されると、図示しない起動回路により制御回路10が動作を開始する。制御回路10は、発振回路11、D型フリップフロップ回路13、デットタイム生成回路14,15、レベルシフト回路16、バッファ回路17,18を有し、スイッチ素子Q1とスイッチ素子Q2とをデットタイムを有して交互にオン・オフさせる。
【0003】
スイッチ素子Q2がオンすると、Vin→Q2→Lr→P→Cri→Vinの経路で電流が流れる。この電流は、トランスTの1次側の励磁インダクタンスLpに流れる励磁電流と、1次巻線P、2次巻線S2、ダイオードD2、コンデンサCoを介して出力端子+Vo及び−Voから負荷へ供給される負荷電流との合成電流となる。前者の電流は、(リアクトルLr+励磁インダクタンスLp)と電流共振コンデンサCriとの正弦波状の共振電流となり、スイッチ素子Q2のオン期間に比べて低い共振周波数とするため、正弦波の一部が三角波状の電流として観測される。後者の電流は、リアクトルLrと電流共振コンデンサCriとの共振要素が現れた正弦波状の共振電流となる。
【0004】
スイッチ素子Q2がオフすると、トランスTに蓄えられた励磁電流のエネルギーにより、(リアクトルLr+励磁インダクタンスLp)と電流共振コンデンサCri、電圧共振コンデンサCrvによる電圧疑似共振が発生する。このとき、小さい容量の電圧共振コンデンサCrvによる共振周波数がスイッチ素子Q1およびスイッチ素子Q2の両端電圧として観測される。即ち、スイッチ素子Q2の電流は、スイッチ素子Q2のオフと共に電圧共振コンデンサCrvに移る。電圧共振コンデンサCrvがゼロボルトまで放電されると、ダイオードD8に電流が移行する。これは、トランスTに蓄えられた励磁電流によるエネルギーがダイオードD8を介して電流共振コンデンサCriを充電する。この期間にスイッチ素子Q1をオンさせることでスイッチ素子Q1のゼロボルトスイッチが可能となる。
【0005】
スイッチ素子Q1がオンすると、電流共振コンデンサCriを電源として、Cri→P→Lr→Q1→Criの経路で電流が流れる。この電流は、トランスTの励磁インダクタンスLpに流れる励磁電流と、1次巻線P、2次巻線S1、ダイオードD1、平滑コンデンサCoを介して出力端子+Vo及び−Voから負荷へ供給される負荷電流との合成電流となる。前者の電流は、(リアクトルLr+励磁インダクタンスLp)と電流共振コンデンサCriの正弦波状の共振電流となり、スイッチ素子Q1のオン期間に比べて低い共振周波数とするため、正弦波の一部が三角波状の電流として観測される。後者の電流は、リアクトルLrと電流共振コンデンサCriとの共振要素が現れた正弦波状の共振電流となる。
【0006】
スイッチ素子Q1がオフすると、トランスTに蓄えられた励磁電流のエネルギーにより、(リアクトルLr+励磁インダクタンスLp)と電流共振コンデンサCri、電圧共振コンデンサCrvによる電圧疑似共振が発生する。このとき、小さい容量の電圧共振コンデンサCrvによる共振周波数がスイッチ素子Q1およびスイッチ素子Q2の両端電圧として観測される。即ち、スイッチ素子Q1の電流は、スイッチ素子Q1のオフと共に電圧共振コンデンサCrvに移る。電圧共振コンデンサCrvが直流電源Vinの電圧まで充電されると、ダイオードD9に電流が移行する。これは、トランスTに蓄えられた励磁電流によるエネルギがダイオードD9を介して直流電源Vinに回生される。この期間にスイッチ素子Q2をオンさせることでスイッチ素子Q2のゼロボルトスイッチが可能となる。
【0007】
図11(a)は直流電源Vinの電圧が300Vで100%負荷(重負荷)の波形図、図11(b)は直流電源Vinの電圧が400Vで100%負荷の波形図である。図11(a)と図11(b)とを比較すると、電流共振コンデンサCriに流れる共振電流Icriは、入力電圧の大小に関係なくほぼ一定である。但し、入力電圧が低い場合には、周波数が低下し、励磁電流が大きくなっている。この励磁電流の一部は昇圧エネルギーとしてリアクトルLrに蓄えられて出力電圧上昇に大きく寄与する。スイッチング周波数を制御することにより出力電圧を制御することができる。出力電圧検出回路20によって出力電圧が検出され、検出された出力電圧はフォトカプラPCを介して一次側の制御回路10のフィードバック端子(FB端子)に送られ、出力電圧に応じて発振回路11の発振周波数が調整される。なお、図12(a)は直流電源Vinの電圧が300Vで0%負荷(無負荷)の波形図、図12(b)は直流電源Vinの電圧が400Vで0%負荷の波形図である。
【0008】
図13は出力電力比とスイッチング周波数の関係を示す図である。図13からわかるように、重負荷時と無負荷時とでは、40kHz〜160kHz程度のおおよそ4倍の周波数変動が必要である。近年、DC−DCコンバータは小型化するために高周波化されている。特に、この種の共振型のDC−DCコンバータは、スイッチングロスが少なく高周波化に適した回路である。
【0009】
なお、従来の技術の関連技術として、例えば特許文献1に記載された電流共振型コンバータ装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2005−39975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、最大電力時の周波数に対して、無負荷時には、4倍くらい高い周波数が必要であるため、共振型のDC−DCコンバータでも周波数上昇に対応できない。例えば、2MHzで回路を設計した場合、最大周波数は8MHzとなってしまう。このため、スイッチ素子のドライブ電力と制御回路の電力損失などを考慮すると、実用できない。この場合、最大周波数を2MHzとし、最低周波数を500kHz程度で用いなければならなかった。
【0012】
また、周波数が上記のように高い周波数になると、ラジオ放送の周波数帯域を跨ぐため、EMC対策が厳しくなる。
【0013】
本発明は、トランスの高周波化による小型化及びノイズを低減することができるDC−DCコンバータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明は、直流電源の両端に接続され且つ直列に接続された複数のスイッチ素子と、前記複数のスイッチ素子を一定の発振周波数信号で交互にオン/オフさせる第1制御回路と、前記複数のスイッチ素子の接続点と前記直流電源の一端とに接続され、トランスの1次巻線とコンデンサとが直列に接続された直列回路と、前記トランスの2次巻線に発生する電圧を整流及び平滑して直流電圧を取り出す整流平滑回路と、前記トランスの前記1次巻線又は前記2次巻線の両端に接続された制御用スイッチ素子と、前記制御用スイッチ素子をオン/オフさせることにより前記直流電圧を所定電圧に制御する第2制御回路とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、第1制御回路の発振周波数信号の周波数が固定周波数であるので、周波数変動がなく、容易にトランスを高周波化することができる。このため、トランスの高周波化による小型化及びノイズを低減することができるDC−DCコンバータを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施例1のDC−DCコンバータの回路図である。
【図2】本発明の実施例1のDC−DCコンバータの制御回路30の詳細を示す回路図である。
【図3】本発明の実施例1のDC−DCコンバータの制御回路30の各部の波形図である。
【図4】本発明の実施例1のDC−DCコンバータの各部の波形図である。
【図5】本発明の実施例1のDC−DCコンバータの各部の波形図である。
【図6】本発明の実施例2のDC−DCコンバータの回路図である。
【図7】本発明の実施例3のDC−DCコンバータの回路図である。
【図8】本発明の実施例4のDC−DCコンバータの回路図である。
【図9】本発明の実施例5のDC−DCコンバータの回路図である。
【図10】従来のDC−DCコンバータを示す回路図である。
【図11】従来のDC−DCコンバータの各部の波形図である。
【図12】従来のDC−DCコンバータの各部の波形図である。
【図13】従来のDC−DCコンバータの出力電力比と発振周波数との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明のDC−DCコンバータの実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
【実施例1】
【0018】
図1は本発明の実施例1のDC−DCコンバータの回路図である。図1に示す実施例1のDC−DCコンバータは、図10に示す従来のDC−DCコンバータに対して、制御回路10に代えて制御回路10aを設け、ダイオードD3,D4,D5,D6,D7、MOSFETからなるスイッチ素子Q3、スイッチ素子Q3の制御信号を生成する制御回路30を設けたことを特徴とする。また、電圧検出回路20の出力に接続される図10のフォトカプラPCを削除し、電圧検出回路20の出力を制御回路30に接続したことを特徴とする。このため、制御回路10aにはFB端子は削除されている。
【0019】
以下、各部の構成について詳細を説明する。直流電源Vinの両端には、MOSFETからなるスイッチ素子Q1とMOSFETからなるスイッチ素子Q2との直列回路が接続されている。スイッチ素子Q1のドレイン−ソース間にはダイオードD8が接続され、スイッチ素子Q2のドレイン−ソース間にはダイオードD9が接続されている。ダイオードD8,D9は、スイッチ素子Q1,Q2の寄生ダイオードでも良い。スイッチ素子Q1のドレイン−ソース間には、リアクトルLrとトランスTの1次巻線Pと電流共振コンデンサCriとの直列回路が接続されるとともに、電圧共振コンデンサCrvが接続されている。
【0020】
トランスTの2次巻線S1と2次巻線S2とは、直列に接続され、2次巻線S1の一端にはダイオードD1,D3,D5のアノードが接続され、2次巻線S2の一端にはダイオードD2,D4,D6のアノードが接続されている。ダイオードD1のカソードとダイオードD2のカソードとは平滑コンデンサCoの一端と出力端子+Voと電圧検出回路20の一端とに接続されている。
【0021】
電圧検出回路20は、平滑コンデンサCoの両端電圧を検出し、検出された電圧を制御回路30のFB端子に出力する。タイミング検出用のダイオードD5,D6のカソードは制御回路30のTS端子に接続されている。ダイオードD3,D4のカソードはダイオードD7のカソードとスイッチ素子Q3のドレインとに接続されている。スイッチ素子Q3のゲートは制御回路30のCG端子に接続されている。
【0022】
ダイオードD7のアノードとスイッチ素子Q3のソースとは、2次巻線S1と2次巻線S2との接続点と制御回路30のCS端子と平滑コンデンサCoの他端と出力端子−Voと電圧検出回路20の他端に接続されている。
【0023】
制御回路10aは、発振回路11aによる固定周波数によりスイッチ素子Q1とスイッチ素子Q2とをオン・オフさせる。制御回路10aは、発振回路11a、D型フリップフロップ回路13、デットタイム生成回路14,15、レベルシフト回路16、バッファ回路17,18を有する。
【0024】
発振回路11aは、一定の発振周波数信号(固定周波数の信号)を発振して出力する。D型フリップフロップ回路13は、発振回路11aからの発振周波数信号に基づき、それぞれがデューティ50%で交互にオン・オフする第1パルス信号及び第2パルス信号を生成する。
【0025】
デットタイム生成回路14は、第1パルス信号に対して第1デットタイムだけ遅延させてバッファ回路17を介してローサイド側のスイッチ素子Q1にゲートドライブ信号として出力する。デットタイム生成回路15は、第2パルス信号に対して第2デットタイムだけ遅延させてレベルシフト回路16とバッファ回路18とを介してハイサイド側のスイッチ素子Q2にゲートドライブ信号として出力する。
【0026】
図2は本発明の実施例1のDC−DCコンバータの制御回路30の詳細を示す回路図である。制御回路30は、バッファ回路31、コンパレータ32、RSフリップフロップ回路からなるFF回路33、ドライブ回路34、抵抗R1,R2、ダイオードDi、コンデンサCtを有する。バッファ回路31の入力端子は、TS端子に接続され、バッファ回路31の出力端子は、FF回路33のセット端子(S端子)に接続されている。
【0027】
FF回路33の出力端子Qは、抵抗R1の一端とダイオードDiのカソードとドライブ回路34の入力端子とに接続されている。FB端子はコンパレータ32の反転入力端子に接続され、コンパレータ32の非反転入力端子は、抵抗R1の他端とダイオードDiのアノードに接続された抵抗R2の一端とコンデンサCtの一端とに接続されている。コンデンサCtの他端及びCS端子は接地されている。コンパレータ32の出力端子はFF回路33のリセット端子(R端子)に接続されている。
【0028】
次に、図2に示す制御回路30の動作を図3のタイミングチャートを参照しながら説明する。まず、制御回路30は、ダイオードD5,D6によりトランスTを介して1次側の発振回路11aの発振周波数を読み取り、TS端子を介して発振周波数信号Aとしてバッアァ回路31に入力する。バッファ回路31は、発振周波数信号Aがしきい値Vth以下のときLレベルで、発振周波数信号Aがしきい値Vthを越えているときHレベルとするパルス信号Bに変換する。
【0029】
FF回路33は、バッファ回路31からのパルス信号Bが立ち上がりエッジのとき(例えば時刻t2、t5、t8)、セットされ、出力端子QからHレベルの信号C/Dが出力される。すると、コンデンサCtが抵抗R1を介して徐々に充電されて、コンデンサCtの電圧Eが直線的に増加する。
【0030】
コンデンサCtの電圧EとFB端子Fの電圧とが等しくなると(例えば時刻t3、t6、t9)、コンパレータ32の出力Gは、Hレベルとなる。このHレベルがFF回路33のリセット端子Rに入力されるので、FF回路33は、リセットされて、出力端子QはLレベルとなる。このため、コンデンサCtの電荷が抵抗R1を介して放電される。また、FF回路33の出力は、ドライブ回路34を介してスイッチ素子Q3のオンオフ信号となる。
【0031】
従って、1次側の発振回路11aの発振周波数信号の周波数に同期して、スイッチ素子Q3をオンさせて、FB端子からの、出力電圧Voに応じたフィードバック信号(FB信号)によって、スイッチ素子Q3をオフさせる。このため、スイッチ素子Q3は、1次側の発振回路11aの発振周波数に同期したPWM制御が行われる。
【0032】
次にこのように構成された実施例1のDC−DCコンバータの動作を説明する。まず、直流電源Vinの電圧が印加されると、図示しない起動回路により制御回路10aが動作を開始する。制御回路10aは、スイッチ素子Q1とスイッチ素子Q2とをデットタイムを有して交互にオン・オフさせる。
【0033】
スイッチ素子Q2がオンすると、Vin→Q2→Lr→P→Cri→Vinの経路で電流が流れる。この電流は、トランスTの1次側の励磁インダクタンスLpに流れる励磁電流(一番目の電流)と、スイッチ素子Q3がオンしている期間に1次巻線P、2次巻線S2、ダイオードD4、スイッチ素子Q3を介して流れる2次巻線S2のショート電流(二番目の電流)と、スイッチ素子Q3がオフしている期間に1次巻線P、2次巻線S2、ダイオードD2、コンデンサCoを介して出力端子+Vo及び−Voから負荷へ供給される負荷電流(三番目の電流)との合成電流となる。
【0034】
即ち、一番目の電流は、(リアクトルLr+励磁インダクタンスLp)と電流共振コンデンサCriとの正弦波状の共振電流となり、スイッチ素子Q2のオン期間に比べて低い共振周波数とするため、正弦波の一部が三角波状の電流として観測される。
【0035】
二番目の電流は、2次巻線S2がショートされているので、リアクトルLrと電流共振コンデンサCriとの共振要素が現われた正弦波状の共振電流となる。但し、このときの1次巻線Pの電圧は、0Vであるので、比較的大きな電圧がリアクトルLrに印加されるため、急峻な共振電流波形となる。第3番目の電流は、リアクトルLrと電流共振コンデンサCriとの共振要素が現れた正弦波状の共振電流となる。
【0036】
スイッチ素子Q2がオフすると、トランスTに蓄えられた励磁電流のエネルギーにより、(リアクトルLr+励磁インダクタンスLp)と電流共振コンデンサCri、電圧共振コンデンサCrvによる電圧疑似共振が発生する。このとき、小さい容量の電圧共振コンデンサCrvによる共振周波数がスイッチ素子Q1およびスイッチ素子Q2の両端電圧として観測される。即ち、スイッチ素子Q2の電流は、スイッチ素子Q2のオフと共に電圧共振コンデンサCrvに移る。電圧共振コンデンサCrvがゼロボルトまで放電されると、ダイオードD8に電流が移行する。これは、トランスTに蓄えられた励磁電流によるエネルギーがダイオードD8を介して電流共振コンデンサCriを充電する。この期間にスイッチ素子Q1をオンさせることでスイッチ素子Q1のゼロボルトスイッチが可能となる。
【0037】
スイッチ素子Q1がオンすると、電流共振コンデンサCriを電源として、Cri→P→Lr→Q1→Criの経路で電流が流れる。この電流は、トランスTの励磁インダクタンスLpに流れる励磁電流(一番目の電流)と、スイッチ素子Q3がオンしている期間に1次巻線P、2次巻線S1、ダイオードD3、スイッチ素子Q3を介して流れる2次巻線S1のショート電流(二番目の電流)と、スイッチ素子Q3がオフしている期間に1次巻線P、2次巻線S1、ダイオードD1、平滑コンデンサCoを介して出力端子+Vo及び−Voから負荷へ供給される負荷電流(三番目の電流)との合成電流となる。
【0038】
即ち、一番目の電流は、(リアクトルLr+励磁インダクタンスLp)と電流共振コンデンサCriとの正弦波状の共振電流となり、スイッチ素子Q1のオン期間に比べて低い共振周波数とするため、正弦波の一部が三角波状の電流として観測される。
【0039】
二番目の電流は、2次巻線S1がショートされているので、リアクトルLrと電流共振コンデンサCriとの共振要素が現われた正弦波状の共振電流となる。但し、このときの1次巻線Pの電圧は、0Vであるので、比較的大きな電圧がリアクトルLrに印加されるため、急峻な共振電流波形となる。第3番目の電流は、リアクトルLrと電流共振コンデンサCriとの共振要素が現れた正弦波状の共振電流となる。
【0040】
スイッチ素子Q1がオフすると、トランスTに蓄えられた励磁電流のエネルギーにより、(リアクトルLr+励磁インダクタンスLp)と電流共振コンデンサCri、電圧共振コンデンサCrvによる電圧疑似共振が発生する。このとき、小さい容量の電圧共振コンデンサCrvによる共振周波数がスイッチ素子Q1およびスイッチ素子Q2の両端電圧として観測される。即ち、スイッチ素子Q1の電流は、スイッチ素子Q1のオフと共に電圧共振コンデンサCrvに移る。電圧共振コンデンサCrvが直流電源Vinの電圧まで充電されると、ダイオードD9に電流が移行する。これは、トランスTに蓄えられた励磁電流によるエネルギがダイオードD9を介して直流電源Vinに回生される。この期間にスイッチ素子Q2をオンさせることでスイッチ素子Q2のゼロボルトスイッチが可能となる。
【0041】
図4(a)に直流電源Vinの電圧が300Vで100%負荷(重負荷)の波形図を示し、図4(b)に直流電源Vinの電圧が400Vで100%負荷の波形図を示す。図5(a)に直流電源Vinの電圧が300Vで0%負荷(無負荷)の波形図を示し、図5(b)に直流電源Vinの電圧が400Vで0%負荷の波形図を示す。なお、図4(a)〜図5(b)において、VQ1はスイッチ素子Q1のドレイン−ソース間電圧、IQ1はスイッチ素子Q1のドレイン電流、VQ2はスイッチ素子Q2のドレイン−ソース間電圧、IQ2はスイッチ素子Q2のドレイン電流、VQ3はスイッチ素子Q3のドレイン−ソース間電圧、IQ3はスイッチ素子Q3のドレイン電流である。
【0042】
実施例1のDC−DCコンバータでは、一次側の発振回路11aの発振周波数が固定であるため、入力電圧が低下した場合には、出力電圧を昇圧させる必要がある。実施例1では、スイッチ素子Q3がオンオフすることで、昇圧動作を行う。即ち、スイッチ素子Q3がオンすることで、トランスTを介してリアクトルLrに昇圧エネルギーが蓄えられる。
【0043】
スイッチ素子Q3がオフすると、リアクトルLrに蓄積されたエネルギーが電圧として現われて昇圧動作が行われる。スイッチ素子Q3のオン時間をFB端子からのFB信号によりPWM制御することにより、出力電圧Voを一定電圧に制御することができる。
【0044】
このように実施例1のDC−DCコンバータによれば、発振回路11aが固定周波数を用いているので、周波数変動がなく、容易にトランスを高周波化することができる。このため、トランスの高周波化による小型化及びノイズを低減することができる。
【0045】
なお、近年、商用電源に発生する高周波電流抑制のために、DC−DCコンバータの前段に力率改善コンバータを設けることが多い。力率改善コンバータの後段に実施例1のDC−DCコンバータを設けた場合、力率改善コンバータの出力は、ほぼ一定である。このため、実施例1のDC−DCコンバータは必要以上の昇圧動作は不要となり、スイッチ素子Q3はほとんどオンしない。従って、不要な昇圧動作が行われず非常に効率の良いDC−DCコンバータを構成できる。
【0046】
即ち、瞬時停電時に入力電圧が低下した場合のみ、スイッチ素子Q3をオンオフさせて、昇圧動作を行えば良く、定常動作時の効率を高く維持することができる。
【実施例2】
【0047】
図6は本発明の実施例2のDC−DCコンバータの回路図である。図6に示す実施例2のDC−DCコンバータは、図10に示す従来のDC−DCコンバータに対して、1次巻線P及び2次巻線S1,S2に電磁結合する制御巻線Lc(3次巻線に対応)、制御巻線Lcの両端に端子a,bが接続されるダイオードブリッジDB、ダイオードブリッジDBの端子c,dにドレイン−ソース間が接続されるスイッチ素子Q3、スイッチ素子Q3のドレイン−ソース間に接続されたダイオードD7、制御回路30、抵抗R3を設けている。
【0048】
制御回路30は、TS端子が発振回路11aに接続され、FB端子がフォトカプラPCのフォトトランジスタに接続され、CG端子がスイッチ素子Q3のゲートに接続され、CS端子がスイッチ素子Q3のソースとダイオードD7のアノードとフォトカプラPCのフォトトランジスタのエミッタとダイオードブリッジDBの端子dとに接続されている。FB端子には電源Vccから抵抗R3を介して電圧が印加されている。FB信号は、電圧検出回路20からフォトカプラPCを介して制御回路30のFB端子に入力される。
【0049】
このように構成された実施例2のDC−DCコンバータによれば、制御回路30は、発振回路11aから固定周波数の発振周波数信号を入力してパルス信号を生成し、電圧検出回路20からフォトカプラPCを介してFB端子にFB信号を入力し、パルス信号とFB信号とに基づいてスイッチ素子Q3をPWM制御する。従って、実施例2においても実施例1のDC−DCコンバータの効果と同様な効果が得られる。
【実施例3】
【0050】
図7は本発明の実施例3のDC−DCコンバータの回路図である。図7に示す実施例3のDC−DCコンバータは、図6に示す実施例2のDC−DCコンバータに対して、制御巻線Lcを削除し、ダイオードブリッジDBの端子a,bをトランスTの1次巻線Pの両端に接続したことを特徴とする。
【0051】
このような実施例3のDC−DCコンバータによっても、実施例2のDC−DCコンバータの効果と同様な効果が得られる。
【実施例4】
【0052】
図8は本発明の実施例4のDC−DCコンバータの回路図である。図8に示す実施例4のDC−DCコンバータは、図1に示す実施例1のDC−DCコンバータに対して、ダイオードD4とダイオードD3との間に設けられたスイッチ素子Q3に代えて、MOSFETからなるスイッチ素子Q3AとMOSFETからなるスイッチ素子Q3Bとの直列回路を設けたことを特徴とする。
【0053】
即ち、ダイオードD4のカソードにはスイッチ素子Q3BのドレインとダイオードD7Bのカソードが接続されている。スイッチ素子Q3BのソースとダイオードD7Bのアノードとには、スイッチ素子Q3AのソースとダイオードD7Aのアノードと制御回路30のCS端子とが接続されている。スイッチ素子Q3AのドレインとダイオードD7Aのカソードとは、ダイオードD3のカソードに接続され、スイッチ素子Q3Aのゲートとスイッチ素子Q3Bのゲートとは制御回路30のCG端子に接続されている。
【0054】
このように構成された実施例4のDC−DCコンバータによれば、スイッチ素子Q2がオンすると、スイッチ素子Q3A,Q3Bがオンしている期間に1次巻線P、2次巻線S2、ダイオードD4、スイッチ素子Q3Bを介して2次巻線S2にショート電流が流れる。
【0055】
スイッチ素子Q1がオンすると、スイッチ素子Q3A,Q3Bがオンしている期間に1次巻線P、2次巻線S1、ダイオードD3、スイッチ素子Q3Aを介して2次巻線S1にショート電流が流れる。
【0056】
このように実施例4のDC−DCコンバータによっても、実施例1のDC−DCコンバータの効果と同様な効果が得られる。
【実施例5】
【0057】
図9は本発明の実施例5のDC−DCコンバータの回路図である。図9に示す実施例5のDC−DCコンバータは、図10に示す従来のDC−DCコンバータに対して、2次巻線S1と2次巻線S2とを直列接続せずに分離し、2次巻線S1の両端にダイオードD3とMOSFETからなるスイッチ素子Q4との直列回路を接続し、2次巻線S2の両端にダイオードD4とMOSFETからなるスイッチ素子Q5との直列回路を接続している。
【0058】
スイッチ素子Q4のゲート−ソース間には、トランスT2の2次巻線S3が接続され、スイッチ素子Q5のゲート−ソース間には、トランスT2の2次巻線S4が接続されている。
【0059】
制御回路30は、TS端子が発振回路11aに接続され、FB端子がフォトカプラPCのフォトトランジスタに接続され、CG端子がコンデンサC1を介してトランスT2の1次巻線P2の一端に接続され、CS端子がトランスT2の1次巻線P2の他端とフォトカプラPCのフォトトランジスタのエミッタとに接続されている。FB端子には電源Vccから抵抗R3を介して電圧が印加されている。FB信号は、電圧検出回路20からフォトカプラPCを介して制御回路30のFB端子に入力される。
【0060】
このように構成された実施例5のDC−DCコンバータによれば、制御回路30は、発振回路11aから固定周波数の発振周波数信号を入力してパルス信号を生成し、電圧検出回路20からフォトカプラPCを介してFB端子にFB信号を入力し、パルス信号とFB信号とに基づくPWM制御信号がトランスT2の1次巻線P2を介して2次巻線S3と2次巻線S4とに出力される。
【0061】
ここで、スイッチ素子Q2がオンすると、1次巻線P2を介して2次巻線S4に発生する電圧によりスイッチ素子Q5がオンしている期間に1次巻線P、2次巻線S2、ダイオードD4、スイッチ素子Q5を介して2次巻線S2にショート電流が流れる。
【0062】
次に、スイッチ素子Q1がオンすると、1次巻線P2を介して2次巻線S3に発生する電圧によりスイッチ素子Q4がオンしている期間に1次巻線P、2次巻線S1、ダイオードD3、スイッチ素子Q4を介して2次巻線S1にショート電流が流れる。
【0063】
このように実施例5のDC−DCコンバータによっても、実施例1のDC−DCコンバータの効果と同様な効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、スイッチング電源装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0065】
Vin 直流電源
Q1,Q2,Q3,Q3A,Q3B,Q4,Q5 スイッチ素子
Lr リアクトル
T,T2 トランス
P,P2 1次巻線
S1,S2,S3,S4 2次巻線
D1〜D9 ダイオード
Co 平滑コンデンサ
Cri 電流共振コンデンサ
Crv 電圧共振コンデンサ
PC フォトカプラ
R1〜R3 抵抗
10,10a,30 制御回路
11,11a 発振回路
13 D型フリップフロップ回路
14,15 デットタイム作成回路
16 レベルシフト回路
17,18,31 バッファ回路
20 電圧検出回路
32 コンパレータ
33 FF回路
34 ドライブ回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源の両端に接続され且つ直列に接続された複数のスイッチ素子と、
前記複数のスイッチ素子を一定の発振周波数信号で交互にオン/オフさせる第1制御回路と、
前記複数のスイッチ素子の接続点と前記直流電源の一端とに接続され、トランスの1次巻線とコンデンサとが直列に接続された直列回路と、
前記トランスの2次巻線に発生する電圧を整流及び平滑して直流電圧を取り出す整流平滑回路と、
前記トランスの前記1次巻線又は前記2次巻線の両端に接続された制御用スイッチ素子と、
前記制御用スイッチ素子をオン/オフさせることにより前記直流電圧を所定電圧に制御する第2制御回路と、
を備えることを特徴とするDC−DCコンバータ。
【請求項2】
前記トランスの前記2次巻線は、第1巻線と第2巻線とを有し、前記第1巻線の両端には第1整流素子と前記制御用スイッチ素子との直列回路が接続され、前記第2巻線の両端には第2整流素子と前記制御用スイッチ素子との直列回路が接続され、
前記第2制御回路は、前記第1巻線の電圧と前記第2巻線の電圧と前記直流電圧とに基づき前記制御用スイッチ素子をオン/オフさせることにより前記直流電圧を所定電圧に制御することを特徴とする請求項1記載のDC−DCコンバータ。
【請求項3】
前記トランスの前記1次巻線又は3次巻線の両端と前記制御用スイッチ素子との間には、ブリッジ接続された複数の整流素子が接続され、
前記第2制御回路は、前記第1制御回路からの一定の発振周波数信号と前記直流電圧とに基づき前記制御用スイッチ素子をオン/オフさせることにより前記直流電圧を所定電圧に制御することを特徴とする請求項1記載のDC−DCコンバータ。
【請求項4】
前記トランスの前記2次巻線の両端には、第1整流素子と第1制御用スイッチ素子との第1直列回路と、第2整流素子と第2制御用スイッチ素子との第2直列回路とが直列に逆極性で接続され、
前記第2制御回路は、前記2次巻線の電圧と前記直流電圧とに基づき前記第1制御用スイッチ素子及び前記第2制御用スイッチ素子を同時にオン/オフさせることにより前記直流電圧を所定電圧に制御することを特徴とする請求項1記載のDC−DCコンバータ。
【請求項5】
前記トランスの前記2次巻線は、第1巻線と第2巻線とを有し、前記第1巻線の両端には第1整流素子と第1制御用スイッチ素子との直列回路が接続され、前記第2巻線の両端には第2整流素子と第2制御用スイッチ素子との直列回路が接続され、
前記第2制御回路は、前記第1制御回路からの一定の発振周波数信号と前記直流電圧とに基づき前記第1制御用スイッチ素子と前記第2制御用スイッチ素子とを交互にオン/オフさせることにより前記直流電圧を所定電圧に制御することを特徴とする請求項1記載のDC−DCコンバータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−19371(P2011−19371A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−163618(P2009−163618)
【出願日】平成21年7月10日(2009.7.10)
【出願人】(000106276)サンケン電気株式会社 (982)
【Fターム(参考)】